説明

硝子穴あけ方法及び光学窓作製方法

【課題】 硝子に微小な穴あけをする際、穴の周縁にギザギザが形成されない優れた方法及び装置を提供する。
【解決手段】 硝子より成る対象物1の表面を保護層4で覆い、保護層4の穴あけ箇所の部分に穴あけ用開口40を形成する。硝子を溶出することが可能な溶出液2をノズル3から噴射させ、穴あけ用開口40を通して対象物1の表面に当てて5×10−2N/cm以上20×10−2N/cm以下の圧力で衝撃する。ノズル3から噴射される溶出液2は、穴あけ用開口40よりも小さい直径20μm以上400μm以下の粒状である。溶出液2による衝撃を継続することで対象物1に貫通穴10が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の発明は、硝子に微細な貫通穴を形成する穴あけ技術に関するものであり、特に、イメージセンサモジュール等で用いられる光学窓の作製に好適に使用される硝子穴あけ方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、成形、切断、エッチング等の各種加工が硝子に対して行われている。このうち、精密な光学機器などに用いられる光学窓の作製においては、硝子に微細な穴あけ加工をすることが必要となっている。例えば、携帯電話やデジタルカメラに搭載されているイメージセンサモジュールでは、センサ素子の入射側に光学窓を設け、光学窓の窓開口を通して光を入射させて撮像するようになっている。この光学窓は硝子製であり、窓開口は、センサ素子の入射面の大きさより少し大きい。センサ素子としてはCCDが一般的であるが、微細加工技術の向上を背景とした高集積度化により、高解像度化(高画素数化)にもかかわらずセンサ素子は非常に小さいものになってきており、従って窓開口も非常に小さくなってきている。これは、携帯電話等の機器の小型化、コンパクト化の要請に沿うものでもある。
【特許文献1】特開平61−86729号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したような小さな窓開口の光学窓を作製するには、硝子に小さな穴をあける穴あけ加工が必要である。硝子に対して微少な穴あけを行う場合、例えば液晶表示素子の製造においては、特開昭61−86729号公報に開示されているように、サンドブラスト法が採用されている。上述した光学窓の作製においても、サンドブラスト法を採用することが可能であるが、サンドブラスト法によると、形成した穴の周縁にギザギザ(凹凸)が形成されてしまう。このようなギザギザは、携帯電話等の製品に搭載した場合に見栄えが悪い。また、ギザギザによって光が散乱される等、光学特性に影響を与えることもあり得る。
本願の発明は、このような課題を考慮して為されたものであり、イメージセンサモジュール用の光学窓を作製する場合のように硝子に微小な穴あけをする際に用いられる方法及び装置であって、穴の周縁にギザギザが形成されない優れた方法及び装置を提供する技術的意義を有するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、本願の請求項1記載の発明は、硝子より成る対象物に微小な穴をあける硝子穴あけ方法であって、
前記硝子を溶出することが可能な溶出液を直径20μm以上400μm以下の粒状にしてノズルから噴射し、
噴射された溶出液を対象物の所定箇所に当てて5×10−2N/cm以上20×10−2N/cm以下の圧力で衝撃し、
当該箇所に対する粒状の溶出液による衝撃を継続することで、当該箇所に貫通穴を形成するという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項10記載の発明は、光学部品の入射側に設けられる硝子より成る光学窓を作製する方法であって、
光学窓の元になる板材の硝子材料を溶出させることが可能な溶出液を直径20μm以上400μm以下の粒状にしてノズルから噴射し、噴射された溶出液を板材の所定箇所に当てて5×10−2N/cm以上20×10−2N/cm以下の圧力で衝撃し、
当該箇所に対する粒状の溶出液による衝撃を継続して当該箇所に穴あけをして窓開口を形成するという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項18記載の発明は、光学部品の入射側に設けられる硝子より成る光学窓を作製するに際して、光学窓の縁面が光軸に対して成す角を所望の角度にする光学窓縁面角度調整方法であって、
光学窓は、入射側開口が出射側開口よりも大きい形状であり、
光学窓の元になる対象物の表面に保護層を形成する保護層形成工程と、
保護層形成工程において形成された保護層に穴あけ用開口を形成する穴あけ用開口形成工程と、
前記硝子を溶出させることが可能な溶出液を穴あけ用開口を通して対象物に供給することで穴あけを行う穴あけ工程とを有しており、
保護層形成工程は、硝子の表面を保護層で覆って溶出液が硝子の表面に付着しないようにする工程であり、
穴あけ用開口形成工程は、前記入射側開口より小さい大きさの穴あけ用開口を形成する工程であり、
穴あけ工程は、前記溶出液を前記穴あけ用開口よりも小さい直径20μm以上400μm以下の粒状にしてノズルから噴射し、噴射された溶出液を前記穴あけ用開口を通して対象物に当てて5×10−2N/cm以上20×10−2N/cm以下の圧力で衝撃し、この衝撃を穴が貫通するまで継続する工程であり、
穴あけ工程において、前記衝撃圧力及び前記溶出液の溶出成分の濃度を調整することで、作製される光学窓の前記縁面の角度を調整するという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項19記載の発明は、硝子より成る対象物に微小な穴をあける硝子穴あけ装置であって、
前記硝子を溶出することが可能な溶出液を直径20μm以上400μm以下の粒状にして噴射するノズルと、
ノズルに溶出液を供給する溶出液供給系と、
噴射された溶出液が、対象物の所定箇所に当たるよう対象物を保持する対象物保持機構とを備えており、
対象物保持機構は、溶出液による対象物の所定箇所への衝撃圧力が5×10−2N/cm以上20×10−2N/cm以下となる位置で対象物を保持するものであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項24記載の発明は、センサ素子を含むモジュール本体と、センサ素子の入射側に設けられた硝子製の光学窓とから成るイメージセンサモジュールであって、
光学窓は、硝子を溶出させることが可能な溶出液を直径20μm以上400μm以下の粒状にしてノズルから噴射し、噴射された溶出液を板材の所定箇所に当てて5×10−2N/cm以上20×10−2N/cm以下の圧力で衝撃し、当該箇所に対する粒状の溶出液による衝撃を継続することで当該箇所に穴あけすることで作製されたものであるという構成を有する。
【発明の効果】
【0005】
以下に説明する通り、本願の請求項1記載の発明によれば、溶出液による溶かし出しという化学的作用を利用しているので、形成された穴の周縁にギザギザが形成されることはなく、滑らかな美しい周縁の穴が得られる。
また、請求項10記載の発明によれば、溶出液による溶かし出しという化学的作用を利用して光学窓の窓開口が形成されるので、見栄えが良く、ギザギザによって光が散乱される等の光学特性に悪影響が生ずることが無い。
また、請求項19記載の発明によれば、上記効果に加え、溶出液による衝撃圧力及び溶出液の溶出成分の濃度を調整することで、45度〜20度程度の範囲の角度に縁面角度を調整することができる。
また、請求項24記載の発明によれば、溶出液による溶かし出しという化学的作用を利用して光学窓の窓開口が形成されているので、見栄えが良く、ギザギザによって光が散乱される等の光学特性に悪影響が生ずることが無い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本願発明を実施するための最良の形態(以下、実施形態)について説明する。
図1は、第一の実施形態に係る硝子穴あけ方法を示した正面概略図である。
図1に示す方法は、硝子より成る対象物1に微小な穴10をあける方法である。穴10としては、直径が500μm〜5mm程度の円形の穴10をあける場合、この方法は好適に採用され得る。
この方法の大きな特徴点は、硝子を溶出することが可能な溶出液2を小さな粒状にし、この粒状の溶出液2で対象物1の表面を衝撃することで穴あけを行う点である。溶出液2としては、フッ酸のような強酸を所定の濃度に希釈したものが使用される。濃度は、後述するように、形成する穴10の形状に応じて変更されるが、例えば純水等を希釈液として使用し、3〜30%程度の濃度とされる。
【0007】
この実施形態の方法では、硼珪酸硝子その他の各種硝子を穴あけすることができる。硝子の材料に応じて、その硝子を溶出させることができる溶出液2を適宜選定する。
溶出液2の粒径は、後述するように、形成する穴10の大きさとの関係で適宜選定されるものの、20μm〜400μmの範囲であることが好ましい。この方法は、溶出液2が硝子を溶かし出すという化学的作用と、粒状の溶出液2が対象物1を衝撃するという物理的作用の両方を利用する点に特徴がある。溶出液2の粒径が20μmよりも小さいと、重さが軽いために充分な衝撃圧力が得られなくなる。また、粒径が400μよりも大きいと、衝撃圧力が大きくなり過ぎて、形成する穴10の寸法精度が低下する問題があり、また微小な穴あけができなくなる問題がある。また、後述するノズルについても、そのように大きな粒径で溶出液を噴射させることが可能なノズルを選定ないし製作することが難しくなる。
【0008】
衝撃圧力については、5×10−2N/cm以上20×10−2N/cm以下の範囲であることが好ましい。5×10−2N/cmよりも小さいと、あまりにも圧力が小さいため、穴あけに長時間を要するか若しくは穴あけができない問題が生ずる。圧力が20×10−2N/cmより大きいと、形成する穴10の寸法形状を所定のものにするのが難しくなるし、そのような高い圧力で上記粒径の粒状の溶出液2を当てること自体、技術的に難しい。
【0009】
また、図1に示す方法は、ノズル3を使用して溶出液2を粒状にする。この際、ノズル3からの溶出液2の噴射形状を考慮し、対象物1を保護層4で覆う保護層形成工程(図1(1))と、保護層4に穴あけ用開口40を形成する穴あけ用開口形成工程(図1(2))と、穴あけ工程(図1(3)〜(5))とを有している。穴あけのためには、穴10をあけるよう定められた所定箇所(以下、穴あけ箇所)にのみ集中的に粒状の溶出液2を当てる必要がある。一方、この実施形態で用いられるノズル3は、噴射される溶出液2が図1(3)に示すように広がるタイプのものであるので、穴あけ箇所以外には溶出液2が付着しよう保護層4で覆うにしている。そして、保護層4の穴あけ箇所の位置に穴あけ用開口40を設け、穴あけ用開口40を通して溶出液2を当てるようにしている。
【0010】
保護層4としては、溶出液2に対して浸食されない耐性(対薬品性)があることが必要である。即ち、溶出液2と反応したり溶出液2により溶かし出されたりして削られることが無い材質であることが必要である。具体的には、溶出液2がフッ酸のような強酸である場合、クロムのような耐酸性を有する金属や、ポリプロピレン(PP)樹脂のような耐酸性を有する樹脂が使用される。
【0011】
保護層4の厚さは、穴あけ加工が終了するまで対象物1の表面が露出しない厚さとされる。即ち、溶出液2により削られる場合でも、穴あけ加工が終了するまでは充分な厚さで残留する厚さとされる。前述したクロムやポリプロピレン樹脂の場合には削られる心配は無いので、ある程度薄くて良い。尚、溶出液2による物理的衝撃に耐え得る点(機械的強度)も考慮に入れられる。一例を示すと、保護層4がクロムより成る場合、厚さは1000オングストローム〜3000オングストローム程度である。ポリプロピレン樹脂より成る場合、厚さは30μm〜100μm程度である。
【0012】
穴あけ用開口40の形成の仕方としては、保護層4の材質にもよるが、フォトリソグラフィ法により事後的に行うか、パンチング等により予め行うかである。保護層4がクロムのような金属製である場合、フォトリソグラフィにより行われる場合が多く、図1はこの場合を示している。例えば、スパッタリングによりクロム膜を前述した厚さで作成し(図1(1))、フォトリソグラフィ法により穴あけ用開口40を形成する(図1(2))。即ち、保護層4の上にレジストを塗布した後、穴あけ用開口40の形状としたマスクを通して露光し、その後、現像を行って穴あけ用開口40の形状のレジストパターンを得る。そして、レジストパターンを通してクロム膜をエッチングし、穴あけ用開口40を形成する。尚、レジスト自体が保護層4として使用され得る(レジストの材料が溶出液2に対して対薬品性を持つ)場合もあり、この場合は、露光及び現像のみにより穴あけ用開口40が形成される。フォトリソグラフィ法によると、穴あけ用開口40を精度よく形成することができるので、位置精度や寸法精度の点で精度の高い穴あけを行うことができる。
【0013】
また、保護層4がポリプロピレン樹脂のような樹脂製の場合、予め穴あけ用開口40を設けた樹脂フィルムを貼り付けて保護層4を形成する場合が多い。上述した程度の厚さの樹脂フィルムを用い、これに対してパンチングで穴あけして穴あけ用開口40とする。そして、穴あけ用開口40が所定の位置になるように対象物1に貼り付けする。貼り付けは、対象物1に樹脂フィルムを密着させて加熱するラミネート法によると簡便であり、好適である。尚、樹脂フィルムへの穴あけは、レーザーにより行われる場合もある。
【0014】
また、保護層4は、対象物1の他の面にも形成されることが好ましい。例えば対象物1が板状である場合、端面についても保護層4で覆うことが好ましく、図1に示すように、溶出液2で衝撃する側とは反対側の表面についても保護層4で覆うことが好ましい。溶出液2が飛散したり回り込んだりして付着すると、意図しない部分で対象物1が削られてしまうからである。基本的には、対象物1の全面を保護層4で覆い、対象物1の表面が露出しているのは穴あけ用開口40の部分のみとすることが好ましい。
【0015】
次に、図1に示す方法により使用されるノズル3について説明する。図2は、図1の方法に使用されるノズル3の正面断面概略図である。
上述したように、本実施形態の方法は、直径20μm〜400μm程度の粒径の粒状の溶出液2を当てて5×10−2N/cm〜20×10−2N/cm程度の圧力で衝撃するところに特徴点がある。このように溶出液2を粒状に噴射して衝撃するためには、図2に示すような二流体ノズルを用いると好適である。即ち、図2に示すノズル3は、ノズル本体31と、管接続ユニット32と、固定リング33等から構成されている。
【0016】
管接続ユニット32は、右側に圧縮空気供給管の接続部(以下、空気接続部)34を備えており、左側に溶出液供給管の接続部(以下、液接続部)35を備えている。空気接続部34は、圧縮空気の管を嵌め込む凹部である。液接続部35は、溶出液2の供給管を嵌め込む凹部である。
空気接続部34からは、管接続ユニット32の中央部まで横に延びるようにして空気導入孔340が形成されている。空気導入孔340の先端部の下側には、下側に突出するようにして空気噴射筒36が形成されている。
管接続ユニット32には、下面中央部に凹部(以下、主凹部)37が形成されている。空気噴射筒36は、この主凹部37において下方に突出している。空気噴射筒36は、空気導入孔340と主凹部37内を連通させている。
【0017】
一方、液接続部35から管接続ユニット32の中央部まで横方向に延びるようにして液導入孔350が形成されている。液導入孔350は、空気導入孔340よりも少し低い位置で横方向に延びている。液導入孔350は、主凹部37の側壁に達しており、液接続部35と主凹部37とを連通させている。
ノズル本体31は、上下方向に貫通路を有する筒状の部材である。ノズル本体31は、下端が管接続ユニット32の主凹部37に嵌め込まれた状態で設けられている。図2に示すように、ノズル本体31の上端と主凹部37とは、空気噴射筒36を取り囲む空間(以下、主空間)30を形成している。
【0018】
図2に示すように、ノズル本体31の貫通路は、上端で少し広がっている。空気噴射筒36の下端は、この貫通路の広がった部分に位置する。空気噴射筒36の下端は、ノズル本体31には接触しておらず、離間している。
固定リング33は、管接続ユニット32の主凹部37とノズル本体31との間に挿し込まれるようにして設けられている。固定リング33は、ネジ止めによりノズル本体31を管接続ユニット32に固定するものである。主凹部37の側面とノズル本体31の外周面には、ねじ切りされた箇所があり、固定リング33はこの両者に噛み合うようネジ込まれている。
【0019】
図2に示すノズル3において、空気供給管及び液供給管がそれぞれ接続され、圧縮空気及び溶出液2がそれぞれ供給される。供給された圧縮空気は、空気導入孔340から空気噴射筒36に導入され、空気噴射孔340から主空間30に噴射される。溶出液2は、液導入孔350から主空間30に導入されて流入する。流入した溶出液2は、主空間30に充満した後、ノズル本体31の貫通路に流入して下降し、貫通路の上端開口(以下、噴射口)310から噴射される。この際、空気噴射筒36から噴射される圧縮空気が溶出液2に勢いよく混入し、溶出液2を下方に向けて押し下げながら分散させ、溶出液2とともに噴射口310から噴射される。この結果、噴射口310から噴射される溶出液2は、小さな粒状の状態(霧状又はミスト状)となる。圧縮空気の圧力、溶出液2の供給圧力、空気噴射筒36の下端開口の寸法、主空間30の断面積、ノズル本体31の貫通路の断面積、噴射口310の寸法形状等のパラメータを適宜選定することで、所望の粒径の溶出液2を所望の圧力で噴射させることができる。
尚、上述したようなノズル3は自作しても良いが、市販のものを使用しても良い。例えば、株式会社いけうち製の二流体スプレーノズル3VVEAシリーズの中から適宜選んで使用することができる。
【0020】
実施形態の硝子穴あけ方法について、以下にまとめて説明する。
上述したように対象物1に保護層4及び穴あけ用開口40を形成した対象物1を保持し、図1(3)に示すように、穴あけ箇所の真上にノズル3を位置させる。ノズル3は、噴射口310が真下を向く姿勢とする。この状態で、上記のように溶出液2を噴射させる。噴射された溶出液2は、図1(3)に示すように広がるが、一部が穴あけ用開口40を通過して対象物1の表面に達し、表面を衝撃する。
【0021】
対象物1の表面に達した溶出液2は、表面の硝子を溶かし出す。穴あけ用開口40を通して溶出液2が次々に流入してくるので、対象物1の表面では、新鮮な(硝子が溶け込んでいない)溶出液2に置換される。硝子が溶け込んだ溶出液2は、流入する溶出液2の衝撃圧力により次々に弾き出される。この結果、対象物1の表面が削られ、孔が形成される(図1(4))。この際、溶出液2による溶かし出し作用は、横方向(溶出液2の入射方向に対して垂直な方向)にも生じる。従って、図1(4)に示すように、孔は横方向にも少しずつ広がっていく。
【0022】
ノズル3及び対象物1の位置を固定し、上記溶出液2の供給・衝撃状態を所定時間維持すると、図1(5)に示すように、孔は対象物1の反対側の表面に達し、穴あけが完了する。図1(5)に示すように、形成される穴10は、溶出液2の入射方向に沿った断面形状が台形のものであり、溶出液2の入射側の開口が大きく、その反対側の開口(以下、出射側開口)が小さい形状である。尚、溶出液2の入射方向に垂直な面で見た穴10の断面形状は、円形である。
尚、形成された穴10の入射側開口及び出射側開口には、保護層4が残留した状態であるが、この開口に残留した保護層4は、穴あけ後の洗浄工程において洗浄液で衝撃されることで除去される。出射側開口の保護層4は、穴あけの最後の段階で溶出液2による衝撃で除去されてしまうこともある。
【0023】
この硝子穴あけ方法は、サンドブラストのように粒状の固体(砂)をぶつけて削るという物理的作用のみによる方法ではなく、溶出液2による溶かし出しという化学的作用を利用しているので、形成された穴10の周縁にギザギザが形成されることはなく、滑らかな美しい周縁の穴10が得られる。尚、本実施形態の方法は、溶出液2による衝撃という物理的作用も併用している。この物理的作用には、上述したように、対象物1の表面において溶出液2を効率良く置換する作用の他、衝撃により削り出しを行う作用も含まれている。即ち、溶出液2が触れることで若干溶解して軟化した硝子が、溶出液2による衝撃により物理的に弾き出される作用もある。
【0024】
尚、上記方法において、溶出液2には界面活性剤が添加されることがある。界面活性剤の添加は、対象物1の表面での溶出液の移動を促進させて溶出液の置換をより促進するためである。界面活性剤としては、例えばフッ素系のものが使用される。界面活性剤は、希釈液を含む溶出液の全量に対して0.1〜0.5%の重量比で添加される。
また、上記方法において、溶出液2の粒径は、穴あけ用開口40よりも小さいものとすることが好ましい。溶出液2の粒が穴あけ用開口40よりも大きいと、粒が穴あけ用40を塞いでしまい、表面張力によりその後の溶出液2の進入を阻害する恐れがあるためである。
【0025】
次に、イメージセンサモジュールの発明の実施形態について説明する。図3は、実施形態に係るイメージセンサモジュールの正面断面概略図である。
図3に示すイメージセンサモジュールは、センサ素子51と、センサ素子51の入射側に設けられた硝子製の光学窓52とを備えている。センサ素子51としては、CMOS又はCCD等が使用される。
【0026】
モジュールは、セラミック製の基板53と、基板53を覆う筐体54とを備えている。筐体54は上面に開口を有し、光学窓52はこの開口に嵌め込まれた状態で設けられている。基板53上には、回路ユニット55が設けられ、センサ素子51は回路ユニット55の上に搭載されている。回路ユニット55は、センサ素子51からの信号を処理する信号処理回路を含んでいる。その他、基板53上にはコンデンサや抵抗等の不図示の周辺部品が実装されている。基板53は、モジュールの小型化等の観点から、多層配線を備えた多層基板53とされることが多い。
【0027】
光学窓52には、マイクロレンズ56が嵌め込まれている。マイクロレンズ56は、ある程度大きな画角の撮像が行えるようセンサ素子51に光を取り込むためのものである。マイクロレンズ56としては、プラスチック製の非球面レンズが好適に使用できる。
光学窓52は、赤外線カットの機能を持つことが好ましい。赤外線カットの硝子から作製されるか、表面に赤外線カットの薄膜をフィルタとして設けるようにする。このようなイメージセンサモジュールは、例えばシャープ株式会社から発売されているLZ0P3908等が知られている。なお、光学窓52の入射側には、透明な蓋板が設け、マイクロレンズ56が露出しないようにする場合もある。
【0028】
光学窓52は、硝子製の板材を穴あけ加工することで作製されたものとなっている。この穴あけ加工は、上述した実施形態の穴あけ加工に相当しており、硝子を溶出させることが可能な溶出液2を直径20μm〜400μmの粒状にしてノズル3から噴射し、噴射された溶出液2を板材の所定箇所に当てて5×10−2N/cm以上20×10−2N/cm以下の圧力で衝撃し、当該箇所に対する粒状の溶出液2による衝撃を継続するものである。
【0029】
図3に示すように、光学窓52の窓開口520は、光軸Aに沿った断面形状が台形であり、入射側において大きく、出射側において小さい断面形状となっている。尚、光軸Aに垂直な窓開口520の断面形状は円形である。
また、図3中に拡大して示すように、窓開口520の縁面521が光軸Aに対して成す角(以下、縁面角度)は45度となっている。縁面角度は、マイクロレンズ56やセンサ素子51の特性を考慮して適宜決定されるが、45度の場合が多い。
【0030】
このような光学窓52は、従来のサンドブラスト法により作製された光学窓52と比較すると、顕著な構造上の差異を有する。以下、この点を説明する。
図4は、実施形態のイメージセンサモジュールにおける光学窓52の構造上の特徴点を示す概略図である。参考のため、従来のサンドブラスト法により作製された光学窓52の構造を併せて示す。図4(A)が従来のサンドブラスト法により作製された光学窓52で、(B)が実施形態のイメージセンサモジュールにおける光学窓52である。
図4(A)に拡大して示すように、従来の光学窓52は、サンドブラスト法により穴あけされているため、窓開口520の周縁522又は縁面521にギザギザが形成されており、見栄えが良くない。一方、図4(B)に拡大して示すように、実施形態の光学窓52では、窓開口520の周縁522又は縁面521にギザギザは形成されておらず、滑らかな面となっている。
【0031】
また、図4(A)に拡大して示すように、従来の光学窓52では、表面にはマイクロクラック500が形成されている。マイクロクラック500は、硝子の表面に形成される微細な傷、割れ目等である。
マイクロクラック500は、元来、硝子特有のものであり、硝子の製造工程の関係で避けられないものである。硝子は、マイクロクラック500があるために一般的に他の材料に比べて強度的に弱いとされている。従来の光学窓52は、サンドブラスト法によるため、縁面521にも多くのマイクロクラック500が存在した状態である。固体粒子により表面が傷つけられるため、穴あけ前よりもさらに多くのマイクロクラック500が存在することもあり得る。従来の光学窓52では、見栄えの他、このようなマイクロクラック500により強度的に弱い欠点もある。
【0032】
一方、実施形態の光学窓52は、マイクロクラックは全く形成されていない。これは、溶出液2により穴あけを行ったものであるためである。溶出液2は、硝子の表面を溶かし出すものであるから、マイクロクラックが存在する表面層が穴あけの過程で除去され、マイクロクラックの無い表面が露出した状態となる。このため、強度の面でも好適なものとなっている。
【0033】
尚、光学窓52を作製する際、前述した保護層4を穴あけ後も除去せずにそのままにしておく場合がある。例えば、保護層4に遮光膜のような光学フィルタとして機能を持たせ、穴あけ時の硝子の保護と、製品としての光学窓52におけるフィルタ機能を発揮させる場合がある。フィルタの一例としては、赤外線カットフィルタが挙げられる。前述したようにクロム膜を保護層4として形成する場合、赤外線カット等の遮光用にクロム膜を残留させる場合がある。
【0034】
次に、上述した光学窓52における縁面角度の調整について説明する。以下の説明は、光学窓縁面角度調整方法の発明の実施形態の説明も兼ねている。上述したように、図3に示す実施形態では、縁面角度は45度であるが、縁面角度は穴あけを適宜行うことで調整が可能である。図5は、穴あけ加工における縁面角度の調整について示した概略図である。
【0035】
上述したように、実施形態の穴あけ加工は、化学的作用と物理的作用とを併用するものである。ここで、化学的作用は、溶出液2による溶かし出しであるから、方向性はなく、均等に(等方的に)生ずる。一方、前述したように、物理的作用は、溶出液2による硝子表面の衝撃であるから、衝撃の向きに生ずる。図5において、化学的作用による硝子の溶かし出しの速度をVcとし、物理的作用による硝子の削り出しの速度をVpとする。Vc及びVpは、単位時間当たりにどれだけの厚さの溶かし出し又は削り出しが進むかという速度である。
【0036】
図5に示すように、化学的作用である溶かし出しは等方的に進むから、Vcは、穴あけの過程で形成される凹部においてほぼ均一に分布する。一方、物理的作用による削り出しは、溶出液2の噴射の向きにのみ実質的に存在するから、Vpは凹部の底の部分において最も高く、他の部分において実質的にゼロである。
ここで、Vc≫Vpである場合、即ち、Vcに比べてVpが非常に小さくてVpが実質的にゼロであるとみなせる場合、化学的作用である溶かし出しのみが実質的に作用し、穴あけは等方的に進行する。この場合は、図5(a)に示すように、得られる穴10の縁面角度はほぼ45度になる。
一方、Vc≫Vpとはみなせない場合、穴あけは等方的には進行せず、凹部の底においてより高い速度で進行する。例えば、Vc≒Vpである場合、凹部の底における穴あけ速度は、凹部の側面における速度の2倍程度になる。この場合、形成される穴10の縁面角度は、20〜25度程度になる。
【0037】
このように、Vcに対するVpの大きさを調整することで縁面角度の調整が行える。ここで、Vcに大きく影響を与えるのは溶出液2の溶出成分の濃度である。一方、Vpは溶出液2による衝撃圧力によって決まる。衝撃圧力を大きくすると、Vpは当然に高くなるが、表面での溶出液2の置換速度も同時に高くなるので、Vcも高くなる。但し、置換速度の増加に比べて衝撃圧力の増加の影響の方が大きいので、Vcに対してVpが大きくなり、この結果、上記のように縁面角度を小さくできる。また、衝撃圧力を高くするとともに、溶出液2の濃度を下げると、Vcに対してVpをより大きくすることができるので、そのような調整方法が採られることもある。いずれにしても、必要な縁面角度が得られる溶出液2の濃度及び衝撃圧力を予め実験的に算出し、その条件を再現しながら穴あけを行うようにする。
【0038】
次に、形成する穴10の開口の形状と穴あけ用開口40の大きさとの関係について説明する。図6は、形成すべき穴10の開口の形状と穴あけ用開口40の大きさについて示した概略図である。
上述したように、実施形態の硝子穴あけ方法では、保護層4に設けた穴あけ用開口40を通して溶出液2を供給して穴あけを行う。この場合、穴あけ用開口40の大きさは、形成される穴10の形状のうち溶出液2の入射側の開口の大きさとの関係で適宜決定される。以下、入射側開口の直径をR、穴あけ用開口40の直径をφ、対象物1の厚さをTとする。対象物1の形状によっては「厚さ」というものを観念しづらい場合もあるが、「穴10を貫通させるべき距離」と捉えるものとする。
【0039】
図5(a)に示すように、Vc≫Vpとして縁面角度を45度とするとき、穴あけが等方的に進む状態となる。この場合、前述した溶出液2による衝撃状態を維持しながら厚さTだけ穴あけをすると、入射側開口では、横方向にやはりTの距離だけ溶出が進行することになる。この結果、穴あけ完了時には、入射側開口の直径はφ+2Tということになる。従って、図6に示すように、入射側開口の大きさをRとしたい場合には、穴あけ用開口40の大きさφは、φ=R−2Tとしておけば良いことになる。尚、出射側開口の大きさは、穴あけ用開口40と同じ大きさになる。
このようにVc≫Vpとして縁面角度を45度とする調整例は、調整が容易で再現性が高いので好適である。つまり、穴あけ用開口40の大きさをR−2Tとする構成は、調整が容易で再現性の高い穴あけのために好適な構成ということになる。
【0040】
次に、第二の実施形態の硝子穴あけ方法について説明する。図7(1)は、第二の実施形態に係る硝子穴あけ方法を示した正面概略図である。第二の実施形態の方法は、図7に示すように、対象物1の両側から同時に前記溶出液2を当てての衝撃を行い、これを継続することで貫通穴10をあける方法である。
即ち、予め対象物1の両面に保護層4を設け、穴あけ用開口40を形成する。保護層4の厚さや材質、穴あけ用開口40の大きさや形成方法は、前述したのと同様で良い。この方法では、両面の保護層4に穴あけ用開口40が形成される。そして、図7に示すように、溶出液2を両側から当てて衝撃し、貫通穴10をあける。この方法によると、あけられた穴10の縁面521は、図7(2)に示すような内側に凸の形状となる。
この方法でも、溶出液2による溶出を利用して穴あけを行うので、周縁にギザギザが形成されない。また、この方法では、両側から溶出液2をあてて穴あけを行うので、図1に示す方法に比べると、穴あけに要する時間は半分となる。従って、生産性の点で好適である。
【0041】
次に、硝子穴あけ装置の発明の実施形態について説明する。
図8及び図9は、第一の実施形態に係る硝子穴あけ装置を示した概略図であり、図8は正面概略図、図9は側面概略図である。図8及び図9に示す装置は、図1に示す第一の実施形態の硝子穴あけ方法に用いられる装置となっている。
図8及び図9に示す装置は、硝子を溶出することが可能な溶出液2を直径20μm〜400μmの粒状にして噴射するノズル3と、ノズル3に溶出液2を供給する溶出液供給系20と、噴射された溶出液2が、対象物1の所定箇所に当たるよう対象物1を保持する対象物保持機構11とを備えている。
【0042】
溶出液2としては、前述したように、フッ酸のような強酸を所定の濃度に希釈したものが使用される。ノズル3は、図2に示すものと同様である。この装置は、複数のノズル3を備えている。装置は、内部で穴あけ加工を行う処理チャンバー6を備えており、各ノズル3は処理チャンバー6内に配置されている。
本実施形態では、対象物1は板状のもの(板硝子)である。対象物保持機構11には、処理チャンバー6内への対象物1を搬入し、穴あけ後に対象物1を処理チャンバー6から搬出する搬送機構が兼用されている。
【0043】
処理チャンバー6は、対象物1を搬入する搬入口61と、穴あけ後に対象物1を搬出する搬出口62とを備えている。搬入口61及び搬出口62は、封鎖ゲート63で開閉されるようになっている。尚、開閉は、封鎖ゲート63を上下方向に移動させることで行われる。
搬送機構は、図8に示すように対象物1を水平な姿勢にしつつ水平方向に搬送する機構となっている。搬送機構は、水平な搬送ラインに沿って配置された多数の搬送コロ12によって構成されている。搬送ラインは、搬入口61及び搬出口62を通して設定されており、対象物1は、搬入口61から搬入されて穴あけが行われた後、搬出口62から搬出されるようになっている。
【0044】
また、処理チャンバー64の内壁面や、処理チャンバー64内の各部材の表面は、溶出液2に対して耐薬品性の構成となっている。例えば溶出液2がフッ酸である場合、内壁面や各部材の表面はテフロン(デュポン社の登録商標)のようなフッ素樹脂をコーティングして覆った構成とされる。尚、搬入口61や搬出口62を開閉する封鎖ゲート63は、溶出液2が漏出しないよう液密に封鎖を行うようになっている。
【0045】
各ノズル3は、ノズルホルダー7によって保持されている。図10は、図8及び図9に示すノズルホルダー7の平面概略図である。本実施形態の装置は、任意の位置で穴あけができるよう、水平面内の任意の位置にノズル3を位置させることができるようになっている。
より具体的に説明すると、ノズルホルダー7は、ガイドレール状の部材であり、長さ方向の任意の位置にノズル3を位置させることができ、その位置でノズル3を固定することができるようになっている。ノズルホルダー7は、複数設けられており、水平面内に平行に並べられている。
【0046】
ノズルホルダー7の上側には、ホルダーレール71が設けられている。ホルダーレール71も、ガイドレール状の部材である。ホルダーレール71も、水平面内に平行に並べられて複数設けられている。ホルダーレール71の延びる方向は、各ノズルホルダー7の延びる方向に対して垂直である。即ち、図10に示すように、各ノズルホルダー7と各ホルダーレール71は、直角格子状に交差した状態で配置されている。
各ノズルホルダー7は、ホルダーレール71の下面に取り付けられている。各ノズルホルダー7は、ホルダーレール71の延びる方向に位置調節が可能で、各ノズルホルダー7を任意の位置で固定できるようになっている。
【0047】
また、図9に示すように、装置は、各ノズル3に溶出液2を供給する溶出液供給系20と、各ノズル3に圧縮空気を供給する圧縮空気供給系200を備えている。溶出液供給系20は、各ノズル3に溶出液2を供給する溶出液供給管21を含んでおり、この溶出液供給管21は、処理チャンバー6の器壁を液密に貫通している。溶出液供給系20は、溶出液2を溜めた液溜め22と、液溜め22から溶出液供給管21を介して各ノズル3に溶出液2を送る送液ポンプ23と、調圧用バルブ24などから構成されている。尚、溶出液2に界面活性剤が添加される場合、液溜め内に予め添加しておくか、溶出液供給管21に界面活性剤の混合器が設けられる。また、圧縮空気供給系200は、不図示のボンベにつながる圧縮空気供給管201や圧縮空気供給管201上に設けられれた開閉バルブ202、調圧用バブル203等から構成されている。
【0048】
尚、溶出液供給管21と各ノズル3、及び圧縮空気供給管201と各ノズル3とは、それぞれフレキシブルチューブ25,204でつながれている。これは、各ノズル3の位置が変更されるためである。
また、図8及び図9に示すように、処理チャンバー6の底部は漏斗状になっており、最下部には、排出口64が設けられている。排出口64には、使用済みの溶出液2を排出する排出管65が接続されている。対象物1の表面の材料が溶け込んだ溶出液2は、処理チャンバー64の底部に落下し、排出口64及び排出管65を通って排出されるようになっている。
【0049】
次に、上記装置の動作について、図11を参照しながら説明する。図11は、図8及び図9に示す装置により穴あけする対象物の一例について示した正面断面概略図である。
前述したようなイメージセンサモジュール用の光学窓52の場合、小さな板状の部材に一つの窓開口520が設けられた構成である。この場合、大きな板状の部材を対象物1として所定箇所にそれぞれ穴あけを行い、その後、対象物1を切断して製品とすることが生産性の点で好ましい。図11に示すのはこの例となっている。図11において、対象物1を切断するライン(以下、切断ライン)100が破線で示されている。
【0050】
図11(1)に示すように、対象物1の表面を及び裏面を保護層4で覆い、表面側の保護層4に穴あけ用開口40を形成する。穴あけ用開口40を形成する位置は、穴あけする位置である。尚、対象物1の端面など、保護層4は必要に応じて他の場所にも形成される。この対象物1を、図8に示すように、搬送機構により処理チャンバー6内に搬送し、所定位置で停止させる。停止位置は、処理チャンバー6内の各ノズル3が、各穴あけ用開口40の真上に位置する位置である。尚、各穴あけ用開口40の位置(即ち、穴あけ位置)の位置関係となるよう、各ノズル3の位置が予め調節されている。この位置調節は、上記説明から解るように、各ノズルホルダー7をホルダーレール71上の所定位置で固定するとともに、各ノズル3をノズルホルダー7上の所定位置で固定することにより行われる。
【0051】
この状態で、図8に示すように、各ノズル3から溶出液2を噴射させる。噴射された溶出液2は、前述したように各穴あけ用開口40を通過して対象物1の表面に当てられ、表面を衝撃する。この状態を所定時間維持することで、前述したように穴あけが行われる(図11(2))。次に、保護層4を除去し、洗浄工程などを必要に応じて行う。そして、対象物1を切断ライン100で切断し、バリ取り等の必要な工程を経て製品(光学窓)が完成する(図11(3))。尚、前述したように、保護層4は、特定の目的のため除去されずに残留する場合もある。
【0052】
上記装置によれば、溶出液2による硝子の溶出を利用して穴あけを行うので、周縁にギザギザが形成されない美しい形状の穴10を形成することができる。その上、複数のノズル3を備えて複数の箇所で同時に穴あけを行うので、大きな対象物1から複数の製品を作製する場合等に好適である。
【0053】
次に、硝子穴あけ装置の発明の第二の実施形態について説明する。図12及び図13は、第二の実施形態に係る硝子穴あけ装置の概略図であり、図12は正面概略図、図13は側面概略図である。
図12及び図13に示す装置は、図7に示す第二の実施形態の硝子穴あけ方法の実施に用いられる装置である。即ち、この装置は、対象物1の両側にノズル3が配置されており、両側から溶出液2を噴射して穴あけを行う装置となっている。
【0054】
この装置は、搬送機構による搬送ラインの下側にもノズル3が設けられている点を除き、図8及び図9に示す装置とほぼ同様である。下側のノズル3も複数であり、各ノズルホルダー7に位置調節可能な状態で取り付けられている。そして各ノズルホルダー7は、ホルダーレール71によってやはり位置調節可能となっている。下側の各ノズル3も、溶出液供給管21及び圧縮空気供給管201にそれぞれフレキシブルチューブ25,204でつながれている。
【0055】
図12及び図13に示す装置を使用して穴あけする場合も、同様に対象物1の両側の面に保護層4を設け、穴あけ用開口40を形成する。穴あけ用開口40は、裏側の保護層4にも形成する。この対象物1を処理チャンバー6内に搬入し、所定位置で停止させる。所定位置とは、各穴あけ用開口40が上下のノズル3を結ぶ垂直な線上に位置する位置である。この状態で、各ノズル3に溶出液2と圧縮空気を供給し、穴あけを行う。尚、上下のノズル3は、同一の垂直な線上に位置するよう予め位置調節される。
【0056】
この装置によっても、周縁にギザビザの無い美しい穴あけが行える。そして、両側から穴あけをするので、穴あけが短時間に終了する。尚、対象物1の両側において同じ衝撃圧力とするため、下側のノズル3における溶出液2の噴射圧力を上側のノズル3における溶出液2の噴射圧力より高くする場合があり得る。
【0057】
次に、硝子穴あけ装置の発明の第三の実施形態について説明する。図14及び図15は、第三の実施形態に係る硝子穴あけ装置を示したもので、図14は正面概略図、図15は側面概略図である。
第三の実施形態においても、板状の対象物1を穴あけすることが想定されている。この装置は、第一第二の実施形態と異なり、板状の対象物1を立てた(垂直な姿勢にした)状態で穴あけするものとなっている。
【0058】
この第三の実施形態においても、処理チャンバー6内で穴あけが行われるようになっており、処理チャンバー6内に対象物1を搬入し、穴あけ後に対象物1を搬出する搬送機構が対象物保持機構11として設けられている。本実施形態の搬送機構は、対象物1を垂直に立てて搬送する関係上、特別な保持具(以下、対象物保持具)8を使用して搬送を行うようになっている。図16は、第三の実施形態における対象物保持具8の斜視概略図である。
【0059】
図16に示すように、対象物保持具8は、対象物1をほぼ垂直に立てて保持する部材である。対象物保持具8は、水平な姿勢のベース板81と、ベース板81に立設された支柱82と、支柱82に取り付けられた緩衝具83とから主に構成されている。
支柱82は、細長い長方形のベース板81の角の部分にそれぞれ設けられており、計4本設けられている。ベース板81の長辺方向に沿って延びる梁部材84が設けられており、各支柱82の上端をつないで対象物保持具8を補強している。各支柱82は、立てられた対象物1より少し高さが高い。ベース板81の短辺における二本の支柱82の間隔は、対象物1の厚さより少し大きい。ベース板81の長辺方向における二本の支柱82の間隔は、対象物1の長さより少し長い。対象物1は、これらの支柱82で出来た空間に挿入されるようにして保持される。
【0060】
緩衝具83は、対象物1に直接接触する部材であり、対象物1がぐらつかないようにするものである。緩衝具83は、溶出液2に対して腐食されない(耐薬品性のある)材料で形成されており、例えばテフロン(デュポン社の登録商標)のようなフッ素樹脂で形成されている。
図16に示すように、緩衝具83は、ベース板81の長辺方向の両端において各支柱82の下端をつなぐよう設けられたものと、同じく長辺方向の両端において支柱82の上端をつなぐよう設けられたものからなる。保持された対象物1は、これらの緩衝具83に各角部が接触する。対象物1の下端角部に接触する下側の緩衝具83は、短辺方向の断面形状が凹状で、長辺方向の断面形状がL字状である。対象物1の上端角部に当接する緩衝具83は、短辺方向の断面形状が横にした凹状である。図14に示すように、対象物1を装着する場合、上から挿入し、各緩衝具83の凹部に落とし込むようにする。
【0061】
このような対象物保持具8を搬送する搬送機構として、本実施形態においても、搬送コロ12によるものが採用されている。但し、図14及び図15に示すように、搬送コロ12は上下に設けられており、上下の位置で対象物保持具8を挟みながら搬送するようになっている。即ち、各搬送コロ12は、回転軸を水平に向けた姿勢で設けられており、対象物保持具8の高さの距離を隔てて上下に設けられている。上下の搬送コロ12の組みは、搬送ラインに沿って所定間隔で多数設けられている。各搬送コロ12は、不図示の駆動源により回転するようになっており、これにより対象物保持具8を水平移動させ、対象物1を搬送するようになっている。
尚、各搬送コロ12は、回転軸の長さは対象物保持具8の厚さよりも僅かに長くなっている。図13に示すように、各搬送コロ12は、回転軸とコロによって形成される段差を有しており、対象物保持具8の縁がこの段差内に位置した状態となっている。これは、搬送動作を安定化させるためである。
【0062】
本実施形態の装置は、対象物1の両側から溶出液2を噴射して穴あけを行う装置となっている。即ち、図15に示すように、ノズル3は、搬送ラインに対して両方の側に配置されている。尚、図14では、ノズル及びノズルホルダーの図示は省略されている。
本実施形態においても、複数のノズル3が設けられている。図15に示すように、各ノズル3は、左右の両側において垂直な同一平面内に設けられている。各ノズル3は、噴射口を水平方向に向けて配置されており、溶出液2の噴射方向は、対象物1の表面に沿った水平方向(本実施形態では対象物1の搬送方向)に対して直交する水平方向である。即ち、左右の向かい合うノズル3は、噴射口を結ぶ線が搬送方向に対して垂直な水平方向となっている。尚、各向かい合う左右のノズル3において、対象物1までの距離は左右同じとなっている。
【0063】
本実施形態においても、各ノズル3の位置調節が可能となっている。各ノズル3は、垂直な姿勢のノズルホルダー7に取り付けられており、複数のノズルホルダー7を保持したホルダーレール71が設けられている。ノズルホルダー7及びホルダーレール71は、水平なものを垂直にしただけで、他の構成は図10に示すものと同様である。
【0064】
第三の実施形態の硝子穴あけ装置の動作について、以下に説明する。
同様に保護層4及び穴あけ用開口40が形成された対象物1を、図16に示すように対象物保持具8に搭載する。対象物1が搭載された対象物保持具8を、搬送機構によって処理チャンバー6内に搬送し、所定位置で停止させる。この位置は、各ノズル3における噴射方向の線上に各穴あけ用開口40が位置する位置である。
この位置に対象物1を保持した状態で、各ノズル3に溶出液2及び圧縮空気を供給して溶出液2を噴射させる。そして、噴射された溶出液2で対象物1の表面を衝撃し、同様に穴あけを行う。尚、溶出液2の噴射圧力は左右のノズル3において同じである。穴あけ後、対象物保持具8を移動させ、対象物1を処理チャンバー6から搬出する。
【0065】
この実施形態においても、溶出液2による溶出を利用して穴あけが行われるため、穴10の周縁にギザギザが形成されない。また、対象部の両側から溶出液2を噴射して穴あけを行うので、短時間に穴あけを行うことができる。特に、この実施形態では、対象物1を垂直に保持し、同じ距離に配置した左右のノズル3から溶出液2を噴射させて穴あけを行うので、同じ噴射圧力で噴射させるだけで左右均等に穴あけを進めることができる。
【0066】
また、対象物1を垂直に保持して穴あけをする本実施形態の装置は、水平に保持しながらの穴あけが難しい場合に好適に使用される。例えば、大型の液晶ディスプレイやプラズマディスプレイのような大型のフラットパネルディスプレイでは、非常に大きな硝子基板53から製品を製造することが多い。このような大型の硝子基板53では、水平に保持すると撓みなどが発生してしまうため、水平に保持しながらの穴あけが難しい。このような場合には、上記第三の実施形態の装置を使用し、垂直に保持しながら穴あけを行う。
尚、第三の実施形態の装置において、対象物保持具8を使用せず、対象物1を直接搬送コロで搬送しながら所定位置で保持して穴あけを行うようにしても良い。但し、対象物保持具8を使用すると、対象物1が直接搬送コロに触れないので、対象物1に傷などがつきにくいという長所がある。
【0067】
また、搬送の方式としては、搬送コロの他、ラックアンドピニオン等の他の方式を採用することもできる。ラックアンドピニオン式の場合、対象物保持具8の下面にラックを設ける。そして、搬送方向に沿ってピニオンを所定間隔をおいて多数配置し、ピニオンを回転させて対象物保持具8を水平移動させる。
尚、第三の実施形態の装置において、ノズル3を対象物1の片側のみに配置し、片側からのみ溶出液2を噴射させて穴あけを行うよう構成することもできる。
【0068】
上記各実施形態では、対象物1は板状であったが、本願発明はこれに限られるものではない。棒状、球状その他の形状の対象物1に対して穴あけを行う場合にも、本願発明は実施可能である。
また、各実施形態では、上述の通り保護層4を設けこれに穴あけ用開口40をして穴あけを行ったが、保護層4を設けないで穴あけすることも可能である。溶出液2の粒が広がらないもので、穴あけする箇所にのみ溶出液2を当てることが可能なノズルを使用するようにすれば、保護層4を設けないで穴あけすることも可能である。この場合、対象物1の表面の硝子を溶かし出した溶出液2が表面で穴あけ箇所の周囲に流れてしまわないように少しずつ穴あけを行うようにすれば良く、また、下方に配置したノズル3から上方に向けて噴射させた溶出液2のみで穴あけを行うようにすれば、穴あけ箇所にのみ溶出液2を当てることは容易である。
【0069】
尚、ノズル3としては、上記二流体ノズル以外のものでも良く、また二流体ノズルを使用する場合でも、空気以外の気体(例えば、窒素のような不活性ガス)を使用して溶出液2を噴射しても良い。
また、溶出液については、前述したフッ酸の他、硫酸その他の強酸を希釈したものを用いる場合があり、硝子を溶出させることができるものであれば、強酸の希釈液には限られない。
また、本願発明の硝子穴あけ方法及び硝子穴あけ装置は、前述した光学窓52の作製以外の用途にも使用され得る。例えば、硝子製のディスク基板の中心穴あけ等にも使用できる。
【実施例1】
【0070】
次に、本願発明の実施例を説明する。
例えば、硼珪酸硝子より成る厚さ500μm程度の板状の対象物に対して穴あけを行う場合について説明する。
対象物の表面には、保護層としてクロム膜を1500オングストローム程度の厚さで形成し、直径2.2mm程度の大きさの穴あけ用開口を設けておく。溶出液としては、純水を希釈液として用いて10%程度の濃度としたフッ酸を用いる。必要に応じ、界面活性剤としてフッ素系のものを使用し、0.3%程度の重量比で添加する。
溶出液を圧縮空気で霧状にしてノズルから噴射させ、20μm〜200μm程度の粒径とし、15×10−2N/cm程度の圧力で対象物の表面を衝撃する。衝撃を2400秒程度継続することで、穴あけが完了する。形成された穴は、入射側開口が直径3mm程度、出射側開口の直径が2.2mm程度で、縁面角度はほぼ45度である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】第一の実施形態に係る硝子穴あけ方法を示した正面概略図である。
【図2】図1の方法に使用されるノズル3の正面断面概略図である。
【図3】実施形態に係るイメージセンサモジュールの正面断面概略図である。
【図4】実施形態のイメージセンサモジュールにおける光学窓52の構造上の特徴点を示す概略図である。
【図5】穴あけ加工における縁面角度の調整について示した概略図である。
【図6】形成すべき穴10の開口の形状と穴あけ用開口40の大きさについて示した概略図である。
【図7】第二の実施形態に係る硝子穴あけ方法を示した正面概略図である。
【図8】第一の実施形態に係る硝子穴あけ装置を示した正面概略図である。
【図9】第一の実施形態に係る硝子穴あけ装置を示した側面概略図である。
【図10】図8及び図9に示すノズルホルダー7の平面概略図である。
【図11】図8及び図9に示す装置により穴あけする対象物の一例について示した正面断面概略図である。
【図12】第二の実施形態に係る硝子穴あけ装置を示した正面概略図である。
【図13】第二の実施形態に係る硝子穴あけ装置を示した側面概略図である。
【図14】第三の実施形態に係る硝子穴あけ装置を示した正面概略図である。
【図15】第三の実施形態に係る硝子穴あけ装置を示した側面概略図である。
【図16】第三の実施形態における対象物保持具8の斜視概略図である。
【符号の説明】
【0072】
1 対象物
10 穴
11 搬送コロ
2 溶出液
20 溶出液供給系
200 圧縮空気供給系
3 ノズル
4 保護層
40 穴あけ用開口
51 センサ素子
52 光学窓
6 処理チャンバー
7 ノズルホルダー
8 対象物保持具


【特許請求の範囲】
【請求項1】
硝子より成る対象物に微小な穴をあける硝子穴あけ方法であって、
前記硝子を溶出することが可能な溶出液を直径20μm以上400μm以下の粒状にしてノズルから噴射し、
噴射された溶出液を対象物の所定箇所に当てて5×10−2N/cm以上20×10−2N/cm以下の圧力で衝撃し、
当該箇所に対する粒状の溶出液による衝撃を継続することで、当該箇所に貫通穴を形成することを特徴とする硝子穴あけ方法。
【請求項2】
対象物の表面を保護層で覆って前記溶出液が触れないようにするとともに、保護層の前記所定箇所の部分に前記粒径よりも大きい穴あけ用開口を設け、この穴あけ用開口を通して前記溶出液を前記所定箇所に当てることで穴あけを行うことを特徴とする請求項1に記載の硝子穴あけ方法。
【請求項3】
形成すべき穴の形状のうち前記溶出液の入射側の開口の直径をR、対象物の厚さをTとしたとき、前記穴あけ用開口の直径は、R−2Tに相当していることを特徴とする請求項2記載の硝子穴あけ方法。
【請求項4】
前記穴あけ用開口をフォトリソグラフィにより設けることを特徴とする請求項2又は3記載の硝子穴あけ方法。
【請求項5】
前記保護層は、前記穴あけ用開口が予め設けられたフィルムであり、このフィルムを前記対象物に貼り付けることで前記対象物を覆う状態とすることを特徴とする請求項2又は3記載の硝子穴あけ方法。
【請求項6】
前記対象物の両側から同時に前記溶出液を当てての衝撃を行い、これを継続することで貫通穴をあけることを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の硝子穴あけ方法。
【請求項7】
前記溶出液を当てての衝撃は、前記対象物の一方の側からのみ行われるものであり、他方の側の対象物の表面を前記溶出液が触れないよう保護層で覆いながら行うことを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の硝子穴あけ方法。
【請求項8】
前記ノズルは、内部で前記溶出液に圧縮気体を混合して噴射する二流体ノズルであることを特徴とする請求項1乃至7いずれかに記載の硝子穴あけ方法。
【請求項9】
前記溶出液には界面活性剤が添加されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の硝子穴あけ方法。
【請求項10】
光学部品の入射側に設けられる硝子より成る光学窓を作製する方法であって、
光学窓の元になる板材の硝子材料を溶出させることが可能な溶出液を直径20μm以上400μm以下の粒状にしてノズルから噴射し、噴射された溶出液を板材の所定箇所に当てて5×10−2N/cm以上20×10−2N/cm以下の圧力で衝撃し、
当該箇所に対する粒状の溶出液による衝撃を継続して当該箇所に穴あけをして窓開口を形成することを特徴とする光学窓作製方法。
【請求項11】
前記板材の表面を保護層で覆って前記溶出液が触れないようにするとともに、保護層の前記所定箇所の部分に前記粒径よりも大きい穴あけ用開口を設け、この穴あけ用開口を通して前記溶出液を前記所定箇所に当てることで前記穴あけを行うことを特徴とする請求項10に記載の光学窓作製方法。
【請求項12】
形成すべき穴の形状のうち前記溶出液の入射側の開口の直径をR、対象物の厚さをTとしたとき、前記穴あけ用開口の直径は、R−2Tに相当していることを特徴とする請求項11記載の光学窓作製方法。
【請求項13】
前記穴あけ用開口をフォトリソグラフィにより設けることを特徴とする請求項11又は12記載の光学窓作製方法。
【請求項14】
前記保護層は、前記穴あけ用開口が予め設けられたフィルムであり、このフィルムを前記板材に貼り付けることで前記対象物を覆う状態とすることを特徴とする請求項11又は12記載の光学窓作製方法。
【請求項15】
前記溶出液を当てての衝撃は、前記板材の一方の側からのみ行われるものであり、他方の側の板材の表面を前記溶出液が触れないよう保護層で覆いながら行うことを特徴とする請求項10乃至14いずれかに記載の光学窓作製方法。
【請求項16】
前記ノズルは、内部で前記溶出液に圧縮気体を混合して噴射する二流体ノズルであることを特徴とする請求項10乃至15いずれかに記載の光学窓作製方法。
【請求項17】
前記溶出液には界面活性剤が添加されていることを特徴とする請求項10乃至16のいずれかに記載の光学窓作製方法。
【請求項18】
光学部品の入射側に設けられる硝子より成る光学窓を作製するに際して、光学窓の縁面が光軸に対して成す角を所望の角度にする光学窓縁面角度調整方法であって、
光学窓は、入射側開口が出射側開口よりも大きい形状であり、
光学窓の元になる対象物の表面に保護層を形成する保護層形成工程と、
保護層形成工程において形成された保護層に穴あけ用開口を形成する穴あけ用開口形成工程と、
前記硝子を溶出させることが可能な溶出液を穴あけ用開口を通して対象物に供給することで穴あけを行う穴あけ工程とを有しており、
保護層形成工程は、硝子の表面を保護層で覆って溶出液が硝子の表面に付着しないようにする工程であり、
穴あけ用開口形成工程は、前記入射側開口より小さい大きさの穴あけ用開口を形成する工程であり、
穴あけ工程は、前記溶出液を前記穴あけ用開口よりも小さい直径20μm以上400μm以下の粒状にしてノズルから噴射し、噴射された溶出液を前記穴あけ用開口を通して対象物に当てて5×10−2N/cm以上20×10−2N/cm以下の圧力で衝撃し、この衝撃を穴が貫通するまで継続する工程であり、
穴あけ工程において、前記衝撃圧力及び前記溶出液の溶出成分の濃度を調整することで、作製される光学窓の前記縁面の角度を調整することを特徴とする光学窓縁面角度調整方法。
【請求項19】
硝子より成る対象物に微小な穴をあける硝子穴あけ装置であって、
前記硝子を溶出することが可能な溶出液を直径20μm以上400μm以下の粒状にして噴射するノズルと、
ノズルに溶出液を供給する溶出液供給系と、
噴射された溶出液が、対象物の所定箇所に当たるよう対象物を保持する対象物保持機構とを備えており、
対象物保持機構は、溶出液による対象物の所定箇所への衝撃圧力が5×10−2N/cm以上20×10−2N/cm以下となる位置で対象物を保持するものであることを特徴とする硝子穴あけ装置。
【請求項20】
前記対象物の表面には前記溶出液が触れないようにする保護層が設けられているとともにこの保護層の前記所定箇所の部分には穴あけ用開口が設けられており、前記ノズルは、前記溶出液をこの穴あけ用開口より小さな粒径の粒状にして噴射するものであることを特徴とする請求項19記載の硝子穴あけ装置。
【請求項21】
前記対象物の両側から同時に前記溶出液を当てて衝撃を行うことで穴あけが行えるよう、前記ノズルは前記対象物保持機構による対象物の保持位置の両側に設けられていることを特徴とする請求項19又は20記載の硝子穴あけ装置。
【請求項22】
前記ノズルは、内部で前記溶出液に圧縮気体を混合して噴射する二流体ノズルであることを特徴とする請求項19、20又は21に記載の硝子穴あけ装置。
【請求項23】
前記溶出液供給系は、前記溶出液に界面活性剤を添加して供給するものであることを特徴とする請求項19乃至22いずれかに記載の硝子穴あけ装置。
【請求項24】
センサ素子を含むモジュール本体と、センサ素子の入射側に設けられた硝子製の光学窓とから成るイメージセンサモジュールであって、
光学窓は、硝子を溶出させることが可能な溶出液を直径20μm以上400μm以下の粒状にしてノズルから噴射し、噴射された溶出液を板材の所定箇所に当てて5×10−2N/cm以上20×10−2N/cm以下の圧力で衝撃し、当該箇所に対する粒状の溶出液による衝撃を継続することで当該箇所に穴あけすることで作製されたものであることを特徴とするイメージセンサモジュール。
【請求項25】
前記光学窓の縁面が光軸に対して成す角は45度であることを特徴とする請求項24記載のイメージセンサモジュール。
【請求項26】
前記光学窓の表面には、前記溶出液に対して耐性を持つ保護層が形成されており、この保護層は、所定の光学特性を持つ光学フィルタとなっていることを特徴とする請求項24又は25記載のイメージセンサモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−285369(P2008−285369A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−132790(P2007−132790)
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【特許番号】特許第4088330号(P4088330)
【特許公報発行日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(395016578)株式会社テスコム (12)
【Fターム(参考)】