移動作業機の自動化構造
【課題】 作業時における操縦者の負担を効果的に軽減するとともに、操縦者の熟練度に関係なく効率良く作業を行えるようにすることにある。
【解決手段】 推進抵抗による動力の変動を検出する検出手段Sと、作業装置Wの作動を制御する制御手段49とを備え、検出手段Sからの検出値が適正値から設定値に低下するのに伴って、制御手段49が、所定の制御作動を開始して所定の作業状態を現出するように構成してある。
【解決手段】 推進抵抗による動力の変動を検出する検出手段Sと、作業装置Wの作動を制御する制御手段49とを備え、検出手段Sからの検出値が適正値から設定値に低下するのに伴って、制御手段49が、所定の制御作動を開始して所定の作業状態を現出するように構成してある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動作業機の自動化構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、作業装置の一例であるフロントローダを備えた移動作業機においては、操縦者が、機体の推進でバケットの先端を掘削対象物に突入させる操作を行いながら、エンジン音などから推進抵抗を判断し、その判断に基づいた適切なタイミングで、バケットの先端が掘削対象物に突き進むように機体を推進させながら、バケットで掘削対象物を掬い取るようにバケット又はブームを上昇揺動させる複合操作や、機体を停止させながらバケット及びブームを作動停止させる複合操作などを行って、バケットの先端を掘削対象物に突き進ませながらバケットで掘削して掘削物をバケット内に掬い入れる掘削積み込み状態を現出することで、過負荷による不測のエンジン停止などを招くことなく、フロントローダの作動のみで掘削する場合に比較して掘削物を効率良くバケット内に掬い入れられるようになっている。
【0003】
しかしながら、上記のように作業負荷を判断しながら複合操作を適切なタイミングで良好に行うには、操縦者にかなりの熟練や負担を要することになり、その結果、操縦者によって、又、作業時間に比例して増大する操縦者の疲労度によって、作業効率が著しく変化する、あるいは、操縦者の疲労度が高くなるなどの不都合を招くことになる。
【0004】
そこで、例えば、上記のようなフロントローダを備えた移動作業機においては、操縦者が、自動掘削開始位置まで移動作業機を推進させた後、自動掘削の開始をコントローラに指示すると、予め記憶した自動掘削モードでブーム及びバケットを作動させる自動掘削が行われるように構成して、操縦者の負担軽減や作業効率の向上などを図るようにしたものある(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−96601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の構成では、フロントローダによる掘削は自動で行えるものの、その自動掘削を行うためには、操縦者が、自動掘削の開始をコントローラに指示する必要があることから、操縦者の負担を軽減する上において改善の余地がある。
【0006】
又、効率の良い掘削作業を行うためには、過負荷を招くことなく、機体の推進とフロントローダの作動とを適切に連動させた掘削積み込み状態を現出して、掘削物のバケット内への掬い取り量を多くする必要があるが、上記の構成では、フロントローダによる掘削のみが自動で行われることから、操縦者は、推進抵抗やコントローラの制御作動によるフロントローダの作動などを的確に判断して、機体を適切に操縦する必要があり、結果、操縦者にかなりの熟練や負担を要することになる。
【0007】
本発明の目的は、作業時における操縦者の負担を効果的に軽減するとともに、操縦者の熟練度に関係なく効率良く作業を行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための手段として、本発明では、推進抵抗による変動を検出する検出手段と、作業装置の作動を制御する制御手段とを備え、前記検出手段からの検出値が適正値から設定値に低下するのに伴って、前記制御手段が、所定の制御作動を開始して所定の作業状態を現出するように構成してある移動作業機の自動化構造。
【0009】
この構成によると、推進抵抗で検出手段からの検出値が適正値から所定値まで低下すると、制御手段による所定の制御作動によって、作業装置を作動させた所定の作業状態が自動現出されることになる。
【0010】
例えば、作業装置としてフロントローダを備える場合には、推進抵抗で検出手段からの検出値が適正値から所定値まで低下する状態を、機体の推進でバケットの先端が掘削対象物に対して適切に突入した状態とし、又、制御手段による所定の制御作動で、バケットやブームが上昇揺動して掘削対象物を掘削する掘削状態が現出されるように構成すれば、機体の推進でバケットの先端を掘削対象物に対して適切に突入させる推進操作を行うだけで、フロントローダの掘削状態が自動現出されることになり、結果、機体の推進でバケットの先端を掘削対象物に突き進ませながらバケットで掘削して掘削物をバケット内に掬い入れる、といった機体の推進とフロントローダの作動とを適切に連動させた掘削積み込み状態を現出できる。
【0011】
又、作業装置として耕耘爪の回転で耕耘するロータリ耕耘装置を備える場合には、推進抵抗で検出手段からの検出値が適正値から所定値まで低下する状態を、畦際での耕耘作業の開始時に、圃場外への圃場泥土の拡散や畦際への土の偏りを抑制するために耕耘爪を逆転(機体の進行方向に反する回転)させた推進抵抗の大きい逆転耕耘を所定距離にわたって行った状態とし、又、制御手段による所定の制御作動で、耕耘爪が正転(機体の進行方向に準ずる回転)する推進抵抗の小さい正転耕耘状態が現出されるように構成すれば、畦際での耕耘作業の開始時にロータリ耕耘装置の逆転耕耘状態を現出するだけで、畦際での所定距離にわたる逆転耕耘が行われた後にはロータリ耕耘装置の正転耕耘状態が自動現出されることになる。
【0012】
従って、フロントローダの掘削状態やロータリ耕耘装置の正転耕耘状態などの所定の作業状態を現出するための特別な操作を操縦者が行わなくても、推進抵抗で検出手段からの検出値が適正値から所定値まで低下することによって所定の作業状態を自動現出することができるのであり、その結果、作業時における操縦者の負担を効果的に軽減できるようになり、又、所定の作業状態を現出するための操作のタイミングがずれることに起因した過負荷による不測のエンジン停止などを未然に回避できることから、操縦者の熟練度に関係なく効率良く作業を行える。
【0013】
しかも、検出手段は、エンジン回転数や車速を検出するために移動作業機に本来より装備されている回転センサなどを流用して構成できることから、専用の検出手段を設ける場合に比較して構成の簡素化やコストの削減を図れる。
【0014】
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、前記制御手段による機体の推進制御が可能となるように構成し、前記制御手段による前記所定の制御作動で、前記機体の推進と前記作業装置の作動とを制御して、前記所定の作業状態として、前記機体の推進と前記作業装置の作動とを連動させた作業状態を現出するように構成してある。
【0015】
この構成によると、推進抵抗で検出手段からの検出値が適正値から所定値まで低下すると、制御手段による所定の制御作動によって、機体の推進と作業装置の作動とを連動させた所定の作業状態が自動現出されることになる。
【0016】
つまり、機体の推進と作業装置の作動とを適切に連動させる必要のある作業を行う場合において、制御手段による所定の制御作動によって、作業装置の作動のみが制御されるように構成すると、操縦者が、推進抵抗や制御手段で制御される作業装置の作動などを的確に判断して機体を操縦する必要があることから、操縦者にかなりの熟練や負担を要するのであるが、上記の構成では、制御手段による所定の制御作動によって、操縦者に機体の操縦を強いることなく、又、操縦者の熟練度に関係なく、機体の推進と作業装置の作動とを適切に連動させた作業状態を現出できることになる。
【0017】
従って、操縦者の負担を効果的に軽減しながら、過負荷による不測のエンジン停止や推進抵抗の過剰抑制による作業効率の低下、あるいは、機体の推進と作業装置の作動とがずれることによる不具合の発生などを招くことのない、機体の推進と作業装置の作動とを適切に連動させた効率の良い良好な作業を、操縦者の熟練度に関係なく行える。
【0018】
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、前記作業装置として、上下方向に揺動操作可能なバケットとブームとを備えたフロントローダを装備し、前記機体の推進で、前記バケットの先端が前記掘削対象物に突入した際の推進抵抗で前記検出手段からの検出値が適正値から設定値に低下し、その低下に伴って開始される前記所定の制御作動で、その制御作動の開始とともに推進動力の伝達を一時的に停止し、その一時停止後、前記所定の作業状態として、前記バケットの先端が前記機体の推進で掘削対象物に突き進みながら前記バケットの上昇揺動で掘削対象物を掻き取るしゃくり動作と、前記バケットの先端が前記機体の推進で掘削対象物に突き進みながら前記ブームの上昇揺動で掘削対象物を掬い取る掬い動作とが行われるように、前記機体の推進と前記フロントローダの作動とを連動させた掘削積み込み状態を現出するように構成してある。
【0019】
この構成によると、フロントローダによる掘削作業を行う場合には、操縦者が機体を操縦してバケットの先端を掘削対象物に突入させると、その突入時の推進抵抗で検出手段からの検出値が適正値から設定値に低下するのに伴って、制御手段が所定の制御作動を開始し、その制御作動によって、先ず、推進動力の伝達を一時的に停止して設定値まで低下した動力の回復を図り、その後、しゃくり動作と掬い動作とが良好に行われるように機体の推進とフロントローダの作動とを適切に連動させた掘削積み込み状態が自動現出されることになる。
【0020】
その結果、制御手段による所定の制御作動で、その制御作動の開始とともに掘削積み込み状態が現出されるように構成した場合に招き易くなる過負荷に起因した不測のエンジン停止をより確実に回避できるようになり、又、掘削作業時には、バケットの先端を掘削対象物に突き進ませながら、バケットの上昇揺動で掘削対象物を掻き取る、あるいは、ブームの上昇揺動で掘削対象物を掬い取る、といった機体の推進とフロントローダの作動とを適切に連動させたしゃくり動作や掬い動作による掘削作業を確実かつ良好に行えることから、機体を停止させた状態でフロントローダのみを作動させる場合よりもバケット内に取り込まれる掘削物量が増大するとともに、機体の推進とフロントローダの作動とがずれることに起因したバケット内に取り込まれる掘削物量の低下を防止でき、更に、制御手段による所定の制御作動でフロントローダの作動のみが制御されるように構成した場合に要する掘削作業時における操縦者による機体の操縦などを不要にできる。
【0021】
従って、操縦者の負担を効果的に軽減しながら、過負荷による不測のエンジン停止をより確実に回避できるとともに、機体の推進とフロントローダの作動とを適切に連動させた効率の良い掘削作業を、操縦者の熟練度に関係なく行える。
【0022】
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、前記掘削積み込み状態では、複数回の前記しゃくり動作を間欠的に行った後に前記掬い動作を行うように構成してある請求項3に記載の移動作業機の自動化構造。
【0023】
この構成によると、掘削作業を行う場合に、操縦者が機体を操縦してバケットの先端を掘削対象物に突入させると、その突入時の推進抵抗で検出手段からの検出値が適正値から設定値に低下するのに伴って、制御手段が所定の制御作動を開始し、その制御作動によって、先ず、推進動力の伝達を一時的に停止することで設定値まで低下した動力の回復を図り、その後の掘削積み込み状態では、複数回のしゃくり動作を、その動作を行った際の推進抵抗で低下する動力の回復を図りながら行うことになる。
【0024】
つまり、掘削積み込み状態において1回のしゃくり動作と掬い動作とを行うように構成した場合には、バケットに掘削物を十分に積み込む上において複数回の掘削積み込み状態を現出する必要があり、そのためには、掘削積み込み状態を現出するたびに、操縦者が機体を操縦して、バケットの先端を掘削対象物に突入させて、検出手段からの検出値を適正値から設定値に低下させる必要があることから、操縦者の負担を軽減する上において改善の余地があり、又、その負担を軽減するために、1回のしゃくり動作と掬い動作とで積み込まれる掘削物量の増大を図るようにすると、しゃくり時間が長くなることなどに起因した過負荷による不測のエンジン停止を招き易くなる虞があるが、上記の構成では、操縦者による機体の操縦で、掘削対象物にバケットの先端を突入させて掘削積み込み状態を現出すると、その掘削積み込み状態では、複数回のしゃくり動作が、その動作を行った際の推進抵抗による動力低下の回復を図りながら自動的に行われることになり、結果、機体の操縦による操縦者の負担を軽減しながら、バケットへの掘削物の積み込み量を増大させることができる。
【0025】
従って、掘削積み込み状態では、制御手段による所定の制御作動で、複数回のしゃくり動作を間欠的に行った後に掬い動作を行うようにしたことで、操縦者の負担を効果的に軽減し、過負荷による不測のエンジン停止を確実に回避しながら、バケットに対する掘削物の十分な積み込みを確実に行える効率の良い掘削作業を、操縦者の熟練度に関係なく行える。
【0026】
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、前記制御手段が、前記機体の推進で前記バケットの先端が掘削対象物に到達する前の段階で、前記機体に対する前記バケットの上下角度が、前記機体の推進で前記バケットの先端が掘削対象物に突入した際における前記機体の姿勢の変化を防止する所定の適正角度となるように、前記フロントローダの作動を制御するように構成してある。
【0027】
この構成によると、バケットの先端を掘削対象物に突入させた際に、例えば、駆動輪が浮き上がるような機体の姿勢変化が生じることを防止でき、これによって、その姿勢変化が生じることによって、検出手段により、バケット突入時の推進抵抗による動力の低下を検出することができなくなり、その検出に基づく制御手段による所定の制御作動が開始されなくなって、機体の推進とフロントローダの作動とを適切に連動させた掘削積み込み状態が現出されなくなる不都合を未然に回避できる。
【0028】
従って、機体の推進でバケットの先端を掘削対象物に突入させることで、操縦者の負担を効果的に軽減しながら、過負荷による不測のエンジン停止を回避できるとともに、機体の推進とフロントローダの作動とを適切に連動させた効率の良い掘削作業を確実に行える作業性に優れたものにできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1及び図2には、移動作業機1による作業の自動化を図る自動化システム2の全体構成が示されおり、この自動化システム2は、移動作業機1に搭載した自動化装置3と、移動作業機1の位置検出などを外部から行う外部管理装置4とから構成されている。
【0030】
図1〜4に示すように、移動作業機1は、トラクタ5の前部にフロントローダ(作業装置Wの一例)6を装備して構成され、その作業として、土砂(掘削対象物の一例)を掘削する掘削作業と、掘削した土砂を掘削位置P1から離れたダンプトラック7に対する移載位置P2まで搬送する搬送作業と、搬送した土砂をダンプトラック7の荷台8に移載する移載作業とを行う。
【0031】
トラクタ5は、主クラッチ9を介して伝達されるエンジン10からの動力を、推進用の主変速装置として機能する静油圧式無段変速装置(HST)11と推進用の副変速装置として機能するギヤ式変速装置12とで変速し、そのギヤ式変速装置12の前輪用出力軸13から取り出した変速後の動力を、前輪駆動用の動力として前輪用変速装置14や前輪用差動装置15などを介して左右の前輪16に伝達し、かつ、ギヤ式変速装置12の後輪用出力軸17から取り出した変速後の動力を、後輪駆動用の動力として後輪用差動装置18や左右の後車軸19などを介して左右の後輪20に伝達して、左右の前輪16及び後輪20を駆動する4輪駆動型に構成され、又、静油圧式無段変速装置11のポンプ軸21からの非変速動力を、補助クラッチ22や補助変速装置23などを介して第1動力取出軸24と第2動力取出軸25とに伝達して、予備動力として第1動力取出軸24及び第2動力取出軸25からの取り出しが可能となるように構成され、又、後輪用差動装置18の左右には、対応する左右の後車軸19に制動する制動装置26が配備されている。
【0032】
主クラッチ9は、図外のバネによる付勢で、エンジン10からの動力を静油圧式無段変速装置11に伝達する入り状態に復帰し、そのバネの付勢に抗したクラッチペダル27の踏み込み操作で、エンジン10からの動力の静油圧式無段変速装置11への伝達を遮断する切り状態に切り換わるように構成されている。
【0033】
静油圧式無段変速装置11は、中立復帰機構28の作用で非伝動状態となる中立状態に復帰し、その中立復帰機構28の作用に抗した変速ペダル29の踏み込み操作に基づいて、エンジン10からの動力の正逆転切り換えと無段変速とを行うように構成されている。変速ペダル29は、前進用の操作部と後進用の操作部とを前後に備えた天秤揺動式に構成されている。
【0034】
ギヤ式変速装置12は、複数の変速操作位置に操作保持可能な変速レバー30の操作に基づいて、静油圧式無段変速装置11による変速後の動力を有段変速するように構成されている。
【0035】
左右の制動装置26は、対応する図外のバネによる付勢で非制動状態に復帰し、それらのバネの付勢に抗した対応するブレーキペダル31の踏み込み操作に基づいて、その操作量に応じた制動力を対応する後車軸19に付与するように構成されている。
【0036】
又、トラクタ5には、エンジン回転数を検出する電磁ピックアップ式の回転センサからなる回転数センサ(検出手段Sの一例)32、ギヤ式変速装置12における後輪用出力軸17の回転数を推進速度として検出する電磁ピックアップ式の回転センサからなる車速センサ33、前輪16の切れ角を検出する回転式のポテンショメータからなる切角センサ34、及び、地磁気に基づいてトラクタ5の方位を検出する方位センサ35、などが装備されている。
【0037】
図3及び図5に示すように、フロントローダ6は、トラクタ5の左右両側部に着脱可能に連結される左右一対の支柱36、対応する支柱36の上端部に上下揺動可能に連結された左右一対のブーム37、それらのブーム37の遊端部に上下揺動可能に連結されたバケット38、左右の支柱36に対して対応するブーム37を上下方向に揺動駆動する油圧式で左右一対のブームシリンダ39、左右のブーム37に対してバケット38を上下方向に揺動駆動する油圧式で左右一対のバケットシリンダ40、左右のブームシリンダ39に対する作動油の流動を制御するブーム用の制御弁41、左右のバケットシリンダ40に対する作動油の流動を制御するバケット用の制御弁42、ブーム用制御弁41とバケット用制御弁42とに連係された十字揺動式で中立復帰型の操作レバー43、及び、第2動力取出軸25からの動力で作動油を各制御弁41,42に向けて圧送する油圧ポンプ44、などによって、操作レバー43の操作に連動した各制御弁41,42による作動油の流動制御でブーム37及びバケット38が上下揺動する油圧式に構成されている。
【0038】
ちなみに、左右のブーム37は、操作レバー43の下方への揺動操作で上昇揺動し、操作レバー43の上方への揺動操作で下降揺動し、バケット38は、操作レバー43の左方への揺動操作で上昇揺動し、操作レバー43の右方への揺動操作で下降揺動する。
【0039】
又、フロントローダ6には、ブーム37の揺動角を検出する回転式のポテンショメータからなるブームセンサ45や、バケット38の揺動角を検出する回転式のポテンショメータからなるバケットセンサ46、などが装備されている。
【0040】
自動化装置3は、トラクタ5を操縦する推進用操作機構47、フロントローダ6を操縦する作業用操作機構48、それらの操作機構47,48の作動を制御するコントローラ(制御手段の一例)49、及び、外部管理装置4との双方向の無線通信を可能にする通信器50、などによって構成されている。
【0041】
推進用操作機構47は、ステアリングホイール51に連係された左右の前輪16を操向する空気圧式の操向モータ52、中立復帰機構28の作用に抗して静油圧式無段変速装置11を変速操作する空気圧式の変速シリンダ53、バネの付勢に抗して左右の両制動装置26を制動操作する空気圧式のブレーキシリンダ54、操向モータ52に対する空気の流動を制御する操向用の電磁制御弁55、変速シリンダ53に対する空気の流動を制御する変速用の電磁制御弁56、ブレーキシリンダ54に対する空気の流動を制御する制動用の電磁制御弁57、第1動力取出軸24からの動力で駆動されるコンプレッサ58、及び、空気圧の変動を抑制する空気タンク59、などによって空気圧式に構成されている。
【0042】
作業用操作機構48は、中立復帰する操作レバー43をその左右方向への揺動操作を許容しながら上下方向に揺動操作するように操作レバー43に連係された空気圧式のブーム用レバーシリンダ60、操作レバー43をその上下方向への揺動操作を許容しながら左右方向に揺動操作するように操作レバー43に連係された空気圧式のバケット用レバーシリンダ61、ブーム用レバーシリンダ60に対する空気の流動を制御するブーム用の電磁制御弁62、バケット用レバーシリンダ61に対する空気の流動を制御するバケット用の電磁制御弁63、及び、推進用操作機構47と兼用する上記のコンプレッサ58と空気タンク59、などによって空気圧式に構成されている。
【0043】
コントローラ49は、マイクロコンピュータなどを備えて、外部管理装置4からの送信情報や、回転数センサ32、車速センサ33、切角センサ34、及び、方位センサ35からの各検出情報に基づいて、推進用操作機構47の各電磁制御弁55〜57を操作してトラクタ5の推進を制御し、又、回転数センサ32、ブームセンサ45、及び、バケットセンサ46からの各検出情報に基づいて、作業用操作機構48の各電磁制御弁62,63を操作してフロントローダ6の作動を制御するように構成されている。
【0044】
図1、図2、図5及び図6に示すように、外部管理装置4は、移動作業機1の作業領域A0を上方から撮影するカメラ64、カメラ64の作動などを制御する制御部65、カメラ64からの画像情報を座標変換して作業領域A0における移動作業機1の位置を計測する画像処理部66、図外のタッチパネルなどを備えた入力部67、及び、コントローラ49との双方向の無線通信を可能にする通信器68、などによって構成されている。
【0045】
カメラ64は、予め設定された一定周期で移動作業機1の作業領域A0を撮影するように、その作動が制御部65によって制御されている。
【0046】
制御部65は、外部管理装置4による位置検出用のマーカ69としてトラクタ5に装備したストロボ69が、カメラ64の撮影周期に対する2倍の周期で、カメラ64の撮影タイミングと同期して発光するように、発光指令情報を、通信器50,68を介してストロボの作動を制御するコントローラ49に送信する。
【0047】
画像処理部66は、最新の複数の画像情報から、ストロボ発光間隔での移動作業機1の移動予測範囲内おいてストロボの発光周期に同期して発光する発光体をマーカ69として認識するとともに、そのマーカ(ストロボ)69が発光するごとに、その位置を予め登録した計測用の4つ絶対位置Pa〜Pdから計測し、その計測結果を移動作業機1の位置情報として通信器50,69を介してコントローラ49に送信する。
【0048】
図7〜13に示すように、コントローラ49には、画像処理部66で座標変換した作業領域A0において任意に設定した移動作業機1の基準方向(y軸方向)、基準位置P0、掘削位置P1、移載位置P2、複数の制御領域A1〜A8、及び、各制御領域A1〜A8に応じたトラクタ5の推進制御やフロントローダ6の作動制御などを行うための制御プログラム、などが記憶されている。
【0049】
その制御プログラムに基づくコントローラ49の制御作動について説明すると、コントローラ49は、移動作業機1が第1制御領域A1の基準位置P0に基準方向に沿う姿勢で制動停止している状態において、外部管理装置4における入力部67の操作で作業開始指令が送信されると、先ず、予め設定された所定時間(例えば5秒)の間、トラクタ5に装備されたランプやブザーなどの報知装置を作動させて作業の開始を周囲に報知し、その所定時間の経過後に報知装置を停止させ、その後、移動作業機1をその基準位置P0から掘削位置P1まで移動させる掘削用移動制御、土砂を掘削してバケット38内に積み込む掘削積み込み制御、バケット38内に積み込んだ土砂をダンプトラック7に対する移載位置P2まで搬送する搬送制御、搬送した土砂をダンプトラック7の荷台8に移載する移載制御、及び、移動作業機1を移載位置P2から基準位置P0まで移動させる基準復帰用移動制御を、外部管理装置4における入力部67の操作などで作業停止指令が送信されるまでの間、その順に繰り返して行うように構成されている。
【0050】
掘削用移動制御では、先ず、ブームセンサ45及びバケットセンサ46からの検出値に基づいて、トラクタ5に対するバケット38の高さ位置及び上下角度が、予め設定された掘削作業開始用の適正位置及び適正角度となるように、操作レバー43を上下左右に揺動操作してブーム37及びバケット38を上下揺動させ、その後、制動装置26による制動を解除するとともに、移動作業機1が予め設定された高速の第1前進速度で基準方向に沿って高速前進するように、車速センサ33からの検出値に基づいて静油圧式無段変速装置11を前進方向に増速操作する。
【0051】
この高速前進によって移動作業機1が第2制御領域A2に到達したことが外部管理装置4によって検出されると、切角センサ34及び方位センサ35からの検出値に基づいて、移動作業機1が、基準位置P0と掘削位置P1とから予め設定された右折角度で機体右方向に前進移動するように右折操作する。
【0052】
この右折によって移動作業機1が第3制御領域A3に到達したことが外部管理装置4によって検出されると、切角センサ34及び方位センサ35からの検出値に基づいて、移動作業機1が、基準位置P0と掘削位置P1とから予め設定された左折角度で機体左方向に前進移動するように左折操作し、その左折後は、外部管理装置4からの位置情報や切角センサ34及び方位センサ35からの検出値に基づいて、掘削位置P1とマーカ69とのx軸方向での偏差がゼロになるように必要に応じて操向する適宜操向を行いながら掘削位置P1に向けて前進させる。
【0053】
この前進で移動作業機1が第4制御領域A4に到達したことが外部管理装置4によって検出されると、上記の適宜操向を継続しながら、回転数センサ32からの検出値(エンジン回転数)が適正値から予め設定した第1設定値(例えば適正値に対する80%の値)まで低下したか否かを判別し、第1設定値まで低下すると、この前進でバケット38の先端が掘削対象の土砂に適切に突っ込んだ状態であると判断して、掘削用移動制御を終了するとともに掘削積み込み制御を開始する。
【0054】
掘削積み込み制御では、先ず、静油圧式無段変速装置11を中立復帰させて移動作業機1を停止させ、この停止によって回転数センサ32からの検出値が適正値まで回復すると、静油圧式無段変速装置11を前進方向に増速操作して移動作業機1を第2前進速度で低速前進させる状態を現出するとともに、操作レバー43を左方に揺動操作してバケット38を上昇揺動させる状態を現出して、バケット38の先端がトラクタ5の推進で土砂に突き進みながらバケット38の上昇揺動で土砂を掻き取るようになるしゃくり動作を開始させる。
【0055】
このしゃくり動作で回転数センサ32からの検出値が適正値から予め設定した第2設定値(例えば適正値に対する70%の値)まで低下すると、静油圧式無段変速装置11を再び中立復帰させるとともに操作レバー43を中立復帰させてしゃくり動作を停止し、回転数センサ32からの検出値を適正値まで回復させる。
【0056】
その後、回転数センサ32からの検出値の適正値への回復によるしゃくり動作の再開と、回転数センサ32からの検出値の第2設定値への低下によるしゃくり動作の停止とを、その順に予め設定された回数(例えば2回)ずつ行い、しゃくり動作の開始とともにカウントしたしゃくり動作の回数が予め設定された回数(例えば3回)に達すると、そのときのしゃくり動作の停止で回転数センサ32からの検出値が適正値まで回復するのに伴って、静油圧式無段変速装置11を前進方向に増速操作して移動作業機1を第2前進速度で低速前進させる状態を現出するとともに、予め設定した所定時間(例えば2秒)の間、操作レバー43を左方に揺動操作してバケット38を上昇揺動させる状態を現出し、かつ、それらの開始から所定時間(例えば1秒)の経過後に、予め設定した所定時間(例えば2.5秒)の間、操作レバー43を上方に揺動操作してブーム37を上昇揺動させる状態を現出して、バケット38の先端がトラクタ5の推進で土砂に突き進みながらバケット38及びブーム37の上昇揺動で土砂をバケット38内に掬い取るようになる掬い動作を行い、この掬い動作で回転数センサ32からの検出値が適正値から予め設定した第3設定値(例えば適正値に対する60%の値)まで低下するのに伴って静油圧式無段変速装置11を中立復帰させ、又、各所定時間の経過とともに操作レバー43を中立復帰させてバケット38及びブーム37の上昇揺動を停止させて掬い動作を停止し、掘削積み込み制御を終了するとともに搬送制御を開始する。
【0057】
搬送制御では、先ず、移動作業機1が予め設定された後進速度で基準方向に沿って後進するように、車速センサ33からの検出値に基づいて静油圧式無段変速装置11を後進方向に増速操作する。
【0058】
この後進によって移動作業機1が第2制御領域A2に到達したことが外部管理装置4によって検出されると、切角センサ34及び方位センサ35からの検出値に基づいて、移動作業機1が、基準位置P0と掘削位置P1とから予め設定された左折角度で機体左方向に後進移動するように左折操作する。
【0059】
この左折によって移動作業機1が第5制御領域A5に到達したことが外部管理装置4によって検出されると、切角センサ34及び方位センサ35からの検出値に基づいて、移動作業機1が、基準位置P0と掘削位置P1とから予め設定された右折角度で機体右方向に後進移動するように右折操作し、その右折後は、外部管理装置4からの位置情報や切角センサ34及び方位センサ35からの検出値に基づいて、基準位置P0とマーカ69とのx軸方向での偏差がゼロになるように必要に応じて操向する適宜操向を行いながら基準位置P0に向けて後進させる。
【0060】
この後進で移動作業機1が第1制御領域A1に到達したことが外部管理装置4によって検出されると、上記の適宜操向を継続しながら、外部管理装置4からの位置情報に基づいて、基準位置P0とマーカ69とが一致する状態で移動作業機1が停止するように、静油圧式無段変速装置11の減速操作や制動装置26の制動操作を行い、その停止後、制動装置26による制動を解除するとともに、移動作業機1が第1前進速度で基準方向に沿って高速前進するように静油圧式無段変速装置11を前進方向に増速操作する。
【0061】
この高速前進によって移動作業機1が第6制御領域A6に到達したことが外部管理装置4によって検出されると、切角センサ34及び方位センサ35からの検出値に基づいて、移動作業機1が、基準位置P0と移載位置P2とから予め設定された左折角度で機体左方向に前進移動するように左折操作する。
【0062】
この左折によって移動作業機1が第7制御領域A7に到達したことが外部管理装置4によって検出されると、切角センサ34及び方位センサ35からの検出値に基づいて、移動作業機1が、基準位置P0と移載位置P2とから予め設定された右折角度で機体右方向に前進移動するように右折操作し、その右折後は、外部管理装置4からの位置情報や切角センサ34及び方位センサ35からの検出値に基づいて、移載位置P2とマーカ69とのx軸方向での偏差がゼロになるように必要に応じて操向する適宜操向を行いながら移載位置P2に向けて前進させる。
【0063】
この前進で移動作業機8が第1制御領域A8に到達したことが外部管理装置4によって検出されると、上記の適宜操向を継続しながら、外部管理装置4からの位置情報に基づいて、移載位置P2とマーカ69とが一致する状態で移動作業機1が停止するように、静油圧式無段変速装置11の減速操作や制動装置26の制動操作を行い、移動作業機1を移載位置P2に制動停止させた後に搬送制御を終了するとともに移載制御を開始する。
【0064】
移載制御では、操作レバー43を左右に揺動操作して、バケット38内の土砂がダンプトラック7の荷台8に排出されるようにバケット38を上限位置と下限位置とにわたって上下揺動させるおろし動作を所定回数(例えば3回)行い、その後、移載制御を終了するとともに基準復帰用移動制御を開始する。
【0065】
基準復帰用移動制御では、先ず、制動装置26による制動を解除するとともに、移動作業機1が予め設定された後進速度で基準方向に沿って後進するように、車速センサ33からの検出値に基づいて静油圧式無段変速装置11を後進方向に増速操作する。
【0066】
この後進によって移動作業機1が第6制御領域A6に到達したことが外部管理装置4によって検出されると、切角センサ34及び方位センサ35からの検出値に基づいて、移動作業機1が、基準位置P0と移載位置P2とから予め設定された右折角度で機体右方向に後進移動するように右折操作する。
【0067】
この右折によって移動作業機1が第5制御領域A5に到達したことが外部管理装置4によって検出されると、切角センサ34及び方位センサ35からの検出値に基づいて、移動作業機1が、基準位置P0と移載位置P2とから予め設定された左折角度で機体左方向に後進移動するように左折操作し、その左折後は、外部管理装置4からの位置情報や切角センサ34及び方位センサ35からの検出値に基づいて、基準位置P0とマーカ69とのx軸方向での偏差がゼロになるように必要に応じて操向する適宜操向を行いながら基準位置P0に向けて後進させる。
【0068】
この後進で移動作業機1が第1制御領域A1に到達したことが外部管理装置4によって検出されると、上記の適宜操向を継続しながら、外部管理装置4からの位置情報に基づいて、基準位置P0とマーカ69とが一致する状態で移動作業機1が停止するように、静油圧式無段変速装置11の減速操作や制動装置26の制動操作を行い、その停止後、基準復帰用移動制御を終了するとともに掘削用移動制御を再開する。
【0069】
尚、図7に示すように、掘削位置P1としては複数箇所(図7ではP1a〜P1cの3箇所)が設定されており、それらの掘削位置P1a〜P1cは、掘削作業から移載作業にわたる一連の作業行程を更新するごとに、その順に適宜変更されるようになっている。
【0070】
以上の構成によると、トラクタ5の前部にフロントローダ6を装備して構成された移動作業機1に自動化装置3を搭載するとともに、作業地に、移動作業機1の位置を検出し、かつ、その位置情報などを自動化装置3との間で通信する外部管理装置4を設置することによって、移動作業機1による掘削移載作業の自動化を図れることになる。
【0071】
そして、外部管理装置4が、移動作業機1の作業領域A0を撮影するとともに画像処理を行って、作業領域A0における移動作業機1の位置を割り出すとともに、その位置情報を移動作業機1のコントローラ49に送信する一方で、そのコントローラ49が、外部管理装置4からの位置情報や、予め記憶した移動作業機1の基準方向、基準位置P0、掘削位置P1、移載位置P2、複数の制御領域A1〜A8、及び、制御プログラムなどに基づいて、移動作業機1が各位置P0〜P2や各制御領域A1〜A8などに到達するごとに、各位置P0〜P2や各制御領域A1〜A8などに応じた制御作動を行って、移動作業機1を、予め設定された推進コースに沿って推進させるとともに、各位置P0〜P2や各制御領域A1〜A8に対応した推進や作業を行わせることから、コントローラ49が、その制御作動で、作業領域A0における移動作業機1の位置を割り出しながらトラクタ5の推進とフロントローダ6の作動とを制御する場合に生じる制御遅れに起因して、移動作業機1が予め設定された推進コースから外れる不都合や、作業が遅れる不都合などが生じることを回避でき、又、外部管理装置4から移動作業機1の位置情報が送信されるごとに、その位置情報と予め設定した推進ラインとを比較して推進制御する場合に生じる蛇行を防止でき、更に、作業領域A0に埋設した誘導ラインをセンサで検出して推進させる場合に生じる、土砂などへの乗り上がりとともに機体が振れてしまい、センサによる誘導ラインの検出が不可能になって誘導ラインに沿った推進が行えなくなる、といった不都合を回避できる。
【0072】
つまり、カメラ64で撮影できる外部管理装置4の管理範囲であれば、予め設定した推進コースに沿って移動作業機1を自動推進させ、その自動推進で各位置P0〜P2や各制御領域A1〜A8に到達するごとにそれらのそれぞれに対応した推進や作業を自動的に行わせる、といった自動作業推進を良好に効率良く何度も繰り返して行わせることができる。
【0073】
又、マーカ69として発光量の大きいストロボを採用したことで、カメラ64をマーカ69からより離れた高い位置に配備して撮像範囲を広げることができるので、広い作業領域A0での自動作業推進を可能にすることができ、しかも、ストロボ69を、カメラ64の撮影周期に対する2倍の周期で、カメラ64の撮影タイミングと同期して発光させることで、太陽光の反射などにように常時発光する外乱光、及び、異なる周期や突発的に発光する外乱光との区別が可能になり、外乱光に起因した制御不良を未然に回避でき、更に、複数台の移動作業機1に異なる周期で発光するストロボ69を装備すれば、カメラ64で撮影できる外部管理装置4の管理範囲において、複数台の移動作業機1を、それぞれに応じて設定した推進コースに沿って自動推進させ、それらの自動推進でそれぞれがP0〜P2や各制御領域A1〜A8に到達するごとに、それらのそれぞれに対応した推進や作業を自動的に行わせる、といった1台の外部管理装置4による複数台の移動作業機1の自動作業推進を可能にすることができる。
【0074】
その上、掘削作業時には、掘削積み込み制御によって、エンジン回転数の設定値への低下検出と適正値への復帰検出とに基づいてトラクタ5の推進とフロントローダ6の作動とを適切に連動させたしゃくり動作と掬い動作とによる掘削積み込み状態を自動現出することから、そのときの推進抵抗の増大による不測のエンジン停止を招くことなく、機体の推進でバケット38の先端を土砂に突き進ませながら、バケット38やブーム37の揺動で土砂をバケット38内に取り込むことになる、効率良い掘削積み込み作業を行える。
【0075】
尚、コントローラ49は、外部管理装置4により移動作業機1が作業領域A0から外れたことが検出された場合や、外部管理装置4からの位置情報が予め設定した所定時間(例えば0.5秒)の間で受信しない場合などような非常事態の発生時には、図外のエンジン停止装置を作動させてエンジン10を停止させる非常停止制御を行うように構成されている。
【0076】
〔別実施形態1〕
以下、移動作業機1による耕耘作業の自動化を図る別実施形態について説明する。
【0077】
図14には、移動作業機1による耕耘作業の自動化を図る自動化システム2の全体構成が示されおり、この自動化システム2は、上述した最良の形態と同様に、移動作業機1に搭載した自動化装置3と、移動作業機1の位置検出などを外部から行う外部管理装置4とから構成されている。
【0078】
尚、外部管理装置4の構成については、最良の形態で説明したものと構成が同じであることから説明を省略するが、この別実施形態では、移動作業機1の作業領域A0として変形田を例示することから、画像処理部66には、マーカ位置計測用の絶対位置として5つの絶対位置Pa〜Peが登録されている。又、移動作業機1及び自動化装置3の構成については、上述した最良の形態のものと異なる点に関してのみ説明し、同じ点に関する説明は省略する。
【0079】
移動作業機1は、トラクタ5に、その後部に上下揺動可能に装備された左右一対のリフトアーム70とリンク機構71を介して、ロータリ耕耘装置(作業装置Wの一例)72を昇降揺動可能に連結して構成されている。
【0080】
図15及び図16に示すように、トラクタ5には、ロータリ耕耘装置72を昇降操作する昇降用操作機構73が装備されており、この昇降用操作機構73は、任意の昇降操作位置に摩擦保持可能な昇降レバー74、昇降レバー74の操作位置を検出する回転式のポテンショメータからなるレバーセンサ75、リフトアーム70の上下揺動角度を検出する回転式のポテンショメータからなるリフトアームセンサ76、リフトアーム70を揺動駆動するリフトシリンダ77、このリフトシリンダ77に対する作動油の流動状態を切り換える昇降用の電磁制御弁78、レバーセンサ75の検出に基づいて昇降用の電磁制御弁78の作動を制御するマイクロコンピュータからなる制御装置79、及び、エンジン10からの動力で駆動される油圧ポンプ80、などによって構成されている。
【0081】
ロータリ耕耘装置72は、トラクタ5の第1動力取出軸24からの動力によって、複数の耕耘爪81が左右向きの軸心周りに回転駆動されることで耕耘するように構成されている。又、ロータリ耕耘装置72には、その昇降操作に伴う後部カバー82の上下揺動角度をロータリ耕耘装置72の耕深として検出して制御装置79に出力する回転式のポテンショメータからなるカバーセンサ83が備えられている。
【0082】
制御装置79には、レバーセンサ75によって検出される昇降レバー74の操作位置と、リフトアームセンサ76によって検出されるリフトアーム70の上下揺動角度とが合致するようにロータリ耕耘装置72の昇降を制御するポジション制御や、回転式のポテンショメータからなる耕深設定器84によって設定されたロータリ耕耘装置72の耕深と、カバーセンサ83によって検出されるロータリ耕耘装置72の耕深とが合致するようにロータリ耕耘装置72の昇降を制御する自動耕深制御、などを行うための制御プログラムが記憶され、それらの制御モードの切り換えは、モード切換スイッチ85の操作で行えるようになっている。
【0083】
制御装置79は、自動耕深制御において、レバーセンサ75によって昇降レバー74の上限位置への操作が検出されると、その自動耕深制御を一時停止して、レバーセンサ75からの検出値とリフトアームセンサ76からの検出値とが合致するようにロータリ耕耘装置72を上限位置まで上昇させるとともに、補助クラッチ22を切り操作してロータリ耕耘装置72を停止させ、又、レバーセンサ75によって昇降レバー74の下限位置への操作が検出されると、補助クラッチ22を入り操作してロータリ耕耘装置72を駆動させるとともに、自動耕深制御を再開して、耕深設定器84による設定値とカバーセンサ83からの検出値とが合致するようにロータリ耕耘装置72を昇降させるように構成されている。
【0084】
トラクタ5において、第1動力取出軸24に伝動する補助変速装置23は、切換レバー86の人為操作によって、第1動力取出軸24を正転駆動させる正転伝動状態と逆転駆動させる逆転伝動状態とに切り換え可能に構成されている。
【0085】
自動化装置3は、トラクタ5を操縦する推進用操作機構47、ロータリ耕耘装置72の駆動状態を切り換える作業用操作機構48、それらの操作機構47,48や制御装置79の作動を制御するコントローラ49(制御手段の一例)、及び、外部管理装置4との双方向の無線通信を可能にする通信器50、などによって構成されている。
【0086】
推進用操作機構47は、ステアリングホイール51に連係された左右の前輪16を操向する油圧式の操向モータ87、中立復帰機構28の作用に抗して静油圧式無段変速装置11を変速操作する油圧式の変速シリンダ88、バネの付勢に抗して左右の両制動装置26を制動操作する油圧式のブレーキシリンダ89、操向モータ87に対する作動油の流動を制御する操向用の電磁制御弁90、変速シリンダ88に対する作動油の流動を制御する変速用の電磁制御弁91、ブレーキシリンダ89に対する作動油の流動を制御する制動用の電磁制御弁92、及び、第2動力取出軸25からの動力で駆動される油圧ポンプ93、などによって油圧式に構成されている。
【0087】
作業用操作機構48は、昇降用操作機構73の昇降レバー74を操作する昇降用レバーシリンダ94、切換レバー86を操作する駆動切換用レバーシリンダ95、昇降用レバーシリンダ94に対する作動油の流動を制御する昇降レバー用の電磁制御弁96、駆動切換用レバーシリンダ95に対する作動油の流動を制御する切換レバー用の電磁制御弁97、及び、推進用操作機構47と兼用する油圧ポンプ93、などによって油圧式に構成されている。
【0088】
コントローラ49は、マイクロコンピュータなどを備えて、外部管理装置4からの送信情報や、回転数センサ32、車速センサ33、切角センサ34、及び、方位センサ35からの各検出情報に基づいて、推進用操作機構47の各電磁制御弁90〜92を操作してトラクタ5の推進を制御し、又、外部管理装置4からの送信情報や回転数センサ32からの各検出情報に基づいて、制御装置79の作動を制御するとともに作業用操作機構48の各電磁制御弁96,97を操作してロータリ耕耘装置72の作動を制御するように構成されている。
【0089】
図14及び図16〜21に示すように、コントローラ49には、画像処理部66で座標変換した作業領域A0において任意に設定した移動作業機1の基準方向(y軸方向)、基準位置P0、複数の制御領域A1〜A7、及び、各制御領域A1〜A7に応じたトラクタ5の推進制御やロータリ耕耘装置72の作動制御などを行うための制御プログラム、などが記憶されている。
【0090】
その制御プログラムに基づくコントローラ49の制御作動について説明すると、コントローラ49は、移動作業機1が基準位置P0に基準方向に沿う姿勢で制動停止している状態において、外部管理装置4における入力部67の操作で作業開始指令が送信されると、先ず、予め設定された所定時間(例えば5秒)の間、トラクタ5に装備されたランプやブザーなどの報知装置を作動させて作業の開始を周囲に報知し、その所定時間の経過後に報知装置を停止させ、その後、移動作業機1を基準位置P0から第1畦際旋回制御領域A1に設定した作業開始領域A1aまで移動させる開始移動制御、移動作業機1を基準方向と直行する方向に往復移動させながら耕耘する往復耕耘制御、移動作業機1を畦際に沿って移動させながら耕耘する畦際耕耘制御、及び、移動作業機1を基準位置P0まで移動させる終了移動制御を、その順に行うように構成されている。
【0091】
開始移動制御では、先ず、制御装置79に自動耕深制御の実行を指令し、その後、制動装置26による制動を解除するとともに、移動作業機1が予め設定された前進速度で基準方向(y軸方向)に沿って直進するように、車速センサ33からの検出値に基づいて静油圧式無段変速装置11を前進方向に増速操作するとともに、切角センサ34及び方位センサ35からの検出値に基づいて、必要に応じて操向する適宜操向を行うことで、移動作業機1を第1畦際旋回制御領域A1に沿って前進させる。
【0092】
この前進によって移動作業機1が第1畦際旋回制御領域A1に設定した屈曲領域A1bに到達したことが外部管理装置4によって検出されると、切角センサ34及び方位センサ35からの検出値に基づいて、移動作業機1が、絶対位置Pa,Pc,Peから予め設定された左折角度で左折するように左折操作した後、第1畦際旋回制御領域A1に沿って前進するように必要に応じて操向する適宜操向を行いながら作業開始領域A1aに向けて前進させる。
【0093】
この前進によって移動作業機1が第1畦際旋回制御領域A1の作業開始領域A1aに到達したことが外部管理装置4によって検出されると、開始移動制御を終了するとともに往復耕耘制御を開始する。
【0094】
往復耕耘制御では、先ず、移動作業機1が、往復耕耘制御領域A2に設定した第1行程領域A2aに、予め設定した往復耕耘姿勢(x軸に沿う姿勢)で向かうように、切角センサ34及び方位センサ35からの検出値に基づいて右折操作する。
【0095】
この右折で移動作業機1が第1行程領域A2aに到達したことが外部管理装置4によって検出されると、切角センサ34及び方位センサ35からの検出値に基づいて、移動作業機1が往復耕耘姿勢で第1行程領域A2aに沿って前進する状態が維持されるように必要に応じて操向する適宜操向を行いながら、切換レバー86を逆転位置に操作するとともに、昇降レバー74を下限位置まで下降操作して制御装置79の自動耕深制御を開始させることで、各耕耘爪81を逆転(機体の進行方向に反する回転)させた逆転耕耘状態を現出する。
【0096】
この逆転耕耘状態において、回転数センサ32からの検出値(エンジン回転数)が適正値から予め設定した設定値(例えば適正値に対する60%の値)まで低下すると、逆転耕耘が所定距離にわたって行われたと判断し、切換レバー86を正転位置に操作して、各耕耘爪81を正転(機体の進行方向に準ずる回転)させた正転耕耘状態を現出する。
【0097】
この正転耕耘状態において、移動作業機1が第2畦際旋回制御領域A3に到達したことが外部管理装置4によって検出されると、昇降レバー74を上限位置まで上昇操作して自動耕深制御を一時停止させることで、ロータリ耕耘装置72を上限位置まで上昇させながら作動停止させる一方で、移動作業機1が、隣接する第2行程領域A2bに、予め設定した往復耕耘姿勢(x軸に沿う姿勢)で向かうように、切角センサ34及び方位センサ35からの検出値に基づいて右旋回操作する(枕地旋回)。
【0098】
この右旋回で移動作業機1が第2行程領域A2bに到達したことが外部管理装置4によって検出されると、切角センサ34及び方位センサ35からの検出値に基づいて、移動作業機1が往復耕耘姿勢で第2行程領域A2bに沿って前進する状態が維持されるように必要に応じて操向する適宜操向を行いながら、切換レバー86を逆転位置に操作するとともに、昇降レバー74を下限位置まで下降操作して制御装置79の自動耕深制御を開始させることで、逆転耕耘状態を現出し、この逆転耕耘状態において、回転数センサ32からの検出値が適正値から設定値まで低下すると、切換レバー86を正転位置に操作して正転耕耘状態を現出する。
【0099】
この正転耕耘状態において、移動作業機1が第1畦際旋回制御領域A1に到達したことが外部管理装置4によって検出されると、昇降レバー74を上限位置まで上昇操作して自動耕深制御を一時停止させることで、ロータリ耕耘装置72を上限位置まで上昇させながら作動停止させる一方で、移動作業機1が、隣接する第3行程領域A2cに、予め設定した往復耕耘姿勢(x軸に沿う姿勢)で向かうように、切角センサ34及び方位センサ35からの検出値に基づいて左旋回操作する(枕地旋回)。
【0100】
この左旋回後は、外部管理装置4からの位置情報や、回転数センサ32、切角センサ34、及び方位センサ35からの各検出値に基づいた、上記のような往路における適宜操向を行いながらの逆転耕耘状態と正転耕耘状態の現出、右旋回操作、復路における適宜操向を行いながらの逆転耕耘状態と正転耕耘状態の現出、及び左旋回操作、をその順に繰り返して行う。
【0101】
そして、この往復耕耘制御領域A2の最終工程領域A2fでの正転耕耘状態において、移動作業機1が第3畦際旋回制御領域A4に到達したことが外部管理装置4によって検出されると、往復耕耘制御を終了するとともに畦際耕耘制御を開始する。
【0102】
畦際耕耘制御では、先ず、正転耕耘状態を維持しながら、移動作業機1が、第1畦際直進制御領域A5に、予め設定した第1畦際直進制御領域A5に沿う姿勢(x軸に沿う姿勢)で向かうように、切角センサ34及び方位センサ35からの検出値に基づいて左旋回操作し、この左旋回後は、第1畦際直進制御領域A5に沿って前進するように必要に応じて操向する適宜操向を行う。
【0103】
この前進によって、移動作業機1が、第2畦際旋回制御領域A3に到達したことが外部管理装置4によって検出されると、正転耕耘状態を維持しながら、移動作業機1が、予め設定した第2畦際旋回制御領域A3に沿う姿勢(y軸に沿う姿勢)となるように、切角センサ34及び方位センサ35からの検出値に基づいて左折操作し、この左折後は、第2畦際旋回制御領域A3に沿って前進するように必要に応じて操向する適宜操向を行う。
【0104】
この前進によって、移動作業機1が、第2畦際直進制御領域A6に到達したことが外部管理装置4によって検出されると、正転耕耘状態を維持しながら、移動作業機1が、予め設定した第2畦際直進制御領域A6に沿う姿勢(x軸に沿う姿勢)となるように、切角センサ34及び方位センサ35からの検出値に基づいて左折操作し、この左折後は、第2畦際直進制御領域A6に沿って前進するように必要に応じて操向する適宜操向を行う。
【0105】
この前進によって移動作業機1が第1際旋回制御領域A1に到達したことが外部管理装置4によって検出されると、正転耕耘状態を維持しながら、移動作業機1が、予め設定した第1畦際旋回制御領域A1に沿う姿勢(y軸に沿う姿勢)となるように、切角センサ34及び方位センサ35からの検出値に基づいて左折操作し、この左折後は、第1畦際旋回制御領域A1に沿って前進するように必要に応じて操向する適宜操向を行う。
【0106】
この前進によって移動作業機1が第1畦際旋回制御領域A1に設定した屈曲領域A1bに到達したことが外部管理装置4によって検出されると、切角センサ34及び方位センサ35からの検出値に基づいて、移動作業機1が、絶対位置Pa,Pc,Peから予め設定された右折角度で右折するように右折操作した後、第1畦際旋回制御領域A1に沿って前進するように必要に応じて操向する適宜操向を行いながら終了移動制御領域A7に向けて前進させる。
【0107】
この前進によって移動作業機1が終了移動制御領域A7に到達したことが外部管理装置4によって検出されると、適宜操向による前進状態を維持しながら、昇降レバー74を上限位置まで上昇操作して自動耕深制御を終了させることで、ロータリ耕耘装置72を上限位置まで上昇させるとともに作動停止させて畦際耕耘制御を終了するとともに終了移動制御を開始する。
【0108】
終了移動制御では、基準位置P0に向けて移動作業機1を前進させながら、基準位置P0とマーカ69とが一致する状態で移動作業機1が停止するように、静油圧式無段変速装置11の減速操作や制動装置26の制動操作を行って、その基準位置P0にて移動作業機1を制動停止させるとともに終了移動制御を終了する。
【0109】
以上の構成によると、トラクタ5の後部にロータリ耕耘装置72を装備して構成された移動作業機1に自動化装置3を搭載するとともに、作業地に、移動作業機1の位置を検出し、かつ、その位置情報などを自動化装置3との間で通信する外部管理装置4を設置することによって、移動作業機1による耕耘作業の自動化を図れることになる。
【0110】
そして、外部管理装置4が、移動作業機1の作業領域A0を撮影するとともに画像処理を行って、作業領域A0における移動作業機1の位置を割り出すとともに、その位置情報を移動作業機1のコントローラ49に送信する一方で、そのコントローラ49が、外部管理装置4からの位置情報や、予め記憶した移動作業機1の基準位置P0、基準方向、複数の制御領域A1〜A6、及び、制御プログラムなどに基づいて、移動作業機1が基準位置P0や各制御領域A1〜A6などに到達するごとに、基準位置P0や各制御領域A1〜A6などに応じた制御作動を行って、移動作業機1を、予め設定された推進コースに沿って推進させるとともに、各制御領域A1〜A6に対応した作業を行わせることから、コントローラ49が、その制御作動で、作業領域A0における移動作業機1の位置を割り出しながらトラクタ5の推進とロータリ耕耘装置72の作動とを制御する場合に生じる制御遅れに起因して、移動作業機1が予め設定された推進コースから外れる不都合や、作業が遅れる不都合などが生じることを回避でき、又、外部管理装置4から移動作業機1の位置情報が送信されるごとに、その位置情報と予め設定した推進ラインとを比較して推進制御する場合に生じる蛇行を防止できる。
【0111】
つまり、カメラ64で撮影できる外部管理装置4の管理範囲であれば、予め設定した推進コースに沿って移動作業機1を自動推進させ、その自動推進で各制御領域A1〜A6に到達するごとにそれらに対応した推進や作業を自動的に行わせる、といった自動作業推進を良好に効率良く行わせることができる。
【0112】
又、マーカ69として発光量の大きいストロボ69を採用したことで、カメラ64をマーカ69からより離れた高い位置に配備して撮像範囲を広げることができるので、広い作業領域A0での自動作業推進を可能にすることができ、しかも、ストロボ69を、カメラ64の撮影周期に対する2倍の周期で、カメラ64の撮影タイミングと同期して発光させることで、太陽光の反射などにように常時発光する外乱光、及び、異なる周期や突発的に発光する外乱光との区別が可能になり、外乱光に起因した制御不良を未然に回避でき、更に、複数の圃場の各移動作業機1に異なる周期で発光するストロボ69を装備すれば、カメラ64で撮影できる外部管理装置4の管理範囲において、各圃場の移動作業機1を、それぞれの圃場に応じて設定した推進コースに沿って自動推進させ、それらの自動推進でそれぞれが対応する圃場の基準位置P0や各制御領域A1〜A5に到達するごとに、それらのそれぞれに対応した推進や作業を自動的に行わせる、といった1台の外部管理装置4による複数圃場での各移動作業機1の自動作業推進を可能にすることができる。
【0113】
その上、往復耕耘制御による耕耘作業においては、先ず、畦際での耕耘作業の開始時に逆転耕耘状態を自動現出し、その逆転耕耘状態を所定距離にわたって行うことでエンジン回転数が設定値まで低下すると、その低下に基づいて、逆転耕耘状態から正転耕耘状態に切り換える正転切り換え制御を開始して推進抵抗を軽減することから、圃場泥土の圃場外への拡散や畦際への土の偏りを抑制する良好な耕耘作業を行いながら、過負荷に起因して不測にエンジン10が停止することによる作業効率の低下を未然に回避できる。
【0114】
〔別実施形態2〕
以下、移動作業機1による作業の半自動化を図る別実施形態について説明する。
【0115】
図22及び図23に示すように、この半自動化は、トラクタ5の前部にフロントローダ6(作業装置Wの一例)を装備して構成された移動作業機1に、半自動化装置98を搭載することによって構成されている。
【0116】
トラクタ5及びフロントローダ6の構成については、前述した最良の形態のものと略同じ構成であることから、前述した最良の形態のものと異なる点に関してのみ説明し、同じ点に関する説明は省略する。尚、このトラクタ5には方位センサ35が、フロントローダ6にはブームセンサ及びバケットセンサが装備されていない。
【0117】
トラクタ5には、変速ペダル29による静油圧式無段変速装置11の前進増速操作を許容しながら、静油圧式無段変速装置11を速度設定レバー99で設定した所望の前進変速状態に維持するように静油圧式無段変速装置11に操作連係されるとともに、左右いずれか一方の制動装置26が制動する制動旋回時には、静油圧式無段変速装置11を所望の前進変速状態に維持する状態が継続され、左右の両制動装置26が制動する制動減速時には、静油圧式無段変速装置11を所望の前進変速状態に維持する状態が解除されるように、左右のブレーキペダル31から左右の制動装置26にわたる制動操作系に解除機構100を介して操作連係された速度維持装置101が装備されている。
【0118】
つまり、このトラクタ5は、速度設定レバー99を前進増速領域における所望の操作位置に位置させることで、その速度設定レバー99の操作位置に応じた所定の前進変速状態に静油圧式無段変速装置11を維持した前進定速状態を現出でき、この前進定速状態において、左右いずれか一方のブレーキペダル31を踏み込み操作すると、その操作量に応じた左右一方の制動装置26の制動力で左右一方の後輪20を制動する制動旋回状態を現出でき、又、左右の両ブレーキペダル31を踏み込み操作すると、前進定速状態を解除するとともに、左右のブレーキペダル31の操作量に応じた左右の制動装置26の制動力で左右の後輪20を制動する制動減速状態を現出できるように構成されている。
【0119】
図22及び図24に示すように、半自動化装置98は、トラクタ5を操縦する推進用操作機構47、フロントローダ6を操縦する作業用操作機構48、及び、それらの操作機構の作動を制御するコントローラ49(制御手段の一例)、などによって構成されている。
【0120】
推進用操作機構47は、バネの付勢に抗して主クラッチ9を切り操作する空気圧式のクラッチシリンダ102、バネの付勢に抗して左右の両制動装置26を制動操作する空気圧式のブレーキシリンダ54、クラッチシリンダ102に対する空気の流動を制御するクラッチ用の電磁制御弁103、ブレーキシリンダ54に対する空気の流動を制御する制動用の電磁制御弁57、第1動力取出軸24からの動力で駆動されるコンプレッサ58、及び、空気圧の変動を抑制する空気タンク59、などによって空気圧式に構成されている。尚、作業用操作機構48の構成については、前述した最良の形態のものと同じ構成であることから説明は省略する。
【0121】
コントローラ49は、マイクロコンピュータなどを備えて、回転数センサ32からの検出情報に基づいて、推進用操作機構47の各電磁制御弁57,103を操作してトラクタ5の推進を制御するとともに、作業用操作機構48の各電磁制御弁62,63を操作してフロントローダ6の作動を制御するように構成されている。
【0122】
図25及び図26に示すように、コントローラ49には、回転数センサ32からの検出情報に基づいてトラクタ5の推進制御やフロントローダ6の作動制御を行うための制御プログラムなどが記憶されている。
【0123】
その制御プログラムに基づくコントローラ49の制御作動について説明すると、コントローラ49は、操縦者による速度設定レバー99の操作で所定の前進速度で推進するように設定され、又、操縦者による操作レバー43の操作でトラクタ5に対するバケット38の高さ位置及び上下角度が掘削作業開始用の位置に設定された状態において、回転数センサ32からの検出値(エンジン回転数)が適正値から予め設定した第1設定値(例えば適正値に対する80%の値)まで低下すると、この推進でバケット38の先端が掘削対象の土砂に適切に突っ込んだ状態であると判断して掘削積み込み制御を開始する。
【0124】
掘削積み込み制御では、先ず、主クラッチ9を切り操作して移動作業機1を推進停止させ、この推進停止によって回転数センサ32からの検出値が適正値まで回復すると、主クラッチ9を入り操作して所定の前進速度での移動作業機1の推進を再開させるとともに、操作レバー43を左方に揺動操作してバケット38を上昇揺動させる状態を現出して、バケット38の先端がトラクタ5の推進で土砂に突き進みながらバケット38の上昇揺動で土砂を掻き取るようになるしゃくり動作を開始させる。
【0125】
このしゃくり動作で回転数センサ32からの検出値が適正値から予め設定した第2設定値(例えば適正値に対する70%の値)まで低下すると、主クラッチ9を再び切り操作するとともに操作レバー43を中立復帰させてしゃくり動作を停止し、回転数センサ32からの検出値を適正値まで回復させる。
【0126】
その後、回転数センサ32からの検出値の適正値への回復によるしゃくり動作の再開と、回転数センサ32からの検出値の第2設定値への低下によるしゃくり動作の停止とを、その順に予め設定された回数(例えば2回)ずつ行い、しゃくり動作の開始とともにカウントしたしゃくり動作の回数が予め設定された回数(例えば3回)に達すると、そのときのしゃくり動作の停止で回転数センサ32からの検出値が適正値まで回復するのに伴って、主クラッチ9を入り操作して移動作業機1を所定の前進速度で推進させる状態を現出するとともに、予め設定した所定時間(例えば2秒)の間、操作レバー43を左方に揺動操作してバケット38を上昇揺動させる状態を現出し、かつ、それらの開始から所定時間(例えば1秒)の経過後に、予め設定した所定時間(例えば2.5秒)の間、操作レバー43を上方に揺動操作してブーム37を上昇揺動させる状態を現出して、バケット38の先端がトラクタ5の推進で土砂に突き進みながらバケット38及びブーム37の上昇揺動で土砂をバケット38内に掬い取るようになる掬い動作を行い、この掬い動作で回転数センサ32からの検出値が適正値から予め設定した第3設定値(例えば適正値に対する60%の値)まで低下するのに伴って、左右の両ブレーキペダル31を制動操作して、速度維持装置101による所望の前進変速状態での静油圧式無段変速装置11の維持を解除して静油圧式無段変速装置11を中立復帰させ、又、各所定時間の経過とともにバケット38及びブーム37の上昇揺動を停止させて掬い動作を停止し、掘削積み込み制御を終了する。
【0127】
以上の構成によると、トラクタ5の前部にフロントローダ6を装備して構成された移動作業機1に半自動化装置98を搭載することによって、操縦者は、バケット38の先端が土砂に突っ込むように移動作業機1を前進推進させるようにすれば、バケット38の先端が土砂に突っ込んだ際の推進抵抗でエンジン回転数が適正値から第1設定値に低下するのに伴って、コントローラ49による掘削積み込み制御が開始されて、過負荷による不測のエンジン停止を回避しながら、トラクタ5の推進とフロントローダ6の作動とを適切に連動させた土砂のバケット38内への取り込みを効率良く行えるしゃくり動作と掬い動作による掘削積み込み状態を自動現出することができ、その結果、操縦者の負担を効果的に軽減しながら、効率の良い掘削積み込み作業を、操縦者の熟練度に関係なく行えることになる。
【0128】
〔他の別実施形態〕
以下、本発明における他の別実施形態を列記する。
【0129】
〔1〕移動作業機1としてはホイールローダなどであってもよく、又、主変速装置としてギヤ式変速装置を装備するものであってもよい。
【0130】
〔2〕回転数センサ32(検出手段Sの一例)の検出値に代えて、車速センサ33(検出手段Sの一例)の検出値が適正値(設定速度)から設定値(零速)に低下するのに伴って、制御手段49が、所定の制御作動(掘削積み込み制御や正転耕耘制御など)を開始して所定の作業状態(掘削積み込み状態や正転耕耘状態など)を現出するように構成してもよい。
【0131】
〔3〕制御手段49が、所定の制御作動(掘削積み込み制御や正転耕耘制御など)を開始する設定値の値、及び、しゃくり動作や掬い動作を停止する設定値の値は、エンジン10の能力などに応じて種々の変更が可能である。
【0132】
〔4〕最良の形態においては、掘削積み込み制御の開始に伴って、主クラッチ9の切り操作、又は、主クラッチ9の切り操作と静油圧式無段変速装置11の中立復帰操作とで、検出手段Sからの検出値の回復を図るようにしてもよい。
【0133】
〔5〕掘削積み込み制御においては、検出手段Sの検出値が適正値に回復するまでの間、主クラッチ9の切り状態、又は、静油圧式無段変速装置11の中立状態を維持する構成に代えて、予め設定した所定時間(例えばバケット38先端の突っ込みによる制御作動の開始時は3秒、しゃくり動作後は1秒)の間、主クラッチ9の切り状態、又は、静油圧式無段変速装置11の中立状態を維持することで、検出手段Sからの検出値の回復を図るようにしてもよい。
【0134】
〔6〕掘削積み込み制御においては、検出手段Sの検出値が第2設定値又は第3設定値に低下するまでの間、しゃくり動作や掬い動作を行う構成に代えて、予め設定した所定時間(例えばしゃくり動作は1秒、掬い動作は2秒)の間、しゃくり動作や掬い動作を行うように構成してもよい。
【0135】
〔7〕バケット38の先端を掘削対象に突っ込ませる際の推進速度の設定は、掘削対象の種類や硬さなどに応じて種々の変更が可能である。
【0136】
〔8〕掘削積み込み制御で行われるしゃくり動作や掬い動作の回数、及び、それらの動作における推進速度の設定は、掘削対象の種類や硬さなどに応じて種々の変更が可能である。
【0137】
〔9〕移動作業機1として、例えば後輪20のみを駆動する2輪駆動型に構成されたものを採用してもよい。ちなみに、この場合には、掘削積み込み制御を行う前の掘削用移動制御の開始時(トラクタ5の推進でバケット38の先端が掘削対象物に到達する前の段階の一例)に行われる、トラクタ5に対するバケット38の高さ位置及び上下角度を掘削作業開始用の適正位置及び適正角度にするための制御作動において、そのときの適正角度を、バケット38の先端を掘削対象物に突入させた際に、後輪20が浮き上がるような機体5の姿勢の変化を防止できる角度に設定すれば、バケット38の先端を掘削対象物に突入させた際に、後輪20が浮き上がって、バケット38突入時の推進抵抗による動力の低下を検出手段Sによって検出することができなくなり、その検出に基づく制御手段49による所定の制御作動としての掘削積み込み制御が開始されなくなって、機体5の推進とフロントローダ6の作動とを適切に連動させた掘削積み込み状態が現出されなくなる、といった不都合の発生を未然に回避できることになる。
【0138】
〔10〕自動化装置3や半自動化装置98における推進用操作機構47や作業用操作機構48としては、油圧シリンダなどの油圧アクチュエータを備える油圧式、空気圧シリンダなどの空気圧アクチュエータを備える空気圧式、あるいは、電動シリンダなどの電動アクチュエータを備える電動式のいずれに構成されたものであってもよく、又、油圧式、空気圧式、及び電動式のいずれか又は全てが混在する状態に構成されたものであってもよい。
【0139】
〔11〕外部管理装置4としては、GPS(全地球測位システム)を利用して移動作業機1の位置を計測するように構成されたものであってもよく、GPSを利用して移動作業機1の位置を計測する計測装置を移動作業機1に搭載するようにしてもよい。
【0140】
〔12〕外部管理装置4としては、複数台のカメラ64を備えてより広範囲の作業領域A0での移動作業機1の位置管理を行えるように構成されたものであってもよい。
【0141】
〔13〕マーカ69としては、画像処理による位置計測が可能なものであれば、ストロボ以外の例えば発光ダイオードなどを採用するようにしてもよい。
【0142】
〔14〕マーカ69を移動作業機1の前後に所定間隔を隔てて並設し、それらの位置から外部管理装置4が移動作業機1の方位を割り出すように構成してもよい。
【0143】
〔15〕例えば赤外線センサなどにより移動作業機1のコース外への推進を検出するのに伴って移動作業機1を緊急停止させる緊急停止装置を装備するようにしてもよい。
【0144】
〔16〕ストロボ69の発光が常にカメラ64に向かうように、機体の旋回操作とともにストロボの回動操作をも行うように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】自動化システムの全体構成を示す概略平面図
【図2】自動化システムの構成を示す概略側面図
【図3】移動作業機の側面図
【図4】機体の構成を示す概略図
【図5】自動化装置の構成を示すブロック図
【図6】カメラとストロボの作動タイミングを示す図
【図7】作業領域と移動作業機の関係を示す平面図
【図8】掘削積み込み制御での動作タイミングを示す図
【図9】自動作業推進制御のフローチャート
【図10】掘削用移動制御のフローチャート
【図11】掘削積み込み制御のフローチャート
【図12】搬送制御のフローチャート
【図13】移載制御と基準復帰用移動制御のフローチャート
【図14】別実施例1での自動化システムの全体構成を示す概略平面図
【図15】別実施例1での移動作業機の後部側斜視図
【図16】別実施例1での自動化装置の構成を示すブロック図
【図17】別実施例1での自動作業推進制御のフローチャート
【図18】別実施例1での開始移動制御のフローチャート
【図19】別実施例1での往復耕耘制御のフローチャート
【図20】別実施例1での畦際耕耘制御のフローチャート
【図21】別実施例1での終了移動制御のフローチャート
【図22】別実施例2での移動作業機の側面図
【図23】別実施例2での機体の構成を示す概略図
【図24】別実施例2での半自動化装置の構成を示すブロック図
【図25】別実施例2での掘削積み込み制御での動作タイミングを示す図
【図26】別実施例2での掘削用移動制御のフローチャート
【符号の説明】
【0146】
5 機体
6 フロントローダ
37 ブーム
38 バケット
49 制御手段
S 検出手段
W 作業装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動作業機の自動化構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、作業装置の一例であるフロントローダを備えた移動作業機においては、操縦者が、機体の推進でバケットの先端を掘削対象物に突入させる操作を行いながら、エンジン音などから推進抵抗を判断し、その判断に基づいた適切なタイミングで、バケットの先端が掘削対象物に突き進むように機体を推進させながら、バケットで掘削対象物を掬い取るようにバケット又はブームを上昇揺動させる複合操作や、機体を停止させながらバケット及びブームを作動停止させる複合操作などを行って、バケットの先端を掘削対象物に突き進ませながらバケットで掘削して掘削物をバケット内に掬い入れる掘削積み込み状態を現出することで、過負荷による不測のエンジン停止などを招くことなく、フロントローダの作動のみで掘削する場合に比較して掘削物を効率良くバケット内に掬い入れられるようになっている。
【0003】
しかしながら、上記のように作業負荷を判断しながら複合操作を適切なタイミングで良好に行うには、操縦者にかなりの熟練や負担を要することになり、その結果、操縦者によって、又、作業時間に比例して増大する操縦者の疲労度によって、作業効率が著しく変化する、あるいは、操縦者の疲労度が高くなるなどの不都合を招くことになる。
【0004】
そこで、例えば、上記のようなフロントローダを備えた移動作業機においては、操縦者が、自動掘削開始位置まで移動作業機を推進させた後、自動掘削の開始をコントローラに指示すると、予め記憶した自動掘削モードでブーム及びバケットを作動させる自動掘削が行われるように構成して、操縦者の負担軽減や作業効率の向上などを図るようにしたものある(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−96601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の構成では、フロントローダによる掘削は自動で行えるものの、その自動掘削を行うためには、操縦者が、自動掘削の開始をコントローラに指示する必要があることから、操縦者の負担を軽減する上において改善の余地がある。
【0006】
又、効率の良い掘削作業を行うためには、過負荷を招くことなく、機体の推進とフロントローダの作動とを適切に連動させた掘削積み込み状態を現出して、掘削物のバケット内への掬い取り量を多くする必要があるが、上記の構成では、フロントローダによる掘削のみが自動で行われることから、操縦者は、推進抵抗やコントローラの制御作動によるフロントローダの作動などを的確に判断して、機体を適切に操縦する必要があり、結果、操縦者にかなりの熟練や負担を要することになる。
【0007】
本発明の目的は、作業時における操縦者の負担を効果的に軽減するとともに、操縦者の熟練度に関係なく効率良く作業を行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための手段として、本発明では、推進抵抗による変動を検出する検出手段と、作業装置の作動を制御する制御手段とを備え、前記検出手段からの検出値が適正値から設定値に低下するのに伴って、前記制御手段が、所定の制御作動を開始して所定の作業状態を現出するように構成してある移動作業機の自動化構造。
【0009】
この構成によると、推進抵抗で検出手段からの検出値が適正値から所定値まで低下すると、制御手段による所定の制御作動によって、作業装置を作動させた所定の作業状態が自動現出されることになる。
【0010】
例えば、作業装置としてフロントローダを備える場合には、推進抵抗で検出手段からの検出値が適正値から所定値まで低下する状態を、機体の推進でバケットの先端が掘削対象物に対して適切に突入した状態とし、又、制御手段による所定の制御作動で、バケットやブームが上昇揺動して掘削対象物を掘削する掘削状態が現出されるように構成すれば、機体の推進でバケットの先端を掘削対象物に対して適切に突入させる推進操作を行うだけで、フロントローダの掘削状態が自動現出されることになり、結果、機体の推進でバケットの先端を掘削対象物に突き進ませながらバケットで掘削して掘削物をバケット内に掬い入れる、といった機体の推進とフロントローダの作動とを適切に連動させた掘削積み込み状態を現出できる。
【0011】
又、作業装置として耕耘爪の回転で耕耘するロータリ耕耘装置を備える場合には、推進抵抗で検出手段からの検出値が適正値から所定値まで低下する状態を、畦際での耕耘作業の開始時に、圃場外への圃場泥土の拡散や畦際への土の偏りを抑制するために耕耘爪を逆転(機体の進行方向に反する回転)させた推進抵抗の大きい逆転耕耘を所定距離にわたって行った状態とし、又、制御手段による所定の制御作動で、耕耘爪が正転(機体の進行方向に準ずる回転)する推進抵抗の小さい正転耕耘状態が現出されるように構成すれば、畦際での耕耘作業の開始時にロータリ耕耘装置の逆転耕耘状態を現出するだけで、畦際での所定距離にわたる逆転耕耘が行われた後にはロータリ耕耘装置の正転耕耘状態が自動現出されることになる。
【0012】
従って、フロントローダの掘削状態やロータリ耕耘装置の正転耕耘状態などの所定の作業状態を現出するための特別な操作を操縦者が行わなくても、推進抵抗で検出手段からの検出値が適正値から所定値まで低下することによって所定の作業状態を自動現出することができるのであり、その結果、作業時における操縦者の負担を効果的に軽減できるようになり、又、所定の作業状態を現出するための操作のタイミングがずれることに起因した過負荷による不測のエンジン停止などを未然に回避できることから、操縦者の熟練度に関係なく効率良く作業を行える。
【0013】
しかも、検出手段は、エンジン回転数や車速を検出するために移動作業機に本来より装備されている回転センサなどを流用して構成できることから、専用の検出手段を設ける場合に比較して構成の簡素化やコストの削減を図れる。
【0014】
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、前記制御手段による機体の推進制御が可能となるように構成し、前記制御手段による前記所定の制御作動で、前記機体の推進と前記作業装置の作動とを制御して、前記所定の作業状態として、前記機体の推進と前記作業装置の作動とを連動させた作業状態を現出するように構成してある。
【0015】
この構成によると、推進抵抗で検出手段からの検出値が適正値から所定値まで低下すると、制御手段による所定の制御作動によって、機体の推進と作業装置の作動とを連動させた所定の作業状態が自動現出されることになる。
【0016】
つまり、機体の推進と作業装置の作動とを適切に連動させる必要のある作業を行う場合において、制御手段による所定の制御作動によって、作業装置の作動のみが制御されるように構成すると、操縦者が、推進抵抗や制御手段で制御される作業装置の作動などを的確に判断して機体を操縦する必要があることから、操縦者にかなりの熟練や負担を要するのであるが、上記の構成では、制御手段による所定の制御作動によって、操縦者に機体の操縦を強いることなく、又、操縦者の熟練度に関係なく、機体の推進と作業装置の作動とを適切に連動させた作業状態を現出できることになる。
【0017】
従って、操縦者の負担を効果的に軽減しながら、過負荷による不測のエンジン停止や推進抵抗の過剰抑制による作業効率の低下、あるいは、機体の推進と作業装置の作動とがずれることによる不具合の発生などを招くことのない、機体の推進と作業装置の作動とを適切に連動させた効率の良い良好な作業を、操縦者の熟練度に関係なく行える。
【0018】
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、前記作業装置として、上下方向に揺動操作可能なバケットとブームとを備えたフロントローダを装備し、前記機体の推進で、前記バケットの先端が前記掘削対象物に突入した際の推進抵抗で前記検出手段からの検出値が適正値から設定値に低下し、その低下に伴って開始される前記所定の制御作動で、その制御作動の開始とともに推進動力の伝達を一時的に停止し、その一時停止後、前記所定の作業状態として、前記バケットの先端が前記機体の推進で掘削対象物に突き進みながら前記バケットの上昇揺動で掘削対象物を掻き取るしゃくり動作と、前記バケットの先端が前記機体の推進で掘削対象物に突き進みながら前記ブームの上昇揺動で掘削対象物を掬い取る掬い動作とが行われるように、前記機体の推進と前記フロントローダの作動とを連動させた掘削積み込み状態を現出するように構成してある。
【0019】
この構成によると、フロントローダによる掘削作業を行う場合には、操縦者が機体を操縦してバケットの先端を掘削対象物に突入させると、その突入時の推進抵抗で検出手段からの検出値が適正値から設定値に低下するのに伴って、制御手段が所定の制御作動を開始し、その制御作動によって、先ず、推進動力の伝達を一時的に停止して設定値まで低下した動力の回復を図り、その後、しゃくり動作と掬い動作とが良好に行われるように機体の推進とフロントローダの作動とを適切に連動させた掘削積み込み状態が自動現出されることになる。
【0020】
その結果、制御手段による所定の制御作動で、その制御作動の開始とともに掘削積み込み状態が現出されるように構成した場合に招き易くなる過負荷に起因した不測のエンジン停止をより確実に回避できるようになり、又、掘削作業時には、バケットの先端を掘削対象物に突き進ませながら、バケットの上昇揺動で掘削対象物を掻き取る、あるいは、ブームの上昇揺動で掘削対象物を掬い取る、といった機体の推進とフロントローダの作動とを適切に連動させたしゃくり動作や掬い動作による掘削作業を確実かつ良好に行えることから、機体を停止させた状態でフロントローダのみを作動させる場合よりもバケット内に取り込まれる掘削物量が増大するとともに、機体の推進とフロントローダの作動とがずれることに起因したバケット内に取り込まれる掘削物量の低下を防止でき、更に、制御手段による所定の制御作動でフロントローダの作動のみが制御されるように構成した場合に要する掘削作業時における操縦者による機体の操縦などを不要にできる。
【0021】
従って、操縦者の負担を効果的に軽減しながら、過負荷による不測のエンジン停止をより確実に回避できるとともに、機体の推進とフロントローダの作動とを適切に連動させた効率の良い掘削作業を、操縦者の熟練度に関係なく行える。
【0022】
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、前記掘削積み込み状態では、複数回の前記しゃくり動作を間欠的に行った後に前記掬い動作を行うように構成してある請求項3に記載の移動作業機の自動化構造。
【0023】
この構成によると、掘削作業を行う場合に、操縦者が機体を操縦してバケットの先端を掘削対象物に突入させると、その突入時の推進抵抗で検出手段からの検出値が適正値から設定値に低下するのに伴って、制御手段が所定の制御作動を開始し、その制御作動によって、先ず、推進動力の伝達を一時的に停止することで設定値まで低下した動力の回復を図り、その後の掘削積み込み状態では、複数回のしゃくり動作を、その動作を行った際の推進抵抗で低下する動力の回復を図りながら行うことになる。
【0024】
つまり、掘削積み込み状態において1回のしゃくり動作と掬い動作とを行うように構成した場合には、バケットに掘削物を十分に積み込む上において複数回の掘削積み込み状態を現出する必要があり、そのためには、掘削積み込み状態を現出するたびに、操縦者が機体を操縦して、バケットの先端を掘削対象物に突入させて、検出手段からの検出値を適正値から設定値に低下させる必要があることから、操縦者の負担を軽減する上において改善の余地があり、又、その負担を軽減するために、1回のしゃくり動作と掬い動作とで積み込まれる掘削物量の増大を図るようにすると、しゃくり時間が長くなることなどに起因した過負荷による不測のエンジン停止を招き易くなる虞があるが、上記の構成では、操縦者による機体の操縦で、掘削対象物にバケットの先端を突入させて掘削積み込み状態を現出すると、その掘削積み込み状態では、複数回のしゃくり動作が、その動作を行った際の推進抵抗による動力低下の回復を図りながら自動的に行われることになり、結果、機体の操縦による操縦者の負担を軽減しながら、バケットへの掘削物の積み込み量を増大させることができる。
【0025】
従って、掘削積み込み状態では、制御手段による所定の制御作動で、複数回のしゃくり動作を間欠的に行った後に掬い動作を行うようにしたことで、操縦者の負担を効果的に軽減し、過負荷による不測のエンジン停止を確実に回避しながら、バケットに対する掘削物の十分な積み込みを確実に行える効率の良い掘削作業を、操縦者の熟練度に関係なく行える。
【0026】
本発明をより好適なものにするための手段の一つとして、前記制御手段が、前記機体の推進で前記バケットの先端が掘削対象物に到達する前の段階で、前記機体に対する前記バケットの上下角度が、前記機体の推進で前記バケットの先端が掘削対象物に突入した際における前記機体の姿勢の変化を防止する所定の適正角度となるように、前記フロントローダの作動を制御するように構成してある。
【0027】
この構成によると、バケットの先端を掘削対象物に突入させた際に、例えば、駆動輪が浮き上がるような機体の姿勢変化が生じることを防止でき、これによって、その姿勢変化が生じることによって、検出手段により、バケット突入時の推進抵抗による動力の低下を検出することができなくなり、その検出に基づく制御手段による所定の制御作動が開始されなくなって、機体の推進とフロントローダの作動とを適切に連動させた掘削積み込み状態が現出されなくなる不都合を未然に回避できる。
【0028】
従って、機体の推進でバケットの先端を掘削対象物に突入させることで、操縦者の負担を効果的に軽減しながら、過負荷による不測のエンジン停止を回避できるとともに、機体の推進とフロントローダの作動とを適切に連動させた効率の良い掘削作業を確実に行える作業性に優れたものにできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1及び図2には、移動作業機1による作業の自動化を図る自動化システム2の全体構成が示されおり、この自動化システム2は、移動作業機1に搭載した自動化装置3と、移動作業機1の位置検出などを外部から行う外部管理装置4とから構成されている。
【0030】
図1〜4に示すように、移動作業機1は、トラクタ5の前部にフロントローダ(作業装置Wの一例)6を装備して構成され、その作業として、土砂(掘削対象物の一例)を掘削する掘削作業と、掘削した土砂を掘削位置P1から離れたダンプトラック7に対する移載位置P2まで搬送する搬送作業と、搬送した土砂をダンプトラック7の荷台8に移載する移載作業とを行う。
【0031】
トラクタ5は、主クラッチ9を介して伝達されるエンジン10からの動力を、推進用の主変速装置として機能する静油圧式無段変速装置(HST)11と推進用の副変速装置として機能するギヤ式変速装置12とで変速し、そのギヤ式変速装置12の前輪用出力軸13から取り出した変速後の動力を、前輪駆動用の動力として前輪用変速装置14や前輪用差動装置15などを介して左右の前輪16に伝達し、かつ、ギヤ式変速装置12の後輪用出力軸17から取り出した変速後の動力を、後輪駆動用の動力として後輪用差動装置18や左右の後車軸19などを介して左右の後輪20に伝達して、左右の前輪16及び後輪20を駆動する4輪駆動型に構成され、又、静油圧式無段変速装置11のポンプ軸21からの非変速動力を、補助クラッチ22や補助変速装置23などを介して第1動力取出軸24と第2動力取出軸25とに伝達して、予備動力として第1動力取出軸24及び第2動力取出軸25からの取り出しが可能となるように構成され、又、後輪用差動装置18の左右には、対応する左右の後車軸19に制動する制動装置26が配備されている。
【0032】
主クラッチ9は、図外のバネによる付勢で、エンジン10からの動力を静油圧式無段変速装置11に伝達する入り状態に復帰し、そのバネの付勢に抗したクラッチペダル27の踏み込み操作で、エンジン10からの動力の静油圧式無段変速装置11への伝達を遮断する切り状態に切り換わるように構成されている。
【0033】
静油圧式無段変速装置11は、中立復帰機構28の作用で非伝動状態となる中立状態に復帰し、その中立復帰機構28の作用に抗した変速ペダル29の踏み込み操作に基づいて、エンジン10からの動力の正逆転切り換えと無段変速とを行うように構成されている。変速ペダル29は、前進用の操作部と後進用の操作部とを前後に備えた天秤揺動式に構成されている。
【0034】
ギヤ式変速装置12は、複数の変速操作位置に操作保持可能な変速レバー30の操作に基づいて、静油圧式無段変速装置11による変速後の動力を有段変速するように構成されている。
【0035】
左右の制動装置26は、対応する図外のバネによる付勢で非制動状態に復帰し、それらのバネの付勢に抗した対応するブレーキペダル31の踏み込み操作に基づいて、その操作量に応じた制動力を対応する後車軸19に付与するように構成されている。
【0036】
又、トラクタ5には、エンジン回転数を検出する電磁ピックアップ式の回転センサからなる回転数センサ(検出手段Sの一例)32、ギヤ式変速装置12における後輪用出力軸17の回転数を推進速度として検出する電磁ピックアップ式の回転センサからなる車速センサ33、前輪16の切れ角を検出する回転式のポテンショメータからなる切角センサ34、及び、地磁気に基づいてトラクタ5の方位を検出する方位センサ35、などが装備されている。
【0037】
図3及び図5に示すように、フロントローダ6は、トラクタ5の左右両側部に着脱可能に連結される左右一対の支柱36、対応する支柱36の上端部に上下揺動可能に連結された左右一対のブーム37、それらのブーム37の遊端部に上下揺動可能に連結されたバケット38、左右の支柱36に対して対応するブーム37を上下方向に揺動駆動する油圧式で左右一対のブームシリンダ39、左右のブーム37に対してバケット38を上下方向に揺動駆動する油圧式で左右一対のバケットシリンダ40、左右のブームシリンダ39に対する作動油の流動を制御するブーム用の制御弁41、左右のバケットシリンダ40に対する作動油の流動を制御するバケット用の制御弁42、ブーム用制御弁41とバケット用制御弁42とに連係された十字揺動式で中立復帰型の操作レバー43、及び、第2動力取出軸25からの動力で作動油を各制御弁41,42に向けて圧送する油圧ポンプ44、などによって、操作レバー43の操作に連動した各制御弁41,42による作動油の流動制御でブーム37及びバケット38が上下揺動する油圧式に構成されている。
【0038】
ちなみに、左右のブーム37は、操作レバー43の下方への揺動操作で上昇揺動し、操作レバー43の上方への揺動操作で下降揺動し、バケット38は、操作レバー43の左方への揺動操作で上昇揺動し、操作レバー43の右方への揺動操作で下降揺動する。
【0039】
又、フロントローダ6には、ブーム37の揺動角を検出する回転式のポテンショメータからなるブームセンサ45や、バケット38の揺動角を検出する回転式のポテンショメータからなるバケットセンサ46、などが装備されている。
【0040】
自動化装置3は、トラクタ5を操縦する推進用操作機構47、フロントローダ6を操縦する作業用操作機構48、それらの操作機構47,48の作動を制御するコントローラ(制御手段の一例)49、及び、外部管理装置4との双方向の無線通信を可能にする通信器50、などによって構成されている。
【0041】
推進用操作機構47は、ステアリングホイール51に連係された左右の前輪16を操向する空気圧式の操向モータ52、中立復帰機構28の作用に抗して静油圧式無段変速装置11を変速操作する空気圧式の変速シリンダ53、バネの付勢に抗して左右の両制動装置26を制動操作する空気圧式のブレーキシリンダ54、操向モータ52に対する空気の流動を制御する操向用の電磁制御弁55、変速シリンダ53に対する空気の流動を制御する変速用の電磁制御弁56、ブレーキシリンダ54に対する空気の流動を制御する制動用の電磁制御弁57、第1動力取出軸24からの動力で駆動されるコンプレッサ58、及び、空気圧の変動を抑制する空気タンク59、などによって空気圧式に構成されている。
【0042】
作業用操作機構48は、中立復帰する操作レバー43をその左右方向への揺動操作を許容しながら上下方向に揺動操作するように操作レバー43に連係された空気圧式のブーム用レバーシリンダ60、操作レバー43をその上下方向への揺動操作を許容しながら左右方向に揺動操作するように操作レバー43に連係された空気圧式のバケット用レバーシリンダ61、ブーム用レバーシリンダ60に対する空気の流動を制御するブーム用の電磁制御弁62、バケット用レバーシリンダ61に対する空気の流動を制御するバケット用の電磁制御弁63、及び、推進用操作機構47と兼用する上記のコンプレッサ58と空気タンク59、などによって空気圧式に構成されている。
【0043】
コントローラ49は、マイクロコンピュータなどを備えて、外部管理装置4からの送信情報や、回転数センサ32、車速センサ33、切角センサ34、及び、方位センサ35からの各検出情報に基づいて、推進用操作機構47の各電磁制御弁55〜57を操作してトラクタ5の推進を制御し、又、回転数センサ32、ブームセンサ45、及び、バケットセンサ46からの各検出情報に基づいて、作業用操作機構48の各電磁制御弁62,63を操作してフロントローダ6の作動を制御するように構成されている。
【0044】
図1、図2、図5及び図6に示すように、外部管理装置4は、移動作業機1の作業領域A0を上方から撮影するカメラ64、カメラ64の作動などを制御する制御部65、カメラ64からの画像情報を座標変換して作業領域A0における移動作業機1の位置を計測する画像処理部66、図外のタッチパネルなどを備えた入力部67、及び、コントローラ49との双方向の無線通信を可能にする通信器68、などによって構成されている。
【0045】
カメラ64は、予め設定された一定周期で移動作業機1の作業領域A0を撮影するように、その作動が制御部65によって制御されている。
【0046】
制御部65は、外部管理装置4による位置検出用のマーカ69としてトラクタ5に装備したストロボ69が、カメラ64の撮影周期に対する2倍の周期で、カメラ64の撮影タイミングと同期して発光するように、発光指令情報を、通信器50,68を介してストロボの作動を制御するコントローラ49に送信する。
【0047】
画像処理部66は、最新の複数の画像情報から、ストロボ発光間隔での移動作業機1の移動予測範囲内おいてストロボの発光周期に同期して発光する発光体をマーカ69として認識するとともに、そのマーカ(ストロボ)69が発光するごとに、その位置を予め登録した計測用の4つ絶対位置Pa〜Pdから計測し、その計測結果を移動作業機1の位置情報として通信器50,69を介してコントローラ49に送信する。
【0048】
図7〜13に示すように、コントローラ49には、画像処理部66で座標変換した作業領域A0において任意に設定した移動作業機1の基準方向(y軸方向)、基準位置P0、掘削位置P1、移載位置P2、複数の制御領域A1〜A8、及び、各制御領域A1〜A8に応じたトラクタ5の推進制御やフロントローダ6の作動制御などを行うための制御プログラム、などが記憶されている。
【0049】
その制御プログラムに基づくコントローラ49の制御作動について説明すると、コントローラ49は、移動作業機1が第1制御領域A1の基準位置P0に基準方向に沿う姿勢で制動停止している状態において、外部管理装置4における入力部67の操作で作業開始指令が送信されると、先ず、予め設定された所定時間(例えば5秒)の間、トラクタ5に装備されたランプやブザーなどの報知装置を作動させて作業の開始を周囲に報知し、その所定時間の経過後に報知装置を停止させ、その後、移動作業機1をその基準位置P0から掘削位置P1まで移動させる掘削用移動制御、土砂を掘削してバケット38内に積み込む掘削積み込み制御、バケット38内に積み込んだ土砂をダンプトラック7に対する移載位置P2まで搬送する搬送制御、搬送した土砂をダンプトラック7の荷台8に移載する移載制御、及び、移動作業機1を移載位置P2から基準位置P0まで移動させる基準復帰用移動制御を、外部管理装置4における入力部67の操作などで作業停止指令が送信されるまでの間、その順に繰り返して行うように構成されている。
【0050】
掘削用移動制御では、先ず、ブームセンサ45及びバケットセンサ46からの検出値に基づいて、トラクタ5に対するバケット38の高さ位置及び上下角度が、予め設定された掘削作業開始用の適正位置及び適正角度となるように、操作レバー43を上下左右に揺動操作してブーム37及びバケット38を上下揺動させ、その後、制動装置26による制動を解除するとともに、移動作業機1が予め設定された高速の第1前進速度で基準方向に沿って高速前進するように、車速センサ33からの検出値に基づいて静油圧式無段変速装置11を前進方向に増速操作する。
【0051】
この高速前進によって移動作業機1が第2制御領域A2に到達したことが外部管理装置4によって検出されると、切角センサ34及び方位センサ35からの検出値に基づいて、移動作業機1が、基準位置P0と掘削位置P1とから予め設定された右折角度で機体右方向に前進移動するように右折操作する。
【0052】
この右折によって移動作業機1が第3制御領域A3に到達したことが外部管理装置4によって検出されると、切角センサ34及び方位センサ35からの検出値に基づいて、移動作業機1が、基準位置P0と掘削位置P1とから予め設定された左折角度で機体左方向に前進移動するように左折操作し、その左折後は、外部管理装置4からの位置情報や切角センサ34及び方位センサ35からの検出値に基づいて、掘削位置P1とマーカ69とのx軸方向での偏差がゼロになるように必要に応じて操向する適宜操向を行いながら掘削位置P1に向けて前進させる。
【0053】
この前進で移動作業機1が第4制御領域A4に到達したことが外部管理装置4によって検出されると、上記の適宜操向を継続しながら、回転数センサ32からの検出値(エンジン回転数)が適正値から予め設定した第1設定値(例えば適正値に対する80%の値)まで低下したか否かを判別し、第1設定値まで低下すると、この前進でバケット38の先端が掘削対象の土砂に適切に突っ込んだ状態であると判断して、掘削用移動制御を終了するとともに掘削積み込み制御を開始する。
【0054】
掘削積み込み制御では、先ず、静油圧式無段変速装置11を中立復帰させて移動作業機1を停止させ、この停止によって回転数センサ32からの検出値が適正値まで回復すると、静油圧式無段変速装置11を前進方向に増速操作して移動作業機1を第2前進速度で低速前進させる状態を現出するとともに、操作レバー43を左方に揺動操作してバケット38を上昇揺動させる状態を現出して、バケット38の先端がトラクタ5の推進で土砂に突き進みながらバケット38の上昇揺動で土砂を掻き取るようになるしゃくり動作を開始させる。
【0055】
このしゃくり動作で回転数センサ32からの検出値が適正値から予め設定した第2設定値(例えば適正値に対する70%の値)まで低下すると、静油圧式無段変速装置11を再び中立復帰させるとともに操作レバー43を中立復帰させてしゃくり動作を停止し、回転数センサ32からの検出値を適正値まで回復させる。
【0056】
その後、回転数センサ32からの検出値の適正値への回復によるしゃくり動作の再開と、回転数センサ32からの検出値の第2設定値への低下によるしゃくり動作の停止とを、その順に予め設定された回数(例えば2回)ずつ行い、しゃくり動作の開始とともにカウントしたしゃくり動作の回数が予め設定された回数(例えば3回)に達すると、そのときのしゃくり動作の停止で回転数センサ32からの検出値が適正値まで回復するのに伴って、静油圧式無段変速装置11を前進方向に増速操作して移動作業機1を第2前進速度で低速前進させる状態を現出するとともに、予め設定した所定時間(例えば2秒)の間、操作レバー43を左方に揺動操作してバケット38を上昇揺動させる状態を現出し、かつ、それらの開始から所定時間(例えば1秒)の経過後に、予め設定した所定時間(例えば2.5秒)の間、操作レバー43を上方に揺動操作してブーム37を上昇揺動させる状態を現出して、バケット38の先端がトラクタ5の推進で土砂に突き進みながらバケット38及びブーム37の上昇揺動で土砂をバケット38内に掬い取るようになる掬い動作を行い、この掬い動作で回転数センサ32からの検出値が適正値から予め設定した第3設定値(例えば適正値に対する60%の値)まで低下するのに伴って静油圧式無段変速装置11を中立復帰させ、又、各所定時間の経過とともに操作レバー43を中立復帰させてバケット38及びブーム37の上昇揺動を停止させて掬い動作を停止し、掘削積み込み制御を終了するとともに搬送制御を開始する。
【0057】
搬送制御では、先ず、移動作業機1が予め設定された後進速度で基準方向に沿って後進するように、車速センサ33からの検出値に基づいて静油圧式無段変速装置11を後進方向に増速操作する。
【0058】
この後進によって移動作業機1が第2制御領域A2に到達したことが外部管理装置4によって検出されると、切角センサ34及び方位センサ35からの検出値に基づいて、移動作業機1が、基準位置P0と掘削位置P1とから予め設定された左折角度で機体左方向に後進移動するように左折操作する。
【0059】
この左折によって移動作業機1が第5制御領域A5に到達したことが外部管理装置4によって検出されると、切角センサ34及び方位センサ35からの検出値に基づいて、移動作業機1が、基準位置P0と掘削位置P1とから予め設定された右折角度で機体右方向に後進移動するように右折操作し、その右折後は、外部管理装置4からの位置情報や切角センサ34及び方位センサ35からの検出値に基づいて、基準位置P0とマーカ69とのx軸方向での偏差がゼロになるように必要に応じて操向する適宜操向を行いながら基準位置P0に向けて後進させる。
【0060】
この後進で移動作業機1が第1制御領域A1に到達したことが外部管理装置4によって検出されると、上記の適宜操向を継続しながら、外部管理装置4からの位置情報に基づいて、基準位置P0とマーカ69とが一致する状態で移動作業機1が停止するように、静油圧式無段変速装置11の減速操作や制動装置26の制動操作を行い、その停止後、制動装置26による制動を解除するとともに、移動作業機1が第1前進速度で基準方向に沿って高速前進するように静油圧式無段変速装置11を前進方向に増速操作する。
【0061】
この高速前進によって移動作業機1が第6制御領域A6に到達したことが外部管理装置4によって検出されると、切角センサ34及び方位センサ35からの検出値に基づいて、移動作業機1が、基準位置P0と移載位置P2とから予め設定された左折角度で機体左方向に前進移動するように左折操作する。
【0062】
この左折によって移動作業機1が第7制御領域A7に到達したことが外部管理装置4によって検出されると、切角センサ34及び方位センサ35からの検出値に基づいて、移動作業機1が、基準位置P0と移載位置P2とから予め設定された右折角度で機体右方向に前進移動するように右折操作し、その右折後は、外部管理装置4からの位置情報や切角センサ34及び方位センサ35からの検出値に基づいて、移載位置P2とマーカ69とのx軸方向での偏差がゼロになるように必要に応じて操向する適宜操向を行いながら移載位置P2に向けて前進させる。
【0063】
この前進で移動作業機8が第1制御領域A8に到達したことが外部管理装置4によって検出されると、上記の適宜操向を継続しながら、外部管理装置4からの位置情報に基づいて、移載位置P2とマーカ69とが一致する状態で移動作業機1が停止するように、静油圧式無段変速装置11の減速操作や制動装置26の制動操作を行い、移動作業機1を移載位置P2に制動停止させた後に搬送制御を終了するとともに移載制御を開始する。
【0064】
移載制御では、操作レバー43を左右に揺動操作して、バケット38内の土砂がダンプトラック7の荷台8に排出されるようにバケット38を上限位置と下限位置とにわたって上下揺動させるおろし動作を所定回数(例えば3回)行い、その後、移載制御を終了するとともに基準復帰用移動制御を開始する。
【0065】
基準復帰用移動制御では、先ず、制動装置26による制動を解除するとともに、移動作業機1が予め設定された後進速度で基準方向に沿って後進するように、車速センサ33からの検出値に基づいて静油圧式無段変速装置11を後進方向に増速操作する。
【0066】
この後進によって移動作業機1が第6制御領域A6に到達したことが外部管理装置4によって検出されると、切角センサ34及び方位センサ35からの検出値に基づいて、移動作業機1が、基準位置P0と移載位置P2とから予め設定された右折角度で機体右方向に後進移動するように右折操作する。
【0067】
この右折によって移動作業機1が第5制御領域A5に到達したことが外部管理装置4によって検出されると、切角センサ34及び方位センサ35からの検出値に基づいて、移動作業機1が、基準位置P0と移載位置P2とから予め設定された左折角度で機体左方向に後進移動するように左折操作し、その左折後は、外部管理装置4からの位置情報や切角センサ34及び方位センサ35からの検出値に基づいて、基準位置P0とマーカ69とのx軸方向での偏差がゼロになるように必要に応じて操向する適宜操向を行いながら基準位置P0に向けて後進させる。
【0068】
この後進で移動作業機1が第1制御領域A1に到達したことが外部管理装置4によって検出されると、上記の適宜操向を継続しながら、外部管理装置4からの位置情報に基づいて、基準位置P0とマーカ69とが一致する状態で移動作業機1が停止するように、静油圧式無段変速装置11の減速操作や制動装置26の制動操作を行い、その停止後、基準復帰用移動制御を終了するとともに掘削用移動制御を再開する。
【0069】
尚、図7に示すように、掘削位置P1としては複数箇所(図7ではP1a〜P1cの3箇所)が設定されており、それらの掘削位置P1a〜P1cは、掘削作業から移載作業にわたる一連の作業行程を更新するごとに、その順に適宜変更されるようになっている。
【0070】
以上の構成によると、トラクタ5の前部にフロントローダ6を装備して構成された移動作業機1に自動化装置3を搭載するとともに、作業地に、移動作業機1の位置を検出し、かつ、その位置情報などを自動化装置3との間で通信する外部管理装置4を設置することによって、移動作業機1による掘削移載作業の自動化を図れることになる。
【0071】
そして、外部管理装置4が、移動作業機1の作業領域A0を撮影するとともに画像処理を行って、作業領域A0における移動作業機1の位置を割り出すとともに、その位置情報を移動作業機1のコントローラ49に送信する一方で、そのコントローラ49が、外部管理装置4からの位置情報や、予め記憶した移動作業機1の基準方向、基準位置P0、掘削位置P1、移載位置P2、複数の制御領域A1〜A8、及び、制御プログラムなどに基づいて、移動作業機1が各位置P0〜P2や各制御領域A1〜A8などに到達するごとに、各位置P0〜P2や各制御領域A1〜A8などに応じた制御作動を行って、移動作業機1を、予め設定された推進コースに沿って推進させるとともに、各位置P0〜P2や各制御領域A1〜A8に対応した推進や作業を行わせることから、コントローラ49が、その制御作動で、作業領域A0における移動作業機1の位置を割り出しながらトラクタ5の推進とフロントローダ6の作動とを制御する場合に生じる制御遅れに起因して、移動作業機1が予め設定された推進コースから外れる不都合や、作業が遅れる不都合などが生じることを回避でき、又、外部管理装置4から移動作業機1の位置情報が送信されるごとに、その位置情報と予め設定した推進ラインとを比較して推進制御する場合に生じる蛇行を防止でき、更に、作業領域A0に埋設した誘導ラインをセンサで検出して推進させる場合に生じる、土砂などへの乗り上がりとともに機体が振れてしまい、センサによる誘導ラインの検出が不可能になって誘導ラインに沿った推進が行えなくなる、といった不都合を回避できる。
【0072】
つまり、カメラ64で撮影できる外部管理装置4の管理範囲であれば、予め設定した推進コースに沿って移動作業機1を自動推進させ、その自動推進で各位置P0〜P2や各制御領域A1〜A8に到達するごとにそれらのそれぞれに対応した推進や作業を自動的に行わせる、といった自動作業推進を良好に効率良く何度も繰り返して行わせることができる。
【0073】
又、マーカ69として発光量の大きいストロボを採用したことで、カメラ64をマーカ69からより離れた高い位置に配備して撮像範囲を広げることができるので、広い作業領域A0での自動作業推進を可能にすることができ、しかも、ストロボ69を、カメラ64の撮影周期に対する2倍の周期で、カメラ64の撮影タイミングと同期して発光させることで、太陽光の反射などにように常時発光する外乱光、及び、異なる周期や突発的に発光する外乱光との区別が可能になり、外乱光に起因した制御不良を未然に回避でき、更に、複数台の移動作業機1に異なる周期で発光するストロボ69を装備すれば、カメラ64で撮影できる外部管理装置4の管理範囲において、複数台の移動作業機1を、それぞれに応じて設定した推進コースに沿って自動推進させ、それらの自動推進でそれぞれがP0〜P2や各制御領域A1〜A8に到達するごとに、それらのそれぞれに対応した推進や作業を自動的に行わせる、といった1台の外部管理装置4による複数台の移動作業機1の自動作業推進を可能にすることができる。
【0074】
その上、掘削作業時には、掘削積み込み制御によって、エンジン回転数の設定値への低下検出と適正値への復帰検出とに基づいてトラクタ5の推進とフロントローダ6の作動とを適切に連動させたしゃくり動作と掬い動作とによる掘削積み込み状態を自動現出することから、そのときの推進抵抗の増大による不測のエンジン停止を招くことなく、機体の推進でバケット38の先端を土砂に突き進ませながら、バケット38やブーム37の揺動で土砂をバケット38内に取り込むことになる、効率良い掘削積み込み作業を行える。
【0075】
尚、コントローラ49は、外部管理装置4により移動作業機1が作業領域A0から外れたことが検出された場合や、外部管理装置4からの位置情報が予め設定した所定時間(例えば0.5秒)の間で受信しない場合などような非常事態の発生時には、図外のエンジン停止装置を作動させてエンジン10を停止させる非常停止制御を行うように構成されている。
【0076】
〔別実施形態1〕
以下、移動作業機1による耕耘作業の自動化を図る別実施形態について説明する。
【0077】
図14には、移動作業機1による耕耘作業の自動化を図る自動化システム2の全体構成が示されおり、この自動化システム2は、上述した最良の形態と同様に、移動作業機1に搭載した自動化装置3と、移動作業機1の位置検出などを外部から行う外部管理装置4とから構成されている。
【0078】
尚、外部管理装置4の構成については、最良の形態で説明したものと構成が同じであることから説明を省略するが、この別実施形態では、移動作業機1の作業領域A0として変形田を例示することから、画像処理部66には、マーカ位置計測用の絶対位置として5つの絶対位置Pa〜Peが登録されている。又、移動作業機1及び自動化装置3の構成については、上述した最良の形態のものと異なる点に関してのみ説明し、同じ点に関する説明は省略する。
【0079】
移動作業機1は、トラクタ5に、その後部に上下揺動可能に装備された左右一対のリフトアーム70とリンク機構71を介して、ロータリ耕耘装置(作業装置Wの一例)72を昇降揺動可能に連結して構成されている。
【0080】
図15及び図16に示すように、トラクタ5には、ロータリ耕耘装置72を昇降操作する昇降用操作機構73が装備されており、この昇降用操作機構73は、任意の昇降操作位置に摩擦保持可能な昇降レバー74、昇降レバー74の操作位置を検出する回転式のポテンショメータからなるレバーセンサ75、リフトアーム70の上下揺動角度を検出する回転式のポテンショメータからなるリフトアームセンサ76、リフトアーム70を揺動駆動するリフトシリンダ77、このリフトシリンダ77に対する作動油の流動状態を切り換える昇降用の電磁制御弁78、レバーセンサ75の検出に基づいて昇降用の電磁制御弁78の作動を制御するマイクロコンピュータからなる制御装置79、及び、エンジン10からの動力で駆動される油圧ポンプ80、などによって構成されている。
【0081】
ロータリ耕耘装置72は、トラクタ5の第1動力取出軸24からの動力によって、複数の耕耘爪81が左右向きの軸心周りに回転駆動されることで耕耘するように構成されている。又、ロータリ耕耘装置72には、その昇降操作に伴う後部カバー82の上下揺動角度をロータリ耕耘装置72の耕深として検出して制御装置79に出力する回転式のポテンショメータからなるカバーセンサ83が備えられている。
【0082】
制御装置79には、レバーセンサ75によって検出される昇降レバー74の操作位置と、リフトアームセンサ76によって検出されるリフトアーム70の上下揺動角度とが合致するようにロータリ耕耘装置72の昇降を制御するポジション制御や、回転式のポテンショメータからなる耕深設定器84によって設定されたロータリ耕耘装置72の耕深と、カバーセンサ83によって検出されるロータリ耕耘装置72の耕深とが合致するようにロータリ耕耘装置72の昇降を制御する自動耕深制御、などを行うための制御プログラムが記憶され、それらの制御モードの切り換えは、モード切換スイッチ85の操作で行えるようになっている。
【0083】
制御装置79は、自動耕深制御において、レバーセンサ75によって昇降レバー74の上限位置への操作が検出されると、その自動耕深制御を一時停止して、レバーセンサ75からの検出値とリフトアームセンサ76からの検出値とが合致するようにロータリ耕耘装置72を上限位置まで上昇させるとともに、補助クラッチ22を切り操作してロータリ耕耘装置72を停止させ、又、レバーセンサ75によって昇降レバー74の下限位置への操作が検出されると、補助クラッチ22を入り操作してロータリ耕耘装置72を駆動させるとともに、自動耕深制御を再開して、耕深設定器84による設定値とカバーセンサ83からの検出値とが合致するようにロータリ耕耘装置72を昇降させるように構成されている。
【0084】
トラクタ5において、第1動力取出軸24に伝動する補助変速装置23は、切換レバー86の人為操作によって、第1動力取出軸24を正転駆動させる正転伝動状態と逆転駆動させる逆転伝動状態とに切り換え可能に構成されている。
【0085】
自動化装置3は、トラクタ5を操縦する推進用操作機構47、ロータリ耕耘装置72の駆動状態を切り換える作業用操作機構48、それらの操作機構47,48や制御装置79の作動を制御するコントローラ49(制御手段の一例)、及び、外部管理装置4との双方向の無線通信を可能にする通信器50、などによって構成されている。
【0086】
推進用操作機構47は、ステアリングホイール51に連係された左右の前輪16を操向する油圧式の操向モータ87、中立復帰機構28の作用に抗して静油圧式無段変速装置11を変速操作する油圧式の変速シリンダ88、バネの付勢に抗して左右の両制動装置26を制動操作する油圧式のブレーキシリンダ89、操向モータ87に対する作動油の流動を制御する操向用の電磁制御弁90、変速シリンダ88に対する作動油の流動を制御する変速用の電磁制御弁91、ブレーキシリンダ89に対する作動油の流動を制御する制動用の電磁制御弁92、及び、第2動力取出軸25からの動力で駆動される油圧ポンプ93、などによって油圧式に構成されている。
【0087】
作業用操作機構48は、昇降用操作機構73の昇降レバー74を操作する昇降用レバーシリンダ94、切換レバー86を操作する駆動切換用レバーシリンダ95、昇降用レバーシリンダ94に対する作動油の流動を制御する昇降レバー用の電磁制御弁96、駆動切換用レバーシリンダ95に対する作動油の流動を制御する切換レバー用の電磁制御弁97、及び、推進用操作機構47と兼用する油圧ポンプ93、などによって油圧式に構成されている。
【0088】
コントローラ49は、マイクロコンピュータなどを備えて、外部管理装置4からの送信情報や、回転数センサ32、車速センサ33、切角センサ34、及び、方位センサ35からの各検出情報に基づいて、推進用操作機構47の各電磁制御弁90〜92を操作してトラクタ5の推進を制御し、又、外部管理装置4からの送信情報や回転数センサ32からの各検出情報に基づいて、制御装置79の作動を制御するとともに作業用操作機構48の各電磁制御弁96,97を操作してロータリ耕耘装置72の作動を制御するように構成されている。
【0089】
図14及び図16〜21に示すように、コントローラ49には、画像処理部66で座標変換した作業領域A0において任意に設定した移動作業機1の基準方向(y軸方向)、基準位置P0、複数の制御領域A1〜A7、及び、各制御領域A1〜A7に応じたトラクタ5の推進制御やロータリ耕耘装置72の作動制御などを行うための制御プログラム、などが記憶されている。
【0090】
その制御プログラムに基づくコントローラ49の制御作動について説明すると、コントローラ49は、移動作業機1が基準位置P0に基準方向に沿う姿勢で制動停止している状態において、外部管理装置4における入力部67の操作で作業開始指令が送信されると、先ず、予め設定された所定時間(例えば5秒)の間、トラクタ5に装備されたランプやブザーなどの報知装置を作動させて作業の開始を周囲に報知し、その所定時間の経過後に報知装置を停止させ、その後、移動作業機1を基準位置P0から第1畦際旋回制御領域A1に設定した作業開始領域A1aまで移動させる開始移動制御、移動作業機1を基準方向と直行する方向に往復移動させながら耕耘する往復耕耘制御、移動作業機1を畦際に沿って移動させながら耕耘する畦際耕耘制御、及び、移動作業機1を基準位置P0まで移動させる終了移動制御を、その順に行うように構成されている。
【0091】
開始移動制御では、先ず、制御装置79に自動耕深制御の実行を指令し、その後、制動装置26による制動を解除するとともに、移動作業機1が予め設定された前進速度で基準方向(y軸方向)に沿って直進するように、車速センサ33からの検出値に基づいて静油圧式無段変速装置11を前進方向に増速操作するとともに、切角センサ34及び方位センサ35からの検出値に基づいて、必要に応じて操向する適宜操向を行うことで、移動作業機1を第1畦際旋回制御領域A1に沿って前進させる。
【0092】
この前進によって移動作業機1が第1畦際旋回制御領域A1に設定した屈曲領域A1bに到達したことが外部管理装置4によって検出されると、切角センサ34及び方位センサ35からの検出値に基づいて、移動作業機1が、絶対位置Pa,Pc,Peから予め設定された左折角度で左折するように左折操作した後、第1畦際旋回制御領域A1に沿って前進するように必要に応じて操向する適宜操向を行いながら作業開始領域A1aに向けて前進させる。
【0093】
この前進によって移動作業機1が第1畦際旋回制御領域A1の作業開始領域A1aに到達したことが外部管理装置4によって検出されると、開始移動制御を終了するとともに往復耕耘制御を開始する。
【0094】
往復耕耘制御では、先ず、移動作業機1が、往復耕耘制御領域A2に設定した第1行程領域A2aに、予め設定した往復耕耘姿勢(x軸に沿う姿勢)で向かうように、切角センサ34及び方位センサ35からの検出値に基づいて右折操作する。
【0095】
この右折で移動作業機1が第1行程領域A2aに到達したことが外部管理装置4によって検出されると、切角センサ34及び方位センサ35からの検出値に基づいて、移動作業機1が往復耕耘姿勢で第1行程領域A2aに沿って前進する状態が維持されるように必要に応じて操向する適宜操向を行いながら、切換レバー86を逆転位置に操作するとともに、昇降レバー74を下限位置まで下降操作して制御装置79の自動耕深制御を開始させることで、各耕耘爪81を逆転(機体の進行方向に反する回転)させた逆転耕耘状態を現出する。
【0096】
この逆転耕耘状態において、回転数センサ32からの検出値(エンジン回転数)が適正値から予め設定した設定値(例えば適正値に対する60%の値)まで低下すると、逆転耕耘が所定距離にわたって行われたと判断し、切換レバー86を正転位置に操作して、各耕耘爪81を正転(機体の進行方向に準ずる回転)させた正転耕耘状態を現出する。
【0097】
この正転耕耘状態において、移動作業機1が第2畦際旋回制御領域A3に到達したことが外部管理装置4によって検出されると、昇降レバー74を上限位置まで上昇操作して自動耕深制御を一時停止させることで、ロータリ耕耘装置72を上限位置まで上昇させながら作動停止させる一方で、移動作業機1が、隣接する第2行程領域A2bに、予め設定した往復耕耘姿勢(x軸に沿う姿勢)で向かうように、切角センサ34及び方位センサ35からの検出値に基づいて右旋回操作する(枕地旋回)。
【0098】
この右旋回で移動作業機1が第2行程領域A2bに到達したことが外部管理装置4によって検出されると、切角センサ34及び方位センサ35からの検出値に基づいて、移動作業機1が往復耕耘姿勢で第2行程領域A2bに沿って前進する状態が維持されるように必要に応じて操向する適宜操向を行いながら、切換レバー86を逆転位置に操作するとともに、昇降レバー74を下限位置まで下降操作して制御装置79の自動耕深制御を開始させることで、逆転耕耘状態を現出し、この逆転耕耘状態において、回転数センサ32からの検出値が適正値から設定値まで低下すると、切換レバー86を正転位置に操作して正転耕耘状態を現出する。
【0099】
この正転耕耘状態において、移動作業機1が第1畦際旋回制御領域A1に到達したことが外部管理装置4によって検出されると、昇降レバー74を上限位置まで上昇操作して自動耕深制御を一時停止させることで、ロータリ耕耘装置72を上限位置まで上昇させながら作動停止させる一方で、移動作業機1が、隣接する第3行程領域A2cに、予め設定した往復耕耘姿勢(x軸に沿う姿勢)で向かうように、切角センサ34及び方位センサ35からの検出値に基づいて左旋回操作する(枕地旋回)。
【0100】
この左旋回後は、外部管理装置4からの位置情報や、回転数センサ32、切角センサ34、及び方位センサ35からの各検出値に基づいた、上記のような往路における適宜操向を行いながらの逆転耕耘状態と正転耕耘状態の現出、右旋回操作、復路における適宜操向を行いながらの逆転耕耘状態と正転耕耘状態の現出、及び左旋回操作、をその順に繰り返して行う。
【0101】
そして、この往復耕耘制御領域A2の最終工程領域A2fでの正転耕耘状態において、移動作業機1が第3畦際旋回制御領域A4に到達したことが外部管理装置4によって検出されると、往復耕耘制御を終了するとともに畦際耕耘制御を開始する。
【0102】
畦際耕耘制御では、先ず、正転耕耘状態を維持しながら、移動作業機1が、第1畦際直進制御領域A5に、予め設定した第1畦際直進制御領域A5に沿う姿勢(x軸に沿う姿勢)で向かうように、切角センサ34及び方位センサ35からの検出値に基づいて左旋回操作し、この左旋回後は、第1畦際直進制御領域A5に沿って前進するように必要に応じて操向する適宜操向を行う。
【0103】
この前進によって、移動作業機1が、第2畦際旋回制御領域A3に到達したことが外部管理装置4によって検出されると、正転耕耘状態を維持しながら、移動作業機1が、予め設定した第2畦際旋回制御領域A3に沿う姿勢(y軸に沿う姿勢)となるように、切角センサ34及び方位センサ35からの検出値に基づいて左折操作し、この左折後は、第2畦際旋回制御領域A3に沿って前進するように必要に応じて操向する適宜操向を行う。
【0104】
この前進によって、移動作業機1が、第2畦際直進制御領域A6に到達したことが外部管理装置4によって検出されると、正転耕耘状態を維持しながら、移動作業機1が、予め設定した第2畦際直進制御領域A6に沿う姿勢(x軸に沿う姿勢)となるように、切角センサ34及び方位センサ35からの検出値に基づいて左折操作し、この左折後は、第2畦際直進制御領域A6に沿って前進するように必要に応じて操向する適宜操向を行う。
【0105】
この前進によって移動作業機1が第1際旋回制御領域A1に到達したことが外部管理装置4によって検出されると、正転耕耘状態を維持しながら、移動作業機1が、予め設定した第1畦際旋回制御領域A1に沿う姿勢(y軸に沿う姿勢)となるように、切角センサ34及び方位センサ35からの検出値に基づいて左折操作し、この左折後は、第1畦際旋回制御領域A1に沿って前進するように必要に応じて操向する適宜操向を行う。
【0106】
この前進によって移動作業機1が第1畦際旋回制御領域A1に設定した屈曲領域A1bに到達したことが外部管理装置4によって検出されると、切角センサ34及び方位センサ35からの検出値に基づいて、移動作業機1が、絶対位置Pa,Pc,Peから予め設定された右折角度で右折するように右折操作した後、第1畦際旋回制御領域A1に沿って前進するように必要に応じて操向する適宜操向を行いながら終了移動制御領域A7に向けて前進させる。
【0107】
この前進によって移動作業機1が終了移動制御領域A7に到達したことが外部管理装置4によって検出されると、適宜操向による前進状態を維持しながら、昇降レバー74を上限位置まで上昇操作して自動耕深制御を終了させることで、ロータリ耕耘装置72を上限位置まで上昇させるとともに作動停止させて畦際耕耘制御を終了するとともに終了移動制御を開始する。
【0108】
終了移動制御では、基準位置P0に向けて移動作業機1を前進させながら、基準位置P0とマーカ69とが一致する状態で移動作業機1が停止するように、静油圧式無段変速装置11の減速操作や制動装置26の制動操作を行って、その基準位置P0にて移動作業機1を制動停止させるとともに終了移動制御を終了する。
【0109】
以上の構成によると、トラクタ5の後部にロータリ耕耘装置72を装備して構成された移動作業機1に自動化装置3を搭載するとともに、作業地に、移動作業機1の位置を検出し、かつ、その位置情報などを自動化装置3との間で通信する外部管理装置4を設置することによって、移動作業機1による耕耘作業の自動化を図れることになる。
【0110】
そして、外部管理装置4が、移動作業機1の作業領域A0を撮影するとともに画像処理を行って、作業領域A0における移動作業機1の位置を割り出すとともに、その位置情報を移動作業機1のコントローラ49に送信する一方で、そのコントローラ49が、外部管理装置4からの位置情報や、予め記憶した移動作業機1の基準位置P0、基準方向、複数の制御領域A1〜A6、及び、制御プログラムなどに基づいて、移動作業機1が基準位置P0や各制御領域A1〜A6などに到達するごとに、基準位置P0や各制御領域A1〜A6などに応じた制御作動を行って、移動作業機1を、予め設定された推進コースに沿って推進させるとともに、各制御領域A1〜A6に対応した作業を行わせることから、コントローラ49が、その制御作動で、作業領域A0における移動作業機1の位置を割り出しながらトラクタ5の推進とロータリ耕耘装置72の作動とを制御する場合に生じる制御遅れに起因して、移動作業機1が予め設定された推進コースから外れる不都合や、作業が遅れる不都合などが生じることを回避でき、又、外部管理装置4から移動作業機1の位置情報が送信されるごとに、その位置情報と予め設定した推進ラインとを比較して推進制御する場合に生じる蛇行を防止できる。
【0111】
つまり、カメラ64で撮影できる外部管理装置4の管理範囲であれば、予め設定した推進コースに沿って移動作業機1を自動推進させ、その自動推進で各制御領域A1〜A6に到達するごとにそれらに対応した推進や作業を自動的に行わせる、といった自動作業推進を良好に効率良く行わせることができる。
【0112】
又、マーカ69として発光量の大きいストロボ69を採用したことで、カメラ64をマーカ69からより離れた高い位置に配備して撮像範囲を広げることができるので、広い作業領域A0での自動作業推進を可能にすることができ、しかも、ストロボ69を、カメラ64の撮影周期に対する2倍の周期で、カメラ64の撮影タイミングと同期して発光させることで、太陽光の反射などにように常時発光する外乱光、及び、異なる周期や突発的に発光する外乱光との区別が可能になり、外乱光に起因した制御不良を未然に回避でき、更に、複数の圃場の各移動作業機1に異なる周期で発光するストロボ69を装備すれば、カメラ64で撮影できる外部管理装置4の管理範囲において、各圃場の移動作業機1を、それぞれの圃場に応じて設定した推進コースに沿って自動推進させ、それらの自動推進でそれぞれが対応する圃場の基準位置P0や各制御領域A1〜A5に到達するごとに、それらのそれぞれに対応した推進や作業を自動的に行わせる、といった1台の外部管理装置4による複数圃場での各移動作業機1の自動作業推進を可能にすることができる。
【0113】
その上、往復耕耘制御による耕耘作業においては、先ず、畦際での耕耘作業の開始時に逆転耕耘状態を自動現出し、その逆転耕耘状態を所定距離にわたって行うことでエンジン回転数が設定値まで低下すると、その低下に基づいて、逆転耕耘状態から正転耕耘状態に切り換える正転切り換え制御を開始して推進抵抗を軽減することから、圃場泥土の圃場外への拡散や畦際への土の偏りを抑制する良好な耕耘作業を行いながら、過負荷に起因して不測にエンジン10が停止することによる作業効率の低下を未然に回避できる。
【0114】
〔別実施形態2〕
以下、移動作業機1による作業の半自動化を図る別実施形態について説明する。
【0115】
図22及び図23に示すように、この半自動化は、トラクタ5の前部にフロントローダ6(作業装置Wの一例)を装備して構成された移動作業機1に、半自動化装置98を搭載することによって構成されている。
【0116】
トラクタ5及びフロントローダ6の構成については、前述した最良の形態のものと略同じ構成であることから、前述した最良の形態のものと異なる点に関してのみ説明し、同じ点に関する説明は省略する。尚、このトラクタ5には方位センサ35が、フロントローダ6にはブームセンサ及びバケットセンサが装備されていない。
【0117】
トラクタ5には、変速ペダル29による静油圧式無段変速装置11の前進増速操作を許容しながら、静油圧式無段変速装置11を速度設定レバー99で設定した所望の前進変速状態に維持するように静油圧式無段変速装置11に操作連係されるとともに、左右いずれか一方の制動装置26が制動する制動旋回時には、静油圧式無段変速装置11を所望の前進変速状態に維持する状態が継続され、左右の両制動装置26が制動する制動減速時には、静油圧式無段変速装置11を所望の前進変速状態に維持する状態が解除されるように、左右のブレーキペダル31から左右の制動装置26にわたる制動操作系に解除機構100を介して操作連係された速度維持装置101が装備されている。
【0118】
つまり、このトラクタ5は、速度設定レバー99を前進増速領域における所望の操作位置に位置させることで、その速度設定レバー99の操作位置に応じた所定の前進変速状態に静油圧式無段変速装置11を維持した前進定速状態を現出でき、この前進定速状態において、左右いずれか一方のブレーキペダル31を踏み込み操作すると、その操作量に応じた左右一方の制動装置26の制動力で左右一方の後輪20を制動する制動旋回状態を現出でき、又、左右の両ブレーキペダル31を踏み込み操作すると、前進定速状態を解除するとともに、左右のブレーキペダル31の操作量に応じた左右の制動装置26の制動力で左右の後輪20を制動する制動減速状態を現出できるように構成されている。
【0119】
図22及び図24に示すように、半自動化装置98は、トラクタ5を操縦する推進用操作機構47、フロントローダ6を操縦する作業用操作機構48、及び、それらの操作機構の作動を制御するコントローラ49(制御手段の一例)、などによって構成されている。
【0120】
推進用操作機構47は、バネの付勢に抗して主クラッチ9を切り操作する空気圧式のクラッチシリンダ102、バネの付勢に抗して左右の両制動装置26を制動操作する空気圧式のブレーキシリンダ54、クラッチシリンダ102に対する空気の流動を制御するクラッチ用の電磁制御弁103、ブレーキシリンダ54に対する空気の流動を制御する制動用の電磁制御弁57、第1動力取出軸24からの動力で駆動されるコンプレッサ58、及び、空気圧の変動を抑制する空気タンク59、などによって空気圧式に構成されている。尚、作業用操作機構48の構成については、前述した最良の形態のものと同じ構成であることから説明は省略する。
【0121】
コントローラ49は、マイクロコンピュータなどを備えて、回転数センサ32からの検出情報に基づいて、推進用操作機構47の各電磁制御弁57,103を操作してトラクタ5の推進を制御するとともに、作業用操作機構48の各電磁制御弁62,63を操作してフロントローダ6の作動を制御するように構成されている。
【0122】
図25及び図26に示すように、コントローラ49には、回転数センサ32からの検出情報に基づいてトラクタ5の推進制御やフロントローダ6の作動制御を行うための制御プログラムなどが記憶されている。
【0123】
その制御プログラムに基づくコントローラ49の制御作動について説明すると、コントローラ49は、操縦者による速度設定レバー99の操作で所定の前進速度で推進するように設定され、又、操縦者による操作レバー43の操作でトラクタ5に対するバケット38の高さ位置及び上下角度が掘削作業開始用の位置に設定された状態において、回転数センサ32からの検出値(エンジン回転数)が適正値から予め設定した第1設定値(例えば適正値に対する80%の値)まで低下すると、この推進でバケット38の先端が掘削対象の土砂に適切に突っ込んだ状態であると判断して掘削積み込み制御を開始する。
【0124】
掘削積み込み制御では、先ず、主クラッチ9を切り操作して移動作業機1を推進停止させ、この推進停止によって回転数センサ32からの検出値が適正値まで回復すると、主クラッチ9を入り操作して所定の前進速度での移動作業機1の推進を再開させるとともに、操作レバー43を左方に揺動操作してバケット38を上昇揺動させる状態を現出して、バケット38の先端がトラクタ5の推進で土砂に突き進みながらバケット38の上昇揺動で土砂を掻き取るようになるしゃくり動作を開始させる。
【0125】
このしゃくり動作で回転数センサ32からの検出値が適正値から予め設定した第2設定値(例えば適正値に対する70%の値)まで低下すると、主クラッチ9を再び切り操作するとともに操作レバー43を中立復帰させてしゃくり動作を停止し、回転数センサ32からの検出値を適正値まで回復させる。
【0126】
その後、回転数センサ32からの検出値の適正値への回復によるしゃくり動作の再開と、回転数センサ32からの検出値の第2設定値への低下によるしゃくり動作の停止とを、その順に予め設定された回数(例えば2回)ずつ行い、しゃくり動作の開始とともにカウントしたしゃくり動作の回数が予め設定された回数(例えば3回)に達すると、そのときのしゃくり動作の停止で回転数センサ32からの検出値が適正値まで回復するのに伴って、主クラッチ9を入り操作して移動作業機1を所定の前進速度で推進させる状態を現出するとともに、予め設定した所定時間(例えば2秒)の間、操作レバー43を左方に揺動操作してバケット38を上昇揺動させる状態を現出し、かつ、それらの開始から所定時間(例えば1秒)の経過後に、予め設定した所定時間(例えば2.5秒)の間、操作レバー43を上方に揺動操作してブーム37を上昇揺動させる状態を現出して、バケット38の先端がトラクタ5の推進で土砂に突き進みながらバケット38及びブーム37の上昇揺動で土砂をバケット38内に掬い取るようになる掬い動作を行い、この掬い動作で回転数センサ32からの検出値が適正値から予め設定した第3設定値(例えば適正値に対する60%の値)まで低下するのに伴って、左右の両ブレーキペダル31を制動操作して、速度維持装置101による所望の前進変速状態での静油圧式無段変速装置11の維持を解除して静油圧式無段変速装置11を中立復帰させ、又、各所定時間の経過とともにバケット38及びブーム37の上昇揺動を停止させて掬い動作を停止し、掘削積み込み制御を終了する。
【0127】
以上の構成によると、トラクタ5の前部にフロントローダ6を装備して構成された移動作業機1に半自動化装置98を搭載することによって、操縦者は、バケット38の先端が土砂に突っ込むように移動作業機1を前進推進させるようにすれば、バケット38の先端が土砂に突っ込んだ際の推進抵抗でエンジン回転数が適正値から第1設定値に低下するのに伴って、コントローラ49による掘削積み込み制御が開始されて、過負荷による不測のエンジン停止を回避しながら、トラクタ5の推進とフロントローダ6の作動とを適切に連動させた土砂のバケット38内への取り込みを効率良く行えるしゃくり動作と掬い動作による掘削積み込み状態を自動現出することができ、その結果、操縦者の負担を効果的に軽減しながら、効率の良い掘削積み込み作業を、操縦者の熟練度に関係なく行えることになる。
【0128】
〔他の別実施形態〕
以下、本発明における他の別実施形態を列記する。
【0129】
〔1〕移動作業機1としてはホイールローダなどであってもよく、又、主変速装置としてギヤ式変速装置を装備するものであってもよい。
【0130】
〔2〕回転数センサ32(検出手段Sの一例)の検出値に代えて、車速センサ33(検出手段Sの一例)の検出値が適正値(設定速度)から設定値(零速)に低下するのに伴って、制御手段49が、所定の制御作動(掘削積み込み制御や正転耕耘制御など)を開始して所定の作業状態(掘削積み込み状態や正転耕耘状態など)を現出するように構成してもよい。
【0131】
〔3〕制御手段49が、所定の制御作動(掘削積み込み制御や正転耕耘制御など)を開始する設定値の値、及び、しゃくり動作や掬い動作を停止する設定値の値は、エンジン10の能力などに応じて種々の変更が可能である。
【0132】
〔4〕最良の形態においては、掘削積み込み制御の開始に伴って、主クラッチ9の切り操作、又は、主クラッチ9の切り操作と静油圧式無段変速装置11の中立復帰操作とで、検出手段Sからの検出値の回復を図るようにしてもよい。
【0133】
〔5〕掘削積み込み制御においては、検出手段Sの検出値が適正値に回復するまでの間、主クラッチ9の切り状態、又は、静油圧式無段変速装置11の中立状態を維持する構成に代えて、予め設定した所定時間(例えばバケット38先端の突っ込みによる制御作動の開始時は3秒、しゃくり動作後は1秒)の間、主クラッチ9の切り状態、又は、静油圧式無段変速装置11の中立状態を維持することで、検出手段Sからの検出値の回復を図るようにしてもよい。
【0134】
〔6〕掘削積み込み制御においては、検出手段Sの検出値が第2設定値又は第3設定値に低下するまでの間、しゃくり動作や掬い動作を行う構成に代えて、予め設定した所定時間(例えばしゃくり動作は1秒、掬い動作は2秒)の間、しゃくり動作や掬い動作を行うように構成してもよい。
【0135】
〔7〕バケット38の先端を掘削対象に突っ込ませる際の推進速度の設定は、掘削対象の種類や硬さなどに応じて種々の変更が可能である。
【0136】
〔8〕掘削積み込み制御で行われるしゃくり動作や掬い動作の回数、及び、それらの動作における推進速度の設定は、掘削対象の種類や硬さなどに応じて種々の変更が可能である。
【0137】
〔9〕移動作業機1として、例えば後輪20のみを駆動する2輪駆動型に構成されたものを採用してもよい。ちなみに、この場合には、掘削積み込み制御を行う前の掘削用移動制御の開始時(トラクタ5の推進でバケット38の先端が掘削対象物に到達する前の段階の一例)に行われる、トラクタ5に対するバケット38の高さ位置及び上下角度を掘削作業開始用の適正位置及び適正角度にするための制御作動において、そのときの適正角度を、バケット38の先端を掘削対象物に突入させた際に、後輪20が浮き上がるような機体5の姿勢の変化を防止できる角度に設定すれば、バケット38の先端を掘削対象物に突入させた際に、後輪20が浮き上がって、バケット38突入時の推進抵抗による動力の低下を検出手段Sによって検出することができなくなり、その検出に基づく制御手段49による所定の制御作動としての掘削積み込み制御が開始されなくなって、機体5の推進とフロントローダ6の作動とを適切に連動させた掘削積み込み状態が現出されなくなる、といった不都合の発生を未然に回避できることになる。
【0138】
〔10〕自動化装置3や半自動化装置98における推進用操作機構47や作業用操作機構48としては、油圧シリンダなどの油圧アクチュエータを備える油圧式、空気圧シリンダなどの空気圧アクチュエータを備える空気圧式、あるいは、電動シリンダなどの電動アクチュエータを備える電動式のいずれに構成されたものであってもよく、又、油圧式、空気圧式、及び電動式のいずれか又は全てが混在する状態に構成されたものであってもよい。
【0139】
〔11〕外部管理装置4としては、GPS(全地球測位システム)を利用して移動作業機1の位置を計測するように構成されたものであってもよく、GPSを利用して移動作業機1の位置を計測する計測装置を移動作業機1に搭載するようにしてもよい。
【0140】
〔12〕外部管理装置4としては、複数台のカメラ64を備えてより広範囲の作業領域A0での移動作業機1の位置管理を行えるように構成されたものであってもよい。
【0141】
〔13〕マーカ69としては、画像処理による位置計測が可能なものであれば、ストロボ以外の例えば発光ダイオードなどを採用するようにしてもよい。
【0142】
〔14〕マーカ69を移動作業機1の前後に所定間隔を隔てて並設し、それらの位置から外部管理装置4が移動作業機1の方位を割り出すように構成してもよい。
【0143】
〔15〕例えば赤外線センサなどにより移動作業機1のコース外への推進を検出するのに伴って移動作業機1を緊急停止させる緊急停止装置を装備するようにしてもよい。
【0144】
〔16〕ストロボ69の発光が常にカメラ64に向かうように、機体の旋回操作とともにストロボの回動操作をも行うように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】自動化システムの全体構成を示す概略平面図
【図2】自動化システムの構成を示す概略側面図
【図3】移動作業機の側面図
【図4】機体の構成を示す概略図
【図5】自動化装置の構成を示すブロック図
【図6】カメラとストロボの作動タイミングを示す図
【図7】作業領域と移動作業機の関係を示す平面図
【図8】掘削積み込み制御での動作タイミングを示す図
【図9】自動作業推進制御のフローチャート
【図10】掘削用移動制御のフローチャート
【図11】掘削積み込み制御のフローチャート
【図12】搬送制御のフローチャート
【図13】移載制御と基準復帰用移動制御のフローチャート
【図14】別実施例1での自動化システムの全体構成を示す概略平面図
【図15】別実施例1での移動作業機の後部側斜視図
【図16】別実施例1での自動化装置の構成を示すブロック図
【図17】別実施例1での自動作業推進制御のフローチャート
【図18】別実施例1での開始移動制御のフローチャート
【図19】別実施例1での往復耕耘制御のフローチャート
【図20】別実施例1での畦際耕耘制御のフローチャート
【図21】別実施例1での終了移動制御のフローチャート
【図22】別実施例2での移動作業機の側面図
【図23】別実施例2での機体の構成を示す概略図
【図24】別実施例2での半自動化装置の構成を示すブロック図
【図25】別実施例2での掘削積み込み制御での動作タイミングを示す図
【図26】別実施例2での掘削用移動制御のフローチャート
【符号の説明】
【0146】
5 機体
6 フロントローダ
37 ブーム
38 バケット
49 制御手段
S 検出手段
W 作業装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
推進抵抗による動力の変動を検出する検出手段と、作業装置の作動を制御する制御手段とを備え、前記検出手段からの検出値が適正値から設定値に低下するのに伴って、前記制御手段が、所定の制御作動を開始して所定の作業状態を現出するように構成してある移動作業機の自動化構造。
【請求項2】
前記制御手段による機体の推進制御が可能となるように構成し、
前記制御手段による前記所定の制御作動で、前記機体の推進と前記作業装置の作動とを制御して、前記所定の作業状態として、前記機体の推進と前記作業装置の作動とを連動させた作業状態を現出するように構成してある請求項1に記載の移動作業機の自動化構造。
【請求項3】
前記作業装置として、上下方向に揺動操作可能なバケットとブームとを備えたフロントローダを装備し、
前記機体の推進で、前記バケットの先端が前記掘削対象物に突入した際の推進抵抗で前記検出手段からの検出値が適正値から設定値に低下し、
その低下に伴って開始される前記所定の制御作動で、その制御作動の開始とともに推進動力の伝達を一時的に停止し、その一時停止後、前記所定の作業状態として、前記バケットの先端が前記機体の推進で掘削対象物に突き進みながら前記バケットの上昇揺動で掘削対象物を掻き取るしゃくり動作と、前記バケットの先端が前記機体の推進で掘削対象物に突き進みながら前記ブームの上昇揺動で掘削対象物を掬い取る掬い動作とが行われるように、前記機体の推進と前記フロントローダの作動とを連動させた掘削積み込み状態を現出するように構成してある請求項2に記載の移動作業機の自動化構造。
【請求項4】
前記掘削積み込み状態では、複数回の前記しゃくり動作を間欠的に行った後に前記掬い動作を行うように構成してある請求項3に記載の移動作業機の自動化構造。
【請求項5】
前記制御手段が、前記機体の推進で前記バケットの先端が掘削対象物に到達する前の段階で、前記機体に対する前記バケットの上下角度が、前記機体の推進で前記バケットの先端が掘削対象物に突入した際における前記機体の姿勢の変化を防止する所定の適正角度となるように、前記フロントローダの作動を制御するように構成してある請求項3又は4に記載の移動作業機の自動化構造。
【請求項1】
推進抵抗による動力の変動を検出する検出手段と、作業装置の作動を制御する制御手段とを備え、前記検出手段からの検出値が適正値から設定値に低下するのに伴って、前記制御手段が、所定の制御作動を開始して所定の作業状態を現出するように構成してある移動作業機の自動化構造。
【請求項2】
前記制御手段による機体の推進制御が可能となるように構成し、
前記制御手段による前記所定の制御作動で、前記機体の推進と前記作業装置の作動とを制御して、前記所定の作業状態として、前記機体の推進と前記作業装置の作動とを連動させた作業状態を現出するように構成してある請求項1に記載の移動作業機の自動化構造。
【請求項3】
前記作業装置として、上下方向に揺動操作可能なバケットとブームとを備えたフロントローダを装備し、
前記機体の推進で、前記バケットの先端が前記掘削対象物に突入した際の推進抵抗で前記検出手段からの検出値が適正値から設定値に低下し、
その低下に伴って開始される前記所定の制御作動で、その制御作動の開始とともに推進動力の伝達を一時的に停止し、その一時停止後、前記所定の作業状態として、前記バケットの先端が前記機体の推進で掘削対象物に突き進みながら前記バケットの上昇揺動で掘削対象物を掻き取るしゃくり動作と、前記バケットの先端が前記機体の推進で掘削対象物に突き進みながら前記ブームの上昇揺動で掘削対象物を掬い取る掬い動作とが行われるように、前記機体の推進と前記フロントローダの作動とを連動させた掘削積み込み状態を現出するように構成してある請求項2に記載の移動作業機の自動化構造。
【請求項4】
前記掘削積み込み状態では、複数回の前記しゃくり動作を間欠的に行った後に前記掬い動作を行うように構成してある請求項3に記載の移動作業機の自動化構造。
【請求項5】
前記制御手段が、前記機体の推進で前記バケットの先端が掘削対象物に到達する前の段階で、前記機体に対する前記バケットの上下角度が、前記機体の推進で前記バケットの先端が掘削対象物に突入した際における前記機体の姿勢の変化を防止する所定の適正角度となるように、前記フロントローダの作動を制御するように構成してある請求項3又は4に記載の移動作業機の自動化構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2006−16891(P2006−16891A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−197077(P2004−197077)
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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