説明

磁性体粉濃度検知装置及びこの検知装置を用いた画像形成装置

【課題】磁性体粉の濃度を検知する際、その検知特性の変更を容易とする。
【解決手段】磁性体粉濃度検知装置において、CPU512は差動トランス501の出力信号と駆動コイル505及び506に印加される交流信号との位相差に応じた出力電圧に応じて磁性体粉の濃度を検知する。そして、CPUは交流信号を印加する際、その周波数及びデューティー比を変化させつつ、出力電圧と濃度との関係に応じて周波数及びデューティー比を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性体粉の濃度を検知する磁性体粉濃度検知装置及びこの検知装置を用いた画像形成装置に関し、特に、磁性体成分を含むトナーの濃度を検出するトナー濃度検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子写真プロセスを用いた画像形成装置において、現像剤として磁性体粉(磁性体成分を含むトナー)を含む現像剤を用いて画像形成を行うようにしたものがある。この種の画像形成装置においては、現像剤のトナー残量又はトナー濃度を検知するための磁性体粉濃度検知装置(以下、トナー検知装置と呼ぶ)が備えられている。
【0003】
このトナー検知装置において、差動トランスを用いたものが知られており、差動トランスを用いたトナー検知装置は、その内部に発振回路を備えている。そして、発振回路の駆動周波数を固定して現像剤の残量・濃度等を検知している。ところが、駆動周波数が固定であるため、その検知特性を変化させることが難しいという問題点がある。
【0004】
このような問題点を解決するための手法の一つとして、トナー検知装置内に、トナー検知信号の位相を調整可能な回路機構を配置したものがある。そして、当該回路機構に外部から電圧レベルが可変な電気信号を入力して、検知特性を調整するようにしている(例えば、特許文献1又は2参照)。
【0005】
図9は、従来のトナー検知装置の構成を概略的に示す図である。
【0006】
図9を参照すると、トナー検知装置は、差動結線されたトランス(差動トランス)100を有しており、この差動トランス100は駆動部109によって駆動される。さらに、トナー検知装置は、位相差検出部110、可変容量ダイオード107、及び制御回路112を有している。
【0007】
差動トランス100には駆動コイル101と2つの出力コイル102及び103とが備えられ、出力コイル102及び103を差動結線して、トナー濃度に応じた差動出力電圧Eoを得る。図中符号Pは現像剤を表しており、この現像剤中のトナー濃度に応じて差動出力電圧Eoが変化する。
【0008】
図示の例では、駆動部109には、直列に接続されたコンデンサ104及び105が並列的に接続され、コンデンサ104及び105は駆動コイル101に接続されている。そして、駆動部109、コンデンサ104及び105、及び駆動コイル101によって所謂コルピッツ型発振回路が構成される。
【0009】
コルピッツ型発振回路は発振周波数に応じた基準信号によって差動トランス100を駆動する。位相差検出部110は、差動トランス100の出力コイル102及び103から出力される差動出力電圧Eoと、駆動部109から与えられる基準信号Edとの位相を比較する。そして、位相差検出部110はその位相差に応じた位相差検出信号Voを得る。
【0010】
図9には示されていないが、位相差トナー検出信号Voが出力される出力端に位相差検出信号Voを平滑化する平滑化回路を接続すると、トナーの磁性体成分の濃度に応じて、平滑化回路の出力電圧が変化する特性を得ることができる。
【0011】
図10は、図9で説明した平滑化回路の出力電圧と磁性体濃度との関係(検知特性)を示す図である。
【0012】
図10に示すように、平滑化回路の出力電圧は磁性体濃度が増加するにつれて線形的に減少する。
【0013】
ここで、磁性体濃度の検知特性を可変とするため、差動トランス100において駆動コイル101と出力コイル102及び103との間に、前述のように、可変容量ダイオード107が配置される。
【0014】
図示の例では、制御回路112はフィルタ回路114及び比較回路113を有しており、フィルタ回路114に位相差検出信号Voが与えられる。そして、フィルタ回路114は位相差検出信号Voに含まれる周波数成分のうち所定の低周波信号成分を通過させる低域通過フィルタ特性を有している。
【0015】
比較回路113は、フィルタ回路114から出力されたフィルタ信号と基準電圧Vb1とを比較して得られた比較結果信号(印加電圧Vcnt)を可変容量ダイオード4に印加する。
【0016】
これによって、可変容量ダイオード107の容量は印加電圧Vcntに応じて調整されることになる。この結果、駆動コイル101と出力コイル102及び103との間の位相差を変化させることができる。
【0017】
このようにして、可変容量ダイオード107による位相差の調整によって、差動出力電圧Eoが調整されて、最終的に位相差検出信号Voが調整されることになる。つまり、検知特性を可変としている。
【0018】
図11は、図9に示す可変容量ダイオード107の容量を変化させた場合の平滑化回路の出力電圧と磁性体濃度との関係(検知特性)を示す図である。
【0019】
図11に示すように、可変容量ダイオード107に印加する印加電圧Vcntを変化させると(増減すると)、検出特性は実線で示す関係から、破線で示す関係に変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開平9−178707号公報
【特許文献2】特開平6−289717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
ところで、トナー検知装置においては、その組立及び製造に起因して不可避的に差動トランス個々の特性が相違してしまい、この特性の相違によって検知特性が変動してしまう。このよう検知特性の変動を防止するため、つまり、検知特性を調整するため、図9に示すようにトナー検知装置が構成される。
【0022】
しかしながら、図9に示すトナー検知装置では、その出力電圧のオフセットを調整するだけであるから、トナー検知装置自体の感度特性を変更することは困難である。このため、従来のトナー検知装置においては、次のような課題がある。
【0023】
(1)トナー検知装置に対して要求される検知特性が異なる場合には、回路定数等を変更する必要があるため、回路部品を共通化することが難しい。
【0024】
(2)現像装置を複数有する画像形成装置において、各現像装置に取り付けられたトナー検知装置毎にその検知特性を変えることが難しい。このため、現像装置うちの現像剤の磁性特性が異なる場合には、トナー検知装置相互の出力にずれが生じてしまう。
【0025】
従って、本発明の目的は、その検知特性の変更が容易な磁性体粉濃度検知装置及びこの検知装置を用いた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記の目的を達成するため、本発明による磁性体粉濃度検知装置は、駆動コイル及び出力コイルを備え、前記駆動コイルに交流信号が印加される差動トランスと、前記出力コイルからのトランス出力信号と前記交流信号との位相差に応じた出力電圧を出力する位相差検出手段とを有し、前記出力電圧に応じて磁性体粉の濃度を検知するための磁性体粉濃度検知装置において、前記出力電圧と前記濃度との関係が予め規定された第1の基準磁性体粉を用いて、デューティー比が固定され周波数が可変の第1の交流信号を前記駆動コイルに印加する第1の印加手段と、前記第1の交流信号を印加した際、前記位相差検出手段から出力される第1の出力電圧が予め規定された第1の電圧範囲にあると、当該第1の電圧範囲にある第1の出力電圧が得られた周波数を設定周波数とする第1の設定手段と、前記出力電圧と前記濃度との関係が予め規定された第2の基準磁性体粉を用いて、デューティー比が可変で周波数が前記設定周波数である第2の交流信号を前記駆動コイルに印加する第2の印加手段と、前記第2の交流信号を印加した際、前記位相差検出手段から出力される第2の出力電圧が予め規定された第2の電圧範囲にあると、当該第2の電圧範囲にある第2の出力電圧が得られたデューティー比を設定デューティー比とする第2の設定手段と、前記磁性体粉の濃度を検知する際、前記設定周波数及び前記設定デューティー比を有する交流信号を前記駆動コイルに印加する第3の印加手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、互いに異なる第1及び第2の基準磁性体粉を用いて、差動トランスの駆動コイルに印加する交流信号の周波数及びデューティー比を設定するようにしたので、容易にその検知特性を変更・調整することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態によるトナー検知装置の一例が用いられる画像形成装置の構成を示す断面図である。
【図2】図1に示す画像形成装置をその背面側からみた状態を概略的に示す図である。
【図3】図2に示すトナー検知装置についてその構成の一例を示す図である。
【図4】図2に示すトナー検知装置についてその構成の他の例を示す図である。
【図5】図4に示すCPUの動作を説明するためのフローチャートである。
【図6】デューティー比(DUTY)を所定の値として交流信号の周波数を変化させた際の位相差検出信号の電圧値(出力電圧)と磁性体濃度(トナー濃度)との関係を示す図である。
【図7】周波数を設定周波数として交流信号のデューティー比(DUTY)を変化させた際の位相差検出信号の電圧値(出力電圧)と磁性体濃度(トナー濃度)との関係を示す図である。
【図8】図4に示すCPUによって実行されるトナー補給制御を説明するためのフローチャートである。
【図9】従来の磁性体検知装置の構成を概略的に示す図である。
【図10】図9で説明した平滑化回路の出力電圧と磁性体濃度との関係(検知特性)を示す図である。
【図11】図9に示す可変容量ダイオードの容量を変化させた場合の平滑化回路の出力電圧と磁性体濃度との関係(検知出特性)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態による磁性体粉濃度検知装置の一例について図面を参照して説明する。ここでは、電子写真プロセスを用いた画像形成装置で用いられる磁性体粉濃度検知装置の一つであるトナー検知装置について説明するが、画像形成装置以外の機器においても磁性体粉濃度を検知する必要があれば、同様にして適用することができる。
【0030】
図1は、本発明の実施の形態によるトナー検知装置の一例が用いられる画像形成装置の構成を示す断面図である。
【0031】
図1を参照して、図示の画像形成装置は所謂電子写真プロセスを用いて画像形成を行う。図示の例では、複数の画像形成部が並列に配されたカラー画像形成装置が示されている。
【0032】
画像形成装置は、画像読取部1R及び画像出力部1Pを有している。画像読取部1Rは、原稿上の画像を光学的に読み取って得られた電気信号(画像信号)を画像出力部1Pに与える。
【0033】
画像出力部1Pは、例えば、4つの画像形成部10a〜10d、給紙ユニット20、中間転写ユニット30、定着ユニット40、クリーニングユニット50及び70、及び制御ユニット80を備えている。
【0034】
画像形成部10a〜10dは、それぞれ感光ドラム(像担持体)11a〜11d、一次帯電器12a〜12d、レーザスキャナユニット(潜像形成手段)13a〜13d、現像装置(現像手段)14a〜14d、クリーニング装置15a〜15d、及び折り返しミラー16a〜16dを有している。
【0035】
なお、図示の例では、画像形成部10a、10b、10c、及び10dは、例えば、ブラック(k)、マゼンタ(M)、シアン(C)、及びイエロー(Y)に対応する。
【0036】
ここで、画像形成部10dに注目すると、感光ドラム11dはその中心において回転自在に軸支され、矢印方向に回転駆動される。一次帯電器12dは感光ドラム11dの外周面に対向して配置されており、感光ドラム11dの表面を均一に帯電する。そして、レーザスキャナユニット13dは、画像読取部1Rから与えられる画像信号(画像データ)に応じて変調されたレーザビームを出力する。このレーザビームは折り返しミラー16dを介して感光ドラム11dに照射される。
【0037】
これによって、画像信号に応じた静電潜像が感光ドラム11dに形成される。現像装置14dは感光ドラム11d上の静電潜像を現像剤(トナー)によって可視化してトナー像とする。なお、同様にして、感光ドラム11a〜11c上にそれぞれトナー像が形成される。
【0038】
中間転写ユニット30は中間転写ベルト31を有している。この中間転写ベルト31は、駆動ローラ32、従動ローラ33、及びテンションローラ34に架設され、駆動ローラ32の駆動によって図中実線矢印方向に回転駆動される。
【0039】
中間転写ベルト31を挟んで感光ドラム11a〜11dに対向して一次転写器35a〜35dが配置され、一次転写位置Tdにおいて一次転写器35dによって感光ドラム11d上のトナー像が中間転写ベルト31に転写される(一次転写)。
【0040】
以下同様にして、一次転写位置Tc〜Taにおいて、一次転写器35c〜35aによって感光ドラム11c〜11a上のトナー像が中間転写ベルト31に順次転写される。これによって、中間転写ベルト31上にカラートナー像が形成される。
【0041】
中間転写ベルト31を挟んでテンションローラ34に対向して二次転写ローラ36が配置されている。給紙ユニット20に収納された記録紙Pはピックアップローラ22によってピックアップされ、搬送ローラ23によって給紙路24を介してレジストローラ25に達する。
【0042】
レジストローラ25は、中間転写ベルト31の回転に同期して、記録紙Pを二次転写位置Teに送る。そして、中間転写ベルト31上のカラートナー像は二次転写ローラ36によって記録紙Pに転写される(二次転写)。
【0043】
その後、記録紙Pは定着ユニット40に搬送されて、ここで、記録紙P上の殻トナー像が定着処理される。そして、記録紙Pは排出ローラ28によって排出トレイ29に排出される。
【0044】
なお、感光ドラム11a〜11dに残留したトナーはクリーニング装置15a〜15dによって除去される。また、中間転写ベルト31に残留したトナーはクリーニングユニット50によって除去される。
【0045】
後述するように、トナー検知装置(以下、磁気的検知装置とも呼ぶ)は、トナー検知部及び制御基板を有し、制御基板は、例えば、制御ユニット80に収納されている。トナー検知部は現像装置14a〜14dの各々に対応して設けられ、現像装置14a〜14d中のトナー(現像剤)濃度を検出する。そして、トナー検知部は、制御基板に対してトナー濃度検出信号を送信する。
【0046】
制御基板はトナー濃度検出信号に応じてトナー補給装置(図示せず)に駆動信号を送る。これによって、トナー補給装置が駆動して、現像装置14a〜14dにトナーの補給が行われて、現像装置14a〜14dにおけるトナー濃度が制御される。
【0047】
図2は、図1に示す画像形成装置をその背面側からみた状態を概略的に示す図である。
【0048】
図2において、制御ユニット80に備えられた制御基板508は画像形成装置の背面側に取り付けられており、トナー検知部500a〜500dに配線514で接続されている。トナー検知部500a〜500dはそれぞれ現像装置14a〜14dに対応しており、例えば、現像剤が攪拌搬送される下流側等の所定の位置に配置されている。
【0049】
図3は、図2に示すトナー検知装置についてその構成の一例を示す図である。また、図4は、図2に示すトナー検知装置についてその構成の他の例を示す図である。
【0050】
図3を参照して、トナー検知部550a〜550dの構成は同一であるので、ここではトナー検知部550aに注目して説明を行う。トナー検知部550aは、差動トランス501を備えている。この差動トランス501は出力コイルと駆動コイル505及び506とを有し、駆動コイル505及び506が差動結線されている。
【0051】
図示のように、出力コイル507及び駆動コイル505には、位相制御部(位相制御手段)502が接続され、さらに、出力コイル507は増幅部503を介して位相差検出部504に接続されている。そして、位相差検出部504は駆動コイル505に接続されるとともに、制御基板508に接続されている。また、位相制御部502はクロック(CLK)平滑部513(変換手段)を介して制御基板508に接続されている。
【0052】
図示の例では、制御基板508は、信号送信部509、信号受信部510、記憶部511、及びCPU512を有している。
【0053】
駆動コイル505及び506には、信号送信部509から所定の電気特性を有する交流信号Ein(CLK)が与えられて、この交流信号Einによって駆動コイル505及び506が駆動する。交流信号EinはCLK平滑部513で平滑されて直流信号とされる。そして、この直流信号は制御信号Ecntとして位相制御部502に与えられる。
【0054】
位相制御部502は制御信号に応じて位相制御を行って、出力コイル507からの出力(トランス出力信号)の位相特性を制御する。つまり、位相制御部502は増幅部503で増幅した結果得られる出力検出信号Eoutを制御することになる。
【0055】
信号送信部509から出力される交流信号は、後述するように、その周波数とデューティー比(DUTY)とを変化させることができる。そして、DUTYを変化させることによって、CLK平滑部513で平滑された制御信号Ecntが変化する。位相差検出部504は、交流信号Einと出力検出信号Eoutとの位相差を検出し、当該位相差に応じた電圧値を有する位相差検出信号Edetを出力する。
【0056】
上記の位相差検出信号Edetは信号受信部510を介してCPU512に与えられる。CPU512は記憶部511に格納された制御パラメータと位相差検出信号Edetとに基づいて、信号送信部509から出力される交流信号Einを制御する。
【0057】
図10で説明したように、位相差検出Edetは、磁性体成分を含むトナーの濃度に応じてその電圧値が変化するから、当該電圧値に応じてトナー濃度、つまり、磁性体の嵩密度を検出することができる。
【0058】
なお、図4に示すように、位相差検出部504は、制御基板508に配置するようにしてもよい。
【0059】
図5は、図3に示すCPU512の動作を説明するためのフローチャートである。
【0060】
図3及び図5を参照して、CPU512は交流信号Einの周波数及びDUTYを決定する。まず、基準となる対象物A(つまり、磁性体成分を含むトナー:第1の基準磁性体粉)が現像装置に設定される(ステップS1)。つまり、予め定められた濃度及び量のトナーが現像装置内に収納される。そして、現像装置内のトナー濃度をトナー検知装置によって検出する。
【0061】
ここでは、CPU512は信号送信部509から予め設定された周波数でかつDUTY=D0(DUTYは固定である)の第1の交流信号Einを出力する(ステップS2:第1の印加手段)。これによって、位相差検出部504で出力検出信号Eoutと交流信号Einとの位相差が検出されて、第1の位相差検出信号Edetとして信号受信部510で受信される。CPU512は第1の位相差検出信号Edetが示す電圧値(第1の出力電圧)が予め設定された電圧範囲α(第1の電圧範囲)にあるか否かを判定する(ステップS3)。
【0062】
図6は、デューティー比(DUTY)を所定の値(D1)として交流信号Einの周波数を変化させた際の位相差検出信号の電圧値(出力電圧)と磁性体濃度(トナー濃度)との関係を示す図である。
【0063】
図6に示すように、出力電圧は磁性体濃度が高くなるにつれて減少するが、交流信号の周波数が高くなると(f2>f1>f0)、傾きが急となる(つまり、減少率が大きくなる)。いま、磁性体濃度と出力電圧との関係を正しく規定する周波数の直線を符号f1で表す。そして、当該直線f1で規定される磁性体濃度と出力電圧との関係において許容される誤差の範囲を表す電圧範囲をαとする。なお、直線f1で示す出力電圧の電圧範囲αは記憶部511に予め記憶されている。
【0064】
第1の位相差検出信号Edetが示す電圧値が電圧範囲αにないと(ステップS3において、NO)、CPU512は直線f1で規定する電圧値と出力電圧値との差に基づいて第1の交流信号Einの周波数を変更する(ステップS4)。そして、CPU512はステップS3の処理に戻って、再度判定を行う(つまり、周波数は可変である)。
【0065】
ステップS3の判定処理では、出力電圧値が電圧範囲αの下限値よりも小さければ、CPU512は第1の交流信号Einの周波数を増加することになる。一方、出力電圧値が電圧範囲αの上限値よりも大きければ、CPU512は第1の交流信号Einの周波数を低減することになる。
【0066】
第1の位相差検出信号Edetが示す出力電圧値が電圧範囲αにあると(ステップS3において、YES)、CPU512は当該出力電圧値を得た周波数を設定周波数とする(例えば、図6に示す周波数f1が設定周波数となる:第1の設定手段)。
【0067】
続いて、基準となる対象物B(つまり、磁性体成分を含むトナー:第2の基準磁性体粉)が現像装置に設定される(ステップS5)。ここで、対象物Bは対象物Aとは異なる特性の磁性体成分を含むトナーである。
【0068】
ここでは、CPU512は信号送信部509から設定周波数f1でかつ予め設定されたDUTY(例えば、DUTY=D1)の第2の交流信号Einを出力する(第2の印加手段)。
【0069】
これによって、位相差検出部(位相差検出手段)504で出力検出信号Eoutと第2の交流信号Einとの位相差が検出されて、第2の位相差検出信号Edetとして信号受信部510で受信される。CPU512は第2の位相差検出信号Edetが示す出力電圧値(第2の出力電圧)が予め設定された電圧範囲β(第2の電圧範囲)にあるか否かを判定する(ステップS6)。
【0070】
図7は、周波数を設定周波数として交流信号Einのデューティー比(DUTY)を変化させた際の位相差検出信号の電圧値(出力電圧)と磁性体濃度(トナー濃度)との関係を示す図である。
【0071】
図7に示すように、出力電圧は磁性体濃度が高くなるにつれて減少するが、交流信号EinのDUTYが高くなると(c2>c1>c0)、傾きが急となる(つまり、減少率が大きくなる)。
【0072】
いま、磁性体濃度と出力電圧との関係を正しく規定するDUTYの直線を符号c1で表す。そして、当該直線c1で規定される磁性体濃度と出力電圧との関係において許容される誤差の範囲を表す電圧範囲をβとする。なお、直線c1で示す出力電圧の電圧範囲βは記憶部511に予め記憶されている。
【0073】
第2の位相差検出信号Edetが示す出力電圧値が電圧範囲βにないと(ステップS6において、NO)、CPU512は直線c1で規定する電圧値と出力電圧値との差に基づいて第1の交流信号EinのDUTYを変更する(ステップS7)。そして、CPU512はステップS6の処理に戻って、再度判定を行う。
【0074】
ステップS6の判定処理では、出力電圧値が電圧範囲βの下限値よりも小さければ、CPU512は第2の交流信号EinのDUTYを低減することになる。一方、出力電圧値が電圧範囲βの上限値よりも大きければ、CPU512は第2の交流信号EinのDUTYを増加することになる。
【0075】
第2の位相差検出信号Edetが示す出力電圧値が電圧範囲βにあると(ステップS6において、YES)、CPU512は当該出力電圧値を得たDUTYを設定DUTY(設定デューティー比)とする(例えば、図7に示すDUTY=c1が設定DUTYとなる:第2の設定手段)。
【0076】
次に、再度、基準となる対象物Aが現像装置に設定される(ステップS8)。そして、CPU512は、信号送信部509から設定周波数=f1でかつ設定DUTY=c1である第3の交流信号Einを出力する。これによって、位相差検出部504で出力検出信号Eoutと第3の交流信号Einとの位相差が検出されて、第3の位相差検出信号Edetとして信号受信部510で受信される。CPU512は第3の位相差検出信号Edetが示す出力電圧値が予め設定された電圧範囲αにあるか否かを判定する(ステップS9)。
【0077】
第3の位相差検出信号Edetが示す出力電圧値が予め設定された電圧範囲αにないと(ステップS9において、NO)、CPU512はステップS3の処理に戻って最初から周波数及びDUTYの設定をやり直す。一方、第3の位相差検出信号Edetが示す出力電圧値が予め設定された電圧範囲αにあると(ステップS9において、YES)、CPU512は設定周波数=f1、設定周波数c2を記憶部511に格納して処理を終了する。
【0078】
このようにして、設定周波数及び設定DUTYが決定された後、図1に示す画像形成装置において画像形成を行う際にトナー補給制御が行われることになる。
【0079】
図8は、図4に示すCPU512によって実行されるトナー補給制御を説明するためのフローチャートである。
【0080】
図1、図3、及び図8を参照して、画像形成が開始されると、CPU512は、設定周波数で設定DUTYの交流信号を信号送信部509から出力する(第3の印加手段)。そして、CPU512は信号受信部510を介して位相差検出部504から位相差検出信号を受信する(ステップS901)。
【0081】
続いて、CPU512は位相差検出信号が示す出力電圧値が所定の電圧値(所定値)以上であるか否かを判定する(ステップS902)。位相差検出信号が示す出力電圧値が所定の電圧値未満であると(ステップS902において、NO)、CPU512はトナー濃度が不足しているとする。そして、CPU512は出力電圧値と所定の電圧値との差に応じた駆動信号をトナー補給装置(図示せず)に送る(ステップS903:トナー補給制御手段)。
【0082】
これによって、トナー補給装置は駆動信号に応じた駆動量だけ駆動して、現像装置にトナーを補給する。ステップS903の処理の後、CPU512はステップS901の処理に戻って、位相差検出信号を受信し、再度ステップS902の処理を行う。
【0083】
位相差検出信号が示す出力電圧値が所定の電圧値以上であると(ステップS902において、YES)、CPU512はトナー濃度が不足していないとする。そして、CPU512はステップS901に戻って処理を続行する。なお、画像形成装置における画像形成が終了すると、CPU512はトナー補給制御を停止する。
【0084】
なお、トナー補給装置は現像装置14a〜14dの各々に対して、トナーを供給する装置であり、CPU512からの駆動信号に応じた量のトナーを現像装置14a〜14dに供給する。
【0085】
上述の実施の形態では、現像装置14a〜14dの各々にトナー検知装置が設けられている。そして、各トナー検知装置は交流信号によって互いに独立して駆動される。この際、トナー検知装置毎に予め設定したい検知特性を予め決定しておき、図5で説明した処理に基づいて交流信号の周波数及びDUTYを設定する。これによって、測定対象であるトナーの磁性特性が異なる場合であっても、トナー検知装置の出力特性を統一することができる結果、トナー補給制御を同様に行うことができる。
【0086】
このように、上述の実施の形態によれば、同一の回路構成によって異なる検知特性を有するトナー検知装置を提供できる。この結果、複数の現像装置を備える画像形成装置であっても、トナー検知装置の回路構成を共通化することができることになる。そして、トナー検知装置の共通化によって配線を容易に行うことができる結果、コストダウンを図ることが可能となる。
【0087】
さらに、電子写真プロセスを用いた画像形成装置において、測定対象である現像剤の磁性特性が異なる場合であっても、トナー検知装置の検知特性の設定を個別に行うことができる結果、その出力特性を統一することができる。これによって、トナー検知装置毎の出力特性のばらつきを低減することができ、正確に現像剤補給を行うことができる。
【符号の説明】
【0088】
501 差動トランス
502 位相制御部
503 増幅部
504 位相差検出部
505,506 駆動コイル
507 出力コイル
512 CPU
513 CLK平滑部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動コイル及び出力コイルを備え、前記駆動コイルに交流信号が印加される差動トランスと、前記出力コイルからのトランス出力信号と前記交流信号との位相差に応じた出力電圧を出力する位相差検出手段とを有し、前記出力電圧に応じて磁性体粉の濃度を検知するための磁性体粉濃度検知装置において、
前記出力電圧と前記濃度との関係が予め規定された第1の基準磁性体粉を用いて、デューティー比が固定され周波数が可変の第1の交流信号を前記駆動コイルに印加する第1の印加手段と、
前記第1の交流信号を印加した際、前記位相差検出手段から出力される第1の出力電圧が予め規定された第1の電圧範囲にあると、当該第1の電圧範囲にある第1の出力電圧が得られた周波数を設定周波数とする第1の設定手段と、
前記出力電圧と前記濃度との関係が予め規定された第2の基準磁性体粉を用いて、デューティー比が可変で周波数が前記設定周波数である第2の交流信号を前記駆動コイルに印加する第2の印加手段と、
前記第2の交流信号を印加した際、前記位相差検出手段から出力される第2の出力電圧が予め規定された第2の電圧範囲にあると、当該第2の電圧範囲にある第2の出力電圧が得られたデューティー比を設定デューティー比とする第2の設定手段と、
前記磁性体粉の濃度を検知する際、前記設定周波数及び前記設定デューティー比を有する交流信号を前記駆動コイルに印加する第3の印加手段とを有することを特徴とする磁性体粉濃度検知装置。
【請求項2】
前記交流信号を直流信号に変換して制御信号とする変換手段と、
前記制御信号に応じて前記トランス出力信号の位相特性を制御する位相制御手段とを有することを特徴とする請求項1記載の磁性体粉濃度検知装置。
【請求項3】
前記磁性体粉は、磁性体成分を含むトナーであり、
請求項1又は2に記載の磁性体粉濃度検知装置と、
画像データに応じて像担持体に静電潜像を形成する潜像形成手段と、
該静電潜像を前記トナーで現像する現像手段とを有し、
前記磁性体粉濃度検知装置によって前記現像手段におけるトナー濃度を検知することを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
前記磁性体粉濃度検知装置によって検知されたトナー濃度に応じて前記現像手段へのトナー補給を制御するトナー補給制御手段を有することを特徴とする請求項3記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−42420(P2012−42420A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186188(P2010−186188)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】