説明

磁気センサ素子及びそれを備える検出装置

【課題】検出対象物質を高精度に検出することができる磁気センサ素子を提供する。
【解決手段】複数の磁区が一方向に連なり、且つ隣り合う該磁区同士が互いに反対方向の磁化容易軸を有する多磁区構造体を備えている磁気センサ素子であって、前記多磁区構造体は表面領域を有し、該表面領域の内、前記多磁区構造体の一方の端から数えて2n−1番目(nは自然数)の磁区と2n番目の磁区との境界に位置する第1の表面部と、2n番目の磁区と2n+1番目の磁区との境界に位置する第2の表面部とは、磁性粒子あるいは該磁性粒子に固定可能な物質に対する親和性が互いに異なることを特徴とする磁気センサ素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性粒子或は該磁性粒子に固定可能な物質を検出するための磁気センサ素子に関する。更に、該磁気センサ素子を備えた検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
定量的なイムノアッセイとして、放射免疫分析法(RIA : radio immunoassay、もしくは、IRMA:immunoradiometric assay)が古くから知られている。この方法では、放射性核種によって、競合する抗原あるいは抗体を標識化し、比放射能の測定結果から抗原が定量的に測定される。つまり、抗原などの標的物質を標識化してこれを間接的に測定する。この放射免疫分析法方法は、感度が高いことから、臨床診断に大きく貢献した。しかし、放射性核種には取り扱う上での問題が有るため、放射免疫分析法を用いる場合は、専用の施設や装置が必要となってしまう。
【0003】
そこで、より扱いやすい方法として、例えば、蛍光物質、酵素、電気化学発光分子、磁性粒子などの標識を用いる方法が提案されている。蛍光標識、酵素標識、電気化学発光標識等を標識として用いる場合は、光学的な測定方法により、光の吸収率や透過率、あるいは発光光量を計測することによって、標的物質の検出が行われる。標識に酵素を用いる酵素免疫測定法(EIA:Enzyme Immunoassay)は、抗原−抗体反応を行った後に、酵素標識抗体を反応させ、その酵素に対する基質を添加して発色させ、その吸光度により比色定量する方法である。
【0004】
また、幾つかの研究機関によって、磁性粒子を標識とし、磁気センサ素子によって間接的に生体分子を検出するバイオセンサの研究報告がなされている。この検出方法に用いられる磁気センサ素子には、いくつかの種類がある。非特許文献1には、磁気抵抗効果素子を用いたものが記載されている。非特許文献2には、ホール素子を用いたものが記載されている。非特許文献3には、ジョセフソン素子を用いたものが記載されている。非特許文献4には、コイルを用いたものが記載されている。非特許文献5には、磁気インピーダンスが変化するMI素子(磁気インピーダンス素子)を用いたものが記載されている。
【0005】
これらの素子を用いた生体物質の検出方法には、それぞれ特徴が有り、特に、MI素子は簡素な構造とすることができるという利点を持つ。
【0006】
MI素子は、一様な組成の磁性体あるいは非磁性導体の周囲を磁性材料で覆われた構造を持つ。円柱状のMI素子は、長手方向に直交するセンサ断面の円周方向に磁化容易軸を有する。
【0007】
薄膜形状のMI素子は、長手方向に垂直でかつ膜の面内方向に磁化容易軸を有する。MI素子は、この磁化容易軸の方向に沿って磁化される多磁区構造を有する。
【0008】
図1に、多磁区構造を有するMI素子を模式的に示す。図1を参照すると、MI素子は、円柱状のセンサ素子であって、長手方向に直交するセンサ断面の円周方向に磁化容易軸を有する複数の磁区1190を有する。MI素子の両端部は、交流電源1502に接続されている。隣接する磁区1190の間では、磁区内磁化の向き1191が互いに逆向きになっている。
【0009】
このMI素子に交流電流を流すと、表皮効果によって電子は素子表面を流れるが、素子に磁化容易軸方向の磁場が印加されることで、素子の透磁率が変化する。交流磁場中でのインピーダンスの変化量ΔZ/Zから、素子に印加された磁場の大きさを測定することが可能である。ただし、MI素子によって検出される磁場は、素子長手方向の磁場である。
【0010】
また、印加する交流磁場の測定には、素子に表皮効果が生じる周波数により、高周波数モードと低周波数モードの2つのモードの測定方法がある。低周波数モードでは、印加される交流磁場に伴う素子の磁壁移動が生じる。一方、高周波数モードでは、磁壁は移動困難になり、磁化の回転が生じる。
【0011】
図2は、MI素子を用いた高周波数モードでの磁場測定を説明するための図である。図2(a)は検出磁場が0の場合の磁化の状態を示し、図2(b)は検出磁場が小さな場合の磁化の状態を示し、図2(c)は検出磁場が大きな場合の磁化の状態を示す。また、図2(d)は交流磁場によるインピーダンス変化量と検出磁場の関係を示す。
【0012】
図2(a)から図2(c)に示すように、検出磁場が大きくなるにつれて、磁区内の磁化の向きが回転する(磁化の回転)。図2(d)に示すように、交流磁場によるインピーダンス変化量ΔZ/Zは、正極時と負極時とで左右対称のグラフ特性を示す。
【0013】
非特許文献5には、MI素子を用いたDNAの検出方法が記載されている。MI素子の周りをポリマーで覆い、これにビオチンを介して所望の塩基配列を持つDNAを固定する。このDNAが固定されたMI素子を、磁性粒子を有する溶液中に浸漬させる。ただし、磁性粒子には、調べたいDNAがビオチンを介して固定されている。調べたいDNA、つまり、この場合は磁性粒子に固定されているDNAが、MI素子の表面に固定されているDNAと相補的であるならば、DNAの結合によって、磁性粒子は素子表面に固定される。MI素子は、磁性粒子から発せられる浮遊磁場に依存したインピーダンスを示すので、間接的にDNAが相補的であるか否かを検出することが可能となる。
【非特許文献1】H. A. Ferreira, et al, J. Appl. Phys., 93 7281 (2003)
【非特許文献2】Pierre-A. Besse, et al, Appl. Phys. Lett. 80 4199 (2002)
【非特許文献3】SeungKyun Lee, et al, Appl. Phys. Lett. 81 3094 (2002)
【非特許文献4】Richard Luxton, et al, Anal. Chem.16 1127 (2001)
【非特許文献5】Horia Chiriac, et al, J. Magn. Magn. Mat. 293 671 (2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
インピーダンスの測定では、非特許文献5に記載されているように、MI素子と直列に固定抵抗と交流電源を接続した電気回路が用いられ、固定抵抗の両端に生じる電圧を測定する。磁性粒子が固定される前後でそれぞれ測定したインピーダンスを比較する。
【0015】
MI素子を用いた磁場測定では、図1に示したように、磁化容易軸が円周方向を向いている磁性体に、表皮効果が得られる周波数の交流電流を流すことで、磁化容易軸方向の交流磁場を素子表面に沿って印加する。このとき、素子長方向の検出磁場によって、各磁壁の磁化が容易軸に対して傾く効果の足し合わせが、図2(d)に示すようなインピーダンスの変化となって観測される。つまり、MI素子による磁場測定は、各磁区がそれぞれ受ける検出磁場の影響の和を、出力として得ることになる。
【0016】
このため、磁性粒子がMI素子の表面に固定された後の磁場測定において、MI素子の磁区の位置と磁性粒子の付着位置との関係が変化すると、被検体の検出感度が大きく変化する。特に、後述するように、磁性粒子と磁区の位置関係によっては、磁性粒子からの磁場が磁区内で打ち消し合う状態となって、磁性粒子が存在するにもかかわらず、素子のインピーダンス変化を正確に検出できない場合がある。
【0017】
そこで、本発明の目的は、上記問題を解決し、検出対象物質(磁性物質あるいは磁性物質に固定可能な物質)を高精度に検出することができる磁気センサ素子、及び当該素子を用いた検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係る磁気センサ素子は、複数の磁区が一方向に連なり、且つ隣り合う該磁区同士が互いに反対方向の磁化容易軸を有する多磁区構造体を備えている磁気センサ素子であって、前記多磁区構造体は表面領域を有し、該表面領域の内、前記多磁区構造体の一方の端から数えて2n−1番目(nは自然数)の磁区と2n番目の磁区との境界に位置する第1の表面部と、2n番目の磁区と2n+1番目の磁区との境界に位置する第2の表面部とは、磁性粒子あるいは該磁性粒子に固定可能な物質に対する親和性が互いに異なる、ことを特徴とする。
【0019】
また、別の本発明の磁気センサ素子は、複数の磁区が一方向に隣接して形成される多磁区構造を備え、前記複数の磁区のそれぞれが前記一方向と交差する所定の方向に磁化容易軸を有する磁気センサ素子であって、当該磁気センサ素子の表面における検出対象物質との親和性が、前記複数の磁区のそれぞれの境界に形成された複数の磁壁のうちの、前記多磁区構造の一方の端部から数えて奇数番目に位置する磁壁の部分と偶数番目に位置する磁壁の部分とで異なる、ことを特徴とする。
【0020】
また、別の本発明に係る磁気センサ素子は、複数の磁区が一方向に隣接して形成される多磁区構造を備え、前記複数の磁区のそれぞれが前記一方向と交差する所定の方向に磁化容易軸を有する磁気センサ素子であって、前記多磁区構造の一方の端部から数えて2n−1番目(nは自然数)に位置する磁壁上の前記センサ素子の第1の表面部と、2n+1番目(nは自然数)に位置する磁壁上の前記センサ素子の第2の表面部との間には、表面特性が異なる第3の表面部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、磁気センサ素子に付着する磁性粒子などの付着位置を規定できる。具体的には、磁性粒子からの多磁区構造体に印加される磁場が、一の磁区内で打ち消し合う状態となることを低減することができ、これにより、検出対象物質の高精度な検出が実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0023】
図15は、本発明に係る磁気センサ素子について説明するための概念図である。図15Aには、複数の磁区(5001から5006)が一方向に連なり、且つ隣り合う該磁区同士が互いに反対方向の磁化容易軸(図中の矢印)を有する多磁区構造体5000を備えている様子が示されている。6001から6006は、磁区同士の境界であり、これを磁壁という場合もある。そして、多磁区構造体5000は表面領域を有する。ここで表面領域とは、多磁区構造体の表面のことであり、磁区5001から5006で構成される表面全体のことである。また、多磁区構造体が、柱状の磁性体よりなり、該磁性体の長手方向に沿って前記複数の磁区が連なり、前記長手方向と交差する方向における前記磁性体の切断面の周方向に前記磁化容易軸を有するように構成することも好ましい。そして、前記切断面の形状を例えば、円形にすることができる。また、前記多磁区構造体は、基板上に積層された複数の磁性膜より構成し、該磁性膜の積層方向にと交差する方向に前記磁化容易軸を有するようにすることもできる。
【0024】
上記表面領域の内、多磁区構造体5000の一方の端から数えて2n−1番目(nは自然数)の磁区5001、5003、5005と2n番目の磁区5002、5004、5006との境界6001、6003、6005に位置するのが、第1の表面部である。なお、一方の端を図の左端として、示している。そして、2n番目の磁区(5002、5004、5006)と2n+1番目の磁区(5003、5005)との境界(6002、6004、6006)に位置するのが、第2の表面部である。この第1の表面部と第2の表面部とは、磁性粒子あるいは該磁性粒子に固定可能な物質に対する親和性が互いに異なるように構成することが本発明の特徴である。
【0025】
そして、両者の親和性を異ならせることにより、検出対象となる磁性粒子あるいは該磁性粒子に固定可能な物質を、第1の表面部か第2の表面部の一方に付着し易くすることができる。
【0026】
具体的には、図15Bに示すように、磁区同士の境界6001、6003、6005を含む多磁区構造体5000の第1の表面部(7001、7003、7005で示す点線で囲んだ領域)に、例えば、磁性粒子固定膜(不図示)を設ける。あるいは、図15Cに示すように、磁区同士の境界6001、6003、6005以外の境界(6002、6004)を含む領域8001、8002、8003、8004に、磁性粒子非固定化膜(不図示)を設ける。勿論、図15B及び図15Cの概念を併用することもできる。
【0027】
なお、磁性粒子固定膜に代表されるように、上記第1の表面部には、上記磁性粒子あるいは該磁性粒子に固定可能な物質が、上記多磁区構造体の表面に選択的に付着するための膜を設けることが好ましい。
【0028】
また、上記第2の表面部には、磁性粒子非固定膜に代表されるように、上記磁性粒子あるいは該磁性粒子に固定可能な物質が、上記多磁区構造体の表面に付着することを抑制する膜を設けることが好ましい。
【0029】
また、図15Bと図15Cでは、第1の表面部に当該検出対象を付着し易くする手法を説明する。勿論、本発明は、第1の表面部ではなく、第2の表面部に当該検出対象を付着し易くすることを除外するものではない。
【0030】
このように、第1の表面部か第2の表面部の一方に、選択的に検出対象物質を付着させることで、付着位置の変動に伴う測定精度の低下を回避することができる。
【0031】
図3は、本発明の一実施形態である磁気センサ素子を備える磁性物質を検出するための検出装置の模式図である。
【0032】
図3を参照すると、磁性物質検出装置の主要部は、磁気センサ素子であるMI素子1と、MI素子1に交流電流を流すための交流電源2とを有する。
【0033】
MI素子1には、CoSiB、FeCoSiB、FeCoMoSiBなどからなるアモルファス磁性ワイヤや、検出感度を向上させるために、磁性ワイヤの中央部を非磁性の導電性材料で形成した素子等を用いることができる。
【0034】
MI素子1の断面形状(長手方向と交差する方向に切断した面)は特に限定されるものではなく、長手方向の磁場を検出できるのであれば、どのような形状であってもよい。MI素子1の断面形状は、例えば円形や多角形であってもよい。断面形状が多角形の場合は、その断面の中心点で点対称な形状とされる。また、MI素子1は、柱状のものに限定されるものではなく、薄膜構造のものであってもよい。
【0035】
図3に示す例では、MI素子1は四角柱の形状であって、その両端部は、交流電源2に接続されている。このMI素子1では、長手方向に直交する方向における断面の周方向(所定の方向)に磁化容易軸を有する複数の磁区1190からなる多磁区構造が形成される。隣接する磁区1190の間では、磁区内の磁化の向きは互いに逆向きになっている。各磁区1190の境界に磁壁が形成される。
【0036】
例えば高周波数モードでの磁場測定において、MI素子1の磁壁部表面付近を、一方の端面から順に領域R1、領域R2・・・領域Rnと定義する。これら領域のうち奇数番目の領域(黒地に白点で示す領域)である磁壁表面付近1601と偶数番目の領域(白地に黒点で示す領域)である磁壁表面付近1602とでは、検出対象物質(磁性粒子或は磁性粒子に固定可能な物質)との親和性が異なる。磁性粒子は磁性物質であり、磁性粒子に固定可能な物質は非磁性物質(生体物質)である。ここでは、磁壁表面付近1601が親和性の高い領域とされ、磁壁表面付近1602における親和性は、磁壁表面付近1601に比べて低くなっている。親和性は、磁壁表面付近1601から磁壁表面付近1602の間で徐々に変化してもよい。また、親和性は、磁壁表面付近1601、1602のそれぞれで局所的に異なっていても構わない。
【0037】
スパッタやめっき、蒸着などの膜形成手法を用いて、よりMI素子1の表面に膜を形成し、該素子表面の膜構造を奇数番目の磁壁表面付近と偶数番目の磁壁表面付近とで異なるようにする。これにより、磁壁表面付近1601と磁壁表面付近1602とで、磁性粒子或は磁性粒子に固定可能な物質との親和性を変化させることができる。この際、MI素子1の磁区構造に合わせてマスクを用いることも有効である。MI素子1の表面に形成する膜の厚みや組成を徐々に変化させることで、奇数番目の磁壁表面付近と偶数番目の磁壁表面付近で磁性粒子或は磁性粒子に固定可能な物質との親和性を変化させることができる。
【0038】
磁性粒子或は磁性粒子に固定可能な物質と親和性の高い(或は低い)材料を用いて膜を形成し、奇数番目の磁壁表面付近で最も厚い膜厚が得られるようにしても良い。この場合は、コリメートスパッタや、選択スパッタなどで成膜可能である。さらに、別の手法として、MI素子を筐体に埋め込み、露出したセンサ面内で上記の膜構造を実現することも可能である。
【0039】
図4(a)に示す例では、磁性粒子或は磁性粒子に固定可能な物質と親和性の高い材料よりなる磁性粒子固定膜1204が磁壁表面付近1601にのみ形成されている。磁性粒子固定膜1204は、磁壁表面付近1602には形成されていない。この膜構成によれば、図5(a)に示すように、磁壁表面付近1601にのみ磁性粒子1401が固定される。
【0040】
図4(b)に示す例では、磁性粒子或は磁性粒子に固定可能な物質と親和性の低い材料よりなる磁性粒子非固定膜1205が、素子表面のうち、磁壁表面付近1601を除くに形成されている。この膜構成によれば、図5(b)に示すように、磁壁表面付近1601にのみ磁性粒子1401が固定される。
【0041】
次に、図4(a)に示したような磁性粒子固定膜1204が形成され、または、図4(b)に示したような磁性粒子非固定膜1205が形成されたMI素子にて検出される素子長手方向成分の磁場強度について詳細に説明する。
【0042】
図6は、MI素子で検出可能な素子長手方向成分の磁場強度を説明するための模式図である。図6を参照すると、磁化mを持つ1個の磁性粒子1401が、円柱状のMI素子1200上に固定されている。素子長手方向をZ方向とする。磁性粒子1401が接する箇所の、素子長手方向に垂直な面における一方の方向をX方向、他方の方向をY方向とする。MI素子1200上の点Pにおける、磁性粒子1401から生じる浮遊磁場Hsは、以下の(1)式で表される。
【0043】
【数1】

【0044】
ここで、(1)式を解いて、検出可能な素子長手方向成分の磁場強度|Hs(z)|の面積分をとり、Hssumとする。
【0045】
図7(a)に、奇数番目または偶数番目の磁壁表面付近にのみ磁性粒子1401が存在する場合の素子長手方向成分の磁場の状態を示し、図7(b)に、磁区の中央付近に磁性粒子1401が存在する場合の素子長手方向成分の磁場の状態を示す。図7(a)の状態(以下、状態Aと称す)と図7(b)の状態(以下、状態Bと称す)とでは、Hssumの値が大きく異なる。以下に、最も磁性粒子の影響を受ける、磁性粒子に最近接の磁区をとり上げて説明する。
【0046】
ここでは、状態Aは、磁性粒子が奇数番目の磁壁表面付近にのみに存在する状態と仮定する。この状態Aでは、磁性粒子に最近接の磁区は、奇数番目の磁壁を挟んで隣接する第1および第2の磁区がある。これら第1および第2の磁区が磁性粒子から受ける磁場は磁壁を境に逆向きになるが、それぞれの磁区内における磁場の向きは同じである。
【0047】
一方、状態Bでは、磁性粒子に最近接の磁区がその磁性粒子から受ける磁場は、MI素子の磁性粒子との接点を含む素子断面を境に逆向きになる。このため、磁区内では、磁性粒子からの磁場が打ち消し合うように働く。この結果、逆向きのHsが一つの磁区内で足し合わされ、最近接の磁区が受ける磁場は小さくなる。
【0048】
上記から分かるように、Aの状態の場合は、磁区内で磁場が打ち消し合うことはないので、磁場の検出感度が高くなる。これに対して、Bの状態の場合は、磁区内で磁場が打ち消し合うことになるので、磁場の検出感度が低くなる。なお、奇数番目または偶数番目の磁壁表面付近に複数の磁性粒子1401が付着してもよい。
【0049】
磁区内で磁場が打ち消し合う状態の別の形態として、図8(a)に、奇数番目または偶数番目の磁壁の、対向する磁壁表面付近に磁性粒子1401が付着した場合の素子長手方向成分の磁場の状態を示す。この状態においては、同一磁区内において、一方の側に付着した磁性粒子からの磁場と他方の側に付着した磁性粒子からの磁場とが打ち消し合うことになるので、磁場の検出感度が低くなる。
【0050】
磁区内で磁場が打ち消し合う状態のさらに別の形態として、図8(b)に、奇数番目および偶数番目の各磁壁の磁壁表面付近に磁性粒子1401が付着した場合の素子長手方向成分の磁場の状態を示す。この状態においては、同一磁区内において、一方の側の壁部表面に付着した磁性粒子からの磁場と他方の側の壁部表面に付着した磁性粒子からの磁場とが打ち消し合うことになるので、磁場の検出感度が低くなる。
【0051】
実際のMI素子の出力には、より詳細な条件が影響するが、図7(a)や図8(a)に示したように、磁性粒子が奇数番目(あるいは偶数番目)の磁壁表面付近にのみ付着するように構成することで、高い出力が得られる。
【0052】
磁性粒子の検出時に、外部から静磁場をかけるなどして磁性粒子の磁化をある方向に設定して検出を行うことで、軟磁性の磁性粒子の検出においても、上述した計算モデルに似た状況を実現することができる。状態Aで、高い感度で磁性粒子の検出が可能となるため、発生する磁場がより少ない磁性粒子の検出も可能となる。
【0053】
所望の磁場が印加できるのであれば、静磁場印加手段はどのような手段であってもよい。例えば、静磁場印加手段は、永久磁石であってもよく、電磁石であってもよい。静磁場の印加方向は、磁性粒子が検出可能な条件であれば、どの方向でも構わない。磁性粒子の検出が困難方向とされる、MI素子の長手方向に対して垂直な方向に、静磁場をかけることで、MI素子の感度の飽和を回避することができる。
【0054】
以上、主に1個の磁性粒子がMI素子表面に固定された場合について説明したが、複数の磁性粒子が固定されている場合においても、同様に考えられる。
【0055】
MI素子の特定位置に磁化が固定された領域(ピン止め領域)を形成する、或いは膜形状の効果を利用して、高周波磁場印加時のMI素子の磁区構造を制御し、より精度良く状態Aに近い構造を実現することが好ましい。
【0056】
また、上記効果が得られる条件であればよく、測定条件は、高周波数モードの測定に限るものでもない。
【0057】
MI素子を用いた磁性粒子の検出装置は、非特許文献5に記載されているような、交流電源と固定抵抗器をMI素子に直列に接続し、固定抵抗器の両端の電圧を検出する電圧計を接続した構造であっても構わない。
【0058】
本発明に係る多磁区構造は、例えば、柱状の磁性体よりなり、該磁性体の長手方向に沿って前記複数の磁区が形成され、前記長手方向と交差する方向に前記磁性体を切断した断面における周方向に前記磁化容易軸を有する。また、前記多磁区構造は、基板上に形成された磁性膜よりなり、該磁性膜の面内方向において、前記複数の磁区が前記一方向に形成され、前記一方向と交差する方向に前記磁化容易軸を有するように構成してもよい。
【0059】
また、別の本発明に係る磁気センサ素子は、以下の特徴を有する。
【0060】
具体的には複数の磁区が一方向に隣接して形成される多磁区構造を備え、前記複数の磁区のそれぞれが前記一方向と交差する所定の方向に磁化容易軸を有する磁気センサ素子であって、該素子の表面特性に関して以下の特徴を有する。
【0061】
前記多磁区構造の一方の端部から数えて2n−1番目(nは自然数)に位置する磁壁上の前記センサ素子の第1の表面部と、2n+1番目(nは自然数)に位置する磁壁上の前記センサ素子の第2の表面部との間に、第3の表面部を有するのである。ここで、第3の表面部は、第1及び第2の表面部と表面特性(例えば、磁性粒子や生体などの非磁性物質との親和性)が異なる。第3の表面部は、例えば、2n番目(nは自然数)に位置する磁壁上に主として設けられる。表面特性は、必ずしも物質の親和性のみならず、表面荒れなどの形状の相違であっても、結果として検出対象物質を選択的に検知しやすくなるのであれば特に制限されるものではない。
【実施例1】
【0062】
図9に、本発明の第1の実施例である免疫センサの構成を示す。免疫センサを構成するMI素子1200は、直径φが15μmのCuからなる非磁性導電体1201を備える。非磁性導電体1201の表面は、膜厚が7.5μmのFeCoSiBからなる磁性膜1202で覆われている。
【0063】
40MHzの交流電流を非磁性導電体1201に印加した際に、MI素子1200に形成される磁区構造について、片一方のセンサ端面から数えて、奇数番目の磁壁表面付近1601に、20nmのAuからなる磁性粒子固定膜1204が形成されている。
【0064】
磁性粒子固定膜1204と磁性膜1202の間には、膜厚が50nmのSiO2からなる絶縁薄膜1203が形成されている。ただし、MI素子1200を構成する各部の材料や膜厚は、ここで説明したものに限定されるものではなく、磁性粒子が検出可能であるならば、MI素子1200はどのような構成にしてもよい。
【0065】
MI素子1200は、筐体1301内の流路1302中に、その両端が支持される状態で収容されている。MI素子1200の全長は約6mmである。図9では、MI素子1200は、一本の直線状のものとされているが、これに限定されるものではない。MI素子1200は、流路中で折り返して配されてもよい。
【0066】
また、MI素子1200の収容形態は、図9に示した構成に限定されるものではない。図10に、MI素子1200の別の収容形態を示す。図10を参照すると、筐体1301はその内部に断面形状が四角形の流路1302を備える。複数のMI素子1200が筐体1301の内壁部に埋め込まれている。各MI素子1200の表面の一部が流路1302内に僅かに露出している。
【0067】
図11に、MI素子の表面の一部が流路内に僅かに露出している状態を模式的に示す。この例では、MI素子1200の表面のうち、長手方向全体に亘る一部の表面が流路内に露出している。筐体1301の内壁である筐体表面1303により流路1302の壁部(流路壁)が形成されている。MI素子1200の両端に、交流電源1502から交流電流が供給される。静磁場は、筐体表面1303に垂直な方向に印加される。MI素子1200の流路1302内に露出した面に、磁性粒子1401が付着する。
【0068】
このようにMI素子1200を筐体1301内に埋め込む収容形態によれば、磁性粒子1401が、MI素子1200の長軸に対して線対称の位置に付着するのを防ぐことができる。
【0069】
なお、MI素子1200を筐体1301内に埋め込む収容形態は、図10に示す構成に限定されるものではない。筐体1301内の流路を断面形状が円形の流路として、複数のMI素子1200をその表面の一部が流路1302内に僅かに露出するように、筐体1301の壁部内に埋め込んでもよい。また、前記磁気センサ素子が、該磁気センサ素子の長手方向に渡って表面の一部が前記流路中に露出するように前記筐体の内壁に埋め込まれていてもよい。
【0070】
図12に、抗原−抗体反応によって、磁性粒子固定膜上に磁性粒子が付着する状態を模式的に示す。図12を参照すると、磁性粒子1401は、磁性粒子固定膜1204上に、一次抗体1402、抗原1403および二次抗体1404を介して固定される。抗原1403は、具体的には、前立腺癌のマーカーとして知られている前立腺特異抗原(PSA)である。
【0071】
免疫センサでは、以下のプロトコールに従って、抗原1403である前立腺特異抗原(PSA)の検出が行われる。
【0072】
(1)流路1302内に露出したMI素子1200の表面部分には、抗原(PSA)1403を認識する一次抗体1402が固定化されている。被検体であるPSA1403を含むリン酸緩衝生理食塩水(被検体溶液)を流路1302内に注入し、5分間インキュベートする。
【0073】
(2)リン酸緩衝生理食塩水を流路1302内に流し、未反応のPSA1403を除去する。
【0074】
(3)磁性粒子1401により標識された二次抗体(抗PSA抗体)1404を含むリン酸緩衝生理食塩水を流路1302内に注入し、5分間インキュベートする。
【0075】
(4)未反応の標識抗体をリン酸緩衝生理食塩水で洗浄する。
【0076】
上述のプロトコールによって、磁性粒子1401が、抗PSA抗体1404、PSA1403および一次抗体1402を介してMI素子1200の表面に固定される。つまり、被検体の中にPSA1403が存在しない場合は、磁性粒子1401は、MI素子1200の表面に固定されないので、磁性粒子1401の有無を検出することによって、PSA1403を検出することができる。
【0077】
次に、磁性粒子1401の測定手順について説明する。
【0078】
図13に、免疫センサを用いた基本的な検出回路を示す。図13を参照すると、検出回路は、MI素子1200と、MI素子1200に直列に接続された交流電源1502および固定抵抗1501と、固定抵抗1501の両端の電圧を検出する電圧計1503とからなる。MI素子1200の中心に設けられたCu部に40MHzの交流電流を流すことで、MI素子1200の外周に沿って高周波数の磁場を印加する。
【0079】
図14に、免疫センサを用いた磁性物質検出装置の構成を示す。図14を参照すると、MI素子1200によりなる検出部1300が、磁極1101と磁極1102の間の中央に配される。ただし、図14は断面図であり、磁極1101、磁極1102および検出部1300はそれぞれ、図面に対して垂直方向に長い形状とされる。
【0080】
筐体表面に対して垂直な方向が、MI素子1200の磁場の検出が困難な方向である。静磁場を筐体表面に対して垂直な方向に印加し、MI素子1200の表面に固定された磁性粒子1401の磁化方向を筐体表面にほぼ垂直な方向に揃える。
【0081】
MI素子1200の検出信号の大きさから、MI素子1200の表面に固定された磁性粒子1401の数量を特定し、被検体中に含まれる抗原1403の量を間接的に求めることができる。
【0082】
本実施例の免疫センサにおいて、筐体1301内の流路1302の数は1つとされているが、これに限定されるものではない。筐体1301内に複数の流路を形成し、各流路に、図14に示したような状態で検出部1300を設けてもよい。この場合は、各流路で異なる抗原-抗体反応が生じるようにすることで、一度に複数の抗原を検出することができる。
【0083】
また、測定に用いる交流磁場の周波数は、MI素子に表皮効果が生じ、高周波モード測定が可能であれば、任意に選択できる。
【0084】
また、MI素子1200は、非磁性導体を含まず、一様な組成の磁性材料で構成されていてもよい。
【0085】
さらに、MI素子1200の、長手方向と交差する方向における断面の形状は、その断面の中心点を点対称とする多角形であってもよい。
【実施例2】
【0086】
免疫センサを構成するMI素子は、薄膜構造であってもよい。MI素子は、基板上に形成された磁性膜(薄膜)を有する。磁性膜の膜面内において、磁性膜の長手方向と交差する方向、すなわち略垂直方向(所定の方向)に磁化容易軸を有する。このMI素子も、印加される磁場の大きさに依存してインピーダンスが変化するセンサ素子であって、磁性膜は、その長手方向に沿って複数の磁区が隣接して形成された多磁区構造を有する。MI素子のどちらか一方の端部から数えて、奇数番目の磁壁表面付近における検出対象物質との親和性と、偶数番目の磁壁表面付近における検出対象物質との親和性が異なる。具体的には、奇数番目および偶数番目のいずれか一方の磁壁表面付近における検出対象物質との親和性が他方の親和性より高くなっている。
【0087】
上記の構成のMI素子を備える免疫センサによっても、第1の実施例の免疫センサと同様な効果を得られる。なお、本例の免疫センサにおいて、磁性粒子の磁化を揃えるために加える静磁場は、磁性膜の膜面に垂直な方向に印加するのが好ましい。
【0088】
以上説明した本発明の磁気センサ素子およびそれを用いた磁性物質検出装置によれば、磁性粒子の付着位置は、奇数番目または偶数番目の磁壁部分の素子表面付近に限定される。よって、磁性粒子からの磁場が磁区内で打ち消し合う状態となることを抑制することができ、これにより、検出対象物質(磁性粒子あるいは磁性粒子を標識とした非磁性物質)を高精度に検出することができる。
【0089】
以上説明した実施形態は、本発明の一例であり、その構成および動作は発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、例えば、臨床検査におけるDNA診断に用いることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】多磁区構造を有するMI素子を示す模式図である。
【図2】MI素子を用いた高周波数モードでの磁場測定を説明するための図である。
【図3】本発明の一実施形態である磁気センサ素子を備える磁性物質検出装置の構成を示す模式図である。
【図4】図3に示す磁気センサ素子の磁壁表面付近の構成を説明するための図で、(a)は磁性粒子固定膜が形成された磁壁表面付近の状態を示す模式図、(b)は磁性粒子非固定膜が形成された磁壁表面付近の状態を示す模式図である。
【図5】(a)は図4(a)に示す磁性粒子固定膜に磁性粒子が付着した状態を示す模式図、(b)は図4(b)に示す磁性粒子非固定膜以外の部分に磁性粒子が付着した状態を示す模式図である。
【図6】MI素子で検出可能な素子長手方向成分の磁場強度を説明するための模式図である。
【図7】(a)は奇数番目または偶数番目の磁壁表面付近にのみ磁性粒子が存在する場合の素子長手方向成分の磁場の状態を示す模式図、(b)は磁区の中央付近に磁性粒子が存在する場合の素子長手方向成分の磁場の状態を示す模式図である。
【図8】(a)は磁区内で磁場が打ち消し合う状態の別の形態を示す模式図、(b)は磁区内で磁場が打ち消し合う状態のさらに別の形態を示す模式図である。
【図9】本発明の第1の実施例である免疫センサの構成を示す模式図である。
【図10】図9に示すMI素子の別の収容形態を示す模式図である。
【図11】図10に示すMI素子の表面の一部が流路内に僅かに露出している状態を示す模式図である。
【図12】抗原−抗体反応によって、磁性粒子固定膜上に磁性粒子が付着する状態を示す模式図である。
【図13】図9に示す免疫センサを用いた基本的な検出回路を示す回路図である。
【図14】図9に示す免疫センサを用いた磁性物質検出装置の構成を示す模式図である。
【図15】本発明に係る磁気センサ素子について説明するための図である。
【符号の説明】
【0092】
1 MI素子
2 交流電源
1190 磁区
1191 磁区内磁化の向き
1201 非磁性導体
1202 磁性体
1601、1602 磁壁表面付近

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の磁区が一方向に連なり、且つ隣り合う該磁区同士が互いに反対方向の磁化容易軸を有する多磁区構造体を備えている磁気センサ素子であって、
前記多磁区構造体は表面領域を有し、
該表面領域の内、前記多磁区構造体の一方の端から数えて2n−1番目(nは自然数)の磁区と2n番目の磁区との境界に位置する第1の表面部と、2n番目の磁区と2n+1番目の磁区との境界に位置する第2の表面部とは、磁性粒子あるいは該磁性粒子に固定可能な物質に対する親和性が互いに異なることを特徴とする磁気センサ素子。
【請求項2】
前記多磁区構造体は、柱状の磁性体よりなり、該磁性体の長手方向に沿って前記複数の磁区が連なっており、前記長手方向と交差する方向における前記磁性体の切断面の周方向に前記磁化容易軸を有する、請求項1に記載の磁気センサ素子。
【請求項3】
前記切断面の形状が円形である請求項2に記載の磁気センサ素子。
【請求項4】
前記切断面の形状が、該断面の中心点を点対称とする多角形である請求項2に記載の磁気センサ素子。
【請求項5】
前記多磁区構造体は、基板上に積層された複数の磁性膜よりなり、該磁性膜の積層方向にと交差する方向に前記磁化容易軸を有する、請求項1に記載の磁気センサ素子。
【請求項6】
前記第1の表面部には、前記磁性粒子あるいは該磁性粒子に固定可能な物質が、前記多磁区構造体の表面に選択的に付着するための膜が設けられている、請求項1に記載の磁気センサ素子。
【請求項7】
前記第2の表面部には、前記磁性粒子あるいは該磁性粒子に固定可能な物質が、前記多磁区構造体の表面に付着することを抑制する膜が設けられている、請求項1に記載の磁気センサ素子。
【請求項8】
検出装置であって、
請求項1から7のいずれか1項に記載の磁気センサ素子と、
前記磁気センサ素子に交流電流を供給するための交流電源とを備え、
検出対象物が有する前記磁性粒子あるいは該磁性粒子に固定可能な物質によって印加される磁場の大きさに依存して、前記磁気センサ素子のインピーダンスが変化することを用いて、該検出対象物質の検出を行うことを特徴とする検出装置。
【請求項9】
前記検出装置が、内部に流路を備える筐体を有し、且つ前記磁気センサ素子が該流路中に収容されている、請求項8に記載の検出装置。
【請求項10】
前記磁気センサ素子に静磁場を印加するための静磁場印加手段を有する、請求項9に記載の検出装置。

【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−31263(P2009−31263A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−134170(P2008−134170)
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】