説明

発振装置および電子機器

【課題】高音質で小型な発振装置を提供する。
【解決手段】圧電素子10を拘束する弾性部材20が低剛性な振動部材30を介して支持フレーム45に接合されている。しかも、電気音響変換器50の基本共振周波数は、電気音響変換器50を実装する本体ハウジングの共振周波数を干渉しないように調整されている。このため、音響特性の山谷が少なく、広帯域で大音量を再生することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子を備えた発振装置、この発振装置を有する電子機器、に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機やノート型コンピュータなどの携帯型の電子機器の需要が拡大している。このような電子機器では、テレビ電話や動画再生、ハンズフリー電話などの音響機能を商品価値とした薄型の携帯端末の開発が進められている。このような開発の中、発振装置である電気音響変換器(スピーカ装置)に対して、高音質でかつ小型・薄型化への要求が高まっている。
【0003】
動電型の電気音響変換器において薄型化を実現するには、その構成部品である永久磁石とボイスコイルの薄型化が必要であるが、音響特性や信頼性を考慮した場合、現実的な手法ではない。磁気回路の動作原理では、駆動力は磁束密度と電流に依存する。永久磁石を薄型化した場合、磁束が著しく低下し、音響特性の劣化を招く。また、電流駆動である動電型変換器において、ボイスコイルを細線化した場合は、大電流の消費によりコイル線が焼損する問題点が生じる可能性がある。
【0004】
さらに、磁石の材質を変更して、磁束を高める手法もあるが、現状のネオジウム磁石に変わる磁性材料が未だに開発されていない状況であり、仮に新材料は開発されても、実用性や信頼性、コストなど電子機器用部品の材料として課題がある。
【0005】
動電型の電気音響変換器の薄型化が困難である中、小型薄型の電気音響変換器を実現する手段として、圧電効果により電気エネルギを機械エネルギに変換する圧電型の電気音響変換器がある。圧電型の電気音響変換器は、セラミック素材の圧電効果を利用して、電気信号の入力による電歪作用により、振動振幅を発生させるものである。上下層を電極材料で拘束されたセラミック自体が振動し、これが駆動源として機能するため、磁石やボイスコイルが不要で、薄型化に優位である。
【0006】
例えば、特許文献1、2には、圧電素子を電気音響変換器として使用することが記載されている。また、圧電素子を用いた発振装置の他の例としては、スピーカ装置のほか、圧電素子から発振された音波を用いて対象物までの距離などを検出する音波センサ(特許文献3を参照)など、種々の電子機器が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】再表2007−026736号公報
【特許文献2】再表2007−083497号公報
【特許文献3】特開平3−270282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、圧電素子の電気音響変換器は、内部損失が低いセラミック材料を振動源とするため、有機フィルムを通して振幅を発生させる動電型の電気音響変換器に比べ、機械品質係数Qが高い傾向にある。例えば、動電型のQは3〜5程度に対して、圧電型のQは約50程度となる。機械品質係数Qは共振時に先鋭度を示すため、要約すれば、圧電型の電気音響変換器では、基本共振周波数近傍では音圧が高く、それ以外の帯域では音圧が減衰することを意味する。
【0009】
すなわち、音圧レベル周波数特性において、音響特性の山谷が発生し、特定周波数の音が強調されたたり、消失されたりして、音楽再生などに十分な音質が得られない問題点を持つ。また、携帯電話の薄型化により、音響変換器を実装する本体ハウジングの剛性が低下している。すなわち、電気音響変換器の鳴動時に、変換器が加振源となり、本体ハウジング振動の発生が生じてしまう。
【0010】
特に、電気音響変換器に対して大面積である本体ハウジングが振動した場合、電気音響変換器に対して相対的に大音量音が再生され、音の干渉や、位相反転によるキャンセリングなど音響特性に悪影響を与える問題点がある。また、駆動源に脆性材料であるセラミックを用いるため、落下時の衝撃安定性が弱く、携帯電話などの小型の電子機器に搭載した場合の信頼性確保に課題がある。このため、薄型携帯本体ハウジングへ実装が可能であり、高音質で小型な電気音響変換器である発振装置が要求されている。
【0011】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、高音質で小型な発振装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の発振装置は、電界の状態に応じて伸縮運動する圧電素子と、少なくとも表面に圧電素子が接合されている弾性部材と、弾性部材より低剛性で少なくとも表面に弾性部材が接合されている振動部材と、振動部材より高剛性で振動部材を支持して本体ハウジングに接合される支持フレームと、を有し、発振装置の基本共振周波数F(a)と、本体ハウジングの基本共振周波数F(b)とが、
0.9×(2×F(b))<F(a)<1.1×(2×F(b))
を満足する。
【0013】
本発明の第一の電子機器は、本発明の発振装置と、発振装置が装着される本体ハウジングと、本体ハウジングに装着された発振装置に可聴域の音波を出力させる発振駆動手段と、を有する。
【0014】
本発明の第二の電子機器は、本発明の発振装置と、発振装置が装着される本体ハウジングと、本体ハウジングに装着された発振装置を駆動して超音波を出力させる発振駆動手段と、発振装置から発振されて測定対象物で反射した超音波を検知する超音波検知手段と、検知された超音波から測定対象物までの距離を算出する距離算出手段と、を有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の発振装置では、圧電素子を拘束する弾性部材が低剛性な振動部材を介して支持フレームに接合されている。そして、発振装置の基本共振周波数は、電気音響変換器を実装する本体ハウジングの基本共振周波数を干渉しないように調整されている。このため、音響特性の山谷が少なく、広帯域で大音量を再生することができる。従って、高音質で小型な発振装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の第一の形態の発振装置である電気音響変換器の構造を示す模式的な縦断正面図である。
【図2】圧電素子の構造を示す模式的な縦断正面図である。
【図3】電気音響変換器の動作を示す模式的な縦断正面図である。
【図4】既存の電気音響変換器の構造を示す模式的な分解斜視図である。
【図5】既存の圧電型の電気音響変換器の振動の態様を示す特性図である。
【図6】電磁式の電気音響変換器の振動の態様を示す特性図である。
【図7】電気音響変換器の構造を示す模式的な縦断正面図である。
【図8】電子機器の内部構造を示す模式的な縦断正面図である。
【図9】振動伝達関数を示す特性図である。
【図10】基本共振周波数を示す特性図である。
【図11】電気音響変換器と本体ハウジングとの音響特性を示す特性図である。
【図12】本発明の実施の第二の形態の電気音響変換器の構造を示す模式的な縦断正面図である。
【図13】電気音響変換器の動作を示す模式図である。
【図14】本発明の実施の第三の形態の電気音響変換器の圧電素子の構造を示す分解斜視図である。
【図15】本発明の実施の電子機器である携帯電話機の外観を示す模式的な正面図である。
【図16】本発明の実施の電子機器であるパーソナルコンピュータの外観を示す模式的な正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施の第一の形態について図1ないし図11を参照して以下に説明する。図1は、本実施の形態の電気音響変換器を示す縦断正面図である。図1に示すように、本実施の形態の発振装置である圧電型の電気音響変換器50は、電界の状態に応じて伸縮運動する圧電素子10と、少なくとも表面に圧電素子10が接合されている弾性部材20と、弾性部材20より低剛性で少なくとも表面に弾性部材20が接合されている振動部材30と、振動部材30より高剛性で振動部材30を支持して本体ハウジング(図示せず)に接合される支持フレーム45と、を有する。
【0018】
そして、電気音響変換器50の基本共振周波数F(a)と、本体ハウジングの基本共振周波数F(b)とが、
[数1]
0.9×(2×F(b))<F(a)<1.1×(2×F(b))
を満足する。
【0019】
より具体的には、本実施の形態の電気音響変換器は、圧電素子10、弾性部材20、振動部材30、支持フレーム45、リード線1−e、を有する。圧電素子10は、片側の主面が弾性部材20により拘束されており、弾性部材20は振動部材30を介して支持フレーム45に接合している。
【0020】
また、リード線1−eは、圧電素子に電気信号を入力する役割を果たす。圧電素子10は、電気エネルギを機械エネルギに変換し、電気音響変換器の振動源の役割を果たす。その構成は、図2で示されるように、圧電セラミック2−cの上下主面が上部/下部電極層2−a,2−bで拘束されている。圧電セラミック2−cは、圧力を加えることで生じる歪みに応じて、電圧が発生する現象である圧電効果を有している。なお、図2の矢印は分極方向を示している。
【0021】
このように構成された圧電素子は、図2に示すように、上部電極層2−aおよび下部電極層2−bに交流電圧が印加され交番的な電界が付与されると、図3で示されるように、その両主面11、12が同時に拡大または縮小するような、半径方向の伸縮運動(径拡がり運動)を行う。換言すれば、圧電セラミック2−cは、主面が拡大するような第一の変形モードと、主面が縮小するような第二の変形モードとを繰り返すような運動を行う。
【0022】
弾性部材20は、圧電素子10の上記伸縮運動を図3で図示の上下方向の振動に変換する機能を有する。弾性部材20は、弾性体(伸縮性のある材料)で構成され、その材質としては、金属材料(例えばアルミ合金、リンセイ銅、チタン、またはチタン合金)や、樹脂材料(例えばエポキシ、アクリル、ポリイミド、またはポリカーボネート)など、圧電素子を構成するセラミック材料より低剛性の材料を広く用いることが可能である。
【0023】
振動部材30は、電気音響変換器の振動振幅を増大させるための膜部材であり、弾性部材20よりも低剛性となっている。弾性部材20と振動部材30の材質の組合せとしては、例えば、弾性部材20が金属材料で、振動部材30が樹脂材料(例えばウレタン、PET、ポリエチレンなど)であってもよい。あるいは、弾性部材20と振動部材30とを同じ材質とし、振動部材30の膜厚を相対的に薄くすることにより、振動部材30が相対的に低剛性化されていてもよい。
【0024】
なお、振動部材30は、上記の他にも紙やポリエチレンテレフタラート等であってもよい。振動部材30の厚みは、樹脂材料の場合で例えば5μm以上500μm以下であればよい。特に、振動部材30が平らなシート材の場合、好ましくは30μm以上180μm以下であってもよい。
【0025】
ところで、電気音響変換器を音響素子として利用する場合、電気音響変換器の振動部に有機フィルム等を貼り付けて音が出るようにする構成が採られることが多い。これに対し、本実施の形態では、振幅を大きくするために設けた振動部材30が、そのまま振動フィルムとしても機能する。つまり、振動部材30は、既存の音響素子における振動フィルムとしての機能だけではなく、電気音響変換器の振動振幅を増大させる機能も併せ持つ。
【0026】
支持フレーム45は、例えば、電気音響変換器の本体ハウジングを構成する部材であり、その材質は特に限定されるものではなく、樹脂材料であってもよいし金属材料であってもよい。なお、圧電素子10と弾性部材20との接合、および、弾性部材20と振動部材30との接合には、例えば、エポキシ系接着剤を利用可能である。接着剤層の厚みは特に限定されるものではないが、あまりに厚すぎると接着剤層に吸収される振動エネルギーが増大し十分な振動振幅が得られなくなる可能性もあるため、例えば、20μm以下であることが好ましい。
【0027】
以下に、図3を参照し、電気音響変換器50の振動の発生メカニズムと併せて説明する。まず、圧電素子10に電圧が印加されていない中立の状態から圧電素子に所定の電圧(電界)を印加すると、図3(a)の矢印pに示すように、圧電素子10は、その面積が広がる方向に変形する。
【0028】
ここで、圧電素子10の下面(主面12)は弾性部材20に拘束されているため、この拘束効果により、圧電素子10の上面と下面との間に変形の量の差が生じ、その結果、図示するような凸型の変形モードとなる。この変形モードでは、圧電素子10および弾性部材20、さらには弾性部材20を支持している振動部材30が、図示上方に向かって凸型となるような、湾曲状態となっている。
【0029】
続いて、圧電素子に上記とは逆の電界を印加すると、図3(b)に示すように、今度は圧電素子10が、その面積が減少する方向に変形する。弾性部材20による拘束効果により、圧電素子10の上面と下面との間に変形量の差が生じ、その結果、図示するような凹型の変形モードとなる。この変形モードでは、上記とは逆に、圧電素子、弾性部材、および振動部材が、図示下方に向かって凸となるような湾曲状態となっている。
【0030】
本実施の形態の電気音響変換器50は、上述のような凸型の変形モードと凹型の変形モードを交互に繰り返すことで、圧電素子10、拘束部材20、および振動部材30が上下方向に振動する。
【0031】
本実施の形態の電気音響変換器と既存の圧電型の電気音響変換器550(図4参照)とを対比すると、支持フレーム45,527で支持されている圧電素子10,510の運動が弾性部材20,524に伝達され、上下方向の振動が励起させられている点で両者は共通している。しかしながら、構成について見ると、本実施の形態の電気音響変換器50は振動部材30を介して弾性部材20および圧電素子10が支持されるようになっており、この点で両者は相違しており、この相違により下記のような作用効果が得られることとなる。
【0032】
すなわち、振動部材30は、弾性部材20に比べて相対的に低剛性な部材で構成されていることから、より変形しやすいものとなっている。従って、本実施の形態の電気音響変換器50によれば、弾性部材20の外周部が支持フレーム45に直接支持される既存の構成に比べて、より大きな振動振幅が得られるようになる。また、本実施の形態の電気音響変換器において、振動部材30は、水平方向に延在するように(すなわち圧電素子10の主面と平行となるように)設けられている。従って、振動部材30を追加したことによる電気音響変換器全体の大型化という問題も生じにくい。
【0033】
また、本実施の形態では、円形の圧電素子10を使用している。円形の圧電素子10が径拡がり運動する際のエネルギー効率は、矩形素子と比較して高いため、同じ電圧を印加した場合、本構成の方がより大きな駆動力が得られることとなる。そして、このような大きな駆動力が振動部材に伝搬することで、圧電型の電気音響変換器50の振動量が増加する。また、円形素子の場合、その中心から周縁部までの距離が均一であることから、梁に振動を伝搬する際に生じる応力が均等に分散され、エネルギー効率が高まり、振幅が増大するという利点もある。また、圧電素子10、弾性部材20、および振動部材30が同心円状の配置となっていることから、振動のうねり等も発生しにくいものとなっている。
【0034】
次に、電気音響変換器50の振動の態様と周波数特性との関係について説明する。圧電型の電気音響変換器50を音響素子として利用すること自体は、前述した特許文献1〜3等にも開示されているところである。しかしながら、これらの文献における音響素子とは、ブザーやバイブレータを意図している。バイブレータとしてのみ用いるのであれば、単に音圧を向上させるだけでよいが、スピーカとして用いる場合には、その周波数特性までを考慮して圧電型の電気音響変換器50の振動の態様を考える必要がある。
【0035】
図5(a)は、図4に示したような、既存の圧電型の電気音響変換器550の振動の態様を示したものであり、図5(b)は、電磁式の電気音響変換器(図示せず)の振動の態様を示したものである。
【0036】
図5(a)に示すように、既存の圧電型の電気音響変換器550では、中央の振幅が最大となるような屈曲型の振動態様となっている。これに対し、電磁式の電気音響変換器では、図7に示すように、一例として符号A20で示す中央領域がほぼ平坦な状態を保ったまま、この中央領域A20が図示上下方向に往復移動するようなピストン型の振動態様となっている。音響素子としての周波数特性を良好にするためには、振動の態様を少しでもピストン型に近づけることが望ましいことが知られている。
【0037】
次に、屈曲型運動とピストン型運動の特徴について説明する。既存の圧電型の電気音響変換器で発生する屈曲型運動の振動姿態は、圧電セラミックの中心部が最大変位屈曲点になる山形であり、中心部では大振幅を得られるものの、固定端部近傍に近づくほど、変位は相対的に減衰していく。これに対して、図6で示されるようにピストン運動の振動姿態は固定端部近傍に最大変位屈曲点を有する台形型で、固定端部近傍での振動が大きく立ち上がる特徴を持つ。
【0038】
これらの二つの振動姿態における振動変位量を比較すると、音響放射面内の最大振動量は屈曲型運動の方が、ピストン型運動に比べ優位であるが、音響放射面内の平均振動量は、固定端部での変位量が大きく、ピストン型運動の方が屈曲型運動に比べ優位となる。なお、通常、音圧は放射面への体積排除量で定義されることから、平均振動量が大きい方が高く、音圧レベルの向上には、ピストン型の振動姿態を促進させることが好ましい。
【0039】
なお、ピストン型運動と屈曲型運動は、平均変位量と最大変位量との割合で定義することができ、(平均振動量)/(最大振動量)で示される式で1に近づくほど、ピストン型姿態が促進されたことになる。
【0040】
本実施の形態の電気音響変換器によれば、図7に示すように、弾性部材20が貼り付けられた領域がA20に対応する領域となっており、その外側が、見かけ上、領域A20よりも低剛性な(すなわちより変形しやすい)接続部領域A30となっている。このため、この接続部領域A30が相対的に大きな変形を示すこととなるため、全体としての振動の態様をピストン型により近づけることが可能となる。
【0041】
さらに、弾性部材が貼り付けられる領域の周辺部である領域A30が低剛性な部材で構成されているということは、弾性部材20を直に支持フレームに接続した既存の構成と比較して、振動板(弾性部材と振動部材との積層体を指す)の基本共振周波数が低くなることを意味する。そして、共振周波数が下がるということは、下記の通り、音響素子の周波数特性の改善につながる。
【0042】
音響素子においては、通常、基本共振周波数以下の周波数で、かつ十分な大きさの音を出すのは比較的困難とされており、そのため、基本共振周波数以降の周波数帯のみを再生可能な音として利用する構成が採られることが多い。具体的には、圧電型の電気音響変換器の共振周波数が高周波数帯域(例えば2kHz)にあるような場合、極単に言えば、音響素子は2kHz以上の帯域の音しか発生できないこととなる。
【0043】
他方、携帯電話機等で音楽等を再生する場合に必要な基本周波数帯域は1k〜10kHzであることが好ましい。よって、基本共振周波数が1kHz以下である圧電型の電気音響変換器は携帯電話機等に好適であり、特に、本実施の形態のような小型化にも有利な電気音響変換器であればその利用価値は非常に高いものとなる。
【0044】
ところが、圧電型の電気音響変換器では、圧電素子として剛性の高いセラミックを使用しているため振動部の共振周波数高くなり、低音を出しにくいという性質があった。なお、素子サイズを大きくすることにより、圧電素子の見かけ上の剛性を低減させ共振周波数を下げることも考えられる。しかし、既述の通り、圧電型の電気音響変換器は例えば携帯電話機など小型の電子機器に搭載されることも多いことから、機器の大型化を防止する観点からしても、素子サイズを変えることなく低音を出やすくするように構成することが好ましい。
【0045】
以上をまとめると、携帯電話機等においてより広い周波数帯域で音楽を再生するためには、圧電型の電気音響変換器の基本共振周波数をより低いところに設定することが重要であるといえる。そして、基本共振周波数をより低くするためには、振動板の剛性を下げることが有効である。
【0046】
本実施の形態の電気音響変換器50によれば、図3に示すように、弾性部材20と支持フレーム45とを接続する部材が、弾性部材20よりも低剛性な振動部材30であることから、既存の構成と比較して共振周波数が低減する。その結果、本実施の形態の電気音響変換器50は、広い周波数帯域で十分な振動振幅を得ることができるものとなり、良好な周波数特性を実現することが可能となる。
【0047】
本実施の形態の圧電型の電気音響変換器50は、上記の他にも、下記のような利点を持つ。まず、電気音響変換器50の振動特性は、弾性部材20の材料特性、形状、および振動部材30の材料特性、形状を適宜変化させることによって容易に調整可能である。特に、弾性部材20の形状や、振動部材30の厚みの調整は、本体ハウジングのサイズ(支持フレームのサイズ)を変えることなく行うことができるため、支持フレーム45を共通部品として用いることができ、製造コストの低減にも有利である。
【0048】
以下に、電気音響変換器50を電気機器に実装した際の問題点を述べる。図15に示すように、携帯電話などの携帯型の電子機器においては、小型薄型化への要求が高い。このため、電子機器の薄型化促進のため、本体ハウジング材料の厚みを低減しており、本体ハウジング剛性が減少していく傾向にある。
【0049】
通常、図8で示すように、電子機器においては、音孔から音波を放射するため、電気音響変換器50を本体ハウジング100に直接接合していることから、本体ハウジング振動による音響特性が劣化する問題点がある。すなわち、電気音響変換器50の鳴動時の振動が本体ハウジングに伝播し、本体ハウジング振動が発生する。電気音響変換器50に対して大面積である本体ハウジング振動により発生する音圧は変換器から発する音圧に比べ大きく、変換器と本体ハウジングからの音波が干渉することや、互いの位相が反転により打ち消しあうことで、音響特性が劣化する。
【0050】
すなわち、音波の干渉により、特定の周波数帯域で音圧レベルが強調されることや、音波のキャンセリングにより、特定周波数で音圧レベルが著しく減衰し、音響特性の山谷が発生する原因となる。本体ハウジング振動の影響を低減するためには、電気音響変換器50と本体ハウジング100の基本共振周波数を乖離させる方法があるが、この手法においても音響特性の山谷が生じる問題点がある。
【0051】
これは、本体ハウジング振動の基本共振周波数の振動(振動エネルギが最大化する周波数)での高調波が、電気音響変換器50の基本共振周波数と重なりあうことで、音波の干渉やキャンセリングが発生することに起因する。図9の振動伝達関数で示すように、基本共振周波数が500Hzの本体ハウジングでは、1000Hzに二次高調波、1500Hzに三次高調波となる振動が発生する。
【0052】
すなわち、基本共振周波数が1000Hzの電気音響変換器50を用いた場合、本体ハウジング振動の二次高調波が電気音響変換器の基本共振周波数と重なり、音波が増幅する。なお、圧電型の電気音響変換器は動電型の電気音響変換器に比べて、機械品質係数Q(機械Q)が高い。例えば、通常の携帯電話で使用される動電型の電気音響変換器の機械Qは2〜5程度にあるのに対して、圧電型の機械Qは10〜50である。
【0053】
図10のように、Qは振動の先鋭度を示しているため、Qの大きい圧電型の電気音響変換器50では、基本共振周波数で急峻な音圧ピークを有しており、これに本体ハウジング振動からの音波が干渉することで、さらに、音圧ピークは増大し、音響特性として好ましくない。
【0054】
そこで、本実施の形態では、電気音響変換器50の基本共振周波数F(a)と、電気音響変換器50を実装する本体ハウジング100の基本共振周波数F(b)とが、
[数2]
0.9×(2×F(b))<F(a)<1.1×(2×F(b))
のように調整されている。
【0055】
すなわち、図11で示されるように、本体ハウジング100の高調波との干渉を回避でき、音響特性が向上するものである。本実施の形態の電気音響変換器50では、基本共振周波数を、図3に示すように、振動部材30の材質・厚み・支持フレーム45と弾性部材20間との距離によって容易に調整できる。
【0056】
機械振動子の基本共振周波数fは、以下の数式で示される。
[数3]
f=1/(2πL√(mC))
なお、"m"は質量、"C"はコンプライアンス、である。
【0057】
このように機械振動子の基本共振周波数は、負荷重量と、コンプライアンスに依存する。言い換えれば、コンプライアンスは振動子の機械剛性であるため、このことは振動部材30の剛性を制御することで基本共振周波数を制御できることを意味する。例えば、弾性率の高い材料の選択や、材料の厚みを低減することで、基本共振周波数を低域にシフトさせることが可能となる。この一方で、弾性率の高い材料を選択することや、弾性部材の厚みを増加させることで、基本共振周波数を高域にシフトさせることができる。
【0058】
なお、既存の圧電型の電気音響変換器では、基本共振周波数を調整するのに、圧電材料の形状や変換器の面積などを変更する必要があった。しかしながら、本実施の形態の電気音響変換器では、基本構造の変更を伴わず、設計上の制約やコストに優位である。本実施の形態の電気音響変換器50では、構成部材である弾性部材20を変更することで所望の基本共振周波数に容易に調整できる、かつ本体ハウジング振動による音質劣化を回避できることから、工業上の価値は大きい。
【0059】
本発明に係る電気音響変換器は、電子機器(例えば、携帯電話機、ラップトップ型パーソナルコンピュータ、小型ゲーム機器など)の音源としても利用可能である。既存の電気音響変換器に対して、振動部材の材質のみで基本共振周波数を調整できるため、電気音響変換器全体の形状が増加せず、音響特性が向上することから、携帯型の電子機器に対しても好適に利用することが可能である。
【0060】
[実施の第二の形態]
本発明の実施の第二の形態を、図12を参照し説明する。本実施の形態では、実施の第一の形態に対して、弾性部材20を二個の圧電素子10a,10bで拘束していることが特徴である。すなわち、二個の圧電素子10a,10bを利用したバイモルフ構造である。このバイモルフ型の圧電素子10a,10bは、図13に示すように、分極方向を逆にした二枚の圧電セラミックを張り合わせ、一方を長手方向に伸ばし、もう一方を縮めることにより屈曲させることで、実施の第一の形態の一枚の圧電素子10からなるユニモルフ構造に比べて、より大きな変位を得ることが可能となる。
【0061】
なお、二個の圧電素子10a,10bについては、実施の第一の形態と同様の圧電性材料を使用することができる。また、二個の圧電素子10a,10bが互いに同一形状であっても、互いに異なる形状であってもよい。圧電素子10a,10bが互いに異なる形状の場合は、圧電形状に起因する二つの共振を生み出すことができ、音響特性の広帯域化を実現することが可能となる。また、二個の圧電素子10a,10bの一方に高周波、他方に低周波、の電界を印加してパラメトリックススピーカを実現することも可能である。なお、15−eはリード線である。
【0062】
以上、本実施の形態に係る電気音響変換器は、電子機器(例えば、図15および図16に示すように、携帯電話機、ラップトップ型パーソナルコンピュータ、小型ゲーム機器など)の音源としても利用可能である。電気音響変換器全体の形状が増加せず、音響特性が向上することから、携帯型の電子機器に対しても好適に利用することが可能である。
【0063】
[実施の第三の形態]
さらに、本発明の実施の第三の形態について図14を参照して説明する。本実施の形態では、積層型の圧電素子から構成されている。図14で示されるように、圧電素子は、圧電材料からなる圧電板13a〜13eが5層に積層された多層構造である。圧電板同士の間には電極層(導体層)14a〜14dが一層ずつ形成されている。各圧電板13a〜13eの分極方向は一層ごとに逆向きとなっており、また、電界の向きも交互に逆向きとなるように構成されている。このような積層構造の圧電素子によれば、電極層間に生じる電界強度が高いため、圧電板の積層数に応じた分だけ、圧電素子全体としての駆動力が向上する。
【0064】
[実施の第四の形態]
本発明の実施の第四の形態について、以下に説明する。本実施の形態では、正方形状の圧電素子から構成されている(図示せず)。図3に示すように、このように圧電素子10が矩形であったとしても、弾性部材20が振動部材30を介して支持フレーム45に接続されていることによる作用効果は上記同様にして得ることができる。
【0065】
矩形の圧電素子を用いることにより、円形上の圧電素子に比べて製造安定性やコストで優位である。すなわち、加工の際に、ライン上に切断すればよく、円形に比べ、デッドスペースもないため、材料を削減できる。
【0066】
[発明の他の実施例]
本発明の電気音響変換器の特性評価を、以下、評価1〜評価5の評価項目で行った。
【0067】
(評価1)基本共振周波数の測定:交流電圧1V入力時の基本共振周波数を測定した。
【0068】
(評価2)音圧レベル周波数特性の測定:交流電圧1V入力時の音圧レベルを、素子から所定距離だけ離れた位置に配置したマイクロホンにより測定した。なお、この所定距離は、特に明記しない限り10cmであり、周波数の測定範囲は10Hz〜10kHzとした。
【0069】
(評価3)音圧レベル周波数特性の平坦性測定:交流電圧1V入力時の音圧レベルを、素子から所定距離だけ離れた位置に配置したマイクロホンにより測定した。周波数の測定範囲は10Hz〜10kHzとし、2kHz〜10kHzの測定範囲において、最大音圧レベルPmaxと最小音圧レベルPminとの音圧レベル差により、音圧レベル周波数特性の平坦性を測定した。その結果、音圧レベル差(最大音圧レベルPmaxと最小音圧レベルPminとの差のことを指す)が20dB未満を○とし、20dB以上を×とした。この所定距離は、特に明記しない限り10cmである。
【0070】
(評価4)落下衝撃試験:電気音響変換器を搭載した携帯電話を50cm直上から、5回自然落下させ、落下衝撃安定性試験を行った。具体的には、落下衝撃試験後の割れ等の破壊を目視で確認し、さらに、試験後の音圧特性を測定した。その結果、音圧レベル差(試験前の音圧レベルと試験後の音圧レベルとの差のことを指す)が3dB未満を○とし、3dB以上を×とした。
【0071】
(評価5)本体ハウジングの共振周波数特性:インパルスハンマー法を用いて、本体ハウジングの中心部に加振を与え、加速センサを用いて、振動伝達関数を計測した。伝達関数を分析し、最大の振動速度を示す周波数を本体ハウジングの基本共振周波数とした。
【0072】
[実施例1]
本発明の実施の第一の形態で記載した電気音響変換器を、図15の携帯電話に実装し、特性評価を実施した。評価結果は以下の通りである。
電気音響変換器の基本共振周波数:1120Hz
携帯電話の本体ハウジングの基本共振周波数:450Hz
音圧レベル(1kHz) :90dB
音圧レベル(3kHz) :85dB
音圧レベル(5kHz) :95dB
音圧レベル(10kHz) :86dB
音圧レベル周波数特性の平坦性 :○
落下衝撃安定性 :○
上記の結果より明らかのように、本実施例の電気音響変換器によれば、音圧レベル周波数特性は平坦である。また、広い周波数帯域で80dBを超える音圧レベルを有することが実証された。
【0073】
[比較例1]
比較例1として、既存のボイスコイル型の電気音響変換器を作製し、図15の携帯電話に実装した。評価結果は以下の通りである。
電気音響変換器の基本共振周波数:854Hz
携帯電話の本体ハウジングの基本共振周波数:450Hz
音圧レベル(1kHz) :77dB
音圧レベル(3kHz) :75dB
音圧レベル(5kHz) :76dB
音圧レベル(10kHz) :97dB
音圧レベル周波数特性の平坦性 :×
落下衝撃安定性 :×
上記の結果より明らかのように、比較例1の電気音響変換器によれば、音圧レベル周波数特性は良好でなく、広い周波数帯域で80dBを超える音圧レベルを実現できないことが実証された。
【0074】
[実施例2]
本発明の実施の第二の形態で記載した電気音響変換器を、図15の携帯電話に実装し、特性評価を実施した。評価結果は以下の通りである。
電気音響変換器の基本共振周波数:1180Hz
携帯電話の本体ハウジングの基本共振周波数:450Hz
音圧レベル(1kHz) :95dB
音圧レベル(3kHz) :94dB
音圧レベル(5kHz) :92dB
音圧レベル(10kHz) :88dB
音圧レベル周波数特性の平坦性 :○
落下衝撃安定性 :○
上記の結果より明らかのように、本実施例の電気音響変換器によれば、音圧レベル周波数特性は平坦である。また、広い周波数帯域で80dBを超える音圧レベルを有することが実証された。
【0075】
[実施例3]
本発明の実施の第三の形態で記載した電気音響変換器を、図15の携帯電話に実装し、特性評価を実施した。評価結果は以下の通りである。
電気音響変換器の基本共振周波数:1180Hz
携帯電話の本体ハウジングの基本共振周波数:450Hz
音圧レベル(1kHz) :91dB
音圧レベル(3kHz) :92dB
音圧レベル(5kHz) :86dB
音圧レベル(10kHz) :87dB
音圧レベル周波数特性の平坦性 :○
落下衝撃安定性 :○
上記の結果より明らかのように、本実施例の電気音響変換器によれば、音圧レベル周波数特性は平坦である。また、広い周波数帯域で80dBを超える音圧レベルを有することが実証された。
【0076】
[実施例4]
本発明の実施の第四の形態で記載した電気音響変換器を、図15の携帯電話に実装し、特性評価を実施した。評価結果は以下の通りである。
電気音響変換器の基本共振周波数:1080Hz
携帯電話の本体ハウジングの基本共振周波数:450Hz
音圧レベル(1kHz) :90dB
音圧レベル(3kHz) :88dB
音圧レベル(5kHz) :85dB
音圧レベル(10kHz) :88dB
音圧レベル周波数特性の平坦性 :○
落下衝撃安定性 :○
上記の結果より明らかのように、本実施例の電気音響変換器によれば、音圧レベル周波数特性は平坦である。また、広い周波数帯域で80dBを超える音圧レベルを有することが実証された。
【0077】
[実施例5]
本発明の実施の第一の形態で記載した電気音響変換器を、図16のラップトップ型PC(Personal Computer)に実装し、特性評価を実施した。評価結果は以下の通りである。
電気音響変換器の基本共振周波数:1120Hz
PCの本体ハウジングの基本共振周波数:420Hz
音圧レベル(1kHz) :94dB
音圧レベル(3kHz) :88dB
音圧レベル(5kHz) :91dB
音圧レベル(10kHz) :88dB
音圧レベル周波数特性の平坦性 :○
落下衝撃安定性 :○
上記の結果より明らかのように、本実施例の電気音響変換器によれば、音圧レベル周波数特性は平坦である。また、広い周波数帯域で80dBを超える音圧レベルを有することが実証された。
【0078】
[比較例2]
比較例2として、図20で示される電気音響変換器を作製し、図16のラップトップ型PCに実装した。評価結果は以下の通りである。
電気音響変換器の基本共振周波数:854Hz
PCの本体ハウジングの基本共振周波数:420Hz
音圧レベル(1kHz) :75dB
音圧レベル(3kHz) :74dB
音圧レベル(5kHz) :77dB
音圧レベル(10kHz) :91dB
音圧レベル周波数特性の平坦性 :×
落下衝撃安定性 :×
上記の結果より明らかのように、比較例2の電気音響変換器によれば、音圧レベル周波数特性は良好でなく、広い周波数帯域で80dBを超える音圧レベルを実現できないことが実証された。
【0079】
[実施例6]
本発明の実施の第二の形態で記載した電気音響変換器を、図16のラップトップ型PCに実装し、特性評価を実施した。評価結果は以下の通りである。
電気音響変換器の基本共振周波数:1180Hz
PCの本体ハウジングの基本共振周波数:420Hz
音圧レベル(1kHz) :91dB
音圧レベル(3kHz) :92dB
音圧レベル(5kHz) :90dB
音圧レベル(10kHz) :99dB
音圧レベル周波数特性の平坦性 :○
落下衝撃安定性 :○
上記の結果より明らかのように、本実施例の電気音響変換器によれば、音圧レベル周波数特性は平坦である。また、広い周波数帯域で80dBを超える音圧レベルを有することが実証された。
【0080】
[実施例7]
本発明の実施の第三の形態で記載した電気音響変換器を、図16のラップトップ型PCに実装し、特性評価を実施した。評価結果は以下の通りである。
電気音響変換器の基本共振周波数:1180Hz
PCの本体ハウジングの基本共振周波数:420Hz
音圧レベル(1kHz) :90dB
音圧レベル(3kHz) :84dB
音圧レベル(5kHz) :93dB
音圧レベル(10kHz) :88dB
音圧レベル周波数特性の平坦性 :○
落下衝撃安定性 :○
上記の結果より明らかのように、本実施例の電気音響変換器によれば、音圧レベル周波数特性は平坦である。また、広い周波数帯域で80dBを超える音圧レベルを有することが実証された。
【0081】
[実施例8]
本発明の実施の第四の形態で記載した電気音響変換器を、図16のラップトップ型PCに実装し、特性評価を実施した。評価結果は以下の通りである。
電気音響変換器の基本共振周波数:1080Hz
PCの本体ハウジングの基本共振周波数:420Hz
音圧レベル(1kHz) :87dB
音圧レベル(3kHz) :89dB
音圧レベル(5kHz) :95dB
音圧レベル(10kHz) :82dB
音圧レベル周波数特性の平坦性 :○
落下衝撃安定性 :○
上記の結果より明らかのように、本実施例の電気音響変換器によれば、音圧レベル周波数特性は平坦である。また、広い周波数帯域で80dBを超える音圧レベルを有することが実証された。
【0082】
[実施例9]
本発明の実施の第一の形態で記載した電気音響変換器の構成において、振動部材である振動膜の厚みを変更した変換器を作製し、図15の携帯電話に実装した。評価結果は以下の表1の通りである。
【0083】
【表1】

上記の結果より明らかのように、本実施例の電気音響変換器によれば、音圧レベル周波数特性は平坦である。また、広い周波数帯域で80dBを超える音圧レベルを有することが実証された。
【0084】
[実施例10]
本発明の実施の第一の形態で記載した電気音響変換器の構成において、弾性部材と支持フレームである支持体との距離を変更した変換器を作製し、図15の携帯電話に実装した。評価結果は以下の通りである。
【0085】
【表2】

上記の結果より明らかのように、本実施例の電気音響変換器によれば、音圧レベル周波数特性は平坦である。また、広い周波数帯域で80dBを超える音圧レベルを有することが実証された。
【0086】
なお、本発明は本実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で各種の変形を許容する。例えば、上記形態の電気音響変換器では、図15および図16に示すように、電気機器として電気音響変換器で音声を出力する携帯電話機やパーソナルコンピュータを例示した。しかし、電子機器として、発振装置である電気音響変換器と、この電気音響変換器を駆動して超音波を出力させる発振駆動部と、電気音響変換器から発振されて測定対象物で反射した超音波を検知する超音波検知部と、検知された超音波から測定対象物までの距離を算出する距離算出部と、を有するソナー(図示せず)なども実施可能である。
【0087】
なお、当然ながら、上述した複数の実施の形態および複数の実施例は、その内容が相反しない範囲で組み合わせることができる。また、上述した実施の形態では、各部の構造などを具体的に説明したが、その構造などは本願発明を満足する範囲で各種に変更することができる。
【符号の説明】
【0088】
1−e リード線
2−a 上部電極層
2−b 下部電極層
2−c 圧電セラミック
10 圧電素子
20 弾性部材
30 振動部材
45 支持フレーム
10 圧電素子
11 主面
12 主面
13a〜13e 圧電板
14a〜14d 電極層(導体層)
15−e リード線
50 電気音響変換器
100 本体ハウジング
510 圧電素子
524 弾性部材
527 支持フレーム
550 電気音響変換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電界の状態に応じて伸縮運動する圧電素子と、
少なくとも表面に前記圧電素子が接合されている弾性部材と、
前記弾性部材より低剛性で少なくとも表面に前記弾性部材が接合されている振動部材と、
前記振動部材より高剛性で前記振動部材を支持して本体ハウジングに接合される支持フレームと、を有し、
発振装置の基本共振周波数F(a)と、前記本体ハウジングの基本共振周波数F(b)とが、
0.9×(2×F(b))<F(a)<1.1×(2×F(b))
を満足することを特徴とする発振装置。
【請求項2】
前記振動部材は、前記弾性部材よりも弾性率が小さい請求項1に記載の発振装置。
【請求項3】
前記振動部材が、ウレタン、PET(Polyethylene Terephthalate)、ポリエチレンフィルム、の何れか一つを主体とする樹脂からなる請求項1または2に記載の発振装置。
【請求項4】
発振装置の基本共振周波数が、前記振動部材の形状により調整されていることを特徴とする、請求項1から3の何れか一項に記載の発振装置。
【請求項5】
前記振動部材の両面に一対の前記弾性部材と一対の前記圧電素子とが個々に順番に接合されているバイモルフ型に形成されている請求項1ないし4の何れか一項に記載の発振装置。
【請求項6】
前記圧電素子は、圧電材料層と電極層とが交互に積層された積層型構造に形成されている請求項1ないし5の何れか一項に記載の発振装置。
【請求項7】
前記圧電素子が発振する前記超音波の周波数が20kHzを超える請求項1ないし6の何れか一項に記載の発振装置。
【請求項8】
前記圧電素子が可聴波の超音波変調波を発振する請求項1ないし7の何れか一項に記載の発振装置。
【請求項9】
請求項1ないし8の何れか一項に記載の発振装置と、
前記発振装置が装着される前記本体ハウジングと、
前記本体ハウジングに装着された前記発振装置に可聴域の音波を出力させる発振駆動手段と、
を有する電子機器。
【請求項10】
請求項1ないし8の何れか一項に記載の発振装置と、
前記発振装置が装着される前記本体ハウジングと、
前記本体ハウジングに装着された前記発振装置を駆動して超音波を出力させる発振駆動手段と、
前記発振装置から発振されて測定対象物で反射した前記超音波を検知する超音波検知手段と、
検知された前記超音波から前記測定対象物までの距離を算出する距離算出手段と、
を有する電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−100041(P2012−100041A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245657(P2010−245657)
【出願日】平成22年11月1日(2010.11.1)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】