説明

移動体搭載用機器

【課題】加速度センサの取り付け角度に関係なく、正確に移動体搭載用機器の取り付け角度を算出することが可能な移動体搭載用機器を提供する。
【解決手段】移動体の3軸方向への加速度を検出する加速度センサ131と、移動体が停止状態にある際に加速度センサ131から出力される出力信号に基づいて、重力加速度を算出する重力加速度算出部181と、移動体が加減速移動状態にある際に加速度センサ131から出力される出力信号に基づいて、移動体の移動体加速度を算出する移動体加速度算出部182と、算出された重力加速度と算出された移動体加速度とに基づいて、前記移動体に対する移動体搭載用機器の取り付け角度を算出する取り付け角度算出部183と、を備えるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体に取り外し可能に搭載される移動体搭載用機器に関するものであり、特に、車両などに設置してナビゲーション装置として使用する移動体搭載用機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、据付型のナビゲーション装置よりも機能を簡略化し、本体を小型軽量化することで携帯可能なPND(Portable Navigation Device)と呼ばれる簡易型のナビゲーション装置が普及している。
【0003】
また、PNDは、GPS信号を受信して自らの現在位置を検出するほか、GPS信号が取得できない場合のための補助的手段として、加速度センサやジャイロセンサを内蔵することでGPSよりも正確な現在位置を検出することが可能である。
【0004】
この種のセンサを用いて車両の現在位置を推測する自立航法式の従来技術としては、例えば、下記の特許文献1(特開平9−101141号公報)に開示されている。この特許文献1には、移動体の進行方向に平行に取り付けられた加速度センサで検出された第1の加速度と移動体の進行方向に対して所定角度傾斜して取り付けられた加速度センサで検出された第2の加速度とに基づいて移動体が斜面を進行する場合の傾斜角度を正確に算出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−101141号公報(段落[0019]〜段落[0026]、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、PNDは、車内のダッシュボードへの取り付け、取り外しが容易に行えるため、その取り付け作業はユーザ自らによって行われている。しかしながら、自立航法式に用いられる加速度センサやジャイロセンサ等は、所定の方向を向くように正しい姿勢で取り付けなければ、それぞれの取り付け角度に起因する誤差によって現在位置が正確に検出することができないという問題点があった。
【0007】
そこで、上記特許文献1に示すように、2つの加速度センサを用いて傾斜角を検出することも考えられるが、一つの加速度センサを車両進行方向に対して平行に載置しなければならないという制限があるため、ユーザがどのような姿勢に取り付けるかが不明なPNDのような車載用機器には適用が難しいという問題点があった。
【0008】
したがって、本発明は、上記の問題点を解消することを課題とし、加速度センサの取り付け角度に関係なく、正確に移動体搭載用機器の取り付け角度を算出することが可能な移動体搭載用機器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本願の請求項1に係る発明は、
移動体に搭載される移動体搭載用機器であって、
前記移動体の3軸方向への加速度を検出する加速度検出手段(例えば下記実施例では、加速度センサ131)と、
前記移動体が停止状態にある際に前記加速度検出手段から出力される出力信号に基づいて、重力加速度を算出する重力加速度算出手段(例えば下記実施例では、重力加速度算出部181)と、
前記移動体が加減速移動状態にある際に前記加速度検出手段から出力される出力信号に基づいて、前記移動体の移動体加速度を算出する移動体加速度算出手段(例えば下記実施例では、車体加速度算出部182)と、
前記重力加速度算出手段により算出された重力加速度と前記移動体加速度算出手段により算出された移動体加速度とに基づいて、前記移動体に対する前記移動体搭載用機器の取り付け角度を算出する取り付け角度算出手段(例えば下記実施例では、取り付け角度算出部183)と、
を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本願の請求項2に係る発明は、請求項1に係る移動体搭載用機器において、
前記移動体の方位を検出する方位検出手段(例えば下記実施例では、ジャイロセンサ132)と、
前記取り付け角度算出手段により算出された前記移動体搭載用機器の取り付け角度に基づいて、前記方位検出手段から出力される出力信号を補正する補正手段(例えば下記実施例では、補正手段133)と、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本願の請求項3に係る発明は、請求項1に係る移動体搭載用機器において、
前記重力加速度算出手段により算出された重力加速度と前記移動体加速度算出手段により算出された移動体加速度とに基づいて、前記移動体が現在位置する路面の傾斜角度を算出する路面角度算出手段(例えば下記実施例では、路面角度算出部184)を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本願の請求項4に係る発明は、請求項1に係る移動体搭載用機器において、
前記移動体が停止状態にある際に前記加速度検出手段から出力される出力信号を重力加速度のサンプルとして記憶可能な重力加速度記憶手段(例えば下記実施例では、バッファ181a)を備え、
前記重力加速度算出手段は、前記加速度検出手段から出力される出力信号をサンプルとして前記重力加速度記憶手段に複数回記憶し、記憶した重力加速度の平均値を算出することを特徴とする。
【0013】
また、本願の請求項5に係る発明は、請求項1に係る移動体搭載用機器において、
前記移動体が加減速移動状態にある際に前記加速度検出手段から出力される出力信号を移動体加速度のサンプルとして記憶可能な移動体加速度記憶手段(例えば下記実施例では、バッファ182a)を備え、
前記移動体加速度算出手段は、前記加速度検出手段から出力される出力信号をサンプルとして前記移動体加速度記憶手段に複数回記憶し、記憶した移動体加速度の平均値を算出することを特徴とする。
【0014】
また、本願の請求項6に係る発明は、請求項5に係る移動体搭載用機器において、
前記移動体加速度算出手段は、前記移動体が加減速移動状態にある際に前記加速度検出手段から出力される出力信号と前記重力加速度算出手段により算出された重力加速度とに基づいて、前記移動体の動的加速度を算出し、
前記動的加速度が所定の大きさの加速度の条件を満たした場合に、前記加速度検出手段から出力される出力信号をサンプルとして前記移動体加速度記憶手段に記憶することを特徴とする。
【0015】
また、本願の請求項7に係る発明は、請求項1に係る移動体搭載用機器において、
前記重力加速度算出手段により算出された重力加速度と前記移動体加速度算出手段により算出された移動体加速度とに基づいて、前記取り付け角度算出手段が算出した前記移動体搭載用機器の取り付け角度をサンプルとして記憶可能な取り付け角度記憶手段(例えば下記実施例では、バッファ183a)を備え、
前記取り付け角度算出手段は、算出した前記移動体搭載用機器の取り付け角度をサンプルとして前記取り付け角度記憶手段に複数回記憶し、記憶した取り付け角度の平均値を算出することを特徴とする。
【0016】
また、本願の請求項8に係る発明は、請求項7に係る移動体搭載用機器において、
前記取り付け角度算出手段は、前記重力加速度算出手段により算出された重力加速度と前記移動体加速度算出手段により算出された移動体加速度とに基づいて算出した前記移動体搭載用機器の取り付け角度が、所定の取り付け角度の条件を満たした場合に、当該算出した前記移動体搭載用機器の取り付け角度をサンプルとして前記取り付け角度記憶手段に記憶することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
上記の構成により、本発明は下記に示すような優れた効果を奏する。すなわち、請求項1に係る発明においては、移動体搭載用機器は、移動体が停止状態にある際に加速度検出手段から出力される出力信号に基づいて算出された重力加速度と、移動体が加減速移動状態にある際に加速度検出手段から出力される出力信号に基づいて算出された移動体加速度と、に基づいて、前記移動体に対する移動体搭載用機器の取り付け角度を算出する。
【0018】
このような構成によれば、移動体に対する加速度検出手段の取り付け角度に関係なく、正確に移動体搭載用機器の取り付け角度を算出することが可能となり、移動体搭載用機器を取り付けた移動体の加速度などを正確に算出することができる移動体搭載用機器を提供できる。
【0019】
また、請求項2に係る発明においては、請求項1に係る移動体搭載用機器において、前記移動体搭載用機器の取り付け角度に基づいて、移動体の方位を検出する方位検出手段から出力される出力信号を補正するようにしている。
【0020】
このような構成によれば、移動体に対する方位検出手段の取り付け角度に関係なく、移動体の方位を正確に算出することが可能となり、移動体搭載用機器を取り付けた移動体の加速度などをさらに正確に算出することができる移動体搭載用機器を提供できる。
【0021】
また、請求項3に係る発明においては、請求項1に係る移動体搭載用機器において、算出された重力加速度と移動体加速度とに基づいて、前記移動体が現在位置する路面の傾斜角度を算出するようにしている。
【0022】
このような構成によれば、移動体に対する加速度検出手段の取り付け角度に関係なく、移動体が現在位置する路面の傾斜角度を正確に算出することが可能となり、移動体搭載用機器を取り付けた移動体の傾斜した路面における移動距離を正確に算出することができる移動体搭載用機器を提供できる。
【0023】
また、請求項4に係る発明においては、請求項1に係る移動体搭載用機器において、移動体が停止状態にある際に加速度検出手段から出力される出力信号をサンプルとして複数回記憶し、記憶した重力加速度の平均値を算出するようにしている。
【0024】
このような構成によれば、加速度検出手段から出力される重力加速度のばらつきを抑えることができるため、より正確に移動体搭載用機器の取り付け角度を算出することが可能となり、移動体搭載用機器を取り付けた移動体の加速度などを正確に算出することができる移動体搭載用機器を提供できる。
【0025】
また、請求項5に係る発明においては、請求項1に係る移動体搭載用機器において、移動体が加減速移動状態にある際に加速度検出手段から出力される出力信号をサンプルとして複数回記憶し、記憶した移動体加速度の平均値を算出するようにしている。
【0026】
このような構成によれば、加速度検出手段から出力される移動体加速度のばらつきを抑えることができるため、より正確に移動体搭載用機器の取り付け角度を算出することが可能となり、移動体搭載用機器を取り付けた移動体の加速度などを正確に算出することができる移動体搭載用機器を提供できる。
【0027】
また、請求項6に係る発明においては、請求項5に係る移動体搭載用機器において、移動体が加減速移動状態にある際に加速度検出手段から出力される出力信号をサンプルとして複数回記憶する場合、当該出力信号と移動体が停止状態にある際の重力加速度とに基づいて算出された移動体の動的加速度が所定の大きさの加速度の条件を満たした場合に、記憶するようにしている。
【0028】
このような構成によれば、移動体が停止状態にある際に加速度検出手段から出力される出力信号と加減速移動状態にある際に加速度検出手段から出力される出力信号によって表わされるベクトルの方向の精度が向上するため、加速度検出手段から出力される移動体加速度のばらつきを抑えることができる、より正確に移動体搭載用機器の取り付け角度を算出することが可能となり、移動体搭載用機器を取り付けた移動体の加速度などを正確に算出することができる移動体搭載用機器を提供できる。
【0029】
また、請求項7に係る発明においては、請求項1に係る移動体搭載用機器において、取り付け角度算出手段が算出した前記移動体搭載用機器の取り付け角度をサンプルとして複数回記憶し、記憶した取り付け角度の平均値を算出するようにしている。
【0030】
このような構成によれば、取り付け角度算出手段が算出した移動体搭載用機器の取り付け角度のばらつきを抑えることができるため、より正確に移動体搭載用機器の取り付け角度を算出することが可能となり、移動体搭載用機器を取り付けた移動体の加速度などを正確に算出することができる移動体搭載用機器を提供できる。
【0031】
また、請求項8に係る発明においては、請求項7に係る移動体搭載用機器において、取り付け角度算出手段が算出した前記移動体搭載用機器の取り付け角度をサンプルとして複数回記憶する場合、所定の取り付け角度の条件を満たした場合に、記憶するようにしている。
【0032】
このような構成によれば、一般の取り付けでは考え難い角度を超える角度であれば、その値を採用しないことでばらつきを抑えることができるため、より正確に移動体搭載用機器の取り付け角度を算出することが可能となり、移動体搭載用機器を取り付けた移動体の加速度などを正確に算出することができる移動体搭載用機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施例におけるナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例におけるナビゲーション装置の処理手順を示すフローチャートであり、重力加速度の算出処理を示している。
【図3】本発明の実施例におけるナビゲーション装置の処理手順を示すフローチャートであり、車体加速度の算出処理を示している。
【図4】本発明の実施例におけるナビゲーション装置の処理手順を示すフローチャートであり、取り付け角度の算出処理を示している。
【図5】本発明の実施例におけるナビゲーション装置の処理手順を示すフローチャートであり、路面角度の算出処理を示している。
【図6】本発明の実施例におけるナビゲーション装置の車体に対する取り付け状態を示す一例である。
【図7】車体の横軸と垂直軸を説明する図である。
【図8】車体のX軸と加速度センサの3軸との関係を説明する図である。
【図9】車体と路面角との関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の具体例を実施例及び図面を用いて詳細に説明する。但し、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための移動体搭載用機器として車体に搭載されるナビゲーション装置を例示するものであって、本発明をこのナビゲーション装置に特定することを意図するものではなく、特許請求の範囲に示した技術思想に含まれるその他の実施形態の移動体搭載用機器にも等しく適用し得るものである。
【実施例】
【0035】
まず、図1を参照して、本発明の実施例に係るナビゲーション装置の構成について説明する。図1は、本発明の実施例に係るナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。ナビゲーション装置10は、制御手段100、通信手段110、GPS測位手段120、自立航法測位手段130、経路探索手段140、経路案内手段150、表示手段160、入力手段170、算出手段180、記憶手段190を備えて構成される。
【0036】
制御手段100は、CPU100a、RAM100b、ROM100cからなるプロセッサで構成され、RAM100b又はROM100cに記憶されているプログラムをCPU100aにおいて実行することによってナビゲーション装置10の各部の動作を制御統括する。また、制御手段100は、後述する加速度センサ131とジャイロセンサ132からの信号に基づき、ナビゲーション装置10を搭載した車体20が停車中であること、或いは加減速直進走行中であることを判断する。
【0037】
通信手段110は、制御手段100の制御により、このナビゲーション装置10と通信可能な情報提供サーバ(図示せず)との間で地図データといった各種情報の送受信を行う。
【0038】
GPS測位手段120は、地球上空を周回している複数のGPS衛星からの時刻情報を含む電波を受信し、それをもとにナビゲーション装置10を搭載した車体の現在位置情報を算出するものである。
【0039】
自立航法測位手段130は、加速度センサ131とジャイロセンサ132を備えて構成される。加速度センサ131は、予め定められた3軸方向への車体(車両)の加速度を検出し、ジャイロセンサ132は、移動体のY軸回り及びZ軸回りの角速度を検出する。加速度センサ131とジャイロセンサ132は、それぞれ検出した加速度や角速度を制御手段100に出力する。
【0040】
加速度センサ131が車体に対して正しい姿勢で設置された場合、加速度センサ131によって、車体の進行方向(本実施例ではX軸方向とする)への加速度と、車体の進行方向に水平面内で直交する方向(本実施例ではY軸方向とする)への加速度と、車体の進行方向(X軸方向)及びこの進行方向に水平面内で直交する方向(Y軸方向)に直交する方向(本実施例ではZ軸方向とする)への加速度とが検出される。
【0041】
ジャイロセンサ132が車体に対して正しい姿勢で設置されている場合、ジャイロセンサ132によって、Y軸回りに車体が回転する際の角速度(Pitch角)と、Z軸回りに車体が回転する際の角速度(Yaw角)が検出される。
【0042】
また、自立航法測位手段130は、車体に対して正しい姿勢でナビゲーション装置10が設置されていない場合に生じる車体20と加速度センサ131の各軸のずれを補正したり、ジャイロセンサ132からの出力誤差を補正したりするための補正手段133を備えている。補正手段133による補正方法については後で詳細に説明する。
【0043】
経路探索手段140は、入力手段170の操作により出発地点や目的地点が指定されると、記憶手段190の地図記憶部193に記憶されている道路データを参照し、出発地点から目的地点に至るまでの最適経路を探索し、案内経路データを作成するものである。経路探索手段140によって探索された案内経路は、制御手段100によって、表示手段160に現在位置周辺の地図画像と共に表示され、目的地点までの案内に用いられる。
【0044】
経路案内手段150は、経路探索手段140によって探索された案内経路データと、GPS測位手段120によって検出された現在位置とを比較し、現在位置において必要とされるガイダンスを図示しないスピーカなどから音声出力する。
【0045】
表示手段160は、LCDなどのディスプレイパネルから構成される表示画面を備えた表示ユニットであり、地図画像や案内経路、現在位置などを表示する。
【0046】
入力手段170は、操作ボタンやタッチパネルなどにより構成され、ナビゲーション装置10の各種機能を操作したり、所要の数値や文字を入力したりするものである。
【0047】
算出手段180は、重力加速度算出部181、車体加速度算出部182、取り付け角度算出部183、路面角度算出部184を備えて構成される。
【0048】
重力加速度算出部181は、データを一時的にバッファリングするバッファ181aを備え、制御手段100がナビゲーション装置10を搭載した車両が停止中であると判断した場合に、加速度センサ131から所定のタイミング(例えば、0.1s)毎に検出される重力加速度値をバッファ181aにサンプルとしてバッファリングしていき、1s経過毎にバッファリングした10個のサンプルを相加平均することにより、重力加速度平均値AG*Aveを算出する。
【0049】
重力加速度算出部181は、算出された重力加速度平均値AG*Aveを、バッファ181aにバッファリングし、この重力加速度平均値AG*Aveを算出する1s前に算出してバッファ181aにバッファリングされている前回の重力加速度平均値AG*Ave0を読み出し、算出された重力加速度AG*(AGX,AGY,AGZ)として出力する。
【0050】
なお、車両停止解除前の1sのサンプルデータは、加速度センサ出力に動的加速度値を含んでいる可能性があるため、精度のよい重力加速度が得られるよう、平均値として考慮しないようにすることが好ましい。
【0051】
車体加速度算出部182は、データを一時的にバッファリングするバッファ182aを備え、制御手段100がナビゲーション装置10を搭載した車両が加速直進走行中であると判断した場合に、加速度センサ131から所定のタイミング(例えば、0.1s)毎に検出される加速度A* Ave(AX Ave,AY Ave,AZ Ave)と重力加速度算出部181から出力される重力加速度AG*(AGX,AGY,AGZ)とに基づいて、動的加速度AD*=(ADX,ADY,ADZ)を算出する。
【0052】
ここで、動的加速度AD*=(ADX,ADY,ADZ)は下式(1)のように表わされる。
【0053】
D*=A* Ave−AG* ・・・(1)
そして、各軸合力の動的加速度値AD
D =√(ADX2 +ADY2 +ADZ2 ) ・・・(2)
と表わされる。
【0054】
車体加速度算出部182は、算出された動的加速度値AD が所定の一定値(例えば、+70mG)以上あるか否か判断し、所定値(+70mG)以上の動的加速度値AD が算出された際の加速度A* Aveをバッファ182aにサンプルとしてバッファリングしていき、10個のサンプルがバッファリングされる毎にバッファリングした10個のサンプルを相加平均し、車体加速度AGD* (AGDX ,AGDY ,AGDZ )として出力する。この車体加速度AGD* は、重力加速度込みの車両の加速度を表している。
【0055】
なお、車体加速度算出部182は、バッファ182aにバッファリングされる加速度A* Aveのサンプルが10個になるまで、動的加速度AD*の算出処理を繰り返す。また、制御手段100は、車体加速度算出部182がサンプルをバッファリング中に、ナビゲーション装置10を搭載した車両が加速直進走行をしていないと判断した場合には、ナビゲーション装置10の取り付け角や路面角を記憶する取り付け角度記憶部191や路面傾斜角記憶部192に予め決められたデフォルト値を設定し、後から説明する取り付け角度算出処理などを終了させる。
【0056】
このように、加速度センサ131からの出力における2点の記録に関し、「車両停止時」と「直線加速時(70mG)」の2点とすることで、ベクトル方向の精度向上を図っている。また、上記2点のサンプルは、100ms×α(上記の説明では、αは1回とする)の平均値を採用することでばらつきを抑えている。
【0057】
取り付け角度算出部183は、データを一時的にバッファリングするバッファ183aを備え、重力加速度算出部181から出力される重力加速度AG*(AGX,AGY,AGZ)と車体加速度算出部182から出力される車体加速度AGD* (AGDX ,AGDY ,AGDZ )とに基づいて、車体に対するナビゲーション装置10の取り付け角度を算出する。
【0058】
すなわち、図6で示すように、車体20の互いに直交する3軸をX軸、Y軸、Z軸(ここで、X軸は車体の進行方向と同じ軸、Y軸は車体の横軸、Z軸は車体の垂直軸)とし、加速度センサ131が、ナビゲーション装置10の互いに直交するXa軸、Ya軸、Za 軸に配置されているとすると、取り付け角度算出部183は、車体20の3軸(X軸、Y軸、Z軸)と加速度センサ131の3軸(Xa軸、Ya軸、Za軸)との間の各軸のズレ(角度θ* )を算出する。
【0059】
ここで、図6で示すように、
X軸とXa軸のなす角をθxax、
X軸とYa軸のなす角をθyax、
X軸とZa軸のなす角をθzax
とする。同様に、
Y軸とXa軸のなす角をθxay、
Y軸とYa軸のなす角をθyay、
Y軸とZa軸のなす角をθzay、
とし、
Z軸とXa軸のなす角をθxaz、
Z軸とYa軸のなす角をθyaz、
Z軸とZa軸のなす角をθzaz、
とする。そして以下に説明する手順によって各θ* を算出する。
【0060】
まず、車体20の3軸のうちのX軸は、図6で示すように、車体の進行方向と同じ軸であるため、このX軸の方向ベクトルXは、車両が加速しているときの動的加速度AD*と平行となる。このため、X軸の方向ベクトルXは、車両が停止しているときに加速度センサ131が検出している重力加速度AG*と、車両が加減速直線走行しているときに加速度センサ131が検出している車体加速度AGD* とに基づいて、下式(3)のように表わされる。
【0061】
X=AD*=AGD* −AG* ・・・(3)
ここで、
G*=(AGX,AGY,AGZ
GD* =(AGDX ,AGDY ,AGDZ
であるので、X=(Xx,Xy,Xz)とすれば、
Xx=AGDX −AGX
Xy=AGDY −AGY
Xz=AGDZ −AGZ
となる。
【0062】
次に、車体20のY軸(横軸)は、図7(a)で示すように、車体加速度AGD* と重力加速度AG*の2つのベクトルを含む平面に垂直なベクトルとなるため、この法線ベクトルYは、ベクトルの外積として下式(4)のように表わされる。
【0063】
Y=AG*×AGD* ・・・(4)
ここで、Y=(Yx,Yy,Yz)とすれば、
Yx=AGY・AGDZ −AGDY ・AGZ
Yy=AGZ・AGDX −AGDZ ・AGX
Yz=AGX・AGDY −AGDX ・AGY
となる。
【0064】
さらに、車体20のZ軸(垂直軸)は、図7(b)で示すように、上記で求めた車体のX軸とY軸の2つのベクトルを含む平面に垂直なベクトルとなるため、この法線ベクトルZは、ベクトルの外積として下式(5)のように表わされる。
【0065】
Z=X×Y ・・・(5)
ここで、Z=(Zx,Zy,Zz)とすれば、
Zx=Xy・Yz−Yy・Xz
Zy=Xz・Yx−Yz・Xx
Zz=Xx・Yy−Yx・Xy
となる。
【0066】
このように、車体20の3軸(X軸、Y軸、Z軸)が算出されると、加速度センサ131の3軸(Xa軸、Ya軸、Za軸)とのなす角を求める。ここで、A=(Ax,Ay,Az)、B=(Bx,By,Bz)の2つのベクトルのなす角は、余弦定理を用いて、
A・B=|A||B|cosθ
より、
θ=cos-1{A・B/(|A||B|)}
として求めることができる。ただし、
A・B=AxBx+AyBy+AzBz
|A|=√(Ax2 +Ay2 +Az2
|B|=√(Bx2 +By2 +Bz2
が成立する。
【0067】
したがって、例えば、車体20のX軸と加速度センサ131のXa軸とのなす角θxaxは、下式(6)のように表わされる。
【0068】
θxax=cos-1{X・Xa/(|X||Xa|)} ・・・(6)
ここで、
X=(Xx,Xy,Xz)、 Xa=(a,0,0) ただし、aは任意の定数
となるので、式(6)は、
θxax=cos-1{Xx/√(Xx2 +Xy2 +Xz2 )} ・・・(7)
となる。ただし、
Xx=AGDX −AGX
Xy=AGDY −AGY
Xz=AGDZ −AGZ
したがって、車体20のY軸およびZ軸と加速度センサ131のXa軸とのなす角θxay、θxazは、それぞれ、
θxay=cos-1{Yx/√(Yx2 +Yy2 +Yz2 )} ・・・(8)
θxaz=cos-1{Zx/√(Zx2 +Zy2 +Zz2 )} ・・・(9)
となる。
【0069】
また、車体20のY軸と加速度センサ131のYa軸とのなす角θyayは、
Y=(Yx,Yy,Yz)、Ya=(0,b,0) ただし、bは任意の定数
となるので、下式(10)のように表わされる。
【0070】
θyay=cos-1{Yy/√(Yx2 +Yy2 +Yz2 )} ・・・(10)
同様に、車体20のZ軸およびX軸と加速度センサ131のYa軸とのなす角θyaz、θyaxは、それぞれ、
θyaz=cos-1{Yz/√(Yx2 +Yy2 +Yz2 )} ・・・(11)
θyax=cos-1{Yx/√(Yx2 +Yy2 +Yz2 )} ・・・(12)
となる。ただし、
Yx=AGY・AGDZ −AGDY ・AGZ
Yy=AGZ・AGDX −AGDZ ・AGX
Yz=AGX・AGDY −AGDX ・AGY
さらに、車体20のZ軸と加速度センサ131のZa軸とのなす角θyayは、
Z=(Zx,Zy,Zz)、Ya=(0,0,c) ただし、cは任意の定数
となるので、下式(13)のように表わされる。
【0071】
θzaz=cos-1{Zz/√(Zx2 +Zy2 +Zz2 )} ・・・(13)
同様に、車体20のX軸およびY軸と加速度センサ131のZa軸とのなす角θzax、θzayは、それぞれ、
θzax=cos-1{Zx/√(Zx2 +Zy2 +Zz2 )} ・・・(14)
θzay=cos-1{Zy/√(Zx2 +Zy2 +Zz2 )} ・・・(15)
となる。ただし、
Zx=Xy・Yz−Yy・Xz
=(AGDY −AGY)・(AGX・AGDY −AGDX ・AGY
−(AGZ・AGDX −AGDZ ・AGX)・(AGDZ −AGZ
Zy=Xz・Yx−Yz・Xx
=(AGDZ −AGZ)・(AGY・AGDZ −AGDY ・AGZ
−(AGX・AGDY −AGDX ・AGY)・(AGDX −AGX
Zz=Xx・Yy−Yx・Xy
=(AGDX −AGX)・(AGZ・AGDX −AGDZ ・AGX
−(AGY・AGDZ −AGDY ・AGZ)・(AGDY −AGY
このように、車体20の3軸(X軸、Y軸、Z軸)と加速度センサ131の3軸(Xa軸、Ya軸、Za軸)との間の各軸のなす角(ズレ角度)θ* は、取り付け角度算出部183によって、加速度センサ131が検出する重力加速度AG*=(AGX,AGY,AGZ)と、車体加速度AGD* =(AGDX ,AGDY ,AGDZ )とから算出される。
【0072】
取り付け角度算出部183は、算出された各軸のなす角度θ* が所定の角度(例えば、60°)以下であるか否か判断し、所定値(60°)以下のズレ角度が算出された際の値をバッファ183aにサンプルとしてバッファリングしていき、4組のサンプルがバッファリングされると、その4組のサンプルを相加平均し、取り付け角度θとして取り付け角度記憶部191に記憶させる。
【0073】
なお、所定値(60°)を超えるズレ角度が算出された場合には、ナビゲーション装置10の取り付け角や路面角を記憶する取り付け角度記憶部191や路面傾斜角記憶部192に予め決められたデフォルト値を設定し、後から説明する路面角度算出処理を終了させる。
【0074】
このように、算出された取り付け角度は、複数回、例えば4回の算出結果の平均値を採用することでばらつきを抑えている。また、算出結果の値が、一般の取り付けでは考え難い角度、例えば60°を超える角度であれば、取得した2点記録サンプル(AG*とAGD* )の不良による算出エラーとして、その値を採用しないことでばらつきを抑えている。
【0075】
補正手段133は、取り付け角度算出部183によって算出された取り付け角度に基づいて、加速度センサ131の3軸の出力を車体20の3軸に変換する補正を行う。例えば、図8で示すように、加速度センサ131のXa軸にのみXaなる加速度があると仮定すると、車体の3軸では、
X=Xa・cosθxax、Y=Xa・cosθxay、Z=Xa・cosθxaz
と表わすことができる。
【0076】
同様に、Ya軸にのみYa、Za軸にのみZaなる加速度があるときは、それぞれ、
X=Ya・cosθyax、Y=Ya・cosθyay、Z=Ya・cosθyaz
X=Za・cosθzax、Y=Za・cosθzay、Z=Za・cosθzaz
したがって、取り付け角度記憶部191に記憶された車体20の3軸と加速度センサ131の3軸のそれぞれのなす角θ* に基づいて、A=(Xa,Ya,Za)なる加速度を加速度センサ131により検出したとすると、車体の3軸方向では加速度値(X,Y,Z)は
X=Xa・cosθxax+Ya・cosθyax+Za・cosθzax
Y=Xa・cosθxay+Ya・cosθyay+Za・cosθzay
Z=Xa・cosθxaz+Ya・cosθyaz+Za・cosθzaz
と表わされる。
【0077】
これは下式(16)のように整理することができ、加速度センサの3軸から車体の3軸への変換を行うことができるため、取り付け角度のずれを補正することができる。
【0078】

【0079】
また、補正手段133は、車体に対して正しい姿勢でナビゲーション装置10が設置されていない場合に生じるジャイロセンサ132からの出力誤差を補正する。これは、ジャイロセンサの回転軸がθだけ傾くと、その出力がcosθ倍になるため、所定の補正定数を乗算して補正する。
【0080】
ここで、Y方向に対するY軸のずれをθyAave、Z方向に対するZ軸のずれをθzAveとすると、Pitch角検出用ジャイロセンサの補正定数Jp、Yaw角検出用ジャイロセンサの補正定数Jyは、それぞれ、
Jp=1/cos|θyAave|
Jy=1/cos|θzAve|
と表わされるので、補正手段133は、ジャイロセンサ132からの出力を、この定数JpまたはJyで乗算することにより補正することができる。
【0081】
路面角度算出部184は、重力加速度算出部181から出力される重力加速度値AG*(AGX,AGY,AGZ)と車体加速度算出部182から出力される車体加速度値AGD* (AGDX ,AGDY ,AGDZ )とに基づいて、路面の傾斜角度θR を算出する。
【0082】
まず、図9で示すように、動的加速度AD*=(ADX,ADY,ADZ)と重力加速度AG*=(AGX,AGY,AGZ)の2つのベクトルのなす角θGD と求める。この角θGD は、余弦定理を用いて、下式(17)のように表わされる。
【0083】
θGD=cos-1{AD*・AG*/(|AD*||AG*|)} ・・・(17)
ただし、
D*・AG*=ADXGX+ADYGY+ADZGZ
|AD*|=√(ADX2 +ADY2 +ADZ2
|AG*|=√(AGX2 +AGY2 +AGZ2
なお、動的加速度AD*=(ADX,ADY,ADZ)は、重力加速度AG*と、車体加速度AGD* とに基づいて、上記(3)のように表わされるので、路面角度算出部184が、重力加速度算出部181から出力される重力加速度値AG*(AGX,AGY,AGZ)と車体加速度算出部182から出力される車体加速度値AGD* (AGDX ,AGDY ,AGDZ )とに基づいて算出してもよいし、取り付け角度算出部183において算出された結果を用いてもよい。
【0084】
路面角度算出部184は、算出された2つのベクトルAD*,AG*のなす角θGDから路面傾斜角θR を算出する。路面傾斜角θR は、図9で示すように、下式(18)のように表わされる。
【0085】
θR =90°−θGD ・・・(18)
路面角度演算部184は、算出された路面傾斜角θR が所定の角度(例えば、5°)以下であるか否か判断し、所定値(5°)以下の路面傾斜角が算出された際の値を路面傾斜角θR として路面傾斜角記憶部192に記憶させる。なお、所定値(5°)より大きな路面傾斜角が算出された場合には異常と判断し、ナビゲーション装置10の取り付け角や路面角を記憶する取り付け角度記憶部191や路面傾斜角記憶部192に予め決められたデフォルト値を設定して、路面角度算出処理を終了させる。
【0086】
記憶手段190は、取り付け角度記憶部191、路面傾斜角記憶部192、地図記憶部193を備えて構成される。取り付け角度記憶部191は、FRAM(登録商標)などの不揮発性メモリによって構成されており、取り付け角度算出部183によって算出された車体の3軸と加速度センサの3軸のそれぞれのなす角θ* を記憶する。また、路面傾斜角記憶部192は、FRAM(登録商標)などの不揮発性メモリによって構成されており、路面角度算出部184によって算出された路面の傾斜角度θR を記憶する。
【0087】
地図記憶部193には、各道路の交差点や分岐点などの結節点をノードとし、それぞれのノード間を結ぶ経路をリンクとした道路ノードデータと道路リンクデータを含む道路データが記憶されている。道路ノードデータには、道路ノードの番号、位置座標、接続リンク本数、交差点名称などが含まれる。また、道路リンクデータには起点および終点となる道路ノードの番号、道路種別、リンク長(リンクコスト)、所要時間、車線数、車道幅などが含まれる。道路リンクデータにはさらに、リンク属性として橋、トンネル、踏切、料金所などのデータが付与される。道路種別は、高速道路や有料道路の別および国道や都道府県道などの別を含む情報である。
【0088】
また、地図記憶部193には、道路データの他、地図画像を見やすく表示するためにベクター形式で記憶された背景画像データを含んでいてもよい。道路データと背景画像データを含む地図画像データは、制御手段100により、ナビゲーション装置10を使用する際に、ナビゲーション装置10の現在位置を含む所定範囲が地図記憶部193から抽出され、現在位置を示す現在位置マークや案内経路の画像と重ね合わされて表示手段160に表示される。
【0089】
次に、図2〜図5を参照して、本発明の実施例におけるナビゲーション装置10の姿勢角検出処理の手順を説明する。図2〜図5に示す処理は、制御手段100がRAM100b又はROM100cに記憶されているプログラムを実行することで実現される。
【0090】
図2は、本発明の実施例におけるナビゲーション装置の処理手順を示すフローチャートであり、重力加速度の算出処理を示している。まず、ステップS201の処理において、制御手段100により加速度センサ131とジャイロセンサ132からの信号に基づき、ナビゲーション装置10を搭載した車両が停止中であるか否かの判定が行われ、車両が停止中でない場合には(ステップS201のNo)、車両が停止するまでステップS201の処理が繰り返される。
【0091】
車両が停止中である判定されると(ステップS201のYes)、ステップS202の処理において、制御手段100の制御により、重力加速度算出部181が、加速度センサ131から0.1s毎に検出される重力加速度A* Aveをバッファ181aにバッファリングする。
【0092】
そして、ステップS203の処理において、制御手段100の制御により、重力加速度算出部181が、バッファ181aに重力加速度のバッファリングを開始してから1s経過してバッファリングされた重力加速度のサンプル数が所定の10個になったか否かの判定を行い、所定数になっていない場合には(ステップS203のNo)、ステップS202の処理に戻り、一方、所定数になっている場合には(ステップS203のYes)、ステップS204の処理に進む。
【0093】
ステップS204の処理では、制御手段100の制御により、重力加速度算出部181が、バッファ181aにバッファリングされている10個の重力加速度を相加平均することにより、重力加速度平均値AG*Aveを算出する。
【0094】
次に、ステップS205の処理において、制御手段100の制御により、重力加速度算出部181が、1s前に算出されてバッファ181aにバッファリングされている前回の重力加速度平均値AG*Ave0があるか否かの判定を行い、前回の重力加速度平均値がバッファリングされていると判定された場合(ステップS205のYes)、ステップS206の処理において、重力加速度算出部181は、バッファ181aにバッファリングされている前回の重力加速度平均値を重力加速度算出部181において算出された重力加速度AG*として出力し、処理を終了する。
【0095】
一方、前回の重力加速度平均値がバッファリングされていないと判定された場合(ステップS205のNo)、ステップS207の処理において、今回算出された重力加速度平均値をバッファ181aにバッファリングし、ステップS202の処理に戻る。
【0096】
図3は、本発明の実施例におけるナビゲーション装置の処理手順を示すフローチャートであり、車体加速度の算出処理を示している。まず、ステップS301の処理において、制御手段100により加速度センサ131とジャイロセンサ132からの信号に基づき、ナビゲーション装置10を搭載した車両が加減速直進走行中であるか否かの判定が行われ、車両が加減速直進走行中である判定された場合には(ステップS301のYes)、ステップS302の処理に進み、一方、車両が加減速直進走行中でないと判定された場合には(ステップS301のNo)、ステップS310の処理に進む。
【0097】
ステップS302の処理では、制御手段100により加速度センサ131とジャイロセンサ132からの信号に基づき、ナビゲーション装置10を搭載した車両が加速中であるか否かの判定が行われ、車両が加速中であると判定された場合には(ステップS302のYes)、ステップS303の処理に進み、一方、車両が加速中でないと判定された場合には(ステップS302のNo)、ステップS311の処理に進む。
【0098】
そして、制御手段100の制御により、車体加速度算出部182が、ステップS303の処理において、加速度センサ131から0.1s毎に検出された加速度A* Aveの入力を受け付け、ステップS304の処理において、重力加速度算出部181から出力された重力加速度AG*の入力を受け付け、ステップS305の処理において、入力された加速度A* Aveと重力加速度AG*とに基づいて、動的加速度AD*および動的加速度値AD を算出する。
【0099】
次に、ステップS306の処理において、制御手段100の制御により、車体加速度算出部182は、算出された動的加速度値AD が所定値の70mG以上であるか否かを判定する。算出された動的加速度値AD が70mG以上である場合には(ステップS306のYes)、ステップS307の処理に進み、一方、算出された動的加速度値AD が所定値の70mG未満である場合には(ステップS306のNo)、ステップS310の処理に進む。
【0100】
ステップS307の処理では、制御手段100の制御により、車体加速度算出部182が、ステップS303の処理において入力を受け付けた加速度A* Aveをバッファ182aにバッファリングする。
【0101】
そして、ステップS308の処理において、制御手段100の制御により、車体加速度算出部182が、バッファ182aにバッファリングされた加速度のサンプル数が所定の10個になったか否かの判定を行い、所定数になっていない場合には(ステップS308のNo)、ステップS301の処理に戻り、一方、所定数になっている場合には(ステップS308のYes)、ステップS309の処理に進む。
【0102】
ステップS309の処理では、制御手段100の制御により、車体加速度算出部182が、バッファ182aにバッファリングされている10個の加速度を相加平均することにより、車体加速度AGD* として出力し、処理を終了する。
【0103】
一方、ステップS301の処理において車両が加減速直進走行中でないと判定された場合(ステップS301のNo)、あるいは、ステップS306の処理において算出された動的加速度値AD が所定値の70mG未満であると判定された場合(ステップS306のNo)、ステップS310の処理において、制御手段100の制御により、車体加速度算出部182が、ステップS303の処理において入力を受け付けた加速度A* Aveをバッファ182aにバッファリング中であるか否か判定する。
【0104】
そして、加速度A* Aveをバッファ182aにバッファリング中でないと判定した場合には(ステップS310のNo)、ステップS301の処理に戻り、一方、加速度A* Aveをバッファ182aにバッファリング中であると判定した場合(ステップS310のYes)、あるいは、車両が加速中でないと判定された場合には(ステップS302のNo)、ステップS311の処理に進む。
【0105】
ステップS311の処理では、制御手段100の制御により、ナビゲーション装置10の取り付け角や路面角として予め決められたデフォルト値が取り付け角度記憶部191や路面傾斜角記憶部192に設定され、ステップS312の処理において、制御手段100の制御により、車体加速度算出部182が、バッファ182aの内容をクリアし、処理を終了する。
【0106】
図4は、本発明の実施例におけるナビゲーション装置の処理手順を示すフローチャートであり、取り付け角度の算出処理を示している。まず、制御手段100の制御により、取り付け角度算出部183が、ステップS401の処理において、重力加速度算出部181から出力された重力加速度AG*の入力を受け付け、ステップS402の処理において、車体加速度算出部182から出力された車体加速度AGD* の入力を受け付ける。
【0107】
そして、ステップS403の処理において、制御手段100の制御により、取り付け角度算出部183が、入力された重力加速度AG*と車体加速度AGD* とに基づいて、車両の進行方向と平行な車体のX軸となるベクトルXを算出し、ステップS404の処理において、車体加速度AGD* と重力加速度AG*とに基づいて、この2つのベクトルを含む平面に垂直な車体のY軸となる法線ベクトルYを算出する。
【0108】
さらに、ステップS405の処理において、制御手段100の制御により、取り付け角度算出部183が、ステップS403の処理において算出したXベクトルと、ステップS404の処理において算出したYベクトルと、に基づいて、この2つのベクトルを含む平面に垂直な車体のZ軸となる法線ベクトルZを算出する。
【0109】
次に、ステップS406の処理において、制御手段100の制御により、取り付け角度算出部183が、車体の3軸(X軸、Y軸、Z軸)と加速度センサ131の3軸(Xa軸、Ya軸、Za軸)との間の各軸のなす角(ズレ角度)θ* を算出する。
【0110】
そして、ステップS407の処理において、制御手段100の制御により、取り付け角度算出部183は、算出された各軸のなす角θ* が所定値の60°以下であるか否かを判定する。算出された各軸のなす角θ* が60°以下である場合には(ステップS407のYes)、ステップS408の処理に進み、一方、算出された各軸のなす角θ* が所定値の60°を超える場合には(ステップS407のNo)、ステップS411の処理に進む。
【0111】
ステップS408の処理では、制御手段100の制御により、取り付け角度算出部183が、ステップS406の処理において算出された各軸のなす角θ* をバッファ183aにバッファリングする。
【0112】
そして、ステップS409の処理において、制御手段100の制御により、取り付け角度算出部183が、バッファ183aにバッファリングされた各軸のなす角θ* のサンプル数が所定の4組になったか否かの判定を行い、所定数になっていない場合には(ステップS409のNo)、ステップS401の処理に戻り、一方、所定数になっている場合には(ステップS409のYes)、ステップS410の処理に進む。
【0113】
ステップS410の処理では、制御手段100の制御により、取り付け角度算出部183が、バッファ183aにバッファリングされている4組の各軸のなす角θ* を相加平均することにより、各軸のなす角(ズレ角度)θ* として出力し、処理を終了する。
【0114】
なお、取り付け角度算出部183から出力された各軸のなす角(ズレ角度)θ* は、制御手段100の制御により、取り付け角度記憶部191に記憶される。そして、補正手段133によって加速度センサの3軸からの出力を車体の3軸への出力へと変換を行う際の補正に用いられる。
【0115】
一方、ステップS407の処理において算出された各軸のなす角θ* が所定値の60°を超えていると判定された場合(ステップS407のNo)、ステップS411の処理において、制御手段100の制御により、ナビゲーション装置10の取り付け角や路面角として予め決められたデフォルト値が取り付け角度記憶部191や路面傾斜角記憶部192に設定され、ステップS412の処理において、制御手段100の制御により、取り付け角度算出部183が、バッファ183aの内容をクリアし、処理を終了する。
【0116】
図5は、本発明の実施例におけるナビゲーション装置の処理手順を示すフローチャートであり、路面角度の算出処理を示している。まず、制御手段100の制御により、路面角度算出部184が、ステップS501の処理において、重力加速度算出部181から出力された重力加速度AG*の入力を受け付け、ステップS502の処理において、車体加速度算出部182から出力された車体加速度AGD* の入力を受け付ける。
【0117】
そして、ステップS503の処理において、制御手段100の制御により、路面角度算出部184が、入力された重力加速度AG*と車体加速度AGD* とに基づいて、車両の進行方向と平行な車体のX軸となるベクトルXを算出し、ステップS404の処理において、車体加速度AGD* と重力加速度AG*とに基づいて、動的加速度AD*を算出する。
【0118】
なお、動的加速度AD*は、図4の取り付け角度の算出処理を示すフローチャートのステップS403の処理において、ベクトルXとして算出しているので、この算出結果を利用する場合には、上記ステップS503の処理は省略してもよい。
【0119】
さらに、ステップS504の処理において、制御手段100の制御により、路面角度算出部184が、ステップS501の処理において入力された重力加速度AG*と、ステップS503の処理において算出した動的加速度AD*と、に基づいて、この2つのベクトルのなす角θGD を算出する。
【0120】
次に、ステップS505の処理において、制御手段100の制御により、路面角度算出部184が、算出された2つのベクトルAD*,AG*のなす角θGDから路面傾斜角θR を算出する。
【0121】
そして、ステップS506の処理において、制御手段100の制御により、路面角度算出部184は、算出された路面傾斜角θR が所定値の5°以下であるか否かを判定する。算出された路面傾斜角θR が5°以下である場合には(ステップS506のYes)、ステップS507の処理に進み、一方、算出された路面傾斜角θR が所定値の5°を超える場合には(ステップS506のNo)、ステップS508の処理に進む。
【0122】
ステップS507の処理では、制御手段100の制御により、路面角度算出部184が、路面傾斜角θR として出力し、処理を終了する。なお、路面角度算出部184から出力された路面傾斜角θR は、制御手段100の制御により、路面傾斜角記憶部192に記憶される。そして、補正手段133によってジャイロセンサ132からの出力の補正に用いられる。
【0123】
一方、ステップS506の処理において算出された路面傾斜角θR が所定値の5°を超えていると判定された場合(ステップS506のNo)、ステップS508の処理において、制御手段100の制御により、路面角として予め決められたデフォルト値が路面傾斜角記憶部192に設定され、処理を終了する。
【0124】
以上説明したように、本発明に係るナビゲーション装置によれば、車体に対する加速度センサの取り付け角度に関係なく、正確にナビゲーション装置の取り付け角度を算出することが可能となり、ナビゲーション装置を取り付けた車両の加速度や路面傾斜角などを正確に算出することができる。
【0125】
なお、上記実施例においては、移動体搭載用機器としてナビゲーション装置10を用いて説明したが、本発明はこれに限定されることなく、移動体の加速度から移動体の移動距離を算出する各種電子機器などにも適用できる。
【符号の説明】
【0126】
10・・・・ナビゲーション装置
100・・・制御手段
110・・・通信手段
120・・・GPS測位手段
130・・・自立航法測位手段
131・・・加速度センサ
132・・・ジャイロセンサ
133・・・補正手段
140・・・経路探索手段
150・・・経路案内手段
160・・・表示手段
170・・・入力手段
180・・・算出手段
181・・・重力加速度算出部
182・・・車体加速度算出部
183・・・取り付け角度算出部
184・・・路面角度算出部
181a、182a、183a・・・バッファ
190・・・記憶手段
191・・・取り付け角度記憶部
192・・・路面傾斜角記憶部
193・・・地図記憶部
20・・・・車体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載される移動体搭載用機器であって、
前記移動体の3軸方向への加速度を検出する加速度検出手段と、
前記移動体が停止状態にある際に前記加速度検出手段から出力される出力信号に基づいて、重力加速度を算出する重力加速度算出手段と、
前記移動体が加減速移動状態にある際に前記加速度検出手段から出力される出力信号に基づいて、前記移動体の移動体加速度を算出する移動体加速度算出手段と、
前記重力加速度算出手段により算出された重力加速度と前記移動体加速度算出手段により算出された移動体加速度とに基づいて、前記移動体に対する前記移動体搭載用機器の取り付け角度を算出する取り付け角度算出手段と、
を備えたことを特徴とする移動体搭載用機器。
【請求項2】
前記移動体の方位を検出する方位検出手段と、
前記取り付け角度算出手段により算出された前記移動体搭載用機器の取り付け角度に基づいて、前記方位検出手段から出力される出力信号を補正する補正手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の移動体搭載用機器。
【請求項3】
前記重力加速度算出手段により算出された重力加速度と前記移動体加速度算出手段により算出された移動体加速度とに基づいて、前記移動体が現在位置する路面の傾斜角度を算出する路面角度算出手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の移動体搭載用機器。
【請求項4】
前記移動体が停止状態にある際に前記加速度検出手段から出力される出力信号を重力加速度のサンプルとして記憶可能な重力加速度記憶手段を備え、
前記重力加速度算出手段は、前記加速度検出手段から出力される出力信号をサンプルとして前記重力加速度記憶手段に複数回記憶し、記憶した重力加速度の平均値を算出することを特徴とする請求項1に記載の移動体搭載用機器。
【請求項5】
前記移動体が加減速移動状態にある際に前記加速度検出手段から出力される出力信号を移動体加速度のサンプルとして記憶可能な移動体加速度記憶手段を備え、
前記移動体加速度算出手段は、前記加速度検出手段から出力される出力信号をサンプルとして前記移動体加速度記憶手段に複数回記憶し、記憶した移動体加速度の平均値を算出することを特徴とする請求項1に記載の移動体搭載用機器。
【請求項6】
前記移動体加速度算出手段は、前記移動体が加減速移動状態にある際に前記加速度検出手段から出力される出力信号と前記重力加速度算出手段により算出された重力加速度とに基づいて、前記移動体の動的加速度を算出し、
前記動的加速度が所定の大きさの加速度の条件を満たした場合に、前記加速度検出手段から出力される出力信号をサンプルとして前記移動体加速度記憶手段に記憶することを特徴とする請求項5に記載の移動体搭載用機器。
【請求項7】
前記重力加速度算出手段により算出された重力加速度と前記移動体加速度算出手段により算出された移動体加速度とに基づいて、前記取り付け角度算出手段が算出した前記移動体搭載用機器の取り付け角度をサンプルとして記憶可能な取り付け角度記憶手段を備え、
前記取り付け角度算出手段は、算出した前記移動体搭載用機器の取り付け角度をサンプルとして前記取り付け角度記憶手段に複数回記憶し、記憶した取り付け角度の平均値を算出することを特徴とする請求項1に記載の移動体搭載用機器。
【請求項8】
前記取り付け角度算出手段は、前記重力加速度算出手段により算出された重力加速度と前記移動体加速度算出手段により算出された移動体加速度とに基づいて算出した前記移動体搭載用機器の取り付け角度が、所定の取り付け角度の条件を満たした場合に、当該算出した前記移動体搭載用機器の取り付け角度をサンプルとして前記取り付け角度記憶手段に記憶することを特徴とする請求項7に記載の移動体搭載用機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−43342(P2011−43342A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189884(P2009−189884)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000214892)三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社 (1,582)
【Fターム(参考)】