説明

磁束集中型モータ

【課題】 円周方向に着磁された永久磁石を同一極性が対向する方向に配置する磁束集中型構造にすることで、表面付着型モータに比べて磁束の漏洩を減少するとともに、同一体積の表面付着型モータに比べてトルクを向上できる磁束集中型モータを提供する。
【解決手段】 リング状に形成され、放射状に配置された複数のティース53にコイル55が巻線されたステータ50と、ステータ50の内側に位置され、円周方向に着磁された複数個のマグネット65を同一極性が対向する方向に配置してステータ50との作用により回転するロータ60と、を含んで磁束集中型モータを構成する。ロータ60は、リング状コア61と、コア61からステータ50側に突設された複数個のティース63と、各ティース63の間に配置されたマグネット65を有し、コア61とティース63の接続部分には磁束障壁61aを設けてマグネット65の磁束の外部への漏洩を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯機などを駆動するモータに関するもので、詳しくは、内転型モータ構造による磁束集中型モータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、永久磁石モータは、磁気回路構成によって表面付着型と埋め込み型とに分類される。
【0003】
ここで、通常、洗濯機駆動用直結モータには、外転型の表面付着型永久磁石モータが使用される。
【0004】
図1及び図2は、洗濯機駆動用モータであって、従来の表面付着型永久磁石モータの一種である外転型モータを示した分解斜視図及び平面構成図である。
【0005】
表面付着型永久磁石モータは、ロータ20をステータ10の外側に設置した構造であって、ステータ10と、ステータ10の外側に、半径方向に所定のエアギャップを有して回転自在に設置されたロータ20と、から構成される。
【0006】
ステータ10は、リング状のコア12と、リング状のコア12の外周面に、所定のスロット14を置いて円周方向に相互離隔された複数個のティース(歯部)15と、各ティース15に集中巻方式で巻線されて外部電源と連結されたコイル17と、から構成される。
【0007】
ロータ20は、磁束通路であるバックヨークを形成する筒状部が設けられた円盤状のロータフレーム22と、ロータフレーム22の筒状部の内周面に、コイル17に電流が流れたときに電磁気的な相互作用により回転するように、交互のN極及びS極が半径方向に着磁される複数のマグネット25と、から構成される。
【0008】
このような表面付着型永久磁石モータにおいて、ステータ10は、コア12の取付ホール13を通して洗濯機の外槽に固着され、ロータ20は、ロータフレーム22の中央部で洗濯機の内槽またはパルセータにシャフトにより連結されて組み立てられる。
【0009】
表面付着型永久磁石モータは、ステータ10の磁束がなす磁極とロータ20の磁束がなす磁極との相対的な位置によって磁気抵抗の差がないので、非突極性のロータが構成される。図3は、ロータ20の相対的な位置による磁束分布を示した図である。
【0010】
一方、このような従来の表面付着型永久磁石モータは、逆起電力を増加するために、ロータ20をステータ10の積層長さよりも大きく設置する。これをオーバハング(overhang:張り出し)というが、オーバハングは、ステータ10の巻線と鎖交するマグネットの磁束を所定量だけ増加して逆起電力を向上する役割をする。
【0011】
表面付着型永久磁石モータにおいて、ロータ20のオーバハングの長さによって逆起電力の発生は増加するが、オーバハングの長さが所定以上になると、それ以上増加せずに同等な水準に維持される。これは、表面付着型モータの構造的な原因によって、オーバハングの長さが増加しながら、巻線と鎖交せずにその他の部分に漏洩される磁束量が増加するためである。
【0012】
図4は、従来の表面付着型永久磁石モータにおけるオーバハングの長さによるステータのティースの磁束密度を示したグラフであり、図示したように、ティースの磁束密度は、オーバハングの長さが増加するにつれて所定程度は増加するが、オーバハングの長さが約6mm以上であると、それ以上増加せずに飽和される。これは、オーバハングの長さが増加しながら、ティースを通過する有効磁束以外の部分に漏洩される磁束量が増加したためである。
【0013】
したがって、このような従来の表面付着型永久磁石モータは、ステータ10の巻線と鎖交するマグネットの磁束を所定量だけ増加することで、逆起電力を向上するオーバハングを構成するが、オーバハングの長さが所定以上になると、その効果が喪失されて逆起電力の増加が限界に達するという問題点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、このような従来の問題点を解決するためになされたもので、円周方向に着磁された永久磁石を、同一極性が対向する方向に配置する磁束集中型構造にすることで、表面付着型モータに比べて磁束の漏洩を減少するとともに、同一体積の表面付着型モータに比べてトルクを向上できる磁束集中型モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このような目的を達成するために、本発明の磁束集中型モータは、リング状に形成され、放射状に配置された複数のティースにコイルが巻線されたステータと、ステータの内側に位置され、円周方向に着磁された複数個のマグネットを同一極性が対向する方向に配置してステータとの作用により回転するロータと、を含むことを特徴とする。
【0016】
ステータは、リング状のコアと、リング状のコアの内周面からこのコアの中心方向に突出された複数個のティースと、各ティースに巻線されて外部電源と接続されたコイルと、を含む。
【0017】
ステータのコアの外周面には、ステータ取付用ホールが形成される。
【0018】
ロータは、リング状のコアと、このコアからステータ側に放射状に突出された複数個のティースと、各ティースの間に配置される複数個のマグネットと、を含む。
【0019】
ロータのコアまたはコアとティースとの連結部分には、マグネットの磁束が外部に漏洩されることを遮断する磁束障壁が備わる。
【0020】
磁束障壁は、コアとティースとの連結部分に形成されたピンホール、ティースからコア側に形成されたバリアホール、コアの各ティースの連結部分に形成されたブリッジホールのうち少なくとも何れか一つにより構成される。
【0021】
ロータのコアは、スパイラルコア工法により製造される。
【0022】
ロータのコアには、鉄心積層のためのガイドホールが形成される。
【発明の効果】
【0023】
本発明の磁束集中型モータは、円周方向に着磁されたマグネットを、同一極性が対向する方向に配置する磁束集中型ロータが構成されるため、磁束の漏洩を縮小することにより、従来の同一体積の表面付着型永久磁石モータに比べてトルクを向上することができ、同一のトルクで生産する場合は、費用節減ができると共に、製品の小型化を実現できるという効果がある。
【0024】
また、本発明は、マグネットの磁束漏洩を最大限防止するために、ロータコアに磁束障壁を設置するため、モータのトルク向上により全体的な性能を向上できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0026】
図5は、本発明による磁束集中型モータを示した平面構成図である。
【0027】
本発明による磁束集中型モータは、図5に示したように、リング状に形成され、内周面に突設された複数のティース53にコイル55が巻線されたステータ50と、ステータ50の内側に位置され、円周方向に着磁されたマグネット65を、同一極性が対向する方向に配置してステータ50のコイル55との作用により回転するロータ60と、から構成される。
【0028】
ステータ50は、外郭を形成するリング状のコア51と、リング状のコア51の内周面からロータ60側に、コア51の中心に向って突出された複数個のティース53と、各ティース53に巻線されて外部電源と接続されたコイル55と、を含んで構成される。
【0029】
コア51の外周面には、後方に開放された構造のステータ取付用ホール51aが形成される。
【0030】
ロータ60は、リング状のコア61と、コア61からステータ50側に放射状に突出された複数個のティース63と、各ティース63の間に配置される複数個のマグネット65と、を含んで構成される。
【0031】
コア61は、ロータ60の中心で回転シャフトが固定されるロータフレーム66に結合固定される。
【0032】
ここで、磁束がステータ側でなく中心方向に漏洩されることを防止し、磁束の漏洩による急激なトルク低下を防ぐために、ロータ60には、コア61またはコア61とティース63との連結部分に磁束障壁が備わる。
【0033】
すなわち、図6(a),(b),(c)は、本発明による磁束集中型モータにおける磁束障壁形成の多様な実施形態を示した主要部の詳細図であり、図6(a)によると、磁束障壁は、コア61とティース63との連結部分に形成された円状のガイドホール61aと、ティース63から前記コア61側に形成された四角形状のバリアホール63aと、バリアホール63aの両側でコア61とティース63とを連結するブリッジ61bと、から構成される。
【0034】
また、図6(b)によると、磁束障壁は、コア61とティース63との連結部分に形成された円状のガイドホール61aにより構成される。
【0035】
また、図6(c)によると、磁束障壁は、コア61とティース63との連結部分に形成された円状のガイドホール61aと、コア61の各ティース63を連結するブリッジ61bに形成された小型の四角形状のブリッジホール61cと、から構成される。
【0036】
一方、図6(a),(b),(c)の符号61aは、コア61をスパイラルコア工法により製造するとき、積層を容易にするためにガイドピンなどを挿入するガイドホールであり、63bは、鉄心積層時、ティース63を積層方向にずれなしに整列させる孔である。
【0037】
以下、このように構成された本発明による磁束集中型モータの作用を説明する。
【0038】
従来の表面付着型永久磁石モータは、図7(a)に示したように、マグネットが半径方向Aに着磁された構造を有する反面、本発明による磁束集中型モータは、図7(b)に示したように、マグネットが円周方向Bに着磁されて同一極性が対向する方向に配置された磁束集中型ロータ構造を有する。
【0039】
一方、図8は、本発明のマグネット65の下部をつなぐブリッジ61bの厚さによるトルク及びトルクリップル特性を示した図であり、図示されたように、ブリッジ61bの厚さを0.5mmから3.0mmに増加した場合、トルクが約50%程度に減少することが分かる。したがって、本発明では、マグネット65の磁束漏洩を最小化するために、図6(a),(b),(c)で説明したように、ガイドホール61a、ブリッジホール61c及びバリアホール63aを適切に形成することにより、磁束障壁を最適に設計することができる。
【0040】
図9は、従来のモータと本発明のモータの回転数によるトルクを比較して示したグラフであり、図示されたように、本発明のモータは、従来の同一の積層及び体積の表面付着型永久磁石モータと対比して、トルクが全体的に向上したことが分かる。すなわち、従来のモータは、初期回転時に314[kg・cm]である反面、本発明のモータは、346[kg・cm]であってトルクが向上したことが分かる。
【0041】
したがって、本発明のモータが同一トルクの負荷に適用される場合、モータの積層減少及び巻線量低減などによりモータの製作費用を全体的に節減することができる。また、同一トルクの発生時、積層減少などによる小型化が可能であるため、本発明のモータが適用されるドラム洗濯機などの設計自由度が高くなり、容量拡大も容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】従来の表面付着型永久磁石モータを示した分解斜視図である。
【図2】従来の表面付着型永久磁石モータを示した平面構成図である。
【図3】従来の表面付着型永久磁石モータにおけるロータの相対的な位置による磁束分布を示した詳細図である。
【図4】従来の表面付着型永久磁石モータにおけるオーバハングの長さによる磁束密度を示したグラフである。
【図5】本発明による磁束集中型モータを示した平面構成図である。
【図6】(a)から(c)は本発明による磁束集中型モータにおける磁束障壁形成の多様な実施形態を示した主要部の詳細図である。
【図7】(a)は従来のマグネットの磁化方向を示した参考図、(b)は本発明のマグネットの磁化方向を示した参考図である。
【図8】本発明による磁束集中型モータにおけるロータのブリッジ厚さによる特性変化を示したグラフである。
【図9】従来のモータ及び本発明のモータの回転数によるトルクを比較して示したグラフである。
【符号の説明】
【0043】
50 ステータ
51 コア
53 ティース
55 コイル
60 ロータ
61 コア
61a ガイドホール
61b ブリッジ
61c ブリッジホール
63 ティース(歯部)
63a バリアホール
65 マグネット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リング状に形成され、放射状に配置された複数のティースにコイルが巻線されたステータと、
前記ステータの内側に位置され、円周方向に着磁された複数個のマグネットを同一極性が対向する方向に配置して前記ステータとの作用により回転するロータと、を含むことを特徴とする磁束集中型モータ。
【請求項2】
前記ステータは、リング状のコアと、前記リング状のコアの内周面からこのコアの中心方向に突出された複数個のティースと、前記各ティースに巻線されて外部電源と接続されたコイルと、を含むことを特徴とする請求項1記載の磁束集中型モータ。
【請求項3】
前記コアの外周面には、ステータ取付用ホールが形成されていることを特徴とする請求項2記載の磁束集中型モータ。
【請求項4】
前記ロータは、リング状のコアと、該コアから前記ステータ側に放射状に突出された複数個のティースと、前記各ティースの間に配置される複数個のマグネットと、を含むことを特徴とする請求項1記載の磁束集中型モータ。
【請求項5】
前記コアまたはコアとティースとの連結部分には、前記マグネットの磁束が外部に漏洩されることを遮断する磁束障壁が備わることを特徴とする請求項4記載の磁束集中型モータ。
【請求項6】
前記磁束障壁は、前記コアと前記ティースとの連結部分に形成されたピンホールであることを特徴とする請求項5記載の磁束集中型モータ。
【請求項7】
前記磁束障壁は、前記ティースから前記コア側に形成されたバリアホールであることを特徴とする請求項5記載の磁束集中型モータ。
【請求項8】
前記磁束障壁は、前記コアの各ティースの連結部分に形成されたブリッジホールであることを特徴とする請求項5記載の磁束集中型モータ。
【請求項9】
前記コアは、スパイラルコア工法により製造されることを特徴とする請求項4記載の磁束集中型モータ。
【請求項10】
前記コアには、鉄心積層のためのガイドホールが形成されていることを特徴とする請求項9記載の磁束集中型モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−87287(P2006−87287A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−241480(P2005−241480)
【出願日】平成17年8月23日(2005.8.23)
【出願人】(590001669)エルジー電子株式会社 (296)
【Fターム(参考)】