説明

発光装置

【課題】
発光素子保護材としての硬度、耐久性を有すると同時に高い光取り出し効率をもたらす封止層を具備する発光装置を提供すること。
【解決手段】
発光素子(1)と封止層(2)を具備する発光装置であって、封止層(2)が、透光性樹脂(2A)、平均1次粒子径が100nm以下の金属酸化物粒子(2B)及び平均粒子径が200nm以上、3μm以下の粒子(2C)を含有する封止用樹脂組成物から形成される封止層(2)を具備する発光装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子の光取り出し効率の高い発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に発光ダイオード(LED)を構成している発光素子の屈折率は非常に高く、発生した光は、発光素子と封止材との界面において、臨界角を超える光は、界面での全反射によって、封止材内に進入することができず、内部において吸収され消滅する。一般的に用いられている透明樹脂の屈折率は低いため、臨界角も小さくなり全反射が起こりやすく、結果として光の取り出し効率が低いという問題があった。例えばエポキシ樹脂では屈折率が1.5程度であり、空気、即ち封止層を設けない場合に比べて屈折率が大きくなるので、光取り出し効率は向上するものの、熱変換される光の割合は依然大きい。そのため、より屈折率の高い物質で発光素子をつつむことが出来れば全反射の起こる角度を大きくでき、その分外部での光取り出し効率が向上する。
【0003】
このような樹脂の高屈折率化を目的として、Zr、Sn、Sb、Mo、In、Zn、Ti等の結晶構造を有する屈折率の高い透明性金属酸化物微粒子あるいはそれらの複合酸化物を、分散状態を保ったまま透明樹脂中に導入して、無色透明な高屈折率封止層を形成する技術が提案されている(特許文献1、2)。このような用途に用いるためには高分散性や透明性が要求されるので、金属酸化物は超微粒子であることが望ましい。
しかしながら、上記の技術では、屈折率を所望の値まで高めようとすると、微粒子の含有量を高い割合で充填する必要があり、封止層が脆弱となってしまうという課題があった。
また、屈折率差による光の損失は、封止層と空気との界面あるいは封止層とモールド材との界面でも生じており、封止層内に進入した光を有効に取り出せていない現状があった。
一方で、光取り出し効率を向上させるために、封止層に光拡散剤を導入する技術が提案されている(特許文献3)。しかし、光散乱のみで光取り出し効率を向上させるには限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−15063
【特許文献2】特開2007−270099
【特許文献3】特開2001−77433
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明では、上述した従来技術では、光取り出し効率を高めようと金属酸化物粒子の充填量を高くすると硬度が低下し、封止層としての機能が低下するという問題に鑑み、硬度と光取り出し効率の両立が可能な発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記問題を解決するため、鋭意検討した結果、本発明に達した。
即ち、本発明は、可視光を発光する発光素子(1)と、前記発光素子を封止してなる封止層(2)とを具備する発光装置であって、
前記封止層(2)が、透光性樹脂(2A)、平均1次粒子径が100nm以下の金属酸化物粒子(2B)及び平均粒子径が200nm以上、3μm以下の粒子(2C)を含有する封止用樹脂組成物から形成される封止層である、発光装置に関する。
【0007】
また、本発明は、金属酸化物粒子(2B)が、ZrO2、TiO2の中から選択される、少なくとも1種の金属酸化物粒子であることを特徴とする上記発光装置に関する。
また、本発明は、封止用樹脂組成物に含まれる組成にて、透光性樹脂(2A)と金属酸化物粒子(2B)とを含有する組成物と、粒子(2C)との屈折率差が0.1以上であることを特徴とする上記発光装置に関する。
また、本発明は、透光性樹脂(2A)が、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂及びアクリレート樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である、上記発光装置に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の発光装置が具備する封止層は、発光素子保護材としての硬度、耐久性を有すると同時に高い光取り出し効率をもたらす。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に特定されない。
【0010】
本発明の発光装置は、封止層(2)が、透光性樹脂(2A)、平均1次粒子径が100nm以下の金属酸化物粒子(2B)及び平均粒子径が200nm以上、3μm以下の粒子(2C)を含有する封止用樹脂組成物から形成されることを特徴としている。
【0011】
<発光素子(1)>
本発明で用いられる発光素子(1)とは発光ダイオード(LED)、半導体レーザのことであり、発光色の点は特に限定されず、例えば、赤色(例えば、波長640nm)を発光する赤色発光ダイオード、緑色(例えば、波長530nm)を発光する緑色発光ダイオード、青色(例えば、波長450nm)を発光する青色発光ダイオード、白色発光ダイオード(例えば、紫外又は青色発光ダイオードと蛍光体粒子とを組み合わせて白色を発光する発光ダイオード)が挙げられる。また、これらの可視光に発光する発光ダイオードだけでなく、可視光の短波長領域から紫外線領域で発光する発光ダイオード、例えば360 nm近傍の紫外線領域で発光する発光ダイオードも使用することができる。
但し、発光装置に、蛍光体を用いる場合、該蛍光体を励起可能な発光波長を発光できる発光層を有する半導体発光ダイオードが好ましい。このような半導体発光ダイオードとしてZnSeやGaNなど種々の半導体を挙げることができるが、蛍光体を効率良く励起できる短波長が発光可能な窒化物半導体(InXAlYGa1−X−YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)が好適に挙げられる。また所望に応じて、前記窒化物半導体にボロンやリンを含有させることも可能である。半導体の構造としては、MIS接合、PIN接合やpn接合などを有するホモ構造、ヘテロ構造あるいはダブルへテロ構成のものが挙げられる。半導体層の材料やその混晶度によって発光波長を種々選択することができる。また、半導体活性層を量子効果が生ずる薄膜に形成させた単一量子井戸構造や多重量子井戸構造とすることもできる。
【0012】
<封止層(2)>
本発明で用いられる封止層(2)とは、発光素子(1)を封止しかつ保護機能を兼ね備えた層のことであり、発光素子を覆う様に塗布した封止用樹脂組成物を加熱、あるいは紫外線や赤外線等の照射を施し硬化させることにより得られる。
封止用樹脂組成物は、透光性樹脂(2A)、平均1次粒子径が100nm以下の金属酸化物粒子(2B)及び平均粒子径が200nm以上、3μm以下の粒子(2C)を含有する。以下に、封止用樹脂組成物について述べる。
【0013】
<透光性樹脂(2A)>
本発明で用いられる透光性樹脂(2A)は、発光素子から放出される光、例えば、可視光線、近赤外線あるいは近紫外線等の所定の波長帯域の光に対して透明性を有する樹脂であればよく、熱可塑性、熱硬化性、可視光線や紫外線や赤外線等による光(電磁波)硬化性、電子線照射による電子線硬化性等の硬化性樹脂が好適に用いられる。
このような樹脂としては、例えば、アクリレート、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアリレート、ポリアクリル酸エステル、ポリアミド、フェノール− ホルムアルデヒド(フェノール樹脂)、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)、メチルメタクレート・スチレン共重合体(MS樹脂)、ポリ−4−メチルペンテン、ノルボルネン系ポリマー、ポリウレタン、エポキシ、シリコーン等が挙げられる。
中でも、エポキシ、シリコーン、アクリレートが耐熱性、耐光性、硬度の点から好ましい。
【0014】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、水素添加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂等の2官能型のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリス・ヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂等の多官能型のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミニジフェニルメタン型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート型エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂、アニリン型エポキシ樹脂、トルイジン型エポキシ樹脂等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂等が好適に用いられる。
【0015】
エポキシ樹脂の硬化剤としては、重付加型、触媒型、縮合型のいずれのタイプのもので
も使用可能であり、例えば、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、
ポリアミド、ジシアンジアミド、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキ
サヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【0016】
シリコーン樹脂としては、少なくとも下記の(a)〜(c)の成分から構成されることが好ましい。
(a)1分子中のケイ素原子に結合した官能基のうち少なくとも2つがアルケニル基であるオルガノポリシロキサン
(b)1分子中のケイ素原子に結合した官能基のうち少なくとも2つが水素原子であるか、または分子鎖の両端が水素原子で封鎖された直鎖状のオルガノポリシロキサン
(c)ヒドロシリル化反応用触媒
【0017】
(a)成分中のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等が挙げられ、特に、ビニル基が好ましい。
また、このアルケニル基以外のケイ素原子に結合した官能基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等が挙げられ、特に、メチル基が好ましい。
【0018】
(b)成分中の水素原子以外のケイ素原子に結合した官能基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等が挙げられ、特に、メチル基が好ましい。また、(b)成分の含有量は、(a)成分に含まれている合計アルケニル基1モルに対して水素原子が0.1〜10モルの範囲内となる量であることが好ましく、より好ましくは0 .1〜5モルであり、さらに好ましくは0.5〜2モルである。
【0019】
(c)成分のヒドロシリル化反応用触媒は、(a)成分中のアルケニル基と、(b)成分中のケイ素原子に結合した水素原子とのヒドロシリル化反応を促進するための触媒である。この様な触媒としては、例えば、白金系触媒、ロジウム系触媒、パラジウム系触媒等が挙げられ、特に、白金系触媒が好ましい。この白金系触媒としては、白金微粉末、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金カルボニル錯体等が挙げられ、特に、塩化白金酸が好ましい。
【0020】
また、(c)成分の含有量は、シリコーン樹脂の硬化を促進させることのできる量、すなわち(a)成分中のアルケニル基と(b)成分中のケイ素原子に結合した水素原子とのヒドロシリル化反応を促進させることのできる量であればよく、特に限定されることはないが、(a)〜(c)の合計量に対して本成分中の金属原子が重量単位で0.01〜500ppmであることが好ましく、より好ましくは0.01〜50ppmである。金属原子の含有量が0.01ppm未満であると、シリコーン樹脂が十分に硬化しないことがあり、一方、含有量が500ppmを超えると、得られたシリコーン樹脂に着色等の問題が生じる。
【0021】
アクリレート樹脂としては、単官能アクリレートおよび/または多官能アクリレートから構成されるモノマー混合物あるいは共重合体が用いられ、これらのうち1種または2種以上が用いられる。
単官能アクリレート及び多官能アクリレートそれぞれの具体例について次に挙げる。
(a)脂肪族単官能(メタ)アクリレートとしては、
ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;
メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート;
(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のN−置換アクリルアミド等が挙げられる。
【0022】
(b)脂肪族多官能(メタ)アクリレートとしては、
1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1.4−ブタンジオールジ(メタ) アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブタンジオールジ(メタ)アクリレート、等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;
ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート等のトリ(メタ)アクリレート;
ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレート等のテトラ(メタ)アクリレート;
ジペンタエリスリトール(モノヒドロキシ)ペンタアクリレート等のペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0023】
(c)脂環式(メタ)アクリレートのうち、単官能型としては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が、また、多官能型としては、ジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(d)芳香族(メタ)アクリレートのうち、単官能型としては、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート等が、また、多官能型としては、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等のジアクリレート類、ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0024】
(e)ポリウレタン(メタ)アクリレートとしては、ポリウレタンエーテル(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(f)エポキシ(メタ)アクリレートとしては、ビスフェノールA型エポキシアクリレート、ノボラック型エポキシアクリレート等が挙げられる。
【0025】
アクリレート樹脂は、重合開始剤を配合しなくても熱重合させることができる。しかし、短時間に硬化させたい場合や、UV光で硬化させたい場合などには、重合開始剤が必要となる。その場合、重合開始剤としては市販のパーオキサイド類、アゾ化合物類などのラジカル性硬化剤やUV硬化剤などを使用することができる。また、その配合量は、樹脂組成物全量(100重量部)に対して0.1〜 5重量部が好ましく、0.3〜 1重量部がより好ましい。
【0026】
<金属酸化物粒子(2B)>
本発明で用いられる金属酸化物粒子(2B)は、透光性樹脂(2A)の屈折率調整剤として機能する。金属酸化物粒子(2B)は、可視光域において1.8〜2.8の屈折率を有することが望ましい。ここで、金属酸化物粒子(2B)の屈折率とは、金属酸化物粒子を構成する材料のバルクの屈折率を意味する。金属酸化物粒子(2B)の屈折率は、アッベ屈折率計あるいはV ブロック方式の屈折率計を用いて測定することができる。
【0027】
本発明における金属酸化物粒子(2B)としては、具体的には、酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化セリウム(CeO2)、酸化ハフニウム(HfO2)、五酸化ニオブ(Nb2)、五酸化タンタル(Ta2)、酸化インジウム(In2)、酸化スズ(SnO2)、ITO、酸化亜鉛(ZnO)、及び、シリコン(Si)から成る群から選択された少なくとも1種類の材料から成る粒子を例示することが出来る。金属酸化物粒子は、これらの材料の内の1種類から構成されていてもよいし、2種類以上が混合された状態で構成されていてもよい。
【0028】
金属酸化物粒子(2B)の粒径 は、封止層(2)の透明性を維持するため、粒子間に強い凝集がないことが好ましく、その平均1次粒子径は100nm以下が好ましい。平均1次粒子径を100nm以下に規定することで、可視光域において透明な金属酸化物粒子(2B)と透光性樹脂(2A)の 複合樹脂を得ることができる。
本発明の平均1次粒子径とは、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)または走査型電子顕微鏡(SEM)などを用いて実測した50個の粒子直径の平均値である。
【0029】
金属酸化物粒子(2B)は、粉体のものを用いることができる他、予め溶剤に分散した分散液を用いても構わない。中でも、粒子径が200nm以下の分散状態を保つために、分散液を用いることが好ましい。分散方法は、金属酸化物粒子(2B)の表面状態に合わせた分散剤を用い、ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)、ボールミル、サンドミル(シンマルエンタープライゼス社製「ダイノーミル」等)、アトライター、パールミル(アイリッヒ社製「DCPミル」等)、コボールミル、ホモミキサー、ホモジナイザー(エム・テクニック社製「クレアミックス」等)、湿式ジェットミル(ジーナス社製「ジーナスP Y 」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」)、微小ビーズミル(寿工業(株)製「スーパーアペックミル」、「ウルトラアペックミル」)等の分散機が使用できる。分散機にメディアを使う場合には、ガラスビーズ、ジルコニアビーズ、アルミナビーズ、磁性ビーズ、スチレンビーズ等を用いることが好ましい。分散に関しては、2種類以上の分散機、または大きさの異なる2種類以上のメディアをそれぞれ用い、段階的に使用しても差し支えない。
分散の程度としては、動的光散乱法を利用した日機装(株)製「ナノトラックUPA」で測定した場合、分散粒径D99が200nm未満が好ましい。
【0030】
中でも、金属酸化物粒子(2B)としては、酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO2)が好ましく、酸化チタン(TiO2)、酸化ジルコニウム(ZrO2)が、透明性、分散性、耐候性、耐光性等の観点から特に好ましい。
【0031】
透明樹脂(2A)と金属酸化物微粒子(2B)とを含有する組成物は、可視光波長領域おいて、光路長1mmにおける光透過率は80%以上が好ましく、より好ましくは85%以上である。この光透過率は、透明樹脂(2A)における金属酸化物粒子(2B)の含有率により異なる。
【0032】
また、金属酸化物粒子(2B)の屈折率は1.8〜2.5であるから、金属酸化物粒子(2B)を透光性樹脂(2A)中に分散させることにより、透光性樹脂(2A)の屈折率1.4〜1.5程度と比べて、封止層全体の屈折率をそれ以上に向上させることが可能である。
【0033】
<平均粒子径が200nm以上、3μm以下の粒子(2C)>
本発明における平均粒子径が200nm以上、3μm以下の粒子(2C)(以下、散乱粒子(2C)と略する場合がある)は、封止層(2)中で、封止層と空気あるいは封止層と封止層上部に設置された樹脂層との界面において、全反射により導波している光を散乱し、封止層から取り出す効果をもたらす。これにより、金属酸化物粒子(2B)の添加量を抑えることができ、樹脂の硬度を高く保つことが出来る。
本発明における散乱粒子(2C)は、種類は限定されず、有機微粒子であっても、無機微粒子であってもよい。有機微粒子としては、ポリメチルメタクリレートビーズ、アクリル−スチレン共重合体ビーズ、メラミンビーズ、ポリカーボネートビーズ、スチレンビーズ、架橋ポリスチレンビーズ、ポリ塩化ビニルビーズ、ベンゾグアナミン− メラミンホルムアルデヒドビーズ等が用いられる。無機微粒子としては、SiO、ZrO、TiO、Al、In、ZnO、SnO、Sb、等が用いられる。これらは、2種類以上を併用しても良い。
散乱粒子(2C)の平均粒子径は、200nm以上、3μm以下であるが、無機微粒子を用いる場合は、透過率の観点から、200nm 以上、500nm 以下であることが好ましい。
ここで言う平均粒子径と前述の平均1次粒子径との違いは、平均1次粒子径が凝集を加味しない個々の粒子径であるのに対し、平均粒子径とは、凝集による2次粒子の粒子径を加味している点にある。本発明で言う平均粒子径とは、動的光散乱法を利用して測定した分散粒径D50の値であり、例えば日機装(株)製「ナノトラックUPA」で測定することができる。
【0034】
<封止用樹脂組成物>
本発明で用いられる金属酸化物粒子(2B)の使用量は、封止用樹脂組成物中、10〜70重量%であるのが好ましく、10〜50重量%がより好ましい。10重量%未満では十分な屈折率向上ができず、70重量%を超えると、粒子同士が凝集したり、樹脂量が少ないため脆くなったりする。
【0035】
本発明で用いられる散乱粒子(2C)の使用量は、封止用樹脂組成物中、1〜20重量%であるのが好ましく、1〜10重量%部がより好ましい。1重量%未満では十分な散乱効果が現れず、30重量%を超えると粒子同士が凝集する等、安定性を得ることができない。
【0036】
また、本発明では、透光性樹脂(2A)と金属酸化物粒子(2B)とを含有する組成物と、散乱粒子(2C)との屈折率差が0.1以上であることが好ましい。ここでいう透光性樹脂(2A)と金属酸化物粒子(2B)とを含有する組成物は、封止用樹脂組成物に含まれる組成である。即ち、例えば、封止用樹脂組成物における(2A):(2B):(2C)=35:45:20(重量%)の場合、透光性樹脂(2A)と金属酸化物粒子(2B)とを含有する組成物とは、(2A):(2B)=35:45(重量比)で混合した場合の組成物を意味する。
前記屈折率差が0.1以上であると、封止層(2)の中で全反射により導波している光が散乱粒子(2C)の界面で散乱し、光取り出し効率が向上する。屈折率差は大きくなるほど光取り出し効率は向上する。
前記したように、透光性樹脂(2A)と金属酸化物粒子(2B)とを含有する組成物の屈折率は、使用する透光性樹脂(2A)、金属酸化物粒子(2B)とその組成比によって決まる。その値は1.5〜2.0である。また、散乱粒子(2C)の屈折率は、有機粒子の場合、1.5〜1.8であり、無機粒子の場合1.3〜2.5である。よって、透光性樹脂(2A)、金属酸化物粒子(2B)、散乱粒子(2C)を適宜選択することでその屈折率差を0.1以上にすることが可能である。
以下に、屈折率の値を記す。
透光性樹脂(2A)としては、シリコーン樹脂:1.40〜1.51、エポキシ樹脂:1.53〜1.57、アクリレート樹脂:1.49〜1.59、
金属酸化物粒子(2B)としては、酸化チタン(TiO2):2.5、酸化ジルコニウム(ZrO2):2.2、酸化亜鉛(ZnO):1.9、酸化スズ(SnO2):2.0、
散乱粒子(2C)としては、ポリメチルメタクリレートビーズ:1.49、メラミンビーズ:1.65、SiO:1.45、ZrO:2.2、TiO:2.5である。
透光性樹脂(2A)と金属酸化物粒子(2B)とを含有する組成物の屈折率は、アッベ屈折計により実測した値である。
【0037】
<製造方法>
本発明における封止用組成物の製造方法は特に限定されるものではなく、微粒子と樹脂を均一に混合するのに用いられる方法であれば良く、通常用いられる従来公知の方法で何ら構わない。
【0038】
すなわち、具体的には例えば、透光性樹脂(2A)と、金属酸化物粒子(2B)分散液あるいは金属酸化物粒子(2B)粉末と、散乱粒子(C)分散液あるいは散乱粒子(2C)粉末とをそれぞれ独立して作成し、その後に混合させる、あるいは混練する方法、予め作成した金属酸化物粒子(2B)および散乱粒子(2C)が存在する条件で透光性樹脂(2A)を重合する方法、予め作成した透光性樹脂(2A)が存在する条件で金属酸化物粒子(2B)を作成し、散乱粒子(2C)を混合する方法など、いずれの方法も採用できる。
【0039】
分散安定性の観点からは、金属酸化物粒子(2B)分散液と、散乱粒子(2C)と、透光性樹脂(2A)が溶解した溶液とを均一に混合する、あるいは透光性樹脂(2A)モノマー中に金属酸化物粒子(2B)が分散したゾルを重合させ、散乱粒子(2C)を混合し組成物を作成する方法などが好ましく挙げられる。
【0040】
また、本発明の封止用組成物には、紫外線吸収剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、離型剤、可塑剤、分散染料、顔料、色素、染色向上剤等、必要に応じて任意の添加物を添加することも可能である。
【0041】
<発光装置>
本発明の発光装置は、発光ダイオード等の発光素子(1)を、前述の本発明の封止用組成物により封止したものである。この発光装置では、本発明の封止層(2)による封止部分において、光路長を1mm以下とした場合に、可視光線に対して透明性を有することが好ましく、特に、全光線透過率は60%以上であることが好ましい。
【0042】
次に、発光装置の製造方法について説明する。
まず、発光素子(1)をリードフレームの凹部内の所定位置に搭載し、この発光素子の電極とリードフレームとをボンディングワイヤを用いて電気的に接続し、外部端子とする。次いで、この発光素子(1)及びリードフレーム凹部内を封止組成物により封止する。封止方法としては、上述した封止用組成物をリードフレームの凹部内かつ発酵素子を覆う様に塗布し、得られた塗膜を加熱、あるいは紫外線や赤外線等の照射を施し、この塗膜を硬化させ、封止層(2)を形成する。
【0043】
本発明の発光装置は、最外層として使用される場合には、封止層上に紫外線硬化性樹脂を硬化させてなる被覆層をさらに有していてもよい。
【0044】
この発光装置によれば、封止部分を本発明の封止層(2)としたので、発光素子保護材としての硬度、耐久性を有すると同時に、屈折率や散乱等の光学特性により、発光素子(1)と封止層(2)との界面における光損失を抑制することができ、光取り出し効率を向上させることができる。
【実施例】
【0045】
以下に、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお、実施例における「部」は、「重量部」を表す。また、平均粒子径の値は、日機装(株)製「ナノトラックUPA」で測定した値である。
【0046】
(1)金属酸化物粒子(2B)分散液の作製
(製造例1)
平均1次粒子径が15nmの酸化チタン(TiO2)粒子10gに、分散媒としてメチルイソブチルケトン87g、分散剤としてBYK−111(ビックケミー・ジャパン(株)製)4gを加え、前分散(ジルコニアビーズ(1.25mm)をメディアとして用い、ペイントシェイカーで1時間分散)と、本分散(ジルコニアビーズ(0.1mm)をメディアとして用い、寿工業(株)製分散機UAM−015で7時間分散)の2段階の分散処理を行い、酸化チタン透明分散液(T1)を作製した。酸化チタン粒子の平均粒子径は80nmであった。
(2)散乱粒子(2C)分散液の作製
(製造例2)
平均1次粒子径が250nmのジルコニア(ZrO2)粒子10gに、分散媒としてメチルイソブチルケトン87g、分散剤としてBYK−111(ビックケミー・ジャパン(株)製)4gを加え、ジルコニアビーズ(1.25mm)をメディアとして用い、ペイントシェイカーで1時間分散処理を行い、ジルコニア分散液(Z1)を作製した。酸化ジルコニウム粒子の平均粒子径は413nmであった。
(製造例3)
雰囲気下、メタノール58g、水32gの混合溶剤中で、メチルメタクリレート(和光純薬製)4.5g、トリフルオロエチルメタクリレート(和光純薬製)5g、アリルメタクリレート(和光純薬製)0.5gを、2,2’−アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロリド(V−50、和光純薬製)0.025gを用いて60℃で重合後、生成物をろ過し、アクリル粒子を得た。得られたアクリル粒子10gに、分散媒としてメチルイソブチルケトン90gを加え、ジルコニアビーズ(1.25mm)をメディアとして用い、ペイントシェイカーで1時間分散処理を行い、アクリル粒子分散液(A1)を得た。アクリル粒子の平均粒子径は420nmであった。
【0047】
(3)封止用樹脂組成物の作製
(実施例1)
製造例1の酸化チタン透明分散液(T1)80gと製造例2のジルコニア分散液(Z1)14gの混合液に、メチルビニルシリコーン(ビニル基の平均含有量:3mol%)9g、およびメチルハイドロジェンシリコーン(ビニル基の平均含有量:30mol%)1gを加え、さらに塩化白金酸をシリコーン100重量部に対して20ppmとなるように加え、真空乾燥により脱溶剤化し、封止用樹脂組成物を作製した。この封止用樹脂組成物の重量比は、シリコーン樹脂:酸化チタン:ジルコニア=52:41:7であった。
【0048】
(実施例2)
製造例1の酸化チタン透明分散液50gと製造例3のアクリル分散液(A1)15gの混合液に、エポキシレジン: エピコート828を7gおよび硬化剤としてエピキュア3080を3g(いずれもジャパンエポキシレジン(株)社製)を加え、真空乾燥により脱溶剤化し、封止用樹脂組成物を作製した。この封止用樹脂組成物の重量比は、エポキシ樹脂:酸化チタン:アクリル粒子=61:30:9であった。
【0049】
(比較例1)
トルエン10gにメチルビニルシリコーン(ビニル基の平均含有量:3mol%)9g、およびメチルハイドロジェンシリコーン(ビニル基の平均含有量:30mol%)1gを加え、さらに塩化白金酸をシリコーン100重量部に対して20ppmとなるように加え、真空乾燥により脱溶剤化し、封止用樹脂組成物を作製した。
【0050】
(比較例2)
製造例3のアクリル粒子分散液(A1)10gの混合液に、エポキシレジン: エピコート828を7gおよび硬化剤としてエピキュア3080を3g(いずれもジャパンエポキシレジン(株)社製)を加え、真空乾燥により脱溶剤化し、封止用樹脂組成物を作製した。この封止用樹脂組成物のアクリル粒子の含有率は9重量%であった。
【0051】
(比較例3)
製造例1の酸化チタン透明分散液(T1)100gに、メチルビニルシリコーン(ビニル基の平均含有量:3mol%)9g、およびメチルハイドロジェンシリコーン(ビニル基の平均含有量:30mol%)1gを加え、さらに塩化白金酸をシリコーン100重量部に対して20ppmとなるように加え、真空乾燥により脱溶剤化し、封止用樹脂組成物を作製した。 この封止用樹脂組成物の酸化チタンの含有率は50重量%であった。
【0052】
(比較例4)
製造例1の酸化チタン透明分散液(T1)400gに、メチルビニルシリコーン(ビニル基の平均含有量:3mol%)9g、およびメチルハイドロジェンシリコーン(ビニル基の平均含有量:30mol%)1gを加え、さらに塩化白金酸をシリコーン100重量部に対して20ppmとなるように加え、真空乾燥により脱溶剤化し、封止用樹脂組成物を作製した。この封止用樹脂組成物の酸化チタンの含有率は80重量%であった
【0053】
(4)評価
得られた封止用組成物は下記の装置または方法により評価を行った。
(封止用樹脂組成物の評価)
封止用樹脂組成物をガラス板で組み上げた型の中に厚みが1mmになるように流し込み、次いで、150℃にて2時間加熱して硬化させ、透明樹脂層を作製した。作製した透明樹脂層を用いて、下記3点(可視光透過率、屈折率、硬度)について測定を行った。
・可視光透過率
分光光度計(日本分光社製)を用いて可視光線の透過率を測定した。ここでは、測定用試料を100×100×1mmの大きさのバルク体とし、透過率が80%以上を「○」、80%未満を「×」とした。
・屈折率
日本工業規格:JISK7142「プラスチックの屈折率測定方法」に準拠し、アッベ屈折計により測定した。ここでは、屈折率が1.5以上のものを「○」、屈折率が1.5未満のものを「×」とした。
・硬度
日本工業規格:JISK7215「プラスチックのデュロメータ硬さ試験方法」に準拠し、デュロメータを用いてJIS−A硬度を測定した。ここでは、酸化チタン透明分散液(T1)を用いた比較例3の樹脂組成物を用いて作製された、酸化チタンの含有率が50重量% である透明樹脂層の硬さを基準とし、この基準値より高い場合を「○」、この基準値より低い場合を「×」とした。
(発光装置の評価)
実施例及び比較例の封止用組成物を用いて発光素子およびリードフレームを封止し、この封止用組成物を硬化させ、発光装置を作製した。得られた発光装置ついて、室温において順方向電流を20mA通電した際の正面輝度を測定した。ここでは、酸化チタン粒子を含有しない樹脂のみで封止した比較例1の正面輝度を基準とし、正面輝度の向上率が10 %以上の場合を「○」、10%未満の場合を「×」とした。
【0054】
評価結果を表1に示す。
【0055】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光を発光する発光素子(1)と、前記発光素子を封止してなる封止層(2)とを具備する発光装置であって、
前記封止層(2)が、透光性樹脂(2A)、平均1次粒子径が100nm以下の金属酸化物粒子(2B)及び平均粒子径が200nm以上、3μm以下の粒子(2C)を含有する封止用樹脂組成物から形成される封止層である、発光装置。
【請求項2】
金属酸化物粒子(2B)が、ZrO2、TiO2の中から選択される、少なくとも1種の金属酸化物粒子であることを特徴とする請求項1記載の発光装置。
【請求項3】
封止用樹脂組成物に含まれる組成にて、透光性樹脂(2A)と金属酸化物粒子(2B)とを含有する組成物と、粒子(2C)との屈折率差が0.1以上であることを特徴とする請求項1または2記載の発光装置。
【請求項4】
透光性樹脂(2A)が、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂及びアクリレート樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発光装置。

【公開番号】特開2013−105946(P2013−105946A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249764(P2011−249764)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】