説明

移動体検知装置及び移動体検知方法

【課題】外乱の影響を受けずに移動体を正しく検知する。
【解決手段】基準電圧生成部14は、検波器13が検波した検波信号S3の信号レベルを基準電圧値Vref0に加算し、コンパレータ15は、信号S2と基準電圧値Vrefとを比較して、パルス信号P1を出力する。カウンタ16は、パルス信号P1のパルス数をカウントしてトリガ信号P3をリトリガーブル・タイマ18に出力し、リトリガーブル・タイマ18は移動体検知信号P4を出力する。自走タイマ17は、パルス信号P1の出力が停止している場合、カウンタ16に、トリガ信号P3の出力間隔よりも長い間隔でリセット信号P2を出力する。雪等の外乱により、パルス信号P1の出力が間歇的となった場合、パルス信号P1がリセットされるため、リトリガーブル・タイマ18はHレベルの移動体検知信号P4を出力しなくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体検知装置及び移動体検知方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、マイクロ波ドップラーセンサを用いて移動体を検知する移動体検知装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
かかる移動体検知装置は、例えば、寒冷地で使用される融雪剤散布装置に備えられる。融雪剤散布装置は、雪を融かすための溶剤を路面に散布する装置である。移動体検知装置は、人、車等の移動体を検知し、融雪剤散布装置は、移動体検知装置が移動体を検知すると、検知している間、融雪剤の散布を停止する。
【特許文献1】特開2005−182256号公報(第11頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、融雪剤散布装置に用いられる従来の移動体検知装置では、雨、雪等による外乱の影響を排除することができない。このため、外乱による誤動作を招き、例えば、移動体が存在しないにもかかわらず、融雪剤散布装置が融雪剤の散布を停止してしまうこともある。
【0005】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたもので、外乱の影響を受けずに移動体を正しく検知することが可能な移動体検知装置及び移動体検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る移動体検知装置は、
予め設定された移動体検知範囲に向けて送信波を送信するとともに当該送信波の反射波を受信波として受信し、前記送信波の周波数と前記受信波の周波数との差をドップラー周波数として、前記ドップラー周波数を含むドップラー信号を取得するセンサ部と、
前記センサ部が取得した前記ドップラー信号と基準値とを比較してパルス信号を生成するパルス信号生成部と、
前記パルス信号生成部から、前記パルス信号が出力されたときに、当該パルス信号を計数し、当該パルス信号の計数値が予め設定された値に達したときに、前記移動体検知範囲に存在する移動体を検知したことを示す移動体検知信号を出力する移動体検知信号出力部と、
前記パルス信号生成部からのパルス信号の出力が停止したときに、当該パルス信号の出力が停止した後所定時間経過後に前記パルス信号の計数値をリセットするリセット部と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
前記パルス信号生成部が、
前記センサ部が取得した前記ドップラー信号を検波して検波信号を出力する検波器と、
前記基準値として予め設定された基準電圧値と前記検波器が出力した前記検波信号の信号レベルとを加算することにより新たな前記基準電圧値を生成する基準電圧生成部と、
前記センサ部が取得した前記ドップラー信号と前記基準電圧生成部が生成した前記基準電圧値とを比較して前記パルス信号を生成する比較器と、を備えるようにしてもよい。
【0008】
前記移動体検知信号出力部が、
前記パルス信号生成部から、前記パルス信号が出力されたときに、当該パルス信号を計数し、当該パルス信号の計測値が予め設定された値に達したときにトリガ信号を出力するパルス信号計数部と、
前記パルス信号計数部から前記トリガ信号が出力されたときに、前記トリガ信号が出力されたときから予め設定された時間が経過するまで前記移動体検知信号を出力する信号出力部と、からなるものであってもよい。
【0009】
前記リセット部が、前記パルス信号の出力が停止した後、前記移動体の最小移動速度に基づいて設定された値に対応する時間よりも長い時間経過後に前記パルス信号の計数値をリセットするようにしてもよい。
【0010】
前記センサ部が、マイクロ波又はミリ波ドップラーセンサによって構成されたものであってもよい。
【0011】
本発明の第2の観点に係る移動体検知方法は、
予め設定された移動体検知範囲に向けて送信波を送信するとともに当該送信波の反射波を受信波として受信し、前記送信波の周波数と前記受信波の周波数との差をドップラー周波数とするドップラー信号を取得するステップと、
前記取得したドップラー信号と基準値とを比較してパルス信号を生成するステップと、
前記生成されたパルス信号が出力されたときに、当該パルス信号を計数するステップと、
前記計数したパルス信号の計数値が予め設定された値に達したとき、前記移動体検知範囲に存在する移動体を検知したことを示す移動体検知信号を出力するステップと、
前記パルス信号の出力が停止したときに、当該パルス信号の出力が停止した後所定時間経過後に前記計数したパルス信号の計数値をリセットするステップと、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、外乱の影響を受けずに移動体を正しく検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る移動体検知装置を図面を参照して説明する。
本実施形態に係る移動体検知装置の構成を図1に示す。
本実施形態に係る移動体検知装置1は、マイクロ波ドップラーセンサ11と、アンプ12と、検波器13と、基準電圧生成部14と、コンパレータ15と、カウンタ16と、自走タイマ17と、リトリガーブル・タイマ18と、を備える。
【0014】
マイクロ波ドップラーセンサ11は、予め設定された移動体検知範囲に向けて送信波を送信するとともに当該送信波の反射波を受信波として受信し、送信波の周波数と受信波の周波数との差をドップラー周波数として、ドップラー周波数を含むドップラー信号S1を取得するセンサ部である。
【0015】
即ち、図2に示すように、マイクロ波ドップラーセンサ11から移動体2に向けて送信波Soutを送信し、送信波Soutが移動体2で反射した受信波Sinを受信した場合、送信波Soutの周波数と受信波Sinの周波数とは、ドップラー効果により異なってくる。
【0016】
送信波Soutの周波数と受信波Sinの周波数との差はドップラー周波数と呼ばれるものであり、ここで、ドップラー周波数をfd,送信波Soutの周波数をfs,受信波の周波数をfoとする。受信波の周波数foは、図2(a)に示すように、移動体2が近づく場合、fo=fs+fdとなり、図2(b)に示すように遠ざかる場合、fo=fs−fdとなる。移動体2の速度をVとすると、ドップラー周波数fdは、次の数1によって表される。
【数1】

【0017】
マイクロ波ドップラーセンサ11は、このような原理を利用して、ドップラー周波数fdを有する信号S1を取得するものであり、図3に示すように、発振器11aと、送信アンテナ11bと、受信アンテナ11cと、整流器11dと、からなる。
【0018】
発振器11aは、例えば、24GHzで発振してマイクロ波を生成するものである。
【0019】
送信アンテナ11bは、発振器11aが生成したマイクロ波を送信波Soutとして移動体2に向けて送信するものである。
受信アンテナ11cは、移動体2で反射した受信波Sinを受信するものである。
【0020】
整流器11dは、送信波Soutと受信波Sinとの差の信号を整流して、図4(a)に示すようなドップラー信号S1を出力するものである。整流器11dとしては、例えば全波整流器が適用可能である。
【0021】
マイクロ波ドップラーセンサ11は、整流器11dが整流したドップラー信号S1を出力する。尚、マイクロ波ドップラーセンサ11は、ミリ波ドップラーセンサによって構成されてもよい。
【0022】
アンプ12は、図4(b)に示すように、マイクロ波ドップラーセンサ11が出力したドップラー信号S1を増幅するものであり、増幅した信号S2を検波器13とコンパレータ15とに供給する。
【0023】
検波器13は、アンプ12から供給された信号S2を検波するものであり、図4(b)に示すように検波後の信号レベルVaを有する検波信号S3を基準電圧生成部14に供給する。
【0024】
基準電圧生成部14は、図4(c)に示すように、予め設定された電圧値Vref0と検波器13が出力した検波信号S3の信号レベルVaとを加算して新たな基準電圧値Vrefを生成するものである。
【0025】
コンパレータ15は、マイクロ波ドップラーセンサ11が取得したドップラー信号S1に基づく信号S2の信号レベルと生成された基準電圧値Vrefとを比較してパルス信号P1を生成するものである。
【0026】
コンパレータ15は、図4(d)に示すように、基準電圧生成部14が生成した基準電圧値Vrefとアンプ12が出力した信号S2の信号レベルとを比較して、図4(e)に示すようなHレベルのパルス信号P1を生成するものである。コンパレータ15は、生成したパルス信号P1をカウンタ16に出力する。
【0027】
尚、外乱により信号S2の信号レベルが上昇したとき、検波信号S3の信号レベルVaも上昇し、基準電圧値Vrefも予め設定された電圧値Vref0から上昇する。このため、外乱によって信号S2の信号レベルが上昇しても、コンパレータ15は、外乱によるパルス信号P1を出力しなくなる。即ち、検波器13は、連続する外乱による誤動作を防止するために備えられたものである。
【0028】
ドップラー信号S1が人、車のような検知対象の移動体2によるものであれば、マイクロ波ドップラーセンサ11は移動体2が移動体検知範囲を通過するまで継続してドップラー信号S1を出力し、コンパレータ15も継続してパルス信号P1を出力する。
【0029】
一方、ドップラー信号S1が雨、雪のような外乱によるものであれば、マイクロ波ドップラーセンサ11は、間歇的にドップラー信号S1を出力し、コンパレータ15も間歇的にパルス信号P1を出力する。
【0030】
カウンタ16は、コンパレータ15から、生成されたパルス信号が出力されたときに、このコンパレータ15から出力されたHレベルのパルス信号P1の数をカウントする。
【0031】
カウンタ16は、コンパレータ15から出力されたパルス信号P1のカウント値CNTが予め設定された値Ckに達したときに、リトリガーブル・タイマ18にHレベルのトリガ信号P3を出力する。そして、カウンタ16は、カウント値CNTをリセットする。尚、カウンタ16は、記憶部(図示せず)を備え、この予め設定された値Ckを記憶部に記憶する。
【0032】
カウント値CNTをリセットしたときに、コンパレータ15がパルス信号P1を継続して出力していれば、カウンタ16は、再度、パルス信号P1のパルス数をカウントする。
【0033】
自走タイマ17は、コンパレータ15からのパルス信号P1の出力が停止したときに、パルス信号P1の出力が停止した後所定時間経過後にパルス信号P1のパルス数をリセットするものである。自走タイマ17は、パルス信号P1の出力が停止した後、所定時間経過後として期間T1が経過する毎にカウンタ16のカウント値CNTをリセットする。
【0034】
即ち、自走タイマ17は、コンパレータ15からのパルス信号P1の出力が停止した場合、停止したときからの時間を計測し、計測した時間を示すタイマ値Tが予め設定された時間T1が経過したときに、Hレベルのリセット信号P2を出力する。このリセット信号P2は、カウンタ16がカウントしたカウント値CNTをリセットするための信号である。
【0035】
リトリガーブル・タイマ18は、カウンタ16からHレベルのトリガ信号P3が供給されてHレベルの移動体検知信号P4を出力するものである。一方、トリガ信号P3の供給が停止したとき、リトリガーブル・タイマ18は、最後に供給されたトリガ信号P3が出力されたときから予め設定された時間T2が経過したときに、移動体検知信号P4を立ち下げる。
【0036】
このため、リトリガーブル・タイマ18は、タイマ値Tをインクリメントして、タイマ値Tと時間T2とを比較する。タイマ値Tが時間T2以上になると、リトリガーブル・タイマ18は、移動体検知信号P4の信号レベルをLレベルに立ち下げる。
【0037】
尚、時間T2は、移動体2の最小移動速度に基づいて設定された値に対応する時間であり、時間T1は、時間T2よりも長く、例えば、0.5秒に設定される。このように時間T1,T2が設定されることにより、ドップラー信号S1が移動体2によるものなのか間歇的な外乱によるものなのかを判別できる。
【0038】
自走タイマ17、リトリガーブル・タイマ18は、それぞれ、記憶部(図示せず)を備え、自走タイマ17は、設定された時間T1を、リトリガーブル・タイマ18は、設定された時間T2をそれぞれの記憶部に予め記憶する。
【0039】
かかる移動体検知装置1は、図5に示すような融雪剤散布装置21に搭載される。
かかる融雪剤散布装置21は、寒冷地の道路22上に融雪用の溶剤を散布する装置であり、図1に示す構成の移動体検知装置1を備える。移動体検知装置1は、移動体検知範囲θ内において、移動体2を、歩道23上を移動する人25、車道24上を移動する車26等として検知する。移動体検知装置1がHレベルの移動体検知信号P4を出力している間、融雪剤散布装置21は、融雪剤の散布を停止する。
【0040】
尚、本実施形態では、前述の通り、マイクロ波ドップラーセンサ11の発振周波数を24GHzとしている。また、カウンタ16が記憶する予め設定された値Ckは任意のパルス数とする。
【0041】
マイクロ波ドップラーセンサ11が出力するドップラー信号S1のドップラー周波数は、24000MHz÷300m/MHz=80Hz/mとなり、往復で秒速1mとした場合、160Hzとなる。時速に対する100パルス計数時の検知時間、移動検知距離は、図6に示す通りとなる。尚、時間T1は、移動体2の最小移動速度に基づいて設定される。このように、移動検知距離は、移動体2の時速にかかわらず、一定となり、移動体検知範囲θ内において、適正に融雪剤の散布が停止される。
【0042】
次に実施形態に係る移動体検知装置の動作を説明する。
マイクロ波ドップラーセンサ11の移動体検知範囲θ内に人、車等の移動体2のみが進入した場合、雨、雪等の外乱がなければ、マイクロ波ドップラーセンサ11は、図4(a)に示すようなドップラー信号S1を出力する。そして、コンパレータ15は、図4(e)に示すようなパルス信号P1を生成する。
【0043】
マイクロ波ドップラーセンサ11が雨、雪等の外乱のみを検知した場合、図7に示すように、アンプ12は、時刻t1〜t2,t3〜t4において、(a)に示すような信号S2を出力する。
【0044】
検波器13が信号S2を検波した検波信号S3の信号レベルVaを基準電圧生成部14が基準電圧値Vref0に加算することにより、基準電圧生成部14が出力する基準電圧値Vrefは、図7(b)に示すように、信号S2の信号レベルの変動に伴って変動する。
【0045】
コンパレータ15は、図7(b)に示すように、アンプ12が出力した信号S2の信号レベルと基準電圧生成部14が生成した基準電圧値Vrefとを比較する。そして、時刻t1〜t2において、信号S2の信号レベルが基準電圧値Vrefを越えると、コンパレータ15は、図7(c)に示すようなパルス信号P1を出力する。
【0046】
一方、時刻t3〜t4において、信号S2の信号レベルが基準電圧値Vref以下である場合には、コンパレータ15は、パルス信号P1を出力しない。
【0047】
次に、マイクロ波ドップラーセンサ11が人、車等の移動体2とともに、雨、雪等の外乱も検知した場合、アンプ12は、時刻t5〜t6において、(a)に示すような信号S2を出力する。
【0048】
信号S2の信号レベルが人、車等の移動体2だけでなく外乱によって変動しても、図7(b)に示すように基準電圧生成部14が生成した基準電圧値Vrefが信号S2の信号レベルの変動に伴って変動する。このため、移動体検知装置1は、外乱の影響を受けなくなる。
【0049】
このように、コンパレータ15が出力するHレベルの信号は少なくなり、カウンタ16のカウント値CNTも減少するため、検知時間は外乱がない場合よりも短くなる。しかし、移動体検知装置1は、外乱の影響を受けずに確実に移動体2を検知する。
【0050】
図8に示すように、時刻t11において、マイクロ波ドップラーセンサ11が雨、雪等の外乱を検知してコンパレータ15がパルス信号P1を出力した場合、カウンタ16は、このパルス信号P1の数をカウントする。前述のように、外乱によるパルス信号P1は間歇的であり、短時間で出力が停止する。
【0051】
時刻t12において、このパルス信号P1の出力が停止すると、自走タイマ17は、時刻t12から一定時間T1経過後の時刻t13において、リセット信号P2をカウンタ16に出力して、カウンタ16のカウント値CNTをリセットする。
【0052】
このため、コンパレータ16が外乱によってパルス信号P1を出力しても、外乱によるパルス信号P1は、間歇的であるため、移動体検知装置1は、Hレベルの移動体検知信号P4を出力しなくなる。自走タイマ17は、パルス信号P1の出力が停止していれば、時間T1毎に、リセット信号P2を出力する。
【0053】
時刻t14において、マイクロ波ドップラーセンサ11が移動体2を検知した場合、コンパレータ15は、Hレベルのパルス信号P1を、再度、連続的に出力する。
【0054】
時刻t14から、カウンタ16のカウント値CNTが予め設定されたカウント値Ckに達する時刻t15になると、カウンタ16は、Hレベルのトリガ信号P3をリトリガーブル・タイマ18に出力する。リトリガーブル・タイマ18は、カウンタ16からHレベルのトリガ信号P3が出力されると、Hレベルの移動体検知信号P4を出力する。
【0055】
尚、時刻t16〜t17において、コンパレータ15のパルス信号P1の出力が停止した場合でも、時刻t16から時間T1が経過しなければ、自走タイマ17は、Hレベルのリセット信号P2を出力しない。
【0056】
そして、時刻t15からコンパレータ15が継続してHレベルのパルス信号P1を出力すると、カウンタ16は、時間T2が経過する毎にHレベルのトリガ信号P3を出力し、リトリガーブル・タイマ18はHレベルの移動体検知信号P4を出力する。
【0057】
時刻t19において、コンパレータ15のパルス信号P1の出力が停止すると、カウンタ16のカウントが停止するため、トリガ信号P3は、時刻t18から時間T2を経過しても出力されない。
【0058】
リトリガーブル・タイマ18は、カウンタ16からHレベルのトリガ信号P3が出力されなければ、トリガ信号P3が立ち下がってから時間T2が経過した時刻t20において、移動体検知信号P4の信号レベルをLレベルに立ち下げる。
【0059】
自走タイマ17は、時刻t19から時間T1が経過した時刻t21において、Hレベルのリセット信号P2をカウンタ16に出力する。カウンタ16のカウント値CNTは、このリセット信号P2によりリセットされる。
【0060】
この移動体検知信号P4の信号レベルがHレベルである時刻t15〜t20の間、融雪剤散布装置21は、融雪剤の散布を停止する。前述のように、移動検知距離は、移動体2の時速にかかわらず、一定となるため、移動体2が人であっても車であっても、適正に融雪剤の散布が停止される。
【0061】
また、時刻t19において、移動体2は、移動体検知範囲θ外に移動するものの、時刻t20になるまで、融雪剤散布装置21は、融雪剤の散布を行わず、確実に、融雪剤の移動体2への散布が防止される。
【0062】
以上説明したように、本実施形態によれば、コンパレータ15は、マイクロ波ドップラーセンサ11のセンサ信号に基づいてHレベルのパルス信号P1を出力し、カウンタ16は、コンパレータ15がHレベルのパルス信号P1を出力している間、時間T2毎にHレベルの信号を出力し、リトリガーブル・タイマ18は、Hレベルの移動体検知信号P4を出力する。
【0063】
また、自走タイマ17は、コンパレータ15からのパルス信号P1の出力が停止した後所定時間経過後、即ち、時間T2よりも長い期間T1毎にカウンタ16のカウント値CNTをリセットするようにした。
【0064】
このため、外乱があった場合でも、外乱の影響を受けずに移動体2を検知することができ、誤動作を防止することができる。また、時間T2は、移動体2の最小移動速度に基づいて設定されるので、パルスカウントにより移動体のスピードに関係なく、移動検知距離を一定にすることができる。
【0065】
さらに、マイクロ波ドップラーセンサ11のドップラー信号S1に基づく信号S2の信号レベルが基準電圧値Vref0に加算されるので、確実に移動体2を検知することができ、従って、外乱による感度の調整等といった作業も不要となる。
【0066】
尚、本発明を実施するにあたっては、種々の形態が考えられ、上記実施の形態に限られるものではない。
例えば、上記実施の形態では、カウンタ16、自走タイマ17、リトリガーブル・タイマ18をハードウェアとして説明した。しかし、図9に示すように、移動体検知装置1は、これらのものの代わりに、CPU31とROM32とRAM33とを備え、これの処理をソフトウェアで行うように構成されてもよい。
【0067】
ROM32は、時間T1,T2,t2を予め記憶する。RAM33は、タイマ値T、カウント値CNT等、CPU31がソフト実行するために必要なデータを記憶する。そして、CPU31は、図10に示すフローチャートに従って移動体検知処理を実行する。
【0068】
まず、CPU31は、コンパレータ15がパルス信号P1を出力されているか否かを判定する(ステップS11)。
【0069】
コンパレータ15からパルス信号P1が出力されていないと判定した場合(ステップS11においてNo)、CPU31は、図11に示すフローチャートに従って自走タイマ処理を実行する(ステップS12)。
【0070】
CPU31は、タイマ値Tをリセットする(図11のステップS21)。
CPU31は、タイマ値Tをインクリメントする(ステップS22)。
CPU31は、タイマ値Tが予め設定された時間T1以上になったか否かを判定する(ステップS23)。
【0071】
タイマ値Tが予め設定された時間T1未満と判定した場合(ステップS23においてNo)、CPU31は、タイマ値Tをインクリメントする(ステップS22)。
タイマ値Tが予め設定された時間T1以上になったと判定した場合(ステップS23においてYes)、CPU31は、カウント値CNTを強制リセットする(ステップS24)。そして、CPU31は、移動体検知処理に戻る。
【0072】
移動体検知処理において、コンパレータ15からパルス信号P1が出力されていると判定した場合(図10のステップS11においてYes)、CPU31は、図12に示すフローチャートに従ってパルスカウント処理を実行する(ステップS13)。
【0073】
CPU31は、カウント値CNTをリセットする(図12のステップS31)。
CPU31は、カウント値CNTをインクリメントする(ステップS32)。
CPU31は、カウント値CNTが強制リセットされたか否かを判定する(ステップS33)。
【0074】
カウント値CNTが強制リセットされたと判定した場合(ステップS33においてYes)、CPU31は、再度、カウント値CNTをインクリメントする(ステップS32)。
【0075】
カウント値CNTが強制リセットされていないと判定した場合(ステップS33においてNo)、CPU31は、カウント値CNTが予め設定された値Ck以上になったか否かを判定する(ステップS34)。
【0076】
カウント値CNTが予め設定された値Ck未満と判定した場合(ステップS34においてNo)、CPU31は、カウント値CNTをインクリメントする(ステップS32)。
【0077】
カウント値CNTが予め設定された値Ck以上と判定した場合(ステップS34においてYes)、CPU31は、移動体検知信号P4の信号レベルをHレベルに設定する(ステップS35)。CPU31は、移動体検知処理に戻る。
【0078】
CPU31は、パルス信号P1の出力が停止したか否かを判定する(図10のステップS14)。
【0079】
パルス信号P1の出力が停止していないと判定した場合(ステップS14においてNo)、CPU31は、再度、パルスカウント処理を実行する(ステップS13)。
【0080】
パルス信号P1の出力が停止したと判定した場合(ステップS14においてYes)、CPU31は、図13に示すフローチャートに従って検知信号出力停止処理を実行する(ステップS15)。
【0081】
CPU31は、タイマ値Tをリセットする(ステップS41)。
CPU31は、タイマ値Tをインクリメントする(ステップS42)。
CPU31は、タイマ値Tが予め設定された時間T2以上になったか否かを判定する(ステップS43)。
【0082】
タイマ値Tが予め設定された時間T2未満と判定した場合(ステップS43においてNo)、CPU31は、再度、タイマ値Tをインクリメントする(ステップS42)。
【0083】
タイマ値Tが予め設定された時間T2以上と判定した場合(ステップS43においてYes)、CPU31は、移動体検知信号P4の信号レベルをLレベルに設定する(ステップS44)。そして、CPU31は、図10に示す移動体検知処理に戻る。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の実施形態に係る移動体検知装置の構成を示すブロック図である。
【図2】ドップラー信号を取得する原理を示す図である。
【図3】図1に示すマイクロ波ドップラーセンサの構成を示す図である。
【図4】図1に示す各部が出力する信号の波形を示す図である。
【図5】図1に示す移動体検知装置を備えた融雪剤散布装置が道路に設置された場合の道路状態を示す図である。
【図6】時速、マイクロ波ドップラーセンサの検知パルス周波数、検知時間及び移動検知距離の関係を示す図である。
【図7】マイクロ波ドップラーセンサが外乱を検知した場合、外乱と移動体とを検知した場合の各部の波形を示す図である。
【図8】図1に示す移動体検知装置の動作を示すタイミングチャートである。
【図9】図1に示す移動体検知装置の応用例を示すブロック図である。
【図10】図9に示すCPUが実行する移動体検知処理を示すフローチャートである。
【図11】図9に示すCPUが実行する自走タイマ処理を示すフローチャートである。
【図12】図9に示すCPUが実行するパルスカウント処理を示すフローチャートである。
【図13】図9に示すCPUが実行する検知信号出力停止処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0085】
1 移動体検知装置
11 マイクロ波ドップラーセンサ
13 検波器
14 基準電圧生成部
15 コンパレータ
16 カウンタ
17 自走タイマ
18 リトリガーブル・タイマ
31 CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された移動体検知範囲に向けて送信波を送信するとともに当該送信波の反射波を受信波として受信し、前記送信波の周波数と前記受信波の周波数との差をドップラー周波数として、前記ドップラー周波数を含むドップラー信号を取得するセンサ部と、
前記センサ部が取得した前記ドップラー信号と基準値とを比較してパルス信号を生成するパルス信号生成部と、
前記パルス信号生成部から、前記パルス信号が出力されたときに、当該パルス信号を計数し、当該パルス信号の計数値が予め設定された値に達したときに、前記移動体検知範囲に存在する移動体を検知したことを示す移動体検知信号を出力する移動体検知信号出力部と、
前記パルス信号生成部からのパルス信号の出力が停止したときに、当該パルス信号の出力が停止した後所定時間経過後に前記パルス信号の計数値をリセットするリセット部と、を備えた、
ことを特徴とする移動体検知装置。
【請求項2】
前記パルス信号生成部が、
前記センサ部が取得した前記ドップラー信号を検波して検波信号を出力する検波器と、
前記基準値として予め設定された基準電圧値と前記検波器が出力した前記検波信号の信号レベルとを加算することにより新たな前記基準電圧値を生成する基準電圧生成部と、
前記センサ部が取得した前記ドップラー信号と前記基準電圧生成部が生成した前記基準電圧値とを比較して前記パルス信号を生成する比較器と、を備えた、
ことを特徴とする請求項1に記載の移動体検知装置。
【請求項3】
前記移動体検知信号出力部が、
前記パルス信号生成部から、前記パルス信号が出力されたときに、当該パルス信号を計数し、当該パルス信号の計測値が予め設定された値に達したときにトリガ信号を出力するパルス信号計数部と、
前記パルス信号計数部から前記トリガ信号が出力されたときに、前記トリガ信号が出力されたときから予め設定された時間が経過するまで前記移動体検知信号を出力する信号出力部と、からなる、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の移動体検知装置。
【請求項4】
前記リセット部が、前記パルス信号の出力が停止した後、前記移動体の最小移動速度に基づいて設定された値に対応する時間よりも長い時間経過後に前記パルス信号の計数値をリセットする、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の移動体検知装置。
【請求項5】
前記センサ部が、マイクロ波又はミリ波ドップラーセンサによって構成されたものである、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の移動体検知装置。
【請求項6】
予め設定された移動体検知範囲に向けて送信波を送信するとともに当該送信波の反射波を受信波として受信し、前記送信波の周波数と前記受信波の周波数との差をドップラー周波数とするドップラー信号を取得するステップと、
前記取得したドップラー信号と基準値とを比較してパルス信号を生成するステップと、
前記生成されたパルス信号が出力されたときに、当該パルス信号を計数するステップと、
前記計数したパルス信号の計数値が予め設定された値に達したとき、前記移動体検知範囲に存在する移動体を検知したことを示す移動体検知信号を出力するステップと、
前記パルス信号の出力が停止したときに、当該パルス信号の出力が停止した後所定時間経過後に前記計数したパルス信号の計数値をリセットするステップと、を備えた、
ことを特徴とする移動体検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−101490(P2007−101490A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−295120(P2005−295120)
【出願日】平成17年10月7日(2005.10.7)
【出願人】(396004981)セイコープレシジョン株式会社 (481)
【Fターム(参考)】