説明

発泡ゴムロール

【課題】耐摩耗性が高く、安定したセルが形成されている発泡弾性層を有し、低コストで高い生産性が確保できるトナー供給用として好適に用いられる発泡ゴムロールを提供する。
【解決手段】少なくとも外周層に発泡弾性層を備え、該発泡弾性層は、ゴム成分(1)100質量部に対して、充填剤(2)として少なくともメタクリル酸亜鉛またはメタクリル酸と酸化亜鉛の混合物(2a)を5〜60質量部の割合で含有している熱硬化性エラストマー組成物を化学発泡剤または化学発泡剤と化学発泡助剤により発泡させていることを特徴とする発泡ゴムロールを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポンジ状の発泡弾性層を有する発泡ゴムロールに関し、複写機、ファクシミリまたはプリンターなどの画像形成装置の現像機構においてトナー担持体の表面に現像剤を供給するためのトナー供給ロールとして好適に用いられるものである。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置では、一様に帯電した感光ドラムに露光して形成された静電潜像へトナーを乗せる現像機構において、種々の導電ロールが用いられている。
トナー供給ロールもその一つで、トナーボックスに収められたトナー粒子を現像ロールに供給する役割を担う。トナー供給ロールにはトナー粒子を現像ロールに供給する際にトナー供給ロールと現像ロールとの間に挟まれたトナー粒子を破壊しないように低硬度であることが要求される。また、一回の搬送で十分な量のトナー粒子を運ぶ必要があるため、セルがある程度大きいことも必要とされる。さらに、セルの大きさが不均一であると搬送時のトナー量がばらつき、画像不良をもたらすという問題が生じるため、セルが均一である必要もある。あわせて、初期特性を長期に渡り維持するために摩耗等により変質しないことも必要である。
【0003】
前記トナー供給ロールとして、従来は耐摩耗性が優れているウレタンを素材にしたウレタンフォームからなるロールが用いられている。
しかし、ウレタンフォームは材料費が高価であるとともに、該ウレタンフォームを高品質に作製するには、液状ポリマーをバッチ処理で熱硬化させることが主流となるため加工方法を工夫しても製品単価を安くすることはできない。
また、ウレタンフォームが硬化するまでの時間にセルのばらつきが生じ、結果としてトナー供給量に多い少ないのばらつきをもたらし、画像不良を引き起こす問題がある。
さらに、移行物質、特にウレタンの抵抗値調整に使用されている導電付与剤がブリードして現像ロールを介して感光体を汚染する可能性がある。キャリアを含む2成分系トナーでは現像ロールと感光体が接触することはないので特に問題はないが、1成分系トナーを使用する現像機構では現像ロールと感光体が接触するので感光体汚染の可能性がより高くなる。
【0004】
前記ウレタンフォームの潜在的な問題点を解決するために、特開2004−45656号公報(特許文献1)にて、低硬度で、セルのばらつきが少なく、導電付与剤を使用することなく抵抗値を調整することができる非汚染性のトナー供給ロールが提案されている。
特許文献1に記載の発明においては、所定のゴムを化学発泡剤により発泡倍率7〜20倍、セル径分布300〜500μmの高発泡なスポンジにしてトナー供給ロールとしている。このように化学発泡剤をゴムに添加してセルを形成しているためセルが安定しており、かつ、加硫ゴムを用いているため材料費および製造コストを低減でき安価な部材が提供できるなどの利点がある。
しかしながら、高発泡させているので耐摩耗性においてさらなる改善の余地がある。
【0005】
【特許文献1】特開2004−45656号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、耐摩耗性が高く、安定したセルが形成されている発泡弾性層を有し、低コストで高い生産性が確保できる発泡ゴムロールを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、少なくとも外周層として発泡弾性層を備え、
前記発泡弾性層は、ゴム成分(1)100質量部に対して、充填剤(2)として少なくともメタクリル酸亜鉛またはメタクリル酸と酸化亜鉛の混合物(2a)を5〜60質量部の割合で含有している熱硬化性エラストマー組成物を、化学発泡剤または化学発泡剤と化学発泡助剤により発泡させていることを特徴とする発泡ゴムロールを提供している。
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、下記の知見に基づき本発明を完成した。
即ち、充填剤(2)として少なくともメタクリル酸亜鉛またはメタクリル酸と酸化亜鉛の混合物(2a)を特定割合で配合することにより耐摩耗性に優れた熱硬化性エラストマー組成物を得ることができる。さらに、当該組成物においてゴム成分(1)としてウレタン以外のゴム、好ましくは架橋剤により架橋されてゴム弾性を発揮するゴムを用いることにより、低コストで高い生産性が確保できるうえに、安定したセルの形成も前記充填剤(2a)により阻害されることはない。
【0009】
本発明で用いる熱硬化性エラストマー組成物について以下に詳述する。
前記熱硬化性エラストマー組成物は、ゴム成分(1)100質量部に対して充填剤(2)として少なくともメタクリル酸亜鉛またはメタクリル酸と酸化亜鉛の混合物(2a)を5〜60質量部の割合で含有していることを特徴とする。
メタクリル酸亜鉛を配合した熱硬化性エラストマー組成物を用いると、共架橋剤となるメタクリル酸亜鉛が架橋時に重合・グラフト反応を起こして微細構造を形成し、一般的なカーボンブラックによる補強よりも高い機械的物性が得られ、耐摩耗性を向上させることができる。
メタクリル酸亜鉛を配合する代わりにメタクリル酸と酸化亜鉛の混合物を配合することにより、エラストマー組成物中でメタクリル酸亜鉛を生成させて、それを共架橋剤として機能させることもできる。当該混合物を配合する場合、メタクリル酸と酸化亜鉛の混合比率は2:1とすることが好ましい。しかしながら、メタクリル酸が全ての酸化亜鉛と反応しない場合もあるので通常は1〜2:1で混合する。
【0010】
メタクリル酸亜鉛またはメタクリル酸と酸化亜鉛の混合物(2a)の配合量をゴム成分100質量部に対して5質量部〜60質量部としているのは、5質量部未満であるとメタクリル酸亜鉛の共架橋効果が発揮されず、機械的物性の低下や摩耗を進行させてしまうおそれがあるからである。特に十分な耐摩耗効果が得られないと、本発明の発泡ゴムロールをトナー供給ロールとして用いたときに画像不良が発生するおそれがある。一方、60質量部を超えると、過剰な配合によりゴム用混練機で混練することができなくなる場合があるからである。また、本発明の発泡ゴムロールをトナー供給ロールとして用いたときに硬度が上がりすぎてセルへの目詰まりが促進され、結果として画像不良が発生するおそれがある。
当該配合量はゴム成分100質量部に対して5質量部〜50質量部であることが好ましい。
【0011】
前記メタクリル酸亜鉛またはメタクリル酸と酸化亜鉛の混合物(2a)は、通常充填剤(2)としてゴム成分(1)に添加される。
しかし、予めメタクリル酸亜鉛を分散させたゴム成分を用いてもよい。この場合、メタクリル酸亜鉛が予めゴム成分(1)に配合されているので改めて充填剤(2)としてメタクリル酸亜鉛またはメタクリル酸と酸化亜鉛の混合物を配合する必要はない。
メタクリル酸亜鉛を分散させるベースポリマーとしては、下記に例示するゴム成分のいずれであってもよいが、水素添加したアクリロニトリルブタジエンゴム(以下、HNBRという)を用いることがより好ましい。
即ち、ゴム成分として、HNBRにメタクリル酸亜鉛を分散させたゴム成分(1a)を含む熱硬化性エラストマー組成物が本発明における好適な例として挙げられる。
また、ゴム成分(1)としてHNBRにメタクリル酸亜鉛を分散させたゴムのみを用いるのではなく、当該ゴム以外の他のゴムと組み合わせて用いることが好ましい。前記他のゴムとしては下記に例示するゴムのいずれを用いてもよいが、なかでもアクリロニトリルブタジエンゴム(以下、NBRという)または/およびHNBRを用いることが好ましい。
【0012】
予めメタクリル酸亜鉛を分散させたゴム成分を用いる場合は、前記した理由からメタクリル酸亜鉛の含有量がゴム成分全質量100質量部に対し5〜60質量部、好ましくは5〜50質量部の割合となるように、分散させるメタクリル酸亜鉛の配合量および当該ゴムと他のゴムとの混合比を決定すればよい。
なかでも、HNBR100質量部に対してメタクリル酸亜鉛を91質量部〜115質量部で配合したゴムを、ゴム成分全質量100質量部に対し9.3質量部〜126質量部配合していることが好ましく、10〜120質量部配合していることがより好ましく、10〜70質量部配合していることがさらに好ましく、30〜60質量部配合していることがとくに好ましい。
【0013】
メタクリル酸亜鉛を分散させたゴム成分を得るには、HNBR等のゴム成分にメタクリル酸亜鉛を混入して微分散させてもよいし、HNBR等のゴム成分にメタクリル酸と酸化亜鉛とを混入し、混合によって生成されるメタクリル酸亜鉛をゴム成分に微分散させるようにしてもよい。さらに、予めHNBR等のゴム成分にメタクリル酸亜鉛が混合され微分散された市販品を用いることもできる。
【0014】
本発明の熱硬化性エラストマー組成物は、ゴム成分(1)と、充填剤(2)として少なくともメタクリル酸亜鉛またはメタクリル酸と酸化亜鉛の混合物(2a)に加えて、発泡させてスポンジ状とするための化学発泡剤または化学発泡剤と化学発泡助剤を含むことを必須としている。
なお、本明細書においては、化学発泡剤および所望により添加される化学発泡助剤を総称して「発泡用添加剤(4)」と称す。
さらに、本発明の熱硬化性エラストマー組成物は、硫黄、有機硫黄化合物、有機過酸化物、耐熱性架橋剤または樹脂架橋剤からなる群から選択される1種あるいは1種以上の架橋剤(3)を含んでいることが好ましい。
本発明の熱硬化性エラストマー組成物は、充填剤(2)として、メタクリル酸亜鉛およびメタクリル酸以外の共架橋剤、加硫促進剤、酸化亜鉛以外の加硫促進助剤、導電材、受酸剤、老化防止剤、ゴム用軟化剤、補強剤およびその他の添加剤からなる群(これらを総称して「充填剤(2b)」という)から選択される1種あるいは1種以上を含んでいることが好ましい。
【0015】
前記充填剤(2)はゴム成分(1)100質量部に対し5〜80質量部で配合することが好ましい。充填剤(2)の配合量が80質量部を超えると硬度が大きくなりすぎ、本発明の発泡ゴムロールが感光体などの他の部材を傷つけるおそれがあるからである。さらに、メタクリル酸亜鉛またはメタクリル酸と酸化亜鉛の混合物(2a)以外の前記充填剤(2b)の配合量はゴム成分(1)100質量部に対し0.1質量部〜30質量部とすることが好ましい。これは0.1質量部未満であると、材料の補強効果が得られにくくなり、機械的物性が向上しない一方、30質量部を超えると、過剰な補強効果により、高硬度、低引張伸びなど機械的物性に弾性機能が失われることによる。
【0016】
前記加硫剤(3)はゴム成分(1)100質量部に対し0.1〜30質量部で配合していることが好ましい。これは、加硫剤(3)の配合量が0.1質量部未満であると加硫密度が小さくなり所望の物性が得られなくなるおそれがあるからであり、一方、加硫剤(3)の配合量が30質量部を超えると過剰な加硫反応により硬度が大きくなりすぎ、本発明の発泡ゴムロールが感光体などの他の部材を傷つけるおそれがあるからである。
【0017】
前記発泡用添加剤(4)はゴム成分(1)100質量部に対し2〜20質量部で配合していることが好ましい。
より具体的には、化学発泡剤の配合量はゴム成分(1)100質量部に対し3〜15質量部で配合していることが好ましく、4〜10質量部で配合していることがより好ましい。化学発泡助剤の配合量はゴム成分(1)100質量部に対し0.1〜5質量部で配合していることが好ましく、1〜4質量部で配合していることがより好ましい。
発泡剤と発泡助剤との配合量を10:1〜2:1に調整すると、セル径分布が300μm以上500μm以下である発泡体が得られやすい。
【0018】
以上のような熱硬化性エラストマー組成物から構成される本発明の発泡ゴムロールは下記のような物性を有することが好ましい。
本発明の発泡ゴムロールのロール電気抵抗が104〜1010Ωであることが好ましい。ロール電気抵抗が10Ωより小さいと導電性が高く若干トナーを帯電させにくくなるからである。ただし、トナーは帯電しすぎると長期間使用時にかえって帯電性の面で劣化が進むなど必ずしも帯電性が高ければよいものでもないので、本発明の発泡ゴムロールを搭載する画像形成装置やトナーに応じたロール電気抵抗を選択すればよい。一方、ロール電気抵抗が1010Ωを越えると、供給ロールが帯電してしまい、トナー離れが悪くなるなど画像が不安定なるためである。
なかでも、本発明の発泡ゴムロールのロール電気抵抗は10〜1010Ωであることがより好ましい。
【0019】
本発明の発泡ゴムロールのロール電気抵抗は、ゴム成分(1)としてイオン導電性ゴムを含有させるか、または/および、充填剤(2)として導電材を含有させることより調整することができる。
ロール電気抵抗を発泡ゴムロール内や各製品間で安定化させるためには、イオン導電性とすることが好ましい。ブリードにより感光体などの他の部材への汚染のリスクを低減するためにはイオン導電性ゴムを用いることが好ましい。
【0020】
本発明の発泡ゴムロールの硬度は、F硬度で10〜90であることが好ましく、30〜70であることがより好ましい。F硬度は、低硬度な部材の硬度を測るのに適した硬度計であるアスカーF型硬度計を用いて測定する。
詳細には、温度23℃、相対湿度55%の環境下で、アスカーF型硬度計を発泡ゴムロールの中央部で垂直に固定し、芯金の両端部に500gずつの荷重をかけ、5秒後に示す値を読みとる。
【0021】
本発明の発泡ゴムロールにおいては、発泡倍率が7倍以上20倍以下、セル径分布が100μm以上700μm以下であることが好ましい。
発泡倍率が7倍未満であると、硬度が高くなり過ぎ、ニップが小さくなるためトナーを現像ロールへ供給することが困難となる場合が出てくる。一方、発泡倍率が20倍を越えると、硬度が低くなり過ぎ、セルが大きくなりすぎて必要量以上のトナーが現像ロールへ供給され、画像不良が起る場合が出てくる。発泡倍率は8倍〜15倍であることがより好ましい。
また、本発明の発泡ゴムロールは耐摩耗性に優れ極めて高耐久性であるため、セル径が100μm程度でも発泡ゴムロールの摩耗による目詰まりが起りにくく、またセル径が700μm程度まで大きくなってもセル外壁が摩耗して崩れるなどの現象が起らず、比較的広い範囲のセル径が許容される。セル径分布は300μm以上500μm以下であることがより好ましい。セル径が300μmより小さいと現像ロールへ供給するトナー量が少なくなり、500μmを越えると現像ロールへ供給するトナー量が多くなり過ぎ、いずれも画像不良が起る場合が出てくるからである。さらに好ましくは、350μm〜500μmである。
【0022】
本発明の熱硬化性エラストマー組成物に含まれる各成分について詳述する。
ゴム成分(1)としては本発明の目的に反しない限り公知のゴムを用いてよいが、具体的には、例えばNBR、カルボニル基を導入したNBR、HNBR、天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリン系共重合体またはポリエーテル系共重合体等が挙げられる。
【0023】
ゴム成分(1)は1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
2種類のゴムを混合して用いる場合、ゴム成分の総質量を100質量部とすると一方のゴム(「ゴムA」とする)の配合量を90〜50質量部、好ましくは90〜70質量部とし、他方のゴム(「ゴムB」とする)の配合量を10〜50質量部、好ましくは10〜30質量部とすることが好ましい。
ゴムAの配合量を50質量部以上90質量部以下としているのは、ゴムAの配合量が50質量部よりも少ないと物理的強度が低下するおそれがあるからであり、一方、ゴムAの配合量が90質量部を超えるとゴムBの性能が発揮されないおそれがあるからである。
ゴムBの配合量を10質量部以上50質量部以下としているのは、ゴムBの配合量が10質量部よりも少ないとゴムBの性能が発揮されないおそれがあるからであり、一方、ゴムBの配合量が50質量部を超えるとゴムAに基づく物理的強度が低下するおそれがあるからである。
【0024】
ゴム成分(1)としては、ニトリル基含有共重合ゴムを含んでいることが好ましい。
ニトリル基含有共重合ゴムは、α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体を他の単量体と共重合して得られるゴムである。α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリルまたはα−クロロアクリロニトリルなどが挙げられ、なかでもアクリロニトリルが好ましい。α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有量は10〜60質量%、好ましくは12〜55質量%、より好ましくは15〜50質量%である。
α,β−エチレン性不飽和ニトリル単量体と共重合させる単量体としては、共役ジエン単量体、非共役ジエン単量体またはα−オレフィンなどが例示され、なかでも共役ジエン単量体が好ましい。これら単量体と、芳香族ビニル系単量体、フッ素含有ビニル系単量体、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸、α,β−エチレン性不飽和多価カルボン酸またはその無水物などとを併用してもよい。
共役ジエン単量体としては、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンまたは1,3−ペンタジエンなどが挙げられ、なかでも1,3−ブタジエンが好ましい。
【0025】
ニトリル基含有共重合ゴムには、前記ニトリル基含有共重合ゴムの炭素−炭素不飽和結合を公知の方法で水素添加することにより得られる水素添加ゴムも含まれる。なかでも、残存二重結合が30%以下である水素添加ゴムが好ましく、残存二重結合が10%以下である水素添加ゴムがより好ましい。
さらに、ニトリル基含有共重合ゴムには、前記ニトリル基含有共重合ゴムまたはその水素添加ゴムにカルボニル基が導入されているゴムも含まれる。
【0026】
ニトリル基含有共重合ゴムの具体例としては、NBR、アクリロニトリル−イソプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン−アクリレートゴムもしくはアクリロニトリル−ブタジエン−アクリレート−メタクリル酸ゴム、これらゴムの水素添加ゴム、またはこれらゴムにカルボニル基が導入されているゴムなどが挙げられる。
【0027】
なかでも、ゴム成分(1)としてはNBRまたは/およびHNBRを含んでいることがより好ましい。特に、残存二重結合が10%以下であるHNBRを用いることが最も好ましい。NBRまたはHNBRは引張強度や引裂強度が高く、耐破壊性に優れるという特性を有する。
【0028】
NBRまたはHNBRの原料となるNBRとしては、結合アクリロニトリル量が25%以下である低ニトリルNBR、結合アクリロニトリル量が25%〜31%である中ニトリルNBR、結合アクリロニトリル量が31%〜36%である中高ニトリルNBR、結合アクリロニトリル量が36%以上である高ニトリルNBRのいずれを用いてもよい。
なかでも、NBRとしては、アクリロニトリル含量が31〜35%である中高ニトリルNBR、アクリロニトリル含量が36〜50%である高ニトリルNBRを用いることがより好ましい。
また、前記HNBRとしては、結合アクリロニトリル量が21%〜46%で、ムーニー粘度ML1+4(100℃)が20〜160であるHNBRを用いることがより好ましい。結合アクリロニトリル量が21%未満であると機械的物性が低下し、一方結合アクリロニトリル量が46%を超えると熱硬化性エラストマーのガラス転移温度Tgが高くなってしまう。HNBRの結合アクリロニトリル量はより好ましくは21%〜44%であり、さらに好ましくは31〜35%である。また、HNBRのムーニー粘度ML1+4(100℃)が20未満であると分子量が低下し耐摩耗性が悪くなりやすく、一方HNBRのムーニー粘度ML1+4(100℃)が160を超えると過剰な分子量分布から混練や成形が困難となる。HNBRのムーニー粘度ML1+4(100℃)はより好ましくは40〜150である。なお、ムーニー粘度はJIS
K 6300に従って測定する。
【0029】
本発明の発泡ゴムロールのロール電気抵抗を前記所定の範囲に調整するためにはイオン導電性ゴムを含むことが好ましい。
前記イオン導電性ゴムとしてはエチレンオキサイドを含有する共重合体が挙げられる。エチレンオキサイドを含有する共重合体としては、例えばポリエーテル系共重合体またはエピクロルヒドリン系共重合体などが挙げられる。
【0030】
エピクロルヒドリン系共重合体としては、例えば、エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体等が挙げられる。
【0031】
エピクロルヒドリン系共重合体としてはエチレンオキサイドを含む共重合体が好ましく、エチレンオキサイド含量が30モル%以上95モル%以下、好ましくは55モル%以上95モル%以下、さらに好ましくは60モル%以上80モル%以下である共重合体が特に好適である。エチレンオキサイドは体積固有抵抗値を下げる働きがあるが、エチレンオキサイド含量が30モル%未満であるとその体積固有抵抗値の低減効果が小さい。一方、エチレンオキサイド含量が95モル%を超えると、エチレンオキサイドの結晶化が起こり分子鎖のセグメント運動が妨げられるため、逆に体積固有抵抗値が上昇する傾向があると共に、加硫ゴムの硬度上昇や加硫前のゴムの粘度上昇と言った問題が生じやすい。
【0032】
なかでも、エピクロルヒドリン系共重合体としてはエピクロルヒドリン(EP)−エチレンオキサイド(EO)−アリルグリシジルエーテル(AGE)共重合体を用いることが特に好ましい。前記共重合体中のEO:EP:AGEの好ましい含有比率はEO:EP:AGE=30〜95モル%:4.5〜65モル%:0.5〜10モル%であり、さらに好ましい比率はEO:EP:AGE=60〜80モル%:15〜40モル%:2〜6モル%である。
また、エピクロルヒドリン系共重合体としては、エピクロルヒドリン(EP)−エチレンオキサイド(EO)共重合体を用いることもできる。前記共重合体中のEO:EPの好ましい含有比率はEO:EP=30〜80モル%:20〜70モル%であり、さらに好ましい比率はEO:EP=50〜80モル%:20〜50モル%である。
【0033】
ポリエーテル系共重合体としては、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグルシジルエーテル共重合体、エチレンオキサイド−アリルグルシジルエーテル共重合体、プロピレンオキサイド−アリルグルシジルエーテル共重合体、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体またはウレタン系ゴム等が挙げられる。
【0034】
ポリエーテル系共重合体としてはエチレンオキサイドを含む共重合体が好ましく、エチレンオキサイド含量が50〜95モル%である共重合体がより好ましい。エチレンオキサイドの比率が高い方が多くのイオンを安定化でき低抵抗化が実現できるが、エチレンオキサイドの比率を上げすぎるとエチレンオキサイドの結晶化が起こり分子鎖のセグメント運動が妨げられるため、逆に体積固有抵抗が上昇する可能性があるからである。
【0035】
ポリエーテル系共重合体はエチレンオキサイドに加えてアリルグリシジルエーテルをも含むことが好ましい。アリルグリシジルエーテルを共重合することにより、このアリルグリシジルエーテルユニット自体が側鎖として自由体積を得ることから、前記エチレンオキサイドの結晶化を抑制することができ、その結果として従来にない低抵抗化が実現できる。さらにアリルグリシジルエーテルの共重合により炭素−炭素間の二重結合を導入して他のゴムとの架橋を可能にでき、他のゴムと共架橋することによりブリードや感光体などの他の部材の汚染を防止することができる。
ポリエーテル系共重合体中のアリルグリシジルエーテル含量としては1〜10モル%が好ましい。1モル%未満ではブリードや他の部材の汚染の発生が起こり易くなる一方、10モル%を越えると、それ以上の結晶化の抑制効果は得られず、加硫後の架橋点の数が多くなり、却って低抵抗化が実現できず、また引張強度や疲労特性、耐屈曲性等が悪化することとなる。
【0036】
本発明で用いるポリエーテル系共重合体としては、なかでもエチレンオキサイド(EO)−プロピレンオキサイド(PO)−アリルグリシジルエーテル(AGE)三元共重合体を用いることが好ましい。プロピレンオキサイドを共重合させることにより、エチレンオキサイドによる結晶化をさらに抑制することができる。前記ポリエーテル系共重合体中のEO:PO:AGEの好ましい含有比率はEO:PO:AGE=50〜95モル%:1〜49モル%:1〜10モル%である。さらに、ブリードや他の部材の汚染をより有効に防止するため、前記EO−PO−AGE三元共重合体の数平均分子量Mnは10,000以上であることが好ましい。
【0037】
充填剤(2)としては、共架橋剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、導電材、受酸剤、老化防止剤、ゴム用軟化剤、補強剤およびその他の添加剤が挙げられる。
【0038】
共架橋剤とは、それ自身も架橋すると共に、ゴム分子とも反応して架橋し全体を高分子化する働きをするものを総称している。
共架橋剤としては、メタクリル酸エステル、メタクリル酸もしくはアクリル酸の金属塩に代表されるエチレン性不飽和単量体、1,2−ポリブタジエンの官能基を利用した多官能ポリマー類またはジオキシム等を用いることができる。
【0039】
エチレン性不飽和単量体としては、
(a) アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのモノカルボン酸類、
(b) マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのジカルボン酸類、
(c) 前記(a)、(b)の不飽和カルボン酸類のエステルまたは無水物、
(d) (a)〜(c)の金属塩、
(e) 1,3−ブタジエン、イソプレン、2−クロル−1,3−ブタジエンなどの脂肪族共役ジエン、
(f) スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼンなどの芳香族ビニル化合物、
(g) トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ビニルピリジンなどの複素環を有するビニル化合物、
(h) その他、(メタ)アクリロニトリルもしくはα−クロルアクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物、アクロレイン、ホルミルスチロール、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトンなどが挙げられる。
【0040】
前記(c)の「モノカルボン酸類のエステル」としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、i−ペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、i−ノニル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のアルキルエステル;
アミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ブチルアミノエチルアクリレートなどの(メタ)アクリル酸のアミノアルキルエステル;
ベンジル(メタ)アクリレート、ベンゾイル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレートなどの芳香族環を有する(メタ)アクリレート;
グリシジル(メタ)アクリレート、メタグリシジル(メタ)アクリレート、エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基を有する(メタ)アクリレート;
N−メチロール(メタ)アクリルアミド、γ−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、テトラハイドロフルフリルメタクリレートなどの各種官能基を有する(メタ)アクリレート;
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンジメタクリレート(EDMA)、ポリエチレングリコールジメタクリレート、イソブチレンエチレンジメタクリレートなどの多官能(メタ)アクリレート;
等が挙げられる。
【0041】
前記(c)の「ジカルボン酸類のエステル」としては、マレイン酸メチルもしくはイタコン酸メチルなどのハーフエステル類、またはジアリルフタレート類、ジアリルイタコネート類が挙げられる。
前記(c)の「不飽和カルボン酸類の無水物」としては、例えばアクリル酸無水物、マレイン酸無水物等が挙げられる。
【0042】
前記(d)の「金属塩」としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸もしくはフマル酸等のような不飽和カルボン酸の、ナトリウム塩、アルミニウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩またはマグネシウム塩等が挙げられる。
【0043】
なかでも、本発明において好適に用いられるエチレン性不飽和単量体としては、
メタクリル酸;
トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPT)、エチレンジメタクリレート(EDMA)、ポリエチレングリコールジメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、アリルメタクリレート、テトラハイドロフルフリルメタクリレートもしくはイソブチレンエチレンジメタクリレートなどのメタクリル酸高級エステル;
アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸もしくはマレイン酸などの亜鉛塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩等のα,β−不飽和カルボン酸の金属塩;
トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルイタコネート、ビニルトルエン、ビニルピリジンまたはジビニルベンゼン等が挙げられる。
特にメタクリル酸またはα,β−不飽和カルボン酸の金属塩がより好ましく、メタクリル酸、アクリル酸亜鉛またはメタクリル酸亜鉛がさらに好ましい。
【0044】
前記多官能ポリマー類としては、1,2−ポリブタジエンの官能基を利用した多官能ポリマー類が挙げられ、より具体的にはButon150、Buton100、ポリブタジエンR−15、Diene−35またはHystal−B2000等が挙げられる。
前記ジオキシムとしては、例えばp−キノンジオキシム、p,p’−ジベンゾイルキノンジオキシムまたはN,N’−m−フェニレンビスマレイミド等が挙げられる。
【0045】
加硫促進剤としては、無機促進剤または有機促進剤のいずれも用いることができる。
無機促進剤としては、消石灰、酸化マグネシウム、酸化チタンまたはリサージ(PbO)等が挙げられる。
有機促進剤としては、チラウム類、チアゾール類、チオウレア類、ジチオカーバミン酸塩類、グアニジン類およびスルフェンアミド類等が例示される。
チラウム類としては、テトラメチルチラウムモノスルフィド、テトラメチルチラウムジスルフィド、テトラエチルチラウムジスルフィド、テトラブチルチラウムジスルフィドまたはジペンタメチレンチラウムテトラスルフィド等が挙げられる。
チアゾール類としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾチアジルジスルフィド、N−シクロヘキシルベンゾチアゾール等が挙げられる。
チオウレア類としては、N,N’−ジエチルチオウレア、エチレンチオウレアまたはトチメチルチオウレア等が挙げられる。
ジチオカーバミン酸塩類としては、ジメチルジチオカーバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカーバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカーバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカーバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカーバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカーバミン酸銅、ジメチルジチオカーバミン酸鉄(III)、エチルジチオカーバミン酸セレン、ジエチルジチオカーバミン酸テルル等が挙げられる。
グアニジン系促進剤としては、ジ−o−トリルグアニジン、1,3−ジフェニルグアニジン、1−o−トリルビグアニド、ジカテコールボレートのジ−o−トリルグアニジン塩等が挙げられる。
スルフェンアミド類としては、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンソチアゾリルスルフェンアミド、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミドまたはN,N’−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド等が挙げられる。
【0046】
前記加硫促進剤の配合量はゴム成分の物性が十分発揮される量であればよい。通常は無機促進剤の場合はゴム成分100質量部に対して0.5〜15質量部の範囲から選択され、有機促進剤の場合はゴム成分100質量部に対して0.5〜3質量部の範囲から選択される。
【0047】
前記加硫促進助剤としては、酸化亜鉛等の金属酸化物;ステアリン酸、オレイン酸もしくは綿実脂肪酸等の脂肪酸;その他従来公知の加硫促進剤が挙げられる。なお、酸化亜鉛等の金属酸化物は下記の補強剤としての役割も果たす。
当該加硫促進助剤の配合量はゴム成分の物性が十分発揮される量であればよく、通常はゴム成分100質量部に対して0.5〜30質量部、好ましくは1〜30質量部の範囲から選択される。
【0048】
前記導電材としては、イオン導電材と電子導電材とに大別される。いずれかを単独で用いてもよいし、両者を併用してもよい。
イオン導電材は種々選択できるが、例えば第4級アンモニウム塩、カルボン酸の金属塩、カルボン酸無水物もしくはエステル類等のカルボン酸誘導体、芳香族系化合物の縮合体、有機金属錯体、金属塩、キレート化合物、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、ヒドロキシカルボン酸金属錯体、ポリカルボン酸金属錯体、ポリオール金属錯体等の帯電防止剤または電荷制御剤などとして使用されているものを用いることができる。
また、イオン導電材としては、フルオロ基(F−)およびスルホニル基(−SO2−)を有する陰イオンを備えた塩も好適な例として挙げられる。より具体的には、ビスフルオロアルキルスルホニルイミドの塩、トリス(フルオロアルキルスルホニル)メタンの塩またはフルオロアルキルスルホン酸の塩などが挙げられる。前記塩において陰イオンと対になる陽イオンとしては、アルカリ金属、2A族またはその他の金属イオンが好ましく、なかでもリチウムイオンがより好ましい。前記イオン導電材として具体的には、例えばLiCFSO、LiCSO、LiN(SOCF、LiC(SOCF、LiCH(SOCF等が挙げられる。
イオン導電材の配合量は、その種類によって適宜選択することができるが、例えばゴム成分(1)100質量部に対して0.1〜5質量部であることが好ましい。
【0049】
電子導電材としては、ケッチェンブラック、ファーネスブラックもしくはアセチレンブラック等の導電性カーボンブラック;酸化亜鉛、チタン酸カリウム、アンチモンドープ酸化チタン、酸化スズもしくはグラファイト等の導電性金属酸化物;カーボン繊維等が挙げられる。なかでも、導電性カーボンブラックを用いることが好ましい。
電子導電材の配合量は電気抵抗値などの物性を見ながら適宜選択すればよいが、例えばゴム成分(1)100質量部に対して5〜35質量部程度である。
【0050】
受酸剤としては酸受容体として作用する種々の物質を用いることができるが、分散性に優れていることからハイドロタルサイト類またはマグサラットを用いることが好ましく、特にハイドロタルサイトを用いることがより好ましい。さらに、これらに酸化マグネシウムや酸化カリウムと併用することにより高い受酸効果が得られ、他の部材の汚染をより確実に防止することができる。
特にゴム成分(1)として塩素原子を有するゴムを用いる場合、受酸剤を配合することが好ましい。受酸剤を配合することにより、ゴム加硫時に発生する塩素系ガスの残留および他の部材の汚染を防止することができる。
受酸剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対し1質量部以上10質量部以下、好ましくは1質量部以上5質量部以下としている。加硫阻害および他の部材の汚染を防止する効果を有効に発揮させるため受酸剤の配合量は1質量部以上であることが好ましく、硬度の上昇を防ぐため受酸剤の配合量は10質量部以下であることが好ましい。
【0051】
前記老化防止剤としてはアミン類、フェノール類、イミダゾール類、リン類またはチオウレア類等が挙げられる。
アミン類としては、フェニル−α−ナフチルアミン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンポリマー(TMDQ)、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン(ETMDQ)、p,p’−ジオクチルジフェニルアミン(ODPA)、p,p’−ジクミルジフェニルアミン(DCDP)、N,N’−ジ−2−ナフチル−p−フェニレンジアミン(DNPD)、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン(DPPD)、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン(IPPD)、N−フェニル−N’−1,3−ジメチルブチル−p−フェニレンジアミン(6PPD)等が挙げられる。
フェノール類としては、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール(BHTまたはDTBMP)、スチレン化メチルフェノール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(MBMBP)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(TBMTBP)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(BBMTBP)、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン(DBHQ)、2,5−ジ−tert−アミルハイドロキノン(DAHQ)等が挙げられる。
イミダゾール類としては、2−メルカプトベンズイミダゾール(MBI)、2−メルカプトベンズイミダゾールの亜鉛塩(ZnMBI)、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル(NiBDC)等が挙げられる。
その他、トリス(ノニル化フェニル)フォスファイトなどのリン類、1,3−ビス(ジアミノプロピル)−2−チオウレアもしくはトリブチルチオウレアなどのチオウレア類、オゾン劣化防止用ワックス等を用いてもよい。
【0052】
前記老化防止剤の配合量はゴム成分の物性が十分発揮される量であればよく、2種以上を組み合わせることも可能である。通常はゴム成分(1)100質量部に対して0.1〜15質量部であることが好ましい。ゴム成分(1)100質量部に対する老化防止剤の配合量を0.1質量部〜15質量部としているのは、配合量が0.1質量部未満であると、老化防止の効果が発揮されず、機械的物性の低下や摩耗が激しく進行してしまうおそれがあるためであり、配合量が15質量部を超えると、過剰な配合により分散不良が生じ、機械的物性の低下を招くおそれがあるためである。好ましくは、ゴム成分(1)100質量部に対する老化防止剤の配合量が0.5質量部〜10質量部である。
【0053】
前記ゴム用軟化剤としては、具体的には、フタル酸誘導体、イソフタル酸誘導体、アジピン酸誘導体、セバチン酸誘導体、安息香酸誘導体、リン酸誘導体などが挙げられる。
より具体的には、ジブチルフタレート(DBP)、ジ−(2−エチルヘキシル)フタレート、ジオクチルフタレート(DOP)、ジイソオクチルフタレート(DIOP)、高級アルコール−フタレート、ジ−(2−エチルヘキシル)セバケート、アジピン酸ポリエステル、ジブチルジグリコール−アジペート、ジ(ブトキシエトキシエチル)アジペート、イソオクチル−トール油脂肪酸エステル、トリブチルホスフェート(TBP)、トリブトキシエチル−ホスフェート(TBEP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、クレジル−ジフェニクルホスフェート(CDP)、ジフェニルアルカン等が挙げられる。
前記軟化剤の配合量はゴム成分の物性が十分発揮される量であればよく、通常はゴム成分100質量部に対して0.5〜5質量部の範囲から選択される。
【0054】
前記補強剤としては、ゴムとの相互作用を導くフィラーとして主にカーボンブラックが使用される他、例えばホワイトカーボン(例えば乾式シリカもしくは湿式シリカなどのシリカ系充填剤、ケイ酸マグネシウムなどのケイ酸塩等)、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、マグネシウム・シリケート、クレー(ケイ酸アルミニウム)、シラン改質クレーもしくはタルクなどの無機補強剤や、クマロンインデン樹脂、フェノール樹脂、ハイスチレン樹脂、木粉等の有機補強剤が使用できる。
なかでも、補強効果、コスト、分散性および耐摩耗性の観点より、カーボンブラックを用いることが好ましい。該カーボンブラックとしては、例えばSAFカーボン(平均粒径18〜22nm)、SAF−HSカーボン(平均粒径20nm前後)、ISAFカーボン(平均粒径19〜29nm)、N−339カーボン(平均粒径24nm前後)、ISAF−LSカーボン(平均粒径21〜24nm)、I−ISAF−HSカーボン(平均粒径21〜31nm)、HAFカーボン(平均粒径26〜30nm)、HAF−HSカーボン(平均粒径22〜30nm)、N−351カーボン(平均粒径29nm前後)、HAF−LSカーボン(平均粒径25〜29nm)、LI−HAFカーボン(平均粒径29nm前後)、MAFカーボン(平均粒径30〜35nm)、FEFカーボン(平均粒径40〜52nm)、SRFカーボン(平均粒径58〜94nm)、SRF−LMカーボン、GPFカーボン(平均粒径49〜84nm)等が例示される。なかでも、FEFカーボン、ISAFカーボン、SAFカーボンまたはHAFカーボンを用いることが好ましい。
また、研磨性を高めるとともに、イオン導電性を維持するためには、粒径が80μm以上のファーネスカーボン、サーマルカーボンを使用することが有効である。
前記補強剤の配合量はゴム成分の物性が十分発揮される量であればよく、通常はゴム成分100質量部に対して5〜75質量部の範囲から選択される。
【0055】
前記添加剤としては、アミド化合物、脂肪酸金属塩またはワックス等が挙げられる。
アミド化合物としては、脂肪族系アミド化合物または芳香族系アミド化合物が挙げられる。特に、脂肪族系アミド化合物としては、オレイン酸、ステアリン酸、エルカ酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、アラキジン酸、ヘベニン酸、パルミトレイン酸、エイコセン酸、エルシン酸、エライジン酸、トランス−11−エイコセン酸、トランス−13−ドコセン酸、リノール酸、リノレン酸またはリシノール酸のアミド体が挙げられ、1種類を単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミドを用いるのが好ましい。
脂肪酸金属塩としては、ラウリル酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸およびオレイン酸のうちから選ばれる脂肪酸と、亜鉛、鉄、カルシウム、アルミニウム、リチウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウム、セリウム、チタン、ジルコニウム、鉛およびマンガンのうちから選ばれる金属とからなる塩が挙げられる。
ワックスとしては、パラフィン系、モンタン系、アマイド系等が挙げられる。
【0056】
前記添加剤の配合量はゴム成分の物性が十分発揮される量であればよく、通常はゴム成分100質量部に対して1〜10質量部の範囲から選択される。
【0057】
架橋剤(3)としては、硫黄、有機硫黄化合物、有機過酸化物、耐熱性架橋剤および樹脂架橋剤が挙げられる。
【0058】
硫黄としては、通常回収硫黄を粉砕し微粉としたものが使用される。分散性などを改良した表面処理硫黄も適宜使用することができる。また、未加硫ゴムからのブルームを避けるために不溶性硫黄も使用することができる。
有機含硫黄化合物としては、例えば、N,N’−ジチオビスモルホリン、ジフェニルジスルフィド、ペンタブロモジスルフィドなどが挙げられる。なかでも、ジフェニルジスルフィドを用いることが好ましい。
硫黄または有機硫黄化合物の配合量はゴム成分100質量部に対し0.1〜20質量部であることが好ましい。
【0059】
有機過酸化物としては、ベンゾイルパーオキシド、1,1−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(ベンゾイルパーオキシ)−3−ヘキシン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−tert−ブチルパーオキシジイソプロピルベンゼン、ジ−tert−ブチルパーオキシド、ジ−tert−ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキシド、tert−ブチルクミルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)−3−ヘキシン、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、n−ブチル−4,4−ビス(tert−ブチルパーオキシ)バレレート、p−クロロベンゾイルパーオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキシド、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等が挙げられる。
有機過酸化物の配合量はゴム成分100質量部に対し0.5〜10質量部であることが好ましく、1〜6質量部であることがより好ましい。
【0060】
耐熱性架橋剤としては、1,3−ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼン、ヘキサメチレン−1,6−ビスチオ硫酸ナトリウム・二水和物、1,6−ビス(ジベンジルチオカルバモイルジスルフィド)ヘキサン等が挙げられる。
【0061】
樹脂架橋剤としては、タッキーロール201、タッキーロール250−III(以上、田岡化学工業(株)製)、ヒタノール2501(日立化成工業(株)製)などアルキルフェノール樹脂または臭素化アルキルフェノールホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。なかでも、アルキルフェノール樹脂を用いることが好ましい。
樹脂架橋剤の配合量はゴム成分100質量部に対し5〜20質量部であることが好ましく、10〜20質量部であることがより好ましい。
【0062】
発泡用添加剤(4)としては、化学発泡剤および所望により添加される化学発泡助剤がある。
化学発泡剤としては、例えばアゾジカルボンアミド(ADCA)、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)または5,5’−ビス−1H−テトラゾール(BHT)等が挙げられる。なかでも、ADCAを用いることが好ましい。
化学発泡助剤は、化学発泡剤の種類に応じて用いられる。例えば化学発泡剤としてADCAを用いる場合、発泡助剤として尿素を用いることができる。
【0063】
本発明の発泡ゴムロールは、例えば以下のようにして製造することができる。
まず、一軸押出機、1.5軸押出機、二軸押出機、オープンロール、ニーダー、バンバリーミキサーまたは熱ロールなどの混練装置を用いて前記各成分を混合することにより熱硬化性エラストマー組成物を得る。各成分の混合順序は特に限定されず、全ての成分を一度に混練装置に投入して混合してもよいし、一部の成分を混練装置に投入して予め混練しておき、得られた混合物に残りの成分を添加し混練してもよい。好ましくは、ゴム成分(1)と充填剤(2)を予め混練しておき、得られた混合物に架橋剤(3)および発泡用添加剤(4)を添加し混練する方法がよい。
得られた熱硬化性エラストマー組成物の架橋は混練物の成形前または成形後に行っても、また作業時間を短縮するために混練物の成形と同時に行ってもよい。通常は熱硬化性エラストマー組成物を公知の方法で予備成形し、予備成形体を架橋する。架橋条件は熱硬化性エラストマー組成物の組成等により異なるので一概には言えないが、加硫させる場合は加硫温度を100〜160℃、加硫時間を1〜60分間、より好ましくは30〜60分間とすることが好適である。最適加硫時間を1分未満となるように設定すると混練や押し出し等の工程でゴム焼けを生じ得るという問題があり、最適加硫時間が60分を越えるように設定すると生産性が低下するという問題が生じるためである。
ついで、架橋した成形体に芯金を挿入し、研磨、カットして、本発明の発泡ゴムロールが得られる。
【0064】
本発明の発泡ゴムロールはレーザービームプリンター、インクジェットプリンター、複写機、ファクシミリまたはATMなどのOA機器における画像形成装置等に好適に用いることができる。具体的には、本発明の発泡ゴムロールは、感光ドラムを一様に帯電させるための帯電ロール、トナーを感光体に付着させるための現像ロール、トナーを搬送させるためのトナー供給ロール、トナー像を感光体から転写ベルトや用紙に転写するための転写ロール、転写ベルトを内側から駆動するための駆動ロール等として用いることができる。なかでも、画像形成装置の現像機構においてトナー担持体の表面に現像剤を供給するためのトナー供給ロールとして好適に用いられる。
【発明の効果】
【0065】
本発明の発泡ゴムロールは極めて耐摩耗性に優れているので、高発泡にしても長期間にわたり寸法や発泡状態がほとんど変化しない。その結果、摩耗により外径精度が悪化しトナーの供給ムラによって画像ムラが発生したり、摩耗により表面のセルに目詰まりが起きトナーの供給量が低下して印刷濃度が下がったりするのを防ぐことができる。
本発明の発泡ゴムロールにおいては、高発泡で、均一な安定したセルが形成されている。ゆえに、一回の搬送で十分な量のトナー粒子を運ぶことができ、かつ搬送トナー量のばらつきに起因する画像不良を防ぐこともできる。
本発明においては用いるゴム成分が限定されないので、製品に応じた安価な材料を選ぶことができ材料費を低廉できる上に、通常の設備を使用して製造できるので製造コストも抑えられ、低コストで高い生産性が確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0066】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
本発明の発泡ゴムロール10は、図1に示すように、芯金2およびその外周面上に形成された発泡弾性層1を備えている。
発泡弾性層1は円筒状に成形されており、その肉厚は2mm〜10mm、好ましくは3mm〜6mmである。これは、肉厚が2mm以下だと、適当なニップがかせげないためであり、10mm以下だと部材が大きすぎて小型軽量化に向かないことによる。
芯金2は、アルミニウム、アルミニウム合金、SUSもしくは鉄等の金属製、またはセラミック製等とすることができる。
前記発泡弾性層1と芯金2とは導電性接着剤で接合されていてもよいし、導電性接着剤を用いずに発泡弾性層1の中空部に円柱形状の芯金(シャフト)2が圧入されているだけであってもよい。
【0067】
本発明の発泡ゴムロール10は、図2に示すように、感光ドラム20に沿って配置される現像ロール21にトナー4を供給するトナー供給ロール10Aとして用いられるものである。図中、22はトナー4の漏れを防止するシール部材である。
図1および図2においては、芯金2の外周面上に発泡弾性層1の1層のみが形成されているが、発泡弾性層1を最外層として複数層が形成されていてもよい。発泡弾性層1以外の内層については本発明の目的に反しない限り、種々の機能および組成を有するものであってよい。
【0068】
発泡弾性層1を構成する熱硬化性エラストマー組成物について以下に述べる。
第一実施形態では、下記成分からなる熱硬化性エラストマー組成物としている。
ゴム成分(1)としてはNBRまたはHNBRを用いている。
NBRとしては、結合アクリロニトリル量が31%〜36%である中高ニトリルNBRを用いることが好ましい。
HNBRとしては、中高ニトリルNBRに水素添加し、残存二重結合が10%以下としたものが好ましい。なかでも、結合アクリロニトリル量が21%〜44%であり、ムーニー粘度ML1+4(100℃)が40〜150であるHNBRがより好ましい。
【0069】
充填剤(2)としては、メタクリル酸亜鉛またはメタクリル酸と酸化亜鉛の混合物(2a)に加えて、導電材を用いている。
メタクリル酸亜鉛はゴム成分(1)100質量部に対して5〜60質量部、好ましくは10〜40質量部、より好ましくは15〜30質量部となるように配合されている。
メタクリル酸と酸化亜鉛の混合物は、メタクリル酸の配合量と酸化亜鉛の配合量との和がゴム成分(1)100質量部に対して5〜60質量部、好ましくは10〜40質量部、より好ましくは15〜30質量部となるように配合されている。メタクリル酸と酸化亜鉛の混合比(質量)は1〜2:1、好ましく1:1である。
導電材としては、導電性カーボンブラックからなる電子導電材を用いている。特にアセチレンブラックを用いることが好ましい。導電材の配合量はゴム成分100質量部に対して10〜20質量部となるように配合されている。
【0070】
架橋剤(3)として、硫黄化合物または/および有機過酸化物を用いている。これらは1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
前記硫黄化合物としてはジフェニルジスルフィドを用いることが好ましい。硫黄化合物の配合量はゴム成分100質量部に対し0.1質量部〜5質量部であることが好ましい。
前記有機過酸化物としてはジクミルパーオキシドを用いることが好ましい。有機過酸化物の配合量はゴム成分100質量部に対し0.5質量部〜10質量部、好ましくは1質量部〜6質量部である。
【0071】
発泡用添加剤(4)としては、化学発泡剤としてアゾジカルボンアミドをゴム成分100質量部に対して4〜10質量部使用し、さらに化学発泡助剤として尿素をゴム成分100質量部に対して0.5〜5質量部使用している。
【0072】
第二実施形態の熱硬化性エラストマー組成物は下記の成分としている。
ゴム成分(1)としては、NBRまたはHNBR、好ましくはHNBRと、イオン導電性ゴムを組み合わせて用いている。
NBRおよびHNBRについては前記第一実施態様と同様である。
イオン導電性ゴムとし、EO−PO−AGE三元共重合体からなるポリエーテル共重合体を用いてる。EO−PO−AGE三元共重合体においては、エチレンオキサイド:プロピレンオキサイド:アリルグリシジルエーテルの含有比率が80〜95モル%:1〜10モル%:1〜10モル%であることが好ましく、また、当該共重合体の数平均分子量Mnは1万以上であることが好ましく、3万以上であることがより好ましく、5万以上であることがさらに好ましい。
【0073】
充填剤(2)としては、メタクリル酸亜鉛またはメタクリル酸と酸化亜鉛の混合物(2a)に加えて、補強剤を用いている。
前記(2a)については前記第一実施態様と同様である。
補強剤としては炭酸カルシウムを用いることが好ましい。補強剤の配合量はゴム成分100質量部に対して10〜60質量部が好ましく、10〜30質量部がより好ましい。
架橋剤(3)および発泡用添加剤(4)については第一実施態様と同様である。
【0074】
第三実施形態の熱可塑性エラストマー組成物は下記の成分としている。
ゴム成分(1)としては、ベースポリマーであるHNBRにメタクリル酸亜鉛を微分散させたゴムを用いる。該HNBRにメタクリル酸亜鉛を微分散させたゴムと、それ以外の他のゴムとを組み合わせて用いることが好ましい。他のゴムとしてはNBRまたは/およびHNBRが好ましい。
【0075】
メタクリル酸亜鉛の含有量がゴム成分(1)全質量100質量部に対して5〜60質量部、好ましくは10〜40質量部、より好ましくは15〜30質量部となるように調整されている。
より具体的には、ベースポリマーであるHNBRに分散させるメタクリル酸亜鉛の量は、HNBR100質量部に対して91質量部〜110質量としている。なお、ベースポリマーであるHNBRは、結合アクリロニトリル量が21%〜44%であり、さらにムーニー粘度ML1+4(100℃)が40〜150であることが好ましい。
HNBRにメタクリル酸亜鉛を微分散させたゴムと他のゴムとの配合割合は、HNBRにメタクリル酸亜鉛を微分散させたゴムの配合量がゴム成分(1)全質量100質量部に対して9.5質量部〜126質量部、好ましくは10〜120質量部となるように調整している。
充填剤(2)としては、前記第二実施態様と同様の導電材を用いている。
架橋剤(3)および発泡用添加剤(4)は前記第一実施態様と同様である。
【0076】
前記第1、第2、第3のいずれかの態様を有する熱硬化性エラストマー組成物からなる発泡弾性層1を有する発泡ゴムロール10は、以下の方法で作製している。
【0077】
まず、ゴム成分(1)と充填剤(2)を1軸押出機、1.5軸押出機、2軸押出機、オープンロール、ニーダー、バンバリーミキサーまたは熱ロールなどの混練装置を用いて混練する。混練温度は80℃〜120℃、混練時間は5〜6分である。混練温度が80℃未満、混練時間が5分未満ではゴム成分(1)が十分に可塑化せず混練りが不十分となりやすいからであり、混練温度が120℃を超え、混練時間が6分を超えてはゴム成分(1)が分解するおそれがあるからである。
【0078】
ついで、得られた混合物に架橋剤(3)および発泡用添加剤(4)を添加し、前記のような混練装置を用いて混練する。混練温度は80℃〜90℃、混練時間は5分〜6分である。混練温度が80℃未満、混練時間が5分未満では混合物が十分に可塑化せず混練りが不十分となりやすいからであり、混練温度が90℃を超え、混練時間が6分を超えては架橋剤(3)が分解するおそれがあるからである。
【0079】
以上のようにして得られた熱硬化性エラストマー組成を公知の方法で予備成形する。成形方法は特に限定されず、射出成形や圧縮成形など公知の成形方法を用いればよい。
ついで、得られた予備成形体を加硫する。加硫条件としては、加硫温度を160℃、加硫時間を30〜60分間とすることが好適である。
ついで、加硫した成形体に芯金2を挿入し、研磨、カットして、本発明の発泡ゴムロール10が得られる。
【0080】
このようにして製造される本実施態様の発泡ゴムロールのロール電気抵抗は10〜1010Ω、より好ましくは10〜10Ωである。
また、発泡弾性層1の発泡倍率が8倍以上15倍以下、セル径分布が150μm以上500μm以下、より好ましくは200μm以上400μm以下である。
【0081】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜10、比較例1〜4)
ゴム成分(1)および充填剤(2)を下記表に示す配合量(単位は質量部)計量し、ゴム混練装置に投入して80〜120℃に加熱しながら5分〜6分間混練りした。なお、表2において括弧書きで示したメタクリル酸亜鉛の配合量はゴム成分としてHNBRに分散されているメタクリル酸亜鉛の含有量である。
得られた混合物と下記表に示す配合量(単位は質量部)の架橋剤(3)および発泡用添加剤(4)をゴム混練装置に投入して、80〜90℃に加熱しながら5〜6分間程度混練りした。
得られた熱硬化性エラストマー組成物を単軸押出機にてチューブ状に予備成形した。
該チューブを加硫用シャフトに装着し、加硫缶にて160℃で1時間加硫を行った後、導電性接着剤を塗布したφ6mmのシャフトに装着して160℃のオーブン内で接着した。その後、端部をカット成形し、円筒研磨機でトラバース研磨、ついで仕上げ研磨として鏡面研磨を施した。その結果、シャフト径φ6mm、ロール外径φ12mmm、ゴム長さ220mmの発泡ゴムロールを得た。
【0082】
【表1】

【0083】
【表2】

【0084】
前記表に記載の成分については具体的に下記製品を用いた。
(a)ゴム成分(1)
・ポリエーテル系共重合体:日本ゼオン(株)製「ゼオスパンZSN8030」
EO(エチレンオキサイド)/PO(プロピレンオキサイド)/AGE(アリルグリシ ジルエーテル)=90mol%/4mol%/6mol%
・NBR;JSR(株)製「N232」(結合アクリロニトリル量35%)
・HNBR;日本ゼオン(株)製「Zetpol2010H」(結合アクリロニトリル量3 6%、ムーニー粘度145)
・ZDMA含有HNBR;日本ゼオン(株)製「Zeoforte ZSC 2195H」 ベースポリマーであるHNBR「Zetpol2010H」100質量部にメタクリル 酸亜鉛(ZDMA)100質量部を分散させたもの
(b)充填剤(2)
・メタクリル酸亜鉛;三新化学工業(株)製「サンエステルSK−30」
・メタクリル酸;三菱レイヨン(株)製「MAA」
・酸化亜鉛;三井金属(株)製「酸化亜鉛2種」
・カーボンブラック;電気化学工業(株)製「デンカブラック」
・炭酸カルシウム;白石カルシウム(株)製「白艶華CC」
(c)架橋剤(3)
・硫黄化合物;ジフェニルジスルフィド(住友精化(株)製「DPDS)
・有機過酸化物;ジクミルパーオキシド(日本油脂(株)製「パークミルD」)
(d)発泡用添加剤(4)
・化学発泡剤;アザジカルボンアミド(永和化成工業(株)製「ビニホールAC#R」
・化学発泡助剤;尿素(永和化成工業(株)製「セルペースト101」)
【0085】
得られた発泡ゴムロールについて、各種物性の測定および機能評価を行った。
(ロール電気抵抗)
温度23℃、相対湿度55%雰囲気下で、図3に示すように、発泡ゴムロール10の発泡弾性層1をφ30のアルミドラム13上に当接搭載し、電源14の+側に接続した内部抵抗r(100Ω〜10kΩ)の導線の先端をアルミドラム13の一端面に接続すると共に電源14の−側に接続した導線の先端を芯金2の一端面に接続して通電を行った。芯金2の両端部に500gずつの荷重をかけ、芯金2とアルミドラム13間に200Vの電圧をかけながらアルミドラム13を回転させることで間接的に発泡ゴムロール10を回転させた。このとき周方向に36回抵抗測定を行い、その平均値を求めた。内部抵抗の値は、電気抵抗のレベルに合わせ、測定値の有効数字が極力大きくなるように調節した。
図3の装置で、印加電圧をEとすると、ロール電気抵抗RはR=r×E/(V−r)となるが、今回−rの項は微小とみなし、R=r×E/Vとし、内部抵抗rにかかる検出電圧Vよりロール電気抵抗Rを算出した。表中には、ロール電気抵抗の平均値の常用対数値で示している。
【0086】
(感光体の汚染)
発泡ゴムロール10の発泡弾性層1を感光体上に当接搭載し、芯金2の両端部に500gずつの荷重をかけて感光体に押しつけ、温度40℃、相対湿度90%雰囲気下で5日間放置し、感光体表面の汚染を目視にて確認した。
感光体表面の汚染が目視にて確認されない場合は○、確認された場合は×と評価した。
【0087】
(発泡倍率)
発泡ゴムロールの発泡弾性層の体積と質量からかさ比重を求めた。予め加硫発泡前の熱硬化性エラストマー組成物の比重を測定しておき、前記かさ比重を熱硬化性エラストマー組成物の比重で除して発泡倍率を求めた。
(セル径)
発泡ゴムロールの両端から15mm内側に入った部分各2点と中心部の計3点において、発泡弾性層の表面、その部分で半径方向に切断した面の表面から5mm内側に入った点の合計3×2=6点について、倍率100倍で発泡セルの写真をとった。これらの写真を画像処理ソフトで2値化した後に計算処理して、すべての写真中での平均粒径(μm)を求め、さらに得られた値を平均して表に示した。
【0088】
(画像評価)
実施例および比較例で得られた発泡ゴムロールを市販のレーザープリンター(キャノン(株)製「LBP2260」)にトナー供給ロールとして装着した。
温度23℃、相対湿度55%の環境下で5%印字画像を5,000枚印刷した。10枚目の初期画像と5,000枚目の画像について目視にて評価を行った。
画像が良好である場合には○と、供給ロールピッチの画像ムラが若干発生する場合には△と、供給ロールピッチの画像ムラ激しく発生する場合には×と評価した。
【0089】
(耐久性)
画像評価を行った後プリンターから発泡ゴムロールを取り出し、拡大鏡で倍率100倍で観察して、発泡弾性層の表面の変化を目視にて観察した。
表面がほとんど変化していない場合を○と、トナーによる目詰まりや発泡弾性層の摩耗が若干見られる場合を△と、トナーによる目詰まりや発泡弾性層の摩耗が激しく見られる場合を×と評価した。
【0090】
(判定)
前記測定および試験結果から発泡ゴムロールの総合評価を行った。
耐久変化が小さく、長期に渡り良好な画像が得られるとともにロールの外観もほとんど変化しない場合は◎と、ロールの外観に若干の変化はあるものの、長期に渡り良好な画像が得られる場合は○と、耐久性にやや劣り画像が若干悪くなるが、実用性は確保できる場合は△と、耐久性に劣り実用性が失われる場合は×と評価した。
【0091】
比較例1〜4の発泡ゴムロールは、ロール自体の耐久性に乏しい上に、5,000枚目の画像に画像ムラが生じ、長期間にわたる品質保持が難しいことがわかった。
一方、実施例1〜10の発泡ゴムロールは、ロールの外観に若干の変化が生じる場合があるものの、5,000枚目の画像は画像ムラのない良好な画像であり、長期間にわたり品質が保持できることがわかった。また、導電材を添加した場合であっても、導電材のブリードによる感光体汚染は観察されなかった。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の発泡ゴムロールの一実施形態を示す概略図である。
【図2】本発明の発泡ゴムロールの他の実施形態を示す概略図である。
【図3】発泡ゴムロールのロール電気抵抗の測定方法を示す図である。
【符号の説明】
【0093】
1 発泡弾性層
2 芯金
4 トナー
10 発泡ゴムロール
10A トナー供給ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも外周層として発泡弾性層を備え、
前記発泡弾性層は、ゴム成分(1)100質量部に対して、充填剤(2)として少なくともメタクリル酸亜鉛またはメタクリル酸と酸化亜鉛の混合物(2a)を5〜60質量部の割合で含有している熱硬化性エラストマー組成物を、化学発泡剤または化学発泡剤と化学発泡助剤により発泡させていることを特徴とする発泡ゴムロール。
【請求項2】
前記メタクリル酸亜鉛が、前記ゴム成分(1)として水素添加したアクリロニトリルブタジエンゴムにメタクリル酸亜鉛を分散させたゴム成分(1a)を含むことにより前記熱硬化性エラストマー組成物に含有されている請求項1に記載の発泡ゴムロール。
【請求項3】
前記ゴム成分(1)として、少なくともアクリロニトリルブタジエンゴムまたは/および水素添加したアクリロニトリルブタジエンゴムを含む請求項1に記載の発泡ゴムロール。
【請求項4】
前記熱硬化性エラストマー組成物が、イオン導電性ゴムからなるゴム成分(1)または/および導電材の充填剤(2)を含み、ロール電気抵抗が10〜1010Ωである請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の発泡ゴムロール。
【請求項5】
前記発泡弾性層の発泡倍率が7倍以上20倍以下、セル径分布が100μm以上700μm以下である請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の発泡ゴムロール。
【請求項6】
画像形成装置のトナー供給ロールである請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の発泡ゴムロール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−122600(P2008−122600A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−305540(P2006−305540)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】