説明

移動体運行管理システム及び移動体運行情報提供方法

【課題】 容易に且つ低コストに周辺環境を構築することで、交通機関の移動体に関する情報を確実に収集して管理することができると共に、交通機関を利用する利用者の負担を軽減することができる移動体運行管理システム及び移動体運行情報提供方法を提供する。
【解決手段】 移動体が移動するエリア内の固定体に設置されて所定の情報を格納するICタグ10と、移動体に設置されて少なくとも非接触状態でICタグ10に格納されている情報の読取が可能な非接触型端末装置20と、非接触型端末装置20と所定の通信回線網を介して無線通信を行う管理サーバ30とを備え、非接触型端末装置20は、移動体が固定体を通過した際の時刻情報と共に、少なくともICタグ10に格納されている固有IDを取得して管理サーバ30に送信する一方、管理サーバ30は、予め登録されている登録情報に基づいて、送信されてきた時刻情報及び固有IDから移動体の運行状況に関する情報を導出して所定の通信回線網からアクセス可能な情報として格納する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部との間で非接触方式によって各種情報を送受信するICタグを用いた移動体運行管理システム及び移動体運行情報提供方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、物体(例えば、商品、人、乗り物)などの識別に利用される微小な無線ICタグが、各産業界において採用されている。このようなICタグは、自身を識別するための識別番号が予め記憶されており、電波を介してかかる情報を非接触状態で送受信することで物体やそれに関する情報を識別して管理するためのシステムに活用されている。例えば、運輸業界においては、対象物となる乗り物の位置や状態あるいはそれらに関する情報を取得して、運行サービスに必要な一連の情報を利用者に提供するために役立っている。この一例として、バス停に表示パネルを設置し、これに行き先、到着予定時刻、混雑状況、降車予定人数などの次発バス情報を表示するバス乗降客数把握システムが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、上述のシステムにおいては、乗客がICタグ付乗車券を携帯していなければ、正確な降車予定人数をカウントすることができないため、確実に混雑状況や降車人数を把握することが困難であった。そして、上述のシステムでは、各バス停に設置する表示パネルによりバス運行情報の閲覧を可能とするためには、各バス停に対して電源の供給が必要であった。また、従来におけるバス時刻表や運行情報の確認には、現地(バス停の時刻表)もしくはインターネットにより知りたい情報を利用者自らが取得する手法を採用していた。
【0004】
上述のような運輸業界では対象物となる乗り物の運行に関する状況が刻一刻と変化する。このため、交通機関のサービスに関する状況などを正確に把握して管理するためには、情報収集にかかる設備環境を整えるための手間とコストを要していた。また、サービスを利用する利用者にとっても、情報を取得する際に手間がかかる仕組みであった。
【0005】
【特許文献1】特開2004−355385号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような事情に鑑み、容易に且つ低コストに周辺環境を構築することで、交通機関の移動体に関する情報を確実に収集して管理することができると共に、交通機関を利用する利用者の負担を軽減することができる移動体運行管理システム及び移動体運行情報提供方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の第1の態様は、移動体が移動するエリア内の固定体に設置されて所定の情報を格納するICタグと、前記移動体に設置されて少なくとも非接触状態でICタグに格納されている情報の読取が可能な非接触型端末装置と、前記非接触型端末装置と所定の通信回線網を介して無線通信を行う管理サーバとを備え、前記非接触型端末装置は、移動体が固定体を通過した際の時刻情報と共に、少なくともICタグに格納されている固有IDを取得して前記管理サーバに送信する一方、前記管理サーバは、予め登録されている登録情報に基づいて、送信されてきた時刻情報及び固有IDから前記移動体の運行状況に関する情報を導出して所定の通信回線網からアクセス可能な情報として格納することを特徴とする移動体運行管理システムにある。
【0008】
かかる第1の態様では、固定体にICタグを設置する一方、移動体に非接触型端末装置を設置することで、移動体が所定のルートを通過するたびにその通過ルートに存在する固定体のICタグから固有IDを読み取って、移動体の運行状況に関する情報を導出して通信回線網から提供される情報として格納することができる。これにより、交通機関の移動体に関する情報を確実に収集して管理するための周辺環境を容易に且つ低コストに構築することができる。
【0009】
本発明の第2の態様は、前記ICタグには、前記固定体の存在エリアを特定する位置情報を含む情報が格納されていることを特徴とする第1の態様に記載の移動体運行管理システムにある。
【0010】
かかる第2の態様では、ICタグが設置されている固定体を確実に特定することができる。そして、各固定体に非接触型端末装置を設置する場合に比べて、容易に且つ低コストに周辺環境を構築することができる。
【0011】
本発明の第3の態様は、前記非接触型端末装置は、前記移動体で計測された乗車人数を特定する情報を取得して送信する一方、前記管理サーバは、前記非接触型端末装置から取得した情報及び前記管理サーバに予め登録されているデータテーブルに含まれた移動体の経路に関する情報に基づいて、前記移動体の運行状況に関連する情報を判別して、少なくとも移動体の出発時刻、現在位置、到着予測時刻、及び乗車率を示す情報を導出して所定の通信回線網を介して提供することを特徴とする第1又は2の態様に記載の移動体運行管理システムにある。
【0012】
かかる第3の態様では、移動体の出発時刻、現在位置、到着予測時刻、及び乗車率が導出されて通信回線網から提供される。これにより、交通機関の移動体の運行状況を確実に把握して提供することができる。
【0013】
本発明の第4の態様は、前記ICタグには、前記固定体の位置情報に関連するサービス情報を特定する識別番号が格納されており、前記非接触型端末装置は、取得した識別番号から特定される固定体の位置情報から導出された移動体の現在位置及び移動ルートに対応するサービス情報を予め格納されている情報から選定して提供することを特徴とする第1〜3の何れか一つの態様に記載の移動体運行管理システムにある。
【0014】
かかる第4の態様では、固定体の位置情報から導出された移動体の現在位置及び移動ルートに対応するサービス情報が提供される。これにより、交通機関を利用する利用者に有益な情報を提供することができる。
【0015】
本発明の第5の態様は、前記管理サーバは、前記移動体を利用する利用者が保持するユーザ端末に対して、予め登録されている利用者からの処理要求に基づいて前記移動体に関する所望の情報を所定のタイミングで自動配信することを特徴とする第1〜4の何れか一つの態様に記載の移動体運行管理システムにある。
【0016】
かかる第5の態様では、利用者からの要求を処理要求として登録することができ、その処理要求に基づいて移動体に関する所望の情報が所定のタイミングで自動配信される。これにより、利用者の負担を軽減させた情報提供ができる。
【0017】
本発明の第6の態様は、前記移動体はバスであり、少なくともバスの乗車口の最下部ステップに所定のセンサが設けられており、前記所定のセンサは、乗車する利用者が最下部ステップと所定時間接触状態にあることを検知した場合に乗車人数と特定する乗車情報として計測することを特徴とする第1〜5の何れか一つの態様に記載の移動体運行管理システムにある。
【0018】
かかる第6の態様では、移動体に乗車する利用者の乗車人数を特定する乗車情報を確実に計測することができる。そして、移動体のより確実な運行状況を提供することができる。
【0019】
本発明の第7の態様は、非接触状態で固定体からの情報を受信する非接触型端末装置を移動体に設置すると共に、前記移動体が移動するエリア内の固定体に所定の情報が格納されたICタグを設置して、前記移動体が固定体を通過した際の時刻情報と共にICタグに格納されている固有IDを取得して、当該情報から移動体の運行状況に関する情報を導出して少なくとも前記移動体を利用する利用者が保持するユーザ端末に提供することを特徴とする移動体運行情報提供方法にある。
【0020】
かかる第7の態様では、移動体を利用する利用者が保持するユーザ端末に移動体の運行状況に関する情報を確実且つリアルタイムに提供することができる。
【0021】
本発明の第8の態様は、前記固有IDに基づいて移動体の現在位置が特定されると、予め登録されている現在位置に対応付けられた広告情報が音声又は映像或いはそれらを組み合わせた情報として配信されることを特徴とする第7の態様に記載の移動体運行情報提供方法にある。
【0022】
かかる第8の態様では、移動体の現在位置に対応する様々な形態の広告情報が配信される。これにより、利用者に有益な情報を関連のある場所で提供することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、固定体にICタグを設置すると共に、移動体に非接触型端末装置を設置して、移動体が所定の固定体を通過する毎に必要なデータのみを処理して通信回線網を介してリアルタイムに提供されるようにしたため、交通機関の移動体に関する情報を確実に収集して管理するための周辺環境を容易に且つ低コストに構築することができると共に、交通機関を利用する利用者の負担を軽減することができる移動体運行管理システム及び移動体運行情報提供方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の形態について説明する。なお、本実施形態の説明は例示であり、本発明の構成は以下の説明に限定されない。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係る移動体運行管理システムの概要を示す図である。なお、本実施形態では、交通機関の移動体としてバスを想定した運行管理について説明する。
【0026】
図1に示すように、移動体運行管理システム1は、固定体としてのバス停及び電柱に設置されているICタグ10と、移動体としてのバスに設置されている非接触型端末装置20と、非接触型端末装置20及びユーザ端末40との間で所定の通信回線網を介して無線通信を行う管理サーバ30とで構成されている。ここでいう固定体は、移動体であるバスが移動する移動エリア内に存在するバス停及び電柱である。また、本実施形態では、所定の通信回線網として、非接触型端末装置20と管理サーバ30とが少なくとも無線状態で通信できるネットワーク環境からなる通信網を想定している。
【0027】
そして、例えば、バスを利用する利用者が、バス停又は他の待機場所で自身が保持するユーザ端末40から所定の通信回線網を介して管理サーバ30にアクセスすることで、管理サーバ30内に格納されているバスの運行管理に必要なバス情報を検索及び閲覧することができる。また、利用者は、管理サーバ30に対してバス情報に関する処理要求を予め登録しておくことで、利用者の希望する情報が希望する時間帯にユーザ端末40に対して自動的に配信されるようになる。
【0028】
ここで、ICタグ10は内部に所定の情報を格納するICチップを有しており、少なくとも自身を一意に識別するための固有IDが個別に割り当てられて登録されている。具体的には、バス停及び電柱の存在エリアを特定する位置情報として、バス停に設置されるICタグ10にはバス停を識別するバス停コード、電柱に設置されるICタグ10には電柱を識別する電柱番号が登録されている。さらに、電柱に設置されるICタグ10には電柱の位置情報に関連するサービス情報を特定する広告番号が対応付けられて登録されている。勿論、バス停に設置されるICタグ10にも広告番号を登録するようにしてもよい。
【0029】
非接触型端末装置20は、ICタグ10に対して非接触状態で無線通信を行い、内部のICチップに格納されている情報を読み取ったり、新たな情報をICチップに書き込んだりすることが可能なリーダライタ装置である。具体的には、非接触型端末装置20は、バスがバス停又は電柱を通過した際にその通過時刻と共に、少なくともICタグ10に格納されているバス停コード又は電柱番号を読み取って取得する。このとき、同時に広告番号を読み取るようにしてもよい。さらに、非接触型端末装置20は、バスに設置されている後述するカウンタースイッチで計測された乗車人数を特定するための乗車情報を取得する。このようにして取得した各種情報は管理サーバ30に送信される。また、非接触型端末装置20は、バス停コード又は電柱番号から導出されるバスの現在位置及び移動ルートに対応するサービス情報を予め格納されている情報から選定して提供する。ここでいうサービス情報としては、例えば、地域に関する広告などを挙げることができ、上述した広告番号に基づいて提供される。
【0030】
管理サーバ30は、図示しないCPU、メモリ、外部記憶装置、操作部、及び通信部等を含み構成される情報通信機器であり、通信回線網上でバスの運行管理を行うために必要な各種情報を格納すると共に、この各種情報を利用して利用者に対してバスの運行サービスにかかる一連の処理を実行する。
【0031】
具体的には、管理サーバ30は、予め登録されている登録情報に基づいて、非接触型端末装置20から送信されてきた時刻情報及び固有ID(バス停コード又は電柱番号)からバスの運行状況に関する情報を導出して格納する。ここで格納される情報は、例えば、所定の通信回線網からアクセス可能なデータベースとして機能するサーバに格納されるようにしてもよい。また、登録情報とは、バス情報を提供するために必要な情報であり、後述するデータベースを含む。
【0032】
さらに詳言すると、管理サーバ30は、非接触型端末装置20から取得した情報及び管理サーバ30に予め登録されているデータテーブルに含まれたバスの経路に関する情報に基づいて、バスの運行状況に関連する情報を判別して、少なくともバスの出発時刻(通過時刻)、バスの現在位置、バスの到着予測時刻、及びバスの乗車率を示す情報を導出して通信回線網を介して提供する。このうち、バスの出発時刻とは出発地のバス停を通過した時刻であり、バスの現在位置とは各バス停を通過するたびに導出される存在位置である。そして、バスの到着予測時刻とは、時刻表との比較による遅延時間や遅延時間から予測できる正確な到着時刻を含む情報であり、先発で発車したバスに関するバス情報との比較によって導出される。乗車率は現在位置までの乗降車人数を所定の基準によって処理することで導出される。また、ここでいうデータテーブルとは、バスの経路毎に読み取る可能性のあるバス停コード又は電柱番号を予めリストアップしたリストデータであり、非接触型端末装置20がバス停コード又は電柱番号を読み取る毎に、バスの運行管理に必要な情報と不要な情報とを判別して振り分けるフィルタリングとしての機能を含む。
【0033】
このような管理サーバ30は、一般的なコンピュータの各種機能を備える情報通信機器であればよく、例えば、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、及びサーバなどが挙げられる。
【0034】
ユーザ端末40は、図示しないCPU、メモリ、外部記憶装置、操作部、及び通信部等を含み構成されてプログラム制御により動作することで、図示しない基地局を介する通信ネットワークとの接続が可能な情報処理装置である。本実施形態では、ユーザ端末40として携帯電話機を想定しているが、特にこれに限定されず、例えば、PHS(Personal Handyphone System)及びPDA(Personal Digital Assistants)等の情報処理装置であってもよく、無線機、情報端末機器、及びノート型パーソナルコンピュータ等を含むものとする。
【0035】
このような構成により、移動体運行管理システム1では、バスが出発地を出発してから所定の経路を通過することで、非接触型端末装置20がICタグ10から固有ID(バス停コード又は電柱番号)を取得して、バスの出発時刻(通過時刻)、現在位置、及び到着予測時刻を導出することができる。これにより、例えば、ユーザ端末40の画面上からそれらの情報をバス情報として検索又は閲覧することが可能となる。また、非接触型端末装置20が取得した乗車情報から正確な乗車人数を特定して乗車率を導出することで、運行状況を正確に把握して提供することができる。
【0036】
ここで、バスがバス停又は電柱を通過することで管理サーバ30によって管理され、ユーザ端末40に提供されるバス情報についてより具体的に説明する。図2は、本発明の一実施形態に係る管理サーバで管理されるバス情報の一覧を示す図である。
【0037】
図2に示すように、バスがバス停又は電柱を通過する毎に提供される情報は、それぞれのICタグ10によって取得される情報と、乗降車口に設置されたセンサ等(例えば、後述するカウンタースイッチ)により取得される情報とに大別される。ICタグ10によって取得される情報としては、各バス停又は各電柱を通過することのみで得られる出発時刻(通過時刻)又は現在位置と、さらに管理サーバ30に格納されている登録情報と比較することで得られる時刻表との差(遅れ)、バス停2以降の到着予測時刻、及び先発した同じ行先のバスとの差である。これらの情報が各バス停又は各電柱を通過するたびにそれぞれ取得される。一方、乗降車口に設置されたセンサ等からの情報は、上述したテーブルデータと比較して得られる情報であり、乗車人数又は乗車率である。
【0038】
ここで、上述した乗車人数の導出方法について説明する。図3は、本発明の一実施形態に係るバスの内部を説明する概略平面図である。図4は、本発明の一実施形態に係るバスの乗車情報を計測する際の主要構成部を示す側面図及び平面図である。
【0039】
図示するように、バス100の一端の中央付近には乗車口101が2つ設けられおり、バス100の運転席側に設けられている1つの降車口102と同じ幅を有している。このような乗車口101及び降車口102の最下部ステップ103に、図4に示すようなカウンタースイッチ104をそれぞれ1つ設置して、その上にカウンタースイッチ104を保護するためのマット105を敷く。
【0040】
カウンタースイッチ104は、乗車する利用者が最下部ステップ103と所定時間接触状態にあることを検知した場合に乗車人数を特定するための乗車情報として計測(カウント)する。このようなカウンタースイッチ104としては、接触してから離れた時点で1カウントする機能を有するリミット式スイッチを想定しており、乗降車する際に利用者の重量がかかった段階でリミットに接触し次段のステップに移動する行為によりリミットが離れた時点を1カウントとする。これにより、利用者の乗降車行為のみを確実にカウントすることができるようになっている。例えば、混雑時に利用者がステップ上に立ち止まった場合は、例えば、10秒間リミットに接触したままの状態であれば、音声により通路へ移動するように促すようにする。このように、10秒間以上経過した後にリミットが外れたような場合は人数にカウントしないようにする。これにより、誤カウントを防止して確実に乗車情報を計測することができる。
【0041】
そして、マット105には乗降車する利用者が、カウンタースイッチ104が設置されている該当箇所を踏み易いように注意を促す表示を印刷しておく。図4(b)に示す例では、マット105上にカウンタースイッチ104の設置位置に3重線からなる円形状106が印刷されている。カウンタースイッチ104で計測された乗車情報は、例えば、バス100内に専用のカウント数収集装置を設置して収集するようにすればよい。このカウント数収集装置は、非接触型端末装置20と独立して設けられてもよいし、一体的に設けられるようにしてもよい。なお、非接触型端末装置20と独立して設ける場合には、管理サーバ30又は非接触型端末装置20との間で各種情報の授受が可能なように構成する。
【0042】
上述のような構成で計測された乗車情報は、図5に示すような基準で処理される。すなわち、バス100に設置されたカウント数収集装置(図示せず)が、2つの乗車口101側のカウンタースイッチ104及び降車口102側のカウンタースイッチ104で各々取得されたカウント数を管理サーバ30に送信すると、管理サーバ30は、初期登録されているバス100の座席数及び通路上に立つことが可能な人数に基づいて導出される最大可能乗車人数から、現在の乗車人数、乗車率、及び現在可能な乗車人数を導出する。
【0043】
このような処理により、本実施形態では、乗車時と降車時の双方の利用者を計測して得られる乗車情報に基づいて、最終的に正確な乗車人数及び乗車率を導出することができる。また、図5に示す処理基準は、上述したデータテーブルに予め登録するようにすればよい。
【0044】
なお、乗車人数の導出方法については、上述したカウンタースイッチ104による計測に限定されず、例えば、乗車口101及び降車口102に人の存在を検知することができる赤外線センサなどを設けるようにしてもよい。
【0045】
ここで、上述した移動体運行管理システム1の処理手順について説明する。図6は、本発明の一実施形態に係る移動体運行管理システムの通信シーケンスを示す図である。
【0046】
図6に示すように、出発地においてバスに乗り込む利用者数がカウントされて(S1)、バスが出発すると(S2)、非接触型端末装置20は、通過したバス停又は電柱に設置されている各ICタグ10のバス停コード又は電柱番号を読み取って(S3)、その時点の時刻情報として出発時刻を取得する(S4)。なお、ステップS3において、電柱番号と共に広告番号を取得して管理するようにしてもよい。
【0047】
非接触型端末装置20は、取得した出発時刻、乗車情報(カウント数)、バス停コード又は電柱番号を管理サーバ30に対して送信する(S5)。管理サーバ30は、送信されてきた情報と予め格納されているデータテーブルとを比較することで(S6)、到着予測時刻、現在位置、乗車人数、乗車率を導出する(S7)。これらの各種情報は、バス情報としてデータベースに格納されて管理される(S8)。このようにして格納されたバス情報は、利用者がユーザ端末40aから検索又は閲覧することで利用される(S9)。また、他の利用者は、自身が保持するユーザ端末40bから希望する情報の配信を要求する処理要求を管理サーバ30に登録することで(S10)、該当する情報が希望するタイミングで自動配信されるようにしてもよい(S11)。
【0048】
そして、バスがバス停又は電柱を通過する毎に(S12)、非接触型端末装置20は、通過したバス停又は電柱に設置されている各ICタグ10のバス停コード又は電柱番号を読み取って(S13)、その時点の時刻情報としての通過時刻を取得する(S14)。そして、出発地以降のバス停で乗降車する利用者がカウントされる(S15)。なお、ステップS13においても同様に、電柱番号と共に広告番号を取得して管理するようにしてもよい。
【0049】
非接触型端末装置20は、取得した通過時刻、乗車情報(カウント数)、バス停コード又は電柱番号を管理サーバ30に対して送信する(S16)。管理サーバ30は、送信されてきた情報と予め格納されているデータテーブルとを比較することで(S17)、到着予測時刻、現在位置、乗車人数、乗車率を導出する(S18)。これらの各種情報も同様にして、バス情報としてデータベースに格納されて管理される(S19)。
【0050】
また、非接触型端末装置20は、ステップS3又はステップS13において、広告番号を取得した場合には、その広告番号に対する広告情報をバスの車内に配信する(S20)。
【0051】
上述のような処理手順によって、本実施形態の移動体運行管理システム1は、ユーザ端末40a、40b又はバスの車内から利用者の要望に応じた情報又は有益な情報を提供することができる。
【0052】
ここで、上述した処理手順のステップS20の広告情報の配信方法について具体的に説明する。図7は、本発明の一実施形態に係る移動体運行管理システムの広告情報の配信手順を示す図である。なお、図7に示す例では、電柱に設置されているICタグ10のみに広告番号が格納されており、広告情報の配信は非接触型端末装置20が主体となって実行される処理である。
【0053】
図7に示すように、バスが各電柱を通過すると、非接触型端末装置20は、各ICタグ10(図示せず)から電柱番号及び広告番号を読み取って、広告番号に対応した広告情報を配信する。図7に示す例では、ある区間ごとに対応した広告情報が配信されている。すなわち、電柱番号A〜電柱番号Jの区間には広告番号Aに対応した広告情報Aが配信され、電柱番号K〜電柱番号Uの区間には広告番号Bに対応した広告情報Bが配信され、電柱番号X以降の区間には広告番号Dに対応した広告情報Dが配信されている。図7に示す例では、広告番号は電柱に設置されているICタグ10にのみ格納するようにしたが、勿論、バス停に設置されているICタグ10にバス停コードと共に格納されるようにしてもよい。
【0054】
ここでいう広告情報は、音声又は映像或いはそれらを組み合わせた情報であり、例えば、電柱が設置されている地域に関する広告である。また、配信される広告情報は、例えば、予め非接触型端末装置20にダウンロードしておき、広告番号に応じて選定されるようにする。これにより、非接触型端末装置20は、取得した電柱番号に基づいてバスの現在位置を特定することができ、特定された現在位置に対応付けられた広告情報を抽出して車内に配信することができる。そして、利用者は、例えば、バス停及び電柱周辺の店舗に関する情報を簡単に入手することができると共に、バス会社側にもそれらの店舗から広告収入が入るようにすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施形態に係る移動体運行管理システムの概要を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る管理サーバで管理されるバス情報の一覧を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るバスの内部を説明する概略平面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るバスの乗車情報を計測する際の主要構成部を示す側面図及び平面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る乗車情報の処理基準を説明する図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る移動体運行管理システムの通信シーケンスを示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る移動体運行管理システムの広告情報の配信手順を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
10 ICタグ
20 非接触型端末装置
30 管理サーバ
40(40a、40b) ユーザ端末
100 バス
101 乗車口
102 降車口
103 最下部ステップ
104 カウンタースイッチ
105 マット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体が移動するエリア内の固定体に設置されて所定の情報を格納するICタグと、前記移動体に設置されて少なくとも非接触状態でICタグに格納されている情報の読取が可能な非接触型端末装置と、前記非接触型端末装置と所定の通信回線網を介して無線通信を行う管理サーバとを備え、前記非接触型端末装置は、移動体が固定体を通過した際の時刻情報と共に、少なくともICタグに格納されている固有IDを取得して前記管理サーバに送信する一方、前記管理サーバは、予め登録されている登録情報に基づいて、送信されてきた時刻情報及び固有IDから前記移動体の運行状況に関する情報を導出して所定の通信回線網からアクセス可能な情報として格納することを特徴とする移動体運行管理システム。
【請求項2】
前記ICタグには、前記固定体の存在エリアを特定する位置情報を含む情報が格納されていることを特徴とする請求項1に記載の移動体運行管理システム。
【請求項3】
前記非接触型端末装置は、前記移動体で計測された乗車人数を特定する情報を取得して送信する一方、前記管理サーバは、前記非接触型端末装置から取得した情報及び前記管理サーバに予め登録されているデータテーブルに含まれた移動体の経路に関する情報に基づいて、前記移動体の運行状況に関連する情報を判別して、少なくとも移動体の出発時刻、現在位置、到着予測時刻、及び乗車率を示す情報を導出して所定の通信回線網を介して提供することを特徴とする請求項1又は2に記載の移動体運行管理システム。
【請求項4】
前記ICタグには、前記固定体の位置情報に関連するサービス情報を特定する識別番号が格納されており、前記非接触型端末装置は、取得した識別番号から特定される固定体の位置情報から導出された移動体の現在位置及び移動ルートに対応するサービス情報を予め格納されている情報から選定して提供することを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の移動体運行管理システム。
【請求項5】
前記管理サーバは、前記移動体を利用する利用者が保持するユーザ端末に対して、予め登録されている利用者からの処理要求に基づいて前記移動体に関する所望の情報を所定のタイミングで自動配信することを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の移動体運行管理システム。
【請求項6】
前記移動体はバスであり、少なくともバスの乗車口の最下部ステップに所定のセンサが設けられており、前記所定のセンサは、乗車する利用者が最下部ステップと所定時間接触状態にあることを検知した場合に乗車人数を特定する乗車情報として計測することを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の移動体運行管理システム。
【請求項7】
非接触状態で固定体からの情報を受信する非接触型端末装置を移動体に設置すると共に、前記移動体が移動するエリア内の固定体に所定の情報が格納されたICタグを設置して、前記移動体が固定体を通過した際の時刻情報と共にICタグに格納されている固有IDを取得して、当該情報から移動体の運行状況に関する情報を導出して少なくとも前記移動体を利用する利用者が保持するユーザ端末に提供することを特徴とする移動体運行情報提供方法。
【請求項8】
前記固有IDに基づいて移動体の現在位置が特定されると、予め登録されている現在位置に対応付けられた広告情報が音声又は映像或いはそれらを組み合わせた情報として配信されることを特徴とする請求項7に記載の移動体運行情報提供方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−276703(P2008−276703A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−122763(P2007−122763)
【出願日】平成19年5月7日(2007.5.7)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】