説明

研磨装置

【課題】被加工物を保持するチャックテーブルの温度分布を制御して被加工物の厚みを所望の厚みに形成することができる研磨装置を提供する。
【解決手段】被加工物を保持するチャックテーブルと、チャックテーブルに保持された被加工物を研磨する研磨パッドを備えた研磨手段とを具備する研磨装置であって、チャックテーブルは、被加工物を保持する保持面を有する保持テーブルと、保持テーブルを支持する支持部材とを備え、支持部材には中心部から外周に向けて渦巻状に形成された流体通路が設けられており、流体通路に温度制御流体を供給し保持テーブルの中心部から外周部における温度分布を制御する制御流体供給手段を具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエーハ等の被加工物を研磨する研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に配列されたストリートと呼ばれる分割予定ラインによって複数の領域が区画され、この区画された領域にIC、LSI等のデバイスを形成する。このように複数のデバイスが形成された半導体ウエーハをストリートに沿って分割することにより、個々のデバイスを形成する。デバイスの小型化および軽量化を図るために、通常、半導体ウエーハをストリートに沿って切断して個々のデバイスに分割するのに先立って、半導体ウエーハの裏面を研削して所定の厚さに形成している。半導体ウエーハの裏面の研削は、通常、ダイヤモンド砥粒をレジンボンドの如き適宜のボンドで固着して形成した研削ホイールを、高速回転せしめながら半導体ウエーハの裏面に押圧せしめることによって遂行されている。このような研削方式によって半導体ウエーハの裏面を研削すると、半導体ウエーハの裏面に所謂加工歪が生成され、これによって個々に分割されたデバイスの抗折強度が低下するという問題がある。
【0003】
上述した問題を解消するために、研削加工された半導体ウエーハの裏面を砥粒が混入された研磨パッドによって研磨することにより研削歪を除去する研磨装置が下記特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−243345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
而して、ウエーハの裏面を研磨すると外周エッジが加工されやすいため、中央部に比べて外周部の研磨量が多くなり、外周部が中央部より薄くなって厚み精度が悪化するという問題がある。
一方、被加工物の用途によって中央部を外周部より薄くして中凹状に形成したい場合もある。
【0006】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術課題は、被加工物を保持するチャックテーブルの温度分布を制御して被加工物の厚みを所望の厚みに形成することができる研磨装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を研磨する研磨パッドを備えた研磨手段と、を具備する研磨装置において、
該チャックテーブルは、被加工物を保持する保持面を有する保持テーブルと、該保持テーブルを支持する支持部材とを備え、該支持部材には中心部から外周に向けて渦巻状に形成された流体通路が設けられており、
該流体通路に温度制御流体を供給し該保持テーブルの中心部から外周部における温度分布を制御する制御流体供給手段を具備している、
ことを特徴とする研磨装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明による研磨装置においては、被加工物を保持するチャックテーブルは被加工物を保持する保持面を有する保持テーブルと、該保持テーブルを支持する支持部材とを備え、支持部材には中心部から外周に向けて渦巻状に形成された流体通路が設けられており、流体通路に温度制御流体を供給し保持テーブルの中心部から外周部における温度分布を制御する制御流体供給手段を具備しているので、被加工物を保持する保持テーブルの中心部から外周部における温度分布を被加工物の用途に応じて制御することができる。従って、保持テーブルに保持された被加工物における研磨量を多くしたい領域の温度を高くすることにより、被加工物の厚みを制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明によって構成されたチャックテーブル機構を装備した研磨装置の一実施形態を示す斜視図。
【図2】図1に示す研磨装置に装備される研磨ユニットを構成する研磨工具を示す斜視図。
【図3】図2に示す研磨工具をその下面側から見た状態を示す斜視図。
【図4】図1に示す研磨装置に装備されるチャックテーブル機構およびチャックテーブル移動手段を示す斜視図。
【図5】図4に示すチャックテーブル機構を構成するチャックテーブルおよび制御流体供給手段の要部を破断して示す説明図。
【図6】図5におけるA―A線断面図。
【図7】図5に示す制御流体供給手段の第1の形態を示す説明図。
【図8】図5に示す制御流体供給手段の第2の形態を示す説明図。
【図9】図1に示す研磨装置によって実施する研磨工程の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に従って構成された研磨装置の好適な実施形態について、添付図面を参照して更に詳細に説明する。
【0011】
図1には本発明に従って構成された研磨装置の斜視図が示されている。
図1に示す研磨装置1は、全体を番号2で示す装置ハウジングを具備している。装置ハウジング2は、細長く延在する直方体形状の主部21と、該主部21の後端部(図1において右上端)に設けられ上下方向に配設された直立壁22とを有している。直立壁22の前面には、上下方向に延びる一対の案内レール221、221が設けられている。この一対の案内レール221、221に研磨手段としての研磨ユニット3が上下方向に移動可能に装着されている。
【0012】
研磨ユニット3は、移動基台31と該移動基台31に装着されたスピンドルユニット32を具備している。移動基台31は、後面両側に上下方向に延びる一対の脚部311、311が設けられており、この一対の脚部311、311に上記一対の案内レール221、221と摺動可能に係合する被案内溝312、312が形成されている。このように直立壁22に設けられた一対の案内レール221、221に摺動可能に装着された移動基台31の前面には前方に突出した支持部313が設けられている。この支持部313にスピンドルユニット32が取り付けられる。
【0013】
スピンドルユニット32は、支持部313に装着されたスピンドルハウジング321と、該スピンドルハウジング321に回転自在に配設された回転スピンドル322と、該回転スピンドル322を回転駆動するための回転駆動手段としてのサーボモータ323とを具備している。回転スピンドル322の下端部はスピンドルハウジング321の下端を越えて下方に突出せしめられており、その下端には円板形状の工具装着部材324が設けられている。なお、工具装着部材324には、周方向に間隔をおいて複数のボルト挿通孔(図示していない)が形成されている。この工具装着部材324の下面に研磨工具325が装着される。研磨工具325は、図2および図3に図示すように円形状の支持基板326
と円形状の研磨パッド327とから構成されている。支持基板326はアルミ合金によって形成されており、周方向に間隔をおいてその上面から下方に延びる複数の盲ねじ穴326aが形成されている。支持基板326の下面は円形状の支持面を構成しており、研磨パッド327が両面接着テープによって装着されている。
【0014】
上記支持基板326の下面に装着される研磨パッド327は、図示の実施形態においてはフェルトにダイヤモンド砥粒を混入して形成されている。この研磨パッド327の下面(研磨面)には格子状に形成された複数の溝327aが設けられている。この複数の溝327aは、図示の実施形態においては幅が4mm、深さが3mmで20mmの間隔で形成されている。このように構成された研磨工具325は、上記回転スピンドル322の下端に固定されている工具装着部材324の下面に位置付け、工具装着部材324に形成されている貫通孔を通して研磨工具325の支持基板326に形成されている盲ねじ孔326aに締結ボルト328(図1参照)を螺着することによって、工具装着部材324に装着される。
【0015】
図1に戻って説明を続けると、図示の実施形態における研磨装置1は、上記研磨ユニット3を上記一対の案内レール221、221に沿って上下方向(後述するチャックテーブルの保持面と垂直な方向)に移動せしめる研磨送り手段4を備えている。この研磨送り手段4は、直立壁22の前側に配設され上下方向に延びる雄ねじロッド41を具備している。この雄ねじロッド41は、その上端部および下端部が直立壁22に取り付けられた軸受部材42および43によって回転自在に支持されている。上側の軸受部材42には雄ねじロッド41を回転駆動するための駆動源としてのパルスモータ44が配設されており、このパルスモータ44の出力軸が雄ねじロッド41に伝動連結されている。移動基台31の後面にはその幅方向中央部から後方に突出する連結部(図示していない)も形成されており、この連結部には上下方向に延びる貫通雌ねじ穴が形成されており、この雌ねじ穴に上記雄ねじロッド41が螺合せしめられている。従って、パルスモータ44が正転すると移動基台31即ち研磨ユニット3が下降即ち前進せしめられ、パルスモータ44が逆転すると移動基台31即ち研磨ユニット3が上昇即ち後退せしめられる。
【0016】
図1および図4を参照して説明を続けると、ハウジング2の主部21にはチャックテーブル機構5が配設されている。チャックテーブル機構5は、移動基台51と該移動基台51に配設されたチャックテーブル6とを含んでいる。移動基台51は、上記ハウジング2の主部21上に前後方向(直立壁22の前面に垂直な方向)である矢印23aおよび23bで示す方向に延在する一対の案内レール23、23上に摺動自在に載置されており、後述するチャックテーブル機構移動手段56によって図1に示す被加工物搬入・搬出域24(図4において実線で示す位置)と上記スピンドルユニット32を構成する研磨工具325の研磨パッド327と対向する研磨域25(図4において2点鎖線で示す位置)との間で移動せしめられる。
【0017】
上記チャックテーブル6は、上記移動基台51に回転可能に支持されており、その下端に装着された回転軸(図示せず)に連結された回転駆動手段としてのサーボモータ53によって回転せしめられる。なお、図示のチャックテーブル機構5はチャックテーブル6を挿通する穴を有し上記移動基台51等を覆うカバー部材54を備えており、このカバー部材54は移動基台51とともに移動可能に構成されている。以下、チャックテーブル6について、図5および図6を参照して説明する。
【0018】
図示の実施形態におけるチャックテーブル6は、図5に示すように被加工物を保持する保持面を有する保持テーブル61と、該保持テーブル61を支持する支持部材62とを備え、該支持部材62が支持基台63上に支持されている。保持テーブル61は、枠体611と、該枠体611の上面に配設された吸着チャック612とからなっている。枠体611は、炭化珪素(SiC)によって形成され、上面に円形状の嵌合凹部611aが設けられており、該嵌合凹部611aの下側には中央部に円形の吸引室611bと環状の吸引室611cおよび611dが設けられている。なお、吸引室611bと環状の吸引室611cは仕切壁611eに設けられた連通溝611fによって連通されており、環状の吸引室611cと環状の吸引室611dは仕切壁611gに設けられた連通溝611hによって連通されている。このように形成された保持テーブル61の枠体611は、外周部に複数のボルト挿通穴611jが設けられており、この複数のボルト挿通穴611jを挿通し配設された締結ボルト610によって支持部材62に固定される。上記吸着チャック612は、炭化珪素(SiC)を主成分とする多孔質セラミッックスの如き適宜の多孔性材料によって円板状に形成されており、枠体611の嵌合凹部611aに嵌合する。このようにして枠体611の嵌合凹部611aに嵌合された吸着チャック612は、上面が被加工物を保持する保持面として機能する。
【0019】
チャックテーブル6を構成する支持部材62は、図5に示すように上記保持テーブル61の枠体611の外径と同一の外径を有する円形状に形成されている、下面に支持基台63の上面に形成された嵌合凹部631に嵌合する嵌合凸部621が設けられている。このように形成された支持部材62の上面には、上記保持テーブル61の中心部から外周部における温度分布を制御するための温度制御流体が流通する流体通路622が設けられている。この流体通路622は、図6に示すように中央部から外周に向けて渦巻状に形成され、中央流通口622aと外周流通口622bを備えている。また、支持部材62には、図5に示すように流体通路622の中央流通口622aに連通する第1の連通路623と、流体通路622の外周流通口622bに連通する第2の連通路624が設けられている。このように構成された支持部材62の中心部には、上記保持テーブル61の枠体611に形成された円形の吸引室611bに連通する吸引通路625が設けられている。この吸引通路625は、支持基台63に設けられた通路632を介して図示しない吸引手段に接続されている。従って、図示しない吸引手段が作動すると、通路632、吸引通路625、円形の吸引室611b、連通溝611f、環状の吸引室611c、連通溝611h、環状の吸引室611dを介して吸着チャック612に負圧が作用し、吸着チャック612上に載置された被加工物を吸引保持する。
【0020】
以上のように構成されたチャックテーブル6の支持部材62に設けられた第1の連通路623および第2の連通路624は、支持基台63に設けられた通路633および634と、該通路633および634に接続された連通管635および636を介して制御流体供給手段7に接続されている。
【0021】
制御流体供給手段7は、温度制御流体の温度を調整する温度調整手段71と、該温度調整手段71によって温度が調整された温度制御流体を送給する可変容量形ポンプ72と、該可変容量形ポンプ72を回転駆動するモータ73と、可変容量形ポンプ72によって送給された温度制御流体を送出する温度制御流体送出管74と、上記チャックテーブル6の支持部材62に設けられた流体通路622を循環した温度制御流体を温度調整手段71に戻す温度制御流体戻し管75と、温度制御流体送出管74および温度制御流体戻し管75と上記連通管635および636との間に配設された電磁切り替え弁76と、上記温度調整手段71と可変容量形ポンプ72を回転駆動するモータ73および電磁切り替え弁76を制御する制御手段77を具備している。この電磁切り替え弁76は、除勢(OFF)されている図5に示す状態においては温度制御流体送出管74および温度制御流体戻し管75と連通管635および636との連通を遮断している。また、電磁切り替え弁76は、一方の電磁コイル761を附勢(ON)すると、図7に示すように温度制御流体送出管74と連通管636を連通するとともに連通管635と温度制御流体戻し管75とを連通する(第1の形態)。一方、電磁切り替え弁76は、他方の電磁コイル762を附勢(ON)すると、図8に示すように温度制御流体送出管74と連通管635を連通するとともに連通管636と温度制御流体戻し管75とを連通する(第2の形態)。
【0022】
図7に示す第1の形態においては、可変容量形ポンプ72によって温度制御流体送出管74に送出された温度制御流体は、連通管636、支持基台63に設けられた通路634、チャックテーブル6を構成する支持部材62に設けられた第2の連通路624、流体通路622の外周流通口622b、流体通路622、流体通路622の中央流通口622a、チャックテーブル6を構成する支持部材62に設けられた第1の連通路623、支持基台63に設けられた通路633、連通管635、温度制御流体戻し管75、温度調整手段71を介して循環せしめられる。また、図8に示す第2の形態においては、可変容量形ポンプ72によって温度制御流体送出管74に送出された温度制御流体は、連通管635、支持基台63に設けられた通路633、チャックテーブル6を構成する支持部材62に設けられた第1の連通路623、流体通路622の中央流通口622a、流体通路622、流体通路622の外周流通口622b、チャックテーブル6を構成する支持部材62に設けられた第2の連通路624、支持基台63に設けられた通路634、連通管636、温度制御流体戻し管75、温度調整手段71を介して循環せしめられる。このようにして温度制御流体が循環する結果、流体通路622が設けられている支持部材62および流体通路622を流れる温度制御流体が接触する保持テーブル61の枠体611および吸着チャック612の中心部から外周部における温度分布を制御される。
【0023】
図4に戻って説明を続けると、図示の実施形態における研磨装置は、上記チャックテーブル機構5を一対の案内レール23に沿ってチャックテーブル6の上面である保持面と平行に矢印23aおよび23bで示す方向に移動せしめるチャックテーブル機構移動手段56を具備している。チャックテーブル機構移動手段56は、一対の案内レール23間に配設され案内レール23と平行に延びる雄ねじロッド561と、該雄ねじロッド561を回転駆動するサーボモータ562を具備している。雄ねじロッド561は、上記支持基台51に設けられたねじ穴511と螺合して、その先端部が一対の案内レール23、23を連結して取り付けられた軸受部材563によって回転自在に支持されている。サーボモータ562は、その駆動軸が雄ねじロッド561の基端と伝動連結されている。従って、サーボモータ562が正転すると移動基台51即ちチャックテーブル機構5が矢印23aで示す方向に移動し、サーボモータ562が逆転すると移動基台51即ちチャックテーブル機構5が矢印23bで示す方向に移動せしめられる。矢印23aおよび23bで示す方向に移動せしめられるチャックテーブル機構5は、図4において実線で示す被加工物搬入・搬出域と2点鎖線で示す研磨域に選択的に位置付けられる。
【0024】
図1を参照して説明を続けると、上記チャックテーブル機構5を構成する移動基台51の移動方向両側には、図1に示すように横断面形状が逆チャンネル形状であって、上記一対の案内レール23、23や雄ねじロッド561およびサーボモータ562等を覆っている蛇腹手段8および9が付設されている。蛇腹手段8および9はキャンパス布の如き適宜の材料から形成することができる。蛇腹手段8の前端はハウジング2を構成する主部21の後半部の前面壁に固定され、後端はチャックテーブル機構5の移動基台51の前端面に固定されている。蛇腹手段9の前端はチャックテーブル機構5の移動基台51の後端面に固定され、後端は装置ハウジング2の直立壁22の前面に固定されている。チャックテーブル機構5が矢印23aで示す方向に移動せしめられる際には蛇腹手段8が伸張されて蛇腹手段9が収縮され、チャックテーブル機構5が矢印23bで示す方向に移動せしめられる際には蛇腹手段8が収縮されて蛇腹手段9が伸張せしめられる。
【0025】
図1に基づいて説明を続けると、装置ハウジング2の主部21における前半部上には、第1のカセット11と、第2のカセット12と、被加工物仮載置手段13と、洗浄手段14と、被加工物搬送手段15と、被加工物搬入手段16および被加工物搬出手段17が配設されている。第1のカセット11は研磨加工前の被加工物を収納し、装置ハウジング2の主部21におけるカセット搬入域に載置される。第1のカセット11に収容される被加工物は、例えば半導体ウエーハWであり表面に保護テープTを貼着した状態で裏面を上にして収容される。第2のカセット12は装置ハウジング2の主部21におけるカセット搬出域に載置され、研磨加工後の半導体ウエーハWを収納する。被加工物仮載置手段13は第1のカセット11と被加工物搬入・搬出域24との間に配設され、研磨加工前の半導体ウエーハWを仮載置する。洗浄手段14は被加工物搬入・搬出域24と第2のカセット12との間に配設され、研磨加工後の半導体ウエーハWを洗浄する。被加工物搬送手段15は第1のカセット11と第2のカセット12との間に配設され、第1のカセット11内に収納された半導体ウエーハWを被加工物仮載置手段13に搬出するとともに洗浄手段14で洗浄された半導体ウエーハWを第2のカセット12に搬送する。被加工物搬入手段16は被加工物仮載置手段13と被加工物搬入・搬出域24との間に配設され、被加工物仮載置手段13上に載置された研磨加工前の半導体ウエーハWを被加工物搬入・搬出域24に位置付けられたチャックテーブル機構5のチャックテーブル6上に搬送する。被加工物搬出手段17は被加工物搬入・搬出域24と洗浄手段14との間に配設され、被加工物搬入・搬出域24に位置付けられたチャックテーブル6上に載置されている研磨加工後の半導体ウエーハWを洗浄手段14に搬送する。また、図示の実施形態における研磨装置は、装置ハウジング2の主部21における中央部に上記チャックテーブル6の保持面を洗浄する洗浄水噴射ノズル18を備えている。この洗浄水噴射ノズル18は、チャックテーブル機構5が被加工物搬入・搬出域24に位置付けられた状態において、チャックテーブル6に向けて洗浄水を噴出する。
【0026】
被加工物としての半導体ウエーハWを収容した第1のカセット11は、装置ハウジング2の主部21における所定のカセット搬入域に載置される。そして、カセット搬入域に載置された第1のカセット11に収容されていた研磨加工前の半導体ウエーハWが全て搬出されると、空のカセット11に代えて複数個の半導体ウエーハWを収容した新しいカセット11が手動でカセット搬入域に載置される。一方、装置ハウジング2の主部21における所定のカセット搬出域に載置された第2のカセット12に所定数の研磨加工後の半導体ウエーハWが搬入されると、第2のカセット12が手動で搬出され、新しい空の第2のカセット12が載置される。
【0027】
図示の実施形態における研磨装置1は以上のように構成されており、以下その作用について説明する。
第1のカセット11に収容された研磨加工前の被加工物としての半導体ウエーハWは被加工物搬送手段15の上下動作および進退動作により搬送され、被加工物仮載置手段13に載置される。被加工物仮載置手段13に載置された半導体ウエーハWは、ここで中心合わせが行われた後に被加工物搬入手段16の旋回動作によって被加工物搬入・搬出域24に位置せしめられているチャックテーブル機構5のチャックテーブル6の吸着チャック612上に載置される。チャックテーブル6の吸着チャック612上に半導体ウエーハWが載置されたならば、図示しない吸引手段を作動することにより上述したように通路632、吸引通路625、円形の吸引室611b、連通溝611f、環状の吸引室611c、連通溝611h、環状の吸引室611dを介して吸着チャック612に負圧が作用し、吸着チャック612上に載置された半導体ウエーハWを吸引保持する(ウエーハ保持工程)。
【0028】
チャックテーブル6の吸着チャック612上に半導体ウエーハWを吸引保持したならば、チャックテーブル機構移動手段56を作動してチャックテーブル6を矢印23aで示す方向に移動し、チャックテーブル6を研磨域25に位置付ける。このようにチャックテーブル6が研磨域25に位置付けられたならば、半導体ウエーハWを保持したチャックテーブル6を図9において6aで示す方向に例えば200〜500rpmの回転速度で回転し、上記サーボモータ323を駆動して研磨工具325を図9において325aで示す方向に例えば200〜500rpmで回転するとともに、上記研磨送り手段4のパルスモータ44を正転駆動して研磨ユニット3を下降即ち前進せしめ、研磨工具325の研磨パッド327をチャックテーブル6上の半導体ウエーハWの裏面(上面)に所定の研磨圧力で押圧する。この結果、半導体ウエーハWの裏面(上面)は研磨パッド327によって乾式研磨される(研磨工程)。
【0029】
このように半導体ウエーハWの裏面を研磨すると、外周エッジが加工されやすいため、中央部に比べて外周部の研磨量が多くなり、外周部が中央部より薄くなる。そこで、半導体ウエーハWの厚みを均一にしたい場合には、制御流体供給手段7の制御手段77は、電磁切り替え弁76の一方の電磁コイル761を附勢(ON)して図7に示す第1の形態にし、モータ73の回転数を制御して可変容量形ポンプ72の吐出量を制御するとともに、温度調整手段71に制御信号を出力する。この結果、例えば20度に制御された温度制御流体が可変容量形ポンプ72によって温度制御流体送出管74に送出され、連通管636、支持基台63に設けられた通路634、チャックテーブル6を構成する支持部材62に設けられた第2の連通路624、流体通路622の外周流通口622b、流体通路622、流体通路622の中央流通口622a、第1の連通路623、支持基台63に設けられた通路633、連通管635、温度制御流体戻し管75、温度調整手段71を介して循環せしめられる。このように渦巻状に形成された流体通路622の外周流通口622bから中央流通口622aに向けて流れる温度制御流体は、保持テーブル61の枠体611および吸着チャック612における外周部を冷却しつつ上記研磨作用による摩擦熱を吸収して中央流通口622aに向かう。流体通路622の中央部に達した温度制御流体は上記研磨作用による摩擦熱を吸収して温度が上昇しているため、保持テーブル61を構成する枠体611および吸着チャック612の中央部が温められる。従って、吸着チャック612上に保持された被加工物である半導体ウエーハWは、外周部から中心に向けて温度が高くなる温度分布となる。研磨工程においては、被加工物の温度が高温側が加工レートが上がる傾向にある。また、保持テーブル61を構成する枠体611および吸着チャック612の高温側が膨張し、研磨工程において研磨工具325の研磨パッド327によって押圧されている被加工物の面圧が高まり、加工レートが上がる。このような理由から吸着チャック612上に保持された被加工物である半導体ウエーハWは、中央部が温度上昇により加工レートが上がるため、中央部の研磨量と加工されやすい外周部の研磨量が同等となり、均一な厚みに研磨される。
【0030】
なお、保持テーブル61を構成する枠体611および吸着チャック612上に保持された被加工物の中央部を外周部より薄くして中凹状に形成したい場合には、上記温度調整手段71および可変容量形ポンプ72を駆動するモータ73を制御して、保持テーブル61を構成する枠体611および吸着チャック612の外周部から中央部へ向けての温度上昇が大きくなるように温度制御流体の温度および可変容量形ポンプ72の吐出量を制御することにより達成することができる。
【0031】
一方、保持テーブル61を構成する枠体611および吸着チャック612上に保持された被加工物の外周部を中央部よりもより一層加工して中凸状に形成したい場合には、制御流体供給手段7の制御手段77は、電磁切り替え弁76の他方の電磁コイル762を附勢(ON)して図8に示す第2の形態にし、モータ73の回転数を制御して可変容量形ポンプ72の吐出量を制御するとともに、温度調整手段71に制御信号を出力する。この結果、所定の温度に制御された温度制御流体が可変容量形ポンプ72によって温度制御流体送出管74に送出され、連通管635、支持基台63に設けられた通路633、チャックテーブル6を構成する支持部材62に設けられた第1の連通路623、流体通路622の中央流通口622a、流体通路622、流体通路622の外周流通口622b、第2の連通路624、支持基台63に設けられた通路634、連通管636、温度制御流体戻し管75、温度調整手段71を介して循環せしめられる。このように渦巻状に形成された流体通路622の中央流通口622aから外周流通口622bに向けて流れる温度制御流体は、保持テーブル61の枠体611および吸着チャック612における中央部を冷却しつつ上記研磨作用による摩擦熱を吸収して外周流通口622bに向かう。流体通路622の外周部に達した温度制御流体は上記研磨作用による摩擦熱を吸収して温度が上昇しているため、保持テーブル61を構成する枠体611および吸着チャック612の外周部が温められる。従って、吸着チャック612上に保持された被加工物は、中央部から外周に向けて温度が高くなる温度分布となる。上述したように研磨工程においては、被加工物の温度が高温側が加工レートが上がる傾向にあり、また、保持テーブル61を構成する枠体611および吸着チャック612の高温側が膨張し、研磨工程において研磨工具325の研磨パッド327によって押圧されている被加工物の面圧が高まり、加工レートが上がる。従って、吸着チャック612上に保持された被加工物は、外周部が温度上昇により加工レートが上がるため、外周部の研磨量が増加して中凸状に形成される。
【0032】
上記のようにして、研磨作業が終了したら、制御流体供給手段7の作動を停止し、研磨送り手段4のパルスモータ44を逆転駆動してスピンドルユニット32を所定位置まで上昇させるとともに、研磨工具325の回転を停止し、更に、チャックテーブル6の回転を停止する。次に、チャックテーブル機構5は、矢印23bで示す方向に移動されて被加工物搬入・搬出域24に位置付けられる。チャックテーブル機構5が被加工物搬入・搬出域24に位置付けられたならば、チャックテーブル6上の研磨加工された半導体ウエーハの吸引保持が解除され、吸引保持が解除された半導体ウエーハWは被加工物搬出手段17により搬出されて洗浄手段14に搬送される。洗浄手段14に搬送された半導体ウエーハWは、ここで洗浄された後に被加工物搬送手段15よって第2のカセット12の所定位置に収納される。
【0033】
以上、本発明を図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲で種々の変形は可能である。
例えば、上述した実施形態においては、流体通路622をチャックテーブル6を構成する支持部材62の上面に設けた例を示したが、冷却媒体流通路は保持テーブル61の枠体611の下面に設けてもよい。
また、上述した実施形態においては、温度調整手段71は温度制御流体を常温より低い温度に冷却する例を示したが、被加工物の加工形態によっては温度制御流体を60〜80℃に加熱するようにしてもよい。
また、上述した実施形態においては乾式の研磨パッドを用いて乾式研磨する例を示したが、本発明は研磨パッドによる研磨加工部に研磨液を供給しつつ湿式研磨する湿式研磨装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0034】
2:装置ハウジング
3:研磨ユニット
31:移動基台
32:スピンドルユニット
321:スピンドルハウジング
322:回転スピンドル
323:サーボモータ
324:工具装着部材
325:研磨工具
326:支持基板
327:研磨パッド
4:研磨送り手段
44:パルスモータ
5:チャックテーブル機構
51:移動基台
56:チャックテーブル機構移動手段
6:チャックテーブル
61:保持テーブル
62:支持部材
622:流体通路
63:支持基台
7:制御流体供給手段
71:温度調整手段
72:可変容量形ポンプ
73:モータ
74:温度制御流体送出管
75:温度制御流体戻し管
76:電磁切り替え弁
11:第1のカセット
12:第2のカセット
13:被加工物仮載置手段
14:洗浄手段
15:被加工物搬送手段
16:被加工物搬入手段
17:被加工物搬出手段
18:洗浄水噴射ノズル
W:半導体ウエーハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を研磨する研磨パッドを備えた研磨手段と、を具備する研磨装置において、
該チャックテーブルは、被加工物を保持する保持面を有する保持テーブルと、該保持テーブルを支持する支持部材とを備え、該支持部材には中心部から外周に向けて渦巻状に形成された流体通路が設けられており、
該流体通路に温度制御流体を供給し該保持テーブルの中心部から外周部における温度分布を制御する制御流体供給手段を具備している、
ことを特徴とする研磨装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−166274(P2012−166274A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26994(P2011−26994)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】