説明

発泡成形体用補強材、発泡成形部材及び発泡成形部材の製造方法

【課題】容易に製造することが可能であると共に、容易に且つ精度よく金型内面に取り付けることが可能な発泡成形体用補強材を提供する。
【解決手段】補強材10は、シートパッド本体2の裏面に沿って配設される。補強材10には開口部16が設けられており、この開口部16の周縁部が環状に延在した環状部となっている。この開口部16の周縁部の周長を小さくするように張力を付与するための張力付与手段としての連結部材18が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡成形体の表面の少なくとも一部に沿って配設される面状の補強材に係り、特に環状ないし筒状に延在する環状部を有した発泡成形体用補強材に関する。また、本発明は、発泡成形体と、この発泡成形体用補強材とを有した発泡成形部材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートや家屋内に設置されるソファー等のシートは、一般的に、軟質ポリウレタンフォーム又は半硬質ポリウレタンフォーム等の発泡合成樹脂よりなるシートパッドと、このシートパッドの表面に装着された表皮材とから成る。
【0003】
シートパッドがシートフレームと接触した際に異音が発生したり、シートパッドが破損したりすることを防止するために、シートパッドの裏面(着座者と反対側の面)に、不織布等よりなる補強材が設けられることがある(特開2005−237491)。この補強材付きシートパッドを金型を用いて成形するに際しては、予め金型の内面に補強材を取り付けておき、該金型内において発泡合成樹脂材料を発泡させる。これにより、裏面に補強材が一体化されたシートパッドが成形される。
【0004】
この際、補強材を金型内面に固定する方法としては、例えば、金型内面にマグネットを設けると共に、補強材には、このマグネットに吸着される磁性体を設けておき、この磁性体をマグネットに吸着させることにより補強材を金型内面に固定したり、あるいは、金型を、マグネットが吸着可能な磁性金属材料により構成すると共に、補強材にマグネットを取り付けておき、このマグネットを金型内面に吸着させることにより補強材を金型内面に固定する方法などがある(特開2001−252930)。
【0005】
近年、車両用シートに、車両の側面衝突時や横転時等に乗員と車室の側面との間にエアバッグを膨張させるエアバッグ装置が設置されることがある。その場合、シートパッドに、このエアバッグ装置を収納するための凹部が形成されることがある(特開2009−143260)。また、これ以外にも、シートパッドには、シートフレームが係合する凹部や、ヘッドレストの支持脚やスピーカ等が挿入される貫通孔など、種々の穴状部が形成されることがある。その場合、金型の内面には、この穴状部を形成するための凸部が設けられている。この凸部の外形は、穴状部の内部の形状と同一形状となっている。金型内において発泡合成樹脂材料を発泡させてシートパッド本体を成形した際に、この凸部が存在していた部分が、脱型後に穴状部となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−237491
【特許文献2】特開2001−252930
【特許文献3】特開2009−143260
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一体成形によりこの穴状部の内面に補強材を配設する場合には、シートパッドの発泡成形工程に先立ち、金型の凸部に補強材を被着させておくことができる。その場合、補強材は、この凸部に係合する環状ないし筒状の部分(以下、環状部と称する。)を有する。
【0008】
マグネットを用いて補強材を金型内面に固定する場合、このマグネット(又はマグネットに吸着可能な磁性体。以下、同様。)を補強材の要所要所に配設して金型内面に吸着させる。この場合、補強材全体を均等に金型内面に吸着保持させるためには、マグネットを多数設ける必要がある。例えば補強材の環状部にあっては、該環状部が全周にわたって略均等に金型の凸部に係合するようにするために、該環状部の周方向に間隔をおいて複数個のマグネットが配設される。そのため、補強材の製造作業及び補強材の金型内面への取付作業が煩雑なものとなる。
【0009】
また、補強材のうちマグネットが設けられていない部分、例えばマグネットとマグネットとの間の部分などは、金型内面に吸着されないため、補強材を金型内面に固定する際にマグネットが所定位置からずれると、このマグネットが設けられていない部分が金型内面から浮き上がるおそれがある。この場合、シートパッドの発泡成形時に発泡合成樹脂が補強材と金型内面との間に入り込む可能性が高まったり、補強材に皺が生じたりしてシートパッドの外面形状の精度が低下するおそれがある。これを防止するためには、補強材を金型内面に取り付ける際に、作業者が各マグネットを金型内面の所定位置に精度良く留め付ける必要があり、補強材の金型内面への取り付け作業が面倒なものとなる。
【0010】
そのため、環状部を有していても、容易に製造することが可能であると共に、容易に且つ精度よく金型内面に取り付けることが可能な発泡成形体用補強材が望まれている。
【0011】
本発明は、このように環状部を有した発泡成形体用補強材において、容易に製造することが可能であると共に、容易に且つ精度よく金型内面に取り付けることが可能な発泡成形体用補強材を提供することを目的とする。また、本発明は、発泡成形体と、この発泡成形体用補強材とを有した発泡成形部材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明(請求項1)の発泡成形体用補強材は、発泡成形体の表面の少なくとも一部に沿って配設される面状の補強材であって、該補強材は、環状ないし筒状に延在する環状部を有した発泡成形体用補強材において、該環状部の周長を小さくするように張力を付与するための張力付与手段が設けられていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項2の発泡成形体用補強材は、請求項1において、前記環状部に、その周方向と交差方向に切込み部が設けられており、該切込み部の両側部分同士が前記張力付与手段によって連結されていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項3の発泡成形体用補強材は、請求項2において、前記張力付与手段は、前記切込み部の両側部分同士が当接した状態において、該両側部分同士を接近方向に付勢することを特徴とするものである。
【0015】
請求項4の発泡成形体用補強材は、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記張力付与手段の少なくとも一部は弾性材料よりなることを特徴とするものである。
【0016】
請求項5の発泡成形体用補強材は、請求項1ないし4のいずれか1項において、該補強材の少なくとも前記環状部は不織布よりなることを特徴とするものである。
【0017】
本発明(請求項6)の発泡成形部材は、発泡成形体と、該発泡成形体の表面の少なくとも一部に沿って配設された請求項1ないし5のいずれか1項に記載の発泡成形体用補強材とを有するものである。
【0018】
請求項7の発泡成形部材は、請求項6において、該発泡成形部材はシートパッドであることを特徴とするものである。
【0019】
本発明(請求項8)の発泡成形部材の製造方法は、請求項6又は7の発泡成形部材を製造するための方法であって、前記補強材を金型の内面に配設する配設工程と、該金型内で前記発泡成形体を発泡成形する発泡成形工程とを有しており、該配設工程で該補強材を金型内面に配設した状態において、前記張力付与手段によって前記環状部に対し前記張力が付与されることを特徴とするものである。
【0020】
請求項9の発泡成形部材の製造方法は、請求項8において、前記金型の内面には、前記補強材の前記環状部が係合する凸部が設けられており、前記張力付与手段からの張力によって該環状部を該凸部に対し密着させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明(請求項1)の発泡成形体用補強材(以下、補強材と略すことがある。)は、環状ないし筒状に延在する環状部を有しており、この環状部の周長を小さくするように張力を付与するための張力付与手段が設けられている。かかる本発明の発泡成形体用補強材を用いて補強材付き発泡成形部材を製造する本発明(請求項8)の発泡成形部材の製造方法においては、まず、この補強材を金型の内面に配設し(配設工程)、次いで、該金型内で発泡成形体を発泡成形する(発泡成形工程)。この配設工程で補強材を金型内面に配設した状態においては、補強材の環状部に対し、前記張力付与手段により該環状部の周長を小さくするように張力が付与されるため、環状部が全周にわたって緊張して金型内面に密着するようになる。これにより、この環状部において、発泡成形体の発泡成形時に補強材が金型内面から浮き上がって該補強材と金型内面との間に発泡合成樹脂が入り込んだり、補強材に皺が生じたりすることが、より確実に防止される。従って、かかる本発明の発泡成形部材の製造方法により製造された本発明(請求項6)の発泡成形部材は、発泡成形体の表面に補強材が精度よく一体化されたものとなる。
【0022】
このように、本発明にあっては、補強材を金型内面に配設した状態において、該補強材の環状部は、張力付与手段から付与された張力により全周にわたって緊張して金型内面に密着するようになるため、補強材の製造作業を容易化することが可能である。また、補強材を金型内面に配設するだけで環状部が全周にわたって緊張して金型内面に密着するようになるので、補強材を容易に且つ精度よく金型内面に取り付けることが可能である。
【0023】
請求項2の態様にあっては、補強材の環状部に、その周方向と交差方向に切込み部を設け、この切込み部の両側部分同士を張力付与手段によって連結している。この態様にあっては、補強材を金型内面に配設する際に、この切込み部の両側部分同士を離反させることにより容易に環状部を金型内面に係合させることができる。補強材が金型内面に重なった後は、張力付与手段からの張力により、この切込み部の両側部分同士が接近して環状部の周長が小さくなり、環状部が金型内面に密着するようになる。そのため、必ずしもこの切込み部の両側部分同士を金型内面に留め付けることが不要であり、補強材を容易に且つ精度良く金型内面に取り付けることができる。
【0024】
この場合、請求項3の通り、張力付与手段は、この切込み部の両側部分同士が当接した状態において、該両側部分同士を接近方向に付勢するように設けられることが好ましい。これにより、切込み部が閉じて環状部が金型内面に重なり合った状態においても、補強材の環状部に対し該環状部の周長を小さくするように張力が付与されるため、補強材がしっかりと金型内面に保持されるようになる。
【0025】
請求項4の通り、この張力付与手段の少なくとも一部を弾性材料で構成することが簡便であり好ましい。
【0026】
請求項5の通り、本発明は、少なくとも環状部が不織布よりなる補強材に好適である。一般的に、不織布自体は実質的に伸縮しない材質であるが、上記の通り環状部に対し張力付与手段によってその周長を小さくするように張力を付与することにより、この環状部を金型内面に密着させることが可能である。
【0027】
また、請求項7の通り、本発明の発泡成形部材はシートパッドに好適である。
【0028】
請求項9の通り、本発明の発泡成形部材の製造方法によれば、金型の内面に設けられた凸部に補強材の環状部を係合させる場合でも、張力付与手段からの張力によって環状部をこの凸部に対し密着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】(a)図は実施の形態に係る発泡成形体用補強材を備えた発泡成形部材としてのシートパッドの斜視図であり、(b)図は(a)図のB−B線に沿う断面図である。
【図2】図1の補強材の斜視図である。
【図3】図2のIII部分の拡大図である。
【図4】図3と同様部分を図3のIV方向から見た斜視図である。
【図5】図1のシートパッドを成形するための金型及び補強材の斜視図である。
【図6】図5の金型への補強材の被着手順を示す斜視図であり、(a)図は被着途中状態を示し、(b)図は被着完了状態を示している。
【図7】図5の金型を用いたシートパッド成形工程を示す断面図である。
【図8】第2の実施の形態に係る発泡成形体用補強材の筒状部付近及び金型の凸部付近の斜視図である。
【図9】切込み部及び連結部材のその他の構成例を示す、図8と同様部分の斜視図である。
【図10】切込み部及び連結部材のその他の構成例を示す、図8と同様部分の斜視図である。
【図11】切込み部及び連結部材のその他の構成例を示す、図8と同様部分の斜視図である。
【図12】張力付与手段のその他の構成例を示す、図8と同様部分の斜視図である。
【図13】補強材の環状部及び金型の凸部のその他の形状例を示す、図8と同様部分の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態では、シートパッドとして、車両用シートの背もたれ部を構成するバックパッドを例示しているが、本発明は、バックパッド以外のシートパッド(例えばシートの腰掛部を構成するクッションパッド等)にも適用可能である。
【0031】
[第1の実施の形態]
第1図(a)は第1の実施の形態に係る発泡成形体用補強材を備えた発泡成形部材としてのシートパッドの斜視図、第1図(b)は第1図(a)のB−B線に沿う断面図、第2図はこの補強材の斜視図、第3図は第2図のIII部分の拡大図、第4図は第3図と同様部分を第3図のIV方向から見た斜視図、第5図は第1図のシートパッドを成形するための金型及び補強材の斜視図、第6図(a),(b)はこの金型への補強材の被着手順を示す斜視図、第7図はこの金型を用いたシートパッド成形工程を示す断面図である。なお、第6図(a)は金型に補強材を被着する途中の状態を示し、第6図(b)は金型への補強材の被着が完了した状態を示している。以下、上下方向、左右方向及び前後方向は、このシートパッド1を用いて構成されたシートの着座者にとっての上下方向、左右方向及び前後方向と一致するものとする。
【0032】
シートパッド1は、この実施の形態では、シートの背もたれ部を構成するバックパッドである。このシートパッド1は、ポリウレタンフォーム等の発泡合成樹脂よりなるシートパッド本体2と、該シートパッド本体2の後面に沿って配設された面状の補強材10とを備えている。補強材10は、シートパッド本体2と一体成形により一体化されている。このシートパッド本体2の成形方法については後で詳しく述べる。このシートパッド1は、表皮材(図示略)によって外面が被覆され、シートのバックフレーム(図示略)に取り付けられるものとなっている。この実施の形態では、該シートパッド1は、車両の左座席用である。なお、以下の構成を左右逆にすることにより、シートパッド1を右座席用に構成することも可能である。
【0033】
第1図(a),(b)に示すように、シートパッド本体2は、バックフレームの前面側を覆う主体部3と、該主体部3の後面の上辺及び左右の側辺からそれぞれ後方へ張り出した張出部4と、該張出部4の後端から該主体部3の後面の中央側へ張り出したフランジ部5とを有している。これらの主体部3、張出部4及びフランジ部5は一体的に形成されている。また、張出部4及びフランジ部5は、主体部3の後面の上辺及び左右の側辺に沿って連続して形成されている。これらの主体部3、張出部4及びフランジ部5によって囲まれた空間は、バックフレームの上部及び左右の側部がそれぞれ嵌合する凹部6となっている。この凹部6は、主体部3の後面の中央側に向かって開放している。主体部3の上辺に沿う張出部4には、ヘッドレスト(図示略)の支持脚が挿入されるヘッドレスト取付孔7が設けられている。このヘッドレスト取付孔7は、該張出部4を略上下方向に貫通し、凹部6内に連通している。ヘッドレストの支持脚は、バックフレームに取り付けられたシートパッド1の上方からこのヘッドレスト取付孔7に挿入されて該バックフレームに接続される。
【0034】
主体部3は、着座者の背中に当たる背当て部3aと、該背当て部3aの左右にそれぞれ設けられた1対のサイドサポート部3bとを有している。第1図(b)の通り、各サイドサポート部3bの後面にはそれぞれ凹溝3cが形成されている。各凹溝3cはそれぞれ上下方向に延在している。各凹溝3cはそれぞれ凹部6内に臨んでおり、シートパッド本体2の後側の左右の凹部6に嵌入されたバックフレームの左右の側部がそれぞれこの凹溝3cに係合する。
【0035】
第1図(a),(b)の通り、この実施の形態では、着座者にとっての左側のサイドサポート部3bの内部に、エアバッグ装置(図示略)を収納するためのエアバッグ装置収納室8が形成されている。このエアバッグ装置収納室8は、左側サイドサポート部3bの後面の凹溝3cに連通している。なお、該エアバッグ装置は、車両の側面衝突時や横転時等に着座者と車室の側面との間にエアバッグを膨張展開させるためのものである。この実施の形態では、該エアバッグ装置は、エアバッグが膨張を開始すると、このエアバッグがエアバッグ装置収納室8内から左側サイドサポート部3bの前面(及び該サイドサポート部3bの前面を被覆した表皮材)を押し破って着座者と車室の側面との間に膨らみ出すように構成されている。このエアバッグ装置は、バックフレームの側部に取り付けられており、シートパッド1をバックフレームに装着する際に、凹部6及び凹溝3cを介してエアバッグ装置収納室8内に配置される。
【0036】
この実施の形態では、第1図(b)の通り、エアバッグ装置収納室8は、左側サイドサポート部3bの後面の凹溝3cとシートパッド本体2の左側面との間に形成されている。この実施の形態では、エアバッグ装置収納室8は、該凹溝3cと略平行に延在した略直方体形状となっている。第1図(b)の通り、背当て部3の後面からのエアバッグ装置収納室8の前方への奥行きは凹溝3cよりも大きなものとなっており、エアバッグ装置収納室8は凹溝3cよりも前方まで延在している。このエアバッグ装置収納室8の後部が該凹溝3cに連通している。このエアバッグ装置収納室8自体は、シートパッド本体2の外面に露呈しておらず、該凹溝3c及び凹部6を介してのみシートパッド本体2の外部に連通している。この実施の形態では、第1図(a)の通り、エアバッグ装置収納室8の前端部は、サイドサポート部3bの前面に接近するほど上下幅が小さくなる略台形の側面視形状となっている。
【0037】
なお、シートパッド本体2の各部の構成、並びにエアバッグ装置収納室8の配置及び形状は、これに限定されない。
【0038】
この実施の形態では、補強材10は不織布よりなる。なお、補強材10を構成する材料は不織布に限定されない。この実施の形態では、補強材10は、背当て部3aの後面に沿って配設される主片部11と、該主片部11の左右の側辺に連なり、各凹溝3cの内面及び左右の張出部4及びフランジ部5の内側面(凹部6の内側に臨む面)に沿ってそれぞれ配設される左右の側片部12,13と、該主片部11の上辺に連なり、背当て部3の上側の張出部4及びフランジ部5の内側面に沿って配設される上片部14と、左側の側片部12に連なり、エアバッグ装置収納室8の内側の壁面に沿って配設されるエアバッグ装置収納室内配設部15とを有している。上片部14には、前記ヘッドレスト取付孔7に重なる開口14aが設けられている。なお、この補強材10は、該主片部11、各側片部12,13、上片部14及びエアバッグ装置収納室内配設部15が1枚の不織布により連続して形成されたものであってもよく、各部がそれぞれ小片状の不織布によって形成され、それらを縫い合わせたものであってもよい。
【0039】
この実施の形態では、該エアバッグ装置収納室内配設部15は、エアバッグ装置収納室8の前後、左右及び上下の各壁面にそれぞれ沿う前面部15a、後面部15b、左側面部15c、右側面部15d、上面部15e及び下面部15fを有した袋状となっている。左側の前記側片部12(以下、左側片部12と称する。)の側面には、このエアバッグ装置収納室内配設部15の内側に連通する連通口(図示略)が設けられており、この連通口の周縁部に該後面部15bの右側縁、右側面部15dの後縁、並びに上面部15e及び下面部15fの後端側の右側縁がそれぞれ連なっている。
【0040】
この実施の形態では、エアバッグ装置収納室内配設部15の前面部15aに、エアバッグの膨張時にサイドサポート部3bの前面が開裂することを許容するための開口部16が設けられている。この実施の形態では、該開口部16は、前面部15aの上端側から下端側まで延在した溝状となっている。なお、開口部16の形状はこれに限定されない。この実施の形態では、補強材10のうち、このエアバッグ装置収納室内配設部15の該開口部16の周縁部(前面部15a)が環状部となっている。
【0041】
この実施の形態では、該開口部16の上端縁からエアバッグ装置収納室内配設部15の上面部15eにかけて切込み部17が設けられている。第3,4図の通り、この切込み部17は、開口部16の上端縁と略直交方向に延在し、該上端縁の左右方向の中間付近に連なっている。この切込み部17により、開口部16の上端縁が左右に二分されており、この切込み部17の両側部分同士が接近及び離反しうるようになっている。
【0042】
この実施の形態では、該開口部16の上端縁の切込み部17の両側部分同士が、弾性的に収縮可能な連結部材18によって連結されている。この実施の形態では、該連結部材18は、帯状の弾性材料よりなる。連結部材18を構成する弾性材料としては、例えばゴム片、衣類などに使用されている帯状の平ゴム(糸と繊維状のゴムを編み込んだもの)、糸状ゴム、バネ等の公知のものが挙げられる。あるいは、伸縮可能な織布や編布等により連結部材18を構成してもよい。なお、連結部材18を構成する材料はこれに限定されない。連結部材18は、切込み部17を横切るように配置され、両端側が該切込み部17の両側部分に対しそれぞれ縫着等により結合されている。符号18aは、この連結部材18の両端側を該切込み部17の両側部分にそれぞれ縫着した縫目を示している。ただし、連結部材18を切込み部17の両側部分に結合する結合方法は縫着に限定されない。
【0043】
この連結部材18により、開口部16の上端縁の該切込み部17の両側部分同士が接近方向に付勢される。これにより、開口部16の周縁部に対し、該周縁部の周長を小さくするように張力が付与されるようになる。即ち、この実施の形態では、該連結部材18が、環状部としての開口部16の周縁部の周長を小さくするように張力を付与するための張力付与手段となっている。連結部材18は、切込み部17の両側部分同士が当接した状態において、若干伸長した状態となるように取り付けられている。これにより、切込み部17の両側部分同士が当接した状態においても、該両側部分同士が連結部材18によって接近方向に付勢され、これにより開口部16の周縁部に対し、その周長を小さくするように張力が付与される。
【0044】
このエアバッグ装置収納室内配設部15は、該切込み部17の両側部分同士が当接するか、又はこれらが僅かに(実施例では10mm以下)離隔した状態において、開口部16の周縁部(前面部15a)が後述の金型20のエアバッグ装置収納室形成用凸部30の外面に密着する形状となるように構成されている。
【0045】
なお、切込み部17及び連結部材18の形状や配置は図示の構成に限定されない。例えば、切込み部17は、開口部16の上端縁以外の縁部(例えば左右の側縁や下縁)から設けられてもよい。また、開口部16の周縁部の複数箇所に切込み部17が設けられてもよい。この場合、各切込み部17の両側部分同士を個別に連結部材18で連結してもよく、1個の連結部材18を、複数条の切込み部17を跨いで配設し、複数条の切込み部17の両側部分同士を共通の連結部材18によって連結してもよい。連結部材18は、開口部16の周縁部のうち少なくとも切込み部17を跨ぐ部分にのみ設けられてもよく、あるいは開口部16の全周を取り囲むように設けられてもよい。この実施の形態では、連結部材18は、開口部16の上端縁から切込み部17の延在方向の途中部にかけて該切込み部17の両側部分同士を連結しているが、連結部材18の配置はこれに限定されない。例えば、連結部材18は、開口部16の上端縁から切込み部17の末端まで連続して該切込み部17の両側部分同士を連結してもよい。また、連結部材18は、切込み部17の延在方向に間隔をあけて複数個配設されてもよい。
【0046】
次に、シートパッド本体2を成形するための金型20について説明する。第5図の通り、この実施の形態では、金型20は、上型21と、下型22と、該上型21にセットされた中子23とを有している。符号24は、該上型21と下型22とを連結したヒンジを示している。この金型20内において、シートパッド本体2は、その前面(着座者側の面)を下向きにした姿勢で成形される。即ち、下型22のキャビティ面によりシートパッド本体2の前面が成形され、上型21及び中子23のキャビティ面によりシートパッド本体2の後面が成形される。中子23の前面(この中子23の上下方向、左右方向及び前後方向は、シートパッド本体2の上下方向、左右方向及び前後方向と一致するものとする。)により主体部3の後面が成形される。中子23の左右の側面及び上面からは、それぞれ、凹部6を形成するための凸部25,26,27が突設されている(以下、これらの凸部25〜27を凹部形成用凸部ということがある。)。この凸部25,26,27は、中子23の左右の側面から上面にかけて連続して形成されている。左右の凸部25,26の前面からは、各凹溝3cを形成するための凸条28,29が突設されている。左側の凸部25の左側面(中子23からの突出方向の先端面)から左方及び前方に向って、エアバッグ装置収納室8を形成するための凸部30が突設されている(以下、この凸部30をエアバッグ装置収納室形成用凸部ということがある。)。この凸部30は、凸部25の側面に沿って略上下方向に延在した略直方体形状(即ちエアバッグ装置収納室8の内部形状と合致する形状)となっている。この凸部30の前後方向の幅は、凸部25の後面から凸条28の前端面までの幅よりも大きく、該凸部30は、凸条28の前端面よりも前方に突出したものとなっている。上側の凸部27の上端面からは、ヘッドレスト取付孔7を形成するための突起31が突設されている。
【0047】
なお、前記補強材10のうち、主片部11が中子23の前面に密着しうる形状となっており、左右の側片部12,13及び上片部14は、それぞれ、該中子23の左右及び上側の各凹部形成用凸部25,26,27の外面に密着しうる形状となっている。また、前述の通り、エアバッグ装置収納室内配設部15は、前記切込み部17の両側部分同士が当接するか、又はこれらが僅かに離隔した状態において、該エアバッグ装置収納室形成用凸部30の外面に密着しうる形状となっている。
【0048】
第7図の通り、各凸部25〜27,30は、上型21のキャビティ面から離隔している。また、上型21と下型22とを型締めした状態にあっては、中子23の前面並びに各凸部25〜27,30及び凸条28,29の外面と該上型21及び下型22のキャビティ面との間には、空間が存在する。即ち、中子23の前面及び上側の凸部27の前面と下型22のキャビティ底面との間が背当て部3aを形成するための空間となり、各凸条28,29及び凸部30の前端部と下型22のキャビティ底面との間が各サイドサポート部3bを形成するための空間となり、各凸部25,26の側面及び凸部30の後端部側面と上型21及び下型22のキャビティ側面との間が張出部4を形成するための空間となり、各凸部25〜27,30の後面と上型21のキャビティ天井面との間がフランジ部5を形成するための空間となる。
【0049】
この金型20を用いて補強材10付きシートパッド1を製造する場合、まず、第5図のように、上型21と下型22とを型開きし、中子23の前面側に補強材10を取り付ける。この際、第6図(a)の通り、補強材10のうちエアバッグ装置収納室内配設部15と左側片部12とを前方に捲っておき、最初に、突起31を上片部14の開口部14aに係合させつつ、該上片部14を中子23の上側の凸部27に上方から被せ、次いで、右側片部13を中子23の右側の凸部26及び凸条29に被せる。その後、第6図(b)の通り、左側片部12の裏側から前記連通口を介してエアバッグ装置収納室内配設部15の内側に凸部30を入り込ませつつ、該エアバッグ装置収納室内配設部15及び左側片部12を後方へ捲り返すようにして、該左側片部12を中子23の左側の凸部25及び凸条28に被せると共に、エアバッグ装置収納室内配設部15を凸部30に被せる。これにより、補強材10の主片部11が中子23の前面に密着し、左右の側片部12,13及び上片部14がそれぞれ各凸部25〜27及び凸条28,29の外面に密着し、エアバッグ装置収納室内配設部15が凸部30の外面に密着するようになる。これにより、補強材10の中子23への取り付けが完了する。
【0050】
その後、下型22内に発泡合成樹脂原料を注入し、上型21と下型22とを型締めして該発泡合成樹脂原料を発泡させる。この発泡合成樹脂は、凸部25〜27,30の側面と上型21及び下型22のキャビティ側面との間を通って該凸部25〜27,30の後面と上型21のキャビティ天井面との間まで回り込む。これにより、主体部3と連続した張出部4及びフランジ部5が形成される。また、これらの裏面に補強材10が一体化される。この発泡合成樹脂が硬化した後、上型21と下型22とを型開きしてシートパッド本体2を脱型する。このシートパッド本体2のうち、各凸部25〜27及び凸条28,29が存在していた部分が凹部6及び凹溝3cとなり、凸部30が存在していた部分がエアバッグ装置収納室8となる。これらの凹部6及び凹溝3cの内面は補強材10の各側片部12,13によって覆われており、エアバッグ装置収納室8の内面は、補強材10のエアバッグ装置収納室内配設部15によって覆われている。脱型後、必要に応じバリ取り等の仕上げ作業を行うことにより、シートパッド1が完成する。
【0051】
この補強材10の作用効果は以下の通りである。
【0052】
即ち、この補強材10にあっては、エアバッグ装置収納室内配設部15の前面部15aに設けられた開口部16の上端縁に切込み部17が形成され、この切込み部17の両側部分同士が、弾性的に収縮可能な連結部材18によって連結されている。前述の通り、このエアバッグ装置収納室内配設部15は、該切込み部17の両側部分同士が当接するか、又はこれらが僅かに離隔した状態において、開口部16の周縁部(前面部15a)が金型20の凸部30の外面に密着する形状となるように構成されている。また、連結部材18は、切込み部17の両側部分同士が当接した状態において、該両側部分同士を接近方向に付勢するように取り付けられている。従って、このエアバッグ装置収納室内配設部15を金型20の凸部30に被せた状態においては、該切込み部17の両側部分同士が連結部材18からの付勢力により接近し、開口部16の周縁部が凸部30の外面に密着するようになる。また、この連結部材18からの付勢力により、開口部16の周縁部には、その周長を小さくするように張力が付与された状態となるため、開口部16の周縁部が全周にわたって緊張して凸部30の外面に密着した状態を維持する。これにより、シートパッド本体2の発泡成形時に、この開口部16の周縁部が凸部30の外面から浮き上がって補強材10と凸部30との間に発泡合成樹脂が入り込んだり、開口部16の周縁部に皺が生じたりすることが、より確実に防止される。その結果、シートパッド本体2の表面に補強材10が精度よく一体化されたシートパッド1を製造することが可能である。
【0053】
以上の通り、この補強材10にあっては、開口部16の周縁部を凸部30の外面に重ね合わせた状態において、該開口部16の周縁部は、連結部材18から付与された張力により全周にわたって緊張して凸部30の外面に密着した状態となるため、補強材10の製造作業を容易化することが可能である。また、この開口部16の周縁部を凸部30の外面に重ね合わせるだけで、この開口部16の周縁部が全周にわたって緊張して凸部30の外面に密着するようになるので、この開口部16の周縁部を容易に且つ精度よく凸部30の外面に被着させることが可能である。
【0054】
この実施の形態では、開口部16の上端縁に切込み部17が設けられているが、この切込み部17の両側部分同士が連結部材18によって連結されており、開口部16の周縁部を凸部30の外面に被せると、この両側部分同士が連結部材18によって接近方向に付勢されて凸部30の外面に密着するようになるため、必ずしもこの切込み部17の両側部分同士を凸部30の外面に留め付けることが不要であり、開口部16の周縁部を容易に且つ精度良く凸部30の外面に被着させることができる。
【0055】
なお、前述の通り、この連結部材18は、切込み部17の両側部分同士が当接した状態において、該両側部分同士を接近方向に付勢するように取り付けられているので、切込み部17が閉じた状態においても、開口部16の周縁部に対し、その周長を小さくするように張力が付与されるため、開口部16の周縁部がしっかりと凸部30の外面に密着保持される。
【0056】
なお、この実施の形態では、補強材10のうち収納室内配設部15のエアバッグ膨出用開口部16の周縁部が環状部となっており、この開口部16の周縁部に、該周縁部の周長を小さくするように張力を付与するための張力付与手段(この実施の形態では、弾性的に収縮可能な連結部材18)が設けられているが、補強材10が他にも環状ないし筒状に延在する環状部(例えば、補強材10のうち、シートパッド本体2の通気孔と重なるように設けられた開口の周縁部や、シートパッド本体2にエアバッグ装置以外の機器(例えばスピーカなど)を収容するための凹部又は貫通孔等の穴状部の内面に沿って配置された部分等)を有する場合には、この部分にも、その周長を小さくするように張力を付与するための張力付与手段が設けられてもよい。
【0057】
この実施の形態では、環状部としての開口部16の周縁部に切込み部17を設け、この切込み部17の両側部分同士を張力付与手段としての連結部材18で連結することにより、該連結部材18からの張力によって開口部16の周長が小さくなるように構成しているが、本発明においては、このように切込み部17を設けなくとも、張力付与手段からの張力によって環状部の周長が小さくなるように構成することも可能である。例えば、本発明においては、少なくとも開口部16の周縁部において補強材10に一体的に弾性材料を設けてもよく、あるいは該開口部16に臨む補強材10の端部で弾性材料を連結させてもよい。もちろん、これ以外の構成を採用してもよい。
【0058】
この実施の形態では、環状部としての開口部16の周縁部には、該周縁部を金型20の内面に留め付けるためのマグネット等の留付手段は設けられていないが、本発明においては、この環状部としての開口部16の周縁部に、前記張力付与手段に加え、さらにこのような留付手段が設けられてもよい。
【0059】
[第2の実施の形態]
第8図は第2の実施の形態に係る補強材の筒状部付近及びこの筒状部に係合する金型の凸部付近の斜視図である。
【0060】
本発明においては、補強材の環状部は筒状に延在したものであってもよい。第8図は、このように筒状に延在した環状部を有する補強材の一例を示している。
【0061】
この実施の形態では、金型20に略円柱形状の凸部32が設けられており、この凸部32によってシートパッド本体2に凹部又は貫通孔(図示略)が形成されるようになっている。
【0062】
第8図の通り、この実施の形態では、補強材10には、この凸部32によって形成される凹部又は貫通孔の入口部分と重なる開口19aが設けられており、この開口19aの周縁部に略円筒形状の筒状部19の筒軸心線方向の一端側(基端側)が連なっている。この筒状部19が、該凸部32によって形成される凹部又は貫通孔の内周面に沿って配設される。この筒状部19も、補強材10の他の部分と同様の不織布よりなる。この実施の形態では、該筒状部19の筒軸心線方向の他端側(先端側)は開放口19bとなっている。この実施の形態では、該筒状部19の断面形状は略円形であり、基端側から先端側まで内径が略一定となっている。なお、筒状部19の形状はこれに限定されるものではなく、例えば、楕円形や多角形状など、種々の断面形状の筒状とすることができる。また、筒状部19の内径は基端側から先端側まで内径が一定でなくてもよい。
【0063】
この実施の形態では、筒状部19の先端側の開放口19bの周縁部から該筒状部19の基端側へ向かって切込み部17が設けられており、該切込み部17の両側部分同士が、弾性的に収縮可能な連結部材18によって連結されている。なお、この実施の形態では、筒状部19の先端縁から該筒状部19の筒軸心方向の途中部にかけて切込み部17が形成され、連結部材18は、筒状部19の先端縁からこの切込み部17の延在方向の途中部にかけて該切込み部17の両側部分を連結したものとなっているが、切込み部17及び連結部材18の形状及び配置はこれに限定されない。
【0064】
この筒状部19は、切込み部17の両側部分同士が当接するか、又はこれらが僅かに(例えば10mm以下)離隔した状態において、内周面が前記凸部32の外周面に密着する形状となるように構成されている。また、この実施の形態にあっても、連結部材18は、筒状部19の該切込み部17の両側部分同士が当接した状態において、連結部材18が若干伸長状態となり、該切込み部17の両側部分同士を接近方向に付勢するように、筒状部19に取り付けられている。
【0065】
この補強材10のその他の構成は、前述の第1〜7図の実施の形態と同様である。また、シートパッド本体2を発泡成形するための金型20の構成も、凸部32が設けられたこと以外は、前述の実施の形態と同様である。
【0066】
この実施の形態では、金型20でシートパッド本体2を発泡成形するに際し、中子23に補強材10を取り付ける場合に、筒状部19を凸部32の外周面に被着させる。この際、連結部材18によって筒状部19の周長を小さくするように張力が付与されるため、筒状部19が凸部32の外周面に密着するようになる。これ以外の補強材10の中子23への取り付け方法は、前述の実施の形態と同様である。補強材10を中子23に取り付けた後、下型22内に発泡合成樹脂原料を注入し、上型21と下型22とを型締めして該発泡合成樹脂原料を発泡させる。これにより、凸部32及びこれを取り巻く筒状部19が発泡合成樹脂中に埋没し、筒状部19がシートパッド本体2と一体化される。この発泡合成樹脂が硬化した後、上型21と下型22とを型開きしてシートパッド本体2を脱型する。このシートパッド本体2のうち、凸部32が存在していた部分が凹部又は貫通孔となり、この凹部又は貫通孔の内周面が補強材10の筒状部19によって覆われている。脱型後、必要に応じバリ取り等の仕上げ作業を行うことにより、シートパッド1が完成する。
【0067】
この実施の形態にあっては、凸部32に筒状部19を係合させる際には、切込み部17の両側部分同士を離反させるようにして筒状部19を拡径させることにより、筒状部19を凸部32に容易に係合させることができる。そして、筒状部19が凸部32に係合した後は、連結部材18からの張力により、切込み部17の両側部分同士が接近して筒状部19の周長が小さくなり、筒状部19が凸部32の外周面に密着するようになる。この実施の形態でも、連結部材18は、該切込み部17の両側部分同士が当接した状態において、この両側部分同士を接近方向に付勢するように取り付けられているので、この連結部材18からの付勢力により、筒状部19には、その周長を小さくするように張力が付与された状態となるため、筒状部19が全周にわたって緊張して凸部32の外面に密着した状態を維持する。これにより、シートパッド本体2の発泡成形時に、この筒状部19が凸部32の外周面から浮き上がって筒状部19と凸部32との間に発泡合成樹脂が入り込んだり、筒状部19に皺が生じたりすることが、より確実に防止される。その結果、シートパッド本体2の表面に補強材10が精度よく一体化されたシートパッド1を製造することが可能である。
【0068】
この第8図の実施の形態のその他の作用効果は、前述の実施の形態と同様である。
【0069】
なお、この実施の形態では、筒状部19は、基端側から先端側まで内径が略一定の円筒形状となっており、凸部32は、基端側から先端側まで外径が略一定の円柱形状となっているが、筒状部19及び凸部32の形状はこれに限定されない。例えば、筒状部19は、基端側ほど内径が大きくなる形状であってもよく、先端側ほど内径が大きくなる形状であってもよく、その筒軸心線方向の途中部が基端側や先端側よりも大径となっていてもよく、あるいはその筒軸心線方向の途中部が基端側や先端側よりも小径となっていてもよい。凸部32の外周面の形状は、この筒状部19の形状に応じて種々変更可能である。後述の第13図に、基端側ほど直径が大きくなる形状とされた筒状部19’及びこれが係合する凸部32’の構成例を示す。
【0070】
この実施の形態では、補強材10の一部が筒状部19となっているが、補強材10の全体が筒状に延在していてもよい。また、この実施の形態では、筒状部19は、先端側が開放端となっているが、筒状部19の先端側も補強材10の他の部分に連なっていてもよい。
【0071】
この実施の形態では、筒状部19の先端縁から該筒状部19の筒軸心方向の途中部にかけて1条の切込み部17が形成され、連結部材18は、筒状部19の先端縁からこの切込み部17の延在方向の途中部にかけて該切込み部17の両側部分を連結したものとなっているが、切込み部17及び連結部材18の形状や個数、配置はこれに限定されない。以下に、第8〜11図を参照して切込み部17及び連結部材18の他の構成例について説明する。
【0072】
[切込み部及び連結部材のその他の構成例]
第9〜11図は、それぞれ、切込み部及び連結部材のその他の構成例を示す、第8図と同様部分の斜視図である。
【0073】
上記の第8図の実施の形態では、連結部材18は、筒状部19の先端縁から切込み部17の延在方向の途中部にかけて該切込み部17の両側部分同士を連結しているが、第9図のように、連結部材18は、筒状部19の先端縁から切込み部17の末端にかけて、該切込み部17の両側部分同士を連結してもよい。このように構成した場合、切込み部17の全体が連結部材18によって隠蔽されるため、シートパッド本体2の発泡成形時に、この切込み部17に発泡合成樹脂が入り込むことが、より確実に防止される。
【0074】
切込み部17は、第10図のように、筒状部19の基端側まで設けられてもよい。この実施の形態では、連結部材18は、筒状部19の先端縁から切込み部17の末端、即ち筒状部19の基端側まで連続して該切込み部17の両側部分同士を連結したものとなっている。このように構成することにより、筒状部19をその先端側から基端側まで凸部32の外周面に密着させることができる。
【0075】
なお、本発明においては、連結部材18を、切込み部17の延在方向に間隔をあけて複数個配設し、要所要所で該切込み部17の両側部分同士を連結するようにしてもよい。
【0076】
上記の各実施の形態では、連結部材18は、切込み部17の近傍部にのみ配設されているが、第11図のように、連結部材18は、筒状部19の全周を取り巻くように配設されてもよい。このように構成することにより、筒状部19をより確実に全周にわたって凸部32の外周面に密着させることができる。
【0077】
なお、第11図の連結部材18は、全周にわたってゴム材料等の弾性的に伸縮可能な材料により構成されてもよく、少なくとも一部(例えば切込み部17を跨ぐ部分のみ)が弾性的に収縮可能な材料により構成され、残りの部分は弾性的に伸縮しない材料により構成されてもよい。この実施の形態でも、連結部材18は、筒状部19の先端縁の近傍部にのみ配設されているが、第9図のように、切込み部17をその末端まで覆うように配設されてもよく、第10図のように筒状部19の先端側から基端側まで連続して配設されてもよく、切込み部17の延在方向に間隔をあけて複数個配設されてもよい。
【0078】
上記の各実施の形態では、筒状部に切込み部17が1条のみ設けられているが、筒状部19の周方向に間隔をあけて複数条の切込み部17が設けられてもよい。この場合、各切込み部17の両側部分同士を別々の連結部材18によって連結してもよく、1個の連結部材18を、複数条の切込み部17を跨いで配設し、複数条の切込み部17の両側部分同士を共通の連結部材18によって連結してもよい。
【0079】
上記の各実施の形態では、切込み部17は、筒状部19の筒軸心線方向と略平行に延在しているが、この筒状部19の筒軸心線方向に対し斜めに、又は湾曲して延在していてもよい。
【0080】
なお、第9〜11図のその他の構成は第8図と同様であり、第9〜11図において第8図と同一符号は同一部分を示している。
【0081】
[張力付与手段のその他の構成例]
上記の第8〜12図においても、筒状部19には、切込み部17が設けられ、この切込み部17の両側部分同士が張力付与手段としての連結部材18で連結されることにより、該連結部材18からの張力によって筒状部19の周長が小さくなるように構成しているが、張力付与手段からの張力によって筒状部19の周長が小さくなるようにする構成は、これに限定されない。第12図に張力付与手段の他の構成例を示す。第12図は、第8図と同様部分の斜視図である。なお、第12図は、あくまで張力付与手段の一例を示すものである。
【0082】
第12図の実施の形態では、少なくとも筒状部19の先端側の開放口19bの周縁部の一部が、弾性的に収縮可能な弾性材料40により構成されている。詳しくは、この実施の形態では、該開放口19bの周縁部に、部分的に不織布が存在しない凹部41が形成されている。この実施の形態では、該凹部41は、開放口19bの周縁部から筒状部19の基端側に向かって、該筒状部19を構成する不織布を略コ字形に切り欠くようにして形成されている。この凹部41を塞ぐように、弾性的に収縮可能な前記弾性材料40が配設されている。この実施の形態では、該弾性材料40は、凹部41と略相似形の略長方形シート状となっており、その3辺が凹部41の周囲の3辺に重ね合わされて筒状部19に縫着されている。符号40aは、この縫着の縫目を示している。この弾性材料40の残りの1辺は、開放口19bに臨んでおり、且つその両側の筒状部19の先端縁と連続するように配置されている。この弾性材料40は、筒状部19の内径が金型20の凸部32の外径と同等であるときに、若干伸長状態となるように取り付けられている。
【0083】
なお、凹部41の形状や配置、形成方法、並びに弾性材料40の形状や配置、筒状部19への取付方法はこれに限定されない。例えば、この実施の形態では、弾性材料40は、筒状部19の先端部から筒軸心線方向の途中部まで配設されているが、該筒状部19の先端部から基端部まで連続して配設されてもよい。この実施の形態では、開放口19bの周縁部に凹部41を1個だけ形成しているが、該開放口19bの周方向に間隔をおいて凹部41を複数個形成し、これらの凹部41をそれぞれ塞ぐように弾性材料40を設けてもよい。複数個の凹部41を共通の弾性材料40により塞ぐようにしてもよい。この実施の形態では、筒状部19に凹部41を設け、この凹部41を塞ぐように弾性材料40を設けているが、凹部41も切込み部17も設けることなく、該筒状部19の外周面又は内周面に沿って弾性材料40を配設してもよい。あるいは、例えば筒状部19の先端側に筒状の弾性材料40を連結するようにして、開放口19bの周縁部を全周にわたって弾性材料40により構成してもよい。
【0084】
この実施の形態のその他の構成は、前述の第8図の実施の形態と同様である。
【0085】
この実施の形態にあっても、筒状部19を金型20の凸部32に被着させると、弾性材料40によって筒状部19の周長を小さくするように張力が付与されるため、筒状部19が凸部32の外周面に密着するようになる。これ以外の補強材10の中子23への取り付け方法及びシートパッド本体2の成形方法は、第8図の実施の形態と同様である。この第12図の実施の形態にあっても、第8図の実施の形態と同様の作用効果が奏される。
【0086】
[補強材の環状部及び金型の凸部のその他の構成例]
第13図は、補強材の環状部及び金型の凸部のその他の形状例を示す、第8図と同様部分の斜視図である。
【0087】
この実施の形態でも、補強材10は、環状部として、筒状に延在する筒状部19’を有している。この実施の形態でも、該筒状部19’は、補強材10の他の部分と同様、不織布よりなる。この実施の形態では、筒状部19’は、第13図の通り、基端側ほど内径が大きくなる略切頭円錐形状となっている。この実施の形態でも、筒状部19’の該基端側は、補強材10に設けられた開口19aの周縁部に連なっており、先端側は開放口19bとなっている。
【0088】
この実施の形態でも、筒状部19’の先端側の開放口19bの周縁部から該筒状部19’の基端側へ向かって切込み部17が設けられており、該切込み部17の両側部分同士が、弾性的に収縮可能な連結部材18によって連結されている。なお、この実施の形態でも、連結部材18は、第8図と同様に、筒状部19’の先端縁の近傍部にのみ配設されているが、第9図のように切込み部17をその末端まで覆うように配設されてもよく、第10図のように筒状部19’の先端側から基端側まで連続して配設されてもよく、切込み部17の延在方向に間隔をあけて複数個配設されてもよい。また、連結部材18は、筒状部19’の全周を取り巻くように配設されてもよい。さらに、筒状部19’の周方向に間隔をあけて複数条の切込み部17が設けられてもよい。
【0089】
この実施の形態では、第13図の通り、金型20の内面のうち補強材10の開口19aと重なる位置から略切頭円錐形状の凸部32’が突設されている。筒状部19’は、切込み部17の両側部分同士が当接するか、又はこれらが僅かに(例えば10mm以下)離隔した状態において、内周面が該凸部32’の外周面に密着する形状となる。この実施の形態にあっても、連結部材18は、筒状部19’の該切込み部17の両側部分同士が当接した状態において、連結部材18が若干伸長状態となり、該切込み部17の両側部分同士を接近方向に付勢するように、筒状部19’に取り付けられている。
【0090】
この実施の形態のその他の構成は第8図の実施の形態と同様である。
【0091】
この実施の形態においても、凸部32’に筒状部19’を係合させる際には、切込み部17の両側部分同士を離反させるようにして筒状部19’を拡径させることにより、筒状部19’を凸部32’に容易に係合させることができる。筒状部19’が凸部32’に係合した後は、連結部材18からの張力により、切込み部17の両側部分同士が接近して筒状部19’の周長が小さくなり、筒状部19’が凸部32’の外周面に密着するようになる。
【0092】
この第13図の実施の形態の作用効果は、第8図の実施の形態と同様である。
【0093】
なお、上記の第8〜13図の実施の形態においても、環状部としての筒状部19には、この筒状部19を金型20の凸部32の外周面に留め付けるためのマグネット等の留付手段は設けられていないが、本発明においては、この筒状部19に、前記張力付与手段(連結部材18又は弾性材料40)に加え、さらにこのような留付手段が設けられてもよい。
【0094】
上記実施の形態はいずれも本発明の一例であり、本発明は上記以外の形態をもとりうる。
【0095】
上記の各実施の形態では、補強材の環状部に切込み部を設け、この切込み部の両側部分同士を、弾性的に収縮可能な連結部材によって連結することにより、この環状部に張力を付与しうるよう構成しているが、環状部に張力を付与するための構成は、これに限定されない。例えば、この環状部において、補強材自体をゴムシートや伸縮可能な織布や編布等の弾性材料により構成してもよい。
【0096】
本発明は、シートパッド以外の発泡成形部材にも適用可能である。
【符号の説明】
【0097】
1 シートパッド
2 シートパッド本体
3 主体部
3a 背当て部
3b サイドサポート部
3c 凹溝
6 凹部
8 エアバッグ装置収納室
10 補強材
11 主片部
12,13 側片部
14 上片部
15 エアバッグ装置収納室内配設部
16 開口部
17 切込み部
18 連結部材
19,19’ 筒状部
20 金型
21 上型
22 下型
23 中子
25〜27,30,32,32’ 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡成形体の表面の少なくとも一部に沿って配設される面状の補強材であって、
該補強材は、環状ないし筒状に延在する環状部を有した発泡成形体用補強材において、
該環状部の周長を小さくするように張力を付与するための張力付与手段が設けられていることを特徴とする発泡成形体用補強材。
【請求項2】
請求項1において、前記環状部に、その周方向と交差方向に切込み部が設けられており、
該切込み部の両側部分同士が前記張力付与手段によって連結されていることを特徴とする発泡成形体用補強材。
【請求項3】
請求項2において、前記張力付与手段は、前記切込み部の両側部分同士が当接した状態において、該両側部分同士を接近方向に付勢することを特徴とする発泡成形体用補強材。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記張力付与手段の少なくとも一部は弾性材料よりなることを特徴とする発泡成形体用補強材。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項において、該補強材の少なくとも前記環状部は不織布よりなることを特徴とする発泡成形体用補強材。
【請求項6】
発泡成形体と、
該発泡成形体の表面の少なくとも一部に沿って配設された請求項1ないし5のいずれか1項に記載の発泡成形体用補強材と
を有する発泡成形部材。
【請求項7】
請求項6において、該発泡成形部材はシートパッドであることを特徴とする発泡成形部材。
【請求項8】
請求項6又は7の発泡成形部材を製造するための方法であって、
前記補強材を金型の内面に配設する配設工程と、
該金型内で前記発泡成形体を発泡成形する発泡成形工程とを有しており、
該配設工程で該補強材を金型内面に配設した状態において、前記張力付与手段によって前記環状部に対し前記張力が付与されることを特徴とする発泡成形部材の製造方法。
【請求項9】
請求項8において、前記金型の内面には、前記補強材の前記環状部が係合する凸部が設けられており、
前記張力付与手段からの張力によって該環状部を該凸部に対し密着させることを特徴とする発泡成形部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−143746(P2011−143746A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4024(P2010−4024)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】