説明

硬貨処理装置及び硬貨処理方法

【課題】硬貨の表面の凹凸を高精度に評価すること。
【解決手段】硬貨100を一枚ずつ搬送し、第1の色成分を透過する第1の領域と第2の色成分を透過する第2の領域とを交互に配置したスリットパターン113を透過したスリットパターン光を照射する。スリットパターン光が照射された硬貨の画像をカメラ115が撮像し、色分離部211が撮像結果を第1の色成分と第2の色成分に分離する。高さ計算部213は、第1の色成分の画像データにおけるスリットパターン形状の変化と、第2の色成分の画像データにおけるスリットパターン形状の変化からそれぞれ高さ評価データを作成し、硬貨の三次元測定データを得る。判定部206は、三次元測定データに基づいて硬貨の真偽、種別(金種)、正損を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、硬貨を評価する硬貨処理装置及び硬貨処理方法に関し、特に、硬貨の表面の凹凸を評価する三次元測定データから硬貨の真偽、種別(金種)、正損を判定する硬貨処理装置及び硬貨処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気センサによるセンシング結果やカメラによる撮像結果から対象物の三次元形状を求める技術が知られており、硬貨の真偽、種別、正損の判定などに用いられている。例えば、特許文献1には、磁束の変化を利用して一対の検出用磁極部が硬貨の凹凸形状を検出する磁気センサが開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、コイン自身のコピーを貼り付けられた偽装硬貨の判別を可能にするために、画像入力部から出力される画像データについて出力値ごとに発生頻度をカウントし、出力値の発生頻度の分布から硬貨表面の凹凸模様を立体的に認識して硬貨の真偽を判別する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−188932号公報
【特許文献2】特開平10−116368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の技術では、高速で搬送中の硬貨について高精度な評価を行なうことができないという問題点がある。具体的には、上記特許文献1によれば、例えば500円硬貨のパール模様の有無を検知することはできるが、検出部分がスポット的であるために、模様が全面に亘るかどうかを確認することは難しい。
【0006】
また、上記特許文献2のものは、硬貨の凹凸を反射画像の濃淡に置換えて検知するものであり、硬貨をコピーしたものが貼られている場合には、読み取り面に緩やかな傾斜部分がないことが出力値のカウント結果のグラフから判るが、実際の凹凸を見るものではなく、硬貨汚れが発生した場合には、グラフの形状が変わってしまうことがあり、精度良く判別することができない。
【0007】
本発明は、上述した従来技術による問題点を解消するためになされたものであって、搬送されている硬貨の表面の凹凸を高精度に評価する硬貨処理装置及び硬貨処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明は、硬貨を一枚ずつ搬送させる硬貨搬送路と、前記硬貨搬送路上の硬貨に対して第1の色成分を透過する第1の領域と第2の色成分を透過する第2の領域とを交互に配置したスリットパターンを透過したスリットパターン光を照射するスリットパターン光照射手段と、前記スリットパターン光が照射された前記硬貨の画像を撮像する撮像手段と、前記撮像手段による撮像結果におけるスリットパターン形状の変化から前記硬貨の三次元測定データを得る三次元データ生成手段と、
前記三次元測定データに基づいて、前記硬貨の真偽、種別、正損のうち少なくともいずれか一つを判定する判定手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上記の発明において、前記判定手段は、前記三次元測定データのエッジを微分処理によって抽出し、抽出した微分データから求めた平均値と、真正な硬貨の標準的な平均値から求めた閾値とを比較して、前記硬貨の真偽を判定することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記の発明において、前記判定手段は、前記硬貨の同心円上のリング部の高さデータの平均値が所定の値の範囲内にあれば真正の硬貨であると判定することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記の発明において、前記判定手段は、前記硬貨の所定の領域について高さを示す値の平均値を求め、求めた平均値が所定範囲内にあれば真正の硬貨と判定することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記の発明において、前記判定手段によって真正な硬貨と判定された硬貨を収納する収納庫と、前記判定手段によって真正な硬貨でないと判定された硬貨が搬送されるリジェクト手段とをさらに備えたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、硬貨搬送路上に硬貨を一枚ずつ搬送させる硬貨搬送ステップと、前記硬貨搬送路上の硬貨に対して第1の色成分を透過する第1の領域と第2の色成分を透過する第2の領域とを交互に配置したスリットパターンを透過したスリットパターン光を照射するスリットパターン光照射ステップと、前記スリットパターン光が照射された前記硬貨の画像を撮像する撮像ステップと、前記撮像手段による撮像結果におけるスリットパターン形状の変化から前記硬貨の三次元測定データを得る三次元データ生成ステップと、前記三次元測定データに基づいて、前記硬貨の真偽、種別、正損のうち少なくともいずれか一つを判定する判定ステップとを含んだことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、硬貨搬送路上に硬貨を一枚ずつ搬送させ、第1の色成分を透過する第1の領域と第2の色成分を透過する第2の領域とを交互に配置したスリットパターンを透過したスリットパターン光を照射して硬貨の画像を撮像し、撮像結果におけるスリットパターン形状の変化から得られた前記硬貨の三次元測定データに基づいて、硬貨の真偽、種別、正損のうち少なくともいずれか一つを判定するので、硬貨の表面の凹凸を高精度に評価することができる。
【0015】
また、本発明によれば、三次元測定データのエッジを微分処理によって抽出し、抽出した微分データから求めた平均値と、真正な硬貨の標準的な平均値から求めた閾値とを比較して、硬貨の真偽を判定するので、硬貨の真偽を高精度に判定することができる。
【0016】
また、本発明によれば、硬貨の同心円上のリング部の高さデータの平均値が所定の値の範囲内にあれば真正の硬貨であると判定するので、硬貨の真偽を簡易かつ高精度に評価することができる。
【0017】
また、本発明によれば、硬貨の所定の領域について高さを示す値の平均値を求め、求めた平均値が所定範囲内にあれば真正の硬貨と判定するので、硬貨の特徴部分から真偽を高精度に評価することができる。
【0018】
また、本発明によれば、真正な硬貨と判定された硬貨を収納する収納庫と、判定手段によって真正な硬貨でないと判定された硬貨が搬送されるリジェクト手段とを備えたので、真偽の判定結果に基づいて硬貨の収納とリジェクトを行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本実施例に係る硬貨処理装置の主要部の構成について説明する説明図である。
【図2】図2は、三次元データ生成部の説明図である。
【図3】図3は、本実施例に係る硬貨処理装置の内部構成の概略を示す構成図である。
【図4】図4は、格子板にもちいる第1の領域と第2の領域の色の組み合わせを説明するための説明図である。
【図5】図5は、計測面の高さによるスリットパターンの変形を説明するための説明図である。
【図6】図6は、縞の変移からの高さ算出を説明するための説明図である。
【図7】図7は、スリットパターンに使用する色の組み合わせを説明するための説明図である(その1)。
【図8】図8は、スリットパターンに使用する色の組み合わせを説明するための説明図である(その2)。
【図9】図9は、硬貨の材質と光源の制御を説明するための説明図である。
【図10】図10は、硬貨処理装置の処理動作を示すフローチャートである。
【図11】図11は、三次元測定データの作成を説明するための説明図である。
【図12】図12は、図10に示した三次元データ生成処理(ステップS109)を説明するフローチャートである。
【図13】図13は、三次元測定データに対してエッジ抽出を用いる場合の判定処理を示すフローチャートである。
【図14】図14は、三次元測定データに対してエッジ抽出を用いる場合の説明図である。
【図15】図15は、三次元測定データに対してマッチングによる高さ比較を用いる場合の判定処理のフローチャートである。
【図16】図16は、三次元測定データに対してマッチングによる高さ比較を用いる場合の説明図である。
【図17】図17は、三次元測定データに対してプロファイルを用いた高さ比較を行なう場合の判定処理のフローチャートである。
【図18】図18は、三次元測定データに対してプロファイルを用いた高さ比較を行なう場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0020】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る硬貨処理装置及び硬貨処理方法の実施例を詳細に説明する。
【0021】
図1は、本実施例に係る硬貨処理装置の主要部の構成を説明するための説明図である。本実施例に係る硬貨処理装置は、識別部34及び制御部16を有する。識別部34は、押さえベルト101により硬貨100を一枚ずつ押さえて硬貨搬送路上を搬送し、撮像ユニット110により硬貨の表面を撮像する。
【0022】
また、識別部34は、磁気センサ102を備えており、制御部16内部の材質判別部201は、磁気センサのセンシング結果に基づいて硬貨の材質を判別する。制御部16内部の照明調整部202は、硬貨の材質に基づいて撮像ユニット110内部の光源111の光量を制御する。
【0023】
識別部34において、光源111、集光レンズ112、格子板113、投影レンズ114は、スリットパターン光照射部を構成する。光源111が発した光は、集光レンズ112によって集光された後、格子板113を通過してスリットパターン光となり、投影レンズ114を経て硬貨100に照射される。ここで、格子板113は、第1の色成分を透過する第1の領域と第2の色成分を透過する第2の領域とを交互に配置したスリットパターンである。
【0024】
カメラ115は、スリットパターン光の硬貨100からの反射光を撮像し、制御部16内部の画像記憶部204に記憶する。なお、硬貨100の通過タイミングはセンサ116によって検知され、制御部16内部の位置検出部203がセンサ116の検知結果に基づいてカメラ115の撮像タイミングを決定する。
【0025】
制御部16の三次元データ生成部205は、画像記憶部204に記憶された画像データから硬貨100の三次元測定データを算定する処理部である。この三次元データ生成部205は、色分離部211、濃度規格化処理部212及び高さ計算部213を有する。
【0026】
色分離部211は、画像記憶部204に記憶された画像データを第1の色成分、第2の色成分、第1の領域と第2の領域で共に通過する共通色成分に分離する。濃度規格化処理部212は、第1の色成分の濃度を共通色成分の濃度で除算して規格化する処理を行う。また、この濃度規格化処理部212は、第2の色成分の濃度を共通色成分の濃度で除算して規格化する処理を行う。
【0027】
高さ計算部213は、規格化された第1の色成分の画像データにおけるスリットパターン形状の変化から第1の高さ評価データを生成する。また、この高さ計算部213は、規格化された第2の色成分の画像データにおけるスリットパターン形状の変化から第2の高さ評価データを生成する。そして、高さ計算部213は、第1の高さ評価データ及び第2の高さ評価データから硬貨の三次元測定データを得る。かかる三次元測定データの一例として、第1の高さ評価データ及び第2の高さ評価データの平均値を用いることができる。
【0028】
制御部16内部の判定部206は、高さ計算部213が算出した高さと、判定基準値記憶部207に記憶された判定基準値とを比較して、硬貨100の真偽判定を行なう処理部であり、判定結果出力部208は、判定部206の判定結果を出力する処理部である。判定基準値は、例えば、真正な硬貨の標準的な平均値から求めた高さの閾値である。また、高さ計算部213が算出した高さデータを微分処理したデータの平均値と真正な硬貨の標準的な平均値から求めた閾値と比較することもできる。
【0029】
図2は、三次元データ生成部205を説明するための説明図である。図2に示した例では、格子板113は、第1の色成分が赤(R)、第2の色成分が青(B)であり、第1領域が黄、第2の領域がシアンであるものとする。第1の領域と第2の領域は緑(G)を共通色成分として透過する。
【0030】
黄のスリットパターンとシアンのスリットパターンをライン幅Lとスペース幅Sとして説明する。ライン幅Lとスペース幅Sが等しく、周期TはL+Sである。周期Tは、硬貨の投影面で、一例として0.3〜0.4mmとする。黄のスリットとシアンのスリットが交互に配置されているので、合成された格子パターンにおいて、黄のスリットパターンとシアンのスリットパターンは互いに半周期の位相シフトがあることになる。また、シアンと黄は共に緑を透過するので、緑の成分は濃度補正データとして使用できる。
【0031】
かかる格子板を用いることで、撮像回数を増加することなく、照射されるスリットパターンが互いに半周期の位相シフトした2枚のスリット画像データと濃度補正データを1回の撮像で同時に撮像することができる。
【0032】
このように、識別部34は、2種の異なる色成分で同じ周波数成分(ライン幅=スペース幅)のスリットパターンが互いに半周期の位相シフトとなるように合成したスリットパターンを硬貨へ照射し、カラーカメラで撮像したカラー画像をRGBの色成分毎に分離することで、位相の異なる(反転した)2種のスリット画像と照明ムラや外来光などをキャンセルするための濃度補正データを1回の撮像で同時に取得することができる。
【0033】
図2に示した例では、シアンと黄のスリットパターンを照射して撮像した硬貨の画像を色分離部211がRGBに分離すると、赤(R)成分と青(B)成分で位相が反転したスリット画像が得られる。そして、緑(G)成分として、スリットパターンの影響が少なく照明ばらつきなどによる濃度ムラが検出された画像が得られる。
【0034】
濃度規格化処理部212は、緑(G)成分のデータでB成分のデータとR成分のデータを補正し、高さ計算部213は、規格化されたB成分のデータとR成分のデータからそれぞれ高さ評価データを算出し、その結果を平均化して三次元測定データとする。
【0035】
図3は、本実施例に係る硬貨処理装置の内部構成の概略を示す構成図である。図3に示すように、硬貨処理装置10は、略直方体形状の筐体12と、この筐体12の外部から内部に硬貨を投入するための投入口14と、投入口14に投入された硬貨を後述する硬貨貯留繰出部70に供給するための供給部20と、供給部20から供給された硬貨を貯留するとともにこの貯留された硬貨の繰出しを行なう硬貨貯留繰出部70とを備えている。これらの投入口14、供給部20及び硬貨貯留繰出部70は、硬貨を硬貨処理装置10の内部に受け入れるための受入部を構成する。
【0036】
この硬貨貯留繰出部70には、当該硬貨貯留繰出部70から繰り出された硬貨を筐体12の内部で搬送する搬送部30が接続されており、この搬送部30には硬貨の金種や正損、真偽等の識別を行なう識別部34が設けられている。また、搬送部30の下流側には、選別部32(硬貨案内部の一部)が接続されており、この選別部32によって搬送部30から搬送された硬貨が、識別部34の識別結果に基づき金種別又は混合状態での硬貨の収納先が選別されるようになっている。
【0037】
具体的には、選別部32における硬貨の搬送路31a(硬貨案内部の一部)には、複数(例えば3つ)の開口部36a,36b,36c(硬貨案内部の一部)が設けられている。各開口部36a,36b,36cは、それぞれリジェクト硬貨シュート62やシュート32a,32bにそれぞれ送られるようになっている。
【0038】
さらに、搬送路31aの下流側端部において、各開口部36a,36b,36cの更に下流側には開口部36dが設けられている。この開口部36dは、シュート32cに連通されている。搬送路31aにより搬送される硬貨が各開口部36a,36b,36cに入らなかった場合には、この硬貨が搬送路31aの下流側端部まで搬送され、開口部36dに入るようにされている。開口部36dに入った硬貨はシュート32cに送られる。
【0039】
前述のように、選別部32にはリジェクト硬貨シュート62が接続されており、識別部34により識別できなかった硬貨や識別部34により正常な硬貨ではないと識別された硬貨がリジェクト硬貨として選別部32の開口部36aからリジェクト硬貨シュート62に送られる。また、リジェクト硬貨シュート62の下流側端部には筐体12の外部からアクセス可能なリジェクト硬貨取出口60が設けられており、リジェクト硬貨シュート62からのリジェクト硬貨がリジェクト硬貨取出口60に送られる。これにより、操作者はリジェクト硬貨取出口60からリジェクト硬貨を取り出すことが可能となる。また、硬貨貯留繰出部70から排出シュート64に送られた物体もリジェクト硬貨取出口60に送られる。
【0040】
選別部32の下方には一時保留部40が設けられている。この一時保留部40は、金種別の状態又は混合状態で硬貨を一時的に保留する複数(例えば3つ)の一時保留部分40a,40b,40cにより構成される。選別部32で選別された硬貨は、各一時保留部分40a,40b,40cにそれぞれ対応するシュート32a,32b,32c(硬貨案内部の一部)を介して、これらの一時保留部分40a,40b,40cに送られることになる。
【0041】
また、一時保留部40の下方には更に収納部50が設けられている。この収納部50は、金種別の状態又は混合状態で硬貨を収納する複数(例えば3つ)のカセット50a,50b,50cにより構成されている。各一時保留部分40a,40b,40cに一時的に保留された硬貨は、各カセット50a,50b,50cにそれぞれ対応するシュート42a,42b,42c(硬貨案内部の一部)を介して、これらのカセット50a,50b,50cに送られる。なお、一時保留部40は、入金取引時にトラブルが発生した場合に全額を返却できるようにするために設けられている。
【0042】
図4は、格子板113に用いられる第1の領域と第2の領域の色の組み合わせを説明するための説明図である。RG(黄)とRB(マゼンタ)を用いた場合には、赤(R)が共通色成分となり、緑(G)と青(B)のスリットパターンが得られる。また、RG(黄)とGB(シアン)を用いた場合には、緑(G)が共通色成分となり、赤(R)と青(B)のスリットパターンが得られる。そして、RB(マゼンタ)とGB(シアン)を用いた場合には、青(B)が共通色成分となり、赤(R)と緑(G)のスリットパターンが得られる。
【0043】
次に、図5,図6を参照して高さの算出について説明する。図5は、計測面の高さによるスリットパターンの変形を説明するための説明図である。格子板113を通して光源111からの光を計測面に照射してカメラ115で撮像すると、格子板の縞パターンは計測面の高さによって変形し、変形縞画像として撮像される。
【0044】
図6は、縞の変移からの高さ算出を説明するための説明図である。図6に示したように、計測対象の面の高さをhとし、縞(スリット)パターンの投影方向と観測方向(撮像方向)の角度をθとし、縞の変形(変移)量をΔXとすると、
ΔX=h×Tanθ
の関係式が成立し、縞の変形量ΔXから計測面の高さhを求めることができる。
【0045】
次に、図7、図8を参照してスリットパターンに使用する色の組み合わせを説明する。図7に示したように、黒(Bl)と白(W)のスリットを組み合わせた格子(Bl+W)では、黒(Bl)のスリットが全ての光を遮断し、白(W)のスリットが全ての光を透過する。このため、RGBに分離すると、黒(Bl)のスリットの部分からは情報が得られず、白(W)のスリットに対してRGBの全てについての情報が得られる。したがって、白(W)のスリットに対応する一枚の画像(1ショット)から三次元形状の検知ができるが、位相のシフトした2枚の画像(2ショット)を得ることはできない。また、黒(Bl)のスリットが遮光部となり、微細検知に向かない。また、黒(Bl)のスリットでは画像情報がないので汚損を検知することができない。したがって、黒(Bl)と白(W)のスリットを組み合わせた格子(Bl+W)は、開示の装置へ適用することが難しい。
【0046】
RGBのスリットの組み合わせについて検討する。硬貨全面に照射した2種類のスリットに共通な原色があれば微細検知が可能であり、汚損を見るためには、2種類のスリットに共通な原色とさらにもう1色が必要で、2色の比率を求めて汚れを検出する。
【0047】
緑(G)と青(B)のスリットを組み合わせた格子(GB)を用いた場合に、撮像結果をRGBに分離すると、共通な原色がないので微細検知は不可であり、各スリットが単色であるため汚損を検知することができない。したがって、開示の装置へ適用することが難しい。そして、赤(R)と緑(G)のスリットを組み合わせた格子(RG)は、共通な原色がないので微細検知は不可であり、各スリットが単色であるため汚損を検知することができない。したがって、開示の装置へ適用することが難しい。
【0048】
同様に、赤(R)と青(B)のスリットを組み合わせた格子(RB)は、共通な原色がないので微細検知は不可であり、各スリットが単色であるため汚損を検知することができない。したがって、開示の装置へ適用することが難しい。
【0049】
RGBのいずれかと白(W)のスリットを交互に配置した組み合わせについて説明する。青(B)と白(W)のスリットを組み合わせた格子(BW)を用いた場合、撮像結果をRGBに分離すると、RとGについて位相の異なる2枚の画像を得ることができないが、対象の全面についてB成分の画像が得られるため微細検知ができる。しかし、青(B)のスリット部は1色しかないので汚損を検知することができない。したがって、開示の装置へ適用することが難しい。
【0050】
同様に、緑(G)と白(W)のスリットを組み合わせた格子(GW)を用いた場合、撮像結果をRGBに分離すると、位相の異なる2枚の画像を得ることができないことが問題点となり、開示の装置へ適用することが難しい。そして、赤(R)と白(W)のスリットを組み合わせた格子(RW)を用いた場合に、撮像結果をRGBに分離すると、位相の異なる2枚の画像を得ることができないことが問題点となり、開示の装置へ適用することが難しい。
【0051】
図8では、シアン(C)、マゼンタ(M)、黄(Y)のスリットの組み合わせについて検討する。マゼンタ(M)と黄(Y)のスリットを組み合わせた格子(MY)を用いた場合に、撮像結果をRGBに分離すると、R成分が対象の全面について得られ、GとBについて位相の異なる2枚の縞画像が得られる。対象の全面について共通な原色としてR成分で情報が得られるため、微細検知が可能であり、共通な原色である赤(R)ともう1色(緑(G)又は青(B))が得られることから、汚損の検知もできる。このように、マゼンタ(M)と黄(Y)のスリットを組み合わせた格子(MY)は、位相の異なる2枚の画像を取得し、全面の画像の取得ができ、微細検知と汚損検知ができるので、開示の装置に好適である。
【0052】
同様に、シアン(C)と黄(Y)のスリットを組み合わせた格子(CY)を用いた場合に、撮像結果をRGBに分離すると、G成分が対象の全面について得られ、RとBについて位相の異なる2枚の縞画像が得られる。対象の全面について共通な原色としてG成分で情報が得られるため、微細検知が可能であり、共通な原色である緑(G)ともう1色(赤(R)又は青(B))が得られることから、汚損の検知もできる。このように、シアン(C)と黄(Y)のスリットを組み合わせた格子(CY)は、位相の異なる2枚の画像の取得、全面の画像の取得ができ、微細検知と汚損検知ができるので、開示の装置に好適である。
【0053】
また、シアン(C)とマゼンタ(M)のスリットを組み合わせた格子(CM)を用いた場合、撮像結果をRGBに分離すると、B成分が対象の全面について得られ、RとGについて位相の異なる2枚の縞画像が得られる。対象の全面について共通な原色としてB成分で情報が得られるため、微細検知が可能であり、共通な原色である青(B)ともう1色(赤(R)又は緑(G))が得られることから、汚損の検知もできる。このように、シアン(C)とマゼンタ(M)のスリットを組み合わせた格子(CM)は、位相の異なる2枚の画像の取得、全面の画像の取得ができ、微細検知と汚損検知ができるので、開示の装置に好適である。
【0054】
CMYのいずれかと白(W)を交互に配置した組み合わせについて説明する。シアン(C)と白(W)のスリットを組み合わせた格子(CW)を用いた場合、撮像結果をRGBに分離すると、R成分のみについてスリットパターンの画像が得られる。また、対象の全面についてG成分とB成分の画像が得られる。共通な原色である青(B)と緑(G)が得られることから微細の検知ができ、青(B)と緑(G)の比率がとれることから汚損の検知もできる。しかし、位相の異なる2枚の画像を得ることができないことが問題点であり、開示の装置へ適用することが難しい。
【0055】
同様に、マゼンタ(M)と白(W)のスリットを組み合わせた格子(MW)を用いた場合、撮像結果をRGBに分離すると、位相の異なる2枚の画像を得ることができないことが問題点となり、開示の装置へ適用することが難しい。そして、黄(Y)と白(W)のスリットを組み合わせた格子(RW)を用いた場合、撮像結果をRGBに分離すると、位相の異なる2枚の画像を得ることができないことが問題点となり、開示の装置への適用することが難しい。
【0056】
次に、硬貨の種類と光源111の発光量の制御について説明する。硬貨の種類、特に材質によって反射率が異なるので、反射率の高い硬貨を撮像する時は光源111の明るさを下げ、反射率の低い硬貨を撮像する時は光源111の明るさを上げることが望ましい。具体的には、図9に示したように、材質判別部201による判別の結果、白銅系やアルミニウムの硬貨(100円、50円、1円)については発光量をレベル1とし、銅や黄銅系の硬貨(5円、10円)については発光量をレベル1よりも大きいレベル2とし、ニッケル黄銅系の硬貨(500円)は別のレベルであるレベル3とする。
【0057】
次に、硬貨処理装置10の処理動作について説明する。図10は、硬貨処理装置10の処理動作を説明するフローチャートである。説明のため硬貨1枚の処理を例に取ることとする。硬貨処理装置10は、まず、硬貨を1枚搬送し(ステップ101)、材質判別部201による硬貨の種別の識別を行なう(ステップ102)。
【0058】
その後、位置検出部203が硬貨の到来を検知し(ステップ103)、硬貨の通過前、すなわち、硬貨がカメラ115の撮像範囲に入る前に事前撮像を行なう(ステップ104)。照明調整部202は、硬貨の種別や、事前撮像によって得られた画像における輝度の状態などに基づいて光源111の発光量を調整し、スリットパターンからの照射光量を制御して(ステップ105)、スリットパターン光を照射する(ステップ106)。
【0059】
その後、カメラ115の撮像範囲に硬貨が入ったタイミングでカメラ115が硬貨の全面を撮像し(ステップ107)、撮像した硬貨を画像記憶部204に記憶する。色分離部211は、画像記憶部204から画像を読み出してRGBに分離する(ステップ108)。
【0060】
濃度規格化処理部212は、分離したRGBのうち、位相の異なるスリットパターンである2色の画像データについて残りの1色の画像データで規格化し、高さ計算部213は規格化されたデータから高さ計算を行なって、三次元測定データを得る(ステップ109)。判定部206は、三次元測定データを判定基準値記憶部207に記憶された判定基準値と比較して硬貨の真偽を判定し、判定結果出力部208が判定結果を出力して(ステップ110)、処理を終了する。
【0061】
図11は、三次元測定データの作成を説明するための説明図である。図11では、シアンと黄のスリットパターンを使用した場合を例示している。カメラ115が撮像したカラー縞画像をRGBに分離すると、青(B)縞画像データ、緑(G)画像データ、赤(R)縞画像データが得られる。青(B)縞画像データ、緑(G)画像データ、赤(R)縞画像データはそれぞれ濃度の分布データである。
【0062】
青(B)縞画像データを緑(G)画像データで除算することにより規格化し、規格化青(B)縞画像データを得る。同様に、赤(R)縞画像データを緑(G)画像データで規格化し、規格化赤(R)縞画像データを得る。そして、規格化青(B)縞画像データの縞の変移から高さを求めて青(B)高さ評価データを得る。同様に、規格化赤(R)縞画像データの縞の変移から高さを求めて赤(R)高さ評価データを得る。この青(B)高さ評価データと赤(R)高さ評価データを平均化して三次元測定データを得る。
【0063】
図12は、図10に示した三次元データ生成処理(ステップ109)を詳細に説明するフローチャートである。三次元データ生成部205は、色分離部211が分離したRGBのうち、位相の異なるスリットパターンである2色の縞画像データについてそれぞれ図12の処理を行なう。
【0064】
三次元データ生成部205の濃度規格化処理部212は、縞画像を取得して(ステップ201)、共通色成分のデータから縞画像濃度補正データを作成し(ステップ202)、濃度補正を行なう(ステップ203)。
【0065】
高さ計算部213は、濃度補正を施された縞画像データに対して2次元フーリエ変換を行い(ステップ204)、縞成分のみを抽出する周波数フィルタリングを行なった後(ステップ205)、2次元逆フーリエ変換を行なう。これにより、位相値が求まり(ステップ206)、次に基準高さからの位相差を求める(ステップ207)。その後、スリットの投影時の光路長の違いに基づく感度を補正し(ステップ208)、補正された位相差を高さ値に換算して(ステップ209)、硬貨1枚分の処理を終了する。
【0066】
図10に示した三次元測定データを用いた判定処理(ステップ110)は、エッジ抽出、マッチングによる高さ比較並びに同心円上の各リング部の高さの平均値のグラフの形状であるプロファイルを用いた高さ比較などによって行なうことができる。
【0067】
図13は、三次元測定データに対してエッジ抽出を用いる場合の判定処理を示すフローチャートである。判定部206は、三次元測定データを取り込む(ステップ301)。取り込んだ三次元測定データの数値が、硬貨の表面のその位置における高さを示している。判定部206は、硬貨の表面の全域を対象エリアとして切り出す(ステップ302)。このように硬貨の全域のエッジ情報で判別することで、硬貨の輪郭を検出することができる。判定部206は、切り出したエリアに対してエッジ抽出処理(ステップ303)する。エッジ抽出は、1次微分や2次微分などを用いる。一例として、Kirsch、ラプラシアンなどを用いることができる。
【0068】
判定部206は、抽出処理結果から判定に用いる評価値を算出する(ステップ304)。抽出したエッジの平均値を評価値として利用することができる。判定部206は、評価値を判定基準値記憶部207に記憶した判定基準値と比較する(ステップ305)。この結果、硬貨が偽造貨である場合には(ステップ306,Yes)、判定部206は、硬貨をリジェクト硬貨取出口60に排出するリジェクト処理を行なって(ステップ307)、処理を終了する。一方、硬貨が偽造貨でない場合には(ステップ306,No)、判定部206は、硬貨を計数し、収納処理を行なって(ステップ308)、処理を終了する。
【0069】
図14は、三次元測定データに対してエッジ抽出を用いる場合を説明するための説明図である。図14には、三次元測定データの具体例と、三次元測定データから求めたエッジの平均値の分布例を示している。
【0070】
三次元測定データの具体例に示したように、データの数値が硬貨表面のその位置における高さを示している。硬貨の全域を対象とすれば、硬貨の輪郭が判定の対象となる。硬貨の部位を制限して判別する場合には、硬貨の輪郭と中心を求めて回転位置を検出し、エリアマスクを適用すればよい。
【0071】
エッジの平均値の具体例では、偽造貨のエッジの平均値の分布は、正貨のエッジの分布よりも値が小さい。この分布を分離する値を判定閾値、すなわち判定基準値とすることで、偽造貨の識別を行なうことができる。
【0072】
図15は、三次元測定データに対してマッチングによる高さ比較を用いる場合の判定処理を示すフローチャートである。判定部206は、三次元測定データを取り込む(ステップ401)。取り込んだ三次元測定データは、データの数値が硬貨表面のその位置における高さを示している。判定部206は、三次元測定データに対して例えば平滑化フィルター等を用いてノイズ処理を行なう(ステップ402)。これによって、硬貨の外径の境界部に発生するノイズ成分を除去することができる。
【0073】
ノイズを除去したデータに対し、判定部206は、位置補正処理を行なう(ステップ403)。位置補正処理では、硬貨の位置を検出し、テンプレートと同じ基準位置に補正する。具体的には、硬貨輪郭検出、中心検出、中心位置合せ、回転位置合せ、傾斜補正、オフセット補正を順に行なう。なお輪郭検出は、外径又はリム内周部の立ち上がりで検出することができる。
【0074】
位置補正を行なったデータに対し、判定部206は、対象エリアの切り出しを行なう(ステップ404)。部位を制限してエリアとする場合には、マスクを適用すればよい。切り出した対象エリアとテンプレートを比較し(ステップ405)、評価値を算出する(ステップ406)。テンプレートとの比較では、画素ごとにテンプレートとの差分を求める。テンプレートは、位置補正した多数の流通貨の平均データが好適である。評価値の算出では、テンプレートとの差の合計値を画素数で除算し、平均値を求めればよい。
【0075】
判定部206は、評価値を判定基準値記憶部207に記憶された判定基準値と比較する(ステップ407)。この結果、硬貨が偽造貨である場合には(ステップ408,Yes)、判定部206は、硬貨をリジェクト硬貨取出口60に排出するリジェクト処理を行なって(ステップ409)、処理を終了する。一方、硬貨が偽造貨でない場合には(ステップ408,No)、判定部206は、硬貨を計数し、収納処理を行なって(ステップ410)、処理を終了する。
【0076】
図16は、三次元測定データに対してマッチングによる高さ比較を用いる場合の説明図である。図16には、三次元測定データの具体例、外径の立ち上がりから求めた中心の例、エリア切り出しマスクの例、テンプレートとの差分の平均値の分布例を示している。
【0077】
三次元測定データの具体例に示したように、硬貨の表面に対して濃度分布によって高さが示されている。この硬貨の外径の立ち上がりから、硬貨の中心位置を求めることができる。中心位置を求め、回転位置を補正してエリア切り出しマスクを適用することで、硬貨の特徴的な領域を判定対象として選択することができる。
【0078】
テンプレートとの差分の平均値の分布例では、偽造貨のテンプレートとの差分の平均値の分布は、正貨のそれの分布よりも値が大きい。この分布を分離する値を判定閾値すなわち判定基準値とすることで、偽造貨の識別を行なうことができる。また、マッチング方法については濃度画像を用いたものが同様に使える。
【0079】
図17は、三次元測定データに対してプロファイルを用いた高さ比較を行なう場合の判定処理のフローチャートである。判定部206は、三次元測定データを取り込む(ステップ501)。取り込んだ三次元測定データは、硬貨の表面の各濃度値がその位置における高さに対応したデータである。判定部206は、三次元測定データに対してノイズ処理を行なう(ステップ502)。これによって、硬貨の外径の境界部に発生するノイズ成分を除去することができる。
【0080】
ノイズを除去したデータに対し、判定部206は、中心位置検出処理を行なう(ステップ503)。この中心位置検出処理では、硬貨の位置を検出し、テンプレートと同じ基準位置に補正する。具体的には、硬貨輪郭検出、中心検出の順に行なう。なお輪郭検出は、外径又はリム内周部の立ち上がりで検出することができる。
【0081】
中心位置検出を行なったデータに対し、判定部206は、評価値を算出する(ステップ504)。具体的には、同心円上に等間隔で取ったリング部の高さデータの合計値(平均値、プロファイル)を求め、特徴部位のリング部の高さ値を求める。例えば、硬貨表面に設けられたパール状の模様を特徴部位とする。
【0082】
判定部206は、評価値を判定基準値記憶部207に記憶された判定基準値と比較する(ステップ505)。この結果、硬貨が偽造貨である場合には(ステップ506,Yes)、判定部206は、硬貨をリジェクト硬貨取出口60に排出するリジェクト処理を行なって(ステップS507)、処理を終了する。一方、硬貨が偽造貨でない場合には(ステップS506,No)、判定部206は、硬貨を計数し、収納処理を行なって(ステップS508)、処理を終了する。
【0083】
図18は、三次元測定データに対してプロファイルを用いた高さ比較を行なう場合の説明図である。図18には、三次元測定データの具体例、高さデータの平均値の具体例、パール高さの分布例を示している。
【0084】
三次元測定データの具体例に示したように、データの数値が硬貨表面のその位置における高さを示している。この硬貨の中心を求め、同心円上の各リング部の高さデータの平均値を取ると、硬貨の外周エッジとパール模様の配置されている半径の位置のリング部の高さの平均値がプロファイル上でピークを得ている。このうち、パール模様部となるリング部における高さの平均値をパール高さとして評価値に用いる。
【0085】
パール高さの分布例では、偽造貨の分布は、正貨の分布よりも値が小さい。この分布を分離する値を判定閾値すなわち判定基準値とすることで、偽造貨の識別を行なうことができる。
【0086】
上述してきたように、本実施例では、硬貨を一枚ずつ搬送し、第1の色成分を透過する第1の領域と第2の色成分を透過する第2の領域とを交互に配置したスリットパターンを透過したスリットパターン光を照射する。そして、スリットパターン光が照射された前記硬貨の画像を撮像して撮像結果を第1の色成分と第2の色成分に分離し、第1の色成分の画像データにおけるスリットパターン形状の変化から第1の高さ評価データを作成し、前記第2の色成分の画像データにおけるスリットパターン形状の変化から第2の高さ評価データを生成し、第1の高さ評価データと前記第2の高さ評価データから硬貨の三次元測定データを得る。位相の異なる2種類のスリットパターン画像が一度の撮像によって得られるため、搬送速度の変動の影響を受けることなく、動いている硬貨の凹凸情報を得ることが可能となる。
【0087】
なお、第1の色成分が緑、第2の色成分が青であり、第1の領域と第2の領域は赤を共通に透過する黄とマゼンタの領域であるスリットパターンが好適である。また、第1の色成分が赤、前記第2の色成分が青であり、第1領域と前2の領域は緑色を共通に透過する黄とシアンの領域であるスリットパターンも好適である。そして、第1の色成分が赤、第2の色成分が緑であり、第1領域と第2の領域は青を共通に透過するマゼンタとシアンの領域であるスリットパターンでもよい。
【0088】
また、本実施例では、分離手段は、撮像手段による撮像結果を第1の色成分、第2の色成分、第1の領域と第2の領域が共通に透過する共通色成分に分離し、三次元データ生成手段は、共通色成分の画像データを第1の色成分の画像データと第2の色成分の画像データの濃度補正に用いる。このため、濃度ムラ、照明ムラを補正し、高精度な判定を行なうことができる。また、画像情報からのパターンマッチングも可能である。
【0089】
また、本実施例では、硬貨が撮像範囲に入るタイミングを検知し、第1の領域と第2の領域が共通に透過する共通色成分の受光量に基づいてスリットパターン光の照射光量を制御することで、硬貨の種別、材質に合せて照明を行なうことができる。さらに、硬貨の撮像前に事前撮像を行なってスリットパターン光の光量を制御することで、硬貨に対して適切な照明を行なって三次元測定データを得ることができる。
【0090】
このようにして得られた三次元測定データに基づいて、硬貨の真偽、種別(金種)、正損を判定することで、判定精度の向上を図ることができる。すなわち、三次元測定データから硬貨おける凹凸模様のエッジ形状の特徴が検出できるため、精度良く真偽判定を行なうことができる。また、硬貨の凹凸模様における三次元測定データにより、正損(歪みが生じた変形貨、摩耗貨、傷がついたもの)の判別精度が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0091】
以上のように、本発明に係る硬貨処理装置及び硬貨処理方法は、硬貨の表面の凹凸を評価する三次元測定データの取得及び硬貨の判定に有用である。
【符号の説明】
【0092】
10 硬貨処理装置
12 筐体
14 投入口
16 制御部
20 供給部
30 搬送部
31a 搬送路
32a,32b,32c シュート
32 選別部
34 識別部
36a,36b,36c,36d 開口部
40 一時保留部
40a,40b,40c 一時保留部分
42a,42b,42c シュート
50a,50b,50c カセット
50 収納部
60 リジェクト硬貨取出口
62 リジェクト硬貨シュート
64 排出シュート
70 硬貨貯留繰出部
100 硬貨
101 ベルト
102 磁気センサ
110 撮像ユニット
111 光源
112 集光レンズ
113 スリットパターン
113 格子板
114 投影レンズ
115 カメラ
116 センサ
201 材質判別部
202 照明調整部
203 位置検出部
204 画像記憶部
205 三次元データ生成部
206 判定部
207 判定基準値記憶部
208 判定結果出力部
211 色分離部
212 濃度規格化処理部
213 計算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬貨を一枚ずつ搬送させる硬貨搬送路と、
前記硬貨搬送路上の硬貨に対して第1の色成分を透過する第1の領域と第2の色成分を透過する第2の領域とを交互に配置したスリットパターンを透過したスリットパターン光を照射するスリットパターン光照射手段と、
前記スリットパターン光が照射された前記硬貨の画像を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段による撮像結果におけるスリットパターン形状の変化から前記硬貨の三次元測定データを得る三次元データ生成手段と、
前記三次元測定データに基づいて、前記硬貨の真偽、種別、正損のうち少なくともいずれか一つを判定する判定手段と
を備えたことを特徴とする硬貨処理装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記三次元測定データのエッジを微分処理によって抽出し、抽出した微分データから求めた平均値と、真正な硬貨の標準的な平均値から求めた閾値とを比較して、前記硬貨の真偽を判定することを特徴とする請求項1に記載の硬貨処理装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記硬貨の同心円上のリング部の高さデータの平均値が所定の値の範囲内にあれば真正の硬貨であると判定することを特徴とする請求項1又は2に記載の硬貨処理装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記硬貨の所定の領域について高さを示す値の平均値を求め、求めた平均値が所定範囲内にあれば真正の硬貨と判定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の硬貨処理装置。
【請求項5】
前記判定手段によって真正な硬貨と判定された硬貨を収納する収納庫と、前記判定手段によって真正な硬貨でないと判定された硬貨が搬送されるリジェクト手段とをさらに備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の硬貨処理装置。
【請求項6】
硬貨搬送路上に硬貨を一枚ずつ搬送させる硬貨搬送ステップと、
前記硬貨搬送路上の硬貨に対して第1の色成分を透過する第1の領域と第2の色成分を透過する第2の領域とを交互に配置したスリットパターンを透過したスリットパターン光を照射するスリットパターン光照射ステップと、
前記スリットパターン光が照射された前記硬貨の画像を撮像する撮像ステップと、
前記撮像手段による撮像結果におけるスリットパターン形状の変化から前記硬貨の三次元測定データを得る三次元データ生成ステップと、
前記三次元測定データに基づいて、前記硬貨の真偽、種別、正損のうち少なくともいずれか一つを判定する判定ステップと
を含んだことを特徴とする硬貨処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−83964(P2012−83964A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230029(P2010−230029)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(000001432)グローリー株式会社 (1,344)
【Fターム(参考)】