説明

発光装置および照明装置

【課題】半導体発光素子の点灯及び消灯を繰り返しても半導体発光素子が基板から剥離することを抑制することができる発光装置及び照明装置を提供する。
【解決手段】本実施形態の発光モジュール6のダイボンド材39は、発光ダイオード37を実装後のマルテンス硬さが800N/mm2〜1000N/mm2、半導体発光素子を実装後のクリープ率は2〜4%および半導体発光素子を実装後の弾性率は15%〜20%の各範囲内となるように設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、半導体発光素子を用いた発光装置およびこの発光装置を用いた照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、表面側に樹脂層を有する金属ベース基板や絶縁性の基板の一面に半導体発光素子である発光ダイオード列を複数並設するとともに、蛍光体が混ぜられたシリコーン樹脂等の透光性封止樹脂を充填して、この封止樹脂で各チップ列を埋設したCOB(chip on board)型の発光装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この発光装置で発光ダイオード列の夫々は、例えば一対の素子電極を有した複数の発光ダイオードを、反射層上に透光性のダイボンド材によって接着して列をなして設けられるとともに、列が延びる方向に隣接された発光ダイオードの素子電極にボンディングワイヤの両端をワイヤボンディングにより接合して、各発光ダイオードを直列接続して形成されている。そして、各発光ダイオードは例えば青色の光を発するものであり、この青色の光で励起されて黄色の光を放射する蛍光体が封止樹脂に混ぜられている。このため、発光装置は、黄色の光と青色の光が混じることにより形成される白色の光で照明をすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−277561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の発光装置では、光出力がより高いものが求められている。そこで、光出力を高める方法としては、より多くの発光ダイオードを実装する方法や発光ダイオードに供給する電流を高める方法等が考えられる。しかしながら、いずれの方法であっても、複数の発光ダイオードを反射層上に実装しているため、基板を構成する他の部材に対して複数の発光ダイオードから生じる熱影響が高くなる傾向になる。特に発光ダイオードが点灯から消灯した際又は消灯から点灯した際において、発光ダイオードの点灯時に生じる発熱に起因した熱収縮によって基板及び基板を構成する部材への負荷が掛かることになる。そして、このような熱収縮が生じると発光ダイオードを接着しているダイボンド材に各部材の熱収縮による応力負荷が掛かることになり発光ダイオードが剥離してしまう虞があった。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、半導体発光素子の点灯及び消灯を繰り返しても半導体発光素子が基板から剥離することを抑制することができる発光装置及び照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の発光装置は、基板と、基板の一面側に設けられた光反射面と、光反射面に設けられる複数の半導体発光素子と、光反射面と半導体発光素子との間に設けられて半導体発光素子を光反射面上に接着して固定するダイボンド材であって、このダイボンド材は、主としてシリコーン樹脂から形成されており、半導体発光素子を実装後のマルテンス硬さは800N/mm2〜1000N/mm2、半導体発光素子を実装後のクリープ率は2〜4%および半導体発光素子を実装後の弾性率は15%から20%の各範囲内であるダイボンド材と、光反射層及び半導体発光素子を覆うように設けられる透光性の封止材とを備えている。
【発明の効果】
【0008】
本実施形態によれば、半導体発光素子の点灯又は消灯した場合であってもダイボンド材が剥離することを抑制できる発光装置電およびこの発光装置を用いた照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の形態に係るLED電球の斜視図
【図2】実施の形態に係る発光モジュールの平面図
【図3】実施の形態に係る発光モジュールの断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施形態に係る発光装置は、半導体発光素子を実装するダイボンド材は、主としてシリコーン樹脂から形成されており、半導体発光素子を実装後のマルテンス硬さは800N/mm2〜1000N/mm2、半導体発光素子を実装後のクリープ率は2〜4%および半導体発光素子を実装後の弾性率は15%から20%の各範囲内となっているものである。
【0011】
ここで、本実施形態における光反射面とは、発光素子から基板の方向に放出された光を反射させて、光を発光装置の外に効率よく取り出すためのものである。光反射面は、複数
【0012】
の発光素子を実装できる大きさとするとよい。光反射層は、単層でもよいし多層でもよいものであり、例えば銀、金等の金属やセラミック塗料等の高反射率の材料で形成されていればよい。また、光反射層は、例えば高反射率の基板と一体で形成されているものであってもよく、この場合は、セラミック基板等の絶縁性を有する基材が好適である。さらに、封止材としては例えば透明なシリコーン樹脂を用いることが望ましい。封止材は、シリコーン樹脂に限らず、その他の透光性樹脂材料を用いることができる。
【0013】
また、他の実施形態に係る照明装置は、照明装置とは例えば白熱電球と類似した形状を有するLED電球あるいはスポットライトのような照明用構造体のことであり、発光装置を光源としているものである。
【0014】
以下、第1実施形態1照明装置について、図1ないし図3に基づいて説明する。
【0015】
図1は、照明装置の一例であるLED電球1を開示している。LED電球1は、電球本体2、透光性カバー3、E26型の口金4、点灯装置5およびCOB(chip on board)型の発光モジュール6を備えている。
【0016】
電球本体2は、例えばアルミニウムのような金属材料で構成されている。電球本体2は、一端にフラットな図示しない支持面を有する筒形である。また、電球本体2は、複数の放熱フィン12を有している。放熱フィン12は、電球本体2の外周面から放射状に突出されているとともに、電球本体2の他端から一端の方向に進むに従い電球本体2の径方向に沿う外側に向けて張り出している。
【0017】
透光性カバー3は、例えば乳白色の合成樹脂材料を用いて略半球形に形成されている。透光性カバー3は、電球本体2の支持面7に向けて開口する開口縁部13を有している。透光性カバー3は、開口縁部13を支持壁8の内側に嵌め込むことで電球本体2に結合されて、電球本体2の支持面を覆っている。そして、発光装置である発光モジュール6は、電球本体2の支持面に取り付けられて、透光性カバー3により覆われている。
【0018】
図2および図3に示すように、発光モジュール6は、モジュール基板25を備えている。モジュール基板25は、四つの角部を有する矩形状である。モジュール基板25は、角部の付近に四つの切り欠き25aを有している。
【0019】
図3に示すように、モジュール基板25は、金属製のベース26と絶縁層27とで構成されている。ベース26は、例えばアルミニウム又はその合金で形成されている。ベース26は、第1の面26aと第2の面26bとを有している。第2の面26bは、第1の面26aの反対側に位置されて、ベース26の表面を構成している。第2の面26bは、例えば顕微鏡下で見た時に多数の微細な凹凸を有する粗面となっている。
【0020】
絶縁層27は、ベース26の第2の面26bの上に積層されて、第2の面26bを全面的に覆っている。絶縁層27は、グリシジルエステル系、線状脂肪族エポキサイド系または脂環族エポキサイド系のエポキシ樹脂で構成されている。
【0021】
モジュール基板25は、電球本体2の支持面7の中央部に四本のねじ(図示せず)で固定されている。ねじは、モジュール基板25の切り欠き25aを貫通して電球本体2にねじ込まれている。このねじ込みにより、ベース26の第1の面26aが支持面7に密着されて、モジュール基板25が電球本体2に熱的に接続されている。
【0022】
また、図2および図3に示すように、光反射層28、第1の給電導体29および第2の給電導体30がモジュール基板25の絶縁層27の上に積層されている。光反射層28は、四つの辺を有する矩形状であり、絶縁層27の中央部に位置されている。
【0023】
光反射層28は、例えば三種類の金属層を組み合わせた三層構造を採用している。具体的には、光反射層28は、互いに積層された銅層C、ニッケル層Nおよび銀層Aで構成されている。銅層Cは、絶縁層27の上に積層された銅箔をエッチングすることにより形成されている。ニッケル層Nは、銅層Cの上に積層されている。ニッケル層Nは、銅層Cに無電解めっきを施すことにより形成されている。銀層Aは、ニッケル層Nの上に積層されている。銀層Aは、ニッケル層Nに無電解めっきを施すことにより形成されている。銀層Aは、光反射層28の表層を構成している。
【0024】
そのため、光反射層28の表面は、銀製の光反射面32となっている。光反射面32の光反射率は、絶縁層の光反射率よりも高い。光反射面32の全光線反射率は、たとえば90.0%である。
【0025】
光反射面32の下地となる銅層Cは、絶縁層27に接する合面33を有している。合面33は、例えば顕微鏡下で見た時に多数の微細な凹凸を有する粗面となっている。そのため、銅層Cの基となる銅箔を絶縁層27の上に積層した状態では、絶縁層27が合面33の上に存在する微細な凹凸に食い込むような形態となる。なお、光反射層28は、三層構造に限らない。例えば、光反射層28は、銀の単層でもよいし、下地となる銅層の上に銀層を積層した二層構造としてもよい。また、必ずしも本実施形態のようにベース26と別体で設けられるものでなくてもよい。
【0026】
第1および第2の給電導体29,30は、夫々光反射層28の一辺に沿って延びる細長い長方形状であるとともに、互いに同じ大きさを有している。第1および第2の給電導体29,30は、光反射層28と同様に、銅層C、ニッケル層Nおよび銀層Aを有する三層構造であり、夫々の表層が銀により構成されている。
【0027】
さらに、第1および第2の給電導体29,30は、光反射層28を挟むように互いに間隔を存して平行に配置されている。光反射層28と第1および第2の給電導体29,30とは、夫々隙間34a,34bにより電気的に隔てられている。隙間34a,34bは、光反射層28と第1および第2の給電導体29,30との間に位置されている。
【0028】
複数の発光ダイオード列36は、光反射層28の光反射面32の上に実装されている。この発光ダイオード列36は、第1および第2の給電導体29,30と直交する方向に直線状に延びているとともに、互いに間隔を存して平行に配列されている。
【0029】
各発光ダイオード列36は、複数の半導体発光素子である発光ダイオード37と複数の第1のボンディングワイヤー38とを備えている。発光ダイオード37は、例えば青色の光を発する発光層37aを有するベアチップで構成されている。発光ダイオード37は、平面的に見た時の形状が長方形であり、例えば長辺の長さが0.5mm、短辺の長さが0.25mmである。発光ダイオード37は、発光層37aの上に一対の素子電極37bを有している。素子電極37bは、図3に一方のみが示されている。
【0030】
さらに、発光ダイオード37は、発光ダイオード列36毎に第1および第2の給電導体29,30と直交する方向に間隔を存して一列に並んでいる。この結果、図2に示すように、数多くの発光ダイオード37は、光反射面32の広範囲に亘るようにマトリクス状に規則的に配列されている。
【0031】
言い換えると、光反射面32は、全ての発光ダイオード37を一括して接着し得る大きさを有している。そのため、光反射面32は、隣り合う発光ダイード37の間で途切れることなく連続している。この結果、光反射面32の下の絶縁層27が隣り合う発光ダイード37の間から露出することはない。
【0032】
また、発光ダイオード37は、夫々透光性のダイボンド材39を用いて光反射面32の上に接着されている。そして、このダイボンド材39は、主としてシリコーン樹脂からなるものであり、耐熱性、耐光性及び透光性が高いものである。このため、発光ダイオード37の長時間の点灯によっても熱や光による劣化が抑制されるとともに、発光ダイオード37からの光を透過して光反射面32で反射するように作用し、光取り出し効率が向上するものである。
【0033】
第1のボンディングワイヤー38は、発光ダイオード列36が延びる方向に隣り合う発光ダイオード37の間を電気的に直列に接続している。具体的には、第1のボンディングワイヤー38は、隣り合う発光ダイオード37の互いに異なる極性の素子電極37bの間を接続するように、隣り合う発光ダイオード37の間に跨っている。
【0034】
各発光ダイオード列36の一端は、第2のボンディグワイヤー40aを介して第1の給電導体29に電気的に接続されている。同様に、各発光ダイオード列36の他端は、第3のボンディングワイヤー40bを介して第2の給電導体30に電気的に接続されている。そのため、複数の発光ダイオード列36は、第1および第2の給電導体29,30に対し電気的に並列に接続されている。
【0035】
図2に示すように、一対の給電端子42a,42bがモジュール基板25の絶縁層27の上に配置されている。給電端子42a,42bは、光反射面32から外れた位置に設けられている。一方の給電端子42aは、図示しない導体パターンを介して第1の給電導体29に電気的に接続されている。他方の給電端子42bは、図示しない導体パターンを介して第2の給電導体30に電気的に接続されている。そして、コネクタ43が給電端子42a,42bにリフロー半田付けされている。
【0036】
図2および図3に示すように、枠体45は、絶縁層27の上に固定されている。この枠体45は、例えば合成樹脂のような絶縁材で構成されて、光反射層28、第1および第2の給電導体29,30を一括して取り囲んでいる。言い換えると、発光素子37、第1ないし第3のボンディングワイヤー38,40a,40bは、枠体45で囲まれた四角い領域に収容されている。
【0037】
封止材46が枠体45で囲まれた領域に充填されている。封止材46は、例えば透明な
【0038】
シリコーン樹脂のような光透過性を有する樹脂材料により構成されている。樹脂材料は、
【0039】
液状の状態で枠体45が取り囲む領域に注入される。
【0040】
この結果、封止材46は、光反射層28、第1の給電端子29、第2の給電端子30、発光ダイオード37、第1ないし第3のボンディングワイヤー38,40a,40bを覆うよう絶縁層27の上に積層されている。このため、封止材46は、枠体45で囲まれた領域に露出された絶縁層27の一部を連続して覆っている。
【0041】
本実施形態では、蛍光体が封止材46に混ぜられている。蛍光体は、封止材46の中に均等に分散されている。蛍光体としては、発光ダイオード37が発する青色の光により励起されて黄色の光を放射する黄色蛍光体を用いている。なお、封止材46に混ぜる蛍光体は、黄色蛍光体に限らない。
【0042】
このようなLED電球1では、点灯装置を通じて発光モジュール6に電圧が印加される。この結果、光反射層28の上の発光ダイオード37が一斉に発光する。発光ダイオード37が発する青色の光は、封止材46に入射される。封止材46に入射された青色の光の一部は黄色蛍光体に吸収される。残りの青色の光は、黄色蛍光体に当たることなく封止材46を透過する。
【0043】
青色の光を吸収した黄色蛍光体は、励起されて黄色の光を発する。黄色の光は、封止材46を透過する。この結果、黄色の光と青色の光が封止材46の内部で互いに混じり合って白色光となる。したがって、枠体45で囲まれた領域に充填された封止材46が面状に光る発光部として機能する。
【0044】
発光ダイオード37からモジュール基板25に向かう光は、光反射層28の光反射面32、第1および第2の給電導体29,30の表面で反射されて透光性カバー3に向かう。この結果、発光ダイオード37が発する光の多くが透光性カバー3を透過して照明用途に供される。
【0045】
発光ダイオード37の発光時に生じる熱は、ダイボンド材39を介して三種の金属を組み合せた光反射層28に伝わる。光反射層28は、発光ダイオード37の熱を広範囲に亘って拡散させるヒートスプレッダとしての機能を果たす。さらに、光反射層28で拡散された発光ダイオード37の熱は、絶縁層27を介して金属製のベース26に伝わるとともに、ベース26から電球本体2の支持面7に伝わる。電球本体2に伝達された熱は、放熱フィン12からLED電球1の外に放出される。
【0046】
この結果、発光ダイオード37の熱をモジュール基板25から積極的に電球本体2に逃すことができる。よって、発光ダイオード37の放熱性を高めて、発光ダイオード37の発光効率を良好に維持することができる。
【0047】
次に、本実施形態におけるダイボンド材39の特性(マルテンス固さ、クリープ率、弾性率)について説明する。
【0048】
マルテンス硬さは、ISO14577−1
Metallic materials - Instrumented indentation test for hardness and materials
parameters Part1:Test method「金属材料―硬さのためのインデンテーション試験テストと材料パラメータ」で規定されている測定方法で得られる物性値である。そして、この物性値は、荷重と、当該押し込み深さとを用いて計算した。
【0049】
そして、発光ダイオード37を光反射面28に実装した後(硬化後)のダイボンド材39のマルテンス硬さについて検討した結果、マルテンス硬さは800N/mm2〜1000N/mm2の範囲内であることが好ましいことが分かった。
【0050】
また、クリープ率(押し込みクリープ率とも言う)は、ある一定時間荷重を一定にした場合における深度(くぼみ深さ)の変化率であり、クリープ率をCとすると、以下の(1)式で表される。
【0051】
C=((h2−h1)/h1)×100・・・(1)
【0052】
(1)式のh1は設定試験荷重に達した時の深度、h2は設定試験荷重を保持している時の深度である。
【0053】
そして、発光ダイオード37を光反射面28に実装した後(硬化後)のダイボンド材39のクリープ率について検討した結果、クリープ率は2〜4%の範囲内であることが好ましいことが分かった。
【0054】
また、弾性率は、変形のしにくさを表す物性値であり、弾性変化内での、応力とひずみの間の比例定数である。そして、発光ダイオード37を光反射面28に実装した後(硬化後)のダイボンド材39の弾性率について検討した結果、弾性率は15〜20%の範囲内であることが好ましいことが分かった。
【0055】
そして、ダイボンド材39のマルテンス硬さが800N/mm2未満、クリープ率2%未満及び弾性率15%未満となると、硬化後においても十分な接着強度が得られない状態となる。また、マルテンス硬さが1000N/mm2より大きく、クリープ率が4%よりも大きくそして弾性率が20%よりも大きくなると、硬化後の硬度が高くなりすぎて発光ダイオード37が点灯状態から消灯状態へ移行した場合又は消灯状態から点灯状態に移行した場合に光反射層28やベース26の収縮に追従できなくなりダイボンド材39が光反射面28から剥離をしてしまいやすくなり、実使用において好適ではない。
【実施例】
【0056】
次に、実施形態に係るダイボンド材の具体的実施例及びその評価結果について記載する。各実施例1〜2及び各比較例1〜2のマルテンス硬さ、クリープ率及び弾性率は、一般的な硬度測定機を用いて室温で測定したものであり、結果を以下の表1に示す。なお、測定条件は、発光ダイオード37をダイボンド材39によって光反射面28に実装した状態によって、ヒートサイクル試験を実施したものであり、これにより発光ダイオード37の剥離度合いについて検証を実施した。なお、ヒートサイクル試験の条件は、温度域を−20度〜80度の範囲で可変するサイクル時間を2minとし、このサイクルを所定回数繰り返すものである。
【0057】
【表1】

【0058】
表1から分かるようにマルテンス硬さが850N/mm2、クリープ率が2%及び弾性率が15%である実施例1と、マルテンス硬さが950N/mm2、クリープ率が3%及び弾性率が20%である実施例2の発光モジュールであればヒートサイクル試験を実施しても発光モジュールの剥離が無いものであった。
【0059】
一方、マルテンス硬さが500N/mm2、クリープ率が1%及び弾性率が10%である比較例1では、硬度が確保できないため発光ダイオードの固着力が弱く、ヒートサイクル試験中に多くの発光ダイオードが剥離する状態が見られ好適ではなかった。また、マルテンス硬さが1100N/mm2、クリープ率が5%及び弾性率が30%である比較例2では、硬度が高すぎることによってヒートサイクル試験中に比較例1よりは割合は低いが、多くの発光ダイオードが剥離する状態が見られるため好適ではなかった。
【0060】
そして、本実施例によれば、発光ダイオード37を実装後におけるダイボンド材39の特性である実施例1、2においては、ベース26に設けられた金属性の光反射層28に複数の発光ダイオード37を実装して点灯消灯を繰り返した場合であっても、発光ダイオード37の点灯時に生じる発熱の影響によって生じるベース26及び光反射層28の熱収縮にダイボンド材39が十分に追従する、又はベース26及び光反射層28で熱収縮が生じてもダイボンド材39が十分な耐力を有するものである。したがって、複数の発光ダイオード37を特に高密度に実装しても発光ダイオード37が光反射層28から剥離することがない。このことは、発光ダイオード37が点灯時に生じる熱がダイボンド材を介して光反射層28に伝熱されることによって放熱効果を高めて発光効率を維持ないし向上する作用を経年において確保することができるため、放熱作用が低下することに起因する経年時における光出力の低下を抑制することができる。これにより、信頼性の高い発光モジュール6にすることができる。
【0061】
そして、本実施例及び各実施例の照明装置によれば、発光モジュールからの光を長期に亘り効率よく取り出すことができ、照明装置の光束の低下を最小限に止めるといった優位性を期待できる。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
1…照明装置であるLED電球、6…発光装置である発光モジュール、25…基板であるモジュール基板、37…半導体発光素子である発光ダイオード、39…ダイボンド材、46…封止材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と;
基板の一面側に設けられた光反射面と;
光反射面に設けられる複数の半導体発光素子と;
光反射面と半導体発光素子との間に設けられて半導体発光素子を光反射面上に接着して固定するダイボンド材であって、このダイボンド材は、主としてシリコーン樹脂から形成されており、半導体発光素子を実装後のマルテンス硬さは800N/mm2〜1000N/mm2、半導体発光素子を実装後のクリープ率は2〜4%および半導体発光素子を実装後の弾性率は15%〜20%の各範囲内であるダイボンド材と;
光反射層及び半導体発光素子を覆うように設けられる透光性の封止材と;
を備えることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
請求項1記載の発光装置と;
前記発光装置が設けられる本体と;
を具備することを特徴とする照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−209280(P2012−209280A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71282(P2011−71282)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】