説明

発光素子

【課題】蛍光体を備え、搭載形態を問わずに採用できると共に光損失を低下させることができ、かつ、化合物半導体薄膜から発する光を効率良く蛍光体に照射することができる発光素子を提供する。
【解決手段】本発明の発光素子は、基板10と、基板10の表面上に設けられ発光層24を有する化合物半導体層20と、基板10の裏面に形成される凹部12と、凹部12の内部に配置され発光層24が発する光により励起されると当該光と異なる波長の光を発する蛍光体40と、凹部12を覆い蛍光体40が発する光に対して透過性を有し無機材料からなる透明層30と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体を用いる発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サファイア基板の上面側に化合物半導体薄膜層が積層されたLED(Light Emitting Diode)チップが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1においては、サファイア基板がサンドブラストにより形成された穴部を有し、この穴部に蛍光体含有材料が充填され、サファイア基板の裏面に反射層が設けられている。特許文献1に記載のLEDチップは、化合物半導体薄膜層から発した光と、当該光の一部により励起された蛍光体から発した光と、の組合せの混合光を発する。
【0003】
【特許文献1】特開2001−085746号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載のLEDチップは、サファイア基板の裏面にAg、Al等の高反射性を有する金属層を設けているものの、反射時における金属の光吸収による光損失は無視できず、光取出し効率の向上には限界がある。また、サファイア基板の裏面に金属層を形成しているので、LEDチップの発光光及び蛍光体からの波長変換光の双方を、サファイア基板側からLEDチップの外部に取り出すことが困難となる。したがって、主たる光取出し面をサファイア基板側とするフェイスダウン型LEDチップとしては採用できず、主たる光取出し面を化合物半導体薄膜層側とするフェイスアップ型LEDチップとしてのみに対応したLEDチップしか提供することができない。
【0005】
したがって、本発明の目的は、蛍光体を備え、搭載形態を問わずに採用できると共に光損失を低下させることができ、かつ、化合物半導体薄膜から発する光を効率良く蛍光体に照射することができる発光素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するため、基板と、前記基板の表面上に設けられ、発光層を有する化合物半導体層と、前記基板の裏面に形成される凹部と、前記凹部の内部に配置され、前記発光層が発する光により励起されると当該光と異なる波長の光を発する蛍光体と、前記凹部を覆い、前記蛍光体が発する光に対して透過性を有し、無機材料からなる透明層と、を備える発光素子が提供される。
【0007】
また、上記発光素子において、前記凹部は、前記基板の前記裏面に、間隔をおいて複数形成されることが好ましい。
【0008】
また、上記発光素子において、前記間隔は、前記各凹部の粗密が異なるように、前記基板の前記裏面の領域に応じて変化することが好ましい。
【0009】
また、上記発光素子において、前記各凹部は、前記発光層が発する光により励起されると第1波長変換光を発する第1蛍光体が配置される第1凹部と、前記発光層が発する光により励起されると前記第1波長変換光と異なる波長の第2波長変換光を発する第2蛍光体が配置される第2凹部と、を含むようにしてもよい。
【0010】
また、上記発光素子において、前記透明層は、前記発光層が発する光に対して反射性を有するようにしてもよい。
【0011】
また、上記発光素子において、前記無機材料は、導電性材料であることが好ましい。
【0012】
また、上記発光素子において、前記無機材料は、酸化物又は窒化物であることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、蛍光体を備え、搭載形態を問わずに採用できると共に光損失を低下させることができ、かつ、化合物半導体薄膜から発する光を効率良く蛍光体に照射することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態の発光素子の断面の概要を示す。また、図2は、本発明の第1の実施形態の発光素子の裏面の概要を示す。
【0015】
(発光素子1の構成の概要)
第1の実施形態の発光素子1は、図1に示すように、裏面(図1中下面)に凹部12を有する基板10と、基板10の表面(図1中上面)上の所定の領域に設けられる化合物半導体層20とを備える。化合物半導体層20は、基板10上に設けられるn型コンタクト層21と、n型コンタクト層21上に設けられるn型クラッド層22と、n型クラッド層22上に設けられる発光層24と、発光層24上に設けられるp型クラッド層26と、p型クラッド層26上に設けられるp型コンタクト層27とを有する。発光素子1の凹部12には、蛍光体40を含むバインダー50が充填され、基板10の裏面に当該裏面を覆って凹部12を遮蔽する透明層30を備えられている。さらに、発光素子1は、p型コンタクト層27上に、p側電極60と、p側電極60上の一部の領域に設けられるp側パッド電極61とを備える。また、発光素子1は、p型コンタクト層27からn型コンタクト層21の一部まで除去されて露出したn型コンタクト層21の表面に、n側電極65を備える。
【0016】
(基板10及び凹部12)
基板10は、光透過性を有し、導電性を有する化合物半導体基板である。基板10は、一例として、c面((0001)面)を主面とする窒化ガリウム(GaN)基板である。また、基板10としては、屈折率が2.4であるGaN基板の他に、屈折率が2.6であるシリコンカーバイド(SiC)基板、屈折率が1.9であるノンドープの酸化亜鉛(ZnO)基板、屈折率が1.9である酸化ガリウム(Ga)基板を用いることができる。ここで、化合物半導体層20をGaN系半導体(屈折率:2.4)から形成する場合、基板10としては、GaN系半導体の屈折率に近い屈折率を有するGaN基板又はSiC基板を用いることが好ましい。また、GaN系半導体からなる化合物半導体層20を基板10上に形成する場合、バッファ層を形成せずに結晶性の良い化合物半導体層20を形成すべく、GaN基板を用いることが好ましい。尚、基板10は、導電性を有していなくてもよいし、不純物がドープされていてもノンドープであってもよい。
【0017】
凹部12は、基板10の裏面側から表面側へ向かって所定の深さで形成される。ここで、図2を参照する。尚、図2は、説明の便宜上、透明層30を省いて示している。発光素子1は、上面視(又は裏面視)にて略四角形状に形成され、凹部12も同様に略四角形状に形成される。例えば、発光素子1は、平面視にて350μm角、又は1000μm角に形成される。そして、凹部12は、厚さが180μmの基板10に、90μm〜100μmの深さに形成される。
【0018】
本実施形態においては、発光素子1は上面視にて正方形状に形成され、凹部12は発光素子1より小さな正方形状に形成される。尚、凹部12の上面視(又は裏面視)における形状は、略四角形に限られず、例えば、四角形以外の多角形状に形成することもできる。また、凹部12は、頂点部分が円弧等の湾曲部分で接続される多角形状としてもよい。
【0019】
(化合物半導体層20、並びにp側電極60及びn側電極65)
化合物半導体層20は、具体的に、基板10上に設けられる第1導電型のn型コンタクト層21と、n型コンタクト層21上に設けられ第1導電型の第1半導体層としてのn型クラッド層22と、n型クラッド層22上に設けられる発光層24と、発光層24上に設けられ第1導電型とは異なる第2導電型の第2半導体層としてのp型クラッド層26と、p型クラッド層26上に設けられるp型コンタクト層27とを有する。本実施形態においては、化合物半導体層20の各層は、InAlGa1-X-YN(0≦X、0≦Y、X+Y<1)で示される窒化物化合物半導体から形成される。
【0020】
本実施形態において化合物半導体層20の各層は、例えば、有機金属化学気相成長(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:MOCVD)法、分子線エピタキシー(Molecular Beam Epitaxy:MBE)法、ハライド気相エピタキシー(Halide Vapor Phase Epitaxy:HVPE)法等によって基板10側から順に積層させて形成される。
【0021】
n型コンタクト層21は、n型ドーパントとしてのSiがドープされたn−GaNから形成される。また、n型クラッド層22は、n型コンタクト層21のドーピング濃度より高い濃度でSiがドープされたn−AlGaNから形成されるn型のクラッド層である。発光層24は、青色領域の光を発するInGaN/GaNを繰り返し積層させた多重量子井戸構造を有して形成される。p型クラッド層26は、p型ドーパントとしてのMgがドープされたp−AlGaNから形成される。更に、p型コンタクト層27は、p型クラッド層26のドーピング濃度より高い濃度でMgがドープされたp−GaNから形成される。
【0022】
本実施の形態に係る発光素子1をフェイスアップ(FU)型として用いる場合、p側電極60は、光取り出し効率の向上を目的としてITO(Indium Tin Oxide)、酸化亜鉛(ZnO)等の導電性酸化物からなる透明電極から形成する。そして、p側パッド電極61は、例えば、Ti、Ni、Au等の金属材料から形成する。また、本実施の形態に係る発光素子1をフリップチップ型として用いる場合、p側電極60は、発光層24が発する光に対して高い反射率を有するRh、Ag等の反射性の金属材料から形成する。p側パッド電極61は、例えば、Ti、Ni、Au等の金属材料から形成する。なお、p側電極60としてAgを用いる場合、Agのマイグレーションを抑制することを目的として、V、Ti等の金属材料を用いてp側電極60の表面(上面及び側面)を被覆する。また、n側電極65は、例えば、Ag、Al、Ni、Au、Pd又はCrを含む金属材料又はITO、ZnO等の透明電極により形成する。なお、n側電極65を透明電極から形成した場合、n側電極65上の所定の領域にパッド電極を形成してもよい。この場合、p側電極60上に設けられるパッド電極とn側電極65の上に設けられるパッド電極とを形成する材料を同一の材料とすることができる。
【0023】
尚、発光層24の量子井戸構造は、単一量子井戸構造、又は多重量子井戸構造、若しくは歪量子井戸構造のいずれの構造であってもよい。さらには、量子井戸構造を有さない発光層24(例えば、pn接合からなる発光層24、ダブルヘテロ(DH)接合からなる発光層24等)とすることもできる。
【0024】
また、本実施形態において、発光層24が発する光は青色領域の光であるが、本実施形態の変形例においては、他の波長領域の光を発する発光層24を形成することもできる。例えば、発光層24を、近紫外領域の光、又は紫外領域の光を発する構造とすることもできる。
【0025】
(蛍光体40及びバインダー50)
蛍光体40は、発光層24が発する光により励起されると当該光とは異なる波長の可視光を放射する。本実施形態においては、蛍光体40として、発光層24が発する青色光により励起されると、黄色領域の光を発するYAG(Yttrium Aluminum Garnet)が用いられる。尚、蛍光体40は、ケイ酸塩蛍光体、YAGとケイ酸塩蛍光体を所定の比率で混合した混合物等を用いることもできる。蛍光体40は、バインダー50に添加されてバインダー50中に分散される。
【0026】
バインダー50は、蛍光体40を凹部12内に封止する。バインダー50は、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の高分子材料、若しくはガラス系接着剤、低融点ガラス、ゾルゲルガラス等の無機材料から形成される。バインダー50としては、耐光性、耐熱性等を有する無機材料が望ましい。尚、発光層24が発する光を凹部12内において散乱させて、蛍光体40に入射する光量を増加させることを目的として、所定の形状を有する散乱材をバインダー50に添加してもよい。散乱材は、例えば、シリカビーズ等から形成される。
【0027】
ここで、発光層24が発する光と当該光により励起された蛍光体40が発する光の組合せは任意であるし、例えば複数種類の蛍光体を用いてもよい。白色光を生成する組合せの例としては、例えば、青色の発光層と黄色蛍光体の組合せ、青色発光層と緑色蛍光体及び赤色蛍光体の組合せ、紫外の発光層と青色蛍光体、緑色蛍光体及び赤色蛍光体の組合せ、紫外の発光層と青色蛍光体及び赤色蛍光体の組合せ等がある。
【0028】
青色光により励起される黄色蛍光体としては、前述のYAGの他に、例えばα−サイアロン:Eu2+等が挙げられる。また、紫外光により励起される黄色蛍光体として、例えば(Ba,Sr,Ca)SiO:Eu2+等が挙げられる。
また、青色光により励起される赤色蛍光体としては、例えば(Ca,Sr)S:Eu等が挙げられる。また、紫外光により励起される赤色蛍光体としては、例えばLaS:Eu,Sm(YOS:Eu),BaMgSi:Eu2+、Mn2+等が挙げられる。また、青色光及び紫外光により励起される赤色蛍光体としては、例えばCaAlSiN:Eu2+等が挙げられる。
また、青色光により励起される緑色蛍光体としては、例えば(Ba,Sr)SiO:Eu2+等が挙げられる。また、紫外光により励起される緑色蛍光体としては、例えば3(Ba,Mg,Eu,Mu)O・8Al等が挙げられる。
また、紫外光により励起される青色蛍光体としては、例えば(Sr,Ca,Ba,Eu)10(PO・Cl2、(Ba、Sr、Ca)10(PO13:Eu2+等が挙げられる。
【0029】
(透明層30)
透明層30は、凹部12の開口を被覆して、凹部12内の蛍光体40を含有したバインダー50を外部から遮蔽する。透明層30は、水分、酸素等を発光素子1の外部と遮断する機能を有する。透明層30は、蛍光体40が放射する可視光に対して所定の透過率を有する酸化物材料又は窒化物材料からなり、当該可視光の少なくとも一部を透過する。例えば、透明層30は、酸化物材料としての二酸化シリコンからなる膜(SiO膜)、窒化物材料としての窒化ケイ素からなる膜(Si、例えば、Si膜)、酸化物材料且つ窒化物材料であり酸窒化物材料としてのシリコン酸窒化膜(SiON膜)等から形成することができる。
【0030】
(発光素子1の製造方法)
図3及び図4は、本発明の第1の実施形態の発光素子の製造工程の概要を示す。
【0031】
(基板準備工程)
まず、図3(a)に示すように、基板10上に化合物半導体層20が形成されたエピタキシャル基板を準備する。エピタキシャル基板は、ノンドープのGaNからなる基板10上に、n−GaNからなるn型コンタクト層21と、n−AlGaNからなるn型クラッド層22と、発光層24と、p−AlGaNからなるp型クラッド層26と、p−GaNからなるp型コンタクト層27とがこの順にエピタキシャル成長されて形成される。
【0032】
(メサ形成工程)
次に、図3(b)に示すように、フォトリソグラフィー法及びエッチング法を用いて、化合物半導体層20のp型コンタクト層27の表面からn型コンタクト層21の一部までを除去する。すなわち、p−GaNから形成されるコンタクト層27の表面からn−GaNから形成されるn型コンタクト層21の一部までエッチングにより除去して、メサ形状を形成する。この後、図3(c)に示すように、フォトリソグラフィー法及びスパッタ法又は真空蒸着法を用いて、p型コンタクト層27の表面にp側電極60を形成した後、p側電極60上の一部にp側パッド電極61を形成する。また、露出したn型コンタクト層21の表面の所定の領域にn側電極65を形成する。
【0033】
(凹部形成工程)
次に、図4(a)に示すように、基板10における化合物半導体層20が形成されている面の反対の面に、凹部12を形成する。凹部12は、基板10がGaNから形成されている場合、所定のエッチャントを用いてウェットエッチング又はドライエッチングにより形成する。これにより、最深部の底面12bと、この底面12bに連続的に形成され開口へ向かって拡がるよう傾斜した斜面12aと、を含む凹部12が、基板10に形成される。尚、凹部12をエッチングにより形成する場合、エッチングにより露出する面であるので、斜面12a及び底面10bはそれぞれ略平坦な面となる。
【0034】
(蛍光体設置工程)
続いて、図4(b)に示すように、蛍光体40を含有するバインダー50を、ポッティング等により凹部12に充填する。尚、バインダー50が十分な流動性を有する場合、バインダー50が有する自己水平性(セルフレべリング)を利用して、バインダー50の表面を略平坦にできる。バインダー50を凹部12内に充填した後、バインダー50を加熱して硬化させる。
【0035】
(透明層形成工程)
次に、図4(c)に示すように、バインダー50が充填された凹部12の開口側に、透明層30を形成する。透明層30は、例えば、ゾルゲル法、真空蒸着法、スパッタ法等の成膜法を用いて形成する。これにより、凹部12内の蛍光体40を外部から遮蔽する透明層30が形成される。以上の各工程を経て、白色LEDチップとしての発光素子1が製造される。
【0036】
(発光素子1の作用)
図5(a)及び(b)は、本発明の第1の実施形態の発光素子の使用例を示す。
【0037】
図5(a)は、発光素子1をフェイスアップ(FU)型として用いる例を示す。この場合、p側電極60は、ITO、ZnO等の透明電極から形成される。そして、p側パッド電極61は、金属材料から形成される。そして、発光素子1は、透明層30側を下にして所定の実装基板70上に接着剤80を介して搭載される。本実施形態においては、接着剤80は、例えば、エポキシ樹脂等の非導電性の接着剤が用いられる。ここで、接着剤80は、例えば、Agペースト、AuSn等の導電性材料であってもよい。本実施形態においては、接着剤80は、反射フィラーとして、例えば、Ag、TiO等を含み、白色を呈している。尚、接着材80を反射フィラーを含有しない透明接着材としてもよい。
【0038】
図5(a)において、発光層24から発した光の一部は、p型コンタクト層27及びp側電極60を通過して発光素子1の外部に放射される(図5(a)の光A)。また、発光層24から発した光の他の一部は、n型クラッド層22、n型コンタクト層21、及び基板10を伝搬して、凹部12内の蛍光体40に照射される(図5(a)の光B)。そして、光Bにより蛍光体40は励起され、光Bとは異なる波長の光Bを放射する。光Bは、蛍光体40から発光素子1の外部に放射される。尚、図5(a)では図示していないが、発光層24から発した光の他の一部は、n型クラッド層22、n型コンタクト層21、及び基板10を伝搬して、発光素子1と外部との界面において全反射される。この光は、当該界面において全反射された後、凹部12の蛍光体40に向かって伝搬する。本実施形態においては、蛍光体40が放射した可視光の一部は、透明層30を透過した後、接着剤80により蛍光体40側に反射される。尚、図5(a)の場合において、無機材料からなる透明層30は、蛍光体40を含むバインダー50内への接着剤80の侵入を阻止するバリア層としての機能も有する。また、透明層30は、酸化物材料、窒化物材料、又は酸窒化物材料から形成されるので、透明層30と蛍光体40とが直接に接した場合であっても、蛍光体40と金属材料(例えば、Ti等の触媒性を有する金属材料)とが直接に接した場合に比べて、蛍光体40の変質を抑制することができる。
【0039】
尚、図5(a)のFU型の発光素子1において、実装基板70に搭載された発光素子1は、p側パッド電極61及びn側電極65がAuワイヤー等を介して実装基板70の接続端子と電気的に接続される。そして、発光素子1は、樹脂材料等の有機高分子材料又は低融点ガラス等の無機材料により封止される。
【0040】
一方、図5(b)は、発光素子1をフリップチップ(FC)型として用いる例を示す。この場合、p側パッド電極61及びp側電極60は、透光性の導電材料、反射性の金属材料等から形成される。そして、発光素子1は、凹部12の開口側を実装基板70と反対側に向け、実装基板70上にバンプ85を介して搭載される。これにより、p側パッド電極61と実装基板70の接続端子(図示せず)との間、及びn側電極65と実装基板70の接続端子(図示せず)との間が、バンプ85により電気的に接続される。ここで、バンプ85は、例えば、Auバンプ、AuSnバンプ等の金属バンプからなる。
【0041】
図5(b)において、発光層24から発した光の一部は、n型クラッド層22、n型コンタクト層21、及び基板10を伝搬して発光素子1の外部に伝搬する(図5(b)の光E)。また、発光層24から発した光の他の一部は、n型クラッド層22、n型コンタクト層21、及び基板10を伝搬して、凹部12内の蛍光体40に照射される(図5(b)の光C)。そして、光Cにより蛍光体40は励起され、光Cとは異なる波長の光Cを放射する。蛍光体40から放射された光Cは、発光素子1の外部に放射される。また、発光層24から発した光の他の一部は、n型クラッド層22、n型コンタクト層21、及び基板10を伝搬して、発光素子1と外部との界面において全反射される(図5(b)の光D)。光Dは、当該界面において全反射された後、凹部12の蛍光体40に向かって伝搬する。なお、発光層24から実装基板70側に伝搬した光は、p側電極60によって発光素子1の上方に反射される。
【0042】
(第1の実施形態の効果)
本発明の第1の実施形態の発光素子1によれば、凹部12に充填された蛍光体40を含有するバインダー50は、透明層30により外部から遮蔽される。これにより、本実施形態によれば、空気中に含まれる水分等が凹部12に侵入することはなく、水分等により蛍光体40が変質・分解することを抑制できるので、発光素子1の経時劣化を抑制することができる。そして、凹部12を透明層30によって覆ったので、透明層30側からも光を取り出すことができる。これにより、本実施の形態においては、FU型又はFC型のいずれの搭載形態も採用することができる発光素子1を提供できると共に、透明層30における光の損失を低減できる。
【0043】
また、第1の実施形態の発光素子1によれば、発光層24が発した光が発光素子1と外部との界面において全反射して基板10内を伝搬する場合であっても、この伝搬光は凹部12内の蛍光体40によって散乱されるので、発光素子1の光取り出し効率が向上する。例えば、屈折率が約2.5と比較的高いGaNをノンドープの基板10に用いた場合、全反射によって基板10内に伝播し取り出されない光が多くなるが、凹部12内の蛍光体40が存在する場合、伝播光が蛍光体40によって波長変換及び散乱されるため、光取り出し効率を格段に向上させることができる。また、波長変換及び散乱されずに基板10内に伝播した光は全反射等により、再度蛍光体10へ入射するため、効率よく伝播光を波長変換することができる。また、基板10表面に蛍光体40を塗布した場合と比べ、凹部12を形成して蛍光体40を充填すると、凹部12の側面分だけ表面積が増えて、蛍光体40に光が入射しやすくなり、光取り出し効果を向上することができる。
【0044】
さらに、第1の実施形態の発光素子1によれば、基板10に設けた凹部12内に蛍光体40を封止するので、発光素子1の光源サイズを小さくすることができる。従って、発光素子1の外部に設けるレンズ等の光学系のサイズを小さくすることができる。
【0045】
[第1の実施形態の変形例]
第1の実施形態において、n型コンタクト層21上にn側電極65を形成したものを示したが、n側電極65を導電性を有する基板10に直接形成するようにしてもよい。
【0046】
また、例えば、図6に示すように、基板10をGaN以外の材料から形成してもよいことは勿論である。図6には、基板10がサファイアからなり、n型クラッド層22と基板10との間に、AlNからなるバッファ層111及びGaNからなるn型コンタクト層112を備えた発光素子101を示す。
【0047】
また、第1の実施形態においては、一の正方形状の凹部12を基板10の裏面中央に形成したものを示したが、凹部の形状は任意である。例えば、図7(a)に示すように、基板10の裏面の中心領域に凹部13を備え、凹部13と距離をおいて凹部13を包囲する凹部14を備えたものであってもよい。凹部13及び凹部14には、蛍光体40を含有するバインダー50がそれぞれ充填される。図7(a)においては、凹部13は平面視正方形状に形成され、凹部14は中抜きの正方形状に形成されており、凹部13と凹部14とは同心の位置に配置されている。
【0048】
また、例えば、図7(b)に示すように、基板10の裏面に、規則的に配置された複数の凹部15を備えたものであってもよい。各凹部15には、蛍光体40を含有するバインダー50がそれぞれ充填される。図7(b)においては、平面視にて正方形状の凹部15が縦横に所定間隔で整列され、基板10の裏面は格子状の外観を呈している。尚、図7(a)においては、各凹部15の大きさが同一であるが、各凹部15を異なる大きさとしてもよい。
【0049】
また、例えば、図8(a)に示すように基板10の裏面に形成される複数の凹部16を平面視にて正六角形状に形成してもよく、各凹部の形状は任意である。図8(a)においては、平面視にて正六角形状の各凹部16が、互いに距離をおいて基板10の裏面にハニカム状に配列される。そして、各凹部16には、蛍光体40を含有するバインダー50が充填される。
【0050】
また、例えば、図8(b)に示すように、基板10の裏面に形成される凹部17a,17b,17cの大きさが複数種類であってもよい。図8(b)の発光素子では、各凹部17a,17b,17cは互いに相似形状であり、基板10の裏面中央側の凹部17aは大きく、基板10の裏面外縁側の凹部17bは小さく、中央側の凹部17aと外縁側の凹部17bの中間に位置する凹部17cはこれらの中間の大きさに形成されている。各凹部17a,17b,17cは、平面視にて正六角形状に形成され、同濃度の蛍光体40を含有するバインダー50がそれぞれ充填されている。また、基板10の裏面中央側の複数の凹部17a間の間隔が、複数の凹部17b間の間隔、及び複数の凹部17c間の間隔より狭い間隔となる配置で、各凹部17a,17b,17cは配置される。すなわち、裏面の中央付近の領域(第1の領域)、外縁付近の領域(第2の領域)、及び中央と外縁との間の領域(第3の領域)のそれぞれに凹部を配置する場合、第1の領域に配置する複数の凹部の間隔(第1の間隔)と、第2の領域に配置する複数の凹部の間隔(第2の間隔)と、第3の領域に配置する複数の凹部の間隔(第3の間隔)とをそれぞれ異なる間隔にすることができる。例えば、第1の間隔<第2の間隔<第3の間隔、第1の間隔<第3の間隔<第2の間隔、第1の間隔≦第2の間隔≦第3の間隔、又は第1の間隔≦第3の間隔≦第2の間隔となる配置に、複数の凹部17a,17b,17cを裏面に配置できる。これにより、裏面に設けられる複数の凹部の粗密を異ならせることができる。
【0051】
図7及び図8に示したように、基板10の裏面に複数の凹部を設けることで、複数の凹部の間のそれぞれは、発光層24が発する光の光取出し面として機能させることができる。また、発光素子1は、その外部形状、基板10の厚さ、化合物半導体層20を構成する各層の厚さに応じて発光素子1の配光が変化するので、発光層24の発光光と蛍光体からの波長変換光との混色光の色むらを生じさせないことを目的として、発光素子1の配光に対応させた凹部の配列パターンを設計することができる。よって、各凹部の配列パターンの最適化により、発光素子1が発する光の色むらを抑制できる。
【0052】
また、例えば、図9に示すように、基板10の裏面に形成される凹部19a、19b、19cの深さをそれぞれ異なる深さに形成することもできる。図9の発光素子では、裏面中央側の凹部19aの深さが他の凹部19b及び19cの深さより深く、裏面外縁側の凹部19cの深さが他の凹部19a及び19bの深さより浅い。そして、凹部19aと凹部19cとの間の凹部19bの深さは、凹部19aの深さと凹部19cの深さとの間の深さである。
【0053】
[第2の実施形態]
図10は、本発明の第2の実施形態の発光素子の断面の概要を示す。また、図11は、本発明の第2の実施形態の発光素子の裏面の概要を示す。
【0054】
第2の実施形態の発光素子1aは、ノンドープの基板10に設ける凹部が複数である点、複数の凹部に充填される蛍光体が複数種類である点等が、主として第1の実施形態の発光素子1と異なっている。尚、図11において、説明の便宜上、透明層30の図示を省略している。また、図10は、図11のA−A断面となっている。
【0055】
図10に示すように、第2の実施形態の発光素子1aは、基板10の裏面に等間隔で形成された複数の凹部18a,18b,18cを備え、一部の凹部18a,18cには第1蛍光体42を含有するバインダー50が充填され、他部の凹部18bには、第1蛍光体42と異なる第2蛍光体43を含有するバインダー50が充填される。
【0056】
図11(a)は、第2の実施形態の発光素子1aの一例を示す。この発光素子1aは、基板10の裏面に、所定方向(図11(a)中上下方向)へ延びる3つの四角形状の各凹部18a,18b,18cが、各凹部18a,18b,18cの延在方向と直交する方向に所定間隔で並んで形成され、全体としてストライプ状を呈している。外側に位置する2つの凹部18a,18cは、第1蛍光体42を含有するバインダー50が充填され、中央の凹部18bは、第2蛍光体43を含有するバインダー50が充填される。本実施形態においては、第1蛍光体42は、青色光により励起されると緑色光を発する緑色蛍光体であり、第2蛍光体433は、青色光により励起される赤色光を発する赤色蛍光体である。ここで、第1蛍光体42の種類と、第2蛍光体43の種類の組合せは、任意に変更することができる。
【0057】
図11(b)は、第2の実施形態の発光素子1aの他の例を示す。この発光素子1aは、基板10の裏面に、縦横に所定の間隔で配置された複数の正方形状の凹部(凹部18aから凹部18i)を備える。この発光素子1aは、各凹部が縦3列、横3列に形成され、隣接する凹部同士で充填される蛍光体の種類が異なっている。本実施形態においては、基板10の角部側に配置される凹部18a,18c,18g,18i及び基板10の中央側に配置される凹部18eには、第1蛍光体42を含有するバインダー50が充填される。一方、基板10の辺部側に配置される凹部18b,18d,18f,18hには、第2蛍光体43を含有するバインダー50が充填される。尚、凹部の配列は縦横3列に限定されず、縦横の配列数はいくつでもよいことは勿論である。
【0058】
尚、第2の実施形態においては、凹部に充填される蛍光体42,43の種類を異なるようにしたものを示したが、例えば、凹部に充填される蛍光体を同一として濃度を異なるようにしてもよい。この場合、発光層24からの光の入射量が多い凹部で蛍光体の濃度を高くし、入射量が少ない凹部で蛍光体の濃度を低くすると、限られた蛍光体の量で効率良く波長変換を行うことができる。
【0059】
[第3の実施形態]
図12は、本発明の第3の実施形態の発光素子の断面の概要を示す。
第3の実施形態の発光素子1bは、透明層30を形成する材料を蛍光体40aのバインダーとする点が、主に第1の実施形態の発光素子1と異なっている。この発光素子1bの製造方法について説明する。
【0060】
(蛍光体設置工程)
本実施形態においては、バインダー無しで蛍光体40を凹部12内に圧入する圧入工程と、蛍光体40が圧入された凹部12上に透明層30の原料を塗布する塗布工程と、塗布した原料から、透明層30を形成する透明層形成工程とを含む。
【0061】
具体的に、まず、基板10の裏面に凹部12を形成した後、蛍光体40を凹部12内に圧入する。このとき、蛍光体40の粒子間には空隙40aが形成される。次に、ゾルゲル出発溶液を凹部12の開口側にスピンコート法、ディップ法、キャスト法等により塗布した後、所定条件下で熱処理を基板10に施す。これにより、ゾルゲル出発溶液からゾルゲルガラスが形成され、透明層30となる。
【0062】
このとき、ゾルゲル出発溶液は、蛍光体40の粒子間の空隙40aの一部にゾルゲル出発溶液が侵入する。空隙40aに侵入したゾルゲル出発溶液も、熱処理によりゾルゲルガラスとなり、侵入部30aとなる。これにより、凹部12内の蛍光体40の少なくとも凹部12の開口側の蛍光体40は、侵入部30aによって固定される。すなわち、本実施形態の発光素子1bにおいては、侵入部30aがバインダーとして機能する。
【0063】
[第4の実施形態]
図13は、本発明の第4の実施形態の発光素子の断面の概要を示す。また、図14は、本発明の第4の実施形態の発光素子の裏面の概要を示す。
【0064】
図13を参照すると、第4の実施形態の発光素子1cは、裏面10bに凹部12を有すると共に導電性を有する半導体基板である基板11と、基板11の表面に形成される化合物半導体層20aとを備える。そして、化合物半導体層20aは、n型半導体層23と、n型半導体層23上に形成される発光層24と、発光層24上に設けられるp型半導体層25とを備える。更に、発光素子1cは、p型半導体層25上に設けられるp側電極60と、p側電極60上の所定の領域に設けられるp側パッド電極61と、底面10b及びバインダー50の表面を覆って設けられる導電膜31とを備える。なお、n型半導体層23は、第1の実施の形態のように、n型コンタクト層21及びn型クラッド層22を含んで形成することができる。そして、p型半導体層25は、p型クラッド層26及びp型コンタクト層27を含んで形成することができる。
【0065】
本実施形態において、導電膜31は、図14に示すように、凹部12の外縁にオーミック接触すると共に凹部12を覆ってバインダー50に接して設けられ、n側電極として機能する。本実施形態の基板11は導電性を有する半導体基板(例えば、不純物がドーピングされて導電性を呈するGaN基板)であるので、基板11を通じてp側パッド電極61と導電膜31との間を電流が流れることにより、発光層24に電力が供給される。導電膜31は、例えば、ITO、SnO等の導電性酸化物の透明膜からなる単層から形成される。また、導電膜31は、ITOからなる層とNbをドープしたTiOからなる層との積層構造からなる分布ブラッグ反射(Distributed Bragg Reflector:DBR)膜として形成することもできる。なお、導電膜31をDBR膜として形成する場合、NbをドープしたTiO膜とAlをドープしたZnOの膜との積層構造、又は、ITOからなる膜とSbをドープしたSnOからなる膜との積層構造から形成することもできる。
【0066】
[第4の実施形態の変形例]
図15は、本発明の第4の実施形態の変形例の発光素子の断面の概要を示す。
第4の実施形態の変形例の発光素子1dは、第4の実施形態の発光素子1cとは凹部の数が異なる点が、第4の実施形態の発光素子1cと異なっている。第4の実施形態の変形例の発光素子1dは、基板11の裏面10bに複数の凹部18a,18b,18cが形成される。各凹部18a,18b,18cは、図11において説明した第2の実施形態の発光素子1aと同様の構成となっている。
【0067】
[第5の実施形態]
図16は、本発明の第5の実施形態の発光素子の断面の概要を示す。
第5の実施形態の発光素子1eは、凹部12にバインダー50が充填されていない点が、主として第1の実施形態の発光素子1と異なっている。本実施形態においては、図16に示すように、蛍光体40を含有するバインダー50は凹部12の底部側に所定の厚さだけ塗布されており、バインダー50は凹部12の全体に充填されてはいない。そして、透明層30は、バインダー50の表面にのみ設けられる。
【0068】
[第6の実施形態]
図17は、本発明の第6の実施形態の発光素子の断面の概要を示す。
第6の実施形態の発光素子1fは、凹部12内に複数の蛍光体層を備える点が、主として第1の実施形態と異なっている。第6の実施形態の発光素子1fは、凹部12内が第1蛍光体層44と第2蛍光体層44とにより充填される。第1蛍光体層44は、第1蛍光体42を含有するバインダー50を、凹部12の底部側に充填して形成される。また、第2蛍光体層45は、第2蛍光体43を含有するバインダー50を、凹部12の第1蛍光体層44上で凹部12の開口側に充填して形成される。
【0069】
尚、第6の実施形態では、凹部12内に2層の蛍光体層44,45を形成したものを示したが、凹部12内に3層以上の蛍光体層を形成してもよい。この場合、各蛍光体層に、異なる種類の蛍光体を添加したり、各蛍光体層に添加する蛍光体の濃度を蛍光体層ごとに変化させてもよい。
【0070】
[第7の実施の形態]
図18は、本発明の第7の実施形態の発光素子の部分断面の概要を示す。
第7の実施の形態の発光素子1gは、凹部12を覆う透明層がDBR構造を有する点が、主として第1の実施形態と異なっている。第7の実施形態の発光素子1gは、発光層24が発する光に対して所定の反射率を有するDBR層32を基板10の裏面に備える。DBR層32は、互いに異なる屈折率の第1透明層32a及び第2透明層32bのペアを所定の繰り返し単位数だけ含んだ積層構造とされる。なお、第1透明層32a及び第2透明層32bは、例えば、SiO、TiO、SiN及びSiONからなる群から選択される材料から形成できる。
【0071】
DBR層32は、蛍光体40が放射する可視光に対して実質的に透明膜として機能すると共に、発光層24が発する光に対して実質的に反射膜として機能する。例えば、発光層24が発する光が視感度に影響を及ぼさない紫外領域又は紫領域の光である場合、紫外領域又は紫領域の光を高い反射率で反射することのできるDBR層32を形成する。これにより、紫外領域又は紫領域の光はDBR層32によってバインダー50側に反射され、発光素子1gの外部に放出されず、主として、蛍光体40に照射される。したがって、本実施の形態によれば、紫外領域の光、又は紫領域の光を発光光を積極的に蛍光体40側に反射させることができるので、蛍光体40の波長変換効率を大幅に向上させて発光素子1gの外部に可視光を放射させることができる。
【0072】
[第8の実施の形態]
図19は、本発明の第8の実施形態の発光素子の部分断面の概要を示す。
第8の実施の形態の発光素子1hは、DBR層32が保護層34を有して設けられ、DBR層32が開口33を有する点が、主として第7の実施形態と異なっている。第8の実施形態の発光素子1hのDBR層32は、基板10の裏面に形成されるSiO等からなる保護層34と、保護層34上に発光層24が発する青色領域の光に対して所定の反射率を有するDBR構造とを含む。DBR層32のDBR構造は、互いに異なる屈折率の第1透明層32a及び第2透明層32bのペアを所定の繰り返し単位数だけ含んだ積層構造とされる。
【0073】
保護層34は、基板10の裏面に凹部12を覆って設けられ、凹部12内の蛍光体40及びバインダー50を遮蔽する。また、DBR層32は、DBR構造の最外層から保護層34の表面に向かってDBR構造を貫通して形成される複数の開口33を有する。各開口33は、発光層24が発する光、及び蛍光体40からの波長変換光を外部に伝搬する。そして、DBR層32は、発光層24が発する光を反射すると共に波長変換光を外部に透過する。これにより、DBR層32側から、発光層24が発する光と波長変換光とが混色した光を発光素子1hの外部に取り出すことができる。すなわち、本実施の形態によれば、DBR層32側、及びDBR層32の反対側の発光素子1hの表面(p側電極60側)の双方から、当該混色した光を発光素子1hの外部に取り出すことができる。
【0074】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記に記載した実施形態は特許請求の範囲の発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】図1は第1の実施形態の発光素子の断面図である。
【図2】図2は第1の実施形態の発光素子の裏面図である。
【図3】図3は第1の実施形態の発光素子の製造工程を示す図である。
【図4】図4は第1の実施形態の発光素子の製造工程を示す図である。
【図5】図5は(a)及び(b)は、第1の実施形態の発光素子の使用例を示す図である。
【図6】図6は第1の実施形態の変形例の発光素子の断面図である。
【図7】図7は(a)及び(b)は、第1の実施形態の変形例の発光素子の裏面図である。
【図8】図8は(a)及び(b)は、第1の実施形態の変形例の発光素子の裏面図である。
【図9】図9は、第1の実施形態の変形例の発光素子の部分断面図である。
【図10】図10は第2の実施形態の発光素子の断面図である。
【図11】図11は(a)及び(b)は、第2の実施形態の発光素子の裏面図である。
【図12】図12は第3の実施形態の発光素子の断面図である。
【図13】図13は第4の実施形態の発光素子の断面図である。
【図14】図14は第4の実施形態の発光素子の裏面図である。
【図15】図15は第4の実施形態の変形例の発光素子の断面図である。
【図16】図16は第5の実施形態の発光素子の断面図である。
【図17】図17は第6の実施形態の発光素子の断面図である。
【図18】図18は第7の実施形態の発光素子の部分断面図である。
【図19】図19は第8の実施形態の発光素子の部分断面図である。
【符号の説明】
【0076】
1、1a、1b、1c、1d、1e、1f、1g 発光素子
10 基板
10b 底面
11 導電性基板
12、13、14、15、16 凹部
12a 斜面
12b 底面
17a、17b 凹部
18a、18b、18c、18d、18e、18f、18g、18h、18i 凹部
19a、19b、19c 凹部
20、20a 化合物半導体層
21 n型コンタクト層
22 n型クラッド層
23 n型半導体層
24 発光層
25 p型半導体層
26 p型クラッド層
27 p型コンタクト層
30 透明層
30a 侵入部
31 導電膜
32 DBR層
32a 第1透明層
32b 第2透明層
33 開口
34 保護層
40、42、43 蛍光体
40a 空隙
44 第1蛍光体層
45 第2蛍光体層
50 バインダー
60 p側電極
61 p側パッド電極
70 実装基板
80 接着剤
85 バンプ
111 バッファ層
112 n型コンタクト層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の表面上に設けられ、発光層を有する化合物半導体層と、
前記基板の裏面に形成される凹部と、
前記凹部の内部に配置され、前記発光層が発する光により励起されると当該光と異なる波長の光を発する蛍光体と、
前記凹部を覆い、前記蛍光体が発する光に対して透過性を有し、無機材料からなる透明層と、を備える発光素子。
【請求項2】
前記凹部は、前記基板の前記裏面に、間隔をおいて複数形成される請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記間隔は、前記各凹部の粗密が異なるように、前記基板の前記裏面の領域に応じて変化する請求項2に記載の発光素子。
【請求項4】
前記各凹部は、
前記発光層が発する光により励起されると第1波長変換光を発する第1蛍光体が配置される第1凹部と、
前記発光層が発する光により励起されると前記第1波長変換光と異なる波長の第2波長変換光を発する第2蛍光体が配置される第2凹部と、を含む請求項3に記載の発光素子。
【請求項5】
前記透明層は、前記発光層が発する光に対して反射性を有する請求項4に記載の発光素子。
【請求項6】
前記無機材料は、導電性材料である請求項5に記載の発光素子。
【請求項7】
前記無機材料は、酸化物又は窒化物である請求項6に記載の発光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−87292(P2010−87292A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255582(P2008−255582)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】