説明

硬化性樹脂用添加剤組成物およびこれを用いた硬化性樹脂組成物

【課題】半導体封止材等に用いられうる硬化性樹脂組成物において、低弾性率化による応力緩和効果および難燃性付与効果を十分なレベルに確保しつつ、硬化物の他の部材との接着性をより一層向上させうる手段を提供する。
【解決手段】(A)分子の両末端に反応性官能基を有する両末端型反応性ポリシロキサン(a1)と、脂肪族ジオールジグリシジルエーテル、脂環式ジオールジグリシジルエーテルおよびポリ(オキシアルキレン)グリコールジグリシジルエーテルからなる群から選択されるジグリシジルエーテル(a2)との反応生成物、(B)硬化剤、並びに、(C)硬化促進剤を含む硬化性樹脂用添加剤組成物により、上記課題は解決されうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂用添加剤組成物およびこれを用いた硬化性樹脂組成物に関する。本発明により提供される硬化性樹脂組成物は、例えば、半導体装置において半導体素子を封止するための半導体封止材や、アンダーフィル材、ポッティング材、シール材等の用途に好適に用いられうる。
【背景技術】
【0002】
近年、集積回路(IC)、大規模集積回路(LSI)、超大規模集積回路(VLSI)などの電子部品や半導体装置は、高密度化・高集積化の傾向が強まっている。かような流れを受けて、これらの実装方式は、挿入実装から表面実装へと移行しつつある。また、半導体装置の小型化、軽量化、リードフレーム多ピン化という要求から、表面実装型QFP(Quad Flat Package)などに代表される半導体装置が実用化されている。これらの半導体装置は、生産性、コスト、信頼性などのバランスに優れるという観点から、硬化性樹脂組成物の1種であるエポキシ樹脂組成物からなる半導体封止材によって封止されるのが主流となっている。かような半導体封止材に求められる性能は非常に多岐にわたっている。このため、硬化性樹脂組成物を用いた半導体封止材に関する研究は依然として盛んであり、数多くの技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、半田耐熱性、離型性、連続成形性、成形品外観、耐金型汚れ性等の各種性能に優れる半導体封止用エポキシ樹脂組成物として、カルボキシ基を有するブタジエン・アクリロニトリル共重合体および/またはカルボキシ基を有するブタジエン・アクリロニトリル共重合体とエポキシ樹脂との反応生成物を組成物中に含ませる技術が開示されている。
【0004】
一方、上述したような装置の小型化、軽量化、リードフレーム多ピン化の傾向を受けて、半導体封止材に対する信頼性のより一層の向上も求められている。例えば、半導体装置等の電子部品は、十分な難燃性を示すことが必要である。この点に関し、上記特許文献1において樹脂組成物に添加されている共重合体やこれとエポキシ樹脂との反応生成物は、主として脂肪族骨格を有するものであることから、難燃性が十分ではないという問題がある。
【0005】
半導体封止材に対して難燃性を付与するための技術としては、例えば、シリコーン化合物を用いる技術が提案されている。例えば、特許文献2には、所定の金属水酸化物が少なくとも分子の両末端に反応性官能基を有する両末端型反応性シリコーン化合物によって処理されてなる処理済み金属水酸化物を熱硬化性樹脂組成物中に含ませる技術が開示されている。特許文献1の開示によれば、かような構成とすることで、有害なハロゲン化物や三酸化アンチモンを用いることなく、樹脂組成物に対して難燃性を付与することができる、とされている。
【0006】
また、シリコーン化合物を硬化性樹脂組成物に添加すると、硬化物の貯蔵弾性率(E’)を低下させうるという利点もある。したがって、硬化性樹脂組成物へのシリコーン化合物の添加は、半導体封止材等の用途における応力緩和効果をより一層向上させるという観点からも、好ましいものといえる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−290969号公報
【特許文献2】特開平10−251486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に記載の技術のようにシリコーン化合物を用いて構成された硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂等からなる他の部材との接着性が十分ではないという問題がある。特に、高温−低温の冷熱サイクルが繰り返される可能性のある半導体装置などにおいては、このように接着性が不十分であることに起因して、硬化物が他の部材との界面から剥離するといった問題をもたらす虞がある。
【0009】
そこで本発明は、半導体封止材等に用いられうる硬化性樹脂組成物において、低弾性率化による応力緩和効果および難燃性付与効果を十分なレベルに確保しつつ、硬化物の他の部材との接着性をより一層向上させうる手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意研究を行なった。その過程で、分子の両末端に反応性官能基を有する両末端型反応性ポリシロキサンと、所定のジグリシジルエーテルとの反応生成物を用いて硬化性樹脂用添加剤組成物を構成することを試みた。そして、かような添加剤組成物によれば上記課題が解決されうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明の一形態によれば、(A)分子の両末端に反応性官能基を有する両末端型反応性ポリシロキサン(a1)と、脂肪族ジオールジグリシジルエーテル、脂環式ジオールジグリシジルエーテルおよびポリ(オキシアルキレン)グリコールジグリシジルエーテルからなる群から選択されるジグリシジルエーテル(a2)との反応生成物、(B)硬化剤、並びに、(C)硬化促進剤を含む硬化性樹脂用添加剤組成物が提供されうる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の添加剤組成物の、低弾性率化による応力緩和効果および難燃性付与効果は、十分なレベルに確保されている。そのうえ、本発明の添加剤組成物は、他の部材との接着性にも優れたものである。したがって、本発明の添加剤組成物をエポキシ樹脂等の硬化性樹脂に添加して樹脂組成物とすることで、上記の特性に優れた硬化性樹脂組成物が提供されうる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきであり、下記の具体的な形態によって制限を受けることはない。
【0014】
[硬化性樹脂用添加剤組成物]
本発明の一形態は、(A)分子の両末端に反応性官能基を有する両末端型反応性ポリシロキサン(a1)と、脂肪族ジオールジグリシジルエーテル、脂環式ジオールジグリシジルエーテルおよびポリ(オキシアルキレン)グリコールジグリシジルエーテルからなる群から選択されるジグリシジルエーテル(a2)との反応生成物、(B)硬化剤、並びに、(C)硬化促進剤を含む硬化性樹脂用添加剤組成物である。以下、本形態の組成物に含まれる各成分について、詳細に説明する。
【0015】
≪成分(A):反応生成物≫
成分(A)は、分子の両末端に反応性官能基を有する両末端型反応性ポリシロキサン(a1)(以下、単に「ポリシロキサン(a1)」とも称する)と、所定のジグリシジルエーテル(a2)との反応生成物である。
【0016】
反応生成物(A)の原料の一方である両末端型反応性ポリシロキサン(a1)の具体的な形態について特に制限はなく、分子の両末端に反応性官能基を有するポリシロキサンであれば、適宜用いられうる。両末端型反応性ポリシロキサン(a1)の一例として、例えば、下記化学式1:
【0017】
【化1】

【0018】
で表されるものが挙げられる。
【0019】
化学式1において、Rは、それぞれ独立して、置換または非置換の非反応性の1価の炭化水素基を表す。ここで、炭化水素基が「非反応性である」とは、ジグリシジルエーテル(a2)との反応性が後述するRよりも相対的に低いことを意味する。好ましくは、非反応性の炭化水素基は後述するジグリシジルエーテル(a2)と反応しないものである。Rの具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などの炭素数1〜6(好ましくは炭素数1〜4、より好ましくは炭素数1〜3)の非置換のアルキル基;3,3,3−トリフルオロn−プロピル基などの炭素数1〜6(好ましくは炭素数1〜4、より好ましくは炭素数1〜3)の置換されたアルキル基;フェニル基などの炭素数6〜20(好ましくは炭素数6〜8)の非置換のアリール基(特に好ましくはフェニル基)などが挙げられる。Rは、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基またはフェニル基であり、特に好ましくはメチル基である。最も好ましい形態では、化学式1におけるすべてのRがメチル基である。
【0020】
化学式1において、Rは、それぞれ独立して、反応性官能基を表す。ここで、「反応性官能基」とは、ジグリシジルエーテル(a2)と反応しうる官能基を意味する。Rの具体的な形態について特に制限はなく、上述の定義を満足する限り任意のRが適宜採用されうる。Rの具体例としては、例えば、ヒドロキシ基、下記化学式2で表されるカルボキシアルキル基、下記化学式3で表されるヒドロキシフェニルアルキル基、下記化学式4で表されるヒドロキシアルキル基、および、下記化学式5で表されるアミノアルキル基などが挙げられるが、これに限定されない。
【0021】
【化2】

【0022】
【化3】

【0023】
【化4】

【0024】
【化5】

【0025】
化学式2〜5において、R、R、R、およびRは、それぞれ、アルキレン基を表す。また、化学式3において、「Ph」は、フェニレン基を表す。アルキレン基の具体例としては、例えば、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、イソプロピレン基、n−ブチレン基、イソブチレン基、sec−ブチレン基などの炭素数2〜18のアルキレン基が挙げられる。アルキレン基は、好ましくはエチレン基またはn−プロピレン基であり、特に好ましくはエチレン基である。
【0026】
化学式1においてRがともにヒドロキシ基である(つまり、分子の両末端にシラノール基が存在する)化合物の市販品としては、信越化学工業株式会社の「X−21−5841」や「KF−9701」などがある。また、化学式1においてRがともに化学式2で表されるカルボキシアルキル基である化合物の市販品としては、東レ・ダウコーニング株式会社の「BY16−750」、信越化学工業株式会社の「X−22−162C」などがある。さらに、化学式1においてRがともに化学式3で表されるヒドロキシフェニルアルキル基である化合物の市販品としては、信越化学工業株式会社の「X−22−1821」、東レ・ダウコーニング株式会社の「BY16−752」や「BY16−799」などがある。また、化学式1においてRがともに化学式4で表されるヒドロキシアルキル基である化合物の市販品としては、信越化学工業株式会社の「X−22−160AS」、「KF−6001」、「KF−6002」、「KF−6003」、東レ・ダウコーニング株式会社の「BY16−201」、「BY16−004」、「SF8427」などがある。さらに、化学式1においてRがともに化学式5で表されるアミノアルキル基である化合物の市販品としては、信越化学工業株式会社の「KF−8010」、「X−22−161A」、「X−22−161B」、「KF−8012」、「KF−8008」、東レ・ダウコーニング株式会社の「BY16−871」、「BY16−853U」などがある。
【0027】
なお、化学式1においてRを構成する反応性官能基としては、上述したもの以外にも、シラノール基、ヒドロシリル基、ハロゲン基などが採用されうる。また、Rは、好ましくは化学式2で表されるカルボキシアルキル基、または化学式3で表されるヒドロキシフェニルアルキル基であり、最も好ましくはヒドロキシフェニルアルキル基である。
【0028】
化学式1において、nは−(Si(R−O)−の繰り返し単位数の平均値を表し、0〜600である。nは、好ましくは5〜200であり、より好ましくは5〜100であり、特に好ましくは5〜50である。nが上述した下限値以上の値であると、実用可能な柔軟性を示しつつも硬化性樹脂添加剤として優れた相溶性を発現可能であるため、好ましい。一方、nが上述した上限値以下の値であると、実用可能な硬化性樹脂添加剤としての相溶性柔軟性を示しつつも優れた柔軟性を発現可能であるため、好ましい。なお、nを「平均値」として定義しているのは、通常、化学式1で表されるポリシロキサンのような化合物は、異なるn値を有する複数の化合物の混合物として存在しているためである。
【0029】
反応生成物(A)の原料のもう一方であるジグリシジルエーテル(a2)は、その名の通り、ジオール化合物の2つのヒドロキシ基の水素原子がともにグリシジル基で置換されてなる化合物である。本発明では、ジグリシジルエーテル(a2)は、脂肪族ジオールジグリシジルエーテル、脂環式ジオールジグリシジルエーテルおよびポリ(オキシアルキレン)グリコールジグリシジルエーテルからなる群から選択される。
【0030】
脂肪族ジオールジグリシジルエーテルの具体例としては、例えば、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテルなどの炭素数2〜20(好ましくは炭素数4〜12、より好ましくは炭素数4〜8、特に好ましくは炭素数4〜6)の脂肪族ジオールのジグリシジルエーテルが挙げられる。これらのうち、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルの市販品としては、ナガセケムテックス株式会社の「デナコールEX−212L」、阪本薬品工業株式会社の「SR−16H」や「SR−16HL」、四日市合成株式会社の「エポゴーセー(登録商標)HD」などがある。また、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルの市販品としては、ナガセケムテックス株式会社の「デナコールEX−214L」がある。
【0031】
脂環式ジオールジグリシジルエーテルの具体例としては、例えば、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ジシクロペンテニルジアルコールジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ジヒドロキシテルペンジグリシジルエーテルなどの炭素数3〜20(好ましくは炭素数6〜12、より好ましくは炭素数7〜10)の脂環式ジオールのジグリシジルエーテルが挙げられる。これらのうち、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルの市販品としては、ナガセケムテックス株式会社の「デナコールEX−216L」がある。
【0032】
ポリ(オキシアルキレン)グリコールジグリシジルエーテルの具体例としては、例えば、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリ(テトラメチレン)グリコールジグリシジルエーテルなどが挙げられる。なお、ポリ(オキシアルキレン)グリコールジグリシジルエーテルは、好ましくは、数平均分子量が150〜20000(より好ましくは200〜5000、さらに好ましくは300〜2000)のポリ(オキシアルキレン)グリコールのジグリシジルエーテルである。ここで、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルの市販品としては、阪本薬品工業株式会社の「SR−2EG」、ナガセケムテックス株式会社の「デナコールEX−850L」がある。また、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルの市販品としては、阪本薬品工業株式会社の「SR−8EG」や「SR−8EGS」がある。さらに、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテルの市販品としては、阪本薬品工業株式会社の「SR−TPG」があり、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルの市販品としては、阪本薬品工業株式会社の「SR−4PG」がある。
【0033】
ジグリシジルエーテル(a2)としては、好ましくは1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルまたは数平均分子量が150〜1000のポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリ(テトラメチレン)グリコールジグリシジルエーテルである。
【0034】
成分(A)の反応生成物の平均分子量について特に制限はないが、数平均分子量および重量平均分子量は、好ましくは1500〜100000であり、より好ましくは1800〜50000であり、さらに好ましくは2000〜50000である。これらの平均分子量の値がそれぞれの範囲の下限値以上の値であれば、実用可能な水準での柔軟性と非常に優れた相溶性を両立し、かつ硬化物の低弾性化に効率よく寄与できるため、好ましい。特に、重量平均分子量が20000以上であれば、低弾性率化による応力緩和効果を十分に確保することができ、しかも、難燃剤を必ずしも用いない場合であっても、優れた難燃性が発揮されうるという点で非常に好ましい。一方、上述した平均分子量の値がそれぞれの範囲の上限値以下の値であれば非常に優れた柔軟性と実用可能な水準での相溶性を両立し、かつ硬化物の低弾性化に効率よく寄与できるため、好ましい。なお、反応生成物の平均分子量の値としては、後述する実施例に記載の手法によって測定される値を採用するものとする。
【0035】
成分(A)の原料は、上述したように両末端型反応性ポリシロキサン(a1)、および、所定のジグリシジルエーテル(a2)である。これらを反応させると、各原料の両末端に存在する反応性官能基とエポキシ基とが反応して共有結合を形成することで、重合が進行して反応生成物(A)が生成する。
【0036】
ポリシロキサン(a1)とジグリシジルエーテル(a2)とを反応させて反応生成物(A)を得る具体的な手法について特に制限はなく、従来公知の知見が適宜参照されうる。具体的には、例えば、後述する実施例の欄において合成例としていくつかの例を示すように、触媒の存在下、ポリシロキサン(a1)とジグリシジルエーテル(a2)とを加熱下に反応させればよい。
【0037】
ここで、触媒としては、本発明の添加剤組成物の他の必須成分である硬化促進剤(詳細は後述する)と同様のものが用いられうるため、ここでは詳細な説明を省略する。また、反応条件についても特に制限はなく、ポリシロキサン(a1)の有する反応性官能基(R)とジグリシジルエーテル(a2)の有するエポキシ基との反応に関する従来公知の知見を適宜参照しつつ、反応条件が決定されうる。一例をあげると、反応温度は60〜200℃、好ましくは80〜180℃、より好ましくは100〜160℃、反応時間は反応温度によって大きく変化するが、1〜24時間程度である。
【0038】
なお、反応に用いる原料の使用量や反応条件を調整することにより、得られる反応生成物の平均分子量を制御することが可能である。例えば、ポリシロキサン(a1)の、ジグリシジルエーテル(a2)に対する使用割合を多めにシフトさせると、得られる反応生成物の平均分子量を大きめにシフトさせることが可能である。したがって、原料の使用量は、得られる反応生成物の所望の平均分子量を考慮して決定されうるため、一義的に決定することは困難である。ただし、一例としては、ポリシロキサン(a1)1モルに対して、好ましくは1.005〜2モル、より好ましくは1.01〜1.5モル、さらに好ましくは1.05〜1.3モルのジグリシジルエーテル(a2)を用いるとよい。
【0039】
上述した反応機構から理解されるように、得られる反応生成物の末端は、ポリシロキサン(a1)由来の反応性官能基またはジグリシジルエーテル(a2)由来のエポキシ基となる。ここで、反応生成物の末端に上記の反応性官能基またはエポキシ基のいずれが導入されるかは確率的に決定されるが、得られた反応生成物中にどの程度のエポキシ基が含まれているかについては、エポキシ当量を測定することにより知ることができる。なお、エポキシ当量とは、エポキシ基1モルあたりの反応生成物のグラム数であり、単位は[g/mol]となる。したがって、エポキシ当量が小さいほど、単位重量あたり多くのエポキシ基が含まれていることになる。具体的には、反応生成物のエポキシ当量は、好ましくは750〜25000g/molであり、より好ましくは1000〜20000g/molであり、さらに好ましくは1500〜15000g/molである。エポキシ当量の値がこれらの範囲の下限値以上であれば、反応生成物およびそれを含有する組成物の硬化性を高めることができるため、好ましい。一方、エポキシ当量の値がこれらの範囲の上限値以下であれば、反応生成物およびそれを含有する組成物の低弾性化が著しいことから、好ましい。なお、反応生成物のエポキシ当量の値としては、後述する実施例に記載の手法によって測定される値を採用するものとする。なお、反応生成物を製造する際に、ジグリシジルエーテル(a2)の、ポリシロキサン(a1)に対する使用割合を多めにシフトさせると、得られる反応生成物のエポキシ当量を小さめにシフトさせることが可能である。ただしこの場合には、反応生成物の平均分子量が小さめにシフトすることに留意すべきである。
【0040】
≪成分(B):硬化剤≫
成分(B)は、硬化剤である。硬化剤の具体的な種類については特に制限されない。硬化剤は、本発明の硬化性樹脂用添加剤組成物が硬化性樹脂への添加によって硬化性樹脂組成物とされた後に、加熱等の外部刺激に応答して硬化性樹脂を硬化させる機能を有するものであればよく、従来公知の知見が適宜参照されうる。
【0041】
硬化剤としては、例えば、酸無水物が挙げられる。具体的には、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、オクテニル無水コハク酸、ドデセニル無水コハク酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、2,4−ジエチル無水グルタル酸、無水ハイミック酸(別名:5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物)、無水メチルナジック酸(別名:メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物)、ドデシル無水コハク酸、無水クロレンディック酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、ジフェン酸無水物等の一官能性酸無水物;無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメート)、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸無水物(別名:5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物)、ビフェニルテトラカルボン酸無水物、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸無水物等の二官能性酸無水物;β,γ−無水アコニット酸、無水グリコール酸、無水トリメリット酸、ポリアゼライン酸無水物等の遊離酸を有する酸無水物が例示される。なかでも、上記反応生成物に対する相溶性が高く、かつ低粘度化に効果的であるという点で、オクテニル無水コハク酸、2,4−ジエチル無水グルタル酸、ドデセニル無水コハク酸が好ましく用いられる。なお、これらの硬化剤は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
成分(B)としての硬化剤の含有量について特に制限はなく、上述した成分(A)(反応生成物)のグリシジル基当量に対して、当量比として好ましくは0.6〜1.5であり、より好ましくは0.7〜1.3であり、さらに好ましくは0.8〜1.2である。
【0043】
≪成分(C):硬化促進剤≫
成分(C)は、硬化促進剤である。硬化促進剤の具体的な種類についても特に制限されない。硬化促進剤は、上述した硬化剤が硬化性樹脂を硬化させる作用を促進する機能を有するものであればよく、従来公知の知見が適宜参照されうる。
【0044】
硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール化合物;第3級アミン化合物、アルミニウムやジルコニウム等の有機金属化合物;ホスフィン等の有機リン化合物;その他、異環型アミン化合物、ホウ素錯化合物、有機アンモニウム塩、有機スルホニウム塩、有機過酸化物、これらの反応物が例示される。具体的には、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ)、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物;トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(p−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリフェニルホスフイン・トリフェニルボレート、テトラフェニルホスフィン・テトラフェニルボレート等のリン系化合物;トリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、α−メチルベンジルジメチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等の第3級アミン化合物が例示される。これらのほかにも、マイクロカプセル型硬化促進剤等が用いられてもよい。なかでも、イミダゾール系化合物が好ましい。なお、これらの硬化促進剤は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0045】
成分(C)としての硬化促進剤の含有量について特に制限はなく、上述した成分(A)(反応生成物)100質量部に対して、好ましくは0.01〜5質量部であり、より好ましくは0.05〜3質量部であり、さらに好ましくは0.1〜2質量部である。
【0046】
≪その他の成分≫
本発明の硬化性樹脂用添加剤組成物は、本発明の作用効果に悪影響を及ぼさない限り、必要に応じて、その他の成分を含有してもよい。本発明の硬化性樹脂用添加剤組成物が含みうるその他の成分としては、例えば、充填材、希釈剤、難燃剤、カップリング剤、着色剤等が挙げられる。
【0047】
充填材は、本発明の添加剤組成物やこれが添加されてなる硬化性樹脂組成物に対して、低熱膨張化、作業性改善等の性能を付与することができ、また、原材料コストを低減させるという効果もある。充填材としては、特に制限されず従来公知の充填材が用いられうる。例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、微分シリカ、アルミナ、窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、マグネシア、炭化珪素等が挙げられる。これらは、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。なお、充填材を添加する場合の添加量は、上述した成分(A)(反応生成物)100質量部に対して、好ましくは2000質量部以下、より好ましくは1500質量部以下、更に好ましくは1000質量部以下である。
【0048】
希釈剤は、添加剤組成物の粘度を低下させることなどを目的として添加されるものである。特に本発明では、成分(A)の反応生成物の平均分子量が小さく貯蔵弾性率(E’)が比較的大きくなる場合に、その貯蔵弾性率(E’)を低めて応力緩和効果をより一層向上させる目的でも添加されうる。希釈剤としては、特に制限されず従来公知の希釈剤が用いられうる。例えば、n−ブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、スチレンオキサイド、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、ラウリルグリシジルエーテル、p−sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ノニルフェニルグリシジルエーテル、カルビノールのグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、ビニルシクロヘキセンモノエポキサイド、α−ピネンオキサイド、第3級カルボン酸のグリシジルエーテル、ジグリシジルエーテル、(ポリ)エチレングリコールのグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールのグリシジルエーテル、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、ビスフェノールA型エポキシ樹脂と重合脂肪酸との部分付加物、重合脂肪酸のポリグリシジルエーテル、ブタンジオールのジグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル等が挙げられる。これらは、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。なお、希釈剤を添加する場合の添加量は、上述した成分(A)(反応生成物)100質量部に対して、好ましくは200質量部以下、より好ましくは100質量部以下、さらに好ましくは80質量部以下である。
【0049】
難燃剤は、添加剤組成物の難燃性を向上させる目的で添加されるものである。難燃剤としては、特に制限されず従来公知の難燃剤が用いられうる。例えば、臭素化エポキシ樹脂や三酸化アンチモンを用いてもよいが、ノンハロゲン、ノンアンチモンの難燃剤を用いることが好ましい。たとえば、赤リン、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂等で被覆された赤リン、リン酸エステル、酸化トリフェニルホスフィン等のリン化合物、メラミン、メラミン誘導体、メラミン変性フェノール樹脂、トリアジン環を有する化合物、シアヌル酸誘導体、イソシアヌル酸誘導体等の窒素含有化合物、シクロホスファゼン等のリンおよび窒素含有化合物、ジシクロペンタジエニル鉄等の金属錯体化合物、酸化亜鉛、錫酸亜鉛、硼酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛等の亜鉛化合物、酸化鉄、酸化モリブデン等の金属酸化物、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物などが挙げられる。これらは、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。なお、難燃剤を添加する場合の添加量は、上述した成分(A)(反応生成物)100質量部に対して、好ましくは200質量部以下、より好ましくは150質量部以下、更に好ましくは100質量部以下である。
【0050】
カップリング剤としては、具体的には、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤が挙げられる。また、着色剤としては、例えば、カーボンブラック等の顔料や染料等が挙げられる。
【0051】
本発明の添加剤組成物は、上述した成分(A)〜成分(C)を必須成分として含有するが、これら以外の任意成分の添加量(複数の任意成分が添加される場合には、それらの合計量)は、上述した成分(A)(反応生成物)100質量部に対して、好ましくは2000質量部以下、より好ましくは1500質量部以下、更に好ましくは1000質量部以下である。
【0052】
本発明の添加剤組成物は、後述するように硬化性樹脂に添加されることによって、硬化性樹脂に対して応力緩和効果を付与するものである。この性能に優れたものであるか否かについては、添加剤組成物の加熱硬化後における25℃での貯蔵弾性率(E’)の値が指標となる。具体的には、添加剤組成物の加熱硬化後における25℃での貯蔵弾性率(E’)は、好ましくは5.5[MPa]以下であり、より好ましくは3.0[MPa]以下であり、さらに好ましくは2.0[MPa]以下であり、最も好ましくは1.0[MPa]以下である。E’の値がかような範囲内の値であると、硬化性樹脂と混合された際に硬化性樹脂に対して十分な応力緩和効果を発揮させることが可能となる。なお、E’の値としては、後述する実施例に記載の手法によって測定される値を採用するものとする。
【0053】
また、本発明の添加剤組成物は硬化性樹脂に添加された後に例えば半導体素子の封止に用いられる。したがって、本発明の添加剤組成物は難燃性に優れたものであることが好ましい。具体的には、UL−94難燃性試験においてV−2に適合するものであることが好ましく、V−1に適合するものであることがより好ましい。なお、本発明者らの検討によれば、本発明の構成とすることによって、場合によっては難燃剤を添加しなくとも難燃性が付与された添加剤組成物が提供されうることが見出された。したがって、本発明の添加剤組成物の好ましい一実施形態は、難燃剤を含まないものである。また、上述した希釈剤は燃焼性の高い有機化合物である。したがって、本発明の添加剤組成物の他の好ましい実施形態は、希釈剤をも含まないものである。
【0054】
本発明の添加剤組成物は、必須成分である成分(A)〜成分(C)、および必要に応じて任意成分である各種添加剤を、所定の含有量となるように同時または順次配合し、各成分が均一に分散するように、ミキサ等で混合し、その後、ロールやニーダ等によって混練することにより、製造されうる。なお、混合や混練時に、必要に応じて加熱処理や冷却処理を施してもよい。また、各成分を配合する順番には特に制限はない。
【0055】
[硬化性樹脂組成物]
本発明により提供される硬化性樹脂用添加剤組成物は、硬化性樹脂に対して添加されることにより、硬化性樹脂組成物を提供することができる。つまり、本発明の他の形態によれば、硬化性樹脂と、上述した添加剤組成物とを含む硬化性樹脂組成物が提供される。
【0056】
硬化性樹脂について特に制限はなく、本発明の添加剤組成物と相溶しうる従来公知の硬化性樹脂が適宜用いられうる。硬化性樹脂の具体例としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、シアネートエステル樹脂、イミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂が挙げられ、なかでも、半導体実装用途で最も用いられているという観点からは、エポキシ樹脂が好ましく用いられうる。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂、トリフェニルメタン骨格を有するエポキシ樹脂、およびこれらエポキシ樹脂構造中の水素原子の一部をハロゲン化したエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0057】
本発明の硬化性樹脂組成物における硬化性樹脂と添加剤組成物との混合比について特に制限はなく、所望の作用効果を考慮して適宜決定されうる。一例として、硬化性樹脂100質量部に対して、添加剤組成物中の成分(A)の含有量が好ましくは10〜95質量部、より好ましくは30〜80質量部、さらに好ましくは30〜70質量部となるように、硬化性樹脂および添加剤組成物の混合比を決定すればよい。
【0058】
本発明の硬化性樹脂組成物は、本発明の添加剤組成物および硬化性樹脂のほか、必要に応じて各種の添加剤をさらに含んでもよい。かような添加剤としては、本発明の添加剤組成物に含まれうる任意成分として上述した各種の添加剤が例示される。つまり、これら各種の添加剤は、硬化性樹脂を含まない添加剤組成物の時点で含まれていてもよいし、点化剤組成物の時点では含まれずに、添加剤組成物が硬化性樹脂に添加されて硬化性樹脂組成物を構成する時点で含まれることとなってもよい。
【0059】
[用途]
上述した硬化性樹脂組成物(好ましくは、エポキシ樹脂を含む硬化性樹脂組成物)は、例えば、半導体素子の封止といった用途に用いられうる。すなわち、本発明の一形態によれば、上述した硬化性樹脂組成物からなる半導体封止用樹脂組成物が提供される。例えば、当該半導体封止用樹脂組成物は、プリント配線板の、半導体チップを搭載する前の半導体チップ搭載領域に予め塗布することによって、半導体チップ搭載領域に半導体チップを搭載した後に形成されるプリント配線板と半導体チップとの間の隙間を封止するための封止材として用いられる。
【0060】
このような硬化性樹脂組成物を封止材(アンダーフィル材)として用いた半導体装置は、例えば、以下のようにして得られる。
【0061】
まず、予め回路(配線回路)が形成されたFPC等のプリント配線板の、ICチップやLSIチップ等の半導体チップ(半導体素子)を搭載する所定の領域である半導体チップ搭載領域に、上述した硬化性樹脂組成物を塗布する。ここでの塗布は、特に限定されず、公知の塗布方法を用いることができる。具体的には、例えば、ディスペンサ等による滴下塗布法、やスピンコート法等が挙げられる。
【0062】
そして、硬化性樹脂組成物が塗布された半導体チップ搭載領域に半導体チップを搭載する。より具体的には、例えば、まず、プリント配線板の半導体チップ搭載領域における回路と、半導体チップの電極上に形成された突起電極(バンプ電極)とが接触するように、プリント配線板に半導体チップを載置(マウント)する。そうすることによって、プリント配線板と半導体チップとの間の隙間に硬化性樹脂組成物が充填される。そして、プリント配線板と半導体チップとを加熱および加圧する熱圧接等によって、プリント配線板と半導体チップとを接合し、電気的に接続して、プリント配線板に半導体チップを実装する。その際、上述の接合とともに、プリント配線板と半導体チップとの間の隙間に充填された硬化性樹脂組成物も硬化され、当該硬化性樹脂組成物によって、プリント配線板と半導体チップとの間が封止される。
【0063】
以上、硬化性樹脂組成物が半導体封止用途にアンダーフィル材として用いられる場合を例に挙げて説明したが、その他にも、ポッティング材やシール材、ダイボンディング材、グラブトップ材などの、応力の緩和が求められる各種の封止材として好適に用いられうる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例等を用いて本発明の実施形態をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲が下記の実施例等によって限定されることはない。
【0065】
[物性の測定方法]
下記の合成例で得られた化合物の数平均分子量、重量平均分子量、およびエポキシ当量の測定方法は、以下のとおりである。
【0066】
<数平均分子量および重量平均分子量の測定方法>
GPCを用いて測定した。使用機器は(製品名「HLC−8120GPC」東ソー社製)、使用カラムは(製品名「GF−7MHQ」、昭和電工社製)、展開溶媒としてテトラヒドロフラン、標準試料としてポリスチレンを用いた。
【0067】
<エポキシ当量の測定方法>
JIS K7236に準じた。
【0068】
[製造例]
<合成例1>
攪拌装置、温度センサー、冷却管を備え付けた300mL4つ口フラスコに、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製、製品名「デナコールEX−212L」)65.8g、カルボキシ基両末端型ポリジメチルシロキサン(東レ・ダウコーニング社製、製品名「BY16−750」)182.9g、およびトリフェニルホスフィン1.28gを投入し、窒素ガス流通下で150℃、6時間の条件で攪拌した。冷却後に淡黄色で粘ちょうな液状ポリマーAを得た。GPCで分子量測定したところ数平均分子量2120、重量平均分子量2838であった。また、エポキシ当量を測定したところ、1025g/molであった。
【0069】
<合成例2>
攪拌装置、温度センサー、冷却管を備え付けた300mL4つ口フラスコに、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス社製、製品名「デナコールEX−212L」)48.2g、カルボキシ基両末端型ポリジメチルシロキサン(東レ・ダウコーニング社製、製品名「BY16−750」)200.9g、およびトリフェニルホスフィン0.94gを投入し、窒素ガス流通下で150℃、6時間の条件で攪拌した。冷却後に淡黄色で粘ちょうな液状ポリマーBを得た。GPCで分子量測定したところ数平均分子量5630、重量平均分子量7310であった。また、エポキシ当量を測定したところ、2800g/molであった。
【0070】
<合成例3>
攪拌装置、温度センサー、冷却管を備え付けた300mL4つ口フラスコに、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(阪本薬品工業社製、製品名「SR−8EGS」)73.2g、カルボキシ基両末端型ポリジメチルシロキサン(東レ・ダウコーニング社製、製品名「BY16−750」)176.1g、およびトリフェニルホスフィン0.72gを投入し、窒素ガス流通下で150℃、6時間の条件で攪拌した。冷却後に淡黄色で粘ちょうな液状ポリマーCを得た。GPCで分子量測定したところ数平均分子量12100、重量平均分子量14900であった。また、エポキシ当量を測定したところ、6040g/molであった。
【0071】
<合成例4>
攪拌装置、温度センサー、冷却管を備え付けた200mL4つ口フラスコに、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(阪本薬品工業社製、製品名「SR−16HL」)12.0g、フェノール性水酸基両末端型ポリジメチルシロキサン(信越化学工業社製、製品名「X−22−1821」)100g、およびトリフェニルホスフィン0.26gを投入し、窒素ガス流通下で150℃、6時間の条件で攪拌した。冷却後に淡黄色で粘ちょうな液状ポリマーDを得た。GPCで分子量測定したところ数平均分子量6510、重量平均分子量7790であった。また、エポキシ当量を測定したところ、3250g/molであった。
【0072】
<合成例5>
攪拌装置、温度センサー、冷却管を備え付けた200mL4つ口フラスコに、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(阪本薬品工業社製、製品名「SR−16HL」)9.18g、フェノール性水酸基両末端型ポリジメチルシロキサン(信越化学工業社製、製品名「X−22−1821」)99.6g、およびトリフェニルホスフィン0.20gを投入し、窒素ガス流通下で150℃、6時間の条件で攪拌した。冷却後に淡黄色で粘ちょうな液状ポリマーEを得た。GPCで分子量測定したところ数平均分子量19100、重量平均分子量22800であった。また、エポキシ当量を測定したところ、9620g/molであった。
【0073】
<合成例6>
攪拌装置、温度センサー、冷却管を備え付けた200mL4つ口フラスコに、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(阪本薬品工業社製、製品名「SR−16HL」)9.21g、シラノール基両末端型ポリジメチルシロキサン(信越化学工業社製、製品名「KF9701」)100g、およびトリフェニルホスフィン0.20gを投入し、窒素ガス流通下で150℃、6時間の条件で攪拌した。冷却後に淡黄色で粘ちょうな液状ポリマーFを得た。GPCで分子量測定したところ数平均分子量18300、重量平均分子量23000であった。また、エポキシ当量を測定したところ、9540g/molであった。
【0074】
<合成例7>
攪拌装置、温度センサー、冷却管を備え付けた300mL4つ口フラスコに、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(阪本薬品工業社製、製品名「SR−16HL」)18.50g、カルボキシル基両末端型ブタジエン−アクリロニトリル共重合体(ピィ・ティ・アイ・ジャパン社製、製品名「CTBN1008SP」、カルボキシ基当量2000)242.6g、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル(阪本薬品工業社製、製品名「SR−PTMG」)58.6g、およびトリフェニルホスフィン0.40gを投入し、窒素ガス流通下で150℃、6時間の条件で攪拌した。冷却後に濃黄色で粘ちょうな液状ポリマーGを得た。GPCで分子量測定したところ数平均分子量2300、重量平均分子量3900であった。また、エポキシ当量を測定したところ、1957g/molであった。
【0075】
<実施例・比較例>
上記の合成例1〜6で得られた液状ポリマーA〜Fを、下記の表1および表2に記載の組成となるように他の成分と混合して、本発明に係る添加剤組成物を調製した(実施例1〜15)。
【0076】
一方、上記合成例7で得られた液状ポリマーGや、市販の液状ポリマーであるポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル(液状ポリマーH)を、下記の表2に記載の組成となるように他の成分と混合して、本発明の比較例に相当する添加剤組成物を調製した(比較例1〜4)。同様に、下記の表3に記載のように、市販のシリコーン樹脂を用いて本発明の比較例に相当する添加剤組成物を調製した(比較例5および6)。
【0077】
[動的粘弾性および難燃性の評価]
上記で調製した実施例および比較例の添加剤組成物を、テフロン製注型枠に注入して180℃×4時間の条件で放置した後、注型枠から取り出してシート状硬化物を得た。得られたそれぞれの硬化物について、動的粘弾性測定装置(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製、機器名「RSA III」)を用いて、ガラス転移温度および25℃での貯蔵弾性率(E’)を測定した。さらに、上記硬化物を用いてUL−94難燃性試験を行ない、硬化物の難燃性を評価した。これらの結果を下記の表1〜表3に示す。
【0078】
[接着性の評価(冷熱サイクル試験)]
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製、製品名「jER828EL」)100gに2−エチル−4−メチルイミダゾールを3g添加し、次いで150℃にて硬化させて、エポキシ樹脂硬化板を得た。このエポキシ樹脂硬化板を組み合わせて注型枠を作製し、得られた注型枠に上記で調製した実施例および比較例の添加剤組成物を注入し、180℃×7時間の条件で硬化させて、複合構造体を作製した。得られた複合構造体に対して、−50℃×30分⇔200℃×30分の冷熱サイクル試験に供し、100サイクルおよび500サイクル後のエポキシ注型枠/添加剤組成物硬化物の界面剥離の有無を確認した。結果を下記の表1〜表3に示す。なお、剥離が全くないもののみを合格とし、それ以外のものを不合格とした。
【0079】
【表1】

【0080】
【表2】

【0081】
【表3】

【0082】
<考察>
液状ポリマーGを用いた比較例1および比較例2や、液状ポリマーHを用いた比較例3および比較例4では、硬化物の貯蔵弾性率(E’)の値がいずれも5.5[Pa]超と大きい値を示した。そして、これに対応するように冷熱サイクル試験でも100サイクルですら不合格であったことから、応力緩和効果が不十分であることがわかる。これは、比較例1〜4で用いられた液状ポリマーGや液状ポリマーHがシロキサン骨格を有していないことに起因しているものと考えられる。さらに、これらの比較例1〜4では、硬化物がUL−94難燃性試験において燃焼してしまった(比較例2では難燃剤を添加したにもかかわらず燃焼した)。このことから、比較例1〜4の添加剤組成物では十分な難燃性も付与できないことがわかる。これは、液状ポリマーGや液状ポリマーHが専ら脂肪族骨格から構成されていることによるものと考えられる。
【0083】
一方、市販のシリコーン樹脂を用いて添加剤組成物を構成した比較例5および比較例6では、硬化物の貯蔵弾性率(E’)の値がいずれも低い値を示し、応力緩和効果も高いことが期待された。しかしながら、冷熱サイクル試験では比較例5および比較例6のいずれについても、100サイクルですら不合格であった。これは、シリコーン樹脂のみを主成分として含有する添加剤組成物の他の部材(エポキシ樹脂硬化物)との接着性が十分ではないことによるものと考えられる。
【0084】
これに対し、実施例1〜15では、いずれも硬化物の貯蔵弾性率が5.5[MPa]以下と低く応力緩和効果が高いことが期待され、しかもその期待通り、冷熱サイクル試験ではすべての実施例について100サイクルでの合格が確認できた。
【0085】
特に、液状ポリマーEや液状ポリマーFを用いた実施例12〜15ではいずれも、0.7[MPa]以下ときわめて小さい貯蔵弾性率(E’)と、難燃剤非存在下でのV−1レベルの難燃性との両立が可能となった。冷熱サイクル試験においても、500サイクルでの合格が確認され、特に優れた物性を示すことが明らかとなった。これは、用いた液状ポリマーの重量平均分子量が20000以上と比較的高いことで、希釈剤を添加しなくとも硬化物の架橋密度を低下させることができたことによるものと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)分子の両末端に反応性官能基を有する両末端型反応性ポリシロキサン(a1)と、脂肪族ジオールジグリシジルエーテル、脂環式ジオールジグリシジルエーテルおよびポリ(オキシアルキレン)グリコールジグリシジルエーテルからなる群から選択されるジグリシジルエーテル(a2)との反応生成物、
(B)硬化剤、並びに、
(C)硬化促進剤、
を含む、硬化性樹脂用添加剤組成物。
【請求項2】
前記両末端型反応性ポリシロキサン(a1)が、下記化学式1:
【化1】

式中、Rは、それぞれ独立して、置換または非置換の非反応性の1価の炭化水素基を表し、Rは、それぞれ独立して、反応性官能基を表し、nは−(Si(R−O)−の繰り返し単位数の平均値を表し、0〜600である、
で表されるものである、請求項1に記載の硬化性樹脂用添加剤組成物。
【請求項3】
前記反応性官能基が、ヒドロキシ基、下記化学式2:
【化2】

式中、Rは、アルキレン基を表す、
で表されるカルボキシアルキル基、下記化学式3:
【化3】

式中、Rは、アルキレン基を表し、Phは、フェニレン基を表す、
で表されるヒドロキシフェニルアルキル基、下記化学式4:
【化4】

式中、Rは、アルキレン基を表す、
で表されるヒドロキシアルキル基、および、下記化学式5:
【化5】

式中、Rは、アルキレン基を表す、
で表されるアミノアルキル基からなる群から選択される官能基である、請求項1または2に記載の硬化性樹脂用添加剤組成物。
【請求項4】
前記反応性官能基が、ヒドロキシ基、下記化学式2:
【化6】

式中、Rは、炭素数2〜18のアルキレン基を表す、
で表されるカルボキシアルキル基、および、下記化学式3:
【化7】

式中、Rは、炭素数2〜18のアルキレン基を表し、Phは、フェニレン基を表す、
で表されるヒドロキシフェニルアルキル基からなる群から選択される官能基である、請求項3に記載の硬化性樹脂用添加剤組成物。
【請求項5】
前記脂肪族ジオールジグリシジルエーテルが炭素数2〜20の脂肪族ジオールのジグリシジルエーテルであり、前記脂環式ジオールジグリシジルエーテルが炭素数3〜20の脂環式ジオールのジグリシジルエーテルであり、前記ポリ(オキシアルキレン)グリコールジグリシジルエーテルが数平均分子量が150〜20000のポリ(オキシアルキレン)グリコールのジグリシジルエーテルである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の硬化性樹脂用添加剤組成物。
【請求項6】
前記ジグリシジルエーテル(a2)が、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルまたは数平均分子量が150〜1000のポリエチレングリコールのジグリシジルエーテルである、請求項5に記載の硬化性樹脂用添加剤組成物。
【請求項7】
前記(A)反応生成物の重量平均分子量が2000〜50000である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の硬化性樹脂用添加剤組成物。
【請求項8】
前記(A)反応生成物のエポキシ当量が750〜25000g/molである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の硬化性樹脂用添加剤組成物。
【請求項9】
加熱硬化後における25℃での貯蔵弾性率(E’)が、5.5[MPa]以下である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の硬化性樹脂用添加剤組成物。
【請求項10】
充填材をさらに含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の硬化性樹脂用添加剤組成物。
【請求項11】
難燃剤を含まない、請求項1〜10のいずれか1項に記載の硬化性樹脂用添加剤組成物。
【請求項12】
硬化性樹脂と、
請求項1〜11のいずれか1項に記載の硬化性樹脂用添加剤組成物と、
を含む、硬化性樹脂組成物。
【請求項13】
前記硬化性樹脂がエポキシ樹脂である、請求項12に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項14】
請求項12または13に記載の硬化性樹脂組成物からなる半導体封止用樹脂組成物。
【請求項15】
請求項14に記載の半導体封止用樹脂組成物を用いて半導体素子を封止してなる半導体装置。

【公開番号】特開2012−188628(P2012−188628A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55610(P2011−55610)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】