移動ロボット
【課題】無線基地局と通信する無線環境の状態を適確に判断できるマップを作成する移動ロボットを提供する。
【解決手段】移動ロボットRは、無線親機1と無線通信を行う無線通信部160と、無線通信部160が受信する無線強度を含む無線環境の良好度を示す複数種類の無線環境データを検出する無線環境検出部163と、複数種類の無線環境データに所定の重み付けをして総合無線環境データを算出する総合無線環境データ算出部141と、自己位置認識手段たるジャイロセンサSR1及びGPS受信器SR2と、移動ロボットRが移動する移動領域の地図データを記憶する記憶部190と、総合無線環境データを、記憶部190に記憶された地図データに、無線環境データを検出したときに自己位置認識手段によって認識した自己位置に対応付けて書き込むことで、総合無線環境マップを作成する総合無線環境マップ作成部142と、を備えて構成される。
【解決手段】移動ロボットRは、無線親機1と無線通信を行う無線通信部160と、無線通信部160が受信する無線強度を含む無線環境の良好度を示す複数種類の無線環境データを検出する無線環境検出部163と、複数種類の無線環境データに所定の重み付けをして総合無線環境データを算出する総合無線環境データ算出部141と、自己位置認識手段たるジャイロセンサSR1及びGPS受信器SR2と、移動ロボットRが移動する移動領域の地図データを記憶する記憶部190と、総合無線環境データを、記憶部190に記憶された地図データに、無線環境データを検出したときに自己位置認識手段によって認識した自己位置に対応付けて書き込むことで、総合無線環境マップを作成する総合無線環境マップ作成部142と、を備えて構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管理用コンピュータと無線通信を行いながら移動する移動ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、移動可能なロボットに対して、無線によりタスク実行命令信号を発行してタスクを実行させる技術が提案されている。このような移動ロボットにおいては、電波の届かない場所に移動ロボットが移動してしまった場合には、無線による遠隔制御ができなくなり、人が手を出して電波が届く場所まで移動ロボットを戻す必要があった。
このような問題に対して、特許文献1には、ロボットが電波の届かないところまで移動すると、移動中に取得した電波強度に基づいて作成した電波強度マップに従い、無線接続が可能な地点まで自律的に移動するようにした移動ロボットが提案されている。
また、特許文献2には、複数の移動ロボットが稼動している場合に、電波の弱い領域に移動した移動ロボットに対して、他の移動ロボットが基地局との通信を中継する移動ロボットが提案されている。
【特許文献1】特開2004−260769号公報(段落0008〜段落0012、図4〜図6)
【特許文献2】特開2005−025516号公報(段落0016、図9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の移動ロボットは、電波強度マップに基づいて移動経路を選定するため、電波強度以外のノイズ等の他の要因によって通信が切断されたときには、通信可能な領域への復帰ができない場合も起こり得るものであった。
また、特許文献2に記載の移動ロボットは、稼動する移動ロボットが1台の場合は、基地局との通信を中継することができず、電波の届かない領域に移動した移動ロボットが、再び通信可能な領域への復帰ができない場合が起こり得るものであった。
【0004】
本発明は、かかる問題を解決するために創案されたものであり、無線基地局と通信する無線環境の状態を適確に判断できるマップを作成する移動ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、請求項1に記載の移動ロボットは、管理用コンピュータに接続された1以上の無線基地局を介して、前記管理用コンピュータとの間で無線通信すると共に、所定の移動領域において当該移動領域の地図データを利用して自律的に移動する移動ロボットであって、前記無線基地局と無線通信を行う無線通信手段と、前記無線通信手段と前記無線基地局との無線通信において、前記無線通信手段が受信する受信信号の無線強度を含む無線環境の良好度を示す複数種類の無線環境データを検出する無線環境検出手段と、前記複数の無線環境データに所定の重み付けをした結果を示す総合無線環境データを算出する総合無線環境データ算出手段と、前記移動領域における自己の位置を認識する自己位置認識手段と、前記移動領域の地図データを記憶する記憶手段と、前記算出された総合無線環境データを、前記無線環境データを検出したときに前記自己位置認識手段によって認識された位置に対応付けて、前記記憶手段に記憶された地図データに書き込むことにより、総合無線環境マップを前記無線基地局毎に作成する総合無線環境マップ作成手段と、を備えて構成した。
【0006】
かかる構成によれば、移動ロボットは、無線環境検出手段によって、無線基地局との通信環境の良好度を表す指標である無線環境データとして、移動ロボット側の無線通信手段が無線基地局から送信された信号を受信して、その受信信号の無線強度を検出すると共に、無線強度以外の、例えば、通信速度、通信エラー回数、データ再送回数などを検出する。そして、移動ロボットは、無線環境検出手段で検出した複数の無線環境データを、総合無線環境データ算出手段によって、所定の重み付けをして、例えば、加重平均することにより、総合無線環境データを算出する。そして、移動ロボットは、総合無線環境マップ作成手段によって、総合無線環境データ算出手段で算出された総合無線環境データを、算出の基になった無線環境データを検出したときの、自己位置認識手段によって認識した自己の位置、すなわち、当該無線環境データを検出した位置に対応付けて、記憶手段に記憶された地図データに書き込むことによって総合無線環境マップを作成する。
これによって、移動ロボットは、無線強度に、無線強度以外の無線環境の良好度を表す指標を加味した総合無線環境データからなる総合無線環境マップを利用して、移動領域における無線環境の状態を判断することができるようになる。
【0007】
請求項2に記載の移動ロボットは、請求項1に記載の移動ロボットにおいて、前記複数種類の無線環境データは、前記無線強度に関するデータを含み、さらに通信速度及び通信エラー回数及びデータ再送回数の内の少なくとも一つに関するデータを含むように構成した。
【0008】
かかる構成によれば、移動ロボットは、無線強度以外の無線環境の良好度を表す指標として、通信状態を無線強度より直接的に示す通信速度、通信エラー回数、データ再送回数の少なくとも何れか一つを加味した総合無線環境データからなる総合無線環境マップを作成する。
これによって、移動ロボットは、移動領域における無線環境の状態をより適確に判断することができる。
【0009】
請求項3に記載の移動ロボットは、請求項1又は請求項2に記載の移動ロボットにおいて、前記記憶手段に記憶された地図データと、前記自己位置認識手段によって認識された位置とに基づいて、予め定められた位置へ自律的に移動し、その移動地点において、前記無線環境検出手段によって無線環境データを検出するように構成した。
【0010】
かかる構成によれば、移動ロボットは、記憶手段に記憶された地図データと、自己位置認識手段によって認識される位置とに基づいて、移動領域内の指定された任意の位置に自律的に移動して、無線環境検出手段によって、その移動地点における無線環境データを検出し、検出した無線環境データに基づいて算出される総合無線環境データからなる総合無線環境マップを作成する。
これによって、移動ロボットは、無線環境データ検出位置を指定するだけで、自動的に総合無線環境マップを作成することができる。
【0011】
請求項4に記載の移動ロボットは、請求項1又は請求項2に記載の移動ロボットにおいて、さらに、人物の移動方向と移動の速さとを検出する移動検出手段を有し、前記移動検出手段によって検出した移動方向と移動の速さとで、前記人物と共に移動すると共に、前記人物と共に移動する経路上において、前記無線環境検出手段によって無線環境データを検出するように構成した。
【0012】
かかる構成によれば、移動ロボットは、移動検出手段によって、当該移動ロボットを無線環境データを検出する位置に誘導するため近傍にいる人物の移動方向と移動の速さとを検出し、その人物と共に移動する。移動検出手段は、例えば、ヒト型の移動ロボットの場合は、腕部に設けた6軸力センサを用いることができる。人物が移動ロボットの手を引いて誘導しようとすると、移動ロボットは当該センサの各方向の反力成分を解析して、手を引く方向とその大きさを検出し、その検出値に基づいて、人物の移動方向と移動の速さとを検出することができる。そして、移動ロボットは、例えば、誘導する人物が移動を停止した位置や予め定めた時間周期になったときの位置において、無線環境検出手段によって、無線環境データを検出し、検出した無線環境データに基づいて算出される総合無線環境データからなる総合無線環境マップを作成する。
これによって、総合無線環境マップを作成するために、移動ロボットを操作する人物(操作者)は、無線環境データを検出する地点を逐一入力する必要がなく、操作者が移動ロボットを移動領域内を適宜誘導して移動させるだけで総合無線環境マップを作成することができる。
【0013】
請求項5に記載の移動ロボットは、請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の移動ロボットにおいて、前記無線環境検出手段は、所定のタイミングで反復して前記無線環境データを検出すると共に、この反復して検出される無線環境データに基づいて、前記総合無線環境データ算出手段によって、前記総合無線環境データを算出し、前記算出された総合無線環境データと、当該無線環境データを検出したときの位置に対応付けられて前記地図データに記録された前記総合無線環境データとを比較し、両者に所定値以上の差がある状態が所定回数以上連続した場合に、前記地図データに記録された前記総合無線環境データを、直近に算出された総合無線環境データに書き換えることによって、前記総合無線環境マップを更新する総合無線環境マップ更新手段を、さらに備えて構成した。
【0014】
かかる構成によれば、移動ロボットは、例えば、物品運搬などのタスク実行中にも、無線環境検出手段によって、所定のタイミングで反復して無線環境データを検出し、検出した無線環境データに基づいて、総合無線環境データ算出手段によって、総合無線環境データを算出する。すなわち、移動ロボットは、常時、反復して総合無線環境データを取得している。そして、総合無線環境マップ更新手段によって、反復して取得する総合無線環境データと、その総合無線環境データを算出する基になった無線環境データを検出した位置に対応付けられて、記憶手段に記憶された地図データに総合無線環境マップとして記録されている総合無線環境データとを比較する。すなわち、今現在の総合無線環境データと、地図データに記録されている過去の総合無線環境データとを比較し、今現在のデータが、地図データに記録されているデータよりも所定値以上(例えば、10%以上)異なる状態が、所定回数以上(例えば、3回以上)連続する場合は、例えば、パーティションが新たに設置されたなどの、恒常的な無線環境の変化が生じたものとみなし、直近に取得した総合無線環境データ(例えば、3回連続した場合は、2回目に取得したデータ)を、その位置における総合無線環境データとして、地図データに上書きして、総合無線環境マップを更新する。
これによって、移動ロボットは、通常のタスクを実行することで、総合無線環境マップのメンテナンスを行うことができる。
【0015】
請求項6に記載の移動ロボットは、請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の移動ロボットにおいて、前記無線環境検出手段によって無線環境データを検出した自己の位置において、撮像手段で撮影された自己の周囲の画像を、前記無線環境データを検出した位置に対応付けて、前記記憶手段に保存する周囲画像取得手段を、さらに備えて構成した。
【0016】
かかる構成によれば、移動ロボットは、周囲画像取得手段によって、例えば、カメラなどの撮像手段を用いて、無線環境検出手段によって無線環境データを検出した位置において、周囲の画像を取得して、取得した画像データを、取得した位置に対応付けて記憶手段に保存する。
ここで、周囲の画像とは、水平方向に関して360°の全方位の画像であり、例えば、水平方向に90°の画角で撮影できるカメラを用いた場合は、カメラの撮影方向を90°ずつ回転しながら撮影することにより、4枚の画像データとして取得することができる。
【0017】
これによって、例えば、無線環境データが総合無線環境マップに記録されたデータに比べて大きな変化があった場合には、操作者は、記憶手段に保存された、その地点での移動ロボットの周囲の画像データを参照して、例えば、その変化の原因や対策について検討する際の有用な情報として利用することができる。
【0018】
請求項7に記載の移動ロボットは、管理用コンピュータは複数の無線基地局と接続され、前記複数の無線基地局の何れか一つを介して前記管理用コンピュータとの間で無線通信する請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載の移動ロボットであって、前記総合無線環境マップ作成手段によって前記複数の無線基地局毎に作成された複数の総合無線環境マップに基づいて、最良の総合無線環境データを有する無線基地局を、前記記憶手段に記憶された地図データに、位置に対応付けて書き込むことにより最適無線基地局マップを作成する最適無線基地局マップ作成手段を備えて構成した。
【0019】
かかる構成によれば、移動領域内に複数の無線基地局が設置されている場合において、移動ロボットは、総合無線環境マップ作成手段によって、複数の無線基地局のそれぞれに対して、総合無線環境マップを作成する。次に、最適無線基地局マップ作成手段によって、総合無線環境マップ作成手段で作成した複数の総合無線環境マップに基づいて、例えば、各無線環境データの検出位置毎に総合無線環境データを比較し、総合無線環境が最も良好な無線基地局を、当該位置における最適無線基地局と判定し、判定した最適無線基地局を、記憶手段に記憶された地図データに、当該位置に対応付けて書き込むことにより、最適無線基地局マップを作成する。
これによって、移動ロボットは、最適無線基地局マップを利用して、移動領域内の各位置において最も良好な無線環境となる無線基地局を判断することができるようになる。
【0020】
請求項8に記載の移動ロボットは、請求項7に記載の移動ロボットにおいて、前記無線環境検出手段によって一の無線基地局に関する前記無線環境データを検出できなかった場合に、前記無線通信手段によって、前記一の無線基地局とは異なる他の無線基地局を介して、前記一の無線基地局に異常があることを前記管理用コンピュータに通知する無線基地局異常通知手段を、さらに備えて構成した。
【0021】
かかる構成によれば、移動領域内に複数の無線基地局が設置されている場合において、移動ロボットは、無線基地局異常通知手段によって、無線環境検出手段による接続中の(又は接続対象として選択した)無線基地局との無線環境データの検出が正常に検出できなかった場合に、当該無線基地局に異常があると判断し、他の無線基地局と接続して、先の無線基地局に異常があることを管理用コンピュータに通知する。
これによって、無線基地局の異常を迅速に管理用コンピュータに知らせることができる。
【0022】
請求項9に記載の移動ロボットは、請求項1乃至請求項8の何れか一項に記載の移動ロボットにおいて、前記総合無線環境マップ作成手段によって作成された総合無線環境マップを、前記無線通信手段によって、前記管理用コンピュータに送信するように構成した。
【0023】
かかる構成によれば、移動ロボットは、作成した総合無線環境マップを、無線通信手段によって、管理用コンピュータに送信する。
これによって、管理用コンピュータは、受信した総合無線環境マップを、例えば、記憶装置に保存することにより、移動ロボットは、例えば、再起動などによって、記憶手段に記憶した総合無線環境マップが消失した場合において、移動領域の総合無線環境マップを再度作成することなく、管理用コンピュータに保存されている総合無線環境マップを記憶手段にダウンロードして利用することができるようになる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、移動ロボットは、無線基地局と通信する無線環境の状態を適確に判断することができ、無線強度からは予期できない通信切断を未然に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して詳細に説明する。説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0026】
<移動ロボット制御システムの構成>
(システムの構成)
はじめに、本発明の実施形態に係る移動ロボット制御システムAについて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る移動ロボット制御システムを示すシステム構成図である。
図1に示すように、移動ロボット制御システムAは、タスクを実行する移動領域に配置された1台以上(本実施形態では1台)の移動ロボットR(以下、「ロボット」と適宜略称する)と、これらロボットRと無線通信によって接続された1台以上の無線親機(無線基地局)1(本実施形態では1A,1Bの2台)と、無線親機1にネットワーク4を介して接続された管理用コンピュータ3と、管理用コンピュータ3にネットワーク4を介して接続された記憶部5及び端末7と、を備えている。
【0027】
ロボット(移動ロボット)Rは、タスクを実行する移動領域(移動範囲)内に配置されており、この移動領域内において自律移動を行い、タスク実行命令信号に基づいて、例えば、物品運搬や訪問者の道案内などのタスクを実行するものである。なお、この移動領域内には、移動領域の全域をカバーできるように、適宜な場所に無線親機1が設置されている。
【0028】
無線親機(無線基地局)1(1A,1B)は、管理用コンピュータ3が、無線通信によってロボットRと通信するための通信手段であり、例えば、IEEE802.11b、IEEE802.11g又はIEEE802.11aなどに準拠する規格の無線LANの基地局を用いることができる。また、ブルートゥース(登録商標)などの他の規格の無線通信装置を用いることもできる。
移動領域内に複数の無線親機1が設置されている場合は、ロボットRは、適宜に無線環境が良好な状態の無線親機1に接続を切り替えて、管理用コンピュータ3と通信を行うようになっている。
【0029】
管理用コンピュータ3は、後記する端末7から入力されるタスクデータに基づき、ロボットRにタスクを実行させるため、このタスクの内容を含むタスク実行命令信号を生成し、ロボットRに出力する。このタスクデータは、ロボットRに実行させるタスクに関するデータであり、例えば、運搬する物品の依頼元や配達先などに関する情報、道案内する訪問者の訪問先や訪問者に関する情報などを含んでいる。
また、管理用コンピュータ3は、記憶部5に対する入出力を管理し、記憶部5に記憶されている地図データや総合無線環境マップをロボットRに送信すると共に、ロボットRから送信された総合無線環境マップや画像データを地図データにリンクして記憶部5に保存する。
管理用コンピュータ3としては、例えば、汎用のPC(Personal Computer)を用いることができる。
【0030】
記憶部5は、ロボットRがタスクを実行するために移動する移動領域に関する地図データ、地図データにリンクした総合無線環境マップ、画像データなどを記憶するための記憶装置である。地図データは、例えば、建物の各階毎のフロアマップのように、移動領域に対応して予め記憶部5に登録されている。記憶部5に対する入出力(書き込み・読み出し)は、管理用コンピュータ3によって管理される。
記憶部5としては、例えば、ハードディスク装置、光ディスク装置、半導体メモリ装置などを用いることができる。
【0031】
端末7は、管理用コンピュータ3にタスクデータを入力するための入力装置であり、ノート型コンピュータ、PHSなどを用いることができる。また、端末7は、ロボットRから送信された総合無線環境マップを視認しやすい形式に変換して表示したり、画像データを表示したりするための表示装置でもある。
【0032】
なお、管理用コンピュータ3と、記憶部5と、端末7と、無線親機1とは、ネットワーク4を介して接続されるのではなく、そのすべて又は一部が一体化された構成でもよい。
【0033】
次に、図2を参照して、本実施形態に係るロボットRが移動中に障害物を検知し、また移動領域内の適所に設置された位置を確認するためのマークを検知する様子について説明する。
図2は、本実施形態に係るロボットの移動中の様子を示した斜視図であり、(a)は通常の移動領域を移動している状態を、(b)はマークの設置領域を移動している状態をそれぞれ示した図である。
【0034】
図2に示すように、このロボットRは、あるタスク(例えば書類を届ける等)を実行するためにオフィスや廊下などの移動領域内を自律移動する場合に、レーザスリット光または赤外線を照射して、路面状態あるいはマークM等を探索するようになっている。
すなわち、ロボットRは、自己が移動領域内のどこを移動しているかを把握し、通常の移動領域内にいる場合はレーザスリット光(以下、「スリット光」と適宜略称する。)を路面に照射して路面の段差、うねり、障害物の有無などを検出し、マーク設置領域内にいる場合は、赤外線を路面に照射してマークMを検出し、自己位置の確認・補正などを行うようになっている。
【0035】
ここで、マークMは、例えば赤外線を再帰的に反射する反射材料で構成された部材であり、移動領域内の所定箇所(例えば扉の前など)に設置されている。マークMは移動領域内の景観を損なわないように例えば透明にしたり、極小にしたりするのが好適である。また、本実施形態においては、図2に示すように、3つの反射材料で1つのマークMとし、2つのマークMを1組として路面に設置されている。それぞれのマークMは位置データを有しており、当該位置データは地図データに含まれる形で記憶部5及びロボットR内の後記する記憶部190に記憶されている。
【0036】
なお、本実施形態にかかるロボットRで観測するマークMは、3点を1つのマークMとして2つ1組で使用したが、これに限られるものではなく、適宜変更可能である。例えば、路面に連続線状に設置してもよいし、点線状に設置してもよい。
【0037】
(ロボットの外観)
次に、本発明の実施形態に係るロボットRの外観について説明する。以下の説明において、ロボットRの前後方向にX軸、左右方向にY軸、上下方向にZ軸をとる(図3参照)。
本発明の実施形態に係るロボットRは、自律移動型の2足移動ロボットである。このロボットRは、管理用コンピュータ3から送信された実行命令信号に基づき、タスクを実行するものである。
【0038】
図3は、図1及び図2のロボットの外観を模式的に示す側面図である。図3に示すように、ロボットRは、人間と同じように2本の脚部R1(1本のみ図示)により起立、移動(歩行、走行など)し、胴部R2、2本の腕部R3(1本のみ図示)および頭部R4を備え、自律して移動する。また、ロボットRは、これら脚部R1、胴部R2、腕部R3および頭部R4の動作を制御する制御装置搭載部R5を背負う形で背中(胴部R2の後部)に備えている。
【0039】
(ロボットの駆動構造)
続いて、ロボットRの駆動構造について説明する。図4は、図3のロボットの駆動構造を模式的に示す斜視図である。なお、図4における関節部は、当該関節部を駆動する電動モータにより示されている。
【0040】
(脚部R1)
図4に示すように、左右それぞれの脚部R1は、6個の関節部11R(L)〜16R(L)を備えている。左右12個の関節は、股部(脚部R1と胴部R2との連結部分)の脚部回旋用(Z軸まわり)の股関節部11R,11L(右側をR、左側をLとする。また、R,Lを付さない場合もある。以下同じ。)、股部のピッチ軸(Y軸)まわりの股関節部12R,12L、股部のロール軸(X軸)まわりの股関節部13R,13L、膝部のピッチ軸(Y軸)まわりの膝関節部14R,14L、足首のピッチ軸(Y軸)まわりの足首関節部15R,15L、および、足首のロール軸(X軸)まわりの足首関節部16R,16Lから構成されている。そして、脚部R1の下には足部17R,17Lが取り付けられている。
【0041】
すなわち、脚部R1は、股関節部11R(L),12R(L),13R(L)、膝関節部14R(L)および足首関節部15R(L),16R(L)を備えている。股関節部11R(L)〜13R(L)と膝関節部14R(L)とは大腿リンク51R,51Lで、膝関節部14R(L)と足首関節部15R(L),16R(L)とは下腿リンク52R,52Lで連結されている。
【0042】
(胴部R2)
図4に示すように、胴部R2は、ロボットRの基体部分であり、脚部R1、腕部R3および頭部R4と連結されている。すなわち、胴部R2(上体リンク53)は、股関節部11R(L)〜13R(L)を介して脚部R1と連結されている。また、胴部R2は、後記する肩関節部31R(L)〜33R(L)を介して腕部R3と連結されている。また、胴部R2は、後記する首関節部41,42を介して頭部R4と連結されている。
また、胴部R2は、上体回旋用(Z軸まわり)の関節部21を備えている。
【0043】
(腕部R3)
図4に示すように、左右それぞれの腕部R3は、7個の関節部31R(L)〜37R(L)を備えている。左右14個の関節部は、肩部(腕部R3と胴部R2との連結部分)のピッチ軸(Y軸)まわりの肩関節部31R,31L、肩部のロール軸(X軸)まわりの肩関節部32R,32L、腕部回旋用(Z軸まわり)の肩関節部33R,33L、肘部のピッチ軸(Y軸)まわりの肘関節部34R,34L、手首回旋用(Z軸まわり)の腕関節部35R,35L、手首のピッチ軸(Y軸)まわりの手首関節部36R,36L、および手首のロール軸(X軸)まわりの手首関節部37R,37Lから構成されている。そして、腕部R3の先端には把持部(ハンド)71R,71Lが取り付けられている。
【0044】
すなわち、腕部R3は、肩関節部31R(L),32R(L),33R(L)、肘関節部34R(L)、腕関節部35R(L)および手首関節部36R(L),37R(L)を備えている。肩関節部31R(L)〜33R(L)と肘関節部34R(L)とは上腕リンク54R(L)で、肘関節部34R(L)と手首関節部36R(L),37R(L)とは前腕リンク55R(L)で連結されている。
【0045】
(頭部R4)
図4に示すように、頭部R4は、首部(頭部R4と胴部R2との連結部分)のY軸まわりの首関節部41と、首部のZ軸まわりの首関節部42と、を備えている。首関節部41は頭部R4のチルト角を設定するためのものであり、首関節部42は頭部R4のパン角を設定するためのものである。
【0046】
このような構成により、左右の脚部R1は合計12の自由度を与えられ、移動中に12個の関節部11R(L)〜16R(L)を適宜な角度で駆動することで、脚部R1に所望の動きを与えることができ、ロボットRが任意に3次元空間を移動することができる。また、左右の腕部R3は合計14の自由度を与えられ、14個の関節部31R(L)〜37R(L)を適宜な角度で駆動することで、ロボットRが所望の作業を行うことができる。
【0047】
また、足首関節部15R(L),16R(L)と足部17R(L)との間には、公知の6軸力センサ61R(L)が設けられている。6軸力センサ61R(L)は、床面からロボットRに作用する床反力の3方向成分Fx,Fy,Fzと、モーメントの3方向成分Mx,My,Mzと、を検出する。
【0048】
また、手首関節部36R(L),37R(L)と把持部71R(L)との間には、公知の6軸力センサ(移動検出手段)62R(L)が設けられている。6軸力センサ62R(L)は、ロボットRの把持部71R(L)に作用する反力の3方向成分Fx,Fy,Fzと、モーメントの3方向成分Mx,My,Mzと、を検出する。
【0049】
また、胴部R2には、傾斜センサ63が設けられている。傾斜センサ63は、胴部R2の重力軸(Z軸)に対する傾きと、その角速度と、を検出する。
また、各関節部の電動モータは、その出力を減速・増力する減速機(図示せず)を介して前記した大腿リンク51R(L)、下腿リンク52R(L)などを相対変位させる。これら各関節部の角度は、関節角度検出手段(例えば、ロータリエンコーダ)によって検出される。
【0050】
制御装置搭載部R5は、後記する自律移動制御部150、無線通信部160、主制御部140、バッテリ(図示せず)などを収納している。各センサ61〜63などの検出データは、制御装置搭載部R5内の各制御部に送られる。また、各電動モータは、各制御部からの駆動指示信号により駆動される。
【0051】
なお、この2足移動制御についての詳細は、例えば、特許第3672102号公報に開示されている。また、本実施形態では、ロボットRは人型をした2足移動ロボットとしたが、本発明は、4足移動歩行、車輪による移動、無限軌道による移動など、他の移動手段を備えた移動ロボットであってもよく、人型に限定されるものでもない。
【0052】
(ロボットの構成)
図5は、本実施形態に係るロボットの構成を示したブロック図である。
図5に示すように、ロボットRは、前記した脚部R1、胴部R2、腕部R3、頭部R4に加えて、カメラC,C、スピーカS、マイクMC、画像処理部110、音声処理部120、主制御部140、自律移動制御部150、無線通信部160、及び周辺状態検知部170を有する。
さらに、ロボットRは、自己位置を認識するため自己位置認識手段として、方向を認識するジャイロセンサSR1や、座標を認識するGPS(Global Positioning System)受信器SR2を有している。
【0053】
[カメラ]
カメラ(撮像手段)C,Cは、映像をデジタルデータとして取り込むことができるものであり、例えばカラーCCD(Charge Coupled Device)カメラが使用される。カメラC,Cは、左右に平行に並んで配置され、撮影した画像は画像処理部110に出力される。このカメラC,Cと、スピーカS及びマイクMCは、いずれも頭部R4の内部に配設される。
【0054】
[画像処理部]
画像処理部110は、カメラC,Cが撮影した画像を処理して、撮影された画像からロボットRの周囲の状況を把握するため、周囲の障害物や人物の認識を行う部分である。この画像処理部110は、ステレオ処理部111a、移動体抽出部111b、及び顔認識部111cを含んで構成される。
ステレオ処理部111aは、左右のカメラC,Cが撮影した2枚の画像の一方を基準としてパターンマッチングを行い、左右の画像中の対応する各画素の視差を計算して視差画像を生成し、生成した視差画像及び元の画像を移動体抽出部111bに出力する。なお、この視差は、ロボットRから撮影された物体までの距離を表すものである。
【0055】
移動体抽出部111bは、ステレオ処理部111aから出力されたデータに基づき、撮影した画像中の移動体を抽出するものである。移動する物体(移動体)を抽出するのは、移動する物体は人物であると推定して、人物の認識をするためである。
移動体の抽出をするために、移動体抽出部111bは、過去の数フレーム(コマ)の画像を記憶しており、最も新しいフレーム(画像)と、過去のフレーム(画像)とを比較して、パターンマッチングを行い、各画素の移動量を計算し、移動量画像を生成する。そして、視差画像と、移動量画像とから、カメラC,Cから所定の距離範囲内で、移動量の多い画素がある場合に、人物があると推定し、その所定距離範囲のみの視差画像として、移動体を抽出し、顔認識部111cへ移動体の画像を出力する。
【0056】
顔認識部111cは、抽出した移動体から肌色の部分を抽出して、その大きさ、形状などから顔の位置を認識する。なお、同様にして、肌色の領域と、大きさ、形状などから手の位置も認識される。
認識された顔の位置は、ロボットRが移動するときの情報として、また、その人とのコミュニケーションを取るため、主制御部140に出力されると共に、無線通信部160に出力されて、無線親機1を介して、管理用コンピュータ3に送信される。
【0057】
[音声処理部]
音声処理部120は、音声合成部121aと、音声認識部121bとを有する。
音声合成部121aは、主制御部140が決定し、出力してきた発話行動の指令に基づき、文字情報から音声データを生成し、スピーカSに音声を出力する部分である。音声データの生成には、予め記憶している文字情報と音声データとの対応関係を利用する。
音声認識部121bは、マイクMCから音声データが入力され、予め記憶している音声データと文字情報との対応関係に基づき、音声データから文字情報を生成し、主制御部140に出力するものである。
【0058】
[自律移動制御部]
自律移動制御部150は、頭部制御部151d、腕部制御部151c、胴部制御部151b、脚部制御部151aを有する。
頭部制御部151dは、主制御部140の指示に従い頭部R4を駆動し、腕部制御部151cは、主制御部140の指示に従い腕部R3を駆動し、胴部制御部151bは、主制御部140の指示に従い胴部R2を駆動し、脚部制御部151aは、主制御部140の指示に従い脚部R1を駆動する。
また、ジャイロセンサSR1、及びGPS受信器SR2が検出したデータは、主制御部140に出力され、ロボットRの行動を決定するのに利用されると共に、主制御部140から無線通信部160を介して管理用コンピュータ3に送信される。
【0059】
[無線通信部]
無線通信部(無線通信手段)160は、管理用コンピュータ3とデータの送受信を行う通信装置であり、無線インタフェース部161と、プロトコル制御部162と、無線環境検出部163と、通信アンテナ160aとを備えている。
【0060】
図6を参照して、無線通信部160の詳細な構成について説明する。ここで、図6は、無線通信部の構成を示すブロック図である。
図6に示したように、無線通信部160は、無線インタフェース部161と、プロトコル制御部162と、無線環境検出部163と、通信アンテナ160aとを備え、さらに、無線環境検出部163は、無線強度検出部163aと、通信速度検出部163bと、エラー回数検出部163cと、再送回数検出部163dとを備えている。
【0061】
無線インタフェース部161は、通信アンテナ160aによって管理用コンピュータ3から無線親機1(図5参照)を介して送受信される無線波とデータとの物理変換を行う。無線インタフェース部161は、受信時には、通信アンテナ160aが受信した無線波からデータに変換し、プロトコル制御部162へ出力する。また、受信した無線波を無線環境検出部163の無線強度検出部163aに出力する。
また、送信時には、無線インタフェース部161は、プロトコル制御部162からデータを入力し、無線波に変換して通信アンテナ160aを介して、無線親機1(図5参照)に送信する。
【0062】
プロトコル制御部162は、例えば、IEEE802.3 等のLAN規定に基づき、管理用コンピュータ3とロボットRの主制御部140との間のデータの通信を行うためのデータフレーミングや折衝を行う。プロトコル制御部162は、受信時には、無線インタフェース部161によって変換された管理用コンピュータ3からの送信データから、ロボットRに割り当てられたアドレス宛のデータを選別し、例えば、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)プロトコル等の所定の通信プロトコル方式に基づき、TCP/IPパケット等のフレームからデータを抽出して主制御部140に出力する。
送信時には、プロトコル制御部162は、主制御部140から入力されたデータを、前記した所定の通信プロトコル方式に基づき、TCP/IPパケット等のフレームを生成して無線インタフェース部161に出力する。
また、プロトコル制御部162における送受信時の通信速度、受信時のエラー回数及び送信時の再送回数が、それぞれ無線環境検出部163の通信速度検出部163b、エラー回数検出部163c及び再送回数検出部163dによって測定される。
【0063】
無線環境検出部(無線環境検出手段)163は、無線強度検出部163aによって、無線インタフェース部161で変換する無線波の無線強度(電波強度)及びノイズフロアを検出すると共に、通信速度検出部163bによって、無線親機1(図5参照)との間の通信速度を検出する。また、エラー回数検出部163cによって、受信時のプロトコル制御部162におけるエラー回数を検出し、再送回数検出部163dによって、送信時のプロトコル制御部162におけるデータの再送回数を検出する。検出(測定)された無線強度、ノイズフロア、通信速度、エラー回数及び再送回数からなる無線環境データは、主制御部140に出力される。
【0064】
[主制御部]
主制御部140は、画像処理部110、音声処理部120、自律移動制御部150、無線通信部160、周辺状態検知部170、記憶部190、ジャイロセンサSR1、GPS受信器SR2などのロボットRを構成する各部を統括的に制御する制御手段であり、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などからなるコンピュータ装置によって構成される。
本実施形態では、主制御部140は、総合無線環境データ算出部141と、総合無線環境マップ作成部142と、最適無線親機マップ作成部143と、総合無線環境マップ更新部144と、無線親機異常通知部145と、周囲画像取得部146と、を有する。
【0065】
総合無線環境データ算出部(総合無線環境データ算出手段)141は、無線環境検出部163によって検出された無線環境データに基づいて、後記する総合無線環境データを算出する。算出した総合無線環境データは、総合無線環境マップ作成部142に出力する。
【0066】
総合無線環境マップ作成部(総合無線環境マップ作成手段)142は、総合無線環境データ算出部141によって算出された総合無線環境データを、算出の基となった無線環境データを検出したときのロボットRの位置に対応付けて、記憶部190に記憶された地図データに書き込んで記録することにより、総合無線環境マップを作成する。
【0067】
総合無線環境マップを構成するデータは、例えば、ロボットRの識別子、無線親機1の識別子、測定位置の座標、測定時刻、及び総合無線環境データから構成される。さらに、総合無線環境データを算出する基になった無線環境データを含めて構成してもよく、過去に測定された無線環境データを測定履歴として保存するようにしてもよい。
【0068】
また、総合無線環境マップは、地図データ(データベース)に直接書き込んで構成してもよいし、当該地図データとリンクする他のデータベース(例えば、総合無線環境マップデータベース)を構築して記録するようにしてもよい。
あるいは、総合無線環境マップなどを構成するデータに、例えば、フロアマップ、総合無線環境マップ、最適無線親機マップなどのマップの属性を示す識別子を加えておき、データベースから所望の属性のマップを必要に応じて抽出できるようにしてもよい。
【0069】
最適無線親機マップ作成部(最適無線基地局マップ作成手段)143は、複数の無線親機1(図5参照)が設置された移動領域に対して、総合無線環境マップ作成部142によって作成された、それぞれの無線親機1に対する総合無線環境マップに基づいて、後記する最適無線親機マップ(最適無線基地局マップ)を作成して記憶部190に記録する。
【0070】
最適無線親機マップを構成するデータは、例えば、ロボットRの識別子、位置座標、更新時刻、及び最適無線親機の識別子から構成される。
【0071】
また、最適無線親機マップは、総合無線環境マップと同様に、地図データ(データベース)に直接書き込んで構成してもよいし、当該地図データとリンクする他のデータベース(例えば、最適無線親機マップデータベース)を構築して記録するようにしてもよい。また、他のデータベースとして、例えば、最適無線親機マップと総合無線環境マップとを一体化したデータベースを構築するようにしてもよい。
【0072】
総合無線環境マップ更新部(総合無線環境マップ更新手段)144は、総合無線環境マップ作成部142によって作成され、記憶部190に記憶された総合無線環境マップに記録された総合無線環境データと、ロボットRがタスク実行中に新しく取得した総合無線環境データとを比較して、必要に応じて、地図データに記録した総合無線環境データ等を更新して、総合無線環境マップのメンテナンスを行う。
また、総合無線環境マップ更新部144は、複数の無線親機1が設置された領域に関する総合無線環境マップのメンテナンスを行った際には、続けて関連する最適無線親機マップのメンテナンスを行う。
【0073】
無線親機異常通知部(無線基地局異常通知手段)145は、無線環境検出部163によって無線環境データが正常に検出(測定)されたかどうかの判定を行い、正常に検出されなかった場合は、無線通信部160を用いて、管理用コンピュータ3に、無線親機1に異常があることを通知する。
また、無線親機異常通知部145は、総合無線環境マップ更新部144によって、無線親機1の無線環境の状態が悪化していることを検知した場合は、無線通信部160を用いて、管理用コンピュータ3に、当該無線親機1の通信環境が悪化していることを通知すると共に、悪化を検知した地点で取得した無線環境データ、画像データなどを送信する。
【0074】
周囲画像取得部(周囲画像取得手段)146は、無線環境データを検出した位置において、カメラCを用いて周囲の画像を取得し、取得した画像を、その位置に対応付けて記憶部190に保存する。周囲画像取得部146は、周囲画像を取得する際には、脚部制御部151aを介して脚部R1を駆動し、ロボットRの向きを変えることによって、カメラCによる撮影方向を変え、周囲360°の画像を取得する。
【0075】
ここで、図7を参照して、総合無線環境データについて説明する。図7は、総合無線環境データを説明するための図である。
図7に示したように、本実施形態では、総合的に無線環境の良好度を評価するために、無線強度と、ノイズフロアと、エラー回数(通信エラー回数)と、再送回数(データ再送回数)と、通信速度とを指標である無線環境データとして用い、それぞれの無線環境データに重み付けして、総合無線環境データを算出する。
まず、無線環境を最もよく示すデータとして、無線強度に80%の重み付けをする。本実施形態では、無線強度データをそのまま用いるのではなく、ノイズフロアとの比を用いることとした。すなわち、無線親機1(図5参照)から送信された無線波をロボットRが受信した無線強度と、ノイズフロアとを、それぞれの強度に応じて、1〜100%に数値化する。但し、100%が最も強い強度を示す。そして、(無線強度/ノイズフロア)>1のときは、(無線強度/ノイズフロア)×0.8 を総合無線環境データへの寄与とする。例えば、無線強度が100%で、ノイズフロアが1%の場合が、最も無線環境が良好なときであり、100/1×0.8=80(%)である。
また、(無線強度/ノイズフロア)<1のときは、ノイズレベルが無線強度(信号レベル)よりも大きく、無線環境が極めて悪い状況であるとして、総合無線環境データへの寄与は“0”(%)とする。
【0076】
エラー回数は、重み付けを5%とし、1秒当たりのエラー回数を最大1028回として、(1−(エラー回数/1028))×5(%)を総合無線環境データへの寄与とする。すなわち、エラー回数が0回に近いほど、寄与は5%に近くなり(無線環境が良好)、エラー回数が1028回に近いほど、寄与は0%に近くなる(無線環境が悪い)。
【0077】
再送回数は、エラー回数と同様に、1秒当たりの再送回数を最大1028回として、(1−(再送回数/1028))×5(%)を総合無線環境データへの寄与とする。すなわち、再送回数が0回に近いほど、寄与は5%に近くなり(無線環境が良好)、再送回数が1028回に近いほど、寄与は0%に近くなる(無線環境が悪い)。
【0078】
通信速度は、重み付けを10%とし、用いる無線LANアダプタで選択された通信速度によって、予め決めた換算表を用いて、総合無線環境データへの寄与を算出する。
図7の項目が「通信速度」の欄には、数値範囲が{1,2,5.5,11}[Mbps]の場合と、数値範囲が{6,9,12,18,24,36,48,54}[Mbps]の換算表が定められている。前者は、IEEE802.11bに準拠する規格の無線LANアダプタを用いた場合の換算表であり、後者は、IEEE802.11g又はIEEE802.11aに準拠する規格の無線LANアダプタを用いた場合の換算表である。
速い通信速度で通信を確立することができるほど、良好な無線環境であり、高い換算値が割り当てられている。
なお、他の規格や方式の通信手段を用いる場合は、適宜に通信速度に対応した換算式を決めるようにすればよい。
【0079】
以上のようにして換算した4つの無線環境データを加算することで、100%から0%の値に規格化された総合無線環境データが算出される。
このように、無線強度以外の無線環境に関連するデータを含めた無線環境データに、重み付けして算出した総合無線環境データを用いることにより、より適切に無線環境を評価することができる。
【0080】
無線強度のみで無線環境の状態を評価した場合には、特に強度が低い領域においては通信が確立できるかどうかを適確に判断することは難しく、確実に通信可能な領域であると判断するためには、十分な余裕を持った無線強度レベルを閾値とする必要がある。このため、移動領域内の全域を通信可能な領域と判断できるようにするためには、無線親機1(図5参照)の無線波の出力を高くするか、図20(a)の下段の図のように、あるいは更に数多くの無線親機1を移動領域内に設置する必要が生じる。
【0081】
そこで、本実施形態のように、他の無線環境データを加味することにより、無線環境の状態の評価をより高精度に行うことができ、前記したように無線親機1(図5参照)の無線波の出力を高くしたり、設置台数を増加したりする必要がなくなる。
特に、エラー回数や再送回数は、通信が確立した状態で、そのときの無線環境の状態を評価することができるので、通信が確立できなくなる状態を適確に判断することができる。
【0082】
[周辺状態検知部]
図5に戻って説明を続ける。
周辺状態検知部(自己位置認識手段)170は、図5に示すように、スリット光照射手段であるレーザ装置171と、赤外線照射手段である赤外線LED(Light Emitting Diode)172と、探索域を撮像する2つの赤外線カメラ173、173と、これらを制御するセンサ制御部180と、を有する。
周辺状態検知部170は、レーザ装置171または赤外線LED172から探索域に向かってスリット光あるいは赤外線を照射するとともに当該探索域を赤外線カメラ173で撮像し、これらをセンサ制御部180で制御することにより、ロボットRの周辺状態を検知する部分である。すなわち、周辺状態検知部170は、従来の路面検知装置および位置確認装置に相当するものであり、赤外線カメラ173を共通にすることで省スペース化が図られている。
周辺状態検知部170は、主制御部140と接続されており、ジャイロセンサSR1やGPS受信器SR2によって認識した自己位置データを取得可能になっている。
【0083】
図8は、本実施形態に係るロボットの胴部を示した透視図である。
図8に示すように、本実施形態においては、2つの赤外線カメラ173は、胴部R2内の前面の腰の高さに左右に並んで配置されている。また、レーザ装置171は、2つの赤外線カメラ173、173の中間に配置されている。また、赤外線LED172は、一方の(図8においてはロボットRの左側の)赤外線カメラ173の周囲に配置されている。
なお、レーザ装置171、赤外線LED172および赤外線カメラ173を胴部R2の前面の腰の高さに設置すると、他の部位(例えば頭部R4や脚部R1など)に取り付けた場合に比してロボットRの揺れの影響が小さくなるとともに、腕部R3や脚部R1によって撮像範囲を遮られることが少ないというメリットがある。
【0084】
[レーザ装置]
レーザ装置171は例えば赤外線レーザ光をスリット状に照射する装置である。レーザ装置171は、赤外線レーザ光の照射方向を変化させるためのアクチュエータ(図示せず)に連結されており、探索域である路面に対してスリット光を放射状に照射できるようになっている。スリット光が対象物(例えば路面)にあたると路面にはレーザ輝線が描かれる。
レーザ装置171は後記するセンサ制御部180(切換判定部181)に接続されており、センサ制御部180の命令に基づいてスリット光を照射したり停止したりする。
【0085】
[赤外線LED]
赤外線LED172は探索域に向けて赤外線を照射する装置であり、本実施形態においては図8に示すようにロボットRの左側の赤外線カメラ173の周りを囲むように複数の赤外線LED172、172・・・が設置されている。赤外線LED172から照射された赤外線は路面に設置された再帰性材料で製造されたマークMによって再帰的に反射される。
赤外線LED172は後記するセンサ制御部180(切換判定部181)に接続されており、センサ制御部180の命令に基づいて赤外線を照射したり停止したりする。
【0086】
[赤外線カメラ]
撮像手段たる赤外線カメラ173は、撮像した画像をデジタルデータとして取り込むことができるものであり、例えばCCD赤外線カメラが使用される。赤外線カメラ173,173は、図8に示すように、胴部R2内の前面の腰の高さに左右に並んで配置されている。赤外線カメラ173で撮影した画像は後記するセンサ制御部180に出力される。
【0087】
赤外線カメラ173で撮像した画像のうち、スリット光が照射された探索域を撮像した画像(以下、「スリット光画像」という。)にはレーザ輝線が撮像される。このレーザ輝線を検出していわゆる光切断法の原理を用いることにより対象物までの距離が計算される。なお、スリット光画像は、左右の赤外線カメラ173、173で撮像される。これにより、路面の3次元形状を詳細に把握することができる。
【0088】
一方、赤外線カメラ173で撮像した画像のうち、赤外線が照射された探索域を撮像した画像(以下、「赤外線画像」という。)にはマークMが撮像される。赤外線カメラ173は、図8に示すように、ロボットRの胴部R2の腰の高さに所定角度で固定されているため、赤外線画像上のどの位置にマークMが写っているかを検出することで、マークMと赤外線カメラ173との相対的な位置関係、ひいてはマークMとロボットRとの相対的な位置関係を認識することができる。そのため、赤外線画像は、2つの赤外線カメラ173、173で撮像する必要がなく、本実施形態においてはロボットRの左側の赤外線カメラ173のみで撮像される。
【0089】
[センサ制御部]
次に、センサ制御部180について図9を参照してさらに詳しく説明する。図9は、周辺状態検知部の構成を示すブロック図である。
センサ制御部180は、図9に示すように、切換判定部181と、路面検出部182と、マーク検出部183と、自己位置計算部184と、自己位置補正部185と、を有する。
【0090】
また、センサ制御部180は、主制御部140を介して、後記する記憶部190に記憶されている地図データを取得できるようになっている。記憶部190から取得する地図データは、ロボットRが移動する移動領域の地図データであり、移動領域内の特定の場所に設置されたマークMの位置データと、当該位置データに所定の幅(範囲)を持たせたマークMのマーク設置領域に関するデータ(以下、「マーク設置領域データ」と適宜略称する。)と、を含んでいる。
取得した地図データは、切換判定部181および自己位置計算部184に入力される。
【0091】
[切換判定部]
切換判定部181は、主制御部140を介して記憶部190から読み出した地図データに含まれるマークMのマーク設置領域データと、主制御部140を介してジャイロセンサSR1又はGPS受信器SR2から取得した自己位置データとを比較する部分である。また、切換判定部181はレーザ装置171および赤外線LED172と接続されており、それぞれに作動命令または停止命令を出力可能になっている。
【0092】
マーク設置領域データと自己位置データとを比較した結果、自己位置がマークMのマーク設置領域外であると判定された場合には、切換判定部181はレーザ装置171に対して作動命令を出力するとともに、赤外線LED172に対して停止命令を出力するようになっている。一方、自己位置がマークMのマーク設置領域内であると判定された場合には、切換判定部181はレーザ装置171に対して停止命令を出力するとともに、赤外線LED172に対して作動命令を出力するようになっている。
【0093】
[路面検出部]
路面検出部182は、赤外線カメラ173で撮像したスリット光画像を解析して路面状態を検出する部分である。具体的には、例えばいわゆる光切断法を利用して赤外線カメラ173とスリット光が照射された路面との距離を求めることができる。スリット光はロボットRの移動方向にある路面に対して放射状に照射されることから、結果的に、ロボットRは移動先の路面の3次元形状を認識することができる。
路面検出部182で検出された路面状態の情報は主制御部140に出力される。
【0094】
[マーク検出部]
マーク検出部183は、赤外線カメラ173で撮像した赤外線画像を解析してマークMを検出する部分である。
マーク検出部183は、例えばバンドパスフィルタなどを備えており、赤外線LED172の中心波長周辺の光線を選択的に観測できるようになっている。これにより不要な波長域の光線はカットされ、可視光などによる外乱に強い装置にすることができる。
また、マーク検出部183は、1つのマークMを構成する3点間(図1参照)の相互距離と2つのマークMの中心間の距離(3点の中心同士の間隔)とを計測し、この2種類の距離が設定値付近であればマークMと認識するようになっている。これにより、マークM以外の赤外線反射物による外乱に強い装置とすることができる。
【0095】
[自己位置計算部]
自己位置計算部184は、赤外線画像に撮像されたマークMの位置(座標)からマークMとロボットRとの相対的な位置関係を計算する部分である。
赤外線カメラ173は、ロボットRの腰の辺りの高さに所定角度で固定されていることから、マークMが赤外線画像上のどの位置、換言すれば、どの画素に写っているかを解析することによって、ロボットRとマークMとの相対的な位置関係を計算することができる。また、マークMは2つを1組としていることから、ロボットRがマークM同士を結んだ直線に対してどれだけ傾いているかを計算することができる。すなわち、自己位置計算部184は、地図データから取得したマークMの座標とマークMとロボットRとの相対的な位置関係とに基づいてロボットRの正確な自己位置を計算することができる。
自己位置計算部184によって計算されたロボットRの自己位置は自己位置補正部185に出力される。
【0096】
[自己位置補正部]
自己位置補正部185は、マーク検出部183で検出したマークMの位置データに基づいてロボットRの自己位置を補正する部分である。
本実施形態では、自己位置補正部185は、自己位置計算部184によって計算した自己位置とジャイロセンサSR1やGPS受信器SR2から取得した自己位置とを比較し、両者にずれがある場合には自己位置計算部184で計算した自己位置を正として補正するようになっている。
そして、補正されたロボットRの自己位置データは主制御部140に出力される。これにより、自律移動制御によって累積した移動誤差あるいは位置認識誤差が解消され、ロボットRを正確・確実に移動制御することができる。
【0097】
なお、自己位置補正部185における自己位置の補正は、上記の方法に限られるものではない。例えば、赤外線画像の所定位置にマークMが写るように自律移動制御部150に命令を出してロボットRの位置や向きを微調整するようにしてもよい。
【0098】
本実施形態では、自己位置認識手段として、ジャイロセンサSR1及びGPS受信器SR2を用い、さらに、マークMを検知することにより自己位置を補正する自己位置補正部185を備えて、精度よく自己位置を認識できるように構成したが、自己位置補正部を用いずに、ジャイロセンサSR1又は/及びGPS受信器SR2によって自己位置を認識するようにしてもよいし、マークMの検出によって自己位置を認識するようにしてもよい。さらに、他の方法によって自己位置を認識するようにしてもよい。
【0099】
[記憶部]
図5に戻って説明を続ける。
記憶部(記憶手段)190は、例えばRAMまたはハードディスク装置などの記憶装置から構成されており、ロボットRが移動する移動領域の地図データ、総合無線環境マップ、最適無線親機マップ、無線環境データ、無線環境データの測定位置からカメラCによって撮影した画像データ等を記憶する部分である。
地図データは、移動領域内の特定の場所に設置されたマークM(図2参照)のマーク設置領域データを含んでおり、記憶部190は、主制御部140を介して、記憶している地図データをセンサ制御部180の切換判定部181および自己位置計算部184(図9参照)に出力可能になっている。
また、記憶部190は、主制御部140の総合無線環境マップ作成部142によって、総合無線環境マップに総合無線環境データが記録され、最適無線親機マップ作成部143によって、最適無線親機マップの最適無線親機データが記録され、総合無線環境マップ更新部144によって、総合無線環境マップの総合無線環境データ及び最適無線親機マップの最適無線親機データが更新されると共に、周囲画像取得部146によって、無線環境データを測定した位置において、カメラCを用いて撮影された画像データが、地図データの当該位置に対応付けて記憶される。
【0100】
更に、記憶部190に記憶される総合無線環境マップ、画像データなどは、主制御部140及び無線通信部160を介して、管理用コンピュータ3に送信され、管理用コンピュータ3によって管理される記憶部5に記憶される。また、記憶部5に記憶された地図データ、総合無線環境マップ、最適無線親機マップを、必要に応じてロボットR内に設けられた記憶部190にダウンロードして記憶することもできるようになっている。
【0101】
<ロボットの制御方法>
続いて、ロボットRの制御方法について、適宜図面を参照して説明する。
(ロボットの自律移動制御)
まず、ロボットRがスリット光の照射と赤外線の照射とを切換えながら自律的に移動する際の制御について、図10を参照(適宜図2、図5及び図9参照)して説明する。図10は、ロボットの自律移動制御(スリット光照射と赤外線照射との切換制御)に関するフロー図である。
【0102】
(ステップS1)
はじめに、ロボットRは、自己位置認識手段であるジャイロセンサSR1またはGPS受信器SR2によって自己位置データを取得することにより自己位置を認識する。取得した自己位置データは主制御部140を介して切換判定部181に出力される。
【0103】
(ステップS2)
つぎに、切換判定部181は、主制御部140を介して記憶部190からマークMの位置データを含んだ地図データを取得する。
【0104】
(ステップS3)
そして、切換判定部181は、ロボットRの自己位置とマークMのマーク設置領域とを比較して、当該自己位置がマークMのマーク設置領域内か否かを判定する。具体的には、図2に示すように、マークMから所定距離内にある範囲をマークMのマーク設置領域に設定して予め記憶部190(及び記憶部5)に記憶させておき、ロボットRの自己位置の座標が当該マーク設置領域内に含まれるか否かを判定する。
【0105】
なお、切換判定部181における判定方法は、これに限られるものではなく、例えば自己位置とマークMとの距離を計算し、当該距離が閾値よりも小さい場合にはマーク設置領域内にいると判定するようにしてもよい。また、かかる判定においては、ロボットRの移動方向を考慮するようにしてもよい。すなわち、ロボットRがマークMから遠ざかる方向に移動している場合には、マークMを検出する必要がないので、マークMとロボットRの自己位置との距離が閾値以内であっても、マーク設置領域内にいないと判定するようにしてもよい。
【0106】
これにより、スリット光照射と赤外線照射とを適切なタイミングで切り換えることができる。そのため、赤外線カメラ173を共通化して省スペース化を図ることができるとともに、無駄な赤外線照射を行わないことで消費電力を低減することができる。
【0107】
(ステップS4)
切換判定部181によって自己位置がマークMのマーク設置領域内ではない(ステップS3でNo)と判定された場合には、切換判定部181はレーザ装置171に作動命令を出力するとともに赤外線LED172に停止命令を出力する。作動命令を受けたレーザ装置171は探索域たる路面に対して放射状にスリット光を照射する(図2(a)参照)。また、停止命令を受けた赤外線LED172は赤外線の照射を停止する。
【0108】
(ステップS5)
レーザ装置171によってスリット光が照射されると、赤外線カメラ173はスリット光が照射された探索域を撮像してスリット光画像を取得する。
撮像されたスリット光画像は路面検出部182に出力される。
【0109】
(ステップS6)
路面検出部182は、例えば光切断法を用いてスリット光画像を解析することにより、路面の3次元形状を取得する。すなわち、路面検出部182によって路面状態が検出される。
検出された路面の3次元データは主制御部140に出力される。
【0110】
(ステップS7)
主制御部140は、地図データとして記憶されている路面の形状と、路面検出部182から送られてくる路面の形状を比較する。比較した結果、両者が一致または許容差の範囲内であれば(ステップS7でNo)、主制御部140は障害物が存在しないと判断し、ステップS1に戻って再びロボットRの周辺状態をセンシングする。
【0111】
(ステップS8)
比較した結果、両者が不一致または許容差の範囲を超えている場合(ステップS7でYes)は、主制御部140は、探索域に障害物があると判定する。そして、主制御部140は、自律移動制御部150に対して障害物の回避を命令する。具体的には、例えば迂回路を通るように指示したり、腕部R3を用いて障害物を排除したりすることが考えられる。
【0112】
なお、障害物がない場合でも、例えば路面に段差があるときには、地図データではなくて、路面検出部182で検出した路面の3次元データに基づいてロボットRの脚部R1や腕部R3を制御することにより、より正確・確実にロボットRを移動制御することができる。
ステップS3に戻って説明をつづける。
【0113】
(ステップS9)
ステップS3において、自己位置がマークMのマーク設置領域内にある(ステップS3でYes)と判定された場合には、切換判定部181は赤外線LED172に作動命令を出力するとともにレーザ装置171に停止命令を出力する。作動命令を受けた赤外線LED172は探索域たる路面に対して赤外線を照射する(図2(b)参照)。また、停止命令を受けたレーザ装置171はスリット光の照射を停止する。
【0114】
(ステップS10)
赤外線LED172によって赤外線が照射されると、赤外線カメラ173は、赤外線が照射された探索域を撮像して赤外線画像を取得する。探索域には再帰性を備える反射材で作られたマークMが設置されているため、赤外線画像にはマークMが撮像される。
撮像された赤外線画像はマーク検出部183に出力される。
【0115】
(ステップS11)
マーク検出部183は、例えばパターンマッチングなどの画像処理を用いて赤外線画像を解析し、マークMを検出する。これにより、赤外線画像上のどこに(どの画素に)マークMが位置しているかを把握することができる。
【0116】
(ステップS12)
自己位置計算部184は、赤外線画像上のマークMの位置(以下、「画像上位置」という。)に基づいてロボットRの位置を計算する。
具体的には、自己位置計算部184は、赤外線画像から求めたマークMとロボットRとの相対距離および相対角度を用いて、記憶部190から読み出したマークMの位置データから加減算することによってロボットRの自己位置を計算する。なお、赤外線カメラ173の取付位置および取付角度は固定されていることから、マークMが赤外線画像上のどこに写るかによって、ロボットRとマークMとの相対的な位置関係を計算することができる。また、2つのマークMを一組として使用していることから、相対的な角度のずれを認識することができる。そのため、方向の認識のずれも補正することができる。
【0117】
ここで、ロボットRの移動に伴って赤外線カメラ173の高さや傾きが変化することがあるが、かかる場合には、例えば自律移動制御部150の制御データに基づいてロボットRの姿勢を把握し、基準姿勢からの赤外線カメラ173の変化量を相殺すればよい。かかる場合には、例えばロボットRのたわみモデルを用いて検出結果を補正することができる。
計算されたロボットRの自己位置データは自己位置補正部185に出力される。
【0118】
(ステップS13)
つぎに、自己位置補正部185は、ジャイロセンサSR1またはGPS受信器SR2から取得したロボットRの自己位置と、自己位置計算部184で計算したロボットRの自己位置とを比較する。
比較した結果、両者が一致または許容差の範囲内にある場合(ステップS13でNo)には、自己位置の補正を行わずにステップS1に戻って周辺状態の検知を続ける。
【0119】
(ステップS14)
比較した結果、両者が不一致または許容差の範囲外にある場合(ステップS13でYes)には、マークMに基づいて算出した自己位置を正として、ロボットRの自己位置を補正する。これにより、自律移動制御によって累積した移動誤差あるいは自己位置認識誤差が解消され、ロボットRを正確・確実に移動制御することができる。
【0120】
なお、本実施形態では、自己位置計算部184によってマークMの位置データからロボットRの絶対座標(地図データ上の座標)を計算することとしたが、これに限られるものではなく、赤外線画像からマークMとロボットRとの相対的な位置関係を求め、かかる相対的位置関係が所定の値になるようにロボットRの位置を補正してもよい。かかる方法は、ロボットRの絶対座標を計算しなくて済むというメリットがあり、また、ロボットRを決まった位置に停止させたい場合などに有効である。
【0121】
(総合無線環境マップの作成)
次に、ロボットRによる総合無線環境マップの作成制御について説明する。
図11は、地図データと総合無線環境マップの例を示し、(a)は地図データ(フロアマップ)であり、(b)は総合無線環境マップである。
図11(a)に示すように、地図データは、例えば、建物の階毎の出入口、会議室、受付などのレイアウトを示したフロアマップの形態をしており、出入口、会議室、受付の他に、無線親機1の設置位置、適宜な位置に配設されたマークMのマーク設置領域データなどが含まれている。
【0122】
ロボットRは、前記したようにジャイロセンサSR1、GPS受信器SR2によって自己位置データを取得すると共に、マークMを検出することにより自己位置を把握しながら移動することができる。そして、適宜な位置において無線親機1から送信される無線波の無線環境データを測定して総合無線環境データを算出し、地図データに書き込むことによって、図11(b)に示したような総合無線環境マップを作成する。この例では、マークMが配設された各位置において無線環境データを測定して総合無線環境データを算出し、記憶部190に記憶されている地図データに、測定位置に対応付けて書き込む(記録する)ことで総合無線環境マップを作成している。
【0123】
(手引き誘導による総合無線環境マップの作成)
無線環境データの測定のためには、従来、操作者(人)が測定器を運搬し、総合無線環境マップを作成しようとする領域の各所を移動する必要があった。しかし、このように人が測定器を運搬して測定する作業は、多大な手間を要するだけでなく、測定器と、実際にロボットRに搭載された無線通信部160とは無線通信の条件が異なるため、ロボットRの無線通信部160で無線親機1からの無線波を受信したときの無線環境と正確には一致しない場合も考えられる。
【0124】
そこで、本実施形態では、ロボットRの無線環境データを測定する無線環境検出部163を搭載し、人Hは、前記した測定器を運搬する代わりに、ロボットRを誘導して移動させ、適所でロボットRに無線環境データを測定させて総合無線環境データを算出させる共に、測定したロボットRの移動領域の地図データに、測定位置と対応付けて総合無線環境データを記録することで、総合無線環境マップの作成を行う。
より具体的には、図12に示すように、人HがロボットRの右手(腕部R3の先端に設けられた把持部(ハンド)71R)を引いて誘導し、測定位置まで案内する。
【0125】
本実施形態におけるロボットRは、図3乃至図5に示したように、脚部R1の各関節部の電動モータを駆動制御することにより、移動(歩行又は走行)することができる。また、腕部R3の各関節部に設けられた電動モータを駆動制御することにより、人Hに対して手を差し出したり人Hの手を握ったりすることができるようになっている。更に、腕部R3の先端に設けられた把持部71Rと、手首関節部36R,37Rとの間に設けられた6軸力センサ62R(移動検出手段)は、ロボットRの把持部71Rに作用する反力の3方向成分Fx,Fy,Fzと、モーメントの3方向成分Mx,My,Mzと、を検出することができるようになっている(図4参照)。
【0126】
6軸力センサ62Rで検出した反力の3方向成分Fx,Fy,Fzは自律移動制御部150の腕部制御部151cに伝達され、腕部制御部151cは、これらの反力の3方向成分Fx,Fy,Fzに基づいて、図12に示したように、人HがロボットRの把持部71Rを引く方向と、その力の大きさとを判断し、主制御部140に伝達する。主制御部140は、人HがロボットRの把持部71Rを引く方向と、引く力の大きさとに基づいて、ロボットRが移動する方向と移動する速さとを決定し、脚部制御部151aに移動を指令する。脚部制御部151aは、主制御部140から指令された移動する方向と速さに従って、脚部R1の関節各部を駆動制御し、人Hに手を引かれた状態で移動することができる。
【0127】
次に、図13を参照(適宜図5参照)して、ロボットRが人Hに手を引かれて誘導され、総合無線環境マップを作成する処理の流れについて説明する。ここで、図13は、ロボットが人に手を引かれて測定箇所に移動して総合無線環境マップを作成する処理の流れを示すフロー図である。
【0128】
まず、無線環境データを測定する測定モードを選択する(ステップS20)。ここで、測定モードとは、ロボットRが人Hに手を引かれて移動する経路上において、無線環境データを測定するタイミングを決めるモードを指す。すなわち、ロボットRが人Hに手を引かれて移動しながら、予め設定された所定の時間周期で、自動的に無線環境データを測定する“自動モード”と、測定する位置を、適宜人Hから指示を受けて測定する“人指定モード”とがある。
【0129】
測定モードの選択は、例えば、端末7を用いて管理用コンピュータ3に接続し、キーボード(図示せず)等の入力手段を用いて行うことができる。そして、管理用コンピュータ3がロボットRに測定モードを指示する。あるいは、ロボットRの背面等の適所に選択スイッチを設けて選択するようにしてもよいし、音声によってロボットRに直接選択を指示するようにしてもよい。
音声によって選択を指示する場合は、例えば、ロボットRはマイクMCによって音声を取得し、音声処理部120の音声認識部121bによって取得した音声から文字情報を生成し、主制御部140に出力する。そして、主制御部140によって、文字情報を解析して測定モードの指示内容を取得するようにすることができる。
【0130】
次に、ロボットRは、ジャイロセンサSR1、GPS受信器SR2及び周辺状態検知部170によって、現在位置を確認し、測定作業のスタート位置とする(ステップS21)。
【0131】
ロボットRは、現在位置を確認すると、現在位置を含む地図データを、管理用コンピュータ3が管理する記憶部5からダウンロードする(ステップS22)。
詳細には、ロボットRは、無線通信部160によって、無線親機1を介して管理用コンピュータ3に地図データを要求する。管理用コンピュータ3は、該当する地図データを記憶部5から読み出し、無線親機1を介して、ロボットRに送信する。ロボットRは、無線通信部160によって地図データを受信し、受信した地図データを記憶部190に保存する。以上の手順によって、地図データのダウンロードが完了する。
なお、ロボットRは、現在位置を含む地図データを、既に記憶部190に記憶している場合には、地図データのダウンロードする手順を省略するようにしてもよい。
【0132】
ロボットRは、地図データの準備ができると、カメラCによって撮影した画像を画像処理部110によって解析し、測定箇所に誘導する人Hの位置を認識し、腕部制御部151cによって腕部R3を駆動し、当該人Hに対して手(例えば、図12に示したように、把持部71R)を差し出す(ステップS23)。
【0133】
人Hによって、ステップS23で差し出した手(例えば、把持部71R)を引かれると、引かれた方向へ移動を開始する(ステップS24)。
詳細には、ロボットRは、例えば、把持部71Rを引かれると、前記したように、腕部R3の6軸力センサ62R(図4参照)によって検出した反力の3方向成分Fx,Fy,Fzに基づいて、ロボットRが移動する方向と移動する速さとを決定し、脚部R1の関節各部を駆動制御し、人Hに手を引かれた状態で移動を開始する。
【0134】
ロボットRは、ステップS20で選択された測定モードに従って、無線環境検出部163によって、無線通信部160と無線親機1との間の無線通信における無線環境データを測定し、総合無線環境データ算出部141によって、無線環境検出部163で測定した無線環境データに基づいて総合無線環境データを算出する。そして、総合無線環境マップ作成部142によって、総合無線環境データ算出部141で算出した総合無線環境データを、記憶部190に記憶された地図データに、測定位置に対応付けて記録することで、総合無線環境マップを作成する(ステップS25)。
【0135】
総合無線環境マップを作成すると、ロボットRは、記憶部190に記憶されている総合無線環境マップを読み出し、無線通信部160によって送信する(ステップS26)。管理用コンピュータ3は、無線親機1を介して総合無線環境マップを受信すると、記憶部5に保存する。
【0136】
次に、図14を参照(適宜図5参照)して、総合無線環境マップ作成の詳細な処理の流れについて説明する。ここで、図14は、総合無線環境マップ作成の処理の流れを示すフロー図である。なお、図14に示す総合無線環境マップ作成の処理は、図13に示したフロー図におけるステップS25に該当する。
【0137】
ロボットRは、図13のフロー図におけるステップS20で選択された測定モードを確認し(ステップS30)、“自動モード”である場合には(ステップS30で“自動”)、ロボットRの主制御部140に内蔵された内部クロック(図示せず)によって、測定のための所定の周期時刻かどうかを判断する(ステップS31)。所定の周期時刻でない場合は(ステップS31でNo)、そのまま人Hに手を引かれて移動を続け、周期時刻になるまでステップS31を繰り返し実行する。
そして、周期時刻になると(ステップS31でYes)、無線環境検出部163によって、無線通信部160と無線親機1との通信における無線強度等の無線環境データを測定する(ステップS32)。
【0138】
そして、ジャイロセンサSR1、GPS受信器SR2及び周辺状態検知部170によって、測定したときの自己位置を把握する(ステップS33)。
【0139】
次に、総合無線環境データ算出部141によって、ステップS32で測定した無線環境データに基づいて、総合無線環境データを算出する(ステップS34)。
【0140】
そして、総合無線環境マップ作成部142によって、ステップS34で算出した総合無線環境データを、ステップS33で把握した自己位置、すなわち測定位置に対応付けて、記憶部190に記憶された地図データに書き込み、総合無線環境マップを作成(更新)する(ステップS35)。
【0141】
総合無線環境マップの更新が完了すると、ロボットRは、6軸力センサ62Rの出力値に基づいて、人Hによって手引き誘導が終了したかどうかを確認する(ステップS36)。手引き誘導終了は、例えば、6軸力センサ62Rの出力を解析して外力を検出しない場合は、人Hによる手引き誘導が終了したと判断し(ステップS36でYes)、総合無線環境マップ作成処理を終了する。
【0142】
一方、人Hによる手引き誘導が終了していないと判断した場合は(ステップS36でNo)、ステップS31に戻り、手引き誘導に従って移動しながら、次の測定の周期時刻を確認する。
以降は、ステップS36において、手引き誘導が終了したと判断するまで、ステップS31からステップS36を繰り返して実行し、総合無線環境マップ作成処理を続ける。
【0143】
また、測定モードが“人指定モード”である場合は(ステップS30で“人指定”)、ロボットRは、移動しながら6軸力センサ62Rの出力の確認を繰り返し、6軸力センサ62Rが検出する力に基づいて、手引き誘導する人Hが歩行を停止したかどうかを判断する(ステップS37)。
人Hが歩行を停止しない場合は(ステップS37でNo)、そのまま人Hに手を引かれて移動を続けながら、歩行停止したかを判断するステップS37を繰り返し実行する。
ロボットRが、歩行停止したと判断した場合は(ステップS37でYes)、無線環境検出部163によって、無線通信部160と無線親機1との通信における無線強度等の無線環境データを測定する(ステップS38)。この測定モードでは、無線環境データの測定は、歩行を停止した状態で行う。また、突発的なノイズによる影響等を低減して、精度よく測定するために、同じ位置での測定を複数回繰り返し、各無線環境データの測定値の平均値を算出して用いる。そのために、例えば、無線強度は、無線強度検出部163a(図6参照)によって、500ミリ秒毎に5秒間、すなわち10回の測定を行い、測定データを主制御部140に出力する。その他の無線環境データも、同様にして、無線環境検出部163の各部で、それぞれ所定の回数ずつ測定して測定データを主制御部140に出力する。
【0144】
そして、ジャイロセンサSR1、GPS受信器SR2及び周辺状態検知部170によって、測定したときの自己位置を把握する(ステップS39)。
【0145】
主制御部140に入力された無線環境データは、主制御部140の総合無線環境データ算出部141によって、ステップS38において無線環境検出部163の各部で測定した無線強度データの平均値を算出し、算出したこれらの無線環境データの平均値に基づいて総合無線環境データを算出する(ステップS40)。
【0146】
そして、総合無線環境マップ作成部142によって、ステップS40で算出した総合無線環境データを、ステップS39で把握した自己位置、すなわち測定位置に対応付けて、記憶部190に記憶された地図データに書き込み、総合無線環境マップを作成(データを追加)する(ステップS41)。
【0147】
地図データへの総合無線環境データの書き込みが終了すると、ロボットRは、音声処理部120の音声合成部121aによって、例えば、「ポイント測定終了、次地点へ移動してください」というテキストを音声合成し、スピーカSから出力(発話)し、人Hに対して次の測定位置への誘導を促す(ステップS42)。
【0148】
ロボットRは、例えば、ステップS42における発話終了から所定時間(例えば15秒)が経過しても、人Hによって手を引いて誘導する動作を検知しなかった場合は、手引き誘導が終了したものと判断し(ステップS43でYes)、総合無線環境マップ作成処理を終了する。
なお、手引き誘導の終了の判断は、例えば、「総合無線環境マップ作成は終了する」のように、人Hによる音声による指示を、音声処理部120の音声認識部121bでテキストに変換し、主制御部140によって指示内容を解析して判断するようにしてもよい。
【0149】
一方、ステップS43において、ロボットRが、人Hによる手引き誘導の再開を検知すると、手引き誘導は終了していないと判断して(ステップ43でNo)、ステップS37に戻って、歩行停止を確認しながら、次の測定位置まで移動する。
以降は、ステップS43において、手引き誘導が終了したと判断するまで、ステップS37からステップS43を繰り返して実行し、総合無線環境マップ作成処理を続ける。
【0150】
以上説明したように、ロボットRは、人Hによる誘導を受けて移動領域内を移動し、その移動経路上で無線環境データを測定するため、人Hは、例えば、端末7等を介して、測定位置を入力してロボットRに指示する手間を省くことができる。また、ロボットRに搭載された無線通信部160を用いて、ロボットRと無線親機1との無線環境の状態を直接測定するため、正確な総合無線環境マップを作成することができる。
【0151】
なお、本実施形態では、ロボットRは、人Hによって手を引かれたときの、腕部R3に設けられた6軸力センサ62R(L)の出力に基づいて、誘導する人Hの移動方向と移動の速さとを検出するようにしたが、例えば、ロボットRが、人HをカメラC,Cで撮影し、画像処理部110のステレオ処理部111a及び移動体抽出部111bによって、人Hの移動方向と移動の速さとを検出するようにすることもできる。また、例えば、赤外線センサからなる人感センサなど、その他の手段によって人の移動を検出するようにしてもよい。
【0152】
(単独移動による総合無線環境マップの作成)
次に、図15乃至図17を参照(適宜図5参照)して、ロボットRに、無線環境データの測定位置を予め簡便に指定し、ロボットRが単独で移動して総合無線環境マップを作成する方法について説明する。ここで、図15は、ロボットが単独で移動領域を移動して無線環境データを測定する測定位置の指定について説明する図であり、(a)はマークの設置位置を示す図、(b)はマーク設置位置で測定した無線環境データに基づいて作成した総合無線環境マップの例であり、図16は、指定されたマーク位置の無線環境データを測定して総合無線環境マップを作成するロボットの処理の流れを示すフロー図であり、図17は、図16における総合無線環境マップを作成するステップの詳細を示すフロー図である。
【0153】
図15(a)に示すように、ロボットRの移動領域には、複数箇所にマークM(M1〜M12)が設置されている。また、記憶部5(図5参照)に記憶されている地図データ(フロアマップ)には、マークMの番号(図15の例では、番号1〜12)に対応付けられたマーク設置領域データが含まれている。
ロボットRに総合無線環境マップの作成をさせようとする操作者は、例えば、端末7(図5参照)を用いて管理用コンピュータ3にアクセスし、測定位置としてマークMの番号を指定することで、測定位置をロボットRに指示することができる。
【0154】
ロボットRは、管理用コンピュータ3から無線親機1を介して、総合無線環境マップの作成処理の実行命令信号を受信すると、図16に示すように、まず、移動領域の地図データを、無線親機1を介して管理用コンピュータ3に要求し、記憶部5に記憶されている地図データを、ロボットRに内蔵されている記憶部190にダウンロードする(ステップS50)。なお、対象となる移動領域の地図データが、既に記憶部190に記憶されている場合には、この地図データのダウンロードの手順は省略することができる。
【0155】
次に、ロボットRは、測定位置及び測定順を示すマーク順番(マーク番号列)を、管理用コンピュータ3から取得する(ステップS51)。
【0156】
ロボットRは、マーク順番を取得すると、現在位置(ロボットスタート位置)から、1番目に指定されたマークM(例えば、M1)まで移動する(ステップS52)。
【0157】
指定されたマークMに移動すると、無線環境検出部163によって無線環境データを測定し、総合無線環境データ算出部141によって総合無線環境データを算出し、総合無線環境マップ作成部142によって、記憶部190に記憶された地図データに、該当するマーク番号の位置に対応付けて、算出した総合無線環境データを書き込み、総合無線環境マップを作成する(ステップS53)。
【0158】
ロボットRは、ステップS53で測定位置として指定されたマークMが最終の番号かどうかを確認して最終の場合は(ステップS54でYes)、ステップS55に進む。
一方、マークMが最終の番号でない場合は(ステップS54でNo)、ステップS52に戻り、次の順番のマークM(例えば、M2)の位置まで移動する。そして、次のマーク位置において無線環境データを測定して総合無線環境データを算出し、記憶部190に記憶された地図データに、そのマーク番号の位置に対応付けて、算出した総合無線環境データを書き込み、総合無線環境マップを作成する(ステップS53)。
そして、最終番号のマーク位置における総合無線環境マップを作成するまで、ステップS52からステップS54の処理を繰り返して実行する。
【0159】
最終番号のマーク位置における処理が完了すると(ステップS54でYes)、記憶部190には、図15(b)に示したように、地図データのマーク位置に対応付けて総合無線環境データが書き込まれた総合無線環境マップが作成されている。そして、ロボットRは、作成した総合無線環境マップを、無線通信部160によって管理用コンピュータ3へ送信して(ステップS55)、処理を終了する。
なお、管理用コンピュータ3は、送信された総合無線環境マップを記憶部5に保存する。
【0160】
次に、図17を参照(適宜図5参照)して、図16における総合無線環境マップ作成のステップS53について説明する。
ロボットRは、指定されたマークMの位置まで移動すると(図16のステップS52)、移動(歩行)を停止する(ステップS60)。
【0161】
次に、ロボットRは、マーク位置に停止した状態で、無線環境検出部163によって無線強度を含む無線環境データを測定する(ステップS61)。なお、無線環境検出部163の各部は、図14に示したフロー図のステップS38と同様に、無線環境データを複数回測定し、主制御部140に出力する。
【0162】
主制御部140は、総合無線環境データ算出部141によって、無線環境検出部163で複数回測定された各無線環境データの平均値を算出し、無線環境データの平均値に基づいて総合無線環境データを算出する(ステップS62)。
【0163】
主制御部140は、算出した総合無線環境データを、記憶部190に記憶されている地図データに、そのマーク番号の位置に対応付けて、算出した総合無線環境データを書き込み(ステップS63)、処理を終了する。
【0164】
このようにして、指定されたひとつのマーク位置に対する総合無線環境データの書き込み(追加記録)を行うことができる。
【0165】
次に、図18を参照して、ロボットRに、無線環境データを測定する位置を指定する他の方法について説明する。ここで、図18は、無線環境データを測定する位置の指定について説明するための図であり、(a)は、グリッドによって指定する例を示し、(b)は、個別に測定点を追加指定する例を示す。
【0166】
図18(a)に示した例では、図中に点線で示したように、地図データ(フロアマップ)に対して、グリッドを設定し、グリッドの格子点を測定点として指定することができる。グリッドの設定は、例えば、図18(a)に示した地図の左上のコーナーを原点として、図中の上下方向及び左右方向のグリッド間隔を設定する。このように測定位置をグリッドによって指定された場合は、ロボットRは、上下方向及び左右方向のグリッド間隔からグリッドの格子点を算出し、算出した格子点の位置に順次移動して無線環境データを測定し、測定した無線環境データに基づいて総合無線環境データを算出する。そして、記憶部190に記憶されている地図データに、測定した格子点の位置に対応付けて、総合無線環境データを書き込むことにより、総合無線環境マップを作成することができる。
【0167】
このように、グリッドを用いることにより、測定位置を簡便に指定することができると共に、測定位置を移動領域内に均等に指定することができる。
【0168】
また、グリッドを細かく設定すると、測定点が多くなりすぎる場合があるが、逆にグリッドの設定が粗くなると、測定点が不足する場合も考えられる。
そこで、グリッドを細か過ぎないように適度な間隔で指定すると共に、地図上のレイアウトを参照して、電波障害物などの影響を受けやすそうな位置を測定点として個別に追加指定するようにして、操作者が測定位置を指定する入力作業の増大を抑制しつつ、重要な測定位置を詳細かつ柔軟に指定することができる。
【0169】
図18(b)は、測定位置を個別に追加して指定した様子を示す。この例では、測定位置P1〜P7の7点が追加されている。
ロボットRは、図18(a)に示したグリッドの格子点に該当する位置と、図18(b)に示した個別に追加した位置とを測定位置として取得し、順次測定点に移動して無線環境データを測定し、測定した無線環境データから総合無線環境データを算出して、地図データに書き込むことにより、総合無線環境マップを作成することができる。
【0170】
図19は、総合無線環境マップの例であり、(a)は、測定位置をグリッド指定して作成した総合無線環境マップであり、(b)は、ユーザ用の表示形式の総合無線環境マップである。
図19(a)に示した総合無線環境マップは、図18(a)に示したグリッドによって指定した測定位置における総合無線環境データが書き込まれた総合無線環境マップである。また、(b)は、(a)に示した総合無線環境マップに基づいて、操作者(ユーザ)が無線環境を理解しやすいように、GUI(Graphical User Interface)環境下において、総合無線環境のレベル(良好度)を3段階(Excellent, Good, Poor)に色分けして表示した例である。このユーザ用の表示形式のマップは、例えば、端末7(図5参照)によって、記憶部5に記憶された総合無線環境マップを読み出し、適宜な画像処理を施して端末7の画面に表示することができる。
【0171】
なお、表示形式は、色分けに限定されるものではなく、例えば、総合無線環境が同レベルの点を線で結んで等高線状に表示するようにしてもよい。
このように、総合無線環境マップをユーザが理解しやすい形式に変換して表示することにより、例えば、無線親機1を設置する場所を決める際に、複数の設置候補の場所に設置した場合の総合無線環境マップを作成して対比することで、優劣を容易に判断することができる。また、総合無線環境のレベルが低い領域を容易に認識できるため、対策として、例えば、無線親機1を追加する適切な場所を容易に判断することができる。
【0172】
(最適無線親機マップの作成)
次に、図20を参照(適宜図5参照)して、複数の無線親機1が設置された場合に、ロボットRが接続する無線親機1を選択する方法について説明する。ここで、図20は、複数の無線親機が配置された場合に、ロボットが接続する無線親機を選択する様子を説明する図であり、(a)は、複数の無線親機に対する総合無線環境マップから最適無線親機マップを作成する様子を説明する図であり、(b)は、複数の最適無線親機から、接続する無線親機を選択する様子を説明する図である。
【0173】
図20(a)に示したように、2台の無線親機1A、1Bは、それぞれ、地図上の右下の隅及び左下の隅に設置されている。(a)の上段の左図及び右図は、それぞれ無線親機1A及び無線親機1Bに対する総合無線環境マップであり、それぞれグリッドによって指定された測定位置における総合無線環境データが書き込まれている。
【0174】
このように、本実施形態においては、ロボットRの移動領域において、複数の無線親機1が配置されている場合には、それぞれの無線親機1毎に無線環境データを測定して、総合無線環境マップ作成部142によって、総合無線環境マップを作成し、記憶部190に記憶する。
次に、最適無線親機マップ作成部143によって、記憶部190に記憶された複数の無線親機に対する総合無線環境マップに基づいて、最適な無線親機を示す最適無線親機マップ(最適無線基地局マップ)を作成する。
なお、本実施形態では、2台の無線親機1A、1Bが配置された場合を例にして説明するが、無線親機は3台以上としてもよい。
【0175】
ここで、最適な無線親機とは、総合無線環境データの数値が最も大きい無線親機である。そこで、(a)の下段の図に示したように、2台の無線親機1A、1Bから、最適な無線親機を選択した最適無線親機マップを作成することができる。ただし、最適無線親機マップにおいて、「A」、「B」は、最適な無線親機が、それぞれ、無線親機1A、無線親機1Bであることを示し、「AB」は、2台の無線親機が同じ数値の場合であるため、両方の無線親機が最適な無線親機であることを示す。
【0176】
図20(a)に示した最適無線親機マップにおいて、「AB」で示したように、総合無線環境のレベルが同じ無線親機が複数ある場合には、ロボットRは、何れの無線親機と接続するのかを選択する必要がある。そこで、図20(b)を参照して、最適な無線親機が複数ある場合において、ロボットRが接続する無線親機の選択方法について説明する。
【0177】
ロボットRは、移動に伴って、最適な総合無線環境の無線親機1と適宜接続を切り換えるが、無線親機1との接続を切り換えるとき、すなわち、ハンドオーバするときには、ロボットRと無線親機1との接続が一時的に切断され、ロボットRは、管理用コンピュータ3との通信が不能状態となる。
本実施形態では、ロボットRが管理用コンピュータ3との通信が不能状態となることをできる限り回避するために、ハンドオーバをしないで済む無線親機1を選択する。
【0178】
図20の(b)に示した図は、(a)の下段に示した最適無線親機マップにおいて、図の中央部の太線で囲んだ領域の拡大図である。そして、(b)は、(b)に示した領域を3×3(3行、3列)の領域に分割して考えると、周辺の領域から、最適無線親機マップにおいて最適な無線親機が1A及び1B(「AB」)である中央の領域に進行するとき、中央の領域において、何れの無線親機を選択するかを示している。
【0179】
(b)の左図に示した場合は、ロボットRは、3×3の領域の中央の行において、左から右に向かって進行する。このとき、中央の行の左列の領域では、ロボットRは無線親機1Bと接続しているから、左に進行する場合には、無線親機1Bを選択し、ハンドオーバを行わずに、そのまま無線親機1Bとの接続を保持する。
【0180】
次に、(b)の中央の図に示した場合は、ロボットRは、右斜め上方(上の行の左列の領域)から左斜め下の中央の領域に進行する。このとき、上の行の左列の領域では、ロボットRは無線親機1Aと接続しているから、右下に進行する場合には、無線親機1Aを選択し、ハンドオーバを行わずに、そのまま無線親機1Aとの接続を保持する。
【0181】
次に、(b)の右図に示した場合は、ロボットRは、右斜め下方(下の行の右列の領域)から左(下の行の中央列)に進行し、その後、上方(中央の領域)に進行する。まず、下の行の右列の領域では、ロボットRは無線親機1Aと接続しているから、右方に進行するときには、ハンドオーバを行わず、そのまま無線親機1Aとの接続を保持する。その後、上方に進行するときには、無線親機1Aを選択して無線親機1Aとの接続を保持し、ここでもハンドオーバを行わない。
【0182】
このように、複数の無線親機を選択可能な状況においては、本実施形態のロボットRは、ハンドオーバを回避できる無線親機を選択する。
なお、無線親機は3台以上の場合においても、同じレベルの総合無線環境の無線親機が選択可能な状況においては、ハンドオーバをできる限り回避するように無線親機を選択するようにすればよい。
【0183】
(総合無線環境マップの利用)
次に、図21を参照(適宜図5参照)して、ロボットRが、総合無線環境マップを利用するときの動作について説明する。ここで、図21は、ロボットが、総合無線環境マップを利用するときの処理の流れを示すフロー図である。
【0184】
ロボットRは、タスクを実行する際には、予め作成して記憶部190に記憶した総合無線環境マップを利用するが、ロボットRが作成した総合無線環境マップは、管理用コンピュータ3にアップロードし、記憶部5に保存される。ロボットRは、再起動して記憶部190に記憶した総合無線環境マップが消去された場合や、他のロボットによって作成された総合無線環境マップが記憶部5に保存されている場合には、管理用コンピュータ3から必要な総合無線環境マップをダウンロードして利用することができるようになっている。
これによって、ロボットRは、タスクを実行する毎に、総合無線環境マップを新たに作成する手間を省くことができる。
【0185】
図21に示したように、ロボットRは、まず、無線通信部160によって、無線親機1を介して管理用コンピュータ3と接続し、管理用コンピュータ3が管理する記憶部5に記憶する地図データのデータベースに、ロボットRがこれからタスクを実行する移動領域に関する総合無線環境マップが記憶されているかどうかを確認する(ステップS70)。
【0186】
記憶部5に、所望の総合無線環境マップが記憶されている場合は(ステップS70でYes)、ロボットRは、管理用コンピュータ3からその総合無線環境マップをダウンロードする(ステップS71)。詳細には、管理用コンピュータ3は、記憶部5から総合無線環境マップを読み出し、無線親機1を介して、読み出した総合無線環境マップをロボットRに送信する。ロボットRは、無線通信部160によって、総合無線環境マップを受信し、記憶部190に記憶する。これによって、総合無線環境マップのダウンロードが完了する。
【0187】
なお、ロボットRが管理用コンピュータ3からダウンロードする総合無線環境マップは、当該ロボットRが作成した総合無線環境マップでもよいし、他のロボットが作成した総合無線環境マップでもよい。また、複数のロボットによる総合無線環境マップが記憶されている場合には、例えば、最新の総合無線環境マップをダウンロードするようにしてもよく、あるいは、これらのマップの総合無線環境データの平均値を用いた総合無線環境マップを用いるようにしてもよい。また、複数の無線親機が設置された領域の場合には、総合無線環境マップの代わりに、あるいは総合無線環境マップに加えて、最適無線親機マップをダウンロードするようにしてもよい。また、必要に応じて、ロボットRがダウンロードするマップを選択できるようにしてもよいし、複数の種類のマップをダウンロードするようにしてもよい。
なお、ダウンロードするマップの種類は、管理用コンピュータ3が、ロボットRに命令するタスクの内容に従って、管理用コンピュータ3が、適宜最適なマップを選択して送信するようにしてもよい。
【0188】
一方、記憶部5に、所望の総合無線環境マップが記憶されていない場合は(ステップS70でNo)、ロボットRは、管理用コンピュータ3から記憶部5に記憶されている所望の移動領域に関する地図データをダウンロードする(ステップS72)。そして、その移動領域内の、総合無線環境マップを作成する(ステップS73)。総合無線環境マップの作成処理は、前記したように、例えば、図15に示したマークMのマーク設置場所を巡回して無線環境データを測定して総合無線環境データを算出し、測定位置に対応付けて記憶部190に記憶した地図データに書き込むことによって、総合無線環境マップを作成する。このとき、作成された総合無線環境マップは記憶部190に記憶されている。
【0189】
ロボットRは、ステップS73で作成した総合無線環境マップを記憶部190から読み出し、無線通信部160によって、無線親機1を介して管理用コンピュータ3に送信する(ステップS74)。そして、管理用コンピュータ3は受信した総合無線環境マップを記憶部5に記憶することで総合無線環境マップのアップロードが完了する。
【0190】
(総合無線環境マップの更新)
次に、図22を参照(適宜図5参照)して、ロボットRがタスク実行中に無線環境データを測定し、総合無線環境マップの更新(メンテナンス)を行う動作について説明する。ここで、図22は、タスク実行中に総合無線環境マップの更新を行う処理の流れを示すフロー図である。
【0191】
本実施形態のロボットRは、総合無線環境マップを作成するタスク以外のタスクを実行中においても、常に無線環境データを測定し、その無線環境データに基づいて算出される総合無線環境データと、地図データに総合無線環境マップとして記録されている総合無線環境データとを比較して、必要に応じて総合無線環境データを書き換えて、総合無線環境マップの更新を行う。
なお、無線環境データは、所定のタイミングで反復して測定される。例えば、1回の測定が終了すると、絶え間なく次の測定を開始するようにしてもよいし、10秒間隔のように、定期的に行うようにしてもよい。
【0192】
図22に示したように、ロボットRは、移動領域内を移動して、物品運搬等のタスクを実行する際には、例えば、図20(a)に示したような、総合無線環境マップ及び最適無線親機マップを管理用コンピュータ3からダウンロードして記憶部190に記憶すると共に、ロボットRの現在位置、すなわち、タスクのスタート位置において総合無線環境の最もよい無線親機1(1A又は1B)をダウンロードした最適無線親機マップを用いて探索する(ステップS80)。
【0193】
次に、ロボットRは、無線通信部160によって、ステップS80で探索した最適な無線親機1(以下、無線親機1Aとして説明する)と接続し(ステップS81)、タスクの実行を開始すると共に、並行して総合無線環境マップの更新処理を実行する(ステップS82)。
なお、ロボットRは、タスク実行中に、ジャイロセンサSR1、GPS受信器SR2及び周辺状態検知部170によって、自己の位置を常時把握しながら移動し、最適無線親機マップを参照して、最適な無線親機1(1A又は1B)と接続するように適宜ハンドオーバを行う。
【0194】
次に、図23を参照(適宜図5参照)して、ロボットRがタスク実行中に総合無線環境マップを更新する動作について詳細に説明する。ここで、図23は、ロボットが、タスク実行中に総合無線環境マップの更新を行う処理の流れを示すフロー図であり、図22に示したフロー図におけるステップS82に該当する。
【0195】
本実施形態のロボットRは、タスクの実行を行いながら、無線通信部160の無線環境検出部163によって、所定のタイミングで反復して無線強度等の無線環境データを測定し、主制御部140に測定した無線環境データを出力する(ステップS90)。
【0196】
ロボットRは、無線環境データを測定すると、ジャイロセンサSR1、GPS受信器SR2及び周辺状態検知部170によって自己位置を把握する(ステップS91)。なお、無線環境データの測定及び自己位置の把握は、並行して行ってもよい。
【0197】
主制御部140の無線親機異常通知部145は、無線環境検出部163によって無線環境データが正常に測定できたかどうかを判定する(ステップS92)。無線環境データ測定の可否は、無線親機異常通知部145によって、例えば、所定の時間内に無線環境データが主制御部140に入力されたかどうか、又は入力された無線環境データが異常値でないかどうかを確認することによって行い、無線環境データが測定できなかった場合は(ステップS92でNo)、無線親機異常通知部145は、無線通信部160を介して、無線親機1Aに異常があることを管理用コンピュータ3に通知する(ステップS93)。このとき、接続中の無線親機1Aは異常であるため、接続が切断されていることが考えられ、無線親機異常通知部145は、無線通信部160の通信相手を、無線親機1Aから他の無線親機1Bに接続を切り替え、無線親機1Bを介して管理用コンピュータ3に無線親機1Aが異常であることを通知する。また、移動領域内で他に通信を確立できる無線親機1が見つからない場合は、ロボットRは、無線親機1Aの異常状態を、例えば、記憶部190に記憶しておき、何れかの無線親機1を介して管理用コンピュータ3との通信が再開できた時点で通知するようにしてもよい。
【0198】
ロボットRは、無線親機1Aの異常を管理用コンピュータ3に通知すると、ステップS102に進み、タスクが終了したかどうかを確認する。
【0199】
一方、無線親機異常通知部145によって、無線環境検出部163により無線環境データが正常に測定できたと判断した場合は(ステップS92でYes)、総合無線環境データ算出部141によって、無線環境検出部163で測定された無線環境データに基づいて総合無線環境データを算出し(ステップS94)、総合無線環境マップ更新部144によって、ステップS91で把握した位置における接続中の無線親機1Aに対する総合無線環境データを記憶部190から読み出し、総合無線環境マップに記録されている総合無線環境データと、ステップS94で算出した総合無線環境データとを比較し、差異が10%以上あるかどうかを確認する(ステップS95)。そして、両者のデータに差異が10%未満の場合は(ステップS95でNo)、ステップS102に進む。
【0200】
両者に差異が10%以上ある場合は(ステップS95でYes)、更に、無線親機1Aに対する総合無線環境データの確認履歴を参照し、総合無線環境マップに記録されているデータとの差異が10%以上である状況が3回であるか(すなわち、過去2回の総合無線環境データの確認結果が、差異10%以上であるか)を確認し(ステップS96)、3回未満の場合は(ステップS96でNo)、ステップS102に進む。
なお、確認履歴は、例えば、記憶部190に記憶される総合無線環境マップに、位置及び無線親機に対応付けて記憶し、必要に応じて読み出して参照するようにすればよい。
【0201】
また、10%以上の差異が3回以上連続した場合は(ステップS96でYes)、総合無線環境マップ更新部144によって、直近の総合無線環境データ(すなわち、前回の測定データに基づいて算出した総合無線環境データ)を地図データに上書きすることによって総合無線環境マップに反映し、総合無線環境マップを更新する(ステップS97)。
なお、この移動領域内に複数の無線親機1が設置されている場合は、続けて、総合無線環境マップ更新部144によって、更新された総合無線環境マップと、その他の無線親機に対する総合無線環境マップとを記憶部190から読み出し、最適無線親機マップの更新を行う。
【0202】
続いて、さらに、差異が20%以上であって、差異が20%以上の状態が3回連続しているかどうかを、確認履歴を参照して確認し(ステップS98)、差異が20%未満又は連続して3回未満の場合は(ステップS98でNo)、ステップS102に進む。
【0203】
差異が20%以上の状態が3回連続した場合は(ステップS98でYes)、周囲画像取得部146によって、脚部制御部151aを介して脚部R1を駆動し、その場でロボットRの向きを変えながらカメラCを用いて周囲の画像を撮影する。撮影して取得した画像データを記憶部190に、撮影位置に対応付けて保存する(ステップS99)。
【0204】
本実施形態では、例えば、ステップS96、ステップS98のように、所定値以上の差異がある状態が、所定の測定回数以上連続した場合、すなわち、所定の時間以上継続した場合に、総合無線環境マップのデータ更新を行うため、瞬間的に発生したノイズによる影響を無視することができ、頻繁なデータ更新を回避して、ロボットR、管理用コンピュータ3における処理の負荷及びロボットRと無線親機1との間の通信量の増大を抑制することができる。
【0205】
ここで、図24を参照(適宜図5参照)して、周囲の画像の撮影について説明する。図24は、ロボットが周囲の画像を撮影する様子を説明するための図であり、(a)はロボットが向きを変えながら周囲の画像を撮影する様子を示し、(b)は、上段にフロアマップ中の撮影位置を示し、下段にその撮影位置から撮影した周囲の画像を示す。
【0206】
総合無線環境データの総合無線環境マップに記録されているデータと差異が20%以上である状況が3回連続した場合は(図23のステップS98でYes)、ロボットRの移動領域に、例えば、パーティションが設置されたり障害物が置かれたりしたような、恒常的に無線環境に大きな影響を及ぼす状況が発生したことが推測される。そのため、本実施形態では、ロボットRが、総合無線環境データのマップに記録された値と大きな差異があると判断した場合、すなわち、無線環境の大きな変化を検出した場合は、その地点での周囲の画像を撮影し、撮影して取得した画像データを管理用コンピュータ3に送信して、操作者がその状況を解析するために利用できるようにする。
【0207】
図24(a)に示すように、ロボットRは、歩行を停止し、その場で90°ずつ回転して、90°の画角で画像を順次撮影することで、全方位(360°)の画像を撮影する。
詳細に説明すると、ロボットRは、周囲画像取得部146によって、自律移動制御部150の脚部制御部151aを介して脚部R1の各部を制御して、歩行を停止し(例えば、図24(b)の上段の図の位置P)、頭部R4に搭載されたカメラCを用いて、まず、移動方向である正面画像iを撮影する。撮影した画像は、記憶部190に保存する。次に、ロボットRは、周囲画像取得部146によって、脚部制御部151aを介して脚部R1を駆動制御して右方向に向きを変え、カメラCを用いて右画像iiを撮影し、撮影した画像データを記憶部190に保存する。ロボットRは、同様に、右回りに90°ずつ向きを変え、うしろ画像iiiおよび左画像ivを撮影し、撮影した画像データを記憶部190に保存する。そして、左画像ivの撮影が終了すると、ロボットRは、さらに右回りに90°向きを変え、最初の移動方向を向いて静止する。
【0208】
このようにして、4枚の画像に分割して撮影することによって取得された画像データ(図24(b)の下段参照)は、記憶部190に一時保存される。
【0209】
図23に戻って、説明を続ける。
ステップS98において、無線環境に大きな変化を検出した場合は、前記したように周囲の画像を撮影して画像データを取得する(ステップS99)と共に、無線通信部160によって、受信した無線波を解析してロボットRと同規格の無線ノードと、そのトラフィックを検出して、他の無線機器が移動領域内に存在しないかを検索し、他の無線機器の存在の有無及びトラフィックを検索結果として記憶部190に保存する(ステップS100)。ここで、例えば、すべての無線ノードのトラフィックの総和が、ロボットRが送受信するデータ量よりも大きい場合は、無線環境が悪いと判断することができる。
【0210】
他の無線機器の検索が終了すると、ロボットRは、無線親機異常通知部145によって、無線通信部160を用いて、無線親機1Aを介して管理用コンピュータ3に無線親機1Aに対する無線環境が悪化していることを通知すると共に、記憶部190に記憶した画像データ及び他の無線機器の検索結果、ならびに、ステップS90で測定した無線環境データを併せて送信する(ステップS101)。
そして、管理用コンピュータ3への通知が終了すると、ステップS102に進む。
【0211】
なお、本実施形態では、ステップS90で測定したノイズフロア(無線ノイズ)を含む無線環境データは、記憶部190に一時的に保存しておき、ステップS101で記憶部190から読み出して、管理用コンピュータ3に送信するようになっている。特に、無線ノイズの評価値のひとつであるノイズフロアは、無線環境の良否を判断するために有用である。
【0212】
ロボットRは、各条件での総合無線環境マップの更新処理が終了すると、タスクが終了したかどうかを確認し(ステップS102)、タスクが終了した場合は(ステップS102でYes)、処理を終了する。
また、タスクが終了していない場合は(ステップS102でNo)、ステップS90に戻り、タスクの実行を継続すると共に、総合無線環境マップの更新処理を繰り返す。
【0213】
なお、管理用コンピュータ3は、ロボットRから無線親機1(例えば、1A)の異常通知を受信し(ステップS93)、あるいは、無線環境の大きな変化を検知した通知を受信した場合は(ステップS101)、記憶部5に通知内容をログ情報として記憶すると共に、例えば、端末7の表示画面(図示せず)にログ情報を表示し、操作者にロボットRからの通知内容を通報する。
操作者は、端末7を用いて、例えば、無線環境に大きな変化のあった地点で撮影した画像データや無線環境データ等を参照して問題解析を行い、対策を検討することができる。
【0214】
以上説明したように、本実施形態のロボットRは、総合無線環境マップ作成の処理以外のタスクを実行中にも、常に無線環境データを測定し、測定した無線環境データから算出される総合無線環境データと、管理用コンピュータ3からダウンロードして記憶部190に記憶した総合無線環境マップに記録されている総合無線環境データとを比較し、所定の値以上の差異が所定の時間連続して検出された場合に、総合無線環境マップを更新するようにしたため、ロボットRに、通常のタスクを実行させることで、総合無線環境マップのメンテナンスを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0215】
【図1】本発明の実施形態に係る移動ロボット制御システムを示すシステム構成図である。
【図2】本実施形態に係るロボットの移動中の様子を示した斜視図であり、(a)は通常の移動領域を移動している状態を、(b)はマークの設置領域を移動している状態をそれぞれ示した図である。
【図3】図1及び図2のロボットの外観を模式的に示す側面図である。
【図4】図3のロボットの駆動構造を模式的に示す斜視図である。
【図5】本実施形態に係るロボットの構成を示したブロック図である。
【図6】無線通信部の構成を示すブロック図である。
【図7】総合無線環境データを説明するための図である。
【図8】本実施形態に係るロボットの胴部を示した透視図である。
【図9】周辺状態検知部の構成を示すブロック図である。
【図10】ロボットの自律移動制御(スリット光照射と赤外線照射との切換制御)に関するフロー図である。
【図11】地図データと総合無線環境マップの例を示し、(a)は地図データ(フロアマップ)であり、(b)は総合無線環境マップである。
【図12】人がロボットの手を引いて誘導する様子を示す図である。
【図13】ロボットが人に手を引かれて測定箇所に移動して総合無線環境マップを作成する処理の流れを示すフロー図である。
【図14】総合無線環境マップ作成の処理の流れを示すフロー図である。
【図15】ロボットが単独で移動領域を移動して無線環境データを測定する測定位置の指定について説明する図であり、(a)はマークの設置位置を示す図、(b)はマーク設置位置で測定した無線環境データに基づいて作成した総合無線環境マップの例である。
【図16】指定されたマーク位置の無線環境データを測定して総合無線環境マップを作成するロボットの処理の流れを示すフロー図である。
【図17】図16における総合無線環境マップを作成するステップの詳細を示すフロー図である。
【図18】無線環境データを測定する位置の指定について説明するための図であり、(a)は、グリッドによって指定する例を示し、(b)は、個別に測定点を追加指定する例を示す。
【図19】総合無線環境マップの例であり、(a)は、測定位置をグリッド指定して作成した総合無線環境マップであり、(b)は、ユーザ用の表示形式の総合無線環境マップである。
【図20】複数の無線親機が配置された場合に、ロボットが接続する無線親機を選択する様子を説明する図であり、(a)は、複数の無線親機に対する総合無線環境マップから最適無線親機マップを作成する様子を説明する図であり、(b)は、複数の最適無線親機から、接続する無線親機を選択する様子を説明する図である。
【図21】ロボットが、総合無線環境マップを利用するときの処理の流れを示すフロー図である。
【図22】タスク実行中に総合無線環境マップの更新を行う処理の流れを示すフロー図である。
【図23】ロボットが、タスク実行中に総合無線環境マップの更新を行う処理の流れを示すフロー図である。
【図24】ロボットが周囲の画像を撮影する様子を説明するための図であり、(a)はロボットが向きを変えながら周囲の画像を撮影する様子を示し、(b)は、上段にフロアマップ中の撮影位置を示し、下段にその撮影位置から撮影した周囲の画像を示す。
【符号の説明】
【0216】
1、1A、1B 無線親機(無線基地局)
3 管理用コンピュータ
5 記憶部
62R、62L 6軸力センサ(移動検出手段)
110 画像処理部(移動検出手段)
140 主制御部
141 総合無線環境データ算出部(総合無線環境データ算出手段)
142 総合無線環境マップ作成部(総合無線環境マップ作成手段)
143 最適無線親機マップ作成部(最適無線基地局マップ作成手段)
144 総合無線環境マップ更新部(総合無線環境マップ更新手段)
145 無線親機異常通知部(無線基地局異常通知手段)
146 周囲画像取得部(周囲画像取得手段)
150 自律移動制御部(自律移動制御手段)
160 無線通信部(無線通信手段)
163 無線環境検出部(無線環境検出手段)
170 周辺状態検知部(自己位置認識手段)
190 記憶部(記憶手段)
A 移動ロボット制御システム
C カメラ(撮像手段)
R ロボット(移動ロボット)
R1 脚部(移動手段)
SR1 ジャイロセンサ(自己位置認識手段)
SR2 GPS受信器(自己位置認識手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、管理用コンピュータと無線通信を行いながら移動する移動ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、移動可能なロボットに対して、無線によりタスク実行命令信号を発行してタスクを実行させる技術が提案されている。このような移動ロボットにおいては、電波の届かない場所に移動ロボットが移動してしまった場合には、無線による遠隔制御ができなくなり、人が手を出して電波が届く場所まで移動ロボットを戻す必要があった。
このような問題に対して、特許文献1には、ロボットが電波の届かないところまで移動すると、移動中に取得した電波強度に基づいて作成した電波強度マップに従い、無線接続が可能な地点まで自律的に移動するようにした移動ロボットが提案されている。
また、特許文献2には、複数の移動ロボットが稼動している場合に、電波の弱い領域に移動した移動ロボットに対して、他の移動ロボットが基地局との通信を中継する移動ロボットが提案されている。
【特許文献1】特開2004−260769号公報(段落0008〜段落0012、図4〜図6)
【特許文献2】特開2005−025516号公報(段落0016、図9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載の移動ロボットは、電波強度マップに基づいて移動経路を選定するため、電波強度以外のノイズ等の他の要因によって通信が切断されたときには、通信可能な領域への復帰ができない場合も起こり得るものであった。
また、特許文献2に記載の移動ロボットは、稼動する移動ロボットが1台の場合は、基地局との通信を中継することができず、電波の届かない領域に移動した移動ロボットが、再び通信可能な領域への復帰ができない場合が起こり得るものであった。
【0004】
本発明は、かかる問題を解決するために創案されたものであり、無線基地局と通信する無線環境の状態を適確に判断できるマップを作成する移動ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、請求項1に記載の移動ロボットは、管理用コンピュータに接続された1以上の無線基地局を介して、前記管理用コンピュータとの間で無線通信すると共に、所定の移動領域において当該移動領域の地図データを利用して自律的に移動する移動ロボットであって、前記無線基地局と無線通信を行う無線通信手段と、前記無線通信手段と前記無線基地局との無線通信において、前記無線通信手段が受信する受信信号の無線強度を含む無線環境の良好度を示す複数種類の無線環境データを検出する無線環境検出手段と、前記複数の無線環境データに所定の重み付けをした結果を示す総合無線環境データを算出する総合無線環境データ算出手段と、前記移動領域における自己の位置を認識する自己位置認識手段と、前記移動領域の地図データを記憶する記憶手段と、前記算出された総合無線環境データを、前記無線環境データを検出したときに前記自己位置認識手段によって認識された位置に対応付けて、前記記憶手段に記憶された地図データに書き込むことにより、総合無線環境マップを前記無線基地局毎に作成する総合無線環境マップ作成手段と、を備えて構成した。
【0006】
かかる構成によれば、移動ロボットは、無線環境検出手段によって、無線基地局との通信環境の良好度を表す指標である無線環境データとして、移動ロボット側の無線通信手段が無線基地局から送信された信号を受信して、その受信信号の無線強度を検出すると共に、無線強度以外の、例えば、通信速度、通信エラー回数、データ再送回数などを検出する。そして、移動ロボットは、無線環境検出手段で検出した複数の無線環境データを、総合無線環境データ算出手段によって、所定の重み付けをして、例えば、加重平均することにより、総合無線環境データを算出する。そして、移動ロボットは、総合無線環境マップ作成手段によって、総合無線環境データ算出手段で算出された総合無線環境データを、算出の基になった無線環境データを検出したときの、自己位置認識手段によって認識した自己の位置、すなわち、当該無線環境データを検出した位置に対応付けて、記憶手段に記憶された地図データに書き込むことによって総合無線環境マップを作成する。
これによって、移動ロボットは、無線強度に、無線強度以外の無線環境の良好度を表す指標を加味した総合無線環境データからなる総合無線環境マップを利用して、移動領域における無線環境の状態を判断することができるようになる。
【0007】
請求項2に記載の移動ロボットは、請求項1に記載の移動ロボットにおいて、前記複数種類の無線環境データは、前記無線強度に関するデータを含み、さらに通信速度及び通信エラー回数及びデータ再送回数の内の少なくとも一つに関するデータを含むように構成した。
【0008】
かかる構成によれば、移動ロボットは、無線強度以外の無線環境の良好度を表す指標として、通信状態を無線強度より直接的に示す通信速度、通信エラー回数、データ再送回数の少なくとも何れか一つを加味した総合無線環境データからなる総合無線環境マップを作成する。
これによって、移動ロボットは、移動領域における無線環境の状態をより適確に判断することができる。
【0009】
請求項3に記載の移動ロボットは、請求項1又は請求項2に記載の移動ロボットにおいて、前記記憶手段に記憶された地図データと、前記自己位置認識手段によって認識された位置とに基づいて、予め定められた位置へ自律的に移動し、その移動地点において、前記無線環境検出手段によって無線環境データを検出するように構成した。
【0010】
かかる構成によれば、移動ロボットは、記憶手段に記憶された地図データと、自己位置認識手段によって認識される位置とに基づいて、移動領域内の指定された任意の位置に自律的に移動して、無線環境検出手段によって、その移動地点における無線環境データを検出し、検出した無線環境データに基づいて算出される総合無線環境データからなる総合無線環境マップを作成する。
これによって、移動ロボットは、無線環境データ検出位置を指定するだけで、自動的に総合無線環境マップを作成することができる。
【0011】
請求項4に記載の移動ロボットは、請求項1又は請求項2に記載の移動ロボットにおいて、さらに、人物の移動方向と移動の速さとを検出する移動検出手段を有し、前記移動検出手段によって検出した移動方向と移動の速さとで、前記人物と共に移動すると共に、前記人物と共に移動する経路上において、前記無線環境検出手段によって無線環境データを検出するように構成した。
【0012】
かかる構成によれば、移動ロボットは、移動検出手段によって、当該移動ロボットを無線環境データを検出する位置に誘導するため近傍にいる人物の移動方向と移動の速さとを検出し、その人物と共に移動する。移動検出手段は、例えば、ヒト型の移動ロボットの場合は、腕部に設けた6軸力センサを用いることができる。人物が移動ロボットの手を引いて誘導しようとすると、移動ロボットは当該センサの各方向の反力成分を解析して、手を引く方向とその大きさを検出し、その検出値に基づいて、人物の移動方向と移動の速さとを検出することができる。そして、移動ロボットは、例えば、誘導する人物が移動を停止した位置や予め定めた時間周期になったときの位置において、無線環境検出手段によって、無線環境データを検出し、検出した無線環境データに基づいて算出される総合無線環境データからなる総合無線環境マップを作成する。
これによって、総合無線環境マップを作成するために、移動ロボットを操作する人物(操作者)は、無線環境データを検出する地点を逐一入力する必要がなく、操作者が移動ロボットを移動領域内を適宜誘導して移動させるだけで総合無線環境マップを作成することができる。
【0013】
請求項5に記載の移動ロボットは、請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の移動ロボットにおいて、前記無線環境検出手段は、所定のタイミングで反復して前記無線環境データを検出すると共に、この反復して検出される無線環境データに基づいて、前記総合無線環境データ算出手段によって、前記総合無線環境データを算出し、前記算出された総合無線環境データと、当該無線環境データを検出したときの位置に対応付けられて前記地図データに記録された前記総合無線環境データとを比較し、両者に所定値以上の差がある状態が所定回数以上連続した場合に、前記地図データに記録された前記総合無線環境データを、直近に算出された総合無線環境データに書き換えることによって、前記総合無線環境マップを更新する総合無線環境マップ更新手段を、さらに備えて構成した。
【0014】
かかる構成によれば、移動ロボットは、例えば、物品運搬などのタスク実行中にも、無線環境検出手段によって、所定のタイミングで反復して無線環境データを検出し、検出した無線環境データに基づいて、総合無線環境データ算出手段によって、総合無線環境データを算出する。すなわち、移動ロボットは、常時、反復して総合無線環境データを取得している。そして、総合無線環境マップ更新手段によって、反復して取得する総合無線環境データと、その総合無線環境データを算出する基になった無線環境データを検出した位置に対応付けられて、記憶手段に記憶された地図データに総合無線環境マップとして記録されている総合無線環境データとを比較する。すなわち、今現在の総合無線環境データと、地図データに記録されている過去の総合無線環境データとを比較し、今現在のデータが、地図データに記録されているデータよりも所定値以上(例えば、10%以上)異なる状態が、所定回数以上(例えば、3回以上)連続する場合は、例えば、パーティションが新たに設置されたなどの、恒常的な無線環境の変化が生じたものとみなし、直近に取得した総合無線環境データ(例えば、3回連続した場合は、2回目に取得したデータ)を、その位置における総合無線環境データとして、地図データに上書きして、総合無線環境マップを更新する。
これによって、移動ロボットは、通常のタスクを実行することで、総合無線環境マップのメンテナンスを行うことができる。
【0015】
請求項6に記載の移動ロボットは、請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の移動ロボットにおいて、前記無線環境検出手段によって無線環境データを検出した自己の位置において、撮像手段で撮影された自己の周囲の画像を、前記無線環境データを検出した位置に対応付けて、前記記憶手段に保存する周囲画像取得手段を、さらに備えて構成した。
【0016】
かかる構成によれば、移動ロボットは、周囲画像取得手段によって、例えば、カメラなどの撮像手段を用いて、無線環境検出手段によって無線環境データを検出した位置において、周囲の画像を取得して、取得した画像データを、取得した位置に対応付けて記憶手段に保存する。
ここで、周囲の画像とは、水平方向に関して360°の全方位の画像であり、例えば、水平方向に90°の画角で撮影できるカメラを用いた場合は、カメラの撮影方向を90°ずつ回転しながら撮影することにより、4枚の画像データとして取得することができる。
【0017】
これによって、例えば、無線環境データが総合無線環境マップに記録されたデータに比べて大きな変化があった場合には、操作者は、記憶手段に保存された、その地点での移動ロボットの周囲の画像データを参照して、例えば、その変化の原因や対策について検討する際の有用な情報として利用することができる。
【0018】
請求項7に記載の移動ロボットは、管理用コンピュータは複数の無線基地局と接続され、前記複数の無線基地局の何れか一つを介して前記管理用コンピュータとの間で無線通信する請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載の移動ロボットであって、前記総合無線環境マップ作成手段によって前記複数の無線基地局毎に作成された複数の総合無線環境マップに基づいて、最良の総合無線環境データを有する無線基地局を、前記記憶手段に記憶された地図データに、位置に対応付けて書き込むことにより最適無線基地局マップを作成する最適無線基地局マップ作成手段を備えて構成した。
【0019】
かかる構成によれば、移動領域内に複数の無線基地局が設置されている場合において、移動ロボットは、総合無線環境マップ作成手段によって、複数の無線基地局のそれぞれに対して、総合無線環境マップを作成する。次に、最適無線基地局マップ作成手段によって、総合無線環境マップ作成手段で作成した複数の総合無線環境マップに基づいて、例えば、各無線環境データの検出位置毎に総合無線環境データを比較し、総合無線環境が最も良好な無線基地局を、当該位置における最適無線基地局と判定し、判定した最適無線基地局を、記憶手段に記憶された地図データに、当該位置に対応付けて書き込むことにより、最適無線基地局マップを作成する。
これによって、移動ロボットは、最適無線基地局マップを利用して、移動領域内の各位置において最も良好な無線環境となる無線基地局を判断することができるようになる。
【0020】
請求項8に記載の移動ロボットは、請求項7に記載の移動ロボットにおいて、前記無線環境検出手段によって一の無線基地局に関する前記無線環境データを検出できなかった場合に、前記無線通信手段によって、前記一の無線基地局とは異なる他の無線基地局を介して、前記一の無線基地局に異常があることを前記管理用コンピュータに通知する無線基地局異常通知手段を、さらに備えて構成した。
【0021】
かかる構成によれば、移動領域内に複数の無線基地局が設置されている場合において、移動ロボットは、無線基地局異常通知手段によって、無線環境検出手段による接続中の(又は接続対象として選択した)無線基地局との無線環境データの検出が正常に検出できなかった場合に、当該無線基地局に異常があると判断し、他の無線基地局と接続して、先の無線基地局に異常があることを管理用コンピュータに通知する。
これによって、無線基地局の異常を迅速に管理用コンピュータに知らせることができる。
【0022】
請求項9に記載の移動ロボットは、請求項1乃至請求項8の何れか一項に記載の移動ロボットにおいて、前記総合無線環境マップ作成手段によって作成された総合無線環境マップを、前記無線通信手段によって、前記管理用コンピュータに送信するように構成した。
【0023】
かかる構成によれば、移動ロボットは、作成した総合無線環境マップを、無線通信手段によって、管理用コンピュータに送信する。
これによって、管理用コンピュータは、受信した総合無線環境マップを、例えば、記憶装置に保存することにより、移動ロボットは、例えば、再起動などによって、記憶手段に記憶した総合無線環境マップが消失した場合において、移動領域の総合無線環境マップを再度作成することなく、管理用コンピュータに保存されている総合無線環境マップを記憶手段にダウンロードして利用することができるようになる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、移動ロボットは、無線基地局と通信する無線環境の状態を適確に判断することができ、無線強度からは予期できない通信切断を未然に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して詳細に説明する。説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0026】
<移動ロボット制御システムの構成>
(システムの構成)
はじめに、本発明の実施形態に係る移動ロボット制御システムAについて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る移動ロボット制御システムを示すシステム構成図である。
図1に示すように、移動ロボット制御システムAは、タスクを実行する移動領域に配置された1台以上(本実施形態では1台)の移動ロボットR(以下、「ロボット」と適宜略称する)と、これらロボットRと無線通信によって接続された1台以上の無線親機(無線基地局)1(本実施形態では1A,1Bの2台)と、無線親機1にネットワーク4を介して接続された管理用コンピュータ3と、管理用コンピュータ3にネットワーク4を介して接続された記憶部5及び端末7と、を備えている。
【0027】
ロボット(移動ロボット)Rは、タスクを実行する移動領域(移動範囲)内に配置されており、この移動領域内において自律移動を行い、タスク実行命令信号に基づいて、例えば、物品運搬や訪問者の道案内などのタスクを実行するものである。なお、この移動領域内には、移動領域の全域をカバーできるように、適宜な場所に無線親機1が設置されている。
【0028】
無線親機(無線基地局)1(1A,1B)は、管理用コンピュータ3が、無線通信によってロボットRと通信するための通信手段であり、例えば、IEEE802.11b、IEEE802.11g又はIEEE802.11aなどに準拠する規格の無線LANの基地局を用いることができる。また、ブルートゥース(登録商標)などの他の規格の無線通信装置を用いることもできる。
移動領域内に複数の無線親機1が設置されている場合は、ロボットRは、適宜に無線環境が良好な状態の無線親機1に接続を切り替えて、管理用コンピュータ3と通信を行うようになっている。
【0029】
管理用コンピュータ3は、後記する端末7から入力されるタスクデータに基づき、ロボットRにタスクを実行させるため、このタスクの内容を含むタスク実行命令信号を生成し、ロボットRに出力する。このタスクデータは、ロボットRに実行させるタスクに関するデータであり、例えば、運搬する物品の依頼元や配達先などに関する情報、道案内する訪問者の訪問先や訪問者に関する情報などを含んでいる。
また、管理用コンピュータ3は、記憶部5に対する入出力を管理し、記憶部5に記憶されている地図データや総合無線環境マップをロボットRに送信すると共に、ロボットRから送信された総合無線環境マップや画像データを地図データにリンクして記憶部5に保存する。
管理用コンピュータ3としては、例えば、汎用のPC(Personal Computer)を用いることができる。
【0030】
記憶部5は、ロボットRがタスクを実行するために移動する移動領域に関する地図データ、地図データにリンクした総合無線環境マップ、画像データなどを記憶するための記憶装置である。地図データは、例えば、建物の各階毎のフロアマップのように、移動領域に対応して予め記憶部5に登録されている。記憶部5に対する入出力(書き込み・読み出し)は、管理用コンピュータ3によって管理される。
記憶部5としては、例えば、ハードディスク装置、光ディスク装置、半導体メモリ装置などを用いることができる。
【0031】
端末7は、管理用コンピュータ3にタスクデータを入力するための入力装置であり、ノート型コンピュータ、PHSなどを用いることができる。また、端末7は、ロボットRから送信された総合無線環境マップを視認しやすい形式に変換して表示したり、画像データを表示したりするための表示装置でもある。
【0032】
なお、管理用コンピュータ3と、記憶部5と、端末7と、無線親機1とは、ネットワーク4を介して接続されるのではなく、そのすべて又は一部が一体化された構成でもよい。
【0033】
次に、図2を参照して、本実施形態に係るロボットRが移動中に障害物を検知し、また移動領域内の適所に設置された位置を確認するためのマークを検知する様子について説明する。
図2は、本実施形態に係るロボットの移動中の様子を示した斜視図であり、(a)は通常の移動領域を移動している状態を、(b)はマークの設置領域を移動している状態をそれぞれ示した図である。
【0034】
図2に示すように、このロボットRは、あるタスク(例えば書類を届ける等)を実行するためにオフィスや廊下などの移動領域内を自律移動する場合に、レーザスリット光または赤外線を照射して、路面状態あるいはマークM等を探索するようになっている。
すなわち、ロボットRは、自己が移動領域内のどこを移動しているかを把握し、通常の移動領域内にいる場合はレーザスリット光(以下、「スリット光」と適宜略称する。)を路面に照射して路面の段差、うねり、障害物の有無などを検出し、マーク設置領域内にいる場合は、赤外線を路面に照射してマークMを検出し、自己位置の確認・補正などを行うようになっている。
【0035】
ここで、マークMは、例えば赤外線を再帰的に反射する反射材料で構成された部材であり、移動領域内の所定箇所(例えば扉の前など)に設置されている。マークMは移動領域内の景観を損なわないように例えば透明にしたり、極小にしたりするのが好適である。また、本実施形態においては、図2に示すように、3つの反射材料で1つのマークMとし、2つのマークMを1組として路面に設置されている。それぞれのマークMは位置データを有しており、当該位置データは地図データに含まれる形で記憶部5及びロボットR内の後記する記憶部190に記憶されている。
【0036】
なお、本実施形態にかかるロボットRで観測するマークMは、3点を1つのマークMとして2つ1組で使用したが、これに限られるものではなく、適宜変更可能である。例えば、路面に連続線状に設置してもよいし、点線状に設置してもよい。
【0037】
(ロボットの外観)
次に、本発明の実施形態に係るロボットRの外観について説明する。以下の説明において、ロボットRの前後方向にX軸、左右方向にY軸、上下方向にZ軸をとる(図3参照)。
本発明の実施形態に係るロボットRは、自律移動型の2足移動ロボットである。このロボットRは、管理用コンピュータ3から送信された実行命令信号に基づき、タスクを実行するものである。
【0038】
図3は、図1及び図2のロボットの外観を模式的に示す側面図である。図3に示すように、ロボットRは、人間と同じように2本の脚部R1(1本のみ図示)により起立、移動(歩行、走行など)し、胴部R2、2本の腕部R3(1本のみ図示)および頭部R4を備え、自律して移動する。また、ロボットRは、これら脚部R1、胴部R2、腕部R3および頭部R4の動作を制御する制御装置搭載部R5を背負う形で背中(胴部R2の後部)に備えている。
【0039】
(ロボットの駆動構造)
続いて、ロボットRの駆動構造について説明する。図4は、図3のロボットの駆動構造を模式的に示す斜視図である。なお、図4における関節部は、当該関節部を駆動する電動モータにより示されている。
【0040】
(脚部R1)
図4に示すように、左右それぞれの脚部R1は、6個の関節部11R(L)〜16R(L)を備えている。左右12個の関節は、股部(脚部R1と胴部R2との連結部分)の脚部回旋用(Z軸まわり)の股関節部11R,11L(右側をR、左側をLとする。また、R,Lを付さない場合もある。以下同じ。)、股部のピッチ軸(Y軸)まわりの股関節部12R,12L、股部のロール軸(X軸)まわりの股関節部13R,13L、膝部のピッチ軸(Y軸)まわりの膝関節部14R,14L、足首のピッチ軸(Y軸)まわりの足首関節部15R,15L、および、足首のロール軸(X軸)まわりの足首関節部16R,16Lから構成されている。そして、脚部R1の下には足部17R,17Lが取り付けられている。
【0041】
すなわち、脚部R1は、股関節部11R(L),12R(L),13R(L)、膝関節部14R(L)および足首関節部15R(L),16R(L)を備えている。股関節部11R(L)〜13R(L)と膝関節部14R(L)とは大腿リンク51R,51Lで、膝関節部14R(L)と足首関節部15R(L),16R(L)とは下腿リンク52R,52Lで連結されている。
【0042】
(胴部R2)
図4に示すように、胴部R2は、ロボットRの基体部分であり、脚部R1、腕部R3および頭部R4と連結されている。すなわち、胴部R2(上体リンク53)は、股関節部11R(L)〜13R(L)を介して脚部R1と連結されている。また、胴部R2は、後記する肩関節部31R(L)〜33R(L)を介して腕部R3と連結されている。また、胴部R2は、後記する首関節部41,42を介して頭部R4と連結されている。
また、胴部R2は、上体回旋用(Z軸まわり)の関節部21を備えている。
【0043】
(腕部R3)
図4に示すように、左右それぞれの腕部R3は、7個の関節部31R(L)〜37R(L)を備えている。左右14個の関節部は、肩部(腕部R3と胴部R2との連結部分)のピッチ軸(Y軸)まわりの肩関節部31R,31L、肩部のロール軸(X軸)まわりの肩関節部32R,32L、腕部回旋用(Z軸まわり)の肩関節部33R,33L、肘部のピッチ軸(Y軸)まわりの肘関節部34R,34L、手首回旋用(Z軸まわり)の腕関節部35R,35L、手首のピッチ軸(Y軸)まわりの手首関節部36R,36L、および手首のロール軸(X軸)まわりの手首関節部37R,37Lから構成されている。そして、腕部R3の先端には把持部(ハンド)71R,71Lが取り付けられている。
【0044】
すなわち、腕部R3は、肩関節部31R(L),32R(L),33R(L)、肘関節部34R(L)、腕関節部35R(L)および手首関節部36R(L),37R(L)を備えている。肩関節部31R(L)〜33R(L)と肘関節部34R(L)とは上腕リンク54R(L)で、肘関節部34R(L)と手首関節部36R(L),37R(L)とは前腕リンク55R(L)で連結されている。
【0045】
(頭部R4)
図4に示すように、頭部R4は、首部(頭部R4と胴部R2との連結部分)のY軸まわりの首関節部41と、首部のZ軸まわりの首関節部42と、を備えている。首関節部41は頭部R4のチルト角を設定するためのものであり、首関節部42は頭部R4のパン角を設定するためのものである。
【0046】
このような構成により、左右の脚部R1は合計12の自由度を与えられ、移動中に12個の関節部11R(L)〜16R(L)を適宜な角度で駆動することで、脚部R1に所望の動きを与えることができ、ロボットRが任意に3次元空間を移動することができる。また、左右の腕部R3は合計14の自由度を与えられ、14個の関節部31R(L)〜37R(L)を適宜な角度で駆動することで、ロボットRが所望の作業を行うことができる。
【0047】
また、足首関節部15R(L),16R(L)と足部17R(L)との間には、公知の6軸力センサ61R(L)が設けられている。6軸力センサ61R(L)は、床面からロボットRに作用する床反力の3方向成分Fx,Fy,Fzと、モーメントの3方向成分Mx,My,Mzと、を検出する。
【0048】
また、手首関節部36R(L),37R(L)と把持部71R(L)との間には、公知の6軸力センサ(移動検出手段)62R(L)が設けられている。6軸力センサ62R(L)は、ロボットRの把持部71R(L)に作用する反力の3方向成分Fx,Fy,Fzと、モーメントの3方向成分Mx,My,Mzと、を検出する。
【0049】
また、胴部R2には、傾斜センサ63が設けられている。傾斜センサ63は、胴部R2の重力軸(Z軸)に対する傾きと、その角速度と、を検出する。
また、各関節部の電動モータは、その出力を減速・増力する減速機(図示せず)を介して前記した大腿リンク51R(L)、下腿リンク52R(L)などを相対変位させる。これら各関節部の角度は、関節角度検出手段(例えば、ロータリエンコーダ)によって検出される。
【0050】
制御装置搭載部R5は、後記する自律移動制御部150、無線通信部160、主制御部140、バッテリ(図示せず)などを収納している。各センサ61〜63などの検出データは、制御装置搭載部R5内の各制御部に送られる。また、各電動モータは、各制御部からの駆動指示信号により駆動される。
【0051】
なお、この2足移動制御についての詳細は、例えば、特許第3672102号公報に開示されている。また、本実施形態では、ロボットRは人型をした2足移動ロボットとしたが、本発明は、4足移動歩行、車輪による移動、無限軌道による移動など、他の移動手段を備えた移動ロボットであってもよく、人型に限定されるものでもない。
【0052】
(ロボットの構成)
図5は、本実施形態に係るロボットの構成を示したブロック図である。
図5に示すように、ロボットRは、前記した脚部R1、胴部R2、腕部R3、頭部R4に加えて、カメラC,C、スピーカS、マイクMC、画像処理部110、音声処理部120、主制御部140、自律移動制御部150、無線通信部160、及び周辺状態検知部170を有する。
さらに、ロボットRは、自己位置を認識するため自己位置認識手段として、方向を認識するジャイロセンサSR1や、座標を認識するGPS(Global Positioning System)受信器SR2を有している。
【0053】
[カメラ]
カメラ(撮像手段)C,Cは、映像をデジタルデータとして取り込むことができるものであり、例えばカラーCCD(Charge Coupled Device)カメラが使用される。カメラC,Cは、左右に平行に並んで配置され、撮影した画像は画像処理部110に出力される。このカメラC,Cと、スピーカS及びマイクMCは、いずれも頭部R4の内部に配設される。
【0054】
[画像処理部]
画像処理部110は、カメラC,Cが撮影した画像を処理して、撮影された画像からロボットRの周囲の状況を把握するため、周囲の障害物や人物の認識を行う部分である。この画像処理部110は、ステレオ処理部111a、移動体抽出部111b、及び顔認識部111cを含んで構成される。
ステレオ処理部111aは、左右のカメラC,Cが撮影した2枚の画像の一方を基準としてパターンマッチングを行い、左右の画像中の対応する各画素の視差を計算して視差画像を生成し、生成した視差画像及び元の画像を移動体抽出部111bに出力する。なお、この視差は、ロボットRから撮影された物体までの距離を表すものである。
【0055】
移動体抽出部111bは、ステレオ処理部111aから出力されたデータに基づき、撮影した画像中の移動体を抽出するものである。移動する物体(移動体)を抽出するのは、移動する物体は人物であると推定して、人物の認識をするためである。
移動体の抽出をするために、移動体抽出部111bは、過去の数フレーム(コマ)の画像を記憶しており、最も新しいフレーム(画像)と、過去のフレーム(画像)とを比較して、パターンマッチングを行い、各画素の移動量を計算し、移動量画像を生成する。そして、視差画像と、移動量画像とから、カメラC,Cから所定の距離範囲内で、移動量の多い画素がある場合に、人物があると推定し、その所定距離範囲のみの視差画像として、移動体を抽出し、顔認識部111cへ移動体の画像を出力する。
【0056】
顔認識部111cは、抽出した移動体から肌色の部分を抽出して、その大きさ、形状などから顔の位置を認識する。なお、同様にして、肌色の領域と、大きさ、形状などから手の位置も認識される。
認識された顔の位置は、ロボットRが移動するときの情報として、また、その人とのコミュニケーションを取るため、主制御部140に出力されると共に、無線通信部160に出力されて、無線親機1を介して、管理用コンピュータ3に送信される。
【0057】
[音声処理部]
音声処理部120は、音声合成部121aと、音声認識部121bとを有する。
音声合成部121aは、主制御部140が決定し、出力してきた発話行動の指令に基づき、文字情報から音声データを生成し、スピーカSに音声を出力する部分である。音声データの生成には、予め記憶している文字情報と音声データとの対応関係を利用する。
音声認識部121bは、マイクMCから音声データが入力され、予め記憶している音声データと文字情報との対応関係に基づき、音声データから文字情報を生成し、主制御部140に出力するものである。
【0058】
[自律移動制御部]
自律移動制御部150は、頭部制御部151d、腕部制御部151c、胴部制御部151b、脚部制御部151aを有する。
頭部制御部151dは、主制御部140の指示に従い頭部R4を駆動し、腕部制御部151cは、主制御部140の指示に従い腕部R3を駆動し、胴部制御部151bは、主制御部140の指示に従い胴部R2を駆動し、脚部制御部151aは、主制御部140の指示に従い脚部R1を駆動する。
また、ジャイロセンサSR1、及びGPS受信器SR2が検出したデータは、主制御部140に出力され、ロボットRの行動を決定するのに利用されると共に、主制御部140から無線通信部160を介して管理用コンピュータ3に送信される。
【0059】
[無線通信部]
無線通信部(無線通信手段)160は、管理用コンピュータ3とデータの送受信を行う通信装置であり、無線インタフェース部161と、プロトコル制御部162と、無線環境検出部163と、通信アンテナ160aとを備えている。
【0060】
図6を参照して、無線通信部160の詳細な構成について説明する。ここで、図6は、無線通信部の構成を示すブロック図である。
図6に示したように、無線通信部160は、無線インタフェース部161と、プロトコル制御部162と、無線環境検出部163と、通信アンテナ160aとを備え、さらに、無線環境検出部163は、無線強度検出部163aと、通信速度検出部163bと、エラー回数検出部163cと、再送回数検出部163dとを備えている。
【0061】
無線インタフェース部161は、通信アンテナ160aによって管理用コンピュータ3から無線親機1(図5参照)を介して送受信される無線波とデータとの物理変換を行う。無線インタフェース部161は、受信時には、通信アンテナ160aが受信した無線波からデータに変換し、プロトコル制御部162へ出力する。また、受信した無線波を無線環境検出部163の無線強度検出部163aに出力する。
また、送信時には、無線インタフェース部161は、プロトコル制御部162からデータを入力し、無線波に変換して通信アンテナ160aを介して、無線親機1(図5参照)に送信する。
【0062】
プロトコル制御部162は、例えば、IEEE802.3 等のLAN規定に基づき、管理用コンピュータ3とロボットRの主制御部140との間のデータの通信を行うためのデータフレーミングや折衝を行う。プロトコル制御部162は、受信時には、無線インタフェース部161によって変換された管理用コンピュータ3からの送信データから、ロボットRに割り当てられたアドレス宛のデータを選別し、例えば、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)プロトコル等の所定の通信プロトコル方式に基づき、TCP/IPパケット等のフレームからデータを抽出して主制御部140に出力する。
送信時には、プロトコル制御部162は、主制御部140から入力されたデータを、前記した所定の通信プロトコル方式に基づき、TCP/IPパケット等のフレームを生成して無線インタフェース部161に出力する。
また、プロトコル制御部162における送受信時の通信速度、受信時のエラー回数及び送信時の再送回数が、それぞれ無線環境検出部163の通信速度検出部163b、エラー回数検出部163c及び再送回数検出部163dによって測定される。
【0063】
無線環境検出部(無線環境検出手段)163は、無線強度検出部163aによって、無線インタフェース部161で変換する無線波の無線強度(電波強度)及びノイズフロアを検出すると共に、通信速度検出部163bによって、無線親機1(図5参照)との間の通信速度を検出する。また、エラー回数検出部163cによって、受信時のプロトコル制御部162におけるエラー回数を検出し、再送回数検出部163dによって、送信時のプロトコル制御部162におけるデータの再送回数を検出する。検出(測定)された無線強度、ノイズフロア、通信速度、エラー回数及び再送回数からなる無線環境データは、主制御部140に出力される。
【0064】
[主制御部]
主制御部140は、画像処理部110、音声処理部120、自律移動制御部150、無線通信部160、周辺状態検知部170、記憶部190、ジャイロセンサSR1、GPS受信器SR2などのロボットRを構成する各部を統括的に制御する制御手段であり、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などからなるコンピュータ装置によって構成される。
本実施形態では、主制御部140は、総合無線環境データ算出部141と、総合無線環境マップ作成部142と、最適無線親機マップ作成部143と、総合無線環境マップ更新部144と、無線親機異常通知部145と、周囲画像取得部146と、を有する。
【0065】
総合無線環境データ算出部(総合無線環境データ算出手段)141は、無線環境検出部163によって検出された無線環境データに基づいて、後記する総合無線環境データを算出する。算出した総合無線環境データは、総合無線環境マップ作成部142に出力する。
【0066】
総合無線環境マップ作成部(総合無線環境マップ作成手段)142は、総合無線環境データ算出部141によって算出された総合無線環境データを、算出の基となった無線環境データを検出したときのロボットRの位置に対応付けて、記憶部190に記憶された地図データに書き込んで記録することにより、総合無線環境マップを作成する。
【0067】
総合無線環境マップを構成するデータは、例えば、ロボットRの識別子、無線親機1の識別子、測定位置の座標、測定時刻、及び総合無線環境データから構成される。さらに、総合無線環境データを算出する基になった無線環境データを含めて構成してもよく、過去に測定された無線環境データを測定履歴として保存するようにしてもよい。
【0068】
また、総合無線環境マップは、地図データ(データベース)に直接書き込んで構成してもよいし、当該地図データとリンクする他のデータベース(例えば、総合無線環境マップデータベース)を構築して記録するようにしてもよい。
あるいは、総合無線環境マップなどを構成するデータに、例えば、フロアマップ、総合無線環境マップ、最適無線親機マップなどのマップの属性を示す識別子を加えておき、データベースから所望の属性のマップを必要に応じて抽出できるようにしてもよい。
【0069】
最適無線親機マップ作成部(最適無線基地局マップ作成手段)143は、複数の無線親機1(図5参照)が設置された移動領域に対して、総合無線環境マップ作成部142によって作成された、それぞれの無線親機1に対する総合無線環境マップに基づいて、後記する最適無線親機マップ(最適無線基地局マップ)を作成して記憶部190に記録する。
【0070】
最適無線親機マップを構成するデータは、例えば、ロボットRの識別子、位置座標、更新時刻、及び最適無線親機の識別子から構成される。
【0071】
また、最適無線親機マップは、総合無線環境マップと同様に、地図データ(データベース)に直接書き込んで構成してもよいし、当該地図データとリンクする他のデータベース(例えば、最適無線親機マップデータベース)を構築して記録するようにしてもよい。また、他のデータベースとして、例えば、最適無線親機マップと総合無線環境マップとを一体化したデータベースを構築するようにしてもよい。
【0072】
総合無線環境マップ更新部(総合無線環境マップ更新手段)144は、総合無線環境マップ作成部142によって作成され、記憶部190に記憶された総合無線環境マップに記録された総合無線環境データと、ロボットRがタスク実行中に新しく取得した総合無線環境データとを比較して、必要に応じて、地図データに記録した総合無線環境データ等を更新して、総合無線環境マップのメンテナンスを行う。
また、総合無線環境マップ更新部144は、複数の無線親機1が設置された領域に関する総合無線環境マップのメンテナンスを行った際には、続けて関連する最適無線親機マップのメンテナンスを行う。
【0073】
無線親機異常通知部(無線基地局異常通知手段)145は、無線環境検出部163によって無線環境データが正常に検出(測定)されたかどうかの判定を行い、正常に検出されなかった場合は、無線通信部160を用いて、管理用コンピュータ3に、無線親機1に異常があることを通知する。
また、無線親機異常通知部145は、総合無線環境マップ更新部144によって、無線親機1の無線環境の状態が悪化していることを検知した場合は、無線通信部160を用いて、管理用コンピュータ3に、当該無線親機1の通信環境が悪化していることを通知すると共に、悪化を検知した地点で取得した無線環境データ、画像データなどを送信する。
【0074】
周囲画像取得部(周囲画像取得手段)146は、無線環境データを検出した位置において、カメラCを用いて周囲の画像を取得し、取得した画像を、その位置に対応付けて記憶部190に保存する。周囲画像取得部146は、周囲画像を取得する際には、脚部制御部151aを介して脚部R1を駆動し、ロボットRの向きを変えることによって、カメラCによる撮影方向を変え、周囲360°の画像を取得する。
【0075】
ここで、図7を参照して、総合無線環境データについて説明する。図7は、総合無線環境データを説明するための図である。
図7に示したように、本実施形態では、総合的に無線環境の良好度を評価するために、無線強度と、ノイズフロアと、エラー回数(通信エラー回数)と、再送回数(データ再送回数)と、通信速度とを指標である無線環境データとして用い、それぞれの無線環境データに重み付けして、総合無線環境データを算出する。
まず、無線環境を最もよく示すデータとして、無線強度に80%の重み付けをする。本実施形態では、無線強度データをそのまま用いるのではなく、ノイズフロアとの比を用いることとした。すなわち、無線親機1(図5参照)から送信された無線波をロボットRが受信した無線強度と、ノイズフロアとを、それぞれの強度に応じて、1〜100%に数値化する。但し、100%が最も強い強度を示す。そして、(無線強度/ノイズフロア)>1のときは、(無線強度/ノイズフロア)×0.8 を総合無線環境データへの寄与とする。例えば、無線強度が100%で、ノイズフロアが1%の場合が、最も無線環境が良好なときであり、100/1×0.8=80(%)である。
また、(無線強度/ノイズフロア)<1のときは、ノイズレベルが無線強度(信号レベル)よりも大きく、無線環境が極めて悪い状況であるとして、総合無線環境データへの寄与は“0”(%)とする。
【0076】
エラー回数は、重み付けを5%とし、1秒当たりのエラー回数を最大1028回として、(1−(エラー回数/1028))×5(%)を総合無線環境データへの寄与とする。すなわち、エラー回数が0回に近いほど、寄与は5%に近くなり(無線環境が良好)、エラー回数が1028回に近いほど、寄与は0%に近くなる(無線環境が悪い)。
【0077】
再送回数は、エラー回数と同様に、1秒当たりの再送回数を最大1028回として、(1−(再送回数/1028))×5(%)を総合無線環境データへの寄与とする。すなわち、再送回数が0回に近いほど、寄与は5%に近くなり(無線環境が良好)、再送回数が1028回に近いほど、寄与は0%に近くなる(無線環境が悪い)。
【0078】
通信速度は、重み付けを10%とし、用いる無線LANアダプタで選択された通信速度によって、予め決めた換算表を用いて、総合無線環境データへの寄与を算出する。
図7の項目が「通信速度」の欄には、数値範囲が{1,2,5.5,11}[Mbps]の場合と、数値範囲が{6,9,12,18,24,36,48,54}[Mbps]の換算表が定められている。前者は、IEEE802.11bに準拠する規格の無線LANアダプタを用いた場合の換算表であり、後者は、IEEE802.11g又はIEEE802.11aに準拠する規格の無線LANアダプタを用いた場合の換算表である。
速い通信速度で通信を確立することができるほど、良好な無線環境であり、高い換算値が割り当てられている。
なお、他の規格や方式の通信手段を用いる場合は、適宜に通信速度に対応した換算式を決めるようにすればよい。
【0079】
以上のようにして換算した4つの無線環境データを加算することで、100%から0%の値に規格化された総合無線環境データが算出される。
このように、無線強度以外の無線環境に関連するデータを含めた無線環境データに、重み付けして算出した総合無線環境データを用いることにより、より適切に無線環境を評価することができる。
【0080】
無線強度のみで無線環境の状態を評価した場合には、特に強度が低い領域においては通信が確立できるかどうかを適確に判断することは難しく、確実に通信可能な領域であると判断するためには、十分な余裕を持った無線強度レベルを閾値とする必要がある。このため、移動領域内の全域を通信可能な領域と判断できるようにするためには、無線親機1(図5参照)の無線波の出力を高くするか、図20(a)の下段の図のように、あるいは更に数多くの無線親機1を移動領域内に設置する必要が生じる。
【0081】
そこで、本実施形態のように、他の無線環境データを加味することにより、無線環境の状態の評価をより高精度に行うことができ、前記したように無線親機1(図5参照)の無線波の出力を高くしたり、設置台数を増加したりする必要がなくなる。
特に、エラー回数や再送回数は、通信が確立した状態で、そのときの無線環境の状態を評価することができるので、通信が確立できなくなる状態を適確に判断することができる。
【0082】
[周辺状態検知部]
図5に戻って説明を続ける。
周辺状態検知部(自己位置認識手段)170は、図5に示すように、スリット光照射手段であるレーザ装置171と、赤外線照射手段である赤外線LED(Light Emitting Diode)172と、探索域を撮像する2つの赤外線カメラ173、173と、これらを制御するセンサ制御部180と、を有する。
周辺状態検知部170は、レーザ装置171または赤外線LED172から探索域に向かってスリット光あるいは赤外線を照射するとともに当該探索域を赤外線カメラ173で撮像し、これらをセンサ制御部180で制御することにより、ロボットRの周辺状態を検知する部分である。すなわち、周辺状態検知部170は、従来の路面検知装置および位置確認装置に相当するものであり、赤外線カメラ173を共通にすることで省スペース化が図られている。
周辺状態検知部170は、主制御部140と接続されており、ジャイロセンサSR1やGPS受信器SR2によって認識した自己位置データを取得可能になっている。
【0083】
図8は、本実施形態に係るロボットの胴部を示した透視図である。
図8に示すように、本実施形態においては、2つの赤外線カメラ173は、胴部R2内の前面の腰の高さに左右に並んで配置されている。また、レーザ装置171は、2つの赤外線カメラ173、173の中間に配置されている。また、赤外線LED172は、一方の(図8においてはロボットRの左側の)赤外線カメラ173の周囲に配置されている。
なお、レーザ装置171、赤外線LED172および赤外線カメラ173を胴部R2の前面の腰の高さに設置すると、他の部位(例えば頭部R4や脚部R1など)に取り付けた場合に比してロボットRの揺れの影響が小さくなるとともに、腕部R3や脚部R1によって撮像範囲を遮られることが少ないというメリットがある。
【0084】
[レーザ装置]
レーザ装置171は例えば赤外線レーザ光をスリット状に照射する装置である。レーザ装置171は、赤外線レーザ光の照射方向を変化させるためのアクチュエータ(図示せず)に連結されており、探索域である路面に対してスリット光を放射状に照射できるようになっている。スリット光が対象物(例えば路面)にあたると路面にはレーザ輝線が描かれる。
レーザ装置171は後記するセンサ制御部180(切換判定部181)に接続されており、センサ制御部180の命令に基づいてスリット光を照射したり停止したりする。
【0085】
[赤外線LED]
赤外線LED172は探索域に向けて赤外線を照射する装置であり、本実施形態においては図8に示すようにロボットRの左側の赤外線カメラ173の周りを囲むように複数の赤外線LED172、172・・・が設置されている。赤外線LED172から照射された赤外線は路面に設置された再帰性材料で製造されたマークMによって再帰的に反射される。
赤外線LED172は後記するセンサ制御部180(切換判定部181)に接続されており、センサ制御部180の命令に基づいて赤外線を照射したり停止したりする。
【0086】
[赤外線カメラ]
撮像手段たる赤外線カメラ173は、撮像した画像をデジタルデータとして取り込むことができるものであり、例えばCCD赤外線カメラが使用される。赤外線カメラ173,173は、図8に示すように、胴部R2内の前面の腰の高さに左右に並んで配置されている。赤外線カメラ173で撮影した画像は後記するセンサ制御部180に出力される。
【0087】
赤外線カメラ173で撮像した画像のうち、スリット光が照射された探索域を撮像した画像(以下、「スリット光画像」という。)にはレーザ輝線が撮像される。このレーザ輝線を検出していわゆる光切断法の原理を用いることにより対象物までの距離が計算される。なお、スリット光画像は、左右の赤外線カメラ173、173で撮像される。これにより、路面の3次元形状を詳細に把握することができる。
【0088】
一方、赤外線カメラ173で撮像した画像のうち、赤外線が照射された探索域を撮像した画像(以下、「赤外線画像」という。)にはマークMが撮像される。赤外線カメラ173は、図8に示すように、ロボットRの胴部R2の腰の高さに所定角度で固定されているため、赤外線画像上のどの位置にマークMが写っているかを検出することで、マークMと赤外線カメラ173との相対的な位置関係、ひいてはマークMとロボットRとの相対的な位置関係を認識することができる。そのため、赤外線画像は、2つの赤外線カメラ173、173で撮像する必要がなく、本実施形態においてはロボットRの左側の赤外線カメラ173のみで撮像される。
【0089】
[センサ制御部]
次に、センサ制御部180について図9を参照してさらに詳しく説明する。図9は、周辺状態検知部の構成を示すブロック図である。
センサ制御部180は、図9に示すように、切換判定部181と、路面検出部182と、マーク検出部183と、自己位置計算部184と、自己位置補正部185と、を有する。
【0090】
また、センサ制御部180は、主制御部140を介して、後記する記憶部190に記憶されている地図データを取得できるようになっている。記憶部190から取得する地図データは、ロボットRが移動する移動領域の地図データであり、移動領域内の特定の場所に設置されたマークMの位置データと、当該位置データに所定の幅(範囲)を持たせたマークMのマーク設置領域に関するデータ(以下、「マーク設置領域データ」と適宜略称する。)と、を含んでいる。
取得した地図データは、切換判定部181および自己位置計算部184に入力される。
【0091】
[切換判定部]
切換判定部181は、主制御部140を介して記憶部190から読み出した地図データに含まれるマークMのマーク設置領域データと、主制御部140を介してジャイロセンサSR1又はGPS受信器SR2から取得した自己位置データとを比較する部分である。また、切換判定部181はレーザ装置171および赤外線LED172と接続されており、それぞれに作動命令または停止命令を出力可能になっている。
【0092】
マーク設置領域データと自己位置データとを比較した結果、自己位置がマークMのマーク設置領域外であると判定された場合には、切換判定部181はレーザ装置171に対して作動命令を出力するとともに、赤外線LED172に対して停止命令を出力するようになっている。一方、自己位置がマークMのマーク設置領域内であると判定された場合には、切換判定部181はレーザ装置171に対して停止命令を出力するとともに、赤外線LED172に対して作動命令を出力するようになっている。
【0093】
[路面検出部]
路面検出部182は、赤外線カメラ173で撮像したスリット光画像を解析して路面状態を検出する部分である。具体的には、例えばいわゆる光切断法を利用して赤外線カメラ173とスリット光が照射された路面との距離を求めることができる。スリット光はロボットRの移動方向にある路面に対して放射状に照射されることから、結果的に、ロボットRは移動先の路面の3次元形状を認識することができる。
路面検出部182で検出された路面状態の情報は主制御部140に出力される。
【0094】
[マーク検出部]
マーク検出部183は、赤外線カメラ173で撮像した赤外線画像を解析してマークMを検出する部分である。
マーク検出部183は、例えばバンドパスフィルタなどを備えており、赤外線LED172の中心波長周辺の光線を選択的に観測できるようになっている。これにより不要な波長域の光線はカットされ、可視光などによる外乱に強い装置にすることができる。
また、マーク検出部183は、1つのマークMを構成する3点間(図1参照)の相互距離と2つのマークMの中心間の距離(3点の中心同士の間隔)とを計測し、この2種類の距離が設定値付近であればマークMと認識するようになっている。これにより、マークM以外の赤外線反射物による外乱に強い装置とすることができる。
【0095】
[自己位置計算部]
自己位置計算部184は、赤外線画像に撮像されたマークMの位置(座標)からマークMとロボットRとの相対的な位置関係を計算する部分である。
赤外線カメラ173は、ロボットRの腰の辺りの高さに所定角度で固定されていることから、マークMが赤外線画像上のどの位置、換言すれば、どの画素に写っているかを解析することによって、ロボットRとマークMとの相対的な位置関係を計算することができる。また、マークMは2つを1組としていることから、ロボットRがマークM同士を結んだ直線に対してどれだけ傾いているかを計算することができる。すなわち、自己位置計算部184は、地図データから取得したマークMの座標とマークMとロボットRとの相対的な位置関係とに基づいてロボットRの正確な自己位置を計算することができる。
自己位置計算部184によって計算されたロボットRの自己位置は自己位置補正部185に出力される。
【0096】
[自己位置補正部]
自己位置補正部185は、マーク検出部183で検出したマークMの位置データに基づいてロボットRの自己位置を補正する部分である。
本実施形態では、自己位置補正部185は、自己位置計算部184によって計算した自己位置とジャイロセンサSR1やGPS受信器SR2から取得した自己位置とを比較し、両者にずれがある場合には自己位置計算部184で計算した自己位置を正として補正するようになっている。
そして、補正されたロボットRの自己位置データは主制御部140に出力される。これにより、自律移動制御によって累積した移動誤差あるいは位置認識誤差が解消され、ロボットRを正確・確実に移動制御することができる。
【0097】
なお、自己位置補正部185における自己位置の補正は、上記の方法に限られるものではない。例えば、赤外線画像の所定位置にマークMが写るように自律移動制御部150に命令を出してロボットRの位置や向きを微調整するようにしてもよい。
【0098】
本実施形態では、自己位置認識手段として、ジャイロセンサSR1及びGPS受信器SR2を用い、さらに、マークMを検知することにより自己位置を補正する自己位置補正部185を備えて、精度よく自己位置を認識できるように構成したが、自己位置補正部を用いずに、ジャイロセンサSR1又は/及びGPS受信器SR2によって自己位置を認識するようにしてもよいし、マークMの検出によって自己位置を認識するようにしてもよい。さらに、他の方法によって自己位置を認識するようにしてもよい。
【0099】
[記憶部]
図5に戻って説明を続ける。
記憶部(記憶手段)190は、例えばRAMまたはハードディスク装置などの記憶装置から構成されており、ロボットRが移動する移動領域の地図データ、総合無線環境マップ、最適無線親機マップ、無線環境データ、無線環境データの測定位置からカメラCによって撮影した画像データ等を記憶する部分である。
地図データは、移動領域内の特定の場所に設置されたマークM(図2参照)のマーク設置領域データを含んでおり、記憶部190は、主制御部140を介して、記憶している地図データをセンサ制御部180の切換判定部181および自己位置計算部184(図9参照)に出力可能になっている。
また、記憶部190は、主制御部140の総合無線環境マップ作成部142によって、総合無線環境マップに総合無線環境データが記録され、最適無線親機マップ作成部143によって、最適無線親機マップの最適無線親機データが記録され、総合無線環境マップ更新部144によって、総合無線環境マップの総合無線環境データ及び最適無線親機マップの最適無線親機データが更新されると共に、周囲画像取得部146によって、無線環境データを測定した位置において、カメラCを用いて撮影された画像データが、地図データの当該位置に対応付けて記憶される。
【0100】
更に、記憶部190に記憶される総合無線環境マップ、画像データなどは、主制御部140及び無線通信部160を介して、管理用コンピュータ3に送信され、管理用コンピュータ3によって管理される記憶部5に記憶される。また、記憶部5に記憶された地図データ、総合無線環境マップ、最適無線親機マップを、必要に応じてロボットR内に設けられた記憶部190にダウンロードして記憶することもできるようになっている。
【0101】
<ロボットの制御方法>
続いて、ロボットRの制御方法について、適宜図面を参照して説明する。
(ロボットの自律移動制御)
まず、ロボットRがスリット光の照射と赤外線の照射とを切換えながら自律的に移動する際の制御について、図10を参照(適宜図2、図5及び図9参照)して説明する。図10は、ロボットの自律移動制御(スリット光照射と赤外線照射との切換制御)に関するフロー図である。
【0102】
(ステップS1)
はじめに、ロボットRは、自己位置認識手段であるジャイロセンサSR1またはGPS受信器SR2によって自己位置データを取得することにより自己位置を認識する。取得した自己位置データは主制御部140を介して切換判定部181に出力される。
【0103】
(ステップS2)
つぎに、切換判定部181は、主制御部140を介して記憶部190からマークMの位置データを含んだ地図データを取得する。
【0104】
(ステップS3)
そして、切換判定部181は、ロボットRの自己位置とマークMのマーク設置領域とを比較して、当該自己位置がマークMのマーク設置領域内か否かを判定する。具体的には、図2に示すように、マークMから所定距離内にある範囲をマークMのマーク設置領域に設定して予め記憶部190(及び記憶部5)に記憶させておき、ロボットRの自己位置の座標が当該マーク設置領域内に含まれるか否かを判定する。
【0105】
なお、切換判定部181における判定方法は、これに限られるものではなく、例えば自己位置とマークMとの距離を計算し、当該距離が閾値よりも小さい場合にはマーク設置領域内にいると判定するようにしてもよい。また、かかる判定においては、ロボットRの移動方向を考慮するようにしてもよい。すなわち、ロボットRがマークMから遠ざかる方向に移動している場合には、マークMを検出する必要がないので、マークMとロボットRの自己位置との距離が閾値以内であっても、マーク設置領域内にいないと判定するようにしてもよい。
【0106】
これにより、スリット光照射と赤外線照射とを適切なタイミングで切り換えることができる。そのため、赤外線カメラ173を共通化して省スペース化を図ることができるとともに、無駄な赤外線照射を行わないことで消費電力を低減することができる。
【0107】
(ステップS4)
切換判定部181によって自己位置がマークMのマーク設置領域内ではない(ステップS3でNo)と判定された場合には、切換判定部181はレーザ装置171に作動命令を出力するとともに赤外線LED172に停止命令を出力する。作動命令を受けたレーザ装置171は探索域たる路面に対して放射状にスリット光を照射する(図2(a)参照)。また、停止命令を受けた赤外線LED172は赤外線の照射を停止する。
【0108】
(ステップS5)
レーザ装置171によってスリット光が照射されると、赤外線カメラ173はスリット光が照射された探索域を撮像してスリット光画像を取得する。
撮像されたスリット光画像は路面検出部182に出力される。
【0109】
(ステップS6)
路面検出部182は、例えば光切断法を用いてスリット光画像を解析することにより、路面の3次元形状を取得する。すなわち、路面検出部182によって路面状態が検出される。
検出された路面の3次元データは主制御部140に出力される。
【0110】
(ステップS7)
主制御部140は、地図データとして記憶されている路面の形状と、路面検出部182から送られてくる路面の形状を比較する。比較した結果、両者が一致または許容差の範囲内であれば(ステップS7でNo)、主制御部140は障害物が存在しないと判断し、ステップS1に戻って再びロボットRの周辺状態をセンシングする。
【0111】
(ステップS8)
比較した結果、両者が不一致または許容差の範囲を超えている場合(ステップS7でYes)は、主制御部140は、探索域に障害物があると判定する。そして、主制御部140は、自律移動制御部150に対して障害物の回避を命令する。具体的には、例えば迂回路を通るように指示したり、腕部R3を用いて障害物を排除したりすることが考えられる。
【0112】
なお、障害物がない場合でも、例えば路面に段差があるときには、地図データではなくて、路面検出部182で検出した路面の3次元データに基づいてロボットRの脚部R1や腕部R3を制御することにより、より正確・確実にロボットRを移動制御することができる。
ステップS3に戻って説明をつづける。
【0113】
(ステップS9)
ステップS3において、自己位置がマークMのマーク設置領域内にある(ステップS3でYes)と判定された場合には、切換判定部181は赤外線LED172に作動命令を出力するとともにレーザ装置171に停止命令を出力する。作動命令を受けた赤外線LED172は探索域たる路面に対して赤外線を照射する(図2(b)参照)。また、停止命令を受けたレーザ装置171はスリット光の照射を停止する。
【0114】
(ステップS10)
赤外線LED172によって赤外線が照射されると、赤外線カメラ173は、赤外線が照射された探索域を撮像して赤外線画像を取得する。探索域には再帰性を備える反射材で作られたマークMが設置されているため、赤外線画像にはマークMが撮像される。
撮像された赤外線画像はマーク検出部183に出力される。
【0115】
(ステップS11)
マーク検出部183は、例えばパターンマッチングなどの画像処理を用いて赤外線画像を解析し、マークMを検出する。これにより、赤外線画像上のどこに(どの画素に)マークMが位置しているかを把握することができる。
【0116】
(ステップS12)
自己位置計算部184は、赤外線画像上のマークMの位置(以下、「画像上位置」という。)に基づいてロボットRの位置を計算する。
具体的には、自己位置計算部184は、赤外線画像から求めたマークMとロボットRとの相対距離および相対角度を用いて、記憶部190から読み出したマークMの位置データから加減算することによってロボットRの自己位置を計算する。なお、赤外線カメラ173の取付位置および取付角度は固定されていることから、マークMが赤外線画像上のどこに写るかによって、ロボットRとマークMとの相対的な位置関係を計算することができる。また、2つのマークMを一組として使用していることから、相対的な角度のずれを認識することができる。そのため、方向の認識のずれも補正することができる。
【0117】
ここで、ロボットRの移動に伴って赤外線カメラ173の高さや傾きが変化することがあるが、かかる場合には、例えば自律移動制御部150の制御データに基づいてロボットRの姿勢を把握し、基準姿勢からの赤外線カメラ173の変化量を相殺すればよい。かかる場合には、例えばロボットRのたわみモデルを用いて検出結果を補正することができる。
計算されたロボットRの自己位置データは自己位置補正部185に出力される。
【0118】
(ステップS13)
つぎに、自己位置補正部185は、ジャイロセンサSR1またはGPS受信器SR2から取得したロボットRの自己位置と、自己位置計算部184で計算したロボットRの自己位置とを比較する。
比較した結果、両者が一致または許容差の範囲内にある場合(ステップS13でNo)には、自己位置の補正を行わずにステップS1に戻って周辺状態の検知を続ける。
【0119】
(ステップS14)
比較した結果、両者が不一致または許容差の範囲外にある場合(ステップS13でYes)には、マークMに基づいて算出した自己位置を正として、ロボットRの自己位置を補正する。これにより、自律移動制御によって累積した移動誤差あるいは自己位置認識誤差が解消され、ロボットRを正確・確実に移動制御することができる。
【0120】
なお、本実施形態では、自己位置計算部184によってマークMの位置データからロボットRの絶対座標(地図データ上の座標)を計算することとしたが、これに限られるものではなく、赤外線画像からマークMとロボットRとの相対的な位置関係を求め、かかる相対的位置関係が所定の値になるようにロボットRの位置を補正してもよい。かかる方法は、ロボットRの絶対座標を計算しなくて済むというメリットがあり、また、ロボットRを決まった位置に停止させたい場合などに有効である。
【0121】
(総合無線環境マップの作成)
次に、ロボットRによる総合無線環境マップの作成制御について説明する。
図11は、地図データと総合無線環境マップの例を示し、(a)は地図データ(フロアマップ)であり、(b)は総合無線環境マップである。
図11(a)に示すように、地図データは、例えば、建物の階毎の出入口、会議室、受付などのレイアウトを示したフロアマップの形態をしており、出入口、会議室、受付の他に、無線親機1の設置位置、適宜な位置に配設されたマークMのマーク設置領域データなどが含まれている。
【0122】
ロボットRは、前記したようにジャイロセンサSR1、GPS受信器SR2によって自己位置データを取得すると共に、マークMを検出することにより自己位置を把握しながら移動することができる。そして、適宜な位置において無線親機1から送信される無線波の無線環境データを測定して総合無線環境データを算出し、地図データに書き込むことによって、図11(b)に示したような総合無線環境マップを作成する。この例では、マークMが配設された各位置において無線環境データを測定して総合無線環境データを算出し、記憶部190に記憶されている地図データに、測定位置に対応付けて書き込む(記録する)ことで総合無線環境マップを作成している。
【0123】
(手引き誘導による総合無線環境マップの作成)
無線環境データの測定のためには、従来、操作者(人)が測定器を運搬し、総合無線環境マップを作成しようとする領域の各所を移動する必要があった。しかし、このように人が測定器を運搬して測定する作業は、多大な手間を要するだけでなく、測定器と、実際にロボットRに搭載された無線通信部160とは無線通信の条件が異なるため、ロボットRの無線通信部160で無線親機1からの無線波を受信したときの無線環境と正確には一致しない場合も考えられる。
【0124】
そこで、本実施形態では、ロボットRの無線環境データを測定する無線環境検出部163を搭載し、人Hは、前記した測定器を運搬する代わりに、ロボットRを誘導して移動させ、適所でロボットRに無線環境データを測定させて総合無線環境データを算出させる共に、測定したロボットRの移動領域の地図データに、測定位置と対応付けて総合無線環境データを記録することで、総合無線環境マップの作成を行う。
より具体的には、図12に示すように、人HがロボットRの右手(腕部R3の先端に設けられた把持部(ハンド)71R)を引いて誘導し、測定位置まで案内する。
【0125】
本実施形態におけるロボットRは、図3乃至図5に示したように、脚部R1の各関節部の電動モータを駆動制御することにより、移動(歩行又は走行)することができる。また、腕部R3の各関節部に設けられた電動モータを駆動制御することにより、人Hに対して手を差し出したり人Hの手を握ったりすることができるようになっている。更に、腕部R3の先端に設けられた把持部71Rと、手首関節部36R,37Rとの間に設けられた6軸力センサ62R(移動検出手段)は、ロボットRの把持部71Rに作用する反力の3方向成分Fx,Fy,Fzと、モーメントの3方向成分Mx,My,Mzと、を検出することができるようになっている(図4参照)。
【0126】
6軸力センサ62Rで検出した反力の3方向成分Fx,Fy,Fzは自律移動制御部150の腕部制御部151cに伝達され、腕部制御部151cは、これらの反力の3方向成分Fx,Fy,Fzに基づいて、図12に示したように、人HがロボットRの把持部71Rを引く方向と、その力の大きさとを判断し、主制御部140に伝達する。主制御部140は、人HがロボットRの把持部71Rを引く方向と、引く力の大きさとに基づいて、ロボットRが移動する方向と移動する速さとを決定し、脚部制御部151aに移動を指令する。脚部制御部151aは、主制御部140から指令された移動する方向と速さに従って、脚部R1の関節各部を駆動制御し、人Hに手を引かれた状態で移動することができる。
【0127】
次に、図13を参照(適宜図5参照)して、ロボットRが人Hに手を引かれて誘導され、総合無線環境マップを作成する処理の流れについて説明する。ここで、図13は、ロボットが人に手を引かれて測定箇所に移動して総合無線環境マップを作成する処理の流れを示すフロー図である。
【0128】
まず、無線環境データを測定する測定モードを選択する(ステップS20)。ここで、測定モードとは、ロボットRが人Hに手を引かれて移動する経路上において、無線環境データを測定するタイミングを決めるモードを指す。すなわち、ロボットRが人Hに手を引かれて移動しながら、予め設定された所定の時間周期で、自動的に無線環境データを測定する“自動モード”と、測定する位置を、適宜人Hから指示を受けて測定する“人指定モード”とがある。
【0129】
測定モードの選択は、例えば、端末7を用いて管理用コンピュータ3に接続し、キーボード(図示せず)等の入力手段を用いて行うことができる。そして、管理用コンピュータ3がロボットRに測定モードを指示する。あるいは、ロボットRの背面等の適所に選択スイッチを設けて選択するようにしてもよいし、音声によってロボットRに直接選択を指示するようにしてもよい。
音声によって選択を指示する場合は、例えば、ロボットRはマイクMCによって音声を取得し、音声処理部120の音声認識部121bによって取得した音声から文字情報を生成し、主制御部140に出力する。そして、主制御部140によって、文字情報を解析して測定モードの指示内容を取得するようにすることができる。
【0130】
次に、ロボットRは、ジャイロセンサSR1、GPS受信器SR2及び周辺状態検知部170によって、現在位置を確認し、測定作業のスタート位置とする(ステップS21)。
【0131】
ロボットRは、現在位置を確認すると、現在位置を含む地図データを、管理用コンピュータ3が管理する記憶部5からダウンロードする(ステップS22)。
詳細には、ロボットRは、無線通信部160によって、無線親機1を介して管理用コンピュータ3に地図データを要求する。管理用コンピュータ3は、該当する地図データを記憶部5から読み出し、無線親機1を介して、ロボットRに送信する。ロボットRは、無線通信部160によって地図データを受信し、受信した地図データを記憶部190に保存する。以上の手順によって、地図データのダウンロードが完了する。
なお、ロボットRは、現在位置を含む地図データを、既に記憶部190に記憶している場合には、地図データのダウンロードする手順を省略するようにしてもよい。
【0132】
ロボットRは、地図データの準備ができると、カメラCによって撮影した画像を画像処理部110によって解析し、測定箇所に誘導する人Hの位置を認識し、腕部制御部151cによって腕部R3を駆動し、当該人Hに対して手(例えば、図12に示したように、把持部71R)を差し出す(ステップS23)。
【0133】
人Hによって、ステップS23で差し出した手(例えば、把持部71R)を引かれると、引かれた方向へ移動を開始する(ステップS24)。
詳細には、ロボットRは、例えば、把持部71Rを引かれると、前記したように、腕部R3の6軸力センサ62R(図4参照)によって検出した反力の3方向成分Fx,Fy,Fzに基づいて、ロボットRが移動する方向と移動する速さとを決定し、脚部R1の関節各部を駆動制御し、人Hに手を引かれた状態で移動を開始する。
【0134】
ロボットRは、ステップS20で選択された測定モードに従って、無線環境検出部163によって、無線通信部160と無線親機1との間の無線通信における無線環境データを測定し、総合無線環境データ算出部141によって、無線環境検出部163で測定した無線環境データに基づいて総合無線環境データを算出する。そして、総合無線環境マップ作成部142によって、総合無線環境データ算出部141で算出した総合無線環境データを、記憶部190に記憶された地図データに、測定位置に対応付けて記録することで、総合無線環境マップを作成する(ステップS25)。
【0135】
総合無線環境マップを作成すると、ロボットRは、記憶部190に記憶されている総合無線環境マップを読み出し、無線通信部160によって送信する(ステップS26)。管理用コンピュータ3は、無線親機1を介して総合無線環境マップを受信すると、記憶部5に保存する。
【0136】
次に、図14を参照(適宜図5参照)して、総合無線環境マップ作成の詳細な処理の流れについて説明する。ここで、図14は、総合無線環境マップ作成の処理の流れを示すフロー図である。なお、図14に示す総合無線環境マップ作成の処理は、図13に示したフロー図におけるステップS25に該当する。
【0137】
ロボットRは、図13のフロー図におけるステップS20で選択された測定モードを確認し(ステップS30)、“自動モード”である場合には(ステップS30で“自動”)、ロボットRの主制御部140に内蔵された内部クロック(図示せず)によって、測定のための所定の周期時刻かどうかを判断する(ステップS31)。所定の周期時刻でない場合は(ステップS31でNo)、そのまま人Hに手を引かれて移動を続け、周期時刻になるまでステップS31を繰り返し実行する。
そして、周期時刻になると(ステップS31でYes)、無線環境検出部163によって、無線通信部160と無線親機1との通信における無線強度等の無線環境データを測定する(ステップS32)。
【0138】
そして、ジャイロセンサSR1、GPS受信器SR2及び周辺状態検知部170によって、測定したときの自己位置を把握する(ステップS33)。
【0139】
次に、総合無線環境データ算出部141によって、ステップS32で測定した無線環境データに基づいて、総合無線環境データを算出する(ステップS34)。
【0140】
そして、総合無線環境マップ作成部142によって、ステップS34で算出した総合無線環境データを、ステップS33で把握した自己位置、すなわち測定位置に対応付けて、記憶部190に記憶された地図データに書き込み、総合無線環境マップを作成(更新)する(ステップS35)。
【0141】
総合無線環境マップの更新が完了すると、ロボットRは、6軸力センサ62Rの出力値に基づいて、人Hによって手引き誘導が終了したかどうかを確認する(ステップS36)。手引き誘導終了は、例えば、6軸力センサ62Rの出力を解析して外力を検出しない場合は、人Hによる手引き誘導が終了したと判断し(ステップS36でYes)、総合無線環境マップ作成処理を終了する。
【0142】
一方、人Hによる手引き誘導が終了していないと判断した場合は(ステップS36でNo)、ステップS31に戻り、手引き誘導に従って移動しながら、次の測定の周期時刻を確認する。
以降は、ステップS36において、手引き誘導が終了したと判断するまで、ステップS31からステップS36を繰り返して実行し、総合無線環境マップ作成処理を続ける。
【0143】
また、測定モードが“人指定モード”である場合は(ステップS30で“人指定”)、ロボットRは、移動しながら6軸力センサ62Rの出力の確認を繰り返し、6軸力センサ62Rが検出する力に基づいて、手引き誘導する人Hが歩行を停止したかどうかを判断する(ステップS37)。
人Hが歩行を停止しない場合は(ステップS37でNo)、そのまま人Hに手を引かれて移動を続けながら、歩行停止したかを判断するステップS37を繰り返し実行する。
ロボットRが、歩行停止したと判断した場合は(ステップS37でYes)、無線環境検出部163によって、無線通信部160と無線親機1との通信における無線強度等の無線環境データを測定する(ステップS38)。この測定モードでは、無線環境データの測定は、歩行を停止した状態で行う。また、突発的なノイズによる影響等を低減して、精度よく測定するために、同じ位置での測定を複数回繰り返し、各無線環境データの測定値の平均値を算出して用いる。そのために、例えば、無線強度は、無線強度検出部163a(図6参照)によって、500ミリ秒毎に5秒間、すなわち10回の測定を行い、測定データを主制御部140に出力する。その他の無線環境データも、同様にして、無線環境検出部163の各部で、それぞれ所定の回数ずつ測定して測定データを主制御部140に出力する。
【0144】
そして、ジャイロセンサSR1、GPS受信器SR2及び周辺状態検知部170によって、測定したときの自己位置を把握する(ステップS39)。
【0145】
主制御部140に入力された無線環境データは、主制御部140の総合無線環境データ算出部141によって、ステップS38において無線環境検出部163の各部で測定した無線強度データの平均値を算出し、算出したこれらの無線環境データの平均値に基づいて総合無線環境データを算出する(ステップS40)。
【0146】
そして、総合無線環境マップ作成部142によって、ステップS40で算出した総合無線環境データを、ステップS39で把握した自己位置、すなわち測定位置に対応付けて、記憶部190に記憶された地図データに書き込み、総合無線環境マップを作成(データを追加)する(ステップS41)。
【0147】
地図データへの総合無線環境データの書き込みが終了すると、ロボットRは、音声処理部120の音声合成部121aによって、例えば、「ポイント測定終了、次地点へ移動してください」というテキストを音声合成し、スピーカSから出力(発話)し、人Hに対して次の測定位置への誘導を促す(ステップS42)。
【0148】
ロボットRは、例えば、ステップS42における発話終了から所定時間(例えば15秒)が経過しても、人Hによって手を引いて誘導する動作を検知しなかった場合は、手引き誘導が終了したものと判断し(ステップS43でYes)、総合無線環境マップ作成処理を終了する。
なお、手引き誘導の終了の判断は、例えば、「総合無線環境マップ作成は終了する」のように、人Hによる音声による指示を、音声処理部120の音声認識部121bでテキストに変換し、主制御部140によって指示内容を解析して判断するようにしてもよい。
【0149】
一方、ステップS43において、ロボットRが、人Hによる手引き誘導の再開を検知すると、手引き誘導は終了していないと判断して(ステップ43でNo)、ステップS37に戻って、歩行停止を確認しながら、次の測定位置まで移動する。
以降は、ステップS43において、手引き誘導が終了したと判断するまで、ステップS37からステップS43を繰り返して実行し、総合無線環境マップ作成処理を続ける。
【0150】
以上説明したように、ロボットRは、人Hによる誘導を受けて移動領域内を移動し、その移動経路上で無線環境データを測定するため、人Hは、例えば、端末7等を介して、測定位置を入力してロボットRに指示する手間を省くことができる。また、ロボットRに搭載された無線通信部160を用いて、ロボットRと無線親機1との無線環境の状態を直接測定するため、正確な総合無線環境マップを作成することができる。
【0151】
なお、本実施形態では、ロボットRは、人Hによって手を引かれたときの、腕部R3に設けられた6軸力センサ62R(L)の出力に基づいて、誘導する人Hの移動方向と移動の速さとを検出するようにしたが、例えば、ロボットRが、人HをカメラC,Cで撮影し、画像処理部110のステレオ処理部111a及び移動体抽出部111bによって、人Hの移動方向と移動の速さとを検出するようにすることもできる。また、例えば、赤外線センサからなる人感センサなど、その他の手段によって人の移動を検出するようにしてもよい。
【0152】
(単独移動による総合無線環境マップの作成)
次に、図15乃至図17を参照(適宜図5参照)して、ロボットRに、無線環境データの測定位置を予め簡便に指定し、ロボットRが単独で移動して総合無線環境マップを作成する方法について説明する。ここで、図15は、ロボットが単独で移動領域を移動して無線環境データを測定する測定位置の指定について説明する図であり、(a)はマークの設置位置を示す図、(b)はマーク設置位置で測定した無線環境データに基づいて作成した総合無線環境マップの例であり、図16は、指定されたマーク位置の無線環境データを測定して総合無線環境マップを作成するロボットの処理の流れを示すフロー図であり、図17は、図16における総合無線環境マップを作成するステップの詳細を示すフロー図である。
【0153】
図15(a)に示すように、ロボットRの移動領域には、複数箇所にマークM(M1〜M12)が設置されている。また、記憶部5(図5参照)に記憶されている地図データ(フロアマップ)には、マークMの番号(図15の例では、番号1〜12)に対応付けられたマーク設置領域データが含まれている。
ロボットRに総合無線環境マップの作成をさせようとする操作者は、例えば、端末7(図5参照)を用いて管理用コンピュータ3にアクセスし、測定位置としてマークMの番号を指定することで、測定位置をロボットRに指示することができる。
【0154】
ロボットRは、管理用コンピュータ3から無線親機1を介して、総合無線環境マップの作成処理の実行命令信号を受信すると、図16に示すように、まず、移動領域の地図データを、無線親機1を介して管理用コンピュータ3に要求し、記憶部5に記憶されている地図データを、ロボットRに内蔵されている記憶部190にダウンロードする(ステップS50)。なお、対象となる移動領域の地図データが、既に記憶部190に記憶されている場合には、この地図データのダウンロードの手順は省略することができる。
【0155】
次に、ロボットRは、測定位置及び測定順を示すマーク順番(マーク番号列)を、管理用コンピュータ3から取得する(ステップS51)。
【0156】
ロボットRは、マーク順番を取得すると、現在位置(ロボットスタート位置)から、1番目に指定されたマークM(例えば、M1)まで移動する(ステップS52)。
【0157】
指定されたマークMに移動すると、無線環境検出部163によって無線環境データを測定し、総合無線環境データ算出部141によって総合無線環境データを算出し、総合無線環境マップ作成部142によって、記憶部190に記憶された地図データに、該当するマーク番号の位置に対応付けて、算出した総合無線環境データを書き込み、総合無線環境マップを作成する(ステップS53)。
【0158】
ロボットRは、ステップS53で測定位置として指定されたマークMが最終の番号かどうかを確認して最終の場合は(ステップS54でYes)、ステップS55に進む。
一方、マークMが最終の番号でない場合は(ステップS54でNo)、ステップS52に戻り、次の順番のマークM(例えば、M2)の位置まで移動する。そして、次のマーク位置において無線環境データを測定して総合無線環境データを算出し、記憶部190に記憶された地図データに、そのマーク番号の位置に対応付けて、算出した総合無線環境データを書き込み、総合無線環境マップを作成する(ステップS53)。
そして、最終番号のマーク位置における総合無線環境マップを作成するまで、ステップS52からステップS54の処理を繰り返して実行する。
【0159】
最終番号のマーク位置における処理が完了すると(ステップS54でYes)、記憶部190には、図15(b)に示したように、地図データのマーク位置に対応付けて総合無線環境データが書き込まれた総合無線環境マップが作成されている。そして、ロボットRは、作成した総合無線環境マップを、無線通信部160によって管理用コンピュータ3へ送信して(ステップS55)、処理を終了する。
なお、管理用コンピュータ3は、送信された総合無線環境マップを記憶部5に保存する。
【0160】
次に、図17を参照(適宜図5参照)して、図16における総合無線環境マップ作成のステップS53について説明する。
ロボットRは、指定されたマークMの位置まで移動すると(図16のステップS52)、移動(歩行)を停止する(ステップS60)。
【0161】
次に、ロボットRは、マーク位置に停止した状態で、無線環境検出部163によって無線強度を含む無線環境データを測定する(ステップS61)。なお、無線環境検出部163の各部は、図14に示したフロー図のステップS38と同様に、無線環境データを複数回測定し、主制御部140に出力する。
【0162】
主制御部140は、総合無線環境データ算出部141によって、無線環境検出部163で複数回測定された各無線環境データの平均値を算出し、無線環境データの平均値に基づいて総合無線環境データを算出する(ステップS62)。
【0163】
主制御部140は、算出した総合無線環境データを、記憶部190に記憶されている地図データに、そのマーク番号の位置に対応付けて、算出した総合無線環境データを書き込み(ステップS63)、処理を終了する。
【0164】
このようにして、指定されたひとつのマーク位置に対する総合無線環境データの書き込み(追加記録)を行うことができる。
【0165】
次に、図18を参照して、ロボットRに、無線環境データを測定する位置を指定する他の方法について説明する。ここで、図18は、無線環境データを測定する位置の指定について説明するための図であり、(a)は、グリッドによって指定する例を示し、(b)は、個別に測定点を追加指定する例を示す。
【0166】
図18(a)に示した例では、図中に点線で示したように、地図データ(フロアマップ)に対して、グリッドを設定し、グリッドの格子点を測定点として指定することができる。グリッドの設定は、例えば、図18(a)に示した地図の左上のコーナーを原点として、図中の上下方向及び左右方向のグリッド間隔を設定する。このように測定位置をグリッドによって指定された場合は、ロボットRは、上下方向及び左右方向のグリッド間隔からグリッドの格子点を算出し、算出した格子点の位置に順次移動して無線環境データを測定し、測定した無線環境データに基づいて総合無線環境データを算出する。そして、記憶部190に記憶されている地図データに、測定した格子点の位置に対応付けて、総合無線環境データを書き込むことにより、総合無線環境マップを作成することができる。
【0167】
このように、グリッドを用いることにより、測定位置を簡便に指定することができると共に、測定位置を移動領域内に均等に指定することができる。
【0168】
また、グリッドを細かく設定すると、測定点が多くなりすぎる場合があるが、逆にグリッドの設定が粗くなると、測定点が不足する場合も考えられる。
そこで、グリッドを細か過ぎないように適度な間隔で指定すると共に、地図上のレイアウトを参照して、電波障害物などの影響を受けやすそうな位置を測定点として個別に追加指定するようにして、操作者が測定位置を指定する入力作業の増大を抑制しつつ、重要な測定位置を詳細かつ柔軟に指定することができる。
【0169】
図18(b)は、測定位置を個別に追加して指定した様子を示す。この例では、測定位置P1〜P7の7点が追加されている。
ロボットRは、図18(a)に示したグリッドの格子点に該当する位置と、図18(b)に示した個別に追加した位置とを測定位置として取得し、順次測定点に移動して無線環境データを測定し、測定した無線環境データから総合無線環境データを算出して、地図データに書き込むことにより、総合無線環境マップを作成することができる。
【0170】
図19は、総合無線環境マップの例であり、(a)は、測定位置をグリッド指定して作成した総合無線環境マップであり、(b)は、ユーザ用の表示形式の総合無線環境マップである。
図19(a)に示した総合無線環境マップは、図18(a)に示したグリッドによって指定した測定位置における総合無線環境データが書き込まれた総合無線環境マップである。また、(b)は、(a)に示した総合無線環境マップに基づいて、操作者(ユーザ)が無線環境を理解しやすいように、GUI(Graphical User Interface)環境下において、総合無線環境のレベル(良好度)を3段階(Excellent, Good, Poor)に色分けして表示した例である。このユーザ用の表示形式のマップは、例えば、端末7(図5参照)によって、記憶部5に記憶された総合無線環境マップを読み出し、適宜な画像処理を施して端末7の画面に表示することができる。
【0171】
なお、表示形式は、色分けに限定されるものではなく、例えば、総合無線環境が同レベルの点を線で結んで等高線状に表示するようにしてもよい。
このように、総合無線環境マップをユーザが理解しやすい形式に変換して表示することにより、例えば、無線親機1を設置する場所を決める際に、複数の設置候補の場所に設置した場合の総合無線環境マップを作成して対比することで、優劣を容易に判断することができる。また、総合無線環境のレベルが低い領域を容易に認識できるため、対策として、例えば、無線親機1を追加する適切な場所を容易に判断することができる。
【0172】
(最適無線親機マップの作成)
次に、図20を参照(適宜図5参照)して、複数の無線親機1が設置された場合に、ロボットRが接続する無線親機1を選択する方法について説明する。ここで、図20は、複数の無線親機が配置された場合に、ロボットが接続する無線親機を選択する様子を説明する図であり、(a)は、複数の無線親機に対する総合無線環境マップから最適無線親機マップを作成する様子を説明する図であり、(b)は、複数の最適無線親機から、接続する無線親機を選択する様子を説明する図である。
【0173】
図20(a)に示したように、2台の無線親機1A、1Bは、それぞれ、地図上の右下の隅及び左下の隅に設置されている。(a)の上段の左図及び右図は、それぞれ無線親機1A及び無線親機1Bに対する総合無線環境マップであり、それぞれグリッドによって指定された測定位置における総合無線環境データが書き込まれている。
【0174】
このように、本実施形態においては、ロボットRの移動領域において、複数の無線親機1が配置されている場合には、それぞれの無線親機1毎に無線環境データを測定して、総合無線環境マップ作成部142によって、総合無線環境マップを作成し、記憶部190に記憶する。
次に、最適無線親機マップ作成部143によって、記憶部190に記憶された複数の無線親機に対する総合無線環境マップに基づいて、最適な無線親機を示す最適無線親機マップ(最適無線基地局マップ)を作成する。
なお、本実施形態では、2台の無線親機1A、1Bが配置された場合を例にして説明するが、無線親機は3台以上としてもよい。
【0175】
ここで、最適な無線親機とは、総合無線環境データの数値が最も大きい無線親機である。そこで、(a)の下段の図に示したように、2台の無線親機1A、1Bから、最適な無線親機を選択した最適無線親機マップを作成することができる。ただし、最適無線親機マップにおいて、「A」、「B」は、最適な無線親機が、それぞれ、無線親機1A、無線親機1Bであることを示し、「AB」は、2台の無線親機が同じ数値の場合であるため、両方の無線親機が最適な無線親機であることを示す。
【0176】
図20(a)に示した最適無線親機マップにおいて、「AB」で示したように、総合無線環境のレベルが同じ無線親機が複数ある場合には、ロボットRは、何れの無線親機と接続するのかを選択する必要がある。そこで、図20(b)を参照して、最適な無線親機が複数ある場合において、ロボットRが接続する無線親機の選択方法について説明する。
【0177】
ロボットRは、移動に伴って、最適な総合無線環境の無線親機1と適宜接続を切り換えるが、無線親機1との接続を切り換えるとき、すなわち、ハンドオーバするときには、ロボットRと無線親機1との接続が一時的に切断され、ロボットRは、管理用コンピュータ3との通信が不能状態となる。
本実施形態では、ロボットRが管理用コンピュータ3との通信が不能状態となることをできる限り回避するために、ハンドオーバをしないで済む無線親機1を選択する。
【0178】
図20の(b)に示した図は、(a)の下段に示した最適無線親機マップにおいて、図の中央部の太線で囲んだ領域の拡大図である。そして、(b)は、(b)に示した領域を3×3(3行、3列)の領域に分割して考えると、周辺の領域から、最適無線親機マップにおいて最適な無線親機が1A及び1B(「AB」)である中央の領域に進行するとき、中央の領域において、何れの無線親機を選択するかを示している。
【0179】
(b)の左図に示した場合は、ロボットRは、3×3の領域の中央の行において、左から右に向かって進行する。このとき、中央の行の左列の領域では、ロボットRは無線親機1Bと接続しているから、左に進行する場合には、無線親機1Bを選択し、ハンドオーバを行わずに、そのまま無線親機1Bとの接続を保持する。
【0180】
次に、(b)の中央の図に示した場合は、ロボットRは、右斜め上方(上の行の左列の領域)から左斜め下の中央の領域に進行する。このとき、上の行の左列の領域では、ロボットRは無線親機1Aと接続しているから、右下に進行する場合には、無線親機1Aを選択し、ハンドオーバを行わずに、そのまま無線親機1Aとの接続を保持する。
【0181】
次に、(b)の右図に示した場合は、ロボットRは、右斜め下方(下の行の右列の領域)から左(下の行の中央列)に進行し、その後、上方(中央の領域)に進行する。まず、下の行の右列の領域では、ロボットRは無線親機1Aと接続しているから、右方に進行するときには、ハンドオーバを行わず、そのまま無線親機1Aとの接続を保持する。その後、上方に進行するときには、無線親機1Aを選択して無線親機1Aとの接続を保持し、ここでもハンドオーバを行わない。
【0182】
このように、複数の無線親機を選択可能な状況においては、本実施形態のロボットRは、ハンドオーバを回避できる無線親機を選択する。
なお、無線親機は3台以上の場合においても、同じレベルの総合無線環境の無線親機が選択可能な状況においては、ハンドオーバをできる限り回避するように無線親機を選択するようにすればよい。
【0183】
(総合無線環境マップの利用)
次に、図21を参照(適宜図5参照)して、ロボットRが、総合無線環境マップを利用するときの動作について説明する。ここで、図21は、ロボットが、総合無線環境マップを利用するときの処理の流れを示すフロー図である。
【0184】
ロボットRは、タスクを実行する際には、予め作成して記憶部190に記憶した総合無線環境マップを利用するが、ロボットRが作成した総合無線環境マップは、管理用コンピュータ3にアップロードし、記憶部5に保存される。ロボットRは、再起動して記憶部190に記憶した総合無線環境マップが消去された場合や、他のロボットによって作成された総合無線環境マップが記憶部5に保存されている場合には、管理用コンピュータ3から必要な総合無線環境マップをダウンロードして利用することができるようになっている。
これによって、ロボットRは、タスクを実行する毎に、総合無線環境マップを新たに作成する手間を省くことができる。
【0185】
図21に示したように、ロボットRは、まず、無線通信部160によって、無線親機1を介して管理用コンピュータ3と接続し、管理用コンピュータ3が管理する記憶部5に記憶する地図データのデータベースに、ロボットRがこれからタスクを実行する移動領域に関する総合無線環境マップが記憶されているかどうかを確認する(ステップS70)。
【0186】
記憶部5に、所望の総合無線環境マップが記憶されている場合は(ステップS70でYes)、ロボットRは、管理用コンピュータ3からその総合無線環境マップをダウンロードする(ステップS71)。詳細には、管理用コンピュータ3は、記憶部5から総合無線環境マップを読み出し、無線親機1を介して、読み出した総合無線環境マップをロボットRに送信する。ロボットRは、無線通信部160によって、総合無線環境マップを受信し、記憶部190に記憶する。これによって、総合無線環境マップのダウンロードが完了する。
【0187】
なお、ロボットRが管理用コンピュータ3からダウンロードする総合無線環境マップは、当該ロボットRが作成した総合無線環境マップでもよいし、他のロボットが作成した総合無線環境マップでもよい。また、複数のロボットによる総合無線環境マップが記憶されている場合には、例えば、最新の総合無線環境マップをダウンロードするようにしてもよく、あるいは、これらのマップの総合無線環境データの平均値を用いた総合無線環境マップを用いるようにしてもよい。また、複数の無線親機が設置された領域の場合には、総合無線環境マップの代わりに、あるいは総合無線環境マップに加えて、最適無線親機マップをダウンロードするようにしてもよい。また、必要に応じて、ロボットRがダウンロードするマップを選択できるようにしてもよいし、複数の種類のマップをダウンロードするようにしてもよい。
なお、ダウンロードするマップの種類は、管理用コンピュータ3が、ロボットRに命令するタスクの内容に従って、管理用コンピュータ3が、適宜最適なマップを選択して送信するようにしてもよい。
【0188】
一方、記憶部5に、所望の総合無線環境マップが記憶されていない場合は(ステップS70でNo)、ロボットRは、管理用コンピュータ3から記憶部5に記憶されている所望の移動領域に関する地図データをダウンロードする(ステップS72)。そして、その移動領域内の、総合無線環境マップを作成する(ステップS73)。総合無線環境マップの作成処理は、前記したように、例えば、図15に示したマークMのマーク設置場所を巡回して無線環境データを測定して総合無線環境データを算出し、測定位置に対応付けて記憶部190に記憶した地図データに書き込むことによって、総合無線環境マップを作成する。このとき、作成された総合無線環境マップは記憶部190に記憶されている。
【0189】
ロボットRは、ステップS73で作成した総合無線環境マップを記憶部190から読み出し、無線通信部160によって、無線親機1を介して管理用コンピュータ3に送信する(ステップS74)。そして、管理用コンピュータ3は受信した総合無線環境マップを記憶部5に記憶することで総合無線環境マップのアップロードが完了する。
【0190】
(総合無線環境マップの更新)
次に、図22を参照(適宜図5参照)して、ロボットRがタスク実行中に無線環境データを測定し、総合無線環境マップの更新(メンテナンス)を行う動作について説明する。ここで、図22は、タスク実行中に総合無線環境マップの更新を行う処理の流れを示すフロー図である。
【0191】
本実施形態のロボットRは、総合無線環境マップを作成するタスク以外のタスクを実行中においても、常に無線環境データを測定し、その無線環境データに基づいて算出される総合無線環境データと、地図データに総合無線環境マップとして記録されている総合無線環境データとを比較して、必要に応じて総合無線環境データを書き換えて、総合無線環境マップの更新を行う。
なお、無線環境データは、所定のタイミングで反復して測定される。例えば、1回の測定が終了すると、絶え間なく次の測定を開始するようにしてもよいし、10秒間隔のように、定期的に行うようにしてもよい。
【0192】
図22に示したように、ロボットRは、移動領域内を移動して、物品運搬等のタスクを実行する際には、例えば、図20(a)に示したような、総合無線環境マップ及び最適無線親機マップを管理用コンピュータ3からダウンロードして記憶部190に記憶すると共に、ロボットRの現在位置、すなわち、タスクのスタート位置において総合無線環境の最もよい無線親機1(1A又は1B)をダウンロードした最適無線親機マップを用いて探索する(ステップS80)。
【0193】
次に、ロボットRは、無線通信部160によって、ステップS80で探索した最適な無線親機1(以下、無線親機1Aとして説明する)と接続し(ステップS81)、タスクの実行を開始すると共に、並行して総合無線環境マップの更新処理を実行する(ステップS82)。
なお、ロボットRは、タスク実行中に、ジャイロセンサSR1、GPS受信器SR2及び周辺状態検知部170によって、自己の位置を常時把握しながら移動し、最適無線親機マップを参照して、最適な無線親機1(1A又は1B)と接続するように適宜ハンドオーバを行う。
【0194】
次に、図23を参照(適宜図5参照)して、ロボットRがタスク実行中に総合無線環境マップを更新する動作について詳細に説明する。ここで、図23は、ロボットが、タスク実行中に総合無線環境マップの更新を行う処理の流れを示すフロー図であり、図22に示したフロー図におけるステップS82に該当する。
【0195】
本実施形態のロボットRは、タスクの実行を行いながら、無線通信部160の無線環境検出部163によって、所定のタイミングで反復して無線強度等の無線環境データを測定し、主制御部140に測定した無線環境データを出力する(ステップS90)。
【0196】
ロボットRは、無線環境データを測定すると、ジャイロセンサSR1、GPS受信器SR2及び周辺状態検知部170によって自己位置を把握する(ステップS91)。なお、無線環境データの測定及び自己位置の把握は、並行して行ってもよい。
【0197】
主制御部140の無線親機異常通知部145は、無線環境検出部163によって無線環境データが正常に測定できたかどうかを判定する(ステップS92)。無線環境データ測定の可否は、無線親機異常通知部145によって、例えば、所定の時間内に無線環境データが主制御部140に入力されたかどうか、又は入力された無線環境データが異常値でないかどうかを確認することによって行い、無線環境データが測定できなかった場合は(ステップS92でNo)、無線親機異常通知部145は、無線通信部160を介して、無線親機1Aに異常があることを管理用コンピュータ3に通知する(ステップS93)。このとき、接続中の無線親機1Aは異常であるため、接続が切断されていることが考えられ、無線親機異常通知部145は、無線通信部160の通信相手を、無線親機1Aから他の無線親機1Bに接続を切り替え、無線親機1Bを介して管理用コンピュータ3に無線親機1Aが異常であることを通知する。また、移動領域内で他に通信を確立できる無線親機1が見つからない場合は、ロボットRは、無線親機1Aの異常状態を、例えば、記憶部190に記憶しておき、何れかの無線親機1を介して管理用コンピュータ3との通信が再開できた時点で通知するようにしてもよい。
【0198】
ロボットRは、無線親機1Aの異常を管理用コンピュータ3に通知すると、ステップS102に進み、タスクが終了したかどうかを確認する。
【0199】
一方、無線親機異常通知部145によって、無線環境検出部163により無線環境データが正常に測定できたと判断した場合は(ステップS92でYes)、総合無線環境データ算出部141によって、無線環境検出部163で測定された無線環境データに基づいて総合無線環境データを算出し(ステップS94)、総合無線環境マップ更新部144によって、ステップS91で把握した位置における接続中の無線親機1Aに対する総合無線環境データを記憶部190から読み出し、総合無線環境マップに記録されている総合無線環境データと、ステップS94で算出した総合無線環境データとを比較し、差異が10%以上あるかどうかを確認する(ステップS95)。そして、両者のデータに差異が10%未満の場合は(ステップS95でNo)、ステップS102に進む。
【0200】
両者に差異が10%以上ある場合は(ステップS95でYes)、更に、無線親機1Aに対する総合無線環境データの確認履歴を参照し、総合無線環境マップに記録されているデータとの差異が10%以上である状況が3回であるか(すなわち、過去2回の総合無線環境データの確認結果が、差異10%以上であるか)を確認し(ステップS96)、3回未満の場合は(ステップS96でNo)、ステップS102に進む。
なお、確認履歴は、例えば、記憶部190に記憶される総合無線環境マップに、位置及び無線親機に対応付けて記憶し、必要に応じて読み出して参照するようにすればよい。
【0201】
また、10%以上の差異が3回以上連続した場合は(ステップS96でYes)、総合無線環境マップ更新部144によって、直近の総合無線環境データ(すなわち、前回の測定データに基づいて算出した総合無線環境データ)を地図データに上書きすることによって総合無線環境マップに反映し、総合無線環境マップを更新する(ステップS97)。
なお、この移動領域内に複数の無線親機1が設置されている場合は、続けて、総合無線環境マップ更新部144によって、更新された総合無線環境マップと、その他の無線親機に対する総合無線環境マップとを記憶部190から読み出し、最適無線親機マップの更新を行う。
【0202】
続いて、さらに、差異が20%以上であって、差異が20%以上の状態が3回連続しているかどうかを、確認履歴を参照して確認し(ステップS98)、差異が20%未満又は連続して3回未満の場合は(ステップS98でNo)、ステップS102に進む。
【0203】
差異が20%以上の状態が3回連続した場合は(ステップS98でYes)、周囲画像取得部146によって、脚部制御部151aを介して脚部R1を駆動し、その場でロボットRの向きを変えながらカメラCを用いて周囲の画像を撮影する。撮影して取得した画像データを記憶部190に、撮影位置に対応付けて保存する(ステップS99)。
【0204】
本実施形態では、例えば、ステップS96、ステップS98のように、所定値以上の差異がある状態が、所定の測定回数以上連続した場合、すなわち、所定の時間以上継続した場合に、総合無線環境マップのデータ更新を行うため、瞬間的に発生したノイズによる影響を無視することができ、頻繁なデータ更新を回避して、ロボットR、管理用コンピュータ3における処理の負荷及びロボットRと無線親機1との間の通信量の増大を抑制することができる。
【0205】
ここで、図24を参照(適宜図5参照)して、周囲の画像の撮影について説明する。図24は、ロボットが周囲の画像を撮影する様子を説明するための図であり、(a)はロボットが向きを変えながら周囲の画像を撮影する様子を示し、(b)は、上段にフロアマップ中の撮影位置を示し、下段にその撮影位置から撮影した周囲の画像を示す。
【0206】
総合無線環境データの総合無線環境マップに記録されているデータと差異が20%以上である状況が3回連続した場合は(図23のステップS98でYes)、ロボットRの移動領域に、例えば、パーティションが設置されたり障害物が置かれたりしたような、恒常的に無線環境に大きな影響を及ぼす状況が発生したことが推測される。そのため、本実施形態では、ロボットRが、総合無線環境データのマップに記録された値と大きな差異があると判断した場合、すなわち、無線環境の大きな変化を検出した場合は、その地点での周囲の画像を撮影し、撮影して取得した画像データを管理用コンピュータ3に送信して、操作者がその状況を解析するために利用できるようにする。
【0207】
図24(a)に示すように、ロボットRは、歩行を停止し、その場で90°ずつ回転して、90°の画角で画像を順次撮影することで、全方位(360°)の画像を撮影する。
詳細に説明すると、ロボットRは、周囲画像取得部146によって、自律移動制御部150の脚部制御部151aを介して脚部R1の各部を制御して、歩行を停止し(例えば、図24(b)の上段の図の位置P)、頭部R4に搭載されたカメラCを用いて、まず、移動方向である正面画像iを撮影する。撮影した画像は、記憶部190に保存する。次に、ロボットRは、周囲画像取得部146によって、脚部制御部151aを介して脚部R1を駆動制御して右方向に向きを変え、カメラCを用いて右画像iiを撮影し、撮影した画像データを記憶部190に保存する。ロボットRは、同様に、右回りに90°ずつ向きを変え、うしろ画像iiiおよび左画像ivを撮影し、撮影した画像データを記憶部190に保存する。そして、左画像ivの撮影が終了すると、ロボットRは、さらに右回りに90°向きを変え、最初の移動方向を向いて静止する。
【0208】
このようにして、4枚の画像に分割して撮影することによって取得された画像データ(図24(b)の下段参照)は、記憶部190に一時保存される。
【0209】
図23に戻って、説明を続ける。
ステップS98において、無線環境に大きな変化を検出した場合は、前記したように周囲の画像を撮影して画像データを取得する(ステップS99)と共に、無線通信部160によって、受信した無線波を解析してロボットRと同規格の無線ノードと、そのトラフィックを検出して、他の無線機器が移動領域内に存在しないかを検索し、他の無線機器の存在の有無及びトラフィックを検索結果として記憶部190に保存する(ステップS100)。ここで、例えば、すべての無線ノードのトラフィックの総和が、ロボットRが送受信するデータ量よりも大きい場合は、無線環境が悪いと判断することができる。
【0210】
他の無線機器の検索が終了すると、ロボットRは、無線親機異常通知部145によって、無線通信部160を用いて、無線親機1Aを介して管理用コンピュータ3に無線親機1Aに対する無線環境が悪化していることを通知すると共に、記憶部190に記憶した画像データ及び他の無線機器の検索結果、ならびに、ステップS90で測定した無線環境データを併せて送信する(ステップS101)。
そして、管理用コンピュータ3への通知が終了すると、ステップS102に進む。
【0211】
なお、本実施形態では、ステップS90で測定したノイズフロア(無線ノイズ)を含む無線環境データは、記憶部190に一時的に保存しておき、ステップS101で記憶部190から読み出して、管理用コンピュータ3に送信するようになっている。特に、無線ノイズの評価値のひとつであるノイズフロアは、無線環境の良否を判断するために有用である。
【0212】
ロボットRは、各条件での総合無線環境マップの更新処理が終了すると、タスクが終了したかどうかを確認し(ステップS102)、タスクが終了した場合は(ステップS102でYes)、処理を終了する。
また、タスクが終了していない場合は(ステップS102でNo)、ステップS90に戻り、タスクの実行を継続すると共に、総合無線環境マップの更新処理を繰り返す。
【0213】
なお、管理用コンピュータ3は、ロボットRから無線親機1(例えば、1A)の異常通知を受信し(ステップS93)、あるいは、無線環境の大きな変化を検知した通知を受信した場合は(ステップS101)、記憶部5に通知内容をログ情報として記憶すると共に、例えば、端末7の表示画面(図示せず)にログ情報を表示し、操作者にロボットRからの通知内容を通報する。
操作者は、端末7を用いて、例えば、無線環境に大きな変化のあった地点で撮影した画像データや無線環境データ等を参照して問題解析を行い、対策を検討することができる。
【0214】
以上説明したように、本実施形態のロボットRは、総合無線環境マップ作成の処理以外のタスクを実行中にも、常に無線環境データを測定し、測定した無線環境データから算出される総合無線環境データと、管理用コンピュータ3からダウンロードして記憶部190に記憶した総合無線環境マップに記録されている総合無線環境データとを比較し、所定の値以上の差異が所定の時間連続して検出された場合に、総合無線環境マップを更新するようにしたため、ロボットRに、通常のタスクを実行させることで、総合無線環境マップのメンテナンスを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0215】
【図1】本発明の実施形態に係る移動ロボット制御システムを示すシステム構成図である。
【図2】本実施形態に係るロボットの移動中の様子を示した斜視図であり、(a)は通常の移動領域を移動している状態を、(b)はマークの設置領域を移動している状態をそれぞれ示した図である。
【図3】図1及び図2のロボットの外観を模式的に示す側面図である。
【図4】図3のロボットの駆動構造を模式的に示す斜視図である。
【図5】本実施形態に係るロボットの構成を示したブロック図である。
【図6】無線通信部の構成を示すブロック図である。
【図7】総合無線環境データを説明するための図である。
【図8】本実施形態に係るロボットの胴部を示した透視図である。
【図9】周辺状態検知部の構成を示すブロック図である。
【図10】ロボットの自律移動制御(スリット光照射と赤外線照射との切換制御)に関するフロー図である。
【図11】地図データと総合無線環境マップの例を示し、(a)は地図データ(フロアマップ)であり、(b)は総合無線環境マップである。
【図12】人がロボットの手を引いて誘導する様子を示す図である。
【図13】ロボットが人に手を引かれて測定箇所に移動して総合無線環境マップを作成する処理の流れを示すフロー図である。
【図14】総合無線環境マップ作成の処理の流れを示すフロー図である。
【図15】ロボットが単独で移動領域を移動して無線環境データを測定する測定位置の指定について説明する図であり、(a)はマークの設置位置を示す図、(b)はマーク設置位置で測定した無線環境データに基づいて作成した総合無線環境マップの例である。
【図16】指定されたマーク位置の無線環境データを測定して総合無線環境マップを作成するロボットの処理の流れを示すフロー図である。
【図17】図16における総合無線環境マップを作成するステップの詳細を示すフロー図である。
【図18】無線環境データを測定する位置の指定について説明するための図であり、(a)は、グリッドによって指定する例を示し、(b)は、個別に測定点を追加指定する例を示す。
【図19】総合無線環境マップの例であり、(a)は、測定位置をグリッド指定して作成した総合無線環境マップであり、(b)は、ユーザ用の表示形式の総合無線環境マップである。
【図20】複数の無線親機が配置された場合に、ロボットが接続する無線親機を選択する様子を説明する図であり、(a)は、複数の無線親機に対する総合無線環境マップから最適無線親機マップを作成する様子を説明する図であり、(b)は、複数の最適無線親機から、接続する無線親機を選択する様子を説明する図である。
【図21】ロボットが、総合無線環境マップを利用するときの処理の流れを示すフロー図である。
【図22】タスク実行中に総合無線環境マップの更新を行う処理の流れを示すフロー図である。
【図23】ロボットが、タスク実行中に総合無線環境マップの更新を行う処理の流れを示すフロー図である。
【図24】ロボットが周囲の画像を撮影する様子を説明するための図であり、(a)はロボットが向きを変えながら周囲の画像を撮影する様子を示し、(b)は、上段にフロアマップ中の撮影位置を示し、下段にその撮影位置から撮影した周囲の画像を示す。
【符号の説明】
【0216】
1、1A、1B 無線親機(無線基地局)
3 管理用コンピュータ
5 記憶部
62R、62L 6軸力センサ(移動検出手段)
110 画像処理部(移動検出手段)
140 主制御部
141 総合無線環境データ算出部(総合無線環境データ算出手段)
142 総合無線環境マップ作成部(総合無線環境マップ作成手段)
143 最適無線親機マップ作成部(最適無線基地局マップ作成手段)
144 総合無線環境マップ更新部(総合無線環境マップ更新手段)
145 無線親機異常通知部(無線基地局異常通知手段)
146 周囲画像取得部(周囲画像取得手段)
150 自律移動制御部(自律移動制御手段)
160 無線通信部(無線通信手段)
163 無線環境検出部(無線環境検出手段)
170 周辺状態検知部(自己位置認識手段)
190 記憶部(記憶手段)
A 移動ロボット制御システム
C カメラ(撮像手段)
R ロボット(移動ロボット)
R1 脚部(移動手段)
SR1 ジャイロセンサ(自己位置認識手段)
SR2 GPS受信器(自己位置認識手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管理用コンピュータに接続された1以上の無線基地局を介して、前記管理用コンピュータとの間で無線通信すると共に、所定の移動領域において当該移動領域の地図データを利用して自律的に移動する移動ロボットであって、
前記無線基地局と無線通信を行う無線通信手段と、
前記無線通信手段と前記無線基地局との無線通信において、前記無線通信手段が受信する受信信号の無線強度を含む無線環境の良好度を示す複数種類の無線環境データを検出する無線環境検出手段と、
前記複数の無線環境データに所定の重み付けをした結果を示す総合無線環境データを算 出する総合無線環境データ算出手段と、
前記移動領域における自己の位置を認識する自己位置認識手段と、
前記移動領域の地図データを記憶する記憶手段と、
前記算出された総合無線環境データを、前記無線環境データを検出したときに前記自己 位置認識手段によって認識された位置に対応付けて、前記記憶手段に記憶された地図デ ータに書き込むことにより、総合無線環境マップを前記無線基地局毎に作成する総合無 線環境マップ作成手段と、を備えたことを特徴とする移動ロボット。
【請求項2】
前記複数種類の無線環境データは、前記無線強度に関するデータを含み、さらに通信速度及び通信エラー回数及びデータ再送回数の内の少なくとも一つに関するデータを含むことを特徴とする請求項1に記載の移動ロボット。
【請求項3】
前記記憶手段に記憶された地図データと、前記自己位置認識手段によって認識された位置とに基づいて、予め定められた位置へ自律的に移動し、その移動地点において、前記無線環境検出手段によって無線環境データを検出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の移動ロボット。
【請求項4】
さらに、人物の移動方向と移動の速さとを検出する移動検出手段を有し、
前記移動検出手段によって検出した移動方向と移動の速さとで、前記人物と共に移動すると共に、前記人物と共に移動する経路上において、前記無線環境検出手段によって無線環境データを検出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の移動ロボット。
【請求項5】
前記無線環境検出手段は、所定のタイミングで反復して前記無線環境データを検出すると共に、この反復して検出される無線環境データに基づいて、前記総合無線環境データ算出手段によって、前記総合無線環境データを算出し、
前記算出された総合無線環境データと、当該無線環境データを検出したときの位置に対応付けられて前記地図データに記録された前記総合無線環境データとを比較し、両者に所定値以上の差がある状態が所定回数以上連続した場合に、前記地図データに記録された前記総合無線環境データを、直近に算出された総合無線環境データに書き換えることによって、前記総合無線環境マップを更新する総合無線環境マップ更新手段を、さらに備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の移動ロボット。
【請求項6】
前記無線環境検出手段によって無線環境データを検出した自己の位置において、撮像手段で撮影された自己の周囲の画像を、前記無線環境データを検出した位置に対応付けて、前記記憶手段に保存する周囲画像取得手段を、さらに備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の移動ロボット。
【請求項7】
前記管理用コンピュータは複数の無線基地局と接続され、前記複数の無線基地局の何れか一つを介して前記管理用コンピュータとの間で無線通信する請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載の移動ロボットであって、
前記総合無線環境マップ作成手段によって前記複数の無線基地局毎に作成された複数の総合無線環境マップに基づいて、最良の総合無線環境データを有する無線基地局を、前記記憶手段に記憶された地図データに、位置に対応付けて書き込むことにより最適無線基地局マップを作成する最適無線基地局マップ作成手段を備えたことを特徴とする移動ロボット。
【請求項8】
前記無線環境検出手段によって一の無線基地局に関する前記無線環境データを検出できなかった場合に、前記無線通信手段によって、前記一の無線基地局とは異なる他の無線基地局を介して、前記一の無線基地局に異常があることを前記管理用コンピュータに通知する無線基地局異常通知手段を、さらに備えたことを特徴とする請求項7に記載の移動ロボット。
【請求項9】
前記総合無線環境マップ作成手段によって作成された総合無線環境マップを、前記無線通信手段によって、前記管理用コンピュータに送信することを特徴とする請求項1乃至請求項8の何れか一項に記載の移動ロボット。
【請求項1】
管理用コンピュータに接続された1以上の無線基地局を介して、前記管理用コンピュータとの間で無線通信すると共に、所定の移動領域において当該移動領域の地図データを利用して自律的に移動する移動ロボットであって、
前記無線基地局と無線通信を行う無線通信手段と、
前記無線通信手段と前記無線基地局との無線通信において、前記無線通信手段が受信する受信信号の無線強度を含む無線環境の良好度を示す複数種類の無線環境データを検出する無線環境検出手段と、
前記複数の無線環境データに所定の重み付けをした結果を示す総合無線環境データを算 出する総合無線環境データ算出手段と、
前記移動領域における自己の位置を認識する自己位置認識手段と、
前記移動領域の地図データを記憶する記憶手段と、
前記算出された総合無線環境データを、前記無線環境データを検出したときに前記自己 位置認識手段によって認識された位置に対応付けて、前記記憶手段に記憶された地図デ ータに書き込むことにより、総合無線環境マップを前記無線基地局毎に作成する総合無 線環境マップ作成手段と、を備えたことを特徴とする移動ロボット。
【請求項2】
前記複数種類の無線環境データは、前記無線強度に関するデータを含み、さらに通信速度及び通信エラー回数及びデータ再送回数の内の少なくとも一つに関するデータを含むことを特徴とする請求項1に記載の移動ロボット。
【請求項3】
前記記憶手段に記憶された地図データと、前記自己位置認識手段によって認識された位置とに基づいて、予め定められた位置へ自律的に移動し、その移動地点において、前記無線環境検出手段によって無線環境データを検出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の移動ロボット。
【請求項4】
さらに、人物の移動方向と移動の速さとを検出する移動検出手段を有し、
前記移動検出手段によって検出した移動方向と移動の速さとで、前記人物と共に移動すると共に、前記人物と共に移動する経路上において、前記無線環境検出手段によって無線環境データを検出することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の移動ロボット。
【請求項5】
前記無線環境検出手段は、所定のタイミングで反復して前記無線環境データを検出すると共に、この反復して検出される無線環境データに基づいて、前記総合無線環境データ算出手段によって、前記総合無線環境データを算出し、
前記算出された総合無線環境データと、当該無線環境データを検出したときの位置に対応付けられて前記地図データに記録された前記総合無線環境データとを比較し、両者に所定値以上の差がある状態が所定回数以上連続した場合に、前記地図データに記録された前記総合無線環境データを、直近に算出された総合無線環境データに書き換えることによって、前記総合無線環境マップを更新する総合無線環境マップ更新手段を、さらに備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の移動ロボット。
【請求項6】
前記無線環境検出手段によって無線環境データを検出した自己の位置において、撮像手段で撮影された自己の周囲の画像を、前記無線環境データを検出した位置に対応付けて、前記記憶手段に保存する周囲画像取得手段を、さらに備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の移動ロボット。
【請求項7】
前記管理用コンピュータは複数の無線基地局と接続され、前記複数の無線基地局の何れか一つを介して前記管理用コンピュータとの間で無線通信する請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載の移動ロボットであって、
前記総合無線環境マップ作成手段によって前記複数の無線基地局毎に作成された複数の総合無線環境マップに基づいて、最良の総合無線環境データを有する無線基地局を、前記記憶手段に記憶された地図データに、位置に対応付けて書き込むことにより最適無線基地局マップを作成する最適無線基地局マップ作成手段を備えたことを特徴とする移動ロボット。
【請求項8】
前記無線環境検出手段によって一の無線基地局に関する前記無線環境データを検出できなかった場合に、前記無線通信手段によって、前記一の無線基地局とは異なる他の無線基地局を介して、前記一の無線基地局に異常があることを前記管理用コンピュータに通知する無線基地局異常通知手段を、さらに備えたことを特徴とする請求項7に記載の移動ロボット。
【請求項9】
前記総合無線環境マップ作成手段によって作成された総合無線環境マップを、前記無線通信手段によって、前記管理用コンピュータに送信することを特徴とする請求項1乃至請求項8の何れか一項に記載の移動ロボット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2008−90575(P2008−90575A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−270374(P2006−270374)
【出願日】平成18年10月2日(2006.10.2)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月2日(2006.10.2)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]