説明

発熱体CVD装置及び成膜方法

【課題】発熱体の長寿命化を図った発熱体CVD装置を提供する。
【解決手段】発熱体3と電力供給機構との接続部と、前記支持体31による発熱体3の支持部とのいずれか一方又は両者を覆い、内部と発熱体3の延出部の周囲とに隙間が設けられたカバー301,302と、該カバー301,302内部の隙間にガスを導入するガス導入系とを備えている発熱体CVD装置とし、前記カバー301,302内部の隙間に導入したガスを前記発熱体の延出部の周囲の隙間から前記処理容器内に流動させ、前記処理容器内に供給された原料ガスの前記カバー内部の隙間への侵入を抑制できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空室(処理容器)内に所定の温度に維持される発熱体を設け、原料ガスを前記発熱体によって分解及び/又は活性化させ、真空室(処理容器)内に配置されている基板上に薄膜を堆積させる発熱体CVD装置及び該装置を用いた成膜方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LSI(大規模集積回路)を始めとする各種半導体デバイスやLCD(液晶ディスプレイ)等の作製においては、基板上に所定の薄膜を形成するプロセスの1つとして化学気相堆積(CVD:Chemical Vapor Deposition)法が広く用いられている。
【0003】
CVD法には、放電プラズマ中で原料ガスを分解及び/又は活性化させて成膜を行うプラズマCVD法や基板を加熱してその熱により化学反応を生じさせて成膜を行う熱CVD法等の他に、所定の高温に維持した発熱体により原料ガスを分解及び/又は活性化させて成膜を行う方式のCVD法(以下、発熱体CVD法と呼ぶ)がある。
【0004】
発熱体CVD法を行う成膜処理装置(発熱体CVD装置)は、真空排気可能な処理室内に設けられたタングステン等の高融点金属からなる発熱体を1000〜2000℃程度の高温に維持しながら原料ガスを導入するよう構成されている。導入された原料ガスは、発熱体の表面を通過する際に分解や活性化され、これらが基板に到達することにより最終的な目的物である材料の薄膜が基板の表面に堆積する。尚、このような発熱体CVD法のうち、ワイヤ状の発熱体を用いるものについてはホットワイヤ(Hot Wire)CVD法と呼ばれ、また、発熱体による原料ガスの分解あるいは活性化において発熱体の触媒反応を利用しているものについては触媒CVD(またはCat−CVD:Catalytic−CVD)法と呼ばれる。
【0005】
発熱体CVD法では原料ガスの分解や活性化は、発熱体の表面を通過する際に起こるため、基板の熱のみによって反応を生じさせる熱CVD法に比べて基板の温度を低くできるという長所がある。また、プラズマCVD法のようにプラズマを形成することがないので、プラズマによる基板へのダメージといった問題からも無縁である。このようなことから、発熱体CVD法は、高集積化や高機能化が益々進む次世代の半導体デバイスや表示デバイス等の成膜法として有望視されている。
【0006】
図8に従来の発熱体CVD装置の概念図を示す。内部で基板(不図示)に対して薄膜形成という所定の処理がなされる処理容器1に、処理容器1内を真空に排気する排気系11と、処理容器1内に薄膜形成のための所定の原料ガスを供給する原料ガス供給系21とが接続されている。
【0007】
処理容器1内には、処理容器1内に供給された原料ガスが表面を通過するように発熱体3が配置されており、当該発熱体3には、これを発熱体CVD法に要求される所定の高温(約1600〜2000℃程度)に加熱、維持するように、電力を与える電力供給機構30が接続されている。
【0008】
また、処理容器1内には、前記所定の高温に維持されている発熱体3によって分解及び/又は活性化された原料ガスによって所定の薄膜が形成される基板(不図示)を保持する基板ホルダー4が備えられている。
【0009】
なお、図8図示の形態においては、原料ガス供給系21は、不図示の原料ガスが充填されたボンベ、供給圧調整器、流量調整器、供給/停止切換バルブ等から構成されており、原料ガスは、この原料ガス供給系21より処理容器1内において発熱体3に対向して配置されているガス供給器2を介して処理容器1内に供給されている。また、2種類以上の原料ガスを使用するプロセスでは、原料ガス供給系21は使用されるガス種の数だけガス供給器2に並列に接続されることになる。ガス供給器2は中空構造となっており、基板ホルダー4と対向する面に多数のガス吹出孔210が形成されている。
【0010】
一方、排気系11は、排気速度調整機能を有するメインバルブ12を介して処理容器1と接続されており、この調整機能により処理容器1内の圧力が制御される。
【0011】
また、薄膜形成という所定の処理が施される被処理物たる基板(不図示)は、ゲートバルブ5を介して処理容器1内に搬出/搬入され、基板ホルダー4内には、基板(不図示)を所定の温度に加熱する加熱機構(不図示)が内蔵されている。
【0012】
発熱体3は、一般に線状の部材からなるものであり、鋸歯状に折り曲げられ、少なくとも表面が絶縁体である支持体31により保持されている。また、電力供給機構30からの電力供給線32が接続端子33により接続され、ここを介して電力の供給を受け、発熱体CVD法に要求される所定の温度への加熱、所定の温度での維持が図られている。
【0013】
電力供給機構30には、通常、直流電源又は交流電源が用いられる。発熱体3は、電源から電力が供給されて、通電加熱により所定の温度に設定されるようになっている。この発熱体を高温加熱することにより、原料ガスを分解及び/又は活性化し成膜を効率よく行うことができる。
【0014】
発熱体3が電力供給機構30に接続される接続部における発熱体3の接続部への取り付けは、図10図示のように、電力供給線32が接続されている接続端子本体331(図8の接続端子33に該当している)に設けられている発熱体挿入口337に、発熱体3の端部が挿入され、ネジ332で締め付けて行われている。
【0015】
図8に示す発熱体CVD装置による薄膜形成について、シリコン膜を作製する場合とシリコン窒化膜を作製する場合を例に挙げると、シリコン膜を作製する場合には、原料ガスとしてシラン(SiH4)と水素(H2)の混合ガスが用いられ、シリコン窒化膜を作製する場合にはシランとアンモニア(NH3)の混合ガスが用いられる。処理容器1内の圧力は0.1〜100Pa程度である。何れの膜においても発熱体3の温度は約1600〜2000℃、基板ホルダー4に保持されている基板(不図示)の温度は、基板ホルダー4内の加熱機構(不図示)によって200〜500℃程度にされている。
【0016】
前述した従来型の発熱体CVDを用いて所定の成膜条件により、シリコン膜やシリコン窒化膜を形成した場合、発熱体に使用されている高融点金属、例えば、前述のタングステン線等がシランガスと反応してしまい、シリコン化合物を生成してしまうことがある(シリサイド化)。
【0017】
このようなシリサイド化は、電力供給機構30からの電力供給の接続部である接続端子33近傍や支持体31との接続部近傍など、原料ガスが発熱体3を変性させる反応を起こすよりも短い時間内に原料ガス又はその分解種を熱により瞬時に発熱体3の表面から吹き飛ばすことができない、やや温度が低い部分から進行する。
【0018】
このシリサイド化によって、発熱体の組成及び径が変化してしまい、抵抗値が下がる。その結果、発熱量が減少し、最終的には発熱体全体の劣化が引き起こされ、発熱体の使用時間が長くなるにつれて成膜速度が低下する。また、これらシリサイド等の反応物は、一般的に蒸気圧が高いので、堆積された膜の汚染の原因ともなり、この発熱体の劣化にともない、成膜されるシリコン膜やシリコン窒化膜の膜質も劣化する。そこで、所定の処理枚数を行ったある時点で、処理容器1内の真空を大気開放し、発熱体3の交換を行う必要があり、生産性において問題であった。
【0019】
このシリサイド化の現象については、2000年4月24日〜28日に米国サンフランシスコのMarriottホテルならびにArgentホテルにて開催されたMaterials Research Society 2000 Spring Meetingにおいて、“The influence of W filament alloying on the electronic properties of HWCVD deposited a−Si:H films”と題して、A.H.Mahan等により詳細な発表がなされている。
【0020】
上述の発熱体のシリサイド化による劣化に対する制御手段であるが、Mahan等は、前記発表の中で発熱体の寿命を延ばす手段についても触れ、成膜後に発熱体を水素中あるいは真空中で加熱することを提案している。
【0021】
しかし、この手段は、各成膜の間にその処理を行う時間を確保する必要があり、生産性が低下してしまう問題がある。また、厳密には発熱体のシリサイド化は成膜中に進行していることから、すなわち、発熱体温度、あるいは原料ガスの分解及び/又は活性化に有効な発熱体の領域等の発熱体3を中心とした成膜環境が変化しているため、成膜時間が長い場合、膜の特性が厚さ方向で変化(劣化)してしまう。
【0022】
図9は、発熱体3を支持体31に線材34(通常モリブデンが用いられる)により保持し、これによって接触面積を低減させることにより熱伝導を低減させ、発熱体3のやや温度が低くなる部分(発熱体3が電力供給機構30に接続されている接続部や、発熱体3が支持体31に支持されている支持部)から進行するシリサイド化の防止を図ろうとした従来例の支持体31の部分を説明するものである。しかしこの方法でも線材34と接触した点の発熱体3の温度は少なからず低下してしまい、シリコン膜形成等でシランガス圧力が高い等、成膜条件によってはその点からシリサイド化を生じてしまう。
【0023】
したがって、図9図示の構成を採用した発熱体CVD装置においても、所定の処理枚数を行ったある時点で、処理容器1内の真空を大気開放し、発熱体3の交換を行う必要があり、生産性において問題があった。
【0024】
一方、発熱体CVD装置において成膜を繰り返し行うと、処理容器内部にも膜が付着し、やがて剥離してゴミの原因となる。本発明者は、このゴミの原因となる処理容器内部の付着膜を効率よく除去可能な除去方法、さらには、発熱体CVD装置のin situクリーニング法を提案している(特許文献1参照)。これは、図8図示のような従来の発熱体CVD装置におけるガス供給器2に、原料ガス供給系21と同様の構成のクリーニングガス供給系を配設し、クリーニング時には、成膜時の原料ガスの代わりにガス供給器2を介して処理容器1にクリーニングガスを導入するものである。すなわち、処理容器1内を排気した後、内部に配設されている発熱体3を2000℃以上に加熱保持し、この状態で発熱体3により分解及び/又は活性化されて生成される活性種が、付着膜と反応してこれを気体状物質に変換させることのできるクリーニングガスを処理容器1に導入し、生成された気体状物質を排気することにより付着膜を除去することを特徴とする発明である。この発明は、発熱体を2000℃以上に保持することで、発熱体3自身がクリーニングガスと反応を起こさず安定であるという知見に基づいたものである。
【0025】
しかし、その発明後、発熱体3を2000℃以上に保持しようとしても、やはり電力供給機構30からの電力供給の接続部である接続端子33近傍や支持体31との接触部近傍といった部分は温度が低く、付着膜の除去を行うにしたがって、その部分がクリーニングガスとの反応によりエッチングされて徐々に細ってしまい、やがて切れてしまうことが判明した。したがって、原料ガスによるシリサイド化の問題と同様、ある時点で発熱体3の交換を行う必要があり、生産性において問題となっていた。
【0026】
更に、前述したように、従来型の発熱体CVD装置においては、発熱体3が電力供給機構30に接続されている接続部に、図10図示のような接続構造が採用されているので、ネジ332の締め付け力は、製造者(作業者)によって一定していない。また、ネジ332を締め付ける力が一定していないだけでなく、発熱体3に通電することで接続端子本体331が加熱されるが、この熱サイクルでネジ332に緩みが生じ、ネジ332による発熱体3の接続端子本体331への締め付け力が小さくなってしまうこともあった。
【0027】
通常、発熱体3は通電加熱により1600〜2000℃程度に加熱されるため、材料としては、高融点金属が用いられ、一般的には、φ0.5の線状タングステンが用いられる。しかし、タングステン線は、一度、1600〜2000℃の高温で通電加熱されると、結晶状態が変化することから、脆く、折れ易い性質に変化してしまう。この変化は、上述のシリサイド化と異なり、発熱体3と電力供給機構との接続部などに限られた領域ではなく、当然、発熱体3全体に及び、特に接続部などにおいては、従来多用されていた上述のネジによる固定に代わる、新たに脆い性質に変質したタングステン線の固定方法の問題として、発熱体のシリサイド化防止と同様に、生産性の向上を図る上で発熱体CVD装置固有の解決すべき課題として残されていた。
【0028】
【特許文献1】特願平11−222087号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
本発明の目的は、処理容器(真空室)内に導入された原料ガスを発熱体によって分解及び/又は活性化させ、処理容器(真空室)内に配置されている基板上に薄膜を堆積させる発熱体CVD装置であって、生産性の向上された発熱体CVD装置を提供することを目的としている。そして、かかる目的を達成するために、発熱体CVD装置の重要な機構部の一つである、主に発熱体の電力供給機構との接続部において、発熱体のやや温度が低くなる部分が、成膜時に、原料ガスやこれらを起源とする活性種によって劣化(シリサイド化)したり、付着膜除去時(クリーニング時)にクリーニングガスやこれを起源とする活性種と反応(エッチング)したりすることを防止でき、また、発熱体の固定方法が改善されていて、その箇所における発熱体の劣化の問題を防止することのできる発熱体CVD装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明の発熱体CVD装置は、上記目的を達成するために次のように構成されている。
【0031】
本発明の発熱体CVD装置は、原料ガスが供給される処理容器内で、電力供給機構に接続されていると共に、支持体に支持されており、前記電力供給機構から供給される電力で発熱(約1600〜2000℃程度)して前記原料ガスを分解及び/又は活性化する発熱体を備えた発熱体CVD装置において、前記発熱体と電力供給機構との接続部と、前記支持体による発熱体の支持部とのいずれか一方又は両者を覆い、内部と発熱体の延出部の周囲とに隙間が設けられたカバーと、該カバー内部の隙間にガスを導入するガス導入系とを備えていることを基本的形態とする発熱体CVD装置である。
【0032】
本発明の発熱体CVD装置は、上記のように、前記発熱体が電力供給機構に接続されている接続部及び/又は前記発熱体が支持体に支持されている支持部には、接続部及び支持部との間に隙間を存在させ、かつ発熱体と接触すること無しにカバーが装着されており、当該カバーと、接続部及び支持部との間の当該隙間に、ガスを導入するためのガス導入系が備えられている。
【0033】
しかも、発熱体が電力供給機構に接続されている接続部及び/又は発熱体が支持体に支持されている支持部において、前記カバーと接続部及び支持部との間に存在している隙間は、発熱体の端部と接触すること無しに装着されているカバーと、発熱体端部との間に形成されている隙間を介して処理容器の内部空間に連通されている。
【0034】
そこで、前記カバーと接続部及び支持部との間の隙間にガスを導入するためのガス導入系から導入されたガスは、前記カバーと接続部及び支持部との間に存在している隙間及び、前記カバーと発熱体端部との間に形成されている隙間を介して処理容器内に導入されていく。
【0035】
この結果、成膜時あるいは付着膜除去(クリーニング)時に、前記カバーと接続部及び支持部との間の隙間にガス導入系からガスを導入すると、これが、当該隙間から、前記カバーと発熱体端部との間に形成されている隙間を介して処理容器内に流動していく。
【0036】
そこで、成膜時にはシランガス等の原料ガスがカバー内部の、カバーと接続部や支持部との間に存在している隙間へ侵入すること、すなわち原料ガスが発熱体のやや温度の低い部分に接触することを抑制できる。また、付着膜除去(クリーニング)時にも、クリーニングガスがカバー内部の、カバーと接続部や支持部との間に存在している隙間へ侵入すること、すなわちクリーニングガスが発熱体のやや温度の低い部分に接触することを抑制できる。
【0037】
また、カバーが発熱体に接触すると、その接触部分の発熱体の温度が低下してしまい、その温度が低下した部分が原料ガスやクリーニングガス、これらを起源とする活性種に接触し、シリサイド化の進行や、成膜環境の不安定化が生じてしまうが、前記の通り、カバーは、発熱体の端部と接触すること無しに接続部や支持部に装着されている、すなわちカバーと発熱体の端部との間には隙間が形成されているのでこのようなおそれはない。
【0038】
これらにより、発熱体が電力供給機構に接続されている接続部や、発熱体が支持体に支持されている支持部のように、発熱体の温度がやや低くなる部分が、成膜時に原料ガスにより劣化(シリサイド化)したり、付着膜除去(クリーニング)時にクリーニングガスと反応(エッチング)したりすることを防止できる。
【0039】
この結果、発熱体の長寿命化と、成膜環境の安定化が実現でき、発熱体の長寿命化による発熱体の交換頻度の低下により、生産性の良い発熱体CVD装置を提供するこができる。
【0040】
なお、前記において、カバーと接続部や支持部との間の隙間にガス導入系から導入されるガスは、水素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、アンモニアのいずれか、またはこれらの2種以上からなる混合ガスとすることができる。
【0041】
本発明が提案する他の発熱体CVD装置は、前述した基本的形態の発熱体CVD装置において、前記発熱体の電力供給機構との接続部が、接続端子本体と、該接続端子本体に摺動自在に取り付けられた弾性体支持具と、該弾性体支持具と前記接続端子本体との間に設けられた弾性体とを備えており、該弾性体と前記接続端子本体との間に挿入された前記発熱体の端部が、前記弾性体支持具によって押圧された弾性体の弾性力により前記接続端子本体へ押し付けられており、しかも前記弾性体支持具は、摺動させることで、前記弾性体の押圧を解除して、前記弾性体の弾性力による前記発熱体の端部の接続端子本体への押し付けを解除可能となっていることを特徴とするものである。
【0042】
ここで、弾性体としては金属製又はセラミック製の弾性体が用いられ、この金属製又はセラミック製の弾性体としては、1600〜2000℃の高温に達する発熱体と接触し、600℃近くまで加熱される場合があるため、そのような温度でもその弾性力を失わない材質であるニッケル超合金(インコネル:登録商標)などの金属や窒化硅素などのセラミックからできているバネなどを採用することが望ましい。
【0043】
前記の構成の発熱体CVD装置によれば、発熱体の端部と接続部との接触面積を前記発熱体挿入口に与えられている一定の面積に保ち、かつ、発熱体の端部を接続部に常にほぼ一定の力で押し付けることができる。
【0044】
また、前記の構成を採用することによって、図10に示したような従来のネジの締め付け力による固定と異なり、弾性体支持具(例えば、バネ押さえ金具)が接続部の発熱体挿入口への発熱体端部の挿脱方向に並行にスライドされることによって、弾性力を発揮する弾性体からの押し付け力による固定、または力の解除を瞬時に行って、発熱体の端部の、接続部での取り付け、取り外しを実現できる。
【0045】
したがって、発熱体が一度通電加熱されて変質し、脆くなっていたとしても、発熱体の端部は、高温下において安定した一定の弾性力により固定されており、しかも、発熱体端部の接続部での取り付け、取り外しは容易に、かつ短時間で行うことが可能であるため、メンテナンスによる装置停止時間を低減でき、生産性の高い発熱体CVD装置を提供することができる。
【0046】
本発明が提案する更に他の発熱体CVD装置は、前述した基本的形態の発熱体CVD装置において、前記発熱体の電力供給機構との接続部が、前記発熱体の端部に、前記発熱体に設けられたボス状の金属製ブロックと、内部に環状の金属製コイルバネを有する接続端子本体を備え、前記金属製ブロックが、前記環状の金属製コイルバネ内に挿入され、前記環状の金属製コイルバネが弾性力によって抜き取り可能に保持されており、当該金属製コイルバネを通して前記電力供給機構からの電力供給が行われることを特徴とするものである。
【0047】
ここでも、金属製コイルバネは、1600〜2000℃の高温に達する発熱体と接触し、600℃近くまで加熱される場合があるため、そのような温度でもその弾性力を失わない材質であるニッケル超合金などの金属製とすることが望ましい。
【0048】
かかる構成によっても、発熱体の端部を、金属製コイルバネで、常にほぼ一定の力で、接続部に保持することができる。
【0049】
また、発熱体の端部の金属製ブロックを発熱体挿入口内に挿脱することによって、弾性力を発揮する金属製コイルバネからの押し付け力による固定、または力の解除が瞬時に行われ、発熱体の端部の、接続部での取り付け、取り外しを容易に、かつ短時間で行うことが可能であるため、メンテナンスによる装置停止時間を低減でき、生産性の高い発熱体CVD装置を提供することができる。
【0050】
更に、本発明が提供する薄膜形成方法は、上記の発熱体CVD装置を用いた成膜方法において、成膜時に、前記カバー内部の隙間に前記ガス導入系からガスを導入し、該ガスを前記発熱体の延出部の周囲の隙間から処理容器内に流動させ、処理容器内に供給された原料ガスの前記カバー内部の隙間への侵入を抑制することを特徴とするものである。
【0051】
このように、以上のような構成にすれば、発熱体が電力供給機構に接続されている接続部や、発熱体が支持体に支持されている支持部のように、発熱体の温度がやや低くなる部分が、成膜時に原料ガスにより劣化(シリサイド化)したり、付着膜除去(クリーニング)時にクリーニングガスと反応(エッチング)したりすることを防止できると共に、発熱体が一度通電加熱されて変質し、脆くなっていたとしても、発熱体の端部を、高温下においても安定したほぼ一定の弾性力により固定し続け、しかも、発熱体端部の接続部での取り付け、取り外しは容易に、かつ短時間で行うことができる。つまり、シリサイド化やエッチングの防止による発熱体の長寿命化と合わせることにより、メンテナンスによる装置停止時間を低減できる生産性の高い発熱体CVD装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0052】
本発明によれば、発熱体が電力供給機構に接続されている接続部や、発熱体が支持体に支持されている支持部を、接続部、支持部との間に隙間を存在させ、かつ、発熱体と接触すること無しに、すなわち発熱体との間に隙間を介在させてカバーで覆い、当該カバーと接続部、支持部との間の隙間にガスを導入するガス導入機構が備えられている。そこで、ガス導入機構から水素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、アンモニアのいずれか、またはこれらの2種以上からなる混合ガスを、前記カバーと接続部、支持部との間の隙間に導入することにより、成膜時にはシランガス等の原料ガスやこれに起源を有する活性種、付着膜除去時にはクリーニングガスやこれに起源を有する活性種が、前記カバーと接続部、支持部との間の隙間に侵入して、接続部近傍や、支持部近傍といった発熱体の温度がやや低くなる発熱体部分に接触することを抑制できる。そのため、成膜時におけるこれら発熱体の温度がやや低くなる部分から進行するシリサイド化、又は、クリーニング時におけるエッチング現象などによる発熱体の劣化を効果的に防止することができる。
【0053】
また、発熱体が電力供給機構に接続されている接続部における発熱体端部の取り付けを、接続部に設けられている発熱体挿入口への発熱体端部の挿入と、当該発熱体挿入口内に備えられている金属製又はセラミック製弾性体によるほぼ一定の弾性力による発熱体端部の接続部への押し付けによって実現している。そこで、発熱体が一度、通電加熱して脆くなったとしても、高温下でも安定した、ほぼ一定の弾性力により発熱体の端部を接続部に固定し続けることができ、しかも、発熱体端部の接続部での取り付け、取り外しは、容易に、かつ短時間で行うことができる。
【0054】
そこで、シリサイド化やエッチング現象の防止による発熱体の長寿命化と合わせることにより、メンテナンスによる装置停止時間を低減できる生産性の高い発熱体CVD装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0055】
以下に、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0056】
図1は、本発明に係わる発熱体CVD装置の第一の実施形態の要部構造を示すものであり、処理容器1やその内部構造、排気系11及び、原料ガス導入系21等の形態、構造については、前記した図8に示す従来の発熱体CVD装置と同様であるため図示を省略している。また、図8に示した部材と同様の部材には同じ符号を付してその説明を省略している。
【0057】
図1では、発熱体3、発熱体3を支持する支持体31、電力供給線32、カバー301と302が示されている。
【0058】
カバー301、302は、それぞれ発熱体3が電力供給線32に接続されている接続部側(接続端子33)及び、発熱体3が支持体31に支持されている支持部側(不図示)において、図5図示のように、その内部に隙間311aを存在させ、すなわち接続部及び支持部との間に隙間311aを存在させ、かつ発熱体3と接触すること無しに、すなわち発熱体3との間に隙間311bを存在させて装着されているものである。
【0059】
更に、カバー301、302の内部の隙間311aにガスを導入するために、図8に示す原料ガス導入系21と同様の構成からなるガス供給系321が模式的に示されている。
【0060】
本実施形態では、発熱体3が電力供給線32に接続されている接続部(接続端子33)及び、発熱体3が支持体31に支持されている支持部は、カバー301、302に覆われているため破線で示している。
【0061】
カバー301は発熱体3が支持体31に支持される部分一箇所と、接続端子33に接続される部分二箇所をまとめて覆い、カバー302は発熱体3が支持体31に支持される部分二箇所をまとめて覆うようになっている。
【0062】
ここで、一つのカバーで覆う支持部や接続部(接続端子)の数は発熱体3の形状により任意であることは言うまでもない。
【0063】
図2は、本発明に係わる発熱体CVD装置の第二の実施形態の要部構造を示すものである。図1及び図8に示した部材と同様の部材には同じ符号を付している。本実施形態では、発熱体3が支持体31に支持される部分及び、発熱体3が電力供給線32に接続されている接続部(接続端子33)の各々を、個別のカバー303、304で覆うようにしたもので、カバー303は発熱体3と支持体31の各支持部を覆い、カバー304は接続端子33の部分を覆うものである。
【0064】
図3は、本発明に係わる発熱体CVD装置の第三の実施形態の要部構造を示すものであり、図9に示した支持体31に線材34で発熱体3を保持した発熱体CVD装置に本発明を適用したものである。図1、図2及び、図9に示した部材と同様の部材には同じ符号を付している。本実施形態では、発熱体3が線材34に接触している部分及び、接続端子33に接続されている部分をカバー305、306で覆うようにしたもので、カバー305は発熱体3が線材34に接触している部分一箇所と接続端子33に接続されている部分二箇所をまとめて覆い、カバー306は発熱体3が線材34に接触している部分二箇所をまとめて覆うようになっている。ここで、図1で示した実施形態の説明と同様に、一つのカバーで覆う接触部や接続端子部の数は発熱体3の形状により任意であることは言うまでもない。
【0065】
図4は、本発明に係わる発熱体CVD装置の第四の実施形態の要部構造を示すものである。図1〜図3及び、図9に示した部材と同様の部材には同じ符号を付している。本実施形態では、発熱体3が線材34に接触している部分及び接続端子33に接続されている部分の各々を個別のカバー307、308で覆うようにしたもので、カバー307は線材34との接触部分を線材34を含めて覆い、カバー308は接続端子33の部分を覆うものである。
【0066】
図8に示す従来の発熱体CVD装置によるシリコン膜形成では、シランガスと水素ガスをそれぞれの原料ガス供給系21(図8では一系統のみの図示になっている)よりガス供給器2を介して処理容器1内に導入していた。
【0067】
これに対し、上記本発明の実施形態では、好適には、シランガスのみを原料ガス供給系21からガス供給器2を介して処理容器1内に導入し、水素ガスはガス供給系321よりカバー301〜308内の隙間311aに導入することができる。
【0068】
本発明の発熱体CVD装置においては、カバー301〜308は発熱体3に接触することなく配置されている。すなわちカバー301〜308と発熱体3の間に隙間311bが設けられているので、前記のようにカバー301〜308内の隙間311aに導入された水素ガスは、カバー301〜308内からこの隙間311bを介して処理容器1内に導入される。
【0069】
図5に図2に示した本発明の第二実施形態のA部断面の概略図を示す。水素ガスは、ガス供給系321よりカバー304内の隙間311aへ矢印322の方向に導入され、発熱体3とカバー304の隙間311bから矢印323のように処理容器1内へ導入される。
【0070】
この水素ガスの流れによりガス供給器2より処理容器1内に導入されたシランガスや、カバーされていない発熱体3の表面で分解及び/又は活性化されたシランガス起源の活性種が、カバー304内の隙間311aへ矢印323と反対の方向から侵入してくるのを防止でき、発熱体3が電力供給機構からの電力供給線32に接続されている接続部(接続端子)33近傍における発熱体3の端部の、やや温度が低い部分にこれらが接触し、シリサイド化して劣化してしまうのを防止できる。
【0071】
また、発熱体3が支持体31に支持されている部分(図2に示した第二実施形態のカバー303で覆われている部分)においても、図5に図示した構造と同様の構造(電力供給機構からの電力供給線32が接続されなくなり、接続端子33が存在しなくなる点のみが図5図示の構造と異なる)を採用することにより、支持体31に支持されている発熱体3の部分にシランガス等が接触して、シリサイド化し、劣化してしまうのを防止できる。
【0072】
このような発熱体3のシリサイド化防止による劣化防止は、同様な原理により、図1、図3、図4に示した第一、第三、第四実施形態におけるカバー301、302、305〜308部においても実現される。
【0073】
ここで、カバー301〜308内に導入するガスは水素ガスに限らず、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノンのいずれか、またはこれらの2種以上からなる混合ガスでもよく、これらのいずれによっても、同様に発熱体3の劣化を防止できる。
【0074】
水素ガスをこれらのガスと同時に導入する場合には、水素ガスはガス供給器2(図8)から導入し、他のガスをカバー301〜308内の隙間を介して導入することとしても、水素ガスを他のガスと混合してカバー301〜308内の隙間を介して導入してもよい。ただ好ましくはカバー301〜308内の隙間から混合して導入した方が効率的でよい。
【0075】
図8に示す従来の発熱体CVD装置によるシリコン窒化膜形成では、シランガスとアンモニアガスをそれぞれの原料ガス供給系21(図8では1系統のみの図示になっている)よりガス供給器2を介して処理容器1内に導入していた。
【0076】
これに対し、前記本発明の実施形態では、好適には、シランガスのみを原料ガス供給系21からガス供給器2を介して処理容器1内に導入し、アンモニアガスはガス供給系321よりカバー301〜308内の隙間311aへ矢印322の方向に導入し、発熱体3とカバー301の隙間311bから矢印323のように処理容器1内へ導入する構成にすることができる。
【0077】
これにより上記シリコン膜形成の場合と同様に、処理容器1内に導入されたシランガスや、カバーされていない発熱体3の表面で分解及び/又は活性化されたシランガス起源の活性種がカバー301〜308内の隙間311aへ矢印323と反対の方向から侵入してくるのを防止でき、発熱体3が接続端子33に接続されている部分近傍や、発熱体3の支持体31に支持されている部分近傍といった、発熱体3のやや温度が低い部分にこれらが接触し、シリサイド化して劣化してしまうのを防止できる。
【0078】
ここで、カバー301〜308内の隙間を介して導入するガスは、アンモニアガスに、水素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素のいずれか、またはこれらの2種以上を混合した混合ガスでもよく、これらのいずれによっても、同様に発熱体3の劣化を防止できる。
【0079】
シリコン窒化膜を効率よく形成するためにはアンモニアガスを導入する必要があるが、アンモニアガスをこれらのガスと同時に導入する場合、アンモニアガスはガス供給器2から導入し、他のガスをカバー301〜308内の隙間を介して導入してもよいし、カバー301〜308内の隙間を介してアンモニアガスを他のガスと混合して導入してもよい。ただ好ましくはカバー301〜308内の隙間を介して他のガスと混合して導入した方が効率的でよい。
【0080】
上記本発明の実施形態によるシリコン膜及びシリコン窒化膜の形成は、本発明の発熱体CVD装置の成膜適用例であり、これら以外の成膜にも適応可能である。また、これらの膜形成においてはシランガスを用いているが、シランガス以外のジシラン(Si26)、トリシラン(Si38)、テトラエトキシシラン(TEOS)等でも本発明の適用が可能である。
【0081】
前記本発明の実施形態において、処理容器1内部に付着した膜の除去を行う際には、クリーニングガスを原料ガス供給系21と同様の構成のクリーニングガス供給系(不図示)からガス供給器2を介して処理容器1内に導入するとともに、水素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、アンモニアのいずれか、またはこれらの2種以上からなる混合ガスをガス供給系321よりカバー301〜308内の隙間311aに導入する。
【0082】
これにより処理容器1内に導入されたクリーニングガスそのものや、カバーされていない発熱体3の表面で分解及び/又は活性化されたクリーニングガス起源の活性種がカバー内の隙間311aへ矢印323と反対の方向から侵入してくるのを防止でき、支持体31に支持されている発熱体3近傍や、接続端子33に接続されている発熱体3近傍がエッチングされて劣化してしまうのを防止できる。
【0083】
ここで本発明の発熱体CVD装置は、フッ素(F2)、塩素(Cl2)、三フッ化窒素(NF3)、四フッ化メタン(CF4)、六フッ化エタン(C26)、八フッ化プロパン(C38)、四塩化炭素(CCl4)、三フッ化塩化メタン(CClF3)、五フッ化塩化エタン(C2ClF5)、三フッ化塩素(ClF3)、六フッ化硫黄(SF6)のいずれのクリーニングガスに対しても適用可能である。
【0084】
以上説明した本発明の発熱体CVD装置では、発熱体3に線状のものを用いたが、発熱体は箔状であっても、また線状発熱体ではコイル状等にして配置してもよい。ただし、コイル状の発熱体を用いる場合、カバーと発熱体との隙間は、カバー内への原料ガスやその活性種、あるいはクリーニングガスやその活性種の侵入を効果的に防止するように狭く設定することが重要であり、その隙間の面積を狭くするため、少なくとも隙間部分の形状が線状である発熱体を用いることが望ましい。
【0085】
図6(a)、(b)は、本発明による第五の実施形態における、接続部の構成部材である接続端子本体331(図5の接続端子33に該当している)への発熱体3の取り付けを説明するものである。
【0086】
この実施形態は、図5に符号Cで表されている、発熱体3が電力供給線32に接続されている接続部での発熱体の取り付け構造に特徴を有し、図6(a)、(b)は、接続部の構成部材である接続端子本体331(図5の接続端子33に該当している)が支持体31(不図示)の上面に直接固定された形態を表わしている。
【0087】
接続端子本体331(図5の接続端子33に該当している)は、発熱体3の端部が挿脱される発熱体挿入口337と、発熱体3の端部が発熱体挿入口337に挿脱する方向(図6(a)において矢示335で示される方向)へ摺動自在に取り付けられている弾性体支持具としてのバネ押え金具334を備えていると共に、金属製又はセラミックス製の弾性体(図6(a)図示の実施形態においては、バネ333)を発熱体挿入口337内に備えている。
【0088】
バネ333は、図6(a)図示のように、一方側(図6(a)中、左側)が、発熱体挿入口337内に挿入される発熱体3の端部に面し、他方側(図6(a)中、右側)が、バネ押え金具334に摺動自在に支持されている。
【0089】
図6(a)図示の状態では、バネ押え金具334がバネ333を押していない。この状態で、図6(a)図示のように、発熱体3の端部を発熱体挿入口337へ挿入し、次いで、図6(b)図示の状態へ、バネ押え金具334を、発熱体3の端部が発熱体挿入口337に挿入される方向(図6(a)中、下側)へスライドさせると、バネ333が押され、このバネ333の弾性力によって発熱体3の端部が接続端子本体331に押し付けられ、発熱体3の接続端子本体331への取り付けが行われる。かかる取り付けは、バネ押え金具334の図6(a)中、下側へスライドする動作によって瞬時に、しかも簡単に行うことができる。
【0090】
また、発熱体3が接続端子本体331へ取り付けられている図6(b)図示の状態では、発熱体3の端部は、バネ押え金具334に支持されたバネ333の弾性力によるほぼ一定した力で、接続端子本体331に押し付けられている。
【0091】
発熱体3を交換する場合には、バネ押え金具334を図6(b)中、上側へスライドさせて、図6(a)図示の状態に戻せば、バネ333が発熱体3の端部を接続端子本体331に押し付ける力が瞬時に解除されるので、発熱体3の端部を簡単に抜き取ることができる。
【0092】
なお、前述した図6(a)、(b)の実施形態においては、安定した成膜に貢献する一つの方策として、タングステン、モリブデンなどの高融点金属の板をバネ333と発熱体3の端部との間に介在させ(不図示)、発熱体3の熱をバネ333に伝導しずらくすることで、バネ333の温度上昇を低減させ、バネ333の温度上昇によるバネ力の変化を防止することも考えられる。
【0093】
発熱体3の端部を接続端子本体331に押し付ける弾性力を発揮する弾性体としては、バネが考えられ、このバネは、ベリリューム銅、ステンレススチール、ニッケル超合金などの金属製のものや、セラミック製などのものを採用することができる。ただし、1600〜2000℃の高温に達する発熱体と接触し、600℃近くまで加熱される場合には、ニッケル超合金やセラミックス製のバネを採用することが望ましい。
【0094】
図8、図9で説明した従来の基本的形態からなる発熱体CVD装置において、発熱体3が電力供給機構に接続されている接続部を、図6(a)、(b)の実施形態で説明した構造とすることによって、本発明が提案する発熱体CVD装置とすることができる。このような構成にすれば、発熱体が一度通電加熱されて変質し、脆くなっていたとしても、発熱体3の端部は、高温下においてバネ333の安定したほぼ一定の弾性力により固定されており、しかも、発熱体3の端部の接続部33での取り付け、取り外しを容易に行うことができる。
【0095】
また、図8、図9で説明した従来の基本的形態からなる発熱体CVD装置において、図1乃至図5で説明した実施形態からなる発熱体3が電力供給線32に接続されている接続部及び、発熱体3が支持体31に支持されている支持部の構造を採用し、更に、発熱体3が電力供給機構に接続されている接続部を、図6(a)、(b)の実施形態で説明した構造とすることによって、本発明が提案する発熱体CVD装置とすることもできる。このような構成にすれば、発熱体CVD装置の重要な機構部の一つである、主に発熱体の電力供給機構との接続部において、発熱体3のやや温度が低くなる部分が、成膜時に、原料ガスやこれを起源とする活性種によって劣化(シリサイド化)したり、クリーニング時にクリーニングガスやこれを起源とする活性種と反応(エッチング)することを防止できるだけでなく、発熱体の固定方法が改善されていて、その箇所における発熱体の劣化の問題を防止できる発熱体CVD装置を提供することができる。
【0096】
図7(a)、(b)は、接続部(接続端子33)の構成部材である接続端子本体331(図5の接続端子33に該当する)への発熱体3の取り付け構造の他の実施形態を説明するものである。
【0097】
接続端子本体331(図5の接続端子33に該当している)は、発熱体3の端部が挿脱される発熱体挿入口337と、発熱体挿入口337内に配置されている金属製コイルバネ340を備えている。
【0098】
一方、発熱体3はその端部にボス338の形態をした金属製ブロックを備えており、発熱体挿入口337に挿入されたボス338が、発熱体挿入口337内の金属製コイルバネ340の弾性力によって接続端子本体331に保持されて、発熱体3の接続端子本体331への取り付けが行われ、しかも金属製コイルバネ340を通して発熱体3に電力供給が行われるものである。
【0099】
発熱体3の端部に備えられているボス338が発熱体挿入口337内へ挿入されると、金属製コイルバネ340の弾性力によって瞬時に、しかも簡単に、ボス338を接続端子本体331へ保持させると共に、金属製コイルバネ340を通して発熱体3への電力供給のための電気的接触を取ることができる。
【0100】
また、発熱体3が接続端子本体331へ取り付けられている図7(a)図示の状態では、発熱体3は、金属製コイルバネ340の弾性力によるほぼ一定した力で、接続端子本体331に保持されている。
【0101】
発熱体3を交換する場合には、ボス338を発熱体挿入口337から、金属製コイルバネ340の弾性力に抗して抜き取るだけで、発熱体3のボス338を簡単に抜き取ることができる。
【0102】
図8、図9で説明した従来の基本的形態からなる発熱体CVD装置において、発熱体3が電力供給機構に接続されている接続部を、図7(a)、(b)の実施形態で説明した構造とすることによって、本発明が提案する発熱体CVD装置とすることができる。このような構成にすれば、発熱体が一度通電加熱されて変質し、脆くなっていたとしても、発熱体3の端部は、高温下において金属製コイルバネ340の安定したほぼ一定の弾性力により固定されており、しかも、発熱体3の端部の接続部33での取り付け、取り外しを容易に行うことができる。
【0103】
以上、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載から把握される技術的範囲に於いて種々の形態に変更可能である。
【0104】
例えば、カバー301〜308の形態及び、その支持体31への固定方法、カバー301〜308への電力及び水素ガスの導入位置等は、添付した図面に例示したものに限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明に係わる発熱体CVD装置の第1実施形態の要部構成例を示す概念図である。
【図2】本発明に係わる発熱体CVD装置の第2実施形態の要部構成例を示す概念図である。
【図3】本発明に係わる発熱体CVD装置の第3実施形態の要部構成例を示す概念図である。
【図4】本発明に係わる発熱体CVD装置の第4実施形態の要部構成例を示す概念図である。
【図5】本発明に係わる発熱体CVD装置の第2実施形態のA部断面を示す概念図である。
【図6】本発明に係わる発熱体CVD装置の第5実施形態の要部構成例を示す概念図であり、(a)はバネによる発熱体の押し付けが行われていない状態を説明する図、(b)はバネによる発熱体の押し付けが行われている状態を説明する図、
【図7】(a)本発明に係わる発熱体CVD装置の第6実施形態の要部構成例を示す概念図、(b)は、図7(a)の実施形態に採用されているコイルバネの概略図。
【図8】従来の発熱体CVD装置の構成例を示す概念図である。
【図9】従来の発熱体CVD装置の別の構成例の要部構成を示す概念図である。
【図10】従来の発熱体CVD装置における発熱体の取り付け部を説明する図。
【符号の説明】
【0106】
1 処理容器
2 ガス供給器
3 発熱体
4 基板ホルダー
11 排気系
21 原料ガス供給系
30 電力供給機構
31 支持体
33 接続端子
301〜308 カバー
311a、311b 隙間
321 ガス供給系
331 接続端子本体
333 バネ
334 バネ押え金具
337 発熱体挿入口
338 ボス
340 コイルバネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ガスが供給される処理容器内で、電力供給機構に接続されていると共に、支持体に支持されており、前記電力供給機構から供給される電力で発熱して前記原料ガスを分解及び/又は活性化する発熱体を備えた発熱体CVD装置において、
前記発熱体と電力供給機構との接続部と、前記支持体による発熱体の支持部とのいずれか一方又は両者を覆い、内部と発熱体の延出部の周囲とに隙間が設けられたカバーと、該カバー内部の隙間にガスを導入するガス導入系とを備えていることを特徴とする発熱体CVD装置。
【請求項2】
前記発熱体の電力供給機構との接続部が、接続端子本体と、該接続端子本体に摺動自在に取り付けられた弾性体支持具と、該弾性体支持具と前記接続端子本体との間に設けられた弾性体とを備えており、該弾性体と前記接続端子本体との間に挿入された前記発熱体の端部が、前記弾性体支持具によって押圧された弾性体の弾性力により前記接続端子本体へ押し付けられており、しかも前記弾性体支持具は、摺動させることで、前記弾性体の押圧を解除して、前記弾性体の弾性力による前記発熱体の端部の接続端子本体への押し付けを解除可能となっていることを特徴とする請求項1に記載の発熱体CVD装置。
【請求項3】
前記弾性体が、ベリリューム銅、ステンレススチール、ニッケル超合金又はセラミック製のバネであることを特徴とする請求項2記載の発熱体CVD装置。
【請求項4】
前記発熱体の電力供給機構との接続部が、前記発熱体の端部に、前記発熱体に設けられたボス状の金属製ブロックと、内部に環状の金属製コイルバネを有する接続端子本体を備え、前記金属製ブロックが、前記環状の金属製コイルバネ内に挿入され、前記環状の金属製コイルバネが弾性力によって抜き取り可能に保持されており、当該金属製コイルバネを通して前記電力供給機構からの電力供給が行われることを特徴とする請求項1に記載の発熱体CVD装置。
【請求項5】
前記発熱体は、タングステンの発熱体であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の発熱体CVD装置。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の発熱体CVD装置を用いた成膜方法において、
成膜時に、前記カバー内部の隙間に前記ガス導入系からガスを導入し、該ガスを前記発熱体の延出部の周囲の隙間から処理容器内に流動させ、処理容器内に供給された原料ガスの前記カバー内部の隙間への侵入を抑制することを特徴とする成膜方法。
【請求項7】
前記原料ガスとして、シラン、ジシラン、トリシラン又はテトラエキトシシランを用い、前記カバー内部の隙間に導入するガスとして、水素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、アンモニア、窒素又はこれらの2種以上を混合した混合ガスを用いることを特徴とする請求項6に記載の成膜方法。
【請求項8】
シリコン膜又はシリコン窒化膜を形成することを特徴とする請求項6又は7に記載の成膜方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−113014(P2008−113014A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−303090(P2007−303090)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【分割の表示】特願2000−280221(P2000−280221)の分割
【原出願日】平成12年9月14日(2000.9.14)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】