説明

移動体識別装置、移動体識別プログラム

【課題】 移動体について、障害物があったとしても、情報処理量の少ない効率的な処理によって、移動体の通過数のみならず、その種類をも精度良く識別する。
【解決手段】 演算装置10は、複数種類の移動体の移動方向に交差する1本のラインに係るライン型フレーム画像56について変化を生じている間取得し、これら各ライン型フレーム画像56を移動体の移動方向と逆の方向へ時刻順に結合して抽出サンプル画像60を生成する一方、移動体の種類ごとに、抽出サンプル画像60に対応するように予め決定された登録パターン画像62を記憶装置8に格納し、生成された抽出サンプル画像60と、記憶装置8に格納された登録パターン画像62とを、DPマッチングにより比較し、抽出サンプル画像60がいずれの種類の登録パターン画像62と一致するかを判別して、一致した登録パターン画像62の種類に係るものとして移動体を識別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理を利用して移動体の種類を識別する移動体識別装置および移動体識別プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の画像処理を利用した移動体の認識方法として、下記特許文献1に記載されたジェスチャ動画像認識方法が知られている。この方法では、動画像の中から2次元のエッジ情報を逐一取り出して標準パターンと整合し、ジェスチャの内容を把握する。しかし、この方法では、エッジ情報を取り出すにあたり、動画像の各フレームについて複雑な処理を行わなければならず、情報処理量が膨大になるうえ、ジェスチャ動画像を得る際に障害物があると識別不能となり、一般の警備目的などに用いようとしても、リアルタイムに移動体を認識することが到底できないなどの不具合がある。
【0003】
一方、情報処理量の少ない移動体の認識方法として、下記特許文献2に記載された移動物体計数処理方法が知られている。この方法では、画素列を予め蓄積した背景値と差分処理し、これを時間軸方向に連結して動物体像を形成し、この動物体像を計数することで、移動体の通過数を計数する。
【0004】
【特許文献1】特許第3122290号公報
【特許文献2】特許第3190833号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の移動物体計数処理方法は、確かにジェスチャ動画像認識方法に比べ、要求される情報処理量が現実的であるが、通過した移動体の種類が識別できない。移動体の種類が識別できないと、例えば警備目的で使用する場合に、通過した移動体が自動車か歩行者かで異なる対応をとることができないといったように、移動体の種類に応じた処理を行えない。
【0006】
そこで、本発明は、移動体について、障害物があったとしても、情報処理量の少ない効率的な処理によって、通過数のみならず、その種類をも精度良く識別可能な移動体識別装置または移動体識別プログラムを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、複数種類の移動体の移動方向に交差する1本のラインに係るライン型フレーム画像について、変化を生じている間取得するライン型フレーム画像取得手段と、ライン型フレーム画像取得手段によって取得された各ライン型フレーム画像を、移動体の移動方向と逆の方向へ時刻順に結合し、抽出サンプル画像を生成する抽出サンプル画像生成手段と、移動体の種類ごとに、抽出サンプル画像に対応するように予め決定された登録パターン画像を格納する登録パターン画像記憶手段と、抽出サンプル画像生成手段によって生成された抽出サンプル画像と、登録パターン画像記憶手段に格納された登録パターン画像とを、DPマッチングにより比較し、抽出サンプル画像がいずれの種類の登録パターン画像と一致するかを判別して、一致した登録パターン画像の種類に係る移動体を識別する識別手段とを備えることを特徴とするものである。
【0008】
請求項2に記載の発明は、上記目的に加えて、より一層識別精度と処理効率との両立を図る目的を達成するため、上記発明において、識別手段は、登録パターン画像と抽出サンプル画像とを、始端および/または終端に自由度を与える端点フリーDPマッチングにより比較して識別することを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、上記目的に加えて、より一層識別精度を向上する目的を達成するため、上記発明において、ライン型フレーム画像取得手段は、互いに異なるラインに係るライン型フレーム画像を取得するよう、複数設置されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、上記目的に加えて、より一層識別精度を向上する目的を達成するため、上記発明において、ライン型フレーム画像取得手段は、ラインに係る平面フレーム画像につき取得するカメラと、カメラにより取得された各平面フレーム画像を平滑化するとともに、連続する時刻の平面フレーム画像同士で差分をとることで、ライン型フレーム画像の変化を把握する差分処理手段と、差分処理手段によって変化の把握されたラインに係るライン型フレーム画像を参照するライン型フレーム画像ピックアップ手段とを備えることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、上記目的に加えて、より一層効率良い処理とする目的を達成するため、上記発明において、ライン型フレーム画像取得手段は、ライン型フレーム画像または平面フレーム画像を、グレースケールまたは白黒二値で取得し、あるいは、抽出サンプル画像生成手段は、抽出サンプル画像を、グレースケールまたは白黒二値で生成することを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、上記目的に加えて、より一層効率良い処理とする目的を達成するため、上記発明において、抽出サンプル画像生成手段は、抽出サンプル画像につき、余白を取り除いたうえで、移動方向と交差する方向で正規化することを特徴とする。
【0013】
上記目的を達成するために、請求項7に記載の発明は、コンピュータにおいて上記の各手段を実現させるための移動体識別プログラムにある。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、各ライン型フレーム画像(短冊画像)を結合し、これを各種登録パターン画像とDPマッチング(動的計画法)により比較することで、いずれの種類の移動体であるかを判断している。よって、障害物があったとしても、情報処理量の少ない効率的な処理によって、リアルタイムに、移動体の通過数のみならず、その種類をも精度良く識別可能である、という効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る移動体識別装置について、適宜図面に基づいて説明する。図1は当該移動体識別装置1の説明図であって、移動体識別装置1は、カメラ2と、コンピュータ4とを含む。カメラ2は、24ビットカラー動画を撮影可能、すなわち24ビットカラーの平面フレーム画像を次々に取得可能であって、移動体としての歩行者、自転車(バイクを含む)、自動車、大型車(バス)がほぼ左右方向に移動する動画(図3等参照)を取得できる守衛室に設置されている。
【0016】
コンピュータ4は、カメラ2とのインターフェイス6、記憶装置8、およびこれらと電気的に接続される演算装置10を含む。記憶装置8には、移動体識別プログラム12が格納されている。演算装置10は、CPUやメモリを含み、移動体識別プログラム12を読み込んで、記憶装置8を制御し、あるいはインターフェイス6を介してカメラ2を制御する。
【0017】
移動体識別プログラム12を実行する演算装置10は、図2に示すように、まずカメラ2から動画に係る平面フレーム画像50を取得し、記憶装置8に記憶する(ステップ20)。次に、演算装置10は、記憶した平面フレーム画像をグレースケール化し(ステップ22、図3)、更に平滑化(ステップ24、図4)して平滑化された平面フレーム画像52を得、これを記憶装置8に記憶する。グレースケール化により、画像の情報量が減少して以後の処理の負担が軽減され、平滑化により、平面フレーム画像のノイズを除去し、処理精度が向上する。なお、平滑化は、平均値フィルタ、すなわちある着目画素に対し、その周囲の画素の濃度値との平均を取り、その値を着目画素の濃度値とするものを、平面フレーム画像全体に適用して行う。演算装置10は、以上の処理を連続して行い、時刻がわずかにずれた平滑化平面フレーム画像を次々に記憶する。
【0018】
一方、演算装置10は、上記処理と併行して、ステップ26の差分処理を行う(差分処理手段)。本処理において、演算装置10は、記憶装置8に記憶された、時刻の隣接する2枚の平滑化された平面フレーム画像52を参照し、これらにおける着目画素の輝度の差分を平面フレーム画像52全体においてそれぞれ算出して差分画像54(図5参照)を得、これを記憶装置8に記憶する。差分画像54は、時刻の隣接する平面フレーム画像52の輝度変化を輝度とするので、当該時刻間に輝度変化のある部分、すなわち移動体部分が現れ、輝度変化のない部分、すなわち背景部分はほぼ消える。
【0019】
更に併行して、演算装置10は、差分画像54のうち、所定の縦1ラインの部分、すなわち1本のラインを参照する(ライン型フレーム画像ピックアップ手段)。ここで、1本のラインは、幅が1画素で、高さが平面フレーム画像と同一であり、図6において黒色のラインとして示されるものである。なお、当該ラインは、移動体の移動方向である左右方向に交差するよう、上下方向(縦方向)に設定されている。また、当該ラインは、平面フレーム画像内における障害物、すなわちポール、電柱、ドアなどの平面フレーム画像内において、移動体より手前に映る背景画像を避けた位置に設定される。
【0020】
そして、演算装置10は、当該ラインにおいて、ある所定値以上の輝度を有する画素が、ある所定数以上出現した場合に、ライン走査(ステップ30)およびライン型フレーム画像の結合(ステップ32)を始める。ここでは、差分画像54が256階調、高さ120画素である場合において、当該ラインに、32以上の輝度を有する画素が、48画素以上出現した場合に、ステップ30,32を始める。
【0021】
演算装置10は、ライン走査において、ラインにおける全画素の輝度を、ライン型フレーム画像56として記憶装置8に記憶し、次の時刻に係るライン型フレーム画像56も記憶し、これを繰り返す。また、演算装置10は、初回のライン走査を除き、図7に示すように、ライン型フレーム画像56の結合を行う。すなわち、演算装置10は、直前の時刻に係るライン型フレーム画像56に対し、今回のライン型フレーム画像56を、結合方向(移動体の移動方向と逆)の隣接位置に配置していくことを行う。なお、ステップ20〜30を実行する演算装置10およびカメラ2が、ライン型フレーム画像取得手段に相当する。また、ライン型フレーム画像56の結合により、抽出サンプル画像58が記憶装置8において形成されていく。
【0022】
そして、演算装置10は、ライン走査において、ある所定値以上の輝度の画素が、ある所定数以下となったら、ライン走査ないしはライン型フレーム画像56の結合を停止する。ここでは、当該ラインにおいて、32以上の輝度を有する画素が、32画素以下となった場合に、ライン走査ないしはライン型フレーム画像56の結合を停止する。こうして、記憶装置8において、抽出サンプル画像58が記憶される。この後、演算装置10は、抽出サンプル画像58を二値化し(ステップ34、図8の「入力」)、更に高さの正規化を行う(ステップ36、図8)。
【0023】
すなわち、まずステップ34において、演算装置10は、抽出サンプル画像58におけるある所定値以上の輝度を持つ画素を黒とし、これ以外を白とする。ここでは、256階調で表現される抽出サンプル画像58において、100以上の輝度を持つ画素を黒とし、99以下の輝度を持つ画素を白とする。これにより、情報量が減少して以後の処理負担が軽減されるし、ノイズにより輝度の揺れる画素があっても、このような画素の輝度は移動体部分の輝度より低いことがほとんどであるために、当該画素を除去することができる。
【0024】
続いて、ステップ36において、演算装置10は、二値化された抽出サンプル画像58につき、上下方向(高さ方向)の平均濃淡値に基づいて上下の余白部分を切り取った後、上下の画素数が所定値(ここでは120画素)となるように、縦横比を保持して拡大あるいは縮小する。こうして、演算装置10は、二値化され正規化された抽出サンプル画像60を、記憶装置8に記憶する。なお、ステップ32〜36を実行する演算装置10が、抽出サンプル画像生成手段に相当する。
【0025】
一方、記憶装置8には、抽出サンプル画像60に対応する登録パターン画像62が格納されている。登録パターン画像62は、移動体の種類ごとに試験的に抽出サンプル画像60を取得し、その平均的なものを選択して得られる。登録パターン画像62の一部を、図9に示す。同図(a)は歩行者に係るものであり、(b)は自転車に係るものであり、(c)は自動車に係るものであり、(d)は大型車(バス)に係るものである。本実施形態では、登録パターン画像62は、図9の4個の他に、(a)〜(c)のほぼ左右対称のもの3個が登録されている。これら7個の登録パターン画像62の選定は、手動で(人間の眼で)行われる。また、抽出サンプル画像60は正規化され、上下方向の画素数(高さ)が120画素に統一されることから、登録パターン画像62の高さも、抽出サンプル画像60と同じ120画素としてある。なお、記憶装置8における登録パターン画像62の記憶領域が、登録パターン画像記憶手段に相当する。
【0026】
そして、演算装置10は、抽出サンプル画像60と、各登録パターン画像62とを比較し、抽出サンプル画像60がどの種類の登録パターン画像62と一致するかを判定する(識別処理、ステップ40)。この判定においては、DPマッチング(動的計画法による判定)を用い、特に図10に示すような、始端および終端に自由度を与える端点フリーDPマッチングを利用する。なお、ステップ40を実行する演算装置10が、識別手段に相当する。また、図10では、理解を容易にするため、登録パターン画像62を横転させてある。
【0027】
当該DPマッチングでは、次の[数1]で示されるような対称型パスを使用する。なお、この対称型パスは、図10のほぼ中央において黒点とこれを結ぶ線とで模式的に示される。
【0028】
【数1】

【0029】
また、始端点フリー区間Δにおいては、次の[数2]で示されるような(j+1)および(i+1)で重み付けされたパスを用いる。
【0030】
【数2】

【0031】
更に、終端点フリー区間Δ’において、次の[数3]で表されるような正規化累積距離G(i,j)の最小値を正規化最小累積距離Dとし、これを識別の距離尺度として用いる。
【0032】
【数3】

【0033】
加えて、DPマッチングで用いるローカル距離(フレーム間距離)、すなわち上記[数1]〜[数3]におけるld(i,j)を、以下の[数4]で定義する。
【0034】
【数4】

【0035】
すなわち、ステップ40を実行する演算装置10は、正規化最小累積距離Dを各登録パターン画像62において算出し、これが最小となる登録パターン画像62について、DPマッチングに係る抽出サンプル画像60と登録パターン画像62の距離が最も少ないものとして、すなわち抽出サンプル画像60と登録パターン画像62の左右方向の画素数(幅)が異なったとしてもこれらを一致するものとして判定する。
【0036】
演算装置10は、ステップ40において、まず[数4]に基づき、I×J個のローカル距離ld(i,j)を計算する。抽出サンプル画像60および登録パターン画像62は二値化されているので、ローカル距離ld(i,j)は、端的には、抽出サンプル画像60におけるi番目の上下方向画素列と、登録パターン画像62のj番目の上下方向画素列(図10では左右方向)とにおいて、下からk番目の画素同士を見ていき、輝度が相違する数を高さHで割って正規化したものとなる。
【0037】
そして、演算装置10は、[数1]あるいは[数2]に基づき、(i,j)=(0,0)の地点から、隣接地点(1,0)、(0,1)、(1,1)のgd(i,j)を計算し、更に隣接する地点のgd(i,j)を計算し、これを繰り返す。なお、演算装置10は、[数1]の計算において、gd(i−1,j−2)+2ld(i,j−1)、gd(i−1,j−1)+ld(i,j)、およびgd(i−2,j−1)+2ld(i−1,j)の全ての計算を実行し、これら結果を記憶し、これら記憶値を比べて最小値をとる。この3個の式のうち、一番最初のものが、図10における右上がり後縦方向のパスであり、右上がり前の地点での累積距離gdに、右上がり後の地点でのローカル距離ldを、2倍の重み付けをして加える。また、中央のものが、図10における右上がりのみのパスであり、右上がり前の地点での累積距離gdに、右上がり後の地点でのローカル距離ldをそのまま加える。また、最後のものが、図10における右上がり後横方向のパスであり、右上がり前の地点での累積距離gdに、右上がり後の地点でのローカル距離ldを、2倍の重み付けをして加える。
【0038】
演算装置1は、このようにして累積距離gdを計算していき、[数3]に示すように、I−Δ’≦i≦IあるいはJ−Δ’≦j≦Jの地点にたどり着いた累積距離gdの中から最小のものを選出し、i+jで割ることで正規化して、正規化最小累積距離Dを演算する。
【0039】
以上により、図10における灰色部分以外においてDPパスが生成され、従って登録パターン画像62の幅に対し、識別できる抽出サンプル画像60の幅は、およそ2分の1ないしは2倍となり、登録パターン画像62の幅と抽出サンプル画像60の幅とが合わなかったとしても、すなわち正規化後の抽出サンプル画像60の主に左右方向の長さが移動体の通過速度により様々なものとなったとしても、登録パターンとの比較が可能となる。
【0040】
なお、ラインに対する移動体の速度が速いと、結合されるライン型フレーム画像の数が少なくなり、抽出サンプル画像60の左右方向の長さが短くなり、ラインに対する移動体の速度が遅いと、結合される走査画像の数が多くなり、正規化後の抽出サンプル画像60の左右方向の長さが長くなるが、守衛室(カメラ2)の前を著しく速く通過しない限り、ほぼ全ての移動体に係る抽出サンプル画像60の幅の登録パターン画像62の幅に対する倍率は、上記範囲に収まる。また、移動体が極めて遅い場合には、結局背景と同様に処理され、進入のため有効に移動し始めたときにはライン型フレーム画像の結合がなされる。
【0041】
また、[数2]ないしは[数3]による端点フリーDPマッチングにより、移動体のラインに対する進入の始めないしは終わりの態様が変わっても、ΔあるいはΔ’の幅の範囲であれば、抽出サンプル画像60と登録パターン画像62との比較が可能となる。なお、変化のあったライン型フレーム画像を結合して抽出サンプル画像60を形成することもあり、平面フレーム画像を逐一監視して動的にDPマッチングにおける比較対象の開始点ないしは終了点を把握する必要がない。
【0042】
このようにして、演算装置10は、端点フリーDPマッチングにより、抽出サンプル画像60と各種登録パターン画像62とを比較し、正規化最小累積距離Dが最小となる登録パターン画像62に係る移動体の種類に関し、その計数のための変数に1を加え、記憶装置8に記憶する。そして、演算装置10は、以上の処理を適宜繰り返し、移動体につきその種類を識別して種類ごとに計数をしていく。
【0043】
上記移動体識別プログラム12を実行する移動体識別装置1における初期段階の識別結果を、次の[表1]に示す。登録パターン画像62が4種全7個であっても、全種類の移動体につき相当高い識別率を有していることが分かる。
【0044】
【表1】

【0045】
上記移動体識別プログラム12を実行する移動体識別装置1では、演算装置10が、複数種類の移動体の移動方向に交差するラインに係るライン型フレーム画像56について変化を生じている間取得し、これら各ライン型フレーム画像56を移動体の移動方向と逆の方向へ時刻順に結合して抽出サンプル画像60を生成する一方、移動体の種類ごとに、抽出サンプル画像60に対応するように予め決定された登録パターン画像62を記憶装置8に格納し、生成された抽出サンプル画像60と、記憶装置8に格納された登録パターン画像62とを、DPマッチングにより比較し、抽出サンプル画像60がいずれの種類の登録パターン画像62と一致するかを判別して、一致した登録パターン画像62の種類に係るものとして移動体を識別するので、移動体を捕捉するまではライン型フレーム画像56の監視のみで足り、平面フレーム画像50全体の処理と比べて情報処理量が格段に少なくて済むし、平面フレーム画像50に障害物があったとしても移動体を識別することができる。また、DPマッチングにより、抽出サンプル画像60と登録パターン画像62との一致を把握するので、ライン型フレーム画像56の結合である抽出サンプル画像60が、移動体の速度などによって様々に変化しても、一致不一致を判別でき、情報処理量が少なくても、移動体の種類の識別まで精度良く可能になる。そしてこのような情報処理の効率化と種類識別精度との両立により、リアルタイムでの現実的な移動体識別が可能となる。
【0046】
また、演算装置10は、特に登録パターン画像62と抽出サンプル画像60とを、始端および/または終端に自由度を与える端点フリーDPマッチングにより比較するので、動的DPマッチングのような膨大な処理量は不要であり、より一層効率の良い移動体識別が可能となる。
【0047】
更に、移動体識別装置1は、ラインに係る平面フレーム画像につき取得するカメラ2と、カメラ2により取得された各平面フレーム画像50を平滑化するとともに、連続する時刻の平面フレーム画像52同士で差分をとることで、ライン型フレーム画像56の変化を把握する差分処理手段と、差分処理手段によって変化の把握されたラインに係るライン型フレーム画像56を参照するライン型フレーム画像ピックアップ手段とを備えるため、ライン型フレーム画像56をノイズの少ない状態で得ることができ、より一層精度を向上できる。
【0048】
加えて、演算装置10は、抽出サンプル画像58につき、余白を取り除いたうえで、移動方向と交差する方向で正規化して抽出サンプル画像60とするので、DPマッチングによるローカル距離ldなどの計算が容易になり、計算量を減らしてより速く正確に識別結果を得ることができる。
【0049】
なお、主に上記実施形態を変更してなる本発明の他の実施形態を例示する。ラインを2本以上設定し、いずれのラインにおいても抽出サンプル画像を生成できるようにするなど、ライン型フレーム画像取得手段につき、互いに異なるラインに係るライン型フレーム画像を取得するよう、複数設置する。これにより、あるラインにおいて移動体の後を移動体が通過する場合にも別のラインで移動体を捕捉したり、あるラインにおける抽出パターン画像と、別のラインにおけるそこまでの予測移動時間後に取得された抽出パターン画像とを互いに参照したりして、移動体識別の精度を向上させることができる。
【0050】
また、カメラにつき24ビット以外のカラー動画を取得するものとする。あるいは、カメラにつきグレースケール動画を取得するものとし、グレースケール化を省略する。カメラにつき白黒動画を取得するものとし、グレースケール化、二値化を省略する。カメラにつきライン型フレーム画像を取得するものとし、ライン走査を兼ねるようにする。また、平滑化処理などを省略する。
【0051】
DPマッチングにおいて、他のパラメータを用いたり、他の形式の数式を用いたり、非対称型のパスを用いたり、他の重み付けに係るパスを用いたり、始端あるいは終端のみ自由度を与えたりする。各種登録パターン画像の種類を変えあるいは増減したり、1個の抽出サンプル画像に対して所定の順番で登録パターンと比較するようにし、累積距離が所定値(例えば正規化時において0.1以下)となると当該登録パターンと一致するとみなして識別処理を終了するようにしたりする。
【0052】
登録パターン画像につき、極端な特徴を有する特徴的なものを手動選択したり、コンピュータによって自動的に平均的あるいは特徴的なものを選択したり、手動あるいは自動で平均的あるいは特徴的なものを作成したりする。各種値につき、正規化を省略する。また、識別された移動体の種類につき、表示装置、ランプ、ブザーなどの出力装置に出力する。
【0053】
差分画像の階調の数を256階調から増減する。平面フレーム画像や正規化後の抽出サンプル画像などの高さを120画素から増減する。平面フレーム画像の高さと、ラインの高さと、正規化後の抽出サンプル画像の高さと、登録パターン画像の高さとを、一部あるいは全部において互いに異なるものとする。ライン走査などを始める条件について、輝度のしきい値を32から増減したり、画素数のしきい値を48から増減したりする。1本のラインの幅につき、1画素ではなく複数画素とする。
【産業上の利用可能性】
【0054】
上記移動体識別装置は、構内に進入する移動体を自動識別して警備を支援する目的の他、車両別の交通量の自動把握や、工場における物品の種類ごとの流量の自動把握などの目的に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施形態に係る移動体識別装置の説明図である。
【図2】図1における移動体識別装置が実行する移動体識別プログラムのフローチャートである。
【図3】グレースケール化した平面フレーム画像の説明図である。
【図4】平滑化した平面フレーム画像の説明図である。
【図5】差分処理後の平面フレーム画像の説明図である。
【図6】ラインの設定を示す説明図である。
【図7】結合画像を示す説明図である。
【図8】正規化の説明図である。
【図9】登録パターン画像の説明図である。
【図10】端点フリーDPマッチングの説明図である。
【符号の説明】
【0056】
1 移動体識別装置
2 カメラ
4 コンピュータ
6 インターフェイス
8 記憶装置
10 演算装置
12 移動体識別プログラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の移動体の移動方向に交差する1本のラインに係るライン型フレーム画像について、変化を生じている間取得するライン型フレーム画像取得手段と、
ライン型フレーム画像取得手段によって取得された各ライン型フレーム画像を、移動体の移動方向と逆の方向へ時刻順に結合し、抽出サンプル画像を生成する抽出サンプル画像生成手段と、
移動体の種類ごとに、抽出サンプル画像に対応するように予め決定された登録パターン画像を格納する登録パターン画像記憶手段と、
抽出サンプル画像生成手段によって生成された抽出サンプル画像と、登録パターン画像記憶手段に格納された登録パターン画像とを、DPマッチングにより比較し、抽出サンプル画像がいずれの種類の登録パターン画像と一致するかを判別して、一致した登録パターン画像の種類に係る移動体を識別する識別手段と
を備えることを特徴とする移動体識別装置。
【請求項2】
識別手段は、登録パターン画像と抽出サンプル画像とを、始端および/または終端に自由度を与える端点フリーDPマッチングにより比較して識別する
ことを特徴とする請求項1に記載の移動体識別装置。
【請求項3】
ライン型フレーム画像取得手段は、互いに異なるラインに係るライン型フレーム画像を取得するよう、複数設置されている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の移動体識別装置。
【請求項4】
ライン型フレーム画像取得手段は、
ラインに係る平面フレーム画像につき取得するカメラと、
カメラにより取得された各平面フレーム画像を平滑化するとともに、連続する時刻の平面フレーム画像同士で差分をとることで、ライン型フレーム画像の変化を把握する差分処理手段と、
差分処理手段によって変化の把握されたラインに係るライン型フレーム画像を参照するライン型フレーム画像ピックアップ手段と
を備えることを特徴とする請求項1ないしは請求項3のいずれかに記載の移動体識別装置。
【請求項5】
ライン型フレーム画像取得手段は、ライン型フレーム画像または平面フレーム画像を、グレースケールまたは白黒二値で取得し、
あるいは、抽出サンプル画像生成手段は、抽出サンプル画像を、グレースケールまたは白黒二値で生成する
ことを特徴とする請求項1ないしは請求項4のいずれかに記載の移動体識別装置。
【請求項6】
抽出サンプル画像生成手段は、抽出サンプル画像につき、余白を取り除いたうえで、移動方向と交差する方向で正規化する
ことを特徴とする請求項1ないしは請求項5のいずれかに記載の移動体識別装置。
【請求項7】
コンピュータにおいて請求項1ないしは請求項6のいずれかに記載の各手段を実現させるための移動体識別プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−338617(P2006−338617A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−166007(P2005−166007)
【出願日】平成17年6月6日(2005.6.6)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【出願人】(399123926)梅テック 有限会社 (11)
【Fターム(参考)】