目視認識支援装置及び目視認識支援方法
【課題】操船者の目視と表示画像との差異をなくして目視上の他船の同定を容易化することで、操船者の監視負担を軽減し、より安全な操船を可能とする。
【解決手段】目視認識支援装置1は、覆域海面の船舶の周囲環境、他船状況に関するレーダー情報を取得するレーダー装置と、レーダー情報の水平面表示する平面情報表示器11と、レーダー情報に基づき目視景観に重ねて重畳画像を表示する重畳画像表示器34と、水平方向に回動可能な架台部22と、架台部の回動を検出する回転角検出手段と、レーダー装置により取得されたレーダー情報から平面表示情報を得るとともに平面表示情報あるいはレーダー情報に光学幾何補正を加えて重畳表示情報を得る表示情報導出器と、得られた平面表示情報及び重畳表示情報に基づき、平面情報表示器及び重畳画像表示器に画像を回転角検出手段により検出される架台の回動に連動して表示する画像源器12とを具備する。
【解決手段】目視認識支援装置1は、覆域海面の船舶の周囲環境、他船状況に関するレーダー情報を取得するレーダー装置と、レーダー情報の水平面表示する平面情報表示器11と、レーダー情報に基づき目視景観に重ねて重畳画像を表示する重畳画像表示器34と、水平方向に回動可能な架台部22と、架台部の回動を検出する回転角検出手段と、レーダー装置により取得されたレーダー情報から平面表示情報を得るとともに平面表示情報あるいはレーダー情報に光学幾何補正を加えて重畳表示情報を得る表示情報導出器と、得られた平面表示情報及び重畳表示情報に基づき、平面情報表示器及び重畳画像表示器に画像を回転角検出手段により検出される架台の回動に連動して表示する画像源器12とを具備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、目視認識支援装置及び目視認識支援方法に係り、特に船舶の輻輳海域での操船時の操船判断を支援する目視認識支援装置及び目視認識支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飛行機、船舶、自動車その他の乗物を操縦する際、他の乗物の接近を含む周囲の状況等を把握することは、安全上最も不可欠な要素である。したがって操縦士は、細心の注意を払って目視で周囲の状況をリアルタイムに認識する必要があった。的確な状況判断をするためには、目視で得た情報が最も重要な判断要素である。しかし、目視で得ることできる情報には限界があり、遠方、後方及び障害物等により死角となる情報を得るには、レーダーや監視装置等を利用せざるをえなかった。こうすることで、操縦士は目視とレーダー等から安全な操縦を行うための情報を得ていたが、一方で、操縦士は操縦しながらレーダー等を確認しなければならず、作業負担が増加してしまっていた。この作業負担の増加は、操縦士の疲労を蓄積させ、これが嵩じると安全上の脅威ともなり得る。
【0003】
また、特に船舶の操船の場合は、時間帯や海域や天候により変化する視界や潮流や波浪の影響を大きく受けるため、周辺の状況等の把握ミスが致命的になり得る。潮流によっては船舶の進行方向が大きく変化するため、操縦士は操船の柔軟な対応を必要とされ、更に作業負担が増加する。また、夜間や霧また波浪によっては目視できる視界が遮られるため、操縦士はレーダー等を確認する回数が多くなり、一層作業負担が増加する。その結果、操縦士は悪条件が重なると見落としが発生し、操縦に悪影響を与えるおそれがあった。
【0004】
さらに、船舶は乗組員2〜3人の釣り漁船や漁業船等の小型船舶から軍隊用戦艦、大型旅客船や石油輸送タンカー等の超大型船舶まで、その船体の規模(大きさや重量)に歴然とした差が存在する。大型船舶は操縦室が高配部に設置されているため、特に夜間や霧の場合の船舶付近の海面状況は、目視が困難であり、小型船舶の存在は補足がしにくかった。
【0005】
上記のことから、船舶その他の乗物に係る操行中の周囲の状況把握には、目視及びレーダー等の確認を効率化・簡易化することが必要であり、目視での状況認識を基本としてレーダー等でその認識を支援し得ることを実現させる装置や仕組みが求められる。この点で、特許の分野においては、状況認識効率の向上を図るため、例えば、特許文献1、2、3に示すような対策が提案されてきた。
【0006】
特許文献1に開示される技術思想は、レーダーで周囲車輌の動きを検出し、周囲車輌の動きをフロントウィンドウにベクトルとして前方の景色と重畳させて表示してドライバに視認されるようにした車両用表示装置を提供する。
【0007】
また、特許文献2に開示される技術思想は、パイロットの頭部の姿勢角を検出すると共に、自機に対する他機の相対位置を検出し、これら検出した姿勢角情報及び相対位置情報に基づき、自機の姿勢変化に対応する他機位置情報を、他機位置方向に矢印先端を向けた矢印シンボルとして、パイロットが装着するヘルメットに搭載したヘルメットマウンテッドディスプレイにより外界に重畳して投影表示するものである。
【0008】
特許文献3に開示される技術思想は、画像移動量入力器からヘッドアップディスプレイに表示された赤外線画像の移動量を入力し、入力された画像移動量を基に、座標変換器が第2の信号処理器から出力される画像信号を座標変換してヘッドアップディスプレイに出力するものである。
【0009】
しかし、これらの従来技術では、ベクトルが表示される形式では対象物が視認しにくかったり天候不順で前方の視界が不良だった場合に安全が確保される保証がない。また、上記各文献記載の技術における対象物の把握は人間の直感に適合していない。更には移動量のみの情報表示では、より詳細な情報(距離情報、速度情報等)を獲得するためには、別の手段に目を転じる必要があり、特に短時間での安全確認を必要とする場面などには不適合といわざるを得ない問題があった。
【特許文献1】特開2005−128607号公報
【特許文献2】特開2002−308195号公報
【特許文献3】特開平10−119898号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
夜間や霧の中、輻輳海域を安全に運航するためには、上述したように、多数の船舶の動静を認識し迅速かつ的確な避航判断が要求される。他船の動静を把握するための航海計器としては、レーダーが有効であるが、輻輳海域でターゲットが多数存在する場合、経験の浅い船員が、レーダー上の他船と実際に目視している他船の同定に手間取り、操船判断を行うことが困難な状況に陥る可能性がある。
【0011】
本発明は、上記の従来技術の問題点を解決し、レーダーを用いた見張り作業の負担を軽減し、より的確に目視認識を行うことに寄与し得る目視認識支援装置及び方法を提供することを目的とする。より詳細には、船舶の輻輳海域での操船時の監視において、人間の目視景観とレーダー上の他船・周囲状況等の情報とを重畳させて表示させることで、見張り作業の負担を軽減し、如何なる状況下でも操船判断を的確に行うことを支援する目視認識支援装置及び方法を提供することを目的とする。
【0012】
また、上記とともに、目視見張りとレーダーARPA(自動衝突予防援助装置)の機能の一部を併せ持つ、操作が容易で作業負担を低減できる目視認識支援装置及び方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる目的を達成するために、本発明の一実施態様に係る目視認識支援装置は、船舶の周囲環境及び/もしくは他船状況に関するレーダー情報を取得するレーダー情報取得部と、該取得されたレーダー情報を操船者の視点からの透視画像に変換する変換部と、この変換された透視画像を操船者の目視景観に重ねて重畳画像として表示させる表示部とを具備することを特徴とする。
【0014】
ここで、レーダー情報取得部とは、電磁波を対象物に向けて発信し、その反射波を測定することにより、対象物までの距離や方向を把握する機能を有する装置をいう。
【0015】
また、周囲環境とは、陸、島、海岸、港、防波堤、灯台、建造物、民家及び浮体その他自船の周囲に存在する可能性があるもの全て、或いは、海洋の波高及び潮流速度その他海洋に関すること全てを含み、これらに限定されない。また、他船状況とは、自船の周縁(その距離は特に限定しない。)に存在する他船に係る船名、速度(ノット)、積荷、目的地、自船を基準とする方位及び距離その他全ての状況を含み、これらに限定されない。
【0016】
透視画像とは、パースペクティブ(perspective)である透視図法を利用した遠近法的画像処理のなされた画像をいい、操船者の目に映る像を平面に正確に写したものを示す。
【0017】
変換部とは、レーダー情報取得部によって取得されたレーダー情報に対して、操船者の視点を中心にした透視画像に座標変換を施す数的処理機能を行う装置、或いはかかる機能をコンピュータに実行させるプログラム、当該プログラムを記憶した記録媒体、当該プログラムを搭載した情報処理機器(以下、「プログラム等」ともいう。)をいう。
【0018】
重畳画像とは、狭義にはレーダーエコーからの情報を操船者の視点からの透視画像に座標変換した透視画像情報を現前の風景に重ね合わせるものをいうが、広義にはこの透視画像情報に対して、GPS(Global Positioning System)、ジャイロコンパス、ARPA(自動衝突予防援助装置)、AIS(船舶自動識別装置)からの情報、レーダエコー及び他船シンボル等の一部もしくは全部、方位線や補助線などの補助情報の全部或いは一部を重ね合わせて一つの画像情報としたものをいう。ここで、GPSは、全地球測定システム、汎地球測位システムとも言い、地球上の現在位置を調べるための衛星測位システムを示す。また、ジャイロコンパスは、高速回転するコマの回転軸が常に天空の一点を指す作用(ジャイロ効果)を用いて方位を知るための道具である。
【0019】
表示部とは、メインシステム部の重畳表示用画像源に表示された画像を、外部景観画像と重ねて表示するための装置である。例えば、装置製作のための光学設計、ミラー、レンズ、コンバイナ、表示を見やすくするためのフィルタを含んで構成される。また、コンバイナに限らず例えば、目視景観の得られる窓面や目視景観上に重ねられる折りたたみ式の透過画面であってもよい。
【0020】
上記態様に係る本願発明によれば、レーダー等により取得された他船を含む周囲の状況が操船者の視点からの透視画像に変換されて表示されることから、目視と表示画像との差異がほぼなくなり、目視上の他船とレーダー等により把握された他船とが容易に同定されるのみならず、夜間や霧等の視界制限時において遺漏なく対象物を浮き上がらせることが可能となる。
【0021】
また、別の態様に係る本願発明では、上記構成に加え、前記レーダー情報に基づいたARPA情報及び/もしくはAIS情報もさらに表示させたことを特徴とする。
【0022】
ここで、AIS(Automatic Identification System:船舶自動識別装置)は、船舶の船名、船種、識別信号、位置、針路、速力、航行状態、安全情報等の船舶運航等に係る情報を超短波帯(VHF)の無線電波により、船舶相互間及び船舶陸上施設間等で自動的に送受信し、当該情報を共有することにより、船舶相互の衝突予防、船舶の動静把握、乗組員等の労力軽減等を図ることを目的としたシステムを示す。また、ARPA(Automatic Radar Plotting Aid:自動衝突予防援助装置)は、自船のレーダー装置から入力されたレーダー映像に基いて他船の追尾目標とする追尾物票を識別し、その追尾物票の移動の度合いからレーダー指示機において針路(コース)や速度等の航行データを演算した結果の表示データを表示部に表示すると共に、衝突の危険が発生すると警報を発出する機能を有する装置をいう。また、RADAR(Radio Detection And Ranging)は、自らの送信機から電波を発射し、反射されて戻ってくる電波を受信機で受信することにより、ターゲットの検出および距離、方位、移動速度等を決定する無線装置を示す。
【0023】
上記の態様に係る本願発明によれば、ARPA(自動衝突予防援助装置)、AIS(船舶自動識別装置)からの情報がさらに重畳的に表示されるので、視認対象のうちの特定ターゲットについての詳細情報を視認面の視点をずらすことなく獲得することができる。このとき、GPS、ジャイロコンパス等の情報をさらに取得するような構成としてもよい。
【0024】
また、本発明の更に別の態様に係る目視認識支援装置は、覆域海面の船舶の周囲環境及び/もしくは他船状況に関するレーダー情報を取得するレーダー装置と、前記レーダー情報の水平面表示を行うための平面情報表示器と、前記レーダー情報に基づき目視景観に重ねて重畳画像を表示する重畳画像表示器と、少なくとも水平方向に回動可能な架台部と、該架台部の回動を検出する回転角検出手段と、前記レーダー装置により取得されたレーダー情報から平面表示情報を得るとともに該平面表示情報あるいは前記レーダー情報に光学幾何補正を加えて重畳表示情報を得る表示情報導出器と、該得られた平面表示情報及び重畳表示情報に基づきそれぞれ前記平面情報表示器及び重畳画像表示器に画像を前記回転角検出手段により検出される前記架台の回動に連動して表示させる画像源器とを具備することを特徴とする。
【0025】
ここで、レーダー装置とは、上記のRADAR機能を実現できる装置をいうが、これを実現するためのインターフェースとして、例えば、外部機器:レーダインターフェイス、入力端子:LAN、外部機器:AIS、入力端子、外部機器:ジャイロコンパス、さらにこれらの接続に必要な総てのケーブルを含み、また、USB2.0、IEEE1394をそれぞれ単数もしくは複数備えるものを含んだ概念として構成される。
【0026】
また、平面情報表示器とは、例えばディプレイに係り、表示面を平面方向にし、操船者はこの表示面を上から見下ろすように据え置き使用するものを示す。ボリューム状のつまみによって常時調光可能なこと、ベゼルが極力少ないものであること、及びスタイラス等のペン状の指示器が使用可能なタッチパネルであることが望ましい。
【0027】
また、重畳画像表示器とは、GPS、ジャイロコンパス、RADAR/ARPA、AISからの情報、レーダエコー及び他船シンボル等の一部もしくは全部を操船者の視点からの透視画像に座標変換した透視画像情報、方位線や補助線などの補助情報の全部或いは一部を重ね合わせて一つの画像情報としたものを、外部景観画像と重ねて表示するための装置である。例えば、装置製作のための光学設計、ミラー、レンズ、コンバイナ、表示を見やすくするためのフィルタを含んで構成される。画像源の画像を視野に、透視画像平面を視点の前方に透過表示する能力を有する。重畳用表示は無限遠の距離に結像する。コリメータレンズ、ミラー、コンバイナ、フィルタ、それら光学要素を適切な相対位置に固定する治具からなる。
【0028】
また、架台部は、例えば、スタンド、回転式架台、及び筐体を備えて構成される。スタンド上に取り付けられた、回転式架台には筐体が取り付けられ、筐体には重畳用表示装置が取り付けられる。架台はコンパス中心を軸としてピッチ及びヨー方向に回転する。また、方位角を検出するための回転角検出装置が取り付けられる。架台部は、回転式架台、スタンド、筐体から成り、本装置のハードウェアを納める部分である。
【0029】
また、回転角検出手段とは、例えば、架台の回転角度を検出してデジタル数値として出力できる機能を有するものをいい、たとえば円形磁石の縁に2つのホール素子を回転中心を角として直交するように配置して、それぞれのホール素子から、磁石の回転に伴い90度位相がずれた波形、すなわち一方からは正弦波、他方からは余弦波の擬似的出力が得られ、この2つの信号を用いてタンジェント変換し角度を検出する装置、たとえば、軸の回転を検出してパルスや絶対位置等の信号を出すデバイスを示し、方位角(全方位360度)或いは仰角(高い所にある物を見る視線と水平面とのなす角)及び俯角(物を見下ろしたとき、水平面と視線方向のなす角)を検出するもの、例えば、ロータリエンコーダ等によって実現されるが、これらに限定されない。たとえば、架台がステッピングモータ駆動式の場合に、指定ステップ数によって回転角度を把握する機能を備える装置をも含む。
【0030】
また光学幾何補正とは、例えば、平面的位置情報に対して透視画像情報を対応させる数的処理・演算を行う機能をいう。つまり、地上座標を見た目の画像に変換するべく、平面的基準点データをある点と、これに対応する透視画像上の点とを対応させる一定の座標変換式にしたがって変換することで透視画像情報を得るものである。なお、平面的位置情報のみならず、レーダー情報を直接処理して、透視画像情報を得ることも可能である。
【0031】
表示情報導出器は、水平面表示情報、立面透視画像情報をそれぞれ平面情報表示器及び重畳画像表示器に表示させるための原データを導出するための機能を持った装置である。これにより、表示装置を様々な精度のものに変更しても、即応的にそれぞれの表示装置に対応した表示を可能とするものである。
【0032】
画像源器は、表示情報導出器により得られた表示原データを、回転角検出手段により検出された架台の回動に連動して修正を加えて、所望の方向の表示画像を適合的に得るようにする機能を有する。
【0033】
上記の態様に係る本願発明によれば、レーダーにより物理的に入手される情報を元に他船・周囲状況等の情報が、操船者の視点からの透視画像という操船者にとってより感覚的に把握しやすい形に変換されこれが目視景観に重畳されて表示されることから、目視と表示画像との差異がほぼなくなり、目視上の他船が容易に同定されるのみならず、夜間や霧等の視界制限時において遺漏なく対象物を浮き上がらせることが可能となる。さらに、架台部の回動に平面表示及び透視画像表示が連動して変化することも可能な構成により、表示部が回動されて景観の変化に合わせて重畳画像が変化するので、目視上の他船とレーダーによる他船との同定が一方向に限らず可能となる。
【0034】
また、別の態様に係る本願発明では、上記構成に加え、前記重畳画像を目視景観に重ねるに当たり、水平線を基準として重畳させるように構成される。これにより、水平線という基準線が存在することで、周辺景観の感覚による把握・同定がより容易・確実になる。
【0035】
さらに、別の態様に係る本願発明では、上記構成に加え、前記目視景観に重ねる重畳画像を、船舶の姿勢に応じて修正変換させるように構成される。これにより、船舶の姿勢に対応させることで、揺れなどの挙動に即応的に順応した、より人間感覚に近い画像を得ることができる。
【0036】
また、別の態様に係る本願発明では、上記構成に加え、重畳画像の目視中心線を、手動を含む動力により回動可能とし、この回動に応じて前記重畳画像表示を連動して回動させたように構成される。これにより、より注目したい対象に向けて回動させることで、これを目視的に把握することが可能となる。動力としては、例えば手動以外にも、モータを利用したり、ばねや磁力を使う等、各種の方法があり得る。
【0037】
さらに、別の態様に係る本願発明では、上記構成に加え、船舶の周囲景観を撮影する撮像手段を更に設け、前記目視中心線の回動に連動して景観画像を取り込み、該取り込まれた景観画像を重畳画像として、もしくは重畳画像近傍に表示可能としたように構成される。この場合、撮像手段とはたとえばテレビカメラ、電子カメラ等の、観測対象を光電子素子、写真乾板、フィルム等によって記録し、これを信号化する機能を備えるものをいう。
【0038】
これにより、透視画像変換により得られた透視画像を補完する景観画像を撮像により得られる。この場合、取り込まれた景観画像は必ずしも重畳画像表示器に表示する必要はない。
【0039】
さらにこの場合、前記目視中心線の回動に連動して取り込んだ景観画像のうち少なくとも前記装置の視野範囲外の画像を中心に前記重畳画像近傍に表示するように構成してもよい。これにより、たとえば背景状況も同時に表示でき、周囲を取り巻く状況を漏れなく把握可能となる。
【0040】
また、別の態様に係る本願発明では、上記構成に加え、前記重畳画像を表示させる表示面が立設して略窓面に表示される重畳画像の下方手前に、前記平面情報表示器を略水平に配置し、該平面情報表示器にレーダー平面画像、コンパス情報、電子海図情報、景観画像情報を平面画像に変換した平面景観画像の少なくとも一つを表示させたように構成される。これにより、水平画像が略水平に表示され、透視画像が立設して表示されることから、人間の感覚により近づけられ、操船者による目視及び把握、他船の同定がより容易・確実になる。なおこの場合、景観画像情報については取り込んだ景観が必ずしも周囲360°全部に亘っている必要はない。
【0041】
さらにまた、別の態様に係る本願発明では、上記構成に加え、前記重畳画像において、特定される船舶に係るAIS(船舶自動識別装置)情報、ARPA(自動衝突予防援助装置)情報のうち少なくとも一つを含む他船安全情報を文字情報として重畳表示するように構成される。これにより、より詳細を知りたい対象の情報を簡易な操作によって入手することができる。なお、AIS(船舶自動識別装置)情報、ARPA(自動衝突予防援助装置)情報については、上述のとおりである。
【0042】
さらにこの場合、前記他船安全情報を前記重畳画像における略水平線近傍以上の空間部に表示するように構成してもよい。これにより、他船が近傍に存在していたとしても表示上の支障をなくし、対象把握の遺漏を防止できる。この場合、一部水平線以下にかかる場合も含んでいてよい。
【0043】
また、別の態様に係る本願発明では、上記構成に加え、船舶の周囲景観を赤外線画像を含む補完画像として取り込み、該取り込まれた補完画像を前記レーダー重畳画像を補完するために前記重畳画像上に重ねて表示するように構成される。レーダーにかからないものをも捉える補完手段によりレーダーを補えることから、安全上支障となり得る対象の捕捉度を向上させる。
【0044】
さらにこの場合、前記レーダー重畳画像及び/もしくは補完画像のうち前記船舶の安全上の支障となる可能性のある対象の存在を警告表示する警告表示部をさらに備えるように構成してもよい。こうした警告表示させることで操船者の注意をより喚起し、安全度を向上させる。
【0045】
また、別の態様に係る本願発明では、上記構成に加え、前記重畳画像、操船者の視点、及び周囲の目視景観を合わせるための水平方向及び/もしくは上下方向の位置調節手段をさらに備えるように構成される。この位置調節は、人間が合わせる方法、装置を合せる方法、画像を合せる方法のいずれかもしくはその任意の組合せであってよい。これにより、位置調節手段による微調整が周囲の目視景観との重畳をさらに精密・確実にする。
【0046】
また、本発明の更に別の態様に係る目視認識支援方法は、船舶の周囲環境及び/もしくは他船状況に関するレーダー情報をレーダー本体から取得し、前記取得したレーダー情報を操船者視点からの透視画像情報に変換し、前記取得したレーダー情報に基づき覆域海面の水平面画像情報を略水平面に設置された平面情報表示装置に表示し、前記変換された透視画像情報を周囲の目視景観と重畳するように重畳用表示装置に表示することを特徴とする。
【0047】
かかる構成を備えることにより、レーダーエコー信号として入手される情報を元に他船・周囲状況等の情報が、操船者の視点からの透視画像という操船者にとってより感覚的に把握しやすい形に変換されこれが目視景観に重畳されて表示されることから、目視と表示画像との差異がほぼなくなり、目視上の他船が容易に同定される。
【0048】
また、別の態様に係る本願発明では、上記構成に加え、前記目視景観の目視中心線は回動可能とし、この回動に応じて前記水平面画像情報及び/もしくは前記透視画像情報が連動して回動するように構成される。これにより、より注目したい対象に向けて回動させることで、これを目視的に把握することが可能である。
【発明の効果】
【0049】
本願発明によれば、船舶の操船の場面で、レーダーによる周囲状況情報が操船者の視点からの透視画像に変換された上で目視景観に重ねて重畳表示されることから、目視と表示画像との差異がほぼなくなり、目視上の他船が容易に同定されるのみならず、夜間や霧等の視界制限時において遺漏なく対象物を浮き上がらせることが可能となるため特に有用である。したがって、操船者の監視負担を軽減し、より安全な操船を可能とする。さらに、船舶の場合、衝突の可能性のある他船や浮体等は360°あらゆる方向に存在する可能性があり、そのためにレーダーは全方位情報を取得し、操船室は他の乗物と比べ広範囲で見渡せる構成を採っているが、本発明では、特に別の情報入手源を設けなくても、レーダー情報を直接利用でき、かつ操船室の広範囲の視界に適用することができる。
【0050】
また、本願発明によれば、ARPA(自動衝突予防援助装置)、AIS(船舶自動識別装置)からの情報がさらに重畳的に表示されるので、視認対象のうちの特定ターゲットについての詳細情報を視認面の視点をずらすことなく獲得することができる。
【0051】
さらに、本願発明によれば、物理的に入手される情報を元に他船・周囲状況等の情報が、操船者の視点からの透視画像という操船者にとってより感覚的に把握しやすい形に変換されこれが目視景観に重畳されて表示されることから、目視と表示画像との差異がほぼなくなり、目視上の他船が容易に同定されるのみならず、夜間や霧等の視界制限時において遺漏なく対象物を浮き上がらせることが可能となる。それに加えて、表示部が回動されて景観の変化に合わせて重畳画像が変化するから、操船者にとっては自身の身体の動きに合致するように周囲環境を把握することができるのみならず、船舶という広範囲の視界が要求される用途において、視野角の狭さがカバーされる。また、この回転操作は、現在コンパス上で他船や物標の方位を測定する動作と非常に親和性が高いため、違和感なく操船者に受け入れられることが期待できる。
【0052】
また、本願発明によれば、水平線という基準線が存在することで、周辺景観の感覚による把握・同定がより容易・確実になる。これにより、操船者にはより自然で無理のない周囲状況の把握が可能となる。
【0053】
さらに、本願発明によれば、船舶の姿勢に対応させることで、横揺れ、縦揺れ、上下揺れなど船舶特有の挙動に順応した、より人間感覚に近い画像を得ることができる。したがって、船舶の姿勢に変化が生じてもより正確に状況把握が可能となる。
【0054】
また、本願発明によれば、より注目したい対象に向けて回動させることで、船舶という広範囲の視界が要求される用途において視野角の狭さがカバーされ、これを目視的に把握することが可能となる。したがって、注目対象を特定しての周囲状況の把握が正確に行える。
【0055】
さらに、本願発明によれば、透視画像変換を施すことにより得られた透視画像を補完する景観画像が撮像により得られる。したがって、例えば、遠くのものはレーダー情報を利用し、近くのものは撮像を利用することにより、より近接したものと遠方のものとを差別化して把握することが可能となる。このことにより、船舶の近傍で自船の陰になる部分や、プラスチック船体等レーダーで捕捉しにくい映像が得られ、安全上より注目すべき対象を浮かび上がらせることが可能となる。また、目視中心線の回動に連動して景観画像を取り込んでいるため、真に注目したい対象を中心に目視認識を支援できる。
【0056】
また、本願発明によれば、景観画像のうち少なくとも視野範囲外の画像を中心に重畳画像近傍に表示することにより、例えば、前方の景観を注目している時に、真後ろの景観を表示しハックミラー的な表示が可能となる。つまり、周囲環境を併せて表示することにより、操船者・監視者はより周囲状況のイメージを正確に構築することができる。
【0057】
さらに、本願発明によれば、水平画像が略水平に表示され、透視画像が立設して表示されるため、人間の感覚により近く、操船者による目視及び把握、他船の同定がより容易・確実になる。すなわち、平面的把握は水平的に表示させ、立面的視野に係る透視画像は立面的に表示させることで、操船者・監視者は感覚のずれを感じないですみ、操船者・視認者の違和感を最小化するため、より安全な操行が可能となる。また、略窓面に表示される重畳画像の下方手前に、平面情報表示器が略水平に配置されているため、操船者・視認者は視線を大きく変える必要が無く、目視景観と重畳画像、また平面情報表示器で得られるレーダー360°平面情報等各種情報から、迅速かつ的確に自船の置かれた状況や他船、浮体等の状況が把握、判断できる。
【0058】
また、本願発明によれば、AIS(船舶自動識別装置)情報、ARPA(自動衝突予防援助装置)情報のうち少なくとも一つを含む他船安全情報が文字情報として重畳表示されるので、たとえば安全操行上注目すべき対象の詳細情報を、かかる対象を本支援装置上でポイントするという簡単な操作により入手することができる。
【0059】
さらに、本願発明によれば、他船安全情報が重畳画像における略水平線近傍以上の空間部に表示されるにより、他船が近傍に存在していたとしても表示上の支障がなくなる。これにより、安全上注目すべき対象を漏れなく表示させることが可能となる。
【0060】
また、本願発明によれば、船舶の周囲景観を赤外線画像を含む補完画像として取り込むことにより、レーダーにかからないものをも捉える補完手段によりレーダーを補い、安全上支障となり得る対象の捕捉度を向上させることが可能となる。これによれば、船舶の近傍で自船の陰になる部分や、プラスチック船体等レーダーで捕捉しにくい情報が得られ、安全上より注目すべき対象を浮かび上がらせることが可能となり、特に、夜間や霧の中であってもレーダーや目視で認識できない対象を的確に捕捉できる。
【0061】
さらに、本願発明によれば、船舶の安全上の支障となる可能性のある対象の存在を警告表示させることにより、操船者の注意をより喚起し、安全度を向上させる。したがって、操船者・監視者が何らかの事情により万が一注意対象の特定を漏らしたとしても、かかる懈怠を補完することが可能となる。
【0062】
また、本願発明によれば、位置調節手段により、重畳画像、操船者の視点、及び周囲の目視景観を合わせるための水平方向及び/もしくは上下方向の微調整がなされることで、周囲の目視景観との重畳がさらに精密なものとなり、安全上脅威となり得る対象の抽出精度が高まる。
【0063】
さらに、本願発明によれば、レーダーエコー信号として入手される情報を元に他船・周囲状況等の情報が、操船者の視点からの透視画像という操船者にとってより感覚的に把握しやすい形に変換されこれが目視景観に重畳されて表示されることから、目視と表示画像との差異がほぼなくなり、目視上の他船が容易に同定される。さらに、レーダー本体の全方位情報を活用して、操船室の広範囲の視界に適用することができ、特別な情報源や装置が不要となる。また、平面画像情報と透視画像情報の双方が利用でき、操船者・監視者の目視を有効に支援し、安全な操行を支援することになる。
【0064】
また、本願発明によれば、より注目したい対象に向けて回動させることで、これを目視的に把握することが可能であり、船舶という広範囲の視界が要求される用途において視野角の狭さを有効にカバーする。つまり、対象を特定して積極的に情報収集することが可能となり、また、操船者にとっても感覚上の違和感が最小化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0065】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。なお、以下では、本発明の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本発明の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。
【0066】
図1は、本発明の一実施形態に係る目視認識装置1を含む全体構成を示す概要図である。同図に示すとおり、目視認識装置1は、レーダーアンテナ2と、RADAR/ARPA3と、インターフェースユニット4と、AISレシーバ5と、GPSレシーバ或いはサテライトコンパス6と、ジャイロコンパス7と、補完情報装置(図示しない)とを備えて構成される。
【0067】
装置1は、たとえば組込用PC(パーソナル・コンピュータ)で一部を構成してもよく、様々な機能を備えるプログラムを内蔵するか、もしくはプログラム等を搭載した別個の記憶媒体(図示しない)によって起動可能な情報処理装置として実現してもよい。本システム稼働中に、リアルタイムで遅れなく表示を行い、また操作に対応する動作を行う能力を有することが好ましい。ローカルエリアネットワーク(以下、「LAN」ともいう。)を介して接続され、レーダーエコー信号の取得、レーダーターゲットの捕捉及び解除、捕捉したレーダーターゲット情報の取得(例えば、進路(course)、速度、最接近距離(DCPA)、最接近時間(TCPA)を含む。)、自船情報の取得(例えば、針路(Heading)、経緯度(Lat.Lon.)対地速度(S.O.G.)、対地進路(C.O.G.)を含む。)が可能である。
【0068】
RADAR/ARPA3は、レーダーアンテナ2を介して船舶の周囲環境及び/もしくは他船状況に関する情報を取得する機能を有している。
【0069】
インターフェースユニット4は、RADAR/ARPA3で取得した周囲状況に係るデータ・信号を目視認識装置1に受け渡す役割を果たすもので、たとえば、外部機器:レーダインターフェイス、入力端子:LAN、外部機器:AIS、入力端子、外部機器:ジャイロコンパス、さらにこれらの接続に必要な総てのケーブルを含み、また、USB2.0、IEEE1394をそれぞれ単数もしくは複数備えるものを含んで構成されている。
【0070】
AISレシーバ5は、パーソナルコンピュータとインターフェースを介して接続され、他船のAIS情報を取得する機能を有している。
【0071】
GPSレシーバ或いはサテライトコンパス6は、インターフェースを介して接続され、GPS情報(例えば、経緯度(Lat.Lon.)、対地速度(S.O.G.)、対地進路(C.O.G.)、針路(Heading)を含む。)を取得する機能を有している。なお、GPS情報は、RADAR/ARPA3に入力されているものをRADAR/ARPA3から取得する場合と、GPSレシーバ6から取得する場合があるので、設定により選択できる構成が好ましい。
【0072】
ジャイロコンパス7は、インターフェースを介して接続され、ジャイロコンパス情報(例えば、真北を含む。)を取得し、ジャイロコンパス情報からGPS情報に係る針路(Heading)を計算し得る。なお、ジャイロコンパス情報及びGPS情報の針路(Heading)に係る情報は、RADAR/ARPA3に入力されているものをRADAR/ARPA3から取得する場合と、ジャイロコンパス7から取得・計算する場合があるので、設定により選択できる構成が好ましい。
【0073】
補完情報装置(図示しない)は、船舶の周囲景観を赤外線画像を含む補完画像として取り込み、こうして取り込まれた補完画像を後述の重畳用表示装置34に補完表示させる機能を有している。
【0074】
また、本装置1には、RADAR/ARPA3からの他船情報に基づき、安全上の支障となる可能性のある対象をたとえばその距離情報と速度情報の一定閾値以上のものをピックアップする機能により抽出し、これについての詳細文字情報を強調文字によって表示させ、及び/或いは音声、匂い等の人間の諸感覚に強調的に訴える装置を備える警告表示部(図示しない)をさらに備えて構成してもよい。
【0075】
図2は、本発明の一実施形態に係る目視認識装置1の詳細な構成図である。同図に示すとおり、目視認識支援装置1は、水平状況表示装置11、重畳用表示装置画像源12、操作部13及びバランスウェイト14のうち少なくとも一つを有するメインシステム部10と、筐体21、回転式架台22及びスタンド23のうち少なくとも一つを有する架台部20と、コンバイナ31、レンズ32、ミラー33、フィルタ34及びその他取り付け冶具(図示しない)のうち少なくとも一つを有する光学部30とを具備して構成されている。
【0076】
メインシステム部10は、図1記載のRADAR/ARPA3と、LANを介して接続され、上記記載のレーダーエコー信号の取得、レーダーターゲットの捕捉及び解除、捕捉したレーダーターゲット情報の取得、自船情報の取得ができる。また、AISレシーバ5、GPSレシーバ或いはサテライトコンパス6、ジャイロコンパス7とは、それぞれのインターフェースを介して接続され、AIS情報を得たり、ジャイロコンパス情報及びGPS情報に係る針路を計算することができる。
【0077】
水平状況表示装置11は、液晶を用いたディスプレイ画面を示し、RADAR/ARPA3に係る所定の情報或いはジャイロコンパス7に係るコンパス情報を表示することができる。また、そのスペックに限定はないが、入力信号はDVI及びRGBで、スタイラス等のペン状の指示器が使用可能なタッチパネルであることが好ましい。なお、dimmer機能を有し、ボリューム状のつまみにより常時調光可能な構成がより好ましい。
【0078】
重畳用表示装置画像源12は、RADAR/ARPA3、AISレシーバ5等、GPSレシーバ或いはサテライトコンパス6及びジャイロコンパス7から得た各種情報を基に重畳用表示装置34に表示させる画像源を投影する機器であり、スペックに限定はない。また、バランスウェイト14は、メインシステム部10と架台部20と光源部30との接合時に、目視認識装置1の重心をスタンド21の中心線に保つための調整冶具であり、その重さに限定はない。
【0079】
架台部20は、メインシステム部10を回転式架台22で支え、スタンド23で目視認識装置1の全体構成を保つものである。回転式架台22は、メインシステム部10がコンパス中心9を軸としてピッチ及びヨー方向に回転させるものである。また、方位角を検出するための回転角検出装置(図示しない)が取り付けられている。かかる筐体21には、重畳用表示装置34が取り付けられている。回転式架台22が回動し得ることから、視野角の狭さがカバーされる。また、この回転操作は、現在コンパス上で他船や物標の方位を測定する動作と非常に親和性が高いため、違和感なく操船者に受け入れられることが期待できる。なお、筐体21、回転式架台22及びスタンド23に係る寸法や材質に限定はない。
【0080】
光学部30は、メインシステム部10に係る重畳用表示装置画像源12の映像をミラー33で写し、レンズ32を介してコンバイナ31によりレンズ32で反射された反射映像と重畳用表示装置34に係る背景とを重畳させて操船者が観測することができるようにするものである。なお、コンバイナ33は、透過機能と反射機能とを具備し、反射映像と背景とを重畳して見せる機能を持つ半透過反射板である。
【0081】
図3は、本発明の一実施形態に係る目視認識装置1のメインシステム部10の操作部13の詳細な構成を示す詳細図である。同図において、操作部13は、電源1301、グリップ1302、トラックボール1304、重畳表示装置dimmerつまみ1306、入力切替えスイッチ1307、水平状況表示装置dimmerつまみ1308のうち少なくとも一つを有するが、これらに限定されず、他の要素機能を備えていても良い。グリップ1302或いはトラックボール1304は、操作するための同機能を果たし得るため、いずれか一つを選択してもよいし、随時用途や場面に応じて使い分けてもよい。
【0082】
図4は、本発明の一実施形態に係る目視認識装置1のシステム構成図である。同図において、メインシステム部10と架台部20と光学部30との関連が概念図として示される。メインシステム部10は、図1記載の構成のほか、メインシステム本体15、スピーカー16及びマイク17を有している。メインシステム本体15は、図1記載のRADAR/ARPA3、AISレシーバ5、GPSレシーバ或いはサテライトコンパス6及びジャイロコンパス7と、各種インターフェースで接続されている。また、架台部20に係る回転角検出器(付番しない)と接続され、回転式架台22の回転による方位角或いは仰俯角を検出する機能を備えている。
【0083】
次に、重畳用画像表示装置34への表示画像の概念とともに、本装置の機能・作用の詳細を説明する。
【0084】
図5は、本発明の一実施形態に係る目視認識装置1の重畳用画像表示装置34に表示する画像表示の概念を示す図である。同図において、(1)重畳用画像表示装置34を目視するための視点8を定めるにおいて、自船仕様(例えば、船橋からの床高さ、レピータコンパス位置、レーダーアンテナ位置等を含む。)及びGPS情報(Lat.、Lon.)から視点水平位置(同図では、視点水平位置を水平線bとしている。)及び視点高さを決定させ、(2)水平状況表示装置11の表示画面に係る覆域海面に、レーダーエコー、レーダーターゲット及びAIS情報等をマッピング(配置)し、(3)透視画像平面aを仮定し、海面上のレーダーエコー、他船シンボルを透視画像平面上に変換(写像)し、(4)架台部20から与えられる重畳用表示装置光学部を介す場合の光学幾何学補正式を、透視画像平面a上の表示データに適用し、重畳表示用装置画像源12用表示データを作成する。なお、透視画像平面aに係る水平線bより下部に周囲環境情報或いは他船状況(本来は空中に存在する物体も含む。)を貼り付ける。
【0085】
図6は、本発明の一実施形態に係る目視認識装置1に係る透視画像平面aのパターンを示す図である。同図に示すとおり、透視画像平面aは水平線bを基準に、海対空が1対1の場合と、海対空が2対1の場合とに分けられる。海対空が2対1の場合は、近くの状況を表示したい場合に適している。
【0086】
図7は、本発明の一実施形態に係る目視認識装置1における重畳用表示装置画像源12から投影される画像に係る光路図を示す図である。同図において、重畳用表示装置画像源12から投影された画像は、ミラー33に入射光a、a´が入射し、反射角θ(図示しない)を持った反射光b、b´が反射する。反射光b、b´はレンズ32に入射し、コンバイナ31に入射光c、c´が略垂直に入射する。入射光c、c´は視点8に対し略水平に反射光d、d´を反射する。なお、図6に示す視点8の位置は図5に示すコンパス中央ではないが、視点8に目視される重畳画像は数マイル先の状況を示した画像であるため、その差は微小であり無視してよい。
【0087】
図8は、本発明の一実施形態に係る目視認識装置1に係る重畳用表示装置34で目視できる重畳用画像を示す図である。同図に示すように、重畳用表示装置34に係る画面上に表示される重畳用画像341は、水平線・捕捉線3401、船首尾線3402、方位線・方位表示3403、補助線3404、レーダーエコー3405、他船情報・引き出し線3406及び他船シンボル3407が重畳して構成される。このような各種補助線を重畳表示することで、操船者・監視者による正確な目視・状況把握の一層の支援が図られる。
【0088】
図9は、図8の補助線3404のさらに詳細な構成を示す図である。同図(A)に示すように、方位・距離表示補助線が付される方位・距離補助表示画像3404a、経緯度表示補助線が付される経緯度補助表示画像3404b、一定のグリッド線による補助線が付されるグリッド補助表示画像3404c、がそれぞれ備えられている。これらが補助線機能3404を構成して重畳画面に重畳表示されることで、操船者・監視者のさらに正確な状況把握を支援する。なお、補助線はこれらに限定されることなく、各種補助線であって、操船者・監視者の利便性を向上させるものであれば様々なものが採用されてよい。
【0089】
図10乃至12は、図8のうちの他船情報に係る表示部分、特にレーダーエコー3405、他船情報・引き出し線3406及び他船シンボル3407の絡む部分の詳細を示す図である。図10(A)に示すように、水平線が画面中央よりやや上部に水平に表示される。これにより、視認者は水平面を基準に他船等の近接関係を自身の感覚に適合させて把握することが可能となる。さらにこれに加えて、図10(B)に示すように、水平線より上の位置に船舶に関する文字情報が表示される。これにより、他船のシンボル(説明は後述)表示を妨げることなく、詳細なテキスト情報(船名、方向、速度等)を把握することが可能となる。
【0090】
さらにこの場合において、図11に示すように、近傍の船の情報は大きく、遠方の船の情報は小さく表示し、近傍の船の情報は上方に、遠方の船の情報は水平線よりに表示し、横切り船の横切り方向を、文字の右寄せ左寄せ、同航船は中寄せで表現する(旗のイメージ)といった工夫がなされている。これにより、視認者は、近傍・遠方の区別や、文字情報に隠れることなく漏れのない他船把握、横切り方向の把握が、自身の感覚に沿った形で可能となる。
【0091】
また、図12に示されるように、他船情報の表示方法として、捕捉線で捕捉、またはポインティングデバイスで指示した他船の情報は大きく表示させ、RADAR/ARPA3から衝突警報を受け取った他船のシンボルを赤く表示し点滅する、といった工夫を加えている。これにより注目対象の他船等がより強調されるので、補足対象から遺漏する可能性が低くなり、安全操行をより確実にする。
【0092】
なお、他船情報に係る表示部分については、操船者・監視者の注意力を一層引き付けるもの、注意力を持続させるもの、情報取得を容易にするものであれば、これら以外の工夫が採用されてもよい。
【0093】
図13は、上記に説明した構成を持つ目視認識装置1に外部状況を撮像するカメラ、及び/もしくは操作状況を撮像するカメラを更に備える構成を示す構成図である。同図において、上記、特に図2で説明した事項と重複する箇所は図2の説明をもって替える。同図に示されるように、外部状況カメラを更に備えることにより、外部状況がさらに表示されて操船の便宜がさらに向上する。また、操作状況カメラを更に備えることにより、操船状況の記録をとることが可能となり、事故発生時の操船上の原因追及の便宜がさらに向上する。
【0094】
次に、上記のように構成される本装置の動作・使用方法を説明する。
【0095】
操船者もしくは監視者は、メインシステム部10の前にて周囲状況の監視を行う。この監視に当たっては、水平状況表示装置11により周囲の平面的位置を把握し、前方の重畳用表示装置34により、前方にある障害物、他船等の位置を把握する。このとき、かかる重畳用表示装置34に表示される透視画像中の他船、障害物等の情報は、RADAR/ARPA3もしくは補完情報装置(図示しない)に基づくレーダー及び/もしくは赤外線等の非レーダー情報を元にしているため、たとえ天候不順等により前方の視野が開けていない場合であっても、漏れなく前方の対象を把握することができる。さらに、平面的な位置関係は略水平に設置された水平状況表示装置11により、立面的位置関係は立面的に設置された重畳用表示装置34により、それぞれ視認するので、より人間の感覚に近似した把握が違和感なく可能となる。さらにこのとき、立面画像は透視画像となっているので、近いものは近く、遠くのものは(小さく)遠くに表示されるため、人間感覚に忠実でスムーズな把握ができる。
【0096】
ここで、操船者もしくは監視者が特定の対象が、たとえば近接している、或いは高速度で迫っているために、この対象物の詳細を把握したいと考えた場合には、重畳用表示装置34の表示面或いは水平状況表示装置11の表示面上で、たとえばカーソルによりこれをポイントする。ポイントされた対象物のARPA情報、AIS情報、GPS情報等が、上述したとおり、現に操船者等が見ている(重畳用表示装置34或いは水平状況表示装置11の表示)画面に重畳して表示されるので、操船者等は、迫り来る対象物から目を離すことなく、より正確な情報を掴むことができる。したがって、これまでのように一旦前方から目を他に転じて情報収集する必要がなくなり、より一層の安全操船を可能とする。
【0097】
さらにこのとき、進行方向とは別の方向の他船等の情報を得たいとした場合、回転式架台22を回転させることで、上記重畳画像が連動して対向面方向の重畳画像の表示に変動するので、視野角の狭さがカバーされる。また、この回転操作は、現在コンパス上で他船や物標の方位を測定する動作と非常に親和性が高いため、違和感なく操船者に受け入れられることが期待できる。これらにより操船者・監視者にとっての監視の利便性が向上する。
【0098】
本発明の代替的な一実施態様によれば、メインシステム部はGPS、ジャイロコンパス、ARPA、AISからの情報を統合し、レーダーエコー及び他船シンボルを操船者の視点からの透視画像に座標変換し重畳用表示装置に表示する。また操船者の表示設定に合わせて、方位線や補助線や重畳用表示装置に表示する。水平状況表示装置には実際の方位に対応したコンパス画像を表示する。メインシステム部には重畳表示用表示装置、水平状況表示装置、レーダーターゲットの捕捉や解除、表示設定の変更に用いられる操作部を含む。
【0099】
本発明の別の代替的な一実施態様によれば、コンパス前方の重畳用表示装置(半透過型ディスプレイ)に、レーダー/ARPA
の情報を表示し、本装置側から他船のレーダー捕捉・解除可能な目視認識支援装置として実現される。重畳用表示装置に、レーダーエコー及び捕捉した他船シンボルを重畳して表示する際、レーダーエコーや他船シンボルは、操船者視点からの透視画像に変換して表示される。その結果、実景観上の他船と重畳用レーダーエコーはほぼ重なって表示されるため、レーダー上の他船と、目視上の他船を容易に同定できる。船舶では、他のヴィークルの操縦席等に比し比較的空間に余裕があることから、半透過型情報表示機能全体を架台として回転させることにより覆域を広げ、視野角が狭いことをカバーする。また、この回転操作は、現在コンパス上で他船や物標の方位を測定する動作と非常に親和性が高いため、違和感なく操船者に受け入れられることが期待できる。本装置は、既存のレーダー、GPS等の航海機器から情報を受け取るので、各船舶において新たなアンテナ、センサ等の設置は不要である。
【実施例】
【0100】
次に、本願発明の一実施例を説明する。本装置はコンパス前面に半透過型のディスプレイを用いて、景観と重なるように方位や経緯度を、本船からの距離を表示するとともに、他船と重ねてARPAやAISから得られた他船情報を表示するものである。また、本装置から捕捉前のレーダーターゲットを捕捉することや、捕捉済みのレーダーターゲットの解除及びARPAからの警告の確認を行うことを可能とする。
1.メインシステム部 構成
メインシステム部はGPS、ジャイロコンパス、RADAR/ARPA、AISからの情報を統合し、レーダエコー及び他船シンボルを操船者の視点からの透視画像に座標変換し重畳用表示装置に表示する。また操船者の表示設定に合わせて、方位線や補助線や重畳用表示装置に表示する。水平状況表示装置には実際の方位に対応したコンパス画像を表示する。
メインシステム部には重畳表示用表示装置、水平状況表示装置、レーダーターゲットの捕捉や解除、表示設定の変更に用いられる操作部を含む。
2.ハードウェア仕様
2.1 組込用PC
・本システム稼働中に、リアルタイムで遅れなく表示を行い、また操作に対応する動作を行う能力を有すること。
2.2 重畳用表示装置
信号入力 DVI及びRGB
dimmer機能を有すること
dimmer
機能は、ボリューム状のつまみによって常時調光可能なこと
dimmer
調整用のつまみは、指定位置に取り付け可能なこと
ベゼルが極力少ないものであること
2.3 水平状況表示装置
信号入力 DVI及びRGB
dimmer機能を有すること
dimmer
機能は、ボリューム状のつまみによって常時調光可能なこと
ベゼルが極力少ないものであること
スタイラス等のペン状の指示器が使用可能なタッチパネルであること
2.4 操作部
視点高さ調整器(バネ入り原点自動復帰)、拡大縮小調整器(バネ入り原点自動復帰)、情報量調整器については、スライダ型と回転型とする。
【0101】
スライダ型については、バネ入り自動復帰のものと、保持型のもの
各1の予備を準備する。
各操作部のソフトウェア的な実装については、各操作要素を接続し、操作権を切り換えれば使用できる状態にあることとする。
3.ソフトウェア一般仕様
3.1 基本環境
3.2 RADAR/ARPA
との接続及び操作
【0102】
LAN経由でレーダーインターフェースを介し、RADAR/ARPAに以下の操作を可能とする。
・レーダーエコー信号の取得
・レーダーターゲットの捕捉及び解除
・捕捉したレーダーターゲット情報の取得(進路(course), 速度, 最接近距離(DCPA),最接近時間(TCPA))
・自船情報の取得(針路(Heading), 経緯度(Lat. Lon.) , 対地速度(S.O.G.) , 対地進路(C.O.G))
・EBL(電子カーソル)、VRM(可変距離環) の操作
3.3 AISレシーバ
との接続及び情報の取得
・AISレシーバまたは同模擬信号を発するPCと、インターフェースを介し接続し、他船のAIS情報を取得すること
3.4 架台部方位角検出装置との接続及び情報の取得
・架台部方位角検出装置(回転角検出器)からの出力に基づき、全方位360度について、0.1度の精度で装置の回転方位を得ること。
3.5 その他の機器との接続
3.5.1 GPSレシーバとの接続及び情報の取得
・GPSレシーバとインターフェースに基づくGPS情報(経緯度(Lat. Lon.) , 対地速度(S.O.G.) , 対地進路(C.O.G)),
針路(Heading, サテライトコンパスの場合))を取得する
3.5.2 ジャイロコンパスとの接続及び情報の取得
・ジャイロコンパスとインターフェースを介し接続し、ジャイロコンパス情報(真北)を取得する
・真北情報から、Heading を計算する能力を有する
4.重畳用表示について
4.1 重畳用表示概念
(1) 自船仕様(船橋床高さ、レピータコンパス位置、レーダアンテナ位置)、GPS情報(Lat.,
Lon.) から、視点水平位置及び視点高さが定まる
(2) レーダエコー、レーダターゲット、AIS情報を、覆域海面にマッピング(配置)する
(3) 透視画像平面を仮定する。そして、海面上のレーダーエコー、他船シンボルを透視画像平面上に変換(写像)する
(4) 架台部
から与えられる、重畳用表示装置光学部を介す場合の光学幾何補正式(表)を、透視画像平面上の表示データに適用し、重畳表示用表示装置 画像源用表示データを作成する。
4.2 重畳用表示内容
重畳用表示装置に表示される内容は、階層構造からなる。
・水平線・捕捉線
・船首尾線
・方位線・方位表示
・補助線
・レーダーエコー
・他船情報・引き出し線
・他船シンボル
5.機能仕様
5−1設定
(1)設定ファイル
・各種設定パラメータは、全てtext形式設定ファイルに記述される。起動時または必要時に読み込むことにより、各機能が設定値に設定される。
(2)設定項目:初期設定項目として、以下の情報を入力する
・船名:整理に利用する
・船橋高さ:標準喫水の時の海面から船橋床面までの高さ。船橋床面から目視認識支援装置使用時の眼の高さとの和が、視点(EP : Eye Point)高さとなる。
・RADARアンテナの位置:目視認識支援装置位置上の自船位置補正に使用
・GPSアンテナの位置:目視認識支援装置位置上のレーダーエコー位置補正に使用
5−2情報源の選択
(1)船首方位:船首方位はジャイロコンパス、サテライトコンパス、RADAR/ARPAを同時に接続した状態で、設定画面より何れを用いるか選択できる
(2)現在位置:現在位置の経緯度座標は、GPSレシーバ(またはサテライトコンパス)、RADAR/ARPAを同時に接続した状態で、メニューより何れを用いるか選択できる
(3)AIS情報:AISによる他船情報は、AISレシーバまたは同信号を模擬するPCから取得する
5−3重畳用表示
(1)概要:目視認識支援装置の所定の位置に視点を置いて前方を光学部の半透過型表示装置を透して見た場合、以下に示す基本表示と、目測を取りやすくするための補助表示、レーダーエコーが、海面上に重なるように透視表示されること。各表示機能について以下に示す。目視認識支援装置の回転に応じ、装置の方位角を検出し、方位角に対応する表示をリアルタイムで更新する。
(2)色調:全表示の色調を一括して、調整する機能を有する。緑系、赤系、白系、黄系、青系
に関しては予め準備されている。
5−4基本表示
(1)水平線
・水平線を表示する。
・太さ、色、線種、濃淡(透明度)を調整可能とする
(2)捕捉線
・目視認識支援装置の中央正面延長線上のラインを「捕捉線」と呼び、常時正面中央に表示する。
・太さ、色、線種、濃淡(透明度)を調整可能とする
(3)船首尾線
・目視認識支援装置の方位角を基に船首尾線を表示する
・太さ、色、線種、濃淡(透明度)を調整可能とする
(4)方位目盛
・水平線上に方位目盛りを表示する。
・方位目盛りは真方位と船首方位を零度とした相対方位を選択可能とする。
・方位目盛りは、360度表示、32点表示から選択可能とする。
・時計表示の場合、方位目盛りは真方位(360度表示、32点表示)、船首方位を零度とした相対方位を選べるものとする。
・太さ、色、濃淡(透明度)を調整可能とする
(5)方位表示
・方位表示は度表示の場合は10度毎に表示する。
・点表示の場合で真方位の場合は、N,NNE, NE の様に16方位分を表示する。
・表示・非表示、フォント、文字の大きさ、色、濃淡(透明度)を調整可能とする
5−5補助表示
目測を容易にするために、海面に重畳して以下の表示を可能とする
・自船からの距離の増大にしたがい、線の太さ、または、色の濃淡(透明度)を変化させることが可能なこと
・視点高さ調整器、拡大縮小調整器
の操作にリアルタイムに反応して、補助表示も更新されること
(1)方位・距離表示
・自船の目視認識支援装置コンパス中央を中心とした、方位線及び等距離円を表示する
・目視認識支援装置の回転に応じ、方位線は海面に留まるように回転すること
・表示・非表示、線種、フォント、文字の大きさ、色、濃淡(透明度)を調整可能とする
(2)経緯度表示
・海面に経緯度を表示する
・経緯度は自船の移動に従い、実際の経緯度どおりに更新されること
・経緯度の値を表示可能なこと
・経緯度間隔を設定可能なこと
・表示・非表示、線種、フォント、文字の大きさ、色、濃淡(透明度)を調整可能とする
5−6レーダーエコー
・LANケーブルで接続したレーダインターフェイスを介して、RADAR/ARPAに対しレーダdll を使用し呼び出すことによりレーダーエコーを取得する。
・レーダーエコーは自船レーダアンテナを中心としたPPI表示(真上から見た表示)であるので、エコーを海面に貼り付いていると仮定した上で、視点からの透視画像に変換し表示する。「視野」範囲のレーダエコーを、透視画像平面上に変換する
・表示・非表示、色、濃淡(透明度)を調整可能とする
5−7レーダ他船捕捉及び解除
・捕捉線と重なった他船、(2)−3:右グリップポインティングスティック、または(3)−3:トラックボールによってカーソルをあわせて、(2)−1:Aトリガー (3)−1:トラックボールの左ボタンを押した他船については、AIS情報を表示する。またARPA捕捉を開始し、進路、速度、TCPA,
DCPA を判明次第表示する。
5−8他船シンボル表示:AIS信号を放送している、またはARPA捕捉中の他船は、レーダーエコーに重ねて他船シンボルを表示する。
・シンボルは IEC60872-1 その他関連するIEC, IMO の基準に準拠する
・他船シンボルは、画面貼り付けと海面貼り付けから選択できる
5−9他船情報表示:他船情報の表示は以下から選択できる
(1)直接重畳表示
・直接他船シンボルの脇に表示する
・表示情報の項目を設定可能とする
・情報表示の位置(上下左右斜め上、計八方向)は設定可能
・表示情報項目を設定可能
・情報を表示する文字のフォント、太さ、色、濃淡(透明度)を調整可能とする
・全て重なるか、または距離が近いものほど上に表示調整可能とする
・警報が鳴っているものを、上に表示調整可能とする
(2)引き出し表示
・他船シンボルから上または斜めに引き出し線を出し、水平線より上方に他船情報を表示する
・表示情報の項目を設定可能とする
・情報表示の位置を設定可能とする
・表示情報項目を設定可能とする
・情報を表示する文字のフォント、太さ、色、濃淡(透明度)を調整可能とする
・全て重なるか、または距離が近いものほど上層に表示調整可能とする
・情報が互いに重ならないように、位置を自動でずらして表示可能とする
(3)引き出し表示(真上)
・他船シンボルより上方に他船情報を表示する
・引き出し線は全て水平線に対し、垂直とする
・情報の横書き表示、横書きにしたまま縦・斜め表示、縦書き表示を設定可能とする
・情報表示の位置(上下左右斜め上、計八方向)は設定可能
・表示情報項目を設定可能
・全て重なるか、または距離が近いものほど上に表示調整可能とする
・情報を表示する文字のフォント、太さ、色、濃淡(透明度)を調整可能とする
・距離と連動して情報を表示する文字のフォント、太さ、色、濃淡(透明度)を調整可能とする
・距離と連動して情報を表示する位置を、水平線により近くまたは遠方に表示可能とする。
・横切り船の横切り方向に応じて、情報の表示方法を右寄せ、左寄せ、中寄せ(同航・反航船)に設定可能とする
(4)共通事項
・捕捉線で捕捉、またはポインティングデバイスで指示した他船の情報は大きく表示される
・RADAR/ARPAから衝突警報を受け取った他船のシンボルを赤く表示し点滅させる。
5−10視点高さの調整
・他船は船首方向の水平線近傍に集まることとなるため、水平線近傍の他船の情報や位置関係が認識しづらい。
・そこで一つの可変調整器によって視点高さを変更できる視点高さ調整器を備える。
・視点高さは調整器の調整に従い直ちにインタラクティブに変化する。また、手を離すと船橋高さまで自動復帰する
・調整器の操作と動作の関係を設定可能なこと
5−11表示画像の拡大・縮小(圧縮)
・一つの可変調整器によって、一時的に視野を拡大・縮小できる拡大縮小調整器を備える
・画像の拡大縮小は、視点と透視画像平面の位置関係の比を変更することにより行う。
【0103】
・視点高さは調整器の調整に従い直ちにインタラクティブに変化する。また、手を離すと基本位置まで自動復帰する
・調整器の操作と動作の関係を設定可能なこと
5−12表示情報量の調整
・一つの可変調整器によって表示情報量を調整できる情報量調整器を備える
・調整器の操作と動作の関係を設定可能なこと
・調整は、船首方向・DCPA・TCPAの三つの要素から判定する
5−13更新レート
(1)表示は可能な限りリアルタイムで更新すること
(2)目視認識支援装置の回転、視点高さ調整器の使用、拡大縮小調整器の使用については、操作に対応してインタラクティブに更新されること。その際、視点の変化に対する更新を優先し、表示情報の更新は一時保留となることも可とする。
(3)更新優先順位
・捕捉線、船首尾線、水平線、方位目盛り(大目盛り)、方位表示(以上要30Hz)
・ポインティングデバイスで指示または、捕捉線と重なった他船情報(要10Hz以上)
・警報
・他船シンボル
・他船情報(警報が出ているもの)
・レーダーエコー(以上2Hz 以上)
・その他の他船情報
・その他操作系の表示(以上1Hz 以上)
5−14光学補正
・視点と景観画像の間に仮想の透視画像平面を設定する。その際、透視平面の各座標と重畳用表示装置画像源の各座標の関係は、数式(行列式を含む)または表の形で、重畳用表示装置光学部より与えられるので、適切な透視画像が表示されるように、変換した画像を生成し、画像源に出力する機能とする。
5−15表示画像:画像位置調整のため以下の機能を有する
5−16位置調整機能
・表示画像の拡大縮小
・表示画像位置の左右及び上下移動
5−17水平状況表示装置
(1)入力切り換えスイッチの選択により、コンパス画面またはレーダ画面を表示する。
(2)画像位置調整のため以下の機能を有する
・表示画像の拡大縮小
・表示画像位置の左右及び上下移動
(3)コンパス画面は、コンパスローズの他、2種類以上を選択可能とする
5−18操作・警告音出力
・設定したイベント(警報、他船情報選択等)が発生した際に、警告音を発生する機能とする。
・警告音は、ファイルの形で用意される。
・設定により、出力・非出力、音声ファイルの選択を可能とする。
【0104】
以上、詳細に説明したように、本願発明によれば、操船者の視点からの透視画像に変換されて表示されることから、目視と表示画像との差異がほぼなくなり、レーダー上の他船と目視上の他船とが容易に同定される。したがって、操船者の監視負担を軽減し、より安全な操船が可能となる。
【0105】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。
【0106】
たとえば、上記説明では、主に海洋における船舶航行時の周囲状況把握の場面を例にとって説明したが、本願発明に係る技術思想はその本質上、船舶の操船時のみならず、車輌操行、航空機操縦の際の周囲の安全状況把握にも応用することができるものである。また、たとえば、水平面的な情報を略水平に、立面的情報を率面に表示させるという思想は、現在の車輌・航空機では総てを立面的に表示していることが人間工学的に、人間感覚に対する歪みを与えている点に鑑みれば、他産業であっても応用・利用可能性とその価値は計り知れないものがある。
【0107】
またたとえば、上記では補完情報として赤外線による情報を重畳表示する態様を例示的に示したが、本願の技術思想上、その他たとえば、近紫外パルスレーザー(波長380〜200nm)照射、遠紫外パルスレーザー(波長200〜10nm)照射光を利用するもの、或いは蛍光、水ラマン散乱光、弾性散乱光の全部もしくは一部から取得する情報を用いる場合も適用可能である。
【0108】
また、上述したものは本発明に係る技術思想を具現化するための実施形態の一例を示したにすぎないものであり、他の実施形態でも本発明に係る技術思想を適用することが可能である。
【0109】
さらにまた、本発明を用いて生産される装置、方法、システムが、その2次的生産品に搭載されて商品化された場合であっても、本発明の価値は何ら減ずるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0110】
上述したように、船舶操行中の周囲の状況把握に、目視及びレーダー等の確認を効率化・簡易化し、目視での状況認識を基本としてレーダー等でその認識を支援するべく船舶の輻輳海域での操船時の監視において、人間の目視景観とレーダー上の他船・周囲状況等の情報とを重畳させて表示させることで、見張り作業の負担を軽減し、如何なる状況下でも操船判断を的確に行うことを支援する本願発明は、船舶は勿論のこと、さらに、海洋、水系で用いられる乗り物の操縦一般の際に、周囲状況の判断を的確に行うことを支援するものである。
【0111】
したがって、本願は、船舶は無論、海洋、水系で用いられる浮体や乗り物等に広く適用できるものであり、これらの製造産業を初め、これに付帯する海運業、運送業、旅行業等幅広い産業において利用可能性が高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の一実施形態に係る目視認識装置1を含む全体構成を示す概要図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る目視認識装置1の詳細な構成図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る目視認識装置1のメインシステム部10の操作部13を示す詳細図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る目視認識装置1のシステム構成図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る目視認識装置1の重畳用画像表示装置34に表示する画像表示の概念を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る透視画像1本発明の一実施形態に係る目視認識装置1に係る透視画像平面aのパターンを示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る目視認識装置1におけるメインシステム部10の重畳用表示装置画像源12から投影される画像に係る光路図を示す図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る目視認識装置1に係る重畳用表示装置34に目視できる重畳用画像を示す図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る図8の補助線3404のさらに詳細な構成を示す図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る図8のうちの他船情報に係る表示部分、特にレーダーエコー3405、他船情報・引き出し線3406及び他船シンボル3407の絡む部分の詳細を示す図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る図8のうちの他船情報に係る表示部分、特にレーダーエコー3405、他船情報・引き出し線3406及び他船シンボル3407の絡む部分の詳細を示す図である。
【図12】本発明の一実施形態に係る図8のうちの他船情報に係る表示部分、特にレーダーエコー3405、他船情報・引き出し線3406及び他船シンボル3407の絡む部分の詳細を示す図である。
【図13】本発明の別の一実施形態に係る目視認識装置1に外部状況を撮像するカメラ、及び/もしくは操作状況を撮像するカメラを更に備える構成を示す構成図である。
【符号の説明】
【0113】
1…目視認識支援装置、2…レーダーアンテナ、3…RADAR/ARPA、5…AISレシーバ、6…GPSレシーバ/サテライトコンパス、7…ジャイロコンパス、10…メインシステム部、11…水平状況表示装置、12…重畳用表示装置画像源、20…架台部、22…回転式架台、30…光学部
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、目視認識支援装置及び目視認識支援方法に係り、特に船舶の輻輳海域での操船時の操船判断を支援する目視認識支援装置及び目視認識支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、飛行機、船舶、自動車その他の乗物を操縦する際、他の乗物の接近を含む周囲の状況等を把握することは、安全上最も不可欠な要素である。したがって操縦士は、細心の注意を払って目視で周囲の状況をリアルタイムに認識する必要があった。的確な状況判断をするためには、目視で得た情報が最も重要な判断要素である。しかし、目視で得ることできる情報には限界があり、遠方、後方及び障害物等により死角となる情報を得るには、レーダーや監視装置等を利用せざるをえなかった。こうすることで、操縦士は目視とレーダー等から安全な操縦を行うための情報を得ていたが、一方で、操縦士は操縦しながらレーダー等を確認しなければならず、作業負担が増加してしまっていた。この作業負担の増加は、操縦士の疲労を蓄積させ、これが嵩じると安全上の脅威ともなり得る。
【0003】
また、特に船舶の操船の場合は、時間帯や海域や天候により変化する視界や潮流や波浪の影響を大きく受けるため、周辺の状況等の把握ミスが致命的になり得る。潮流によっては船舶の進行方向が大きく変化するため、操縦士は操船の柔軟な対応を必要とされ、更に作業負担が増加する。また、夜間や霧また波浪によっては目視できる視界が遮られるため、操縦士はレーダー等を確認する回数が多くなり、一層作業負担が増加する。その結果、操縦士は悪条件が重なると見落としが発生し、操縦に悪影響を与えるおそれがあった。
【0004】
さらに、船舶は乗組員2〜3人の釣り漁船や漁業船等の小型船舶から軍隊用戦艦、大型旅客船や石油輸送タンカー等の超大型船舶まで、その船体の規模(大きさや重量)に歴然とした差が存在する。大型船舶は操縦室が高配部に設置されているため、特に夜間や霧の場合の船舶付近の海面状況は、目視が困難であり、小型船舶の存在は補足がしにくかった。
【0005】
上記のことから、船舶その他の乗物に係る操行中の周囲の状況把握には、目視及びレーダー等の確認を効率化・簡易化することが必要であり、目視での状況認識を基本としてレーダー等でその認識を支援し得ることを実現させる装置や仕組みが求められる。この点で、特許の分野においては、状況認識効率の向上を図るため、例えば、特許文献1、2、3に示すような対策が提案されてきた。
【0006】
特許文献1に開示される技術思想は、レーダーで周囲車輌の動きを検出し、周囲車輌の動きをフロントウィンドウにベクトルとして前方の景色と重畳させて表示してドライバに視認されるようにした車両用表示装置を提供する。
【0007】
また、特許文献2に開示される技術思想は、パイロットの頭部の姿勢角を検出すると共に、自機に対する他機の相対位置を検出し、これら検出した姿勢角情報及び相対位置情報に基づき、自機の姿勢変化に対応する他機位置情報を、他機位置方向に矢印先端を向けた矢印シンボルとして、パイロットが装着するヘルメットに搭載したヘルメットマウンテッドディスプレイにより外界に重畳して投影表示するものである。
【0008】
特許文献3に開示される技術思想は、画像移動量入力器からヘッドアップディスプレイに表示された赤外線画像の移動量を入力し、入力された画像移動量を基に、座標変換器が第2の信号処理器から出力される画像信号を座標変換してヘッドアップディスプレイに出力するものである。
【0009】
しかし、これらの従来技術では、ベクトルが表示される形式では対象物が視認しにくかったり天候不順で前方の視界が不良だった場合に安全が確保される保証がない。また、上記各文献記載の技術における対象物の把握は人間の直感に適合していない。更には移動量のみの情報表示では、より詳細な情報(距離情報、速度情報等)を獲得するためには、別の手段に目を転じる必要があり、特に短時間での安全確認を必要とする場面などには不適合といわざるを得ない問題があった。
【特許文献1】特開2005−128607号公報
【特許文献2】特開2002−308195号公報
【特許文献3】特開平10−119898号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
夜間や霧の中、輻輳海域を安全に運航するためには、上述したように、多数の船舶の動静を認識し迅速かつ的確な避航判断が要求される。他船の動静を把握するための航海計器としては、レーダーが有効であるが、輻輳海域でターゲットが多数存在する場合、経験の浅い船員が、レーダー上の他船と実際に目視している他船の同定に手間取り、操船判断を行うことが困難な状況に陥る可能性がある。
【0011】
本発明は、上記の従来技術の問題点を解決し、レーダーを用いた見張り作業の負担を軽減し、より的確に目視認識を行うことに寄与し得る目視認識支援装置及び方法を提供することを目的とする。より詳細には、船舶の輻輳海域での操船時の監視において、人間の目視景観とレーダー上の他船・周囲状況等の情報とを重畳させて表示させることで、見張り作業の負担を軽減し、如何なる状況下でも操船判断を的確に行うことを支援する目視認識支援装置及び方法を提供することを目的とする。
【0012】
また、上記とともに、目視見張りとレーダーARPA(自動衝突予防援助装置)の機能の一部を併せ持つ、操作が容易で作業負担を低減できる目視認識支援装置及び方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる目的を達成するために、本発明の一実施態様に係る目視認識支援装置は、船舶の周囲環境及び/もしくは他船状況に関するレーダー情報を取得するレーダー情報取得部と、該取得されたレーダー情報を操船者の視点からの透視画像に変換する変換部と、この変換された透視画像を操船者の目視景観に重ねて重畳画像として表示させる表示部とを具備することを特徴とする。
【0014】
ここで、レーダー情報取得部とは、電磁波を対象物に向けて発信し、その反射波を測定することにより、対象物までの距離や方向を把握する機能を有する装置をいう。
【0015】
また、周囲環境とは、陸、島、海岸、港、防波堤、灯台、建造物、民家及び浮体その他自船の周囲に存在する可能性があるもの全て、或いは、海洋の波高及び潮流速度その他海洋に関すること全てを含み、これらに限定されない。また、他船状況とは、自船の周縁(その距離は特に限定しない。)に存在する他船に係る船名、速度(ノット)、積荷、目的地、自船を基準とする方位及び距離その他全ての状況を含み、これらに限定されない。
【0016】
透視画像とは、パースペクティブ(perspective)である透視図法を利用した遠近法的画像処理のなされた画像をいい、操船者の目に映る像を平面に正確に写したものを示す。
【0017】
変換部とは、レーダー情報取得部によって取得されたレーダー情報に対して、操船者の視点を中心にした透視画像に座標変換を施す数的処理機能を行う装置、或いはかかる機能をコンピュータに実行させるプログラム、当該プログラムを記憶した記録媒体、当該プログラムを搭載した情報処理機器(以下、「プログラム等」ともいう。)をいう。
【0018】
重畳画像とは、狭義にはレーダーエコーからの情報を操船者の視点からの透視画像に座標変換した透視画像情報を現前の風景に重ね合わせるものをいうが、広義にはこの透視画像情報に対して、GPS(Global Positioning System)、ジャイロコンパス、ARPA(自動衝突予防援助装置)、AIS(船舶自動識別装置)からの情報、レーダエコー及び他船シンボル等の一部もしくは全部、方位線や補助線などの補助情報の全部或いは一部を重ね合わせて一つの画像情報としたものをいう。ここで、GPSは、全地球測定システム、汎地球測位システムとも言い、地球上の現在位置を調べるための衛星測位システムを示す。また、ジャイロコンパスは、高速回転するコマの回転軸が常に天空の一点を指す作用(ジャイロ効果)を用いて方位を知るための道具である。
【0019】
表示部とは、メインシステム部の重畳表示用画像源に表示された画像を、外部景観画像と重ねて表示するための装置である。例えば、装置製作のための光学設計、ミラー、レンズ、コンバイナ、表示を見やすくするためのフィルタを含んで構成される。また、コンバイナに限らず例えば、目視景観の得られる窓面や目視景観上に重ねられる折りたたみ式の透過画面であってもよい。
【0020】
上記態様に係る本願発明によれば、レーダー等により取得された他船を含む周囲の状況が操船者の視点からの透視画像に変換されて表示されることから、目視と表示画像との差異がほぼなくなり、目視上の他船とレーダー等により把握された他船とが容易に同定されるのみならず、夜間や霧等の視界制限時において遺漏なく対象物を浮き上がらせることが可能となる。
【0021】
また、別の態様に係る本願発明では、上記構成に加え、前記レーダー情報に基づいたARPA情報及び/もしくはAIS情報もさらに表示させたことを特徴とする。
【0022】
ここで、AIS(Automatic Identification System:船舶自動識別装置)は、船舶の船名、船種、識別信号、位置、針路、速力、航行状態、安全情報等の船舶運航等に係る情報を超短波帯(VHF)の無線電波により、船舶相互間及び船舶陸上施設間等で自動的に送受信し、当該情報を共有することにより、船舶相互の衝突予防、船舶の動静把握、乗組員等の労力軽減等を図ることを目的としたシステムを示す。また、ARPA(Automatic Radar Plotting Aid:自動衝突予防援助装置)は、自船のレーダー装置から入力されたレーダー映像に基いて他船の追尾目標とする追尾物票を識別し、その追尾物票の移動の度合いからレーダー指示機において針路(コース)や速度等の航行データを演算した結果の表示データを表示部に表示すると共に、衝突の危険が発生すると警報を発出する機能を有する装置をいう。また、RADAR(Radio Detection And Ranging)は、自らの送信機から電波を発射し、反射されて戻ってくる電波を受信機で受信することにより、ターゲットの検出および距離、方位、移動速度等を決定する無線装置を示す。
【0023】
上記の態様に係る本願発明によれば、ARPA(自動衝突予防援助装置)、AIS(船舶自動識別装置)からの情報がさらに重畳的に表示されるので、視認対象のうちの特定ターゲットについての詳細情報を視認面の視点をずらすことなく獲得することができる。このとき、GPS、ジャイロコンパス等の情報をさらに取得するような構成としてもよい。
【0024】
また、本発明の更に別の態様に係る目視認識支援装置は、覆域海面の船舶の周囲環境及び/もしくは他船状況に関するレーダー情報を取得するレーダー装置と、前記レーダー情報の水平面表示を行うための平面情報表示器と、前記レーダー情報に基づき目視景観に重ねて重畳画像を表示する重畳画像表示器と、少なくとも水平方向に回動可能な架台部と、該架台部の回動を検出する回転角検出手段と、前記レーダー装置により取得されたレーダー情報から平面表示情報を得るとともに該平面表示情報あるいは前記レーダー情報に光学幾何補正を加えて重畳表示情報を得る表示情報導出器と、該得られた平面表示情報及び重畳表示情報に基づきそれぞれ前記平面情報表示器及び重畳画像表示器に画像を前記回転角検出手段により検出される前記架台の回動に連動して表示させる画像源器とを具備することを特徴とする。
【0025】
ここで、レーダー装置とは、上記のRADAR機能を実現できる装置をいうが、これを実現するためのインターフェースとして、例えば、外部機器:レーダインターフェイス、入力端子:LAN、外部機器:AIS、入力端子、外部機器:ジャイロコンパス、さらにこれらの接続に必要な総てのケーブルを含み、また、USB2.0、IEEE1394をそれぞれ単数もしくは複数備えるものを含んだ概念として構成される。
【0026】
また、平面情報表示器とは、例えばディプレイに係り、表示面を平面方向にし、操船者はこの表示面を上から見下ろすように据え置き使用するものを示す。ボリューム状のつまみによって常時調光可能なこと、ベゼルが極力少ないものであること、及びスタイラス等のペン状の指示器が使用可能なタッチパネルであることが望ましい。
【0027】
また、重畳画像表示器とは、GPS、ジャイロコンパス、RADAR/ARPA、AISからの情報、レーダエコー及び他船シンボル等の一部もしくは全部を操船者の視点からの透視画像に座標変換した透視画像情報、方位線や補助線などの補助情報の全部或いは一部を重ね合わせて一つの画像情報としたものを、外部景観画像と重ねて表示するための装置である。例えば、装置製作のための光学設計、ミラー、レンズ、コンバイナ、表示を見やすくするためのフィルタを含んで構成される。画像源の画像を視野に、透視画像平面を視点の前方に透過表示する能力を有する。重畳用表示は無限遠の距離に結像する。コリメータレンズ、ミラー、コンバイナ、フィルタ、それら光学要素を適切な相対位置に固定する治具からなる。
【0028】
また、架台部は、例えば、スタンド、回転式架台、及び筐体を備えて構成される。スタンド上に取り付けられた、回転式架台には筐体が取り付けられ、筐体には重畳用表示装置が取り付けられる。架台はコンパス中心を軸としてピッチ及びヨー方向に回転する。また、方位角を検出するための回転角検出装置が取り付けられる。架台部は、回転式架台、スタンド、筐体から成り、本装置のハードウェアを納める部分である。
【0029】
また、回転角検出手段とは、例えば、架台の回転角度を検出してデジタル数値として出力できる機能を有するものをいい、たとえば円形磁石の縁に2つのホール素子を回転中心を角として直交するように配置して、それぞれのホール素子から、磁石の回転に伴い90度位相がずれた波形、すなわち一方からは正弦波、他方からは余弦波の擬似的出力が得られ、この2つの信号を用いてタンジェント変換し角度を検出する装置、たとえば、軸の回転を検出してパルスや絶対位置等の信号を出すデバイスを示し、方位角(全方位360度)或いは仰角(高い所にある物を見る視線と水平面とのなす角)及び俯角(物を見下ろしたとき、水平面と視線方向のなす角)を検出するもの、例えば、ロータリエンコーダ等によって実現されるが、これらに限定されない。たとえば、架台がステッピングモータ駆動式の場合に、指定ステップ数によって回転角度を把握する機能を備える装置をも含む。
【0030】
また光学幾何補正とは、例えば、平面的位置情報に対して透視画像情報を対応させる数的処理・演算を行う機能をいう。つまり、地上座標を見た目の画像に変換するべく、平面的基準点データをある点と、これに対応する透視画像上の点とを対応させる一定の座標変換式にしたがって変換することで透視画像情報を得るものである。なお、平面的位置情報のみならず、レーダー情報を直接処理して、透視画像情報を得ることも可能である。
【0031】
表示情報導出器は、水平面表示情報、立面透視画像情報をそれぞれ平面情報表示器及び重畳画像表示器に表示させるための原データを導出するための機能を持った装置である。これにより、表示装置を様々な精度のものに変更しても、即応的にそれぞれの表示装置に対応した表示を可能とするものである。
【0032】
画像源器は、表示情報導出器により得られた表示原データを、回転角検出手段により検出された架台の回動に連動して修正を加えて、所望の方向の表示画像を適合的に得るようにする機能を有する。
【0033】
上記の態様に係る本願発明によれば、レーダーにより物理的に入手される情報を元に他船・周囲状況等の情報が、操船者の視点からの透視画像という操船者にとってより感覚的に把握しやすい形に変換されこれが目視景観に重畳されて表示されることから、目視と表示画像との差異がほぼなくなり、目視上の他船が容易に同定されるのみならず、夜間や霧等の視界制限時において遺漏なく対象物を浮き上がらせることが可能となる。さらに、架台部の回動に平面表示及び透視画像表示が連動して変化することも可能な構成により、表示部が回動されて景観の変化に合わせて重畳画像が変化するので、目視上の他船とレーダーによる他船との同定が一方向に限らず可能となる。
【0034】
また、別の態様に係る本願発明では、上記構成に加え、前記重畳画像を目視景観に重ねるに当たり、水平線を基準として重畳させるように構成される。これにより、水平線という基準線が存在することで、周辺景観の感覚による把握・同定がより容易・確実になる。
【0035】
さらに、別の態様に係る本願発明では、上記構成に加え、前記目視景観に重ねる重畳画像を、船舶の姿勢に応じて修正変換させるように構成される。これにより、船舶の姿勢に対応させることで、揺れなどの挙動に即応的に順応した、より人間感覚に近い画像を得ることができる。
【0036】
また、別の態様に係る本願発明では、上記構成に加え、重畳画像の目視中心線を、手動を含む動力により回動可能とし、この回動に応じて前記重畳画像表示を連動して回動させたように構成される。これにより、より注目したい対象に向けて回動させることで、これを目視的に把握することが可能となる。動力としては、例えば手動以外にも、モータを利用したり、ばねや磁力を使う等、各種の方法があり得る。
【0037】
さらに、別の態様に係る本願発明では、上記構成に加え、船舶の周囲景観を撮影する撮像手段を更に設け、前記目視中心線の回動に連動して景観画像を取り込み、該取り込まれた景観画像を重畳画像として、もしくは重畳画像近傍に表示可能としたように構成される。この場合、撮像手段とはたとえばテレビカメラ、電子カメラ等の、観測対象を光電子素子、写真乾板、フィルム等によって記録し、これを信号化する機能を備えるものをいう。
【0038】
これにより、透視画像変換により得られた透視画像を補完する景観画像を撮像により得られる。この場合、取り込まれた景観画像は必ずしも重畳画像表示器に表示する必要はない。
【0039】
さらにこの場合、前記目視中心線の回動に連動して取り込んだ景観画像のうち少なくとも前記装置の視野範囲外の画像を中心に前記重畳画像近傍に表示するように構成してもよい。これにより、たとえば背景状況も同時に表示でき、周囲を取り巻く状況を漏れなく把握可能となる。
【0040】
また、別の態様に係る本願発明では、上記構成に加え、前記重畳画像を表示させる表示面が立設して略窓面に表示される重畳画像の下方手前に、前記平面情報表示器を略水平に配置し、該平面情報表示器にレーダー平面画像、コンパス情報、電子海図情報、景観画像情報を平面画像に変換した平面景観画像の少なくとも一つを表示させたように構成される。これにより、水平画像が略水平に表示され、透視画像が立設して表示されることから、人間の感覚により近づけられ、操船者による目視及び把握、他船の同定がより容易・確実になる。なおこの場合、景観画像情報については取り込んだ景観が必ずしも周囲360°全部に亘っている必要はない。
【0041】
さらにまた、別の態様に係る本願発明では、上記構成に加え、前記重畳画像において、特定される船舶に係るAIS(船舶自動識別装置)情報、ARPA(自動衝突予防援助装置)情報のうち少なくとも一つを含む他船安全情報を文字情報として重畳表示するように構成される。これにより、より詳細を知りたい対象の情報を簡易な操作によって入手することができる。なお、AIS(船舶自動識別装置)情報、ARPA(自動衝突予防援助装置)情報については、上述のとおりである。
【0042】
さらにこの場合、前記他船安全情報を前記重畳画像における略水平線近傍以上の空間部に表示するように構成してもよい。これにより、他船が近傍に存在していたとしても表示上の支障をなくし、対象把握の遺漏を防止できる。この場合、一部水平線以下にかかる場合も含んでいてよい。
【0043】
また、別の態様に係る本願発明では、上記構成に加え、船舶の周囲景観を赤外線画像を含む補完画像として取り込み、該取り込まれた補完画像を前記レーダー重畳画像を補完するために前記重畳画像上に重ねて表示するように構成される。レーダーにかからないものをも捉える補完手段によりレーダーを補えることから、安全上支障となり得る対象の捕捉度を向上させる。
【0044】
さらにこの場合、前記レーダー重畳画像及び/もしくは補完画像のうち前記船舶の安全上の支障となる可能性のある対象の存在を警告表示する警告表示部をさらに備えるように構成してもよい。こうした警告表示させることで操船者の注意をより喚起し、安全度を向上させる。
【0045】
また、別の態様に係る本願発明では、上記構成に加え、前記重畳画像、操船者の視点、及び周囲の目視景観を合わせるための水平方向及び/もしくは上下方向の位置調節手段をさらに備えるように構成される。この位置調節は、人間が合わせる方法、装置を合せる方法、画像を合せる方法のいずれかもしくはその任意の組合せであってよい。これにより、位置調節手段による微調整が周囲の目視景観との重畳をさらに精密・確実にする。
【0046】
また、本発明の更に別の態様に係る目視認識支援方法は、船舶の周囲環境及び/もしくは他船状況に関するレーダー情報をレーダー本体から取得し、前記取得したレーダー情報を操船者視点からの透視画像情報に変換し、前記取得したレーダー情報に基づき覆域海面の水平面画像情報を略水平面に設置された平面情報表示装置に表示し、前記変換された透視画像情報を周囲の目視景観と重畳するように重畳用表示装置に表示することを特徴とする。
【0047】
かかる構成を備えることにより、レーダーエコー信号として入手される情報を元に他船・周囲状況等の情報が、操船者の視点からの透視画像という操船者にとってより感覚的に把握しやすい形に変換されこれが目視景観に重畳されて表示されることから、目視と表示画像との差異がほぼなくなり、目視上の他船が容易に同定される。
【0048】
また、別の態様に係る本願発明では、上記構成に加え、前記目視景観の目視中心線は回動可能とし、この回動に応じて前記水平面画像情報及び/もしくは前記透視画像情報が連動して回動するように構成される。これにより、より注目したい対象に向けて回動させることで、これを目視的に把握することが可能である。
【発明の効果】
【0049】
本願発明によれば、船舶の操船の場面で、レーダーによる周囲状況情報が操船者の視点からの透視画像に変換された上で目視景観に重ねて重畳表示されることから、目視と表示画像との差異がほぼなくなり、目視上の他船が容易に同定されるのみならず、夜間や霧等の視界制限時において遺漏なく対象物を浮き上がらせることが可能となるため特に有用である。したがって、操船者の監視負担を軽減し、より安全な操船を可能とする。さらに、船舶の場合、衝突の可能性のある他船や浮体等は360°あらゆる方向に存在する可能性があり、そのためにレーダーは全方位情報を取得し、操船室は他の乗物と比べ広範囲で見渡せる構成を採っているが、本発明では、特に別の情報入手源を設けなくても、レーダー情報を直接利用でき、かつ操船室の広範囲の視界に適用することができる。
【0050】
また、本願発明によれば、ARPA(自動衝突予防援助装置)、AIS(船舶自動識別装置)からの情報がさらに重畳的に表示されるので、視認対象のうちの特定ターゲットについての詳細情報を視認面の視点をずらすことなく獲得することができる。
【0051】
さらに、本願発明によれば、物理的に入手される情報を元に他船・周囲状況等の情報が、操船者の視点からの透視画像という操船者にとってより感覚的に把握しやすい形に変換されこれが目視景観に重畳されて表示されることから、目視と表示画像との差異がほぼなくなり、目視上の他船が容易に同定されるのみならず、夜間や霧等の視界制限時において遺漏なく対象物を浮き上がらせることが可能となる。それに加えて、表示部が回動されて景観の変化に合わせて重畳画像が変化するから、操船者にとっては自身の身体の動きに合致するように周囲環境を把握することができるのみならず、船舶という広範囲の視界が要求される用途において、視野角の狭さがカバーされる。また、この回転操作は、現在コンパス上で他船や物標の方位を測定する動作と非常に親和性が高いため、違和感なく操船者に受け入れられることが期待できる。
【0052】
また、本願発明によれば、水平線という基準線が存在することで、周辺景観の感覚による把握・同定がより容易・確実になる。これにより、操船者にはより自然で無理のない周囲状況の把握が可能となる。
【0053】
さらに、本願発明によれば、船舶の姿勢に対応させることで、横揺れ、縦揺れ、上下揺れなど船舶特有の挙動に順応した、より人間感覚に近い画像を得ることができる。したがって、船舶の姿勢に変化が生じてもより正確に状況把握が可能となる。
【0054】
また、本願発明によれば、より注目したい対象に向けて回動させることで、船舶という広範囲の視界が要求される用途において視野角の狭さがカバーされ、これを目視的に把握することが可能となる。したがって、注目対象を特定しての周囲状況の把握が正確に行える。
【0055】
さらに、本願発明によれば、透視画像変換を施すことにより得られた透視画像を補完する景観画像が撮像により得られる。したがって、例えば、遠くのものはレーダー情報を利用し、近くのものは撮像を利用することにより、より近接したものと遠方のものとを差別化して把握することが可能となる。このことにより、船舶の近傍で自船の陰になる部分や、プラスチック船体等レーダーで捕捉しにくい映像が得られ、安全上より注目すべき対象を浮かび上がらせることが可能となる。また、目視中心線の回動に連動して景観画像を取り込んでいるため、真に注目したい対象を中心に目視認識を支援できる。
【0056】
また、本願発明によれば、景観画像のうち少なくとも視野範囲外の画像を中心に重畳画像近傍に表示することにより、例えば、前方の景観を注目している時に、真後ろの景観を表示しハックミラー的な表示が可能となる。つまり、周囲環境を併せて表示することにより、操船者・監視者はより周囲状況のイメージを正確に構築することができる。
【0057】
さらに、本願発明によれば、水平画像が略水平に表示され、透視画像が立設して表示されるため、人間の感覚により近く、操船者による目視及び把握、他船の同定がより容易・確実になる。すなわち、平面的把握は水平的に表示させ、立面的視野に係る透視画像は立面的に表示させることで、操船者・監視者は感覚のずれを感じないですみ、操船者・視認者の違和感を最小化するため、より安全な操行が可能となる。また、略窓面に表示される重畳画像の下方手前に、平面情報表示器が略水平に配置されているため、操船者・視認者は視線を大きく変える必要が無く、目視景観と重畳画像、また平面情報表示器で得られるレーダー360°平面情報等各種情報から、迅速かつ的確に自船の置かれた状況や他船、浮体等の状況が把握、判断できる。
【0058】
また、本願発明によれば、AIS(船舶自動識別装置)情報、ARPA(自動衝突予防援助装置)情報のうち少なくとも一つを含む他船安全情報が文字情報として重畳表示されるので、たとえば安全操行上注目すべき対象の詳細情報を、かかる対象を本支援装置上でポイントするという簡単な操作により入手することができる。
【0059】
さらに、本願発明によれば、他船安全情報が重畳画像における略水平線近傍以上の空間部に表示されるにより、他船が近傍に存在していたとしても表示上の支障がなくなる。これにより、安全上注目すべき対象を漏れなく表示させることが可能となる。
【0060】
また、本願発明によれば、船舶の周囲景観を赤外線画像を含む補完画像として取り込むことにより、レーダーにかからないものをも捉える補完手段によりレーダーを補い、安全上支障となり得る対象の捕捉度を向上させることが可能となる。これによれば、船舶の近傍で自船の陰になる部分や、プラスチック船体等レーダーで捕捉しにくい情報が得られ、安全上より注目すべき対象を浮かび上がらせることが可能となり、特に、夜間や霧の中であってもレーダーや目視で認識できない対象を的確に捕捉できる。
【0061】
さらに、本願発明によれば、船舶の安全上の支障となる可能性のある対象の存在を警告表示させることにより、操船者の注意をより喚起し、安全度を向上させる。したがって、操船者・監視者が何らかの事情により万が一注意対象の特定を漏らしたとしても、かかる懈怠を補完することが可能となる。
【0062】
また、本願発明によれば、位置調節手段により、重畳画像、操船者の視点、及び周囲の目視景観を合わせるための水平方向及び/もしくは上下方向の微調整がなされることで、周囲の目視景観との重畳がさらに精密なものとなり、安全上脅威となり得る対象の抽出精度が高まる。
【0063】
さらに、本願発明によれば、レーダーエコー信号として入手される情報を元に他船・周囲状況等の情報が、操船者の視点からの透視画像という操船者にとってより感覚的に把握しやすい形に変換されこれが目視景観に重畳されて表示されることから、目視と表示画像との差異がほぼなくなり、目視上の他船が容易に同定される。さらに、レーダー本体の全方位情報を活用して、操船室の広範囲の視界に適用することができ、特別な情報源や装置が不要となる。また、平面画像情報と透視画像情報の双方が利用でき、操船者・監視者の目視を有効に支援し、安全な操行を支援することになる。
【0064】
また、本願発明によれば、より注目したい対象に向けて回動させることで、これを目視的に把握することが可能であり、船舶という広範囲の視界が要求される用途において視野角の狭さを有効にカバーする。つまり、対象を特定して積極的に情報収集することが可能となり、また、操船者にとっても感覚上の違和感が最小化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0065】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。なお、以下では、本発明の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本発明の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。
【0066】
図1は、本発明の一実施形態に係る目視認識装置1を含む全体構成を示す概要図である。同図に示すとおり、目視認識装置1は、レーダーアンテナ2と、RADAR/ARPA3と、インターフェースユニット4と、AISレシーバ5と、GPSレシーバ或いはサテライトコンパス6と、ジャイロコンパス7と、補完情報装置(図示しない)とを備えて構成される。
【0067】
装置1は、たとえば組込用PC(パーソナル・コンピュータ)で一部を構成してもよく、様々な機能を備えるプログラムを内蔵するか、もしくはプログラム等を搭載した別個の記憶媒体(図示しない)によって起動可能な情報処理装置として実現してもよい。本システム稼働中に、リアルタイムで遅れなく表示を行い、また操作に対応する動作を行う能力を有することが好ましい。ローカルエリアネットワーク(以下、「LAN」ともいう。)を介して接続され、レーダーエコー信号の取得、レーダーターゲットの捕捉及び解除、捕捉したレーダーターゲット情報の取得(例えば、進路(course)、速度、最接近距離(DCPA)、最接近時間(TCPA)を含む。)、自船情報の取得(例えば、針路(Heading)、経緯度(Lat.Lon.)対地速度(S.O.G.)、対地進路(C.O.G.)を含む。)が可能である。
【0068】
RADAR/ARPA3は、レーダーアンテナ2を介して船舶の周囲環境及び/もしくは他船状況に関する情報を取得する機能を有している。
【0069】
インターフェースユニット4は、RADAR/ARPA3で取得した周囲状況に係るデータ・信号を目視認識装置1に受け渡す役割を果たすもので、たとえば、外部機器:レーダインターフェイス、入力端子:LAN、外部機器:AIS、入力端子、外部機器:ジャイロコンパス、さらにこれらの接続に必要な総てのケーブルを含み、また、USB2.0、IEEE1394をそれぞれ単数もしくは複数備えるものを含んで構成されている。
【0070】
AISレシーバ5は、パーソナルコンピュータとインターフェースを介して接続され、他船のAIS情報を取得する機能を有している。
【0071】
GPSレシーバ或いはサテライトコンパス6は、インターフェースを介して接続され、GPS情報(例えば、経緯度(Lat.Lon.)、対地速度(S.O.G.)、対地進路(C.O.G.)、針路(Heading)を含む。)を取得する機能を有している。なお、GPS情報は、RADAR/ARPA3に入力されているものをRADAR/ARPA3から取得する場合と、GPSレシーバ6から取得する場合があるので、設定により選択できる構成が好ましい。
【0072】
ジャイロコンパス7は、インターフェースを介して接続され、ジャイロコンパス情報(例えば、真北を含む。)を取得し、ジャイロコンパス情報からGPS情報に係る針路(Heading)を計算し得る。なお、ジャイロコンパス情報及びGPS情報の針路(Heading)に係る情報は、RADAR/ARPA3に入力されているものをRADAR/ARPA3から取得する場合と、ジャイロコンパス7から取得・計算する場合があるので、設定により選択できる構成が好ましい。
【0073】
補完情報装置(図示しない)は、船舶の周囲景観を赤外線画像を含む補完画像として取り込み、こうして取り込まれた補完画像を後述の重畳用表示装置34に補完表示させる機能を有している。
【0074】
また、本装置1には、RADAR/ARPA3からの他船情報に基づき、安全上の支障となる可能性のある対象をたとえばその距離情報と速度情報の一定閾値以上のものをピックアップする機能により抽出し、これについての詳細文字情報を強調文字によって表示させ、及び/或いは音声、匂い等の人間の諸感覚に強調的に訴える装置を備える警告表示部(図示しない)をさらに備えて構成してもよい。
【0075】
図2は、本発明の一実施形態に係る目視認識装置1の詳細な構成図である。同図に示すとおり、目視認識支援装置1は、水平状況表示装置11、重畳用表示装置画像源12、操作部13及びバランスウェイト14のうち少なくとも一つを有するメインシステム部10と、筐体21、回転式架台22及びスタンド23のうち少なくとも一つを有する架台部20と、コンバイナ31、レンズ32、ミラー33、フィルタ34及びその他取り付け冶具(図示しない)のうち少なくとも一つを有する光学部30とを具備して構成されている。
【0076】
メインシステム部10は、図1記載のRADAR/ARPA3と、LANを介して接続され、上記記載のレーダーエコー信号の取得、レーダーターゲットの捕捉及び解除、捕捉したレーダーターゲット情報の取得、自船情報の取得ができる。また、AISレシーバ5、GPSレシーバ或いはサテライトコンパス6、ジャイロコンパス7とは、それぞれのインターフェースを介して接続され、AIS情報を得たり、ジャイロコンパス情報及びGPS情報に係る針路を計算することができる。
【0077】
水平状況表示装置11は、液晶を用いたディスプレイ画面を示し、RADAR/ARPA3に係る所定の情報或いはジャイロコンパス7に係るコンパス情報を表示することができる。また、そのスペックに限定はないが、入力信号はDVI及びRGBで、スタイラス等のペン状の指示器が使用可能なタッチパネルであることが好ましい。なお、dimmer機能を有し、ボリューム状のつまみにより常時調光可能な構成がより好ましい。
【0078】
重畳用表示装置画像源12は、RADAR/ARPA3、AISレシーバ5等、GPSレシーバ或いはサテライトコンパス6及びジャイロコンパス7から得た各種情報を基に重畳用表示装置34に表示させる画像源を投影する機器であり、スペックに限定はない。また、バランスウェイト14は、メインシステム部10と架台部20と光源部30との接合時に、目視認識装置1の重心をスタンド21の中心線に保つための調整冶具であり、その重さに限定はない。
【0079】
架台部20は、メインシステム部10を回転式架台22で支え、スタンド23で目視認識装置1の全体構成を保つものである。回転式架台22は、メインシステム部10がコンパス中心9を軸としてピッチ及びヨー方向に回転させるものである。また、方位角を検出するための回転角検出装置(図示しない)が取り付けられている。かかる筐体21には、重畳用表示装置34が取り付けられている。回転式架台22が回動し得ることから、視野角の狭さがカバーされる。また、この回転操作は、現在コンパス上で他船や物標の方位を測定する動作と非常に親和性が高いため、違和感なく操船者に受け入れられることが期待できる。なお、筐体21、回転式架台22及びスタンド23に係る寸法や材質に限定はない。
【0080】
光学部30は、メインシステム部10に係る重畳用表示装置画像源12の映像をミラー33で写し、レンズ32を介してコンバイナ31によりレンズ32で反射された反射映像と重畳用表示装置34に係る背景とを重畳させて操船者が観測することができるようにするものである。なお、コンバイナ33は、透過機能と反射機能とを具備し、反射映像と背景とを重畳して見せる機能を持つ半透過反射板である。
【0081】
図3は、本発明の一実施形態に係る目視認識装置1のメインシステム部10の操作部13の詳細な構成を示す詳細図である。同図において、操作部13は、電源1301、グリップ1302、トラックボール1304、重畳表示装置dimmerつまみ1306、入力切替えスイッチ1307、水平状況表示装置dimmerつまみ1308のうち少なくとも一つを有するが、これらに限定されず、他の要素機能を備えていても良い。グリップ1302或いはトラックボール1304は、操作するための同機能を果たし得るため、いずれか一つを選択してもよいし、随時用途や場面に応じて使い分けてもよい。
【0082】
図4は、本発明の一実施形態に係る目視認識装置1のシステム構成図である。同図において、メインシステム部10と架台部20と光学部30との関連が概念図として示される。メインシステム部10は、図1記載の構成のほか、メインシステム本体15、スピーカー16及びマイク17を有している。メインシステム本体15は、図1記載のRADAR/ARPA3、AISレシーバ5、GPSレシーバ或いはサテライトコンパス6及びジャイロコンパス7と、各種インターフェースで接続されている。また、架台部20に係る回転角検出器(付番しない)と接続され、回転式架台22の回転による方位角或いは仰俯角を検出する機能を備えている。
【0083】
次に、重畳用画像表示装置34への表示画像の概念とともに、本装置の機能・作用の詳細を説明する。
【0084】
図5は、本発明の一実施形態に係る目視認識装置1の重畳用画像表示装置34に表示する画像表示の概念を示す図である。同図において、(1)重畳用画像表示装置34を目視するための視点8を定めるにおいて、自船仕様(例えば、船橋からの床高さ、レピータコンパス位置、レーダーアンテナ位置等を含む。)及びGPS情報(Lat.、Lon.)から視点水平位置(同図では、視点水平位置を水平線bとしている。)及び視点高さを決定させ、(2)水平状況表示装置11の表示画面に係る覆域海面に、レーダーエコー、レーダーターゲット及びAIS情報等をマッピング(配置)し、(3)透視画像平面aを仮定し、海面上のレーダーエコー、他船シンボルを透視画像平面上に変換(写像)し、(4)架台部20から与えられる重畳用表示装置光学部を介す場合の光学幾何学補正式を、透視画像平面a上の表示データに適用し、重畳表示用装置画像源12用表示データを作成する。なお、透視画像平面aに係る水平線bより下部に周囲環境情報或いは他船状況(本来は空中に存在する物体も含む。)を貼り付ける。
【0085】
図6は、本発明の一実施形態に係る目視認識装置1に係る透視画像平面aのパターンを示す図である。同図に示すとおり、透視画像平面aは水平線bを基準に、海対空が1対1の場合と、海対空が2対1の場合とに分けられる。海対空が2対1の場合は、近くの状況を表示したい場合に適している。
【0086】
図7は、本発明の一実施形態に係る目視認識装置1における重畳用表示装置画像源12から投影される画像に係る光路図を示す図である。同図において、重畳用表示装置画像源12から投影された画像は、ミラー33に入射光a、a´が入射し、反射角θ(図示しない)を持った反射光b、b´が反射する。反射光b、b´はレンズ32に入射し、コンバイナ31に入射光c、c´が略垂直に入射する。入射光c、c´は視点8に対し略水平に反射光d、d´を反射する。なお、図6に示す視点8の位置は図5に示すコンパス中央ではないが、視点8に目視される重畳画像は数マイル先の状況を示した画像であるため、その差は微小であり無視してよい。
【0087】
図8は、本発明の一実施形態に係る目視認識装置1に係る重畳用表示装置34で目視できる重畳用画像を示す図である。同図に示すように、重畳用表示装置34に係る画面上に表示される重畳用画像341は、水平線・捕捉線3401、船首尾線3402、方位線・方位表示3403、補助線3404、レーダーエコー3405、他船情報・引き出し線3406及び他船シンボル3407が重畳して構成される。このような各種補助線を重畳表示することで、操船者・監視者による正確な目視・状況把握の一層の支援が図られる。
【0088】
図9は、図8の補助線3404のさらに詳細な構成を示す図である。同図(A)に示すように、方位・距離表示補助線が付される方位・距離補助表示画像3404a、経緯度表示補助線が付される経緯度補助表示画像3404b、一定のグリッド線による補助線が付されるグリッド補助表示画像3404c、がそれぞれ備えられている。これらが補助線機能3404を構成して重畳画面に重畳表示されることで、操船者・監視者のさらに正確な状況把握を支援する。なお、補助線はこれらに限定されることなく、各種補助線であって、操船者・監視者の利便性を向上させるものであれば様々なものが採用されてよい。
【0089】
図10乃至12は、図8のうちの他船情報に係る表示部分、特にレーダーエコー3405、他船情報・引き出し線3406及び他船シンボル3407の絡む部分の詳細を示す図である。図10(A)に示すように、水平線が画面中央よりやや上部に水平に表示される。これにより、視認者は水平面を基準に他船等の近接関係を自身の感覚に適合させて把握することが可能となる。さらにこれに加えて、図10(B)に示すように、水平線より上の位置に船舶に関する文字情報が表示される。これにより、他船のシンボル(説明は後述)表示を妨げることなく、詳細なテキスト情報(船名、方向、速度等)を把握することが可能となる。
【0090】
さらにこの場合において、図11に示すように、近傍の船の情報は大きく、遠方の船の情報は小さく表示し、近傍の船の情報は上方に、遠方の船の情報は水平線よりに表示し、横切り船の横切り方向を、文字の右寄せ左寄せ、同航船は中寄せで表現する(旗のイメージ)といった工夫がなされている。これにより、視認者は、近傍・遠方の区別や、文字情報に隠れることなく漏れのない他船把握、横切り方向の把握が、自身の感覚に沿った形で可能となる。
【0091】
また、図12に示されるように、他船情報の表示方法として、捕捉線で捕捉、またはポインティングデバイスで指示した他船の情報は大きく表示させ、RADAR/ARPA3から衝突警報を受け取った他船のシンボルを赤く表示し点滅する、といった工夫を加えている。これにより注目対象の他船等がより強調されるので、補足対象から遺漏する可能性が低くなり、安全操行をより確実にする。
【0092】
なお、他船情報に係る表示部分については、操船者・監視者の注意力を一層引き付けるもの、注意力を持続させるもの、情報取得を容易にするものであれば、これら以外の工夫が採用されてもよい。
【0093】
図13は、上記に説明した構成を持つ目視認識装置1に外部状況を撮像するカメラ、及び/もしくは操作状況を撮像するカメラを更に備える構成を示す構成図である。同図において、上記、特に図2で説明した事項と重複する箇所は図2の説明をもって替える。同図に示されるように、外部状況カメラを更に備えることにより、外部状況がさらに表示されて操船の便宜がさらに向上する。また、操作状況カメラを更に備えることにより、操船状況の記録をとることが可能となり、事故発生時の操船上の原因追及の便宜がさらに向上する。
【0094】
次に、上記のように構成される本装置の動作・使用方法を説明する。
【0095】
操船者もしくは監視者は、メインシステム部10の前にて周囲状況の監視を行う。この監視に当たっては、水平状況表示装置11により周囲の平面的位置を把握し、前方の重畳用表示装置34により、前方にある障害物、他船等の位置を把握する。このとき、かかる重畳用表示装置34に表示される透視画像中の他船、障害物等の情報は、RADAR/ARPA3もしくは補完情報装置(図示しない)に基づくレーダー及び/もしくは赤外線等の非レーダー情報を元にしているため、たとえ天候不順等により前方の視野が開けていない場合であっても、漏れなく前方の対象を把握することができる。さらに、平面的な位置関係は略水平に設置された水平状況表示装置11により、立面的位置関係は立面的に設置された重畳用表示装置34により、それぞれ視認するので、より人間の感覚に近似した把握が違和感なく可能となる。さらにこのとき、立面画像は透視画像となっているので、近いものは近く、遠くのものは(小さく)遠くに表示されるため、人間感覚に忠実でスムーズな把握ができる。
【0096】
ここで、操船者もしくは監視者が特定の対象が、たとえば近接している、或いは高速度で迫っているために、この対象物の詳細を把握したいと考えた場合には、重畳用表示装置34の表示面或いは水平状況表示装置11の表示面上で、たとえばカーソルによりこれをポイントする。ポイントされた対象物のARPA情報、AIS情報、GPS情報等が、上述したとおり、現に操船者等が見ている(重畳用表示装置34或いは水平状況表示装置11の表示)画面に重畳して表示されるので、操船者等は、迫り来る対象物から目を離すことなく、より正確な情報を掴むことができる。したがって、これまでのように一旦前方から目を他に転じて情報収集する必要がなくなり、より一層の安全操船を可能とする。
【0097】
さらにこのとき、進行方向とは別の方向の他船等の情報を得たいとした場合、回転式架台22を回転させることで、上記重畳画像が連動して対向面方向の重畳画像の表示に変動するので、視野角の狭さがカバーされる。また、この回転操作は、現在コンパス上で他船や物標の方位を測定する動作と非常に親和性が高いため、違和感なく操船者に受け入れられることが期待できる。これらにより操船者・監視者にとっての監視の利便性が向上する。
【0098】
本発明の代替的な一実施態様によれば、メインシステム部はGPS、ジャイロコンパス、ARPA、AISからの情報を統合し、レーダーエコー及び他船シンボルを操船者の視点からの透視画像に座標変換し重畳用表示装置に表示する。また操船者の表示設定に合わせて、方位線や補助線や重畳用表示装置に表示する。水平状況表示装置には実際の方位に対応したコンパス画像を表示する。メインシステム部には重畳表示用表示装置、水平状況表示装置、レーダーターゲットの捕捉や解除、表示設定の変更に用いられる操作部を含む。
【0099】
本発明の別の代替的な一実施態様によれば、コンパス前方の重畳用表示装置(半透過型ディスプレイ)に、レーダー/ARPA
の情報を表示し、本装置側から他船のレーダー捕捉・解除可能な目視認識支援装置として実現される。重畳用表示装置に、レーダーエコー及び捕捉した他船シンボルを重畳して表示する際、レーダーエコーや他船シンボルは、操船者視点からの透視画像に変換して表示される。その結果、実景観上の他船と重畳用レーダーエコーはほぼ重なって表示されるため、レーダー上の他船と、目視上の他船を容易に同定できる。船舶では、他のヴィークルの操縦席等に比し比較的空間に余裕があることから、半透過型情報表示機能全体を架台として回転させることにより覆域を広げ、視野角が狭いことをカバーする。また、この回転操作は、現在コンパス上で他船や物標の方位を測定する動作と非常に親和性が高いため、違和感なく操船者に受け入れられることが期待できる。本装置は、既存のレーダー、GPS等の航海機器から情報を受け取るので、各船舶において新たなアンテナ、センサ等の設置は不要である。
【実施例】
【0100】
次に、本願発明の一実施例を説明する。本装置はコンパス前面に半透過型のディスプレイを用いて、景観と重なるように方位や経緯度を、本船からの距離を表示するとともに、他船と重ねてARPAやAISから得られた他船情報を表示するものである。また、本装置から捕捉前のレーダーターゲットを捕捉することや、捕捉済みのレーダーターゲットの解除及びARPAからの警告の確認を行うことを可能とする。
1.メインシステム部 構成
メインシステム部はGPS、ジャイロコンパス、RADAR/ARPA、AISからの情報を統合し、レーダエコー及び他船シンボルを操船者の視点からの透視画像に座標変換し重畳用表示装置に表示する。また操船者の表示設定に合わせて、方位線や補助線や重畳用表示装置に表示する。水平状況表示装置には実際の方位に対応したコンパス画像を表示する。
メインシステム部には重畳表示用表示装置、水平状況表示装置、レーダーターゲットの捕捉や解除、表示設定の変更に用いられる操作部を含む。
2.ハードウェア仕様
2.1 組込用PC
・本システム稼働中に、リアルタイムで遅れなく表示を行い、また操作に対応する動作を行う能力を有すること。
2.2 重畳用表示装置
信号入力 DVI及びRGB
dimmer機能を有すること
dimmer
機能は、ボリューム状のつまみによって常時調光可能なこと
dimmer
調整用のつまみは、指定位置に取り付け可能なこと
ベゼルが極力少ないものであること
2.3 水平状況表示装置
信号入力 DVI及びRGB
dimmer機能を有すること
dimmer
機能は、ボリューム状のつまみによって常時調光可能なこと
ベゼルが極力少ないものであること
スタイラス等のペン状の指示器が使用可能なタッチパネルであること
2.4 操作部
視点高さ調整器(バネ入り原点自動復帰)、拡大縮小調整器(バネ入り原点自動復帰)、情報量調整器については、スライダ型と回転型とする。
【0101】
スライダ型については、バネ入り自動復帰のものと、保持型のもの
各1の予備を準備する。
各操作部のソフトウェア的な実装については、各操作要素を接続し、操作権を切り換えれば使用できる状態にあることとする。
3.ソフトウェア一般仕様
3.1 基本環境
3.2 RADAR/ARPA
との接続及び操作
【0102】
LAN経由でレーダーインターフェースを介し、RADAR/ARPAに以下の操作を可能とする。
・レーダーエコー信号の取得
・レーダーターゲットの捕捉及び解除
・捕捉したレーダーターゲット情報の取得(進路(course), 速度, 最接近距離(DCPA),最接近時間(TCPA))
・自船情報の取得(針路(Heading), 経緯度(Lat. Lon.) , 対地速度(S.O.G.) , 対地進路(C.O.G))
・EBL(電子カーソル)、VRM(可変距離環) の操作
3.3 AISレシーバ
との接続及び情報の取得
・AISレシーバまたは同模擬信号を発するPCと、インターフェースを介し接続し、他船のAIS情報を取得すること
3.4 架台部方位角検出装置との接続及び情報の取得
・架台部方位角検出装置(回転角検出器)からの出力に基づき、全方位360度について、0.1度の精度で装置の回転方位を得ること。
3.5 その他の機器との接続
3.5.1 GPSレシーバとの接続及び情報の取得
・GPSレシーバとインターフェースに基づくGPS情報(経緯度(Lat. Lon.) , 対地速度(S.O.G.) , 対地進路(C.O.G)),
針路(Heading, サテライトコンパスの場合))を取得する
3.5.2 ジャイロコンパスとの接続及び情報の取得
・ジャイロコンパスとインターフェースを介し接続し、ジャイロコンパス情報(真北)を取得する
・真北情報から、Heading を計算する能力を有する
4.重畳用表示について
4.1 重畳用表示概念
(1) 自船仕様(船橋床高さ、レピータコンパス位置、レーダアンテナ位置)、GPS情報(Lat.,
Lon.) から、視点水平位置及び視点高さが定まる
(2) レーダエコー、レーダターゲット、AIS情報を、覆域海面にマッピング(配置)する
(3) 透視画像平面を仮定する。そして、海面上のレーダーエコー、他船シンボルを透視画像平面上に変換(写像)する
(4) 架台部
から与えられる、重畳用表示装置光学部を介す場合の光学幾何補正式(表)を、透視画像平面上の表示データに適用し、重畳表示用表示装置 画像源用表示データを作成する。
4.2 重畳用表示内容
重畳用表示装置に表示される内容は、階層構造からなる。
・水平線・捕捉線
・船首尾線
・方位線・方位表示
・補助線
・レーダーエコー
・他船情報・引き出し線
・他船シンボル
5.機能仕様
5−1設定
(1)設定ファイル
・各種設定パラメータは、全てtext形式設定ファイルに記述される。起動時または必要時に読み込むことにより、各機能が設定値に設定される。
(2)設定項目:初期設定項目として、以下の情報を入力する
・船名:整理に利用する
・船橋高さ:標準喫水の時の海面から船橋床面までの高さ。船橋床面から目視認識支援装置使用時の眼の高さとの和が、視点(EP : Eye Point)高さとなる。
・RADARアンテナの位置:目視認識支援装置位置上の自船位置補正に使用
・GPSアンテナの位置:目視認識支援装置位置上のレーダーエコー位置補正に使用
5−2情報源の選択
(1)船首方位:船首方位はジャイロコンパス、サテライトコンパス、RADAR/ARPAを同時に接続した状態で、設定画面より何れを用いるか選択できる
(2)現在位置:現在位置の経緯度座標は、GPSレシーバ(またはサテライトコンパス)、RADAR/ARPAを同時に接続した状態で、メニューより何れを用いるか選択できる
(3)AIS情報:AISによる他船情報は、AISレシーバまたは同信号を模擬するPCから取得する
5−3重畳用表示
(1)概要:目視認識支援装置の所定の位置に視点を置いて前方を光学部の半透過型表示装置を透して見た場合、以下に示す基本表示と、目測を取りやすくするための補助表示、レーダーエコーが、海面上に重なるように透視表示されること。各表示機能について以下に示す。目視認識支援装置の回転に応じ、装置の方位角を検出し、方位角に対応する表示をリアルタイムで更新する。
(2)色調:全表示の色調を一括して、調整する機能を有する。緑系、赤系、白系、黄系、青系
に関しては予め準備されている。
5−4基本表示
(1)水平線
・水平線を表示する。
・太さ、色、線種、濃淡(透明度)を調整可能とする
(2)捕捉線
・目視認識支援装置の中央正面延長線上のラインを「捕捉線」と呼び、常時正面中央に表示する。
・太さ、色、線種、濃淡(透明度)を調整可能とする
(3)船首尾線
・目視認識支援装置の方位角を基に船首尾線を表示する
・太さ、色、線種、濃淡(透明度)を調整可能とする
(4)方位目盛
・水平線上に方位目盛りを表示する。
・方位目盛りは真方位と船首方位を零度とした相対方位を選択可能とする。
・方位目盛りは、360度表示、32点表示から選択可能とする。
・時計表示の場合、方位目盛りは真方位(360度表示、32点表示)、船首方位を零度とした相対方位を選べるものとする。
・太さ、色、濃淡(透明度)を調整可能とする
(5)方位表示
・方位表示は度表示の場合は10度毎に表示する。
・点表示の場合で真方位の場合は、N,NNE, NE の様に16方位分を表示する。
・表示・非表示、フォント、文字の大きさ、色、濃淡(透明度)を調整可能とする
5−5補助表示
目測を容易にするために、海面に重畳して以下の表示を可能とする
・自船からの距離の増大にしたがい、線の太さ、または、色の濃淡(透明度)を変化させることが可能なこと
・視点高さ調整器、拡大縮小調整器
の操作にリアルタイムに反応して、補助表示も更新されること
(1)方位・距離表示
・自船の目視認識支援装置コンパス中央を中心とした、方位線及び等距離円を表示する
・目視認識支援装置の回転に応じ、方位線は海面に留まるように回転すること
・表示・非表示、線種、フォント、文字の大きさ、色、濃淡(透明度)を調整可能とする
(2)経緯度表示
・海面に経緯度を表示する
・経緯度は自船の移動に従い、実際の経緯度どおりに更新されること
・経緯度の値を表示可能なこと
・経緯度間隔を設定可能なこと
・表示・非表示、線種、フォント、文字の大きさ、色、濃淡(透明度)を調整可能とする
5−6レーダーエコー
・LANケーブルで接続したレーダインターフェイスを介して、RADAR/ARPAに対しレーダdll を使用し呼び出すことによりレーダーエコーを取得する。
・レーダーエコーは自船レーダアンテナを中心としたPPI表示(真上から見た表示)であるので、エコーを海面に貼り付いていると仮定した上で、視点からの透視画像に変換し表示する。「視野」範囲のレーダエコーを、透視画像平面上に変換する
・表示・非表示、色、濃淡(透明度)を調整可能とする
5−7レーダ他船捕捉及び解除
・捕捉線と重なった他船、(2)−3:右グリップポインティングスティック、または(3)−3:トラックボールによってカーソルをあわせて、(2)−1:Aトリガー (3)−1:トラックボールの左ボタンを押した他船については、AIS情報を表示する。またARPA捕捉を開始し、進路、速度、TCPA,
DCPA を判明次第表示する。
5−8他船シンボル表示:AIS信号を放送している、またはARPA捕捉中の他船は、レーダーエコーに重ねて他船シンボルを表示する。
・シンボルは IEC60872-1 その他関連するIEC, IMO の基準に準拠する
・他船シンボルは、画面貼り付けと海面貼り付けから選択できる
5−9他船情報表示:他船情報の表示は以下から選択できる
(1)直接重畳表示
・直接他船シンボルの脇に表示する
・表示情報の項目を設定可能とする
・情報表示の位置(上下左右斜め上、計八方向)は設定可能
・表示情報項目を設定可能
・情報を表示する文字のフォント、太さ、色、濃淡(透明度)を調整可能とする
・全て重なるか、または距離が近いものほど上に表示調整可能とする
・警報が鳴っているものを、上に表示調整可能とする
(2)引き出し表示
・他船シンボルから上または斜めに引き出し線を出し、水平線より上方に他船情報を表示する
・表示情報の項目を設定可能とする
・情報表示の位置を設定可能とする
・表示情報項目を設定可能とする
・情報を表示する文字のフォント、太さ、色、濃淡(透明度)を調整可能とする
・全て重なるか、または距離が近いものほど上層に表示調整可能とする
・情報が互いに重ならないように、位置を自動でずらして表示可能とする
(3)引き出し表示(真上)
・他船シンボルより上方に他船情報を表示する
・引き出し線は全て水平線に対し、垂直とする
・情報の横書き表示、横書きにしたまま縦・斜め表示、縦書き表示を設定可能とする
・情報表示の位置(上下左右斜め上、計八方向)は設定可能
・表示情報項目を設定可能
・全て重なるか、または距離が近いものほど上に表示調整可能とする
・情報を表示する文字のフォント、太さ、色、濃淡(透明度)を調整可能とする
・距離と連動して情報を表示する文字のフォント、太さ、色、濃淡(透明度)を調整可能とする
・距離と連動して情報を表示する位置を、水平線により近くまたは遠方に表示可能とする。
・横切り船の横切り方向に応じて、情報の表示方法を右寄せ、左寄せ、中寄せ(同航・反航船)に設定可能とする
(4)共通事項
・捕捉線で捕捉、またはポインティングデバイスで指示した他船の情報は大きく表示される
・RADAR/ARPAから衝突警報を受け取った他船のシンボルを赤く表示し点滅させる。
5−10視点高さの調整
・他船は船首方向の水平線近傍に集まることとなるため、水平線近傍の他船の情報や位置関係が認識しづらい。
・そこで一つの可変調整器によって視点高さを変更できる視点高さ調整器を備える。
・視点高さは調整器の調整に従い直ちにインタラクティブに変化する。また、手を離すと船橋高さまで自動復帰する
・調整器の操作と動作の関係を設定可能なこと
5−11表示画像の拡大・縮小(圧縮)
・一つの可変調整器によって、一時的に視野を拡大・縮小できる拡大縮小調整器を備える
・画像の拡大縮小は、視点と透視画像平面の位置関係の比を変更することにより行う。
【0103】
・視点高さは調整器の調整に従い直ちにインタラクティブに変化する。また、手を離すと基本位置まで自動復帰する
・調整器の操作と動作の関係を設定可能なこと
5−12表示情報量の調整
・一つの可変調整器によって表示情報量を調整できる情報量調整器を備える
・調整器の操作と動作の関係を設定可能なこと
・調整は、船首方向・DCPA・TCPAの三つの要素から判定する
5−13更新レート
(1)表示は可能な限りリアルタイムで更新すること
(2)目視認識支援装置の回転、視点高さ調整器の使用、拡大縮小調整器の使用については、操作に対応してインタラクティブに更新されること。その際、視点の変化に対する更新を優先し、表示情報の更新は一時保留となることも可とする。
(3)更新優先順位
・捕捉線、船首尾線、水平線、方位目盛り(大目盛り)、方位表示(以上要30Hz)
・ポインティングデバイスで指示または、捕捉線と重なった他船情報(要10Hz以上)
・警報
・他船シンボル
・他船情報(警報が出ているもの)
・レーダーエコー(以上2Hz 以上)
・その他の他船情報
・その他操作系の表示(以上1Hz 以上)
5−14光学補正
・視点と景観画像の間に仮想の透視画像平面を設定する。その際、透視平面の各座標と重畳用表示装置画像源の各座標の関係は、数式(行列式を含む)または表の形で、重畳用表示装置光学部より与えられるので、適切な透視画像が表示されるように、変換した画像を生成し、画像源に出力する機能とする。
5−15表示画像:画像位置調整のため以下の機能を有する
5−16位置調整機能
・表示画像の拡大縮小
・表示画像位置の左右及び上下移動
5−17水平状況表示装置
(1)入力切り換えスイッチの選択により、コンパス画面またはレーダ画面を表示する。
(2)画像位置調整のため以下の機能を有する
・表示画像の拡大縮小
・表示画像位置の左右及び上下移動
(3)コンパス画面は、コンパスローズの他、2種類以上を選択可能とする
5−18操作・警告音出力
・設定したイベント(警報、他船情報選択等)が発生した際に、警告音を発生する機能とする。
・警告音は、ファイルの形で用意される。
・設定により、出力・非出力、音声ファイルの選択を可能とする。
【0104】
以上、詳細に説明したように、本願発明によれば、操船者の視点からの透視画像に変換されて表示されることから、目視と表示画像との差異がほぼなくなり、レーダー上の他船と目視上の他船とが容易に同定される。したがって、操船者の監視負担を軽減し、より安全な操船が可能となる。
【0105】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。
【0106】
たとえば、上記説明では、主に海洋における船舶航行時の周囲状況把握の場面を例にとって説明したが、本願発明に係る技術思想はその本質上、船舶の操船時のみならず、車輌操行、航空機操縦の際の周囲の安全状況把握にも応用することができるものである。また、たとえば、水平面的な情報を略水平に、立面的情報を率面に表示させるという思想は、現在の車輌・航空機では総てを立面的に表示していることが人間工学的に、人間感覚に対する歪みを与えている点に鑑みれば、他産業であっても応用・利用可能性とその価値は計り知れないものがある。
【0107】
またたとえば、上記では補完情報として赤外線による情報を重畳表示する態様を例示的に示したが、本願の技術思想上、その他たとえば、近紫外パルスレーザー(波長380〜200nm)照射、遠紫外パルスレーザー(波長200〜10nm)照射光を利用するもの、或いは蛍光、水ラマン散乱光、弾性散乱光の全部もしくは一部から取得する情報を用いる場合も適用可能である。
【0108】
また、上述したものは本発明に係る技術思想を具現化するための実施形態の一例を示したにすぎないものであり、他の実施形態でも本発明に係る技術思想を適用することが可能である。
【0109】
さらにまた、本発明を用いて生産される装置、方法、システムが、その2次的生産品に搭載されて商品化された場合であっても、本発明の価値は何ら減ずるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0110】
上述したように、船舶操行中の周囲の状況把握に、目視及びレーダー等の確認を効率化・簡易化し、目視での状況認識を基本としてレーダー等でその認識を支援するべく船舶の輻輳海域での操船時の監視において、人間の目視景観とレーダー上の他船・周囲状況等の情報とを重畳させて表示させることで、見張り作業の負担を軽減し、如何なる状況下でも操船判断を的確に行うことを支援する本願発明は、船舶は勿論のこと、さらに、海洋、水系で用いられる乗り物の操縦一般の際に、周囲状況の判断を的確に行うことを支援するものである。
【0111】
したがって、本願は、船舶は無論、海洋、水系で用いられる浮体や乗り物等に広く適用できるものであり、これらの製造産業を初め、これに付帯する海運業、運送業、旅行業等幅広い産業において利用可能性が高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の一実施形態に係る目視認識装置1を含む全体構成を示す概要図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る目視認識装置1の詳細な構成図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る目視認識装置1のメインシステム部10の操作部13を示す詳細図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る目視認識装置1のシステム構成図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る目視認識装置1の重畳用画像表示装置34に表示する画像表示の概念を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る透視画像1本発明の一実施形態に係る目視認識装置1に係る透視画像平面aのパターンを示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る目視認識装置1におけるメインシステム部10の重畳用表示装置画像源12から投影される画像に係る光路図を示す図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る目視認識装置1に係る重畳用表示装置34に目視できる重畳用画像を示す図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る図8の補助線3404のさらに詳細な構成を示す図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る図8のうちの他船情報に係る表示部分、特にレーダーエコー3405、他船情報・引き出し線3406及び他船シンボル3407の絡む部分の詳細を示す図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る図8のうちの他船情報に係る表示部分、特にレーダーエコー3405、他船情報・引き出し線3406及び他船シンボル3407の絡む部分の詳細を示す図である。
【図12】本発明の一実施形態に係る図8のうちの他船情報に係る表示部分、特にレーダーエコー3405、他船情報・引き出し線3406及び他船シンボル3407の絡む部分の詳細を示す図である。
【図13】本発明の別の一実施形態に係る目視認識装置1に外部状況を撮像するカメラ、及び/もしくは操作状況を撮像するカメラを更に備える構成を示す構成図である。
【符号の説明】
【0113】
1…目視認識支援装置、2…レーダーアンテナ、3…RADAR/ARPA、5…AISレシーバ、6…GPSレシーバ/サテライトコンパス、7…ジャイロコンパス、10…メインシステム部、11…水平状況表示装置、12…重畳用表示装置画像源、20…架台部、22…回転式架台、30…光学部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の周囲環境及び/もしくは他船状況に関するレーダー情報を取得するレーダー情報取得部と、該取得されたレーダー情報を操船者の視点からの透視画像に変換する変換部と、この変換された透視画像を操船者の目視景観に重ねて重畳画像として表示させる表示部とを具備することを特徴とする目視認識支援装置。
【請求項2】
前記レーダー情報に基づいたARPA(自動衝突予防援助装置)情報及び/もしくはAIS(船舶自動識別装置)情報もさらに表示させたことを特徴とする請求項1記載の目視認識支援装置。
【請求項3】
覆域海面の船舶の周囲環境及び/もしくは他船状況に関するレーダー情報を取得するレーダー装置と、前記レーダー情報の水平面表示を行うための平面情報表示器と、前記レーダー情報に基づき目視景観に重ねて重畳画像を表示する重畳画像表示器と、少なくとも水平方向に回動可能な架台部と、該架台部の回動を検出する回転角検出手段と、前記レーダー装置により取得されたレーダー情報から平面表示情報を得るとともに該平面表示情報あるいは前記レーダー情報に光学幾何補正を加えて重畳表示情報を得る表示情報導出器と、該得られた平面表示情報及び重畳表示情報に基づきそれぞれ前記平面情報表示器及び重畳画像表示器に画像を前記回転角検出手段により検出される前記架台の回動に連動して表示させる画像源器とを具備することを特徴とする目視認識支援装置。
【請求項4】
前記重畳画像を目視景観に重ねるに当たり、水平線を基準として重畳させることを特徴とする請求項1乃至3のうち1項記載の目視認識支援装置。
【請求項5】
前記目視景観に重ねる重畳画像を、船舶の姿勢に応じて修正変換させたことを特徴とする請求項1乃至3のうち1項記載の目視認識支援装置。
【請求項6】
重畳画像の目視中心線を、手動を含む動力により回動可能とし、この回動に応じて前記重畳画像表示を連動して回動させたことを特徴とする請求項1乃至3のうち1項記載の目視認識支援装置。
【請求項7】
船舶の周囲景観を撮影する撮像手段を更に設け、前記目視中心線の回動に連動して景観画像を取り込み、該取り込まれた景観画像を重畳画像として、もしくは重畳画像近傍に表示可能としたことを特徴とする請求項6記載の目視認識支援装置。
【請求項8】
前記目視中心線の回動に連動して取り込んだ景観画像のうち少なくとも前記装置の視野範囲外の画像を中心に前記重畳画像近傍に表示したことを特徴とする請求項6記載の目視認識支援装置。
【請求項9】
前記重畳画像を表示させる表示面が立設して略窓面に表示される重畳画像の下方手前に、前記平面情報表示器を略水平に配置し、該平面情報表示器にレーダー平面画像、コンパス情報、電子海図情報、景観画像情報を平面画像に変換した平面景観画像の少なくとも一つを表示させたことを特徴とする請求項1乃至3のうち1項記載の目視認識支援装置。
【請求項10】
前記重畳画像において、特定される船舶に係るAIS(船舶自動識別装置)情報、ARPA(自動衝突予防援助装置)情報のうち少なくとも一つを含む他船安全情報を文字情報として重畳表示したことを特徴とする請求項1乃至3のうち1項記載の目視認識支援装置。
【請求項11】
前記他船安全情報を前記重畳画像における略水平線近傍以上の空間部に表示したことを特徴とする請求項10記載の目視認識支援装置。
【請求項12】
船舶の周囲景観を赤外線画像を含む補完画像として取り込み、該取り込まれた補完画像を前記レーダー重畳画像を補完するために前記重畳画像上に重ねて表示したことを特徴とする請求項1乃至3のうち1項記載の目視認識支援装置。
【請求項13】
前記レーダー重畳画像及び/もしくは補完画像のうち前記船舶の安全上の支障となる可能性のある対象の存在を警告表示する警告表示部をさらに備えることを特徴とする請求項12記載の目視認識支援装置。
【請求項14】
前記重畳画像、操船者の視点、及び周囲の目視景観を合わせるための水平方向及び/もしくは上下方向の位置調節手段をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至3のうち1項記載の目視認識支援装置。
【請求項15】
船舶の周囲環境及び/もしくは他船状況に関するレーダー情報をレーダー本体から取得し、前記取得したレーダー情報を操船者視点からの透視画像情報に変換し、前記取得したレーダー情報に基づき覆域海面の水平面画像情報を略水平面に設置された平面情報表示装置に表示し、前記変換された透視画像情報を周囲の目視景観と重畳するように重畳用表示装置に表示することを特徴とする目視認識支援方法。
【請求項16】
前記目視景観の目視中心線は回動可能とし、この回動に応じて前記水平面画像情報及び/もしくは前記透視画像情報が連動して回動することを特徴とする請求項15記載の目視認識支援方法。
【請求項1】
船舶の周囲環境及び/もしくは他船状況に関するレーダー情報を取得するレーダー情報取得部と、該取得されたレーダー情報を操船者の視点からの透視画像に変換する変換部と、この変換された透視画像を操船者の目視景観に重ねて重畳画像として表示させる表示部とを具備することを特徴とする目視認識支援装置。
【請求項2】
前記レーダー情報に基づいたARPA(自動衝突予防援助装置)情報及び/もしくはAIS(船舶自動識別装置)情報もさらに表示させたことを特徴とする請求項1記載の目視認識支援装置。
【請求項3】
覆域海面の船舶の周囲環境及び/もしくは他船状況に関するレーダー情報を取得するレーダー装置と、前記レーダー情報の水平面表示を行うための平面情報表示器と、前記レーダー情報に基づき目視景観に重ねて重畳画像を表示する重畳画像表示器と、少なくとも水平方向に回動可能な架台部と、該架台部の回動を検出する回転角検出手段と、前記レーダー装置により取得されたレーダー情報から平面表示情報を得るとともに該平面表示情報あるいは前記レーダー情報に光学幾何補正を加えて重畳表示情報を得る表示情報導出器と、該得られた平面表示情報及び重畳表示情報に基づきそれぞれ前記平面情報表示器及び重畳画像表示器に画像を前記回転角検出手段により検出される前記架台の回動に連動して表示させる画像源器とを具備することを特徴とする目視認識支援装置。
【請求項4】
前記重畳画像を目視景観に重ねるに当たり、水平線を基準として重畳させることを特徴とする請求項1乃至3のうち1項記載の目視認識支援装置。
【請求項5】
前記目視景観に重ねる重畳画像を、船舶の姿勢に応じて修正変換させたことを特徴とする請求項1乃至3のうち1項記載の目視認識支援装置。
【請求項6】
重畳画像の目視中心線を、手動を含む動力により回動可能とし、この回動に応じて前記重畳画像表示を連動して回動させたことを特徴とする請求項1乃至3のうち1項記載の目視認識支援装置。
【請求項7】
船舶の周囲景観を撮影する撮像手段を更に設け、前記目視中心線の回動に連動して景観画像を取り込み、該取り込まれた景観画像を重畳画像として、もしくは重畳画像近傍に表示可能としたことを特徴とする請求項6記載の目視認識支援装置。
【請求項8】
前記目視中心線の回動に連動して取り込んだ景観画像のうち少なくとも前記装置の視野範囲外の画像を中心に前記重畳画像近傍に表示したことを特徴とする請求項6記載の目視認識支援装置。
【請求項9】
前記重畳画像を表示させる表示面が立設して略窓面に表示される重畳画像の下方手前に、前記平面情報表示器を略水平に配置し、該平面情報表示器にレーダー平面画像、コンパス情報、電子海図情報、景観画像情報を平面画像に変換した平面景観画像の少なくとも一つを表示させたことを特徴とする請求項1乃至3のうち1項記載の目視認識支援装置。
【請求項10】
前記重畳画像において、特定される船舶に係るAIS(船舶自動識別装置)情報、ARPA(自動衝突予防援助装置)情報のうち少なくとも一つを含む他船安全情報を文字情報として重畳表示したことを特徴とする請求項1乃至3のうち1項記載の目視認識支援装置。
【請求項11】
前記他船安全情報を前記重畳画像における略水平線近傍以上の空間部に表示したことを特徴とする請求項10記載の目視認識支援装置。
【請求項12】
船舶の周囲景観を赤外線画像を含む補完画像として取り込み、該取り込まれた補完画像を前記レーダー重畳画像を補完するために前記重畳画像上に重ねて表示したことを特徴とする請求項1乃至3のうち1項記載の目視認識支援装置。
【請求項13】
前記レーダー重畳画像及び/もしくは補完画像のうち前記船舶の安全上の支障となる可能性のある対象の存在を警告表示する警告表示部をさらに備えることを特徴とする請求項12記載の目視認識支援装置。
【請求項14】
前記重畳画像、操船者の視点、及び周囲の目視景観を合わせるための水平方向及び/もしくは上下方向の位置調節手段をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至3のうち1項記載の目視認識支援装置。
【請求項15】
船舶の周囲環境及び/もしくは他船状況に関するレーダー情報をレーダー本体から取得し、前記取得したレーダー情報を操船者視点からの透視画像情報に変換し、前記取得したレーダー情報に基づき覆域海面の水平面画像情報を略水平面に設置された平面情報表示装置に表示し、前記変換された透視画像情報を周囲の目視景観と重畳するように重畳用表示装置に表示することを特徴とする目視認識支援方法。
【請求項16】
前記目視景観の目視中心線は回動可能とし、この回動に応じて前記水平面画像情報及び/もしくは前記透視画像情報が連動して回動することを特徴とする請求項15記載の目視認識支援方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−3274(P2010−3274A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−163903(P2008−163903)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【出願人】(501204525)独立行政法人海上技術安全研究所 (185)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【出願人】(501204525)独立行政法人海上技術安全研究所 (185)
【Fターム(参考)】
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