説明

積層パネル及び該積層パネルを用いた壁構造

【課題】 断熱性能のみならず、遮音性能にも優れた積層パネルを提供すること。
【解決手段】 アルミニウム、グラファイト等からなる振動減衰フィラーを含有させたスチレン系樹脂発泡体を、石膏ボード、合板等からなる面材に積層接着した積層パネルとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層パネルに関するもので、特に、断熱性能及び遮音性能に優れた積層パネルに関するするものである。
【背景技術】
【0002】
建築物の内壁材として、石膏ボードと発泡合成樹脂ボードとを組み合わせて使用することがある。石膏ボードは、壁紙を貼り付けたり塗装仕上げを行ったりするための内装下地材に適している。一方、発泡合成樹脂ボードは、断熱性能に優れている。そこで、建築物の壁面において、コンクリート躯体壁に発泡合成樹脂ボードおよび石膏ボードを順次貼り付け、石膏ボードの表面を壁紙などで仕上げる壁構造が実施されている。
【0003】
このような壁構造の施工作業性を向上させるため、工場での製造段階で、石膏ボードと発泡合成樹脂ボードとを接着剤等を用いて貼り合わせておき、この貼り合わせた積層パネルを建築現場に搬入し、取り付け施工を行うことが提案されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
この技術では、現場施工の手間が省けるとともに、工場で厳重な品質管理のもとに貼り合わせることができるので、石膏ボードと発泡合成樹脂ボードとの一体性が向上する。また、断熱性能もさらに向上し、石膏ボードと発泡合成樹脂ボードの間に結露が発生したりする問題も解消できる。
【0005】
【特許文献1】特開平8−232368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記したような石膏ボードと発泡合成樹脂ボードからなる積層パネルは、該積層パネルを躯体壁に接着剤等を介して張り付けた場合、人の耳にとって耳障りな中高音域(250〜8000Hz)において遮音欠損を起こし、必ずしも遮音性能が十分なものではなかった。
これは、積層パネルの固有振動が中高音域にあり、中高音域の入射音と共振現象を起こして遮音欠損が生じるものと考えられる。
【0007】
本発明は、上述した背景技術が有する実情に鑑みて成されたものであって、その目的は、断熱性能のみならず、遮音性能にも優れた積層パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するため、本発明に係る積層パネルは、振動減衰フィラーを含有させたスチレン系樹脂発泡体を、石膏ボード、合板等からなる面材に積層接着した積層パネルとした。
【0009】
ここで、上記振動減衰フィラーは、アルミニウム、銀、及び金のような金属物質、カーボンブラック、活性炭、及びグラファイトのような炭素質物質、更には二酸化チタンのようなある種の非炭素質物質が挙げられるが、中でもアルミニウム、グラファイトが好ましい。これらの振動減衰フィラーの含有量は、スチレン系樹脂100重量部に対して0.1〜20重量部が適当であり、大きさは、50%粒子径が0.1〜40μmが適当である。また、上記スチレン系樹脂発泡体の密度は、12〜20kg/m3が適当であり、スチレン系樹脂発泡ビーズの型内成形体であることが好ましい。また、上記面材としては、石膏ボードが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
上記した本発明に係る積層パネルによれば、振動減衰フィラーを含有させたスチレン系樹脂発泡体を面材に積層接着したものとしたため、該積層パネルの固有振動が振動減衰フィラーによって抑えられ、中高音域の入射音との共振現象が防止されるため、断熱性能のみならず、遮音性能にも優れた積層パネルとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、上記した本発明に係る積層パネルの実施の形態を、詳細に説明する。
【0012】
本発明に係る積層パネルにおいては、石膏ボード、合板等からなる面材に、スチレン系樹脂発泡体を貼着したものであり、かかる構成の断熱性能に優れた積層パネルは、従来より公知であるが、本発明の特徴は、スチレン系樹脂発泡体として、振動減衰フィラーを含有させたスチレン系樹脂発泡体を用いたことにある。これによって、断熱性能のみならず、遮音性能にも優れた積層パネルとなる。
【0013】
本発明において使用する上記面材としては、石膏ボード、合板の他に、珪酸カルシウム板、セメント系板、更には合成樹脂板等の従来から内装ボードとして使用されているものを挙げることができるが、中でも、石膏ボードが、安価で強度が大きく、火にも強く、製造時の硬化の過程でヒビが入りにくいことから好ましい。
また、上記面材の板厚としては、使用材料、使用目的、施工条件等によっても異なるが、通常、5〜15mmの範囲に設定される。
【0014】
本発明においてスチレン系樹脂発泡体に含有させる上記振動減衰フィラーとしては、アルミニウム、銀、及び金のような金属物質、カーボンブラック、活性炭、グラファイトのような炭素質物質、更には二酸化チタンのようなある種の非炭素質物質が挙げられる。これらの中でも、アルミニウム、グラファイトは、振動減衰性に特に優れるので好ましい。
【0015】
上記振動減衰フィラーの含有量は、スチレン系樹脂100重量部に対して0.1〜20重量部が好ましく、1〜10重量部が更に好ましい。振動減衰フィラーの含有量が少なすぎる場合には、固有振動の抑制効果が小さく、遮音性能の向上を期待することができない。逆に、振動減衰フィラーの含有量が多くなりすぎると、スチレン系樹脂の発泡工程に悪影響を及ぼしたり、スチレン系樹脂中で振動減衰フィラー同士が接触し、遮音性能が低下する憂いがある。
【0016】
また、上記振動減衰フィラーの大きさは、材料によっても異なるが、50%粒子径が0.1〜40μmであることが好ましい。これは50%粒子径が0.1μm以上である場合には、上記振動減衰フィラーが凝集しにくくスチレン系樹脂中への均一分散が容易となるために好ましい。逆に、50%粒子径が40μm以下の場合には、スチレン系樹脂を発泡させたときに連続気泡の割合が増加しにくく、発泡体の断熱性を高く維持できるとともに、固有振動の抑制効果が大きくなるために好ましい。同様の理由から、上記振動減衰フィラーの50%粒子径は、0.5〜20μmであることが更に好ましい。
なお、50%粒子径は、振動減衰フィラーを水中等に分散させ、レーザー回折散乱法により粒度分布を測定し、全粒子の体積に対する累積体積が50%になる時の粒子径とした。その測定時における粒子の形状ファクターは1(球形)と設定して行なう。
【0017】
本発明において使用するスチレン系樹脂発泡体は、密度が10〜30kg/m3であることが好ましく、また、独立気泡率が70%以上であることが好ましい。これは、密度が10kg/m3未満では、強度が低下するおそれがあり、密度が30kg/m3を超える場合および独立気泡率が70%未満である場合は、断熱性能及び遮音性能が低下するおそれがある。同様の理由から、密度は11〜25kg/m3 であることが更に好ましく、12〜20kg/m3 であることが特に好ましい。独立気泡率は80%以上であることが更に好ましく、90%以上であることが特に好ましい。
なお、発泡体の密度は、JIS A 9511(2005)の5.6項に示された密度を意味する。また、独立気泡率は、スチレン系樹脂発泡体から30×30×20mm程度の試験体を切り出し,空気比較式比重計(東京サイエンス社製 空気比較式比重計1000型)により求めた試験体容積をV1(cm3)とし,また水置換法により求めた試験体容積をV2(cm3)とし,さらに試験体の重量W(g)及び合成樹脂の密度d(g/cm3)を計測し,次の式により算出される。
独立気泡率(%)=(V1−W/d)÷(V2−W/d)×100
【0018】
また、スチレン系樹脂発泡体の平均気泡径は、20〜1000μmであることが好ましい。これは、20μm未満では気泡膜が薄くなるため、分散させた振動減衰フィラーにより気泡膜が破れ、独立気泡率が低下して断熱性能および遮音性能が低下するおそれがある。逆に1000μmを超えると、得られるスチレン系樹脂発泡体の断熱性能が低下するおそれがある。
ここで、上記平均気泡径とは、セル(樹脂の壁と壁との間で区切られた部分)1個当りの直径で、スチレン系樹脂発泡体を任意の位置で刃物によりきれいに切断し、その切断面において無作為に選んだ20ケの気泡(セル)を対象とし、各気泡について気泡壁とそれとは異なる気泡壁を結ぶ直線(内寸法)のなかで最も長い直線の長さを各気泡の直径とし、20ケの気泡の直径の数平均値を上記平均気泡径とする。なお、上記平均気泡径は、好ましくは45〜250μmである。この平均気泡径は、タルク、ポリエチレンワックスなどの気泡核剤の添加量や発泡剤の種類や組成を変更することなどにより、調整することができる。
【0019】
上記スチレン系樹脂発泡体の厚みは、20〜150mmが好ましく、20〜130mmがより好ましく、20〜100mmが更に好ましく、20〜80mmが特に好ましい。該スチレン系樹脂発泡体の厚みが薄すぎる場合は、断熱性能及び遮音性能が不十分になり、機械的強度も弱くなる。一方、厚みが厚すぎる場合は、形成される積層パネルが厚くなり、該積層パネルを使用して構築した壁構造が厚くなるすぎるために好ましくない。
【0020】
本発明で使用する上記スチレン系樹脂発泡体を構成するスチレン系樹脂としては、ポリスチレン、ゴム変性ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂、AES樹脂などがある。上記スチレン系樹脂は単独で用いても、2種類以上混合して用いても良い。
【0021】
スチレン系樹脂を製造するに当たっての原料となるスチレン系モノマーの種類としては、特に制限はないが、例えば、スチレンモノマ−が挙げられる。また、スチレンモノマ−と共重合可能なモノマ−成分、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル等のアクリル酸の炭素数が1〜10のアルキルエステル等;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル等のメタクリル酸の炭素数が1〜10のアルキルエステル等;α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、2,4−ジクロロスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−オクチルスチレン、スチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム等;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有不飽和化合物等の、スチレンモノマ−誘導体のモノマ−を単独で、または二種以上を組み合わせて、スチレンモノマ−と共重合した樹脂を使用することができる。
なお、スチレンモノマ−及びスチレンモノマ−と共重合可能なモノマ−成分を、スチレン系モノマ−と称する。
但し、スチレンモノマ−以外に、これらのモノマ−を併用する場合には、スチレン系樹脂を重合する際のスチレン系モノマ−の全重量に対して、スチレンモノマ−の重量を、50%以上にすることが好ましい。
【0022】
本発明で用いられる上記スチレン系樹脂発泡体は、次の方法により製造されることが好ましい。
先ず、押出機でスチレン系樹脂と、振動減衰フィラーと分散剤とを混合し、次いで、混合物を押し出し、冷却し、造粒し、得られた振動減衰フィラー含有スチレン系樹脂粒子を密閉容器内の水性媒体中に分散させ、密閉容器内にプロパン、ノルマルブタン、イソペンタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、シクロブタン、シクロペンタン等の脂環族炭化水素等の発泡剤を圧入し、スチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させ、密閉容器から発泡剤を含有するスチレン系樹脂粒子を取り出した後、スチ−ム等により発泡剤を含有するスチレン系樹脂粒子を加熱し、所定の発泡倍率に発泡させるビ−ズ法により製造することが好ましい。
この方法によれば、断熱性能及び遮音性能に優れ、かつ寸法安定性にも優れたスチレン系樹脂発泡体を製造することができる。
【0023】
本発明に係る積層パネルは、上記した石膏ボード等の面材と、上記した振動減衰フィラーを含有させたスチレン系樹脂発泡体とを接着剤によって一体的に貼着したものである。 接着剤としては、合成樹脂エマルジョン系接着剤、合成ゴムエマルジョン系接着剤、反応型樹脂系接着剤、モルタル系接着剤、樹脂モルタル系接着剤等を用いることができ、好ましくは接着面の全面に塗布し、隙間なく面材とスチレン系樹脂発泡体とを一体化させる。また、接着剤の節約のために接着面に田の字状やロの字状等に塗布して、面材とスチレン系樹脂発泡体とを部分的に一体化させることもできる。
【0024】
本発明に係る壁構造は、上記した本発明に係る積層パネルを、建築物のコンクリート躯体壁に取り付けることにより構成される。
取り付けの方法は、建築物のコンクリート躯体壁に、本発明に係る積層パネルをタッピングネジ等で直接固定する方法、建築物の躯体壁にモルタル団子、接着樹脂団子などの接着剤を使用し、本発明に係る積層パネルを団子貼りする方法、更には、建築物のコンクリート躯体壁にガイドレールを一定間隔でビス止め等により設け、該ガイドレールに本発明に係る積層パネルを固定する方法、などが挙げられる。
【0025】
上記した取り付け方法の中でも、接着剤を介して本発明に係る積層パネルを躯体壁に取付ける方法が、施工性、信頼性、施工費等において優れていることから好ましい。接着剤としては、有機系接着剤、セメントモルタル、樹脂モルタル等、従来公知のものを用いることができ、不陸の大きいコンクリート躯体壁に対しては、施工性の面からモルタル団子が好ましく使用できる。
【0026】
本発明に係る積層パネル、及び該積層パネルを用いた壁構造の好ましい態様の一例を、図1に示す。
図1に示す壁構造においては、躯体壁1に接着剤2を用いて接着することにより、本発明に係る積層パネル3が取り付けられている。本発明に係る積層パネル3は、スチレン系樹脂発泡板4と面材5とが接着剤6によって一体的に貼着された構成であり、該積層パネル3のスチレン系樹脂発泡板4側が躯体壁1に固定され、面材5の表面には、接着材7を介して壁紙等の表面仕上げ材8が設けられている。
【実施例】
【0027】
以下に、本発明に関する実施例及び比較例について説明する。
−スチレン系樹脂発泡体の製造−
【0028】
(実施例1)
スチレン系樹脂としてポリスチレン(エー・アンド・エム スチレン社製 HH102:Mw=26万)100重量部、振動減衰フィラーとして鱗片状アルミニウム粉(ダイヤ工業社製 No30000;50%粒子径は13μm)1重量部、分散助剤として流動パラフィン(松村石油研究所社製 モレスコホワイトP60)0.3重量部をミキサ−で混合した。その後、φ30mmの単軸押出機で200〜220℃の温度で溶融混合し、溶融した樹脂を押出機先端のダイよりストランド状に押し出した。そして、直ちに約30℃の水槽に導入して冷却後、ストランドカッタ−により、重量が約1mg/個の円柱状のアルミニウムを含有する樹脂粒子を作成した。
【0029】
次いで、容積が3Lの撹拌装置付き圧力容器に、脱イオン水1kg、ピロリン酸ナトリウム4g、硫酸マグネシウム8gを投入し懸濁剤であるピロリン酸マグネシウムを合成し、ついで界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5g、難燃剤として2,2−ビス(4−(2−アリルオキシ)−3,5−ジブロモフェニル)プロパン(帝人化成社製 FG3200)5g、上記樹脂粒子0.5kgを投入し、圧力容器を密閉後、撹拌しつつ1時間で100℃まで加温した。
【0030】
100℃に到達後、発泡剤としてブタン(ノルマルブタン約20%とイソブタン約80%の混合物)17g、ペンタン(n−ペンタン約80%、イソペンタン約20%の混合物)31gを30分かけて圧力容器内に添加し、そのまま100℃で5時間保持した後、室温まで冷却した。圧力容器から発泡剤の含浸された樹脂粒子を取り出し、硝酸で表面に付着した懸濁剤を溶解させた。その後、水洗し、遠心分離機で脱水後、気流乾燥機で樹脂粒子表面に付着する水分を乾燥させた。
【0031】
得られた樹脂粒子100重量部に対して、帯電防止剤であるN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アルキルアミン0.005重量部を添加し、さらにステアリン酸亜鉛0.1重量部、グリセリントリステアレ−ト0.05重量部、グリセリンモノステアレ−ト0.05重量部の混合物で表面を被覆した。
【0032】
このようにして得られた発泡剤の含浸された樹脂粒子を、発泡性ポリスチレン用のスチ−ム発泡機で、19kg/m3 の嵩密度を有する予備発泡樹脂粒子を得た。この予備発泡樹脂粒子を室温で24時間熟成させた後、発泡ポリスチレン用成形機(ダイセン工業社製 VS−500型物成形機)の成形型内に充填し、113℃までスチーム加熱し、300×200×25mmの板状の密度19kg/m3 のスチレン系樹脂発泡板を得た。
【0033】
(実施例2)
スチレン系樹脂としてポリスチレン(エー・アンド・エム スチレン社製 680:Mw=20万)、振動減衰フィラーとして鱗片状アルミニウム粉(東洋アルミニウム社製 P0100、50%粒子径は19μm。)3重量部、分散助剤として流動パラフィン(松村石油研究所社製 モレスコホワイトP60)1重量部、発泡剤としてブタン(ノルマルブタン約20%とイソブタン約80%の混合物)9.5g、ペンタン(n−ペンタン約80%、イソペンタン約20%の混合物)32gを用いた点、難燃剤を使用しなかった点、および発泡性ポリスチレン用のスチ−ム発泡機で発泡する際に、14kg/m3 の嵩密度を有する予備発泡樹脂粒子に調整し、成形型内に充填した後のスチーム加熱を111℃までスチーム加熱した以外は、上記実施例1と同様にして密度14kg/m3 のスチレン系樹脂発泡板を得た。
【0034】
(実施例3)
振動減衰フィラーとして鱗片状グラファイト粉(エスイーシー社製SNE−6G;50%平均粒径=5.9μm)2重量部、分散助剤として流動パラフィン(松村石油研究所社製 モレスコホワイトP60)0.66重量部、発泡剤としてブタン(ノルマルブタン約20%とイソブタン約80%の混合物)10g、ペンタン(n−ペンタン約80%、イソペンタン約20%の混合物)30gを用いた点、難燃剤を使用しなかった点、および発泡性ポリスチレン用のスチ−ム発泡機で発泡する際に、17kg/m3 の嵩密度を有する予備発泡樹脂粒子に調整し、成形型内に充填した後のスチーム加熱を120℃までスチーム加熱した以外は、上記実施例1と同様にして密度17kg/m3 のスチレン系樹脂発泡板を得た。
【0035】
(比較例1)
振動減衰フィラーが添加されていない、株式会社ジェイエスピー製の厚み25mmの押出発泡ポリスチレン板(商品名「ミラフォーム」)より、300×200×25mmサイズの板を切り出した。
【0036】
(比較例2〜4)
振動減衰フィラーを添加せず、分散助剤を用いなかったこと以外は、上記実施例1と同様に行った。但し、発泡性ポリスチレン用のスチ−ム発泡機で発泡する際に、発泡樹脂粒子の嵩密度を調整して、それぞれ、28、14、16kg/m3 の密度のスチレン系樹脂発泡板を作成した。
【0037】
実施例1〜3及び比較例1〜4の発泡板について各々熱伝導率を測定した。その結果を表1に示した。
【0038】
−積層パネルの製造−
上記実施例1〜3及び比較例1〜4の各スチレン系樹脂発泡板の片面に、300×200mmサイズに切り出した石膏ボード(吉野石膏社製商品名「タイガーボード」厚さ:9.5mm)を接着剤(セメダイン社製 酢酸ビニルマルジョン木材接着剤605)によって全面接着し、300×200×35mmの積層パネルを得た。
【0039】
−性能試験−
上記発泡板の熱伝導率は、JIS A 9511(1995)の4.7項の記載により、JIS A 1412(1994)記載の平板熱流計法(熱流計2枚方式、高温側35℃、低温側5℃、平均温度20℃)に基づいて測定した。
また、鉄筋コンクリート造りの建築物において、各積層パネルを、2部屋の間仕切り壁(鉄筋コンクリート厚さ180mm)の一方に各々接着剤(コニシ社製 変性シリコーン樹脂系 KMP10S)によって全面接着し、積層パネルが貼られていない部屋から雑音(ホワイトノイズ)を発生させ、積層パネルの表面振動をピックアップセンサー(振動測定装置:リオン社製 SA−28 1/Nオクターブバンドリアルタイムアナライザー 加速度センサー:リオン社製 PV−85 ピックアップセンサー)にて周波数25〜10000Hzの範囲において加速度測定を実施した。この際の加速度測定条件は、1/3オクターブ分析、音響特性:平たん特性、リニアー平均、平均演算時間10秒とした。これら加速度測定結果のチャートを、それぞれ、図2乃至図8に示した。
なお、加速度は、振動とそこから放射される音の大きさと相関関係がある。
得られた各積層パネルの熱伝導率、及び最大加速度を表1に示す。また、各スチレン系樹脂発泡体の密度〔JIS A 9511(2005)〕を表1に併記する。
【0040】
【表1】

【0041】
上記表1から、実施例1〜3の積層パネルは、比較例1〜4の積層パネルに比して、最大加速度が半分程度と低く、遮音性能が優れていることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る積層パネル、及び該積層パネルを用いた壁構造の好ましい態様の一例を示した断面図である。
【図2】実施例1の積層パネルを使用して測定された加速度測定のチャートを示した図である。
【図3】実施例2の積層パネルを使用して測定された加速度測定のチャートを示した図である。
【図4】実施例3の積層パネルを使用して測定された加速度測定のチャートを示した図である。
【図5】比較例1の積層パネルを使用して測定された加速度測定のチャートを示した図である。
【図6】比較例2の積層パネルを使用して測定された加速度測定のチャートを示した図である。
【図7】比較例3の積層パネルを使用して測定された加速度測定のチャートを示した図である。
【図8】比較例4の積層パネルを使用して測定された加速度測定のチャートを示した図である。
【符号の説明】
【0043】
1 躯体壁
2 接着剤
3 積層パネル
4 スチレン系樹脂発泡体
5 面材
6 接着剤
7 接着材
8 表面仕上げ材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動減衰フィラーを含有させたスチレン系樹脂発泡体を、面材に積層接着したことを特徴とする、積層パネル。
【請求項2】
上記振動減衰フィラーが、アルミニウム、グラファイトであることを特徴とする、請求項1に記載の積層パネル。
【請求項3】
上記振動減衰フィラーの含有量が、スチレン系樹脂100重量部に対して0.1〜20重量部であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の積層パネル。
【請求項4】
上記振動減衰フィラーの50%粒子径が、0.1〜40μmであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の積層パネル。
【請求項5】
上記スチレン系樹脂発泡体の密度が、12〜20kg/m3であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の積層パネル。
【請求項6】
上記スチレン系樹脂発泡体が、スチレン系樹脂発泡ビーズの型内成形体であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の積層パネル。
【請求項7】
上記面材が、石膏ボードであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の積層パネル。
【請求項8】
上記請求項1〜7のいずれかに記載の積層パネルを、建築物のコンクリート躯体壁に取り付けたことを特徴とする、壁構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−92321(P2007−92321A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−280433(P2005−280433)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(000131810)株式会社ジェイエスピー (245)
【Fターム(参考)】