説明

移動局装置

【課題】従来の無線通信システムは、移動局装置が複数の異なる無線方式の区間を移動するのに対応するため、複数の異なる無線方式に対応した受信装置を全て個別に搭載しなければならず、搭載台数分の実装スペースが必要である。更には、消費電力の増加がある。
【解決手段】移動局装置100は、複数の異なる無線システムの各々に対応する機能を有する第1〜第3受信部17〜19を通信部50内に搭載する。判定部24は、制御部23からの、各受信部17〜19の受信状態より正常に受信している受信部の受信情報と、無線システムがどの様な順番に配列されているかを記憶する記憶部25からの配列情報とを基に、移動局12が存在する区間の無線方式及び隣接する区間の無線方式を判定する。制御部23は、判定部24が選択するべきと判定した無線方式を通信部50に選択させる。これにより、無線システムの変化に応じて通信部50の無線方式が切り替えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、無線方式の異なる複数の無線システム間を移動する移動局が基地局と通信する無線システム(例えば列車無線システム)に関する。
【背景技術】
【0002】
第1の従来技術では、移動局は、それぞれの無線システムに対応した受信機を複数実装し、各受信機を動作させて、無線受信状態を常に監視し、正常に受信出来ている無線システムの方を選択することで、システム切替えを実現させている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
又、第2の従来技術では、移動局は、それぞれの無線システムに設定変更することで対応可能な一つの受信機を実装しており、移動局が、存在する基地局の無線システムに合せて動作することで、システム切替えを実現している(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開2001−267977号公報
【特許文献2】特開2006−324958号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
第1の従来技術では、移動局は、当該移動局が移動する異なる無線システムの種類に対応した数の受信機を実装し、各受信機を動作させねばならず、移動局が移動する無線システムの種類が更に増えれば増える程に、受信機の種類の種類が増え、その分の実装スペースと消費電力とが増えると言った問題点がある。
【0006】
第2の従来技術では、移動局が存在する基地局の無線システムに合せて一つの受信機を切替え動作させねばならず、システム切替えの判定及び受信機の設定変更に時間を要し、その間の通話の瞬断時間が長くなってしまうと言う問題点がある。しかも、設定変更後の受信機が存在する無線システムに合致しているかどうかは、設定変更後の受信機の動作により最終的に確認されるため、第2の従来技術は、第1の従来技術よりもシステム切替えの判定を誤るリスクを有する方法であると言える。
【0007】
この発明は斯かる技術状況に鑑みて成されたものであり、その目的は、移動する無線システムの種類に対応した数の受信機を全て移動局に搭載させることなく、異なる無線システムを移動局が跨って移動しても基地局との通信を継続可能な移動局装置を、より小型化及び低消費電力化すると共に、より瞬断時間が短く、確実な無線システム切替えを実現可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の主題は、各々が互いに異なる無線通信方式を用いて通信を行う複数の基地局がそれぞれ管轄する複数の管轄領域を移動する移動局に装備されていると共に、前記複数の管轄領域の各々に於いて前記移動局が存在している管轄領域内の基地局との間で当該基地局の無線通信方式を用いて通信を行う移動局装置であって、前記複数の無線通信方式を選択可能な複数の受信部を含む通信部と、前記複数の管轄領域がどのような順番に配列されているかを示す配列情報を記憶する記憶部と、前記記憶部からの前記配列情報と、前記通信部の受信状態から正常に受信している無線通信方式が含まれた受信情報とに基づいて前記複数の管轄領域の内で前記移動局が現在存在する管轄領域を判断し、前記複数の無線通信方式の内で前記移動局が現在存在する前記管轄領域の無線通信方式と前記管轄領域に隣接する管轄領域の無線通信方式とを判定する判定部と、前記通信部の受信状態から正常に受信している無線通信方式を検知して前記受信情報を生成して前記判定部に出力すると共に、前記判定部が前記配列情報と前記受信情報とから判定した各無線通信方式を前記複数の受信部に選択させる制御部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の主題によれば、全ての無線通信方式に個別に対応する受信部の全てを搭載する必要性が無く、省電力化及び装置の小型化を図ることが出来ると共に、隣接基地局への移動での瞬断時間が短く確実にシステムを切り替えることが出来る。
【0010】
以下、この発明の主題の様々な具体化を、添付図面を基に、その効果・利点と共に、詳述する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(実施の形態1)
以下、図1〜図4の図面を用いて、本実施の形態を詳細に記載する。
【0012】
本実施の形態では、移動局装置100は移動局12内に装備されている。この移動局12は、(1)第1無線通信方式を用いて通信を行う第1基地局が管轄する第1管轄領域と、(2)上記第1無線通信方式とは異なる第2無線通信方式を用いて通信を行う第2基地局が管轄する第2管轄領域と、(3)上記の第1無線通信方式及び第2無線通信方式とは異なる第3無線通信方式を用いて通信を行う第3基地局が管轄する第3管轄領域と、(4)上記の第1無線通信方式、第2無線通信方式及び第3無線通信方式とは異なる第4無線通信方式を用いて通信を行う第4基地局が管轄する第4管轄領域とを、移動する。従って、移動局12内に装備された移動局装置100は、移動局12と共に、第1管轄領域、第2管轄領域、第3管轄領域、及び第4管轄領域の各管轄領域を移動することとなる。図1は、第1無線方式区間が第1管轄領域に、第2無線方式区間が第2管轄領域に、第3無線方式区間が第3管轄領域に、第4無線方式区間が第4管轄領域に各々該当する一例を示している。
【0013】
本実施の形態では、移動局装置100が第1無線方式区間、第2無線方式区間、第3無線方式区間、及び第4無線方式区間を行き来する場合に、移動局装置100が、その区間の無線通信方式に対応した無線通信方式(以下「無線方式」とも言う。)を自動的に選択する点に、その特徴点がある。以下に於いて一例として記載する列車無線通信システムでは、移動局装置100は、互いに異なる無線方式(第1無線方式、第2無線方式、第3無線方式及び第4無線方式)のそれぞれに対応可能な3つの装置(後述の受信部及び送信部)を搭載しており、無線システムの変化に応じてその装置内に実装したソフトウエア又はロジック回路の設定変更により各装置が無線方式を切り替えることで、移動局装置100が現在存在する無線方式区間の無線方式と、移動局装置100が現在存在する無線方式区間に隣接する無線方式区間の無線方式とだけを動作させる。
【0014】
図1は、本実施の形態に於ける列車無線システムの構成を模式的に示す図である。図1に於いて、列車無線システムは、第1無線方式により通信を行う第1基地局1と、第2無線方式により通信を行う第2基地局2と、第3無線方式により通信を行う第3基地局3と、第4無線方式により通信を行う第4基地局4と、第1基地局あるいは第2基地局あるいは第3基地局あるいは第4基地局と通信を行う移動局装置100が装備された移動局12(列車)とを備える。第1基地局1には、漏洩同軸ケーブル(以下「LCX」という。)5が、移動局12が走行する線路の両側に敷設されており、第1基地局1の送信電波又は移動局12(移動局装置100)の送信電波を搬送する。同様に、LCX6は、第2基地局の送信波又は移動局12(移動局装置100)の送信電波を、LCX7は第3基地局の送信波又は移動局12(移動局装置100)の送信電波を、LCX8は第4基地局の送信波又は移動局12(移動局装置100)の送信電波を、各々搬送する。
【0015】
移動局装置100は、移動局12に装備されており、第1基地局1が管轄する第1無線方式区間と、第2基地局2が管轄する第2無線方式区間と、第3基地局3が管轄する第3無線方式区間と、第4基地局4が管轄する第4無線方式区間との間を移動する。
【0016】
図1に示すゾーン境界9は、移動局装置100が無線方式を第1無線方式あるいは第2無線方式に切り替えるエリアである。ゾーン境界10は、移動局装置100が無線方式を第2無線方式あるいは第3無線方式に切り替えるエリアである。ゾーン境界11は、移動局装置100が無線方式を第3無線方式あるいは第4無線方式に切り替えるエリアである。移動局装置100は、移動局12が第1無線方式区間から第2無線方式区間に移動する場合には、ゾーン境界9において、無線方式を第2無線方式に切り替える。逆に、移動局12が第2無線方式区間から第1無線方式区間に移動する場合には、移動局装置100は、ゾーン境界9において、無線方式を第1無線方式に切り替える。又、移動局装置100は、移動局12が第2無線方式区間から第3無線方式区間に移動する場合には、ゾーン境界10において、無線方式を第3無線方式に切り替える。逆に、移動局12が第3無線方式区間から第2無線方式区間に移動する場合には、移動局装置100は、ゾーン境界10において、無線方式を第2無線方式に切り替える。又、移動局装置100は、移動局12が第3無線方式区間から第4無線方式区間に移動する場合には、ゾーン境界11において、無線方式を第4無線方式に切り替える。逆に、移動局12が第4無線方式区間から第3無線方式区間に移動する場合には、移動局装置100は、ゾーン境界11において、無線方式を第3無線方式に切り替える。
【0017】
ここで、各ゾーン境界9、10及び11とは、当該ゾーン境界を挟んで隣り合う両LCXからの電波が重なり合う、数10メートルのエリアに該当する。それに対して、隣り合う両LCXの終端部分間の距離は数10センチメートルにすぎない。
【0018】
尚、無線方式の切り替えを、ゾーン境界9またはゾーン境界10またはゾーン境界11以外のエリアで行っても構わない。
【0019】
次に、図2を参照して、移動局装置100の構成を記載する。図2は、移動局装置100の構成を示すブロック図である。移動局装置100は、列車である移動局12内に設置される。図2に示す様に、移動局装置100は、アンテナ13と、通信部50と、制御部23と、判定部24と、記憶部25とを備える。通信部50は、分波器14と、分配器15と、合成器16と、第1受信部17と、第2受信部18と、第3受信部19と、第1送信部20と、第2送信部21と、第3送信部22とを備える。以下、各部の動作を記載する。
【0020】
分波器14は、送信信号と受信信号とを分離する。又、分配器15は、分波器14からの受信信号を分配する。又、合成器16は、受信した3個の送信信号を合成して合成後の信号を分波器14に送信する。
【0021】
第1受信部17と第2受信部18と第3受信部19とは、LCX5又はLCX6又はLCX7又はLCX8から漏れ出た電波を受信する。他方、第1送信部20と第2送信部21と第3送信部22とは、LCX5又はLCX6又はLCX7又はLCX8に電波を送信する。
【0022】
制御部23は、第1受信部17、第2受信部18、第3受信部19、第1送信部20、第2送信部21、及び第3送信部22の制御及び信号の受け渡しを行う。
【0023】
判定部24は、制御部23からの「受信情報」及び記憶部25からの「配列情報」の両信号によって、第1無線方式と第2無線方式と第3無線方式と第4無線方式との内で何れの方式を選択すべきかを判定し、その判定結果を制御部23へ通知する。
【0024】
記憶部25は、管轄領域が第1無線方式区間、第2無線方式区間、第3無線方式区間、及び第4無線方式区間の順番に配列されていることを記憶しており、その配列情報を判定部24に通知する。
【0025】
ここで、第1受信部17、第2受信部18、第3受信部19、第1送信部20、第2送信部21、第3送信部22の各々は、実装するソフトウエアの切り替えにより、第1無線方式、第2無線方式、第3無線方式、又は第4無線方式の切り替え(選択)が可能な構成を有する。尚、第1送信部20、第2送信部21、及び第3送信部22の構成に代えて、第1無線方式、第2無線方式、第3無線方式、及び第4無線方式の送信部を別々に実装する構成を採用しても良い。又、第1送信部20が実装するソフトウエアの切り替えにより、第1送信部20が第1無線方式、第2無線方式、第3無線方式、及び第4無線方式の切り替え(選択)を可能とし得る構成を有するのであれば、第2送信部21及び第3送信部22を移動装置100内に実装しない構成としても良い。
【0026】
次に、図3を参照して、移動局装置100の動作を記載する。ここで、図3は、移動局装置100の動作を示すフローチャートである。
【0027】
先ず、ステップS10に於いて、移動局装置100では、アンテナ13で受信した電波は、分波器14及び分配器15を介して、第1受信部17、第2受信部18、及び第3受信部19に送信される。
【0028】
第1無線方式区間に於いては、第1受信部17又は第2受信部18又は第3受信部19が、第1無線方式の受信部であれば正常に受信信号を復調することが出来るが、第1無線方式以外の受信部である場合には正常に受信信号を復調することが出来ない。同様に、第2無線方式区間、第3無線方式区間、及び第4無線方式区間の各々では、第1受信部17又は第2受信部18又は第3受信部19は、その区間の無線方式に合致した受信部であれば正常に受信信号を復調することが出来るが、合致しない無線方式の受信部であれば正常に受信信号を復調することが出来ない。つまり、第1受信部17、第2受信部18及び第3受信部19の内の何れかは、移動局装置100が存在する区間の無線方式に合致する必要がある。更に、第1送信部20、第2送信部21、及び第3送信部22の内の何れかは、移動局装置100が存在する区間の無線方式に合致する必要がある。
【0029】
次のステップS20に於いて、制御部23は、第1受信部17、第2受信部18及び第3受信部19の各々の受信状態から正常に復調(受信)している無線方式を検知し、その無線方式の受信情報を判定部24に出力する。
【0030】
ステップS30に於いて、判定部24は、制御部23からの「受信情報」と、記憶部25からの、管轄領域が第1無線方式区間、第2無線方式区間、第3無線方式区間、及び第4無線方式区間の順番に配列されていることを示す「配列情報」とを入力する。そして、判定部24は、上記の「受信情報」及び「配列情報」を基に、移動局装置100が存在している無線方式区間を検知し、移動局装置100が存在する無線方式区間の無線方式と、移動局装置100が存在する無線方式区間に隣接する無線方式区間の無線方式とを判定し、その判定結果を制御部23に通知する。
【0031】
ステップS40に於いて、制御部23は、判定部24より通知された判定結果を基に、第1受信部17、第2受信部18、第3受信部19、第1送信部20、第2送信部21、及び第3送信部22の各々に対して、無線方式の切り替え制御を行う。これにより、移動局装置100が存在している無線方式区間の無線方式と、当該無線方式区間に隣接する無線方式区間の無線方式が、それぞれ選択される。
【0032】
ステップS50に於いて、ステップS40に於ける選択処理により、第1受信部17、第2受信部18、第3受信部19、第1送信部20、第2送信部21、及び第3送信部22の内の何れか1組の受信部及び送信部が、移動局装置100が存在している無線方式区間の無線方式で動作する(当該無線方式での信号の送受信を行う。)。加えて、上記1組の受信部及び送信部以外の受信部及び送信部の内で、何れか2組の受信部及び送信部が、それぞれ、移動局装置100が存在している無線方式区間に隣接する無線方式区間の無線方式で動作する(隣接する無線方式区間の無線方式で受信の検知を行う。)。これにより、移動局装置100は、第1無線方式区間では第1基地局1と、第2無線方式区間では第2基地局2と、第3無線方式区間では第3基地局3と、第4無線方式区間では第4基地局4と、双方向の通信を行うことが可能になる。しかも、移動局装置100は、第1無線方式区間から第2無線方式区間、第2無線方式区間から第3無線方式区間、第3無線方式区間から第4無線方式区間、第4無線方式区間から第3無線方式区間、第3無線方式区間から第2無線方式区間、第2無線方式区間から第1無線方式区間への移動を検知することが出来る。
【0033】
尚、ステップS30及びS40に於ける判定部24による判定及び制御部23による無線方式の切り替えに於いては、隣接する無線方式区間の無線方式選択は第1受信部17又は第2受信部18又は第3受信部19だけとしても良く(送信部は必要がないため)、第1送信部20、第2送信部21、及び第3送信部22に対しては隣接する無線方式区間の無線方式を選択しなくても良い。
【0034】
又、ステップS30及びS40に於ける判定部24による判定及び制御部23による無線方式の切り替えに於いて、隣接する無線方式区間が1つしかない場合には、第1受信部17、第2受信部18、第3受信部19、第1送信部20、第2送信部21、及び第3送信部22の内の何れか1組(受信部及び送信部)を、隣接する無線方式区間の無線方式で動作しても良い。
【0035】
又、ステップS30及びステップS40に於ける判定部24による判定及び制御部23による無線方式の切り替え制御に於いて、各送信部20〜22の無線方式の選択に関しては、制御部23は、第1送信部20乃至第3送信部22の全てが、移動局装置100が現在存在している無線方式区間の無線方式(同一の無線方式)で動作する様に、各送信部20〜22に指示しても良い。
【0036】
以下では、図4を参照して、上記のステップS10〜S50で記載した内容を更に具体的に記載する。ここで、図4は、無線方式の切り替えを模式的に示す図である。
【0037】
先ず、図4に於いて、移動局12(移動局装置100)が第2無線方式区間から第3無線方式区間に移動する場合を考える。移動局12が、第2無線方式区間に存在する時点では、判定部24は、制御部23からの「受信情報」と記憶部25からの「配列情報」とを基に、現時点に於いて移動局12が第2無線方式区間におり、次の時点で移動する第1無線方式区間又は第3無線方式区間が第2無線方式区間に隣接していると判断する。この判断に基づき、判定部24は、現時点に於いて双方向に送受信すべき第2無線方式と、次の時点で送受信する第1無線方式及び第3無線方式を選択するべきと判定し、その判定結果を制御部23に通知する。この判定通知を受けた制御部23は、第2受信部18及び第2送信部21の1組を第2無線方式モードに、第1受信部17及び第1送信部20の1組を第1無線方式モードに、第3受信部19及び第3送信部22の1組を第3無線方式モードに、それぞれ指示する。これらの動作により、移動局装置100は、第2無線方式区間では、第2基地局2と双方向の通信を行うことが可能になる。しかも、移動局装置100は、隣接する第1無線方式区間及び第3無線方式区間に対する受信状態を監視することが出来る。
【0038】
次に、図4に於いて、移動局12が第3無線方式区間側に移動する場合を記載する。即ち、移動局12(移動局装置100)が第2無線方式区間からゾーン境界10のエリアに移動すると、第2無線方式を採用する第2受信部18は、第2無線方式を採用する第2基地局2の送信電波を受信することが出来なくなる。よって、移動局装置100の制御部23は、第2受信部18の受信状態が正常に復調できていないことを検知する。この検知に応じて、制御部23は、判定部24に対して、第2無線方式を正常に受信できないことを示す「受信情報」を通知すると共に、第2送信部21に対して送信停止を指示する。これを受けた第2送信部21は、送信を停止する。
【0039】
次に、図4に於いて、移動局12が第3無線方式区間内に移動した場合を記載する。即ち、移動局12(移動局装置100)が第3無線方式区間に移動すると、第3無線方式を採用する第3受信部19は、第3無線方式を採用する第3基地局3の送信電波を受信する。よって、移動局装置100の制御部23は、第3受信部19の受信状態が正常に復調できていることを検知する。このため、制御部23は、判定部24に対して、第3無線方式を正常に受信していることを示す「受信情報」を通知する。判定部24は、制御部23からの「受信情報」と記憶部25からの「配列情報」とを基に、現時点に於いて移動局12が第3無線方式区間におり、次の時点で移動する第4無線方式区間又は第2無線方式区間が第3無線方式区間に隣接していると判断する。この判断に基づき、判定部24は、現時点に於いて双方向に送受信すべき第3無線方式と、次の時点で送受信する第4無線方式及び第2無線方式とを選択するべきと判定し、当該判定結果を制御部23に通知する。この判定通知を受けた制御部23は、第3受信部19及び第3送信部22の1組を第3無線方式モードに、第1受信部17及び第1送信部20の1組を第4無線方式モードに、第2受信部18及び第2送信部21の1組を第2無線方式モードに、各々指示する。これらの無線方式の切り替え制御により、移動局装置100は、第3無線方式区間では、第3基地局3と双方向の通信を行うことが可能になる。しかも、移動局装置100は、第3無線方式区間に隣接する第2無線方式区間及び第4無線方式区間に対する受信状態を監視することが出来る。
【0040】
次に、移動局12(移動局装置100)が第3無線方式区間から第4無線方式区間に移動する場合について記載する。先ず、移動局12がゾーン境界11のエリアに移動すると、第3無線方式を採用する第3受信部19は第3基地局3の送信電波を受信することが出来なくなり、制御部23は第3受信部19の受信状態が正常に復調出来ていないことを検知して、その受信情報を判定部24に通知すると共に、第3送信部22に対して送信停止を指示する。次に、移動局12が第4無線方式区間に移動すると、第4無線方式を採用する第1受信部17は第4基地局4の送信電波を受信し、その結果、制御部23は、第1受信部17の受信状態が正常に復調出来ていることを検知し、第4無線方式の信号を正常に受信していることを示す受信情報を判定部24に送信する。判定部24は、制御部23からの上記受信情報と記憶部25からの配列情報とに基づいて、現時点に於いて移動局12は第4無線方式区間に存在しており、次の時点で移動する隣接無線方式区間は第3無線方式区間であると、判断する。そして、判定部24は、この判断に基づき、現時点に於いて双方向に送受信すべき第4無線方式と、次の時点で送受信する第3無線方式とを選択するべきであると判定し、その判定結果を制御部23に送信する。この判定結果を受信した制御部23は、第1受信部17及び第1送信部20の動作モードを第1無線方式モードから第4無線方式モードに切り替え、第2無線方式モードで動作している第2受信部18及び第2送信部21に対してはそのままの第2無線方式モードを維持させ、第3受信部19及び第3送信部22の動作モードをそのまま第3無線方式モードに維持させて、双方向送受信すべき第4無線方式モードの第1受信部17及び第1送信部20を選択することにより、第3基地局3から第4基地局4へと接続して双方向通信が可能になる。しかも、移動局装置100は、隣接する第3無線方式区間に対する受信状態を監視することが出来る。
【0041】
次に、移動局12(移動局装置100)が第4無線方式区間から第3無線方式区間に移動する場合について記載する。先ず、移動局12がゾーン境界11のエリアに移動すると、第4無線方式を採用する第1受信部17は第4基地局4の送信電波を受信することが出来なくなり、制御部23は第1受信部17の受信状態が正常に復調出来ていないことを検知して、その受信情報を判定部24に通知すると共に、第1送信部20に対して送信停止を指示する。次に、移動局12が第3無線方式区間に移動すると、第3無線方式を採用する第3受信部19は第3基地局3の送信電波を受信し、その結果、制御部23は、第3受信部19の受信状態が正常に復調出来ていることを検知し、第3無線方式の信号を正常に受信していることを示す受信情報を判定部24に送信する。判定部24は、制御部23からの上記受信情報と記憶部25からの配列情報とに基づいて、現時点に於いて移動局12は第3無線方式区間に存在しており、次の時点で移動する隣接無線方式区間は第2無線方式区間又は第4無線方式区間であると、判断する。そして、判定部24は、この判断に基づき、現時点に於いて双方向に送受信すべき第3無線方式と、次の時点で送受信する第2無線方式及び第4無線方式とを選択するべきであると判定し、その判定結果を制御部23に送信する。この判定結果を受信した制御部23は、第1受信部17及び第1送信部20を第4無線方式モードに、第2受信部18及び第2送信部21を第2無線方式モードに、第3受信部19及び第3送信部22を第3無線方式モードに切り替え、双方向送受信すべき第3無線方式モードの第3受信部19及び第3送信部22を選択することにより、第4基地局4から第3基地局3へと接続して、双方向通信が可能になる。しかも、移動局装置100は、隣接する第2無線方式区間及び第4無線方式区間に対する受信状態を監視することが出来る。
【0042】
次に、移動局12(移動局装置100)が第3無線方式区間から第2無線方式区間に移動する場合について記載する。先ず、移動局12がゾーン境界10のエリアに移動すると、第3無線方式を採用する第3受信部19は第3基地局3の送信電波を受信することが出来なくなり、制御部23は第3受信部19の受信状態が正常に復調出来ていないことを検知して、その受信情報を判定部24に通知すると共に、第3送信部22に対して送信停止を指示する。次に、移動局12が第2無線方式区間に移動すると、第2無線方式を採用する第2受信部18は第2基地局2の送信電波を受信し、その結果、制御部23は、第2受信部18の受信状態が正常に復調出来ていることを検知し、第2無線方式の信号を正常に受信していることを示す受信情報を判定部24に送信する。判定部24は、制御部23からの上記受信情報と記憶部25からの配列情報とに基づいて、現時点に於いて移動局12は第2無線方式区間に存在しており、次の時点で移動する隣接無線方式区間は第1無線方式区間又は第3無線方式区間であると、判断する。そして、判定部24は、この判断に基づき、現時点に於いて双方向に送受信すべき第2無線方式と、次の時点で送受信する第1無線方式及び第3無線方式とを選択するべきであると判定し、その判定結果を制御部23に送信する。この判定結果を受信した制御部23は、第1受信部17及び第1送信部20の動作モードを第4無線方式モードから第1無線方式モードに、第2受信部18及び第2送信部21を第2無線方式モードに、第3受信部19及び第3送信部22を第3無線方式モードに切り替え、双方向送受信すべき第2無線方式モードの第2受信部18及び第2送信部21を選択することにより、第3基地局3から第2基地局2へと接続して双方向通信が可能になる。しかも、移動局装置100は、隣接する第1無線方式区間、第3無線方式区間に対する受信状態を監視することが出来る。
【0043】
次に、移動局12(移動局装置100)が第2無線方式区間から第1無線方式区間に移動する場合について記載する。先ず、移動局12がゾーン境界9のエリアに移動すると、第2無線方式を採用する第2受信部18は第2基地局2の送信電波を受信することが出来なくなり、制御部23は第2受信部18の受信状態が正常に復調出来ていないことを検知して、その受信情報を判定部24に通知すると共に、第2送信部21に対して送信停止を指示する。次に、移動局12が第1無線方式区間に移動すると、第1無線方式を採用する第1受信部17は第1基地局1の送信電波を受信し、その結果、制御部23は、第1受信部17の受信状態が正常に復調出来ていることを検知し、第1無線方式の信号を正常に受信していることを示す受信情報を判定部24に送信する。判定部24は、制御部23からの上記受信情報と記憶部25からの配列情報とに基づいて、現時点に於いて移動局12は第1無線方式区間に存在しており、次の時点で移動する隣接無線方式区間は第2無線方式区間であると、判断する。そして、判定部24は、この判断に基づき、現時点に於いて双方向に送受信すべき第1無線方式と、次の時点で送受信する第2無線方式とを選択するべきであると判定し、その判定結果を制御部23に送信する。この判定結果を受信した制御部23は、第1受信部17及び第1送信部20を第1無線方式モードに、第2受信部18及び第2送信部21を第2無線方式モードに、第3受信部19及び第3送信部22を第3無線方式モードに切り替え(実質的には維持させ)、双方向送受信すべき第1無線方式モードの第1受信部17及び第1送信部20を選択することにより、第2基地局2から第1基地局1へと接続して双方向通信が可能になる。しかも、移動局装置100は、隣接する第2無線方式区間に対する受信状態を監視することが出来る。
【0044】
次に、移動局12(移動局装置100)が第1無線方式区間から第2無線方式区間に移動する場合について記載する。先ず、移動局12がゾーン境界9のエリアに移動すると、第1無線方式を採用する第1受信部17は第1基地局1の送信電波を受信することが出来なくなり、制御部23は第1受信部17の受信状態が正常に復調出来ていないことを検知して、その受信情報を判定部24に通知すると共に、第1送信部20に対して送信停止を指示する。次に、移動局12が第2無線方式区間に移動すると、第2無線方式を採用する第2受信部18は第2基地局2の送信電波を受信し、その結果、制御部23は、第2受信部18の受信状態が正常に復調出来ていることを検知し、第2無線方式の信号を正常に受信していることを示す受信情報を判定部24に送信する。判定部24は、制御部23からの上記受信情報と記憶部25からの配列情報とに基づいて、現時点に於いて移動局12は第2無線方式区間に存在しており、次の時点で移動する隣接無線方式区間は第3無線方式区間又は第1無線方式区間であると、判断する。そして、判定部24は、この判断に基づき、現時点に於いて双方向に送受信すべき第2無線方式と、次の時点で送受信する第3無線方式及び第1無線方式とを選択するべきであると判定し、その判定結果を制御部23に送信する。この判定結果を受信した制御部23は、第1受信部17及び第1送信部20を第1無線方式モードに、第2受信部18及び第2送信部21を第2無線方式モードに、第3受信部19及び第3送信部22を第3無線方式モードに切り替え(実質的には維持させ)、双方向送受信すべき第2無線方式モードの第2受信部18及び第2送信部21を選択することにより、第1基地局1から第2基地局2へと接続して双方向通信が可能になる。しかも、移動局装置100は、隣接する第1無線方式区間、第3無線方式区間に対する受信状態を監視することが出来る。
【0045】
以上の記載に於いては、移動局12が無線方式区間を移動して送信機及び受信機の無線方式を切り替える際に、切り替え前の無線方式と切り替え後の無線方式とが同一方式の場合には、その送信機及び受信機の無線方式を切り替える必要性がないので、継続動作で良いとしている。
【0046】
又、以上の例では、移動局12がどの無線方式区間に存在していても、第2受信部18及び第2送信部21は第2無線方式であって変更がなく、且つ、第3受信部19及び第3送信部22も第3無線方式であってその無線方式に変更がない。この様な場合、第2無線方式及び第3無線方式に関しては、それぞれ個別無線方式の受信部及び送信部としても良く、何れの無線方式にも対応可能な送信部及び受信部である必要性はない。
【0047】
以上の様に、本実施の形態によれば、異なる無線方式(第1無線方式、第2無線方式、第3無線方式及び第4無線方式)のそれぞれに対応可能な第1受信部17、第2受信部18、第3受信部19、第1送信部20、第2送信部21、及び第3送信部を搭載しており、移動局装置100が現在存在する無線方式区間によって、各受信部の無線方式をそれぞれ切り替える様に構成したので、移動局装置100が第1無線方式区間と第2無線方式区間と第3無線方式区間と第4無線方式区間とを跨って走行しても、異なる無線方式を個別に対応する受信機と送信機とを全て搭載することなく、第1基地局1、第2基地局2、第3基地局3、及び第4基地局4との通信を継続することが出来る。しかも、移動局装置100は隣接する無線方式区間の無線方式も常時受信可能な状態であるため、隣接する無線方式区間への移動に伴う瞬断時間がより短く、確実にシステムを切り替えることが出来る。
【0048】
尚、以上では第1無線方式から第4無線方式の4つの無線方式は一例であり、それ以外の無線方式の数の場合でも本実施の形態の技術的特徴点を適用することが出来る。
【0049】
本実施の形態の移動局装置100は、第1無線方式と第2無線方式と第3無線方式と第4無線方式との何れの通信方式をも選択可能な通信部50と、受信情報と配列情報とに基づいて無線方式を選択する判定部24を備えているので、何れの通信方式を採用する区間に於いても移動局装置100は基地局と通信することが出来る。又、無線方式毎に全ての通信装置を設ける必要性がないので、省電力化と装置の小型化とを図ることが出来る。
【0050】
又、本実施の形態の移動局装置100は、記憶部25の配列情報によって、隣接する管轄領域の無線方式も常時受信可能な状態にあるため、隣接する無線方式区間への移動での瞬断時間が短く、確実にシステムを切り替えることが出来る。
【0051】
又、本実施の形態の移動局装置100は、記憶部25の配列情報に基づいて判定部24が各受信部が採るべき無線方式を判定する構成を有しているため、無線方式区間の配列が変更になった場合、或いは、他の列車無線システムの配列に対応する場合に於いても、記憶部25が記憶する配列情報のみを変更するだけで、あらゆる無線方式配列に簡便に対応することが出来る。
【0052】
(実施の形態2)
図1、図5、図6及び図7の図面を用いて、実施の形態2を詳細に記載する。
【0053】
本実施の形態では、実施の形態1と同様に、移動局装置100は移動局12内に装備されている。この移動局12は、第1通信方式を用いて通信を行う第1基地局が管轄する第1管轄領域と、上記第1通信方式とは異なる第2通信方式を用いて通信を行う第2基地局が管轄する第2管轄領域と、上記第1通信方式及び上記第2通信方式とは異なる第3通信方式を用いて通信を行う第3基地局が管轄する第3管轄領域と、上記第1通信方式、上記第2通信方式及び上記第3通信方式の何れとも異なる第4通信方式を用いて通信を行う第4基地局が管轄する第4管轄領域とを、移動する。よって、移動局12内に装備された移動局装置100は、移動局12と共に、第1管轄領域、第2管轄領域、第3管轄領域、及び第4管轄領域を移動することとなる。
【0054】
本実施の形態は、移動局装置100が第1無線方式区間、第2無線方式区間、第3無線方式区間、及び第4無線方式区間を行き来する場合に於いて、その区間の無線方式に対応した通信方式を自動的に選択する実施形態である。以下に於いて本実施の形態の一例として記載する列車無線通信システムでは、移動局装置100は、各々が互いに異なる無線方式(第1無線方式、第2無線方式、第3無線方式及び第4無線方式)のそれぞれに対応可能な2つの受信部と2つの送信部とを搭載しており、各受信部及び各送信部の装置は、無線システムの変化に応じてその装置内に実装したソフトウエア又はロジック回路の設定変更により無線方式を切り替え、移動局装置100が現在存在する無線方式区間の無線方式と、移動局装置100の進行方向に向かって隣接する無線方式区間の無線方式とだけを動作させる点に、その特徴点がある。
【0055】
図1は、実施の形態2に於ける列車無線システムの構成を示す図である。図1の列車無線システムの構成は、実施の形態1で記載した構成と同様である。
【0056】
図5を参照して、本実施の形態に係る移動局装置100の構成を記載する。図5は、移動局装置100の構成を示すブロック図である。移動局装置100は、列車である移動局12内に装置される。図5に示す様に、移動局装置100は、アンテナ13と、通信部50と、制御部23と、判定部24と、及び記憶部25とを備える。通信部50は、分波器14と、分配器15と、合成器16と、第1受信部17と、第2受信部18と、第1送信部20と、及び第2送信部21とを備える。
【0057】
分波器14は、送信信号と受信信号とを分離する。分配器15は、受信信号を分配する。合成器16は、送信信号を合成する。
【0058】
第1受信部17及び第2受信部18は、LCX5またはLCX6またはLCX7またはLCX8から漏れ出た電波を受信する。第1送信部20及び第2送信部21は、LCX5またはLCX6またはLCX7またはLCX8に電波を送信する。
【0059】
制御部23は、第1受信部17、第2受信部18、第1送信部20、第2送信部21の制御及び信号の受け渡しを行う。
【0060】
判定部24は、制御部23からの「受信情報」と、記憶部25からの「配列情報」と、外部からの「方向情報」とによって、第1無線方式、第2無線方式、第3無線方式及び第4無線方式の内で何れの方式を選択すべきかを判定し、判定結果を制御部23へ通知する。
【0061】
記憶部25は、管轄領域が第1無線方式区間、第2無線方式区間、第3無線方式区間、及び第4無線方式区間の順番に配列されていることを記憶しており、その配列情報を判定部24に通知する。
【0062】
ここで、第1受信部17、第2受信部18、第1送信部20、及び第2送信部21の各々は、実装するソフトウエアの切り替えにより第1無線方式、第2無線方式、第3無線方式、及び第4無線方式の切り替え(選択)が可能な構成を有する。
【0063】
尚、第1送信部20及び第2送信部21については、以下の様に変形しても良い。即ち、第1送信部20及び第2送信部21を設ける代わりに、第1無線方式、第2無線方式、第3無線方式、及び第4無線方式の送信部を別々に実装する構成としても良い。或いは、第1送信部20が実装するソフトウエアの切り替えにより第1無線方式、第2無線方式、第3無線方式、及び第4無線方式の切り替え(選択)が可能な構成を有するのであれば、第2送信部21を実装しない構成としても良い。或いは、第1送信部20及び第2送信部21の動作方式を、共に、移動局12が現在存在する区間の無線方式に同一化しても良い。
【0064】
次に、図6を参照して、本実施の形態に係る移動局装置100の動作を記載する。図6は、移動局装置100の動作を示すフローチャートである。
【0065】
ステップS10に於いて、移動局装置100では、アンテナ13で受信した電波は、分波器14及び分配器15を介して、第1受信部17及び第2受信部18に送られる。
【0066】
第1無線方式区間に於いては、第1受信部17又は第2受信部18の動作方式が第1無線方式であれば受信信号を正常に復調することが出来るが、第1受信部17又は第2受信部18の動作方式が第1無線方式以外では正常に受信信号を復調することが出来ない。同様に、第2無線方式区間、第3無線方式区間、及び第4無線方式区間の各々では、その区間の無線方式に合致した第1受信部17又は第2受信部18であれば受信信号を正常に復調することが出来るが、その区間の無線方式に合致しない無線方式であれば受信信号を正常に復調することが出来ない。つまり、第1受信部17又は第2受信部18の内の何れか一方の動作方式は、移動局装置100が存在する区間の無線方式に合致する必要がある。更に、第1送信部20及び第2送信部21の内の何れか一方は、移動局装置100が存在する区間の無線方式に合致する必要がある。
【0067】
ステップS20に於いて、制御部23は、第1受信部17又は第2受信部18の受信状態から、正常に復調している無線方式を検知し、その受信情報を判定部24に出力する。
【0068】
ステップS30に於いて、判定部24は、制御部23からの「受信情報」と、記憶部25からの管轄領域が第1無線方式区間、第2無線方式区間、第3無線方式区間、第4無線方式区間の順番に配列されていることを示す「配列情報」と、外部からの移動局12がどちらの方向へ走行しているかを示す「方向情報」とを入力する。そして、判定部24は、「受信情報」と「配列情報」と「方向情報」とを基に、移動局装置100が現在存在している無線方式区間を検知し、移動局装置100が現在存在する無線方式区間の無線方式と、移動局装置100が走行する方向に隣接する無線方式区間の無線方式とを判定し、その判定結果を制御部23に通知する。
【0069】
ステップS40に於いて、制御部23は、通知された判定結果を基に、第1受信部17、第2受信部18、第1送信部20、及び第2送信部21に対して、無線方式の切り替え制御を行う。この制御により、移動局装置100が現在存在している無線方式区間の無線方式と、移動局装置100が走行する方向に隣接する無線方式区間の無線方式とが、それぞれ選択される。
【0070】
ステップS50に於いて、制御部23の切り替え制御に応じて、第1受信部17、第2受信部18、第1送信部20、及び第2送信部21の内の何れか1組(受信部、送信部)が、移動局装置100が現在存在している無線方式区間の無線方式で動作する。しかも、他の残りの1組(受信部、送信部)が、移動局装置100が走行する方向に隣接する無線方式区間の無線方式で動作する。これにより、移動局装置100は、第1無線方式区間では第1基地局1と、第2無線方式区間では第2基地局2と、第3無線方式区間では第3基地局3と、第4無線方式区間では第4基地局4と、それぞれ、双方向の通信を行うことが可能になる。しかも、移動局装置100は、第1無線方式区間から第2無線方式区間、第2無線方式区間から第3無線方式区間、第3無線方式区間から第4無線方式区間、第4無線方式区間から第3無線方式区間、第3無線方式区間から第2無線方式区間、及び第2無線方式区間から第1無線方式区間への移動を検知することが出来る。
【0071】
尚、ステップS30及びS40に於ける判定部24による判定及び制御部23による無線方式の切り替えに於いては、隣接する無線方式区間の無線方式選択は第1受信部17又は第2受信部18だけとしても良く(送信部は必要がないため)、第1送信部20及び第2送信部21に対しては隣接する無線方式区間の無線方式を選択しなくても良い。
【0072】
又、ステップS30及びS40に於ける判定部24による判定及び制御部23による無線方式の切り替えに於いて、移動局装置100が走行する方向に隣接する無線方式区間の無線方式が1つの無線方式もない場合には、第1受信部17、第2受信部18、第1送信部20及び第2送信部21の内の何れか1組は何れの無線方式としても良く、或いは、動作しないとしても良い。
【0073】
次に、図7を参照して、上記ステップS10〜S50で記載した内容を更に具体的に記載する。図7は、無線方式の切り替えを示す図である。
【0074】
先ず、図7に於いて、移動局12(移動局装置100)が第2無線方式区間から第3無線方式区間に移動する場合を考える。移動局12が、第2無線方式区間に存在する時点では、判定部24は、制御部23からの「受信情報」と記憶部25からの「配列情報」とを基に、現時点に於いて移動局12が第2無線方式区間にいることを判断する。更に、判定部24は、「受信情報」及び「配列情報」に加えて、外部からの「方向情報」をも基にして、次の時点で移動局12が移動する第3無線方式区間が「隣接している無線方式区間」であると判断する。この判断に基づき、判定部24は、現時点に於いて双方向に送受信すべき第2無線方式と、次の時点で送受信する第3無線方式とを選択するべきであると判定し、その判定結果を制御部23に通知する。この判定通知を受けた制御部23は、第2受信部18及び第2送信部21の1組に対しては第2無線方式モードで動作する様に指示し、第1受信部17及び第1送信部20の1組に対しては第3無線方式モードで動作する様に指示する。これらの制御指示により、移動局装置100は、第2無線方式区間では第2基地局2と双方向の通信をすることが可能になる。しかも、移動局装置100は、走行する方向に隣接する第3無線方式区間に対する受信状態を監視することが出来る。
【0075】
次に、図7に於いて、移動局12が第3無線方式区間側へと移動する場合を記載する。先ず、移動局12(移動局装置100)がゾーン境界10のエリア内に移動すると、第2無線方式を採用する第2受信部18は、第2無線方式を採用する第2基地局2の送信電波を受信することができなくなる。よって、移動局装置100の制御部23は、第2受信部18の受信状態が正常に復調できていないことを検知する。このため、制御部23は、判定部24に対して第2無線方式を正常に受信できないことを示す「受信情報」を通知すると共に、第2送信部21に対して送信停止を指示する。これを受けた第2送信部21は、送信を停止する。
【0076】
次に、図7に於いて、移動局12がゾーン境界10を抜けて第3無線方式区間内に移動した場合を記載する。移動局12(移動局装置100)が第3無線方式区間に移動すると、第3無線方式を採用する第1受信部17は、第3無線方式を採用する第3基地局3の送信電波を受信する。よって、移動局装置100の制御部23は、第1受信部17の受信状態が正常に復調できていることを検知する。このため、制御部23は、判定部24に対して、第3無線方式を正常に受信していることを示す「受信情報」を通知する。判定部24は、制御部23からの「受信情報」と、記憶部25からの「配列情報」と、外部からの「方向情報」とを基に、現時点に於いて移動局12が第3無線方式区間におり、次の時点で移動する第4無線方式区間が走行する方向に隣接している無線方式区間であると、判断する。この判断に基づき、判定部24は、現時点に於いて双方向に送受信すべき第3無線方式と、次の時点で送受信する第4無線方式とを選択するべきであると判定し、その判定結果を制御部23に通知する。この判定通知を受けた制御部23は、第1受信部17及び第1送信部20を第3無線方式モードに、第2受信部18及び第2送信部21を第4無線方式モードに指示する。これらの指示により、移動局装置100は、第3無線方式区間では、第3基地局3との間で双方向の通信を行うことが可能になる。しかも、移動局装置100は、走行する方向に隣接する第4無線方式区間に対する受信状態を監視することが出来る。
【0077】
尚、以上では、移動局装置100が無線方式区間を移動して送信機及び受信機の無線方式を切り替える際に、切り替え前の無線方式と切り替え後の無線方式とが同一方式の場合には、その送信機及び受信機の無線方式を切り替える必要性がなく、継続動作で良い。
【0078】
以上の通り、本実施の形態によれば、移動局装置100は異なる無線方式(第1無線方式、第2無線方式、第3無線方式及び第4無線方式)のそれぞれに対応可能な第1受信部17、第2受信部18、第1送信部20、及び第2送信部21を搭載し、移動局装置100が存在する無線方式区間によって、それぞれ無線方式を切り替える様に構成しているので、移動局装置100が第1無線方式区間と第2無線方式区間と第3無線方式区間と第4無線方式区間とを跨って走行しても、異なる無線方式に個別に対応する受信機及び送信機を全て搭載すること無く、第1基地局1、第2基地局2、第3基地局3、及び第4基地局4との通信を継続することが出来る。しかも、移動局装置100が走行する方向に隣接する無線方式区間の無線方式も常時受信可能な状態であるため、隣接する無線方式区間への移動での瞬断時間が短く、確実にシステムを切り替えることが出来る。加えて、実施の形態1と比較して、隣接する無線方式区間は移動局装置100が進行する方向に隣接する区間の無線方式のみで良いことから、第3受信部19及び第3送信部22を実装しなくても済むと言う利点があり、移動局装置100の更なる小型化を図ることが出来る。
【0079】
尚、以上の記載に於ける第1無線方式から第4無線方式までの4つの無線方式は一例であり、それ以外の無線方式の数でも本実施の形態の特徴点を同様に適用することが出来る。
【0080】
実施の形態2の移動局装置100は、第1無線方式と第2無線方式と第3無線方式と第4無線方式との何れの通信方式も選択可能な通信部50と、受信情報と配列情報と方向情報とに基づいて無線方式を選択する判定部24とを備えているので、何れの通信方式を採用する区間に於いても通信することが出来る。又、無線方式毎にすべて通信装置を設ける必要性が無いので、省電力化及び装置の小型化を図ることが出来る。
【0081】
実施の形態2の移動局装置100では、記憶部25の「配列情報」と外部からの「方向情報」とによって判定部24は移動局装置100が走行する方向に隣接する無線方式区間を判定して制御部23は移動局装置100が走行する方向に隣接する無線方式区間の無線方式も常時受信可能な状態にあるため、隣接する無線方式区間への移動での瞬断時間が短く、確実にシステムを切り替えることが出来る。
【0082】
実施の形態2の移動局装置100では、記憶部25の「配列情報」と外部からの「方向情報」とによって判定部24が無線方式を判定する構成であるため、無線方式区間の配列が変更になった場合、又は、他の列車無線システムの配列に対応する場合でも、記憶部25の記憶する配列情報のみを変更するだけで、あらゆる無線方式配列に簡便に対応することが出来る。
【0083】
(実施の形態3)
図8〜図11を用いて、実施の形態3の特徴点を記載する。本実施の形態では、移動局装置100は、移動局12内に装備されている。この移動局12は、第1通信方式を用いて通信を行う第1基地局が管轄する第1管轄領域と、第1通信方式とは異なる第2通信方式を用いて通信を行う第2基地局が管轄する第2管轄領域と、第1通信方式および第2通信方式とは異なる第3通信方式を用いて通信を行う第3基地局が管轄する第3管轄領域と、第1通信方式、第2通信方式及び第3通信方式とは異なる第4通信方式を用いて通信を行う第4基地局が管轄する第4管轄領域とを、移動する。よって、移動局12内に装備された移動局装置100は、移動局12と共に、第1管轄領域、第2管轄領域、第3管轄領域、及び第4管轄領域を移動することとなる。図8の一例では、第1無線方式区間が第1管轄領域に、第2無線方式区間が第2管轄領域に、第3無線方式区間が第3管轄領域に、第4無線方式区間が第4管轄領域に、各々該当する。
【0084】
本実施の形態では、移動局装置100が第1無線方式区間、第2無線方式区間、第3無線方式区間、及び第4無線方式区間を行き来する場合に、その時々の区間の無線方式に対応した無線通信方式を移動局装置100が自動的に選択する点に、その特徴点がある。以下に於いて記載する「列車無線通信システム」では、移動局装置100は、互いに異なる無線方式(第1無線方式、第2無線方式、第3無線方式及び第4無線方式)のそれぞれに対応可能な2つの装置(後述の受信部及び送信部)を搭載しており、各装置は無線通信システムの変化に応じてその装置内に実装したソフトウエア又はロジック回路の設定変更により無線方式を切り替え、その結果、移動局装置100は、移動局装置100が現在存在する無線方式区間の無線方式と、現在存在する無線方式区間に隣接する無線方式区間の無線方式だけを動作させる。
【0085】
図8は、本実施の形態に係る列車無線システムの構成を示す図である。列車無線システムは、第1無線方式により通信を行う第1−1基地局31〜第1−3基地局33と、第2無線方式により通信を行う第2−1基地局34〜第2−3基地局36と、第3無線方式により通信を行う第3−1基地局37〜第3−3基地局39と、第4無線方式により通信を行う第4−1基地局40〜第4−3基地局42と、第1−1基地局〜第4−3基地局のそれぞれの基地局と通信を行う移動局装置100が装備された移動局12(列車)とを、備えている。第1−1基地局31には、漏洩同軸ケーブル(以下「LCX」という。)61が、移動局12が走行する線路の両側に敷設されており、第1−1基地局31の当該基地局番号を含んだ送信電波又は移動局12(移動局装置100)の送信電波を搬送する。同様に、それぞれのLCXは、各々に対応する基地局の基地局番号を含んだ送信波又は移動局12(移動局装置100)の送信電波を搬送する。
【0086】
尚、第1−1基地局31〜第1−3基地局33、第2−1基地局34〜第2−3基地局36、及び第3−1基地局37〜第3−3基地局39の各々を、総称して、「管轄基地局」と定義する。
【0087】
移動局装置100は、移動局12内に装備されており、第1−1基地局31〜第1−3基地局33が管轄する第1無線方式区間と、第2−1基地局34〜第2−3基地局36が管轄する第2無線方式区間と、第3−1基地局37〜第3−3基地局39が管轄する第3無線方式区間と、第4−1基地局40〜第4−3基地局42が管轄する第4無線方式区間との間を移動する。
【0088】
図4のゾーン境界9は、移動局装置100が無線方式を第1無線方式あるいは第2無線方式に切り替えるエリアである。ゾーン境界10は、移動局装置100が無線方式を第2無線方式あるいは第3無線方式に切り替えるエリアである。ゾーン境界11は、移動局装置100が無線方式を第3無線方式あるいは第4無線方式に切り替えるエリアである。
【0089】
移動局装置100は、移動局装置100が第1無線方式区間から第2無線方式区間に移動する場合には、ゾーン境界9に於いて、無線方式を第2無線方式に切り替える。逆に、移動局装置100が第2無線方式区間から第1無線方式区間に移動する場合には、移動局装置100は、ゾーン境界9に於いて、無線方式を第1無線方式に切り替える。又、移動局装置100は、移動局装置100が第2無線方式区間から第3無線方式区間に移動する場合には、ゾーン境界10に於いて、無線方式を第3無線方式に切り替える。逆に、移動局装置100が第3無線方式区間から第2無線方式区間に移動する場合には、移動局装置100は、ゾーン境界10に於いて、無線方式を第2無線方式に切り替える。又、移動局装置100は、移動局装置100が第3無線方式区間から第4無線方式区間に移動する場合には、ゾーン境界11に於いて、無線方式を第4無線方式に切り替える。逆に、移動局装置100が第4無線方式区間から第3無線方式区間に移動する場合には、移動局装置100は、ゾーン境界11に於いて、無線方式を第3無線方式に切り替える。
【0090】
これらのゾーン境界9、ゾーン境界10及びゾーン境界11は、各ゾーン境界を挟んで隣り合う各LCXから漏れ出た電波同士が重なり合う、数10メートルの距離に亘る、エリアである。
【0091】
尚、無線方式の切り替えを、ゾーン境界9、ゾーン境界10及びゾーン境界11以外のエリアで行っても構わない。
【0092】
図9を参照して、移動局装置100の構成を記載する。図9は、移動局装置100の構成を示すブロック図である。移動局装置100は、列車である移動局12内に装置される。図9に示す様に、移動局装置100は、アンテナ13と、通信部50と、制御部23と、判定部24と、記憶部25とを備える。通信部50は、分波器14と、分配器15と、合成器16と、第1受信部17と、第2受信部18と、第1送信部20と、第2送信部21とを備える。
【0093】
分波器14は、送信信号と受信信号とを分離する。分配器15は、受信信号を分配する。合成器16は、送信信号を合成する。
【0094】
第1受信部17及び第2受信部18は、各LCXから漏れ出た電波を受信する。又、第1送信部20及び第2送信部21は、各LCXに電波を送信する。
【0095】
制御部23は、第1受信部17、第2受信部18、第1送信部20、第2送信部21の制御及び信号の受け渡しを行う。
【0096】
判定部24は、制御部23からの「受信情報」及び記憶部25からの「配列情報」(基地局情報)に基づいて、第1無線方式、第2無線方式、第3無線方式及び第4無線方式の内でどの無線方式を選択すべきかを判定し、その判定結果を制御部23へ通知する。
【0097】
記憶部25は、(1)管轄領域が第1無線方式区間、第2無線方式区間、第3無線方式区間、及び第4無線方式区間の順番に配列されていること、並びに、(2)第1無線方式区間が第1−1基地局31、第1−2基地局32、及び第1−3基地局33の順番に、第2無線方式区間が第2−1基地局34、第2−2基地局35、及び第2−3基地局36の順番に、第3無線方式区間が第3−1基地局37、第3−2基地局38、及び第3−3基地局39の順番に、第4無線方式区間が第4−1基地局40、第4−2基地局41、及び第4−3基地局42の順番に、それぞれ配列されていることを、「配列情報」(基地局情報)として記憶しており、その「配列情報」(基地局情報)を判定部24に通知する。
【0098】
ここで、第1受信部17、第2受信部18、第1送信部20、及び第2送信部21の各々は、実装するソフトウエアの切り替えにより、第1無線方式、第2無線方式、第3無線方式、及び第4無線方式への切り替え(選択)が可能な構成を有する。尚、第1送信部20及び第2送信部21の配設に代えて、第1無線方式、第2無線方式、第3無線方式、及び第4無線方式の送信部を別々に実装する構成としても良い。又、第1送信部20が、同部20内に実装するソフトウエアの切り替えにより、第1無線方式、第2無線方式、第3無線方式、及び第4無線方式の切り替え(選択)が可能な構成を有している場合には、第2送信部21を実装しない構成としても良い。或いは、第1送信部20及び第2送信部21は、共に、移動局装置100が現在存在する無線方式区間の無線方式(同一の無線方式)で以って動作することとしても良い。
【0099】
次に、図10を参照して、移動局装置100の動作を記載する。図10は、移動局装置100の動作を示すフローチャートである。
【0100】
ステップS10に於いて、移動局装置100では、アンテナ13から受信した電波は、分波器14及び分配器15を介して、第1受信部17及び第2受信部18に送られる。
【0101】
第1無線方式区間に於いては、第1受信部17又は第2受信部18が第1無線方式であれば第1受信部17又は第2受信部18は正常に復調することが出来るが、第1無線方式以外の場合には第1受信部17又は第2受信部18は正常に復調出来ない。同様に、第2無線方式区間、第3無線方式区間、及び第4無線方式区間の各々では、その区間の無線方式に合致した第1受信部17又は第2受信部18であれば第1受信部17又は第2受信部18は正常に復調出来るが、合致しない無線方式であれば第1受信部17又は第2受信部18は正常に復調出来ない。つまり、第1受信部17又は第2受信部18の内の何れかは、移動局装置100が存在する区間の無線方式に合致する必要性がある。更に、第1送信部20及び第2送信部21の内の何れかは、移動局装置100が存在する区間の無線方式に合致する必要性がある。
【0102】
ステップS20に於いて、制御部23は、第1受信部17又は第2受信部18の受信状態から正常に受信した受信信号から電波を送信した基地局番号を検知し、その基地局の情報を「受信情報」として判定部24に出力する。
【0103】
ステップS30に於いて、判定部24は、制御部23からの「受信情報」と、記憶部25からの、管轄領域が第1無線方式区間、第2無線方式区間、第3無線方式区間、及び第4無線方式区間の順番で配列され、且つ、各無線方式区間内の基地局の順番の配列を示す「配列情報」(基地局情報)とを、入力する。判定部24は、上記の「受信情報」及び「配列情報」(基地局情報)に基づいて、移動局装置100が現在存在している無線方式区間(基地局のエリア)を検知し、移動局装置100が現在存在する無線方式区間の無線方式と、移動局装置100が現在存在する無線方式区間(或る基地局のエリア)に隣接する無線方式区間(或る基地局に隣接する基地局のエリア)の無線方式とを判定し、その判定結果を制御部23に通知する。
【0104】
ステップS40に於いて、制御部23は、通知された判定結果を基に、第1受信部17、第2受信部18、第1送信部20、及び第2送信部21に対して、切り替え制御を行う。これにより、移動局装置100が現在存在している無線方式区間(或る基地局のエリア)の無線方式と、当該無線方式区間に隣接する無線方式区間(或る基地局に隣接する基地局のエリア)の無線方式とが、それぞれ選択される。
【0105】
ステップS50に於いて、制御部23による切り替え制御により、第1受信部17、第2受信部18、第1送信部20、及び第2送信部21の内の何れか1組が、移動局装置100が現在存在している無線方式区間(或る基地局のエリア)の無線方式で動作する。又、残りの1組が、上記或る基地局に隣接する基地局の無線方式で動作する。これにより、移動局装置100は、第1無線方式区間では第1基地局1(31〜33)と、第2無線方式区間では第2基地局2(34〜36)と、第3無線方式区間では第3基地局3(37〜39)と、第4無線方式区間では第4基地局4(40〜42)と、双方向の通信を行うことが可能になる。又、移動局装置100は、第1無線方式区間から第2無線方式区間、第2無線方式区間から第3無線方式区間、第3無線方式区間から第4無線方式区間、第4無線方式区間から第3無線方式区間、第3無線方式区間から第2無線方式区間、第2無線方式区間から第1無線方式区間への移動を検知することが出来る。
【0106】
尚、ステップS30及びS40に於ける判定部24による判定及び制御部23による無線方式の切り替えに於いては、隣接する無線方式区間の無線方式選択は第1受信部17又は第2受信部18だけとしても良く(送信部は必要がないため)、第1送信部20及び第2送信部21に対しては隣接する無線方式区間の無線方式を選択しなくても良い。
【0107】
又、ステップS30及びS40に於ける判定部24による判定及び制御部23により切り替えに於いては、隣接する基地局の無線方式が、移動局装置100が現在存在している基地局の無線方式と同じ場合には、第1受信部17、第2受信部18、第1送信部20、第2送信部21の内の何れか1組は、どの無線方式であっても良く、又は動作しなくても良い。
【0108】
以下に、図11を参照して、上記のステップS10〜S50で記載した内容を、更に具体的に記載する。図11は、本実施の形態に於ける無線方式の切り替えを示す図である。
【0109】
先ず、図11に於いて、移動局12(移動局装置100)が、第2無線方式区間の第2−3基地局36から第3無線方式区間の第3−1基地局37に移動する場合を考える。移動局12が、第2無線方式区間の第2−3基地局36と通信している時点では、判定部24は、制御部23からの「受信情報」と記憶部25からの「配列情報」(基地局情報)とを基に、現時点に於いて移動局装置100は第2無線方式区間に存在しており、次の時点で移動する第2−2基地局35又は第3−1基地局37が、移動局装置100が現在存在している区間に隣接している区間であると、判断する。即ち、判定部24は、次の時点で移動する第2無線方式の第2−2基地局35と、第2無線方式とは異なる第3無線方式である第3−1基地局37とが、隣接していると、判断する。この判断に基づき、判定部24は、現時点に於いて双方向に送受信すべき第2無線方式と、次の時点で送受信する第2無線方式及び第3無線方式とを選択するべきと判定し、その判定結果を制御部23に通知する。この判定通知を受けた制御部23は、第2受信部18及び第2送信部21の1組を第2無線方式モードに、第1受信部17及び第1送信部20の1組を第3無線方式モードに、それぞれ指示する。これらの切り替え指示により、移動局装置100は、第2無線方式区間では、第2−3基地局36と双方向の通信を行うことが可能になる。しかも、移動局装置100は、隣接する第3無線方式区間に対する受信状態を監視することが出来る。
【0110】
次に、図11に於いて、移動局12が第3無線方式区間に移動する場合を説明する。先ず、移動局12(移動局装置100)がゾーン境界10のエリアに移動すると、第2無線方式を採用する第2受信部18は、第2無線方式を採用する第2−3基地局36の送信電波を受信することが出来なくなる。よって、移動局装置100の制御部23は、第2受信部18の受信状態が正常に復調できていないことを検知する。このため、制御部23は、判定部24に対して第2無線方式を正常に受信できないことを示す「受信情報」を通知すると共に、第2送信部21に対して送信停止を指示する。これを受けた第2送信部21は、送信を停止する。
【0111】
次に、図11に於いて、移動局12が第3無線方式区間の第3−1基地局37に移動する場合を記載する。移動局12(移動局装置100)が第3無線方式区間の第3−1基地局37に移動すると、第3無線方式を採用する第1受信部17は、第3無線方式を採用する第3−1基地局37の送信電波を受信する。よって、移動局装置100の制御部23は、第1受信部17の受信状態が正常に復調できており、受信信号に含まれる基地局番号の情報から第3−1基地局37と通信出来ることを検知する。このため、制御部23は、判定部24に対して、第3無線方式の第3−1基地局37と通信出来ることを示す「受信情報」を通知する。判定部24は、制御部23からの「受信情報」及び記憶部25からの「配列情報」(基地局情報)に基づいて、現時点に於いて移動局装置100は第3無線方式区間の第3−1基地局37のエリアにおり、次の時点で移動する第2無線方式区間の第2−3基地局36のエリア又は第3無線方式区間の第3−2基地局38のエリアが隣接していると、判断する。この判断に基づき、判定部24は、現時点に於いて双方向に送受信すべき第3無線方式と、次の時点で送受信する第2無線方式及び第3無線方式とを選択するべきであると判定し、その判定結果を制御部23に通知する。この判定通知を受けた制御部23は、第1受信部17及び第1送信部20を第3無線方式モードに、第2受信部18及び第2送信部21を第2無線方式モードに、各々指示する。これらの指示により、移動局装置100は、第3無線方式区間では、第3−1基地局37と双方向の通信を行うことが可能になる。しかも、移動局装置100は、隣接する第2無線方式区間の第2−3基地局36及び第3無線方式区間の第3−2基地局38に対する受信状態を監視することが出来る。
【0112】
尚、以上の場合に於いては、移動局装置100が無線方式区間を移動して送信機及び受信機の無線方式を切り替える際に、切り替え前の無線方式と切り替え後の無線方式とが同一方式である場合には、その送信機及び受信機の無線方式を切り替える必要性がないので、継続動作で良い。
【0113】
以上に記載した様に、本実施の形態によれば、移動局装置100は、互いに異なる無線方式(第1無線方式、第2無線方式、第3無線方式及び第4無線方式)のそれぞれに対応可能な第1受信部17、第2受信部18、第1送信部20、及び第2送信部21を搭載しており、移動局装置100が存在する無線方式区間に応じて、第1受信部17、第2受信部18、第1送信部20及び第2送信部21のそれぞれの無線方式を切り替える様に構成しているので、移動局装置100が第1無線方式区間と第2無線方式区間と第3無線方式区間と第4無線方式区間とを跨って走行しても、異なる無線方式を個別に対応する受信機と送信機とを全て搭載することなく、第1−1基地局31との通信から第4−3基地局42との通信までを継続することが出来る。しかも、無線方式が異なる隣接する基地局の無線方式も常時受信可能な状態であるため、隣接する基地局への移動での瞬断時間が短く、確実にシステムを切り替えることが出来る。
【0114】
尚、以上に記載した第1無線方式から第4無線方式までの4つの無線方式は一例であり、それ以外の無線方式の数でも良い。
【0115】
又、各管轄基地局は、必ずしも3個以上の基地局の配列から構成されている必要性は無く、各管轄基地局が、同一管轄領域内で、異なる無線方式の管轄領域に隣接する2つの基地局の配列からのみから構成されていても良い。
【0116】
実施の形態3の移動局装置100は、第1無線方式と第2無線方式と第3無線方式と第4無線方式との何れの通信方式も選択可能な通信部50と、受信情報と配列情報とに基づいて無線方式を選択する判定部24とを備えているので、何れの通信方式を採用する区間に於いても通信することが出来る。又、無線方式毎にすべて通信装置を設ける必要がないので、省電力化及び装置の小型化を図ることが出来る。
【0117】
実施の形態3の移動局装置100は、記憶部25の配列情報と、通信部50から制御部23へ入力された信号から基地局番号を示す受信情報とによって、判定部24が隣接する基地局の無線方式を判断し、その判断を受けて通信部50が隣接する基地局の無線方式の電波も常時受信可能な状態にあるため、隣接する無線方式区間への移動での瞬断時間が短く、確実にシステムを切り替えることが出来る。
【0118】
実施の形態3の移動局装置100は、記憶部25の配列情報によって判定部24が無線方式を判定する構成であるため、基地局の配列が変更になった場合、又は、無線方式区間の配列が変更になった場合、又は、他の列車無線システムの配列に対応する場合に於いても、記憶部25の記憶する「配列情報」(基地局情報)のみを変更するだけで、あらゆる無線方式配列に簡便に対応することが出来る。
【0119】
(実施の形態1及び2の変形例)
列車無線システムでは、移動局(列車)12が現在存在している移動局自体の位置情報が、距離情報として、移動局12の走行を監視している外部装置から移動局12へ送信されて来る。この位置情報ないしは距離情報と各無線方式区間との対応関係を示すテーブルを判定部24が備えているならば、この位置情報ないしは距離情報を、実施の形態1又は2では制御部23が送信していた「受信情報」に取って代わる情報として、判定部24は、「配列情報」と共に利用して、移動局12が現在存在している無線方式区間の無線方式と、当該無線方式区間に隣接する無線方式区間の無線方式とを判断して、その判断結果を制御部23に送信し、制御部23は、その判断結果に応じて、通信部50内の各受信部の動作モードを切り替え制御することも可能である。
【0120】
(各実施の形態に共通する変形例)
通信部50内の各受信装置が故障した場合に備えて、故障した受信装置の代替として動作する、列車無線システムで採用されている全ての異なる通信方式を選択可能な予備用の受信装置を、移動局装置100内に搭載しておいても良い。
【0121】
(付記)
以上、本発明の実施の形態を詳細に開示し記述したが、以上の記述は本発明の適用可能な局面を例示したものであって、本発明はこれに限定されるものではない。即ち、記述した局面に対する様々な修正や変形例を、この発明の範囲から逸脱することの無い範囲内で考えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】実施の形態1の一例に係る列車無線システムの構成を示す図である。
【図2】実施の形態1に係る移動局装置の構成を示すブロック図である。
【図3】実施の形態1に係る移動局装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】実施の形態1に於ける無線方式の切り替えの記載を示す図である。
【図5】実施の形態2に係る移動局装置の構成を示すブロック図である。
【図6】実施の形態2に係る移動局装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】実施の形態2に於ける無線方式の切り替えの記載を示す図である。
【図8】実施の形態3の一例に係る列車無線システムの構成を示す図である。
【図9】実施の形態3に係る移動局装置の構成を示すブロック図である。
【図10】実施の形態3に係る移動局装置の動作を示すフローチャートである。
【図11】実施の形態3に於ける無線方式の切り替えの記載を示す図である。
【符号の説明】
【0123】
1〜4 基地局、5〜8 LCX(漏洩同軸ケーブル)、9〜11 ゾーン境界、12 移動局、13 アンテナ、14 分波器、15 分配器、16 合成器、17〜19 受信部、20〜22 送信部、23 制御部、24 判定部、25 記憶部、31〜42 基地局、50 通信部、61〜72 LCX(漏洩同軸ケーブル)、100 移動局装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が互いに異なる無線通信方式を用いて通信を行う複数の基地局がそれぞれ管轄する複数の管轄領域を移動する移動局に装備されていると共に、前記複数の管轄領域の各々に於いて前記移動局が存在している管轄領域内の基地局との間で当該基地局の無線通信方式を用いて通信を行う移動局装置であって、
前記複数の無線通信方式を選択可能な複数の受信部を含む通信部と、
前記複数の管轄領域がどのような順番に配列されているかを示す配列情報を記憶する記憶部と、
前記記憶部からの前記配列情報と、前記通信部の受信状態から正常に受信している無線通信方式が含まれた受信情報とに基づいて前記複数の管轄領域の内で前記移動局が現在存在する管轄領域を判断し、前記複数の無線通信方式の内で前記移動局が現在存在する前記管轄領域の無線通信方式と前記管轄領域に隣接する管轄領域の無線通信方式とを判定する判定部と、
前記通信部の受信状態から正常に受信している無線通信方式を検知して前記受信情報を生成して前記判定部に出力すると共に、前記判定部が前記配列情報と前記受信情報とから判定した各無線通信方式を前記複数の受信部に選択させる制御部とを備えたことを特徴とする、
移動局装置。
【請求項2】
各々が互いに異なる無線通信方式を用いて通信を行う複数の基地局がそれぞれ管轄する複数の管轄領域を移動する移動局に装備されていると共に、前記複数の管轄領域の各々に於いて前記移動局が存在している管轄領域内の基地局との間で当該基地局の無線通信方式を用いて通信を行う移動局装置であって、
前記複数の無線通信方式を選択可能な複数の受信部を含む通信部と、
前記複数の管轄領域がどのような順番に配列されているかを示す配列情報を記憶する記憶部と、
前記記憶部からの前記配列情報と、前記通信部の受信状態から正常に受信している無線通信方式が含まれた受信情報と、前記移動局が前記複数の管轄領域をどちらの方向に進行するかを示す方向情報とに基づいて、前記複数の管轄領域の内で前記移動局が現在存在する管轄領域を判断すると共に、前記複数の無線通信方式の内で前記移動局が現在存在する前記管轄領域と前記移動局の進行方向に隣接する管轄領域の無線通信方式を判定する判定部と、
前記通信部の受信状態から正常に受信している無線通信方式を検知して前記受信情報を生成して前記判定部に出力すると共に、前記判定部が前記配列情報と前記受信情報と前記方向情報とから判定した各無線通信方式を前記複数の受信部に選択させる制御部とを備えたことを特徴とする、
移動局装置。
【請求項3】
各々が互いに異なる無線通信方式を用いて通信を行う管轄基地局によってそれぞれが管轄される複数の管轄領域を移動する移動局に装備されている移動局装置であり、前記複数の管轄領域の各々の前記管轄基地局は少なくとも同一管轄領域内で異なる無線通信方式の管轄領域に隣接する2つの基地局の配列で構成されており、前記複数の管轄領域の各々に於いて前記移動局が存在している管轄領域内の基地局との間で当該基地局の無線通信方式を用いて通信を行う移動局装置であって、
前記複数の無線通信方式を選択可能な複数の受信部を含む通信部と、
前記複数の管轄領域がどの様な順番で配列されているかを示す情報と、前記複数の管轄領域の各々の前記管轄基地局に関して当該管轄基地局を構成する複数の基地局が如何なる順番で配列されているかを示す情報とを、基地局情報として、記憶する記憶部と、
前記記憶部からの前記基地局情報と、前記通信部の受信状態から或る基地局との間で正常に通信出来ることを示す受信情報とに基づいて、前記移動局が現在存在する前記或る基地局のエリアに於ける双方向に送受信すべき無線通信方式と、前記移動局が現在存在する前記或る基地局のエリアに隣接する基地局の無線通信方式とを判定する判定部と、
前記通信部の受信状態から正常に復調出来ている受信信号に含まれる基地局番号の情報から双方向通信出来る基地局が前記或る基地局であることを検知して、当該検知結果から前記或る基地局との間で正常に通信出来ることを示す前記受信情報を生成して前記判定部に出力すると共に、前記判定部が前記受信情報と前記基地局情報とから判定した各無線通信方式を前記複数の受信部に選択させる制御部とを備えたことを特徴とする、
移動局装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の移動局装置であって、
前記判定部は、前記受信情報の代替情報として、前記移動局の位置を示す位置情報を入力することを特徴とする、
移動局装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載の移動局装置であって、
前記通信部は、
故障した受信部の代替として動作する、前記複数の無線通信方式を選択可能な予備用の受信部を更に搭載していることを特徴とする、
移動局装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載の移動局装置であって、
前記記憶部は、その記憶する情報を、前記判定部とは独立して変更出来ることを特徴とする、
移動局装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−164989(P2009−164989A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−1888(P2008−1888)
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】