説明

皮膚を老化から保護する方法

本発明は、ヒトの皮膚、頭皮および/または粘膜を改善および/または保護するための美容的処置方法に関する。本発明の方法においては、プロテオグリカン、特にルミカンおよび/またはシンデカンおよび/またはバーシカンおよび/またはデコリンおよび/またはグリピカンおよび/またはビグリカンを調節する少なくとも1種の物質を含有する製剤を局所適用する。本発明はまた、ルミカンおよび/またはシンデカンおよび/またはバーシカンおよび/またはデコリンおよび/またはグリピカンおよび/またはビグリカンを調節する物質の使用であって、皮膚老化および酸化的ストレスからの保護用の化粧用製剤を製造するための使用にも関する。更に本発明は、該物質を、環境有害物質およびUV線による悪影響からの保護、真皮/表皮接合部の機能改善を提供する化粧用製剤の製造に使用することにも関し、創傷治癒を改善するため、および脱毛、セルライトまたは酒さを処置するために製剤を使用することにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧用製剤に関し、とりわけ、ヒトの皮膚、頭皮および/または粘膜を、老化、酸化的ストレス並びに環境有害物質およびUV線の有害作用から保護するための美容的方法に関する。本発明はまた、ルミカンおよび/またはシンデカンおよび/またはバーシカンおよび/またはデコリンおよび/またはグリピカンおよび/またはビグリカンを調節する物質を、化粧用製剤、およびある種の皮膚疾患を処置するための製剤の製造に使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
結合組織の細胞外マトリックスは多くの巨大分子から成り、該分子は複雑な立体的ネットワークを形成し、相互に、また結合組織の細胞と作用し合い、そのようにして組織の構造的完全性に大きく寄与している。しかし、それらは個々の細胞および組織の間のリンクを形成するだけでなく、(増殖因子、阻害因子またはホルモンの)フィルター機能および輸送機能並びに特殊な受容体結合によって、細胞増殖、細胞供給および細胞分化の調節をも提供している。細胞外マトリックスの重要な成分は、コラーゲン、エラスチン、糖タンパク質、ヒアルロン酸、グリコサミノグリカン、プロテオグリカンおよび糖タンパク質(非線維状基本構造に属するもの)を包含する。
【0003】
プロテオグリカンは、コアタンパク質に1本またはそれ以上のグリコサミノグリカン側鎖が共有結合した巨大分子である。プロテオグリカンは細胞外マトリックスの主要成分であり、多くの異なる分子を包含し、それは大まかにラージプロテオグリカンとスモールプロテオグリカンとに分けられる。プロテオグリカンは、基底膜のすべてのレベルに見られ、基底膜は表皮基底細胞直下の概ね均一な層をなしており、三つの層に分けられる。細胞に直接接する最上層は透明層、続いて基底膜の中間の層が緻密層、そしてその次に線維細網層がある。
【0004】
プロテオグリカンは基底膜において、線維状組織成分に結合することによって組織強度に寄与し、水を結合することによって皮膚弾力性に影響を及ぼす。皮膚のしわの増加および弾力性の低下は、コラーゲン線維に関係することが、研究によってわかっている。
【0005】
老化過程において、皮膚は、その機械的性質、保水能力、並びに張りおよび弾力性が大きく変化する。プロテオグリカンはそれらの変化に大きな影響を及ぼす。更に、正常な老化過程においては対極的な変化も見られ、すなわち加齢につれて、ラージコンドロイチン硫酸プロテオグリカン(バーシカン)が減少し、平行してスモールデルマタン硫酸プロテオグリカン(デコリン)の数が増加する。
【0006】
疾患により誘導される皮膚変化に、プロテオグリカンの変化が影響し得ることが知られている。すなわち、国際特許出願WO01/17560には、シンデカン−1の放出を阻害する物質を用いて細菌感染を治療および予防することが記載されている。国際特許出願WO94/12162には、シンデカン刺激によって腫瘍増殖を抑制し、毛髪成長を刺激することが開示されている。更に、デコリン、ビグリカンおよびフィブロモジュリンの投与によって、瘢痕形成が軽減または防止されることがわかっている(国際特許出願WO93/09800参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
老化がもたらす皮膚変化の防止、および環境がもたらす老化作用からの有効な皮膚保護が求められていることから、本発明が課題とするのは、皮膚、頭皮および/または粘膜を改善する新規メカニズムを提供することである。そのようなメカニズムは、皮膚老化の遅延に寄与し、また、皮膚、頭皮および/または粘膜の環境的影響、酸化的ストレス、毒性物質またはUV線からの保護に寄与するものであり、従って局所適用する化粧用および皮膚科用製剤中に有効に使用できるものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ヒトの皮膚、頭皮および/または粘膜を改善および/または保護するための美容的処置方法であって、プロテオグリカン、特にルミカンおよび/またはシンデカンおよび/またはバーシカンおよび/またはデコリンおよび/またはグリピカンおよび/またはビグリカンを調節する少なくとも1種の物質を含有する製剤を局所適用することを含んで成る方法に関する。
【0009】
本発明はまた、ルミカンおよび/またはシンデカンおよび/またはバーシカンおよび/またはデコリンおよび/またはグリピカンおよび/またはビグリカンを調節する物質の使用であって、ヒトの皮膚、頭皮および/または粘膜を老化から保護する化粧用製剤を製造するため、酸化的ストレスからの保護、有害な環境的影響からの保護、UV線損傷からの保護、および真皮/表皮接合部の機能改善を提供する化粧用製剤を製造するため、並びに創傷治癒を改善する皮膚科用製剤、および脱毛、セルライトまたは酒さ処置用製剤を製造するための使用に関する。
【0010】
驚くべきことに、プロテオグリカン、とりわけルミカン、シンデカン、バーシカン、デコリン、グリピカンおよび/またはビグリカンの調節により、ヒトの皮膚、頭皮または粘膜の改善および保護がもたらされることがわかった。すなわち、皮膚の張りの改善、弾力性の向上、および水結合能の向上が、UV線曝露後にさえも見られた。皮膚再生能力が顕著に改善され、従って、皮膚再生および特に創傷治癒が著しく速まり、それによって更に、炎症性皮膚疾患、特に脱毛、セルライトおよび酒さの処置にも利益がもたらされる。
【0011】
プロテオグリカン、特にルミカン、シンデカン、バーシカン、デコリン、グリピカンおよび/またはビグリカンを調節する物質は、単独で、または次のような他の活性物質と組み合わせて使用し得る:
【0012】
・皮膚巨大分子を強化し、非酵素的グリコシル化に対するその抵抗性を高め、それにより皮膚を毒性環境有毒因子および酸化的ストレスから保護する物質
・老化ヒト皮膚の増殖因子バランスを維持し、それによって、UV線損傷後または創傷治癒過程における皮膚の再生および修復を改善する物質
・ヒト皮膚においてマイクロフィブリルの形成を助け、それにより皮膚老化発現からの保護を提供する物質
・マイクロフィブリルの強化によって係留を改善することにより真皮/表皮接合部(DEJ)の機能を改善する物質
・皮膚の水結合能を向上し、それにより皮膚の張りに寄与する物質
・小じわの形成を抑制し、しわ形成の進行を抑制する物質
・脱毛の顕現を遅らせる物質
・セルライトおよび酒さに起因する皮膚変化を軽減する物質
・刺激、発赤および痒みをもたらす炎症過程の進展を抑制する物質
・皮膚におけるメラニン合成に影響を及ぼす物質
・皮膚の免疫系を強化し、それにより有害な環境的影響からの防御系を改善する物質
【0013】
適当であることがわかった調節剤は、植物抽出物、とりわけPisum sativumおよび/またはVigna aconitifoliaの抽出物、微生物の抽出物、および/または植物由来の発酵生成物である。しかし、マンニトール、シクロデキストリン、酵母エキスおよびコハク酸二ナトリウムから成る群から選択する少なくとも1種の物質を適用することによっても、ルミカン、シンデカン、バーシカン、デコリン、グリピカンおよび/またはビグリカンを調節することができる。特にこれらの成分を組み合わせると、有利な効果が得られる。
【0014】
下記物質から成る群から選択する少なくとも1種の物質によっても、分子の調節がもたらされる:
・フィトステロール、例えばβ−シトステロール、カンペステロール、ブラシカステロール、Δ5−アベナステロール、α−スピナステロールまたはスチグマステロール;
・フィトエストロゲン、例えばイソフラボン(ゲニステイン、ダイゼイン)、スチルベン、リグナン;
・トリテルペン、例えばルペオール、ウルソール酸、アージュノル酸、オレアノール酸;
・トリテルペンサポニンおよびステロイドサポニン、例えばサポゲニン、ジオスゲニン、ヘコゲニン、スミラゲニン、サルサポゲニン、チゴゲニン、ヤモゲニン、ユッカゲニンおよびバシック酸;
・ペプチド、特に増殖因子TGFβ、IL4に対応するもの;および
・フラボノイドおよびフラボノイド誘導体。
【0015】
本発明の化粧用製剤は、上記のような物質または植物抽出物のほか、UV保護因子および/または抗酸化剤をも含有し得る。ルミカンおよび/またはシンデカンおよび/またはバーシカンおよび/またはデコリンおよび/またはグリピカンおよび/またはビグリカンを調節する物質と、UV保護因子および/または抗酸化剤との組み合わせは、様々なメカニズムによって、相乗的な効果をもたらし、有害作用および皮膚のUV線老化からの優れた保護を提供する。
【0016】
ルミカン
ルミカンは、線維性コラーゲンと共に皮膚に存在する、ロイシンリッチプロテオグリカン(LRP)の一群であるケラタン硫酸ファミリーに属する。ルミカンは、様々な結合組織のフィブリルにおいて、組織の弾力性および安定性に寄与している。組織学的に、ルミカン欠乏組織においては、コラーゲン線維の乱れと強度低下が見られる。特に皮下組織において、コラーゲン線維および線維芽細胞の並びと向きが乱れる。コラーゲンマトリックスの構造、フィブリル間隙の拡大およびフィブリルの形態変化を電子顕微鏡で調べることによっても、組織学的異常を確認することができる。
【0017】
シンデカン
シンデカンは、膜貫通型ヘパラン硫酸プロテオグリカン群に属し、インテグリンおよび増殖因子チロシンキナーゼ受容体の補助受容体として機能する。シンデカンは、表面電荷が負である故に、正に荷電したマトリックスセクションに結合し、基底層においてしっかりした係留接着を形成する。シンデカン−4は、創傷治癒および血管形成にとって重要な表面受容体である。シンデカン−1は、表皮の主要なヘパラン硫酸プロテオグリカンである。これはヘパラン硫酸およびコンドロイチン硫酸を含み、成熟し、充分発達した組織、主として単層および層状上皮に見られる。表皮においてシンデカン−1は、特に基底層直上の細胞層rara層に見られる。これは、創傷治癒におけるケラチノサイトの移動および増殖において重要な役割を担う。創傷の端部のケラチノサイトにおける遺伝子発現を活性化するシンデカン−1中のエンハンサー(シンデカン−1遺伝子のプロモーター中のFiRE−線維芽細胞増殖因子誘導性応答エレメント)が、最近、科学者によって見出された。細胞外マトリックスの組成および増殖因子のアベイラビリティーが、シンデカン−1発現の表皮調節により影響を受けることが科学者によって示されたので、FiREは細胞外マトリックスの遺伝子調節のための新しい標的となる。
【0018】
バーシカン
バーシカンは、基底膜の中間層である緻密層、および線維細網層に存在するラージコンドロイチン硫酸プロテオグリカンの1種である。
【0019】
デコリン
デコリンは、最も小さいロイシンリッチファミリーのプロテオグリカン(LRP)の1種である。コラーゲンの豊富な組織の細胞外マトリックス中に主に存在するデルマタン硫酸プロテオグリカンで、該組織においてコラーゲンフィブリル表面を覆っている。
【0020】
グリピカン
グリピカンは、グリコシルホスファチジルイノシトールを介して膜に結合により係留されたプロテオグリカンで、内皮細胞表面上で抗トロンビンおよびリポタンパク質リパーゼを結合する。
【0021】
ビグリカン
ビグリカンは、間充織細胞から放出されるスモールプロテオグリカンである。これは内皮細胞および上皮細胞によっても合成され、主として細胞周囲間隙に存在するが、細胞の中心部にも見られる。いくつかの因子、例えばTGFβおよびb−FGFが、線維芽細胞によるビグリカン合成を調節する。ビグリカンの機能はまだあまり判っていない。
【0022】
UV保護因子および抗酸化剤
本発明においてUV保護因子とは、例えば、室温で液状または結晶であり、紫外線を吸収して、その吸収したエネルギーをより長波長の放射線(例えば熱)として放出することのできる有機物質(光フィルター)である。UV−Bフィルターは、油溶性または水溶性であり得る。油溶性物質を以下例示する:
【0023】
・3−ベンジリデンカンファーまたは3−ベンジリデンノルカンファーおよびそれらの誘導体、例えば3−(4−メチルベンジリデン)−カンファー;
・4−アミノ安息香酸誘導体、好ましくは4−(ジメチルアミノ)−安息香酸−2−エチルヘキシルエステル、4−(ジメチルアミノ)−安息香酸−2−オクチルエステル、および4−(ジメチルアミノ)−安息香酸アミルエステル;
・桂皮酸エステル、好ましくは4−メトキシ桂皮酸−2−エチルヘキシルエステル、4−メトキシ桂皮酸プロピルエステル、4−メトキシ桂皮酸イソアミルエステル、2−シアノ−3,3−フェニル桂皮酸−2−エチルヘキシルエステル[オクトクリレン(Octocrylene)];
・サリチル酸エステル、好ましくはサリチル酸−2−エチルヘキシルエステル、サリチル酸−4−イソプロピルベンジルエステル、サリチル酸ホモメンチルエステル;
【0024】
・ベンゾフェノン誘導体、好ましくは2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4'−メチルベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン;
・ベンザルマロン酸エステル、好ましくは4−メトキシベンザルマロン酸ジ−2−エチルヘキシルエステル;
・トリアジン誘導体、例えば2,4,6−トリアニリノ−(p−カルボ−2'−エチル−1'−ヘキシルオキシ)−1,3,5−トリアジン、およびオクチル・トリアゾン(Octyl Triazone)、またはジオクチル・ブタミド・トリアゾン(Dioctyl Butamido Triazone)[Uvasorb(登録商標)HEB];
・プロパン−1,3−ジオン、例えば1−(4−t−ブチルフェニル)−3−(4'−メトキシフェニル)−プロパン−1,3−ジオン;
・ケトトリシクロ(5.2.1.0)デカン誘導体。
【0025】
適当な水溶性物質は、次のような物質である:
・2−フェニルベンゾイミダゾール−5−スルホン酸並びにそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩、アルカノールアンモニウム塩およびグルカンモニウム塩;
・ベンゾフェノンのスルホン酸誘導体、好ましくは2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸およびその塩;
・3−ベンジリデンカンファーのスルホン酸誘導体、例えば4−(2−オキソ−3−ボルニリデンメチル)−ベンゼンスルホン酸および2−メチル−5−(2−オキソ−3−ボルニリデン)−スルホン酸並びにそれらの塩。
【0026】
通常のUV−Aフィルターはとりわけ、ベンゾイルメタン誘導体、例えば1−(4'−t−ブチルフェニル)−3−(4'−メトキシフェニル)−プロパン−1,3−ジオン、4−t−ブチル−4'−メトキシジベンゾイルメタン(Parsol(登録商標)1789)または1−フェニル−3−(4'−イソプロピルフェニル)−プロパン−1,3−ジオン、およびエンアミン化合物である。
【0027】
UV−AフィルターとUV−Bフィルターを混合物として使用しても当然よい。特に好ましい組み合わせは、ベンゾイルメタン誘導体、例えば4−t−ブチル−4'−メトキシジベンゾイルメタン(Parsol(登録商標)1789)および2−シアノ−3,3−フェニル桂皮酸−2−エチルヘキシルエステル(オクトクリレン)と、桂皮酸エステル、好ましくは4−メトキシ桂皮酸−2−エチルヘキシルエステルおよび/または4−メトキシ桂皮酸プロピルエステルおよび/または4−メトキシ桂皮酸イソアミルエステルとの組み合わせから成る。好ましくは、そのような組み合わせは、水溶性フィルター、例えば2−フェニルベンゾイミダゾール−5−スルホン酸並びにそのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩、アルカノールアンモニウム塩およびグルカンモニウム塩と組み合わせる。
【0028】
上記可溶性物質のほかに、不溶性遮光顔料、すなわち、微分散金属酸化物または塩を、この目的のために使用してもよい。適当な金属酸化物の例は、とりわけ、酸化亜鉛、二酸化チタン、および鉄、ジルコニウム、ケイ素、マンガン、アルミニウムおよびセリウムの酸化物、並びにそれらの混合物である。塩としては、ケイ酸塩(タルク)、硫酸バリウムおよびステアリン酸亜鉛を使用し得る。このような酸化物および塩は、皮膚の手入れおよび保護用エマルジョン並びに装飾的化粧品中に、顔料として使用される。
【0029】
このような粒子の平均直径は、100nm未満、好ましくは5〜50nm、より好ましくは15〜30nmとすべきである。粒子は球形であり得るが、楕円形粒子または他の非球形粒子を使用してもよい。顔料は、表面処理(すなわち、親水化または疎水化)してもよい。その例は、コーティングした二酸化チタン、例えばTitandioxid T805(Degussa)またはEusolex(登録商標)T2000(Merck)である。適当な疎水性コーティング材料はとりわけ、シリコーンおよび特にトリアルコキシオクチルシランまたはシメチコンである。日焼け止め製剤中には、いわゆるマイクロピグメントまたはナノピグメントを使用することが好ましい。微粉化した酸化亜鉛を使用することが好ましい。
【0030】
上記二群の主な日焼け止め剤のほかに、抗酸化剤タイプの副次的日焼け止め剤をも使用し得る。抗酸化剤タイプの副次的日焼け止め剤は、UV線が皮膚に侵入すると開始される光化学反応鎖を断つ。その例を次に挙げる:アミノ酸(例えばグリシン、ヒスチジン、チロシン、トリプトファン)およびその誘導体、イミダゾール(例えばウロカニン酸)およびその誘導体、ペプチド、例えばD,L−カルノシン、D−カルノシン、L−カルノシンおよびそれらの誘導体(例えばアンセリン)、カロチノイド、カロテン(例えばα−カロテン、β−カロテン、リコペン)およびその誘導体、クロロゲン酸およびその誘導体、リポン酸およびその誘導体(例えばジヒドロリポン酸)、アウロチオグルコース、プロピルチオウラシルおよび他のチオール(例えばチオレドキシン、グルタチオン、システイン、シスチン、シスタミン、それらのグリコシル、N−アセチル、メチル、エチル、プロピル、アミル、ブチル、ラウリル、パルミトイル、オレイル、γ−リノレイル、コレステリルおよびグリセリルエステル)およびそれらの塩、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、チオジプロピオン酸およびその誘導体(エステル、エーテル、ペプチド、脂質、ヌクレオチド、ヌクレオシドおよび塩)、スルホキシミン化合物(例えばブチオニンスルホキシミン、ホモシステインスルホキシミン、ブチオニンスルホン、ペンタ−、ヘキサ−およびヘプタ−チオニンスルホキシミン)(例えばピコモルないしマイクロモル/kg程度の極く少ない適合量で)、
【0031】
(金属)キレート剤(例えばα−ヒドロキシ脂肪酸、パルミチン酸、フィチン酸、ラクトフェリン)、α−ヒドロキシ酸(例えばクエン酸、乳酸、リンゴ酸)、フミン酸、胆汁酸、胆汁抽出物、ビリルビン、ビリベルジン、EDTA、EGTAおよびそれらの誘導体、不飽和脂肪酸およびその誘導体(例えばγ−リノレン酸、リノール酸、オレイン酸)、葉酸およびその誘導体、ユビキノン、ユビキノールおよびそれらの誘導体、ビタミンCおよびその誘導体(例えばアスコルビルパルミテート、Mgアスコルビルホスフェート、アスコルビルアセテート)、トコフェロールおよび誘導体(例えばビタミンEアセテート)、ビタミンAおよび誘導体(ビタミンAパルミテート)、ベンゾイン樹脂のコニフェリルベンゾエート、ルチン酸およびその誘導体、α−グリコシルルチン、フェルラ酸、フルフリリデングルシトール、カルノシン、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ノルジヒドログアヤク樹脂酸、ノルジヒドログアヤレト酸、トリヒドロキシブチロフェノン、尿酸およびその誘導体、マンノースおよびその誘導体、スーパーオキシド−ジスムターゼ、亜鉛およびその誘導体(例えばZnO、ZnSO4)、セレンおよびその誘導体(例えばメチオニンセレン)、スチルベンおよびその誘導体(例えば酸化スチルベン、酸化トランススチルベン)、並びに本発明の目的に適当な上記活性物質の誘導体(塩、エステル、エーテル、糖、ヌクレオチド、ヌクレオシド、ペプチドおよび脂質)。
【0032】
実施例
老化によりもたらされるプロテオグリカン変化が、対応する皮膚外観およびその機械的性質に反映することを示すために、様々な年齢のヒトの皮膚のグルコサミノグリカンおよびプロテオグリカンを調べた。この目的のために、子供の皮膚、大人の皮膚および老人の皮膚のサンプルを得、そこからケラチノサイトおよび線維芽細胞の細胞培養物を培養した。
【0033】
ヒト皮膚の性質を年齢と相関付けて調べるために、下記の従来法を用いた。[19-WEGROWSKI, Y.; PALTOT, V.; GILLERY, P.; KALIS, B.; RANDOUX, A.; MAQUART, F.X.; Biochemical Journal 2995, 307, 3, 673-678; WEGROWSKI, Y.; GILLERY, P.; KOTLARZ, G.; PERREAU, C.; GEORGES, N. および MAQUART, F.X.; Molecular and Cellular Biochemistry, 200, 205, 125-131]
【0034】
グルコサミノグリカンの測定のために:
放射性物質で標識した分子、例えばトリチウム標識グルコサミンを、ケラタン硫酸以外の全てのグルコサミノグリカンのために使用し、35Sを全ての硫酸化グルコサミノグリカンのために使用する。グルコサミノグリカンの標識分子を定量し、電気泳動法を行う。
【0035】
プロテオグリカンの測定のために:
低分子量プロテオグリカン、例えばルミカンおよびシンデカンの、細胞内メッセンジャーRNAを測定するために、ノーザンブロット法を用いる。
【0036】
1.年齢層の異なるドナーに由来するヒト皮膚線維芽細胞の調査
線維芽細胞培養物において、プロテオグリカンであるルミカンのメッセンジャーRNA量を、ノーザンブロット法によって測定した。結果を、18SリボソームRNA量に対するルミカンメッセンジャーRNA量の比として表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
表1のデータから明らかなように、ルミカンのメッセンジャーRNA量は、線維芽細胞ドナーの年齢が上がるにつれて減少している。このことは、皮膚細胞におけるルミカン合成速度が、老化皮膚外観に顕著な影響を及ぼすことを意味し得る。
【0039】
2.年齢層の異なるドナーに由来するヒトケラチノサイトの調査
ケラチノサイト培養物において、プロテオグリカンであるシンデカン−1のメッセンジャーRNA量を、ノーザンブロット法によって測定した。結果を、18SリボソームRNA量に対するシンデカン−1メッセンジャーRNA量の比として表2に示す。
【0040】
【表2】

【0041】
プロテオグリカンのシンデカン−1についての対応する試験においても、ケラチノサイトドナーの年齢が上がるにつれてメッセンジャーRNAが減少することが示され、該プロテオグリカンの合成が減少するに違いないと考えられる。このことも、プロテオグリカン合成速度が皮膚老化に顕著な影響を及ぼし得ることを示唆する。
【0042】
3.IGF−1による、MRC5線維芽細胞におけるルミカンmRNA量の刺激
MRC5線維芽細胞を、濃度の異なる増殖因子IGF−1(インスリン様増殖因子1、Sigma−Aldrich)と共にインキュベートして、細胞中のルミカンmRNA量刺激を調べた。ヒト線維芽細胞(MRC5線維芽細胞)中のプロテオグリカンであるルミカンのmRNA量を、ノーザンブロット法によって測定した。
【0043】
【表3】

結果から明らかなように、MRC5線維芽細胞培養物中のIGF−1は、ルミカンmRNA量を増加させる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトの皮膚、頭皮および/または粘膜を改善および/または保護するための美容的処置方法であって、プロテオグリカンを調節する少なくとも1種の物質を含有する製剤を局所適用することを含んで成る方法。
【請求項2】
ヒトの皮膚、頭皮および/または粘膜を改善および/または保護するための美容的処置方法であって、ルミカンおよび/またはシンデカンおよび/またはバーシカンおよび/またはデコリンおよび/またはグリピカンおよび/またはビグリカンを調節する少なくとも1種の物質を含有する製剤を局所適用することを含んで成る方法。
【請求項3】
ルミカンおよび/またはシンデカンおよび/またはバーシカンおよび/またはデコリンおよび/またはグリピカンおよび/またはビグリカンを調節する物質の使用であって、ヒトの皮膚、頭皮および/または粘膜を老化から保護する化粧用製剤を製造するための使用。
【請求項4】
ルミカンおよび/またはシンデカンおよび/またはバーシカンおよび/またはデコリンおよび/またはグリピカンおよび/またはビグリカンを調節する物質の使用であって、ヒトの皮膚、頭皮および/または粘膜を有害な環境的影響から保護する化粧用製剤を製造するための使用。
【請求項5】
ルミカンおよび/またはシンデカンおよび/またはバーシカンおよび/またはデコリンおよび/またはグリピカンおよび/またはビグリカンを調節する物質の使用であって、ヒトの皮膚、頭皮および/または粘膜をUV線損傷から保護する化粧用製剤を製造するための使用。
【請求項6】
ルミカンおよび/またはシンデカンおよび/またはバーシカンおよび/またはデコリンおよび/またはグリピカンおよび/またはビグリカンを調節する物質の使用であって、ヒトの皮膚、頭皮および/または粘膜を酸化的ストレスから保護する化粧用製剤を製造するための使用。
【請求項7】
ルミカンおよび/またはシンデカンおよび/またはバーシカンおよび/またはデコリンおよび/またはグリピカンおよび/またはビグリカンを調節する物質の使用であって、創傷治癒を改善する皮膚科用製剤を製造するための使用。
【請求項8】
ルミカンおよび/またはシンデカンおよび/またはバーシカンおよび/またはデコリンおよび/またはグリピカンおよび/またはビグリカンを調節する物質の使用であって、真皮/表皮接合部の機能を改善する化粧用製剤を製造するための使用。
【請求項9】
ルミカンおよび/またはシンデカンおよび/またはバーシカンおよび/またはデコリンおよび/またはグリピカンおよび/またはビグリカンを調節する物質の使用であって、脱毛、セルライトまたは酒さ処置用の皮膚科用製剤を製造するための使用。
【請求項10】
ルミカンおよび/またはシンデカンおよび/またはバーシカンおよび/またはデコリンおよび/またはグリピカンおよび/またはビグリカンを調節する物質が、植物抽出物、および/または微生物の抽出物、および/または植物由来の発酵生成物である請求項3〜9のいずれかに記載の使用。
【請求項11】
植物抽出物が、植物のPisum sativumおよび/またはVigna aconitifoliaから得られる請求項10に記載の使用。
【請求項12】
ルミカンおよび/またはシンデカンおよび/またはバーシカンおよび/またはデコリンおよび/またはグリピカンおよび/またはビグリカンを調節する物質が、マンニトールおよび/またはシクロデキストリンおよび/または酵母エキスおよび/またはコハク酸二ナトリウムを含有する請求項3〜9のいずれかに記載の使用。
【請求項13】
ルミカンおよび/またはシンデカンおよび/またはバーシカンおよび/またはデコリンおよび/またはグリピカンおよび/またはビグリカンを調節する物質が、フィトステロール、フィトエストロゲン、トリテルペン、トリテルペンサポニンおよびステロイドサポニン、ペプチド並びにフラボノイドおよびフラボノイド誘導体から成る群から選択される請求項3〜9のいずれかに記載の使用。
【請求項14】
ルミカンを調節するための増殖因子の使用。
【請求項15】
ルミカンを調節するためのIGF−1(インスリン様増殖因子−1)の使用。
【請求項16】
ヒトの皮膚、頭皮および/または粘膜を改善および/または保護するための美容的処置方法であって、ルミカンおよび/またはシンデカンおよび/またはバーシカンおよび/またはデコリンおよび/またはグリピカンおよび/またはビグリカンを調節する増殖因子を含有する製剤を局所適用することを含んで成る方法。
【請求項17】
ルミカンおよび/またはシンデカンおよび/またはバーシカンおよび/またはデコリンおよび/またはグリピカンおよび/またはビグリカンを調節する少なくとも1種の物質、UV保護因子および/または抗酸化剤を含有する化粧用製剤。

【公表番号】特表2006−510679(P2006−510679A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−559662(P2004−559662)
【出願日】平成15年9月27日(2003.9.27)
【国際出願番号】PCT/EP2003/010767
【国際公開番号】WO2004/054532
【国際公開日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(502021660)コグニス・フランス・ソシエテ・パール・アクシオン・サンプリフィエ (21)
【氏名又は名称原語表記】COGNIS FRANCE, S.A.S
【Fターム(参考)】