真空ポンプ
【課題】予め回転基準位置に対する磁性体位置の位相差を計測しておく必要がなく、ポンプ組み立て作業が簡素化される真空ポンプの提供。
【解決手段】インダクタンス検出部44は、少なくとも一つの磁性体102が設けられたインダクタンス被検出面に対向するように隙間を設けて配設され、インダクタンス信号を出力する。演算手段313は、基準位相信号発生手段が発生する基準位相信号を基準とする複数の回転位相に関するインダクタンス信号S1〜S3に基づいて、回転基準位置に対する磁性体102の位置(位相差)を算出する。温度推定手段314は、演算手段313で算出された磁性体102の位置に基づいて、インダクタンス検出部44が磁性体102に対向したときのインダクタンス信号を抽出し、該インダクタンス信号に基づいてロータの温度を推定する。
【解決手段】インダクタンス検出部44は、少なくとも一つの磁性体102が設けられたインダクタンス被検出面に対向するように隙間を設けて配設され、インダクタンス信号を出力する。演算手段313は、基準位相信号発生手段が発生する基準位相信号を基準とする複数の回転位相に関するインダクタンス信号S1〜S3に基づいて、回転基準位置に対する磁性体102の位置(位相差)を算出する。温度推定手段314は、演算手段313で算出された磁性体102の位置に基づいて、インダクタンス検出部44が磁性体102に対向したときのインダクタンス信号を抽出し、該インダクタンス信号に基づいてロータの温度を推定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
ターボ分子ポンプでは、ロータ材料としてアルミ合金が一般的に用いられている。アルミ合金はクリープ変形の許容温度が比較的低い温度であるため、ポンプ運転時にはロータ温度がこの許容温度以下になるように常に監視する必要がある。ロータ温度を非接触で検出する方法として、磁性体の透磁率がキュリー温度において大きく変化することを利用する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上述したターボ分子ポンプでは、ロータと一体とされた部材に磁性体を固定し、それと対向する位置に設けられたギャップセンサにより、透磁率変化をインダクタンス変化として検出している。その場合、磁性体とは別に基準信号発生用のターゲットをロータに設け、そのターゲットをセンサで検出して得られた基準信号に基づいて、磁性体の位置を検出する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−192042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、磁性体や基準信号発生用のターゲットをロータに設ける際に、スペースの関係で別個に取り付けざるを得ない場合がある。そのような場合、取り付け後に、磁性体とターゲットとの位置関係、すなわち回転に対する位相関係を予め求めておき、その位相関係に基づいて磁性体信号と基準信号との位相を補正する必要がある。しかしながら、磁性体とターゲットとを別個に取り付ける構造の場合、取り付け後の位相関係はポンプ毎に異なるので、一台ごとに位相関係を計測して記憶しておく必要があり、組み立て精度が要求されるとともに作業が繁雑になり、コスト増大の要因となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、ステータに対してロータを回転することによりガスを排気する真空ポンプに適用され、ロータのロータ回転軸を中心とした円周上に設けられたインダクタンス被検出面と、インダクタンス被検出面に配設され、ロータの温度監視範囲内にキュリー温度を有する少なくとも一つの磁性体と、インダクタンス被検出面に対向するように隙間を設けて配設され、インダクタンス信号を出力するインダクタンス検出部と、ロータの回転基準位置を検出して基準位相信号を発生する基準位相信号発生手段と、基準位相信号を基準とする複数の回転位相に関するインダクタンス信号に基づいて、回転基準位置に対する磁性体の位置を算出する演算手段と、演算手段で算出された磁性体の位置に基づいて、インダクタンス検出部が磁性体に対向したときのインダクタンス信号を抽出し、該インダクタンス信号に基づいてロータの温度を推定する温度推定手段とを備えたことを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載の真空ポンプにおいて、回転位相の各々に対して、位相差を有する複数のインダクタンス信号をそれぞれ抽出し、回転基準位置に対する磁性体の位置を特定するための信号を生成する信号生成手段を備え、演算手段は、信号生成手段で生成された信号に基づいて、回転基準位置に対する前記磁性体の位置を算出することを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項2に記載の真空ポンプにおいて、インダクタンス被検出面に、凹部と磁性体とをそれぞれ1以上配設したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、回転基準位置に対する磁性体の位置を演算部で算出するようにしたので、従来のように予め回転基準位置に対する磁性体位置の位相差を計測しておく必要がなく、ポンプ組み立て作業が簡素化される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る真空ポンプの一実施の形態を示す図である。
【図2】シャフト3の斜視図である。
【図3】磁性体102の特性を示す図であり、(a)は磁性体102の透磁率の温度変化を示し、(b)はインダクタンス変化を示す。
【図4】フランジ101に設けられた磁性体102および凹部103の角度範囲を示す図である。
【図5】検出部31を説明するブロック図である。
【図6】復調回路311から出力される信号の出力レベルを示す図である。
【図7】基準位相信号と磁性体信号の一例を示す図である。
【図8】信号S1を基準位相信号発生と同時にサンプリングした場合の、信号S1〜S3の検出位置を示す図である。
【図9】所定位相と信号判定値SHとの関係を示す図である。
【図10】所定位相を変化させたときの信号S1〜S3と磁性体102,凹部103との位置関係を示す図であり、(a)は所定位相=0〜30degを、(b)は所定位相=30〜37.5degを、(c)は所定位相=37.5〜82.5degを、(d)は所定位相=82.5〜90degをそれぞれ示す。
【図11】所定位相を変化させたときの信号S1〜S3と磁性体102,凹部103との位置関係を示す図であり、(a)は所定位相=90〜120degを、(b)は所定位相=120〜127.5degを、(c)は所定位相=127.5〜135degを、(d)は所定位相=13〜165degをそれぞれ示す。
【図12】所定位相を変化させたときの信号S1〜S3と磁性体102,凹部103との位置関係を示す図であり、(a)は所定位相=165〜172.5degを、(b)は所定位相=172.5〜180degをそれぞれ示す。
【図13】磁性体102および凹部103の他の配置例を示す図である。
【図14】図13の配置例の場合の、センサ出力信号(復調後の信号)を示す図である。
【図15】図13の配置例の場合の、信号判定値SHを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。図1は本発明による真空ポンプの一実施の形態を示す図であり、磁気軸受式ターボ分子ポンプのポンプ本体1とコントローラ30の概略構成を示したものである。
【0010】
ロータ2が取り付けられたシャフト3は、ベース4に設けられた電磁石51,52,53によって非接触支持されている。シャフト3の浮上位置は、ベース4に設けられたラジアル変位センサ71,72およびアキシャル変位センサ73によって検出される。ラジアル磁気軸受を構成する電磁石51,52と、アキシャル磁気軸受を構成する電磁石53と、変位センサ71〜73とで5軸制御型磁気軸受が構成される。
【0011】
シャフト3の下端には円形のディスク41が設けられており、電磁石53はディスク41を上下に挟むように設けられている。電磁石53によりディスク41を吸引することにより、シャフト3がアキシャル方向に浮上する。ディスク41はナット42によりシャフト3の下端部に固定されており、シャフト3と一体で回転する。ナット42には、基準位相信号発生用のターゲット45が設けられている。ナット42と対向するステータ側には、ターゲット45と対向する位置にギャップセンサ43が設けられている。ギャップセンサ43は、インダクタンス式のギャップセンサである。
【0012】
ロータ2には、回転軸方向に沿って複数段の回転翼8が形成されている。上下に並んだ回転翼8の間には固定翼9がそれぞれ配設されている。これらの回転翼8と固定翼9とにより、ポンプ本体1のタービン翼段が構成される。各固定翼9は、スペーサ10によって上下に挟持されるように保持されている。スペーサ10は、固定翼9の保持機能とともに、固定翼9間のギャップを所定間隔に維持する機能を有している。
【0013】
さらに、固定翼9の後段(図示下方)にはドラッグポンプ段を構成するネジステータ11が設けられており、ネジステータ11の内周面とロータ2の円筒部12との間にはギャップが形成されている。ロータ2およびスペーサ10によって保持された固定翼9は、吸気口13aが形成されたケーシング13内に納められている。ロータ2が取り付けられたシャフト3を電磁石51〜53により非接触支持しつつモータ6により回転駆動すると、吸気口13a側のガスは矢印G1のように背圧側(空間SP)に排気される。背圧側に排気されたガスは、排気口26に接続された補助ポンプにより排出される。
【0014】
本実施の形態のターボ分子ポンプではロータ温度を非接触で検出するために、ロータ2が固定されるシャフト3のフランジ101に磁性体102を埋め込むとともに凹部103を形成し、それらが対向する位置にインダクタンス式ギャップセンサ44が設けられている。すなわち、フランジ101のギャップセンサ44に対応する面は、インダクタンス被検出面になっている。後述するように、磁性体102がキュリー温度を越えた時の透磁率変化をギャップセンサ44で検出することにより、ロータ温度を推定するようにしている。
【0015】
ターボ分子ポンプ本体1はコントローラ30によって駆動制御される。コントローラ30には、磁気軸受を駆動制御する磁気軸受駆動制御部32およびモータ6を駆動制御するモータ駆動制御部33が設けられている。検出部31には、ギャップセンサ43、44の出力信号が入力される。検出部31はギャップセンサ44の出力信号に基づいて、ロータ温度モニタ信号を磁気軸受駆動制御部32、モータ駆動制御部33および警報部34に出力する。もちろん、ロータ温度モニタ信号をコントローラ30の外部に出力できる出力端子を設けても良い。警報部34はロータ温度異常などの警報情報をオペレータに提示する警報手段であり、警告音を発生するスピーカや警告を表示する表示装置などにより構成される。
【0016】
図2は、シャフト3の斜視図である。シャフト3のフランジ101には、2個の磁性体102と2個の凹部103とが、シャフト3の軸を中心に90deg間隔で交互に配置されている。ギャップセンサ44は、これらの磁性体102、凹部103と対向する位置に配置されている。磁性体102に用いられる磁性材料には、検出したい温度域すなわち温度監視範囲にキュリー温度を有する材料が選ばれる。一方、ナット42に設けられた基準位相信号発生用のターゲット45は、ギャップセンサ43で検出されるインダクタンスが変化し、基準位相信号が得られるものであれば良い、例えば、ナット42の底面に設けられた段差や穴等でも良い。
【0017】
一般的には、ロータ2(図1参照)に用いられるアルミ材のクリープ変形の許容上限温度付近(約120〜140℃)にキュリー温度を有するフェライト等が選ばれる。図3(a)は磁性体102の透磁率の温度変化を示したものであり、温度がキュリー温度Tcを越えると、透磁率は真空の透磁率μ0程度まで急激に低下する。図3(b)は、透磁率が図3(a)のように変化した場合に、ギャップセンサ44で検出されるインダクタンス変化を示したものである。このインダクタンス変化を検出することで、ロータ温度がキュリー温度Tcを越えたか否かを検出する。
【0018】
図4は、フランジ101に設けられた磁性体102および凹部103の角度範囲を示す図である。上述したように、磁性体102および凹部103は90deg間隔で設けられている。各磁性体102の角度範囲は30degであり、各凹部103の角度範囲は45degである。ギャップセンサ44はある程度の大きさを有するので、磁性体102の影響が出る角度範囲は厳密には30degと異なる。しかし、ここでは説明を簡単にするため、ギャップセンサ44の中心が磁性体102と対向する角度範囲30degを、磁性体102の検出範囲とする。同様に、凹部103の検出範囲は45degとする。その結果、ギャップセンサ44がフランジ101の平面を検出する範囲は、それぞれ52.5degとなる。
【0019】
図5は、検出部31を説明するブロック図である。ギャップセンサ44には搬送波生成回路46から搬送波が印加される。検出部31には、復調回路311、信号抽出部312、演算部313、比較部314が設けられている。ギャップセンサ44に印加された搬送波は、ギャップセンサ44のインダクタンス変化に応じて振幅変調される。ギャップセンサ44から出力された変調波信号は、復調回路311で復調されることにより、図6に示すようなパルス状の信号が得られる。なお、ギャップセンサ43はギャップセンサ44と同様の構成を有しており、その出力は復調回路311に入力され、復調処理が行われて磁性体位置決定に用いられる。
【0020】
図6は、フランジ101およびナット42が設けられたシャフト3を時計回りに一回転させたときに、復調回路311から出力される信号の出力レベルを示したものである。図4の黒丸印の位置は基準位相信号位置(基準位相信号が発生する位置)を表しており、図6はこの基準位相信号位置を回転位相=0として示したものである。図6において、磁性体部と示した部分は、ギャップセンサ44が磁性体102と対向した時の信号を示し、凹部と示した部分は、ギャップセンサ44が凹部103と対向した時の信号を示す。
【0021】
また、磁性体102の透磁率は低温時(Tcよりも低温)と高温時(Tcよりも高温)とで異なるので、磁性体部の信号は、低温時と高温時とでレベルが異なる。ギャップセンサ44がフランジ101の面と対向したときの信号レベルを1とした場合、凹部の信号レベルは0.1となる。磁性体部の信号レベルは、低温時は凹部と同じ0.1で、高温時は1.1となる。
【0022】
前述したように、従来は、フランジ101に設けられた磁性体102をギャップセンサ44で検出するとともに、図4の破線で示すように、基準位相発生用ターゲット45をギャップセンサ43で検出し、取得された基準位相発生信号と予め計測した位相差とに基づいて磁性体位置を特定し、磁性体信号をサンプリングするようにしていた。
【0023】
図7に示すように、ギャップセンサ43の出力による基準位相発生信号のパルスの立ち上がり(基準位相信号)と、ギャップセンサ44のセンサ信号(復調後の信号)に含まれる磁性体信号との間には、ターゲット取り付け時の状態に応じた位相差が生じる。従来は、位相差を予め計測して記憶しておくことで対応していた。
【0024】
一方、本実施の形態では、基準位相信号位置からの所定位相を変化させてセンサ信号を検出し、その検出結果に基づいて磁性体の位置を特定するようにした。例えば、基準位相信号位置から所定回転位相ごとにセンサ信号をサンプリングすることで、図6のライン上のとびとびの点を取得することができる。これらの点のデータから、レベル1やレベル0.1のおよその回転位相範囲が分かるので、その範囲の中心から所定の回転位相だけ遡った位置が磁性体位置であると特定することができる。すなわち、従来のように予め位相差を計測しておかなくても、磁性体位置を特定することができる。
【0025】
ただし、高温時には磁性体部領域のレベルは0.1となるので、レベル0.1の領域が凹部なのか磁性体部なのか判断しにくい。そこで、図6の信号をそのまま用いるのではなく、以下に説明するような信号判定値SHを用いることで、容易に磁性体位置を特定できるようにした。
【0026】
[磁性体位置の決定方法]
図5に示す検出部31の信号抽出部312では、図6に示した信号から、位相の異なる複数の信号をサンプリングする。ここでは、45degの位相間隔で3点の信号をサンプリングする。演算部313では、サンプリングされた信号S1〜S3の各レベルに基づき、次式(1)に示す信号判定値SHを算出する。
SH=(S1−S3)/(S2−S3) …(1)
【0027】
図8は、信号S1を基準位相信号発生と同時にサンプリングした場合の、信号S1〜S3の検出位置を示したものである。図8(a)の信号S1サンプリング時には、ギャップセンサ44は磁性体102と対向し、低温時においては信号S1のレベルは1.1となる。一方、高温時には磁性体102の透磁率が低下するため、サンプリングされる信号S1のレベルは0.1となる。
【0028】
図8(b)に示すように信号S2をサンプリングする際には、フランジ101は図8(a)の状態から45deg回転し、ギャップセンサ44はフランジ101の面に対向するようになる。その結果、取得される信号S2のレベルは1.0となる。
【0029】
さらに、フランジ101が45deg回転して図8(c)の信号S3をサンプリングする際には、ギャップセンサ44は凹部103と対向しているので、信号S3のレベルは0.1となる。その結果、信号判定値SHは、低温時にはSH=1.0/0.9≒1.1と算出され、高温時にはSH=0/0.9=0と算出される。
【0030】
図8に示す例では、サンプリング開始位置と基準位相信号位置とが一致している場合であったが、サンプリング開始位置が反時計回り方向にずれていると信号判定値SHの値は変化する。以下では、このずれを所定位相と呼ぶことにする。この所定位相を0degから180degまで変えて信号判定値SHを求めると、図9に示すようなグラフが得られる。
【0031】
図10〜12は、図9の各所定位相範囲における磁性体102,凹部103との位置関係、および、そのときの信号判定値SHの値を示したものである。図10(a)は所定位相が0〜30degの範囲であった場合に、信号S1,S2,S3がサンプリングされる位置を示しており、実線と破線と間の領域においてギャップセンサ44が対向する。この場合、各信号S1〜S3のレベルは図8に示した場合と同じであり、信号判定値SHは、SH≒1.1(低温時)、またはSH=0(高温時)と算出される。
【0032】
図10(b)に示す所定位相範囲(30〜37.5deg)の場合には、信号S1〜S3のレベルはそれぞれ1.0、1.0、0.1となる。その結果、信号判定値SHは、SH=0.9/0.9=1と算出される。
【0033】
図10(c)は所定位相範囲(37.5〜82.5deg)の場合を示し、信号S1〜S3のレベルはそれぞれ1.0、0.1、1.0となる。その結果、信号判定値SHは、SH=0/(−0.9)=0と算出される。
【0034】
図10(d)は所定位相範囲(82.5〜90deg)の場合を示し、信号S1〜S3のレベルはそれぞれ0.1、1.0、1.0となる。その結果、信号判定値SHは、SH=(−0.9)/0となる。この場合、式の上ではSHの値は(−∞)となるが、実際に得られるSHの大きさが無限大となることはない。一般的には、SHの演算値(絶対値)が所定値(例えば、400等の大きな値)以上となったならば、この状態になっていると判定することができる。なお、以下では、説明を分かりやすくするために、SHの演算値(絶対値)が所定値以上である場合は、「信号判定値SHは無限大(∞)である」と称することにする。
【0035】
図11(a)は所定位相範囲(90〜120deg)の場合を示し、低温時の信号S1〜S3のレベルはそれぞれ0.1、1.0、1.1となり、高温時の信号S1〜S3のレベルは0.1、1.0、0.1となる。その結果、信号判定値SHは、低温時にはSH=(−1.0)/(−0.1)=10と算出され、高温時にはSH=0/(−0.1)=0と算出される。
【0036】
図11(b)は所定位相範囲(120〜127.5deg)の場合を示し、信号S1〜S3のレベルはそれぞれ0.1、1.0、1.0となる。その結果、信号判定値SHは、SH=(−0.9)/0と算出され、無限大(∞)となる。
【0037】
図11(c)は所定位相範囲(127.5〜135deg)の場合を示し、信号S1〜S3のレベルはそれぞれ1.0、1.0、1.0となる。その結果、信号判定値SHは、SH=0/0と算出され、無限大(∞)となる。
【0038】
図11(d)は所定位相範囲(135〜165deg)の場合を示し、低温時の信号S1〜S3のレベルはそれぞれ1.0、1.1、1.0となり、高温時の信号S1〜S3のレベルは1.0、0.1、1.0となる。その結果、信号判定値SHは、低温時にはSH=0/0.1=0と算出され、高温時にはSH=0/(−0.9)=0と算出される。すなわち、この所定位相=135〜165degの範囲では、磁性体102の透磁率が温度により変化しても、信号判定値SHはゼロのまま変化しない。
【0039】
図12(a)は所定位相範囲(165〜172.5deg)の場合を示し、信号S1〜S3のレベルはそれぞれ1.0、1.0、1.0となる。その結果、信号判定値SHは、SH=0/0と算出され、無限大(∞)となる。
【0040】
図12(b)は所定位相範囲(172.5〜180deg)の場合を示し、信号S1〜S3のレベルはそれぞれ1.0、1.0、0.1となる。その結果、信号判定値SHは、SH=0.9/0.9=1と算出される。所定位相範囲が180〜360degの場合は、0〜180degのパターンがそのまま繰り返されるので、説明を省略する。
【0041】
このように、信号S1〜S3のサンプリングを所定位相=0〜180degにわたって多数行うことにより、図9に示すようなグラフが取得されることになる。基準位相信号位置はナット42の取り付け状態よって異なるので、図9の横軸の原点位置はポンプ毎に異なることになる。図9の場合、図8に示すように、右側の磁性体102の中心位置から時計回りに15degだけ位相がずれた位置が基準位相信号位置となるように、ナット42が取り付けられている。そのため、対象としているポンプの基準位相信号位置が図8に示すものであった場合には、ロータ回転中に任意の所定位相において信号S1,S2,S3をサンプリングすると、信号S1をサンプリングした時の所定位相に応じた信号判定値SHが図9から得られる。
【0042】
図9に示すラインの形状は、すなわち、レベル0、1、1.1、10、∞を取るラインの数、長さ、相対的な位置関係は、フランジ101における磁性体102、凹部103の形状および配置によって一義的に決まるものである。すなわち、対象としているポンプの位相差の値に関係なく、基準位相信号位置からの所定位相を0deg,5deg,15deg,・・・のように変えて信号S1〜S3のサンプリングを繰り返し行い、各々の信号判定値SHをプロットすれば、図9に示すライン上の点が5deg間隔で得られることになる。ただし、横軸(所定位相)の原点の位置は位相差に応じて異なる。
【0043】
信号判定値SHのグラフの形状は、上述したように磁性体102および凹部103の構成によって一義的に決まるので、例えば、最初に現れる∞領域と信号判定値SHのレベルが1.1の領域の中心位置(15deg)との所定位相の差は、あらかじめ分かっている。図9に示す例では、無限大(∞)領域の中心は約86degで、レベル1.1のラインの中心位置は15degなので、所定位相の差は71degである。このとき、信号判定値SHは、高温・低温に関係なく、「1→0→∞」のように変化する。このようなパターンでSHが変化するのは、最初に現れる∞領域に関するものだけであり、SHの変化パターンで図9の最初の∞領域を特定することができる。
【0044】
すなわち、算出される信号判定値SHの値が、「1→0→∞」のように推移してSH=∞が得られたならば(図10(d)参照)、そのときの所定位相から71degだけ遡った所定位相=15degにおいて、信号S1検出時のギャップセンサ44の位置が磁性体102の中心位置にほぼ一致することになる(図10(a)参照)。この所定位相=15degが、図7に示す基準位相信号と磁性体信号との位相差である。この71degという値は、図8に示す基準位相信号位置に限らず、基準位相信号位置がどの位置であった場合でも同じである。
【0045】
上述したように基準位相信号位置から5deg間隔で信号判定値SHを算出した場合、85degでSH=∞が算出されるので、71deg遡った位置は所定位相=14degとなる。よって、基準位相信号発生から計って所定位相=14degの時点のセンサ信号を抽出すれば、磁性体102の中心位置からは1degずれてはいるが、磁性体位置の信号を検出することができる。
【0046】
実際には、温度計測を行う前に上述した一連の処理を行い、SH=∞が得られたならば、その時の所定位相から71degだけ減算したものを位相差として採用し、その位相差でサンプリングされる信号を磁性体位置の信号として用いる。なお、ポンプ運転開始時に、位相差を算出し記憶しておき、温度計測時に記憶していた位相差を用いて磁性体位置の信号をサンプリングしても良い。
【0047】
図4のように磁性体102および凹部103を設けるとともに、信号判定値SHを式(1)のように設定することで、信号判定値SHの信号レベルが無限大となる幅の狭い領域が得られ、位相減算の起点を特定しやすい。例えば、信号レベル1で位相減算の起点を特定しようとした場合、信号レベル1.1との判別が難しく、起点の特定がしにくい。また、凹部103を設けなかった場合、式(1)を用いた場合であっても無限大の領域が幅広くなり、位相減算の起点の特定がし難くなる。もちろん、位相減算の起点を、一定の信号判定値SHが得られる領域に指定しても構わない。
【0048】
図5に戻って、信号S1〜S3のサンプリングを信号抽出部312で行い、信号判定値SHの演算および位相差の演算を演算部313で行う。その位相差は信号抽出部312へと送られ、信号抽出部312は磁性体位置の信号(磁性体信号)を抽出し比較部314へと出力する。比較部314は、磁性体信号のレベルを閾値レベル(例えば、図6の信号レベル=0.6)と比較し、ロータ温度がキュリー温度Tcより低温であるか、高温であるかを推定する。その比較結果は、ロータ温度モニタ信号として検出部31から出力される。
【0049】
なお、信号判定値SHに式は、上述したものに限らず、S2−S3やS2/S3等の和、差、積、比や、これらの組み合わせであっても良い。また、磁性体102、凹部103の配置についても、上述したものに限定されず、凹部の代わりに凸部を設けても構わない。
【0050】
図13は、磁性体102および凹部103の他の配置例を示したものである。信号S1〜S3は、S1(0deg)→S2(310deg)→S3(490deg)のようにサンプリングしても良いし、S1(0deg)→S3(130deg)→S2(310deg)のようにサンプリングしても良い。この場合、回転に伴って得られるセンサ出力信号(復調後の信号)は、図14のようになる。
【0051】
また、式(1)で算出される信号判定値SHは、所定位相に対して図15のように変化する。図15に示す2番目の無限大領域について考えると、その前後における信号判定値SHの変化は、高温・低温に関係なく「0→∞→1」のように変化する。温度に関係なくこのようなパターンでSHが変化するのは、図15では2番目の無限大領域の前後だけである。すなわち、信号判定値SHの変化で図15の左から2番目の無限大領域を特定することができる。
【0052】
この2番目の無限大領域の中心は105degで磁性体102の中心は15degなので、減算すべき値は90degとなる。すなわち、2番目の無限大領域を検出したときの所定位相から90degを減算することで、磁性体信号と基準位相信号との位相差を求めることができる。
【0053】
以上説明したように、基準信号を発生させるターゲット45と磁性体102とが別部材に取り付けられていている場合であっても、基準位相信号位置からの所定位相を変化させてセンサ信号を検出し、その検出結果に基づいて磁性体の位置を特定するようにした。そのため、従来のように予め計測された位相差データを保持しておく必要がなく、組立時の位相調整や位相差計測などが不要となる。また、精度良い組み付けを必要としない。その結果、ターボ分子ポンプのコストダウンを図ることができる。
【0054】
なお、上述した実施の形態では、基準信号用センサとしてインダクタンス式のセンサを用いたが、本発明はセンサの形式には限定されず、例えば、ホールセンサを用いたものにも適用することができる。さらに、ターボ分子ポンプに限らず、回転式の真空ポンプにも同様に適用することができる。また、本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではない。
【符号の説明】
【0055】
1:ポンプ本体、2:ロータ、3:シャフト、30:コントローラ、31:検出部、42:ナット、43,44:ギャップセンサ、45:基準位相信号発生用ターゲット、46:搬送波生成回路、101:フランジ、102:磁性体、103:凹部、311:復調回路、312:信号抽出部、313:演算部、314:比較部、
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
ターボ分子ポンプでは、ロータ材料としてアルミ合金が一般的に用いられている。アルミ合金はクリープ変形の許容温度が比較的低い温度であるため、ポンプ運転時にはロータ温度がこの許容温度以下になるように常に監視する必要がある。ロータ温度を非接触で検出する方法として、磁性体の透磁率がキュリー温度において大きく変化することを利用する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上述したターボ分子ポンプでは、ロータと一体とされた部材に磁性体を固定し、それと対向する位置に設けられたギャップセンサにより、透磁率変化をインダクタンス変化として検出している。その場合、磁性体とは別に基準信号発生用のターゲットをロータに設け、そのターゲットをセンサで検出して得られた基準信号に基づいて、磁性体の位置を検出する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−192042号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、磁性体や基準信号発生用のターゲットをロータに設ける際に、スペースの関係で別個に取り付けざるを得ない場合がある。そのような場合、取り付け後に、磁性体とターゲットとの位置関係、すなわち回転に対する位相関係を予め求めておき、その位相関係に基づいて磁性体信号と基準信号との位相を補正する必要がある。しかしながら、磁性体とターゲットとを別個に取り付ける構造の場合、取り付け後の位相関係はポンプ毎に異なるので、一台ごとに位相関係を計測して記憶しておく必要があり、組み立て精度が要求されるとともに作業が繁雑になり、コスト増大の要因となっていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、ステータに対してロータを回転することによりガスを排気する真空ポンプに適用され、ロータのロータ回転軸を中心とした円周上に設けられたインダクタンス被検出面と、インダクタンス被検出面に配設され、ロータの温度監視範囲内にキュリー温度を有する少なくとも一つの磁性体と、インダクタンス被検出面に対向するように隙間を設けて配設され、インダクタンス信号を出力するインダクタンス検出部と、ロータの回転基準位置を検出して基準位相信号を発生する基準位相信号発生手段と、基準位相信号を基準とする複数の回転位相に関するインダクタンス信号に基づいて、回転基準位置に対する磁性体の位置を算出する演算手段と、演算手段で算出された磁性体の位置に基づいて、インダクタンス検出部が磁性体に対向したときのインダクタンス信号を抽出し、該インダクタンス信号に基づいてロータの温度を推定する温度推定手段とを備えたことを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載の真空ポンプにおいて、回転位相の各々に対して、位相差を有する複数のインダクタンス信号をそれぞれ抽出し、回転基準位置に対する磁性体の位置を特定するための信号を生成する信号生成手段を備え、演算手段は、信号生成手段で生成された信号に基づいて、回転基準位置に対する前記磁性体の位置を算出することを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項2に記載の真空ポンプにおいて、インダクタンス被検出面に、凹部と磁性体とをそれぞれ1以上配設したものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、回転基準位置に対する磁性体の位置を演算部で算出するようにしたので、従来のように予め回転基準位置に対する磁性体位置の位相差を計測しておく必要がなく、ポンプ組み立て作業が簡素化される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る真空ポンプの一実施の形態を示す図である。
【図2】シャフト3の斜視図である。
【図3】磁性体102の特性を示す図であり、(a)は磁性体102の透磁率の温度変化を示し、(b)はインダクタンス変化を示す。
【図4】フランジ101に設けられた磁性体102および凹部103の角度範囲を示す図である。
【図5】検出部31を説明するブロック図である。
【図6】復調回路311から出力される信号の出力レベルを示す図である。
【図7】基準位相信号と磁性体信号の一例を示す図である。
【図8】信号S1を基準位相信号発生と同時にサンプリングした場合の、信号S1〜S3の検出位置を示す図である。
【図9】所定位相と信号判定値SHとの関係を示す図である。
【図10】所定位相を変化させたときの信号S1〜S3と磁性体102,凹部103との位置関係を示す図であり、(a)は所定位相=0〜30degを、(b)は所定位相=30〜37.5degを、(c)は所定位相=37.5〜82.5degを、(d)は所定位相=82.5〜90degをそれぞれ示す。
【図11】所定位相を変化させたときの信号S1〜S3と磁性体102,凹部103との位置関係を示す図であり、(a)は所定位相=90〜120degを、(b)は所定位相=120〜127.5degを、(c)は所定位相=127.5〜135degを、(d)は所定位相=13〜165degをそれぞれ示す。
【図12】所定位相を変化させたときの信号S1〜S3と磁性体102,凹部103との位置関係を示す図であり、(a)は所定位相=165〜172.5degを、(b)は所定位相=172.5〜180degをそれぞれ示す。
【図13】磁性体102および凹部103の他の配置例を示す図である。
【図14】図13の配置例の場合の、センサ出力信号(復調後の信号)を示す図である。
【図15】図13の配置例の場合の、信号判定値SHを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。図1は本発明による真空ポンプの一実施の形態を示す図であり、磁気軸受式ターボ分子ポンプのポンプ本体1とコントローラ30の概略構成を示したものである。
【0010】
ロータ2が取り付けられたシャフト3は、ベース4に設けられた電磁石51,52,53によって非接触支持されている。シャフト3の浮上位置は、ベース4に設けられたラジアル変位センサ71,72およびアキシャル変位センサ73によって検出される。ラジアル磁気軸受を構成する電磁石51,52と、アキシャル磁気軸受を構成する電磁石53と、変位センサ71〜73とで5軸制御型磁気軸受が構成される。
【0011】
シャフト3の下端には円形のディスク41が設けられており、電磁石53はディスク41を上下に挟むように設けられている。電磁石53によりディスク41を吸引することにより、シャフト3がアキシャル方向に浮上する。ディスク41はナット42によりシャフト3の下端部に固定されており、シャフト3と一体で回転する。ナット42には、基準位相信号発生用のターゲット45が設けられている。ナット42と対向するステータ側には、ターゲット45と対向する位置にギャップセンサ43が設けられている。ギャップセンサ43は、インダクタンス式のギャップセンサである。
【0012】
ロータ2には、回転軸方向に沿って複数段の回転翼8が形成されている。上下に並んだ回転翼8の間には固定翼9がそれぞれ配設されている。これらの回転翼8と固定翼9とにより、ポンプ本体1のタービン翼段が構成される。各固定翼9は、スペーサ10によって上下に挟持されるように保持されている。スペーサ10は、固定翼9の保持機能とともに、固定翼9間のギャップを所定間隔に維持する機能を有している。
【0013】
さらに、固定翼9の後段(図示下方)にはドラッグポンプ段を構成するネジステータ11が設けられており、ネジステータ11の内周面とロータ2の円筒部12との間にはギャップが形成されている。ロータ2およびスペーサ10によって保持された固定翼9は、吸気口13aが形成されたケーシング13内に納められている。ロータ2が取り付けられたシャフト3を電磁石51〜53により非接触支持しつつモータ6により回転駆動すると、吸気口13a側のガスは矢印G1のように背圧側(空間SP)に排気される。背圧側に排気されたガスは、排気口26に接続された補助ポンプにより排出される。
【0014】
本実施の形態のターボ分子ポンプではロータ温度を非接触で検出するために、ロータ2が固定されるシャフト3のフランジ101に磁性体102を埋め込むとともに凹部103を形成し、それらが対向する位置にインダクタンス式ギャップセンサ44が設けられている。すなわち、フランジ101のギャップセンサ44に対応する面は、インダクタンス被検出面になっている。後述するように、磁性体102がキュリー温度を越えた時の透磁率変化をギャップセンサ44で検出することにより、ロータ温度を推定するようにしている。
【0015】
ターボ分子ポンプ本体1はコントローラ30によって駆動制御される。コントローラ30には、磁気軸受を駆動制御する磁気軸受駆動制御部32およびモータ6を駆動制御するモータ駆動制御部33が設けられている。検出部31には、ギャップセンサ43、44の出力信号が入力される。検出部31はギャップセンサ44の出力信号に基づいて、ロータ温度モニタ信号を磁気軸受駆動制御部32、モータ駆動制御部33および警報部34に出力する。もちろん、ロータ温度モニタ信号をコントローラ30の外部に出力できる出力端子を設けても良い。警報部34はロータ温度異常などの警報情報をオペレータに提示する警報手段であり、警告音を発生するスピーカや警告を表示する表示装置などにより構成される。
【0016】
図2は、シャフト3の斜視図である。シャフト3のフランジ101には、2個の磁性体102と2個の凹部103とが、シャフト3の軸を中心に90deg間隔で交互に配置されている。ギャップセンサ44は、これらの磁性体102、凹部103と対向する位置に配置されている。磁性体102に用いられる磁性材料には、検出したい温度域すなわち温度監視範囲にキュリー温度を有する材料が選ばれる。一方、ナット42に設けられた基準位相信号発生用のターゲット45は、ギャップセンサ43で検出されるインダクタンスが変化し、基準位相信号が得られるものであれば良い、例えば、ナット42の底面に設けられた段差や穴等でも良い。
【0017】
一般的には、ロータ2(図1参照)に用いられるアルミ材のクリープ変形の許容上限温度付近(約120〜140℃)にキュリー温度を有するフェライト等が選ばれる。図3(a)は磁性体102の透磁率の温度変化を示したものであり、温度がキュリー温度Tcを越えると、透磁率は真空の透磁率μ0程度まで急激に低下する。図3(b)は、透磁率が図3(a)のように変化した場合に、ギャップセンサ44で検出されるインダクタンス変化を示したものである。このインダクタンス変化を検出することで、ロータ温度がキュリー温度Tcを越えたか否かを検出する。
【0018】
図4は、フランジ101に設けられた磁性体102および凹部103の角度範囲を示す図である。上述したように、磁性体102および凹部103は90deg間隔で設けられている。各磁性体102の角度範囲は30degであり、各凹部103の角度範囲は45degである。ギャップセンサ44はある程度の大きさを有するので、磁性体102の影響が出る角度範囲は厳密には30degと異なる。しかし、ここでは説明を簡単にするため、ギャップセンサ44の中心が磁性体102と対向する角度範囲30degを、磁性体102の検出範囲とする。同様に、凹部103の検出範囲は45degとする。その結果、ギャップセンサ44がフランジ101の平面を検出する範囲は、それぞれ52.5degとなる。
【0019】
図5は、検出部31を説明するブロック図である。ギャップセンサ44には搬送波生成回路46から搬送波が印加される。検出部31には、復調回路311、信号抽出部312、演算部313、比較部314が設けられている。ギャップセンサ44に印加された搬送波は、ギャップセンサ44のインダクタンス変化に応じて振幅変調される。ギャップセンサ44から出力された変調波信号は、復調回路311で復調されることにより、図6に示すようなパルス状の信号が得られる。なお、ギャップセンサ43はギャップセンサ44と同様の構成を有しており、その出力は復調回路311に入力され、復調処理が行われて磁性体位置決定に用いられる。
【0020】
図6は、フランジ101およびナット42が設けられたシャフト3を時計回りに一回転させたときに、復調回路311から出力される信号の出力レベルを示したものである。図4の黒丸印の位置は基準位相信号位置(基準位相信号が発生する位置)を表しており、図6はこの基準位相信号位置を回転位相=0として示したものである。図6において、磁性体部と示した部分は、ギャップセンサ44が磁性体102と対向した時の信号を示し、凹部と示した部分は、ギャップセンサ44が凹部103と対向した時の信号を示す。
【0021】
また、磁性体102の透磁率は低温時(Tcよりも低温)と高温時(Tcよりも高温)とで異なるので、磁性体部の信号は、低温時と高温時とでレベルが異なる。ギャップセンサ44がフランジ101の面と対向したときの信号レベルを1とした場合、凹部の信号レベルは0.1となる。磁性体部の信号レベルは、低温時は凹部と同じ0.1で、高温時は1.1となる。
【0022】
前述したように、従来は、フランジ101に設けられた磁性体102をギャップセンサ44で検出するとともに、図4の破線で示すように、基準位相発生用ターゲット45をギャップセンサ43で検出し、取得された基準位相発生信号と予め計測した位相差とに基づいて磁性体位置を特定し、磁性体信号をサンプリングするようにしていた。
【0023】
図7に示すように、ギャップセンサ43の出力による基準位相発生信号のパルスの立ち上がり(基準位相信号)と、ギャップセンサ44のセンサ信号(復調後の信号)に含まれる磁性体信号との間には、ターゲット取り付け時の状態に応じた位相差が生じる。従来は、位相差を予め計測して記憶しておくことで対応していた。
【0024】
一方、本実施の形態では、基準位相信号位置からの所定位相を変化させてセンサ信号を検出し、その検出結果に基づいて磁性体の位置を特定するようにした。例えば、基準位相信号位置から所定回転位相ごとにセンサ信号をサンプリングすることで、図6のライン上のとびとびの点を取得することができる。これらの点のデータから、レベル1やレベル0.1のおよその回転位相範囲が分かるので、その範囲の中心から所定の回転位相だけ遡った位置が磁性体位置であると特定することができる。すなわち、従来のように予め位相差を計測しておかなくても、磁性体位置を特定することができる。
【0025】
ただし、高温時には磁性体部領域のレベルは0.1となるので、レベル0.1の領域が凹部なのか磁性体部なのか判断しにくい。そこで、図6の信号をそのまま用いるのではなく、以下に説明するような信号判定値SHを用いることで、容易に磁性体位置を特定できるようにした。
【0026】
[磁性体位置の決定方法]
図5に示す検出部31の信号抽出部312では、図6に示した信号から、位相の異なる複数の信号をサンプリングする。ここでは、45degの位相間隔で3点の信号をサンプリングする。演算部313では、サンプリングされた信号S1〜S3の各レベルに基づき、次式(1)に示す信号判定値SHを算出する。
SH=(S1−S3)/(S2−S3) …(1)
【0027】
図8は、信号S1を基準位相信号発生と同時にサンプリングした場合の、信号S1〜S3の検出位置を示したものである。図8(a)の信号S1サンプリング時には、ギャップセンサ44は磁性体102と対向し、低温時においては信号S1のレベルは1.1となる。一方、高温時には磁性体102の透磁率が低下するため、サンプリングされる信号S1のレベルは0.1となる。
【0028】
図8(b)に示すように信号S2をサンプリングする際には、フランジ101は図8(a)の状態から45deg回転し、ギャップセンサ44はフランジ101の面に対向するようになる。その結果、取得される信号S2のレベルは1.0となる。
【0029】
さらに、フランジ101が45deg回転して図8(c)の信号S3をサンプリングする際には、ギャップセンサ44は凹部103と対向しているので、信号S3のレベルは0.1となる。その結果、信号判定値SHは、低温時にはSH=1.0/0.9≒1.1と算出され、高温時にはSH=0/0.9=0と算出される。
【0030】
図8に示す例では、サンプリング開始位置と基準位相信号位置とが一致している場合であったが、サンプリング開始位置が反時計回り方向にずれていると信号判定値SHの値は変化する。以下では、このずれを所定位相と呼ぶことにする。この所定位相を0degから180degまで変えて信号判定値SHを求めると、図9に示すようなグラフが得られる。
【0031】
図10〜12は、図9の各所定位相範囲における磁性体102,凹部103との位置関係、および、そのときの信号判定値SHの値を示したものである。図10(a)は所定位相が0〜30degの範囲であった場合に、信号S1,S2,S3がサンプリングされる位置を示しており、実線と破線と間の領域においてギャップセンサ44が対向する。この場合、各信号S1〜S3のレベルは図8に示した場合と同じであり、信号判定値SHは、SH≒1.1(低温時)、またはSH=0(高温時)と算出される。
【0032】
図10(b)に示す所定位相範囲(30〜37.5deg)の場合には、信号S1〜S3のレベルはそれぞれ1.0、1.0、0.1となる。その結果、信号判定値SHは、SH=0.9/0.9=1と算出される。
【0033】
図10(c)は所定位相範囲(37.5〜82.5deg)の場合を示し、信号S1〜S3のレベルはそれぞれ1.0、0.1、1.0となる。その結果、信号判定値SHは、SH=0/(−0.9)=0と算出される。
【0034】
図10(d)は所定位相範囲(82.5〜90deg)の場合を示し、信号S1〜S3のレベルはそれぞれ0.1、1.0、1.0となる。その結果、信号判定値SHは、SH=(−0.9)/0となる。この場合、式の上ではSHの値は(−∞)となるが、実際に得られるSHの大きさが無限大となることはない。一般的には、SHの演算値(絶対値)が所定値(例えば、400等の大きな値)以上となったならば、この状態になっていると判定することができる。なお、以下では、説明を分かりやすくするために、SHの演算値(絶対値)が所定値以上である場合は、「信号判定値SHは無限大(∞)である」と称することにする。
【0035】
図11(a)は所定位相範囲(90〜120deg)の場合を示し、低温時の信号S1〜S3のレベルはそれぞれ0.1、1.0、1.1となり、高温時の信号S1〜S3のレベルは0.1、1.0、0.1となる。その結果、信号判定値SHは、低温時にはSH=(−1.0)/(−0.1)=10と算出され、高温時にはSH=0/(−0.1)=0と算出される。
【0036】
図11(b)は所定位相範囲(120〜127.5deg)の場合を示し、信号S1〜S3のレベルはそれぞれ0.1、1.0、1.0となる。その結果、信号判定値SHは、SH=(−0.9)/0と算出され、無限大(∞)となる。
【0037】
図11(c)は所定位相範囲(127.5〜135deg)の場合を示し、信号S1〜S3のレベルはそれぞれ1.0、1.0、1.0となる。その結果、信号判定値SHは、SH=0/0と算出され、無限大(∞)となる。
【0038】
図11(d)は所定位相範囲(135〜165deg)の場合を示し、低温時の信号S1〜S3のレベルはそれぞれ1.0、1.1、1.0となり、高温時の信号S1〜S3のレベルは1.0、0.1、1.0となる。その結果、信号判定値SHは、低温時にはSH=0/0.1=0と算出され、高温時にはSH=0/(−0.9)=0と算出される。すなわち、この所定位相=135〜165degの範囲では、磁性体102の透磁率が温度により変化しても、信号判定値SHはゼロのまま変化しない。
【0039】
図12(a)は所定位相範囲(165〜172.5deg)の場合を示し、信号S1〜S3のレベルはそれぞれ1.0、1.0、1.0となる。その結果、信号判定値SHは、SH=0/0と算出され、無限大(∞)となる。
【0040】
図12(b)は所定位相範囲(172.5〜180deg)の場合を示し、信号S1〜S3のレベルはそれぞれ1.0、1.0、0.1となる。その結果、信号判定値SHは、SH=0.9/0.9=1と算出される。所定位相範囲が180〜360degの場合は、0〜180degのパターンがそのまま繰り返されるので、説明を省略する。
【0041】
このように、信号S1〜S3のサンプリングを所定位相=0〜180degにわたって多数行うことにより、図9に示すようなグラフが取得されることになる。基準位相信号位置はナット42の取り付け状態よって異なるので、図9の横軸の原点位置はポンプ毎に異なることになる。図9の場合、図8に示すように、右側の磁性体102の中心位置から時計回りに15degだけ位相がずれた位置が基準位相信号位置となるように、ナット42が取り付けられている。そのため、対象としているポンプの基準位相信号位置が図8に示すものであった場合には、ロータ回転中に任意の所定位相において信号S1,S2,S3をサンプリングすると、信号S1をサンプリングした時の所定位相に応じた信号判定値SHが図9から得られる。
【0042】
図9に示すラインの形状は、すなわち、レベル0、1、1.1、10、∞を取るラインの数、長さ、相対的な位置関係は、フランジ101における磁性体102、凹部103の形状および配置によって一義的に決まるものである。すなわち、対象としているポンプの位相差の値に関係なく、基準位相信号位置からの所定位相を0deg,5deg,15deg,・・・のように変えて信号S1〜S3のサンプリングを繰り返し行い、各々の信号判定値SHをプロットすれば、図9に示すライン上の点が5deg間隔で得られることになる。ただし、横軸(所定位相)の原点の位置は位相差に応じて異なる。
【0043】
信号判定値SHのグラフの形状は、上述したように磁性体102および凹部103の構成によって一義的に決まるので、例えば、最初に現れる∞領域と信号判定値SHのレベルが1.1の領域の中心位置(15deg)との所定位相の差は、あらかじめ分かっている。図9に示す例では、無限大(∞)領域の中心は約86degで、レベル1.1のラインの中心位置は15degなので、所定位相の差は71degである。このとき、信号判定値SHは、高温・低温に関係なく、「1→0→∞」のように変化する。このようなパターンでSHが変化するのは、最初に現れる∞領域に関するものだけであり、SHの変化パターンで図9の最初の∞領域を特定することができる。
【0044】
すなわち、算出される信号判定値SHの値が、「1→0→∞」のように推移してSH=∞が得られたならば(図10(d)参照)、そのときの所定位相から71degだけ遡った所定位相=15degにおいて、信号S1検出時のギャップセンサ44の位置が磁性体102の中心位置にほぼ一致することになる(図10(a)参照)。この所定位相=15degが、図7に示す基準位相信号と磁性体信号との位相差である。この71degという値は、図8に示す基準位相信号位置に限らず、基準位相信号位置がどの位置であった場合でも同じである。
【0045】
上述したように基準位相信号位置から5deg間隔で信号判定値SHを算出した場合、85degでSH=∞が算出されるので、71deg遡った位置は所定位相=14degとなる。よって、基準位相信号発生から計って所定位相=14degの時点のセンサ信号を抽出すれば、磁性体102の中心位置からは1degずれてはいるが、磁性体位置の信号を検出することができる。
【0046】
実際には、温度計測を行う前に上述した一連の処理を行い、SH=∞が得られたならば、その時の所定位相から71degだけ減算したものを位相差として採用し、その位相差でサンプリングされる信号を磁性体位置の信号として用いる。なお、ポンプ運転開始時に、位相差を算出し記憶しておき、温度計測時に記憶していた位相差を用いて磁性体位置の信号をサンプリングしても良い。
【0047】
図4のように磁性体102および凹部103を設けるとともに、信号判定値SHを式(1)のように設定することで、信号判定値SHの信号レベルが無限大となる幅の狭い領域が得られ、位相減算の起点を特定しやすい。例えば、信号レベル1で位相減算の起点を特定しようとした場合、信号レベル1.1との判別が難しく、起点の特定がしにくい。また、凹部103を設けなかった場合、式(1)を用いた場合であっても無限大の領域が幅広くなり、位相減算の起点の特定がし難くなる。もちろん、位相減算の起点を、一定の信号判定値SHが得られる領域に指定しても構わない。
【0048】
図5に戻って、信号S1〜S3のサンプリングを信号抽出部312で行い、信号判定値SHの演算および位相差の演算を演算部313で行う。その位相差は信号抽出部312へと送られ、信号抽出部312は磁性体位置の信号(磁性体信号)を抽出し比較部314へと出力する。比較部314は、磁性体信号のレベルを閾値レベル(例えば、図6の信号レベル=0.6)と比較し、ロータ温度がキュリー温度Tcより低温であるか、高温であるかを推定する。その比較結果は、ロータ温度モニタ信号として検出部31から出力される。
【0049】
なお、信号判定値SHに式は、上述したものに限らず、S2−S3やS2/S3等の和、差、積、比や、これらの組み合わせであっても良い。また、磁性体102、凹部103の配置についても、上述したものに限定されず、凹部の代わりに凸部を設けても構わない。
【0050】
図13は、磁性体102および凹部103の他の配置例を示したものである。信号S1〜S3は、S1(0deg)→S2(310deg)→S3(490deg)のようにサンプリングしても良いし、S1(0deg)→S3(130deg)→S2(310deg)のようにサンプリングしても良い。この場合、回転に伴って得られるセンサ出力信号(復調後の信号)は、図14のようになる。
【0051】
また、式(1)で算出される信号判定値SHは、所定位相に対して図15のように変化する。図15に示す2番目の無限大領域について考えると、その前後における信号判定値SHの変化は、高温・低温に関係なく「0→∞→1」のように変化する。温度に関係なくこのようなパターンでSHが変化するのは、図15では2番目の無限大領域の前後だけである。すなわち、信号判定値SHの変化で図15の左から2番目の無限大領域を特定することができる。
【0052】
この2番目の無限大領域の中心は105degで磁性体102の中心は15degなので、減算すべき値は90degとなる。すなわち、2番目の無限大領域を検出したときの所定位相から90degを減算することで、磁性体信号と基準位相信号との位相差を求めることができる。
【0053】
以上説明したように、基準信号を発生させるターゲット45と磁性体102とが別部材に取り付けられていている場合であっても、基準位相信号位置からの所定位相を変化させてセンサ信号を検出し、その検出結果に基づいて磁性体の位置を特定するようにした。そのため、従来のように予め計測された位相差データを保持しておく必要がなく、組立時の位相調整や位相差計測などが不要となる。また、精度良い組み付けを必要としない。その結果、ターボ分子ポンプのコストダウンを図ることができる。
【0054】
なお、上述した実施の形態では、基準信号用センサとしてインダクタンス式のセンサを用いたが、本発明はセンサの形式には限定されず、例えば、ホールセンサを用いたものにも適用することができる。さらに、ターボ分子ポンプに限らず、回転式の真空ポンプにも同様に適用することができる。また、本発明の特徴を損なわない限り、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではない。
【符号の説明】
【0055】
1:ポンプ本体、2:ロータ、3:シャフト、30:コントローラ、31:検出部、42:ナット、43,44:ギャップセンサ、45:基準位相信号発生用ターゲット、46:搬送波生成回路、101:フランジ、102:磁性体、103:凹部、311:復調回路、312:信号抽出部、313:演算部、314:比較部、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータに対してロータを回転することによりガスを排気する真空ポンプにおいて、
前記ロータのロータ回転軸を中心とした円周上に設けられたインダクタンス被検出面と、
前記インダクタンス被検出面に配設され、前記ロータの温度監視範囲内にキュリー温度を有する少なくとも一つの磁性体と、
前記インダクタンス被検出面に対向するように隙間を設けて配設され、インダクタンス信号を出力するインダクタンス検出部と、
前記ロータの回転基準位置を検出して基準位相信号を発生する基準位相信号発生手段と、
前記基準位相信号を基準とする複数の回転位相に関する前記インダクタンス信号に基づいて、前記回転基準位置に対する前記磁性体の位置を算出する演算手段と、
前記演算手段で算出された前記磁性体の位置に基づいて、前記インダクタンス検出部が磁性体に対向したときの前記インダクタンス信号を抽出し、該インダクタンス信号に基づいて前記ロータの温度を推定する温度推定手段とを備えたことを特徴とする真空ポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載の真空ポンプにおいて、
前記回転位相の各々に対して、位相差を有する複数の前記インダクタンス信号をそれぞれ抽出し、前記回転基準位置に対する前記磁性体の位置を特定するための信号を生成する信号生成手段を備え、
前記演算手段は、前記信号生成手段で生成された信号に基づいて、前記回転基準位置に対する前記磁性体の位置を算出することを特徴とする真空ポンプ。
【請求項3】
請求項2に記載の真空ポンプにおいて、
前記インダクタンス被検出面に、凹部と前記磁性体とをそれぞれ1以上配設したことを特徴とする真空ポンプ。
【請求項1】
ステータに対してロータを回転することによりガスを排気する真空ポンプにおいて、
前記ロータのロータ回転軸を中心とした円周上に設けられたインダクタンス被検出面と、
前記インダクタンス被検出面に配設され、前記ロータの温度監視範囲内にキュリー温度を有する少なくとも一つの磁性体と、
前記インダクタンス被検出面に対向するように隙間を設けて配設され、インダクタンス信号を出力するインダクタンス検出部と、
前記ロータの回転基準位置を検出して基準位相信号を発生する基準位相信号発生手段と、
前記基準位相信号を基準とする複数の回転位相に関する前記インダクタンス信号に基づいて、前記回転基準位置に対する前記磁性体の位置を算出する演算手段と、
前記演算手段で算出された前記磁性体の位置に基づいて、前記インダクタンス検出部が磁性体に対向したときの前記インダクタンス信号を抽出し、該インダクタンス信号に基づいて前記ロータの温度を推定する温度推定手段とを備えたことを特徴とする真空ポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載の真空ポンプにおいて、
前記回転位相の各々に対して、位相差を有する複数の前記インダクタンス信号をそれぞれ抽出し、前記回転基準位置に対する前記磁性体の位置を特定するための信号を生成する信号生成手段を備え、
前記演算手段は、前記信号生成手段で生成された信号に基づいて、前記回転基準位置に対する前記磁性体の位置を算出することを特徴とする真空ポンプ。
【請求項3】
請求項2に記載の真空ポンプにおいて、
前記インダクタンス被検出面に、凹部と前記磁性体とをそれぞれ1以上配設したことを特徴とする真空ポンプ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−159670(P2010−159670A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−1756(P2009−1756)
【出願日】平成21年1月7日(2009.1.7)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月7日(2009.1.7)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】
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