説明

皮膚外用剤組成物

【課題】トラネキサム酸類を含有することによって生ずるべたつきやきしみを抑制し、みずみずしくなじみの良い使用感を有する液状皮膚外用剤組成物の提供。
【解決手段】(A)トラネキサム酸又はその誘導体から選択される少なくとも1種と、(B)0.01〜0.5質量%のキサンタンガムと、(C)グリセリンとを含有し、30℃における粘度が500mPa・s以下であり、キサンタンガム以外の増粘成分を実質的に含有しない、又はキサンタンガム以外の増粘成分(D)を特定の条件で含有する液状皮膚外用剤組成物。該組成物は、(E)親水性両親媒性物質及び/又は(F)液状油分を更に含有するのが好ましく、肌へのなじみやみずみずしさを更に向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラネキサム酸類を含有し、なおかつべたつきやきしみを生ずることなくみずみずしくなじみの良い使用感を有する皮膚外用剤組成物に関する。より詳細には、トラネキサム酸類とキサンタンガムとを含有し、組成物全体の粘度を所定値以下に調整した液状皮膚外用剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
トラネキサム酸類は抗プラスミン作用を有し、肌荒れ改善や美白等のための有効成分として様々な化粧品に配合されている。また、トラネキサム酸類を他の物質と組み合わせることによる相乗効果や新たな効果も見出されており、例えば特許文献1には、トラネキサム酸、アルブチン、トリメチルグリシン及びビタミンEから選択される2種以上の成分を含有する皮膚外用剤が記載され、当該皮膚外用剤が様々な発生要因による肌のくすみを防止できるとされている。
【0003】
さらに特許文献2には、シラカンバ等のカバノキ属植物の樹液とトラネキサム酸とを含有する皮膚化粧料が優れた消炎効果を有することが記載されている。また特許文献3及び4には、カルボキシビニルポリマー又はアルキル変性カルボキシビニルポリマーを含有する組成物にトラネキサム酸を中和剤又は乳化安定剤として配合することにより、保湿効果が高く肌へのなじみがよいゲル組成物が得られる又は界面活性剤を追加配合することなく長期間安定な乳化組成物が得られることが記載されている。
【0004】
一方、皮膚外用剤組成物にあっては、皮膚に適用した際にべたつきやきしみを生じないことが望まれており、特許文献5には、トラネキサム酸等の美白成分を含有する皮膚外用剤において、ゲル化能を有する親水性化合物を水又は水性成分に溶解、冷却してゲル化させた後、所定粒径に粉砕して得た増粘剤を用いることにより、従来の増粘剤(多糖類、親水性合成高分子、粘度鉱物)によって生じ得るべたつきやきしみ感がない、あるいは粘度低下をきたすことなく美白成分を高配合できることが記載されている。また、特許文献6では、代表的な保湿成分であるグリセリンの配合によって生ずるべたつきを抑制するために、エリスリトール、トラネキサム酸及び皮膚被覆性成分の組み合わせを配合することが記載されているが、トラネキサム酸によるべたつきやきしみに関しては何ら検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−265323号公報
【特許文献2】特開平9−291012号公報
【特許文献3】特開平9−124878号公報
【特許文献4】特開平9−263510号公報
【特許文献5】特開2001−342125号公報
【特許文献6】特開平7−215839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
化粧水等の低粘度液状組成物にトラネキサム酸類を配合した場合、当該組成物を皮膚に適用した際にべたつきやきしみを生じるという問題があり、この現象は約0.5質量%を越える量のトラネキサム酸類を含有したときに特に顕著である。従来技術では、例えば特許文献4及び5に記載されているように、界面活性剤、多糖類や粘度鉱物等の増粘剤による高粘度組成物のべたつきやきしみは認識されていたものの、トラネキサム酸類配合に起因する低粘度組成物のべたつきやきしみに着目した研究は行われていなかった。
【0007】
よって本発明の目的は、トラネキサム酸類を含有することによって生ずるべたつきやきしみを抑制し、みずみずしくなじみの良い使用感を有する液状皮膚外用剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決すべく、本発明者等は鋭意研究を行った結果、トラネキサム酸類を含有する組成物に所定量のキサンタンガムを配合し、キサンタンガム以外の増粘成分を実質的に含有しない、又はキサンタンガム以外の増粘成分を特定の条件で含有し、組成物全体の粘度を所定値以下に調整することにより、トラネキサム酸類に起因するべたつきやきしみを抑制でき、安定性に優れ、みずみずしくなじみの良い使用感を有する液状皮膚外用剤組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち本発明は、(A)トラネキサム酸又はその誘導体から選択される少なくとも1種と、(B)0.01〜0.5質量%のキサンタンガムと、(C)グリセリンとを含有し、30℃における粘度が500mPa・s以下であり、キサンタンガム以外の増粘成分を実質的に含有しない、又はキサンタンガム以外の増粘成分を特定の条件下で含有することを特徴とする液状皮膚外用剤組成物を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の液状皮膚外用剤組成物は、トラネキサム酸類、さらにはグリセリンを含有していても、それらに起因するべたつきやきしみが所定量のキサンタンガムによって抑制され、みずみずしい使用感で肌へのなじみも良好である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の組成物は、トラネキサム酸類から選択される少なくとも1種(成分A)を含有している。トラネキサム酸(トランス−4−アミノメチルシクロヘキサン−1−カルボン酸)及びその誘導体は、抗プラスミン剤として一般に用いられており、化粧品等の皮膚外用剤用途では、安全性が特に高い成分として知られている。
【0012】
本発明の組成物に含有されるトラネキサム酸類としては、従来から化粧品等に使用されているものでよく、特に限定されないが、例えば、トラネキサム酸以外にもその誘導体として、トラネキサム酸塩(マグネシウム塩,カルシウム塩,ナトリウム塩,カリウム塩等の金属塩類、リン酸塩、塩酸塩,臭化水素塩、硫酸塩等)、トラネキサム酸のエステル類(ビタミンA酸エステル、ビタミンAエステル、ビタミンEエステル、ビタミンCエステル、ビタミンDエステル等のビタミンエステル類、フェニルエステル類、ハイドロキノンエステル類、ゲンチシン酸エステル類等)、トラネキサム酸のアミド類(メチルアミド又はその塩等)、トラネキサム酸の二量体等がある。
【0013】
本発明の組成物におけるトラネキサム酸類の含有量としては、特に限定されないが、0.6質量%以上含有した場合には、トラネキサム酸類に基づく肌荒れ改善や美白作用に優れるのみならず、本発明による有利な効果が顕著になる。従って本発明の組成物は、好ましくは0.6〜5.0質量%、より好ましくは0.6〜3.0質量%のトラネキサム酸類を含有する。
【0014】
本発明の組成物は、トラネキサム酸類に加えてキサンタンガム(成分B)を0.01〜0.5質量%含有している。キサンタンガムは、ブドウ糖などの炭化水素をキサントモナス属菌を用いて発酵させて得られる天然ガム質であり、酸性多糖類の一種として知られる。化粧品においても、水溶性増粘成分あるいは保湿成分等として従来から使用されている。
本発明の組成物に含有されるキサンタンガムは、従来から化粧品等に使用されているものでよく、特に限定されないが、例えば、ケルコ社製のケルトロール(商品名)、三栄源エフ・エフ・アイ社製のサンエース(商品名)、又は日清製油社製のノムコートZZ(商品名)等といった市販品をそのまま使用できる。
【0015】
本発明の組成物におけるキサンタンガムの含有量としては、0.01〜0.5質量%、好ましくは0.03〜0.3質量%である。含有量が0.01質量%より少ないと、トラネキサム酸によって生ずるべたつきやきしみを改善することができず、0.5質量%を越えて含有すると、キサンタンガムによるぬめりやべたつきを生じてしまう。
【0016】
本発明の組成物は、さらに保湿成分であるグリセリン(成分C)を含有している。グリセリンを含有することにより皮膚に潤いを与え、肌荒れ改善効果が更に向上する。
本発明の組成物におけるグリセリンの配合量は特に限定されないが、一般的には0.1〜20質量%、好ましくは1〜10質量%程度とする。
【0017】
また本発明の組成物は、その粘度が500mPa・s以下であることを必須としている。粘度が500mPa・sを越えると、組成物の肌へのなじみが悪くなり、浸透感といった嗜好性の低下を生じてしまう。粘度の下限は、特に限定されないが、例えば10mPa・s以上等であってよい。
粘度はVDA型粘度計(芝浦システム株式会社 DIGITAL VISMETRON VDA)を用いて、ローターNo.1又はNo.2を使用し、回転数12rpm、1分間の条件で測定した。
【0018】
例えば、本発明の組成物が増粘成分としてキサンタンガムのみを含有する場合、キサンタンガムの含有量を本願特定の範囲内とすることにより500mPa・s以下の粘度が達成できる(下記実施例1〜4参照)。従って本発明の組成物は、キサンタンガム以外の他の増粘成分を実質的に含有しないものを含む。
ここで本明細書における「増粘成分」とは、水溶性増粘成分のみならず、脂溶性(水不溶性)増粘成分も包含するが、そのような脂溶性増粘成分は、適切な油分と組み合わされて増粘効果を発揮できる形態で組成物中に存在するものとする。一方、「実質的に含有しない」とは、前記のような増粘効果を発揮できる形態の増粘成分を含有しないことを意味する。
【0019】
しかしながら、本発明の組成物が他の増粘成分を含有することを排除するものではなく、組成物全体の粘度が500mPa・s以下となるという条件を満たす限り、所定量のキサンタンガムに加えて他の増粘成分(成分D)を特定の条件で含有してもよい。
【0020】
本発明の組成物に含有される他の増粘成分としては、従来から化粧品等に使用されているものでよく、特に限定されないが、例えば、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、ポリアクリルアミド、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコール、寒天、ポリアクリル酸ナトリウム、サクシノグルカン、デキストラン、マンナン、マルメロ、アルゲコロイド、ペクチン、ジェランガム、カラギーナン、ヒアルロン酸、ポリビニルアルコール、高重合度ポリエチレングリコール、ベントナイト、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ラポナイト、ヘクトライト、無水ケイ酸等の水溶性増粘成分、適切な油分と組み合わせた脂溶性増粘成分等がある。
【0021】
ここで本明細書における「特定の条件」とは、他の増粘成分としてカルビキシビニルポリマーを含有する場合、その含有量を組成物全質量に対して0.1質量%以下かつキサンタンガム含有量に対して500質量%(5倍量)以下とすることである。一方、カルボキシビニルポリマー以外の他の増粘成分を配合する場合は、その配合量は、組成物全体の粘度が500mPa・s以下となるという条件を満たす限り特に限定されない。
本条件を満たすことにより、キサンタンガムに加えて他の増粘成分を含有しても、べたつきやきしみがなく、みずみずしさや肌へのなじみが更に改善される。カルボキシビニルポリマーを配合する際、その含有量が組成物全体の0.1質量%を超えたり、あるいは0.1質量%以下であってもキサンタンガム含有量に対して5倍量を超えた場合は、却ってカルボキシビニルポリマーによるきしみやべたつきを生じてしまう。
【0022】
さらに本発明の組成物は、親水性両親媒性物質(成分E)を更に含有するのが好ましく、これを含有することにより組成物を適用した際の肌へのなじみを更に向上させることができる。また液状油分(成分F)を配合する際には可溶化剤または乳化剤としても作用する。
【0023】
本発明の組成物に含有される親水性両親媒性物質としては、従来から化粧品等に使用されているものでよく、特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレン脂肪酸エーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンコレステリルエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロールエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンフィトステロールエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリン、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸石鹸、N−アシルグルタミン酸塩、アシルタウリン塩、アシルアルキルタウリン塩、高級アルキル硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、N−アシルサルコシン酸塩、高級脂肪酸アミドスルホン酸塩、リン酸エステル塩、スルホコハク酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンメチルエーテルジメチコン等がある。
このうち特に、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、及びポリオキシエチレンフィトステロールエーテルから選択される少なくとも1種を用いることが特に好ましい。
【0024】
本発明の組成物における親水性両親媒性物質の含有量としては、特に限定されないが、好ましくは0.01〜1.0質量%、より好ましくは0.05〜0.3質量%である。含有量が0.01質量%より少ないと肌へのなじみを向上させるには不十分であり、1.0質量%を越えて含有すると却ってべたつきを生じる場合がある。
【0025】
また本発明の組成物は、常温で液状の油分(成分F)を更に含有するのが好ましく、これを配合することにより、組成物を適用した際の肌へのなじみやみずみずしさを更に向上させることができる。
本発明の組成物に配合される液状油分としては、従来から化粧品等に使用されているものでよく、特に限定されないが、例えば、油脂、脂肪酸、エステル油、炭化水素油、高級アルコール、シリコーン油等の従来から化粧品に使用されているものを使用してよい。具体例として以下のものが挙げられる。
【0026】
油脂としては、例えば、アマニ油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、オリーブ油、アボガド油、サザンカ油、ヒマシ油、サフラワー油、キョウニン油、シナモン油、ホホバ油、ブドウ油、ヒマワリ油、アーモンド油、ナタネ油、ゴマ油、小麦胚芽油、米胚芽油、米ヌカ油、綿実油、大豆油、落花生油、茶実油、月見草油等がある。
脂肪酸としては、例えば、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ペンタデカン酸、ヘプタデカン酸、ノナデカン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等がある。
【0027】
エステル油としては、例えば、テトラオクタン酸ペンタエリスリット、オクタン酸セチル、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸オクチル、イソステアリン酸イソプロピル、イソパルミチン酸オクチル、オレイン酸イソデシル、エチルヘキサン酸セチル等がある。
【0028】
炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、スクワラン、スクワレン、パラフィン、イソパラフィン、オクタン、デカン、ドデカン、イソドデカン、ヘキサデカン、イソヘキサデカン等がある。
高級アルコールとしては、例えば、オクチルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール等がある。
シリコーン油としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等の鎖状シリコーン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状シリコーン等がある。
【0029】
なお、液状油分を含有する場合には、前記した親水性両親媒性物質及び/又は乳化能を有する高分子等を共存させることが好ましく、これらを共存させることにより液状油分の可溶化安定性又は乳化安定性が向上する。親水性両親媒性物質により乳化を行う場合は、油滴の平均乳化粒子径を小さく(例えば300nm以下)することにより、安定性に優れ、使用感も更にみずみずしく良好になる。
【0030】
本発明の組成物における液状油分の配合量としては、特に限定されないが、好ましくは0.01〜5.0質量%、より好ましくは0.05〜2.0質量%である。含有量が0.01質量%より少ないと、みずみずしさを向上させるには不十分であり、5.0質量%を越えて含有すると、その安定配合のために添加すべき親水性両親媒性物質及び/又は乳化能を有する高分子等の量が増加してべたつきを生じる場合がある。
【0031】
本発明の組成物は、特に限定されないが、例えば、化粧水(透明、半透明、白濁を含む)、エッセンス(美容液)、シート状マスクの含浸液、二層タイプ美容液等の液状化粧料として使用するのに適している。更に、トラネキサム酸類を含有しているため、肌荒れ改善又は美白を目的とした化粧料として特に有効である。
【0032】
本発明の組成物は、前記した成分以外に、化粧料等に一般に使用されている他の成分を含有していてもよい。
他の成分としては、特に限定されないが、例えば、(グリセリン以外の)保湿剤、アルコール類、親油性両親媒性物質、半固形油分、固形油分、薬剤、緩衝剤、香料、防腐剤、色剤、金属イオン封鎖剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、粉末等がある。
【実施例】
【0033】
以下、具体例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、これらは本発明の技術的範囲を何ら限定するものではない。なお、以下の実施例、比較例及び処方例における処方量は全て質量%である。
【0034】
(実施例1〜7、比較例1〜9)
下記の表1から表4に掲げた組成を有する組成物を調製した。これらの組成物について、30℃における粘度を測定し、液状油分を乳化物として含有するものについては分散された油滴の平均乳化粒子径を測定した。結果を表1から表4に示す。
次に、これらの組成物を用いて20名の専門パネルによる実使用試験を行った。試験項目は、みずみずしさ、肌へのなじみ、乾き際のべたつきのなさ、乾き際のきしみのなさである。各試験項目について、以下の評価点基準に基づいて各専門パネルが評価し、その評価点の合計によって4段階にランク付けした。ランク付けした結果を表1から表4に併せて示す。
【0035】
評価点基準:
5点:非常に優れている。
4点:優れている。
3点:普通。
2点:劣っている。
1点:非常に劣っている。
評価ランク:
◎:合計点が80点以上
○:合計点が60点以上80点未満
△:合計点が40点以上60点未満
×:合計点が40点未満
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【0038】
【表3】

【0039】
【表4】

【0040】
本発明の組成物の必須成分であるトラネキサム酸類及びキサンタンガムは、従来から化粧品に用いられている物質であるため、例えば、前記特許文献1、2及び5には両者を含有する組成物が記載されている。しかしながら、特許文献1(表3)及び特許文献5(実施例12)に記載されているのはクリーム及びジェルという高粘度の組成物である。また、特許文献2(実施例11)には、両者を含有するエッセンスの例が記載されているが、本エッセンスはトラネキサム酸の含有量が0.5質量%であるためトラネキサム酸に起因するべたつきやきしみといった使用感に配慮する必要がなく、また0.3質量%のキサンタンガムに加えて0.2質量%のヒドロキシエチルセルロースナトリウムも含有しており、肌へのなじみやみずみずしさの点においては前記比較例3における水の一部をシラカンバ樹液に置換した組成物にほぼ相当すると考えられ、本願特定の範囲内の組成物とは異なるものである。一方、特許文献3及び4には、トラネキサム酸とカルボキシビニルポリマーまたはアルキル変性カルボキシビニルポリマーを含有する組成物が記載されているが、キサンタンガムを含有していないため、前記比較例5と同様にべたつきやきしみ及び肌へのなじみの点で劣っているものと考えられる。また、特許文献6(表3)には、グリセリン及びトラネキサム酸を高濃度で含有する組成物のべたつきが、グリセリンをエリスリトールに置換することによって改善されたとの実験結果が記載されているが、本発明は、所定量のキサンタンガムを配合することにより、グリセリン及びトラネキサム酸を含有し、エリスリトールを含有していなくても、べたつき及びきしみがない皮膚外用剤が得られることを初めて見出したものである。
【0041】
(処方例1)
化粧水:
配合成分 処方量(質量%)
トラネキサム酸 1.0
4−メトキシサリチル酸カリウム 2.0
グリセリン 8.0
ブチレングリコール 4.0
ヒアルロン酸 0.01
キサンタンガム 0.05
PEG/PPG−17/4ジメチルエーテル 3.0
PEG−13デシルテトラデシルエーテル−24 0.2
PEG−10メチルエーテルジメチコン 0.5
クエン酸 適量
クエン酸ナトリウム 適量
メタリン酸ナトリウム 適量
ピロ亜硫酸ナトリウム 適量
フェノキシエタノール 適量
香料 適量
イオン交換水 残余
【0042】
製造方法:
常法に従ってイオン交換水に水溶性成分を順次溶解し、水相を調製した。水不溶性成分は両親媒性成分と混合後に水相に添加し、化粧水を得た。
【0043】
(処方例2)
白濁化粧水:
配合成分 処方量(質量%)
トラネキサム酸 3.0
エチルビタミンC 1.5
グリチルリチン酸ジカリウム 0.05
グリセリン 1.0
ジプロピレングリコール 4.0
ポリエチレングリコール20000 1.0
エタノール 10.0
キサンタンガム 0.1
POE硬化ヒマシ油 0.3
ジイソステアリン酸ポリグリセリル 0.4
トリエチルヘキサン酸グリセリル 0.2
スクワラン 0.05
クエン酸 適量
クエン酸ナトリウム 適量
メタリン酸ナトリウム 適量
ピロ亜硫酸ナトリウム 適量
メチルパラベン 適量
香料 適量
染料 適量
イオン交換水 残余
【0044】
製造方法:
常法に従ってイオン交換水に水溶性成分を順次溶解し、水相を調製した。水不溶性成分は両親媒性成分と加熱混合後に水相に徐々に添加し、白濁化粧水を得た。
【0045】
(処方例3)
エッセンス:
配合成分 処方量(質量%)
トラネキサム酸メチルアミド塩酸塩 1.0
アスコルビン酸グルコシド 2.0
グリチルリチン酸ジカリウム 0.05
グリセリン 10.0
プロピレングリコール 5.0
マルチトール 3.0
キシリトール 2.0
アセチル化ヒアルロン酸 0.03
キサンタンガム 0.2
ヒドロキシエチルセルロース 0.05
(アクリル酸/アクリル酸アルキル(C10−30))コポリマー 0.05
メチルフェニルポリシロキサン 2.0
オクタン酸セチル 1.0
イソステアリルアルコール 1.0
クエン酸 適量
クエン酸ナトリウム 適量
エデト酸塩 適量
フェノキシエタノール 適量
香料 適量
イオン交換水 残余
【0046】
製造方法:
常法に従ってイオン交換水に水溶性成分を順次溶解し、水相を調製した。水不溶性成分は混合後に水相に徐々に添加し、ホモジナイザー処理を行い、エッセンスを得た。
【0047】
(処方例4)
エッセンス:
配合成分 処方量(質量%)
トラネキサム酸メチルアミド塩酸塩 2.5
4−メトキシサリチル酸カリウム 0.5
ニコチン酸アミド 4.0
酢酸トコフェロール 0.05
グリセリン 1.0
PEG/PPG−17/4ジメチルエーテル 5.0
ポリエチレングリコール1500 1.0
エリスリトール 1.0
トリメチルグリシン 2.5
エタノール 3.0
キサンタンガム 0.08
ポリアクリル酸ナトリウム 0.03
アルギン酸ナトリウム 0.02
POEフィトステロール 0.2
ジイソステアリン酸ポリグリセリル 0.1
トリへチルヘキサン酸グリセリル 0.1
ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル) 0.1
クエン酸 適量
クエン酸ナトリウム 適量
メタリン酸ナトリウム 適量
サリチル酸 適量
香料 適量
染料 適量
イオン交換水 残余
【0048】
製造方法:
常法に従ってイオン交換水に水溶性成分を順次溶解し、水相を調製した。水不溶性成分は両親媒性成分と加熱混合後に水相に徐々に添加し、エッセンスを得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)トラネキサム酸又はその誘導体から選択される少なくとも1種と、
(B)0.01〜0.5質量%のキサンタンガムと、
(C)グリセリンとを含有し、
30℃における粘度が500mPa・s以下であり、
前記キサンタンガム以外の増粘成分を実質的に含有しないことを特徴とする液状皮膚外用剤組成物。
【請求項2】
(A)トラネキサム酸又はその誘導体から選択される少なくとも1種と、
(B)0.01〜0.5質量%のキサンタンガムと、
(C)グリセリンと、
(D)キサンタンガム以外の増粘成分とを含有し、
30℃における粘度が500mPa・s以下であり、
前記キサンタンガム以外の増粘成分としてカルボキシビニルポリマーを含有する場合は、当該カルボキシビニルポリマーの含有量が、組成物全質量に対して0.1質量%以下かつキサンタンガム含有量に対して500質量%以下であることを特徴とする液状皮膚外用剤組成物。
【請求項3】
トラネキサム酸又はその誘導体の含有量が0.6〜5.0質量%であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
(E)親水性両親媒性物質を更に含有することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
(F)液状油分を更に含有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
肌荒れ改善又は美白を目的としていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。

【公開番号】特開2010−116392(P2010−116392A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234521(P2009−234521)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】