説明

発泡成形体の製造方法および発泡成形体の製造装置、並びに発泡成形体

【課題】供給部分から発泡原料が溢れ出るのを抑制すること。
【解決手段】発泡成形体の製造装置10を型開きした状態で、下型20の金型面24に形成された凹部23のうち、供給空間51を画成する供給部分27に発泡原料Mを供給する供給工程と、上型30を、その金型面33が下型20の金型面24に向けて上方から接近するように回動させながら、該上型30の金型面33に突設された突部40を凹部23内に進入させて半閉めする半閉め工程と、上型30および下型20を上下方向に沿って相対的に接近移動させ、突部40の外面と凹部23の内面との間に隙間を設けた状態で凹部23の全体を閉塞することによりキャビティを形成し型閉めする型閉め工程と、を有し、供給部分27内の発泡原料Mが発泡し該供給部分27の上端開口面29に到達する前に、型閉め工程に先立って、供給部分27を上方から閉塞する発泡成形体の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡成形体の製造方法および発泡成形体の製造装置、並びに発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば下記特許文献1に示されるような発泡成形体が知られているが、このような発泡成形体の1つに、例えば自動車などの車両に内装され、車両の衝突時などに車内に伝達される衝撃エネルギーを吸収する衝撃吸収材がある。近年、衝撃吸収材は、車室の内装形態に応じて形状が多様化しており、この衝撃吸収材の1つとして、例えば基体部と、該基体部の一部または複数箇所から突出する突出部と、を備える構成がある。
【0003】
ここで、この発泡成形体を形成する発泡成形体の製造方法として、互いに接近離間可能に設けられ、金型面間にキャビティが形成される上型および下型を備えるとともに、キャビティが、発泡原料が供給される供給空間と、該供給空間における一部または複数箇所から上方に延在し当該供給空間内の発泡原料が発泡することで到達して充満される充満空間と、を有する金型を用いる方法が考えられる。この発泡成形体の製造方法では、まず、金型を型開きした状態で、下型の金型面に形成された凹部のうち、供給空間を画成する供給部分に発泡原料を供給する。その後、金型を型閉めし、上型の金型面に突設された突部により凹部のうちの供給部分を閉塞しながら、上型により凹部の全体を閉塞することでキャビティを形成する。この発泡成形体の製造方法では、基体部が供給空間で形成され、突出部が充満空間で形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−99445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記発泡成形体の製造方法では、型開きした金型を型閉めしてキャビティを形成するときに突部を凹部内に進入させるために、まず上型を、その金型面が下型の金型面に向けて上方から接近するように回動させながら、突部を凹部内にある程度、進入させた後、上型および下型を上下方向に沿って接近移動させ、突部の全体を凹部内に進入させる必要がある。そのため、上型および下型を上下方向に沿って接近移動させて型閉めが完了するまでの間に、凹部の供給部分内の発泡原料が発泡し、供給部分の上端開口面に到達して該供給部分から溢れ出すことがあった。その結果、突部により前記供給部分を閉塞するときに、この突部により発泡原料を上方から押し込んでしまい、発泡原料の発泡の態様が不均一となって発泡成形体の特性に影響を与え、例えば発泡成形体として前述のような衝撃吸収材を形成した場合には、衝撃吸収性能に影響を与えるという問題がある。
【0006】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、供給部分から発泡原料が溢れ出るのを抑制することができる発泡成形体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る発泡成形体の製造方法は、互いに接近離間可能に設けられ、金型面間にキャビティが形成される上型および下型を備えるとともに、前記キャビティが、発泡原料が供給される供給空間と、該供給空間における一部または複数箇所から上方に延在し当該供給空間内の発泡原料が発泡することで到達して充満される充満空間と、を有する発泡成形体の製造装置を用いて、発泡成形体を形成する発泡成形体の製造方法であって、前記発泡成形体の製造装置を型開きした状態で、前記下型の金型面に形成された凹部のうち、前記供給空間を画成する供給部分に発泡原料を供給する供給工程と、前記上型を、その金型面が前記下型の金型面に向けて上方から接近するように回動させながら、該上型の金型面に突設された突部を前記凹部内に進入させて半閉めする半閉め工程と、前記上型および前記下型を上下方向に沿って相対的に接近移動させ、前記突部の外面と前記凹部の内面との間に隙間を設けた状態で前記凹部の全体を閉塞することにより前記キャビティを形成し型閉めする型閉め工程と、を有し、前記供給部分内の発泡原料が発泡し該供給部分の上端開口面に到達する前に、前記型閉め工程に先立って、前記供給部分を上方から閉塞することを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、供給部分内の発泡原料が発泡し該供給部分の上端開口面に到達する前に、型閉め工程に先立って、供給部分を上方から閉塞するので、型閉めが完了する前に確実に供給部分を上方から閉塞することが可能になり、供給部分内で発泡した発泡原料が、この供給部分から溢れ出るのを抑制することができる。
【0009】
また、本発明に係る発泡成形体の製造装置は、互いに接近離間可能に設けられ、金型面間にキャビティが形成される上型および下型を備え、前記下型の金型面には凹部が形成されるとともに、前記上型の金型面には前記凹部内に配置される突部が突設され、前記キャビティは、前記突部の外面と前記凹部の内面との間に隙間を設けた状態で前記凹部の全体が閉塞されることにより形成され、該キャビティは、発泡原料が供給される供給空間と、該供給空間における一部または複数箇所から上方に延在し当該供給空間内の発泡原料が発泡することで到達して充満される充満空間と、を備え、型開きされた状態で、前記上型を、その金型面が前記下型の金型面に向けて上方から接近するように回動させながら、前記突部を前記凹部内に進入させて半閉めした後、前記上型および前記下型を上下方向に沿って相対的に接近移動させて前記凹部の全体を閉塞することにより型閉めする発泡成形体の製造装置であって、型開きされた状態で、前記凹部のうち、前記供給空間を画成する供給部分に発泡原料を供給した後、該発泡原料が発泡し該供給部分の上端開口面に到達する前に、前記凹部の全体が閉塞されることに先立って、前記供給部分を上方から閉塞する閉塞部材を備えていることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、前記閉塞部材を備えているので、型開きされた状態で、供給部分に発泡原料を供給した後、該発泡原料が発泡し該供給部分の上端開口面に到達する前に、凹部の全体が閉塞されることに先立って、この閉塞部材により供給部分を上方から閉塞することができる。これにより、発泡成形体の製造装置の型閉めが完了する前に確実に供給部分を上方から閉塞することが可能になり、供給部分内で発泡した発泡原料が、この供給部分から溢れ出るのを抑制することができる。
【0011】
また、前記上型には、上下方向に延在するシリンダが設けられ、前記閉塞部材には、上方に延設されるとともに前記シリンダ内に下方から上下摺動可能に挿入されたピストン部材が設けられ、前記シリンダ内において前記ピストン部材よりも上方に位置する拡縮空間と外部との連通およびその遮断は、弁体によって切替え可能であっても良い。
【0012】
この発明によれば、前記拡縮空間と外部との連通およびその遮断が、弁体によって切替え可能なので、前記拡縮空間と外部との連通が弁体によって遮断された状態では、前記拡縮空間内に外気が導入されることがなく、ピストン部材がシリンダ内を下方に摺動することが抑制され、閉塞部材が上型から離間移動するのが規制される。
ここで、閉塞部材により供給部分を上方から閉塞するときには、まず上型を回動させて突部を凹部内に進入させるとともに、弁体を作動させて前記拡縮空間と外部とを連通させる。すると、前記拡縮空間内に外部から空気が導入され、この空気の導入に伴って前記拡縮空間が拡大してピストン部材が自重により下降する。これにより、凹部の全体が閉塞されることに先立って、閉塞部材が下降し、この閉塞部材により供給部分が上方から閉塞されることとなる。
【0013】
以上より、シリンダ、ピストン部材および弁体からなる簡素な構成により、例えば流体圧や磁力などを用いなくても閉塞部材により供給部分を閉塞することが可能になり、この発泡成形体の製造装置の簡素化およびコンパクト化を図ることができる。
【0014】
また、本発明に係る発泡成形体は、基体部と、該基体部の一部または複数箇所から突出する突出部と、を備える発泡成形体であって、前記発泡成形体の製造方法により形成され、前記基体部は前記供給空間で形成され、前記突出部は前記充満空間で形成されたことを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、前記発泡成形体の製造方法により形成され、この発泡成形体を形成するときに、供給部分から発泡原料が溢れ出ることが抑制されているので、良好な特性を確保し易くすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る発泡成形体の製造方法および発泡成形体の製造装置によれば、供給部分から発泡原料が溢れ出るのを抑制することができる。
また、本発明に係る発泡成形体によれば、良好な特性を確保し易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係る発泡成形体を示す斜視図である。
【図2】図1に示す発泡成形体を形成する金型の断面図である。
【図3】図2に示す金型を用いた発泡成形体の製造方法を説明する図である。
【図4】図2に示す金型を用いた発泡成形体の製造方法を説明する図である。
【図5】図2に示す金型を用いた発泡成形体の製造方法を説明する図である。
【図6】図2に示す金型を用いた発泡成形体の製造方法を説明する図である。
【図7】図2に示す金型を用いた発泡成形体の製造方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る発泡成形体を説明する。
図1に示すように、発泡成形体1は、基体部2と、該基体部2の一部から突出する突出部3と、を備え、例えば車両における内装ドアに装着される衝撃吸収材などとして用いられる。図示の例では、基体部2は横置きされた直方体状に形成され、突出部3は、基体部2の上面2aにおける長手方向の一端部2bを除く全体から上方に向けて突設されている。突出部3における基体部2の上面2aとの接続部分3aは直方体状とされ、この接続部分3aにおける4つの側面3bのうち、前記長手方向の一端部2b側を向く面を除く3つの面は、基体部2の側面2cに面一に接続されている。
【0019】
また突出部3の体積は、基体部2の体積よりも大きくなっており、突出部3の上下方向の大きさは、基体部2の上下方向の大きさよりも大きくなっている。この発泡成形体1は、上下方向の大きさが、上下方向および前記長手方向の双方向に直交する方向に沿った大きさよりも大きい縦長形状となっている。
【0020】
次に図2に示すように、この発泡成形体1を形成する金型(発泡成形体の製造装置)10について説明する。
金型10は、互いに接近離間可能に設けられ、金型面33、24間にキャビティ50が形成される上型30および下型20を備えている。下型20の金型面24には、凹部23が形成されるとともに、上型30の金型面33には、凹部23内に配置される突部(閉塞部材)40が突設されている。
【0021】
そしてキャビティ50は、突部40の外面と凹部23の内面との間に隙間を設けた状態で、上型30によって凹部23の全体が閉塞されることにより形成されており、発泡原料Mが供給される供給空間51と、該供給空間51における一部から上方に延在し当該供給空間51内の発泡原料Mが発泡することで到達して充満される充満空間52と、を備えている。このキャビティ50のうち、供給空間51が、発泡成形体1の基体部2を形成するとともに、充満空間52が突出部3を形成する。なお図示の例では、充満空間52の容積は、供給空間51の容積よりも大きく、かつ充満空間52の上下方向に沿った大きさは、供給空間51の上下方向に沿った大きさよりも大きくなっている。
【0022】
図2および図3に示すように、凹部23は、下型20の金型面24に形成され突部40が収容される収容凹部25と、収容凹部25の内面に形成されキャビティ50を画成するキャビティ凹部26と、を備えている。
収容凹部25は、下型20の金型面24に形成された逆錐台状に窪む第1凹部25aと、第1凹部25aの底面に形成され逆錐台状に窪む第2凹部25bと、を備えている。
第2凹部25bは、第1凹部25aの底面の一部に形成されており、図示の例では、第2凹部25bの中心軸線は、第1凹部25aの中心軸線に対して水平方向の一方側にずらされている。第2凹部25bの内周面における水平方向の前記一方側の端部は、第1凹部25aの内周面における水平方向の前記一方側の端部に面一に接続されている。
【0023】
図3に示すように、キャビティ凹部26は、上下方向に延在する溝状に形成されており、図示の例では、前記第1凹部25aの底面において、前記第2凹部25bに対して水平方向の前記一方側とは反対側の他方側にずれた位置から、第2凹部25bの底面より下方に達するまで延設されている。このキャビティ凹部26は、第2凹部25bの内周面に上下方向に沿って延設されるとともに上下方向の全長にわたって第2凹部25bに接続された充満部分28と、この充満部分28の下端から水平方向の前記一方側に延在するとともに第2凹部25bに下方から接続された供給部分27と、を備えている。なお、充満部分38は前記充満空間52を画成し、供給部分27は前記供給空間51を画成する。
【0024】
供給部分27における水平方向の前記一方側の端部は、第2凹部25bの底面における前記一方側の端部よりも、水平方向の前記他方側に位置している。また供給部分27の底面は、水平方向に延在している。さらに、供給部分27の上端開口面29は、充満部分28の上端開口面よりも下側に位置している。
【0025】
図2に示すように、上型30の金型面33には、下方に向けて張り出す台座部34が形成されている。この台座部34は、逆錐台状に形成されるとともに、収容凹部25の前記第1凹部25aに配置されている。そして、台座部34の側面と第1凹部25aの内周面とは互いに近接もしくは当接しており、両者の間には第1微小隙間54があいている。
なお、上型30の金型面33において台座部34よりも外側に位置する部分と、下型20の金型面24において凹部23よりも外側に位置する部分と、は、互いに近接もしくは当接しており、両者の間には第4微小隙間57があいている。
【0026】
突部40は、台座部34から下方に向けて突設されており、逆錐台状に形成されるとともに、収容凹部25の前記第2凹部25bに配置されている。突部40の側面のうち、キャビティ凹部26の充満部分28の内面に対向する対向部分は、充満部分28内に配置されこの充満部分28を水平方向の前記一方側から閉塞している。また、第2凹部25bの内周面と、突部40の側面のうち、前記対向部分を除く他の部分と、は、互いに近接もしくは当接しており、両者の間には第2微小隙間55があいている。
【0027】
また、突部40の下端面のうち、キャビティ凹部26の供給部分27の底面に対向する対向部分は、供給部分27内に配置されこの供給部分27を上方から閉塞している。また、第2凹部25bの底面と、突部40の下端面のうち、前記対向部分を除く他の部分と、は、互いに近接もしくは当接しており、両者の間には第3微小隙間56があいている。なおこの金型10では、第3微小隙間56、第2微小隙間55、第1微小隙間54および第4微小隙間57により、キャビティ50と外部とを連通するガス抜き路53が構成されている。
【0028】
ここで本実施形態では、突部40は、上型30とは別部材で形成され、取付け機構60を介して上型30に離間移動可能に取り付けられている。
取付け機構60は、自重により上型30から突部40を離間移動させる構成となっている。この取付け機構60は、上型30に上下方向に延設されたシリンダ61と、突部40に上方に延設されるとともにシリンダ61内に下方から上下摺動可能に挿入されたピストン部材63と、シリンダ61内においてピストン部材63よりも上方に位置する拡縮空間61aと外部との連通およびその遮断を切替える弁体62と、を備えている。
【0029】
この取付け機構60によれば、前記拡縮空間61aと外部との連通およびその遮断が、弁体62によって切替え可能なので、前記拡縮空間61aと外部との連通が弁体62によって遮断された状態では、前記拡縮空間61a内に外気が導入されることがなく、ピストン部材63がシリンダ61内で下方に摺動することが抑制され、突部40が上型30から離間移動するのが規制される。
【0030】
また上型30は、図示しない昇降手段によって、一定の上昇限である正対位置P(図5参照)まで上昇させられるとともに、この昇降手段によって正対位置Pから下降させられる。さらに上型30は、図示しないヒンジ部を介して下型20に連結されており、水平方向に沿って延びるヒンジ軸回りに回動可能に支持されている。
【0031】
次に、前記金型10を用いて前記発泡成形体1を形成する発泡成形体の製造方法について説明する。
まず図3に示すように、金型10を型開きした状態で、凹部23のうちの供給部分27に発泡原料Mを供給する供給工程を行う。
【0032】
供給工程の後、図4および図5に示すように、上型30を、その金型面33が下型20の金型面24に向けて上方から接近するように回動させながら、突部40を凹部23内に進入させて半閉めする半閉め工程を行う。このとき図4に示すように、上型30を、水平方向の前記一方側に向けて下降させながら前記ヒンジ軸回りに回動させ正対位置Pまで移動させることで、図5に示すように、上型30と下型20とを上下方向に正対させ、突部40の一部を凹部23内に進入させる。
【0033】
そして本実施形態では、図6に示すように、半閉め工程を行って金型10を半閉めした後、供給部分27内の発泡原料Mが発泡し該供給部分27の上端開口面29に到達する前に、後述する型閉め工程に先立って、突部40により供給部分27を上方から閉塞する。このとき、弁体62を作動させてシリンダ61内の前記拡縮空間61aと外部とを連通させる。すると、前記拡縮空間61a内に外部から空気が導入され、この空気の導入に伴って前記拡縮空間61aが拡大してピストン部材63が自重により下降する。これにより、凹部23の全体が上型30により閉塞されることに先立って、突部40が下降し、この突部40により供給部分27が上方から閉塞され、供給空間51が形成される。なお本実施形態では、このように突部40により供給部分27が上方から閉塞された状態では、この突部40により充満部分28も水平方向の前記一方側から閉塞され、キャビティ凹部26のうち、充満部分28が上方に開放されることとなる。
【0034】
次に図7に示すように、上型30および下型20を上下方向に沿って相対的に接近移動させ型閉めする型閉め工程を行う。このとき、前記昇降手段によって上型30を下降させる。これにより、キャビティ凹部26のうち、充満部分28が上方から塞がれて、突部40の外面と、凹部23のうちのキャビティ凹部26の内面との間に隙間を設けた状態で凹部23の全体が上型30により閉塞されることで、キャビティ50が形成されることとなる。
【0035】
次に、キャビティ50内を発泡原料Mで充満させて発泡成形体1を形成する成形工程を行う。
この工程では、発泡原料Mが、供給空間51から充満空間52に向かう発泡方向に発泡し、キャビティ50内が漸次、発泡原料Mで充満されていく。このとき、キャビティ50内の発泡ガスや空気は、ガス抜き路53を通して外部に排気される。
そして、発泡原料Mが充満空間52に到達して充満空間52内が発泡原料Mで充満された後、発泡原料Mの発泡がおさまって発泡原料Mの樹脂化(樹脂反応)が進行し、キャビティ50内で定形を保持可能な発泡成形体1が形成されることで成形工程が終了する。
【0036】
その後、金型10を型開きして、発泡成形体1を金型10から脱型する脱型工程を行う。なおこのとき、まず、取付け機構60の弁体62によってシリンダ61の前記拡縮空間61aと外部との連通を遮断することで、前述のように突部40が上型30から離間移動するのを規制する。そして、前記昇降手段を作動させて上型30を正対位置Pまで移動させた後、上型30を、水平方向の前記他方側に向けて上昇させながら前記ヒンジ軸回りに回動させる。
なおこのように、単に上型30および下型20を上下方向に相対的に離間移動させて型開きするのではなく、上型30および下型20を上下方向に相対的に離間移動させた後、上型30を回動させて型開きすることで、金型10を設置するために必要なスペースを低減することができるとともに、金型10の低コスト化を図ることができる。
【0037】
以上説明したように、本実施形態に係る発泡成形体の製造方法および金型10によれば、供給部分27内の発泡原料Mが発泡し該供給部分27の上端開口面29に到達する前に、型閉め工程に先立って、突部40により供給部分27を上方から閉塞するので、型閉めが完了する前に確実に供給部分27を上方から閉塞することが可能になり、供給部分27内で発泡した発泡原料Mが、この供給部分27から溢れ出るのを抑制することができる。
【0038】
また本実施形態では、充満空間52の容積が、供給空間51の容積よりも大きくなっているので、供給部分27の容積に対して、供給工程の際に該供給部分27に供給される発泡原料Mが多くなり、発泡原料Mが前記供給部分27から溢れ出易くなることから、前述の作用効果が顕著に奏功されることとなる。
【0039】
さらに本実施形態では、突部40の下端面の一部が、供給部分27を上方から閉塞しながら、この下端面の他の部分が、収容凹部25の内面(第2凹部25bの底面)に近接もしくは当接しているので、前述のように、供給部分27内で発泡した発泡原料Mが、この供給部分27から溢れ出るのを抑制することで、低コストで高精度な発泡成形体1を形成することができる。
すなわち、突部40の下端面の一部が、供給部分27を上方から閉塞しながら、この下端面の他の部分が、収容凹部25の内面に近接もしくは当接している場合、仮に発泡原料Mが供給部分27から溢れ出ると、突部40により供給部分27を上方から閉塞するときに、前記発泡原料Mが、突部40の下端面と収容凹部25の内面との間に浸入するおそれがある。すると、キャビティ50内の発泡ガスや空気などがガス抜き路53を通して排気され難くなったり、発泡成形体1のパーティングラインに大きなバリが形成されたりして、高精度な発泡成形体を形成できなくなることとなる。
また発泡原料Mが、突部40の下端面と収容凹部25の内面との間に浸入することを起因として、金型10から発泡成形体1を脱型した後に突部40の下端面および収容凹部25の内面のうちの少なくとも一方に発泡原料Mが残るおそれがある。すると、この発泡原料Mを除去するために生産性が低下し、コストがかかることとなる。
【0040】
また、本実施形態に係る金型10によれば、シリンダ61、ピストン部材63および弁体62からなる簡素な取付け機構60により、例えば流体圧や磁力などを用いなくても突部40により供給部分27を閉塞することが可能になり、この金型10の簡素化およびコンパクト化を図ることができる。
【0041】
また、本実施形態に係る発泡成形体1によれば、前記発泡成形体の製造方法により形成され、この発泡成形体1を形成するときに、供給部分27から発泡原料Mが溢れ出ることが抑制されているので、良好な衝撃吸収性能(特性)を確保し易くすることができる。
【0042】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、前記実施形態では、取付け機構60が、シリンダ61、弁体62およびピストン部材63を備えるものとしたが、これに限られない。また取付け機構60が、自重により突部40を上型30から離間移動させる構成でなくても良く、例えば、流体圧や磁力などを用いて突部40を上下動させる手段などを備えていても良い。
【0043】
また前記実施形態では、半閉め工程を行って金型10を半閉めした後、供給部分27内の発泡原料Mが発泡し該供給部分27の上端開口面29に到達する前に、型閉め工程に先立って、突部40により供給部分27を上方から閉塞するものとしたが、これに限られるものではない。例えば、半閉め工程と同時に、つまり金型10の半閉めと同時に突部40により供給部分27を上方から閉塞しても良い。
【0044】
また前記実施形態では、供給部分27内の発泡原料Mが発泡し該供給部分27の上端開口面29に到達する前に、型閉め工程に先立って、突部40により供給部分27を上方から閉塞するものとしたが、これに限られない。例えば、この金型10に、突部40とは異なる閉塞部材を設け、この閉塞部材により供給部分27を上方から閉塞しても良い。この場合、例えば前記閉塞部材が、上型30の金型面33に離間移動可能に取り付けられていたり、下型20の金型面24に離間移動可能に取り付けられていたり、上下方向に交差する方向にスライド移動可能に下型20に取り付けられていたりしても良い。また例えば、閉塞部材は板状に形成されていても良い。さらに例えば、突部40が上型30と一体に形成されていても良い。
【0045】
また前記実施形態では、発泡成形体1の突出部3が、基体部2の一部から突出しているものとしたが、これに限られず、基体部2の複数箇所から突出していても良い。この場合、金型10における充満空間52は、供給空間51における複数箇所から上方に延在することとなる。
【0046】
また前記実施形態では、充満空間52の容積が、供給空間51の容積よりも大きくなっているものとしたが、これに限られない。
さらに前記実施形態では、発泡成形体1は、衝撃吸収材として用いられるものを示したが、これに限られるものではなく、他の用途に用いられるものにも好適に採用することが可能である。
【0047】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 発泡成形体
2 基体部
3 突出部
10 金型
20 下型
23 凹部
24 下型の金型面
27 供給部分
29 上端開口面
30 上型
33 上型の金型面
40 突部(閉塞部材)
50 キャビティ
51 供給空間
52 充満空間
61 シリンダ
61a 拡縮空間
62 弁体
63 ピストン部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに接近離間可能に設けられ、金型面間にキャビティが形成される上型および下型を備えるとともに、前記キャビティが、発泡原料が供給される供給空間と、該供給空間における一部または複数箇所から上方に延在し当該供給空間内の発泡原料が発泡することで到達して充満される充満空間と、を有する発泡成形体の製造装置を用いて、発泡成形体を形成する発泡成形体の製造方法であって、
前記発泡成形体の製造装置を型開きした状態で、前記下型の金型面に形成された凹部のうち、前記供給空間を画成する供給部分に発泡原料を供給する供給工程と、
前記上型を、その金型面が前記下型の金型面に向けて上方から接近するように回動させながら、該上型の金型面に突設された突部を前記凹部内に進入させて半閉めする半閉め工程と、
前記上型および前記下型を上下方向に沿って相対的に接近移動させ、前記突部の外面と前記凹部の内面との間に隙間を設けた状態で前記凹部の全体を閉塞することにより前記キャビティを形成し型閉めする型閉め工程と、を有し、
前記供給部分内の発泡原料が発泡し該供給部分の上端開口面に到達する前に、前記型閉め工程に先立って、前記供給部分を上方から閉塞することを特徴とする発泡成形体の製造方法。
【請求項2】
互いに接近離間可能に設けられ、金型面間にキャビティが形成される上型および下型を備え、
前記下型の金型面には凹部が形成されるとともに、前記上型の金型面には前記凹部内に配置される突部が突設され、
前記キャビティは、前記突部の外面と前記凹部の内面との間に隙間を設けた状態で前記凹部の全体が閉塞されることにより形成され、
該キャビティは、発泡原料が供給される供給空間と、該供給空間における一部または複数箇所から上方に延在し当該供給空間内の発泡原料が発泡することで到達して充満される充満空間と、を備え、
型開きされた状態で、前記上型を、その金型面が前記下型の金型面に向けて上方から接近するように回動させながら、前記突部を前記凹部内に進入させて半閉めした後、前記上型および前記下型を上下方向に沿って相対的に接近移動させて前記凹部の全体を閉塞することにより型閉めする発泡成形体の製造装置であって、
型開きされた状態で、前記凹部のうち、前記供給空間を画成する供給部分に発泡原料を供給した後、該発泡原料が発泡し該供給部分の上端開口面に到達する前に、前記凹部の全体が閉塞されることに先立って、前記供給部分を上方から閉塞する閉塞部材を備えていることを特徴とする発泡成形体の製造装置。
【請求項3】
請求項2記載の発泡成形体の製造装置であって、
前記上型には、上下方向に延在するシリンダが設けられ、
前記閉塞部材には、上方に延設されるとともに前記シリンダ内に下方から上下摺動可能に挿入されたピストン部材が設けられ、
前記シリンダ内において前記ピストン部材よりも上方に位置する拡縮空間と外部との連通およびその遮断は、弁体によって切替え可能であることを特徴とする発泡成形体の製造装置。
【請求項4】
基体部と、該基体部の一部または複数箇所から突出する突出部と、を備える発泡成形体であって、
請求項1に記載の発泡成形体の製造方法により形成され、
前記基体部は前記供給空間で形成され、前記突出部は前記充満空間で形成されたことを特徴とする発泡成形体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−40841(P2012−40841A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186348(P2010−186348)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】