移動式クレーン用油圧回路
【課題】 クローラクレーンにブームの一時的煽り現象を解消するための退避行動を可能とさせるクローラクレーン用油圧回路を提供する。
【解決手段】 油圧ポンプ1に連通するメインライン2の油圧を解放可能なメイン切換バルブ3を備える。走行操作用リモコンバルブ5、旋回操作用の油圧シリンダ6およびウインチ操作用リモコンバルブ7は、メイン切換バルブ3の上流側のメインライン2から分岐した各パイロットライン4A,4B,4Cにそれぞれ設ける。ウインチ操作用リモコンバルブ7へのパイロットライン4Cには、油圧を解放可能な第1のサブ切換バルブ8を介設する。メイン切換バルブ3は、セーフティレバーリミットスイッチ14のオフにより油圧を解放するように構成する。第1のサブ切換バルブ8は、バックストップリミットスイッチ13のオフにより油圧を解放するように構成する。
【解決手段】 油圧ポンプ1に連通するメインライン2の油圧を解放可能なメイン切換バルブ3を備える。走行操作用リモコンバルブ5、旋回操作用の油圧シリンダ6およびウインチ操作用リモコンバルブ7は、メイン切換バルブ3の上流側のメインライン2から分岐した各パイロットライン4A,4B,4Cにそれぞれ設ける。ウインチ操作用リモコンバルブ7へのパイロットライン4Cには、油圧を解放可能な第1のサブ切換バルブ8を介設する。メイン切換バルブ3は、セーフティレバーリミットスイッチ14のオフにより油圧を解放するように構成する。第1のサブ切換バルブ8は、バックストップリミットスイッチ13のオフにより油圧を解放するように構成する。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、土木建設作業などに使用される移動式クレーンの油圧回路に関し、詳しくは、ブームの起こし過ぎを防止するためのバックストップリミットスイッチが作動した場合には、ウインチ操作のみを不能として機体の走行操作および旋回操作を可能とする移動式クレーン用油圧回路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】土木建設作業などに使用されるクローラクレーンをはじめとする移動式クレーンは、通常、機体の走行操作、旋回操作およびウインチ操作などを行うための油圧回路を備えている。図9は、従来のクローラクレーン用油圧回路の一例を示しており、油圧ポンプPに連通するメインラインMLには、その作動油をタンクTにドレインすることで油圧を解放可能なメイン切換バルブMVが設けられている。このメイン切換バルブMVの下流側のメインラインMLから分岐する各パイロットラインPLには、旋回操作用のアクチュエータである油圧シリンダHC、ウインチ操作用リモコンバルブWRVおよび走行操作用リモコンバルブMRVがそれぞれ設けられている。そして、油圧シリンダHCに油圧を供給するパイロットラインPLには、油圧シリンダHC側の作動油をタンクTにドレインすることで油圧を解放可能なサブ切換バルブSVが介設されている。
【0003】前記メイン切換バルブMVは、バネ復帰式の2位置4ポートのソレノイドバルブであり、通常はソレノイドの励磁によりメインラインMLを開いており、ソレノイドの励磁が解除されるとバネ復帰してメインラインMLの作動油をタンクTにドレインするように構成されている。また、前記油圧シリンダHCは、油圧の解放により機体旋回用の油圧モータHMに制動力を加え、油圧の供給により前記油圧モータHMへの制動力を解除するバネ復帰式の油圧シリンダである。そして、前記サブ切換バルブSVは、バネ復帰式の2位置3ポートのソレノイドバルブであり、通常はソレノイドの励磁によりパイロットラインPLを開いており、ソレノイドの励磁が解除されるとバネ復帰して油圧シリンダHC側の作動油をタンクTにドレインするように構成されている。
【0004】ここで、クローラクレーンには、通常、ブームが起き過ぎた場合にそのブームと係合してオフされる常閉のバックストップリミットスイッチと、作業者が機体を離れる際に安全性を確保するために手動操作でオフされる常閉のセーフティレバーリミットスイッチとが装備されている。そして、前記メイン切換バルブMVは、これらのバックストップリミットスイッチまたはセーフティレバーリミットスイッチのオフによってソレノイドの励磁が解除されるように制御用のスイッチ回路が構成されている。図10はそのスイッチ回路の一例であり、電源間にはバックストップリミットスイッチBLSとセーフティレバーリミットスイッチSLSとが並列に接続されている。そして、前記バックストップリミットスイッチBLSにはリレーコイルRが直列に接続されており、前記セーフティレバーリミットスイッチSLSには前記リレーコイルRの励磁によりオンする常開のリレー接点R−aと、前記メイン切換バルブMVのソレノイドMVSとが直列に接続されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、従来のクローラクレーン用油圧回路においては、地盤の傾斜や風等の影響によりクローラクレーンのブームが一時的に煽られてバックストップリミットスイッチBLSがオフした場合であっても、一旦バックストップリミットスイッチBLSがオフすると、図11に示すように、リレーコイルRの励磁が解除されて常開のリレー接点R−aがオフし、メイン切換バルブMVのソレノイドMVSの励磁が解除される。このため、メイン切換バルブMVは、図12R>2に示すようにバネ復帰してメインラインMLの作動油をタンクTにドレインしてしまう。その結果、油圧シリンダHCは油圧が解放されてバネ復帰することにより機体旋回用の油圧モータHMに制動力を加える。また、ウインチ操作用リモコンバルブWRVおよび走行操作用リモコンバルブMRVは共に油圧が解放されて機能停止する。従って、クローラクレーンは走行操作、旋回操作およびウインチ操作の全てが不能となり、ブームの一時的煽り現象を解消する退避行動ができなくなってしまうという問題がある。
【0006】そこで、本発明は、移動式クレーンにブームの一時的煽り現象を解消するための退避行動を可能とさせる移動式クレーン用油圧回路を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記の課題を解決する手段として、本発明に係る移動式クレーン用油圧回路は、油圧ポンプに連通するメインラインにその油圧を解放可能なメイン切換バルブを設け、このメイン切換バルブと前記油圧ポンプとの間のメインラインから分岐した各パイロットラインにそれぞれ走行操作用リモコンバルブ、旋回操作用アクチュエータおよびウインチ操作用リモコンバルブを設けた移動式クレーン用油圧回路であって、少なくとも前記ウインチ操作用リモコンバルブへ油圧を供給するパイロットラインには、ウインチ操作用リモコンバルブ側の油圧を解放可能なサブ切換バルブを設け、前記メイン切換バルブは、移動式クレーンに装備されたセーフティレバーリミットスイッチの作動により油圧を解放するように切換制御される構成とし、前記サブ切換バルブは、移動式クレーンに装備されたバックストップリミットスイッチの作動により油圧を解放するように切換制御される構成としたことを特徴とする。
【0008】本発明に係る移動式クレーン用油圧回路では、前記セーフティレバーリミットスイッチおよびバックストップリミットスイッチが非作動の状態のとき、油圧ポンプからの油圧がメインラインおよび各パイロットラインを介して走行操作用リモコンバルブ、旋回操作用アクチュエータおよびウインチ操作用リモコンバルブに供給されるため、移動式クレーンは走行操作、旋回操作およびウインチ操作が全て可能となる。ここで、前記バックストップリミットスイッチのみが作動すると、サブ切換バルブが切換制御されて前記ウインチ操作用リモコンバルブ側のパイロットラインの油圧のみを解放するため、移動式クレーンはウインチ操作のみが不能となり、走行操作および旋回操作は可能となる。そして、前記セーフティレバーリミットスイッチが作動すると、メイン切換バルブが切換制御されてメインラインの油圧を解放するため、移動式クレーンは走行操作、旋回操作およびウインチ操作が全て不能となる。
【0009】本発明の移動式クレーン用油圧回路において、前記走行操作用リモコンバルブ側のパイロット油圧を解放可能な第2のサブ切換バルブをそのパイロットラインに設け、前記旋回操作用アクチュエータ側のパイロット油圧を解放可能な第3のサブ切換バルブをそのパイロットラインに設けると、移動式クレーンは、第2のサブ切換バルブの切換操作により走行操作が不能となり、第3のサブ切換バルブの切換操作により旋回操作が不能となる。
【0010】本発明の移動式クレーン用油圧回路において、前記旋回操作用アクチュエータは、通常、油圧の解放により機体旋回用の油圧モータに制動力を加え、油圧の供給により前記油圧モータへの制動力を解除するバネ復帰式油圧シリンダで構成されるが、他のアクチュエータで構成してもよい。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明に係る移動式クレーン用油圧回路の実施形態を説明する。参照する図面において、図1は一実施形態に係るクローラクレーン用油圧回路の定常状態を示す油圧回路図、図2は一実施形態に係るクローラクレーン用油圧回路を制御するスイッチ回路の定常状態を示すスイッチ回路図である。
【0012】本発明の一実施形態に係るクローラクレーン用油圧回路は、クローラクレーンの機体の走行操作、旋回操作およびウインチ操作などを行うための油圧回路であり、図1に示すように、油圧源としての油圧ポンプ1と、この油圧ポンプ1の吐出側に連通するメインライン2に介設されたメイン切換バルブ3と、このメイン切換バルブ3の上流側の油圧ポンプ1との間のメインライン2から分岐する各パイロットライン4A,4B,4Cにそれぞれ設けられた走行操作用リモコンバルブ5、旋回操作用アクチュエータとしての油圧シリンダ6、ウインチ操作用リモコンバルブ7を備えている。
【0013】前記ウインチ操作用リモコンバルブ7に油圧を供給するパイロットライン4Cには、第1のサブ切換バルブ8が介設されている。同様に、前記走行操作用リモコンバルブ5に油圧を供給するパイロットライン4Aには、第2のサブ切換バルブ9が介設され、前記油圧シリンダ6に油圧を供給するパイロットライン4Bには第3のサブ切換バルブ10が介設されている。
【0014】前記メイン切換バルブ3は、バネ復帰式の2位置4ポートのソレノイドバルブであり、通常はソレノイドの励磁によりメインライン2を開いている。そして、このメイン切換バルブ3は、ソレノイドの励磁が解除されるとバネ復帰することにより、その上流側および下流側のメインライン2の作動油をタンク11にドレインしてメインライン2の油圧を解放するように構成されている。
【0015】前記走行操作用リモコンバルブ5は、クローラクレーンの前進、後退、旋回などの走行操作を制御する機能を有する。また、前記ウインチ操作用リモコンバルブ7は、クローラクレーンのウインチの各種操作を制御する機能を有する。
【0016】一方、前記油圧シリンダ6は、バネ復帰式の単動油圧シリンダからなり、油圧の解放によりバネ復帰して機体旋回用の油圧モータ12に制動力を加え、油圧の供給により前記油圧モータ12への制動力を解除するように構成されている。
【0017】前記第1のサブ切換バルブ8は、バネ復帰式の2位置3ポートのソレノイドバルブからなり、通常はソレノイドの励磁によりパイロットライン4Cを開いている。そして、この第1のサブ切換バルブ8は、ソレノイドの励磁が解除されると、バネ復帰してウインチ操作用リモコンバルブ7側の作動油をタンク11にドレインすることにより、ウインチ操作用リモコンバルブ7側の油圧を解放するように構成されている。
【0018】前記第2のサブ切換バルブ9も第1のサブ切換バルブ8と同様のバネ復帰式の2位置3ポートのソレノイドバルブからなり、通常はソレノイドの励磁によりパイロットライン4Aを開いている。そして、この第2のサブ切換バルブ9は、ソレノイドの励磁が解除されると、バネ復帰して走行操作用リモコンバルブ5側の作動油をタンク11にドレインすることにより、走行操作用リモコンバルブ5側の油圧を解放するように構成されている。
【0019】前記第3のサブ切換バルブ10も第1のサブ切換バルブ8と同様のバネ復帰式の2位置3ポートのソレノイドバルブからなり、通常はソレノイドの励磁によりパイロットライン4Bを開いている。そして、この第3のサブ切換バルブ10は、ソレノイドの励磁が解除されると、バネ復帰して油圧シリンダ6側の作動油をタンク11にドレインすることにより、油圧シリンダ6側の油圧を解放するように構成されている。
【0020】ここで、前記メイン切換バルブ3は、クローラクレーンに装備されたセーフティレバーリミットスイッチのオフによってソレノイドの励磁が解除されるようにスイッチ回路が構成され、前記第1のサブ切換バルブ8は、クローラクレーンに装備されたバックストップリミットスイッチのオフによってソレノイドの励磁が解除されるようにスイッチ回路が構成されている。
【0021】図2は、前記スイッチ回路の一例を示しており、電源間にはバックストップリミットスイッチ13と、前記第1のサブ切換バルブ8のソレノイド8Aと、セーフティレバーリミットスイッチ14と、前記メイン切換バルブ3のソレノイド3Aとが相互に並列に接続されている。そして、前記バックストップリミットスイッチ13にはリレーコイル15が直列に接続されており、このリレーコイル15の励磁によりオンする常開のリレー接点15Aが前記サブ切換バルブ8のソレノイド8Aに直列に接続されている。また、前記セーフティレバーリミットスイッチ14にはリレーコイル16が直列に接続されており、このリレーコイル16の励磁によりオンする常開のリレー接点16Aが前記メイン切換バルブ3のソレノイド3Aに直列に接続されている。
【0022】以上のように構成された一実施形態のクローラクレーン用油圧回路では、図2に示すように、クローラクレーンに装備されたバックストップリミットスイッチ13およびセーフティレバーリミットスイッチ14が共に非作動のオン状態のとき、リレーコイル15の励磁によりその常開のリレー接点15Aがオンして第1のサブ切換バルブ8のソレノイド8Aを励磁し、同時にリレーコイル16の励磁によりその常開のリレー接点16Aがオンしてメイン切換バルブ3のソレノイド3Aを励磁する。このため、図1に示すように、第1のサブ切換バルブ8はパイロットライン4Cを開くように切換制御され、メイン切換バルブ3はメインライン2を開くように切換制御される。なお、この場合、第2のサブ切換バルブ9は、図示しない他のスイッチ回路によりパイロットライン4Aを開くように切換制御され、第3のサブ切換バルブ10は、図示しない他のスイッチ回路によりパイロットライン4Bを開くように切換制御されているものとする。
【0023】すなわち、前記バックストップリミットスイッチ13およびセーフティレバーリミットスイッチ14が共に非作動のオン状態の場合、油圧ポンプ1からの油圧がメインライン2および各パイロットライン4A,4B,4Cを介して走行操作用リモコンバルブ5、油圧シリンダ6およびウインチ操作用リモコンバルブ7に供給される。従って、クローラクレーンは走行操作用リモコンバルブ5による走行操作、油圧シリンダ6が油圧モータ12の制動力を解除することによる機体の旋回操作、および、ウインチ操作用リモコンバルブ7によるウインチ操作の全てが可能となる。
【0024】ここで、図3に示すように、前記バックストップリミットスイッチ13のみが作動してオフすると、リレーコイル15の励磁が解除され、その常開のリレー接点15Aがオフして第1のサブ切換バルブ8のソレノイド8Aの励磁が解除される。このため、図4に示すように、第1のサブ切換バルブ8のみがウインチ操作用リモコンバルブ7側のパイロットライン4Cの作動油をタンク11にドレインしてその油圧を解放するように切換制御される。
【0025】すなわち、前記バックストップリミットスイッチ13のみが作動してオフした場合、油圧ポンプ1からの油圧がメインライン2および各パイロットライン4A,4Bを介して走行操作用リモコンバルブ5および油圧シリンダ6に供給される。従って、クローラクレーンは走行操作用リモコンバルブ5による走行操作、および、油圧シリンダ6が油圧モータ12の制動力を解除することによる機体の旋回操作が可能となり、ウインチ操作用リモコンバルブ7によるウインチ操作のみが不能となる。その結果、図5に示すように、例えば傾斜した地盤の影響によりクローラクレーンCCのブームBが一時的に煽られてバックストップリミットスイッチ13が作動した場合においても、クローラクレーンCCは走行操作および旋回操作が可能となり、ブームBの一時的煽り現象を解消するための退避行動が可能となる。
【0026】一方、図6に示すように、クローラクレーンのオペレータの操作により前記セーフティレバーリミットスイッチ14のみが作動してオフすると、リレーコイル16の励磁が解除され、その常開のリレー接点16Aがオフしてメイン切換バルブ3のソレノイド3Aの励磁が解除される。このため、図7に示すように、メイン切換バルブ3のみがメインライン2の上流側および下流側の作動油をタンク11にドレインしてその油圧を解放するように切換制御される。
【0027】すなわち、前記セーフティレバーリミットスイッチ14のみが作動してオフした場合、走行操作用リモコンバルブ5、油圧シリンダ6、ウインチ操作用リモコンバルブ7側の各パイロットライン4A,4B,4Cの油圧が全てメインライン2を介してタンク11にドレインされてしまう。従って、クローラクレーンは走行操作用リモコンバルブ5による走行操作およびウインチ操作用リモコンバルブ7によるウインチ操作が不能となり、また、油圧シリンダ6がバネ復帰して油圧モータ12に制動力を加えるため、機体の旋回操作も不能となり、安全性が確保される。
【0028】なお、一実施形態のクローラクレーン用油圧回路において、例えば走行操作用リモコンバルブ5へのパイロットライン4Aに介設する第2のサブ切換バルブ9を図8に示すように減圧弁17に変更すれば、走行操作用リモコンバルブ5の低圧化、小型化が可能となり、使用可能な走行操作用リモコンバルブ5の選択範囲が拡大してコストダウンも期待できる。パイロットライン4Cに介設する第1のサブ切換バルブ8やパイロットライン4Bに介設する第3のサブ切換バルブ10を減圧弁に変更した場合についても同様の効果が期待できる。
【0029】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る移動式クレーン用油圧回路では、移動式クレーンに装備されたセーフティレバーリミットスイッチおよびバックストップリミットスイッチが非作動の状態のとき、油圧ポンプからの油圧がメインラインおよび各パイロットラインを介して走行操作用リモコンバルブ、旋回操作用アクチュエータおよびウインチ操作用リモコンバルブに供給されるため、移動式クレーンは走行操作、旋回操作およびウインチ操作が全て可能となる。ここで、前記バックストップリミットスイッチのみが作動すると、サブ切換バルブが切換制御されて前記ウインチ操作用リモコンバルブ側のパイロットラインの油圧のみを解放するため、移動式クレーンはウインチ操作のみが不能となり、走行操作および旋回操作は可能となる。そして、前記セーフティレバーリミットスイッチが作動すると、メイン切換バルブが切換制御されてメインラインの油圧を解放するため、移動式クレーンは走行操作、旋回操作およびウインチ操作が全て不能となる。
【0030】従って、本発明に係る移動式クレーン用油圧回路によれば、地盤の傾斜や風等の影響によりブームが一時的に煽られてバックストップリミットスイッチが作動した場合、移動式クレーンを走行操作および旋回操作することができ、ブームの一時的煽り現象を解消するための退避行動が可能となる。
【0031】本発明の移動式クレーン用油圧回路において、前記走行操作用リモコンバルブ側のパイロット油圧を解放可能な第2のサブ切換バルブをそのパイロットラインに設け、前記旋回操作用アクチュエータ側のパイロット油圧を解放可能な第3のサブ切換バルブをそのパイロットラインに設けると、第2のサブ切換バルブの切換操作により移動式クレーンの走行操作を選択的に不能とし、第3のサブ切換バルブの切換操作により移動式クレーンの旋回操作を選択的に不能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るクローラクレーン用油圧回路の定常状態を示す油圧回路図である。
【図2】一実施形態に係るクローラクレーン用油圧回路を制御するスイッチ回路の定常状態を示すスイッチ回路図である。
【図3】図2に示すスイッチ回路のバックストップリミットスイッチのオフ状態を示すスイッチ回路図である。
【図4】図1に示すクローラクレーン用油圧回路のバックストップリミットスイッチのオフ状態を示す油圧回路図である。
【図5】一実施形態に係るクローラクレーン用油圧回路により退避行動するクローラクレーンの作用説明図である。
【図6】図2に示すスイッチ回路のセーフティレバーリミットスイッチのオフ状態を示すスイッチ回路図である。
【図7】図1に示すクローラクレーン用油圧回路のセーフティレバーリミットスイッチのオフ状態を示す油圧回路図である。
【図8】一実施形態に係るクローラクレーン用油圧回路の変更例を示す油圧回路図である。
【図9】一従来例に係るクローラクレーン用油圧回路の定常状態を示す油圧回路図である。
【図10】一従来例に係るクローラクレーン用油圧回路を制御するスイッチ回路の定常状態を示すスイッチ回路図である。
【図11】一従来例に係るスイッチ回路のバックストップリミットスイッチのオフ状態を示すスイッチ回路図である。
【図12】一従来例に係るクローラクレーン用油圧回路のバックストップリミットスイッチのオフ状態を示す油圧回路図である。
【符号の説明】
1…油圧ポンプ
2…メインライン
3…メイン切換バルブ
3A…ソレノイド
4A,4B,4C…パイロットライン
5…走行操作用リモコンバルブ
6…油圧シリンダ
7…ウインチ操作用リモコンバルブ
8…第1のサブ切換バルブ
8A…ソレノイド
9…第2のサブ切換バルブ
10…第3のサブ切換バルブ
11…タンク
12…油圧モータ
13…バックストップリミットスイッチ
14…セーフティレバーリミットスイッチ
15,16…リレーコイル
15A,16A…リレー接点
17…減圧弁
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、土木建設作業などに使用される移動式クレーンの油圧回路に関し、詳しくは、ブームの起こし過ぎを防止するためのバックストップリミットスイッチが作動した場合には、ウインチ操作のみを不能として機体の走行操作および旋回操作を可能とする移動式クレーン用油圧回路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】土木建設作業などに使用されるクローラクレーンをはじめとする移動式クレーンは、通常、機体の走行操作、旋回操作およびウインチ操作などを行うための油圧回路を備えている。図9は、従来のクローラクレーン用油圧回路の一例を示しており、油圧ポンプPに連通するメインラインMLには、その作動油をタンクTにドレインすることで油圧を解放可能なメイン切換バルブMVが設けられている。このメイン切換バルブMVの下流側のメインラインMLから分岐する各パイロットラインPLには、旋回操作用のアクチュエータである油圧シリンダHC、ウインチ操作用リモコンバルブWRVおよび走行操作用リモコンバルブMRVがそれぞれ設けられている。そして、油圧シリンダHCに油圧を供給するパイロットラインPLには、油圧シリンダHC側の作動油をタンクTにドレインすることで油圧を解放可能なサブ切換バルブSVが介設されている。
【0003】前記メイン切換バルブMVは、バネ復帰式の2位置4ポートのソレノイドバルブであり、通常はソレノイドの励磁によりメインラインMLを開いており、ソレノイドの励磁が解除されるとバネ復帰してメインラインMLの作動油をタンクTにドレインするように構成されている。また、前記油圧シリンダHCは、油圧の解放により機体旋回用の油圧モータHMに制動力を加え、油圧の供給により前記油圧モータHMへの制動力を解除するバネ復帰式の油圧シリンダである。そして、前記サブ切換バルブSVは、バネ復帰式の2位置3ポートのソレノイドバルブであり、通常はソレノイドの励磁によりパイロットラインPLを開いており、ソレノイドの励磁が解除されるとバネ復帰して油圧シリンダHC側の作動油をタンクTにドレインするように構成されている。
【0004】ここで、クローラクレーンには、通常、ブームが起き過ぎた場合にそのブームと係合してオフされる常閉のバックストップリミットスイッチと、作業者が機体を離れる際に安全性を確保するために手動操作でオフされる常閉のセーフティレバーリミットスイッチとが装備されている。そして、前記メイン切換バルブMVは、これらのバックストップリミットスイッチまたはセーフティレバーリミットスイッチのオフによってソレノイドの励磁が解除されるように制御用のスイッチ回路が構成されている。図10はそのスイッチ回路の一例であり、電源間にはバックストップリミットスイッチBLSとセーフティレバーリミットスイッチSLSとが並列に接続されている。そして、前記バックストップリミットスイッチBLSにはリレーコイルRが直列に接続されており、前記セーフティレバーリミットスイッチSLSには前記リレーコイルRの励磁によりオンする常開のリレー接点R−aと、前記メイン切換バルブMVのソレノイドMVSとが直列に接続されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、従来のクローラクレーン用油圧回路においては、地盤の傾斜や風等の影響によりクローラクレーンのブームが一時的に煽られてバックストップリミットスイッチBLSがオフした場合であっても、一旦バックストップリミットスイッチBLSがオフすると、図11に示すように、リレーコイルRの励磁が解除されて常開のリレー接点R−aがオフし、メイン切換バルブMVのソレノイドMVSの励磁が解除される。このため、メイン切換バルブMVは、図12R>2に示すようにバネ復帰してメインラインMLの作動油をタンクTにドレインしてしまう。その結果、油圧シリンダHCは油圧が解放されてバネ復帰することにより機体旋回用の油圧モータHMに制動力を加える。また、ウインチ操作用リモコンバルブWRVおよび走行操作用リモコンバルブMRVは共に油圧が解放されて機能停止する。従って、クローラクレーンは走行操作、旋回操作およびウインチ操作の全てが不能となり、ブームの一時的煽り現象を解消する退避行動ができなくなってしまうという問題がある。
【0006】そこで、本発明は、移動式クレーンにブームの一時的煽り現象を解消するための退避行動を可能とさせる移動式クレーン用油圧回路を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記の課題を解決する手段として、本発明に係る移動式クレーン用油圧回路は、油圧ポンプに連通するメインラインにその油圧を解放可能なメイン切換バルブを設け、このメイン切換バルブと前記油圧ポンプとの間のメインラインから分岐した各パイロットラインにそれぞれ走行操作用リモコンバルブ、旋回操作用アクチュエータおよびウインチ操作用リモコンバルブを設けた移動式クレーン用油圧回路であって、少なくとも前記ウインチ操作用リモコンバルブへ油圧を供給するパイロットラインには、ウインチ操作用リモコンバルブ側の油圧を解放可能なサブ切換バルブを設け、前記メイン切換バルブは、移動式クレーンに装備されたセーフティレバーリミットスイッチの作動により油圧を解放するように切換制御される構成とし、前記サブ切換バルブは、移動式クレーンに装備されたバックストップリミットスイッチの作動により油圧を解放するように切換制御される構成としたことを特徴とする。
【0008】本発明に係る移動式クレーン用油圧回路では、前記セーフティレバーリミットスイッチおよびバックストップリミットスイッチが非作動の状態のとき、油圧ポンプからの油圧がメインラインおよび各パイロットラインを介して走行操作用リモコンバルブ、旋回操作用アクチュエータおよびウインチ操作用リモコンバルブに供給されるため、移動式クレーンは走行操作、旋回操作およびウインチ操作が全て可能となる。ここで、前記バックストップリミットスイッチのみが作動すると、サブ切換バルブが切換制御されて前記ウインチ操作用リモコンバルブ側のパイロットラインの油圧のみを解放するため、移動式クレーンはウインチ操作のみが不能となり、走行操作および旋回操作は可能となる。そして、前記セーフティレバーリミットスイッチが作動すると、メイン切換バルブが切換制御されてメインラインの油圧を解放するため、移動式クレーンは走行操作、旋回操作およびウインチ操作が全て不能となる。
【0009】本発明の移動式クレーン用油圧回路において、前記走行操作用リモコンバルブ側のパイロット油圧を解放可能な第2のサブ切換バルブをそのパイロットラインに設け、前記旋回操作用アクチュエータ側のパイロット油圧を解放可能な第3のサブ切換バルブをそのパイロットラインに設けると、移動式クレーンは、第2のサブ切換バルブの切換操作により走行操作が不能となり、第3のサブ切換バルブの切換操作により旋回操作が不能となる。
【0010】本発明の移動式クレーン用油圧回路において、前記旋回操作用アクチュエータは、通常、油圧の解放により機体旋回用の油圧モータに制動力を加え、油圧の供給により前記油圧モータへの制動力を解除するバネ復帰式油圧シリンダで構成されるが、他のアクチュエータで構成してもよい。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明に係る移動式クレーン用油圧回路の実施形態を説明する。参照する図面において、図1は一実施形態に係るクローラクレーン用油圧回路の定常状態を示す油圧回路図、図2は一実施形態に係るクローラクレーン用油圧回路を制御するスイッチ回路の定常状態を示すスイッチ回路図である。
【0012】本発明の一実施形態に係るクローラクレーン用油圧回路は、クローラクレーンの機体の走行操作、旋回操作およびウインチ操作などを行うための油圧回路であり、図1に示すように、油圧源としての油圧ポンプ1と、この油圧ポンプ1の吐出側に連通するメインライン2に介設されたメイン切換バルブ3と、このメイン切換バルブ3の上流側の油圧ポンプ1との間のメインライン2から分岐する各パイロットライン4A,4B,4Cにそれぞれ設けられた走行操作用リモコンバルブ5、旋回操作用アクチュエータとしての油圧シリンダ6、ウインチ操作用リモコンバルブ7を備えている。
【0013】前記ウインチ操作用リモコンバルブ7に油圧を供給するパイロットライン4Cには、第1のサブ切換バルブ8が介設されている。同様に、前記走行操作用リモコンバルブ5に油圧を供給するパイロットライン4Aには、第2のサブ切換バルブ9が介設され、前記油圧シリンダ6に油圧を供給するパイロットライン4Bには第3のサブ切換バルブ10が介設されている。
【0014】前記メイン切換バルブ3は、バネ復帰式の2位置4ポートのソレノイドバルブであり、通常はソレノイドの励磁によりメインライン2を開いている。そして、このメイン切換バルブ3は、ソレノイドの励磁が解除されるとバネ復帰することにより、その上流側および下流側のメインライン2の作動油をタンク11にドレインしてメインライン2の油圧を解放するように構成されている。
【0015】前記走行操作用リモコンバルブ5は、クローラクレーンの前進、後退、旋回などの走行操作を制御する機能を有する。また、前記ウインチ操作用リモコンバルブ7は、クローラクレーンのウインチの各種操作を制御する機能を有する。
【0016】一方、前記油圧シリンダ6は、バネ復帰式の単動油圧シリンダからなり、油圧の解放によりバネ復帰して機体旋回用の油圧モータ12に制動力を加え、油圧の供給により前記油圧モータ12への制動力を解除するように構成されている。
【0017】前記第1のサブ切換バルブ8は、バネ復帰式の2位置3ポートのソレノイドバルブからなり、通常はソレノイドの励磁によりパイロットライン4Cを開いている。そして、この第1のサブ切換バルブ8は、ソレノイドの励磁が解除されると、バネ復帰してウインチ操作用リモコンバルブ7側の作動油をタンク11にドレインすることにより、ウインチ操作用リモコンバルブ7側の油圧を解放するように構成されている。
【0018】前記第2のサブ切換バルブ9も第1のサブ切換バルブ8と同様のバネ復帰式の2位置3ポートのソレノイドバルブからなり、通常はソレノイドの励磁によりパイロットライン4Aを開いている。そして、この第2のサブ切換バルブ9は、ソレノイドの励磁が解除されると、バネ復帰して走行操作用リモコンバルブ5側の作動油をタンク11にドレインすることにより、走行操作用リモコンバルブ5側の油圧を解放するように構成されている。
【0019】前記第3のサブ切換バルブ10も第1のサブ切換バルブ8と同様のバネ復帰式の2位置3ポートのソレノイドバルブからなり、通常はソレノイドの励磁によりパイロットライン4Bを開いている。そして、この第3のサブ切換バルブ10は、ソレノイドの励磁が解除されると、バネ復帰して油圧シリンダ6側の作動油をタンク11にドレインすることにより、油圧シリンダ6側の油圧を解放するように構成されている。
【0020】ここで、前記メイン切換バルブ3は、クローラクレーンに装備されたセーフティレバーリミットスイッチのオフによってソレノイドの励磁が解除されるようにスイッチ回路が構成され、前記第1のサブ切換バルブ8は、クローラクレーンに装備されたバックストップリミットスイッチのオフによってソレノイドの励磁が解除されるようにスイッチ回路が構成されている。
【0021】図2は、前記スイッチ回路の一例を示しており、電源間にはバックストップリミットスイッチ13と、前記第1のサブ切換バルブ8のソレノイド8Aと、セーフティレバーリミットスイッチ14と、前記メイン切換バルブ3のソレノイド3Aとが相互に並列に接続されている。そして、前記バックストップリミットスイッチ13にはリレーコイル15が直列に接続されており、このリレーコイル15の励磁によりオンする常開のリレー接点15Aが前記サブ切換バルブ8のソレノイド8Aに直列に接続されている。また、前記セーフティレバーリミットスイッチ14にはリレーコイル16が直列に接続されており、このリレーコイル16の励磁によりオンする常開のリレー接点16Aが前記メイン切換バルブ3のソレノイド3Aに直列に接続されている。
【0022】以上のように構成された一実施形態のクローラクレーン用油圧回路では、図2に示すように、クローラクレーンに装備されたバックストップリミットスイッチ13およびセーフティレバーリミットスイッチ14が共に非作動のオン状態のとき、リレーコイル15の励磁によりその常開のリレー接点15Aがオンして第1のサブ切換バルブ8のソレノイド8Aを励磁し、同時にリレーコイル16の励磁によりその常開のリレー接点16Aがオンしてメイン切換バルブ3のソレノイド3Aを励磁する。このため、図1に示すように、第1のサブ切換バルブ8はパイロットライン4Cを開くように切換制御され、メイン切換バルブ3はメインライン2を開くように切換制御される。なお、この場合、第2のサブ切換バルブ9は、図示しない他のスイッチ回路によりパイロットライン4Aを開くように切換制御され、第3のサブ切換バルブ10は、図示しない他のスイッチ回路によりパイロットライン4Bを開くように切換制御されているものとする。
【0023】すなわち、前記バックストップリミットスイッチ13およびセーフティレバーリミットスイッチ14が共に非作動のオン状態の場合、油圧ポンプ1からの油圧がメインライン2および各パイロットライン4A,4B,4Cを介して走行操作用リモコンバルブ5、油圧シリンダ6およびウインチ操作用リモコンバルブ7に供給される。従って、クローラクレーンは走行操作用リモコンバルブ5による走行操作、油圧シリンダ6が油圧モータ12の制動力を解除することによる機体の旋回操作、および、ウインチ操作用リモコンバルブ7によるウインチ操作の全てが可能となる。
【0024】ここで、図3に示すように、前記バックストップリミットスイッチ13のみが作動してオフすると、リレーコイル15の励磁が解除され、その常開のリレー接点15Aがオフして第1のサブ切換バルブ8のソレノイド8Aの励磁が解除される。このため、図4に示すように、第1のサブ切換バルブ8のみがウインチ操作用リモコンバルブ7側のパイロットライン4Cの作動油をタンク11にドレインしてその油圧を解放するように切換制御される。
【0025】すなわち、前記バックストップリミットスイッチ13のみが作動してオフした場合、油圧ポンプ1からの油圧がメインライン2および各パイロットライン4A,4Bを介して走行操作用リモコンバルブ5および油圧シリンダ6に供給される。従って、クローラクレーンは走行操作用リモコンバルブ5による走行操作、および、油圧シリンダ6が油圧モータ12の制動力を解除することによる機体の旋回操作が可能となり、ウインチ操作用リモコンバルブ7によるウインチ操作のみが不能となる。その結果、図5に示すように、例えば傾斜した地盤の影響によりクローラクレーンCCのブームBが一時的に煽られてバックストップリミットスイッチ13が作動した場合においても、クローラクレーンCCは走行操作および旋回操作が可能となり、ブームBの一時的煽り現象を解消するための退避行動が可能となる。
【0026】一方、図6に示すように、クローラクレーンのオペレータの操作により前記セーフティレバーリミットスイッチ14のみが作動してオフすると、リレーコイル16の励磁が解除され、その常開のリレー接点16Aがオフしてメイン切換バルブ3のソレノイド3Aの励磁が解除される。このため、図7に示すように、メイン切換バルブ3のみがメインライン2の上流側および下流側の作動油をタンク11にドレインしてその油圧を解放するように切換制御される。
【0027】すなわち、前記セーフティレバーリミットスイッチ14のみが作動してオフした場合、走行操作用リモコンバルブ5、油圧シリンダ6、ウインチ操作用リモコンバルブ7側の各パイロットライン4A,4B,4Cの油圧が全てメインライン2を介してタンク11にドレインされてしまう。従って、クローラクレーンは走行操作用リモコンバルブ5による走行操作およびウインチ操作用リモコンバルブ7によるウインチ操作が不能となり、また、油圧シリンダ6がバネ復帰して油圧モータ12に制動力を加えるため、機体の旋回操作も不能となり、安全性が確保される。
【0028】なお、一実施形態のクローラクレーン用油圧回路において、例えば走行操作用リモコンバルブ5へのパイロットライン4Aに介設する第2のサブ切換バルブ9を図8に示すように減圧弁17に変更すれば、走行操作用リモコンバルブ5の低圧化、小型化が可能となり、使用可能な走行操作用リモコンバルブ5の選択範囲が拡大してコストダウンも期待できる。パイロットライン4Cに介設する第1のサブ切換バルブ8やパイロットライン4Bに介設する第3のサブ切換バルブ10を減圧弁に変更した場合についても同様の効果が期待できる。
【0029】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る移動式クレーン用油圧回路では、移動式クレーンに装備されたセーフティレバーリミットスイッチおよびバックストップリミットスイッチが非作動の状態のとき、油圧ポンプからの油圧がメインラインおよび各パイロットラインを介して走行操作用リモコンバルブ、旋回操作用アクチュエータおよびウインチ操作用リモコンバルブに供給されるため、移動式クレーンは走行操作、旋回操作およびウインチ操作が全て可能となる。ここで、前記バックストップリミットスイッチのみが作動すると、サブ切換バルブが切換制御されて前記ウインチ操作用リモコンバルブ側のパイロットラインの油圧のみを解放するため、移動式クレーンはウインチ操作のみが不能となり、走行操作および旋回操作は可能となる。そして、前記セーフティレバーリミットスイッチが作動すると、メイン切換バルブが切換制御されてメインラインの油圧を解放するため、移動式クレーンは走行操作、旋回操作およびウインチ操作が全て不能となる。
【0030】従って、本発明に係る移動式クレーン用油圧回路によれば、地盤の傾斜や風等の影響によりブームが一時的に煽られてバックストップリミットスイッチが作動した場合、移動式クレーンを走行操作および旋回操作することができ、ブームの一時的煽り現象を解消するための退避行動が可能となる。
【0031】本発明の移動式クレーン用油圧回路において、前記走行操作用リモコンバルブ側のパイロット油圧を解放可能な第2のサブ切換バルブをそのパイロットラインに設け、前記旋回操作用アクチュエータ側のパイロット油圧を解放可能な第3のサブ切換バルブをそのパイロットラインに設けると、第2のサブ切換バルブの切換操作により移動式クレーンの走行操作を選択的に不能とし、第3のサブ切換バルブの切換操作により移動式クレーンの旋回操作を選択的に不能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るクローラクレーン用油圧回路の定常状態を示す油圧回路図である。
【図2】一実施形態に係るクローラクレーン用油圧回路を制御するスイッチ回路の定常状態を示すスイッチ回路図である。
【図3】図2に示すスイッチ回路のバックストップリミットスイッチのオフ状態を示すスイッチ回路図である。
【図4】図1に示すクローラクレーン用油圧回路のバックストップリミットスイッチのオフ状態を示す油圧回路図である。
【図5】一実施形態に係るクローラクレーン用油圧回路により退避行動するクローラクレーンの作用説明図である。
【図6】図2に示すスイッチ回路のセーフティレバーリミットスイッチのオフ状態を示すスイッチ回路図である。
【図7】図1に示すクローラクレーン用油圧回路のセーフティレバーリミットスイッチのオフ状態を示す油圧回路図である。
【図8】一実施形態に係るクローラクレーン用油圧回路の変更例を示す油圧回路図である。
【図9】一従来例に係るクローラクレーン用油圧回路の定常状態を示す油圧回路図である。
【図10】一従来例に係るクローラクレーン用油圧回路を制御するスイッチ回路の定常状態を示すスイッチ回路図である。
【図11】一従来例に係るスイッチ回路のバックストップリミットスイッチのオフ状態を示すスイッチ回路図である。
【図12】一従来例に係るクローラクレーン用油圧回路のバックストップリミットスイッチのオフ状態を示す油圧回路図である。
【符号の説明】
1…油圧ポンプ
2…メインライン
3…メイン切換バルブ
3A…ソレノイド
4A,4B,4C…パイロットライン
5…走行操作用リモコンバルブ
6…油圧シリンダ
7…ウインチ操作用リモコンバルブ
8…第1のサブ切換バルブ
8A…ソレノイド
9…第2のサブ切換バルブ
10…第3のサブ切換バルブ
11…タンク
12…油圧モータ
13…バックストップリミットスイッチ
14…セーフティレバーリミットスイッチ
15,16…リレーコイル
15A,16A…リレー接点
17…減圧弁
【特許請求の範囲】
【請求項1】 油圧ポンプに連通するメインラインにその油圧を解放可能なメイン切換バルブを設け、このメイン切換バルブと前記油圧ポンプとの間のメインラインから分岐した各パイロットラインにそれぞれ走行操作用リモコンバルブ、旋回操作用アクチュエータおよびウインチ操作用リモコンバルブを設けた移動式クレーン用油圧回路であって、少なくとも前記ウインチ操作用リモコンバルブへ油圧を供給するパイロットラインには、ウインチ操作用リモコンバルブ側の油圧を解放可能なサブ切換バルブを設け、前記メイン切換バルブは、移動式クレーンに装備されたセーフティレバーリミットスイッチの作動により油圧を解放するように切換制御される構成とし、前記サブ切換バルブは、移動式クレーンに装備されたバックストップリミットスイッチの作動により油圧を解放するように切換制御される構成としたことを特徴とする移動式クレーン用油圧回路。
【請求項2】 前記走行操作用リモコンバルブへ油圧を供給するパイロットラインには、走行操作用リモコンバルブ側のパイロット油圧を解放可能な第2のサブ切換バルブを設け、前記旋回操作用アクチュエータへ油圧を供給するパイロットラインには、旋回操作用アクチュエータ側のパイロット油圧を解放可能な第3のサブ切換バルブを設けたことを特徴とする請求項1に記載の移動式クレーン用油圧回路。
【請求項3】 前記旋回操作用アクチュエータは、油圧の解放により機体旋回用の油圧モータに制動力を加え、油圧の供給により前記油圧モータへの制動力を解除するバネ復帰式油圧シリンダで構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の移動式クレーン用油圧回路。
【請求項1】 油圧ポンプに連通するメインラインにその油圧を解放可能なメイン切換バルブを設け、このメイン切換バルブと前記油圧ポンプとの間のメインラインから分岐した各パイロットラインにそれぞれ走行操作用リモコンバルブ、旋回操作用アクチュエータおよびウインチ操作用リモコンバルブを設けた移動式クレーン用油圧回路であって、少なくとも前記ウインチ操作用リモコンバルブへ油圧を供給するパイロットラインには、ウインチ操作用リモコンバルブ側の油圧を解放可能なサブ切換バルブを設け、前記メイン切換バルブは、移動式クレーンに装備されたセーフティレバーリミットスイッチの作動により油圧を解放するように切換制御される構成とし、前記サブ切換バルブは、移動式クレーンに装備されたバックストップリミットスイッチの作動により油圧を解放するように切換制御される構成としたことを特徴とする移動式クレーン用油圧回路。
【請求項2】 前記走行操作用リモコンバルブへ油圧を供給するパイロットラインには、走行操作用リモコンバルブ側のパイロット油圧を解放可能な第2のサブ切換バルブを設け、前記旋回操作用アクチュエータへ油圧を供給するパイロットラインには、旋回操作用アクチュエータ側のパイロット油圧を解放可能な第3のサブ切換バルブを設けたことを特徴とする請求項1に記載の移動式クレーン用油圧回路。
【請求項3】 前記旋回操作用アクチュエータは、油圧の解放により機体旋回用の油圧モータに制動力を加え、油圧の供給により前記油圧モータへの制動力を解除するバネ復帰式油圧シリンダで構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の移動式クレーン用油圧回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図10】
【図11】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図10】
【図11】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図12】
【公開番号】特開2002−128472(P2002−128472A)
【公開日】平成14年5月9日(2002.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−323841(P2000−323841)
【出願日】平成12年10月24日(2000.10.24)
【出願人】(000183314)住友重機械建機クレーン株式会社 (13)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成14年5月9日(2002.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成12年10月24日(2000.10.24)
【出願人】(000183314)住友重機械建機クレーン株式会社 (13)
【Fターム(参考)】
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