直動アクチュエータ用の磁気式荷重センサおよび直動アクチュエータ
【課題】直動アクチュエータに組み込んで使用したときにヒステリシス誤差が生じにくく、かつ、直動アクチュエータの軸方向長さを抑えることが可能な直動アクチュエータ用の荷重センサを提供する。
【解決手段】直動アクチュエータが対象物22に印加する軸方向荷重の大きさを検出する直動アクチュエータ用の磁気式荷重センサにおいて、軸方向荷重の反力をスラスト軸受41を介して受けてたわみを生じるフランジ部材2と、磁界を発生する磁気ターゲット4と、その磁気ターゲット4に対する相対位置がフランジ部材2のたわみにより変化するよう配置された磁気センサと5を有し、フランジ部材2の軸方向端面にスラスト軸受41の転動体41Bが転がり接触する溝10を形成する。
【解決手段】直動アクチュエータが対象物22に印加する軸方向荷重の大きさを検出する直動アクチュエータ用の磁気式荷重センサにおいて、軸方向荷重の反力をスラスト軸受41を介して受けてたわみを生じるフランジ部材2と、磁界を発生する磁気ターゲット4と、その磁気ターゲット4に対する相対位置がフランジ部材2のたわみにより変化するよう配置された磁気センサと5を有し、フランジ部材2の軸方向端面にスラスト軸受41の転動体41Bが転がり接触する溝10を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、直動アクチュエータ用の磁気式荷重センサおよびその磁気式荷重センサを組み込んだ直動アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ブレーキ装置として、摩擦パッドを油圧シリンダで駆動してブレーキディスクを押圧する油圧ブレーキ装置が採用されてきたが、近年、ABS(アンチロックブレーキシステム)等のブレーキ制御の導入に伴い、油圧回路を使用しない電動ブレーキ装置が注目されている。
【0003】
電動ブレーキ装置は、一般に、電動モータの回転が入力される回転軸と、その回転軸の回転を直動部材の軸方向移動に変換する直動機構とからなる直動アクチュエータを有し、その直動アクチュエータで摩擦パッドに軸方向荷重を印加することで、摩擦パッドをブレーキディスクに押し付けて制動力を発生する。この制動力を所望の大きさに制御するため、直動アクチュエータには、対象物に印加する軸方向荷重の大きさを検出する荷重センサが組み込まれることが多い。この直動アクチュエータ用の荷重センサは、電動ブレーキの応答性を高めるために極力微小な変位で荷重を検出するものが用いられる。
【0004】
このような直動アクチュエータ用の荷重センサとして、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1の直動アクチュエータ用の荷重センサは、対向一対の円環板状の押圧板と、その一対の押圧板の間に挟み込まれた水晶圧電素子と、その水晶圧電素子と片側の押圧板との間を電気的に絶縁する絶縁板と、水晶圧電素子が発生する電圧を取り出すリード線とを有する。この荷重センサは、軸方向荷重が入力されたときに、その荷重に応じた大きさの電圧が水晶圧電素子で発生するので、その電圧の大きさを計測することで軸方向荷重の大きさを検出することができる。また、水晶圧電素子の変形による押圧板の変位は微小なので、このセンサを電動ブレーキに組み込んだ場合、電動ブレーキの応答性を損なうことがない。
【0005】
しかしながら、特許文献1の荷重センサは、軸方向荷重が入力されたときに、その荷重が水晶圧電素子に直接作用するので、衝撃荷重やせん断荷重が入力されると、水晶圧電素子に割れや欠けが生じるおそれがあり、高い耐久性を確保するのが難しかった。
【0006】
そこで、本願発明の発明者らは、高い耐久性を備え、しかも微小変位で荷重を検出することが可能な荷重センサを実現できないか検討し、そのような荷重センサとして、直動アクチュエータが対象物に印加する軸方向荷重の反力を受けてたわみを生じるフランジ部材と、磁界を発生する磁気ターゲットと、その磁気ターゲットに対する相対位置が前記フランジ部材のたわみにより変化するよう配置された磁気センサとを有する磁気式荷重センサを考案した。
【0007】
この磁気式荷重センサは、直動アクチュエータが対象物に印加する軸方向荷重の反力を受けてフランジ部材にたわみを生じ、そのたわみにより磁気ターゲットと磁気センサの相対位置が変化し、その相対位置の変化に応じて磁気センサの出力信号が変化するので、その磁気センサの出力信号に基づいて軸方向荷重の大きさを検出することが可能である。そして、この磁気式荷重センサは、互いに非接触に配置された磁気ターゲットと磁気センサの相対位置の変化を利用して軸方向荷重を検出するので、衝撃荷重やせん断荷重が荷重センサに入力されてもセンサが故障しにくく、高い耐久性を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開2011/030839号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、直動アクチュエータに荷重センサを組み込む場合、その荷重センサは、対象物に印加する軸方向荷重の反力をスラスト軸受を介して受けるように組み込まれることが多い。スラスト軸受は、通常、軸方向に対向配置された一対の軌道盤と、その軌道盤の対向面間に組み込まれた複数の転動体と、これらの転動体の間隔を保持する保持器とからなる。そして、本願発明の発明者らは、このスラスト軸受の軌道盤を、上記磁気式荷重センサのフランジ部材の軸方向端面に接触させて使用した場合、検出される荷重にヒステリシス誤差が発生する可能性がある点に気付いた。
【0010】
すなわち、スラスト軸受をフランジ部材の軸方向端面に接触させた状態で軸方向荷重が入力されると、フランジ部材にたわみが生じ、このフランジ部材のたわみに伴ってスラスト軸受の軌道盤とフランジ部材との間に発生する摩擦力が原因で、直動アクチュエータが印加する軸方向荷重の大きさが同じであっても、荷重増加時(すなわちフランジ部材のたわみが増大するとき)と荷重減少時(すなわちフランジ部材のたわみが減小するとき)とで荷重の検出値に誤差が生じる場合があることが分かった。
【0011】
そして、本願発明の発明者らは、このヒステリシス誤差を小さくすることができれば、上記磁気式荷重センサの検出精度を高めることが可能となる点に着眼した。
【0012】
また、電動ブレーキ装置に直動アクチュエータを組み込む場合、直動アクチュエータの軸方向長さを短くすることができれば、電動ブレーキ装置の軸方向長さが短くなり、電動ブレーキ装置周辺の部品(たとえばサスペンション)のレイアウトの自由度を高くすることが可能となる。
【0013】
この発明が解決しようとする課題は、直動アクチュエータに組み込んで使用したときにヒステリシス誤差が生じにくく、かつ、直動アクチュエータの軸方向長さを抑えることが可能な直動アクチュエータ用の荷重センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、直動アクチュエータが対象物に印加する軸方向荷重の大きさを検出する直動アクチュエータ用の磁気式荷重センサにおいて、前記軸方向荷重の反力をスラスト軸受を介して受けてたわみを生じるフランジ部材と、磁界を発生する磁気ターゲットと、その磁気ターゲットに対する相対位置が前記フランジ部材のたわみにより変化するよう配置された磁気センサとを有し、前記フランジ部材の軸方向端面に前記スラスト軸受の転動体が転がり接触する軌道面を形成した。
【0015】
このようにすると、フランジ部材とスラスト軸受の接触が転がり接触となるので、軸方向荷重によりフランジ部材にたわみが生じたときに、そのたわみに起因する摩擦力の発生が防止され、ヒステリシス誤差の発生を抑えることが可能となる。また、スラスト軸受の一方の軌道輪が不要になるので、その軌道輪の軸方向厚さに相当する分、直動アクチュエータの軸方向長さを抑えることができる。
【0016】
前記スラスト軸受が転動体として玉を用いたスラスト玉軸受である場合、フランジ部材の軸方向端面に形成する前記軌道面としては断面円弧状の溝を採用することができる。
【0017】
また、前記スラスト軸受が転動体として円筒ころまたは針状ころを用いたスラストころ軸受である場合、フランジ部材の軸方向端面に形成する前記軌道面としては熱処理を施されて硬化した平面を採用することができる。
【0018】
また、前記スラスト軸受が転動体として球面ころを用いたスラスト自動調心ころ軸受である場合、フランジ部材の軸方向端面に形成する前記軌道面としては軸方向荷重の方向に対して傾斜した断面円弧状の凹面を採用することができる。
【0019】
前記磁気ターゲットとして、前記磁気ターゲットと磁気センサの相対変位方向に対して直交する方向を磁化方向とする複数の永久磁石を、反対の極性を有する磁極が前記磁気ターゲットと磁気センサの相対変位方向に並ぶように配置したものを採用し、その隣り合う磁極の境目の近傍に前記磁気センサを配置すると好ましい。
【0020】
このようにすると、磁気センサの出力信号は、磁気ターゲットと磁気センサの軸方向の相対変位に対して急峻に変化し、一方、軸方向以外の方向の相対変位に対してはあまり変化しないという軸方向の指向性を示す。そのため、磁気センサの出力信号が外部振動の影響を受けにくく、安定した精度で直動アクチュエータの軸方向荷重の大きさを検出することができる。
【0021】
前記磁気センサとしては、磁気抵抗素子や磁気インピーダンス素子を使用することも可能であるが、ホールICを使用するとコスト面で有利であり、また耐熱性の高いホールICが市販されているので電動ブレーキの用途に好適である。また、前記磁気ターゲットにネオジム磁石を使用すると、省スペースで強力な磁界が発生するので、磁気式荷重センサの分解性能を高くすることができる。
【0022】
また、この発明では、電動モータの回転が入力される回転軸と、その回転軸の回転を直動部材の軸方向移動に変換する直動機構とを有し、その直動機構で対象物に軸方向荷重を印加する直動アクチュエータにおいて、前記軸方向荷重を対象物に印加するときに直動機構に作用する反力を受け止める部材として上記の磁気式荷重センサを組み込んだものを提供する。
【発明の効果】
【0023】
この発明の直動アクチュエータ用の磁気式荷重センサは、フランジ部材とスラスト軸受の接触を転がり接触としているので、フランジ部材のたわみに起因する摩擦力がフランジ部材とスラスト軸受の間に生じにくく、ヒステリシス誤差の発生が抑えられる。また、スラスト軸受の一方の軌道輪が不要なので、その軌道輪の軸方向厚さに相当する分、直動アクチュエータの軸方向長さが短くすむ。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明の第1実施形態の磁気式荷重センサを示す分解斜視図
【図2】図1に示す磁気式荷重センサの断面図
【図3】図2の磁気ターゲットと磁気センサの近傍の拡大断面図
【図4】図2の側面図
【図5】図3に示す磁気ターゲットと磁気センサの配置を変更した例を示す拡大断面図
【図6】図1に示す磁気式荷重センサを電動ブレーキ装置の直動アクチュエータに組み込んだ状態を示す断面図
【図7】図6の直動アクチュエータ近傍の拡大断面図
【図8】図7の磁気式荷重センサ近傍の拡大断面図
【図9】図7のIX−IX線に沿った断面図
【図10】図7のX−X線に沿った断面図
【図11】図8に示す磁気式荷重センサの他の例を示す拡大断面図
【図12】図8に示す磁気式荷重センサの更に他の例を示す拡大断面図
【図13】直動機構としてボールねじ機構を採用した例を示す直動アクチュエータの拡大断面図
【図14】直動機構としてボールランプ機構を採用した例を示す直動アクチュエータの拡大断面図
【図15】図14のXV−XV線に沿った断面図
【図16】(a)は図14に示すボールと傾斜溝の関係を示す図、(b)は(a)に示す状態から回転ディスクと直動ディスクが相対回転して両ディスクの間隔が拡大した状態を示す図
【図17】図2に示す磁気式荷重センサと磁気ターゲットの配置を変更した変形例を示す断面図
【図18】この発明の第2実施形態の磁気式荷重センサを示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1〜図4に、この発明の第1実施形態の直動アクチュエータ用の磁気式荷重センサ1を示す。この磁気式荷重センサ1は、軸方向に間隔をおいて対向する円環板状のフランジ部材2および支持部材3と、磁界を発生する磁気ターゲット4と、磁界の強さを検出する磁気センサ5とを有する。
【0026】
フランジ部材2は、支持部材3に向けて突出する筒部6を有する。筒部6の外径面は、支持部材3の内径面と径方向に対向しており、筒部6の外径面に形成された面取り部7に磁気ターゲット4が固定され、支持部材3の内径面に形成された溝8に磁気センサ5が
固定されている。フランジ部材2および支持部材3は鉄等の金属で形成されている。
【0027】
支持部材3は、フランジ部材2との対向面に環状突起9を有し、その環状突起9でフランジ部材2の外径側部分を支持し、フランジ部材2と支持部材3の間隔を保持している。
図2に示すように、フランジ部材2の支持部材3と対向する側とは反対の面には、周方向に連続する断面円弧状の溝10が形成されている。この溝10の内面は熱処理が施されて硬化されている。熱処理としては、例えば高周波焼入れが挙げられる。
【0028】
磁気ターゲット4は、径方向内端と径方向外端に磁極を有するように半径方向に磁化された2個の永久磁石11からなる。2個の永久磁石11は、反対の極性を有する磁極(すなわちN極とS極)が軸方向に並ぶように隣接して配置されている。
【0029】
永久磁石11としては、ネオジム磁石を使用すると、省スペースで強力な磁界が発生するので、磁気式荷重センサ1の分解性能を高くすることができるが、サマリウムコバルト磁石、アルニコ磁石、フェライト磁石などを使用してもよい。サマリウムコバルト磁石またはアルニコ磁石を使用すると、永久磁石11の温度上昇に伴う磁界の減少を抑えることができる。また、プラセオジム磁石、サマリウム窒化鉄磁石を使用することもできる。
【0030】
磁気センサ5は、2個の永久磁石11の隣り合う磁極の境目の近傍で磁気ターゲット4と軸直交方向(図では半径方向)に対向するように配置されている。磁気センサ5としては、磁気抵抗素子(いわゆるMRセンサ)や、磁気インピーダンス素子(いわゆるMIセンサ)を使用することも可能であるが、ホールICを使用するとコスト面で有利であり、また耐熱性の高いホールICが市販されているので電動ブレーキの用途に好適である。
【0031】
フランジ部材2の外周と支持部材3の外周には断面円弧状の位置決め溝12,13が形成され、この位置決め溝12,13に共通のキー部材45(図7、図10参照)を嵌め込むことで、磁気ターゲット4の周方向位置と磁気センサ5の周方向位置が合致するようにフランジ部材2と支持部材3を周方向に位置決めできるようになっている。
【0032】
この磁気式荷重センサ1は、フランジ部材2に支持部材3に向かう方向の軸方向荷重が作用すると、その軸方向荷重に応じてフランジ部材2が外周部を支点として軸方向にたわみ、そのたわみにより磁気ターゲット4と磁気センサ5の相対位置が変化し、その相対位置の変化に応じて磁気センサ5の出力信号が変化する。そのため、フランジ部材2に作用する軸方向荷重の大きさと、磁気センサ5の出力信号との関係を予め把握しておくことにより、磁気センサ5の出力信号に基づいてフランジ部材2に作用する軸方向荷重の大きさを検出することができる。
【0033】
図1〜図4では、フランジ部材2に磁気ターゲット4を固定し、支持部材3に磁気センサ5を固定しているが、この磁気ターゲット4と磁気センサ5の関係を反対にしてもよい。すなわち、図5に示すように、フランジ部材2の筒部6の外径面に磁気センサ5を固定し、支持部材3の内径面に磁気ターゲット4を固定してもよい。
【0034】
図6〜図10に、上記の磁気式荷重センサ1を電動ブレーキ装置の直動アクチュエータ14に組み込んだ実施形態を示す。
【0035】
この電動ブレーキ装置は、車輪と一体に回転するブレーキディスク15を間に挟んで対向する対向片16,17をブリッジ18で連結した形状のキャリパボディ19と、対向片17のブレーキディスク15に対する対向面に開口する収容孔20に組み込まれた直動アクチュエータ14と、左右一対の摩擦パッド21,22とからなる。
【0036】
摩擦パッド22は、対向片17とブレーキディスク15の間に設けられており、キャリパボディ19に取り付けられたパッドピン(図示せず)でブレーキディスク15の軸方向に移動可能に支持されている。他方の摩擦パッド21は反対側の対向片16に取り付けられている。キャリパボディ19は、ブレーキディスク15の軸方向にスライド可能に支持されている。
【0037】
図7に示すように、直動アクチュエータ14は、回転軸23と、回転軸23の外周の円筒面に転がり接触する複数の遊星ローラ24と、これらの遊星ローラ24を囲むように配置された外輪部材25と、遊星ローラ24を自転可能かつ公転可能に保持するキャリヤ26と、外輪部材25の軸方向後方に配置された磁気式荷重センサ1とを有する。
【0038】
回転軸23は、図6に示す電動モータ27の回転が歯車28を介して入力されることにより回転駆動される。回転軸23は、対向片17を軸方向に貫通して形成された収容孔20の軸方向後側の開口から一端が突出した状態で収容孔20に挿入され、収容孔20からの突出部分に歯車28がスプライン嵌合して回り止めされている。歯車28は、収容孔20の軸方向後側の開口を塞ぐようにボルト29で固定した蓋30で覆われている。蓋30には回転軸23を回転可能に支持する軸受31が組み込まれている。
【0039】
図9に示すように、遊星ローラ24は、回転軸23の外周の円筒面に転がり接触しており、回転軸23が回転したときに遊星ローラ24と回転軸23の間の摩擦によって遊星ローラ24も回転するようになっている。遊星ローラ24は、周方向に一定の間隔をおいて複数設けられている。
【0040】
図7に示すように、外輪部材25は、キャリパボディ19の対向片17に設けられた収容孔20内に収容され、その収容孔20の内周で軸方向にスライド可能に支持されている。外輪部材25の軸方向前端には、摩擦パッド22の背面に形成された係合凸部32に係合する係合凹部33が形成され、この係合凸部32と係合凹部33の係合によって、外輪部材25がキャリパボディ19に対して回り止めされている。
【0041】
外輪部材25の内周には螺旋凸条34が設けられ、遊星ローラ24の外周には、螺旋凸条34に係合する円周溝35が設けられており、遊星ローラ24が回転したときに、外輪部材25の螺旋凸条34が円周溝35に案内されて、外輪部材25が軸方向に移動するようになっている。この実施形態では遊星ローラ24の外周にリード角が0度の円周溝35を設けているが、円周溝35のかわりに螺旋凸条34と異なるリード角をもつ螺旋溝を設けてもよい。
【0042】
キャリヤ26は、遊星ローラ24を回転可能に支持するキャリヤピン26Aと、その各キャリヤピン26Aの軸方向前端の周方向間隔を一定に保持する環状のキャリヤプレート26Cと、各キャリヤピン26Aの軸方向後端の周方向間隔を一定に保持する環状のキャリヤ本体26Bとからなる。キャリヤプレート26Cとキャリヤ本体26Bは遊星ローラ24を間に軸方向に対向しており、周方向に隣り合う遊星ローラ24の間に配置された連結棒36を介して連結されている。
【0043】
キャリヤ本体26Bは、滑り軸受37を介して回転軸23に支持され、回転軸23に対して相対回転可能となっている。遊星ローラ24とキャリヤ本体26Bの間には、遊星ローラ24の自転がキャリヤ本体26Bに伝達するのを遮断するスラスト軸受38が組み込まれている。
【0044】
各キャリヤピン26Aは、周方向に間隔をおいて配置された複数のキャリヤピン26Aに外接するように装着された縮径リングばね39で径方向内方に付勢されている。この縮径リングばね39の付勢力によって、遊星ローラ24の外周は回転軸23の外周に押さえ付けられ、回転軸23と遊星ローラ24の間の滑りが防止されている。縮径リングばね39の付勢力を遊星ローラ24の軸方向全長にわたって作用させるため、キャリヤピン26Aの両端に縮径リングばね39が設けられている。
【0045】
磁気式荷重センサ1は、フランジ部材2の軸方向後方に支持部材3が位置するように収容孔20内に嵌め込まれている。キャリヤ26と磁気式荷重センサ1の間には、キャリヤ26と一体に公転する間座40と、間座40と磁気式荷重センサ1の間で軸方向荷重を伝達するスラスト軸受41とが組み込まれている。フランジ部材2の内周には、回転軸23を回転可能に支持する転がり軸受42が組み込まれている。
【0046】
磁気式荷重センサ1は、支持部材3の外周縁を、収容孔20の内周に装着した止め輪43で係止することによって軸方向後方への移動が規制されている。そして、この磁気式荷重センサ1は、間座40とスラスト軸受41とを介してキャリヤ本体26Bを軸方向に支持することで、キャリヤ26の軸方向後方への移動を規制している。また、キャリヤ26は、回転軸23の軸方向前端に装着された止め輪44で軸方向前方への移動も規制されている。したがって、キャリヤ26は、軸方向前方と軸方向後方の移動がいずれも規制され、キャリヤ26に保持された遊星ローラ24も軸方向移動が規制された状態となっている。
【0047】
図8に示すように、スラスト軸受41は、間座40のフランジ部材2との対向面に形成した軸受嵌合凹部40aに嵌め込まれた軌道盤41Aと、軌道盤41Aとフランジ部材2の間に周方向に間隔をおいて組み込まれた複数の転動体41Bと、これらの転動体41Bの間隔を保持する保持器41Cとからなる。このスラスト軸受41は、転動体41Bとして玉を用いたスラスト玉軸受であり、この転動体41Bが、フランジ部材2の軸方向端面に直接加工された断面円弧状の溝10に転がり接触し、溝10がスラスト軸受41の軌道面として機能する。
【0048】
図7に示すように、フランジ部材2と支持部材3の外周の位置決め溝12,13には、収容孔20の内周に係止したキー部材45が嵌め込まれ(図10参照)、このキー部材45の嵌合によってフランジ部材2の周方向位置と支持部材3の周方向位置とが相対的に位置決めされている。
【0049】
次に、上述した直動アクチュエータ14の動作例を説明する。
【0050】
電動モータ27を作動させると、回転軸23が回転し、遊星ローラ24がキャリヤピン26Aを中心に自転しながら回転軸23を中心に公転する。このとき螺旋凸条34と円周溝35の係合によって外輪部材25と遊星ローラ24が軸方向に相対移動するが、遊星ローラ24はキャリヤ26と共に軸方向の移動が規制されているので、遊星ローラ24は軸方向に移動せず、外輪部材25が軸方向に移動する。このようにして、直動アクチュエータ14は、電動モータ27で駆動される回転軸23の回転を外輪部材25の軸方向移動に変換し、その外輪部材25で摩擦パッド22に軸方向荷重を印加することで、摩擦パッド22をブレーキディスク15に押し付けて制動力を発生させる。
【0051】
ここで、外輪部材25が摩擦パッド22に軸方向荷重を印加するとき、外輪部材25には軸方向後方への反力が作用し、その反力は、遊星ローラ24、キャリヤ26、間座40、スラスト軸受41を介して磁気式荷重センサ1で受け止められる。そして、その反力によって磁気式荷重センサ1のフランジ部材2が軸方向後方にたわみ、磁気ターゲット4と磁気センサ5の相対位置が変化する。このとき、その相対位置の変化に応じて磁気センサ5の出力信号が変化するので、磁気センサ5の出力信号に基づいて軸方向荷重の大きさを検出することができる。また、この磁気センサ5の出力信号を用いて電動ブレーキ装置の制動力をフィードバック制御することにより、高精度な荷重制御が実現できる。
【0052】
上記磁気式荷重センサ1は、フランジ部材2の局部の歪みではなく、フランジ部材2の変形量から軸方向荷重を検出するものであるから、直動アクチュエータ14の温度変化や温度分布のばらつきによる影響を受けにくく、高い精度で直動アクチュエータ14の軸方向荷重の大きさを検出することが可能である。
【0053】
摩擦パッド22に軸方向荷重を印加したとき、フランジ部材2には主にせん断荷重が作用し、支持部材3には主に圧縮荷重が作用する。そして、磁気ターゲット4は、フランジ部材2に作用するせん断荷重によって変位する一方、磁気センサ5は、支持部材3に作用する圧縮荷重によってはほとんど変位せず、この磁気ターゲット4と磁気センサ5の相対変位によって、軸方向荷重の検出が可能となる。
【0054】
直動アクチュエータ14が摩擦パッド22に軸方向荷重を印加するときの磁気ターゲット4と磁気センサ5の相対位置の変化量は極めて小さい。例えば、直動アクチュエータ14の印加する軸方向荷重の大きさが30kNのとき、磁気ターゲット4と磁気センサ5の相対位置の変化量は軸方向に0.1mm程度と極めて微小であるが、上記磁気式荷重センサ1は、複数の永久磁石11を反対の磁極が磁気ターゲット4と磁気センサ5の相対変位方向に並ぶように配置し、その隣り合う磁極の境目の近傍に磁気センサ5を配置しているので、磁気センサ5の出力信号が、磁気ターゲット4と磁気センサ5の相対位置の変化に対して急峻に変化し、磁気ターゲット4と磁気センサ5の相対位置の変化量を高精度に検出することができる。
【0055】
また、上記磁気式荷重センサ1は、磁気センサ5の出力信号が、磁気ターゲット4と磁気センサ5の軸方向の相対変位に対しては急峻に変化し、軸方向以外の方向の相対変位に対してはあまり変化しないという軸方向の指向性を示す。そのため、磁気センサ5の出力信号が外部振動の影響を受けにくく、安定した精度で直動アクチュエータ14の軸方向荷重の大きさを検出することができる。
【0056】
また、この磁気式荷重センサ1は、フランジ部材2とスラスト軸受41の接触を転がり接触としているので、軸方向荷重によりフランジ部材2にたわみが生じたときに、そのフランジ部材2のたわみに起因する摩擦力がフランジ部材2とスラスト軸受41の間に生じにくく、ヒステリシス誤差の発生が抑えられ、荷重増加時(すなわちフランジ部材2のたわみが増大するとき)と荷重減少時(すなわちフランジ部材2のたわみが減小するとき)とで荷重の検出値に誤差が生じるのを防止することができる。
【0057】
また、この磁気式荷重センサ1は、スラスト軸受41のフランジ部材2側の軌道輪が不要なので、その軌道輪の軸方向厚さに相当する分、直動アクチュエータ14の軸方向長さが短くすむ。そのため、電動ブレーキ装置の軸方向長さが短くなり、電動ブレーキ装置を車両に組み込んだときに、電動ブレーキ装置周辺の部品(たとえばサスペンション)のレイアウトの自由度が高い。
【0058】
また、この磁気式荷重センサ1は、互いに非接触に配置された磁気ターゲット4と磁気センサ5の相対位置の変化を利用して軸方向荷重を検出するので、衝撃荷重やせん断荷重が荷重センサ1に入力されてもセンサ1が故障しにくく、高い耐久性を確保することができる。
【0059】
直動アクチュエータ14が印加する軸方向荷重の大きさを検出する方法として、外輪部材25が摩擦パッド22を軸方向前方に押圧するときの外輪部材25の軸方向変位に基づいて摩擦パッド22に対する軸方向荷重を推定する方法があるが、この方法では、摩擦パッド22の摩耗等による外輪部材25の原点位置の変動を把握するために別途のセンサが必要となり、構造が複雑になってしまう。これに対し、外輪部材25が摩擦パッド22を軸方向前方に押圧するときに作用する軸方向後方の反力を受け止める部材として上記磁気式荷重センサ1を組み込むと、摩擦パッド22の摩耗等により外輪部材25の原点位置が変動しても、磁気式荷重センサ1が検出する軸方向荷重に影響しない。そのため、外輪部材25の原点位置を把握するためのセンサが不要であり、構造が単純で済む。
【0060】
上記実施形態では、転動体41Bとして玉を用いたスラスト軸受41を例に挙げて説明したが、この発明は他の形式のスラスト軸受41にも適用することができる。例えば、図11に示すように、転動体41Bとして円筒ころまたは針状ころを用いたスラストころ軸受を採用することができる。図11において、フランジ部材2の支持部材3と対向する側とは反対の面には、熱処理(例えば高周波焼入れ)を施されて硬化した周方向に連続する平面46が、スラスト軸受41の軌道面として形成されている。
【0061】
また、図12に示すように、転動体41Bとして球面ころを用いたスラスト自動調心ころ軸受を採用することができる。図12において、フランジ部材2の支持部材3と対向する側とは反対の面には、軸方向荷重の方向に対して傾斜した断面円弧状の凹面47が周方向に連続して形成されており、この凹面47がスラスト軸受41の軌道面として機能する。このようにスラスト自動調心ころ軸受を採用すると、間座40とフランジ部材2の間の平行度に誤差が存在するときにも、その誤差をスラスト軸受41が吸収するので、フランジ部材2が均一にたわみ、荷重の検出精度が安定する。
【0062】
上記実施形態では、回転軸23の回転を直動部材(ここでは外輪部材25)の軸方向移動に変換する直動機構として、回転軸23の外周の円筒面に転がり接触する複数の遊星ローラ24と、遊星ローラ24を自転可能かつ公転可能に保持し、軸方向移動を規制されたキャリヤ26と、複数の遊星ローラ24を囲むように配置された外輪部材25と、外輪部材25の内周に設けられた螺旋凸条34と、螺旋凸条34と係合するように各遊星ローラ24の外周に設けられた螺旋溝または円周溝35とからなる遊星ローラ機構を例に挙げて説明したが、この発明は、他の構成の直動機構を採用した直動アクチュエータにも同様に適用することができる。
【0063】
例えば、直動機構としてボールねじ機構を採用した直動アクチュエータの例を図13に示す。以下、上記実施形態に対応する部分は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0064】
図13において、直動アクチュエータは、回転軸23と、回転軸23と一体に設けられたねじ軸50と、ねじ軸50を囲むように設けられたナット51と、ねじ軸50の外周に形成されたねじ溝52とナット51の内周に形成されたねじ溝53の間に組み込まれた複数のボール54と、ナット51のねじ溝53の終点から始点にボール54を戻す図示しないリターンチューブと、ナット51の軸方向後方に配置された磁気式荷重センサ1とを有する。
【0065】
ナット51は、キャリパボディ19の対向片17に設けられた収容孔20内に、キャリパボディ19に対して回り止めされた状態で軸方向にスライド可能に収容されている。ねじ軸50の軸方向後端にはねじ軸50と一体に回転する間座40が設けられ、その間座40がスラスト軸受41を介して磁気式荷重センサ1で支持されている。ここで、磁気式荷重センサ1は、間座40とスラスト軸受41とねじ軸50とを介してナット51を軸方向に支持することで、ナット51の軸方向後方への移動を規制している。
【0066】
この直動アクチュエータは、回転軸23を回転させることによって、ねじ軸50とナット51を相対回転させ、ナット51を軸方向前方に移動させて摩擦パッド22に軸方向荷重を印加する。このとき、ねじ軸50には、軸方向後方への反力が作用し、その反力は、間座40、スラスト軸受41を介して磁気式荷重センサ1で受け止められる。そして、その反力によって磁気式荷重センサ1のフランジ部材2が軸方向後方にたわみ、磁気ターゲット4と磁気センサ5の相対位置が変化する。そのため、上記実施形態と同様、磁気センサ5の出力信号が摩擦パッド22に印加される軸方向荷重の大きさに応じて変化し、この磁気センサ5の出力信号に基づいて、摩擦パッド22の押圧力を検出することができる。
【0067】
また、直動機構としてボールランプ機構を採用した直動アクチュエータを適用した例を図14に示す。
【0068】
図14において、直動アクチュエータは、回転軸23と、回転軸23の外周に回り止めされた回転ディスク60と、回転ディスク60の軸方向前方に対向して配置された直動ディスク61と、回転ディスク60と直動ディスク61の間に挟まれた複数のボール62と、直動ディスク61の軸方向後方に配置された磁気式荷重センサ1とを有する。
【0069】
直動ディスク61は、キャリパボディ19の対向片17に設けられた収容孔20内に、キャリパボディ19に対して回り止めされた状態で軸方向にスライド可能に収容されている。回転ディスク60の軸方向後端には回転ディスク60と一体に回転する間座40が設けられ、その間座40がスラスト軸受41を介して磁気式荷重センサ1で支持されている。ここで、磁気式荷重センサ1は、間座40とスラスト軸受41とを介して回転ディスク60を軸方向に支持することで回転ディスク60の軸方向後方への移動を規制している。
【0070】
図14、図15に示すように、回転ディスク60の直動ディスク61に対する対向面60aには、周方向の一方向に沿って深さが次第に浅くなる傾斜溝63が形成され、直動ディスク61の回転ディスク60に対する対向面61aには、周方向の他方向に沿って深さが次第に浅くなる傾斜溝64が形成されている。図16(a)に示すように、ボール62は、回転ディスク60の傾斜溝63と直動ディスク61の傾斜溝64の間に組み込まれており、図16(b)に示すように、直動ディスク61に対して回転ディスク60が相対回転すると、傾斜溝63,64内をボール62が転動して、回転ディスク60と直動ディスク61の間隔が拡大するようになっている。
【0071】
この直動アクチュエータは、回転軸23を回転させることによって、直動ディスク61と回転ディスク60を相対回転させて、直動ディスク61を軸方向前方に移動させて摩擦パッド22に軸方向荷重を印加する。このとき、回転ディスク60には、軸方向後方への反力が作用し、その反力は、間座40、スラスト軸受41を介して磁気式荷重センサ1で受け止められる。そして、その反力によって磁気式荷重センサ1のフランジ部材2が軸方向後方にたわみ、磁気ターゲット4と磁気センサ5の相対位置が変化する。そのため、上記実施形態と同様、磁気センサ5の出力信号が摩擦パッド22に印加される軸方向荷重の大きさに応じて変化し、この磁気センサ5の出力信号に基づいて、摩擦パッド22の押圧力を検出することができる。
【0072】
上記実施形態では、磁気ターゲット4と磁気センサ5の相対位置の変化量を高精度に検出するため、磁気ターゲット4の磁化方向が磁気ターゲット4と磁気センサ5の相対変位方向と直交するように磁石を配置したが、図17に示すように、磁気ターゲット4の磁化方向が磁気ターゲット4と磁気センサ5の相対変位方向と平行となるように磁気ターゲット4を配置し、その磁気ターゲット4の近傍に磁気センサ5を配置してもよい。
【0073】
図18に、この発明の第2実施形態の磁気式荷重センサ70を示す。第1実施形態に対応する部分は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0074】
フランジ部材2は、支持部材3との対向面に環状突起71を有し、その環状突起71で支持部材3の内径側部分を支持し、フランジ部材2と支持部材3の間隔を保持している。支持部材3は、フランジ部材2に向けて突出する筒部72を有する。筒部72の内径面は、フランジ部材2の外径面と径方向に対向しており、筒部72の内径面に磁気センサ5が固定され、フランジ部材2の外径面に磁気ターゲット4が固定されている。
【0075】
この磁気式荷重センサ1は、フランジ部材2に支持部材3に向かう方向の軸方向荷重が作用すると、その軸方向荷重に応じてフランジ部材2が内周部を支点として軸方向にたわみ、支持部材3も外周部を支点として軸方向にたわむ。この両部材2,3のたわみにより磁気ターゲット3と磁気センサ4の相対位置が変化し、その相対位置の変化に応じて磁気センサ5の出力信号が変化する。そして、フランジ部材2に作用する軸方向荷重の大きさと、磁気センサ5の出力信号との関係を予め把握しておくことにより、磁気センサ5の出力信号に基づいてフランジ部材2に作用する軸方向荷重の大きさを検出することができる。
【0076】
このように、フランジ部材2に軸方向荷重が入力されたときに、フランジ部材2だけでなく支持部材3にもたわみが生じるようにすると、その両部材2,3のたわみにより磁気ターゲット4と磁気センサ5が相対変位するので、第1実施形態よりも荷重検出の分解能を高めることが可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 磁気式荷重センサ
2 フランジ部材
4 磁気ターゲット
5 磁気センサ
10 溝
11 永久磁石
14 直動アクチュエータ
22 摩擦パッド
23 回転軸
25 外輪部材
27 電動モータ
41 スラスト軸受
41B 転動体
46 平面
47 凹面
51 ナット
61 直動ディスク
【技術分野】
【0001】
この発明は、直動アクチュエータ用の磁気式荷重センサおよびその磁気式荷重センサを組み込んだ直動アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ブレーキ装置として、摩擦パッドを油圧シリンダで駆動してブレーキディスクを押圧する油圧ブレーキ装置が採用されてきたが、近年、ABS(アンチロックブレーキシステム)等のブレーキ制御の導入に伴い、油圧回路を使用しない電動ブレーキ装置が注目されている。
【0003】
電動ブレーキ装置は、一般に、電動モータの回転が入力される回転軸と、その回転軸の回転を直動部材の軸方向移動に変換する直動機構とからなる直動アクチュエータを有し、その直動アクチュエータで摩擦パッドに軸方向荷重を印加することで、摩擦パッドをブレーキディスクに押し付けて制動力を発生する。この制動力を所望の大きさに制御するため、直動アクチュエータには、対象物に印加する軸方向荷重の大きさを検出する荷重センサが組み込まれることが多い。この直動アクチュエータ用の荷重センサは、電動ブレーキの応答性を高めるために極力微小な変位で荷重を検出するものが用いられる。
【0004】
このような直動アクチュエータ用の荷重センサとして、例えば、特許文献1に記載のものが知られている。特許文献1の直動アクチュエータ用の荷重センサは、対向一対の円環板状の押圧板と、その一対の押圧板の間に挟み込まれた水晶圧電素子と、その水晶圧電素子と片側の押圧板との間を電気的に絶縁する絶縁板と、水晶圧電素子が発生する電圧を取り出すリード線とを有する。この荷重センサは、軸方向荷重が入力されたときに、その荷重に応じた大きさの電圧が水晶圧電素子で発生するので、その電圧の大きさを計測することで軸方向荷重の大きさを検出することができる。また、水晶圧電素子の変形による押圧板の変位は微小なので、このセンサを電動ブレーキに組み込んだ場合、電動ブレーキの応答性を損なうことがない。
【0005】
しかしながら、特許文献1の荷重センサは、軸方向荷重が入力されたときに、その荷重が水晶圧電素子に直接作用するので、衝撃荷重やせん断荷重が入力されると、水晶圧電素子に割れや欠けが生じるおそれがあり、高い耐久性を確保するのが難しかった。
【0006】
そこで、本願発明の発明者らは、高い耐久性を備え、しかも微小変位で荷重を検出することが可能な荷重センサを実現できないか検討し、そのような荷重センサとして、直動アクチュエータが対象物に印加する軸方向荷重の反力を受けてたわみを生じるフランジ部材と、磁界を発生する磁気ターゲットと、その磁気ターゲットに対する相対位置が前記フランジ部材のたわみにより変化するよう配置された磁気センサとを有する磁気式荷重センサを考案した。
【0007】
この磁気式荷重センサは、直動アクチュエータが対象物に印加する軸方向荷重の反力を受けてフランジ部材にたわみを生じ、そのたわみにより磁気ターゲットと磁気センサの相対位置が変化し、その相対位置の変化に応じて磁気センサの出力信号が変化するので、その磁気センサの出力信号に基づいて軸方向荷重の大きさを検出することが可能である。そして、この磁気式荷重センサは、互いに非接触に配置された磁気ターゲットと磁気センサの相対位置の変化を利用して軸方向荷重を検出するので、衝撃荷重やせん断荷重が荷重センサに入力されてもセンサが故障しにくく、高い耐久性を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開2011/030839号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、直動アクチュエータに荷重センサを組み込む場合、その荷重センサは、対象物に印加する軸方向荷重の反力をスラスト軸受を介して受けるように組み込まれることが多い。スラスト軸受は、通常、軸方向に対向配置された一対の軌道盤と、その軌道盤の対向面間に組み込まれた複数の転動体と、これらの転動体の間隔を保持する保持器とからなる。そして、本願発明の発明者らは、このスラスト軸受の軌道盤を、上記磁気式荷重センサのフランジ部材の軸方向端面に接触させて使用した場合、検出される荷重にヒステリシス誤差が発生する可能性がある点に気付いた。
【0010】
すなわち、スラスト軸受をフランジ部材の軸方向端面に接触させた状態で軸方向荷重が入力されると、フランジ部材にたわみが生じ、このフランジ部材のたわみに伴ってスラスト軸受の軌道盤とフランジ部材との間に発生する摩擦力が原因で、直動アクチュエータが印加する軸方向荷重の大きさが同じであっても、荷重増加時(すなわちフランジ部材のたわみが増大するとき)と荷重減少時(すなわちフランジ部材のたわみが減小するとき)とで荷重の検出値に誤差が生じる場合があることが分かった。
【0011】
そして、本願発明の発明者らは、このヒステリシス誤差を小さくすることができれば、上記磁気式荷重センサの検出精度を高めることが可能となる点に着眼した。
【0012】
また、電動ブレーキ装置に直動アクチュエータを組み込む場合、直動アクチュエータの軸方向長さを短くすることができれば、電動ブレーキ装置の軸方向長さが短くなり、電動ブレーキ装置周辺の部品(たとえばサスペンション)のレイアウトの自由度を高くすることが可能となる。
【0013】
この発明が解決しようとする課題は、直動アクチュエータに組み込んで使用したときにヒステリシス誤差が生じにくく、かつ、直動アクチュエータの軸方向長さを抑えることが可能な直動アクチュエータ用の荷重センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、直動アクチュエータが対象物に印加する軸方向荷重の大きさを検出する直動アクチュエータ用の磁気式荷重センサにおいて、前記軸方向荷重の反力をスラスト軸受を介して受けてたわみを生じるフランジ部材と、磁界を発生する磁気ターゲットと、その磁気ターゲットに対する相対位置が前記フランジ部材のたわみにより変化するよう配置された磁気センサとを有し、前記フランジ部材の軸方向端面に前記スラスト軸受の転動体が転がり接触する軌道面を形成した。
【0015】
このようにすると、フランジ部材とスラスト軸受の接触が転がり接触となるので、軸方向荷重によりフランジ部材にたわみが生じたときに、そのたわみに起因する摩擦力の発生が防止され、ヒステリシス誤差の発生を抑えることが可能となる。また、スラスト軸受の一方の軌道輪が不要になるので、その軌道輪の軸方向厚さに相当する分、直動アクチュエータの軸方向長さを抑えることができる。
【0016】
前記スラスト軸受が転動体として玉を用いたスラスト玉軸受である場合、フランジ部材の軸方向端面に形成する前記軌道面としては断面円弧状の溝を採用することができる。
【0017】
また、前記スラスト軸受が転動体として円筒ころまたは針状ころを用いたスラストころ軸受である場合、フランジ部材の軸方向端面に形成する前記軌道面としては熱処理を施されて硬化した平面を採用することができる。
【0018】
また、前記スラスト軸受が転動体として球面ころを用いたスラスト自動調心ころ軸受である場合、フランジ部材の軸方向端面に形成する前記軌道面としては軸方向荷重の方向に対して傾斜した断面円弧状の凹面を採用することができる。
【0019】
前記磁気ターゲットとして、前記磁気ターゲットと磁気センサの相対変位方向に対して直交する方向を磁化方向とする複数の永久磁石を、反対の極性を有する磁極が前記磁気ターゲットと磁気センサの相対変位方向に並ぶように配置したものを採用し、その隣り合う磁極の境目の近傍に前記磁気センサを配置すると好ましい。
【0020】
このようにすると、磁気センサの出力信号は、磁気ターゲットと磁気センサの軸方向の相対変位に対して急峻に変化し、一方、軸方向以外の方向の相対変位に対してはあまり変化しないという軸方向の指向性を示す。そのため、磁気センサの出力信号が外部振動の影響を受けにくく、安定した精度で直動アクチュエータの軸方向荷重の大きさを検出することができる。
【0021】
前記磁気センサとしては、磁気抵抗素子や磁気インピーダンス素子を使用することも可能であるが、ホールICを使用するとコスト面で有利であり、また耐熱性の高いホールICが市販されているので電動ブレーキの用途に好適である。また、前記磁気ターゲットにネオジム磁石を使用すると、省スペースで強力な磁界が発生するので、磁気式荷重センサの分解性能を高くすることができる。
【0022】
また、この発明では、電動モータの回転が入力される回転軸と、その回転軸の回転を直動部材の軸方向移動に変換する直動機構とを有し、その直動機構で対象物に軸方向荷重を印加する直動アクチュエータにおいて、前記軸方向荷重を対象物に印加するときに直動機構に作用する反力を受け止める部材として上記の磁気式荷重センサを組み込んだものを提供する。
【発明の効果】
【0023】
この発明の直動アクチュエータ用の磁気式荷重センサは、フランジ部材とスラスト軸受の接触を転がり接触としているので、フランジ部材のたわみに起因する摩擦力がフランジ部材とスラスト軸受の間に生じにくく、ヒステリシス誤差の発生が抑えられる。また、スラスト軸受の一方の軌道輪が不要なので、その軌道輪の軸方向厚さに相当する分、直動アクチュエータの軸方向長さが短くすむ。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明の第1実施形態の磁気式荷重センサを示す分解斜視図
【図2】図1に示す磁気式荷重センサの断面図
【図3】図2の磁気ターゲットと磁気センサの近傍の拡大断面図
【図4】図2の側面図
【図5】図3に示す磁気ターゲットと磁気センサの配置を変更した例を示す拡大断面図
【図6】図1に示す磁気式荷重センサを電動ブレーキ装置の直動アクチュエータに組み込んだ状態を示す断面図
【図7】図6の直動アクチュエータ近傍の拡大断面図
【図8】図7の磁気式荷重センサ近傍の拡大断面図
【図9】図7のIX−IX線に沿った断面図
【図10】図7のX−X線に沿った断面図
【図11】図8に示す磁気式荷重センサの他の例を示す拡大断面図
【図12】図8に示す磁気式荷重センサの更に他の例を示す拡大断面図
【図13】直動機構としてボールねじ機構を採用した例を示す直動アクチュエータの拡大断面図
【図14】直動機構としてボールランプ機構を採用した例を示す直動アクチュエータの拡大断面図
【図15】図14のXV−XV線に沿った断面図
【図16】(a)は図14に示すボールと傾斜溝の関係を示す図、(b)は(a)に示す状態から回転ディスクと直動ディスクが相対回転して両ディスクの間隔が拡大した状態を示す図
【図17】図2に示す磁気式荷重センサと磁気ターゲットの配置を変更した変形例を示す断面図
【図18】この発明の第2実施形態の磁気式荷重センサを示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1〜図4に、この発明の第1実施形態の直動アクチュエータ用の磁気式荷重センサ1を示す。この磁気式荷重センサ1は、軸方向に間隔をおいて対向する円環板状のフランジ部材2および支持部材3と、磁界を発生する磁気ターゲット4と、磁界の強さを検出する磁気センサ5とを有する。
【0026】
フランジ部材2は、支持部材3に向けて突出する筒部6を有する。筒部6の外径面は、支持部材3の内径面と径方向に対向しており、筒部6の外径面に形成された面取り部7に磁気ターゲット4が固定され、支持部材3の内径面に形成された溝8に磁気センサ5が
固定されている。フランジ部材2および支持部材3は鉄等の金属で形成されている。
【0027】
支持部材3は、フランジ部材2との対向面に環状突起9を有し、その環状突起9でフランジ部材2の外径側部分を支持し、フランジ部材2と支持部材3の間隔を保持している。
図2に示すように、フランジ部材2の支持部材3と対向する側とは反対の面には、周方向に連続する断面円弧状の溝10が形成されている。この溝10の内面は熱処理が施されて硬化されている。熱処理としては、例えば高周波焼入れが挙げられる。
【0028】
磁気ターゲット4は、径方向内端と径方向外端に磁極を有するように半径方向に磁化された2個の永久磁石11からなる。2個の永久磁石11は、反対の極性を有する磁極(すなわちN極とS極)が軸方向に並ぶように隣接して配置されている。
【0029】
永久磁石11としては、ネオジム磁石を使用すると、省スペースで強力な磁界が発生するので、磁気式荷重センサ1の分解性能を高くすることができるが、サマリウムコバルト磁石、アルニコ磁石、フェライト磁石などを使用してもよい。サマリウムコバルト磁石またはアルニコ磁石を使用すると、永久磁石11の温度上昇に伴う磁界の減少を抑えることができる。また、プラセオジム磁石、サマリウム窒化鉄磁石を使用することもできる。
【0030】
磁気センサ5は、2個の永久磁石11の隣り合う磁極の境目の近傍で磁気ターゲット4と軸直交方向(図では半径方向)に対向するように配置されている。磁気センサ5としては、磁気抵抗素子(いわゆるMRセンサ)や、磁気インピーダンス素子(いわゆるMIセンサ)を使用することも可能であるが、ホールICを使用するとコスト面で有利であり、また耐熱性の高いホールICが市販されているので電動ブレーキの用途に好適である。
【0031】
フランジ部材2の外周と支持部材3の外周には断面円弧状の位置決め溝12,13が形成され、この位置決め溝12,13に共通のキー部材45(図7、図10参照)を嵌め込むことで、磁気ターゲット4の周方向位置と磁気センサ5の周方向位置が合致するようにフランジ部材2と支持部材3を周方向に位置決めできるようになっている。
【0032】
この磁気式荷重センサ1は、フランジ部材2に支持部材3に向かう方向の軸方向荷重が作用すると、その軸方向荷重に応じてフランジ部材2が外周部を支点として軸方向にたわみ、そのたわみにより磁気ターゲット4と磁気センサ5の相対位置が変化し、その相対位置の変化に応じて磁気センサ5の出力信号が変化する。そのため、フランジ部材2に作用する軸方向荷重の大きさと、磁気センサ5の出力信号との関係を予め把握しておくことにより、磁気センサ5の出力信号に基づいてフランジ部材2に作用する軸方向荷重の大きさを検出することができる。
【0033】
図1〜図4では、フランジ部材2に磁気ターゲット4を固定し、支持部材3に磁気センサ5を固定しているが、この磁気ターゲット4と磁気センサ5の関係を反対にしてもよい。すなわち、図5に示すように、フランジ部材2の筒部6の外径面に磁気センサ5を固定し、支持部材3の内径面に磁気ターゲット4を固定してもよい。
【0034】
図6〜図10に、上記の磁気式荷重センサ1を電動ブレーキ装置の直動アクチュエータ14に組み込んだ実施形態を示す。
【0035】
この電動ブレーキ装置は、車輪と一体に回転するブレーキディスク15を間に挟んで対向する対向片16,17をブリッジ18で連結した形状のキャリパボディ19と、対向片17のブレーキディスク15に対する対向面に開口する収容孔20に組み込まれた直動アクチュエータ14と、左右一対の摩擦パッド21,22とからなる。
【0036】
摩擦パッド22は、対向片17とブレーキディスク15の間に設けられており、キャリパボディ19に取り付けられたパッドピン(図示せず)でブレーキディスク15の軸方向に移動可能に支持されている。他方の摩擦パッド21は反対側の対向片16に取り付けられている。キャリパボディ19は、ブレーキディスク15の軸方向にスライド可能に支持されている。
【0037】
図7に示すように、直動アクチュエータ14は、回転軸23と、回転軸23の外周の円筒面に転がり接触する複数の遊星ローラ24と、これらの遊星ローラ24を囲むように配置された外輪部材25と、遊星ローラ24を自転可能かつ公転可能に保持するキャリヤ26と、外輪部材25の軸方向後方に配置された磁気式荷重センサ1とを有する。
【0038】
回転軸23は、図6に示す電動モータ27の回転が歯車28を介して入力されることにより回転駆動される。回転軸23は、対向片17を軸方向に貫通して形成された収容孔20の軸方向後側の開口から一端が突出した状態で収容孔20に挿入され、収容孔20からの突出部分に歯車28がスプライン嵌合して回り止めされている。歯車28は、収容孔20の軸方向後側の開口を塞ぐようにボルト29で固定した蓋30で覆われている。蓋30には回転軸23を回転可能に支持する軸受31が組み込まれている。
【0039】
図9に示すように、遊星ローラ24は、回転軸23の外周の円筒面に転がり接触しており、回転軸23が回転したときに遊星ローラ24と回転軸23の間の摩擦によって遊星ローラ24も回転するようになっている。遊星ローラ24は、周方向に一定の間隔をおいて複数設けられている。
【0040】
図7に示すように、外輪部材25は、キャリパボディ19の対向片17に設けられた収容孔20内に収容され、その収容孔20の内周で軸方向にスライド可能に支持されている。外輪部材25の軸方向前端には、摩擦パッド22の背面に形成された係合凸部32に係合する係合凹部33が形成され、この係合凸部32と係合凹部33の係合によって、外輪部材25がキャリパボディ19に対して回り止めされている。
【0041】
外輪部材25の内周には螺旋凸条34が設けられ、遊星ローラ24の外周には、螺旋凸条34に係合する円周溝35が設けられており、遊星ローラ24が回転したときに、外輪部材25の螺旋凸条34が円周溝35に案内されて、外輪部材25が軸方向に移動するようになっている。この実施形態では遊星ローラ24の外周にリード角が0度の円周溝35を設けているが、円周溝35のかわりに螺旋凸条34と異なるリード角をもつ螺旋溝を設けてもよい。
【0042】
キャリヤ26は、遊星ローラ24を回転可能に支持するキャリヤピン26Aと、その各キャリヤピン26Aの軸方向前端の周方向間隔を一定に保持する環状のキャリヤプレート26Cと、各キャリヤピン26Aの軸方向後端の周方向間隔を一定に保持する環状のキャリヤ本体26Bとからなる。キャリヤプレート26Cとキャリヤ本体26Bは遊星ローラ24を間に軸方向に対向しており、周方向に隣り合う遊星ローラ24の間に配置された連結棒36を介して連結されている。
【0043】
キャリヤ本体26Bは、滑り軸受37を介して回転軸23に支持され、回転軸23に対して相対回転可能となっている。遊星ローラ24とキャリヤ本体26Bの間には、遊星ローラ24の自転がキャリヤ本体26Bに伝達するのを遮断するスラスト軸受38が組み込まれている。
【0044】
各キャリヤピン26Aは、周方向に間隔をおいて配置された複数のキャリヤピン26Aに外接するように装着された縮径リングばね39で径方向内方に付勢されている。この縮径リングばね39の付勢力によって、遊星ローラ24の外周は回転軸23の外周に押さえ付けられ、回転軸23と遊星ローラ24の間の滑りが防止されている。縮径リングばね39の付勢力を遊星ローラ24の軸方向全長にわたって作用させるため、キャリヤピン26Aの両端に縮径リングばね39が設けられている。
【0045】
磁気式荷重センサ1は、フランジ部材2の軸方向後方に支持部材3が位置するように収容孔20内に嵌め込まれている。キャリヤ26と磁気式荷重センサ1の間には、キャリヤ26と一体に公転する間座40と、間座40と磁気式荷重センサ1の間で軸方向荷重を伝達するスラスト軸受41とが組み込まれている。フランジ部材2の内周には、回転軸23を回転可能に支持する転がり軸受42が組み込まれている。
【0046】
磁気式荷重センサ1は、支持部材3の外周縁を、収容孔20の内周に装着した止め輪43で係止することによって軸方向後方への移動が規制されている。そして、この磁気式荷重センサ1は、間座40とスラスト軸受41とを介してキャリヤ本体26Bを軸方向に支持することで、キャリヤ26の軸方向後方への移動を規制している。また、キャリヤ26は、回転軸23の軸方向前端に装着された止め輪44で軸方向前方への移動も規制されている。したがって、キャリヤ26は、軸方向前方と軸方向後方の移動がいずれも規制され、キャリヤ26に保持された遊星ローラ24も軸方向移動が規制された状態となっている。
【0047】
図8に示すように、スラスト軸受41は、間座40のフランジ部材2との対向面に形成した軸受嵌合凹部40aに嵌め込まれた軌道盤41Aと、軌道盤41Aとフランジ部材2の間に周方向に間隔をおいて組み込まれた複数の転動体41Bと、これらの転動体41Bの間隔を保持する保持器41Cとからなる。このスラスト軸受41は、転動体41Bとして玉を用いたスラスト玉軸受であり、この転動体41Bが、フランジ部材2の軸方向端面に直接加工された断面円弧状の溝10に転がり接触し、溝10がスラスト軸受41の軌道面として機能する。
【0048】
図7に示すように、フランジ部材2と支持部材3の外周の位置決め溝12,13には、収容孔20の内周に係止したキー部材45が嵌め込まれ(図10参照)、このキー部材45の嵌合によってフランジ部材2の周方向位置と支持部材3の周方向位置とが相対的に位置決めされている。
【0049】
次に、上述した直動アクチュエータ14の動作例を説明する。
【0050】
電動モータ27を作動させると、回転軸23が回転し、遊星ローラ24がキャリヤピン26Aを中心に自転しながら回転軸23を中心に公転する。このとき螺旋凸条34と円周溝35の係合によって外輪部材25と遊星ローラ24が軸方向に相対移動するが、遊星ローラ24はキャリヤ26と共に軸方向の移動が規制されているので、遊星ローラ24は軸方向に移動せず、外輪部材25が軸方向に移動する。このようにして、直動アクチュエータ14は、電動モータ27で駆動される回転軸23の回転を外輪部材25の軸方向移動に変換し、その外輪部材25で摩擦パッド22に軸方向荷重を印加することで、摩擦パッド22をブレーキディスク15に押し付けて制動力を発生させる。
【0051】
ここで、外輪部材25が摩擦パッド22に軸方向荷重を印加するとき、外輪部材25には軸方向後方への反力が作用し、その反力は、遊星ローラ24、キャリヤ26、間座40、スラスト軸受41を介して磁気式荷重センサ1で受け止められる。そして、その反力によって磁気式荷重センサ1のフランジ部材2が軸方向後方にたわみ、磁気ターゲット4と磁気センサ5の相対位置が変化する。このとき、その相対位置の変化に応じて磁気センサ5の出力信号が変化するので、磁気センサ5の出力信号に基づいて軸方向荷重の大きさを検出することができる。また、この磁気センサ5の出力信号を用いて電動ブレーキ装置の制動力をフィードバック制御することにより、高精度な荷重制御が実現できる。
【0052】
上記磁気式荷重センサ1は、フランジ部材2の局部の歪みではなく、フランジ部材2の変形量から軸方向荷重を検出するものであるから、直動アクチュエータ14の温度変化や温度分布のばらつきによる影響を受けにくく、高い精度で直動アクチュエータ14の軸方向荷重の大きさを検出することが可能である。
【0053】
摩擦パッド22に軸方向荷重を印加したとき、フランジ部材2には主にせん断荷重が作用し、支持部材3には主に圧縮荷重が作用する。そして、磁気ターゲット4は、フランジ部材2に作用するせん断荷重によって変位する一方、磁気センサ5は、支持部材3に作用する圧縮荷重によってはほとんど変位せず、この磁気ターゲット4と磁気センサ5の相対変位によって、軸方向荷重の検出が可能となる。
【0054】
直動アクチュエータ14が摩擦パッド22に軸方向荷重を印加するときの磁気ターゲット4と磁気センサ5の相対位置の変化量は極めて小さい。例えば、直動アクチュエータ14の印加する軸方向荷重の大きさが30kNのとき、磁気ターゲット4と磁気センサ5の相対位置の変化量は軸方向に0.1mm程度と極めて微小であるが、上記磁気式荷重センサ1は、複数の永久磁石11を反対の磁極が磁気ターゲット4と磁気センサ5の相対変位方向に並ぶように配置し、その隣り合う磁極の境目の近傍に磁気センサ5を配置しているので、磁気センサ5の出力信号が、磁気ターゲット4と磁気センサ5の相対位置の変化に対して急峻に変化し、磁気ターゲット4と磁気センサ5の相対位置の変化量を高精度に検出することができる。
【0055】
また、上記磁気式荷重センサ1は、磁気センサ5の出力信号が、磁気ターゲット4と磁気センサ5の軸方向の相対変位に対しては急峻に変化し、軸方向以外の方向の相対変位に対してはあまり変化しないという軸方向の指向性を示す。そのため、磁気センサ5の出力信号が外部振動の影響を受けにくく、安定した精度で直動アクチュエータ14の軸方向荷重の大きさを検出することができる。
【0056】
また、この磁気式荷重センサ1は、フランジ部材2とスラスト軸受41の接触を転がり接触としているので、軸方向荷重によりフランジ部材2にたわみが生じたときに、そのフランジ部材2のたわみに起因する摩擦力がフランジ部材2とスラスト軸受41の間に生じにくく、ヒステリシス誤差の発生が抑えられ、荷重増加時(すなわちフランジ部材2のたわみが増大するとき)と荷重減少時(すなわちフランジ部材2のたわみが減小するとき)とで荷重の検出値に誤差が生じるのを防止することができる。
【0057】
また、この磁気式荷重センサ1は、スラスト軸受41のフランジ部材2側の軌道輪が不要なので、その軌道輪の軸方向厚さに相当する分、直動アクチュエータ14の軸方向長さが短くすむ。そのため、電動ブレーキ装置の軸方向長さが短くなり、電動ブレーキ装置を車両に組み込んだときに、電動ブレーキ装置周辺の部品(たとえばサスペンション)のレイアウトの自由度が高い。
【0058】
また、この磁気式荷重センサ1は、互いに非接触に配置された磁気ターゲット4と磁気センサ5の相対位置の変化を利用して軸方向荷重を検出するので、衝撃荷重やせん断荷重が荷重センサ1に入力されてもセンサ1が故障しにくく、高い耐久性を確保することができる。
【0059】
直動アクチュエータ14が印加する軸方向荷重の大きさを検出する方法として、外輪部材25が摩擦パッド22を軸方向前方に押圧するときの外輪部材25の軸方向変位に基づいて摩擦パッド22に対する軸方向荷重を推定する方法があるが、この方法では、摩擦パッド22の摩耗等による外輪部材25の原点位置の変動を把握するために別途のセンサが必要となり、構造が複雑になってしまう。これに対し、外輪部材25が摩擦パッド22を軸方向前方に押圧するときに作用する軸方向後方の反力を受け止める部材として上記磁気式荷重センサ1を組み込むと、摩擦パッド22の摩耗等により外輪部材25の原点位置が変動しても、磁気式荷重センサ1が検出する軸方向荷重に影響しない。そのため、外輪部材25の原点位置を把握するためのセンサが不要であり、構造が単純で済む。
【0060】
上記実施形態では、転動体41Bとして玉を用いたスラスト軸受41を例に挙げて説明したが、この発明は他の形式のスラスト軸受41にも適用することができる。例えば、図11に示すように、転動体41Bとして円筒ころまたは針状ころを用いたスラストころ軸受を採用することができる。図11において、フランジ部材2の支持部材3と対向する側とは反対の面には、熱処理(例えば高周波焼入れ)を施されて硬化した周方向に連続する平面46が、スラスト軸受41の軌道面として形成されている。
【0061】
また、図12に示すように、転動体41Bとして球面ころを用いたスラスト自動調心ころ軸受を採用することができる。図12において、フランジ部材2の支持部材3と対向する側とは反対の面には、軸方向荷重の方向に対して傾斜した断面円弧状の凹面47が周方向に連続して形成されており、この凹面47がスラスト軸受41の軌道面として機能する。このようにスラスト自動調心ころ軸受を採用すると、間座40とフランジ部材2の間の平行度に誤差が存在するときにも、その誤差をスラスト軸受41が吸収するので、フランジ部材2が均一にたわみ、荷重の検出精度が安定する。
【0062】
上記実施形態では、回転軸23の回転を直動部材(ここでは外輪部材25)の軸方向移動に変換する直動機構として、回転軸23の外周の円筒面に転がり接触する複数の遊星ローラ24と、遊星ローラ24を自転可能かつ公転可能に保持し、軸方向移動を規制されたキャリヤ26と、複数の遊星ローラ24を囲むように配置された外輪部材25と、外輪部材25の内周に設けられた螺旋凸条34と、螺旋凸条34と係合するように各遊星ローラ24の外周に設けられた螺旋溝または円周溝35とからなる遊星ローラ機構を例に挙げて説明したが、この発明は、他の構成の直動機構を採用した直動アクチュエータにも同様に適用することができる。
【0063】
例えば、直動機構としてボールねじ機構を採用した直動アクチュエータの例を図13に示す。以下、上記実施形態に対応する部分は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0064】
図13において、直動アクチュエータは、回転軸23と、回転軸23と一体に設けられたねじ軸50と、ねじ軸50を囲むように設けられたナット51と、ねじ軸50の外周に形成されたねじ溝52とナット51の内周に形成されたねじ溝53の間に組み込まれた複数のボール54と、ナット51のねじ溝53の終点から始点にボール54を戻す図示しないリターンチューブと、ナット51の軸方向後方に配置された磁気式荷重センサ1とを有する。
【0065】
ナット51は、キャリパボディ19の対向片17に設けられた収容孔20内に、キャリパボディ19に対して回り止めされた状態で軸方向にスライド可能に収容されている。ねじ軸50の軸方向後端にはねじ軸50と一体に回転する間座40が設けられ、その間座40がスラスト軸受41を介して磁気式荷重センサ1で支持されている。ここで、磁気式荷重センサ1は、間座40とスラスト軸受41とねじ軸50とを介してナット51を軸方向に支持することで、ナット51の軸方向後方への移動を規制している。
【0066】
この直動アクチュエータは、回転軸23を回転させることによって、ねじ軸50とナット51を相対回転させ、ナット51を軸方向前方に移動させて摩擦パッド22に軸方向荷重を印加する。このとき、ねじ軸50には、軸方向後方への反力が作用し、その反力は、間座40、スラスト軸受41を介して磁気式荷重センサ1で受け止められる。そして、その反力によって磁気式荷重センサ1のフランジ部材2が軸方向後方にたわみ、磁気ターゲット4と磁気センサ5の相対位置が変化する。そのため、上記実施形態と同様、磁気センサ5の出力信号が摩擦パッド22に印加される軸方向荷重の大きさに応じて変化し、この磁気センサ5の出力信号に基づいて、摩擦パッド22の押圧力を検出することができる。
【0067】
また、直動機構としてボールランプ機構を採用した直動アクチュエータを適用した例を図14に示す。
【0068】
図14において、直動アクチュエータは、回転軸23と、回転軸23の外周に回り止めされた回転ディスク60と、回転ディスク60の軸方向前方に対向して配置された直動ディスク61と、回転ディスク60と直動ディスク61の間に挟まれた複数のボール62と、直動ディスク61の軸方向後方に配置された磁気式荷重センサ1とを有する。
【0069】
直動ディスク61は、キャリパボディ19の対向片17に設けられた収容孔20内に、キャリパボディ19に対して回り止めされた状態で軸方向にスライド可能に収容されている。回転ディスク60の軸方向後端には回転ディスク60と一体に回転する間座40が設けられ、その間座40がスラスト軸受41を介して磁気式荷重センサ1で支持されている。ここで、磁気式荷重センサ1は、間座40とスラスト軸受41とを介して回転ディスク60を軸方向に支持することで回転ディスク60の軸方向後方への移動を規制している。
【0070】
図14、図15に示すように、回転ディスク60の直動ディスク61に対する対向面60aには、周方向の一方向に沿って深さが次第に浅くなる傾斜溝63が形成され、直動ディスク61の回転ディスク60に対する対向面61aには、周方向の他方向に沿って深さが次第に浅くなる傾斜溝64が形成されている。図16(a)に示すように、ボール62は、回転ディスク60の傾斜溝63と直動ディスク61の傾斜溝64の間に組み込まれており、図16(b)に示すように、直動ディスク61に対して回転ディスク60が相対回転すると、傾斜溝63,64内をボール62が転動して、回転ディスク60と直動ディスク61の間隔が拡大するようになっている。
【0071】
この直動アクチュエータは、回転軸23を回転させることによって、直動ディスク61と回転ディスク60を相対回転させて、直動ディスク61を軸方向前方に移動させて摩擦パッド22に軸方向荷重を印加する。このとき、回転ディスク60には、軸方向後方への反力が作用し、その反力は、間座40、スラスト軸受41を介して磁気式荷重センサ1で受け止められる。そして、その反力によって磁気式荷重センサ1のフランジ部材2が軸方向後方にたわみ、磁気ターゲット4と磁気センサ5の相対位置が変化する。そのため、上記実施形態と同様、磁気センサ5の出力信号が摩擦パッド22に印加される軸方向荷重の大きさに応じて変化し、この磁気センサ5の出力信号に基づいて、摩擦パッド22の押圧力を検出することができる。
【0072】
上記実施形態では、磁気ターゲット4と磁気センサ5の相対位置の変化量を高精度に検出するため、磁気ターゲット4の磁化方向が磁気ターゲット4と磁気センサ5の相対変位方向と直交するように磁石を配置したが、図17に示すように、磁気ターゲット4の磁化方向が磁気ターゲット4と磁気センサ5の相対変位方向と平行となるように磁気ターゲット4を配置し、その磁気ターゲット4の近傍に磁気センサ5を配置してもよい。
【0073】
図18に、この発明の第2実施形態の磁気式荷重センサ70を示す。第1実施形態に対応する部分は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0074】
フランジ部材2は、支持部材3との対向面に環状突起71を有し、その環状突起71で支持部材3の内径側部分を支持し、フランジ部材2と支持部材3の間隔を保持している。支持部材3は、フランジ部材2に向けて突出する筒部72を有する。筒部72の内径面は、フランジ部材2の外径面と径方向に対向しており、筒部72の内径面に磁気センサ5が固定され、フランジ部材2の外径面に磁気ターゲット4が固定されている。
【0075】
この磁気式荷重センサ1は、フランジ部材2に支持部材3に向かう方向の軸方向荷重が作用すると、その軸方向荷重に応じてフランジ部材2が内周部を支点として軸方向にたわみ、支持部材3も外周部を支点として軸方向にたわむ。この両部材2,3のたわみにより磁気ターゲット3と磁気センサ4の相対位置が変化し、その相対位置の変化に応じて磁気センサ5の出力信号が変化する。そして、フランジ部材2に作用する軸方向荷重の大きさと、磁気センサ5の出力信号との関係を予め把握しておくことにより、磁気センサ5の出力信号に基づいてフランジ部材2に作用する軸方向荷重の大きさを検出することができる。
【0076】
このように、フランジ部材2に軸方向荷重が入力されたときに、フランジ部材2だけでなく支持部材3にもたわみが生じるようにすると、その両部材2,3のたわみにより磁気ターゲット4と磁気センサ5が相対変位するので、第1実施形態よりも荷重検出の分解能を高めることが可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 磁気式荷重センサ
2 フランジ部材
4 磁気ターゲット
5 磁気センサ
10 溝
11 永久磁石
14 直動アクチュエータ
22 摩擦パッド
23 回転軸
25 外輪部材
27 電動モータ
41 スラスト軸受
41B 転動体
46 平面
47 凹面
51 ナット
61 直動ディスク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直動アクチュエータが対象物(22)に印加する軸方向荷重の大きさを検出する直動アクチュエータ用の磁気式荷重センサにおいて、
前記軸方向荷重の反力をスラスト軸受(41)を介して受けてたわみを生じるフランジ部材(2)と、磁界を発生する磁気ターゲット(4)と、その磁気ターゲット(4)に対する相対位置が前記フランジ部材(2)のたわみにより変化するよう配置された磁気センサ(5)とを有し、前記フランジ部材(2)の軸方向端面に前記スラスト軸受(41)の転動体(41B)が転がり接触する軌道面を形成したことを特徴とする直動アクチュエータ用の磁気式荷重センサ。
【請求項2】
前記スラスト軸受(41)が転動体(41B)として玉を用いたスラスト玉軸受であり、前記軌道面が断面円弧状の溝(10)である請求項1に記載の直動アクチュエータ用の磁気式荷重センサ。
【請求項3】
前記スラスト軸受が転動体(41B)として円筒ころまたは針状ころを用いたスラストころ軸受であり、前記軌道面が熱処理を施されて硬化した平面(46)である請求項1に記載の直動アクチュエータ用の磁気式荷重センサ。
【請求項4】
前記スラスト軸受(41)が転動体(41B)として球面ころを用いたスラスト自動調心ころ軸受であり、前記軌道面が、前記軸方向荷重の方向に対して傾斜した断面円弧状の凹面(47)である請求項1に記載の直動アクチュエータ用の磁気式荷重センサ。
【請求項5】
前記磁気ターゲット(4)が、前記磁気ターゲット(4)と磁気センサ(5)の相対変位方向に対して直交する方向を磁化方向とする複数の永久磁石(11)を、反対の極性を有する磁極が前記磁気ターゲット(4)と磁気センサ(5)の相対変位方向に並ぶように配置したものであり、その隣り合う磁極の境目の近傍に前記磁気センサ(5)を配置した請求項1から4のいずれかに記載の直動アクチュエータ用の磁気式荷重センサ。
【請求項6】
前記磁気センサ(5)としてホールICを使用した請求項1から5のいずれかに記載の直動アクチュエータ用の磁気式荷重センサ。
【請求項7】
前記磁気センサ(5)として磁気抵抗素子を使用した請求項1から5のいずれかに記載の直動アクチュエータ用の磁気式荷重センサ。
【請求項8】
前記磁気センサ(5)として磁気インピーダンス素子を使用した請求項1から5のいずれかに記載の直動アクチュエータ用の磁気式荷重センサ。
【請求項9】
前記磁気ターゲット(4)にネオジム磁石を使用した請求項1から8のいずれかに記載の直動アクチュエータ用の磁気式荷重センサ。
【請求項10】
電動モータ(27)の回転が入力される回転軸(23)と、その回転軸(23)の回転を直動部材(25,51,61)の軸方向移動に変換する直動機構とを有し、その直動機構で対象物(22)に軸方向荷重を印加する直動アクチュエータにおいて、前記軸方向荷重を対象物(22)に印加するときに直動機構に作用する反力を受け止める部材として請求項1から9のいずれかに記載の磁気式荷重センサを組み込んだ直動アクチュエータ。
【請求項1】
直動アクチュエータが対象物(22)に印加する軸方向荷重の大きさを検出する直動アクチュエータ用の磁気式荷重センサにおいて、
前記軸方向荷重の反力をスラスト軸受(41)を介して受けてたわみを生じるフランジ部材(2)と、磁界を発生する磁気ターゲット(4)と、その磁気ターゲット(4)に対する相対位置が前記フランジ部材(2)のたわみにより変化するよう配置された磁気センサ(5)とを有し、前記フランジ部材(2)の軸方向端面に前記スラスト軸受(41)の転動体(41B)が転がり接触する軌道面を形成したことを特徴とする直動アクチュエータ用の磁気式荷重センサ。
【請求項2】
前記スラスト軸受(41)が転動体(41B)として玉を用いたスラスト玉軸受であり、前記軌道面が断面円弧状の溝(10)である請求項1に記載の直動アクチュエータ用の磁気式荷重センサ。
【請求項3】
前記スラスト軸受が転動体(41B)として円筒ころまたは針状ころを用いたスラストころ軸受であり、前記軌道面が熱処理を施されて硬化した平面(46)である請求項1に記載の直動アクチュエータ用の磁気式荷重センサ。
【請求項4】
前記スラスト軸受(41)が転動体(41B)として球面ころを用いたスラスト自動調心ころ軸受であり、前記軌道面が、前記軸方向荷重の方向に対して傾斜した断面円弧状の凹面(47)である請求項1に記載の直動アクチュエータ用の磁気式荷重センサ。
【請求項5】
前記磁気ターゲット(4)が、前記磁気ターゲット(4)と磁気センサ(5)の相対変位方向に対して直交する方向を磁化方向とする複数の永久磁石(11)を、反対の極性を有する磁極が前記磁気ターゲット(4)と磁気センサ(5)の相対変位方向に並ぶように配置したものであり、その隣り合う磁極の境目の近傍に前記磁気センサ(5)を配置した請求項1から4のいずれかに記載の直動アクチュエータ用の磁気式荷重センサ。
【請求項6】
前記磁気センサ(5)としてホールICを使用した請求項1から5のいずれかに記載の直動アクチュエータ用の磁気式荷重センサ。
【請求項7】
前記磁気センサ(5)として磁気抵抗素子を使用した請求項1から5のいずれかに記載の直動アクチュエータ用の磁気式荷重センサ。
【請求項8】
前記磁気センサ(5)として磁気インピーダンス素子を使用した請求項1から5のいずれかに記載の直動アクチュエータ用の磁気式荷重センサ。
【請求項9】
前記磁気ターゲット(4)にネオジム磁石を使用した請求項1から8のいずれかに記載の直動アクチュエータ用の磁気式荷重センサ。
【請求項10】
電動モータ(27)の回転が入力される回転軸(23)と、その回転軸(23)の回転を直動部材(25,51,61)の軸方向移動に変換する直動機構とを有し、その直動機構で対象物(22)に軸方向荷重を印加する直動アクチュエータにおいて、前記軸方向荷重を対象物(22)に印加するときに直動機構に作用する反力を受け止める部材として請求項1から9のいずれかに記載の磁気式荷重センサを組み込んだ直動アクチュエータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2013−83550(P2013−83550A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223704(P2011−223704)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】
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