説明

皮膚外用剤

【課題】 掻痒および乾燥の改善に効果的で、使用感の優れた皮膚外用剤を提供する。
【解決手段】 (a)ヨモギエキスと(b)高濃度亜鉛含有酵母エキスと(c)ラクトフェリンとを含むことを特徴とする皮膚外用剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は皮膚外用剤、特に掻痒および乾燥の改善に効果的で使用感に優れた皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アトピー性皮膚炎等の皮膚疾患による掻痒に悩まされる患者は、かゆみや炎症を抑制するために、ステロイド剤や抗炎症剤等を使用してきた。しかしながら主な治療法である副腎皮質ホルモン等のステロイド剤は顕著な効果はあるが、その反面、患者によっては副作用を発現する可能性がある。ステロイド剤にみられる副作用としては、例えば皮膚の萎縮、多毛、潮紅、使用を中止したときのリバウンド現象等が知られている。このように皮膚疾患およびそれに起因する掻痒の治療に汎用されている既存のステロイド剤には副作用の危惧があるために、より副作用が少なく安全性が高い、安心して使うことのできる外用剤が切望されている。この中でも、天然抽出物を用いた皮膚にやさしい外用剤としては、ラン科植物のエビネ属に属するエビネの少なくとも1種の抽出物を含むもの(特許文献1)、ブドウ属植物およびイタドリ科植物から選ばれる少なくとも1種を含むもの(特許文献2)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−139676号公報
【特許文献2】特開2002−47193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記天然抽出物を配合した外用剤は、副作用がみられない点としては好ましいものであったが、掻痒を改善する皮膚外用剤としては、抗ヒスタミン、抗炎症、抗菌、保湿といった効果の点で不十分であった。
本発明は前記課題に鑑みなされたものであり、その目的は掻痒および乾燥の改善に効果的で、使用感の優れた皮膚外用剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために本発明者らが鋭意研究を行った結果、ヨモギエキス、高濃度亜鉛含有酵母エキス、ラクトフェリンを含む皮膚外用剤を使用することで、アトピー性皮膚炎等の皮膚疾患による掻痒やかさつき、ざらつき、乾燥、肌荒れからくる不快な症状を軽減し、保湿効果も得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明にかかる皮膚外用剤は、(a)ヨモギエキスと、(b)高濃度亜鉛含有酵母エキスと、(c)ラクトフェリンとを含むことを特徴とする。
前記皮膚外用剤を入浴剤として使用することが好適である。
前記入浴剤において、(a)ヨモギエキス、(b)高濃度亜鉛含有酵母エキス、(c)ラクトフェリンを、150L希釈用入浴剤中、純エキスとしてそれぞれ0.001〜1.0g含むことが好適である。
前記皮膚外用剤において、(a)ヨモギエキス、(b)高濃度亜鉛含有酵母エキス、(c)ラクトフェリンを、局所適用皮膚外用剤中、純エキスとしてそれぞれ0.001〜0.1%含むことが好適である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、(a)ヨモギエキスと(b)高濃度亜鉛含有酵母エキスと(c)ラクトフェリンとを配合することにより、掻痒の改善に効果的で使用感に優れているという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】試験菌としてCandida albicansを用いた抗菌試験における結果。(A−1)、(A−2)はそれぞれ、ラクトフェリンを入れた試験試料および溶媒のみの試験試料の結果で、(B−1)、(B−2)はそれぞれ、ヨモギエキス+高濃度亜鉛含有酵母エキス+ラクトフェリンを入れた試験試料および溶媒のみの試験試料の結果である。
【図2】試験例におけるパネラーによる各評価項目の評価結果についてまとめた図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
まず、本発明の皮膚外用剤は、掻痒および乾燥の改善に使用できるものである。掻痒の中でも、アトピー性皮膚炎、老人性掻痒症、皮膚乾燥症により引き起こされる掻痒に特に好適に使用することができる。
本発明にかかる皮膚外用剤は、(a)ヨモギエキス、(b)高濃度亜鉛含有酵母エキス、(c)ラクトフェリンを配合することにより、次のような優れた効果を発揮する。すなわち、IgE抗体産生抑制効果、ヒスタミン遊離抑制効果、抗菌効果を有し、掻痒やかさつきからくる不快を軽減し、保湿効果もあり、使用感にも優れている。
【0009】
本発明に使用する(a)ヨモギエキスは、キク科ヨモギ属に所属する植物である。この中でも、カワラヨモギ、チョウセンヨモギ、ヨモギ、モウコヨモギ、ヤマヨモギ等から得られるエキスを好適に使用することができる。本発明におけるヨモギエキスは、ヨモギの葉を常温または加温下にて抽出し、調製することにより得られる抽出液や希釈液を好適に使用することができる。本発明におけるヨモギエキスは、局所適用皮膚外用剤中、純エキスとして0.001〜0.1%配合することが好ましく、0.005〜0.05%配合することが特に好ましい。皮膚外用剤に配合するヨモギエキスの含有量が0.001%未満であると、十分なIgE抗体産生抑制効果およびヒスタミン遊離抑制効果が得られない。また、皮膚外用剤に配合するヨモギエキスの含有量が0.1%を超えて含有させても構わないが、本発明の効果の向上がそれほどみられないため好ましくない。
なお、本発明における純エキスの含有量は、ヨモギ等の抽出物の全エキスから、水分やアルコール等の抽出液など、添加した成分を差し引くことにより求めた。
【0010】
本発明に使用する(b)高濃度亜鉛含有酵母エキスは、亜鉛化合物を添加した培地を用いて酵母を培養し、抽出したものである。高濃度亜鉛含有酵母エキスにおける高濃度の亜鉛とは、酵母エキス中、亜鉛が0.02%前後含有しているものを指し、一般酵母エキスの約10倍の亜鉛を含有しているものである。なお、市販品としてイーストリキッド ZB(一丸ファルコス社製)として手に入れることができる。本発明における高濃度亜鉛含有酵母エキスは、局所適用皮膚外用剤中、純エキスとして0.001〜0.1%配合することが好ましく、0.005〜0.05%配合することが特に好ましい。皮膚外用剤に配合する高濃度亜鉛含有酵母エキスの含有量が0.001%未満であると、十分なIgE抗体産生抑制効果およびヒスタミン遊離抑制効果が得られない。また、皮膚外用剤に配合する高濃度亜鉛含有酵母エキスの含有量が0.1%を超えて含有させても構わないが、本発明の効果の向上がそれほどみられないため好ましくない。
【0011】
本発明に使用する(c)ラクトフェリンは、哺乳類の乳、涙、唾液等に含まれる非ヘム性の鉄結合性糖タンパク質である。本発明におけるラクトフェリンは、局所適用皮膚外用剤中、純エキスとして0.001〜0.1%配合することが好ましく、0.005〜0.05%配合することが特に好ましい。皮膚外用剤に配合するラクトフェリンの含有量が0.001%未満であると、十分なIgE抗体産生抑制効果および抗菌効果が得られない。また、皮膚外用剤に配合するラクトフェリンの含有量が0.1%を超えて含有させても構わないが、本発明の効果の向上がそれほどみられないため好ましくない。
【0012】
本発明の皮膚外用剤には、上記必須成分の他に、通常皮膚外用剤に使用されている原料を配合することができる。
【0013】
本発明の皮膚外用剤は、(a)ヨモギエキス、(b)高濃度亜鉛含有酵母エキス、(c)ラクトフェリンを必須成分とし、必要に応じて任意成分を加え、撹拌機にて均一に攪拌して得るなど、常法により製造することができる。本発明の皮膚外用剤の剤型は任意であり、溶液系、可溶化系、乳化系、粉末分散系、水−油二層系、水−油−粉末三層系、ローション、クリーム、ジェル、ミスト、スプレー、軟膏等、どのような剤型でも構わない。
【0014】
また、本発明にかかる皮膚外用剤は、入浴剤として使用することが好適である。本発明にかかる皮膚外用剤を入浴剤として使用することで、多くの皮膚疾患において発症面積が広い掻痒に悩まされている患者にも、全身投与の一形態として機能させることが可能になる。すなわち、老人性掻痒症、アトピー性皮膚炎等の皮膚疾患は、全身に発症する例も多く、塗布使用の外用剤では広い範囲への適用が困難なこともある。さらに老人、特に認知症を有する患者の場合には、外用剤の患者自身による局所適用が、より困難となることもある。このような場合にも、本発明にかかる皮膚外用剤を入浴剤として使用することにより、広範囲に、かつ患者自身や患者以外の家族、医療関係者による容易な適用が可能となる。さらに、本発明にかかる入浴剤の剤形も特に限定されず、粉体、顆粒、錠剤、液体、乳化状態等とすることができる。
【0015】
本発明にかかる皮膚外用剤を入浴剤として使用する場合、150L希釈用入浴剤中(a)ヨモギエキス、(b)高濃度亜鉛含有酵母エキス、(c)ラクトフェリンを純エキスとしてそれぞれ0.001〜1.0g含むことが好適であり、0.01〜0.1g含むことが特に好適である。入浴剤に配合する各成分の含有量が0.001g未満であると、十分なIgE抗体産生抑制効果およびヒスタミン遊離抑制効果および抗菌効果が得られない。また、皮膚外用剤に配合する各成分の含有量が1.0gを超えて含有させても構わないが、本発明の効果の向上がそれほどみられないため好ましくない。
【0016】
このようにして得た本発明の皮膚外用剤は、(a)ヨモギエキス、(b)高濃度亜鉛含有酵母エキス、(c)ラクトフェリンの配合により、IgE抗体産生抑制効果、ヒスタミン遊離抑制効果、抗菌効果を有し、掻痒や乾燥等からくる不快を軽減し、使用感に優れている。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明の技術範囲はこれら実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0017】
まず、本発明者らは、(a)ヨモギエキス、(b)高濃度亜鉛含有酵母エキス、(c)ラクトフェリンが皮膚疾患に効果的であることを確認するために、IgE抗体産生抑制試験、ヒスタミン遊離抑制試験、抗菌試験を行った。
以下の実施例では、(a)ヨモギエキス、(b)高濃度亜鉛含有酵母エキス、(c)ラクトフェリンは、それぞれ、ファルコレックス カワラヨモギエキス B、イーストリキッド ZB、ラクトフェリンS(すべて一丸ファルコス社製)を用いた。各製品の成分組成を以下に示す。
【0018】
・ファルコレックス カワラヨモギ B
エキス組成(%)
カワラヨモギ 0.50
ブチレングリコール 29.85
水 69.65
・イーストリキッド ZB
エキス組成(%)
高濃度亜鉛含有酵母(※) 1.4
ブチレングリコール 25.0
グリセリン 4.9
水 68.7
※:含有亜鉛は通常の酵母エキスにおける含有亜鉛の約10倍
・ラクトフェリン S
エキス組成(%)
ラクトフェリン 1.5
ブチレングリコール 20.0
エタノール 10.0
水 68.5
【0019】
IgE抗体産生抑制試験
(a)ヨモギエキス、(b)高濃度亜鉛含有酵母エキス、(c)ラクトフェリンのIgE産生抑制効果について試験を行い、検討を行った。アトピー性皮膚炎の患者は血中のIgE濃度が高値になる。したがって、IgE抗体の産生を抑制する物質は、抗アトピー性皮膚炎への適用が期待できる。
【0020】
・試験方法
下記表1に示す試験試料(単独の場合0.15ml、2成分の場合0.15ml×2=計0.3ml)をマウスの腹腔内投与し、24時間後オボアルブミン(Sigma社)10μgと水酸化アルミニウムゲル(Sigma社)0.3mL、塩化ナトリウム2.7mgを加え十分に混合し、マウス腹腔内に注射して免疫した。被験物質投与2週間後に、再度被験物質を同様に投与、さらに24時間後に抗原を同様に投与し追加免疫した。追加免疫から1週間後、採血を行い血清中のIgE抗体をELISA法にて定量した。1つの試験試料につき2匹のマウスを用い、1匹につき2回測定した。なお、対照としてはIgE産生を抑制しない生理食塩水を用いた。以下の式(数1)により、生理食塩水投与群と比較したIgE量相対値およびIgE産生抑制率を計算した。結果を表1に示す。
【0021】
(数1)
IgE量相対値=(試験試料投与群のIgE産生量)/(生理食塩水投与群のIgE産生量)×100
IgE産生抑制率=100−(IgE量相対値)
【0022】
【表1】

【0023】
表1より、ラクトフェリンはIgE抗体産生抑制効果が非常に高いことがわかる。また、ラクトフェリンにヨモギエキスを加えると、ラクトフェリン単独の抑制率をさらに強めていることがわかる。また、ラクトフェリンと高濃度亜鉛含有酵母エキスを混合すると、それぞれの抑制率の合計より抑制率が増大し、この2成分の混合は、相乗的にIgE抗体産生抑制効果を高めていることがわかる。
以上のことから、(a)ヨモギエキス、(b)高濃度亜鉛含有酵母エキス、(c)ラクトフェリンを含む組成物は、優れたIgE抗体産生抑制効果を得られることが見いだされた。
【0024】
ヒスタミン遊離抑制試験
次に、(a)ヨモギエキス、(b)高濃度亜鉛含有酵母エキス、(c)ラクトフェリンのヒスタミン遊離抑制効果について試験を行い、検討を行った。I型アレルギー反応では感作された肥満細胞や好塩基球からヒスタミン等の化学伝達物質が遊離することが知られている。したがって、ヒスタミン遊離反応を抑制する物質は抗アレルギー作用が期待できる。
【0025】
・試験試料の調製
まず、試料は、(a)ヨモギエキス、(b)高濃度亜鉛含有酵母エキス、(c)ラクトフェリンのそれぞれを単独で試験するために、3検体を調製した。単独の試料は、0.5μlずつとり、それぞれを精製水で10倍(精製水で5μlに)希釈、または50倍(精製水で25μlに)希釈し、試験試料を製造した。
その後、(a)と(b)の混合、(b)と(c)の混合、(a)と(c)の混合、(a)と(b)と(c)の混合した、4検体を調製した。混合検体は、単独の試験試料における各成分の効力に鑑み、(a)、(b)、(c)成分をそれぞれ0.5μl、2.5μl、2.5μlずつとり、各混合成分を精製水で25μlに希釈し、試験試料を製造した。
【0026】
・試験方法
ラットをエーテル麻酔下で脱血致死させ、皮膚を切除し、正中部の腹壁に小孔をあけて、腹腔内に約15mLの2%FCS(ウシ胎児血清、GIBCO社)を含むタイロード液(2%FT液)を注入し、軽く腹壁をマッサージして腹腔浸出細胞浮遊液を採取した。
このようにして得られた腹腔の浸出細胞浮遊液を4℃にて500rpmで5分間遠心分離し、沈殿する細胞を集めた。2%FT液2mLを加え軽く撹拌した細胞浮遊液を4℃にて500rpmで5分間遠心分離し、この操作を2回繰り返した。得られた肥満細胞は、2%FT液に約1.0×105cells/mLになるように浮遊させ、プレート上に細胞浮遊液120μLに前記した試験試料(対照では精製水)を添加し、37℃にて10分間静置した後、あらかじめ37℃に加温したヒスタミン遊離剤compound 48/80(Sigma社)(最終濃度1μg/ml)40μLを加えて37℃で15分間静置した。氷冷により反応を停止し、4℃にて100×gで10分間遠心分離した後、上清中のヒスタミン量を、Shore-phtaldialdehyde-methanol溶液25μLを加えて5分間静置後、3N HCl溶液25μLで反応を停止させ、反応終了10分後に5℃にて1900rpmで25分間遠心分離を行い、上清及び沈渣を得、その上清の蛍光は励起波長360nm、蛍光波長450nmで測定し、既知濃度のヒスタミン検量線から上清中ヒスタミン量を求めた。なお、1つの試験試料につき4プレートを用い、4プレートの平均値をヒスタミン量とした。また、肥満細胞に残存するヒスタミン量は、沈渣に2%FT液125μLを加え超音波処理したものをさらに冷凍保存し、翌日に上記と同様の方法で測定し、ヒスタミン遊離比及び抑制率を以下の式(数2)により求めた。結果を表2および表3に示す。
【0027】
(数2)
ヒスタミンの遊離比=(細胞から遊離されるヒスタミン量)/(細胞内の全ヒスタミン量)
ヒスタミンの遊離抑制率(%)=[1−(A−C)/(B−C)]×100
A:肥満細胞に試験試料を共存させヒスタミン遊離剤を加えたときのヒスタミンの遊離比
B:肥満細胞にヒスタミン遊離剤を加えたときのヒスタミンの遊離比
C:肥満細胞から自然に遊離されるヒスタミンの遊離比
【0028】
【表2】

【0029】
【表3】

【0030】
表2より、ヨモギエキスに高いヒスタミン遊離抑制効果がみられた。また、表3より、ヨモギエキスにラクトフェリンまたは高濃度亜鉛含有酵母エキスを混合すると、ヨモギエキス単独の抑制率(51.5%)を大幅に強めることがわかる。また、(a)〜(c)の3成分すべてを配合した組成物のヒスタミン遊離抑制率は80.5%であった。
以上の結果より、(a)ヨモギエキス、(b)高濃度亜鉛含有酵母エキス、(c)ラクトフェリンを組み合わせることにより、ヒスタミン遊離抑制効果をもつことが見いだされた。
【0031】
抗菌試験
次に、(a)ヨモギエキス、(b)高濃度亜鉛含有酵母エキス、(c)ラクトフェリンの抗菌効果について試験を行い、検討を行った。
【0032】
・試験試料の調製
まず、試料は、(a)ヨモギエキス、(b)高濃度亜鉛含有酵母エキス、(c)ラクトフェリンのそれぞれを単独で試験するために、3検体を調製した。各成分を精製水で8倍希釈液を作り、試験試料とした。
その後、(a)と(b)の混合、(b)と(c)の混合、(a)と(c)の混合、(a)と(b)と(c)の混合した、4検体を調製した。混合検体は、単独の試験試料における各成分の効力に鑑み、各混合成分を精製水で8倍希釈し、試験試料を製造した。
【0033】
・試験方法
液体培地;Brain Heart Infusion Broth(栄研)37gを精製水1000mLに溶かし、121℃、15分間加圧減菌した。この培地10mLに試験菌1白菌耳を加え37℃で18時間培養し、これを同培地で100倍に希釈したものを試験菌液とした。さらに、上記した試験試料0.5mlの入った試験管にこの試験菌液0.5mlを加えて、37℃で18時間培養した後、菌数の計測を行った。
【0034】
試験菌としてCandida albicansを用いたときの菌数の結果を以下の表4に示す。また、ラクトフェリンを入れた試験試料および溶媒のみの試験試料の結果を撮影した写真を、それぞれ図1(A−1)、図1(A−2)に示す。また、(a)ヨモギエキス+(b)高濃度亜鉛含有酵母エキス+(c)ラクトフェリンを入れた試験試料および溶媒のみの試験試料の結果を撮影した写真を、それぞれ図1(B−1)、図1(B−2)に示す。なお、Candida albicansは、皮膚疾患であるカンジダ症(カンジダ性間擦疹、カンジダ性指間糜爛症等)の原因となる菌である。したがって、Candida albicansを抑制する物質は皮膚疾患を緩快させ、抗カンジダ症が期待できる。このCandida属の菌は薬剤に対する耐性が高く、アトピー性皮膚炎等の皮膚疾患患者の皮膚上では菌叢が優位となり、独特の強いかゆみにより症状を悪化させることも多い。このため、Candida菌は対処が難しい皮膚疾患の原因の一種である。
【0035】
【表4】

【0036】
表4および図1より、Candida albicansに関して、ラクトフェリンに抗菌効果があることがわかった。また、本発明の(a)ヨモギエキス、(b)高濃度亜鉛含有酵母エキス、(c)ラクトフェリンを含む皮膚外用剤にも、抗菌効果が認められた。同様に、アトピー性皮膚炎の皮膚病変部より高頻度に検出されるStaphylococcus aureus(別名黄色ブドウ球菌)に関しても、ラクトフェリンに抗菌効果が認められた。
以上の結果より、(a)ヨモギエキス、(b)高濃度亜鉛含有酵母エキス、(c)ラクトフェリンを組み合わせることにより、抗菌効果をもつことが見いだされた。
【0037】
次に、表5に示す処方で、本発明にかかる皮膚外用剤の試験例として入浴剤を製造した。試験例の入浴剤製造方法は、まず、水19.0%、ブチレングリコール7.6%、グリセリン0.3%、カワラヨモギ、高濃度亜鉛含有酵母を撹拌機にて撹拌した。さらに、水66.6%を加え撹拌した後、ラクトフェリンおよび表5の残余の成分を加え撹拌し、液体入浴剤を得た。なお、カワラヨモギ、高濃度亜鉛含有酵母、ラクトフェリンの配合量はいずれも純エキスとしての質量である。
一方、比較例の入浴剤は、混合釜に無水硫酸ナトリウム60%、海塩40%を入れ、撹拌して入浴剤を製造した。
【0038】
【表5】

【0039】
アトピー性皮膚炎、老人性掻痒症等の皮膚疾患患者である専門パネラー40名(男性8名、女性12名、1歳〜75歳)に、得られた各入浴剤30mLを38〜40℃の浴湯150Lに投入し、よくかき混ぜてもらった。この浴湯に1日1回約10分間、20日間連続して入浴してもらった。以下に試験例(20名)および比較例(20名)で用いた評価項目および評価基準について説明する。
【0040】
・評価基準
(1)かゆみ
著しく改善した ・・・3
やや改善した ・・・2
変わらない ・・・1
悪化した ・・・0
(2)ざらつき
著しく改善した ・・・3
やや改善した ・・・2
変わらない ・・・1
悪化した ・・・0
(3)かさつき
著しく改善した ・・・3
やや改善した ・・・2
変わらない ・・・1
悪化した ・・・0
(4)しっとり感
しっとりした ・・・3
変わらない ・・・1
(5)すべすべ感
すべすべになった ・・・3
変わらない ・・・1
(6)あたたまり感
よくあたたまった ・・・3
ややあたたまった ・・・2
変わらない ・・・1
【0041】
・評価方法
パネラーには各評価項目について上記評価基準で評価してもらい、その平均評価点を以下のように表し、表6に示す。また、試験例における実際の評価結果を図2に示す。
平均評価点 2.3〜3.0 : ◎
2.0〜2.3未満: ○
1.8〜2.0未満: △
1.8未満 : ×
【0042】
【表6】

【0043】
表6より、(a)ヨモギエキス、(b)高濃度亜鉛含有酵母エキス、(c)ラクトフェリンを配合した試験例において、いずれの評価も比較例より優れたものであることがわかる。試験例では、評価項目(2)ざらつきにおいて、平均評価点で△であったものの、悪化したという評価はなく、図2より、7割ほどのパネラーが著しく改善もしくはやや改善と回答したことがわかる。
以上のことから、(a)ヨモギエキス、(b)高濃度亜鉛含有酵母エキス、(c)ラクトフェリンを配合することにより、掻痒やかさつきからくる不快を軽減し、保湿効果もあり、使用感にも優れた皮膚外用剤を得られることが明らかとなった。
【0044】
以下に、本発明にかかる皮膚外用剤の処方例を挙げるが、本発明の技術範囲はこれにより何ら限定されるものではない。得られた皮膚外用剤は、いずれも掻痒や乾燥肌の改善に効果的で、使用感に優れるものであった。なお、*1、*2、*3には、ファルコレックス カワラヨモギエキス B、イーストリキッド ZB、ラクトフェリンSを使用した。
【0045】
処方例1 入浴剤(エッセンスタイプ)
配合量(%)
カワラヨモギエキス(*1) 20.00
高濃度亜鉛含有酵母エキス(*2) 6.66
ラクトフェリン(*3) 6.66
1,3−ブチレングリコール 50.00
エタノール 16.66
ヒアルロン酸ナトリウム(2) 0.01
サクシニルアテロコラーゲン液 0.01
処方例1において、(a)ヨモギエキス、(b)高濃度亜鉛含有酵母エキス、(c)ラクトフェリンは純エキスとしてそれぞれ0.10%、0.09%、0.10%含まれていた。
【0046】
処方例2 入浴剤(ミルクタイプ)
配合量(%)
カワラヨモギエキス(*1) 20.00
高濃度亜鉛含有酵母エキス(*2) 6.66
ラクトフェリン(*3) 6.66
ミネラルオイル 32.95
サフラワー油 4.00
POE(20)セチルエーテル 2.60
パルミチン酸ソルビタン 2.80
テトラオレイン酸ソルベス 0.30
ジプロピレングリコール 4.00
ジグリセリン 6.50
メチルパラベン 0.25
エデト酸二ナトリウム 0.25
ポリエチレングリコール200 0.10
グリチルリチン酸ジカリウム 0.10
ヒアルロン酸ナトリウム(2) 0.01
サクシニルアテロコラーゲン液 0.01
香料 0.30
純水 12.51
処方例2において、(a)ヨモギエキス、(b)高濃度亜鉛含有酵母エキス、(c)ラクトフェリンは純エキスとしてそれぞれ0.10%、0.09%、0.10%含まれていた。
【0047】
処方例3 ローション
配合量(%)
カワラヨモギエキス(*1) 1.80
高濃度亜鉛含有酵母エキス(*2) 0.60
ラクトフェリン(*3) 0.60
アルコール 10.00
POE硬化ヒマシ油 0.20
グリセリン 5.00
ジプロピレングリコール 3.00
ヒアルロン酸ナトリウム 0.05
サクシニルアテロコラーゲン液 0.20
メチルパラベン 0.05
純水 78.50
処方例3において、(a)ヨモギエキス、(b)高濃度亜鉛含有酵母エキス、(c)ラクトフェリンは純エキスとしてそれぞれ0.009%、0.008%、0.009%含まれていた。
【0048】
処方例4 乳液
配合量(%)
カワラヨモギエキス(*1) 1.80
高濃度亜鉛含有酵母エキス(*2) 0.60
ラクトフェリン(*3) 0.60
流動パラフィン 6.50
ステアリン酸 1.50
モノステアリン酸グリセリン 1.00
セトステアリルアルコール 0.50
POEソルビタンモノステアレート 0.36
POEソルビタンモノオレエート 1.26
POEセチルエーテル 0.18
ヤシ油脂肪酸ソルビタン 0.50
ジメチコン 0.50
ブチルパラベン 0.05
グリセリン 2.00
ヒアルロン酸ナトリウム 0.01
サクシニルアテロコラーゲン液 0.20
純水 82.44
処方例4において、(a)ヨモギエキス、(b)高濃度亜鉛含有酵母エキス、(c)ラクトフェリンは純エキスとしてそれぞれ0.009%、0.008%、0.009%含まれていた。
【0049】
処方例5 クリーム
配合量(%)
カワラヨモギエキス(*1) 1.80
高濃度亜鉛含有酵母エキス(*2) 0.60
ラクトフェリン(*3) 0.60
固形パラフィン 11.00
流動パラフィン 10.00
セタノール 5.00
白色ワセリン 5.00
ステアリン酸 3.00
ブチルパラベン 0.05
トリエタノールアミン 1.35
メチルパラベン 0.05
ヒアルロン酸ナトリウム 0.01
サクシニルアテロコラーゲン液 0.20
純水 61.34
処方例5において、(a)ヨモギエキス、(b)高濃度亜鉛含有酵母エキス、(c)ラクトフェリンは純エキスとしてそれぞれ0.009%、0.008%、0.009%含まれていた。
【0050】
処方例6 ボディソープ
配合量(%)
カワラヨモギエキス(*1) 1.80
高濃度亜鉛含有酵母エキス(*2) 0.60
ラクトフェリン(*3) 0.60
水酸化カリウム 5.54
ラウリン酸 11.00
ミリスチン酸 4.00
ステアリン酸 4.00
エデト酸二ナトリウム 0.085
メチルパラベン 0.20
塩化ナトリウム 0.70
ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド 3.00
ラウロリルメチルアラニンナトリウム 1.00
ラウラミドプロピルベタイン 1.00
ラウリル硫酸トリエタノールアミン 4.50
ジステアリン酸グリコール 1.80
グリセリン 1.80
ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.50
香料 0.60
水 57.275
処方例6において、(a)ヨモギエキス、(b)高濃度亜鉛含有酵母エキス、(c)ラクトフェリンは純エキスとしてそれぞれ0.009%、0.008%、0.009%含まれていた。
【0051】
処方例7 軟膏
配合量(%)
カワラヨモギエキス(*1) 3.6
高濃度亜鉛含有酵母エキス(*2) 1.2
ラクトフェリン(*3) 1.2
白色ワセリン 25.0
ステアリルアルコール 20.0
プロピレングリコール 12.0
POE硬化ヒマシ油 4.0
モノステアリン酸グリセリン 1.0
プロピルパラベン 0.1
メチルパラベン 0.1
純水 31.8
処方例7において、(a)ヨモギエキス、(b)高濃度亜鉛含有酵母エキス、(c)ラクトフェリンは純エキスとしてそれぞれ0.018%、0.017%、0.018%含まれていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ヨモギエキスと、
(b)高濃度亜鉛含有酵母エキスと、
(c)ラクトフェリンとを含むことを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項2】
請求項1に記載の皮膚外用剤からなる入浴剤。
【請求項3】
請求項2に記載の入浴剤において、(a)ヨモギエキス、(b)高濃度亜鉛含有酵母エキス、(c)ラクトフェリンを、150L希釈用入浴剤中、純エキスとしてそれぞれ0.001〜1.0g含むことを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項4】
請求項1に記載の皮膚外用剤において、(a)ヨモギエキス、(b)高濃度亜鉛含有酵母エキス、(c)ラクトフェリンを、外用剤中、純エキスとしてそれぞれ0.001〜0.1%含むことを特徴とする局所適用皮膚外用剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−209043(P2010−209043A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59635(P2009−59635)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(595017931)株式会社クロイスターズ (4)
【Fターム(参考)】