説明

硬化性組成物および反射防止用積層体

【課題】透明性および防汚性に優れた硬化膜を形成することができる硬化性組成物、該硬化性組成物から形成された硬化膜を備える反射防止用積層体を提供する。
【解決手段】反射防止用積層体100は、透明基材10上に、(A)シリカ粒子と、(B−1)フッ素を含有する(メタ)アクリルエステル類および(B−2)エチレン性不飽和基を含有する含フッ素重合体から選択される少なくとも1種と、(C)下記一般式(1)で示される構造を有する含フッ素化合物と、を含有する硬化性組成物から形成された硬化膜30を有する。


(式(1)中、Rは炭素数2〜4のアルキレンを表し、Rfは2〜10個のCF基を有する炭素数3〜20のフッ化炭素基を表し、Lは芳香環を含んでいてもよい炭素数6〜12の連結基を表す。mは0または1であり、nは2〜30の整数を表す。*は他の原子または基と結合していることを表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物および反射防止用積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネル、冷陰極線管パネル、プラズマディスプレー等の各種表示パネルにおいて、外光の映りを防止して画質を向上させるために、低屈折率層からなる反射防止膜を積層した反射防止用積層体を使用することが提案されている。このような反射防止用積層体は、上述したような用途に使用される観点から、高硬度および耐擦傷性を有し、透明性に優れ、さらに防汚性にも優れるという特性が要求される。
【0003】
従来の反射防止用積層体としては、例えば、フッ素重合体、(メタ)アクリレート化合物、シリカ粒子および光重合開始剤を組み合わせた硬化性組成物を硬化させて得られる硬化膜を備えた反射防止用積層体が知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0004】
また、硬化膜に防汚性を付与する観点から、硬化性組成物中にパーフルオロポリエーテル(PFPE)やパーフルオロアルキル等のフッ素系添加剤を使用することも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−45462号公報
【特許文献2】特開2006−30881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したようなフッ素重合体やフッ素系添加剤は撥水性および撥油性に優れるため、特に硬化膜の防汚性の向上が期待できる一方で、他の成分との相溶性や親和性が低下することがあった。このような硬化性組成物から形成された硬化膜は、透明性が損なわれるだけでなく、期待される防汚性が十分に発揮されないことがあった。
【0007】
そこで、本発明に係る幾つかの態様は、上記課題を解決することで、透明性および防汚性に優れた硬化膜を形成することができる硬化性組成物、該硬化性組成物から形成された硬化膜を備える反射防止用積層体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0009】
[適用例1]
本発明に係る反射防止用積層体の一態様は、
透明基材上に、
(A)シリカ粒子と、(B−1)フッ素を含有する(メタ)アクリルエステル類および(B−2)エチレン性不飽和基を含有する含フッ素重合体から選択される少なくとも1種と、(C)下記一般式(1)で示される構造を有する含フッ素化合物と、を含有する硬化性組成物から形成された硬化膜を有することを特徴とする。
【化1】

(式(1)中、Rは炭素数2〜4のアルキレンを表し、Rfは2〜10個のCF基を有する炭素数3〜20のフッ化炭素基を表し、Lは芳香環を含んでいてもよい炭素数6〜12の連結基を表す。mは0または1であり、nは2〜30の整数を表す。*は他の原子または基と結合していることを表す。)
【0010】
[適用例2]
適用例1の反射防止用積層体において、
前記一般式(1)中、Rfが、3〜10個のCF基を有する炭素数4〜20のフッ化炭素基であることができる。
【0011】
[適用例3]
適用例1または適用例2の反射防止用積層体において、
前記硬化膜全体の質量を100質量%としたときに、前記(C)成分の含有量が1質量%以上10質量%以下であることができる。
【0012】
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか一項に記載の反射防止用積層体において、
前記(A)シリカ粒子が、中空シリカ粒子および多孔質シリカ粒子の少なくとも一方を含有することができる。
【0013】
[適用例5]
適用例1ないし適用例4のいずれか一項に記載の反射防止用積層体において、
前記硬化性組成物が、さらに(D)ラジカル重合開始剤を含有することができる。
【0014】
[適用例6]
適用例1ないし適用例5のいずれか一項に記載の反射防止用積層体において、
前記透明基材と前記硬化膜との間に、さらにハードコート層を有することができる。
【0015】
[適用例7]
本発明に係る硬化性組成物の一態様は、
(A)シリカ粒子と、
(B)(B−1)フッ素を含有する(メタ)アクリルエステル類および(B−2)エチレン性不飽和基を含有する含フッ素重合体から選択される少なくとも1種と、
(C)下記一般式(1)で示される構造を有する含フッ素化合物と、
(D)ラジカル重合開始剤と、
を含有することを特徴とする。
【化2】

(式(1)中、Rは炭素数2〜4のアルキレンを表し、Rfは2〜10個のCF基を有する炭素数3〜20のフッ化炭素基を表し、Lは芳香環を含んでいてもよい炭素数6〜12の連結基を表す。mは0または1であり、nは2〜30の整数を表す。*は他の原子または基と結合していることを表す。)
【0016】
[適用例8]
適用例7の硬化性組成物において、
前記一般式(1)中、Rfが、3〜10個のCF基を有する炭素数4〜20のフッ化炭素基であることができる。
【0017】
[適用例9]
適用例7または適用例8の硬化性組成物において、
前記(A)シリカ粒子が、中空シリカ粒子および多孔質シリカ粒子の少なくとも一方を含有することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る硬化性組成物によれば、(C)成分を含有することにより表面自由エネルギーを低下させることができるため、防汚性に優れた硬化膜を形成することができる。また、(B)成分と(C)成分とを組み合わせることで、硬化性組成物全体の相溶性ないし親和性を高めることができる。これにより、硬化性組成物の安定性を確保できると共に、透明性に優れた(低ヘイズな)硬化膜を形成することができる。
【0019】
また、本発明に係る反射防止用積層体によれば、前述した硬化性組成物から形成された硬化膜を有するので、反射防止効果が得られるだけでなく、透明性(低ヘイズ)および防汚性にも優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施の形態に係る反射防止用積層体を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、下記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変型例も含む。
【0022】
1.硬化性組成物
本実施の形態に係る硬化性組成物は、(A)シリカ粒子と、(B)反応性基を有するフッ素系バインダーと、(C)特定の構造を有する含フッ素化合物と、を含有することを特徴とする。本実施の形態に係る硬化性組成物は、(D)ラジカル重合開始剤、(E)(メタ)アクリレート化合物、(F)表面改質剤、(G)有機溶剤、および(H)その他の添加剤から選ばれる一種以上を含有することもできる。以下、本実施の形態に係る硬化性組成物の各成分について詳細に説明する。なお、本明細書において(A)ないし(H)の各材料を、それぞれ(A)成分ないし(H)成分と省略して記載することがある。
【0023】
1.1.(A)シリカ粒子
本実施の形態に係る硬化性組成物は、(A)シリカ粒子を含有する。(A)シリカ粒子としては、特に限定されず、中実シリカ粒子、粒子内に空洞を有する中空シリカ粒子または多孔質シリカ粒子等のいずれも使用することができる。これらの中でも、中空シリカ粒子または多孔質シリカ粒子を含有することが好ましい。中空シリカ粒子や多孔質シリカ粒子は、その内部に空洞を有するため、中実シリカ粒子と比べてより低屈折率化することができるからである。また、耐擦傷性を兼ね備える点で、中空シリカ粒子を含有することがより好ましい。
【0024】
(A)シリカ粒子の数平均粒径は、1nm以上100nm以下の範囲内であることが好ましく、5nm以上80nm以下の範囲内であることがより好ましい。本明細書における数平均粒径は、いずれも透過型電子顕微鏡により測定したものである。1nm未満では、屈折率が高くなるおそれがあり、100nmを超えると硬化膜の透明性が低下するおそれがある。
【0025】
中空シリカ粒子としては、公知のものを使用することができ、また、その形状も球状に限らず不定形であってもよい。分散媒は、水あるいは有機溶媒が好ましい。有機溶媒としては、メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ブタノール、エチレングリコールモノプロピルエーテル等のアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエ−テル類等の有機溶剤を挙げることができ、これらの中でも、アルコール類およびケトン類が好ましい。これら有機溶剤は、1種単独または2種以上混合して分散媒として使用することができる。
【0026】
中空シリカ粒子の市販品としては、例えば、日揮触媒化成株式会社製の「スルーリア4320」(透過型電子顕微鏡で求めた数平均粒径40〜50nm、固形分20質量%、メチルエチルケトン中空シリカゾル)等が挙げられる。
【0027】
また、中空シリカ粒子の表面に化学修飾等の表面処理したものを使用することができ、例えば分子中に1以上のアルキル基を有する加水分解性ケイ素化合物またはその加水分解物を含有するもの等を反応させることができる。このような加水分解性ケイ素化合物としては、トリメチルメトキシシラン、トリブチルメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、1,1,1−トリメトキシ−2,2,2−トリメチル−ジシラン、ヘキサメチル−1,3−ジシロキサン、1,1,1−トリメトキシ−3,3,3−トリメチル−1,3−ジシロキサン、α−トリメチルシリル−ω−ジメチルメトキシシリル−ポリジメチルシロキサン、α−トリメチルシリル−ω−トリメトキシシリル−ポリジメチルシロキサンヘキサメチル−1,3−ジシラザン等を挙げることができる。また、分子中に1以上の反応性基を有する加水分解性ケイ素化合物を使用することもできる。分子中に1以上の反応性基を有する加水分解性ケイ素化合物は、例えば反応性基としてNH基を有するものとして、尿素プロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等、OH基を有するものとして、ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノトリプロピルメトキシシラン等、イソシアネート基を有するものとして3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等、チオシアネート基を有するものとして3−チオシアネートプロピルトリメトキシシラン等、エポキシ基を有するものとして(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等、チオール基を有するものとして、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等、(メタ)アクリロイル基を有するものとして3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。好ましい化合物として、3−(メタ)アクリロキシプトプロピルトリメトキシシランを挙げることができる。また、特開平9−100111号公報に記載の化合物で変性することも好ましい。
【0028】
本実施の形態に係る硬化性組成物中における(A)成分の含有量は、溶剤を除く成分の合計を100質量%としたときに、5質量%以上80質量%以下の範囲内であることが好ましく、5質量%以上70質量%以下の範囲内であることがより好ましい。5質量%未満であると、配合した効果が得られないおそれがあり、80質量%を超えると、得られる硬化膜が脆くなるおそれがある。なお、(A)成分の含有量は、固形分量を意味し、粒子が溶剤分散ゾルの形態で用いられるときは、その含有量には溶剤の量を含まない。
【0029】
1.2.(B)反応性基を有するフッ素系バインダー
本実施の形態に係る硬化性組成物は、(B)反応性基を有するフッ素系バインダーを含有する。(B)成分は、後述する(C)成分との親和性が高いため、硬化性組成物全体の相溶性ないし親和性を高めることができる。これにより、硬化性組成物の安定性を確保できると共に、透明性に優れた(低ヘイズな)硬化膜を形成することができる。また、分子内にフッ素原子を有することにより、硬化膜を低屈折率にし、得られる硬化膜の防汚性を向上させることができる。分子内に反応性基を有していることにより、硬化性組成物中の他のラジカル重合性化合物と架橋することができ、より耐擦傷性に優れた硬化膜が得られる。なお、反応性基とは、ラジカル重合可能な官能基のことをいう。
【0030】
(B)成分中のフッ素含量は、20質量%以上60質量%以下であることが好ましい。フッ素含量が20質量%に満たないと得られる硬化膜の屈折率が高くなるおそれがある。なお、フッ素含量の上限は70質量%である。フッ素含量が70質量%を超えると後述する(C)成分との親和性が低下し、硬化性組成物の塗布性が悪化するおそれがあるからである。
【0031】
本実施の形態に係る硬化性組成物中における(B)成分の含有量は、溶剤を除く成分の合計を100質量%としたときに、5質量%以上80質量%以下の範囲内であることが好ましく、10質量%以上80質量%以下の範囲内であることがより好ましい。(B)成分の含有量が前記範囲内であると、硬化性組成物全体の相溶性ないし親和性を高めることができる。これにより、硬化性組成物の安定性を確保できると共に、透明性に優れた硬化膜を形成することができる。5質量%未満であると、得られる硬化膜の屈折率が高くなる場合があり、また硬化性組成物全体の親和性が損なわれることで硬化膜の透明性が低下する場合がある。80質量%を超えると、得られる硬化膜の膜強度が低下するおそれがある。
【0032】
(B)成分は、(B−1)フッ素を含有する(メタ)アクリルエステル類および(B−2)エチレン性不飽和基を含有する含フッ素重合体から選択される少なくとも1種である。以下、(B−1)成分、(B−2)成分の順に説明する。
【0033】
1.2.1.(B−1)フッ素を含有する(メタ)アクリルエステル類
フッ素含有(メタ)アクリルエステル類は、(メタ)アクリルエステル類であってフッ素を有する化合物である。(B−1)成分は、前述のとおり、フッ素含有量が20質量%以上60質量%以下であることが好ましい。また、複数の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることが好ましい。(B−1)成分の具体例としては、パーフルオロ−1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリロイルヘプタデカフルオロノネニルペンタエリスリトール、オクタフルオロオクタン−1,6−ジ(メタ)アクリレート、オクタフルオロオクタンジオールと2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートとの反応物、オクタフルオロオクタンジオールと2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネートとの反応物、オクタフルオロオクタンジオールと1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネートとの反応物等が挙げられる。これらは、一種単独または二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0034】
1.2.2.(B−2)エチレン性不飽和基を含有する含フッ素重合体
エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体は、フッ素系オレフィンの重合物である。(B−2)成分は、例えば、水酸基含有含フッ素重合体に、水酸基と反応可能な基およびエチレン性不飽和基を有する化合物を反応させることによって得ることができる。(B−2)成分の添加により、ラジカル重合性(メタ)アクリル化合物と共架橋することができ、耐擦傷性が向上する。
【0035】
(1)水酸基と反応可能な基およびエチレン性不飽和基を含有する化合物
水酸基と反応可能な基およびエチレン性不飽和基を含有する化合物としては、分子内にエチレン性不飽和基を含有している化合物で、フッ素重合体の水酸基と反応しうる官能基を有していれば特に制限されるものではない。また、前記エチレン性不飽和基を含有する化合物としては、硬化性組成物をより容易に硬化させることができることから、(メタ)アクリロイル基を有する化合物がより好ましい。このような化合物としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロイルクロライド、無水(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネート、1,1−ビスアクリロイルオキシメチルエチルイソシアネートの一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。なお、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレートの市販品としては、例えば、カレンズMOI、AOI、BEI(以上、昭和電工株式会社製)等が挙げられる。
【0036】
なお、このような化合物は、ジイソシアネートおよび水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて合成することもできる。ジイソシアネートの例としては、2,4−トリレンジイソシアネ−ト、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネア−ト)、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンが好ましい。水酸基含有(メタ)アクリレートの例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートが好ましい。なお、水酸基含有多官能(メタ)アクリレートの市販品としては、例えば、HEA(大阪有機化学工業株式会社製);KAYARAD DPHA、PET−30(以上、日本化薬株式会社製);アロニックス M−215、M−233、M−305、M−400(以上、東亞合成株式会社製)等として入手することができる。
【0037】
(2)水酸基含有含フッ素重合体
水酸基含有含フッ素重合体は、好ましくは、下記構造単位(a)および(b)を含んでなる。
(a)下記式(2)で表される構造単位。
(b)下記式(3)で表される構造単位。
【0038】
【化3】

(式(2)中、Rはフッ素原子、フルオロアルキル基または−ORで表される基(Rはアルキル基またはフルオロアルキル基を示す)を示す。)
【0039】
【化4】

(式(3)中、Rは水素原子またはメチル基を、Rは水素原子またはヒドロキシアルキル基を、vは0または1の数を示す。)
【0040】
(i)構造単位(a)
前記式(2)において、RおよびRのフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロシクロヘキシル基等の炭素数1〜6のフルオロアルキル基が挙げられる。また、Rのアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等の炭素数1〜6のアルキル基が挙げられる。
【0041】
構造単位(a)は、含フッ素ビニル単量体を重合成分として用いることにより導入することができる。このような含フッ素ビニル単量体としては、少なくとも1個の重合性不飽和二重結合と、少なくとも1個のフッ素原子とを有する化合物であれば特に制限されるものではない。このような含フッ素ビニル単量体の例としては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、3,3,3−トリフルオロプロピレン等のフルオロオレフィン類;アルキルパーフルオロビニルエーテルまたはアルコキシアルキルパーフルオロビニルエーテル類;パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)、パーフルオロ(ブチルビニルエーテル)、パーフルオロ(イソブチルビニルエーテル)等のパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)類;パーフルオロ(プロポキシプロピルビニルエーテル)等のパーフルオロ(アルコキシアルキルビニルエーテル)類の一種単独または二種以上の組み合わせが挙げられる。これらの中でも、ヘキサフルオロプロピレンとパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)またはパーフルオロ(アルコキシアルキルビニルエーテル)がより好ましく、これらを組み合わせて用いることがさらに好ましい。
【0042】
なお、構造単位(a)の含有率は、水酸基含有含フッ素重合体中の構造単位の合計量を100モル%としたときに、20〜70モル%が好ましい。この理由は、含有率が20モル%未満になると、低屈折率の発現が困難となる場合があるためであり、一方、含有率が70モル%を超えると、水酸基含有含フッ素重合体の有機溶剤への溶解性、透明性、または基材への密着性が低下する場合があるためである。また、このような理由により、構造単位(a)の含有率を、水酸基含有含フッ素重合体の全体量に対して、25〜65モル%とするのがより好ましく、30〜60モル%とするのがさらに好ましい。
【0043】
(ii)構造単位(b)
前記式(3)において、Rのヒドロキシアルキル基としては、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、4−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、5−ヒドロキシペンチル基、6−ヒドロキシヘキシル基が挙げられる。
【0044】
構造単位(b)は、水酸基含有ビニル単量体を重合成分として用いることにより導入することができる。このような水酸基含有ビニル単量体の例としては、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシブチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル等の水酸基含有ビニルエーテル類、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、4−ヒドロキシブチルアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテル等の水酸基含有アリルエーテル類、アリルアルコール等が挙げられる。また、水酸基含有ビニル単量体としては、上記以外にも、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等を用いることができる。
【0045】
なお、構造単位(b)の含有率を、水酸基含有含フッ素重合体中の構造単位の合計量を100モル%としたときに、5〜70モル%とすることが好ましい。この理由は、含有率が5モル%未満になると、水酸基含有含フッ素重合体の有機溶剤への溶解性が低下する場合があるためであり、一方、含有率が70モル%を超えると、水酸基含有含フッ素重合体の透明性、および低反射率性等の光学特性が低下する場合があるためである。また、このような理由により、構造単位(b)の含有率を、水酸基含有含フッ素重合体の構造単位全体量に対して、5〜40モル%とするのがより好ましく、5〜30モル%とするのがさらに好ましい。
【0046】
(iii)その他の構造単位
水酸基含有含フッ素重合体は、本発明の効果を損なわない範囲で、下記一般式(4)で表される構造単位や、ポリシロキサン構造や、ポリ(アルキレンオキシド)鎖を有するモノマーに由来する構造等を含んで構成することもできる。
【0047】
【化5】

(式(4)中、Rは水素原子またはメチル基を、Rはアルキル基、−CH2x−ORもしくは−OCORで表される基(Rはアルキル基またはグリシジル基を、xは0または1の数を示す)、カルボキシル基またはアルコキシカルボニル基を示す。)
【0048】
前記式(4)において、RまたはRのアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、ラウリル基等の炭素数1〜12のアルキル基が挙げられ、アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等が挙げられる。
【0049】
(iv)分子量
水酸基含有含フッ素重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで、テトラヒドロフランを溶剤として測定したポリスチレン換算数平均分子量が5,000〜500,000であることが好ましい。この理由は、数平均分子量が5,000未満になると、水酸基含有含フッ素重合体の機械的強度が低下する場合があるためであり、一方、数平均分子量が500,000を超えると、後述する硬化性組成物の粘度が高くなり、薄膜コーティングが困難となる場合があるためである。また、このような理由により、水酸基含有含フッ素重合体のポリスチレン換算数平均分子量を10,000〜300,000とするのがより好ましく、10,000〜100,000とするのがさらに好ましい。
【0050】
1.3.(C)特定の構造を有する含フッ素化合物
本実施の形態に係る硬化性組成物は、(C)下記一般式(1)で示される構造を有する含フッ素化合物を含有する。
【0051】
【化6】

【0052】
前記一般式(1)中、Rfは、2〜10個のCF基を有する炭素数3〜20のフッ化炭素基である。なお、Rfは、3〜10個のCF基を有する炭素数4〜20のフッ化炭素基であることが好ましい。Rfが2〜10個のCF基を有する炭素数3〜20のフッ化炭素基である場合は、Rfがパーフルオロポリエーテル基や直鎖のパーフルオロアルキル基である場合に比べてCF基数が多くなり、表面張力を低くすることができる。すなわち、(C)成分は、塗膜表面に移行させやすので、塗膜表面の表面自由エネルギーを低くすることができる。このような理由により、本実施の形態に係る硬化性組成物は、防汚性に優れた硬化膜を形成することができる。
【0053】
このようなRfとしては、例えば下記式(5)〜(9)で示される基が挙げられる。
【0054】
【化7】

【0055】
【化8】

【0056】
【化9】

【0057】
【化10】

【0058】
【化11】

【0059】
また、(C)成分は、CF基を多く持つことでフッ素含有量が高くなり、ひいては撥水性および撥油性が強くなる。そうすると(C)成分は、硬化性組成物中の他の成分との相溶性ないし親和性が低下するため、硬化膜の透明性が損なわれることがある。しかしながら、本実施の形態に係る硬化性組成物は、(B)成分と(C)成分とを組み合わせることで、硬化性組成物全体の相溶性ないし親和性を高めることができる。これにより、硬化性組成物の安定性を確保できると共に、透明性に優れた(低ヘイズな)硬化膜を形成することができる。
【0060】
前記一般式(1)中、Rは炭素数2〜4のアルキレンである。Rとしては、例えばエチレン、プロピレン、イソプロピレン、ブチレンが挙げられるが、エチレンであることが好ましい。nは2〜30の整数であり、3〜15であることが好ましい。nを上記範囲とすることで、高い耐防汚性を得ることができる。Lは芳香環を含んでいてもよい炭素数6〜12の連結基である。Lは製造を容易にするために、または、溶剤への溶解性を調節する目的で導入してもよい基である。Lとしては、フェニレン、サリチル酸からOH基を2個除いた残基、フタル酸からOH基を2個除いた残基等が挙げられる。mは0または1である。*は他の原子または基と結合していることを表す。
【0061】
なお、(C)成分は、前記一般式(1)で示される構造を有する含フッ素化合物であれば特に制限されないが、例えば、下記式(10)〜(13)で表される化合物を挙げることができる。
【0062】
【化12】

【0063】
【化13】

【0064】
【化14】

【0065】
【化15】

前記式(10)〜(13)中、Rf、R、L、m、およびnは前述の通りである。式(10)中、Rは水素原子、メチル基またはエチル基を表す。
【0066】
(C)成分は、公知の方法で製造できる。すなわち、ポリアルキレングリコール鎖および水酸基を有する化合物と、前記Rfに対応するフッ化炭素化合物とを混合し、カリウムt−ブトキシド、炭酸カリウム等の弱塩基化合物を触媒として反応させることで製造することができる。前記Rfに対応する化合物とは、Rfの結合部分でフッ素に結合した化合物である。また、ここで使用するフッ化炭素化合物が炭素−炭素二重結合を有し、二重結合を形成する炭素にフッ素が直接結合した化合物であると、反応選択性が高まるため好ましい。
【0067】
本実施の形態に係る硬化性組成物中における(C)成分の含有量は、溶剤を除く成分の合計を100質量%としたときに、1質量%以上20質量%以下の範囲内であることが好ましく、2質量%以上10質量%以下の範囲内であることがより好ましい。1質量%未満であると、得られる硬化膜の防汚性が不十分なおそれがあり、20質量%を超えると、得られる硬化膜の透明性が損なわれるおそれがある。
【0068】
1.4.(D)ラジカル重合開始剤
本実施の形態に係る硬化性組成物は、硬化を促進する目的で(D)ラジカル重合開始剤を含有してもよい。このような(D)ラジカル重合開始剤としては、例えば、熱的に活性ラジカル種を発生させる化合物(熱重合開始剤)、および放射線(光)照射により活性ラジカル種を発生させる化合物(放射線(光)重合開始剤)等の汎用品を挙げることができる。これらの中でも、放射線(光)重合開始剤が好ましい。
【0069】
放射線(光)ラジカル重合開始剤としては、放射線(光)照射により分解してラジカルを発生して重合を開始させられるものであれば特に制限はなく、例えば、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1,4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)等が挙げられる。
【0070】
放射線(光)ラジカル重合開始剤の市販品としては、例えば、BASFジャパン株式会社製のイルガキュア(登録商標)184、369、651、500、819、907、784、2959、CGI1700、CGI1750、CGI1850、CG24−61、ダロキュア 1116、1173、ルシリン TPO、8893、UCB社製のユベクリル P36、ランベルティ社製のエザキュアーKIP150、KIP65LT、KIP100F、KT37、KT55、KTO46、KIP75/B等が挙げられる。
【0071】
熱ラジカル重合開始剤としては、加熱により分解してラジカルを発生して重合を開始するものであれば特に制限はなく、例えば、過酸化物、アゾ化合物を挙げることができ、具体例としては、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチル−パーオキシベンゾエート、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
【0072】
本実施の形態に係る硬化性組成物中における(D)成分の含有量は、溶剤を除く成分の合計を100質量%としたときに、0.01質量%以上20質量%以下の範囲内であることが好ましく、0.1質量%以上10質量%以下の範囲内であることがより好ましい。(D)成分を前記範囲内で含有することにより、高硬度の硬化膜を形成することができる。
【0073】
1.5.(E)(メタ)アクリレート化合物
本実施の形態に係る硬化性組成物には、必要に応じて(B)成分以外の(メタ)アクリレート化合物を添加してもよい。(メタ)アクリレート化合物は、硬化性組成物を硬化して得られる硬化膜の耐擦傷性を向上させるために用いられる。
【0074】
(メタ)アクリレート化合物としては、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であれば特に制限されるものではないが、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることが好ましい。
【0075】
2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジイルジメチレンジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド(以下「EO」という。)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド(以下「PO」という。)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの両末端(メタ)アクリル酸付加物、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、フェノールノボラックポリグリシジルエーテルの(メタ)アクリレート等を例示することができる。これらの多官能モノマーの市販品としては、例えば、SA1002(三菱化学株式会社製)、ビスコート195、ビスコート230、ビスコート260、ビスコート215、ビスコート310、ビスコート214HP、ビスコート295、ビスコート300、ビスコート360、ビスコートGPT、ビスコート400、ビスコート700、ビスコート540、ビスコート3000、ビスコート3700(以上、大阪有機化学工業株式会社製)、カヤラッドR−526、HDDA、NPGDA、TPGDA、MANDA、R−551、R−712、R−604、R−684、PET−30、GPO−303、TMPTA、THE−330、DPHA、DPHA−2H、DPHA−2C、DPHA−2I、D−310、D−330、DPCA−20、DPCA−30、DPCA−60、DPCA−120、DN−0075、DN−2475、T−1420、T−2020、T−2040、TPA−320、TPA−330、RP−1040、RP−2040、R−011、R−300、R−205(以上、日本化薬株式会社製)、アロニックスM−210、M−220、M−233、M−240、M−215、M−305、M−309、M−310、M−315、M−325、M−400、M−6200、M−6400(以上、東亞合成株式会社製)、ライトアクリレートBP−4EA、BP−4PA、BP−2EA、BP−2PA、DCP−A(以上、共栄社化学株式会社製)、ニューフロンティアBPE−4、BR−42M、GX−8345(以上、第一工業製薬株式会社製)、ASF−400(新日鐵化学株式会社製)、リポキシSP−1506、SP−1507、SP−1509、VR−77、SP−4010、SP−4060(以上、昭和高分子株式会社製)、NKエステルA−BPE−4(新中村化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0076】
なお、本実施の形態に係る硬化性組成物には、これらの中でも分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する化合物を添加することがより好ましい。かかる3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、上記に例示されたトリ(メタ)アクリレート化合物、テトラ(メタ)アクリレート化合物、ペンタ(メタ)アクリレート化合物、ヘキサ(メタ)アクリレート化合物等の中から選択することができる。上記の化合物は、各々1種単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0077】
本実施の形態に係る硬化性組成物中における(メタ)アクリレート化合物の含有量は、溶剤を除く成分の合計を100質量%としたときに、5質量%以上50質量%以下の範囲内であることが好ましく、5質量%以上40質量%以下の範囲内であることがより好ましい。(メタ)アクリレート化合物を前記範囲内で含有することにより、硬化性組成物を硬化して得られる硬化膜の耐擦傷性を向上させることができる。
【0078】
1.6.(F)表面改質剤
本実施の形態に係る硬化性組成物には、必要に応じてさらに表面改質剤を添加してもよい。表面改質剤としては、ポリジメチルシロキサン骨格を有する化合物が挙げられる。ポリジメチルシロキサン骨格を有する化合物は、硬化膜の表面滑り性を改善し、耐擦傷性を向上させる効果があると共に、防汚性を向上させることができる。
【0079】
ポリジメチルシロキサン骨格を有する化合物は、さらに(メタ)アクリロイル基や水酸基等の反応性基を有することが好ましい。これらの具体例としては、サイラプレーンFM−4411、FM−4421、FM−4425、FM−7711、FM−7721、FM−7725、FM−0411、FM−0425、FM−DA11、FM−DA21、FM−DA26、FM−0711、FM−0721、FM−0725、TM−0701、TM−0701T(以上、商品名、チッソ株式会社製)、UV3500、UV3510、UV3530(以上、商品名、ビックケミー・ジャパン株式会社製)、BY16−004、SF8428(以上、商品名、東レ・ダウコーニングシリコーン株式会社製)、VPS−1001(商品名、和光純薬工業株式会社製)等が挙げられる。
【0080】
本実施の形態に係る硬化性組成物中における表面改質剤の含有量は、溶剤を除く成分の合計を100質量%としたときに、0.01質量%以上20質量%以下の範囲内であることが好ましく、0.1質量%以上10質量%以下の範囲内であることがより好ましい。
【0081】
1.7.(G)有機溶剤
本実施の形態に係る硬化性組成物には、必要に応じて有機溶剤を添加することにより、硬化性組成物の濃度を調整することができる。これにより、硬化性組成物の取扱いが容易となる場合があり、均一な膜厚を有する硬化膜を容易に形成できるようになる。
【0082】
有機溶剤の具体例としては、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、メタノール、エタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、2−プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類;ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族類;ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族類等の一種単独または二種以上の組合せが挙げられる。
【0083】
有機溶剤の添加量は特に制限されるものではないが、溶剤を除く成分の合計を100質量部としたときに100質量部以上100,000質量部以下とするのが好ましい。
【0084】
1.8.(H)その他の添加剤
本実施の形態に係る硬化性組成物には、本発明の目的や効果を損なわない範囲において、シリカ粒子以外の無機粒子、光増感剤、重合禁止剤、重合開始助剤、レベリング剤、濡れ性改良剤、消泡剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、顔料、染料、スリップ剤等の添加剤をさらに添加してもよい。
【0085】
1.9.硬化性組成物の製造方法
本実施の形態に係る硬化性組成物は、前記(A)成分ないし前記(C)成分、および必要に応じて(D)成分ないし(H)成分を添加して、室温または加熱条件下で混合することにより製造することができる。具体的には、ミキサー、ニーダー、ボールミル、三本ロール等の混合機を用いて製造することができる。但し、(D)成分として熱重合開始剤を用いた場合において、加熱条件下で混合するときは、熱重合開始剤の分解開始温度以下で混合する必要がある。
【0086】
2.反射防止用積層体
2.1.構成
本実施の形態に係る反射防止用積層体は、透明基材上に、前記硬化性組成物から形成された硬化膜(以下、単に「硬化膜」ともいう)を有することを特徴とする。さらに、本実施の形態に係る反射防止用積層体は、前記透明基材と前記硬化膜との間にハードコート層を有してもよい。ハードコート層を形成することにより、反射防止用積層体全体の硬度を高めることができ構造が安定する。また、反射率を低減する目的で、前記硬化膜の基材側に隣接して、高屈折率層を有していてもよい。高屈折率層を形成することにより、反射防止効果を高めることができる。
【0087】
本実施の形態に係る反射防止用積層体によれば、前述した硬化性組成物から形成された硬化膜を有するので、反射防止効果が得られるだけでなく、透明性(低ヘイズ)および防汚性にも優れたものとなる。
【0088】
図1は、本実施の形態に係る反射防止用積層体100を模式的に示した断面図である。図1に示すように、反射防止用積層体100は、透明基材10の上に、ハードコート層20、硬化膜30の順に積層されている。なお、透明基材10の上に、ハードコート層20を形成せずに、直接硬化膜30を形成してもよい。
【0089】
透明基材10の種類は、特に制限されるものではないが、例えばガラス、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース樹脂等からなる基材が挙げられる。これらの透明基材を含む反射防止用積層体とすることにより、カメラのレンズ部、テレビ(CRT)の画面表示部、あるいは液晶表示装置におけるカラーフィルター等の広範な利用分野において、優れた反射防止効果を得ることができる。
【0090】
ハードコート層20の材質は、特に制限されるものではないが、例えばシロキサン樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等の一種単独または二種以上の組合せが挙げられる。また、ハードコート層20は、前述したようなシリカ粒子等の無機酸化物粒子を含有することも好ましい。無機酸化物粒子を含有することで、ハードコート層20の硬度を上げることができる。
【0091】
ハードコート層20の厚さは、特に制限されるものではないが、好ましくは1〜100μm、より好ましくは3〜30μmの範囲内である。ハードコート層20の厚さが1μm未満であると、硬度が不足する場合があり、一方、100μmを超えると、均質な膜を形成することが困難となったり、積層体のカールが大きくなり扱いづらくなる場合があるからである。
【0092】
硬化膜30は、前記硬化性組成物を硬化することにより形成される。硬化性組成物については、「1.硬化性組成物」の項で説明した通りであるため、ここでの具体的な説明は省略するものとする。
【0093】
硬化膜30の屈折率は、好ましくは1.50以下、より好ましくは1.48以下、特に好ましくは1.45以下である。屈折率が1.50を超えると、反射防止効果が著しく低下する場合があるからである。なお、本明細書中における「屈折率」とは、測定温度25℃におけるNa−D線(波長589nm)の屈折率のことをいう。
【0094】
硬化膜30の厚さは、好ましくは50〜250nm、より好ましくは50〜200nm、特に好ましくは70〜150nmの範囲内である。硬化膜30の厚さを上記範囲内とすることで、反射防止効果を得ることができる。
【0095】
高屈折率層の材質は、特に制限されるものではないが、例えば、シリカ以外の無機酸化物粒子が分散した、シロキサン樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。高屈折率層の屈折率は、前記硬化膜30より高い屈折率であれば特に制限されるものではないが、好ましくは1.50〜1.70、より好ましくは1.52〜1.65である。高屈折率層の厚さは、好ましくは50〜250nm、より好ましくは50〜200nm、特に好ましくは70〜150nmの範囲内である。高屈折率層の屈折率および厚さを前記範囲内とすることで、高屈折率層がない場合と比較して、反射防止効果を高めることができる。
【0096】
2.2.製造方法
本実施の形態に係る反射防止用積層体は、透明基材(ハードコート層および/または高屈折率層を形成した場合は、それぞれハードコート層、高屈折率層)の上に、前述した硬化性組成物を塗布した後、硬化させることにより製造することができる。
【0097】
前述した硬化性組成物を透明基材に塗布する方法は、特に制限されるものではないが、例えばバーコート塗工、エアナイフ塗工、グラビア塗工、グラビアリバース塗工、リバースロール塗工、リップ塗工、ダイ塗工、ディップ塗工、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷等の公知の方法を用いることができる。
【0098】
前述した硬化性組成物の硬化条件についても特に制限されるものではないが、具体的には、前記硬化性組成物を透明基材上に塗布し、好ましくは0〜200℃で揮発成分を乾燥させた後、放射線および/または熱で硬化処理を行うことにより本実施の形態に係る反射防止用積層体を形成することができる。
【0099】
熱で硬化させる場合の好ましい条件は、20〜150℃であり、10秒〜24時間の範囲で行われる。放射線で硬化させる場合、紫外線または電子線を用いることが好ましい。紫外線の照射光量は、好ましくは0.01〜10J/cmであり、より好ましくは0.1〜2J/cmである。また、電子線の照射条件は、加圧電圧が10〜300kV、電子密度が0.02〜0.30mA/cm、電子線照射量が1〜10Mradである。
【0100】
3.実施例
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0101】
3.1.各製造例
3.1.1.(B−2)エチレン性不飽和基を含有する含フッ素重合体の合成
内容積1.0Lの電磁撹拌機付きステンレス製オートクレーブを窒素ガスで十分置換した後、酢酸エチル600g、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)138.5g、エチルビニルエーテル37.5g、ヒドロキシエチルビニルエーテル45.9g、過酸化ラウロイル1.5g、アゾ基含有ポリジメチルシロキサン(和光純薬工業株式会社製、商品名「VPS1001」)9.0gおよびノニオン性反応性乳化剤(旭電化工業株式会社製、商品名「ER−30」)45gを仕込み、ドライアイス−メタノールで−50℃まで冷却した後、再度窒素ガスで系内の酸素を除去した。
【0102】
次いで、ヘキサフルオロプロピレン85.9gを仕込み、昇温を開始した。オートクレーム内の温度が55℃に達した時点での圧力は4.1×10Paを示した。その後、70℃で20時間撹拌下に反応を継続し、圧力が2.0×10Paに低下した時点でオートクレーブを水冷し、反応を停止させた。室温に達した後、未反応モノマーを放出してオートクレーブを開放し、固形分濃度30.0%のポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をメタノールに投入しポリマーを析出させた後、メタノールにて洗浄し、50℃にて真空乾燥を行い250gの水酸基含有含フッ素重合体を得た。
【0103】
次いで、電磁撹拌機、ガラス製冷却管および温度計を備えた容量1Lのセパラブルフラスコに、上記で得られた水酸基含有含フッ素重合体を50.0g、重合禁止剤として2,6−ジ−t−ブチルメチルフェノール0.01gおよびメチルイソブチルケトン(MIBK)359gを仕込み、20℃で水酸基含有含フッ素重合体がMIBKに溶解して、溶液が透明、均一になるまで撹拌を行った。
【0104】
次いで、この系に、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート13.4gを添加し、溶液が均一になるまで撹拌した後、ジブチルチンジラウレート0.1gを添加して反応を開始し、系の温度を55〜65℃に保持し5時間撹拌を継続することにより、エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体のMIBK溶液を得た。この溶液をアルミ皿に2g秤量後、150℃のホットプレート上で5分間乾燥、秤量して固形分含量を求めたところ、15.0質量%であった。
【0105】
3.1.2.(C)前記一般式(1)で示される構造を有する含フッ素化合物の合成1
冷却管、滴下漏斗を備えた容量100mLの三つ口フラスコ内に、下記式(14)で示される化合物5.4g(12mmol)、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(平均分子量400)4.0g(10mmol)およびテトラヒドロフラン15gを投入した。また、テトラヒドロフラン15gにカリウムt−ブトキシド1.3g(12mmol)を溶解させた溶液を滴下漏斗に入れ、該溶液を上記のフラスコ内容物中へ約30分かけて撹拌下で徐々に滴下した。滴下終了後、室温下で撹拌をさらに12時間継続した。
【0106】
【化16】

【0107】
次いで、得られた反応物からカリウムt−ブトキシドを濾別し、濾液を100mLの丸底フラスコに移し、ロータリーエバポレーターを用いて溶剤を蒸発させ、下記式(15)で示される化合物(以下、「フッ素系添加剤1」ともいう)6.0gを得た。得られたフッ素系添加剤1の外観は、無色の液体であった。
【0108】
【化17】

(式(15)中、Rfは下記式(16)で表される構造であり、nは平均で8.4である。)
【0109】
【化18】

(式(16)中、*は結合部位を示す。)
【0110】
3.1.3.(C)前記一般式(1)で示される構造を有する含フッ素化合物の合成2
冷却管、滴下漏斗を備えた容量100mLの三つ口フラスコ内に、前記式(14)で示される化合物10.8g(24mmol)、ポリエチレングリコール(平均分子量400)4.0g(10mmol)およびテトラヒドロフラン15gを投入した。また、テトラヒドロフラン15gにカリウムt−ブトキシド2.6g(24mmol)を溶解させた溶液を滴下漏斗に入れ、該溶液を上記のフラスコ内容物中へ約30分かけて撹拌下で徐々に滴下した。滴下終了後、室温下で撹拌をさらに12時間継続した。
【0111】
次いで、得られた反応物からカリウムt−ブトキシドを濾別し、濾液を100mLの丸底フラスコに移し、ロータリーエバポレーターを用いて溶剤を蒸発させ、下記式(17)で示される化合物(以下、「フッ素系添加剤2」ともいう)9.0gを得た。得られたフッ素系添加剤2の外観は、無色の液体であった。
【0112】
【化19】

(式(17)中、Rfは前記式(16)で表される構造であり、nは平均で8.7である。)
【0113】
3.1.4.(C)前記一般式(1)で示される構造を有する含フッ素化合物の合成3
冷却管、滴下漏斗を備えた容量100mLの三つ口フラスコ内に、下記式(18)で示される化合物11.5g(10mmol)、炭酸カリウム4.1g(30mmol)および、テトラヒドロフラン40mlを入れ、前記式(14)で示される化合物13.5g(30mmol)を約30分かけて攪拌下で徐々に滴下した。滴下終了後、室温下で撹拌をさらに12時間継続した。
【0114】
【化20】

(式(18)中、nは平均で8である。)
【0115】
次いで、得られた反応物から炭酸カリウムを濾別し、濾液を100mLの丸底フラスコに移し、ロータリーエバポレーターを用いて溶剤を蒸発させ、下記式(19)で示される化合物(以下、「フッ素系添加剤3」ともいう)9.0gを得た。得られたフッ素系添加剤3の外観は、無色の液体であった。
【0116】
【化21】

(式(19)中、Rfは前記式(16)で表される構造であり、nは平均で8である。)
【0117】
3.1.5.(C)前記一般式(1)で示される構造を有する含フッ素化合物の合成4
冷却管、滴下漏斗を備えた容量100mLの三つ口フラスコ内に、下記式(20)で示される化合物10.5g(10mmol)、炭酸カリウム5.5g(40mmol)および、テトラヒドロフラン40mlを入れ、前記式(14)で示される化合物18g(40mmol)を約30分かけて攪拌下で徐々に滴下した。滴下終了後、室温下で撹拌をさらに12時間継続した。
【0118】
【化22】

(式(20)中、nは平均で8である。)
【0119】
次いで、得られた反応物から炭酸カリウムを濾別し、濾液を100mLの丸底フラスコに移し、ロータリーエバポレーターを用いて溶剤を蒸発させ、下記式(21)で示される化合物(以下、「フッ素系添加剤4」ともいう)22.6gを得た。得られたフッ素系添加剤4の外観は、無色の液体であった。
【0120】
【化23】

(式(21)中、Rfは前記式(16)で表される構造であり、nは平均で8である。)
【0121】
3.1.6.シリカ粒子含有ハードコート層用組成物の調製
紫外線を遮断した容器中において、シリカ粒子(日産化学株式会社製、商品名「MEK−ST−L」、固形分濃度30%、数平均粒径50nm)を固形分として30質量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート65質量部、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン5質量部、メチルイソブチルケトン44質量部を50℃で2時間撹拌することで均一な溶液のハードコート層用組成物を得た。この組成物をアルミ皿に2g秤量後、150℃のホットプレート上で1時間乾燥、秤量して固形分含量を求めたところ、50質量%であった。
【0122】
3.1.7.硬化性組成物塗工用基材の作製
トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(厚さ50μm)に、「3.1.6.シリカ粒子含有ハードコート層用組成物の調製」で調製したシリカ粒子含有ハードコート層用組成物をワイヤーバーコーター(松尾産業株式会社製、No.3、ワイヤ径12ミル)で、乾燥後の厚さが約5μmとなるように塗布した。その後、乾燥オーブンを用いて80℃で2分間乾燥させた。さらに、空気下、高圧水銀ランプを用いて300mJ/cmの光照射条件で紫外線を照射し、硬化性組成物塗工用基材を作製した。
【0123】
3.2.硬化性組成物の調製
3.2.1.実施例1
表1に示すように、中空シリカ粒子(日揮触媒化成株式会社製、商品名「スルーリア4320」、(A)成分)を固形分として50質量部、フッ素を含有する(メタ)アクリレート(共栄社化学株式会社製、商品名「LINC−3A」、(B)成分)40質量部、上記3.1.2.のようにして合成されたフッ素系添加剤1((C)成分)7質量部、光重合開始剤(BASFジャパン社製、商品名「Irgacure127」、(D)成分)3質量部、およびメチルイソブチルケトン1600質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート750質量部を撹拌機を付けたガラス製セパラブルフラスコに仕込み、室温にて2時間撹拌し、均一な硬化性組成物を得た。また、この組成物をアルミ皿に2g秤量後、150℃のホットプレート上で5分乾燥、秤量して固形分含量を求めたところ、4質量%であった。
【0124】
3.2.2.実施例2〜10、比較例1〜2
表1に示した組成に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2〜10、比較例1〜2に係る硬化性組成物を得た。表中、配合量は固形分としての量であり、溶液や分散液として配合した場合には、その溶剤や分散媒は含まない。
【0125】
【表1】

【0126】
表1における各成分は、以下の通りである。
・(A)成分:中空シリカ粒子(日揮触媒化成工業株式会社製、商品名「スルーリア4320」、メチルイソブチルケトン中空シリカゾル、数平均粒径40〜50nm、固形分濃度20%)
・(B−1)成分:フッ素を含有する(メタ)アクリルエステル類(共栄社化学株式会社製、商品名「LINC−3A」、トリアクリロイルヘプタデカフルオロノネニルペンタエリスリトール65質量%およびペンタエリスリトールテトラアクリレート35質量%の混合物)
・(B−2)成分:エチレン性不飽和基を含有する含フッ素重合体(前記製造例3.1.1.において合成されたもの)
・(C)成分:フッ素系添加剤1〜4(前記製造例において合成されたもの)
・(C’)成分:従来使用の直鎖パーフルオロアルキル含有フッ素添加剤(DIC株式会社製、商品名「メガファックF−444」、パーフルオロアルキル基含有ポリオキシエチレンエーテル)
・(D)成分:ラジカル重合開始剤(BASFジャパン社製、商品名「イルガキュア(登録商標)127」、2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル−2−メチル−プロパン−1−オン)
・PET−30:フッ素を含有しない(メタ)アクリルエステル類(日本化薬株式会社製、商品名「PET−30」、ペンタエリスリトールトリアクリレート)
【0127】
3.3.評価試験
3.3.1.硬化膜のヘイズ(濁度)の評価
各硬化性組成物を「3.1.7.硬化性組成物塗工用基材の作製」で作製した硬化性組成物塗工用基材上にワイヤーバーコーター(松尾産業株式会社製、No.1、ワイヤ径3ミル)を用いて、乾燥後の厚さが約100nmとなるように塗布した。その後、乾燥オーブンを用いて80℃で1分間乾燥させた。その後、窒素フロー下、高圧水銀ランプを用いて、600mJ/cmの光照射条件で紫外線を照射して硬化させた。得られた硬化膜について、カラーヘーズメーター(スガ試験機株式会社製、型式「SC−3H」)による透過式の測定方法で濁度を測定した。評価基準は以下の通りである。その結果を表1に併せて示す。
○:0.40未満
×:0.40以上
【0128】
3.3.2.耐防汚性の評価
前記「3.3.1.硬化膜のヘイズ(濁度)の評価」で得られた硬化膜に指紋をつけ、ティッシュペーパー(王子ネピア株式会社製、商品名「ネピアティッシュ」)にて拭き取った。このときの指紋拭き取り性を、以下の基準により評価した。その結果を表1に併せて示す。
◎:1回以上10回以下で指紋が完全に拭き取れた。
○:11回以上20回以下で指紋が完全に拭き取れた。
×:拭き取れずに指紋跡が硬化膜表面に残存した。
【0129】
3.4.評価結果
表1の結果から、実施例1〜10の硬化性組成物を硬化させて得られる硬化膜においては、濁度が0.40未満となり透明性に優れていることが判った。また、指紋拭き取り性の結果から耐防汚性にも優れていることが判った。
【0130】
比較例1の硬化性組成物では、(B)成分を添加しなかった。比較例1の硬化性組成物を硬化させて得られる硬化膜においては、耐防汚性は許容できるレベルであったが、透明性が著しく損なわれることが判った。比較例1の硬化性組成物は、(C)成分を含有しているものの(B)成分を含有していないので、硬化性組成物全体の相溶性ないし親和性が損なわれたことによるものと考えられる。
【0131】
また、比較例2の硬化性組成物では、(C)成分の代わりに(C’)成分(従来使用していたパーフルオロアルキル含有フッ素添加剤)を使用した。比較例2の硬化性組成物を硬化させて得られる硬化膜においては、透明性は許容できるレベルであったが、耐防汚性が不十分であった。以上のことから、(C)成分を含有する硬化性組成物を硬化させて得られる硬化膜は、耐防汚性が向上することが明らかとなった。
【0132】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0133】
10…透明基材、20…ハードコート層、30…硬化膜、100…反射防止用積層体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材上に、
(A)シリカ粒子と、(B−1)フッ素を含有する(メタ)アクリルエステル類および(B−2)エチレン性不飽和基を含有する含フッ素重合体から選択される少なくとも1種と、(C)下記一般式(1)で示される構造を有する含フッ素化合物と、を含有する硬化性組成物から形成された硬化膜を有することを特徴とする、反射防止用積層体。
【化24】

(式(1)中、Rは炭素数2〜4のアルキレンを表し、Rfは2〜10個のCF基を有する炭素数3〜20のフッ化炭素基を表し、Lは芳香環を含んでいてもよい炭素数6〜12の連結基を表す。mは0または1であり、nは2〜30の整数を表す。*は他の原子または基と結合していることを表す。)
【請求項2】
前記一般式(1)中、Rfが、3〜10個のCF基を有する炭素数4〜20のフッ化炭素基である、請求項1に記載の反射防止用積層体。
【請求項3】
前記硬化膜全体の質量を100質量%としたときに、前記(C)成分の含有量が1質量%以上10質量%以下である、請求項1または請求項2に記載の反射防止用積層体。
【請求項4】
前記(A)シリカ粒子が、中空シリカ粒子および多孔質シリカ粒子の少なくとも一方を含有する、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の反射防止用積層体。
【請求項5】
前記硬化性組成物が、さらに(D)ラジカル重合開始剤を含有する、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の反射防止用積層体。
【請求項6】
前記透明基材と前記硬化膜との間に、さらにハードコート層を有する、請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の反射防止用積層体。
【請求項7】
(A)シリカ粒子と、
(B)(B−1)フッ素を含有する(メタ)アクリルエステル類および(B−2)エチレン性不飽和基を含有する含フッ素重合体から選択される少なくとも1種と、
(C)下記一般式(1)で示される構造を有する含フッ素化合物と、
(D)ラジカル重合開始剤と、
を含有することを特徴とする、硬化性組成物。
【化25】

(式(1)中、Rは炭素数2〜4のアルキレンを表し、Rfは2〜10個のCF基を有する炭素数3〜20のフッ化炭素基を表し、Lは芳香環を含んでいてもよい炭素数6〜12の連結基を表す。mは0または1であり、nは2〜30の整数を表す。*は他の原子または基と結合していることを表す。)
【請求項8】
前記一般式(1)中、Rfが、3〜10個のCF基を有する炭素数4〜20のフッ化炭素基である、請求項7に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
前記(A)シリカ粒子が、中空シリカ粒子および多孔質シリカ粒子の少なくとも一方を含有する、請求項7または請求項8に記載の硬化性組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2012−58307(P2012−58307A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198724(P2010−198724)
【出願日】平成22年9月6日(2010.9.6)
【特許番号】特許第4816986号(P4816986)
【特許公報発行日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】