説明

真空処理装置

【課題】ウエハ処理の効率化を図り、真空処理室あるいは搬送中継室内の雰囲気ガスが他の真空搬送室あるいは搬送中継室内に流出することによる汚染を抑制する。
【解決手段】被処理基板をロック室に搬送する大気搬送装置を収容した大気搬送室106と、第1の真空処理装置を備え、前記ロック室にある被処理基板を前記第1の処理装置に搬入、搬出する第1の搬送装置を備えた第1の真空搬送室104と、第2の真空処理装置を備え、処理基板を前記第2の処理装置に搬入、搬出する第2の搬送装置を備えた第2の真空搬送室111と、第1の真空搬送室と第2の真空搬送室の間で被処理基板を受け渡しするための搬送中継室112と、前記第1および第2の真空搬送室にガスを供給するとともに、前記処理室、第1および第2の真空搬送室、および搬送中継室のガスを排気するガス供給系を備え、前記真空搬送室のガス圧は、真空処理室および搬送中継室よりも高く設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空処理装置に係り、容器内のガスが他の容器内に流出することよる汚染を抑制することのできる真空処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
真空容器の内部に形成された処理室内で、処理対象である半導体ウエハ等の基板を処理する真空処理装置においては、処理の微細化、精密化とともに、処理対象であるウエハの処理効率の向上が求められている。
【0003】
近年では、一つの搬送室に複数の処理室(チャンバ)を連結し、連結された複数の処理室で並行してウエハの処理を行うマルチチャンバ装置が開発され、これによりクリーンルームの設置面積あたりの生産性の向上が図られてきた。
【0004】
複数の処理室(チャンバ)を備えて処理を行う装置は、各処理室に電界あるいは磁界を供給する手段、排気ポンプ等の内部を排気する手段、各処理室に供給する処理用ガスの供給量を調節する手段等からなる処理ユニットを備える。
【0005】
前記処理ユニットは、内部のガス圧力が調節可能であり、基板を一時的に保持し且つ搬送するためのロボットアーム等が備えられた搬送室(搬送チャンバ)を含む搬送ユニットに着脱可能に連結されている。
【0006】
すなわち、前記処理ユニットの減圧される処理室を内蔵する真空容器の側壁は、同程度に減圧され、内部に処理前あるいは処理後のウエハを搬送する搬送ユニットを備えた真空搬送容器の側壁に着脱可能に連結されている。
【0007】
しかし、マルチチャンバ装置では、真空処理装置の各処理室内の処理ガス等の雰囲気ガスが他の処理室に影響を及ぼすことがある。このような場合、ウエハあるいは装置が汚染され、装置のメンテナンス時間が増加し、歩留まりの低下を招くことがある。
【0008】
このため、複数の処理室が空間的に連通した状態で、処理室内へウエハの搬送を行うことがないよう、処理室と真空搬送容器の間にバルブを設けて、処理室内の雰囲気ガスが真空搬送容器内の雰囲気ガスと接触しないように、バルブの開閉制御、あるいは搬送容器と処理室の圧力制御を行うことが求められる。なお、このような真空処理装置内の雰囲気ガスによるウエハあるいは装置への汚染防止技術としては特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2007−511104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記従来技術においては、ウエハに処理を施す処理室およびウエハを処理室に搬送する搬送室は、他の処理室あるいは搬送室との間に配置したバルブにより完全に分離し、前記処理室及び搬送室は独立して圧力制御を行うことが可能である。また、各処理室あるいは搬送室内においてウエハが処理され、あるいは真空搬送ロボットにより搬送されている場合、処理室からの雰囲気の流出による装置あるいはウエハの二次汚染を防止することが可能となる。
【0011】
しかしながら、上記の従来技術では、真空搬送容器連結する中間の容器に排気機構を備え、該排気機構により真空搬送容器内の雰囲気ガスを排気することでウエハ処理の効率化を図り、さらにウエハ、真空処理容器および真空搬送容器の汚染(コンタミネーション)防止することについては十分に考慮されていない。このため、真空処理装置の設置面積あたりの生産量を損なっている。
【0012】
また、真空処理装置が複数の種類の真空処理ユニットを備え、これらの処理ユニットにウエハを順次供給して処理を施す場合において、先に施すべき処理及び後で施すべき処理を実行する真空処理ユニットがそれぞれ別の真空搬送容器に連結されている場合には、真空搬送容器を接続する中間の容器(中継室)の両端位置に配置されたバルブの開閉制御の方法によっては処理の効率が損なわれることがある。このような場合においては、真空処理装置の設置面積あたりのウエハの処理能力が損なわれることになる。
【0013】
本発明はこれらの問題点に鑑みてなされたもので、真空搬送容器内の雰囲気ガスを排気することでウエハ処理の効率化を図り、真空処理室あるいは搬送中継室内の雰囲気ガスが他の真空搬送室あるいは搬送中継室内に流出することよる汚染を抑制するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は上記課題を解決するため、次のような手段を採用した。
【0015】
大気雰囲気中で被処理基板をロック室に搬送する大気搬送装置を収容した大気搬送室と、第1の真空処理装置を備え、前記ロック室にある被処理基板を前記第1の処理装置に搬入し、処理の終了した被処理基板を搬出する第1の真空搬送装置を備えた第1の真空搬送室と、第2の真空処理装置を備え、処理基板を前記第2の処理装置に搬入し、処理の終了した被処理基板を搬出する第2の真空搬送装置を収容した第2の真空搬送室と、第1の真空搬送室と第2の真空搬送室を接続するとともに第1の真空搬送装置と第2の搬送装置間で被処理基板を受け渡しするための載置台を備えた搬送中継室と、前記第1および第2の真空搬送室にガスを供給するとともに、前記処理室、第1および第2の真空搬送室、および搬送中継室のガスを排気するガス供給系を備え、前記真空搬送室のガス圧は、真空処理室および搬送中継室よりも高く設定する。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、以上の構成を備えるため、ウエハ処理の効率化を図り、真空処理室あるいは搬送中継室内の雰囲気ガスが他の真空搬送室あるいは搬送中継室内に流出することよる汚染を抑制し、設置面積あたりの生産性が高い半導体製造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る真空処理装置の概略を説明する上面図である。
【図2】真空搬送室の詳細を説明する横断面図である。
【図3】真空搬送室の詳細を説明する縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を添付図面を参照しながら説明する。図1、2,3は本発明の実施形態に係る真空処理装置を説明する図であり、図1は全体の構成の概略を説明する上面図、図2は真空搬送室の詳細を説明する横断面図、図3は真空搬送室の詳細を説明する縦断面図である。
【0019】
図1おいて、真空処理装置100は、大気側ブロック101および真空側ブロック102を備える。大気側ブロック101は、大気圧下で被処理物である半導体ウエハ等の基板状の試料を搬送し、収納し、あるいは位置決めする等の処理を行う部分である。真空側ブロック102は、大気圧から減圧された圧力下で試料を搬送し、予め定められた真空処理室内において処理を施すブロックである。なお、真空側ブロック102と大気側ブロック101との間には、これらを連結し、かつ試料を内部に保持した状態で内部圧力を大気圧と真空圧との間で変更するロック室105が配置されている。
【0020】
大気側ブロック101は、大気側搬送ロボット110を収納した筐体(大気搬送室)106を備える。筐体106の前面側(図の下方)には複数のカセット台を備え、カセット台上には、処理用またはクリーニング用のウエハを収納したカセットが載置される。
【0021】
真空側ブロック102は、第一の真空搬送室104、第二の真空搬送室111、および前記ロック室を備える。前記ロック室は、内部の空間を所望の圧力に調節可能な真空容器であって、ウエハが搬送される通路と、この通路の出入り口を開放または閉塞するバルブ120a,120bを有している。また、内部の空間には、複数のウエハを上下に隙間を開けて収納し保持することのできる収納部を備えており、これらにウエハを収納した状態でバルブ120a、120bは開閉可能である。
【0022】
第一の真空搬送室104および第二の真空搬送室111は、それぞれ平面が略矩形状の真空容器を含むユニットであり、第一および第二の真空搬送室は実質的に同一構成である。第一の真空搬送室104および第二の真空搬送室111は、それぞれパージライン124a,124bが備えられ、図示しない制御装置から指令を受けて不活性ガス等のパージガスを流量制御しながら搬送室104,111内に供給する。これにより、真空搬送室104,111は真空処理室103、真空搬送中継室112よりも高い圧力に調節することができる。
【0023】
真空搬送中継室112は、内部が真空処理室よりも相対的に高い圧力まで減圧可能な真空容器であって、真空搬送室104,111を互いに連結している。
【0024】
真空搬送室104と真空搬送室111の間には、真空搬送中継室112およびウエハが搬送される通路を開放、遮断することのできるバルブ120e、120dが配置されており、これらのバルブを閉塞することによって、真空搬送中継室と真空搬送室との間は気密に封止される。また、真空搬送中継室112はバルブ122、排気配管123およびドライポンプ121により構成される排気系により排気される(図3参照)。
【0025】
また、真空搬送中継室112の内部には、複数のウエハを間隙を設けて水平に保持する収納部が配置されている。この収納部は、第一、第二の真空搬送室104,111の間でウエハを受け渡しする際に、ウエハを一旦収納して保持する中継室の機能を備えている。すなわち、一方の真空搬送室内の真空搬送ロボット(108または109)によって搬入され、前記収納部に載置されたウエハは他方の真空搬送室内の真空搬送ロボット(108または109)により搬出されて、当該真空搬送室に連結された真空処理室103あるいはロック室105に搬送される。
【0026】
前述のように、第一の真空搬送室104と第二の真空搬送室111とが対向する面には、真空搬送中継室112が配置されて両者を連結している。真空搬送室のさらに他の面には、内部が減圧されその内部にウエハが搬送されて、ウエハを処理する真空処理室103が接続される。本実施形態では、真空処理室103は、真空容器、該真空容器内に電界あるいは磁界を形成する手段、容器内部を減圧する真空ポンプを含む排気手段を備える。この真空処理室ではエッチング処理、アッシング処理等の処理が施される。なお、真空処理室103には、処理ガスの供給管路を備え、施される処理に応じた処理ガスが供給される。また、各真空処理室103は、真空搬送室および真空搬送中継室よりも低い圧力まで減圧可能である。
【0027】
第一の真空搬送室104には、2個の真空処理室103が連結可能であるが、図では1個の真空処理室103aが連結されている。第二の真空搬送室111には、3個の真空処理室103連結可能であるが、図2では2つの、図3では1つの真空処理室103が連結されている。
【0028】
第一の真空搬送室104の中央部分には、真空下で、ロック室105と真空処理室103aあるいは真空搬送中継室112の間でウエハを搬送する第一の真空搬送ロボット108が配置されている。
【0029】
第二の真空搬送室111中央部分にも同様に第二の真空搬送ロボット109が配置されており、真空処理室103b、103c、および真空搬送中継室112との間でウエハの搬送を行う。
【0030】
これら真空搬送ロボット108、109は同一構成であり、真空搬送ロボット108、109は、それらのアーム上にウエハを載置して、真空処理室103、ロック室105あるいは真空搬送中継室112の間で搬入、搬出を行う。なお、真空処理室103、ロック室105、真空搬送中継室112、第一の真空搬送室104および第二の真空搬送室111間を連通する通路にはそれぞれ気密に閉塞、開放可能なバルブ120が設けられている。
【0031】
なお、大気側搬送ロボット110のアーム先端部のウエハ支持部上に載せられたウエハは、ウエハ支持部のウエハ接触面に配置された吸着装置により、ウエハ支持部上に吸着保持される。これにより、アームの動作によりウエハが支持部上で位置のズレが生じることが抑制される。特に、ウエハ支持部の接触面上に複数配置された開口から周囲のガスを吸引することによりウエハを接触面上に効率的に吸着することができる。
【0032】
一方、第一の真空搬送ロボット108、第二の真空搬送ロボット109のウエハを載せるアーム先端部のウエハ支持部には、ウエハと接して位置ズレを抑制するための突起あるいはピン等が配置され、アームの動作によりウエハがズレることを抑制している。また、このような位置ズレを抑制するためにアームの動作速度、あるいは動作速度の変化の割合(加速度)を抑制する機能が付加されている。
【0033】
このため、同じ距離のウエハ搬送であれば、真空搬送ロボットの搬送時間は大気側搬送ロボットのそれよりも長くなる。このため、真空側ブロック102の搬送効率は大気側のそれよりも低くなる。すなわち、真空側ブロック102内での搬送効率は大気側ブロック101内でのそれよりも低い。なお、図1の例では、搬送に要する時間により律速される処理のうち、第一の真空搬送室に接続された真空処理室103aには処理時間の長い処理(例えばアッシング)を割り当て、第二の真空搬送室に接続された真空処理室103b、103cには処理時間の短い処理(エッチングエッチング)を割り当て、さらに、第一の真空搬送室に割り当てる真空処理室の数を第二の真空搬送室に割り当てる真空処理室の数よりも少なく設定することにより全体の処理時間を短縮することができる。
【0034】
次に、前記真空側ブロックを構成する真空搬送室、中継室、あるいは真空処理室を経由する搬送経路上を搬送するウエハの搬送時間を低減して処理の効率を向上させ、同時に各真空処理室103内でウエハを処理する際に使用した処理ガス等の雰囲気ガスが、他の真空処理室103内へ流入し、あるいは他の真空処理室103内でウエハを処理する際に使用した処理ガス等の雰囲気ガスと接触して汚染(コンタミネーション)しないようにする例を示す。
【0035】
なお、各真空処理室103内でウエハに施される処理の時間は、ウエハの搬送に要する時間と同程度以下であり、真空処理装置100全体での処理効率(単位時間当たりのウエハの処理枚数)には、搬送時間が支配的な影響を与えている。
【0036】
次に、このような真空処理装置100を用いて行うウエハに対する処理動作を以下に説明する。
【0037】
真空処理装置100の動作を調節する図示しない制御装置からの指令を受けて、カセット台107の何れかの台上に載せられたカセットに収納されたウエハの処理が開始される。制御装置からの指令を受けた大気側搬送ロボット110は、カセット内の特定のウエハをカセットから取り出し、取り出したウエハをロック室105に搬送する。
【0038】
ウエハが搬送されて格納されたロック室105では、搬送されたウエハを収納した状態でバルブ120a、120bを閉塞して所定の圧力まで減圧する。その後、ロック室105の第一の真空搬送室104に面した側のバルブ120bを開放して、第一のロック室105と真空搬送室104とを連通する。
【0039】
第一の真空搬送ロボット108は、そのアームをロック室105内に伸張させて、ロック室105内のウエハをそのアーム先端部のウエハ支持部上に受け取り、第一の真空搬送室104内に搬出する。さらに、第一の真空搬送ロボット108は、アームに載せたウエハを、当該ウエハがカセットから取り出された際に制御装置によって予め指定された搬送の経路にしたがって第一の真空搬送室104に接続された真空処理室103aあるいは真空搬送中継室112に搬入する。
【0040】
真空搬送中継室112に搬送されたウエハは、その後、第二の真空搬送室111に備えられた第二の真空搬送ロボット109により、真空搬送中継室112から第二の真空搬送室111に搬出され、上記予め定められた搬送の経路にしたがって真空処理室103b、103cの何れかに搬入する。
【0041】
例えば、ウエハを真空処理室103aに搬送した後、真空処理室103aと接続されている第一の真空搬送室104との間を開閉するバルブ120cを閉じて真空処理室103aが封止される。その後、処理室103a内に処理用のガスが導入されてこの真空処理室内が処理に適した圧力に調節される。次いで真空処理室103aに電界または磁界を供給しこれにより処理用ガスを励起して処理室内にプラズマを形成してウエハを処理する。
【0042】
ウエハ処理が行われた後、前記制御装置は、真空搬送室104が連通している空間を開放閉塞可能なバルブ120b、120dが閉塞されている条件下で、真空処理室103aとこれが連結された真空搬送室104との間を開閉するバルブ120cを開放する。
【0043】
この際、制御装置は、真空処理室103aとこれが連結された真空搬送室104との間を区画するバルブ120cの開放前に、真空処理室103aと他の真空処理室103が連通しないよう、それぞれの真空処理室のウエハが搬送される通路上に配置されたゲートを開閉するバルブ120の閉塞の確認を指令して、これが確認された後に真空処理室103aを密封しているバルブ120cを開放する。
【0044】
例えば、ウエハの処理が終了したことが検出されると、真空処理室103b、103cと第二の真空搬送室111との間のバルブ120が閉じられて両者の間が気密に封止されていることを確認した後、真空処理室103aとそれに接続された第一の真空搬送室104との間を開閉するバルブ120cを開放し、真空搬送ロボット108は処理済みのウエハをその内部に搬出し、搬出したウエハを処理室内に搬入したときと逆の搬送経路でロック室105へ搬送する。
【0045】
ロック室105にウエハが搬送されると、ロック室105と第一の真空搬送室104とを連通する通路を開閉するバルブ120bを閉じ、ロック室105内の圧力を大気圧まで上昇させる。その後、筐体106の内側との間を区画するバルブ120aが開放されて、ロック室105の内部と筐体106の内部とが連通され、大気側搬送ロボット109は、ロック室105からウエハを搬出してカセットの元の位置に戻す。
【0046】
図2は、図1に示す第一の真空搬送室104および第二の真空搬送室の横断面を拡大して示す図である。真空搬送ロボット108はウエハを搬送するための第一アーム201および第二アーム202を備えている。図の例ではアームは2つであるが、3つあるいは4つであってももよい。また、図の例では、前記真空ロボットの、第一、第二アームの回転方向、高さ方向の動作は、同時且つ同方向であり、アームの伸縮動作に関してのみ独立に動作することが可能な構成となっている。
【0047】
アームの伸縮動作については、一方のアームが伸張した後、収縮動作を開始すると同時に、もう一方のアームが伸張動作を行うことが可能である。このような構成とすることにより、図2に示す真空搬送ロボット108、109は、何れかのアームに保持している未処理ウエハと、何れかの搬送先に保持されている処理済のウエハとを、旋回動作不要で交換可能となり、ウエハの搬送の効率と能力とを高めることができる。
【0048】
次に、各ゲートバルブ120の開閉パターンについて説明する。
【0049】
各真空処理室103と各真空搬送室104,111との間に配置されたゲートバルブ120は、同時に複数の真空処理室103が空間的に連通しないよう(排他的)に開閉制御される。例えば、第二の真空搬送室111に複数接続された真空処理室のうち一方の真空処理室103bからウエハの搬入出を行う場合、真空処理室103bと第二の真空搬送室111との間に配置されたゲートバルブ120fは開状態であるため、第二の真空搬送室111に接続された他の真空処理室103cのゲートバルブ120gは閉状態である。
【0050】
次に、真空搬送中継室112の両端に備えられたゲートバルブ120d,120eの開閉について説明する。
【0051】
真空搬送中継室112の両端に備えられたゲートバルブ120d,120eは、図示しない制御装置によりどちらか一方が閉じているか、あるいはどちらも開いている状態またはどちらも閉じている状態に制御される。
【0052】
例えば、第二の真空搬送室111に接続された何れかの真空処理室103のゲートバルブ120fまたは120gが開状態で、第一の真空搬送室104に接続された真空処理室103aにおいてウエハが搬入出されている場合には、真空搬送中継室112の両端に配置されたゲートバルブ120d,120eのどちらか一方あるいは両方が閉じられる。
【0053】
一方、第二の真空搬送室111に接続された何れかの真空処理室103bまたは103cのゲートバルブ120が開状態で、第一の真空搬送室104に接続された真空処理室103aのゲートバルブ120が閉じられている場合、真空搬送中継室112の両端に配置されたゲートバルブ120d、120eはどちらか一方が閉じられるか、あるいは両方とも開状態に制御される。
【0054】
図3は、図1に示す第一の真空搬送室104および第二の真空搬送室の縦断面を拡大して示す図である。図3では、第二の真空搬送室111に真空処理室103dが一つ接続されている。真空搬送中継室112内には未処理ウエハ125及び処理済ウエハ126が図示しないウエハ支持台上に上下にオフセットされた位置関係に保持されている。また、第一の真空搬送室104には真空処理室103aが一つ接続されている。
【0055】
以下、図3を用いて、各真空搬送室内における雰囲気ガスの排気経路の制御について説明する。この制御により、各真空処理室103および真空搬送中継室112内の雰囲気ガスが他の搬送室等内に流出することによるコンタミネーションを防止することができる。
【0056】
図3において、第一の真空処理室103a、第二の真空処理室103d、第一の真空搬送室104、第二の真空搬送室111、および真空搬送中継室112内の相対的な圧力関係を以下説明する。
【0057】
第一の真空処理室103aおよび第二の真空処理室103dの圧力は、第一の真空搬送室104、第二の真空搬送室111、および真空搬送中継室112よりも低い圧力である。なお、各真空処理室間には、圧力差があってもよい。
【0058】
第一の真空搬送室104および第二の真空搬送室111にはパージライン124が備えられているため、第一、第二の真空搬送室104,111は、真空処理室103、真空搬送中継室112よりも相対的に高い圧力に保持される。
【0059】
真空搬送中継室112は、真空処理室103の圧力よりも高く、第一の真空搬送室104および第二の真空搬送室111よりも低い圧力である。
【0060】
以上のような圧力関係を保持することにより、第一の真空処理室103aおよび第二の真空処理室103d内の処理ガスおよび真空搬送中継室112内に保持された処理済ウエハ126から発せられる汚染ガスは、各真空搬送室内に移動することなく、第一の真空処理室103a、第二の真空処理室103dあるいは真空搬送中継室112に備えた排気ラインにより排気される。
【0061】
次に、以上のようなゲートバルブ120の開閉制御により、第一の真空処理室103aおよび第二の真空処理室103d、および真空搬送中継室112内の雰囲気が他の搬送室内に流出することによるコンタミネーションを防止するための、各真空搬送室内における雰囲気の排気経路の制御について説明する。
【0062】
なお、この図の例においては、第一の真空搬送室104及び第二の真空搬送室111には排気ラインが備えられていない。そこで、ウエハが搬送される際、図示しない制御装置により以下のようなゲートバルブ開閉制御を行い、真空搬送室に導入されたパージガスを排気する。
【0063】
例えば、第二の真空処理室103dのゲートバルブ120fが閉じられた場合、真空搬送中継室112の両端に配置されたゲートバルブ120のうち、第二の真空搬送室111側に配置されたゲートバルブ120eを開状態に制御する。これにより、第二の真空搬送室111に備えられたパージライン124bから導入されるパージガスは真空搬送中継室112に備えられた排気ラインから排気される。
【0064】
一方、第二の真空処理室103dのゲートバルブ120fが開いており、第一の真空処理室103aのゲートバルブ120cが閉じている場合、真空搬送中継室112の両端に配置されたゲートバルブ120d,129eはどちらか一方、あるいは両方が閉じているか、両方が開いている状態に制御される。
【0065】
真空搬送中継室112の両端に配置されたゲートバルブ120のうち第二の真空搬送室111側に配置されたゲートバルブ120eが開状態に制御されている場合、第二の真空搬送室111、および第二の真空搬送室に備えられたパージライン124bから導入されるパージガスは第二の真空処理室103dに備えた排気ラインあるいは真空搬送中継室112に備えた排気ラインを通して排気される。
【0066】
真空搬送中継室112の両端に配置されたゲートバルブ120のうち第一の真空搬送室111側に配置されたゲートバルブ120dが閉状態に制御されている場合、第一の真空搬送室104に備えられたパージライン124から導入されるパージガスは第一の真空処理室103dに備えた排気ラインから排気される。
【0067】
このように、本実施形態においては、第一、第二の搬送室、各処理室、中継室およびロック室との間を連通する通路に配置されてこれらの間を気密に封止するバルブを備え、例えば、真空処理室103aとこれが連結された真空搬送室104との間を区画するバルブ120cを開放する際、真空処理室103aと他の真空処理室103が連通しないよう、それぞれの真空処理室のウエハが搬送される通路上に配置されたゲートを開閉するバルブ120b、120dの閉塞の確認した後に開放する。
【0068】
また、以上のようにバルブの開閉を制御することにより、第一の真空搬送室104および第二の真空搬送室111内に導入されるパージガスを排気するための経路を常に形成することができる。また、各真空搬送室内の圧力が真空処理室103あるいは真空搬送中継室112よりも高く保持される。このため、真空処理室103あるいは真空搬送中継室112内の雰囲気ガスが真空搬送室あるいはび真空処理室内に流出することによるコンタミネーションを防止することが可能となり、真空処理装置の設置面積あたりのウエハの処理能力を向上することが可能となる。
【0069】
なお、図3の例においては、第一の真空搬送室104及び第二の真空搬送室111に排気ラインを備えない例について説明したが、破線で示すように、ドライポンプ121の吸引口をそれぞれ第1および第2のバルブを介して第一および第二の真空搬送室に接続し、前記ドライポンプを介して排気することができる。このとき、第1のバルブはバルブ120dの開閉に連動して、また第2のバルブはバルブ120eの開閉に連動して開閉するとよい。
【符号の説明】
【0070】
101 大気側ブロック
102 真空側ブロック
103 真空処理装置
104 真空搬送室
105 ロック装置
106 筐体
107 カセット台
108 真空搬送ロボット
109 真空搬送ロボット
110 大気搬送ロボット
111 真空搬送室
112 真空搬送中継室
120 バルブ
121 ドライポンプ
122 バルブ
123 配管
124 パージライン
125 未処理ウエハ
126 処理済みウエハ
201 アーム
202 アーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気雰囲気中で被処理基板をロック室に搬送する大気搬送装置を収容した大気搬送室と、
第1の真空処理装置を備え、前記ロック室にある被処理基板を前記第1の処理装置に搬入し、処理の終了した被処理基板を搬出する第1の真空搬送装置を備えた第1の真空搬送室と、
第2の真空処理装置を備え、処理基板を前記第2の処理装置に搬入し、処理の終了した被処理基板を搬出する第2の真空搬送装置を収容した第2の真空搬送室と、
第1の真空搬送室と第2の真空搬送室を接続するとともに第1の真空搬送装置と第2の搬送装置間で被処理基板を受け渡しするための載置台を備えた搬送中継室と、
前記第1および第2の真空搬送室にガスを供給するとともに、前記処理室、第1および第2の真空搬送室、および搬送中継室のガスを排気するガス供給系を備え、
前記真空搬送室のガス圧は、真空処理室および搬送中継室よりも高く設定することを特徴とする真空処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の真空処理装置において、
第一の真空搬送装置が備える真空処理装置の数は第2の真空搬送装置が備える真空処理装置の数よりも小であることを特徴とする真空処理装置。
【請求項3】
大気雰囲気中で被処理基板をロック室に搬送する大気搬送装置を収容した大気搬送室と、
第1の真空処理装置を備え、前記ロック室にある被処理基板を前記第1の処理装置に搬入し、処理の終了した被処理基板を搬出する第1の真空搬送装置を備えた第1の真空搬送室と、
第2の真空処理装置を備え、処理基板を前記第2の処理装置に搬入し、処理の終了した被処理基板を搬出する第2の真空搬送装置を収容した第2の真空搬送室と、
第1の真空搬送室と第2の真空搬送室を接続するとともに第1の真空搬送装置と第2の搬送装置間で被処理基板を受け渡しするための載置台を備えた搬送中継室と、
前記処理室、第1および第2の真空搬送室、および搬送中継室のガスを排気するガス排気系と、装置全体を制御する制御装置を備えた真空処理装置の運転方法において、
前記制御装置は、前記真空搬送室のガス圧を、真空処理室および搬送中継室よりも高く設定するとともに、
真空処理室とこれが連結された他の真空搬送室との間を区画するバルブを開放する前に、前記真空処理室と他の真空処理室が連通しないように、それぞれの真空処理室のウエハが搬送される通路上に配置されたゲートを開閉するバルブの閉塞の確認を指令して、これが確認された後に前記真空処理室を密封しているバルブを開放することを特徴とする真空処理装置の運転方法。
【請求項4】
請求項3記載の真空処理装置において、
第一の真空搬送装置が備える真空処理装置の数は第2の真空搬送装置が備える真空処理装置の数よりも小であることを特徴とする真空処理装置の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−74496(P2012−74496A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217495(P2010−217495)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】