説明

研磨監視方法および研磨装置

【課題】研磨装置の運転を停止させることなく渦電流センサの較正を行うことができ、精度の高い膜厚監視を可能とする研磨監視方法および研磨装置を提供する。
【解決手段】基板の水研磨時、研磨パッド10のドレッシング時、または研磨パッド10の交換時において、渦電流センサ50の出力信号を補正信号値として取得し、補正信号値から補正基準値を減算して補正量を算出し、導電膜を有する他の基板を研磨しているときの渦電流センサ50の出力信号から補正量を減算して実測信号値を算出し、実測信号値の変化を監視することにより研磨中の導電膜の厚さの変化を監視する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の表面に形成された導電膜の厚さの変化を研磨中に監視する研磨監視方法および研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
研磨装置は、ウェハの表面に形成されたバリア膜や配線金属膜などの導電膜を研磨する装置として広く用いられている。研磨工程の終点検知や、研磨中における研磨条件の変更は、導電膜の厚さに基づいて決定されるため、研磨装置は、一般に、研磨中の導電膜の厚さを検出する膜厚検出器を備えている。膜厚検出器の代表的な装置として渦電流センサが挙げられる。渦電流センサは、コイルに高周波の交流電流を流して導電膜に渦電流を誘起させ、この渦電流の磁界に起因するインピーダンスの変化から導電膜の厚さを検出する。
【0003】
図1は、渦電流センサの原理を説明するための回路を示す図である。交流電源3から高周波の交流電流Iをコイル1に流すと、コイル1に誘起された磁力線が導電膜中を通過する。これにより、センサ側回路と導電膜側回路との間に相互インダクタンスが発生し、導電膜には渦電流Iが流れる。この渦電流Iは磁力線を発生し、これがセンサ側回路のインピーダンスを変化させる。渦電流センサは、このセンサ側回路のインピーダンスの変化から導電膜の膜厚を検出する。
【0004】
図1に示すセンサ側回路と導電膜側回路には、それぞれ次の式が成り立つ。
+LdI/dt+MdI/dt=E (1)
+LdI/dt+MdI/dt=0 (2)
ここで、Mは相互インダクタンスであり、Rはコイル1を含むセンサ側回路の等価抵抗であり、Lはコイル1を含むセンサ側回路の自己インダクタンスである。Rは渦電流損に相当する等価抵抗であり、Lは渦電流が流れる導電膜の自己インダクタンスである。
【0005】
ここで、I=Ajωt(正弦波)とおくと、上記式(1),(2)は次のように表される。
(R+jωL)I+jωMI=E (3)
(R+jωL)I+jωMI=0 (4)
これら式(3),(4)から、次の式が導かれる。
=E(R+jωL)/{(R+jωL)(R+jωL)+ω
=E/{(R+jωL)+ω/(R+jωL)} (5)
【0006】
したがって,センサ側回路のインピーダンスΦは、次の式で表される。
Φ=E/I
={R+ω/(R+ω
+jω{L−ω/(R+ω)} (6)
ここで、Φの実部(抵抗成分)、虚部(誘導リアクタンス成分)をそれぞれX,Yとおくと、上記式(6)は、次のようになる。
Φ=X+jωY (7)
【0007】
図2は、研磨時間とともに変化するX,Yを、XY座標系上にプロットすることで描かれるグラフを示す図である。図2の座標系はY軸を縦軸とし、X軸を横軸とした座標系である。点T∞の座標は、膜厚が無限大であるとき、すなわち、Rが0のときのX,Yの値であり、点T0の座標は、基板の導電率が無視できるものとすれば、膜厚が0であるとき、すなわち、Rが無限大のときのX,Yの値である。X,Yの値から位置決めされる点Tnは、膜厚が減少するに従って、円弧状の軌跡を描きながら点T0に向かって進む。なお、図2に示す記号kは結合係数であり、次の関係式が成り立つ。
M=k(L1/2 (8)
【0008】
図3は、図2のグラフ図形を反時計回りに90度回転させ、さらに平行移動させたグラフを示す図である。すなわち、座標X,Yで表される点を、XY座標上の原点Oを中心として反時計周りに回転させ、さらに、回転させた座標を移動させ、原点Oと座標X,Yとの距離が膜厚の減少とともに短くなるようなグラフを生成する。なお、図3に示すグラフに対して、さらに増幅などの処理が施されることもある。図3には、図2のグラフを反時計回りに90°回転させる場合を示したが、回転の角度は勿論90°に限らない。たとえば、モニタリングしたい膜厚の上限に対するY座標が膜厚0の点のY座標と等しくなるように、回転角度を調節することが行われる。
【0009】
図3に示すように、膜厚が減少するに従って、X,Yの値から位置決めされる点Tnは円弧状の軌跡を描きながら点T0に向かって進む。このとき、XY座標系の原点Oから点Tnまでの距離Z(=(X+Y1/2)は、点T∞の近傍を除いて、膜厚が減少するに従って小さくなる。したがって、距離Zを監視すれば、研磨中の膜厚変化や研磨終点が分かる。図4は縦軸に距離Zを、横軸に研磨時間をプロットしたグラフである。このグラフに示すように、研磨時間とともに距離Zは減少し、ある時点で一定となる。この距離Zの特異点を検出することにより、研磨終点に到達したことを判断することができる。
【0010】
ところが、渦電流センサの周囲温度、研磨パッドへの水染みなどの使用環境の変化や、渦電流センサそのものの経時変化などにより、渦電流センサの出力信号の値が図5の点線に示すようにドリフト(平行移動)することがある。このように渦電流センサの出力信号の値がドリフトすると、原点Oからの距離Zが変化することになり、図6の点線に示すように、グラフそのものが上方に略平行に移動する。この場合でも、特異点は同じように平行移動するので、研磨終点を検出することは可能である。しかしながら、予め決められた膜厚になった時点で研磨を止める、または研磨条件を変えようとする場合には、渦電流センサの出力信号の値と膜厚との対応関係がずれているので、検出すべき研磨時間に誤差が生じてしまう。
【0011】
このような渦電流センサの出力値のドリフトは、上述のような距離Zに基づく膜厚監視方法以外の他の方法にも影響を与える。例えば、特許文献1の図13には、中心点(固定点)を通る基準線と、渦電流センサの出力信号(X成分、Y成分)と中心点とを結ぶ線との角度(θ)の変化から研磨中の膜厚の変化を監視する方法が示されている。この方法は、研磨パッドの厚さの変化によらず、膜厚の変化を精度良く監視することができるという利点を有している。しかしながら、この方法においても、渦電流センサの出力値の経時的変化により角度θが変化し、渦電流センサの出力信号の値と膜厚との対応関係がずれてしまう。
【0012】
そこで、上述の問題を解決するためには、定期的に渦電流センサの較正を行うことが必要とされる。しかしながら、渦電流センサの較正を行うためには、研磨処理を中断しなければならず、結果として研磨装置の稼働率を低下させてしまう。このため、半導体量産工場においては、渦電流センサの較正を頻繁に行うことができないという問題があった。
【0013】
【特許文献1】特開2005−121616号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上述した従来の問題点に鑑みてなされたもので、研磨装置の稼働率を低下させることなく渦電流センサの較正を行うことができ、精度の高い膜厚監視を可能とする研磨監視方法および研磨装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した目的を達成するために、本発明の一態様は、研磨パッドの研磨面に摺接される導電膜の厚さの変化を、前記研磨パッドの下方に配置された渦電流センサを用いて監視する研磨監視方法であって、基板の水研磨時、前記研磨パッドのドレッシング時、または前記研磨パッドの交換時において、前記渦電流センサの出力信号を補正信号値として取得し、前記補正信号値から所定の補正基準値を減算して補正量を算出し、導電膜を有する他の基板を研磨しているときの前記渦電流センサの出力信号から前記補正量を減算して実測信号値を算出し、前記実測信号値の変化を監視することにより研磨中の導電膜の厚さの変化を監視することを特徴とする。
【0016】
本発明の好ましい態様は、前記補正基準値は、前記補正信号値を取得したときと同一の条件の下で予め取得された前記渦電流センサの出力信号であることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記渦電流センサの上方に前記研磨パッドが存在しない条件の下で、前記渦電流センサの出力信号を固有信号値として取得し、前記固有信号値を取得したときと同一の条件の下で、前記渦電流センサの出力信号を初期信号値として取得し、前記初期信号値から前記固有信号値を減算して初期ドリフト量を算出し、前記補正量を算出する前に、前記補正基準値から前記初期ドリフト量を減算することで該補正基準値を補正することを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記渦電流センサの出力信号は、該渦電流センサのコイルを含む電気回路のインピーダンスの抵抗成分および誘導リアクタンス成分であることを特徴とする。
本発明の好ましい態様は、前記渦電流センサの出力信号は、該渦電流センサのコイルを含む電気回路のインピーダンスの抵抗成分および誘導リアクタンス成分を座標と定義したときに、導電膜の厚さが小さくなるに従って座標系の原点と前記座標との距離が短くなるような位置に前記座標を回転および移動させた座標として表されることを特徴とする。
【0017】
本発明の一態様は、研磨面を有する研磨パッドと、前記研磨パッドの下方に配置される渦電流センサと、基板を前記研磨面に押圧するトップリングと、前記研磨面をドレッシングするドレッサーと、基板と前記研磨パッドとを相対移動させる機構と、前記研磨面に摺接される導電膜の厚さの変化を前記渦電流センサを用いて監視するモニタリング装置とを備え、前記モニタリング装置は、基板の水研磨時、前記研磨パッドのドレッシング時、または前記研磨パッドの交換時において、前記渦電流センサの出力信号を補正信号値として取得し、前記補正信号値から所定の補正基準値を減算して補正量を算出し、導電膜を有する他の基板を研磨しているときの前記渦電流センサの出力信号から前記補正量を減算して実測信号値を算出し、前記実測信号値の変化を監視することにより研磨中の導電膜の厚さの変化を監視するように動作することを特徴とする研磨装置である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、研磨処理に必然的に付随するドレッシング処理などの所定の処理の時間を利用して、渦電流センサの較正をソフトウエア上で行うことができる。したがって、研磨装置の稼働率を低下させることなく、精度の高い膜厚監視を継続的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図7は、本発明の一実施形態に係る研磨装置の全体構成を示す模式図である。図7に示すように、研磨装置は、研磨パッド10と、上面に研磨パッド10が貼設された研磨テーブル12と、研磨対象物であるウェハ(基板)を保持して研磨パッド10の上面に押圧するトップリング14と、ウェハの研磨が行われていないときに研磨パッド10の上面をドレッシング(コンディショニング)するドレッサー20とを備えている。研磨パッド10の上面は、研磨対象物であるウェハが摺接される研磨面を構成している。
【0020】
研磨テーブル12は、その下方に配置されるモータ(図示せず)に連結されており、矢印で示すようにその軸心周りに回転可能になっている。また、研磨テーブル12の上方には図示しない研磨液供給ノズルが設置されており、この研磨液供給ノズルから研磨パッド10上に研磨液が供給されるようになっている。
【0021】
トップリング14は、トップリングシャフト18に連結されており、このトップリングシャフト18を介してモータ及び昇降シリンダ(図示せず)に連結されている。これにより、トップリング14は昇降可能かつトップリングシャフト18周りに回転可能となっている。このトップリング14の下面には、研磨対象物であるウェハが真空吸着等によって保持される。
【0022】
上述の構成において、トップリング14の下面に保持されたウェハはトップリング14によって回転させられつつ、回転している研磨テーブル12上の研磨パッド10に押圧される。このとき、研磨液供給ノズルから研磨パッド10の研磨面に研磨液が供給され、ウェハの被研磨面(下面)と研磨パッド10の間に研磨液が存在した状態でウェハが研磨される。本実施形態においては、ウェハと研磨パッド10とを相対移動させる機構は、研磨テーブル12およびトップリング14によって構成される。
【0023】
図8は図7に示すトップリングの断面を示す模式図である。図8に示すように、トップリング14は、トップリングシャフト18の下端に自在継手部30を介して連結される略円盤状のトップリング本体31と、トップリング本体31の下部に配置されたリテーナリング32とを備えている。トップリング本体31は金属やセラミックス等の強度および剛性が高い材料から形成されている。また、リテーナリング32は、剛性の高い樹脂材またはセラミックス等から形成されている。なお、リテーナリング32をトップリング本体31と一体的に形成してもよい。
【0024】
トップリング本体31およびリテーナリング32の内側に形成された空間内には、ウェハWに当接する弾性パッド33と、弾性膜からなる環状の加圧シート34と、弾性パッド33を保持する概略円盤状のチャッキングプレート35とが収容されている。弾性パッド33の上周端部はチャッキングプレート35に保持され、弾性パッド33とチャッキングプレート35との間には、4つの圧力室(エアバッグ)P1,P2,P3,P4が設けられている。これらの圧力室P1,P2,P3,P4はそれぞれ流体路37,38,39,40を介して図示しない圧力調整装置に連通しており、この圧力調整装置により圧力室P1,P2,P3,P4に加圧空気等の加圧流体が供給され、あるいは真空引きがされるようになっている。中央の圧力室P1は円形であり、他の圧力室P2,P3,P4は環状である。これらの圧力室P1,P2,P3,P4は、同心上に配列されている。圧力調整装置は、コンプレッサーおよび真空ポンプなどから構成することができる。
【0025】
圧力室P1,P2,P3,P4の内部圧力は圧力調整装置により互いに独立して変化させることが可能であり、これにより、ウェハWの4つの領域、すなわち、中央部C1、内側中間部C2、外側中間部C3、および周縁部C4に対する押圧力を概ね独立に調整することができる(正確には、隣り合う領域の影響を多少なりとも受ける)。また、トップリング14の全体を昇降させることにより、リテーナリング32を所定の押圧力で研磨パッド10に押圧できるようになっている。チャッキングプレート35とトップリング本体31との間には圧力室P5が形成され、この圧力室P5には上記圧力調整装置から流体路41を介して加圧流体が供給され、あるいは真空引きがされるようになっている。これにより、チャッキングプレート35および弾性パッド33全体が上下方向に動くことができる。なお、ウェハWの周囲にはリテーナリング32が配置され、研磨中にウェハWがトップリング14から飛び出さないようになっている。
【0026】
図7に示すように、研磨テーブル12の内部には、ウェハWの表面に形成された導電膜の膜厚を検出する渦電流センサ50が埋設されている。この渦電流センサ50はモニタリング装置53に接続され、このモニタリング装置53はCMPコントローラ54に接続されている。渦電流センサ50の出力信号はモニタリング装置53に送られる。モニタリング装置53は、渦電流センサ50の出力信号に対して図3および図4を参照して説明した処理(図2に示すグラフの回転処理および平行移動)を施して、導電膜の厚さに応じて変化するモニタリング信号としての距離Z(図4参照)を算出する。そして、モニタリング装置53は、研磨中におけるモニタリング信号の変化(すなわち導電膜の厚さの変化)を領域C1,C2,C3,C4ごとに監視する。
【0027】
図9は、研磨テーブル12とウェハWとの位置関係を示す平面図である。符号Cは研磨テーブル12の回転中心である。図9に示すように、渦電流センサ50は、トップリング14に保持されたウェハWの中心Cを通過する位置に設置されている。すなわち、渦電流センサ50は、研磨テーブル12が1回転するごとに、ウェハWを概ね径方向に走査する。
【0028】
図10は、渦電流センサ50がウェハWを走査する軌跡を示したものである。上述したように、研磨テーブル12が回転すると、渦電流センサ50はウェハWの中心C(トップリングシャフト18の中心)を通る軌跡を描いてウェハWの表面を走査することになる。トップリング14の回転速度と研磨テーブル12の回転速度とは通常異なっているため、ウェハWの表面における渦電流センサ50の軌跡は、図10に示すように、研磨テーブル12の回転に伴って走査線SL,SL,SL,…と変化する。この場合でも、上述したように、渦電流センサ50は、ウェハWの中心Cを通る位置に配置されているので、渦電流センサ50が描く軌跡は、毎回ウェハWの中心Cを通過する。本実施形態では、渦電流センサ50による膜厚検出のタイミングを調整して、渦電流センサ50によってウェハWの中心Cの膜厚を毎回必ず監視するようにしている。
【0029】
また、ウェハWの研磨後の膜厚プロファイルは、ウェハWの中心Cを通り表面に垂直な軸に関して概ね対象になることが知られている。したがって、図10に示すように、m番目の走査線SL上のn番目の監視点をMPm−nと表わすとき、各走査線におけるn番目の監視点MP1−n,MP2−n,・・・,MPm−nに対するモニタリング信号を追跡することにより、n番目の監視点の半径位置におけるウェハWの膜厚の変化をモニタリングすることができる。
【0030】
図11は、図10に示すウェハW上の監視点のうちモニタリング装置53によりモニタリングを行う監視点を選択する一例を示す平面図である。図10に示す例では、各領域C1,C2,C3,C4の中心近傍と境界線近傍に対応する位置の監視点MPm−1,MPm−2,MPm−3,MPm−4,MPm−5,MPm−6,MPm−8,MPm−10,MPm−11,MPm−12,MPm−13,MPm−14,MPm−15のモニタリングを行っている。ここで、図10に示した例とは異なり、監視点MPm−iとMPm−(i+1)との間に別の監視点があってもよい。なお、監視点の選択は、図11に示す例に限られず、ウェハWの被研磨面上において制御上着目すべき点を監視点として選択することができ、また走査線上の全監視点を選択することも可能である。
【0031】
図10においては、簡略化のため、1回の走査における監視点の数を15としている。しかしながら、監視点の個数はこれに限られるものではなく、計測の周期および研磨テーブル12の回転速度に応じて種々の値にすることができる。例えば、ウェハWの端部から端部まで分布する300個の監視点を設定し、これら監視点を領域C1,C2,C3,C4に対応する4つの区間に区分けし、各区間に属する監視点での出力値の平均値または代表値を求め、その得られた平均値または代表値をその区間に対応する領域で得られた出力信号の値として用いることもできる。ノイズの影響を排除してデータを平滑化するために、近傍の監視点についての渦電流センサ50の出力信号を平均化したものを使用してもよい。
【0032】
モニタリング装置53は、選択した監視点における渦電流センサ50の出力信号に所定の演算処理を行い、モニタリング信号(本実施形態では距離Z)を生成する。モニタリング装置53は、上述のようにして選択された監視点について取得されたモニタリング信号を、予め圧力室P1,P2,P3,P4ごとに設定された基準信号と比較し、各モニタリング信号がそれぞれの基準信号に収束するための圧力室P1,P2,P3,P4の最適な圧力値を算出する。このように、モニタリング装置53は、モニタリング信号に基づいて各圧力室P1,P2,P3,P4の内部圧力を制御する制御部としても機能する。
【0033】
そして、算出された圧力値はモニタリング装置53からCMPコントローラ54に送信され、CMPコントローラ54は圧力調整装置を介して圧力室P1,P2,P3,P4の圧力を変更する。このようにして、ウェハWの各領域C1,C2,C3,C4に対する押圧力が調整される。なお、モニタリング装置53とCMPコントローラ54とを一体化して1つの制御装置としてもよい。
【0034】
図12は、渦電流センサを示す模式図である。この渦電流センサ50は、センサコイル102と、このセンサコイル102に接続される交流電源103と、センサコイル102を含む電気回路(図1のセンサ側回路)の抵抗成分X,誘導リアクタンス成分Yを検出する同期検波部105とを有している。ここで、膜厚検出対象の導電膜201は、例えばウェハW上に形成された銅、タングステン、タンタル、チタニウムなどの導電材料からなる薄膜である。センサコイル102と導電膜との距離Gは、例えば0.5〜5mmに設定される。
【0035】
図13は、図12に示す渦電流センサにおけるセンサコイルの構成例を示す。センサコイル102は、ボビン111に巻回された3層のコイル112,113,114により構成されている。中央のコイル112は、交流電源103に接続される励磁コイルである。この励磁コイル112は、交流電源103より供給される交流電流により磁界を形成し、ウェハ上の導電膜に渦電流を発生させる。励磁コイル112の上側(導電膜側)には、検出コイル113が配置され、導電膜を流れる渦電流により発生する磁束を検出する。検出コイル113と反対側にはバランスコイル114が配置されている。
【0036】
コイル112,113,114は、は同じターン数(1〜500)のコイルにより形成され、検出コイル113とバランスコイル114とは互いに逆相に接続されている。導電膜が検出コイル113の近傍に存在すると、導電膜中に形成される渦電流によって生じる磁束が検出コイル113とバランスコイル114とに鎖交する。このとき、検出コイル113のほうが導電膜に近い位置に配置されているので、両コイル113,114に生じる誘起電圧のバランスが崩れ、これにより導電膜の渦電流によって形成される鎖交磁束を検出することができる。
【0037】
図14は、渦電流センサの詳細な構成を示す模式図である。交流電源103は、水晶発振器からなる固定周波数の発振器を有しており、例えば、1〜50MHzの固定周波数の交流電流をセンサコイル102に供給する。交流電源103で形成された交流電流は、バンドパスフィルタ120を介してセンサコイル102に供給される。センサコイル102の端子から出力された信号は、ブリッジ回路121および高周波アンプ123を経て、cos同期検波回路125およびsin同期検波回路126からなる同期検波部105に送られる。そして、同期検波部105によりインピーダンスの抵抗成分と誘導リアクタンス成分とが取り出される。
【0038】
同期検波部105から出力された抵抗成分と誘導リアクタンス成分からは、ローパスフィルタ127,128により不要な高周波成分(例えば5KHz以上の高周波成分)が除去され、インピーダンスの抵抗成分としての信号Xと誘導リアクタンス成分としての信号Yとがそれぞれ出力される。モニタリング装置53は、渦電流センサ50の出力信号X,Yを、図3で説明した処理(回転処理、平行移動処理など)と同じ方法で処理し、モニタリング信号としての距離Z(図3および図4参照)を算出する。そして、この距離Zの変化に基づいて膜厚の変化を監視する。なお、渦電流センサの出力信号X,Yに対する回転処理や平行処理などの所定の処理は、渦電流センサ50にて電気的に行ってもよく、またはモニタリング装置53にて計算により行ってもよい。
【0039】
なお、図3に示す所定の処理を行わずに膜厚の変化を監視することもできる。この場合は、図2における点Toの近傍に基準点(固定点)を設け、この基準点と点Tnとの距離の変化から膜厚の変化を監視する。基準点は、研磨時間の経過と共に基準点と点Tnとの距離が短くなるような位置(座標)に設定される。
【0040】
渦電流センサ50の出力信号の値は、周囲温度、研磨パッドへの水染みなどの使用環境の変化や渦電流センサ50そのものの経時変化などにより、図5に示すようにドリフト(平行移動)することがある。そこで、本実施形態では、モニタリング装置53により、渦電流センサ50の出力信号を定期的に較正し、正確な膜厚変化を監視する。なお、以下に説明する較正処理は、渦電流センサ50の出力信号X,Yに図3に示す所定の処理(回転処理、平行移動処理など)をした後の出力信号について行われるものであるが、これら処理の前に較正処理をしてもよい。本明細書では、上記所定の処理がなされた信号と上記処理がなされていない信号を含めて渦電流センサ50の出力信号という。
【0041】
図15は、本実施形態に係る渦電流センサ50の出力信号を較正する処理フローを示すダイヤグラムであり、図16は図15に示される処理フローにより渦電流センサ50の出力信号が較正される様子を視覚的に示した図である。
【0042】
図15に示すように、ステップ1では、渦電流センサ50の初期較正(ハードウェア較正)を行う。具体的には、研磨テーブル12から研磨パッド10を取り外し、所定の厚みを有するスペーサを研磨テーブル12の上面に置く。導電膜が形成されていない(すなわち、膜厚ゼロの)ウェハをスペーサ上に載せ、この状態で渦電流センサ50の固有信号値Xc,Ycをモニタリング装置53にて取得する。そして、この固有信号値Xc,Ycが膜厚ゼロを示す所定の座標値になるように、渦電流センサ50の出力調整が行われる。
【0043】
さらに、この初期較正(ハードウェア較正)においては、所定の厚さの導電膜が形成されたウェハを用いて、渦電流センサ50の出力が別の所定の座標値になるように、渦電流センサ50の出力調整が行われる。これにより、図3に関連して説明した増幅の度合いや回転の角度が最終的に決定される。上述の導電膜が形成されていないウェハ、および導電膜が形成されたウェハは、較正用ウェハであるので、ウェハ自身の抵抗率や膜厚が厳密に管理されている。
【0044】
次に、ステップ2として、渦電流センサ50の初期信号値Xg,Ygがモニタリング装置53によって取得される。この初期信号値Xg,Ygの取得は、上記初期較正と同一の条件の下で行われ、かつ研磨処理が開始される前に行われる。すなわち、研磨テーブル12の上に同一または同等のスペーサが置かれ、さらにその上に同一または同等のウェハ(導電膜のないウェハ)が置かれ、この状態で渦電流センサ50から出力される初期信号値Xg,Ygが取得される。そして、ステップ3として、初期ドリフト量ΔXg,ΔYgが算出される。すなわち、初期信号値Xg,Ygから固有信号値Xc,Ycが減算されて、初期ドリフト量ΔXg(=Xg−Xc),ΔYg(=Yg−Yc)が求められる。
【0045】
ステップ1の初期較正(ハードウェア較正)が終了してから研磨が開始されるまである程度時間が経つと、すでに渦電流センサ50の出力信号が初期較正の直後に比べてずれていることがある。したがって、初期信号値Xg,Ygを取得する目的は、渦電流センサ50の出力信号が、渦電流センサ50の初期較正(ハードウェア較正)が行われた時点からどの程度変化しているかを求めることにある。初期較正が行われた直後に研磨が開始される場合は、この初期ドリフト量ΔXg,ΔYgは0と推定されるので、ステップ2とステップ3は行われない。ただし、研磨が開始される時間が初期較正の直後であるか否かにかかわらず、初期ドリフト量ΔXg,ΔYgを求めてもよい。
【0046】
ステップ3が終了すると、次に、ステップ4として、ドリフトを補正する基準値となる補正基準値Xb,Ybがモニタリング装置53にて取得される。この補正基準値Xb,Ybの取得は、上記初期較正および上記初期信号値取得工程と類似の条件下で行われる。類似の条件とは、上記初期較正および上記初期信号値取得工程とは完全同一の条件ではないことを意味する。より具体的には、補正基準値Xb,Ybは、渦電流センサ50の上方に導電膜が存在していないという条件下で取得される。例えば、補正基準値Xb,Ybの取得は、研磨パッド10の研磨面をドレッサー20によりドレッシングする間、または水を研磨面に供給しながらウェハを水研磨するときであって渦電流センサ50がウェハ上の導電膜に対向していない間、または水を研磨面に供給しながら導電膜のないウェハを水研磨する間、または交換のために研磨パッド10が研磨テーブル12から剥がされている間に行われる。なお、導電膜のないウェハの例としては、非導電膜のみを有するウェハが挙げられる。
【0047】
ドレッシング中に補正基準値Xb,Ybを取得する場合は、渦電流センサ50がドレッサー20から離れた位置にあるときの渦電流センサ50の出力値(すなわち補正基準値Xb,Yb)が取得される。非導電膜を有するウェハを水研磨する間に補正基準値Xb,Ybを取得する場合は、渦電流センサ50がウェハに対向する位置にあるときの渦電流センサ50の出力値が取得される。渦電流センサ50の出力値は、正確にはウェハ自身の抵抗率(いわゆる基板抵抗)によっても変化するため、ウェハの抵抗率が一定範囲となるように管理される。なお、非導電膜を有するウェハの代わりに、膜が全く形成されていないシリコン基板を使用することも可能である。
【0048】
導電膜が形成されているウェハを水研磨する間に補正基準値Xb,Ybを取得する場合は、渦電流センサ50がウェハから離れた位置にあるときの渦電流センサ50の出力値が取得される。研磨パッド10の交換時に補正基準値Xb,Ybを取得する場合は、研磨テーブル12上には何も存在しない状態で渦電流センサ50の出力値が取得される。ただし、研磨パッド10の交換時に補正基準値Xb,Ybを取得するのは、研磨パッド10への水染みが少なく、渦電流センサ50の出力信号への影響が無視できる場合に限られる。
【0049】
非導電膜を有するウェハの水研磨を含む処理は、クオリティコントロール(QC)のために、定期的に行われるものである。上述したドレッシング、水研磨、研磨パッド交換は、いずれも研磨装置に必然的に付随するプロセスであり、本実施形態の較正は、これらのプロセスを妨げることなく、これらのプロセスのいずれか1つが行われている間に行われる。したがって、渦電流センサ50の出力信号を較正するための時間を設けることは不要であり、全体のスループットを下げることがない。いずれのプロセスにおいても、渦電流センサ50に対向する導電膜が存在しないときに(すなわち渦電流センサ50の有効計測範囲に導電膜が存在しないときに)渦電流センサ50の出力信号が取得されるので、図1に示すRは無限大に近くなり、導電膜の膜厚が0となったときに類似する条件下で補正基準値が取得される。
【0050】
次に、ステップ5として、補正基準値Xb,Ybから初期ドリフト量ΔXg,ΔYgが減算されて、補正基準値が補正される。このステップにより補正された補正基準値Xo(=Xb−ΔXg),Yo(=Yb−ΔYg)が求められる。補正基準値Xb,Ybの取得(ステップ4)と補正後の補正基準値Xo,Yoの算出(ステップ5)は、研磨処理の前に1回だけ行われる。なお、初期較正直後に補正基準値を求めることにすれば、ステップ1の固有信号値の取得、ステップ2〜3およびステップ5は省略することもできる。この場合は、補正基準値としてXb,Ybがその後に続く処理ステップに使用される。
【0051】
ステップ2からステップ5までの処理は、渦電流センサ50の出力信号を初期較正時の状態に補正するとの考え方によるものである。しかしながら、補正された出力信号が初期較正時の出力信号と同等である必要がない場合、補正基準値Xb,Ybを所定の値、例えば、上述した固有信号値の調整目標値Xc’,Yc’とおき、さらにXo=Xc’,Yo=Yc’とおくことにすれば、ステップ1の固有信号値の取得、およびステップ2〜5を省略することができ、簡便である。この場合、後述の補正信号値Xa,Yaを取得する条件に依存して、補正量ΔXa,ΔYaが異なる。したがって、前述の方法では、それぞれ別個に補正基準値を取得しておけばドレッシング時、研磨パッド貼り替え時など取得条件の異なる補正信号値、補正量を混在させて使うことが可能であるのに対し、この方法では、取得条件が異なる補正信号値を混在させて使うことはできない。
【0052】
その後、ステップ6として、補正信号値Xa,Yaがモニタリング装置53によって取得される。この補正信号値Xa,Yaの取得は、補正基準値Xb,Ybの取得と同一の条件下で行われる。例えば、補正基準値Xb,Ybの取得が、ドレッシング液を供給しながらドレッサー20で研磨面をドレッシングしている間に取得された場合には、補正信号値Xa,Yaも、同様に同一のドレッシング液を供給しながらドレッサー20で研磨面をドレッシングしている間に取得される。なお、補正信号値Xa,Yaの取得は、たとえば、ウェハ研磨前のドレッシング時に行ってもよいし、1枚目のウェハを研磨する前のパッド交換時に行ってもよい。
【0053】
そして、ステップ7として、補正信号値Xa,Yaから補正基準値Xo,Yoが減算され、補正量(すなわち、渦電流センサ50の出力信号のドリフト量)ΔXa(=Xa−Xo),ΔYa(=Ya−Yo)が求められる。この補正量ΔXa,ΔYaはモニタリング装置53に登録される。そして、次に続くウェハが研磨されている間の渦電流センサ50の出力信号Xm,Ymから補正量ΔXa,ΔYaが減算され、補正された出力信号(すなわち実測信号値)Xp(=Xm−ΔXa),Yp(=Ym−ΔYa)が求められる。なお、登録される補正量は、ステップ3の初期ドリフト量算出後に、ΔXa=ΔXg、ΔYa=ΔYgと初期設定しておく。このようにすれば、ステップ7により最初に補正量を算出する前であっても、初期ドリフト量算出後に長時間経過していない限り、出力信号の補正を適正に行える。モニタリング装置53は、この補正された出力信号Xp,Ypから図4に示すように、XY座標系の原点Oと座標(Xp,Yp)で表される点との距離Z(=(Xp+Yp1/2)を算出する。そして、モニタリング装置53は、この距離Zの変化に基づいて研磨中の導電膜の厚さを監視する。
【0054】
研磨終点は、距離Zの値が一定になる特異点を検出することで検出することができる。また、予め、経験や試験により距離Zと膜厚との関係示すデータを取得しておけば、所望の膜厚となった時点で、研磨を終了させたり、研磨条件を変えることが可能となる。
【0055】
補正量ΔXa,ΔYaが算出されるごとに、モニタリング装置53により補正量は所定の閾値と比較される(ステップ8)。そして、算出された補正量が閾値以内であれば、現在登録されている補正量が新たに算出された補正量に更新される(ステップ9)。一方、算出された補正量が閾値を超えた場合には、予測できない事態が生じたとして算出された補正量は無効な値として破棄される。
【0056】
以後、ステップ6〜9は適当な間隔で繰り返され、登録されている補正量が適正な状態に維持される。ステップ6〜9は、例えば研磨パッド10への水染みの影響が大きい場合、ウェハ1枚ごと、または、1ロットごとに繰り返されてもよいし、水染みの影響が小さい場合には、研磨パッド10の交換ごとに繰り返されてもよい。
【0057】
図17(a)に示すように、渦電流センサ50の出力信号を示す円弧状のグラフは、ドリフトする以外にも、回転、拡大、または縮小することがある。このような場合は、ドリフト補正のみならず、回転補正及び/又はゲイン補正を行ってもよい。回転補正とゲイン補正をする場合は、まず、初期較正(ハードウェア較正)直後の渦電流センサの出力信号を取得して基準となるグラフを作成し(図17(a)の点線参照)、上述した較正処理によりドリフト量の補正をし(図17(b)参照)、補正対象のグラフが基準グラフに一致するように回転補正をし(図17(c)参照)、さらにゲイン補正を行う(図17(d)参照)。これにより、精度の高い膜厚監視を行うことができる。
【0058】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】渦電流センサの原理を説明するための等価回路を示す図である。
【図2】研磨時間とともに変化するX,Yを、XY座標系上にプロットすることで描かれるグラフを示す図である。
【図3】図2のグラフ図形を反時計回りに90度回転させ、さらに平行移動させたグラフを示す図である。
【図4】縦軸に距離Zを、横軸に研磨時間をプロットしたグラフを示す図である。
【図5】渦電流センサの出力信号の値がドリフト(平行移動)する様子を示す図である。
【図6】渦電流センサの出力信号の値がドリフトすることにより検出誤差が生じる様子を説明するための図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る研磨装置の全体構成を示す模式図である。
【図8】図7に示すトップリングの断面を示す模式図である。
【図9】研磨テーブルとウェハとの位置関係を示す平面図である。
【図10】渦電流センサがウェハを走査する軌跡を示した図である。
【図11】図10に示すウェハ上の監視点のうちモニタリング装置によりモニタリングを行う監視点を選択する一例を示す平面図である。
【図12】渦電流センサを示す模式図である。
【図13】図12に示す渦電流センサにおけるセンサコイルの構成例を示す。
【図14】渦電流センサの詳細な構成を示す模式図である。
【図15】渦電流センサの出力信号を較正する処理フローを示すダイヤグラムである。
【図16】図15に示される処理フローにより渦電流センサの出力信号が較正される様子を視覚的に示した図である。
【図17】図17(a)乃至図17(d)は、渦電流センサの出力信号に対して、ドリフト補正、回転補正、およびゲイン補正を行うプロセスを説明する図である。
【符号の説明】
【0060】
10 研磨パッド
12 研磨テーブル
14 トップリング
18 トップリングシャフト
20 ドレッサー
30 自由継手部
31 トップリング本体
32 リテーナリング
33 弾性パッド
34 加圧シート
35 チャッキングプレート
37〜41 流体路
50 センサ
53 モニタリング装置
54 CMPコントローラ
102 センサコイル
103 交流電源
105 同期検波部
111 ボビン
112 励磁コイル
113 検出コイル
114 バランスコイル
120 バンドパスフィルタ
121 ブリッジ回路
123 高周波アンプ
124 位相シフト回路
125 cos同期検波回路
126 sin同期検波回路
127,128 ローパスフィルタ
P1,P2,P3,P4,P5 圧力室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨パッドの研磨面に摺接される導電膜の厚さの変化を、前記研磨パッドの下方に配置された渦電流センサを用いて監視する研磨監視方法であって、
基板の水研磨時、前記研磨パッドのドレッシング時、または前記研磨パッドの交換時において、前記渦電流センサの出力信号を補正信号値として取得し、
前記補正信号値から所定の補正基準値を減算して補正量を算出し、
導電膜を有する他の基板を研磨しているときの前記渦電流センサの出力信号から前記補正量を減算して実測信号値を算出し、
前記実測信号値の変化を監視することにより研磨中の導電膜の厚さの変化を監視することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記補正基準値は、前記補正信号値を取得したときと同一の条件の下で予め取得された前記渦電流センサの出力信号であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記渦電流センサの上方に前記研磨パッドが存在しない条件の下で、前記渦電流センサの出力信号を固有信号値として取得し、
前記固有信号値を取得したときと同一の条件の下で、前記渦電流センサの出力信号を初期信号値として取得し、
前記初期信号値から前記固有信号値を減算して初期ドリフト量を算出し、
前記補正量を算出する前に、前記補正基準値から前記初期ドリフト量を減算することで該補正基準値を補正することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記渦電流センサの出力信号は、該渦電流センサのコイルを含む電気回路のインピーダンスの抵抗成分および誘導リアクタンス成分であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記渦電流センサの出力信号は、該渦電流センサのコイルを含む電気回路のインピーダンスの抵抗成分および誘導リアクタンス成分を座標と定義したときに、導電膜の厚さが小さくなるに従って座標系の原点と前記座標との距離が短くなるような位置に前記座標を回転および移動させた座標として表されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
研磨面を有する研磨パッドと、
前記研磨パッドの下方に配置される渦電流センサと、
基板を前記研磨面に押圧するトップリングと、
前記研磨面をドレッシングするドレッサーと、
基板と前記研磨パッドとを相対移動させる機構と、
前記研磨面に摺接される導電膜の厚さの変化を前記渦電流センサを用いて監視するモニタリング装置とを備え、
前記モニタリング装置は、
基板の水研磨時、前記研磨パッドのドレッシング時、または前記研磨パッドの交換時において、前記渦電流センサの出力信号を補正信号値として取得し、
前記補正信号値から所定の補正基準値を減算して補正量を算出し、
導電膜を有する他の基板を研磨しているときの前記渦電流センサの出力信号から前記補正量を減算して実測信号値を算出し、
前記実測信号値の変化を監視することにより研磨中の導電膜の厚さの変化を監視するように動作することを特徴とする研磨装置。
【請求項7】
前記補正基準値は、前記補正信号値を取得したときと同一の条件の下で予め取得された前記渦電流センサの出力信号であることを特徴とする請求項6に記載の研磨装置。
【請求項8】
前記モニタリング装置は、前記補正基準値の取得と前記補正信号値を、基板の水研磨時、前記研磨パッドのドレッシング時、または前記研磨パッドの交換時に取得するように構成されていることを特徴とする請求項6に記載の研磨装置。
【請求項9】
前記渦電流センサの出力信号は、該渦電流センサのコイルを含む電気回路のインピーダンスの抵抗成分および誘導リアクタンス成分であることを特徴とする請求項6に記載の研磨装置。
【請求項10】
前記渦電流センサの出力信号は、該渦電流センサのコイルを含む電気回路のインピーダンスの抵抗成分および誘導リアクタンス成分を座標と定義したときに、導電膜の厚さが小さくなるに従って座標系の原点と前記座標との距離が短くなるような位置に前記座標を回転および移動させた座標として表されることを特徴とする請求項6に記載の研磨装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−99842(P2009−99842A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−271226(P2007−271226)
【出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】