説明

監視カメラ装置及び監視カメラの表示方法

【課題】 監視機能を損なうことなく、カメラの画像からプライバシーを守ることができる監視カメラ装置を提供する。
【解決手段】 360度のパン回転及び90度を超えるチルト回転が可能な監視カメラとその制御装置とを備える監視カメラ装置において、監視カメラが、画像に映るプライバシーゾーンをマスキング50するマスクデータを保持し、このデータに従って、画像の一部をマスキングするように構成している。画像の一部を隠すだけであるから、監視機能を損なわずに、プライバシーを守ることができる。また、この装置では、マスキングデータを監視カメラが保持しているため、迅速な対応が可能である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、360度の監視域を持つ監視カメラと、その画像の表示方法に関し、特に、プライバシー保護のために画像の一部をマスキングして表示できるようにしたものである。
【0002】
【従来の技術】従来、カメラとカメラの回転台とをドーム型のハウジングに収めた監視カメラが市販されている。この監視カメラは、回転台の動作により、水平方向のカメラの回転(パン)と垂直方向のカメラの回転(チルト)とを合わせて行うことができるため、複合カメラと呼ばれている。パン方向には、360度のエンドレスの回転が可能であり、また、チルト方向には0度から90度、即ち、水平から垂直の方向までの回転が可能である。この複合カメラは、公共施設の天井などに設置され、コントローラの操作によって、所望の方角を撮影することができる。また、追尾している被写体が真下を通る場合でも、図15に示すように、カメラ10が真下に向いた瞬間に、レンズを中心に180度回転し、そのまま追尾を続けることが可能であり、監視域の端から端まで映像を映し出すことができる。
【0003】図13では、複合カメラ11を制御するコントローラ12と、複合カメラ11の映像を表示するモニタ13とが、同軸ケーブル16で複合カメラ11に接続されている状態を示している。コントローラ12は、操作部として、ジョイステック14と、テンキー15とを備えている。
【0004】この複合カメラ11は、例えば、入口の方向や出口の方向、窓の方向など、複数のカメラ位置をIDを付してコントローラ12にプリセットすることができる。プリセット後は、コントローラ12のテンキー15からカメラ位置のIDを入力するだけで、プリセットした方向にカメラを向かせることができる。
【0005】また、コントローラ12のジョイステック14は、カメラの移動速度を制御する場合に操作する。ジョイステック14を傾けると、図14に示すように、カメラは、ジョイステック14の縦軸方向の成分に比例する速度でチルト方向に回転し、また、横軸方向の成分に比例する速度でパン方向に回転する。操作者は、モニタ13を見ながら、回転するカメラが所望の方向を映し出したとき、ジョイステック14を中立位置に戻して、チルト方向及びパン方向の回転を停止させる。
【0006】また、こうしたカメラを、公共の場所の監視用に設置する場合には、近隣の民間の家などが画面に表示されないように、カメラの回転角度を制限したり、その家の方向を撮影したときの画像全体が真っ黒になるように画像処理する機能が付加されており、それによりプライバシー保護が図られている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の監視カメラにおけるプライバシー保護の方法では、撮影方向の制限や画像全体の暗転により、保護すべき領域以外の画像も見えなくなり、監視機能の低下を余儀なくされるという問題点がある。
【0008】本発明の発明者等のグループでは、パン方向に360度のエンドレス回転を行い、チルト方向に180度の回転が可能な新しい複合カメラを開発した。この複合カメラでは、移動方向の自由度が増したことにより、広い範囲を機能的に監視することができるが、こうした機能を減殺すること無く、プライバシー保護を図る方法が求められている。
【0009】本発明は、こうした課題を解決するものであり、監視機能を損なうことなく、カメラの画像からプライバシーを守ることができる監視カメラ装置と、その画像の表示方法とを提供することを目的としている。
【0010】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明では、パン回転及びチルト回転が可能な監視カメラとその制御装置とを備える監視カメラ装置において、監視カメラが、画像に映るプライバシーゾーンをマスキングするマスクデータを保持し、このデータに従って、画像の一部をマスキングするように構成している。
【0011】また、本発明の監視カメラの画像表示方法では、画像の一部に映るプライバシーゾーンをマスクでマスキングして表示するようにしている。
【0012】そのため、画像の一部を隠すだけであるから、監視機能を損なわずに、プライバシーを守ることができる。
【0013】また、この装置では、マスキングデータを監視カメラが保持しているため、迅速な対応が可能である。
【0014】
【発明の実施の形態】(第1の実施形態)本発明の実施形態における複合カメラは、図9の側断面図及び図10の平面図に示すように、円筒形のカメラベース107と半球状のカメラカバーとから成るハウジング内に、監視用のカメラ102と、カメラ102を直接保持するチルト回転台105と、360度のエンドレス回転が可能なパン回転台103と、パン回転台103に立設された一対の支柱113と、この支柱113にチルト回転台105を軸支するチルト回転軸106と、ハウジング内への電源の供給や電気信号の入出力のための接点として作用するスリップリング112とを備えており、その他に図示を省略しているが、パン回転台103やチルト回転台104の回転機構、回転の駆動源となるモータ、モータの駆動制御部、映像信号を増幅する増幅回路、複合カメラの動作を制御する制御部などを備えている。また、パン方向の回転基点を定めるため、ハウジングの基点位置に磁石117が固定され、パン回転台103には、この磁石117の磁界を検知する原点ホール素子32が設置されている。
【0015】カメラ102を保持するチルト回転台105は、チルト回転軸106を中心に180度に渡って回転が可能であり、その結果、カメラ102は、図9のA点(108)の方向から、最下点B(109)を通過して、C点(110)の方向まで可逆的に向きを変えることができる。
【0016】また、パン回転台103は、その回転軌跡206を図10に示すように、360度に渡って水平方向に回転することができる。
【0017】また、スリップリング112は、固定部から可動部への電源供給や、固定部と可動部との間の電気信号の導通を実現する。
【0018】従って、この複合カメラを天井に取り付け、遠隔制御によりチルト回転台105の回転角度を調整し、パン回転台103を所定の方向に回転させることによって、監視域の全ての方向をカメラ102で撮影することができる。
【0019】図11は、この複合カメラの内部構成を機能ブロックで表している。パン回転台103及びチルト回転台105の回転制御機構として、回転するモータ24、28と、モータ24、28の回転数を検出するエンコーダ25、29と、エンコーダ25、29の検出結果を基にモータ24、28を駆動するモータドライバ23、27と、モータ24、28の回転を減速してパン回転台103及びチルト回転台105に伝える減速機構26、30と、パンの基点に配置された磁石117の磁界に感応する、パン回転台103に設置された原点ホール素子32と、チルトの端点位置に配置された磁石の磁界に感応する、チルト回転台105に180度離間して設置された端点ホール素子33と、ホール素子32、33の検知信号からパンの原点及びチルトの端点を検出するホール素子検出部31と、ホール素子検出部31の検出結果を基にモータドライバ23、27を制御するモータ制御部22とを備えている。
【0020】また、カメラレンズ部の制御機構として、ズーム及びフォーカス調整のためのステッパモータ36、40と、ステッパモータ36、40に駆動用のパルスを出力するモータドライバ35、39と、ステッパモータ36、40の回転を減速してレンズ機構に伝える減速機構37、41と、ズーム調整の限界を検出するリミットスイッチまたはフォトインタラプタ38と、フォーカス調整の限界を検出するフォトインタラプタ42と、モータドライバ35、39を制御するレンズ制御部34と、アイリスを調整するドライバ43とを備えている。
【0021】また、映像信号を出力するカメラ部として、撮像を行うCCD44と、映像信号を符号化するDSP45と、画像データの書き込み・読み出しを行う画像メモリ46とを備えている。
【0022】さらに、コントローラから入力する制御信号に基づいて複合カメラの動作を制御するカメラ制御部21と、データを蓄積するメモリ(E2PROM)47とを備えている。
【0023】また、複合カメラは、従来の装置(図13)のように、同軸ケーブル16を通じて、コントローラ12及びモニタ13に接続して制御され、あるいは、図12に示すように、RS485シリアル通信(18)によりパソコン19と複合カメラ11とを接続し、パソコン19の画面に複合カメラ11の映像を表示しながら、パソコン19から複合カメラ11を制御することも可能である。
【0024】また、ここでは、コントローラ12やパソコン19に一台の複合カメラ11が接続している場合を示しているが、複数の複合カメラをコントローラ12やパソコン19に接続して、それらの複合カメラをコントローラ12やパソコン19で制御することも可能である。
【0025】まず、この複合カメラの一般的な動作について説明する。この複合カメラでは、パン方向のモータ24の回転を検出するエンコーダ25の出力パルスがモータ制御部22に伝えられ、また、原点ホール素子32によるパンの基点の検出時点が、ホール検出部31を通じてモータ制御部22に伝えられる。モータ制御部22は、パン回転台が一回転する間にエンコーダ25から出力されるパルス数をpとするとき、原点ホール素子32がパンの基点を検出してからのエンコーダ25の出力パルス数mをカウントし、Pi=m×360/pにより、現在のパン角度Piを算出する。算出された現在のパン角度Piはメモリ47で保持される。
【0026】また、同様に、チルト方向のモータ28の回転を検出するエンコーダ29の出力パルスがモータ制御部22に伝えられ、また、端点ホール素子33によるチルト端点の検出時点が、ホール検出部31を通じてモータ制御部22に伝えられる。モータ制御部22は、チルト回転台が半回転する間にエンコーダ29から出力されるパルス数をqとするとき、端点ホール素子33がチルトの端点を検出してからのエンコーダ29の出力パルス数nをカウントし、Ti=90−(n×180/q)
により、現在のチルト角度Tiを算出する。即ち、チルト角は、真下の方向を0度として角度が算出される。チルト角の取り得る範囲は+90度から−90度までである。算出された現在のチルト角度Tiはメモリ47で保持される。
【0027】このパン角度Pi及びチルト角度Tiは、現在のカメラ画面の中心の向きを示している。
【0028】また、撮影される画像の画角は、レンズ部でのズーム量を規定するステッパモータ36の回転量や電子ズーム倍率で決まり、この回転量はステッパモータ36に出力されるパルス数によって決まる。レンズ制御部34は、ステッパモータ36を正方向に回転するために出力されたパルスを+に、負方向に回転するために出力されたパルスを−にカウントして、モータドライバ35から出力されたパルス数を累積する。カメラ制御部21は、この累積パルス数や電子ズーム倍率から得られる画角の垂直画角(Zt)をチルト座標で表し、また、水平画角(Zp)をパン座標で表してメモリ47に記録する。
【0029】こうして、メモリ47には、複合カメラの現在の状態量を表すデータとして、Pi、Ti、Zt及びZpが保持される。
【0030】この複合カメラの動作は、コントローラ12、あるいはパソコン19により制御される。コントローラ12またはパソコン19からはコマンドが送信され、複合カメラ11のカメラ制御部21は、受信したコマンドを解釈して各部の動作を制御する。
【0031】カメラの方向を変えるために操作者がコントローラ12のジョイスティック14を傾けると、この操作に応じて、コントローラ12からは、カメラの速度制御を表すコマンドとともに、図14に示すように、傾いたジョイスティック14のx軸成分を表すデータVpanとy軸成分を表すデータVtiltとが複合カメラ11に送信される。複合カメラ11のカメラ制御部21は、受信したコマンドを解釈して、データVpan及びデータVtiltをモータ制御部22に送り、モータ制御部22は、Vpanの速度でパン回転を行うようにモータドライバ23を制御し、Vtiltの速度でチルト回転を行うようにモータドライバ27を制御する。
【0032】また、操作者がジョイステックを中立位置に戻すと、同様に、コマンドとともにVpan=0、Vtilt=0のデータが複合カメラに送られ、チルト方向及びパン方向の回転が停止される。
【0033】カメラが向きを変えるとき、前述するように、現在のカメラの状態量を表すPi、Ti、Zt及びZpのデータが更新されて保持される。
【0034】CCD44は、カメラが向けられた方向を撮像し、その映像信号をDSP45に出力する。DSP45は、画像を符号化し、符号化された画像データが画像メモリ46に一旦書き込まれた後、画像メモリ46から読み出されてモニタ13に出力される。この複合カメラでは、カメラを反対方向に向ける場合に、チルト角度は動かさずに、パン角度を180度旋回する方法で実現できるし、また、パン角度は固定したまま、チルト角度を正から負に回転しても実現できる。しかし、前者の経路を通る場合にはCCD44の反転は生じないが、後者の経路を通る場合には、CCD44の上下が反転する。従って、後者の場合には、それまでと上下を逆にしてデータを読み出さなければ、画像が逆さに映る。そのため、CCD44の画像データは、それまでと同じように画像メモリ46に記録された後、画像メモリ46から逆方向に読み出されてモニタに送られる。このような状態、つまり、Tiが負の状態を「上下反転中」と呼ぶことにする。
【0035】また、同様に、カメラを水平に90度回転する場合に、チルト角度は動かさずに、パン角度を90度旋回する方法でも実現できるし、また、パン角度は固定したまま、チルト角度を一旦0度にした後、90度異なる方向に引き上げる方法によっても実現できる。後者の場合は、CCD44の画像データを、画像メモリ46を介して、それまでと左右を反転して読み出す必要がある。この状態を「左右反転中」と呼ぶことにする。
【0036】さて、この複合カメラでは、図1に示すように、画像に映るプライバシーゾーンをマスク50によって覆い隠すことができる。オートトレースにより方向を緩やかに変えながら画像が撮像される場合には、カメラの動きに応じて画面上でマスク位置が変化し、プライバシーゾーンを隠し続ける。ただし、この実施形態の複合カメラでは、カメラの速度が一定値以上に速い場合には、マスクが無くてもプライバシーゾーンを画像から識別することができないため、マスクでの遮蔽は行わないこととしている。また、チルト角度が−45〜45度の間には、マスク領域を設けないこととしている。これは、後述するように、チルト角度が小さいと、パン回転によって被写体が相対的に大きく回転し、マスクが有効に作用しない場合があること、また、そのような位置にプライバシーゾーンがある場所では、監視カメラが通常設置されないことなどを理由としている。
【0037】このマスクの設定は、パソコン19を使って、次のように行われる。
【0038】操作者が、パソコン19からマスク設定手順を選択すると、複合カメラにマスク設定のコマンドが送られる。カメラ制御部21は、このコマンドを解釈して、レンズ制御部34にズームを最大にするように指示する。このカメラの画像とその状態量を表すPi、Ti、Zp及びZtのデータとがパソコン19に送られ、その画像が画面に表示される。
【0039】操作者が、マウスを用いて、画像のプライバシーゾーンの中心位置を指定すると、その位置に対応するパン座標及び正のチルト座標がパソコンで算出されて複合カメラに送られ、カメラ制御部21は、そのパン座標及びチルト座標に画面の中心を向けるようにモータ制御部22を指令する。その結果、パソコンの画面の中心にマスク設定の中心位置が来るように画像が表示される。
【0040】次に、操作者が画面上でカーソルを移動すると、図3に示すように、中心位置を中心に持ち、カーソル位置が1つの角となる四角形のゾーン枠が表示される。このゾーン枠の縦:横の比は、画面の縦横と同じ、3:4に固定されている。操作者は、プライバシーゾーンが隠れるようにゾーン枠を広げた後、マスクゾーン設定の操作を行う。このとき、マスクゾーンを表す番号または名称を併せて設定する。
【0041】設定されたマスクゾーンを規定する中心座標及び1頂点の座標は、番号とともに、パソコンでデータ管理される。また、パソコンから複合カメラには、そのマスクゾーンを表すパン座標及びチルト座標が、番号とともに送られて、メモリ47に格納される。マスクゾーンは、1画面について最大4個を設定することができる。
【0042】このとき、パソコンは、マスクゾーンの管理データである中心座標及び1頂点の座標から、マスクゾーンの三隅の座標データを算出し、この座標データを複合カメラに送る。あるいは、マスクゾーンの管理データである中心座標及び1頂点の座標を複合カメラに送り、複合カメラがこの管理データを記憶し、必要なときに、マスクゾーンの四隅の座標データを算出するようにしても良い。
【0043】図4には、1つのマスクゾーンに対応して複合カメラのメモリ47に格納されるデータを示している。1つのマスクゾーンに対して、図4(a)に示す、左上端HL、左下端LL及び右上端HRの3点のデータ(HLy、LLy、HRy、HLx、LLx、HRx)が格納される。右下端LRのデータは、LRx=HRx、LRy=LLyにより算出される。
【0044】なお、マスクゾーン設定を画面中央で行うのは、設定時の画像の歪みを防止するためである。
【0045】また、ゾーン枠の縦:横比を固定しているのは、管理するデータ量を少なくするためである。
【0046】こうしてマスクゾーンが設定された後の複合カメラにおけるプライバシーゾーン表示処理について説明する。
【0047】図2は、この複合カメラの動作をフロー図で示している。
ステップ1:カメラ制御部21は、パン移動速度またはチルト移動速度が予め定められた速度以上であるかを調べ、そうであるときは、プライバシーゾーン表示処理を行わない。
【0048】ステップ2:また、チルト角度Tiが−45〜45度の間にあるかを調べ、そうであるときはプライバシーゾーン表示処理を行わない。
【0049】ステップ3:チルト角度Tiが負であるときは、ステップ4:パン角度Piを180度反対の角度に変換する。即ち、Pi<180゜の場合には(Pi+180゜)をパン角度とし、Pi≧180゜の場合には(Pi−180゜)をパン角度とする。また、ステップ5:チルト角度を(90゜−Ti)に変換する。このステップ4及びステップ5の処理により、パン絶対座標(0〜360゜)及びチルト絶対座標(0〜180゜)への変換が行われたことになる。
【0050】ステップ6:カメラ制御部21は、メモリ47からマスクデータを読み出す。
ステップ7:現在、上下反転中であるかを調べ、上下反転中であるときは、ステップ8:マスクデータのHLとLLとを入れ換え、また、HRとLRとを入れ換える。図5(a)には、入れ換え処理後のデータ(tHL、tLL、tHR、tLR)を示し、図5(b)には、入れ換え処理が不要であるときのデータを示している。
【0051】ステップ9:現在、左右反転中であるかを調べ、左右反転中であるときは、ステップ10:LLとLRとを入れ換え、また、HLとHRとを入れ換える。図6(a)には、入れ換え処理後のデータ(tHL、tLL、tHR、tLR)を示し、図6(b)には、入れ換え処理が不要であるときのデータを示している。
【0052】ステップ11:次に、カメラ制御部21は、絶対座標で表したマスクデータを画面座標に変換する。これは、図7に示すように、中心が(Pi,Ti)、水平方向の長さがZp、垂直方向の長さがZtである現在の画面に、マスクゾーン(tHL、tLL、tHR、tLR)を区画するための変換処理であり、図7(a)に示すように、マスクゾーンが現在の画面から外れている場合には、tHLとtHR、tLLとtLRがともに現在の画面の境界線上に変換され(tHL=tHR、tLL=tLR)、マスクゾーンの表示は行われない。
【0053】また、図7(b)に示すように、マスクゾーンの一部が現在の画面から外れている場合には、外れているマスクゾーンデータ(tHL、tHR、tLL)が画面の境界線上に変換され、変換されたそれらの点とtLRとで区画されるゾーンがマスクゾーンとして表示される。また、図7(c)に示すように、マスクゾーンデータの全てが現在の画面の中に位置する場合は、(tHL、tLL、tHR、tLR)で区画されるエリアがマスクゾーンとして表示される。
【0054】ステップ12:画面座標に変換されたマスクゾーンがCCD45の画素に対応するデータに変換されてDSP45に出力され、ステップ13:表示処理が行われる。
【0055】このマスクゾーンは、画面上で黒などの色で表示され、あるいは、マスク番号や記号(民家マーク、トイレマーク)などが表示される。
【0056】マスクゾーンを修正する場合には、操作者は、マスク番号を入力してマスク設定手順を実行する。複合カメラのカメラ制御部21は、メモリ47に格納されている該当する番号のマスクデータを読み出し、そのマスクゾーンが画面の中央に来るようにモータ制御部22を制御する。マスクゾーンが画面の中央に表示された状態で操作者がパン/チルトやズームなどの操作を行うとそのゾーンが消去され、新たなゾーンの設定が可能になる。
【0057】また、図8に示すように、被写体が固定されていても、パン回転に伴って、被写体の画像は画面中で回転する。この変化はチルト角度が真下に近くなる程、大きく現れる。そのため、パン角度がマスク設定時の角度から変化すると、プライバシーゾーンが画面中で回転してマスクから漏れ出る部分が発生する。この問題は、マスクゾーン設定時のパン角度及び現在のパン角度を基に、現在のプライバシーゾーン(=設定時のマスク位置)を覆うために必要なマスクゾーンを計算で求め、マスクを更新することにより避けることができる。
【0058】また、画角が大きい場合には、小さいマスクをオフにしてもプライバシーを損なう恐れがない。従って、画角によってマスキングのオン/オフを制御するようにしても良い。また、モニタ画面上で一定以上小さくなったマスクは、それ以上小さくしないように制御してもよい。こうした処置により、画角に追随してマスク面積を可変する演算処理が軽減される。また、あまりに小さいマスクは、画像の欠陥と誤解される恐れがある。
【0059】また、先に、カメラの回転速度が速い場合に、マスキングを停止する処理について説明したが、これは、マスクゾーンの座標計算などがカメラの速い回転に追いつかないための対策でもある。逆に、マスキングの演算が追従できる程度にカメラの回転速度を抑制する制御を行うようにしても良い。
【0060】また、パソコンは、マスキングの数をカウントし、規定数を超えた場合には、マスクゾーンの設定を不許可にする機能を有する。マスキング数が多すぎると、複合カメラでの処理が追いつかなくなるからである。この場合、複数のプライバシーゾーンを1つのマスクで覆い、マスク数を減らすことにより対処できる。また、1画面に複数のマスクが含まれる場合にも、それらを全て含む一つの拡大マスクに変換してマスキング処理を行うことにより、処理時間の短縮を図ることができる。
【0061】また、マスキングの解除及び設定は、パスワードを有する特定の人のみが実施できるようにし、一般人が恣意的に操作することを防いでいる。
【0062】また、マスクゾーンのデータ管理をし易くするため、中心座標と、四角形の一つの頂点とでマスクゾーンを設定する場合について説明したが、左下及び右上の2つの頂点や、中央座標とマスク半径などの形状サイズパラメータを用いることも可能である。
【0063】また、実施形態では、360度のパン回転及び180度のチルト回転が可能な監視カメラについて説明したが、本発明は、その他のパン回転及びチルト回転を行う監視カメラに対しても、同じように適用することができる。
【0064】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明の監視カメラ装置及び表示方法では、プライバシーの保護が必要な画面のエリアだけをマスキングしているため、監視機能を損なうことなく、プライバシーを守ることができる。
【0065】この装置では、マスクデータをカメラ側で保持しているため、コントローラの側から制御するシステムと違って、伝送遅延による制御の遅れなどが無く、即時性を備え、優れた応答性を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態の複合カメラによるマスキングされた表示画面を示す図、
【図2】実施形態の複合カメラの動作を示すフロー図、
【図3】実施形態の複合カメラの表示方法において、マスクゾーン設定画面を示す図、
【図4】実施形態の複合カメラの表示方法において、マスクゾーンの座標を説明する説明図、
【図5】実施形態の複合カメラの表示方法において、上下反転時の座標変換を示す図、
【図6】実施形態の複合カメラの表示方法において、左右反転時の座標変換を示す図、
【図7】実施形態の複合カメラの表示方法において、画面座標への変換を示す図、
【図8】実施形態の複合カメラの表示方法において、パン回転に伴うマスクの修正について説明する説明図、
【図9】実施形態の複合カメラの構造を示す側断面図、
【図10】実施形態の複合カメラの構造を示す平断面図、
【図11】実施形態の複合カメラの構成を示すブロック図、
【図12】第1の実施形態の複合カメラの他の制御系を示す図、
【図13】従来の複合カメラ装置の制御系を示す図、
【図14】従来の複合カメラ装置で行われているカメラ速度制御を説明する説明図、
【図15】従来の複合カメラの動作を説明する図である。
【符号の説明】
10 カメラ
11 複合カメラ
12 コントローラ
13 モニタ
14 ジョイステック
15 テンキー
18 RS485シリアル通信部
19 パソコン
21 カメラ制御部
22 モータ制御部
23、27 モータドライバ
24、28 モータ
25、29 エンコーダ
26、30 減速機構
31 ホール素子検出部
32 原点ホール素子
33 端点ホール素子
34 レンズ制御部
35、39 モータドライバ
36、40 ステッパモータ
37、41 減速機構
38 リミットスイッチ/フォトインタラプタ
42 フォトインタラプタ
43 ドライバ
44 CCD
45 DSP
46 画像メモリ
47 メモリ(E2PROM)
50 マスク
102 カメラ
103 パン回転台
105 チルト回転台
106 チルト回転軸
107 カメラベース
112 スリップリング
113 支柱
117 磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】 パン回転及びチルト回転が可能な監視カメラと前記監視カメラを制御する制御装置とを備える監視カメラ装置において、前記監視カメラが、画像に映るプライバシーゾーンをマスキングするマスクデータを保持し、前記マスクデータに従って、画像の一部をマスキングすることを特徴とする監視カメラ装置。
【請求項2】 前記制御装置が、形状パラメータを用いて前記マスクデータを設定することを特徴とする請求項1に記載の監視カメラ装置。
【請求項3】 前記マスクデータの設定が、前記監視カメラにより撮影された画像の中央部で行われることを特徴とする請求項2に記載の監視カメラ装置。
【請求項4】 前記制御装置が、前記形状パラメータとして、マスク形状の中央座標とサイズ係数とを用いて前記マスクデータを設定することを特徴とする請求項2に記載の監視カメラ装置。
【請求項5】 前記制御装置が、前記形状パラメータとして、マスク形状の中央座標と前記マスク形状の半径とを用いて前記マスクデータを設定することを特徴とする請求項2に記載の監視カメラ装置。
【請求項6】 前記監視カメラが、マスク形状の中央座標と1カ所以上の形状サイズパラメータとにより前記マスクデータを保持することを特徴とする請求項1に記載の監視カメラ装置。
【請求項7】 前記制御装置が、前記形状パラメータとして、マスク形状の左上頂点及び右下頂点の座標を用いて前記マスクデータを設定することを特徴とする請求項2に記載の監視カメラ装置。
【請求項8】 チルト角度が所定値以下の領域で前記マスキングができないようにしたことを特徴とする請求項1に記載の監視カメラ装置。
【請求項9】 前記制御装置が、複合カメラの1画面に含まれるマスクの数を管理し、1画面での所定数を超えるマスクの設定を禁止することを特徴とする請求項1に記載の監視カメラ装置。
【請求項10】 前記マスクデータが、番号または名称とともに前記監視カメラで保持されることを特徴とする請求項1に記載の監視カメラ装置。
【請求項11】 前記監視カメラが、前記制御装置から前記番号または名称が入力されたとき、前記番号または名称とともに保持している前記マスクデータによってマスキングされる方向を向くことを特徴とする請求項10に記載の監視カメラ装置。
【請求項12】 前記監視カメラが、前記マスクを修正する修正モードにおいて、前記制御装置から前記番号または名称が入力されたとき、対応するマスクの方向を向くことを特徴とする請求項11に記載の監視カメラ装置。
【請求項13】 前記監視カメラが、保持している前記マスクデータを上下左右反転して使用することを特徴とする請求項1に記載の監視カメラ装置。
【請求項14】 前記マスクデータの設定または解除が、前記制御装置へのパスワードの入力を条件として可能になることを特徴とする請求項2に記載の監視カメラ装置。
【請求項15】 前記監視カメラが、画面の中央部からマスク位置が外れたとき、設定したマスク形状を修正することを特徴とする請求項1に記載の監視カメラ装置。
【請求項16】 前記監視カメラが、1画面に含まれる複数のマスクを、1つの拡大マスクに変換してマスキング処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の監視カメラ装置。
【請求項17】 前記制御装置が、画面の画像にマスク形状が含まれるとき、監視カメラの移動速度を制限することを特徴とする請求項1に記載の監視カメラ装置。
【請求項18】 パン回転及びチルト回転が可能な監視カメラの画像を表示する表示方法において、画像の一部に映るプライバシーゾーンをマスキングして表示することを特徴とする監視カメラの画像表示方法。
【請求項19】 チルト角度が所定値以下の領域で、前記マスキング表示を行わないことを特徴とする請求項18に記載の監視カメラの画像表示方法。
【請求項20】 前記プライバシーゾーンをマスキングするマスクが画面の中央部から外れるとき、前記プライバシーゾーンが全て隠れるようにマスク形状を修正して表示することを特徴とする請求項18に記載の監視カメラの画像表示方法。
【請求項21】 監視カメラの移動速度が所定値以上であるとき、前記マスキングを停止することを特徴とする請求項18に記載の監視カメラの画像表示方法。
【請求項22】 前記マスクに文字または記号を表示することを特徴とする請求項18に記載の監視カメラの画像表示方法。
【請求項23】 前記マスクを修正する修正モードにおいて、前記マスクの管理データに付与されている番号または名称を前記マスクに付与して表示することを特徴とする請求項22に記載の監視カメラの画像表示方法。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate


【図8】
image rotate


【図13】
image rotate


【図14】
image rotate


【図7】
image rotate


【図9】
image rotate


【図10】
image rotate


【図12】
image rotate


【図15】
image rotate


【図11】
image rotate


【公開番号】特開2001−69494(P2001−69494A)
【公開日】平成13年3月16日(2001.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−246194
【出願日】平成11年8月31日(1999.8.31)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】