説明

発電装置

【課題】発電の際に蒸気から発生するドレンを抑制することができる発電装置を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明に係る発電装置20は、供給された蒸気によって発電し、発電に利用された蒸気を排出する発電装置20であって、膨張室40に導入された蒸気の圧力による当該膨張室40の容積変化に応じて動力を発生する容積型膨張機22と、容積型膨張機22からの動力が伝達されるように動力伝達手段64を介して当該容積型膨張機22に連結される発電機24と、供給された蒸気が容積型膨張機22を通過することで当該蒸気から発生するドレンを抑制するためのドレン抑制手段58とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供給された蒸気から動力(駆動力)を得る駆動源によって、発電機を駆動する発電装置に関し、特に駆動源として容積型膨張機を用いて発電機を駆動する発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工場等の蒸気プロセスにおいて、蒸気の余剰な圧力差を利用して発電を行う発電装置としては、特許文献1に記載された以下の発電装置が知られている。
【0003】
この発電装置は、上流側の蒸気源(ボイラ等)から供給された蒸気から動力を得る駆動源としてのスクリュ膨張機と、このスクリュ膨張機から前記動力が伝達されるように当該スクリュ膨張機に連結される発電機とを備える。前記スクリュ膨張機は、容積型膨張機であり、膨張室に導入(供給)された前記蒸気の圧力による当該膨張室の容積変化に応じて回転力(動力)を得るものである。
【0004】
この容積型膨張機では、当該容積型膨張機の上流側(入口)と下流側(出口)との前記蒸気の圧力差を効率よく回転力に変換することが可能であり、従来の蒸気タービン式の駆動源に比べて低圧の蒸気から効率よく発電機を駆動するための回転力(動力)を得ることができる。そのため、前記容積型膨張機を用いた発電装置を前記蒸気プロセス中に配置することで、中小規模の製造工場における小型ボイラー等を蒸気源とした低圧の蒸気、例えば、10気圧未満の蒸気を用いた蒸気プロセスであっても高効率な発電を行うことが可能となる。
【特許文献1】特開2007−74894号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記のように蒸気から動力を得る容積型膨張機においては、蒸気の有するエネルギーを発電機を駆動する回転力(動力)等に変換して用いるため、当該容積型膨張機を通過することで蒸気の有するエネルギーが減少する。そのため、通常、前記容積型膨張機を通過した蒸気からは当該蒸気の一部が凝縮してドレンが発生する。特に、蒸気の有するエネルギーを効率よく前記動力に変換して発電機を駆動することのできる前記容積型膨張機においては、通過した前記蒸気のエネルギーの減少が大きく、そのためドレンの発生が多くなる。
【0006】
このように発生した前記ドレンがドレンセパレータ等によって取り除かれると、前記容積型膨張機の下流側のプロセス(製造プロセス等)に供給される蒸気量が減少する。そのため、前記蒸気プロセスにおいて、余剰蒸気のない状態で前記発電装置が用いられた場合には前記減少分の蒸気を追加する必要が生じる。このように前記蒸気プロセスに新たに蒸気を追加する場合、この蒸気を発生させるために燃料等が別途必要となり、前記蒸気プロセスの経済性が低下する。
【0007】
そこで、本発明は、発電の際に蒸気から発生するドレンを抑制することができる発電装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、上記課題を解消すべく、本発明に係る発電装置は、供給された蒸気によって発電し、発電に利用された前記蒸気を排出する発電装置であって、膨張室に導入された前記蒸気の圧力による当該膨張室の容積変化に応じて動力を発生する容積型膨張機と、前記容積型膨張機からの前記動力が伝達されるように動力伝達手段を介して当該容積型膨張機に連結される発電機と、前記供給された蒸気が前記容積型膨張機を通過することで当該蒸気から発生するドレンを抑制するためのドレン抑制手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
かかる構成によれば、当該発電装置に供給された蒸気によって前記容積型膨張機が動力を発生させ、この動力が当該容積型膨張機に連結された前記発電機に伝達されることで当該発電装置が発電する。
【0010】
このとき、前記蒸気においては、前記容積型膨張機を通過する、換言すると前記膨張室の容積変化によって膨張過程を経ることで当該蒸気の有するエネルギーが減少するが、前記ドレン抑制手段によって当該蒸気からのドレンの発生が抑制される。即ち、前記蒸気からのドレンの発生を抑制しつつ発電することが可能となる。
【0011】
本発明に係る発電装置においては、前記容積型膨張機は、スクリュ膨張機である構成が好ましい。
【0012】
かかる構成とすることで、湿り蒸気や腐蝕性ガス等からのエネルギー回収も可能となり、当該発電装置における作動流体の制約が少なくなる。また、前記スクリュ膨張機は、回転容積型の流体機械であるため、容積型でありながら取り扱い流量が多く、出力が他の容積型膨張機に比べ大きくなる。そのため、小型でありながら効率よく発電することが可能となる。
【0013】
また、前記ドレン抑制手段は、前記容積型膨張機の下流側の流路に設けられ、通過する前記蒸気が絞り膨張される絞り膨張手段であってもよい。この場合、前記絞り膨張手段は、減圧弁である構成が好ましい。
【0014】
かかる構成によれば、前記容積型膨張機の下流側において、前記容積型膨張機の下流側圧力(出口圧力)から前記流路の下流側のプロセスが必要とする圧力(以下、単に「プロセス側圧力」とも称する。)に前記絞り膨張手段により減圧する際に前記蒸気中に発生していたドレンを再蒸発させ、ドレンの発生を抑制することが可能となる。
【0015】
即ち、前記絞り膨張手段を設けることで、前記蒸気がこの絞り膨張手段を通過する際に絞り膨張作用により比エンタルピーが一定の状態で前記蒸気が減圧されて前記容積型膨張機の出口圧力からプロセス側圧力まで減圧される。この減圧の際に前記蒸気の乾き度が向上して湿り蒸気状態から乾き蒸気状態に向けて前記蒸気の状態量が変化する。即ち、前記容積型膨張機を通過した蒸気中にドレンが発生していた場合、このドレンが再蒸発する。そのため前記絞り膨張手段を設けることで前記容積型膨張機を通過した蒸気からのドレンの発生を抑制しつつ前記蒸気の圧力をプロセス側圧力に調整することが可能となる。
【0016】
特に、前記絞り膨張手段を開度調整可能な前記減圧弁で構成することで、前記容積型膨張機に供給される蒸気の流量変動やプロセス側圧力の変動があった場合でも、前記減圧弁を調整することにより前記容積型膨張機の出口圧力を調整し、前記蒸気を当該絞り膨張手段を通過させることで過熱蒸気又は飽和蒸気に状態変化させると共にプロセス側圧力まで減圧することが可能となる。
【0017】
また、上流側からの蒸気の流量変動やプロセス側圧力の変動がほとんどない前記蒸気プロセスにおいては、前記絞り膨張手段は、絞り弁又は前記流路に形成された絞り部であってもよい。このように前記絞り膨張手段が開度調整できない前記絞り弁又は前記絞り部で構成されても、前記絞り弁又前記絞り部によって前記容積型膨張機の出口圧力とプロセス側圧力とが、前記同様、前記蒸気が当該絞り弁又は当該絞り部を通過することで過熱蒸気又は飽和蒸気と状態変化するような圧力比となるように流路の開度を設定しておくことで、ドレンの発生を抑制すると共にプロセス側圧力への調整が可能となる。
【0018】
また、前記ドレン抑制手段は、ノズル部に供給される蒸気を用いて負圧を発生させてこの負圧によって吸引部から他の蒸気を吸引するエジェクタと、前記容積型膨張機の上流側の流路から分岐した分岐流路と、前記容積型膨張機の下流側に接続された排出流路と、で構成され、前記エジェクタは、前記ノズル部に前記分岐流路が接続されると共に前記吸引部には前記排出流路が接続される構成であってもよい。この場合、前記分岐流路には流量調整弁が設けられる構成が好ましい。
【0019】
前記容積型膨張機を通過する際の膨張過程で前記蒸気が凝縮されてドレンが一端発生するが、このドレンは、前記排出流路を経て前記エジェクタの吸引部から吸引され、前記容積型膨張機の上流側の前記流路から分流して当該エジェクタのノズル部において過熱蒸気状態となった蒸気と混合されて再度蒸発し、蒸気となる。その結果、当該発電装置全体としては、前記蒸気からのドレンの発生が抑制される。
【0020】
さらに、前記容積型膨張機の排出流路内の前記蒸気は、前記エジェクタによって昇圧されてプロセス側に排出される。即ち、前記容積型膨張機の出口圧力をプロセス側圧力よりも低くすることができる。そのため、前記容積型膨張機の入口圧力と出口圧力との圧力差を蒸気源から供給される蒸気の圧力とプロセス側圧力との圧力差よりも大きくすることが可能となる。そのため、当該発電装置に供給される前記蒸気が有するエネルギーを最大限仕事(動力)として回収することが可能となり、発電効率がより向上する。
【0021】
また、前記分岐流路に前記流量調整弁が設けられることで、前記ノズル部に供給される前記蒸気の流量が調整可能となり、前記排出流路内の前記蒸気の圧力(前記容積型膨張機の出口圧力)と前記エジェクタの下流側の蒸気の圧力(プロセス側圧力)との圧力差の調整が容易となる。
【0022】
また、前記ドレン抑制手段は、前記容積型膨張機の下流側の流路に設けられた圧縮機で構成され、この圧縮機は、前記動力伝達手段に連結されて駆動される構成であってもよい。
【0023】
かかる構成によれば、前記容積型膨張機を通過する際の膨張過程で前記蒸気が凝縮されてドレンが一端発生するが、このドレンは、前記容積型膨張機から排出された蒸気と共に前記圧縮機内に導入され、当該圧縮機内で圧縮されることで再蒸発して蒸気となる。その結果、当該発電装置全体としては、前記蒸気からのドレンの発生が抑制される。
【0024】
また、前記圧縮機により前記容積型膨張機から排出された蒸気の圧力を上昇させることができるため、プロセス側圧力よりも前記容積型膨張機の出口圧力を低くすることができる。即ち、前記同様、前記容積型膨張機の入口圧力と出口圧力との圧力差を蒸気源から供給される蒸気の圧力とプロセス側圧力との圧力差よりも大きくすることが可能となる。そのため、当該発電装置に供給される前記蒸気が有するエネルギーを最大限仕事(動力)として回収することが可能となり、発電効率がより向上する。
【0025】
この場合、前記動力伝達手段は、前記容積型膨張機と前記発電機とを連結する回転駆動軸で構成され、前記圧縮機は、前記回転駆動軸に連結されている構成であってもよい。
【0026】
かかる構成によれば、前記回転駆動軸を介して前記容積型膨張機と発電機とが連結されているため、複数の部材を介して前記動力が伝達される場合に比べ、前記動力の機械損失を小さくすることができる。そのため、発電効率がより向上する。
【0027】
また、前記回転駆動軸のような簡単な構成とすることで、当該動力伝達手段において故障が発生し難く且つメンテナンスも容易になる。
【0028】
また、前記動力伝達手段は、複数の歯車によって構成され、前記圧縮機は、外部から動力を得るための歯車を有し、この歯車が前記複数の歯車のいずれかに噛み合うように配置される構成であってもよい。
【0029】
かかる構成によれば、各歯車のギア比を設定することで所望の前記圧縮機の出口圧力(プロセス側圧力)及び所望の前記容積型膨張機の出口圧力を容易に得ることが可能となる。そのため、前記容積型膨張機の入口圧力と出口圧力との圧力差を所望の圧力差に設定すると共にプロセス側圧力も所望の圧力とすることができる。
【0030】
また、前記圧縮機は、スクリュ圧縮機で構成されることで当該圧縮機内に多少の液体が導入されたとしても故障し難くなる。そのため、前記容積型膨張機とスクリュ圧縮機との間の流路には、前記容積型膨張機を通過する際に凝縮した前記蒸気を飛散させるためのドレン飛散器が設けられてもよく、また、前記容積型膨張機とスクリュ圧縮機との間の流路には、前記蒸気を構成する液体を当該流路内に注入するための液体注入装置が設けられてもよい。
【0031】
このようなドレン飛散器が設けられることで、前記容積型膨張機での膨張過程で一旦蒸気が凝縮して発生したドレンが前記流路内で液膜となっても、この液膜が当該流路内の蒸気中に飛散されることで前記圧縮機内での前記ドレンの再蒸発が容易になる。その結果、ドレンの発生がより抑制される。
【0032】
また、前記液体注入装置によって液体が注入されることで、プロセス側に供給される蒸気量を増加させることが可能となる。
【発明の効果】
【0033】
以上より、本発明によれば、発電の際に蒸気から発生するドレンを抑制することができる発電装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、本発明の第1実施形態について、図1及び図2を参照しつつ説明する。
【0035】
本実施形態に係る発電装置20は、ボイラー等の蒸気源(蒸気発生手段)10で生成されて蒸気利用設備(以下、単に「プロセス」とも称する。)12で利用させる蒸気のエネルギーを利用して発電を行う装置である。
【0036】
蒸気源10とプロセス12とは、蒸気が流通する主配管14によって接続されている。この主配管14には、コントロール弁16が設けられている。
【0037】
プロセス12は、例えば給湯器、暖房機、乾燥機、洗浄装備、殺菌器等の蒸気を利用する設備である。また、コントロール弁16は、発電装置20で発電を行わない場合には減圧弁として働き、発電装置20で発電を行う場合には主配管14を閉塞する弁である。
【0038】
発電装置20は、蒸気源10から供給される蒸気の圧力を下流側のプロセス12が必要とする圧力(以下、単に「プロセス側圧力」とも称する。)に減圧する際に、この蒸気減圧時の圧力差を利用して発電を行う装置である。具体的には、容積型膨張機22、発電機24、周波数変換器26、コントローラ28等を備えており、これらはケーシング30内に収納されている。
【0039】
容積型膨張機22は、内部に形成された膨張室に導入された蒸気(流体)の圧力による当該膨張室の容積変化に応じて動力を発生する膨張機である。本実施形態においては、スクリュ膨張機(いわゆるスクリューエキスパンダ)22が用いられ、このスクリュ膨張機22は、回転容積型の流体機械である。
【0040】
詳細には、図3(a)乃至図4(b)にも示されるように、スクリュ膨張機22は、内部にローター室32が形成された膨張機ケーシング34とローター室32内に回転可能に配置される雄雌一対のスクリュローター36,38とを備える。これら雌及び雄のスクリュローター36,38は、互いに逆方向の螺旋状の羽根36a,38aを備えている。また、互いに回転軸36b、38bが平行となるように膨張機ケーシング34のローター室32内に配置されている。膨張室40は、各ローター36,38の羽根36a,38aと膨張機ケーシング34とで囲まれることで形成されている(図4(a)及び図4(b)の斜線部参照)。後述するようにこの膨張室40内に蒸気が導入されて膨張することで当該膨張室40の容積が増大して各スクリュローター36,38が回転する。膨張機ケーシング34には、スクリュローター36(又は38)の軸方向の一方側端部に蒸気が供給される入口(給気ポート)42が形成され、他方側端部に膨張過程を経た蒸気が排出される出口(排気ポート)44が形成されている。
【0041】
スクリュ膨張機22の入口42には供給管46が接続され、出口44には排出管48が接続されている。供給管46は、主配管14におけるコントロール弁16の上流側に接続され、また排出管48は、主配管14におけるコントロール弁16の下流側に接続されている。これにより、蒸気源10で生成された蒸気がスクリュ膨張機22に供給され、このスクリュ膨張機22から排出された蒸気が主配管14に戻されるようになっている。
【0042】
供給管46には、上流側から順に供給蒸気仕切弁(開閉弁)50、ドレンセパレータ52及び緊急遮断弁54が設けられている。供給蒸気仕切弁50は、供給管46におけるケーシング30の外側近傍に設けられている。ドレンセパレータ52は、供給管46を流れる蒸気からドレンを分離するためのものである。緊急遮断弁54は、供給管46を完全に閉塞するものであり、コントローラ28によって開閉制御可能となっている。
【0043】
排出管48におけるケーシング30の外側近傍には、排出蒸気仕切弁(開閉弁)56が設けられている。この排出蒸気仕切弁56と供給管46の供給蒸気仕切弁50とは、主配管14を流れる蒸気を供給管46へ導入(供給)するか否かを切り換える切換手段を構成している。即ち、蒸気源10で生成された蒸気をそのままプロセス12へ供給するときには、これら両方の蒸気仕切弁50,56を閉じてコントロール弁16を開き、蒸気を利用した発電を行うときにはこれら両方の蒸気仕切弁50,56を開いてコントロール弁16を閉じる。尚、これら両方の蒸気仕切弁50,56は、それぞれ全開及び全閉の二状態に切り換え可能な仕切弁、開度調整可能な仕切弁のいずれによって構成されてもよい。また、切換手段として、蒸気仕切弁に代えて、三方切換弁を配設してもよい。この場合、三方切換弁は、主配管14と供給管46との接続部及び主配管14と排出管48との接続部に配設される。この場合、コントロール弁16は、単に通過する蒸気の圧力を減圧する減圧弁に変更されてもよい。
【0044】
また、排出管48におけるスクリュ膨張機22の出口44から排出蒸気仕切弁56までの間にドレン抑制減圧弁58が設けられている。このドレン抑制減圧弁58は、排出管48を流れる蒸気が当該ドレン抑制減圧弁58を通過する際に絞り膨張される減圧弁であり、本実施形態においては後述するようにスクリュ膨張機22を通過した蒸気から発生するドレンを抑制するドレン抑制手段を構成している。
【0045】
さらに、排出管48において、スクリュ膨張機22の出口44からドレン抑制減圧弁58までの間に第1圧力計60が設けられ、ドレン抑制減圧弁58から排出蒸気仕切弁56までの間に第2圧力計62が設けられている。第1圧力計60は、スクリュ膨張機22の出口44からドレン抑制減圧弁58までの排出管48内を流れる蒸気の圧力を計測する圧力計であり、第2圧力計62は、ドレン抑制減圧弁58から排出蒸気仕切弁56までの排出管48内を流れる蒸気の圧力を計測する圧力計である。
【0046】
これら第1及び第2圧力計60,62で計測された排出管48内の各圧力データはコントローラ28に送られ、後述するようにこの圧力データに基づいてコントローラ28が発電機24の回転数制御及び/又はドレン抑制減圧弁58の制御(開度調整)を行う。
【0047】
発電機24は、動力伝達手段64を介してスクリュ膨張機22に連結されている。具体的には、発電機24の回転軸が回転駆動軸64を介してスクリュ膨張機22の回転軸36b(又は38b)と連結されている。従って、スクリュ膨張機22が供給された蒸気のエネルギーを回転動力に変換すると、この回転動力が回転駆動軸64を介して発電機24の回転軸に伝達され、発電機24において発電が行われる。
【0048】
発電機24で発電された電気は、周波数変換器26に送られる。この周波数変換器26は、発電機24で発電された電気の周波数を変換するものであり、例えば30〜120Hzの電気をAC50又は60Hzの商用周波数の電気に変換する。
【0049】
コントローラ28は、第1圧力計60で計測した圧力データに基づく発電機24の回転数制御、第2圧力計62で計測した圧力データに基づくドレン抑制減圧弁58の制御、緊急遮断弁54の開閉等の発電装置20を構成する各要素の動作制御等を行うものである。
【0050】
第1実施形態に係る発電装置20は、以上の構成からなり、次に、この発電装置20の動作について説明する。
【0051】
ボイラー等の蒸気源10の駆動によって生成された蒸気は、主配管14を流れてコントロール弁16で減圧された後、下流側のプロセス12へ供給される。そして、発電を行う場合には、供給管46の供給蒸気仕切弁50及び排出管48の排出蒸気仕切弁56を開くと共にコントロール弁16を閉じ、これにより、蒸気源10で生成されて主配管14を流れてきた蒸気が供給管46へ供給される。
【0052】
主配管14から供給管46へ供給された蒸気は、スクリュ膨張機22の入口(給気ポート)42から内部に導入される。導入された蒸気は、雄雌一対のスクリュローター36,38及び膨張機ケーシング34で構成される膨張室40の壁を均等に押し退けようとする(図4(a)参照)。膨張機ケーシング34は固定されており、回転体である雄雌一対のスクリュローター36,38の羽根36a,38aの裏側(出口44側)が表側(入口42側)に比べて低圧となっているためこの羽根36a,38aの表側と裏側との差圧によって両方のスクリュローター36,38がそれぞれ回転する(図4(a)の矢印参照)。両方のスクリュローター36,38がそれぞれ回転するのに伴って膨張室40の閉じ込み容積が増大し(図4(a)及び図4(b)の斜線部参照)、同時に蒸気も膨張して容積最大となったところでスクリュ膨張機22の出口(排気ポート)44に達し、膨張室40内での閉じ込みが開放されて排出される。この動作が連続することで回転動力が発生し、回転駆動軸64を介して発電機24に伝達され、発電機24の回転軸を回転させる。
【0053】
発電機24は、その回転軸がスクリュ膨張機22から伝達された回転動力によって回転することで発電する。この発電機24で生成された電気は、周波数変換器26に送られる。そしてこの周波数変換器26で前記のように商用周波数の電流に変換され、変圧器66を経て系統68に送られる。
【0054】
一方、スクリュ膨張機22から排出された蒸気は、排出管48を流れてドレン抑制減圧弁58を通過する。このとき、蒸気は絞り膨張されてプロセス側圧力まで減圧された後、排出管48を流れて主配管14に戻され、下流側のプロセス12へ供給される。
【0055】
前記ドレン抑制減圧弁58での減圧では、排出管48内の圧力をプロセス側圧力とするために、第2圧力計62での計測に基づいてドレン抑制減圧弁58の制御が行われる。具体的には、第2圧力計62で計測した圧力データがコントローラ28に送られ、この圧力データに基づくコントローラ28からの指令でドレン抑制減圧弁58の開度調整が行われ、ドレン抑制減圧弁58を通過後の蒸気の圧力が減圧されてプロセス側圧力となる。
【0056】
このとき、ドレン抑制減圧弁58の上流側の圧力、即ち、スクリュ膨張機22の出口44での圧力(出口圧力)は、ドレン抑制減圧弁58が設けられることでプロセス側圧力よりも高くなっている。そして、スクリュ膨張機22に供給される蒸気量(蒸気の流量)が変動した場合にはスクリュ膨張機22の回転数を制御して排出される蒸気量を制御することで当該スクリュ膨張機22の出口圧力が一定に保たれる。
【0057】
このスクリュ膨張機22の回転数制御は、第1圧力計60での計測に基づいて発電機24の回転数を制御することによって行われる。即ち、発電機24の回転軸とスクリュ膨張機22の回転軸36b(又は38b)とは回転駆動軸64で連結されているため、発電機24の回転数を制御することでスクリュ膨張機22の回転数が制御される。
【0058】
具体的には、前記蒸気量の変動等によるスクリュ膨張機22の出口圧力の変動を第1圧力計60で計測し、その圧力データがコントローラ28に送られる。コントローラ28は、この圧力データに基づいてスクリュ膨張機22の出口圧力が所望の圧力となる回転数を算出する。さらに、スクリュ膨張機22の回転数が前記算出した回転数となる発電機24の回転数を算出し、この回転数となるように発電機24に指令を送る。このように制御することで、スクリュ膨張機22に供給される蒸気量の変動があっても、スクリュ膨張機22の出口圧力が所望の圧力(一定圧力)となるように、スクリュ膨張機22の回転数制御が行われる。
【0059】
前記のスクリュ膨張機22における所望の出口圧力は、以下のようにして導出される。ここで、スクリュ膨張機22の入口圧力をP1、スクリュ膨張機22における膨張室40の開放直前の当該膨張室40内の圧力をP2、プロセス側圧力をP3、スクリュ膨張機22の出口圧力(前記所望の出口圧力)をP4とする。また、プロセス12で必要とされている蒸気が飽和蒸気の場合について説明する。
【0060】
スクリュ膨張機22に供給された蒸気は、当該スクリュ膨張機22を通過することで膨張過程を経てP1からP2に減圧される。このときの蒸気の状態量の変化は、図5(a)に示す矢印QS1のように変化する。この膨張過程を経た蒸気は、スクリュ膨張機22の膨張室40が開放されることでP2からP4に昇圧される。このときの前記状態量の変化は、図5(a)に示す矢印QS2のように変化する。そして、圧力がP4となった蒸気は、ドレン抑制減圧弁58を通過して絞り膨張されることでP4からP3に減圧される。このとき、蒸気は、絞り膨張作用により図5(a)に示す矢印QS3のように比エンタルピーが一定の状態で圧力が低下する。このように蒸気の圧力がP3に減圧されたときに状態量の変化の矢印QS3と圧力P3との交点が飽和蒸気線上に位置するようにP4の圧力が設定される。
【0061】
尚、プロセス12で必要とされる蒸気が乾き蒸気の場合は、図5(a)に示す矢印QS3がP3に到達する前に飽和蒸気線と交差する、即ち、図5(b)に示されるように、矢印QS3と圧力P3との交点が飽和蒸気線よりも上側(乾き蒸気側)の領域に位置するようにP4の値が設定されればよい。
【0062】
以上説明したように、本実施形態によれば、ドレン抑制減圧弁58(絞り膨張手段)を設けることで、蒸気がこのドレン抑制減圧弁58を通過する際に絞り膨張作用により比エンタルピーが一定の状態で当該蒸気が減圧されてスクリュ膨張機22の出口圧力P4からプロセス側圧力P3まで減圧される。この減圧の際に蒸気の乾き度が向上して湿り蒸気状態から乾き蒸気状態に向けて蒸気の状態量が変化する。即ち、スクリュ膨張機22を通過した蒸気中にドレンが発生していた場合、このドレンが再蒸発する。そのためドレン抑制減圧弁58を設けることでスクリュ膨張機22を通過した蒸気からのドレンの発生を抑制しつつ前記蒸気の圧力P4をプロセス側圧力P3に調整(減圧)することが可能となる。
【0063】
また、絞り膨張手段を開度調整可能なドレン抑制減圧弁58で構成することで、スクリュ膨張機22に供給される蒸気量の変動やプロセス側圧力P3の変動があった場合でも、ドレン抑制減圧弁58を制御することによりスクリュ膨張機22の出口圧力を調整し、蒸気を当該ドレン抑制減圧弁58を通過させることで過熱蒸気又は飽和蒸気に状態変化させると共にプロセス側圧力P3まで減圧することが可能となる。
【0064】
尚、本実施形態においては、ドレン抑制手段としてドレン抑制減圧弁58が用いられているが、蒸気源10からの蒸気量の変動やプロセス側圧力P3の変動がほとんどない場合においては、前記絞り膨張手段は、絞り弁又は排出管48に形成された絞り部で構成されてもよい。
【0065】
このように前記絞り膨張手段が開度調整できない前記絞り弁又は前記絞り部で構成されても、前記絞り弁又前記絞り部によってスクリュ膨張機22の出口圧力P4とプロセス側圧力P3とが、前記同様、蒸気が当該絞り弁又は当該絞り部を通過することで過熱蒸気又は飽和蒸気と状態変化するような圧力比となるように排出管48の開度(絞り度)を設定しておくことで、ドレンの発生を抑制すると共にプロセス側圧力P3への調整が可能となる。
【0066】
次に、本発明の第2実施形態について図6も参照しつつ説明するが、上記第1実施形態と同様の構成には同一符号を用いると共に詳細な説明を省略し、異なる構成ついてのみ詳細に説明する。図6は、発電装置20における図2の点線で囲まれた部分に相当する部分を示す概略構成図である。
【0067】
本実施形態に係る発電装置20においては、ドレン抑制手段は、エジェクタ70と分岐管72と吸引用排出管74とで構成されている。エジェクタ70は、図7にも示されるように、供給される流体(蒸気)を絞り膨張させて負圧を発生させるノズル部76と、前記負圧によって他の流体(蒸気)を吸引する吸引部78と、ノズル部76及び吸引部78からの流体を混合した後、排出するディフューザ部80とがエジェクタ本体81に設けられることで構成されている。
【0068】
エジェクタ70のノズル部76にはスクリュ膨張機22の上流側の供給管46から分岐している分岐管72が接続されている。この分岐管72の途中には、当該分岐管72内を流れる蒸気量を調整するための流量調整弁82が設けられている。また、エジェクタ70の吸引部78には吸引用排出管74が接続されており、この吸引用排出管74の他端はスクリュ膨張機22の出口44に接続されている。また、ディフューザ部80には排出管48が接続されている。
【0069】
吸引用排出管74には第3圧力計84が設けられ、排出管48には第4圧力計86が設けられている。これら第3及び第4圧力計で計測された圧力データは、コントローラ28に送られる。
【0070】
次に、この発電装置20の動作について説明する。蒸気源10から供給された蒸気は、主配管14から供給管46に供給され、スクリュ膨張機22の入口42から内部に供給される。そして、第1実施形態同様、スクリュ膨張機22において膨張室40の容積変化によって動力が得られ、この動力が発電機24に伝達されて発電が行われる。この発電により生成された電気も前記第1実施形態同様に周波数変換器26で周波数が商用周波数に変換され、変圧器66で変圧されて系統68に送られる。また、発電に利用された蒸気は、スクリュ膨張機22から排出され、吸引用排出管74を流れてエジェクタ70に吸引される。
【0071】
一方、供給管46に供給された蒸気の一部は、スクリュ膨張機22の上流側で分岐管72に分流され、エジェクタ70のノズル部76に供給される。このノズル部76に供給される蒸気の圧力は、スクリュ膨張機22の入口圧力P1と等しくなる。ノズル部76からエジェクタ本体81の内部に噴出される蒸気は、当該ノズル部76で絞り膨張されて過熱蒸気状態となる。このようにノズル部76から噴出された蒸気によってエジェクタ本体81内に負圧が発生し、この負圧によって吸引部78に接続された吸引用排出管74内の蒸気が吸引される。これら噴出された蒸気と吸引された蒸気とは混合され、ディフューザ部80から排出管48に排出される。
【0072】
このとき、吸引用排出管74に設けられた第3圧力計で計測した圧力データと、排出管48に設けられた第4圧力計86で計測した圧力データとから、コントローラ28がエジェクタ70の吸引部78の圧力(スクリュ膨張機22の出口圧力)P2とディフューザ部80の圧力(排出管48の圧力)との圧力差を算出する。そして、コントローラ28によって前記圧力差が適正な圧力差となるように流量調整弁82が制御される。
【0073】
具体的には、例えば、前記のエジェクタ70を用い、スクリュ膨張機22に供給される蒸気量が3.0t/h、スクリュ膨張機22の入口圧力P1が0.7MPa、プロセス側圧力P3が0.2MPaのとき、吸引用排出管74内の圧力P2が0.1MPaとなるように制御される。このとき、ノズル部76を通過する蒸気量は、1.2t/h程度となる。
【0074】
エジェクタ70から排出管48に排出された蒸気は主配管14に戻り、下流側のプロセス12へ供給される。
【0075】
以上説明したように、本実施形態によれば、スクリュ膨張機22を通過する際の膨張過程で蒸気が凝縮されてドレンが一端発生するが、このドレンは、吸引用排出管74を経てエジェクタ70の吸引部78から吸引され、分岐管72から供給されてノズル部76において過熱蒸気状態となった蒸気と混合されることで再蒸発して蒸気となる。その結果、当該発電装置20全体としては、蒸気からのドレンの発生が抑制される。
【0076】
スクリュ膨張機22下流側の吸引用排出管74内の蒸気は、エジェクタ70によって昇圧されてプロセス12側(排出管48)に排出される。即ち、スクリュ膨張機22の出口圧力P2をプロセス側圧力P3よりも低くすることができる。そのため、スクリュ膨張機22の入口圧力P1と出口圧力P2との圧力差を蒸気源10から供給される蒸気の圧力P1とプロセス側圧力P3との圧力差よりも大きくすることが可能となる。そのため、発電装置20では、当該発電装置20に供給される蒸気が有するエネルギーを最大限仕事(動力)として回収することが可能となり、発電効率がより向上する。
【0077】
具体的には、ドレン抑制手段としてエジェクタ70を用いた場合に、図8から、例えば、圧力差が0.5MPaから0.6MPaになることで約50%の発電出力が増加することがわかる。ここで、図8は、本実施形態に係る発電装置20において前記のエジェクタ70を用い、スクリュ膨張機22に供給される蒸気量が3.0t/h、このスクリュ膨張機22内で蒸気の圧力がP1からP2に減圧される際のスクリュ膨張機22の変換効率が70%、スクリュ膨張機22の入口圧力P1が0.7Pa、プロセス側圧力P3が0.2MPaとした場合に、スクリュ膨張機22の出口圧力P2を前記入口圧力P1からの圧力差で表したときの発電量を示す。
【0078】
本実施形態のように分岐管72に流量調整弁82が設けられることで、ノズル部76に供給される蒸気量が調整可能となり、吸引用排出管74内の圧力(スクリュ膨張機22の出口圧力)P2とエジェクタ70の下流側の圧力(プロセス側圧力)P3との圧力差の調整が容易となる。
【0079】
しかし、蒸気源10から供給される蒸気量が一定で、且つプロセス側圧力が変動しない場合には、前記P2とP3との圧力差が一定となるため分岐管72に流量調整弁82がなくてもよい。
【0080】
次に、本発明の第3実施形態について図9も参照しつつ説明するが、上記第1及び第2実施形態と同様の構成には同一符号を用いると共に詳細な説明を省略し、異なる構成ついてのみ詳細に説明する。この図9も図6同様に発電装置20における図2の点線で囲まれた部分に相当する部分を示す概略構成図である。
【0081】
本実施形態に係る発電装置20においては、ドレン抑制手段は、圧縮機90で構成されている。この圧縮機90は、スクリュ膨張機と同様の構成で、雌雄一対のスクリュローター36,38の回転方向が逆回転であるスクリュ圧縮機である。
【0082】
このスクリュ圧縮機90は、スクリュ膨張機22の下流側に設けられ、スクリュ膨張機22の出口44とスクリュ圧縮機90の入口とが連結管92で連結されている。また、スクリュ圧縮機90の出口は、排出管48に接続されている。このように連結されることで、スクリュ膨張機22から排出された蒸気がスクリュ圧縮機90で圧縮されて昇圧された後、排出管48に排出される。
【0083】
また、このスクリュ圧縮機90は、スクリュ膨張機22から発電機24に動力を伝達する回転駆動軸64に連結されている。具体的には、スクリュ圧縮機90の一方のスクリュローター36(又は38)の回転軸36b(又は38b)と回転駆動軸64とが共通の軸で構成され、スクリュ圧縮機90がスクリュ膨張機22と発電機24との中間位置に配置されている。
【0084】
また、スクリュ圧縮機90の下流側の排出管48には第5圧力計94が設けられており、この圧力計94で計測された圧力データは、コントローラ28に送られる。
【0085】
次に、この発電装置20の動作について説明する。蒸気源10から供給された蒸気は、主配管14から供給管46に供給され、スクリュ膨張機22の入口42から内部に供給される。そして、第1実施形態同様、スクリュ膨張機22において膨張室40の容積変化によって動力が得られ、この動力が発電機24に伝達されて発電が行われる。この発電により生成された電気も前記第1実施形態同様に周波数変換器26で周波数が商用周波数に変換され、変圧器66で変圧されて系統68に送られる。また、発電に利用された蒸気は、前記膨張過程で当該蒸気のエネルギーを回転動力に変換されることで蒸気源10から供給された蒸気の圧力P1からスクリュ膨張機22の出口圧力P2にまで減圧されてスクリュ膨張機22から排出される。この排出された蒸気は、連結管92を流れてスクリュ圧縮機90に供給される。
【0086】
スクリュ圧縮機90では、連結管92によってスクリュ膨張機22から供給された蒸気が圧縮され、スクリュ膨張機22の出口圧力P2からプロセス側圧力P3まで昇圧される。このとき、スクリュ圧縮機90は、回転駆動軸64から駆動力を得て前記圧縮を行っている。
【0087】
そして、圧縮された蒸気は、スクリュ圧縮機90から排出管48に排出される。この排出された蒸気の圧力が第5圧力計94で計測され、この計測によって得られた圧力データに基づいてコントローラ28が発電機24の回転数を制御し、プロセス側圧力P3を所望の圧力に調整する。
【0088】
詳細には、スクリュ膨張機22とスクリュ圧縮機90とが回転駆動軸64で連結されているため回転数が同一となる。また、回転駆動軸64には発電機24も連結されている。そのため、発電機24の回転数を制御することで、スクリュ膨張機22及びスクリュ圧縮機90の回転数制御を同時に行うことができる。尚、このときのスクリュ膨張機22の入口圧力P1と出口圧力P2の比、及びスクリュ圧縮機90の入口圧力P2と出口圧力P3の比は、共に設計値(設計膨張比及び設計圧縮比)と同じになっている。
【0089】
スクリュ圧縮機90から排出管48に排出された蒸気は主配管14に戻り、下流側のプロセス12へ供給される。
【0090】
以上説明したように、本実施形態によれば、スクリュ膨張機22を通過する際の膨張過程で蒸気が凝縮されてドレンが一端発生するが、このドレンは、スクリュ膨張機22から排出された蒸気と共にスクリュ圧縮機90内に導入され、当該スクリュ圧縮機90内で圧縮されることで再蒸発して蒸気となる。その結果、当該発電装置20全体としては、蒸気からのドレンの発生が抑制される。
【0091】
また、スクリュ圧縮機90によりスクリュ膨張機22から排出された蒸気の圧力を上昇させることができるため、プロセス側圧力P3よりもスクリュ膨張機22の出口圧力P2を低くすることができる。即ち、第2実施形態同様、スクリュ膨張機22の入口圧力P1と出口圧力P2との圧力差を蒸気源10から供給される蒸気の圧力P1とプロセス側圧力P3との圧力差よりも大きくすることが可能となる。そのため、当該発電装置20に供給される蒸気が有するエネルギーを最大限仕事(動力)として回収することが可能となり、発電効率がより向上する。
【0092】
また、本実施形態においては、スクリュ膨張機22と発電機24とスクリュ圧縮機90とが共通の回転駆動軸64によって連結されている。そのため、複数の部材を介してクスリュ膨張機22からの動力が発電機24とスクリュ圧縮機90に伝達される場合に比べ、前記動力の機械損失を小さくすることができ、発電効率がより向上する。また、前記動力を伝達する手段として回転駆動軸64のような簡単な構成とすることで、当該動力伝達手段において故障が発生し難く且つメンテナンスも容易になる。
【0093】
尚、本発明の発電装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0094】
例えば、第3実施形態においては、回転駆動軸64に沿って、順にスクリュ膨張機22、スクリュ圧縮機90及び発電機24が配置されているが、これに限定される必要はなく、図10(a)に示されるように、回転駆動軸64に沿って、スクリュ膨張機22、発電機24及びスクリュ圧縮機90の順で配置されてもよい。このような順に配置されても、それぞれが共通の回転駆動軸64で連結されることで、いずれか1つの回転数を制御することで、他の2つの回転数の制御を同時に行うことが可能となる。従って、ケーシング30内のスペース等により必要に応じて前記順序を入れ換えて配置すればよい。
【0095】
また、第3実施形態において、連結管92にドレン飛散器96が設けられてもよい(図10(c)参照)。このドレン飛散器96は、蒸気が膨張過程で凝縮したドレンを飛散させ、再び蒸気中に分散させるためのものである。このようなドレン飛散器96が連結管92に設けられることで、スクリュ膨張機22での膨張過程で一旦蒸気が凝縮して発生したドレンが連結管92内で液膜となっても、この液膜が当該連結管92内の蒸気中に飛散されることでスクリュ圧縮機90内での前記ドレンの再蒸発が容易になる。
【0096】
また、第3実施形態において、図10(b)に示されるように、連結管92に液体注入装置98が設けられてもよい。この液体注入装置98は、連結管92内に蒸気を構成する液体を注入するためのものである。このような液体注入装置98が連結管92に設けられ、前記液体が連結管92内に注入されることで、プロセス12に供給される蒸気量を増加させることが可能となる。この場合、連結管92にドレンセパレータ100を設けることで、連結管92内の蒸気からドレンを分離して排出した後、液体注入装置98によって前記液体を注入するようにしてもよい。また、液体注入装置98を設けることなく連結管92にドレンセパレータ100のみを設けることで、プロセス12において過熱蒸気を得ることができる。
【0097】
尚、圧縮機が容積型圧縮機(第3実施形態においては、スクリュ圧縮機90)で構成されることで、当該圧縮機内に前記液体注入装置98等からの液体が導入されても故障し難くなる。
【0098】
これらドレン飛散器96と液体注入装置98とは、図10(b)に示されるように、連結管92に設けられてもよい。このように両方が連結管92に設けられることで、連結管92内で液膜となったドレンがスクリュ圧縮機90で再蒸発し易くなると共に、プロセス12に供給する蒸気量を増加させることができる。
【0099】
第3実施形態において、スクリュ膨張機22で発生した動力(回転動力)を発電機24及びスクリュ圧縮機90に伝達するための動力伝達手段として、回転駆動軸64が用いられているがこれに限定される必要はなく、図11に示されるように、複数の歯車102,102,…によって構成されてもよい。この場合、圧縮機90は外部からの動力を得るための歯車104を有し、この歯車104が複数の歯車102,102,…のいずれかに噛み合うように配置されればよい。尚、図11においては、これら複数の歯車102,102,…及びスクリュ圧縮機90の有する歯車104は、減速機106を構成している。
【0100】
前記動力伝達手段が前記のように構成されることで、各歯車102,104のギア比を設定することで所望のスクリュ圧縮機90の出口圧力(プロセス側圧力)P3及び所望のスクリュ膨張機22の出口圧力P2を容易に得ることが可能となる。そのため、スクリュ膨張機22の入口圧力P1と出口圧力P2との圧力差を所望の圧力差に設定すると共にプロセス側圧力P3も所望の圧力とすることができる。
【0101】
さらに、種々の歯車の組み合わせによりスクリュ膨張機22、発電機24及びスクリュ圧縮機90の配置の自由度が向上する。また、歯車の組み合わせを変更可能な機構(変速機構等)としてもよい。この場合、蒸気源10から供給される蒸気量の変動やプロセス側圧力の変動に合わせて各部位での圧力P1,P2,P3が適正な圧力(スクリュ膨張機22における設計膨張比及びスクリュ圧縮機90における設計圧縮比)となるよう、スクリュ膨張機22、発電機24及びスクリュ圧縮機90の回転数がそれぞれ適した回転数となるように歯車の組み合わせを変更するような制御がコントローラ28により行われる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】第1実施形態に係る蒸気プロセス全体の概略構成図である。
【図2】同実施形態に係る発電装置における概略構成図である。
【図3】同実施形態に係るスクリュ膨張機における(a)は部分断面平面図であり、(b)は部分断面側面図であり、(c)は図3(a)におけるA−A断面図である。
【図4】同実施形態に係るスクリュ膨張機における(a)及び(b)は、膨張室の容積変化を示すための一対のスクリュローターの斜視図である。
【図5】同実施形態に係る発電装置における(a)は蒸気の状態変化を示す図であり、(b)はスクリュ膨張機の出口圧力を変更した場合の蒸気の状態変化を示す図である。
【図6】第2実施形態に係る発電装置における図2の点線で囲まれた部分に相当する部分の概略構成図である。
【図7】同実施形態に係るエジェクタの縦断面図である。
【図8】同実施形態に係るスクリュ膨張機の出口圧力を入口圧力からの圧力差で表したときの理論発電量を示す図である。
【図9】第3実施形態に係る発電装置における図2の点線で囲まれた部分に相当する部分の概略構成図である。
【図10】図9に示される第3実施形態の変形例を示す図であって、(a)は発電機の両側にスクリュ膨張機とスクリュ圧縮機を配置した状態を示す概略構成図であり、(b)は連結管にドレンセパレータと液体注入装置とを設けた状態を示す概略構成図であり、(c)は連結管にドレン飛散器と液体注入装置とを設けた状態を示す概略構成図である。
【図11】図9に示される第3実施形態の変形例を示す図であって、動力伝達手段が複数の歯車で構成された状態を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0103】
10 蒸気源
12 プロセス
14 主配管
16 コントロール弁
20 発電装置
22 スクリュ膨張機(容積型膨張機)
24 発電機
40 膨張室
58 ドレン抑制減圧弁(ドレン抑制手段)
64 回転駆動軸(動力伝達手段)
70 エジェクタ
72 分岐管(分岐流路)
74 吸引用排出管
76 ノズル部
78 吸引部
82 流量調整弁
90 スクリュ圧縮機(圧縮機)
96 ドレン飛散器
98 液体注入装置
102 歯車
104 歯車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給された蒸気によって発電し、発電に利用された前記蒸気を排出する発電装置であって、
膨張室に導入された前記蒸気の圧力による当該膨張室の容積変化に応じて動力を発生する容積型膨張機と、
前記容積型膨張機からの前記動力が伝達されるように動力伝達手段を介して当該容積型膨張機に連結される発電機と、
前記供給された蒸気が前記容積型膨張機を通過することで当該蒸気から発生するドレンを抑制するためのドレン抑制手段とを備えることを特徴とする発電装置。
【請求項2】
前記容積型膨張機は、スクリュ膨張機であることを特徴とする請求項1に記載の発電装置。
【請求項3】
前記ドレン抑制手段は、前記容積型膨張機の下流側の流路に設けられ、通過する前記蒸気が絞り膨張される絞り膨張手段であることを特徴とする請求項1又は2に記載の発電装置。
【請求項4】
前記絞り膨張手段は、減圧弁であることを特徴とする請求項3に記載の発電装置。
【請求項5】
前記絞り膨張手段は、絞り弁又は前記流路に形成された絞り部であることを特徴とする請求項3に記載の発電装置。
【請求項6】
前記ドレン抑制手段は、ノズル部に供給される蒸気を用いて負圧を発生させてこの負圧によって吸引部から他の蒸気を吸引するエジェクタと、前記容積型膨張機の上流側の流路から分岐した分岐流路と、前記容積型膨張機の下流側に接続された排出流路と、で構成され、
前記エジェクタは、前記ノズル部に前記分岐流路が接続されると共に前記吸引部には前記排出流路が接続されることを特徴とする請求項1又は2に記載の発電装置。
【請求項7】
前記分岐流路には流量調整弁が設けられることを特徴とする請求項6に記載の発電装置。
【請求項8】
前記ドレン抑制手段は、前記容積型膨張機の下流側の流路に設けられた圧縮機で構成され、
この圧縮機は、前記動力伝達手段に連結されて駆動される構成であることを特徴とする請求項1又は2に記載の発電装置。
【請求項9】
前記動力伝達手段は、前記容積型膨張機と前記発電機とを連結する回転駆動軸で構成され、前記圧縮機は、前記回転駆動軸に連結されていることを特徴とする請求項8に記載の発電装置。
【請求項10】
前記動力伝達手段は、複数の歯車によって構成され、
前記圧縮機は、外部から動力を得るための歯車を有し、この歯車が前記複数の歯車のいずれかに噛み合うように配置されることを特徴とする請求項8に記載の発電装置。
【請求項11】
前記圧縮機は、スクリュ圧縮機であることを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項に記載の発電装置。
【請求項12】
前記容積型膨張機とスクリュ圧縮機との間の流路には、前記容積型膨張機を通過する際に凝縮した前記蒸気を飛散させるためのドレン飛散器が設けられることを特徴とする請求項11に記載の発電装置。
【請求項13】
前記容積型膨張機とスクリュ圧縮機との間の流路には、前記蒸気を構成する液体を当該流路内に注入するための液体注入装置が設けられることを特徴とする請求項11又は12に記載の発電装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−228569(P2009−228569A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−75728(P2008−75728)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】