説明

破砕機の油圧装置

【課題】破砕アームと、該破砕アームを開閉する油圧シリンダとを備えた破砕機において、油圧シリンダへの圧油供給時における動力損失の低減を図ると共に、開閉アームの応答性の向上を図る。
【解決手段】破砕機2に、開閉用シリンダ20A、20Bの縮小時にヘッド側油室20AH、20BHから排出された油を蓄圧する一方、該蓄圧油を開閉用シリンダ20A、20Bの伸長時にヘッド側油室20AH、20BHに供給するアキュムレータ22と、該アキュムレータ22とヘッド側油室20AH、20BHとの間の油給排を切換えるパイロット切換弁23とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解体作業機等の作業機の機体本体に、破砕作業用アタッチメントとして装着される破砕機の油圧装置の技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、解体作業機等の作業機の機体本体に装着される破砕作業用アタッチメントとして、鉄やコンクリート等の被破砕物を破砕する開閉自在な破砕アームと、該破砕アームを開閉する油圧シリンダとを備えた破砕機が知られている。このような破砕機は、一般的に、高所での破砕作業を容易に行なえるように、機体本体に支持される長尺の作業腕の先端部に取付けられていると共に、破砕機の油圧シリンダに対する圧油供給は、機体本体側に設置された油圧ポンプから行なわれるように構成されている。このため、破砕機への油圧配管は、機体本体側の油圧ポンプから長尺の作業腕を経由して破砕機に至るように配設される長いものとなり、而して、配管の圧力損失による動力損失が大きく、燃費悪化の原因になるばかりか、破砕アームの応答が遅くなって、作業性に劣るという問題がある。特に、破砕アームを閉じるべく油圧シリンダを伸長させる場合には、油圧シリンダのヘッド側とロッド側との受圧面積差の関係上、油圧シリンダを縮小させる場合と比して約二倍の油量を必要とするため、前述した問題が顕著になる。
そこで、従来、被破砕物を挟んでいない低負荷状態での破砕アームの閉作動を増速させるべく、油圧シリンダの伸長時にロッド側油室から排出された油をヘッド側油室に供給する増速バルブを設けた技術が知られている(例えば、特許文献1、2参照。)。このものでは、前述した長い油圧配管を通ることなく、油圧シリンダのロッド側油室からヘッド側油室に圧油供給されることになるため、圧力損失の低減に寄与できるうえ、増速バルブからの供給分ヘッド側油室への圧油供給量が増加して、油圧シリンダの伸長速度を増速させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−259139号公報
【特許文献2】特開平10−266587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、前記特許文献1、2のものにおいて、油圧シリンダの伸長時に増速バルブを経由してロッド側油室からヘッド側油室に供給される圧油の供給量は、油圧シリンダのヘッド側とロッド側との受圧面積差の関係上、ヘッド側油室への全供給量の約半分程度であって、残りの約半分は油圧ポンプから供給されることになる。つまり、増速バルブを経由してロッド側油室からヘッド側油室に圧油供給されている場合であっても、ヘッド側油室への全供給量の約半分は油圧ポンプから供給されることになるが、該油圧ポンプからの供給分は、前述した長い配管を経由して行なわれることになる。さらに、前記増速バルブの動作は、被破砕物を挟んでいない低負荷状態のときだけであって、高負荷状態ではヘッド側油室への全供給量が油圧ポンプから供給されることになり、このため、前述した配管の圧力損失による動力損失の増大や、破砕アームの応答遅れによる作業性の悪化等の問題を払拭しきれないことになり、ここに本発明が解決しようとする課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、作業機の機体本体に破砕作業用アタッチメントとして装着され、機体本体に設置された油圧ポンプから圧油供給される油圧シリンダと、該油圧シリンダの縮小、伸長作動に基づいて開閉する破砕アームとを備えた破砕機において、該破砕機に、前記油圧シリンダの縮小時にヘッド側油室から排出された油を蓄圧する一方、該蓄圧油を油圧シリンダの伸長時にヘッド側油室に供給するアキュムレータと、該アキュムレータとヘッド側油室との間の油給排を切換える切換弁とを設けたことを特徴とする破砕機の油圧装置である。
請求項2の発明は、切換弁は、油圧シリンダの縮小時に油圧ポンプからロッド側油室に供給される圧油の圧力がパイロット圧として入力されることにより、油圧シリンダのヘッド側油室から排出された油をアキュムレータに供給する第一位置に切換わる一方、油圧シリンダの伸長時に油圧ポンプからヘッド側油室に供給される圧油の圧力がパイロット圧として入力されることにより、アキュムレータの蓄圧油を油圧シリンダのヘッド側油室に供給する第二位置に切換わるパイロット切換弁であることを特徴とする請求項1に記載の破砕機の油圧装置である。
請求項3の発明は、破砕機に、油圧シリンダの伸長時にロッド側油室からの排出油をヘッド側油室に供給する再生弁を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の破砕機の油圧装置である。
請求項4の発明は、破砕機に、油圧シリンダの縮小時にロッド側油室の圧力が予め設定されるロッド側リリーフ圧以上になった場合に、油圧ポンプからロッド側油室への供給圧油をアキュムレータに供給するシーケンス弁を設けたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の破砕機の油圧装置である。
請求項5の発明は、破砕機に、アキュムレータの圧力が予め設定されるアキュムレータリリーフ圧以上になった場合に、アキュムレータへの供給圧油をリリーフするリリーフ弁を設けると共に、該リリーフ弁からリリーフされた油を、油圧シリンダのヘッド側油室に接続されるヘッド側油路を経由して油タンクに流すように構成したことを特徴とする請求項4に記載の破砕機の油圧装置である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、油圧シリンダの伸長時には、油圧ポンプからの供給圧油とアキュムレータの蓄圧油とが合流してヘッド側油室に供給されることになるが、この場合、アキュムレータには、油圧シリンダの縮小時にヘッド側油室から排出された圧油が蓄圧されているから、該アキュムレータからの供給圧油だけで、ヘッド側油室が必要とする圧油供給量の大部分を供給できることになり、この結果、油圧シリンダの伸長時における油圧ポンプからヘッド側油室への圧油供給量を大幅に減少させることができ、しかも前記アキュムレータ、及び該アキュムレータとヘッド側油室との間の油給排を切換える切換弁は破砕機に設けられているから、配管の圧力損失による動力損失を大幅に低減させることができて、燃費向上に貢献できると共に、アキュムレータからヘッド側油室に短時間で大流量を供給できることになって、破砕アームの閉作動の応答性に優れ、作業性が向上する。
請求項2の発明とすることにより、開閉用シリンダの縮小、伸長時におけるアキュムレータとヘッド側油室との間の油給排の切換えを、簡単な構造で確実に行うことができる。
請求項3の発明とすることにより、油圧シリンダの伸長時において、再生弁によるロッド側油室からヘッド側油室への供給分、油圧ポンプからヘッド側油室への圧油供給量をさらに減少させることができて、より一層の燃費向上、作業性の向上に貢献できる。
請求項4の発明とすることにより、油圧シリンダの縮小時にロッド側油室の圧力がロッド側リリーフ圧以上になった場合には、油圧ポンプからロッド側油室への供給圧油がアキュムレータに供給されることになり、而して、リリーフ油を有効利用してアキュムレータの蓄圧を行なえることになって、油圧シリンダの伸長時にアキュムレータの蓄圧油が不足してしまう惧れを確実に防止することができる。
請求項5の発明とすることにより、リリーフ弁によってアキュムレータの保護を図れると共に、リリーフ油を油タンクに流す油路を別途設ける必要がなく、回路の簡略化に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】解体作業機の全体図である。
【図2】破砕機を示す図である。
【図3】破砕機の油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1において、1は破砕作業用アタッチメントとして破砕機2が装着された解体作業機であって、該解体作業機1の機体本体は、クローラ式の下部走行体3と、該下部走行体3に旋回自在に支持される上部旋回体4とから構成されると共に、該上部旋回体4には、屈曲自在な作業腕5の基端部が取付支持されている。該作業腕5は、本実施の形態では、基端部が上部旋回体4に上下方向揺動自在に支持されるブーム6と、該ブーム6の先端部に上下方向揺動自在に支持される第一アーム7と、該第一アーム7の先端部に上下方向揺動自在に支持される第二アーム8とを用いて構成されており、そして、該作業腕5の最も先端側に位置する第二アーム8の先端部に、前記破砕機2が揺動自在に装着されている。尚、図中、9、10、11、12は、前記ブーム6、第一アーム7、第二アーム8、破砕機2をそれぞれ揺動せしめるべく伸縮作動するブーム用シリンダ、第一アーム用シリンダ、第二アーム用シリンダ、アタッチメント用シリンダである。
【0009】
前記破砕機2は、図2に示す如く、作業腕5の先端部(第二アーム8の先端部)に揺動自在に取付けられる取付ブラケット14、該取付ブラケット14に旋回ベアリング15を介して回転自在に取付けられるボディ16、該ボディ16を回転せしめる旋回用モータ17、ボディ16にピン軸18A、18Bを介して開閉揺動自在に支持される一対の破砕アーム19A、19B、該破砕アーム19A、19Bをそれぞれ開閉させるべく縮小、伸長作動する一対の開閉用シリンダ(本発明の油圧シリンダに相当する)20A、20B、油圧配管同士を相対回転自在に接続するスイベルジョイント21等を用いて構成されていると共に、前記ボディ16内のスペース24には、後述するアキュムレータ22及びパイロット切換弁(本発明の切換弁に相当する)23が設置されている。そして、前記旋回用モータ17を駆動せしめてボディ16を回転させることで、作業腕5に対する破砕アーム19A、19Bの向きを調整することができるようになっていると共に、開閉用シリンダ20A、20Bを縮小、伸長せしめて破砕アーム19A、19Bを開閉させることで、該破砕アーム19A、19Bにより鉄やコンクリート等を破砕することができるようになっている。
【0010】
次いで、前記破砕機2の油圧装置について、図3の油圧回路図に基づいて説明する。図3において、Aは機体本体(上部旋回体3)に設置される部分の回路であって、該回路Aには、エンジンEにより駆動される油圧ポンプ25、油タンク26、破砕機回転用操作具(図示せず)の操作に基づいて旋回用モータ17への油給排制御を行なう破砕機旋回用コントロールバルブ27、破砕アーム用操作具(図示せず)の操作に基づいて開閉用シリンダ20A、20Bへの油給排制御を行なう後述の破砕アーム用コントロールバルブ28等が設けられている。
【0011】
一方、Bは破砕機6に設置される部分の回路であって、該回路Bには、前記旋回用モータ17、開閉用シリンダ20A、20B、スイベルジョイント21、アキュムレータ22、パイロット切換弁23、後述するシーケンス弁35、リリーフ弁37、再生油路パイロットチェック弁40等が設けられている。尚、前記開閉用シリンダ20A、20Bは、ロッド側油室20AR、20BRへの油供給、及びヘッド側油室20AH、20BHからの油排出で縮小して破砕アーム19A、19Bを開く一方、ヘッド側油室20AH、20BHへの油供給、及びロッド側油室20AR、20BRからの油排出で伸長して破砕アーム19A、19Bを閉じるように構成されている。
【0012】
ここで、前記破砕アーム用コントロールバルブ28は、破砕アーム用操作具の操作に基づいて切換わる三位置切換弁であって、油圧ポンプ25に接続されるポンプポート28Pと、油タンク26に接続されるタンクポート28Tと、スイベルジョイント21を介して後述するロッド側油路29、ヘッド側油路30にそれぞれ接続されるロッド側ポート28R、ヘッド側ポート28Hとを有している。そして、該破砕アーム用コントロールバルブ28は、破砕アーム用操作具が操作されていない状態では、上記各ポート28P、28T、28R、28Hを閉じていて、開閉用シリンダ20A、20Bに対する油給排を行なわない中立位置Nに位置しているが、破砕アーム用操作具が開側に操作されることに基づいて、油圧ポンプ25の圧油をロッド側油路29に供給する一方、ヘッド側油路30の油を油タンク26に排出する縮小側位置Xに切換り、また、破砕アーム用操作具が閉側に操作されることに基づいて、油圧ポンプ25の圧油をヘッド側油路30に供給する一方、ロッド側油路29の油を油タンク26に排出する伸長側位置Yに切換るように構成されている。
【0013】
前記ロッド側油路29は、開閉用シリンダ20A、20Bのロッド側油室20AR、20BRに対する油の給排を行なうべくスイベルジョイント21とロッド側油室20AR、20BRとを接続する油路であり、また、ヘッド側油路30は、開閉用シリンダ20A、20Bのヘッド側油室20AH、20BHに対する油の給排を行なうべくスイベルジョイント21とヘッド側油室20AH、20BHとを接続する油路である。
【0014】
さらに、31は前記ロッド側油路29に配されるロッド側油路パイロットチェック弁であって、該ロッド側油路パイロットチェック弁31のパイロットポート31aには、ヘッド側油路30の圧力がパイロット圧として入力されるようになっている。そして、このロッド側油路パイロットチェック弁31は、油圧ポンプ25からヘッド側油路30に圧油供給されておらずパイロットポート31aにパイロット圧が入力されていない状態では、破砕アーム用コントロールバルブ28から開閉用シリンダ20A、20Bのロッド側油室20AR、20BRへの油の流れは許容する一方、ロッド側油室20AR、20BRから破砕アーム用コントロールバルブ28への流れは阻止する逆止状態になっているが、油圧ポンプ25からヘッド側油路30に圧油供給されてパイロットポート31aにパイロット圧が入力されることにより、ロッド側油室20AR、20BRと破砕アーム用コントロールバルブ28との間の双方向の流れを許容する開状態になるように構成されている。而して、前記逆止状態のロッド側油路パイロットチェック弁31によって、開閉用シリンダ20A、20Bの停止時に、ロッド側油室20AR、20BRからの油の流出を阻止することができ、また、開閉用シリンダ20A、20Bの縮小時に、破砕アーム用コントロールバルブ28からロッド側油室20AR、20BRへの油の流れが許容される一方、開閉用シリンダ20A、20Bの伸長時には、前記ロッド側油路パイロットチェック弁31が開状態になることによって、ロッド側油室20AR、20BRから破砕アーム用コントロールバルブ28への油の排出が許容されるようになっている。
【0015】
また、32はヘッド側油路30に配されるヘッド側油路チェック弁であって、該ヘッド側チェック弁32は、破砕アームコントロールバルブ28から開閉用シリンダ20A、20Bのヘッド側油室20AH、20BHへの油の流れは許容するが、ヘッド側油室20AH、20BHから破砕アーム用コントロールバルブ28への流れは阻止するように構成されている。
【0016】
一方、前記アキュムレータ22及びパイロット切換弁23は、前述したように破砕機2のボディ16内のスペース24に設置されているが、アキュムレータ22は、後述するように、パイロット切換弁23の切換え作動に基づいて、前記開閉用シリンダ20A、20Bの縮小時にヘッド側油室20AH、20BHから排出された油を蓄圧する一方、該蓄圧油を開閉用シリンダ20A、20Bの伸長時にヘッド側油室20AH、20BHに供給するように構成されている。
【0017】
つまり、前記パイロット切換弁23は、第一〜第三ポート23a〜23c及び第一、第二パイロットポート23d、23eを備えた三位置切換弁であって、第一ポート23aは、前記ヘッド側油路チェック弁32の上流側(スイベルジョイント21側)のヘッド側油路30に接続され、第二ポート23bは、ヘッド側油路チェック弁32の下流側(ヘッド側油室20AH、20BH側)のヘッド側油路30に接続され、第三ポート23cは、アキュムレータ油路33に接続されていると共に、第一パイロットポート23dにはロッド側油路29の圧力がパイロット圧として入力され、第二パイロットポート23eにはヘッド側油路30の圧力がパイロット圧として入力されるようになっている。尚、前記アキュムレータ油路33は、アキュムレータ22に対する油の給排を行なうべくアキュムレータ22に接続される油路である。
【0018】
そして、前記パイロット切換弁23は、油圧ポンプ25からロッド側油路29、ヘッド側油路30の何れにも圧油供給されておらず、第一、第二の両パイロットポート23d、23eにパイロット圧が入力されていない状態では、アキュムレータ22への油給排を行なわない中立位置Nに位置している。一方、油圧ポンプ25からロッド側油路29に圧油供給されると、該ロッド側油路29の圧力が第一パイロットポート23dに入力されることにより、ヘッド側油室20AH、20BHから排出された油をアキュムレータ22に供給する第一位置Xに切換わり、また、油圧ポンプ25からヘッド側油路30に圧油供給されると、該ヘッド側油路30の圧力が第二パイロットポート23eに入力されることにより、アキュムレータ22の蓄圧油をヘッド側油室20AH、20BHに供給する第二位置Yに切換わるように構成されている。尚、前記第一位置X、第二位置Yのパイロット切換弁23の通路には、それぞれチェック弁23f、23gが配されていて、逆流が阻止されるようになっている。
【0019】
さらに、34はロッド側油路29とアキュムレータ油路33とを連結するアキュムレータ補充油路であって、該アキュムレータ補充油路34には、開閉用シリンダ20A、20Bが縮小側エンドに達してロッド側油室20AR、20BRの圧力が予め設定されるロッド側リリーフ圧以上になった場合に、前記アキュムレータ補充油路34を開くシーケンス弁35が配設されている。そして、該シーケンス弁35によりアキュムレータ補充回路34が開くことで、ロッド側油路29の圧油がアキュムレータ22に流れるようになっており、而して、開閉用シリンダ20A、20Bが縮小側エンドに達してロッド側油室20AR、20BRの圧力がロッド側リリーフ圧以上になった以降の油圧ポンプ25からロッド側油室20AR、20BRへの供給圧油は、前記シーケンス弁35を経由してアキュムレータ22に蓄圧されるようになっている。
【0020】
また、36はアキュムレータ油路33と前記ヘッド側油路チェック弁32の下流側のヘッド側油路30とを連結するアキュムレータリリーフ油路であって、該アキュムレータリリーフ油路36には、アキュムレータ22の圧力が予め設定されるアキュムレータリリーフ圧以上になった場合に、アキュムレータ油路33からヘッド側油路30に圧油を流すリリーフ弁37と、アキュムレータ油路33からヘッド側油路30への油の流れは許容するが逆方向の流れは阻止するリリーフ油路チェック弁38とが配設されている。而して、アキュムレータ22の圧力がアキュムレータリリーフ圧まで上昇した以降のアキュムレータ22への供給圧油は、前記リリーフ弁37及びリリーフ油路チェック弁38を経由してヘッド側油路30にリリーフされるようになっている。尚、前記アキュムレータリリーフ圧はロッド側リリーフ圧よりも高圧に設定されている。
【0021】
一方、39は開閉用シリンダ20A、20Bのロッド側油室20AR、20BRとヘッド側油室20AH、20BHとを連通する再生油路であって、該再生油路39には、再生油路パイロットチェック弁(本発明の再生弁に相当する)40が配設されている。該再生油路パイロットチェック弁40のパイロットポート40aには、ロッド側油路29の圧力がパイロット圧として入力されるようになっており、そして、該パイロットポート40aにパイロット圧が入力されていない状態では、ロッド側油室20AR、20BRからヘッド側油室20AH、20BHへの油の流れは許容する一方、ヘッド側油室20AH、20BHからロッド側油室20AR、20BRへの流れは阻止する逆止状態になっているが、パイロットポート40aにパイロット圧が入力されることにより、ロッド側油室20AR、20BRとヘッド側油室20AH、20BHとの間の双方向の流れを阻止する閉状態になるように構成されている。而して、開閉用シリンダ20A、20Bの伸長時には、前記逆止状態の再生油路パイロットチェック弁40によって、ロッド側油室20AR、20BRからヘッド側油室20AH、20BHへの油の流れが許容される一方、開閉用シリンダ20A、20Bの停止時及び縮小時には、前記再生油路パイロットチェック弁40が閉状態になることによって、ロッド側油室20AR、20BRとヘッド側油室20AH、20BHとの間の双方向の油の流れが阻止されるようになっている。
【0022】
次いで、開閉用シリンダ20A、20Bの停止時及び伸縮時における油の給排について説明する。まず、破砕アーム用操作具が操作されていない場合には、前述したように、破砕アーム用コントロールバルブ28は開閉用シリンダ20A、20Bに対する油給排を行なわない中立位置Nに位置しており、開閉用シリンダ20A、20Bは停止している。この状態では、ロッド側油路29およびヘッド側油路30に圧油供給されないため、パイロット切換弁23は、アキュムレータ22への油給排を行なわない中立位置Nに位置している。また、ロッド側油路パイロットチェック弁31は、ロッド側油室20AR、20BRから破砕アーム用コントロールバルブ28への油の流れが阻止される逆止状態になっており、さらに再生油路パイロットチェック弁40は、ロッド側油室20AR、20BRとヘッド側油室20AH、20BHとの間の双方向の流れを阻止する閉状態になっており、これによって、開閉用シリンダ20A、20Bの停止時にロッド側油室20AR、20BRから油が流出して開閉用シリンダ20A、20Bが伸長してしまうことを防止できるようになっている。
【0023】
一方、開閉用シリンダ20A、20Bを伸長させる場合、つまり、破砕アーム19A、19Bを閉じるべく破砕アーム用操作具を閉側に操作した場合には、破砕アーム用コントロールバルブ28が伸長側位置Yに切換わって、油圧ポンプ25の圧油がヘッド側油路30に供給される。該ヘッド側油路30に供給された油圧ポンプ25の圧油は、ヘッド側油路チェック弁32を経由して開閉用シリンダ20A、20Bのヘッド側油室20AH、20BHに供給される。さらにこのとき、ヘッド側油路30の圧力がパイロット切換弁23の第二パイロットポート23eに入力されることによりパイロット切換弁23が第二位置Yに切換わって、アキュムレータ22の蓄圧油がヘッド側油室20AH、20BHに供給される。また、再生油路パイロットチェック弁40は、ロッド側油室20AR、20BRからヘッド側油室20AH、20BHへの油の流れを許容する逆止状態になっていて、ロッド側油室20AR、20BRの圧力がヘッド側油室20AH、20BHよりも高圧の間は、ロッド側油室20AR、20BRからの排出油が再生油としてヘッド側油室20AH、20BHに供給される。一方、ロッド側油路パイロットチェック弁31は、ロッド側油室20AR、20BRと破砕アーム用コントロールバルブ28との間の双方向の流れを許容する開状態になっており、而して、ロッド側油室20AR、20BRからの排出油は、前記ヘット側油室20AH、20BHへの供給分を除き、ロッド側油路パイロットチェック弁31及び伸長側位置Yの破砕アーム用コントロールバルブ28を経由して油タンク26に排出される。
【0024】
つまり、開閉用シリンダ20A、20Bの伸長時において、ヘッド側油室20AH、20BHには、油圧ポンプ25から供給される圧油と、アキュムレータ22から供給される圧油と、ロッド側油室20AR、20BRからの再生油とが合流して供給されることになるが、この場合、アキュムレータ22には、後述するように開閉用シリンダ20A、20Bの縮小時におけるヘッド側油室20AH、20BHからの排出油の略全量が蓄圧される構成になっているため、該アキュムレータ22からの供給圧油だけで、伸長時においてヘッド側油室20AH、20BHが必要とする供給量の大部分を供給できることになり、しかも、ロッド側油室20AR、20BRからの再生油も供給されることになるから、油圧ポンプ25からヘッド側油室20AH、20BHへの供給量を大幅に減少させることができる。
【0025】
一方、開閉用シリンダ20A、20Bを縮小させる場合、つまり、破砕アーム19A、19Bを開くべく破砕アーム用操作具を開側に操作した場合には、破砕アーム用コントロールバルブ28が縮小側位置Xに切換わって、油圧ポンプ25の圧油がロッド側油路29に供給される。該ロッド側油路29に供給された油圧ポンプ25の圧油は、逆止状態のロッド側油路パイロットチェック弁31を経由して開閉用シリンダ20A、20Bのロッド側油室20AR、20BRに供給される。このとき、再生油路パイロットチェック弁40は、ロッド側油室20AR、20BRからヘッド側油室20AH、20BHへの油の流れを阻止する閉状態になっていて、ロッド側油室20AR、20BRへの供給圧油がヘッド側油室20AH、20BHに流れてしまうことが阻止されるようになっている。さらにこのとき、ロッド側油路29の圧力がパイロット切換弁23の第一パイロットポート23dに入力されることによりパイロット切換弁23が第一位置Xに切換わって、ヘッド側油室20AH、20BHからの排出油がアキュムレータ22に蓄圧される。この場合、ヘッド側油室20AH、20BHから破砕アーム用コントロールバルブ28への油の流れは、ヘッド側油路チェック弁32によって阻止されているから、ヘッド側油室20AH、20BHからの排出油の略全量がアキュムレータ22に蓄圧されることになる。
【0026】
さらに、前記開閉用シリンダ20A、20Bの縮小時において、開閉用シリンダ20A、20Bが縮小側エンドに達してロッド側油室20AR、20BRの圧力がロッド側リリーフ圧以上になると、アキュムレータ補充回路34に配したシーケンス弁35が開いて、ロッド側油路29に供給された油圧ポンプ25の圧油が自動的にアキュムレータ22に蓄圧される。さらに、アキュムレータ22の圧力がアキュムレータリリーフ圧以上になると、アキュムレータリリーフ油路36に配したリリーフ弁37が開いて、アキュムレータ22への供給圧油がヘッド側油路30にリリーフされ、該ヘッド側油路30から縮小側位置Xの破砕アーム用コントロールバルブ28を経由して油タンク26に排出される。
【0027】
叙述の如く構成された本形態において、解体作業機1の機体本体には、鉄やコンクリート等を破砕するための破砕作業用アタッチメントとして、機体本体に設置された油圧ポンプ25から圧油供給される開閉用シリンダ20A、20Bと、該開閉用シリンダ20A、20Bの縮小、伸長作動に基づいて開閉する破砕アーム19A、19Bとを備えた破砕機2が装着されているが、さらに該破砕機2には、上記開閉用シリンダ20A、20Bの縮小時にヘッド側油室20AH、20BHから排出された油を蓄圧する一方、該蓄圧油を開閉用シリンダ20A、20Bの伸長時にヘッド側油室20AH、20BHに供給するアキュムレータ22と、該アキュムレータ22とヘッド側油室20AH、20BHとの間の油給排を切換えるパイロット切換弁23とが設けられている。
【0028】
而して、開閉用シリンダ20A、20Bの伸長時において、ヘッド側油室20AH、20BHには、油圧ポンプ25からの供給圧油と、アキュムレータ22の蓄圧油とが合流して供給されることになるが、この場合、アキュムレータ22には、開閉用シリンダ20A、20Bの縮小時においてヘッド側油室20AH、20BHから排出された圧油が蓄圧されているから、該アキュムレータ22からの供給圧油だけで、ヘッド側油室20AH、20BHが必要とする圧油供給量の大部分を供給できることになる。この結果、開閉用シリンダ20A、20Bの伸長時における油圧ポンプ25からヘッド側油室20AH、20BHへの圧油供給量を大幅に減少させることができ、しかも、ヘッド側油室20AH、20BHに圧油供給するアキュムレータ22、及び該アキュムレータ22とヘッド側油室20AH、20BHとの間の油給排を切換えるパイロット切換弁23は破砕機2に設けられているから、配管の圧力損失による動力損失を大幅に低減させることができて、燃費向上に貢献できると共に、アキュムレータ22からヘッド側油室20AH、20BHに短時間で大流量を供給できることになって、破砕アーム19A、19Bの閉作動の応答性に優れ、作業性が向上する。
【0029】
しかも、前記パイロット切換弁23は、開閉用シリンダ20A、20Bの縮小時に油圧ポンプ25からロッド側油室20AR、20BRに供給される圧油の圧力がパイロット圧として入力されることにより、ヘッド側油室20AH、20BHから排出された油をアキュムレータ22に供給する第一位置Xに切換わる一方、開閉用シリンダ20A、20Bの伸長時に油圧ポンプ25からヘッド側油室20AH、20BHに供給される圧油の圧力がパイロット圧として入力されることにより、アキュムレータ22の蓄圧油をヘッド側油室20AH、20BHに供給する第二位置Yに切換わる構成であるから、開閉用シリンダ20A、20Bの縮小、伸長時におけるアキュムレータ22とヘッド側油室20AH、20BHとの間の油給排の切換えを行なうにあたり、該切換えのための信号を機体本体側から破砕機2に別途導く必要がなく、簡単な構造で確実に行うことができる。
【0030】
さらに破砕機2には、開閉用シリンダ20A、20Bの伸長時に、ロッド側油室20AR、20BRからの排出油を再生油としてヘッド側油室20AH、20BHに供給する再生油路パイロットチェック弁40が設けられているから、前述したアキュムレータ22からの供給分に加えて該再生油路パイロットチェック弁40からの供給分、油圧ポンプ25からヘッド側油室20AH、20BHへの圧油供給量をさらに減少させることができることになって、より一層の燃費向上、作業性の向上に貢献できる。
【0031】
そのうえ、破砕機2には、開閉用シリンダ20A、20Bの縮小時にロッド側油室20AR、20BRの圧力がロッド側リリーフ圧以上になった場合に、油圧ポンプ25からロッド側油室20AR、20BRへの供給圧油をアキュムレータ22に供給するシーケンス弁35が設けられているから、ロッド側油路29のリリーフ油を有効利用してアキュムレータ22への蓄圧を行なえることになり、而して、開閉用シリンダ20A、20Bの伸長時にアキュムレータ22の蓄圧油が不足してしまう惧れを確実に防止することができる。
【0032】
しかも、アキュムレータ22の圧力が予め設定されるアキュムレータリリーフ圧以上になった場合には、アキュムレータ22への供給圧油はリリーフ弁37によりリリーフされると共に、該リリーフ弁37からリリーフされた油は、ヘッド側油路30を経由して油タンク26に排出されることになるから、アキュムレータ22の保護を図れると共に、リリーフ油を油タンク26に流す油路を別途設ける必要がなく、回路の簡略化に貢献できる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、解体作業機等の作業機の機体本体に破砕作業用アタッチメントとして装着される破砕機において、該破砕機の破砕アームを開閉するための油圧シリンダを縮小、伸縮せしめる油圧装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 解体作業機
2 破砕機
19A、19B 破砕アーム
20A、20B 開閉用シリンダ
20AH、20BH ヘッド側油室
20AR、20BR ロッド側油室
22 アキュムレータ
23 パイロット切換弁
25 油圧ポンプ
26 油タンク
29 ロッド側油路
30 ヘッド側油路
35 シーケンス弁
37 リリーフ弁
40 再生油路パイロットチェック弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機の機体本体に破砕作業用アタッチメントとして装着され、機体本体に設置された油圧ポンプから圧油供給される油圧シリンダと、該油圧シリンダの縮小、伸長作動に基づいて開閉する破砕アームとを備えた破砕機において、該破砕機に、前記油圧シリンダの縮小時にヘッド側油室から排出された油を蓄圧する一方、該蓄圧油を油圧シリンダの伸長時にヘッド側油室に供給するアキュムレータと、該アキュムレータとヘッド側油室との間の油給排を切換える切換弁とを設けたことを特徴とする破砕機の油圧装置。
【請求項2】
切換弁は、油圧シリンダの縮小時に油圧ポンプからロッド側油室に供給される圧油の圧力がパイロット圧として入力されることにより、油圧シリンダのヘッド側油室から排出された油をアキュムレータに供給する第一位置に切換わる一方、油圧シリンダの伸長時に油圧ポンプからヘッド側油室に供給される圧油の圧力がパイロット圧として入力されることにより、アキュムレータの蓄圧油を油圧シリンダのヘッド側油室に供給する第二位置に切換わるパイロット切換弁であることを特徴とする請求項1に記載の破砕機の油圧装置。
【請求項3】
破砕機に、油圧シリンダの伸長時にロッド側油室からの排出油をヘッド側油室に供給する再生弁を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の破砕機の油圧装置。
【請求項4】
破砕機に、油圧シリンダの縮小時にロッド側油室の圧力が予め設定されるロッド側リリーフ圧以上になった場合に、油圧ポンプからロッド側油室への供給圧油をアキュムレータに供給するシーケンス弁を設けたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の破砕機の油圧装置。
【請求項5】
破砕機に、アキュムレータの圧力が予め設定されるアキュムレータリリーフ圧以上になった場合に、アキュムレータへの供給圧油をリリーフするリリーフ弁を設けると共に、該リリーフ弁からリリーフされた油を、油圧シリンダのヘッド側油室に接続されるヘッド側油路を経由して油タンクに流すように構成したことを特徴とする請求項4に記載の破砕機の油圧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−242435(P2010−242435A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−94653(P2009−94653)
【出願日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(505236469)キャタピラー エス エー アール エル (144)
【Fターム(参考)】