説明

皮膚老化防止用皮膚外用剤組成物

本発明は、皮膚老化防止用外用剤組成物に関し、より詳細には、カテキン類及びフラボノール類のうち1種以上を有効成分として含有することによって、表皮−真皮境界部の分解抑制及び生成促進効果または保護効果を有する皮膚外用剤組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚老化防止用皮膚外用剤組成物に関し、より詳細には、緑茶抽出物であるカテキン類及びフラボノール類のうち1種以上を有効成分として含有することによって、優秀な表皮−真皮境界部の分解抑制及び生成促進効果または保護効果を有する皮膚外用剤組成物に関する。また、前記緑茶抽出物とデアニンとを併用する場合、老化防止に対する相乗効果を得ることができる。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、人体の一次防御膜であって、体内の諸器官を温度及び湿度変化や紫外線及び公害物質など外部環境の刺激から保護し、体温調節などの生体恒常性維持に重要な役目をしている。しかし、外部から受ける過度な物理的化学的刺激、紫外線、ストレス及び栄養欠乏などは、皮膚の正常機能を低下させ、弾力損失、角質化及びしわ生成などの皮膚老化現象を促進させるようになり、特に紫外線によって表皮−真皮境界部が大きく損傷を受ける。
【0003】
人間の皮膚で老化による変化を観察した結果、多重化及び断裂などの表皮−真皮境界部の構造変化が紫外線露出部皮膚で20代後半から既に発生していた。これにより、人間の紫外線露出部皮膚の表皮では、ゼラチナーゼ(gelatinase;MMP−2、MMP−9)の生成が誘導され、表皮−真皮境界部の傷害に関与するという推測が可能である。さらに、紫外線Bの長期照射で誘導されたシワモデルマウスを使用して研究した結果、紫外線Bの照射によって表皮で生成されたゼラチナーゼが表皮−真皮境界部の損傷、真皮の損傷及びしわの形成を引き起こす可能性があることを明らかにした。但し、紫外線をあまり受けない非露出部皮膚では、このような多重化及び断裂などの変化が高齢でも大部分観察されなかった。
【0004】
ゼラチナーゼ(MMP−2、MMP−9)は、表皮−真皮境界部の構成成分である4型コラーゲン、7型コラーゲン及びその他の細胞外基質成分を分解する酵素である。ゼラチンザイモグラフィ(Gelatin zymography)及び酵素免疫法(ELISA)で解釈した結果、MMP−2とMMP−9酵素が露出部表皮の中で検出された。皮膚中のゼラチナーゼ活性は、額の凍結皮膚では表皮基底層と有棘層の付近に存在した。さらに、顔面などの紫外線露出部皮膚の表皮でも、ゼラチナーゼが検出された。したがって、紫外線が表皮基底細胞でのゼラチナーゼ生成を誘導し、その一部が真皮境界部の破壊に作用し、残りが表皮中に留まり、表皮まで到逹するものとして思われた。
【0005】
マウスに紫外線を長期照射して製作したシワモデルにおいて、しわの形成機作について検討すれば、紫外線Bを長期照射した皮膚では、ゼラチナーゼ活性が表皮全層で検出された。表皮−真皮境界部の傷害は、紫外線Bの照射5週目で観察され始め、7週目及び10週目でその程度が高くなった。10週目には、真皮境界部の断裂と一部での多重化が観察された。真皮乳頭部のコラーゲン繊維を観察すれば、紫外線Bの長期照射によって繊維密度の低下が観察された。したがって、誘導されたゼラチナーゼが表皮−真皮境界部の傷害と乳頭真皮のコラーゲン分解に関与する可能性が示唆された。
【0006】
表皮−真皮境界部が損傷されれば、境界部の扁平化、多重化及び断裂などが発生してしわが生成され、皮膚が垂れ、容易に傷が生じる可能性が高くなり、本然の障壁(barrier)機能が喪失されて、外部環境の汚染物質を表皮−真皮境界部で濾過しないので、容易に有害物質が真皮まで浸透する可能性が高くなって、皮膚が損傷されやすいものと推定される。損傷された表皮−真皮境界部を回復させたり、元気な状態に維持するためには、まず、その構成成分が確かに維持されることができるようにしなければならない。年齢が増加するにつれて、生合成が減少すると知られた成分は、4型コラーゲン、7型コラーゲン及びラミニン10/11であり、変化のないものは、ラミニン5であり、生合成が増加するものは、分解に関わる酵素であるゼラチナーゼ(MMP−2及びMMP−9)である(LavkerなどJ. Invest. Derm. 1979, 73:59-65, PouliotなどExp. Dermatol. 2002, 11:387-397)。
【0007】
このような紫外線や外部ストレスによる皮膚老化現象を防止し、さらに元気で且つ弾力ある皮膚を維持するために、従来、各種動物、植物及び微生物などから得た生理活性物質が強化された化粧品を使用することによって、皮膚の固有機能を維持させ、皮膚細胞を活性化させて、皮膚老化を効果的に抑制するための努力があった。
【非特許文献1】Lavker et. al. J. Invest. Derm. 1979, 73:59-65
【非特許文献2】Pouliot et. al. Exp. Dermatol. 2002, 11:387-397
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これより、本発明者らは、皮膚老化に影響を及ぼす様々な要因を効果的にコントロールする方法を探索したところ、緑茶の構成成分であるカテキン類及びフラボノール類のうち1種以上を含有する皮膚外用剤組成物を使用する場合、自然老化と光老化により発生する表皮−真皮境界部の変性、断裂及び多重化などの変化を防止したり回復させることができることを知見した。すなわち、緑茶抽出物であるカテキン類またはフラボノール類の表皮−真皮境界部の分解抑制及び生成促進作用は、表皮と真皮の結合力を強化させることができるので、皮膚老化防止用化粧料及び医薬組成物に有用に使用されることができることを確認した。
【0009】
また、前記緑茶抽出物成分にデアニンを混合処方する場合、緑茶抽出物とデアニンを低濃度で処理しても、高い抗老化効能を示すと共に、皮膚副作用を誘発しないことを知見し、本発明を完成するに至った。
【0010】
したがって、本発明の目的は、優秀な老化防止効果を示す皮膚外用剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明では、カテキン類及びフラボノール類のうち1種以上を有効成分として含有する皮膚老化防止用皮膚外用剤組成物を提供する。
【0012】
また、本発明は、有効成分として前記緑茶抽出物以外にデアニン(theanine)をさらに含む皮膚老化防止用皮膚外用剤組成物を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明による皮膚外用剤組成物は、緑茶の構成成分であるカテキン類及びフラボノール類のうち1種以上を有効成分として含有することによって、ゼラチナーゼ(MMP−2、MMP−9)の生合成を減少させ、4型コラーゲン、7型コラーゲン及びラミニン10/11の生合成を増加させ、表皮−真皮境界部の分解を抑制し、生成を促進させることによって、表皮−真皮境界部を保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[発明を実施するための最良の形態]
本発明による皮膚外用剤組成物は、緑茶カテキン類及びフラボノール類のうち1種以上を有効成分として含有することを特徴とする。
【0015】
本発明で使用するカテキン類は、緑茶から抽出したものであって、エピガロカテキンガレート(EGCG)、ガロカテキンガレート(GCG)、エピカテキンガレート(ECG)、カテキンガレート(CG)、エピガロカテキン(EGC)、ガロカテキン(GC)、(−)エピカテキン(EC)、(+)エピカテキン(EC)、(−)カテキン(CA)及び(+)カテキン(CA)を含み、下記化学式1〜化学式4で表示されるエピガロカテキンガレート(EGCG)、ガロカテキンガレート(GCG)、エピカテキンガレート(ECG)及びカテキンガレート(CG)を使用することが好ましい。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【0016】
また、本発明で使用するフラボノール類は、緑茶から抽出したものであって、ケルセチン(quercetin)、カエンフェロール(kaemferol)及びミリセチン(myricetin)などがあり、好ましくは、カエンフェロール及びミリセチンであり、さらに好ましくは、ミリセチンである。
【0017】
本発明による外用剤組成物は、前記有効成分を組成物の全体重量に対して0.001〜10重量%含有し、好ましくは、0.01〜5重量%含有する。0.001重量%未満なら、有効な効果を期待することが難しく、10重量%超過なら、剤型化が難しいからである。
【0018】
また、本発明は、有効成分として、前記緑茶抽出物以外にデアニンをさらに含む皮膚外用剤組成物を提供する。
【0019】
デアニンは、緑茶の小味を出すアミノ酸成分中の1つであって、これは、カフェインによって誘発される興奮作用を抑制させる効能があり、実際に人が食べた時に気楽で且つ安定した状態で現われるα波の出現増加が観察されたと言われる(Nippon Nogeikagaku Kaishi, 1998, 72(2):153-157)。本発明に使用するデアニンは、緑茶から抽出したL−型(form)または化学的に合成されたL−デアニン、D−デアニン及びDL−デアニンのうちいずれも可能であり、その他の異なる製法でも可能であるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
本発明による皮膚外用剤組成物は、前記緑茶カテキン類及びフラボノール類のうち1種以上の緑茶抽出物とデアニンを一緒に使用する場合、各成分を低濃度で使用しても、しわ、弾力などの症状を全般的に効果的に改善することができる。具体的に、前記組成物においてカテキン類及びフラボノール類のうち1種以上の緑茶抽出物の含量は、生体外(in vitro)実験及び生体内(in vivo)実験を根拠にして組成物の全体重量に対して0.0004〜0.025重量%が好ましい。この時、含量が0.0004重量%未満なら、活性成分として作用を期待しにくいし、0.025重量%を超過すれば、症状改善効果がむしろ減少する。
【0021】
また、前記デアニンの含量は、生体外(in vitro)実験及び生体内(in vivo)実験を根拠にして組成物の全体重量に対して0.008〜2.5重量%が好ましい。この時、含量が0.008重量%未満なら、活性成分として作用を期待しにくいし、2.5重量%を超過すれば、症状改善効果がむしろ減少する。
【0022】
また、本発明による皮膚外用剤組成物は、前記緑茶抽出物及びデアニンを次の一定成分比、すなわち、前記緑茶抽出物0.0004〜0.025重量%を含有する時、カテキン対デアニンは、1:20〜1:100で含有する場合、皮膚老化改善効果にさらに優れている。
【0023】
本発明による皮膚外用剤組成物は、コラーゲン合成促進、皮膚弾力改善及び皮膚しわ改善を通じて皮膚老化を防止または改善することが特徴である。
【0024】
また、本発明による皮膚外用剤組成物は、ペルオキシソーム増殖体活性化受容体アルファ(PPAR−α)を活性化し、これにより、腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)を抑制し、MMP−1の生合成を抑制することによって、皮膚老化を抑制する効果を有する。
【0025】
ペルオキシソーム(Peroxisome)は、高脂血症、糖尿病及び肥満などを誘発する代謝機能異常の原因になる細胞内の小器官の1つであって、長い間細胞機能上において微々たる役目をするものとして思われて来たが、最近の多くの研究を通じて細胞増殖/分化の調節、炎症媒介体の調節などにおいて重要な役目を担当し、また、酸素、葡萄糖、脂質及びホルモンの代謝にも幅広い影響を有するものと報告されている。脂質代謝と葡萄糖代謝を通じて、ペルオキシソームは、インシュリン敏感性だけでなく、細胞膜と肥満細胞(adipocyte)形成に影響を与え、酸化的ストレスに対する影響を通じて、老化と腫瘍形成(tumorigenesis)でも重要な役目をするものと知られている(J Cutan Med Sirg 5(3):231-43, 2001, J Cutan Med Sirg 5(4):315-22, 2001)。
【0026】
このような部分に対する去る10余年間の集中的研究は、ペルオキシソーム増殖体活性化受容体(peroxisome proliferator-activated receptors(PPARs)、以下、'PPAR'と言う)という核ホルモン受容体がこれら病の薬理学的接近の良い標的になるという証拠を提示した。最近のPPARに対する研究、特に、亜型(subtype)中の1つであるPPAR−αに対する研究は、これらが皮膚の表皮で角質形成細胞の分化促進/増殖抑制、脂質代謝を通じた皮膚障壁形成促進及び炎症の抑制において重要な機能をしていることを示唆しており、PPAR−αの紫外線による炎症媒介体の生成抑制と紅斑生成抑制(JID117(6):1430-6, 2001)が知られている。
【0027】
本発明者らは、これらPPARsの生理(biology)に対する概略的な情報とPPAR−αの皮膚での効能と作用機作、特に皮膚老化との関連性などについて考察し、活性を誘導することができるリガンドを探したところ、本発明の皮膚外用剤組成物を使用する場合、自然老化と光老化によって発生する炎症を抑制することによって、皮膚の老化症状を防止したり回復させることができることを知見した。すなわち、本発明の外用剤組成物がPPAR−αの活性化を通じた炎症抑制機作で真皮を分解する酵素であるマトリックスメタロプロテアーゼ−1(Matrix metalloproteinase−1)の発現を抑制することができることを明らかにした。
【0028】
本発明の外用剤組成物は、その剤型において特に限定されず、例えば、柔軟化粧水、栄養化粧水、マッサージクリーム、栄養クリーム、パック、ゼルまたは皮膚粘着タイプ化粧料の剤型を有する化粧料組成物であることができ、また、ローション、軟膏、ゲル、クリーム、パッチまたは噴霧剤のような経皮投与型剤型であることができる。
【0029】
また、各剤型の外用剤組成物において、上記した必須成分以外の他の成分は、その他の外用剤の剤型または使用目的などによって当業者が困難性なしに適宜選定して配合することができる。
【0030】
[発明の実施のための形態]
以下、実施例及び試験例により本発明の構成及び作用効果をさらに具体的に説明する。しかし、これらの実施例は、本発明を説明するためのもので、本発明がこれらの実施例に限定されるわけではない。
【0031】
[参考例1]緑茶抽出物1の製造
緑茶の乾燥した葉100gに10倍のエタノールを入れ、12−15時間常温で抽出した後、濾過紙に濾過した。その濾液を50℃で減圧濃縮して製造した。
【0032】
[参考例2]緑茶抽出物2の製造
緑茶の乾燥した葉100gに10倍の蒸溜水を入れ、12−15時間常温で抽出した後、濾過紙に濾過した。その濾液を50℃で減圧濃縮して製造した。
【0033】
[試験例1]紫外線によるゼラチナーゼA(MMP−9)とゼラチナーゼB(MMP−2)の生合成抑制効能測定
人体角質形成細胞を104個の濃度で24孔平板培養器に培養し、24時間後に紫外線Bを30mJ/cm2で照射した後、各試験物質を10ppm含む培地に交替した。培養2日目に上澄液を収穫し、ゼラチンゼルを利用したザイモグラフィ(zymography)をした後、生成されたMMP−2とMMP−9の量をデンシトメータで測定して定量した。その結果は、紫外線対照群を100にする比較値として算出し、下記表1に示した。
【0034】
【表1】

【0035】
表1から、本発明で使用する有効成分であるミリセチン、エピガロカテキンガレート(EGCG)、ガロカテキンガレート(GCG)、エピカテキンガレート(ECG)、カテキンガレート(CG)、緑茶カテキン抽出物及び緑茶抽出物が皮膚基質である4型コラーゲンと7型コラーゲンを分解する酵素であるMMP−2とMMP−9の生合成を減少させ、表皮−真皮境界部の分解を防止することができる成分であることを確認することができた。
【0036】
[試験例2]皮膚細胞の4型コラーゲン生合成効能測定
人体角質形成細胞を5x104個の濃度で24孔平板培養器に培養した後、各試験物質を10ppm含む培地に交替した。培養24時間後、上澄液を収穫し、ドットブロット(Dot Blot)方法を使用して生成された4型コラーゲンの量を定量した。その結果は、対照群を100にする比較値として算出し、下記表2に示した。
【0037】
【表2】

【0038】
表2から、本発明で使用する有効成分であるミリセチン、エピガロカテキンガレート(EGCG)、ガロカテキンガレート(GCG)、エピカテキンガレート(ECG)、カテキンガレート(CG)、緑茶カテキン抽出物及び緑茶抽出物が4型コラーゲン生合成を増加させることを確認することができた。
【0039】
[試験例3]皮膚細胞の7型コラーゲン生合成効能測定
人体繊維芽細胞を104個の濃度で24孔平板培養器に培養した後、各試験物質を10ppm含む培地に交替した。培養24時間後、上澄液を収穫し、ドットブロット(Dot Blot)方法を使用して生成された7型コラーゲンの量を定量した。その結果は、対照群を100にして比較値を表3に示した。
【0040】
【表3】

【0041】
表3から、本発明で使用する有効成分であるミリセチン、エピガロカテキンガレート(EGCG)、ガロカテキンガレート(GCG)、エピカテキンガレート(ECG)、カテキンガレート(CG)、緑茶カテキン抽出物及び緑茶抽出物が7型コラーゲン生合成を増加させることが分かった。
【0042】
[試験例4]皮膚細胞のラミニン10/11生合成効能測定
人体角質形成細胞を5×104個の濃度で24孔平板培養器に培養した後、各試験物質を10ppm含む培地に交替した。培養24時間後、上澄液を収穫し、ウェストンブロット(Western Blot)方法を使用して生成されたラミニン10/11の量を定量した。その結果は、対照群を100にする比較値として算出し、下記表4に示した。
【0043】
【表4】

【0044】
表4から、本発明で使用する有効成分であるミリセチン、エピガロカテキンガレート(EGCG)、ガロカテキンガレート(GCG)、エピカテキンガレート(ECG)、カテキンガレート(CG)、緑茶カテキン抽出物及び緑茶抽出物がラミニン10/11生合成を増加させることを確認することができた。
【0045】
[試験例5]無毛マウスで表皮−真皮境界部の変化測定
本発明の組成物によって紫外線による表皮−真皮境界部の変化を確認するために、表5のように栄養クリームの形態で実施例1〜9と比較例1を製造して、無毛マウスの背中の一部に2週間の間に1週に5回の割合で塗布した後、12週間の間には1週に紫外線を3回照射しながら実施例1〜9と比較例1を5回塗布した後、生検して皮膚真皮境界部の変化を電子顕微鏡を利用して測定した。
【0046】
【表5】

【0047】
その結果、紫外線を照射しながら実施例1−9の化粧料を塗布した場合、比較例に比べて表皮−真皮境界部の変形、分裂、断離及び多重化症状がほとんど生じないことを観察することができ、このような結果から、本発明で使用する有効成分であるミリセチン、エピガロカテキンガレート(EGCG)、ガロカテキンガレート(GCG)、エピカテキンガレート(ECG)、カテキンガレート(CG)、緑茶カテキン抽出物及び緑茶抽出物が皮膚のしわを減少させ、弾力を強化させることができることを確認することができ、その結果を下記表6に示した。
【0048】
特に、ミリセチン単独よりは、ミリセチンにエピガロカテキンガレート(EGCG)、ガロカテキンガレート(GCG)、エピカテキンガレート(ECG)、カテキンガレート(CG)、緑茶カテキン抽出物及び緑茶抽出物を一緒に使用する場合に、効果が良く現われ、また、ミリセチンを高濃度で単独に使用することよりは、低濃度でカテキン類と適切に混合して使用することが好ましい。
【0049】
【表6】

【0050】
[試験例6]皮膚細胞のコラーゲン生合成効能測定
人体繊維芽細胞を104個の濃度で48孔平板培養器に培養した後、下記表7の試験物質0.001μM、0.01μM、0.1μM、0.5μM及び2μMを含む培地(デアニンは1、10、100μM)に交替した。培養48時間後、上澄液を収穫し(harvest)、ELISA(Takara MK101)方法を使用して生成されたプロコラーゲンの量を定量した。その結果は、何も処理しない対照群を100にして比較値を表7に示した。
【0051】
【表7】

【0052】
上記表7から、カテキンまたはデアニンは、低濃度でもコラーゲン生合成を増加させることが分かった。
【0053】
また、デアニンのコラーゲン生合成に関する相乗現象を見るために、上記4種類のカテキンの濃度にそれぞれデアニン10μMをさらに処理した時の結果を表8に示した。
【0054】
【表8】

【0055】
上記表8からデアニン10μMに対してカテキン最適濃度は、0.1〜0.5μMであることから、カテキン対デアニンの最適含量比は、1:20〜1:100であることを確認することができた。
【0056】
[試験例7]人間でのしわ改善効果
下記表9の比較例2〜7及び実施例10〜13の組成で製造した栄養クリームに対してしわ改善効果を確認するために、次のように評価した。30代女性100名をそれぞれ比較例2〜7及び実施例10〜13で10名ずつ10グループに分けて毎日1回8週間塗布するようにした後、シリコーンを利用してレプリカを作ってしわの状態をしわ測定器(visiometer, SV600, Courage+Khazakael ectronic GmbH, Germany)で測定し、画像分析した。その結果は、下記表10に示した。下記表10の値は、塗布8週後のそれぞれのパラメータ値から塗布前のパラメータ値を差し引いた平均を示した。
【0057】
【表9】

【0058】
【表10】

【0059】
上記表10のように、カテキンとデアニンを一定成分比で全て含有して製造した実施例10〜13の外用剤組成物が皮膚しわ改善効果に優れていることが分かった。
【0060】
[試験例8]人体で皮膚弾力改善測定
上記表9の組成で製造した栄養クリームの皮膚弾力改善効果を測定した。温度24〜26℃、湿度75%条件で30歳以上の元気な女性100名を10個グループに分けて、各グループに上記比較例2〜7及び実施例10〜13の栄養クリームを毎日2回ずつ12週間顔面に塗布した後、皮膚弾力測定器(Cutometer SEM 575, C+K Electronic Co., Germany)を利用して皮膚弾力を測定した。その結果は、表11に示した。表11の結果値は、皮膚弾力測定器(Cutometer SEM 575)のR8(R8(左側)−R8(右側))値で記載したが、R8値は、皮膚粘弾性(viscoelasticity)の性質を示す。
【0061】
これとは別に、試験を終了した時点に試験対象者にとってアンケート紙を作成するようにして、機器的な評価と同時に主観的な効能評価をも実施した。その結果は、下記表12に示した。
【0062】
【表11】

【0063】
【表12】

【0064】
上記表11から明らかなように、低濃度カテキン及びデアニンを含有する実施例10〜13の組成物を塗布した群では、比較例を塗布した群に比べて皮膚弾力性がさらに増加した。
【0065】
一方、アンケート調査により、本発明による組成物である実施例10〜13を塗布した場合、皮膚弾力性が改善されることを確認することができた。
【0066】
[試験例9]皮膚細胞分化促進/増殖抑制及び脂質生合成促進と抗炎症の役目をするPPAR−α(Peroxisome Proliferator Activated Receptor-alpha)活性化試験
猿の腎臓上皮細胞株であるCV−1細胞(ATCC CCL 70)をチャコール(charcoal)/デキストラン(dextran)処理された10%牛胎児血清を含むDMEM培地に継代培養し、フェノールレッド(phenol red)のエストロゲン(estrogen)による効果を除去するために、フェノールレッド無処理(phenol red-free)培地を使用した。プラスミドは、一般的な培養条件でも発現されるユニバーサルプローモーター(universal promoter)後方にPPAR-α遺伝子を有するものと、リガンド結合型のPPAR−αが結合して活性化されるPPRE(PPARs Response Element)をプローモーターとして有し、後にレポーターとして役目をするホタル(firefly)ルシフェラーゼ(luciferase)遺伝子を有するもの、そして参照物質(reference)として使用されるユニバーサルプローモーターにレニラルシフェラーゼ(Renilla luciferase)遺伝子が結合されたプラスミドが使用された。
【0067】
CV−1細胞を5×104の濃度で24孔平板培養器に敷設し、24時間培養した後、上記3つの種類のプラスミド遺伝子を一時的注入(transient transfection)した。24時間培養した後、1xPBS(Phosphate Buffered Saline)で洗浄し、リガンド候補物質を濃度別で処理して24時間培養した後、1xPBSで洗浄し、1xPLB(Passive Lysis Buffer)で細胞を壊した後、Dual−LuciferaseR Reporter Assay System kitを使用してサンプルと参照物質のルシフェラーゼ活性を測定した。
【0068】
本実験で、陽性対照群は、PPAR−αのリガンドのうち最も強力なものとして知られたWy−14、643を使用し、陰性対照群は、試料を溶解する時に使用したエタノールと無処理群を1.0にして比較値を下表13に示した。
【0069】
【表13】

【0070】
上記結果から、多様な緑茶の構成成分のうち緑茶抽出物1、緑茶抽出物2、カテキン抽出物1、カテキン抽出物2、ガロカテキンガレート((−)GCG)、デオブロミン、ケルセチンの場合、有意な程度のPPAR−α活性化傾向を示した。(−)EGCG、(−)ECG、(−)CG、(+)C、没食子酸、カフェイン、カエンフェロール、テオフィリン、デアニン、キナ酸及びミリセチン(myricetin)がその次に活性化させることが分かる。
【0071】
[試験例10]紫外線による腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)の生合成抑制効能測定
人体角質形成細胞を105個の濃度で12孔平板培養器に培養し、紫外線Bを30mJ/cm2で照射した後、各試験物質を10μM(抽出物の場合は10ppm)含む培地に交替した。培養6〜24時間後、細胞を収穫し、ELISA(Pharmingen 555212)方法を使用して生成された腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)の量を定量した。陽性対照群としてはWy−14,643を使用した。その結果は、紫外線対照群を100にして比較値を表14に示した。
【0072】
【表14】

【0073】
上記表14から、緑茶抽出物、カテキン抽出物及び各緑茶単一成分は、紫外線による腫瘍壊死因子アルファの生合成を減少させ、これにより、紫外線から発生し得る皮膚炎症、皮膚基質物質の減少、弾力低下及びしわ形成などを効果的に予防または改善することができることが分かった。
【0074】
[試験例11]紫外線によるタイプIコルラゲナゼ(MMP−1)の生合成抑制効能測定1
新生児表皮から分離した人体繊維芽細胞を104個の濃度で48孔平板培養器に培養し、24時間後に紫外線Aを15J/cm2で照射した後、腫瘍壊死因子アルファに対する抗体を1ug/ml濃度で添加した。培養2日目に上澄液を収穫し、ELISA(APbiotech RPN2610)方法を使用して生成されたタイプIコルラゲナゼの量を定量した。その結果は、何らの処理もしない対照群を100にした比較値を表15に示した。
【0075】
【表15】

【0076】
上記表15から、紫外線Aと炎症媒介因子であるTNF−αの処理時にタイプIコルラゲナゼの生合成が増加することを確認することができ、紫外線によるタイプIコルラゲナゼの増加は、TNF−αに対する抗体を処理時に減少することが分かる。すなわち紫外線Aによって炎症媒介因子であるTNF−αが増加し、これによりタイプIコルラゲナゼが増加し、中間炎症媒介因子の遮断時にタイプIコルラゲナゼの生合成が減少することが分かる。
【0077】
新生児繊維芽細胞にPPAR−α活性化剤である下記の試験物質を処理時にタイプIコルラゲナゼの生合成が減少し、これは、さらに炎症媒介因子であるTNF−α処理時に元の状態に回復することを確認した。
【0078】
実験方法を詳しく説明すれば、新生児表皮から分離した人体繊維芽細胞を104個の濃度で48孔平板培養器に培養し、24時間後に紫外線Aを15J/cm2で照射した後、それぞれの試験物質10μMまたは10ppmずつを含有する培地に交替した後、TNF−α10ng/mlずつを加えた。培養2日目、上澄液を収穫し、ELISA(AP biotech RPN2610)方法を使用して生成されたタイプIコルラゲナゼの量を定量した。陽性対照群としては、Wy−14、643とレチノイン酸(Retinoic acid;RA)を使用し、その結果は、紫外線照射群を陰性対照群として100にした比較値を表16及び図1に示した。
【0079】
【表16】

【0080】
上記表16及び図1から、緑茶抽出物及び緑茶個個成分は、紫外線によるタイプIコルラゲナゼの生合成を減少させ、これは、PPAR−αを活性化させて炎症媒介因子の生合成減少に起因することが分かった。
【0081】
以下、本発明の皮膚老化防止用皮膚外用剤組成物の具体的な剤型例を記載する。しかし、本発明による皮膚外用剤組成物が下記例に限定されるものではない。
【0082】
[剤型例1]柔軟化粧水(スキンローション)
【0083】
【表17】

【0084】
[剤型例2]栄養化粧水(ミルクローション)
【0085】
【表18】

【0086】
[剤型例3]栄養クリーム
【0087】
【表19】

【0088】
[剤型例4]マッサージクリーム
【0089】
【表20】

【0090】
[剤型例5]パック
【0091】
【表21】

【0092】
[剤型例6]柔軟化粧水(スキンローション)
【0093】
【表22】

【0094】
[剤型例7]栄養化粧水(ミルクローション)
【0095】
【表23】

【0096】
[剤型例8]栄養クリーム
【0097】
【表24】

【0098】
[剤型例9]マッサージクリーム
【表25】

【0099】
[剤型例10]パック
【0100】
【表26】

【0101】
[剤型例11]柔軟化粧水(スキンローション)
【0102】
【表27】

【0103】
[剤型例12]栄養化粧水(ミルクローション)
【0104】
【表28】

【0105】
[剤型例13]栄養クリーム
【0106】
【表29】

【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】図1は、各試験物質のMMP−1生合成量を測定した結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテキン類及びフラボノール類のうち1種以上を有効成分として含有することを特徴とする皮膚老化防止用皮膚外用剤組成物。
【請求項2】
前記カテキン類は、(−)EGCG(エピガロカテキンガレート)、(−)GCG(ガロカテキンガレート)、(−)ECG(エピカテキンガレート)、(−)CG(カテキンガレート)、(−)EGC(エピガロカテキン)、(−)GC(ガロカテキン)、(−)EC(エピカテキン)、(+)EC(エピカテキン)、(−)CA(カテキン)、及び(+)CA(カテキン)よりなる群から選択されるものであることを特徴とする請求項1に記載の皮膚外用剤組成物。
【請求項3】
前記フラボノール類は、ケルセチン、カエンフェロール及びミリセチンよりなる群から選択されるものであることを特徴とする請求項1に記載の皮膚外用剤組成物。
【請求項4】
前記有効成分は、組成物の全体重量に対して0.001〜10重量%含有されることを特徴とする請求項1に記載の皮膚外用剤組成物。
【請求項5】
有効成分としてデアニンをさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の皮膚外用剤組成物。
【請求項6】
前記カテキン類及びフラボノール類のうち1種以上は、組成物の全体重量に対して0.004〜0.025重量%含有され、前記デアニンは、組成物の全体重量に対して0.008〜2.5重量%含有され、
前記カテキン類及びフラボノール類のうち1種以上:デアニンの含量比は、1:20〜1:100であることを特徴とする請求項5に記載の皮膚外用剤組成物。
【請求項7】
前記組成物は、コラーゲン生合成促進用であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の皮膚外用剤組成物。
【請求項8】
前記組成物は、しわ改善用であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の皮膚外用剤組成物。
【請求項9】
前記組成物は、皮膚弾力改善用であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の皮膚外用剤組成物。
【請求項10】
前記組成物は、ペルオキシソーム増殖体活性化受容体アルファ(PPAR−α)活性化用であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の皮膚外用剤組成物。
【請求項11】
前記組成物は、炎症が抑制されるものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の皮膚外用剤組成物。
【請求項12】
前記組成物は、MMP−1の発現が抑制されるものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の皮膚外用剤組成物。
【請求項13】
前記組成物は、腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)を抑制するものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の皮膚外用剤組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2009−507826(P2009−507826A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529922(P2008−529922)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【国際出願番号】PCT/KR2006/003571
【国際公開番号】WO2007/029982
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(503327691)株式會社アモーレパシフィック (73)
【住所又は居所原語表記】181, Hankang−ro 2−ka, Yongsan−ku, Seoul 140−777 Republic of Korea
【Fターム(参考)】