説明

相乗的抗痙攣効果を有する医薬組成物

本発明は、癲癇性発作の予防、軽減または/および治療のための、ある種類のペプチド化合物である化合物(a)と、少なくとも1種のさらなる化合物(b)とを含む医薬組成物を対象とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、参照により本明細書に組み込まれている2006年6月15日の米国特許第60/813967号、2006年10月12日の欧州特許第06021470.7号、2006年10月12日の欧州特許第06021469.9号、および2006年11月22日の欧州特許第06024241.9号の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、癲癇性発作の予防、軽減または/および治療のための、ある種類のペプチド化合物である化合物(a)と、少なくとも1種のさらなる化合物(b)とを含む医薬組成物であって、単独で提供される化合物(a)または(b)の効果と比較し、癲癇性発作の予防、軽減および/または治療に関して相乗効果を有する組成物を対象とする。
【背景技術】
【0003】
ある種のペプチドは、中枢神経系(CNS)活性を示すことが知られており、癲癇および他のCNS障害の治療に有用である。これらのペプチドは、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5378729号中においてまた米国特許第5773475号中において記述されている。
【0004】
欧州特許第1541138号は、癲癇重積状態、または急性反復性発作および発作クラスターなどの関連した状態を治療するためのある種類のペプチド化合物の使用を対象としている。欧州特許第1541138号は、全汎強直間代性痙攣の予防をさらに対象としている。
【0005】
発作は、行動または意識の変化を招く過剰ニューロン活性に関連した、発作性脳機能障害の結果である。癲癇は、2つ以上の非誘発性発作の再帰を表しており、また慢性脳疾患を表している。
【0006】
2つの主要な型の発作が存在する。すなわち、部分または焦点発作であって脳内のある場所から発生するが、現象の経過に従って拡散する恐れがある発作;ならびに全汎発作であって、同時的に両方の脳半球に影響を及ぼす恐れがある発作である。部分発作は、影響を受ける領域に応じて多様な形で発現され(錯乱、自動性身体運動、幻覚など)、それらが脳内で拡散する場合、最後には全汎強直間代性現象(痙攣)になる恐れがある。いくつかの型の全汎発作、すなわち痙攣性(強直間代性、強直性、間代性、ミオクローヌス性)および非痙攣性(アブサンス、アトニー性)発作が存在する。典型的には全ての種類の発作は数分、通常は5分未満継続する。痙攣性発作、特に強直間代性現象は、通例では意識喪失を招く。
【0007】
癲癇重積状態(status epilepticus)(SE)は、30分間以上継続する発作、または30分間以上発生し、その間被験者が完全に意識を回復しない一連の連続的発作と定義されている。しかし、多くの臨床医家は、また多くの最近の主要研究論文では、5分間を超えて発作が継続する場合患者がSE状態にあると見なしている。SEには2つの主な型が存在し、痙攣性または非痙攣性であり得る全汎SE、ならびに焦点性SEである。全汎痙攣性SEは最も重篤な型であり、高い罹患率および死亡率に関連している。SEは、前診断が癲癇である患者に起こり得る。しかし、以前に癲癇ではなく、しばしば重篤かつ急性の脳疾患(例えば脳炎または脳卒中)または外傷に関連している被験者で、よりしばしばSEが発症する。これらに加え、低血糖、過温症、薬剤過投与、およびアルコールまたは薬剤中止を含む様々な状態がSEの原因となり得る。したがって、例えば複雑な部分発作についてのモデルもしくはそれらを有する患者における化合物または組合せの抗痙攣活性は、SEに対する活性を必ずしも予見させるものではない。SEは、生命を脅かす疾患であるだけでなく、ニューロン細胞損失および癲癇原性化の原因ともなる。
【0008】
過去50年の著しい医学的進展にも拘らず、癲癇治療における進歩は、大多数の患者について極めて不十分となっている。世界の癲癇罹患率は0.3および0.6%の間にあると推定される(Sanderら、1987年;Schmidtら、1986年;Loiseau、1988年)。早期治療が行われ、適切な抗癲癇薬の最適量を毎日投与しているにも拘らず、患者の約20〜30%が難治性癲癇に罹り、または重篤な副作用で悩んでいる(Schmidt、1992年;Kramer、1997年;Brodie、2001年)。このような場合、代替的な単剤療法で発作を制御できる。しかしAEDでは、最大処方用量を投与したとしても、痙攣性発作の完全な抑制を達成できることは稀である(Kramer、1997年)。抗癲癇薬による単剤療法に失敗した場合、効力、耐容性、またはその両方を向上させることにより有効性を改善する試みとして併用療法が試行されている。
【0009】
ラコサミド(lacosamide)(LCM、R-2-アセトアミド-N-ベンジル-3-メトキシプロピオンアミド)は、抗痙攣性活性を有する一連の官能基化アミノ酸の一員である。この抗痙攣性活性は、癲癇の広範な臨床試験、ならびに、最大電気ショック発作[MES]、6Hz治療不応性発作モデル、およびFringsマウスにおける音響誘発性発作を含む動物モデルで示されている(Bialerら、2001年、2002年;Hovinga 2003年)。さらに、LCMは治療不応性自己持続癲癇重積状態に対して活性である。電気的誘発性発作におけるこの薬剤の活性に加えて、LCMはコバルト-ホモシステイン誘発性およびリチウム-ピロカルピン誘発性の癲癇重積状態に対して有効である(Bialerら、2001年、2002年)。
【0010】
最初、LCMは、NMDA受容体のストリキニーネ不感性グリシン部位への親和力を有するとの示唆があったが、しかしさらなる研究は、これが、それによってこの薬剤がその抗痙攣性活性を発現する直接的な効果をもたらすものではないかも知れないことを示唆している(Bialerら、2001年、2002年)。受容体結合性の研究(100を超える様々な部位に関する)において、LCMもその代謝産物も、広く様々な神経伝達物質受容体またはイオンチャネルに結合していない(Erringtonら、2006年)。細胞/組織培養では、LCMは、NMDA-誘発電流に、または電圧ゲート制御ナトリウムチャネルにおいて全く影響を有しなかった。マウスの皮質性ニューロンにおいて、最も確実には非特異的機序により、この薬剤はGABA電流を増加させ、グルタメート伝達を間接的に阻害した(Bialerら、2002年)。最近のデータは、LCMが二元的な形の作用を有すること、すなわちLCMが電圧-ゲート制御ナトリウムチャネルの緩やかな不活性化を促進し、応答伝達物質タンパク質CRMP-2の虚脱を調節することを示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第60/813967号
【特許文献2】欧州特許第06021470.7号
【特許文献3】欧州特許第06021469.9号
【特許文献4】欧州特許第06024241.9号
【特許文献5】米国特許第5378729号
【特許文献6】米国特許第5773475号
【特許文献7】欧州特許第1541138号
【特許文献8】国際公開PCT/EP第2005/010603号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Luszczkiら、2003年、Epilepsia 44:489頁
【非特許文献2】J.MarchによるAdvanced Organic Chemistry, John Wiley and Sons, New York, N.Y.,16〜18頁(1985)
【非特許文献3】Loscher, W.、Nolting, B.、「The role of technical, biological and pharmacological factors in the laboratory evaluation of anticonvulsant drugs. IV. Protective indices」、Epilepsy Res(1991)、9:1〜10頁
【非特許文献4】Luszczki JJ、Borowicz KK、Swiader M、Czuczwar SJ、「Interaction between oxcarbazepine and conventional antiepileptic drugs in the maximal electroshock test in mice:an isobolographic analysis」、Epilepsia(2003)、44:489〜99頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前臨床プロフィルは、部分発症および全汎強直間代性発作の治療にLCMが有用であろうことを示唆している。LCMなどの新たな抗癲癇薬(AED)は、しばしばどの既存の療法と一緒に使用すべきであるかを示唆する証明なしに、アド-オン型治療として最初認可されている。さらに、癲癇を有する患者のおよそ30%が多剤療法治療を処方される。したがって、AED多剤療法についての合理的基準を発展させる明らかな必要性、すなわち、効力、耐容性、またはその両方を向上させることにより改善された有効性を有する抗痙攣剤組成物を開発する明らかな必要性が存在する。難治性発作を有する患者に有効なAED組合せが実験的に評価されたが、しかしこのような評価にはしばしば、有害な副作用反応が付随していた(Warnerら、1992年;Luszczkiら、2003年)。したがって、薬力学的薬剤相互作用を評価する1つの選択肢として前臨床モデルが使用されている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
癲癇性発作の予防、軽減または/および治療のための、ある種類のペプチド化合物である化合物(a)と、少なくとも1種のさらなる化合物(b)とを含む医薬組成物であって、単独で提供される化合物(a)または(b)の効果と比較し、癲癇性発作の予防、軽減または/および治療におけるこの組成物の効果が相乗的である医薬組成物は、以前には報告されていない。したがって、本発明は、場合によって医薬として許容可能な担体、希釈剤または/およびアジュバントと一緒に、癲癇性発作の予防、軽減または/および治療のための、(a)式(I)、(II)もしくは/および(III)の化合物、またはその医薬として許容可能な塩と、(b)少なくとも1種のさらなる化合物とを含む医薬組成物に関する。癲癇性発作の予防、軽減または/および治療におけるこの組成物の効果は、単独で提供される化合物(a)または(b)の効果と比較し、相乗的とされてよいものである。
【0015】
化合物(b)は、化合物(a)と異なる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】マウスの6Hz誘発発作モデルにおける3つの固定比率組合せについてのラモトリジンとラコサミドの間の相互作用を示すイソボログラム。LTGおよびLCMについての50%有効量(ED50)値をそれぞれX-およびY-軸に配置している。これらの両ED50値を結ぶ直線は、種々の固定用量比率の連続体について、理論的な相加による線を表す。中実な点により、50%効果をもたらすLTGおよびLCMの比率として表した合計用量についての実験由来のED50混合値(95%信頼限界によるエラーバーとして)を図示している。
【図2】バルプロエートとラコサミドの間の相互作用(図1における詳細を参照されたい)。
【図3】カルバマゼピンとラコサミドの間の相互作用(図1における詳細を参照されたい)。
【図4】フェニトインとラコサミドの間の相互作用(図1における詳細を参照されたい)。
【図5】レベチラセタムとラコサミドの間の相互作用(図1における詳細を参照されたい)。
【図6】トピラメートとラコサミドの間の相互作用(図1における詳細を参照されたい)。
【図7】ガバペンチンとラコサミドの間の相互作用(図1における詳細を参照されたい)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
用語「癲癇性発作の予防、軽減または/および治療に関する相乗効果」は、単独で提供される化合物(a)または(b)の効果と比較して相加を超えている、癲癇性発作の予防、軽減または/および治療に関する本発明による医薬組成物の効果を指す。
【0018】
本発明の相乗効果は、癲癇性発作の治療で、治療として所望される効果(相乗的治療効果)における化合物(a)および(b)の組合せの相乗作用と定義できる。
【0019】
本発明の相乗効果は、有害な副作用の低減における、化合物(a)および(b)の組合せの相乗作用とも定義でき、その副作用は、単独で提供される化合物(a)および(b)の副作用と比較し、化合物(a)および(b)の組合せにおいてより小さいものとしてよい。
【0020】
Deckersら(2000年)によれば、AED間の相互作用を評価するのに使用されるイソボログラフィック(isobolographic)方法が、マウスにおける6Hz発作モデルなどの、癲癇の動物モデルにおけるAED間の相乗作用、相加、または拮抗作用を検出する最適な方法であると考えられる。イソボログラフィック分析では、組み合わされる薬剤の用量-応答曲線から実験的(ED混合)および理論相加(ED相加)ED50値を測定する。ED50は、動物の50%を6Hz-誘発性発作に対して保護する薬剤の用量と定義される。ED50混合は、50%の保護効果のために十分である固定比率組合せとして投与した、2つの成分薬剤の混合物について実験的に測定した合計用量である。逆に、ED50相加は、2つの薬剤の合計相加用量(相加の線から計算した)を表し、発作に対する50%の保護を理論的に提供するものである。
【0021】
用語「相互作用指数α」は、ED50混合/ED50相加の比率を指す。この比率は、イソボログラフィック分析において2つのAED間の相互作用の強さをうまく表すものと思われる(Luszczkiら、2003年;Berenbaum、1989年;Tallaridaら、1999年;Tallarida、2001年、2002年)。ED50混合=ED50相加の場合、α=1である。αが1からの小さな派生を示す場合、有意とはみなされ得ない。αが0.7未満である場合、これは相乗効果を示し得るものである。この指数が1.3を超える場合、これは拮抗効果を示し得るものであり、指数がこの間に存在する場合純粋な相加的相互作用を示し得るものである(Luszczkiら、2003年;Kerryら、1975年;Bourgeois、Wad、1984年、1988年;Bourgiois、1988年)。
【0022】
好ましい一実施形態において、本発明の医薬組成物の相乗効果は、約0.7までの、好ましくは約0.6までの、より好ましくは約0.5までの、この場合α>0であるこの組成物の相互作用指数αの値として定義される。相互作用指数αについての例は、約0.1、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、および約0.7である。
【0023】
動物モデルにおいて抗痙攣剤の毒性効果を定量化して測定した所与のTD50を、癲癇性発作について動物モデルにおいて測定したそれぞれのED50で割ることにより、保護指数(protective index)(PI)を計算することができる。このPIは、AEDの用量と、鎮静性、失調性または他の神経毒性副作用を発現するAEDの用量との間の満足される安全限界と見なされる(Loscherら、1991年)。PI混合は実験的に測定した保護指数であり、またPI相加は、癲癇性発作モデルにおける相加の線、および毒性効果を定量化するモデルから理論的に計算した保護指数である。
【0024】
用語「利益指数(benefit index)(BI)」は、イソボログラフィック分析から直接得られるそれぞれの固定比率組合せのPI混合とPI相加との商を指す。BIにより、種々の固定比率組合せとして適用される2つの薬剤の組合せの利益が明確に推定される。その上、BIは、それが>1.3である場合、臨床的実施においてそれぞれのAEDを組み合わせる理論的根拠を提供でき、一方BI<0.7では不利なAEDの組合せを示すことができる(Luszczkiら、2003年、Epilepsia 44:489頁)。
【0025】
他の実施形態において、本発明の医薬組成物の相乗効果は、少なくとも約1.3の、好ましくは少なくとも約1.4の、より好ましくは少なくとも約1.5の、この組成物の利益指数BIの値として定義される。利益指数BIについての例は、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9および約2.0である。
【0026】
用語「個々の化合物(b)および(a)のED50値について計算した化合物(b):化合物(a)の固定用量比率1:1」は、個々の化合物(b)および(a)のそれぞれのED50用量の50%、またはこの固定用量比率の倍数に対応する用量で化合物(b)および化合物(a)の両方を含む組成物を指す。相応じて、「個々の化合物(b)および(a)のED50値について計算した化合物(b):化合物(a)の固定用量比率3:1」は、それぞれのED50用量の75%に対応する用量の化合物(b)と、化合物(a)のそれぞれのED50用量の25%に対応する用量の化合物(a)とを含む、またはこの固定用量比率の倍数で含む組成物を指す。
【0027】
一般に、「個々の化合物(b)および(a)のED50値について計算した化合物(b):化合物(a)の固定用量比率X:Y」は、化合物(b)および化合物(a)の両方を含む組成物であって、化合物(b)の用量が、化合物(b)のX・ED50/(X+Y)に対応し、また化合物(a)の用量が、化合物(a)のY・ED50/(X+Y)に対応し、またはこの固定用量比率の倍数である組成物を指す。
【0028】
したがって、固定用量比率少なくともX:Yにおいて、化合物(b)および化合物(a)の両方を含む組成物は、少なくとも、X/(少なくともX+Y)部の化合物(b)(この場合1部は化合物(b)のED50に対応する量である)と、Y/(少なくともX+Y)部の化合物(a)(この場合1部は化合物(a)のED50に対応する量である)とを含み、またはこの固定用量比率の倍数を含む。
【0029】
用語「倍数」は、ED50値によって定義した量を参照すると、より多量または少量の化合物(a)と化合物(b)とを含むが、固定用量比率を維持している組成物を指す。したがって、上記において示した固定用量比率の倍数を含む組成物は、固定用量比率の少なくとも0.1倍、少なくとも0.2倍、少なくとも0.5倍、少なくとも2倍、少なくとも5倍、もしくは固定用量比率の少なくとも10倍を含み、かつ/または固定用量比率の最大100倍、最大50倍、もしくは固定用量比率の最大20倍を含むことができる。
【0030】
さらに他の好ましい実施形態において、化合物(b)および化合物(a)は、化合物(b):化合物(a)の固定用量比率約1:6〜約6:1、好ましくは約1:3〜約6:1、より好ましくは約1:1〜約6:1、より一層好ましくは約3:1〜約6:1で本発明の医薬組成物中に存在し、この場合固定用量比率は、個々の化合物(b)および化合物(a)のED50値に基づいて計算される。本発明による化合物(b):化合物(a)の固定用量比率についての例は、固定用量比率約1:6、約1:3、約1:1、約3:1、および約6:1である。本発明による固定用量比率についてのさらなる例は、固定用量比率約1:5、約1:4、約1:2、約2:1、約4:1、および約5:1である。
【0031】
好ましい一実施形態において、化合物(b)および化合物(a)は、化合物(b):化合物(a)の固定用量比率少なくとも約1:6、少なくとも約1:3、少なくとも約1:1、より好ましくは少なくとも約3:1で本発明の医薬組成物中に存在し、この場合固定用量比率は、個々の化合物(b)および(a)のED50値に基づいて計算される。本発明のこのより好ましい実施形態による化合物(b):化合物(a)の固定用量比率についての例は、固定用量比率約1:1、約2:1、約3:1、約4:1、約5:1、および約6:1である。
【0032】
さらに他の好ましい実施形態において、化合物(b)および化合物(a)は、化合物(b):化合物(a)の固定用量比率最大約6:1で本発明の医薬組成物中に存在し、この場合固定用量比率は、個々の化合物(b)および(a)のED50値に基づいて計算される。
【0033】
他の好ましい実施形態において、本発明の医薬組成物の化合物(b)は、ラセタム、ガンマアミノ酪酸アナログ、ジベンズアゼピン、フェニルトリアジン誘導体、単糖スルファメート、ヒダントイン誘導体、およびバルビツレートからなる群から選択される。ラセタムは、ピラセタム、アニラセタム、オキシラセタム、プラミラセタム、フェニルピラセタム、エチラセタム、レベチラセタム、ネフィラセタム、ロルジラセタム、ネブラセタム、ファソラセタム、コルラセタム、ブリバラセタム、およびセレトラセタムからなる群から選択できる。ガンマアミノ酪酸アナログは、ガバペンチン、およびプレガバリンからなる群から選択できる。ジベンズアゼピンはカルバマゼピンとしてよい。フェニルトリアジン誘導体は、ラモトリジンとしてよい。単糖スルファメートは、トピラメートとしてよい。ヒダントイン誘導体は、エトトイン、フェニトイン、メフェニトイン、およびホスフェニトインからなる群から選択できる。バルビツレートは、フェノバルビタール、メチルフェノバルビタール、メタルビタール、ペントバルビタール、およびバルベキサクロンからなる群から選択できる。
【0034】
さらに他の好ましい実施形態において、本発明の医薬組成物の化合物(b)は、レベチラセタム、ラモトリジン、カルバマゼピン、トピラメート、ガバペンチン、ブリバラセタム、セレトラセタム、ゾニサミド、フェルバメート、チアガビン、ビガバトリン、ジアゼパム、ミダゾラム、フェノバルビタール、ペントバルビタール、およびエトスクシミドを含む群から選択される。
【0035】
さらに他の好ましい実施形態において、本発明の医薬組成物の化合物(b)は、レベチラセタム、ラモトリジン、カルバマゼピン、トピラメート、ガバペンチン、ブリバラセタム、セレトラセタム、ゾニサミド、フェルバメート、チアガビン、ビガバトリン、ジアゼパム、ミダゾラム、ペントバルビタール、およびエトスクシミドからなる群から選択される。
【0036】
本発明の医薬組成物の化合物(b)は、レベチラセタム、ラモトリジン、カルバマゼピン、トピラメート、ブリバラセタム、セレトラセタム、およびエトスクシミドを含む群から選択されるのがより好ましい。本発明の医薬組成物の化合物(b)は、レベチラセタム、カルバマゼピン、ブリバラセタム、セレトラセタム、およびエトスクシミドを含む群から選択されるのがより一層好ましい。本発明の医薬組成物の化合物(b)は、レベチラセタム、ブリバラセタム、セレトラセタムを含む群から選択されるのが最も好ましい。
【0037】
当業者は、当技術分野で知られている方法によりED50値を測定してよい。ED50値は、前臨床または/および臨床試験によって測定される。公表されたED50値を使用してもよい。ED50値は、例えばラコサミド、ラモトリジン、カルバマゼピン、トピラメート、レベチラセタム、ガバペンチンについて公表されている。表5および6は、ラットおよびマウスの種々のモデルで得られた特定のED50値を開示している。当業者には、特定のモデルにおいて、種々の種の間でED50値が5倍までのもしくはより一層大きなばらつきを示すことが知られている。
【0038】
特に、ラコサミドのED50は、少なくとも約0.5mg/kg、最高約30mg/kg体重p.o.またはi.p.までの範囲にある。より詳細には、ラコサミドのED50は、約10mg/kg体重i.p.である。
【0039】
特に、ラモトリジンのED50は、少なくとも約1mg/kg、最高約10mg/kg体重p.o.またはi.p.までの範囲にある。ラモトリジンのED50は、約85mg/kg体重i.p.としてもよい。
【0040】
特に、カルバマゼピンのED50は、少なくとも約3mg/kg、最高約30mg/kg体重p.o.またはi.p.までの範囲にある。カルバマゼピンのED50は、約50mg/kg体重i.p.としてもよい。
【0041】
特に、レベチラセタムのED50は、少なくとも約10mg/kg、最高約100mg/kg体重p.o.またはi.p.までの範囲にある。より詳細には、レベチラセタムのED50は、約20mg/kg体重i.p.である。
【0042】
特に、トピラメートのED50は、少なくとも約5mg/kg、最高約500mg/kg体重p.o.またはi.p.までの範囲にある。より詳細には、トピラメートのED50は、約300mg/kg体重i.p.である。
【0043】
特に、ガバペンチンのED50は、少なくとも約5mg/kg、最高約100mg/kg体重p.o.またはi.p.までの範囲にある。ガバペンチンのED50は、約220mg/kg体重i.p.としてもよい。
【0044】
レベチラセタムはピラセタムのエチル誘導体であり、ラセタムの群に属する。ラセタムは、ラコサミドおよびラセタム単独の効果と比較し、癲癇性発作の予防、軽減または/および治療において相乗効果を有し得る。この場合癲癇性発作は、本明細書において定義しているものである。
【0045】
他の特に好ましい本発明の医薬組成物は、場合によって医薬として許容可能な担体、希釈剤または/およびアジュバントと一緒に、ラセタムおよびラコサミドまたは/ならびにそれらの医薬として許容可能な塩を含む。ラセタムは、ピラセタム、アニラセタム、オキシラセタム、プラミラセタム、フェニルピラセタム、エチラセタム、レベチラセタム、ネフィラセタム、ロルジラセタム、ネブラセタム、ファソラセタム、コルラセタム、ブリバセタム、およびセレトラセタムからなる群から選択できる。
【0046】
ガバペンチンはガンマアミノ酪酸アナログである。ガンマアミノ酪酸アナログは、ラコサミド、およびガンマアミノ酪酸アナログ単独の効果と比較し、癲癇性発作の予防、軽減または/および治療において相乗効果を有し得る。この場合癲癇性発作は、本明細書において定義しているものである。
【0047】
他の特に好ましい本発明の医薬組成物は、場合によって医薬として許容可能な担体、希釈剤または/およびアジュバントと一緒に、ガンマアミノ酪酸アナログおよびラコサミドまたは/ならびにそれらの医薬として許容可能な塩を含む。ガンマアミノ酪酸アナログは、ガバペンチン、およびプレガバリンからなる群から選択できる。
【0048】
カルバマゼピンはジベンズアゼピンである。ジベンズアゼピンは、ラコサミドおよびジベンズアゼピン単独の効果と比較し、癲癇性発作の予防、軽減または/および治療において相乗効果を有し得る。この場合癲癇性発作は、本明細書において定義しているものである。
【0049】
他の特に好ましい本発明の医薬組成物は、場合によって医薬として許容可能な担体、希釈剤または/およびアジュバントと一緒に、ジベンズアゼピンおよびラコサミドまたは/ならびにそれらの医薬として許容可能な塩を含む。ジベンズアゼピンは、カルバマゼピンとしてよい。
【0050】
ラモトリジンはフェニルトリアジン誘導体である。フェニルトリアジン誘導体は、ラコサミドおよびフェニルトリアジン誘導体単独の効果と比較し、癲癇性発作の予防、軽減または/および治療において相乗効果を有し得る。この場合癲癇性発作は、本明細書において定義しているものである。
【0051】
他の特に好ましい本発明の医薬組成物は、場合によって医薬として許容可能な担体、希釈剤または/およびアジュバントと一緒に、フェニルトリアジン誘導体およびラコサミドまたは/ならびにそれらの医薬として許容可能な塩を含む。フェニルトリアジン誘導体は、ラモトリジンとしてよい。
【0052】
トピラメートは単糖スルファメートである。単糖スルファメートは、ラコサミドおよび単糖スルファメート単独の効果と比較し、癲癇性発作の予防、軽減または/および治療において相乗効果を有し得る。この場合癲癇性発作は、本明細書において定義しているものである。
【0053】
他の特に好ましい本発明の医薬組成物は、場合によって医薬として許容可能な担体、希釈剤または/およびアジュバントと一緒に、単糖スルファメートおよびラコサミドまたは/ならびにそれらの医薬として許容可能な塩を含む。単糖スルファメートは、トピラメートとしてよい。
【0054】
フェニトインはヒダントイン誘導体である。ヒダントイン誘導体は、ラコサミドおよびヒダントイン誘導体単独の効果と比較し、癲癇性発作の予防、軽減または/および治療において相乗効果を有し得る。この場合癲癇性発作は、本明細書において定義しているものである。
【0055】
他の特に好ましい本発明の医薬組成物は、場合によって医薬として許容可能な担体、希釈剤または/およびアジュバントと一緒に、ヒダントイン誘導体およびラコサミドまたは/ならびにそれらの医薬として許容可能な塩を含む。ヒダントイン誘導体は、エトトイン、フェニトイン、メフェニトイン、およびホスフェニトインからなる群から選択できる。
【0056】
フェノバルビタールはバルビツレートである。バルビツレートは、ラコサミドおよびバルビツレート単独の効果と比較し、癲癇発作の予防、軽減または/および治療において相乗効果を有し得る。この場合癲癇発作は、本明細書において定義しているものである。
【0057】
他の特に好ましい本発明の医薬組成物は、場合によって医薬として許容可能な担体、希釈剤または/およびアジュバントと一緒に、バルビツレートおよびラコサミドまたは/ならびにそれらの医薬として許容可能な塩を含む。バルビツレートは、フェノバルビタール、メチルフェノバルビタール、メタルビタール、ペントバルビタール、およびバルベキサクロンからなる群から選択できる。
【0058】
特に好ましい本発明の医薬組成物は、場合によって医薬として許容可能な担体、希釈剤または/およびアジュバントと一緒に、レベチラセタムおよびラコサミドまたは/ならびにそれらの医薬として許容可能な塩を含む。
【0059】
この特に好ましい組成物は、ラコサミドおよびレベチラセタム単独の効果と比較し、癲癇性発作の予防、軽減または/および治療において相乗効果を有し得る。この場合癲癇性発作は、本明細書において定義しているものである。
【0060】
この特に好ましい組成物において、レベチラセタムおよびラコサミドは、レベチラセタム:ラコサミドの固定用量比率少なくとも約1:3、少なくとも約1:1、または少なくとも約3:1で存在でき、この場合固定用量比率は、レベチラセタムおよびラコサミドの個々のED50値に基づいて計算される。この特に好ましい組成物において、レベチラセタム:ラコサミドの固定用量比率は、最大で約6:1とすることができる。固定用量比率は、本明細書において開示しているレベチラセタムED50値もしくは/およびラコサミドED50値に基づいて、または当技術分野で知られているED50値に基づいて計算できる。
【0061】
この特に好ましい組成物は、少なくとも1000mg/日、最大3000mg/日までの用量におけるレベチラセタムと、少なくとも100mg/日、好ましくは少なくとも200mg/日、より好ましくは少なくとも300mg/日、最も好ましくは少なくとも400mg/日の用量における、また最大で6g/日、より好ましくは最大で1g/日、最も好ましくは最大で600mg/日の用量におけるラコサミドとを含んでよい。
【0062】
他の特に好ましい本発明の医薬組成物は、場合によって医薬として許容可能な担体、希釈剤または/およびアジュバントと一緒に、ブリバラセタムおよびラコサミドまたは/ならびにそれらの医薬として許容可能な塩を含む。
【0063】
この特に好ましい組成物は、ラコサミドおよびブリバラセタム単独の効果と比較し、癲癇発作の予防、軽減または/および治療において相乗効果を有し得る。この場合癲癇性発作は、本明細書において定義しているものである。
【0064】
この特に好ましい組成物において、ブリバラセタムおよびラコサミドは、ブリバラセタム:ラコサミドの固定用量比率少なくとも約1:3、少なくとも約1:1、または少なくとも約3:1で存在でき、この場合固定用量比率は、ブリバラセタムおよびラコサミドの個々のED50値に基づいて計算される。この特に好ましい組成物において、ブリバラセタム:ラコサミドの固定用量比率は、最大で約6:1とすることができる。この固定用量比率は、当技術分野で知られているブリバラセタムのED50に基づいて、または/かつ本明細書において開示しているもしくは当技術分野で知られているラコサミドのED50値に基づいて計算できる。
【0065】
さらに他の特に好ましい本発明の医薬組成物は、場合によって医薬として許容可能な担体、希釈剤または/およびアジュバントと一緒に、セレトラセタムおよびラコサミドまたは/ならびにそれらの医薬として許容可能な塩を含む。
【0066】
この特に好ましい組成物は、ラコサミドおよびセレトラセタム単独の効果と比較し、癲癇性発作の予防、軽減または/および治療において相乗効果を有し得る。この場合癲癇性発作は、本明細書において定義しているものである。
【0067】
この特に好ましい組成物において、セレトラセタムおよびラコサミドは、セレトラセタム:ラコサミドの固定用量比率少なくとも約1:3、少なくとも約1:1、または少なくとも約3:1で存在でき、この場合固定用量比率は、セレトラセタムおよびラコサミドの個々のED50値に基づいて計算される。この特に好ましい組成物において、セレトラセタム:ラコサミドの固定用量比率は、最大で約6:1とすることができる。この固定用量比率は、当技術分野で知られているセレトラセタムのED50値に基づいて、または/かつ本明細書において開示しているもしくは当技術分野で知られているラコサミドのED50値に基づいて計算できる。
【0068】
他の特に好ましい本発明の医薬組成物は、場合によって医薬として許容可能な担体、希釈剤または/およびアジュバントと一緒に、ラモトリジンおよびラコサミドまたは/ならびにそれらの医薬として許容可能な塩を含む。
【0069】
この特に好ましい組成物は、ラコサミドおよびラモトリジン単独の効果と比較し、癲癇性発作の予防、軽減または/および治療において相乗効果を有し得る。この場合癲癇性発作は、本明細書において定義しているものである。
【0070】
この特に好ましい組成物において、ラモトリジンおよびラコサミドは、ラモトリジン:ラコサミドの固定用量比率少なくとも約1:3、少なくとも約1:1、または少なくとも約3:1で存在でき、この場合固定用量比率は、ラモトリジンおよびラコサミドの個々のED50値に基づいて計算される。この特に好ましい組成物において、ラモトリジン:ラコサミドの固定用量比率は、最大で約6:1とすることができる。固定用量比率は、本明細書において開示しているラモトリジンED50値もしくは/およびラコサミドED50値に基づいて、または当技術分野で知られているED50値に基づいて計算できる。
【0071】
この特に好ましい組成物は、少なくとも100mg/日、最大400mg/日までの用量におけるラモトリジンと、少なくとも100mg/日、好ましくは少なくとも200mg/日、より好ましくは少なくとも300mg/日、最も好ましくは少なくとも400mg/日の用量における、また最大で6g/日、より好ましくは最大で1g/日、最も好ましくは最大で600mg/日の用量におけるラコサミドとを含んでよい。
【0072】
さらに他の特に好ましい本発明の医薬組成物は、場合によって医薬として許容可能な担体、希釈剤または/およびアジュバントと一緒に、カルバマゼピンおよびラコサミドまたは/ならびにそれらの医薬として許容可能な塩を含む。
【0073】
この特に好ましい組成物は、ラコサミドおよびカルバマゼピン単独の効果と比較し、癲癇性発作の予防、軽減または/および治療において相乗効果を有し得る。この場合癲癇性発作は、本明細書において定義しているものである。
【0074】
この特に好ましい組成物において、カルバマゼピンおよびラコサミドは、カルバマゼピン:ラコサミドの固定用量比率少なくとも約1:3、少なくとも約1:1、または少なくとも約3:1で存在でき、この場合固定用量比率は、カルバマゼピンおよびラコサミドの個々のED50値に基づいて計算される。この特に好ましい組成物において、カルバマゼピン:ラコサミドの固定用量比率は、最大で約6:1とすることができる。固定用量比率は、本明細書において開示しているカルバマゼピンED50値もしくは/およびラコサミドED50値に基づいて、または当技術分野で知られているED50値に基づいて計算できる。
【0075】
この特に好ましい組成物は、少なくとも400mg/日、最大1600mg/日までの用量におけるカルバマゼピンと、少なくとも100mg/日、好ましくは少なくとも200mg/日、より好ましくは少なくとも300mg/日、最も好ましくは少なくとも400mg/日の用量における、また最大で6g/日、より好ましくは最大で1g/日、最も好ましくは最大で600mg/日の用量におけるラコサミドとを含んでよい。
【0076】
他の特に好ましい本発明の医薬組成物は、場合によって医薬として許容可能な担体、希釈剤または/およびアジュバントと一緒に、トピラメートおよびラコサミドまたは/ならびにそれらの医薬として許容可能な塩を含む。
【0077】
この特に好ましい組成物は、ラコサミドおよびトピラメート単独の効果と比較し、癲癇性発作の予防、軽減または/および治療において相乗効果を有し得る。この場合癲癇性発作は、本明細書において定義しているものである。
【0078】
この特に好ましい組成物において、トピラメートおよびラコサミドは、トピラメート:ラコサミドの固定用量比率少なくとも約1:3、少なくとも約1:1、または少なくとも約3:1で存在でき、この場合固定用量比率は、トピラメートおよびラコサミドの個々のED50値に基づいて計算される。この特に好ましい組成物において、トピラメート:ラコサミドの固定用量比率は、最大で約6:1とすることができる。固定用量比率は、本明細書において開示しているトピラメートED50値もしくは/およびラコサミドED50値に基づいて、または当技術分野で知られているED50値に基づいて計算できる。
【0079】
この特に好ましい組成物は、少なくとも200mg/日、最大400mg/日までの用量におけるトピラメートと、少なくとも100mg/日、好ましくは少なくとも200mg/日、より好ましくは少なくとも300mg/日、最も好ましくは少なくとも400mg/日の用量における、また最大で6g/日、より好ましくは最大で1g/日、最も好ましくは最大で600mg/日の用量におけるラコサミドとを含んでよい。
【0080】
他の特に好ましい本発明の医薬組成物は、場合によって医薬として許容可能な担体、希釈剤または/およびアジュバントと一緒に、ガバペンチンおよびラコサミドまたは/ならびにそれらの医薬として許容可能な塩を含む。
【0081】
この特に好ましい組成物は、ラコサミドおよびガバペンチン単独の効果と比較し、癲癇性発作の予防、軽減または/および治療において相乗効果を有し得る。この場合癲癇性発作は、本明細書において定義しているものである。
【0082】
この特に好ましい組成物において、ガバペンチンおよびラコサミドは、ガバペンチン:ラコサミドの固定用量比率少なくとも約1:3、少なくとも約1:1、または少なくとも約3:1で存在でき、この場合固定用量比率は、ガバペンチンおよびラコサミドの個々のED50値に基づいて計算される。この特に好ましい組成物において、ガバペンチン:ラコサミドの固定用量比率は、最大で約6:1とすることができる。固定用量比率は、本明細書において開示しているガバペンチンED50値もしくは/およびラコサミドED50値に基づいて、または当技術分野で知られているED50値に基づいて計算できる。
【0083】
この特に好ましい組成物は、少なくとも900mg/日、最大3600mg/日までの用量におけるガバペンチンと、少なくとも100mg/日、好ましくは少なくとも200mg/日、より好ましくは少なくとも300mg/日、最も好ましくは少なくとも400mg/日の用量における、また最大で6g/日、より好ましくは最大で1g/日、最も好ましくは最大で600mg/日の用量におけるラコサミドとを含んでよい。
【0084】
他の特に好ましい本発明の医薬組成物は、場合によって医薬として許容可能な担体、希釈剤または/およびアジュバントと一緒に、エトスクシミドおよびラコサミドまたは/ならびにそれらの医薬として許容可能な塩を含む。
【0085】
この特に好ましい組成物は、ラコサミドおよびエトスクシミド単独の効果と比較し、癲癇性発作の予防、軽減または/および治療において相乗効果を有し得る。この場合癲癇性発作は、本明細書において定義しているものである。
【0086】
この特に好ましい組成物において、エトスクシミドおよびラコサミドは、エトスクシミド:ラコサミドの固定用量比率少なくとも約1:3、少なくとも約1:1、または少なくとも約3:1で存在でき、この場合固定用量比率は、エトスクシミドおよびラコサミドの個々のED50値に基づいて計算される。この特に好ましい組成物において、エトスクシミド:ラコサミドの固定用量比率は、最大で約6:1とすることができる。固定用量比率は、本明細書において開示しているエトスクシミドED50値もしくは/およびラコサミドED50値に基づいて、または当技術分野で知られているED50値に基づいて計算できる。
【0087】
この特に好ましいエトスクシミドおよびラコサミドの組成物は、少なくとも15mg/kg体重、最大40mg/kg体重まで、もしくは/および約1g/日などの医師により通常知られている用量におけるエトスクシミドと、少なくとも100mg/日、好ましくは少なくとも200mg/日、より好ましくは少なくとも300mg/日、最も好ましくは少なくとも400mg/日の用量における、また最大で6g/日、より好ましくは最大で1g/日、最も好ましくは最大で600mg/日の用量におけるラコサミドとを含んでよい。
【0088】
本明細書において記述している特に好ましい組成物において、相乗効果は、本明細書において記述している相互作用指数αに関して、または本明細書において記述している利益指数に関して定義されてもよい。
【0089】
本明細書において記述しているる特に好ましい組成物は、i.v.(静脈内)または経口投与向けに調製され得るのが好ましい。
【0090】
他の好ましい実施形態において、本発明の医薬組成物の化合物(b)は、バルプロエート、フェニトイン、フェンバルビトール(フェノバルビタール)、およびメフェニトインからなる群から選択される化合物ではない。
【0091】
他の好ましい実施形態において、本発明の医薬組成物の化合物(b)は、フェニトイン、フェンバルビトール(フェノバルビタール)、およびメフェニトインからなる群から選択される化合物ではない。
【0092】
他の好ましい実施形態において、本発明の医薬組成物の化合物(b)は、バルプロエート、またはフェニトインではない。
【0093】
バルプロエートまたはフェニトインのラコサミドとの組合せは、癲癇性発作の治療において僅かな非有意的な相乗的治療効果を示すに過ぎないと思われる。したがって、相乗的治療効果に関する本発明のこれらの実施形態において、医薬組成物の化合物(b)はバルプロエートまたはフェニトインではないことがより好ましい。
【0094】
さらに他の本発明の実施形態において、本発明の医薬組成物の相乗効果は、単独で提供される化合物(a)および(b)と比較して、化合物(a)と化合物(b)との組合せにおいて低減される副作用と定義される。
【0095】
相乗的副作用低減は、相乗的治療効果を示す組合せで見出し得るだけでなく、例えばバルプロエートまたはフェニトインがラコサミドと組み合わされる化合物(b)であるものなどの、癲癇性発作の治療において相加治療効果または非有意的な相乗的治療効果を示す化合物(a)および(b)の組合せにおいても見出すことができる。
【0096】
したがって、本発明の好ましい一実施形態の主題は、本明細書において定義される化合物(a)のバルプロエートまたはフェニトインとの組合せであって、その相乗効果が、単独で提供される化合物(a)およびバルプロエートまたはフェニトインと比較した、化合物(a)とバルプロエートまたはフェニトインとの組合せにおける副作用低減である組合せである。より好ましいものは、バルプロエートとラコサミドまたはフェニトインとラコサミドの組合せである。
【0097】
好ましい実施形態において、癲癇性発作は、二次的全汎化を伴うおよび伴わない部分発作、一次的全汎発作、ならびに癲癇重積状態から選択される。
【0098】
さらに他の本発明の態様は、癲癇性発作の予防、軽減、または/および治療用の薬物を調製するための本発明の医薬組成物の使用であって、癲癇性発作が本明細書において定義しているものである使用である。
【0099】
さらに他の本発明の態様は、癲癇性発作の予防、軽減、または/および治療方法であって、癲癇性発作が本明細書において定義しているものであり、それを必要とする被験者に有効量の本発明の医薬組成物を投与する段階を含む方法である。
【0100】
式(I)、(II)または/および(III)の本発明の化合物、特にラコサミドは、十分に耐容性があり、これは癲癇性発作の治療用に通常使用される他の治療薬に優る利点である。
【0101】
本明細書において記述している式(I)、(II)または/および(III)の化合物、ならびに化合物(b)は、同時に投与するための1つの医薬製剤(単一剤形)として製剤でき、または2つ以上の別個の製剤(別々の剤形)として製剤でき、この別々の剤形は同時にもしくは/かつ順次に投与できる。別々の剤形における別個の製剤は、同一の経路により、または異なる経路により投与されてよい。
【0102】
したがって本発明の医薬組成物は、少なくとも1種の式(I)、(II)または/および(III)の化合物と、少なくとも1種の化合物(b)とを含む単一剤形を含んでよい。
【0103】
本発明の医薬組成物はまた、別々の剤形であって、
(i)少なくとも1種の式(I)、(II)または/および(III)の化合物を含む第1の組成物と、
(ii)少なくとも1種の化合物(b)を含む第2の組成物と
を含む剤形を含んでもよい。
【0104】
さらに他の好ましい本発明の実施形態において、第2の組成物(ii)は、市販の組成物としてよい。
【0105】
別々の剤形は、場合によって例えば単一容器中に、または単一の外側容器内の複数の容器中に同時包装することができ、あるいは別々の包装として同時提供することができる(「共同提供」)。同時包装または共同提供の一例として、式(I)、(II)または/および(III)の化合物と、化合物(b)とを別々の容器中に含むキットを企図している。他の例では、式(I)、(II)または/および(III)の化合物と、化合物(b)とを別々に包装して、互いに独立に販売可能であるが、本発明による使用のために同時販売または同時販促される。別々の剤形は、本発明による使用のため、被験者に別々にかつ独立に提供されてもよい。
【0106】
本発明の医薬組成物は、哺乳動物における、特にヒトにおける投与向けに調製することが好ましい。
【0107】
(a)少なくとも1種の式(I)、(II)または/および(III)の化合物と、少なくとも1種の化合物(b)とを含む本発明の医薬組成物は、本明細書において定義している癲癇性発作の予防、軽減、または/および治療のために調製できる。
【0108】
式(I)、(II)または/および(III)の化合物と、化合物(b)との投与間隔は、剤形に応じて決めることができる。式(I)、(II)または/および(III)の化合物を最初に投与でき、または化合物(b)を最初に投与できる。
【0109】
化合物(a)は、式(I)、(II)または/および(III)の化合物である。
【0110】
本発明による化合物(a)は、一般式(I)
【0111】
【化1】

【0112】
(Rは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、複素環、複素環アルキル、アルキル複素環、シクロアルキル、またはシクロアルキルアルキルであり、またRは非置換であり、または少なくとも1つの電子求引性基もしくは/および少なくとも1つの電子供与性基で置換されており、
R1は、水素、またはアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、アリール、複素環アルキル、アルキル複素環、複素環、シクロアルキル、シクロアルキルアルキルであり、それぞれ非置換であり、または少なくとも1つの電子供与性基もしくは/および少なくとも1つの電子求引性基で置換されており、
また
R2およびR3は、独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アリールアルキル、アリール、ハロ、複素環、複素環アルキル、アルキル複素環、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、またはZ-Yであり、この場合R2およびR3は非置換であってよく、または少なくとも1つの電子求引性基もしくは/および少なくとも1つの電子供与性基で置換されていてよく、
Zは、O、S、S(O)a、NR4、NR'6、PR4、または化学結合であり、
Yは、水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、アルケニル、アルキニル、ハロ、複素環、複素環アルキル、アルキル複素環であり、またYは非置換であってよく、または少なくとも1つの電子求引性基もしくは/および少なくとも1つの電子供与性基で置換されていてよく、但し、Yがハロである場合Zは化学結合であり、あるいは
ZYは、一緒になって、NR4NR5R7、NR4OR5、ONR4R7、OPR4R5、PR4OR5、SNR4R7、NR4SR7、SPR4R5、PR4SR7、NR4PR5R6、PR4NR5R7、またはN+R5R6R7
【0113】
【化2】

【0114】
であり、
R'6は、水素、アルキル、アルケニル、またはアルキニルであり、これらは非置換であってよく、または少なくとも1つの電子求引性基もしくは/および少なくとも1つの電子供与性基で置換されていてよく、
R4、R5、およびR6は、独立に、水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、アルケニル、またはアルキニルであり、この場合R4、R5、およびR6は、独立に、非置換であってよく、または少なくとも1つの電子求引性基もしくは/および少なくとも1つの電子供与性基で置換されていてよく、
R7は、R6またはCOOR8またはCOR8であり、この場合R7は、非置換であってよく、または少なくとも1つの電子求引性基もしくは/および少なくとも1つの電子供与性基で置換されていてよく、
R8は、水素またはアルキル、あるいはアリールアルキルであり、このアリールまたはアルキル基は、非置換であってよく、または少なくとも1つの電子求引性基もしくは/および少なくとも1つの電子供与性基で置換されていてよく、また
nは1〜4であり、また
aは1〜3である)を有する。
【0115】
好ましい実施形態において、式(I)の化合物は、一般式(II)、
【0116】
【化3】

【0117】
(Arは、非置換であるまたは少なくとも1つの電子供与性基もしくは/および少なくとも1つの電子求引性基、好ましくはハロ、より好ましくはフルオロで置換されているアリールであり、
R1は、アルキル、好ましくは炭素原子1〜3個を含有するアルキル、より好ましくはメチルであり、また
R3は、本明細書において定義している通りである)を有する。
【0118】
より好ましい実施形態において、式(I)または/および(II)の化合物は、一般式(III)、
【0119】
【化4】

【0120】
(R9は、水素、ハロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、ニトロ、カルボキシ、ホルミル、カルボキシアミド、アリール、第四級アンモニウム、ハロアルキル、アリールアルカノイル、ヒドロキシ、アルコキシ、カルバルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールオキシ、メルカプト、アルキルチオ、アルキルメルカプト、およびジスルフィドからなる群から独立に選択される1つまたは複数の置換基であり、
R3は、水素、アルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アリール、複素環、複素環アルキル、N-アルコキシ-N-アルキルアミノ、N-アルコキシアミノ、およびN-カルバルコキシからなる群から選択され、また
R1は、アルキル、好ましくは炭素原子1〜3個を含有するアルキル、より好ましくはメチルである)を有する。
【0121】
本発明において利用される化合物(a)は、1個または複数の不斉炭素を含有でき、ラセミ体および光学活性な形態で存在できる。それぞれの不斉炭素周囲の立体配置はDまたはL形のいずれかとすることができる。キラル炭素原子周囲の立体配置が、Cahn-Prelog-Ingold命名系におけるRまたはSとしても記述し得ることは、当技術分野においてよく知られている。種々の鏡像異性体およびジアステレオマーならびにラセミ混合物;鏡像異性体、ジアステレオマーまたはこの両者の混合物を含む、それぞれの不斉炭素周囲の全ての種々の立体配置は、本発明により企図されるものである。
【0122】
本明細書において使用する用語、立体配置は、分子中に他のキラル中心も存在できるが、特にR2およびR3、またはHおよびR3が結合する炭素原子周囲の立体配置を指す。したがって、DまたはLなどの特定の立体配置を指す場合、R2およびR3、またはHおよびR3が結合する炭素原子におけるDまたはL立体異性体を意味すると理解されたい。しかし、この用語は、この化合物中に存在する他のキラル中心(存在する場合)における全ての可能な鏡像異性体およびジアステレオマーをも含むものである。
【0123】
本発明の化合物(a)は全ての光学異性体を対象としている。すなわち本発明のこれらの化合物はL-立体異性体またはD-立体異性体のいずれか(R2およびR3、またはHおよびR3が結合する炭素原子における)である。これらの立体異性体は、LおよびD立体異性体の混合物、例えばラセミ混合物中に見出すことができる。D立体異性体が好ましいものである。
【0124】
式(I)の化合物は、R配置のものであることが好ましい。式(II)の化合物は、R配置のものであることが好ましい。式(III)の化合物は、R配置のものであることが好ましい。
【0125】
R配置のものである式(I)、(II)または/および(III)の化合物は、実質的にエナンチオピュア(enantiopure)であることが好ましい。本明細書において使用する用語、「実質的にエナンチオピュア」は、少なくとも99.5%のR鏡像異性体の含量を指す。これは、鏡像体過剰率(ee)99%に対応する。RおよびS鏡像異性体のそれぞれの量は、キラルカラムクロマトグラフィーによって、例えばキラル固定相として「キラルパック(ChiralPak)」を有するHPLCによって測定できる。
【0126】
用語「アルキル」(単独で、または他の用語と組み合わせて)は、好ましくは炭素原子1個〜約20個を含有する(C1〜C20-アルキル)、より好ましくは炭素原子1個〜約8個を含有する(C1〜C8-アルキル)、より一層好ましくは炭素原子1個〜約6個を含有する(C1〜C6-アルキル)、最も好ましくは炭素原子1個〜3個を含有する(C1〜C3-アルキル)直鎖もしくは分岐鎖飽和炭化水素性置換基を意味する。アルキル基にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第三級ブチル、アミル、ヘキシルなどが含まれる。さらに、アルキル基には、他に示されない場合、過ハロゲン化例えばトリフルオロメチルまでのハロゲン化アルキル基も含まれる。
【0127】
用語「アルコキシ」(単独で、または他の用語と組み合わせて)は-O-アルキルを指し、好ましくは炭素原子1個〜約20個を含有する(C1〜C20-アルコキシ)、より好ましくは炭素原子1個〜約8個を含有する(C1〜C8-アルコキシ)、より一層好ましくは炭素原子1個〜約6個を含有する(C1〜C6-アルコキシ)、最も好ましくは炭素原子1個〜3個を含有する(C1〜C3-アルコキシ)直鎖もしくは分岐鎖アルコキシ置換基を意味する。アルコキシ基にはメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、tert-ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシなどが含まれる。さらに、アルコキシ基には、他に示されない場合、過ハロゲン化までのハロゲン化アルコキシ基が含まれる。
【0128】
用語「アルコキシアルキル」は、少なくとも1つのアルコキシ基で置換されているアルキル基を指す。アルコキシアルキル基には、メトキシメチル(-CH2-OCH3)基、メトキシエチル(-CH2-CH2-OCH3)基、エトキシメチル(-CH2-O-CH2CH3)基などが含まれる。
【0129】
用語「N-アルコキシアミノ」は、1つまたは2つのアルコキシ基で置換されているアミノ基、例えば-NH-N(OCH3)2を指す。
【0130】
用語「N-アルコキシ-N-アルキルアミノ」は、アルコキシ基およびアルキル基で置換されているアミノ基、例えば-N(CH3)(OCH3)、-N(CH3)(OCH2-CH3)などを指す。
【0131】
用語「N-カルバルコキシ」は、カルバルキシ基で置換されているアミノ基、例えば-NH(C(O)-O-CH3)、-NH(C(O)O-CH2-CH3)を指す。
【0132】
用語「アリール」は、単独で、または他の用語と組み合わせて使用する場合、環炭素原子6個から18個までを含有する(C6〜C18-アリール)、好ましくは環炭素原子6個から10個までを含有する(C6〜C10-アリール)芳香族基を指し、多核芳香族化合物を含む。アリール基は単環状、二環状、三環状、または多環状としてよく、また縮合環としてよい。本明細書で使用する多核芳香族化合物は、環炭素原子を10〜18個含有する二環状および三環状縮合芳香環系を包含することを意図している。アリール基にはフェニル、および多核芳香族化合物例えばナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、アズレニルなどが含まれる。アリール基には、フェロセニルなどの基も含まれる。アリール基は、非置換であってよく、または電子求引性基もしくは/および電子供与性基で単置換もしくは多置換されていてよい。好ましいアリール基はフェニルであり、これは非置換であってよく、または電子求引性基もしくは/および電子供与性基で単置換もしくは多置換されていてよい。
【0133】
本明細書において単独で、または他の用語と組み合わせて使用する用語「アリールアルキル」は、本明細書において定義したアリール置換基を有する本明細書において定義したアルキル基を意味する。好ましいアリールアルキル基は、アリール-C1〜C6-アルキル、アリール-C1〜C3-アルキル、C6〜C10-アリール-アルキル、C6〜C10-アリール-C1〜C6-アルキル、C6〜C10-アリール-C1〜C3-アルキルである。より好ましいアリールアルキル基は、フェニル-C1〜C6-アルキル、およびフェニル-C1〜C3-アルキルである。より一層好ましいアリールアルキル基には、例えばベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル、フェニルイソプロピル、フェニルブチル、ジフェニルメチル、1,1-ジフェニルエチル、1,2-ジフェニルエチルなどが含まれる。最も好ましいものはベンジルである。
【0134】
用語「アルケニル」(単独で、または他の用語と組み合わせて)は、少なくとも1つの二重結合、ならびに好ましくは炭素原子2個〜約20個を含有する(C2〜C20-アルケニル)、より好ましくは炭素原子2個〜約8個を含有する(C2〜C8-アルケニル)、またより一層好ましくは炭素原子2個〜約6個を含有する(C2〜C6-アルケニル)、最も好ましくは炭素原子2または3個を含有する(C2〜C3-アルケニル)直鎖もしくは分岐鎖アルケニル置換基を意味する。アルケニル基は、ZまたはE形としてよい。アルケニル基にはビニル、プロペニル、1-ブテニル、イソブテニル、2-ブテニル、1-ペンテニル、(Z)-2-ペンテニル、(E)-2-ペンテニル、(Z)-4-メチル-2-ペンテニル、(E)-4-メチル-2-ペンテニル、ペンタジエニル例えば1,3もしくは2,4-ペンタジエニルなどが含まれる。
【0135】
用語「アルキニル」(単独で、または他の用語と組み合わせて)は、少なくとも1つの三重結合、ならびに好ましくは炭素原子2個〜約20個を含有する(C2〜C20-アルキニル)、より好ましくは炭素原子2個〜約8個を含有する(C2〜C8-アルキニル)、またより一層好ましくは炭素原子2個〜約6個を含有する(C2〜C6-アルキニル)、最も好ましくは炭素原子2または3個を含有する(C2〜C3-アルキニル)直鎖もしくは分岐鎖アルキニル置換基を意味する。アルキニル基にはエチニル、プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、3-メチル-1-ペンチニル、3-ペンチニル、1-ヘキシニル、2-ヘキシニル、3-ヘキシニルなどが含まれる。
【0136】
用語「シクロアルキル」は、単独で、または他の用語と組み合わせて使用する場合、環炭素原子3個〜18個を含有する(C3〜C18-シクロアルキル)、好ましくは環炭素原子6個〜10個を含有する(C6〜C10-シクロアルキル)シクロアルキル基を意味する。シクロアルキル基は単環状、二環状、三環状、または多環状としてよく、また環は縮合できる。シクロアルキルは完全に飽和され得、または部分的に飽和され得る。シクロアルキル基の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロデシル、シクロヘキセニル、シクロペンテニル、シクロオクテニル、シクロヘプテニル、デカリニル、ヒドロインダニル、インダニル、フェンチル、ピネニル、アダマンチルなどが含まれる。シクロアルキル基にはシスまたはトランス形が含まれる。シクロアルキル基は非置換であってよく、または電子求引性基もしくは/および電子供与性基で単置換もしくは多置換されていてよい。架橋した二環状シクロアルキル基において、置換基はエンドまたはエキソ位置のいずれかとされ得る。
【0137】
本明細書において単独で、または他の用語と組み合わせて使用する用語「シクロアルキルアルキル」は、本明細書において定義したシクロアルキル置換基を有する本明細書において定義したアルキル基を意味する。好ましいシクロアルキルアルキル基は、シクロアルキル-C1〜C6-アルキル、シクロアルキル-C1〜C3-アルキル、C6〜C10-シクロアルキル-アルキル、C6〜C10-シクロアルキル-C1〜C6-アルキル、C6〜C10-シクロアルキル-C1〜C3-アルキルである。より好ましいシクロアルキルアルキル基は、シクロヘキシル-C1〜C6-アルキルおよびシクロヘキシル-C1〜C3-アルキルから選択される。
【0138】
用語「ハロ」または「ハロゲン」には、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードが含まれる。
【0139】
接頭辞「ハロ」は、この接頭辞が付いている置換基が1つまたは複数の独立に選択されるハロゲン基で置換されていることを示している。例えば、ハロアルキルは、少なくとも1つの水素置換基がハロゲン基で置き換えられているアルキル置換基を意味する。ハロアルキルの例には、クロロメチル、1-ブロモエチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、1,1,1-トリフルオロエチルなどが含まれる。さらに例示すると、「ハロアルコキシ」は、少なくとも1つの水素基がハロゲン基により置き換えられているアルコキシ置換基を意味する。ハロアルコキシ置換基の例には、クロロメトキシ、1-ブロモエトキシ、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ(「ぺルフルオロメチルオキシ」としても知られる)、1,1,1-トリフルオロエトキシなどが含まれる。置換基が2つ以上のハロゲン基で置換されている場合、これらのハロゲン基は同一、または異なることができると認識されたい(他に指定されない場合)。
【0140】
用語「電子求引性」および「電子供与性」は、分子内で水素原子が同一の位置を占めている場合、水素のそれを基準としてそれぞれ電子を求引するまたは供与する置換基の能力を指す。これらの用語は当業者によりよく理解されており、またJ.MarchによるAdvanced Organic Chemistry, John Wiley and Sons, New York, N.Y.,16〜18頁(1985)において考察され、その中の考察が参照により本明細書に組み込まれている。電子求引性基には、ブロモ、フルオロ、クロロ、ヨードを含むハロ;ニトロ、カルボキシ、アルケニル、アルキニル、ホルミル、カルボキシアミド、アリール、第四級アンモニウム、トリフルオロメチルなどのハロアルキル、アリールアルカノイル、カルバルコキシなどが含まれる。電子供与性基には、ヒドロキシ、メトキシ、エトキシなどを含むアルコキシ;メチル、エチルなどのアルキル;アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、フェノキシなどのアリールオキシ、メルカプト、アルキルチオ、アルキルメルカプト、ジスルフィド(アルキルジチオ)などの基が含まれる。前述の置換基のいくつかは、異なる化学的条件下で電子供与性または電子求引性であると見なし得ることを当業者は理解するであろう。その上、本発明では上記に特定された基から選択される任意の置換基の組合せを企図している。
【0141】
電子供与性または/および電子求引性基は、本明細書において定義している式(I)、(II)または/および(III)中の、例えばR、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R'6、R7、R8、R9、または/およびR10中の任意の1つの置換基内で独立に存在できる。
【0142】
少なくとも1つの電子求引性または/および少なくとも1つの電子供与性基は、ハロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、ニトロ、カルボキシ、ホルミル、カルボキシアミド、アリール、第四級アンモニウム、ハロアルキル、アリールアルカノイル、ヒドロキシ、アルコキシ、カルバルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールオキシ、メルカプト、アルキルチオ、アルキルメルカプト、ジスルフィド、アルカノイル、アミノアルキル、アリーロイル、シアノ、スルホニル、スルホキシド、複素環、グアニジン、スルホニウム塩、メルカプトアルキル、およびアルキルジチオから独立に選択するのが好ましい。
【0143】
用語「スルフィド」は、メルカプト、メルカプトアルキル、およびアルキルチオを包含し、一方用語ジスルフィドはアルキルジチオを包含する。
【0144】
本発明の化合物において、少なくとも1つの電子求引性または/および少なくとも1つの電子供与性基は、ハロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、ニトロ、カルボキシ、ホルミル、カルボキシアミド、アリール、第四級アンモニウム、ハロアルキル、アリールアルカノイル、ヒドロキシ、アルコキシ、カルバルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールオキシ、メルカプト、アルキルチオ、アルキルメルカプト、およびジスルフィドから独立に選択するのがより好ましい。
【0145】
少なくとも1つの電子求引性または/および少なくとも1つの電子供与性基は、ハロ、C1〜C6-アルキル、C2〜C6-アルケニル、C1〜C6-アルキニル、ニトロ、カルボキシ、ホルミル、カルボキシアミド、C6〜C10-アリール、第四級アンモニウム、C1〜C6-ハロアルキル、C6〜C10-アリールC2〜C6-アルカノイル、ヒドロキシ、C1〜C6-アルコキシ、C2〜C6-カルバルコキシ、アミノ、C1〜C6-アルキルアミノ、C1〜C6-ジアルキルアミノ、C6〜C10-アリールオキシ、メルカプト、C1〜C6-アルキルチオ、C1〜C6-アルキルメルカプト、およびジスルフィドから選択するのがより一層好ましい。
【0146】
電子求引性または/および電子供与性基は、ハロ、C1〜C6-アルコキシ、ニトロ、カルボキシ、ホルミル、カルボキシアミド、第四級アンモニウム、ヒドロキシ、アミノ、メルカプト、およびジスルフィドから独立に選択できるのもより一層好ましい。
【0147】
最も好ましい電子求引性または/および電子供与性基は、フルオロなどのハロ、ならびにメトキシおよびエトキシなどのC1〜C6-アルコキシから独立に選択される。
【0148】
本明細書において単独で、または他の用語と組み合わせて使用する用語「カルバルコキシ」は、アルキル基の炭素原子のほかに-CO-O-基が1個の炭素原子を供給することを考慮に入れて、アルキルが本明細書において定義した通りである-CO-O-アルキルを意味する。カルバルコキシ基は、好ましくは炭素原子2個〜約20個を(C2〜C20-カルバルコキシ)、より好ましくは炭素原子2個〜約8個を(C2〜C8-カルバルコキシ)、より一層好ましくは炭素原子2個〜約6個を(C2〜C6-カルバルコキシ)、最も好ましくは炭素原子2個〜3個を含有する(C2〜C3-カルバルコキシ)。
【0149】
本明細書において単独で、または他の用語と組み合わせて使用する用語「アルカノイル」は、アルキル基の炭素原子のほかに-CO-基が1個の炭素原子を供給することを考慮に入れて、アルキルが本明細書において定義した通りであるアルカノイル基-CO-アルキルを意味する。アルカノイルは、好ましくは炭素原子2個〜約20個を(C2〜C20-アルカノイル)、より好ましくは炭素原子2個〜約8個を(C2〜C8-アルカノイル)、より一層好ましくは炭素原子2個〜約6個を(C2〜C6-アルカノイル)、最も好ましくは炭素原子2個〜3個を含有する(C2〜C3-アルカノイル)。アルカノイル基は直鎖または分岐としてよい。アルカノイル基には、例えばホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、第三級ブチリル、ペンタノイル、およびヘキサノイルが含まれる。
【0150】
本明細書において使用している複素環基は、環構造内に少なくとも1個のヘテロ原子を、好ましくは1個、2個、3個または4個のヘテロ原子を含有する。少なくとも1個のヘテロ原子は、硫黄、窒素、および酸素から独立に選択できる。本発明により企図される複素環基には、ヘテロ芳香族化合物、ならびに飽和および部分飽和複素環基が含まれる。複素環基は単環、二環、三環、または多環としてよく、また縮合環としてよい。複素環基には、いわゆるベンゾ複素環基も含まれる。複素環基は、非置換であってよく、または電子求引性基もしくは/および電子供与性基で単置換もしくは多置換されていてよい。複素環基は、環原子18個まで、また合計で環炭素原子17個まで含有するのが好ましく、また非置換であってよく、または電子求引性基もしくは/および電子供与性基で単置換もしくは多置換されていてよい。
【0151】
より好ましくは、複素環基は5もしくは6員単環状複素環基から独立に選択でき、また非置換であってよく、または電子求引性基もしくは/および電子供与性基で単置換もしくは多置換されていてよい。複素環基は、より好ましくはフリル、チエニル、ピラゾリル、ピロリル、メチルピロリル、イミダゾリル、インドリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、ピペリジル、ピロリニル、ピペラジニル、キノリル、トリアゾリル、テトラゾリル、イソキノリル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、モルホリニル、ベンゾキサゾリル、テトラヒドロフリル、ピラニル、インダゾリル、プリニル、インドリニル、ピラゾリンジニル、イミダゾリニル、イミダゾリンジニル、ピロリジニル、フラザニル、N-メチルインドリル、メチルフリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリジル、エポキシ、アジリジノ、オキセタニル、アゼチジニル;ピリジル、ピラジニルおよびピリミジニルのNオキシドなどの窒素含有複素環のN-オキシドなどから独立に選択されてもよい。複素環部分は、前述の単環状である複素環基であることがより一層好ましい。
【0152】
複素環基は、より好ましくはチエニル、フリル、ピロリル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、インドリル、オキサゾリル、メチルピロリル、モルホリニル、ピリジル、ピラジニル、イミダゾリル、ピリミジニル、およびピリダジニルから独立に選択されてもよい。特に好ましい複素環基は、フリル、オキサゾリル、ピリジル、ピラジニル、イミダゾリル、ピリミジニル、およびピリダジニルから独立に選択される。最も好ましい複素環基は、フリル、ピリジル、およびオキサゾリルから独立に選択される。
【0153】
本発明の化合物における単環状の5もしくは6員複素環基は、式(IV):
【0154】
【化5】

【0155】
(nは0または1であり、また
R50はH、電子求引性基、または電子供与性基であり、
A、E、L、J、およびGは、独立に、CH、またはN、O、Sからなる群から選択されるヘテロ原子であり;しかしnが0である場合、GはCH、またはNH、O、およびSからなる群から選択されるヘテロ原子であり、但し、A、E、L、J、およびGの最大2つがヘテロ原子であることを前提とする)のもの、またはこれらの部分もしくは完全飽和形態に対応するものであることが好ましい。
【0156】
nが0である場合、上記のヘテロ芳香族部分は5員環であるが、nが1である場合、この複素環部分は6員の単環状複素環部分である。
【0157】
式(IV)において図示される環が窒素環原子を含有する場合、N-オキシド形態も本発明の範囲内にあるものと企図される。
【0158】
R2またはR3が式(IV)の複素環基である場合、これは環炭素原子により主鎖に結合できる。nが0であると、R2またはR3は、窒素環原子によって主鎖に付加的に結合できる。
【0159】
本明細書において単独で、または他の用語と組み合わせて使用する用語「複素環アルキル」は、上記において定義した複素環置換基を有する上記において定義したアルキル基を意味する。好ましい複素環アルキル基は、複素環-C1〜C6-アルキル、複素環-C1〜C3-アルキルであって、この場合複素環基は、本明細書において定義した好ましい、より好ましい、または最も好ましい複素環基としてよい。
【0160】
本明細書において単独で、または他の用語と組み合わせて使用する用語「アルキル複素環」は、上記において定義した少なくとも1つのアルキル置換基を有する上記において定義した複素環基を意味する。好ましいアルキル複素環基は、C1〜C6-アルキル-複素環、C1〜C3-アルキル-複素環であって、この場合複素環基は、本明細書において定義した好ましい、より好ましい、または最も好ましい複素環基としてよい。
【0161】
好ましい化合物はnが1であるものであるが、ジ(n=2)、トリ(n=3)およびテトラペプチド(n=4)も、本発明の範囲内にあるものと企図される。
【0162】
式(I)または/および(II)中でR2または/およびR3を表しているZY基において、Zは、O、S、S(O)a(ここでaは1〜3である)、NR4、NR'6、PR4または化学結合としてよく、またYは水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、アルケニル、アルキニル、ハロ、複素環、複素環アルキル、アルキル複素環としてよく、またYは非置換であってよく、または少なくとも1つの電子供与性基もしくは/および少なくとも1つの電子求引性基で置換されていてよく、但し、Yがハロである場合Zは化学結合であり、あるいは
ZYを一緒になって、NR4NR5R7、NR4OR5、ONR4R7、OPR4R5、PR4OR5、SNR4R7、NR4SR7、SPR4R5、PR4SR7、NR4PR5R6、PR4NR5R7、またはN+R5R6R7
【0163】
【化6】

【0164】
(R4、R5、R'6、R6、R7は本明細書において定義している通りである)としてよい。
【0165】
式(I)または/および(II)中でR2または/およびR3を表しているZY基は、ヒドロキシ、メトキシ、エトキシなどのアルコキシ、フェノキシなどのアリールオキシ;チオメトキシ、チオエトキシなどのチオアルコキシ;チオフェノキシなどのチオアリールオキシ;アミノ;メチルアミノ、エチルアミノなどのアルキルアミノ;アニリノなどのアリールアミノ;ジメチルアミノなどのジアルキルアミノ;トリアルキルアンモニウム塩、ヒドラジノ;N-メチルヒドラジノ、N-フェニルヒドラジノなどのアルキルヒドラジノおよびアリールヒドラジノ、カルバルコキシヒドラジノ、アラルコキシカルボニルヒドラジノ、アリールオキシカルボニルヒドラジノ、N-ヒドロキシルアミノ(-NH-OH)などのヒドロキシルアミノ、アルコキシアミノ[R18がアルキルである(NHOR18)]、N-アルキルヒドロキシルアミノ[R18がアルキルである(NR18)OH]、N-アルキル-O-アルキルヒドロキシアミノ、すなわち[R18およびR19が独立にアルキルである(NR18)OR19]、およびO-ヒドロキシルアミノ(-O-NH2);アセトアミドなどのアルキルアミド;トリフルオロアセトアミド;アルコキシアミノ(例えばNHOCH3);ならびにピラゾイルアミノなどの複素環式アミノとしてよい。
【0166】
好ましいZY基において、Zは、O、NR4、またはPR4であり、Yは水素またはアルキルである。
【0167】
他の好ましい実施形態において、ZYは、NR4NR5R7、NR4OR5、ONR4R7
【0168】
【化7】

【0169】
である。
【0170】
より好ましいそれにおいて、ZYは、NR4OR5、またはONR4R7である。
【0171】
他のより好ましいZYは、、N-ヒドロキシアミノ、N-アルキルヒドロキシアミノ、N-アルキル-O-アルキルヒドロキシアミノ、O-アルキルヒドロキシアミノ、N-アルコキシ-N-アルキルアミノ、N-アルコキシアミノ、またはN-カルバルコキシである。
【0172】
式(I)において、Rはアリールまたはアリールアルキルであることが好ましく、Rはアリールアルキルであることがより好ましく、この場合Rは非置換であり、または少なくとも1つの電子供与性基もしくは/および少なくとも1つの電子求引性基で置換されている。Rはフェニルまたはベンジルとしてよく、最も好ましくはベンジルとしてよく、この場合Rは非置換であり、または少なくとも1つの電子供与性基もしくは/および少なくとも1つの電子求引性基で置換されている。Rが置換されている場合、Rはアリール環上で置換されているのが好ましい。この実施形態において、少なくとも1つの電子供与性基または/および少なくとも1つの電子求引性基はハロであることが好ましく、フルオロであることがより好ましい。
【0173】
式(I)、(II)または/および(III)において、R1はHまたはアルキルである。R1は、好ましくは炭素原子1〜16個を含有する、より好ましくは炭素原子1〜3個を含有するアルキルであることがより好ましい。R1基はメチルであることが最も好ましい。R1は非置換であってよく、または少なくとも1つの電子供与性基もしくは/および少なくとも1つの電子求引性基により置換されていてよい。
【0174】
さらに、R2およびR3の1つが、水素であることが好ましい。R2が水素であることがより好ましい。式(I)における他の好ましいR2の部分は、フェニルなどのアリール、ベンジルなどのアリールアルキル、およびアルキルである。好ましいR2の基は非置換であってよく、または電子供与性基もしくは/および電子求引性基により単置換もしくは多置換されていてよいと理解されたい。R2における少なくとも1つの電子求引性基または/および少なくとも1つの電子供与性基が、独立にアルコキシ、N-ヒドロキシアミノ、N-アルキルヒドロキシアミノ、N-アルキル-O-アルキルヒドロキシアミノ、またはO-アルキルヒドロキシアミノ、また特にメトキシ、またはエトキシであることが好ましい。
【0175】
式(I)、(II)または/および(III)において、R3は水素;非置換であるまたは少なくとも1つの電子供与性基もしくは/および少なくとも1つの電子求引性基で置換されているアルキル基;非置換であるまたは少なくとも1つの電子供与性基もしくは/および少なくとも1つの電子求引性基で置換されているアリール基;複素環、複素環アルキル、あるいはZYとしてよい。
【0176】
R3が、水素;非置換であるまたは少なくとも1つの電子供与性基もしくは/および少なくとも1つの電子求引性基で置換されているアルキル;非置換であるまたは少なくとも1つの電子供与性基もしくは/および少なくとも1つの電子求引性基で置換されているアリール;複素環、複素環アルキル、あるいはZY(Zは、O、NR4、またはPR4であり、Yは水素またはアルキルであり、ZYは、NR4NR5R7、NR4OR5、ONR4R7
【0177】
【化8】

【0178】
である)であることが好ましい。
【0179】
R3が、非置換であるまたは少なくとも1つの電子供与性基もしくは/および少なくとも1つの電子求引性基で置換されているアルキル、あるいはZ-Y(この場合Z-Yは本明細書において定義した通りである)であることも好ましい。
【0180】
R3が、非置換であるまたは少なくとも1つの電子供与性基もしくは/および少なくとも1つの電子求引性基で置換されているアルキル;NR4OR5、あるいはONR4R7(R4、R5、およびR7は、本明細書において定義した通りである)であることも好ましい。
【0181】
R3がCH2-Q(Qは特に炭素原子1〜3個を含有するアルコキシである)であること、あるいはR3がNR4OR5、またはONR4R7(R4、R5、およびR7は、本明細書において定義した通りである)であることも好ましい。
【0182】
R3は、非置換であるまたは少なくとも1つの、特に炭素原子1〜3個を含有するアルコキシで置換されているアルキルであることも好ましい。
【0183】
R3は、CH2-Q(Qは炭素原子1〜3個を含有するのが好ましいアルコキシであり、より好ましくは、Qはエトキシまたはメトキシである)であることも好ましい。
【0184】
R3は、NR4OR5、またはONR4R7(R4、R5、およびR7は、本明細書において定義した通りである。またR4、R5、およびR7は本明細書において定義した通りであり、例えばN-アルコキシ、N-アルコキシ-N-アルキルアミノ、またはN-カルバルコキシである)であることも好ましい。
【0185】
R3は、複素環、複素環アルキル、またはアリール(この場合これらは、非置換であってよく、または少なくとも1つの電子供与性基もしくは/および少なくとも1つの電子求引性基で置換されていてよい)であることも好ましい。R3における最も好ましい複素環基は、フリル、またはオキサゾリルである。
【0186】
R3は、水素、アルキル、ベンジルなどのアリールアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、フェニルなどのアリール、複素環、複素環アルキル、N-アルコキシ-N-アルキルアミノ、N-アルコキシアミノ、およびN-カルバルコキシからなる群から選択されることも好ましい。
【0187】
好ましいR3の基は非置換であってよく、または電子供与性基もしくは/および電子求引性基により単置換もしくは多置換されていてよいと理解されたい。R3における少なくとも1つの電子求引性基または/および少なくとも1つの電子供与性基が、独立にアルコキシ、N-ヒドロキシアミノ、N-アルキルヒドロキシアミノ、N-アルキル-O-アルキルヒドロキシアミノ、またはO-アルキルヒドロキシアミノ、また特にメトキシ、またはエトキシであることが好ましい。
【0188】
R4、R5、R6、R'6、R7、およびR8は、独立に水素またはアルキルであることが好ましい。
【0189】
R4、R5、およびR7は、独立に水素または、好ましくは炭素原子1〜3個を含有するアルキルであることが好ましい。
【0190】
最も好ましいアリールはフェニルである。最も好ましいハロはフルオロである。
【0191】
式(I)の化合物において、Rはアリールアルキルであることが好ましく、この場合Rは、非置換であり、または少なくとも1つの電子供与性基もしくは/および少なくとも1つの電子求引性基で置換されている。
【0192】
式(I)の化合物において、R1は、非置換であるまたは少なくとも1つの電子供与性基もしくは/および少なくとも1つの電子求引性基で置換されているアルキルであることが好ましい。
【0193】
式(I)の化合物において、R2およびR3は、独立に水素;非置換であるまたは少なくとも1つの電子供与性基もしくは/および少なくとも1つの電子求引性基で置換されているアルキル;非置換であるまたは少なくとも1つの電子供与性基もしくは/および少なくとも1つの電子求引性基で置換されているアリール;複素環、複素環アリール、あるいはZY(Zは、O、NR4、またはPR4であり、Yは水素またはアルキルであり、あるいはZYは、NR4NR5R7、NR4OR5、ONR4R7
【0194】
【化9】

【0195】
であり、この場合R4、R5、およびR7は本明細書において定義した通りである)であることが好ましい。
【0196】
式(I)の化合物において、好ましいR2およびR3の基は非置換であってよく、または、アルコキシ(例えばメトキシ、エトキシなど)、N-ヒドロキシアミノ、N-アルキルヒドロキシアミノ、N-アルキル-O-アルキルヒドロキシアミノ、およびO-アルキルヒドロキシアミノなどの電子供与性基もしくは/および電子求引性基により単置換もしくは多置換されていてよい。
【0197】
式(I)の化合物において、R2または/およびR3における少なくとも1つの電子供与性基または/および少なくとも1つの電子求引性基は、独立にヒドロキシまたはアルコキシであることが好ましい。
【0198】
式(I)の化合物において、R2が水素であることがより好ましい。
【0199】
式(II)の化合物において、R1がメチルであることが好ましい。
【0200】
好ましい式(II)の化合物において、R3は、水素、あるいは非置換であるまたは少なくとも1つの電子供与性基もしくは/および少なくとも1つの電子求引性基で置換されているアルキルであり;あるいはR3は、複素環、複素環アルキル、またはZ-Yであり、この場合、Z-Yおよび複素環は本明細書において定義した通りである。
【0201】
他の好ましい式(II)の化合物において、R3は、非置換であるまたは少なくとも1つの電子供与性基もしくは/および少なくとも1つの電子求引性基で置換されているアルキル基;NR4OR5、またはONR4R7(R4、R5、およびR7は、本明細書において定義した通りである)であり、またこの場合少なくとも1つの電子供与性基または/および少なくとも1つの電子求引性基は、ヒドロキシおよびアルコキシから選択されることが好ましい。
【0202】
さらに好ましい式(II)の化合物において、R3は、CH2-Q(Qは炭素原子1〜3個を含有するのが好ましいアルコキシであり、より好ましくはエトキシである)であり、あるいはR3はNR4OR5、またはONR4R7(R4、R5、およびR7は、独立に、水素、または炭素原子1〜3個を含有するアルキルである)である。
【0203】
他の好ましい式(II)の化合物において、R3は、-CH2-Q(Qは炭素原子1〜3個を含有するアルコキシである)である。
【0204】
式(II)の化合物において、Arは、非置換であるまたは少なくとも1つのハロで置換されている、好ましくは少なくとも1つのフルオロで置換されているフェニルであることが好ましい。式(II)の化合物において、Arは、非置換であるフェニルであることがより好ましい。
【0205】
好ましい式(III)の化合物において、R9は水素またはフルオロであり、R3は、メトキシメチル、フェニル、N-メトキシ-N-メチルアミノ、およびN-メトキシアミノからなる群から選択され、またR1はメチルである。
【0206】
最も好ましい本発明の化合物には、
(R)-2-アセトアミド-N-ベンジル-3-メトキシ-プロピオンアミド、
(R)-2-アセトアミド-N-ベンジル-3-エトキシ-プロピオンアミド、
O-メチル-N-アセチル-D-セリン-m-フルオロベンジル-アミド、
O-メチル-N-アセチル-D-セリン-p-フルオロベンジル-アミド、
N-アセチル-D-フェニルグリシンベンジルアミド、
D-1,2-(N,O-ジメチルヒドロキシルアミノ)-2-アセトアミド酢酸ベンジルアミド、
D-1,2-(O-メチルヒドロキシルアミノ)-2-アセトアミド酢酸ベンジルアミド、
D-α-アセトアミド-N-(2-フルオロベンジル)-2-フランアセトアミド、
D-α-アセトアミド-N-(3-フルオロベンジル)-2-フランアセトアミド
が含まれる。
【0207】
本明細書において記述しているR1、R2、R3、R、およびnのマーカッシュ群は、組合せかつ入れ替えることができる点を理解されたい。本明細書において明らかには開示されていない組合せおよび入替えが、本発明の範囲内にあるものと企図される。その上、本発明は、それぞれのR1、R2、R3、nおよびRのマーカッシュ群分けにおける1つまたは複数の要素、ならびにそれらの種々の組合せを含む化合物および組成物をも包含する。したがって、例えば本発明は、それぞれのn値に関して、任意のおよび全てのR2、R3、およびRの置換基と組み合わせて、R1が本明細書において上記に掲げた1種または複数の置換基となり得ることを企図している。
【0208】
より好ましいものは、R配置にある、好ましくは実質的にエナンチオピュアな式(I)、(II)または/および(III)の化合物であって、置換基Rが少なくとも1つのハロ基で置換されていないベンジルであり、R3がCH2-Q(Qは炭素原子1〜3個を含有するアルコキシである)であり、またR1がメチルである化合物である。Rが非置換であるベンジル、またはフルオロ基である少なくとも1つのハロ基で置換されているベンジルであることが好ましい。
【0209】
その上、置換基に応じて、本化合物は付加塩を形成できる。全てのこれらの形態は、立体異性体形態の混合物を含み、本発明の範囲内にあるものと企図される。
【0210】
本発明において利用される化合物の製造は、米国特許第5378729号および第5773475号において、また国際公開PCT/EP第2005/010603号中において記述されており、これらの内容は参照により組み込まれている。
【0211】
本発明において利用される化合物は、式(I)、(II)または/および(III)に示されるものとしてそれ自体有用であり、あるいは遊離アミノ基の存在によるその基本的特性を考慮して、塩の形態で使用することができる。したがって、式(I)、(II)または/および(III)の化合物は、医薬として許容可能な酸を含む、広く様々な無機および有機酸と塩を形成する。治療的に許容可能な酸とのそれらの塩は、水溶性を高めることが最も有利な製剤の調製に、もちろん役立つものである。
【0212】
これらの治療的に許容可能な塩も、治療的効力を有する。これらの塩には、塩化水素酸、ヨウ化水素酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸および硫酸などの無機酸の塩、ならびに酒石酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、安息香酸、過塩素酸、グリコール酸、グルコン酸、コハク酸、アリールスルホン酸(例えばp-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)、リン酸、マロン酸などの有機酸の塩が含まれる。
【0213】
医師は最も適切である本治療用組合せの投与量を決定するであろう。その投与量は投与形態および選択される特定の化合物によって異なるであろうし、またさらに治療のもとにある患者、患者の年齢、治療される疾患の型によって異なるであろう。医師は、実質的にその組合せの最適用量未満の少ない投与量で治療を開始し、その状況下での最適効果に到達するまで少しずつ投与量を増加させることを望むであろう。この組成物を経口投与する場合、非経口的に提供したより少量と同一の効果を生じるには、より多量の活性剤を要するであろう。本発明の組合せは、同様な治療剤と同じ方法で有用であり、また投与量レベルはこれらの他の治療剤で一般的に用いられるのと同一の大きさのオーダーである。
【0214】
好ましい実施形態において、本発明の化合物(a)は、1日当たり体重1キログラム当たり約1mg〜約100mgの範囲にある量で、より好ましくは1日当たり体重1キログラム当たり約1mg〜約10mgの範囲にある量で投与される。この投与管理は、医師が最適の治療応答をもたらすように調節できる。それを必要とする患者は、少なくとも50mg/日の、好ましくは少なくとも200mg/日の、より好ましくは少なくとも300mg/日の、より一層好ましくは少なくとも400mg/日の、最も好ましくは少なくとも600mg/日の本発明の化合物(a)の用量で治療できる。一般に、それを必要とする患者は、最大6g/日、より好ましくは最大1g/日、より一層好ましくは最大800mg/日、最も好ましくは最大600mg/日における用量で治療できる。しかし、いくつかの場合、より高いまたはより低い用量が必要とされ得る。
【0215】
さらに好ましい実施形態において、本発明の化合物(b)は、約100mg/日〜約4g/日の範囲にある量で投与される。
【0216】
他の好ましい実施形態において、所定の1日量(daily dose)に到達するまで1日量を増加させ、さらなる治療の間それを維持している。
【0217】
さらに他の好ましい実施形態において、いくつかの分割用量を毎日投与できる。例えば1日当たり3回の用量を、好ましくは1日当たり2回の用量を投与できる。1日当たり1回の用量を投与するのがより好ましい。
【0218】
さらに他の好ましい実施形態において、複数の治療被験者の平均として計算して、血漿濃度0.1〜15μg/ml(最小値)および5〜18.5μg/ml(最大値)をもたらす本発明の化合物(a)の量を投与でき、救急治療における静脈内投与では、最高30μg/mlの最大値プラスミドレベルをもたらし得る。
【0219】
式(I)、(II)または/および(III)の化合物と化合物(b)との組合せは、経口、静脈内(水溶性の場合)、筋肉内、鞘内(intrathecal)、直腸(例えば座薬、ゲル、液体など)または皮下経路によるなど使い易い形で投与できる。経口、直腸または/およびi.v.投与が好ましい。救急治療では、i.v.投与が最も好ましい。
【0220】
本発明の医薬組成物は、上述の本発明の実施形態において特定的な投与期間または/および投与経路についての、上述の治療療法向けに、特に上述の血漿濃度をもたらす上述の用量による治療用に調製できる。
【0221】
式(I)、(II)または/および(III)の化合物と化合物(b)との組合せは、例えば不活性希釈剤と共に、または同化可能な食用担体と共に経口投与でき、あるいは硬質もしくは軟質殻ゼラチンカプセル内に封入でき、あるいは圧縮して錠剤とすることができ、あるいは食事の食品中に直接配合できる。経口治療用投与について、式(I)、(II)または/および(III)の化合物と化合物(b)との組合せは、賦形剤を配合でき、また服用錠剤、舌下錠、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、ウエハなどの形態で使用できる。このような組成物および製剤は、少なくとも1%の式(I)、(II)または/および(III)の活性化合物を含有すべきである。組成物および製剤の百分率は、もちろん変動でき、利便上その投与単位の重量の約5〜約80%の間としてよい。このような治療的に有用な組成物中の式(I)、(II)または/および(III)の化合物と化合物(b)との組合せの量は、適切な投与量が得られるような量である。本発明による好ましい組成物または製剤は、約10mgと6gの間の式(I)、(II)または/および(III)の活性化合物を含有する。
【0222】
錠剤、トローチ、丸剤、カプセルなどはまた、次のものを含有できる:トラガカントガム、アラビアゴム、コーンスターチ、またはゼラチンなどの結合剤;リン酸二カルシウムなどの賦形剤;コーンスターチ、ジャガイモデンプン、アルギン酸などの崩壊剤;ステアリン酸マグネシウムなどの滑剤;およびショ糖、乳糖、またはサッカリンなどの甘味剤が添加でき、あるいはペパーミント、冬緑油、サクランボ香味などの香味剤が添加できる。単位剤形がカプセルである場合、上記の型の物質に加えて、液状担体を含有できる。
【0223】
種々の他の物質が剤皮として添加でき、またはほかに剤形の物理的形態を変更できる。例えば、錠剤、丸剤、またはカプセルはセラック、糖またはその両方で被覆できる。シロップまたはエリキシルは、活性化合物、甘味剤としてのショ糖、保存剤としてのメチルおよびプロピルパラベン、色素、およびサクランボまたはオレンジ香味などの香味剤を含有できる。もちろん、任意の単位剤形を調製するのに使用されるいずれの物質も、医薬的に純粋、かつ使用する量では実質的に無毒性とすべきである。さらに、活性化合物は、徐放型製剤および配合物として配合できる。例えば徐放型剤形であって、活性成分がイオン交換樹脂に結合しており、その樹脂を、場合によって樹脂の放出性状を変化させる拡散バリヤコーティングで被覆することができる剤形が企図されている。
【0224】
本医薬組成物は、非経口または腹腔内投与することもできる。グリセロール、液体、ポリエチレングリコール、およびこれらの混合物中の、また油中の分散液を調製することもできる。通常の貯蔵および使用条件下で、これらの製剤は微生物の増殖を防止する保存剤を含有する。
【0225】
注射液使用に適した医薬形態には、無菌水溶液(水溶性である場合)または分散液、および無菌注射用溶液または分散液の即時調合製剤向け無菌粉末が含まれる。全ての場合に、この形態は無菌でなければならず、また易注射性が存在する程度に流動性でなければならない。それは、製造および貯蔵条件下で安定でなければならず、また細菌およびカビなどの微生物の汚染作用に対し保護されなければならない。例えば、担体は、水、エタノール、多価アルコール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、これらの適切な混合物、ならびに植物油を含有する溶媒または分散媒であることができる。例えば、レシチンなどの剤皮の使用によって、分散液の場合所要の粒径を維持することによって、かつ界面活性剤の使用によって適切な流動性を維持することができる。微生物の作用の予防は、種々の抗細菌剤および防カビ剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロザールなどによりもたらすことができる。多くの場合、等張剤、例えば糖または塩化ナトリウムを含むことが好ましいであろう。注射液組成物の吸収を長くすることは、組成物中における吸収を遅らせる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの使用によりもたらすことができる。
【0226】
無菌注射用溶液は、必要に応じて上記に列挙した種々の他の成分と共に、適正な溶媒中に所要量の活性化合物を配合し、続いて濾過滅菌する段階により調製される。一般に、分散液は、種々の無菌活性成分を、基本分散媒と、上記に列挙した成分からの必要とする他の成分とを含有する無菌ビヒクル中に配合する段階により調製される。無菌注射用溶液を製造するための無菌粉末を調製する場合、好ましい調製方法は、場合によって任意の追加的所望成分と一緒の真空乾燥、または凍結乾燥である。
【0227】
本明細書において使用する「医薬として許容可能な担体」には、当技術分野でよく知られている医薬活性物質のための任意のおよび全ての溶媒、分散媒、剤皮、抗細菌および防カビ剤、等張および吸収遅延剤が含まれる。任意の従来の媒質または薬剤が活性成分と不適合性である限りそれを除いて、本治療組成物におけるその使用を企図している。補足的活性成分も本組成物中に配合することができる。
【0228】
非経口組成物を単位剤形として製剤することは、投与が容易になり、投与量が均等になるため特に有利である。本明細書において使用する単位剤形は、治療される哺乳動物被験者用の単位投与量として適した物理的に分離した単位を指し、各単位は、所要の医薬担体と共同して所望の治療効果を生じるように計算された所定量の活性物質を含有する。本発明のこの新規な単位剤形についての細部は、(a)本活性物質の独特な特性および達成される特定の治療効果、ならびに(b)本明細書において詳細に開示されている、身体的健康を害する疾患状態を有する生きた被験者の疾患を治療する活性物質などの配合技術に固有な制約によって指図され、また直接依存している。
【0229】
主要活性成分は、本明細書において以前に記述した単位剤形に適切な医薬として許容可能な担体と共に、有効量の、使い易くかつ有効な投与のため配合される。例えば単位剤形は、主要活性化合物(a)を、約10mg〜約6gの範囲にある量で含有することができる。割合について述べると、活性化合物は、約1〜約750mg/ml担体として存在する。補足的活性成分を含有する組成物の場合には、投与量は、通常の用量、および前記成分の投与方法を参照して決定される。
【0230】
本明細書において使用している用語「患者」または「被験者」は、温血動物、ならびに好ましくは、例えばネコ、イヌ、ウマ、ウシ、ブタ、マウス、ラット、およびヒトを含む霊長類などの哺乳動物を指す。患者はヒトであることが好ましい。
【0231】
用語「治療」は、疾患または状態に関連した苦痛を和らげること、患者の疾患または状態を治癒または軽減させることのいずれかを指す。
【0232】
本発明の化合物は、前述の型の障害に罹っている患者に、有効量が投与される。これらの量は、本明細書において上述した治療有効量に相当する。
【0233】
本発明は、下記の実施例、図、および表によってさらに例示される。
【0234】
図および表の説明
図1:マウスの6Hz誘発発作モデルにおける3つの固定比率組合せについてのラモトリジンとラコサミドの間の相互作用を示すイソボログラム。LTGおよびLCMについての50%有効量(ED50)値をそれぞれX-およびY-軸に配置している。これらの両ED50値を結ぶ直線は、種々の固定用量比率の連続体について、理論的な相加による線を表す。中実な点により、50%効果をもたらすLTGおよびLCMの比率として表した合計用量についての実験由来のED50混合値(95%信頼限界によるエラーバーとして)を図示している。
【0235】
図2:バルプロエートとラコサミドの間の相互作用(図1における詳細を参照されたい)。
【0236】
図3:カルバマゼピンとラコサミドの間の相互作用(図1における詳細を参照されたい)。
【0237】
図4:フェニトインとラコサミドの間の相互作用(図1における詳細を参照されたい)。
【0238】
図5:レベチラセタムとラコサミドの間の相互作用(図1における詳細を参照されたい)。
【0239】
図6:トピラメートとラコサミドの間の相互作用(図1における詳細を参照されたい)。
【0240】
図7:ガバペンチンとラコサミドの間の相互作用(図1における詳細を参照されたい)。
【0241】
表1:マウスの6Hz発作に対するLCMおよび従来の抗癲癇薬の効果。信頼限界を括弧内に示している。
【表1】

【0242】
表2:マウスの6Hz発作試験におけるLCMと種々のAEDの間の相互作用のイソボログラフィック特性付け。
【表2】

【0243】
表3:マウスのロータロッド試験における運動協調性に関する単独投与、およびラコサミドとの組合せにおける種々のAEDの効果。ロータロッド試験の結果は、運動協調性機能障害を示す動物の百分率として表される。それぞれの群は動物10匹からなる。そのED50における各AED単独の試験について、それぞれの群は動物20匹からなる。統計的比較のためフィッシャーの正確な試験を用いた。
【表3】

【0244】
表4:マウスの6Hz誘発性発作モデルにおいて得られた抗痙攣薬対についての組合せ相互作用結果の総括。
【表4】

【0245】
表5:マウスおよびラットにおけるラコサミドの抗痙攣活性および最小毒性のプロフィル。
【表5】

【0246】
表6:マウスおよびラットにおける試作抗痙攣薬の抗痙攣活性および最小毒性のプロフィル。
【表6】


【0247】
MES=最大電気ショック、Sc=皮下、Met=メトラゾール/化学痙攣発現薬、Bic=ビククリン/化学痙攣発現薬、Pic=ピクロトキシン/化学痙攣発現薬、AGS=聴原発作。
【実施例】
【0248】
この試験の目的は、イソボログラフ分析を使用して、マウスの6Hz発作モデルにおけるLCMと従来のAED(フェニトイン(PHT)、カルバマゼピン(CBZ)、バルプロエート(VPA)、ラモトリジン(LTG))との間の、あるいはLCMと新規なAEDであるトピラメート(TPM)、ガバペンチン(GBP)、またはレベチラセタム(LEV))の間の相互作用の可能性を検討することであった。Deckersら(2000年)によれば、AED間の相互作用を評価するのに使用したイソボログラフィック方法は、癲癇の動物モデルにおいてAED間の相乗作用、相加、または拮抗作用を検出する最適な方法であるとみなされる。このような組合せの副作用は、ロータロッド試験で評価した。
【0249】
動物
実験は、20gと28gの間の重量がある成体オスCBAマウス(オデッサ大学)について行った。マウスは、天然の明暗サイクルを有する標準的実験室条件下で、食物および水に自由に接近できる群体ケージ内に保持した。実験室条件に1週間適応させた後、動物は、マウス10匹からなる実験群に無作為に割り当てた。各マウスは1回だけ使用した。全ての実験は、午前9時から午後4時の間に行った。動物とそれらの世話を含む処置は、現在の欧州共同体の法令に従って行った。
【0250】
薬剤
この試験において次のAEDを使用した:SCHWARZ Pharma社により寄付されたLCM、LTG、VPA、CBZ、PHT、LEV、TPM、GBP。全ての薬剤は、0.5%メチルセルロースに溶解し、0.2ml/体重20gの体積を腹腔内(i.p.)投与した(CBZ、VPA-試験前15分;LCM、LTG-同30分;LEV、GBP-同60分;PHT、TM-同120分)。
【0251】
各実験日にその都度、新しい薬剤溶液を調製した。AEDを試験する前のこれらの前処理時間は、文献からの彼らの生物学的活性についての情報に基づいていた(Bartonら、2001年;Luszczkiら、2006年)。
【0252】
6Hz発作試験
Grass S48刺激装置を使用して、角膜刺激(6Hz、32mA、矩形パルス幅0.2ms、持続時間3s)により「精神運動性」発作を誘発させた(Bartonら、2001年)。
【0253】
薬剤投与時、全ての動物の眼に、1滴の0.5%テトラカインを差した。角膜電極を置く前に、1滴の0.9%生理的食塩水を眼に差した。動物は手で抑えていたが、刺激の直後に解放して、気絶、前肢クローヌス震毛攣縮、および挙尾により特徴付けられる発作活性の存在、または不在を観察した。保護を、発作の不在と定義した(Bartonら、2001年)。対照標準群(ビヒクル注入による)では、全ての動物が発作を示した。AEDの保護効力を、それらが6Hz発作に対し、マウスの50%を保護する能力として測定し、対応する50%有効量(ED50)値として表した。それぞれのED50値を評価するため、少なくとも4群(マウス10匹の)を、AEDの漸増的用量を摂取させた後、6Hz発作に挑戦させた。計算機プロビット解析(Litchfield、Wilcoxon、1949年)によって、またその後平均値の標準誤差(SEM)に変換させ、ED50値(95%信頼限界と共に)を計算した。
【0254】
ロータロッド試験
損なわれた運動性機能を、DunhamおよびMiya(1957年)によるマウスのロータロッド試験により定量化した。6 rpmの一定速度で回転する直径3cmの棒を使用することにより、ロータロッド試験を行った。この試験において、動物が、回転する棒上で少なくとも120秒間、彼らの平衡を維持することが不可能になる急性神経性欠損(AEDにより生じる副作用)が示された。このモデルで評価した用量比率は常に1:1であった。比較のため6Hzモデルで、それぞれのAEDを単独でそのED50、およびそのED50の50%において試験した。
【0255】
データ解析
イソボログラフィック分析は、等効果薬剤用量の比較に基づいている。本試験において、6Hz発作試験に対する薬剤の抗痙攣効力に関して、Tallarida(1992年);Porrecaら(1990年);Luszczkiら(2006年)によって入念に仕上げられた手順により薬剤間の相互作用をイソボログラフ的に評価した。組み合わせた薬剤の用量-応答曲線から実験的(ED混合)および理論相加的(ED相加)を測定した(Tallaridaら、1997年)。ED50を、6Hz誘発性発作に対して動物の50%を保護する薬剤の用量と定義している。ED混合は、50%保護効果のため十分な固定比率組合せとして投与した、2つの成分薬剤混合物の実験的に測定した合計用量である。逆にED相加は、発作に対する50%保護を理論的に提供する(相加の線から計算した)2つの薬剤の合計相加的用量を表す。ED混合のそれぞれの95%信頼限界は、LitchfieldおよびWilcoxon(1949年)により計算し、またED相加のそれらはTallaridaおよびMurray(1987年)により計算し、その後Luszczkiら(2003年)により詳細に記述された手順によってSEMに変換された。
【0256】
相互作用の型を推断するため、6Hz誘発性発作において次の1:3、1:1および3:1の薬剤の3つの固定用量比率について試験した。試験したLCMとAEDの間の相互作用の型を目に見えるようにするため、それぞれのLCMの用量(Y軸上)およびX軸上のAEDの用量を反映する点をプロットすることにより、イソボール(isobole)を引いた。単独で投与した2つの試験した薬剤の6Hz誘発性発作に対するED50値を結ぶ直線は、相加についての理論的イソボールを表す。種々の固定比率の配合物を反映する実験的測定データ点が、この線上にある場合、薬剤の効果は相加的(相互作用なし)である。これらの点が相加線の著しく下方に降りている場合、2つの成分薬剤は相乗作用的に作用する。逆に、これらの点が相加的イソボールの上方に位置する場合、拮抗作用を認めることができる。
【0257】
その上、6Hz試験における2つのAEDの種々の固定比率配合物についての相互作用指数を、ED50混合/ED50相加比率として計算した。この比率は、イソボログラフ分析において2つのAED間の相互作用の強さを良好に記述するものであると思われる(Luszczkiら、2003年;Berenbaum、1989年;Tallaridaら、1999年;Tallarida、2001年、2002年)。この指数が0.7未満である場合、これは相乗効果を示している。この指数が1.3を超える場合、これは拮抗作用効果を示し、この指数がこの間にある場合、これは純粋な相加的相互作用を示している(Luszczkiら、2003年;Kerryら、1975年;Bourgeois、Wad、1984年、1988年;Bourgeois、1988年)。
【0258】
ロータロッド試験で得られた所与のTD50を、6Hz発作試験で得られたそれぞれのED50で割ることにより、保護指数(PI)を計算することができる。このPIは、AEDの用量と、鎮静性、失調性、または他の神経毒性副作用を発現するAEDの用量との間の満足される安全限界と見なされる(Loscher, W.、Nolting, B.、「The role of technical, biological and pharmacological factors in the laboratory evaluation of anticonvulsant drugs. IV. Protective indices」、Epilepsy Res(1991)、9:1〜10頁)。
【0259】
利益指数(BI)は、イソボログラフィック分析から直接得られるそれぞれの固定比率組合せのPI混合とPI相加との商として定義される。PI混合は実験的に測定した保護指数であり、またPI相加は、6Hz発作における相加の線およびロータロッド試験から理論的に計算した保護指数である。BIにより、種々の固定比率組合せとして適用される、2つの薬剤の組合せの利益が明確に推定される。その上、BIは、それが>1.3である場合、臨床的実施においてそれぞれのAEDを組み合わせる理論的根拠を提供し、一方BI<0.7では不利なAEDの組合せを示している(Luszczki JJ、Borowicz KK、Swiader M、Czuczwar SJ、「Interaction between oxcarbazepine and conventional antiepileptic drugs in the maximal electroshock test in mice:an isobolographic analysis」、Epilepsia(2003)、44:489〜99頁)。
【0260】
結果
1.マウスにおける6Hz誘発性発作に対するAEDの抗痙攣性効果
全ての試験したAED(LCM、LTG、VPA、CBZ、PHT、LEV、TPM、GBP)は、マウスにおける6Hz発作に対して用量依存性の抗痙攣性効果を生じた。単独に投与した薬剤についてのED50値を表1に示している。薬剤の中でラコサミドは最高の効力(すなわち最小のED50)を示した。
【0261】
2.6Hz-発作モデルにおけるLCMと数多くのAEDとの間の相互作用のイソボログラフィック分析
個別に各AEDについて測定したED50値に基づいて、3種の固定比率(1:3、1:1および3:1)について薬剤混合物の理論相加ED50(ED50相加値)を計算した。その後、6Hz発作試験において同一の固定比率組合せについて実験的ED50混合値を測定した(表2)。イソボログラフィック分析により、全ての固定比率組合せについてLCM+PHT間の相加的相互作用(図4)およびLCM+VPA間の相加的相互作用(図2)(ED50混合が、ほんの僅かED50相加未満なので、非有意な相乗効果)が実証された。LCMのLTGとの組合せ(図1)、TPMとの組合せ(図6)、およびGBPとの組合せ(図7)は、高用量のLCMと組み合わせて試験した低用量のAED(すなわち固定比率1:3における)では相加的相互作用を発現した。比率1:1の相乗効果は、それぞれLCMとLTG、TPMまたはGBP間で観察された。同様に、低用量のLCMと組み合わせた高用量のそれぞれLTG、TPMまたはGBP(すなわち固定比率3:1;表2)では相乗的相互作用が見られた。LCM+CBZ間の相互作用(図3)およびLCM+LEV間の相互作用(図5)は、相互作用指数が0.7未満であったので(表2)、全ての比率にわたって相乗的であった(表4)。
【0262】
3.ロータロッド試験
詳細な結果を表3に示している。用量比率1:1における他のAEDとのLCM同時投与では、いずれの場合もマウスにおける運動性行動の著しい機能障害を生じなかった。
【0263】
表4は、6Hz誘発性発作試験に関して7種の薬剤対間で、観察された相互作用の型を総括している。
【0264】
考察
この研究は、LCMが10.1mg/kgのED50により6Hz精神運動発作からマウスを完全に保護したことを実証している。この用量は、NINDSの抗痙攣薬選別プログラムにおいて測定されたED50(9.9mg/kg)と十分に対応しているが、マウスおよびラットにおける最大電気ショック発作への保護に必要とされたED50よりも2〜3倍多い(Stoehrら、提出済)。その上、種々のAED(LTG、CBZ、PHT、TPM、GBP;表1)の抗発作効果は、他の研究で得られたMES試験において発作を抑制するのに必要とされた用量よりも著しく高い用量で生じた。一般に本発明者らのデータは、Bartonら(2001年)により報告されたものと一致している。ラコサミドは、他の試験したAEDと比較した場合、このモデルにおける最高の効力を有する薬剤である。ナトリウムチャネル調節剤であるフェニトイン、ラモトリジン、およびカルバマゼピンとは異なり、薬理学的用量でラコサミドはロータロッド行動に障害を生じさせなかった。
【0265】
6Hz試験は、例えばLEVが様々な他のモデルでは不活性であるにも拘らず、このモデルでは完全な保護を提供する点が観察されることにより、抗治療性発作用のモデルと考えられる(Gowerら、1993年;Klitgaardら、1998年;Loescher、Honack、1993年;Patsalos、2004年)。本発明者らのデータにより、MES発作モデルと6Hz発作モデルの薬理学的プロフィルにおける差異が確認される。Bartonら(2001年)は、発作誘発性ニューロン活性化の指標として即早期遺伝子c-Fosを用い、最大電気ショック誘発性またはPTZ誘発性発作に従って観察されるものよりも、6Hz誘発性発作が、ニューロン活性化の明らかに異なったパターンをもたらすことを示した。DuncanおよびKohn(2004年)は、2-デオキシグルコース技術を使用することにより、このニューロン活性化の特異的なパターンが、ラコサミドにより減衰するが、この薬剤は基底パターンには影響がないことを示した。
【0266】
イソボログラフィック分析により、全ての試験した固定比率にわたってLCMがLEVおよびCBZと相乗作用的に作用することが明らかになった。LCMと組み合わせたLTG、TPM、およびGBPは(固定比率1:1および3:1で)、同様に相乗作用的相互作用と関連し、固定比率1:3で相乗作用的相互作用に近づく傾向を示した(図1、図6および図7)。さらに、LCMとVPAまたはPHTとの間の相互作用は、6Hz誘発性発作に対する保護には相加的であることが見出された(図2、図4)。
【0267】
試験したいずれの薬剤組合せも、インフラ相加(infraadditive)効果(抗発作効力についての薬剤間の拮抗作用)または毒性の増強作用を示さなかった。抗発作活性の増強作用があったどの場合でも、急性神経毒性の増強作用もあるということはなかった。もちろん、これは、その結果安全性限界の改善につながるので、どんな薬剤組合せにも望ましい相互作用である。
【0268】
概して高用量の他のAEDとの低用量のラコサミドの組合せが、より高レベルの相乗作用を生じ、またこの逆である点は興味深いことである。この点、ならびにラコサミドが全ての他の試験したAEDと少なくとも相加的に作用する事実により、ラコサミドは、抗治療性発作を治療するための理想的なアドオン型薬剤となっている。
【0269】
本発明者らは、LCMと他のAED間で観察された種々の型の相互作用の基にある何らかの機序を示唆することができる。まず最初に、AEDの血漿レベルは測定していないが、相加または相乗効果の理由として薬物動態的効果を排除することができる。LCMは、広く様々な薬剤代謝酵素を阻害または誘発しないし、それらの1つにより著しい程度まで代謝されることもない。さらに、臨床的集団薬物動態解析により、AEDの血漿レベルへのLCMの影響、またはその逆についての証拠は提供されなかった。したがって、本研究において見出される相互作用は、純粋に薬力学的特性のものである。
【0270】
LCMと試験したAEDとの間の相乗的または相加的相互作用特性の基にある作用機序は未知である。Deckersら(2000年)によれば、相乗的相互作用は、異なる作用機序を有する薬剤間に存在する可能性があり、また相加は同様な機序を共有する薬剤について予期できるものである。
【0271】
ロータロッド試験における相反する活性の解析から、マウスにおいて6Hz発作試験において明快な相乗作用または相加を示す組合せを、運動協調性の機能障害と関連付けられなかったと仮定できる。
【0272】
AED間の相互作用の型の最終結果について、用量比率が重要であり得る点を強調すべきである。いくつかの用量比率では相互作用が単に相加的であり(例えばLCM+GBP、1:3)、他の用量比率では治療上相乗作用的であるとの現在の結果から、この点は、明らかである。他の研究からの結果も、この問題を示している(Gordonら、1993年;Borowiczら、2000年)。マウスにおけるMES試験の使用によるBorowiczら(2002年)の例について、CBZと組み合わせたGBPが用量比率1:1では相加的相互作用を示したが、多くの他のものでは非常に有意な相乗的相互作用を示したことが観察されている。癲癇患者に薬剤組合せを導入する場合、医師はこの観点から、この点を考慮しなければならない。
【0273】
理論的には、抗痙攣作用について相加しか示さないが副作用がなくもしくは副作用が最小限である薬剤組合せも、低用量での組合せでは、同一の抗発作効果を提供することができ、一方副作用が減っているので、臨床的観点からは適切なものである(Luszczkiら、2003年)。
【0274】
式(I)、(II)もしくは/および(III)の化合物は、癲癇性発作の予防、軽減または/および治療において、式(I)、(II)もしくは/および(III)の化合物と異なるAEDと一緒に、相乗効果を発現すると結論付けられる。
(参考文献)




【符号の説明】
【0275】
LCM ラコサミド
AED 抗癲癇薬
ED50 50%有効量
i.v. 静脈内
i.p. 腹腔内
p.o. 経口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)式(I)を有する化合物
【化1】

(Rは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、複素環、複素環アルキル、アルキル複素環、シクロアルキル、またはシクロアルキルアルキルであり、またRは非置換であり、または少なくとも1つの電子求引性基もしくは/および少なくとも1つの電子供与性基で置換されており、
R1は、水素、またはアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、アリール、複素環アルキル、アルキル複素環、複素環、シクロアルキル、シクロアルキルアルキルであり、それぞれ非置換であり、または少なくとも1つの電子供与性基もしくは/および少なくとも1つの電子求引性基で置換されており、
R2およびR3は、独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アリールアルキル、アリール、ハロ、複素環、複素環アルキル、アルキル複素環、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、またはZ-Yであり、この場合R2およびR3は非置換であってよく、または少なくとも1つの電子求引性基もしくは/および少なくとも1つの電子供与性基で置換されていてよく;またこの場合、R2およびR3中の複素環は、フリル、チエニル、ピラゾリル、ピロリル、メチルピロリル、イミダゾリル、インドリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、ピペリジル、ピロリニル、ピペラジニル、キノリル、トリアゾリル、テトラゾリル、イソキノリル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、モルホリニル、ベンゾキサゾリル、テトラヒドロフリル、ピラニル、インダゾリル、プリニル、インドリニル、ピラゾリンジニル、イミダゾリニル、イミダゾリンジニル、ピロリジニル、フラザニル、N-メチルインドリル、メチルフリル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリジル、エポキシ、アジリジノ、オキセタニル、アゼチジニル、または複素環中にNが存在する場合それらのN-オキシドであり、
Zは、O、S、S(O)a、NR4、NR6'、PR4、または化学結合であり、
Yは、水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、アルケニル、アルキニル、ハロ、複素環、複素環アルキル、アルキル複素環であり、またYは非置換であってよく、または少なくとも1つの電子供与性基もしくは/および少なくとも1つの電子求引性基で置換されていてよく、この場合、複素環はR2またはR3と同じ意味を有し、但し、Yがハロである場合Zは化学結合であり、あるいは
ZYは、一緒になって、NR4NR5R7、NR4OR5、ONR4R7、OPR4R5、PR4OR5、SNR4R7、NR4SR7、SPR4R5、PR4SR7、NR4PR5R6、PR4NR5R7、またはN+R5R6R7
【化2】

であり、
R6'は、水素、アルキル、アルケニル、またはアルキニルであり、これらは非置換であってよく、または少なくとも1つの電子求引性基もしくは/および少なくとも1つの電子供与性基で置換されていてよく、
R4、R5、およびR6は、独立に、水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、アルケニル、またはアルキニルであり、この場合R4、R5、およびR6は、独立に、非置換であってよく、または少なくとも1つの電子求引性基もしくは/および少なくとも1つの電子供与性基で置換されていてよく、
R7は、R6またはCOOR8またはCOR8であり、この場合R7は、非置換であってよく、または少なくとも1つの電子求引性基もしくは/および少なくとも1つの電子供与性基で置換されていてよく、
R8は、水素またはアルキル、あるいはアリールアルキルであり、このアリールまたはアルキル基は、非置換であってよく、または少なくとも1つの電子求引性基もしくは/および少なくとも1つの電子供与性基で置換されていてよく、また
nは1〜4であり、また
aは1〜3である)、またはその医薬として許容可能な塩と、
(b)癲癇性発作の予防、軽減または/および治療のための少なくとも1種のさらなる化合物であり、化合物(a)と異なる化合物と
を場合によって医薬として許容可能な担体、希釈剤または/およびアジュバントと一緒に含む医薬組成物であり、
単独で提供される前記化合物(a)または(b)の効果と比較して、癲癇性発作の予防、軽減または/および治療において相乗効果を有する医薬組成物。
【請求項2】
相乗効果が、0.7までの、好ましくは0.6までの、より好ましくは0.5までの、α>0である組成物の相互作用指数αの値として定義される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
相乗効果が、少なくとも1.3の、好ましくは少なくとも1.4の、より好ましくは少なくとも1.5の組成物の利益指数BIの値として定義される、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
化合物(b)および化合物(a)が、少なくとも1:6の化合物(b):化合物(a)の固定用量比率で組成物中に存在し、前記固定用量比率が、個々の化合物(b)および(a)のED50値に基づいて計算される、請求項1から3のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
化合物(b)が、ラセタム、ガンマアミノ酪酸アナログ、ジベンズアゼピン、フェニルトリアジン誘導体、単糖スルファメート、ヒダントイン誘導体、およびバルビツレートからなる群から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
化合物(b)が、バルプロエートまたはフェニトインではない、請求項1から5のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
化合物(b)が、レベチラセタム、ラモトリジン、カルバマゼピン、トピラメート、ガバペンチン、ブリバラセタム、セレトラセタム、ゾニサミド、フェルバメート、チアガビン、ビガバトリン、ジアゼパム、ミダゾラム、フェノバルビタール、ペントバルビタール、およびエトスクシミドを含む群から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
R2およびR3の一方が水素である、請求項1から7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
nが1である、請求項1から8のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
Rがアリールアルキル、特にベンジルであり、Rが非置換であり、または少なくとも1つの電子供与性基もしくは/および少なくとも1つの電子求引性基で置換されている、請求項1から9のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
R1が、非置換であるまたは少なくとも1つの電子供与性基もしくは/および少なくとも1つの電子求引性基で置換されているアルキルである、請求項1から10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
R2およびR3が、独立に水素;非置換であるまたは少なくとも1つの電子供与性基もしくは/および少なくとも1つの電子求引性基で置換されているアルキル、アルコキシもしくはアリールアルキル、特にアルコキシアルキル、複素環、複素環アルキル、あるいはZY(Zは、O、NR4、またはPR4であり、またYは水素またはアルキルであり、あるいは
ZYは、NR4NR5R7、NR4OR5、ONR4R7
【化3】

であり、R4、R5、およびR7は請求項1において定義した通りである)である、請求項1から11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
少なくとも1つの電子求引性または/および少なくとも1つの電子供与性基が、ハロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、ニトロ、カルボキシ、ホルミル、カルボキシアミド、アリール、第四級アンモニウム、ハロアルキル、アリールアルカノイル、ヒドロキシ、アルコキシ、カルバルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールオキシ、メルカプト、アルキルチオ、アルキルメルカプト、およびジスルフィドから独立に選択される、請求項1から12のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項14】
R2または/およびR3の少なくとも1つの電子供与性基または/および少なくとも1つの電子求引性基が、独立にヒドロキシまたはアルコキシである、請求項1から13のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
化合物が、一般式(II)、
【化4】

(Arは、非置換であるまたは少なくとも1つの電子供与性基もしくは/および少なくとも1つの電子求引性基で置換されているアリールであり、
R1は、アルキルであり、また
R3は、請求項1、7、11または13において定義した通りである)
を有する、請求項1から14のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
R3が-CH2-Q(Qはアルコキシである)
である、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
R1がメチルである、請求項15または16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
Arが、非置換であるまたは好ましくは少なくとも1つのハロ、より好ましくは少なくとも1つのフルオロで置換されているフェニルである、請求項15から17のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
Arが、非置換であるフェニルである、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
化合物が、
(R)-2-アセトアミド-N-ベンジル-3-メトキシ-プロピオンアミド、
(R)-2-アセトアミド-N-ベンジル-3-エトキシ-プロピオンアミド、
O-メチル-N-アセチル-D-セリン-m-フルオロベンジルアミド、または
O-メチル-N-アセチル-D-セリン-p-フルオロベンジルアミド
である、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項21】
化合物が、一般式(III)、
【化5】

(R9は、水素、ハロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、ニトロ、カルボキシ、ホルミル、カルボキシアミド、アリール、第四級アンモニウム、ハロアルキル、アリールアルカノイル、ヒドロキシ、アルコキシ、カルバルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールオキシ、メルカプト、アルキルチオ、アルキルメルカプト、およびジスルフィドからなる群から独立に選択される1つまたは複数の置換基であり、
R3は、水素、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アリール、複素環、複素環アルキル、N-アルコキシ-N-アルキルアミノ、N-アルコキシアミノ、およびN-カルバルコキシからなる群から選択され、また
R1は、アルキルである)
を有する、請求項1から20のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
R9が、水素もしくはフルオロ、エトキシメチルであり、/またはR1がメチルである、請求項21に記載の医薬組成物。
【請求項23】
R3が、アルコキシアルキル、特にメトキシメチルおよびメトキシエチル、アルキル、特にメチルおよびエチル、-NH-O-CH3、-N(CH3)-O-CH3、-NH(C(O)-O-CH3)、アリール、特にフェニル、ならびに複素環、特にフリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピロリル、オキサゾリル、およびチエニルから選択される、請求項21または22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
化合物が、
N-アセチル-D-フェニルグリシンベンジルアミド、
D-1,2-(N,O-ジメチルヒドロキシルアミノ)-2-アセトアミド酢酸ベンジルアミド、またはD-1,2-(O-メチルヒドロキシルアミノ)-2-アセトアミド酢酸ベンジルアミド
である、請求項21から23のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項25】
化合物が、R配置のものである、請求項1から24のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項26】
化合物が、実質的にエナンチオピュアである、請求項25に記載の医薬組成物。
【請求項27】
少なくとも100mg/日の、好ましくは少なくとも200mg/日の、より好ましくは少なくとも300mg/日の、最も好ましくは少なくとも400mg/日の化合物(a)の用量で治療するために調製される、請求項1から26のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項28】
最大6g/日、より好ましくは最大1g/日、最も好ましくは最大600mg/日の化合物(a)の用量で治療するために調製される、請求項1から27のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項29】
所定の1日量に到達するまで1日量を増加させ、さらなる治療の間それを維持する治療のために調製される、請求項1から28のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項30】
1日当たり3回の用量、好ましくは1日当たり2回の用量で、より好ましくは1日当たり1回の用量で治療するために調製される、請求項1から29のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項31】
複数の治療される被験者の平均として計算して、化合物(a)の血漿濃度0.1〜15μg/ml(最小値)および5〜18.5μg/ml(最大値)をもたらす投与のために調製される、請求項1から30のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項32】
経口またはi.v.投与のために調製される、請求項1から31のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項33】
単一剤形を含む、または(i)少なくとも1種の化合物(a)を含む第1の組成物と、(ii)少なくとも1種の化合物(b)を含む第2の組成物とを含む別々の剤形を含む、請求項1から32のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項34】
哺乳動物における投与のために調製される、請求項1から33のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項35】
ヒトにおける投与のために調製される、請求項34に記載の医薬組成物。
【請求項36】
癲癇性発作の予防、軽減、または/および治療用の薬物を調製するための請求項1から35のいずれかに記載の医薬組成物の使用。
【請求項37】
癲癇性発作が、二次的全汎化を伴うおよび伴わない部分発作、一次的全汎発作、ならびに癲癇重積状態から選択される、請求項36に記載の使用。
【請求項38】
癲癇性発作の予防、軽減、または/および治療方法であって、それを必要とする被験者に、請求項1から35のいずれかにおいて定義した医薬組成物を有効量投与する工程を含む方法。
【請求項39】
癲癇性発作が、二次的全汎化を伴うおよび伴わない部分発作、一次的全汎発作、ならびに癲癇重積状態から選択される、請求項38に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−545521(P2009−545521A)
【公表日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514711(P2009−514711)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【国際出願番号】PCT/EP2007/005304
【国際公開番号】WO2007/144195
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(507038467)シュヴァルツ・ファーマ・アーゲー (8)
【Fターム(参考)】