説明

発射通路を備えたエアバッグカバーおよびエアバッグカバーを製造する方法並びに装置

【課題】発射通路がエアバッグカバーの前面側から見えないように該発射通路がエアバッグカバーの背面に固定されている、発射通路を備えたエアバッグカバーを提供する。
【解決手段】フランジ(3)の自由端面に、互いに間隔をもって配置される複数個の溶接用スタッド(4)が形成されている。溶接用スタッド(4)は、形成されたナゲットを介して、エアバッグカバー(1)の当接領域とともに溶接結合部を形成している。複数個の溶接用スタッド(4)は、1つの溶接用スタッド(4)の各部位におけるフランジ(3)の公差誤差に相当する高度差を互いに有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発射通路を備えたエアバッグカバーであって、発射通路が管部材であり、該管部材の一端にフランジが形成され、フランジが管部材の外周面から外側へ著しく突出しており、フランジの自由端面が溶接結合部を介してエアバッグカバーと結合され、両溶接パートナーのうち一方が溶接用のレーザー光線に対し透過性があり、他方が吸収性がある前記エアバッグカバーに関するものである。
さらに本発明は、この種のエアバッグカバーを製造する方法並びに装置にも関わる。
【背景技術】
【0002】
助手席用エアバッグのエアバッグカバーは、通常は自動車のインストルメントパネル全体を成している。助手席用エアバッグのエアバッグカバーは、助手席領域においてインストルメントパネルの後方に配置されるエアバッグ装置を隠蔽する機能以外に、操作要素および表示装置を支持するという機能を有している。インストルメントパネルは通常薄壁の広面積の形状であるために、曲げやねじれに強くない。また、車体と組み立てることによってはじめてその最終的な形状安定性を得る。インストルメントパネルは複数の部分から構成して実施されることもある。以下でエアバッグカバーという概念を使用する場合、これはインストルメントパネル全体、或いは、エアバッグ装置を後方に配置したインストルメントパネルの一部分を意味するものとする。
【0003】
発射通路は、衝突時に膨出するエアバッグをインストルメントパネルの所定部位に押圧させるものであるが、この発射通路をインストルメントパネルの背面に取り付けると、それによって生じる結合部がインストルメントパネルの正面側から見えないようにすべきとの問題が生じる。
【0004】
発射通路は曲げとねじれに対して非常に耐性がある部材であり、最も簡単なケースでは、通常は長方形の横断面を持った管部材であり、典型的には周回するように延在する縁を有している。その機能を適正にするには、発射通路を、所定箇所で、エアバッグカバーに設けられた事前設定破断線を取り囲むように、インストルメントパネルと確実に耐久性を持って結合させねばならない。
【0005】
通常は、発射通路は大量生産で射出成形法で製造される。射出成形部品には一般に比較的大きな形状誤差および寸法誤差がある。発射通路の機能にとってこのような誤差は問題ないが、しかしながらインストルメントパネルに発射通路を取り付けるのを困難にさせる。というのは、取り付け面の形状誤差がインストルメントパネルの形状誤差にならないようしなければならないからである。
【0006】
特許文献1からは、上縁を備えた鍋状のハウジングを有し、上縁の上に実質的に平坦なカバーをその下面でもって載置するようにしたエアバッグモジュールが知られている。カバーは事前設定破断線を有し、事前設定破断線は展開して膨出するエアバッグによって開き、エアバッグを乗員の方向へハウジングから放出させる。
【0007】
カバーをハウジングと結合させるため、カバーの下面およびハウジングの上縁において互いに当接しあっている面は互いに接着または溶接されている。
【0008】
ここに設けられている構成は、ハウジングの歪によって生じる縁位置とその基準位置とのずれが直接カバーの変形に影響し、これだけでも美観的な理由から望ましくないことが予想される。
【0009】
特許文献2には、本発明と同様の問題提議がある。すなわち、インストルメントパネル(カバー)と発射通路との間に発生する結合部がカバーを見る側から目立たないように、インストルメントパネルと発射通路とを結合させねばならないという問題である。この問題は、特許文献2によれば、インストルメントパネルと発射通路とで要求される材料特性が異なっているために、異なる材料を使用したことによるとされる。この問題の解決手段として、発射通路とヒンジとインストルメントパネルとを、共通のポリマーをベースにし、しかし可撓性が異なっている熱可塑性プラスチックから構成し、互いに溶接によって結合させる。適用可能な溶接法として、超音波溶接、摩擦溶接、振動溶接、レーザー溶接が挙げられている。これに関連して、ヒンジとインストルメントパネルとの結合部およびヒンジと発射通路との結合部のような広面積の溶接部は、複数個の溶接面のうちの1つが面配分された多数の溶接用細条部または溶接用スタッドを有していれば、最適化できることが指摘されている。これらの溶接用細条部または溶接用スタッドは、溶接面の面積を溶接技術的に制御可能な寸法へ減少させるとともに、その際に全面結合を可能にさせる。
【0010】
発射通路に関しては、補強リブで機械的に補強されている高強度で剛性のある部材が開示されている。
【0011】
前記特許文献1から公知のエアバッグモジュールと同様に、特許文献2においても、発射通路とインストルメントパネルとを互いに溶接させる時に、発射通路の歪がインストルメントパネルへ影響しないようにするための手段が認められない。
【0012】
特許文献3には、複数個のシェルから成る、エアバッグハウジング用のカバー装置が開示されている。このカバー装置は、内部および外部から作用する力を吸収するのに適しているとされる。1個のシェルから成るカバー装置は、可撓性があって簡単に変形するので、この要求にそぐわない。特許文献3では、内側カバーと外側カバーとを溶接ドームおよび溶接リブを介して互いに溶接させることが提案されている。溶接ドームと溶接リブは、内側カバーと外側カバーとの間隔を橋絡させて、これらの部材が互いに直接当接しあうのではなく、その中間にはめ込まれた少なくとも1つのカバーを介して、有利には同様に中間にはめ込まれた補強要素を介して互いに当接するように構成するために用いられる。
【0013】
したがって、ここでは、溶接ドームと溶接リブとの間にある部材によって決められる間隔を橋絡するため、溶接パートナーは通常の構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】独国実用新案登録第20220612U1号
【特許文献2】欧州特許発明第1062128B1号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第10318962A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
発射通路がエアバッグカバーの前面側から見えないように該発射通路がエアバッグカバーの背面に固定されている、発射通路を備えたエアバッグカバーを提供することである。
さらに、本発明は、発射通路と溶接されるエアバッグカバーの製造方法およびこのために適した装置をも課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題は、請求項1に記載の発射通路を備えたエアバッグカバー、請求項12に記載の方法、請求項5に記載の装置によって解決される。
【0017】
技術水準においてはエアバッグカバーまたはその担持層と発射通路とにとって有利なものであった2つのプラスチック部材間の継続的な結合部として、基本的に適した技術としての溶接方法が提供される。溶接工程中の溶接パートナーへのダイナミックな負荷(エアバッグカバー内に事前破断線が組み込まれているので必要である)を避けたい場合には、摩擦溶接、振動溶接および超音波溶接はあまり適していないものとして排除せざるをえない。残るはレーザー溶接である。
【0018】
2つのプラスチック部材をレーザー溶接によって結合させる場合、溶接に使用されるレーザー光線に対し、少なくとも溶接領域において溶接パートナーの一方が透過性があり、他方が吸収性があれば前記結合が可能であることは当業者にとって公知である。レーザー光線は透過性の溶接パートナーに対し指向せしめられ、これを貫通して吸収性の溶接パートナーに当たり、これを加熱させる。発生する熱は、透過性の溶接パートナーとの面接触を介して該透過性の結合パートナーに導入され、その結果最終的に両溶接パートナーは接触領域(溶接ゾーン)において溶融して共通の溶融物を形成する。
【0019】
本発明による発射通路を備えたエアバッグカバーをレーザー溶接によって製造するため、発射通路には、周全体にわたって突出し、周回するように延在するフランジが形成される。少なくともこのフランジの領域において発射通路の材料は透過性があり、他方エアバッグカバーは少なくともその背面においてレーザー光線に対し吸収性があり、或いは、発射通路の材料は少なくともフランジの領域において吸収性があり、他方エアバッグカバーは透過性がある。
【0020】
本発明にとって重要なことは、フランジのエアバッグカバー側の表面、すなわちフランジの自由端面に、互いに間隔をもって配置される溶接用スタッド(Schweissnoppe)が形成され、溶接用スタッドは、その形状およびサイズにおいて、該溶接用スタッドにそれぞれ投影されるレーザー光束の放射横断面に整合しており、且つフランジの形状誤差および位置誤差の公差幅よりも大きな高さを有していることである。
【0021】
発射通路が正確に作製されていればいるほど、すなわち公差幅が小さければ小さいほど、溶接用スタッドの高さをそれだけ低く選定でき、且つその他のプロセスパラメータが同じであれば、それだけ溶接時間が短くなる。
【0022】
もちろん、高さゼロの溶接用スタッドを用いて、すなわちいわば溶接用スタッドを用いずに溶接を行なうこともできる、しかしながら100%突起のない溶接結合部は生じず、よってこれは本発明の課題を解決するものではない。
【0023】
有利には、透過性の材料は半透明であり、すなわち透過するレーザー光線を材料内部で、少なくともその射出面において散乱させる。したがって、両溶接パートナーの間に隙間が設けられていれば、吸収性材料に当たる光線のエネルギー密度はより小さく、よって吸収性溶接パートナーの局所的な過熱が避けられる。
【0024】
本発明による方法にとって重要なことは、発射通路のフランジに設けられている溶接用スタッドと同数のレーザー光束が形成され、レーザー光束のそれぞれが1つの溶接用スタッドを通過することである。
【0025】
この場合、レーザー光束はそれぞれレーザー光線源によって形成され、或いは、1つのレーザー光線源から放出される光線をビームスプリッティングすることによって発生する。レーザー光線源の数量は、レーザー光線源のレーザーパワーを同一にして溶接用スタッドを同じ放射エネルギーで付勢するため、有利には、溶接用スタッドの数量の整数分の位置に相当している。
【0026】
発射通路とエアバッグカバーとは個々の溶接用スタッドを介して同時に溶接される。ナゲットから溶接結合部が生じる。これらのナゲットの大きさは異なっていてもよい。
【0027】
複数個の溶接用スタッドをそれぞれ1つのレーザー光束で照射してもよいが、これだと溶接用スタッドと接触していないエアバッグカバーの領域も付勢されるので、放射エネルギーの大部分が溶接に提供されるとは限らない。このような実施態様は本発明の思想を利用するものであるが、むしろ実施態様を悪化させる。
【0028】
方法の開始時には、いくなくとも1つの溶接用スタッドはエアバッグカバーと面接触しているが、他の溶接用スタッドはエアバッグカバーに対し間隔をもっていてよい。この間隔は最大で公差幅に相当している。方法を実施している間は、発射通路は結合距離(最大公差幅よりも大きい)の分だけエアバッグカバーのほうへ移動せしめられ、その結果結合距離の終端部ですべての溶接用スタッドが溶け始めてエアバッグカバーに当接する。
【0029】
溶接用スタッドの形状およびサイズをこれに当たるレーザー光線の横断面に適合させることにより、レーザーエネルギーは最適に溶接パートナーにカップリングされる。すなわち1つのレーザー光束の放射エネルギーの全部がそれぞれの溶接用スタッドの横断面全体にわたって該溶接用スタッド内に配分されてカップリングされる。
【0030】
溶接用スタッド間の間隔は、少なくとも、補強リブがフランジのエアバッグカバーとは逆の側から間隔領域に通じてレーザー光束を遮蔽しないような大きさに選定されている。
【0031】
前記間隔は、発生する溶融物が前記間隔領域へ待避することができるような大きさに選定されていてもよい。
【0032】
最大間隔は、溶接用スタッドの最小数量によって決定されている。溶接用スタッドの最小数量は、発生するナゲットの数量を決定するものであり、よってナゲットのサイズばかりでなく、結合部の強度を決定するものである。
【0033】
次に、本発明による装置の主要な特徴を、実施形態を説明することで明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1a】エアバッグカバーと発射通路との基本構成概略図である。
【図1b】発射通路を備えたエアバッグカバーの基本構成概略図である。
【図2a】発射通路の第1実施形態を示す図である。
【図2b】発射通路の第2実施形態を示す図である。
【図3】発射通路と押圧体とを備えたエアバッグカバーを示す図である。
【図4】装置の第1実施形態を示す図である。
【図5】装置の第2実施形態を示す図である。
【図6】図5の装置の部分図である。
【図7】図5の装置を加工キャビン内に組み込んだ図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1aと図1bは、エアバッグカバー1と発射通路2とを、本発明による方法の主要ステップである溶接工程の出発位置(図1a)と最終位置(図1b)とで図示したものである。
【0036】
特に発射通路2のサイズおよびその歪(すなわちその公差)は、問題点をわかりやすく示すため、たとえば図2aから見て取れるような実際の比率とは異なるように図示してある。
【0037】
本発明によれば、基本的には、発射通路2は管部材であり、その一端には溶接用スタッド4を備えたフランジ3が形成されている。このフランジ3は、エアバッグが管開口部を通って膨張するのを阻止するため、発射通路2である管部材の内側周面に終端を有している。フランジ3は発射通路2である管部材の外側周面から外側へ著しく突出している。フランジ3のこの突出縁領域を介して、フランジ3の自由な端面上に溶接用スタッド4が形成されている。外周に形成されている補強リブ5は、それぞれ、フランジ3の反対側の端面上に溶接用スタッド4が設けられていないような領域でフランジ3に通じている。
【0038】
図2aと図2bに図示した発射通路2の2つの実施態様は、長方形の溶接用スタッド4を示しており、その横断面は、レーザー放射源としてレーザーダイオード12を使用する場合に有利である。レーザーダイオードは、互いに垂直な2つの軸線方向(低速軸と高速軸)に異なる角度で放射し、その結果レーザー光線は発散光学系を介して単にその大きさの点で溶接用スタッド4の横断面に対して適合させればよい。溶接用スタッド4の長方形の横断面が円形の横断面(溶接用スタッド4にとってはこれも重要である)に比べて有利なのは、縁領域の幅が同じであれば、より大きな溶接面積が得られることである。
【0039】
発射通路2は有利には射出成形法で製造されるので、発射通路2は通常は一種類の材料から製造されている。この材料を溶接用のレーザー光線が透過する。有利には、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリアミド(PA)のような半晶質のプラスチックを使用するのがよい。これらの材料は、その容積部内部およびその射出面において光線を散乱させ、より正確には、半透明の材料、透明な材料の亜族と呼ばれるものである。
【0040】
高さおよび間隔の選定は、エアバッグカバー1のフランジ3の歪に関する許容公差に依存して行なわれる。
【0041】
フランジ3の許容歪(許容幅)が±aだとすると、たとえば±0.3mmだとすると、フランジ3の自由端面上の点は、基準表面(図1aでは0で示されている)に対する鉛直線6の方向へ±0.3mmだけ変位し、或いは、0.6mmの公差量2a分だけ変位する。この最大変位を補償するため、溶接用スタッド4の高さはこの公差量2aよりも大きい。溶接用スタッド4相互の間隔は、この領域が発生した溶融物を受容できるような大きさに選定されている。
【0042】
溶接後、本来同じ高さであった溶接用スタッド4の高さhは相互に異なり、より厳密には、1つの溶接用スタッド4の各部位におけるフランジ3の公差の差に相当する差だけ高さが異なっている。
【0043】
溶接用スタッド2の第2実施形態を図2bに示す。この第2実施形態が第1実施形態と異なっているのは、付加的な2つのバッフルプレートまたは捕獲フラップが設けられている点である。これらのバッフルプレートはそれぞれ2つのヒンジを介して前記管部材と結合され、その表面に形成された溶接リブを有している。これらのばっぷるプレートは、フランジ3に比較して、押圧力が作用する方向において非常にわずかな曲げ剛性しか有しておらず、それ故これらのバッフルプレートは溶接時に公差を補償するような部材ではない。
【0044】
レーザー光線の伝播性または吸収性に関する両溶接パートナーに対する材料特性は、逆であってもよい。
【0045】
本発明による装置の第1実施形態の主要な構成が図4に図示されている。
【0046】
本発明による装置は、水平方向に指向する基板7を有している。基板7は、図4には図示していないエアバッグカバー1のための受容装置8(同様に図4には図示せず)に対する相対位置において、エアバッグカバー1の上方に配置される。
【0047】
基板7には繰り抜き部9が設けられている。この繰り抜き部9を通じて、図3に図示した押圧体10が駆動部13により基板7に対し垂直な方向でのみ出没可能である。
【0048】
押圧体10は、一方では、発射通路2にロック要素またはクランプ要素を設けることで該発射通路2を所定どおりに受容して、発射通路2を所定位置で押圧体10に固定させるために用いる。他方、この所定位置で、発射通路2が、少なくとも、該発射通路である管部材の端面11上に均等に作用する4つの押圧面に当接して、押圧体10が出発位置から終端位置へ沈降する際に、溶接用スタッド4に均等に配分される押圧力を発射通路2に作用させる。押圧面とロック面またはクランプ面とは、掛止された発射通路2の縁領域を鉛直方向から見たときに発射通路2を遮蔽しないように形成されている。
【0049】
同様に、基板7に対し有利には調整可能であるが、しかし方法を実施している間は基板7に対し固定されている位置には、押圧体10の運動範囲の周囲に、発散光学系を備えた多数のレーザーダイオード12が配置されている。これらのレーザーダイオード12の数量と配置構成は、発射通路2に設けた溶接用スタッド4の数量と配置構成に対応している。発散光学系を備えているそれぞれのレーザーダイオード12は、そのレーザー光束が溶接用スタッド4の横断面に対応する横断面でもって溶接用スタッド4に衝突するように、各溶接用スタッド4に対し指向されている。
【0050】
押圧体10およびレーザーダイオード12を制御するため、同様に基板7に対し固定した位置関係にある少なくとも1つの距離センサ(図示せず)の信号を使用する。
【0051】
上記の本発明による構成部材のほかに、押圧体10用の駆動部13、前記少なくとも1つの距離センサ、レーザーダイオード12と信号技術的に接続される演算・記憶ユニットおよび制御ユニットが設けられていることは、当業者にとって明らかである。
【0052】
図5に図示した本発明による装置の第2実施形態が、レーザーダイオード12が基板7の下方に位置決めされている第1実施形態と異なるのは、レーザーダイオード12が基板7の上方に配置されていることである。これには、基板7を装置のための機械的ベースとして用いるばかりでなく、レーザーダイオード12の上流側に接続された発散光学系を溶接工程による汚染から保護するシールドとしても用いることができる点にある。このためには、基板7は、その機械的課題を満たすために高い曲げ剛性を有していなければならないが、そればかりでなく、レーザー光線に対し透過性があり、且つできるだけ光学的に不作用でなければならない。
【0053】
第1実施形態に対する第2実施形態の他の特徴は、図6に詳細に図示したようにリニアドライブ14を有していることである。リニアドライブ14により発射通路2を介してレーザーダイオード12の選定を行なうことができ、発射通路2の第2実施形態における溶接リブに光線を作用させることができるようになっている。バッフルプレートの溶接リブの溶接は同時溶接とは異なり、輪郭溶接である。万が一バッフルプレートが変形しても、バッフルプレートの曲げ剛性が小さいために、この変形がエアバッグカバー1へ伝えられる恐れはない。
【0054】
装置の第3実施形態では、プロセスコントロールを行なうため、それぞれ1つの溶接用スタッドに付設され、且つ制御・演算ユニットに接続される熱センサ、特にパイロメータが設けられる。
【0055】
有利には、図7に図示したように、装置を2つの加工位置へ走行可能な加工キャビンに組み込むのがよい。両加工位置はそれぞれ受容装置8の上方にあり、両受容装置の相違は、一方の受容装置が左ハンドルの車両のエアバッグカバー1を受容するために構成されているのに対し、他方の受容装置が右ハンドルの車両のエアバッグカバー1を受容するために構成されている点にある。2つの装置を配置するものに比べて特に経済的な利点がある。
【0056】
加工キャビンに発射通路2とエアバッグカバー1を備えさせるため、および、溶接を完了したエアバッグカバーを発射通路とともに取り出すため、ここには図示していない隔壁を開口させて、加工キャビンの内部空間にアクセスできるようにする。装置は部品の迅速な操作を可能にする。
【0057】
発射通路2を押圧体10に連結させることにより、発射通路2は受容装置8に対し所定の相対位置に位置決めされ、よって受容装置8に挿入されているエアバッグカバー1に対し所定の相対位置に位置決めされる。追加的に相互の方向を調整する必要がない。溶接結合部を仕上げて、押圧体10を持ち上げた後、エアバッグカバー1を発射通路2とともに押圧体10に吊り下げ、これから取り外すことができる。
【0058】
本発明による方法は、上記実施形態の説明で発射通路を備えたエアバッグカバーに対し説明したように、発射通路2の製造または可用性を含むものであるが、ただし発射通路2を本発明にしたがってエアバッグカバー1と溶接することを前提としている。
【0059】
発射通路2を押圧体10に固定し、エアバッグカバー1を受容装置8内に挿入するようにして、溶接すべき両部材、すなわちエアバッグカバー1と発射通路2を互いに位置決めさせる。押圧体10を、制御装置により制御される駆動部13を用いて沈下させ、発射通路2をエアバッグカバー1に当接させて、その出発位置へもたらす。
【0060】
少なくとも1つの距離センサを介して、発射通路2に対する固定点とエアバッグカバー1の表面との距離を検出し、これを出発位置に割り当てる。複数個の距離センサを設ける場合には、複数の距離値から距離平均値を算出して記憶させる。
【0061】
現在の距離または距離平均値と、出発位置に対し記憶されている距離または距離平均値とから、その差を形成させ、所定の組み立て距離に対し記憶されている値と比較させる。差が組み立て距離の値よりも大きければ、レーザーダイオード2の通電を遮断させる。発射通路2はエアバッグカバー1に対する終端位置にある。
【0062】
レーザーダイオード12の通電を遮断する基準として、所定の固定時間を使用してもよい。この場合は、この時間内に達成される組み立て距離が評価される。
【0063】
組み立て距離は発射通路2に対する許容部品公差によって設定されており、より正確に言えば、組み立て距離は発射通路2のフランジ3の歪に対する許容量2aよりも大きい。
【0064】
組み立て距離を設定することにより、個々の溶接用スタッドをエアバッグカバー1と溶接させ、溶接と同時に、個々のナゲットによって形成される安定した、応力残留のない溶接結合部が生じる。
【0065】
溶接工程の間に、個々の溶接用スタッド4の温度を検出するのが有利である。
【0066】
溶接用スタッド4をエアバッグカバー1と接触させなければ、すなわち熱伝導によって溶接用スタッド4が加熱されなければ、溶接用スタッド4の温度はエアバッグカバー1からの熱放射によってさほど上昇しない。接触させると、急激に温度上昇することがあり、この場合には溶接用スタッド4がその自由端から溶融し始めることになる。
【0067】
温度監視はプロセス管理に対し、或いはプロセス制御に対しても有利に活用することができる。
【0068】
プロセス管理に対しては、測定した最終値を使用して、溶接用スタッドがほとんど溶融したかどうかを確認することができる。
【0069】
溶接時間にわたって検出した温度経過を記憶させ、溶接を終了した一連のエアバッグカバー1に関する温度経過を比較することにより、プロセスパラメータの安定性を確保するようにしてもよい。これは再現可能な溶接品質を保証する。
【0070】
プロセス制御に対しては、検出した温度経過を継続的に閾値と比較させ、すべてのレーザーダイオード12または個々のレーザーダイオード12のパワーを制御することができる。これにより局部的な過熱を避けることができる。
【0071】
以上述べた装置実施形態によれば、レーザー光束は発射通路2に形成されたフランジ3の縁領域へ指向せしめられ、その結果それぞれのレーザー光束はそこに形成された溶接用スタッドによって案内されてエアバッグカバー1へ衝突する。このためにはレーザー光線に対し少なくとも前記縁領域が透過性を有し、エアバッグカバー1が吸収性を有していなければならない。
【0072】
逆の材料特性であると、本発明による装置は好適なものではないが、しかしながら本発明による方法は基本的には実施可能であり、発射通路を備えた同等の本発明によるエアバッグカバーを製造可能である。
【符号の説明】
【0073】
1 エアバッグカバー
2 発射通路
3 フランジ
4 溶接用スタッド
5 補強リブ
6 蝋材
7 基板
8 受容装置
9 繰り抜き部
10 押圧体
11 管部材の端面
12 レーザーダイオード
13 押圧体用駆動部
14 リニアドライブ
h 溶接用スタッドの高さ
±a 公差幅
2a 公差量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発射通路を備えたエアバッグカバーであって、発射通路(2)が管部材であり、該管部材の一端にフランジ(3)が形成され、フランジ(3)が管部材の外周面から外側へ著しく突出しており、フランジ(3)の自由端面が溶接結合部を介してエアバッグカバー(1)と結合され、両溶接パートナーのうち一方が溶接用のレーザー光線に対し透過性があり、他方が吸収性がある前記エアバッグカバーにおいて、
フランジ(3)の前記自由端面に、互いに間隔をもって配置される複数個の溶接用スタッド(4)が形成され、溶接用スタッド(4)が、形成されたナゲットを介して、エアバッグカバー(1)の当接領域とともに溶接結合部を形成し、複数個の溶接用スタッド(4)は、1つの溶接用スタッド(4)の各部位におけるフランジ(3)の公差誤差に相当する高度差を互いに有していることを特徴とするエアバッグカバー。
【請求項2】
溶接用スタッド(4)が長方形の横断面を有していることを特徴とする、請求項1に記載のエアバッグカバー。
【請求項3】
発射通路(2)の材料が半透明であることを特徴とする、請求項1または2に記載のエアバッグカバー。
【請求項4】
発射通路(2)の材料が半晶質のプラスチックであることを特徴とする、請求項3に記載のエアバッグカバー。
【請求項5】
エアバッグカバー(1)を、溶接用スタッド(4)を備えた発射通路(2)と溶接するための装置において、
エアバッグカバー(1)を受容する受容装置(8)に対し所定の相対位置でエアバッグカバー(1)の上方に位置固定して配置されている、水平方向に指向する基板(7)と、
基板(7)に設けられている繰り抜き部(9)であって、該繰り抜き部(9)を通って、発射通路(2)を受容し且つエアバッグ装置に対し押圧させるための押圧体(10)が駆動部(13)により鉛直方向に可動である前記繰り抜き部(9)と、
押圧体(10)の移動範囲の周囲に基板(7)に対し位置固定して配置されている複数個のレーザー光線源と、
を備えた装置。
【請求項6】
複数個のレーザー光線源の数量が溶接用スタッド(4)の数量に対応していることを特徴とする、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
複数個のレーザー光線源の数量が溶接用スタッド(4)の数量の整数分の一に対応し、レーザー光線源の上流側にビームスプリッターが配置されていることを特徴とする、請求項5に記載の装置。
【請求項8】
複数個のレーザー光線源が、上流側に発散光学系を備えたレーザーダイオード(12)であることを特徴とする、請求項5に記載の装置。
【請求項9】
複数個のレーザー光線源が基板(7)の上方に配置され、基板(7)の材料がレーザー光線に対し透過性があり、それによってレーザー光線源が溶接時の汚染から保護されていることを特徴とする、請求項5から7までのいずれか一つに記載の装置。
【請求項10】
少なくとも1つの距離センサが設けられていることを特徴とする、請求項5から9までのいずれか一つに記載の装置。
【請求項11】
溶接用スタッド(4)と同数で熱センサが設けられていることを特徴とする、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
発射通路を備えたエアバッグカバーを製造する方法であって、
レーザー光線に対し透過性があるプラスチックから成るフランジ(3)を一端に形成させた管部材から成る発射通路(2)を形成するステップと、
発射通路(2)とエアバッグカバー(1)とを組み立て、その結果フランジ(3)の自由端面を所定の姿勢および位置でエアバッグカバー(1)と当接させ、その際エアバッグカバー(1)が少なくとも当接領域においてレーザー吸収材から成っているステップと、
レーザー光線をフランジ(3)に対し指向させ、フランジ(3)をエアバッグカバー(1)と溶接させるステップと、
を含む方法において、
発射通路(2)をフランジ(3)の自由側に形成させる際に、フランジ(3)の許容公差誤差よりも大きな高さ(h)を持つ溶接用スタッド(4)を形成させ、
レーザー光線が、溶接用スタッド(4)と同数に形成されるレーザー光束であること、
レーザー光束の横断面と溶接用スタッド(4)の横断面とを互いに整合させること、
レーザー光線をフランジ(3)に対し指向させている間に、前記許容誤差よりも大きく且つ前記高さ(h)よりも小さな値の組み立て距離にわたって発射通路(2)をエアバッグカバー(1)へ向けて移動させること、
を特徴とする方法。
【請求項13】
エアバッグカバー(1)に対するフランジ(3)の移動を、フランジ(3)とエアバッグカバー(1)との距離を検知することで制御することを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
個々の溶接用スタッド(4)の温度を少なくとも溶接終了時に検出し、この検出値から、個々の溶接用スタッド(4)がエアバッグカバー(1)と溶接されたかどうかを判断することを特徴とする、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
溶接用スタッド(4)の温度経過を溶接の継続時間にわたって検出し、レーザー光束を放出しているレーザー光線源のレーザーパワーを制御することを特徴とする、請求項12または13に記載の方法。
【請求項16】
溶接用スタッド(4)の温度経過を溶接の継続時間にわたって検出して記憶させ、発射通路とともに形成した一連のエアバッグカバーに対し記憶されている温度経過を互いに比較し、それによってプロセスパラメータおよび再現可能な溶接品質に対する情報を得ることを特徴とする、請求項12または13に記載の方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−64741(P2010−64741A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211647(P2009−211647)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(502122347)イェーノプティク アウトマティジールングステヒニーク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (29)
【Fターム(参考)】