説明

積層体

【課題】従来のように熱処理を必要とせず柔軟性、耐衝撃性及びガスバリア性に加えて耐熱性、透明性に優れた積層体を提供する。
【解決手段】籠型シルセスキオキサン構造を含有する硬化性樹脂と硬化触媒とを含む硬化性樹脂組成物を硬化させてなる樹脂層が接着層または粘着層を介してガラスの片面または両面に設けられている積層体であって、ガラスの厚みが0.7mm以下であり、樹脂層の合計厚みとガラスの厚み比率(樹脂層の合計厚み/ガラスの厚み)が0.01以上4.0未満であることを特徴とする積層体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理を必要とせず柔軟性、耐衝撃性及びガスバリア性に加えて耐熱性、透明性に優れた積層体に関し、例えばフレキシブルディスプレイ用ガラス代替基板やディスプレイ用保護板等として用いることができる積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からガラスは透明性、耐熱性、低熱膨張性、化学的安定性などの特色を生かした利用が進められ、古くからレンズ、光ディスクおよびディスプレイ基板などの光学ガラスとして幅広く利用され、産業の発展に寄与してきた。近年は、このような産業分野において部材の軽量化といった要求に応えるため、比重が大きいガラスを薄型化し利用する検討がなされている。しかし、ガラスは衝撃に弱く、割れやすいといった欠点があるため、部材の薄型化による軽量化においては、製造プロセス時の割れによる歩留まり低下が課題となっている。割れやすさの改善のために、ガラス基板の表面に有機基を含む金属酸化物ポリマーを主成分とした樹脂層を積層し、柔軟性と耐熱性に優れる薄膜基板が提案されている(特許文献1参照)が、これらの手法では依然、ガラスを用いるという点は変わらず、軽量化と加工性の更なる向上は困難である。
【0003】
ところで近年、軽量化、薄型化、加工性といった特色を前面に押し出し、光学用途をターゲットとした透明プラスチック材料によるガラス代替の動きが注目されている。透明性に優れたプラスチック材料としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、脂環式ポリオレフィン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等を例示することができる。中でもPMMAや脂環式ポリオレフィンは、特に優れた透明性を有することから、有機ガラスと呼ばれており、光学レンズや液晶ディスプレイの導光板、光ディスク用途として多用されている。しかしながら、これらの材料は熱変形温度が低いために、例えば150℃〜200℃以上の熱プロセスを伴う表示素子用基板の製造において用いることは困難であり、ガラス代替としての用途が限定されてしまう。
【0004】
これまでに本発明者らは、特許文献2において、透明性、耐熱性が高くかつ、寸法安定性に優れた籠型シルセスキオキサン樹脂を用いたプラスチックフィルムに関する発明を提案した。しかし、このプラスチックフィルムは、十分な衝撃強度を有するものの、水蒸気や酸素などのガスに対するガスバリア性に難があるため内部素子を保護することが困難であるという問題があり、フィルム表面にガスバリア層を積層する必要があった。これに対して、ガラス/プラスチック複合体フィルムは、ベース基板としてガラスを用いたことにより、従来のガラス基板の場合と同様に優れたガスバリア性が得られるとともに、ガラスフィルムにポリマー層を被覆したことにより、優れた柔軟性及び優れた耐衝撃性も得られている。
【0005】
特許文献3に開示されたガラス/プラスチック複合体フィルムの耐熱性は、数時間使用の場合で130℃程度、数分間使用の場合で200℃程度であり(特許文献3参照)、フレキシブル基板に低抵抗の透明電極を形成したりTFT等の能動素子を形成したりするためには耐熱性が低すぎるという問題があった。すなわち、低抵抗の透明電極を形成する工程やTFT等の能動素子を形成する工程においては、少なくとも300℃〜350℃の温度がフレキシブル基板にかかるため、耐熱性が低い。
【0006】
これに対し特許文献4では熱処理によりポリシルセスキオキサンを主成分とするポリマー層をガラスに積層することで柔軟性、耐衝撃性およびガスバリア性に加え耐熱性を有するフレキシブル基板といえる。しかしながら、主成分としているポリシルセスキオキサンはSi-OH基を縮合させる必要があり、熱処理でのSi-OH基縮合によるクラックを防ぐ目的からシラノール強度比が限定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−50565号公報
【特許文献2】特開2006−89685号公報
【特許文献3】特表2002−534305号公報
【特許文献4】WO2005/047200
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、熱処理を必要とせず柔軟性、耐衝撃性及びガスバリア性に加えて耐熱性、透明性に優れた積層体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記のような従来技術の問題を鑑みて鋭意検討を重ねた結果、無機ガラスに柔軟性を付与するための樹脂層として、籠型シルセスキオキサン構造を主成分として含む樹脂層を用いることにより、350℃以上の温度での熱処理を必要とせず柔軟性、耐衝撃性及びガスバリア性が得られるのに加えて耐熱性も得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、籠型シルセスキオキサン構造を含有する硬化性樹脂と硬化触媒とを含む硬化性樹脂組成物を硬化させてなる樹脂層が接着層または粘着層を介してガラスの片面または両面に設けられている積層体であって、ガラスの厚みが0.7mm以下であり、樹脂層とガラスの厚み比率(樹脂層の厚み/ガラスの厚み)が0.01以上4.0未満であることを特徴とする積層体である。
【0011】
樹脂層を形成する硬化性樹脂組成物は、籠型シルセスキオキサン構造を有する硬化性樹脂を含むが、この硬化性樹脂としては、下記に挙げるような一般式(1)で表される籠型シルセスキオキサン樹脂や、一般式(5)で表される構造単位を有した籠型シルセスキオキサン含有硬化性シリコーン共重合体を用いるのが好適である。
【0012】
すなわち、硬化性樹脂組成物に含まれる硬化性樹脂として、好適には、下記一般式(1)
[RSiO3/2]n (1)
〔但し、Rは下記一般式(2)、(3)又は(4)
【化1】

(但し、mは1〜3の整数であり、R1は水素原子又はメチル基を示す)のいずれか一つから選ばれる有機官能基であり、n=8、10、12又は14である〕で表される籠型シルセスキオキサン樹脂を用いるのがよい。
【0013】
また、他の例として、好適には、籠型シルセスキオキサン構造を含有する硬化性樹脂が、
下記一般式(5)
Y−[Z−(O1/2−R22SiO1/2)a−(R3SiO3/2)k−(O1/2)b]l−Z−Y (5)
〔但し、R2及びR3はビニル基、アルキル基、フェニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基又はオキシラン環を有する基であって、R2又はR3において、各置換基は互いに同じか異なるものであってもよいが、1分子中に含まれるR3のうち少なくとも1つはビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基又はオキシラン環を有する基のいずれかである。また、a及びbは0〜3の数であって、1≦a+b≦4の関係を満たし、kは8〜14の数を示し、lは1〜2000の数を示す。更に、Zは下記一般式(6)
【化2】

(但し、R4は水素原子、ビニル基、アルキル基、フェニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基又はオキシラン環を有する基であって、R4は互いに同じか異なるものであってもよく、また、pは0〜30の数を示す。)で表される2価の基であり、Yは下記一般式(7)〜(10)から選ばれるいずれかの1価の基である。
[(R5O)R62SiO1/2]c−[R7SiO3/2]d−[O1/2]− (7)
[R51/2]e−[R7SiO3/2]d−[O1/2−R62SiO1/2]− (8)
(R51/2)− (9)
(R53SiO1/2)− (10)
(但し、R6及びR7はビニル基、アルキル基、フェニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、又はオキシラン環を有する基であって、R6又はR7において、各置換基は互いに同じか異なるものであってもよく、R5は水素原子、メチル基又はエチル基から選ばれたいずれかである。また、c及びeは0〜3の数であり、dは8〜14の数を示す。)〕で表される構成単位を有する籠型シルセスキオキサン含有硬化性シリコーン共重合体であるのがよい。
【発明の効果】
【0014】
籠型シルセスキオキサン構造を主成分として含む樹脂層をガラスの片面又は両面に設けることにより、熱処理を必要とせず柔軟性、耐衝撃性及びガスバリア性に加えて耐熱性、透明性に優れた積層体とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の積層体について、好適な実施の形態に基づいて詳細に説明する。
【0016】
本発明において積層体の樹脂層は、硬化性樹脂の種類によって2つに大別される。第1の例として、下記一般式(1)
[RSiO3/2]n (1)
〔但し、Rは下記一般式(2)、(3)又は(4)
【化3】

(但し、mは1〜3の整数であり、R1 は水素原子又はメチル基を示す)のいずれか一つから選ばれる有機官能基であり、n=8、10、12又は14である〕で表される籠型シルセスキオキサン樹脂を含有した硬化性樹脂組成物からなる層を用いるのが好ましい。
【0017】
この例において、樹脂層に用いる籠型シルセスキオキサン樹脂は、ケイ素原子全てに(メタ)アクリロイル基、グリシジル基又はビニル基を有する有機官能基からなる反応性官能基を有する、分子量分布及び分子構造の制御された籠型シルセスキオキサン樹脂であるのが好ましいが、一部がアルキル基、フェニル基等に置き換わっていても差し支えなく、また、完全に閉じた多面体構造ではなく、一部が開裂したような構造であってもよい。また、このような籠型シルセスキオキサン樹脂の平均分子量も特に限定されず、このような籠型シルセスキオキサン樹脂がオリゴマーであってもよい。
【0018】
また、樹脂層の第2の例として、本発明積層体の樹脂層には、下記一般式(5)
Y−[Z−(O1/2−R22SiO1/2)a−(R3SiO3/2)k−(O1/2)b]l−Z−Y (5)
〔但し、R2及びR3はビニル基、アルキル基、フェニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基又はオキシラン環を有する基であって、R2又はR3において、各置換基は互いに同じか異なるものであってもよいが、1分子中に含まれるR3のうち少なくとも1つはビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基又はオキシラン環を有する基のいずれかである。また、a及びbは0〜3の数であって、1≦a+b≦4の関係を満たし、kは8〜14の数を示しlは1〜2000の数を示す。更に、Zは下記一般式(6)
【化4】

(但し、R4は水素原子、ビニル基、アルキル基、フェニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基又はオキシラン環を有する基であって、R4は互いに同じか異なるものであってもよく、また、pは0〜30の数を示す。)で表される2価の基であり、Yは下記一般式(7)〜(10)から選ばれるいずれかの1価の基である。
[(R5O)R62SiO1/2]c−[R7SiO3/2]d−[O1/2]− (7)
[R51/2]e−[R7SiO3/2]d−[O1/2−R62SiO1/2]− (8)
(R51/2)− (9)
(R53SiO1/2)− (10)
(但し、R6及びR7はビニル基、アルキル基、フェニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、又はオキシラン環を有する基であって、R6又はR7において、各置換基は互いに同じか異なるものであってもよく、R5は水素原子、メチル基又はエチル基から選ばれたいずれかである。また、c及びeは0〜3の数であり、dは8〜14の数を示す。)〕で表される構成単位を有する籠型シルセスキオキサン含有硬化性シリコーン共重合体を含有した硬化性樹脂組成物からなる樹脂層を用いるのが好ましい。
【0019】
第2の例において、一般式(5)で表せる籠型シルセスキオキサン含有硬化性シリコーン共重合体は、分子量分布及び分子構造の制御された籠型シルセスキオキサン含有硬化性シリコーン共重合体であるのが好ましいが、分子量分布が広くてもよく、また重量平均分子量が7000以上であれば特に限定されるものではない。
【0020】
第1の例、第2の例ともに、樹脂層を形成する硬化性樹脂組成物は、一般式(1)で表される籠型シルセスキオキサン樹脂又は一般式(5)に係る共重合体のほかに、それぞれこれらの硬化性樹脂と相溶性及び反応性を有する他の硬化性樹脂を混合した硬化性樹脂組成物であってもよい。このような硬化性樹脂組成物としては、加熱処理により硬化可能な樹脂組成物、或いは活性エネルギー線を照射して硬化可能な樹脂組成物であればよく、特に制限されない。
【0021】
一般式(1)又は(5)に係る硬化性樹脂と相溶性及び反応性を有する他の硬化性樹脂としては、例えば、構造単位の繰り返し数が2〜20程度の重合体である反応性のオリゴマー又は低分子量、低粘度の反応性モノマーが挙げられる。具体的には、反応性のオリゴマーとしては、エポキシアクリレート、エポキシ化油アクリレート、ウレタンアクリレート、不飽和ポリエステル、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ビニルアクリレート、ポリエン/チオール、シリコーンアクリレート、ポリブタジエン、ポリスチリルエチルメタクリレート等を例示することができる。また、反応性モノマーとしては、スチレン、酢酸ビニル、N−ビニルピロリドン、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、n−デシルアクリレート、イソボニルアクリレート、ジシクロペンテニロキシエチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート等の単官能モノマー又は、ジシクロペンタニルジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の多官能モノマーを例示することができる。
【0022】
籠型シルセスキオキサン樹脂と相溶性及び反応性を有する硬化性樹脂としては、以上に例示したもの以外に、各種反応性オリゴマー、モノマーを用いることができ、これらはそれぞれ単独で使用しても、2種類以上混合して使用してもよい。
【0023】
樹脂層の形成に用いる硬化性樹脂組成物は、本発明の目的から外れない範囲で各種添加剤を添加することができる。各種添加剤として有機/無機フィラー、可塑剤、難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、離型剤、発泡剤、核剤、着色剤、架橋剤、分散助剤等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
樹脂層に用いる硬化性樹脂組成物は、好適には一般式(1)又は(5)に係る硬化性樹脂を含有するものであることが必要であるが、これらの硬化性樹脂の含有量は、それぞれの例における組成物において3質量%以上となる量であることが好ましく、10質量%以上となる量であることがより好ましい。前記含有量が下限未満では、得られる積層体として熱プロセスを伴う表示素子用基板の製造工程等において重要である耐熱性が不足する。言うまでもなく、硬化触媒を除いた全量を一般式(1)又は(5)に係る硬化性樹脂としてもよい。
【0025】
また、第1の例、第2の例ともに、樹脂層の形成に用いる硬化性樹脂組成物には、それぞれの硬化性樹脂の硬化反応を促進するための硬化触媒が含まれる。この硬化触媒として、第1の例の硬化性樹脂組成物では、例えば、光重合開始剤としては、アセトフェノン系、ベンゾイン系、ベンゾフェノン系、チオキサンソン系、アシルホスフィンオキサイド系等の化合物を好適に使用することができる。具体的には、トリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン、ベンゾインメチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、チオキサンソン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、カンファーキノン、ベンジル、アンスラキノン、ミヒラーケトン等が挙げられ、その含有量は樹脂100重量部に対して0.1重量部から5.0重量部の範囲が好ましく、0.1〜3.0重量部の範囲とすることが更に好ましい。この添加量が0.1重量部に満たないと硬化が不十分となり、得られる成形体の強度、剛性が低くなり、一方、5.0重量部を超えると成形体の着色等の問題が生じるおそれがある。熱重合開始剤としては、例えば、ケトンパーオキサイド系、パーオキシケタール系、ハイドロパーオキサイド系、ジアルキルパーオキサイド系、ジアシルパーオキサイド系、パーオキシジカーボネート系、パーオキシエステル系等が挙げられその含有量は樹脂100重量部に対して0.1重量部から5.0重量部の範囲が好ましく、0.1〜3.0重量部の範囲とすることが更に好ましい。光開始剤と熱開始剤を併用して用いる場合も硬化触媒の含有量は0.1重量部から5.0重量部の範囲が好ましく、0.1〜3.0重量部の範囲とすることが更に好ましい。また、第2の例の硬化性樹脂組成物でも第一の例と同様である。
【0026】
本発明では、第1の例、第2の例ともに、適当な溶媒を希釈剤として用い硬化性樹脂組成物の粘度調整等をして用いることもできるが、溶媒の揮発除去工程を考慮すると時間を要し生産効率が低下すること、硬化後に得られる樹脂層内部に残留溶媒等が存在して積層体の特性低下につながることなどから、塗布される硬化性樹脂組成物中、溶媒の含有量は5%以下にとどめておくことがよく、より好ましくは、溶媒が含有されていないものを使用するのがよい。また、このような硬化性樹脂組成物は、硬化の際に揮発分を発生しないものであることが好ましい。
【0027】
積層体の厚み比率(樹脂層の厚み/ガラスの厚み)は0.01以上4.0未満であり、好ましくは0.1以上2.0以下であるのが良い。上記厚み比率が下限未満では、樹脂層が薄くなり過ぎて樹脂の特徴である衝撃吸収層としての効果が十分に発揮されず、積層体が破損しやすくなるおそれがある。一方、上記厚み比率が上限を超えると、樹脂層が厚くなり過ぎて樹脂層の熱膨張をガラスで拘束することができなくなり、積層体の寸法安定性が悪化するおそれがある。なお、積層体の厚み比率(樹脂層の厚み/ガラスの厚み)は、樹脂層の合計の厚みとガラスの厚みとの関係を表すものであり、ガラスの両面に樹脂層が設けられる場合は、両方の樹脂層の厚みを合計して上記比率を求めるようにする。
【0028】
積層体の厚みについて、樹脂とガラスの厚み比率が上述した範囲を満たすことが必要であるが、より好ましくは、積層体の総厚みが50〜1000μmであるのが良く、好ましくは80〜300μmであるのが良い。積層体の厚みが下限未満では、積層体の厚みが薄くなり過ぎて、積層体としての剛性が不足する。また、積層体の厚みが上限を超えると、ガラス単独での耐衝撃性を十分に有するため、積層体を作製する意図が小さくなる。樹脂層単独の厚み範囲は1μm〜200μmが好ましい、1μm未満であると耐衝撃性が失われ200μm以上であると樹脂とガラスの吸湿や熱による寸法変化量に差が生じるため積層体が変形する可能性がある。一方ガラスの厚みは0.7mm以下であるが、好ましくは50μm〜700μmであるのが良い。取扱い性等を考慮すると50μm以上であるのが好適である。ガラスの厚みが700μmを超えると既に耐衝撃性を十分に有することから本発明のような積層体とする意義がない。
【0029】
本発明の積層体においては、樹脂層をガラスの片面に形成することもできるし、樹脂層をガラスの両面に形成することもできる。樹脂層をガラスの両面に形成した場合には、積層体の柔軟性及び耐衝撃性をさらに向上させることができる。
【0030】
硬化性樹脂は加熱により透明性が低下する場合があるが、本発明の積層体の透明性については、加熱前の積層体の波長550nmでの光線透過率は85%以上であることが好ましく、特に好ましくは90%以上である。さらに、250℃、2時間の加熱処理後の波長550nmでの光線透過率は85%以上であることが好ましく、特に好ましくは90%以上である。本発明では、樹脂層に用いる籠型シルセスキオキサン樹脂を含有した硬化性樹脂組成物を用いることにより、上記のような透明性を確保することができる。
【0031】
樹脂層の弾性率については、ガラスの弾性率よりも小さくすることが必要である。樹脂層の弾性率がガラスの弾性率より大きい場合、積層体のたわみ量が大きくなり耐衝撃性の向上が見込めない。また、樹脂層の線膨張係数が支配的となり熱膨張率を抑制できなくなるおそれがある。
【0032】
一般式(1)や一般式(5)のような硬化性樹脂を含有した硬化性樹脂組成物は、液状であることから公知の塗布装置でプラスチックフィルムに塗布し、紫外線による硬化後に剥離することで樹脂層とすることができるが、塗布ヘッドを用いて硬化反応を起こすとゲル状の付着物が筋や異物の原因となるため、望ましくは塗布ヘッドには紫外線が当たらないようにするのがよい。塗布方式としては、グラビアコート、ロールコート、リバースコート、ナイフコート、ダイコート、リップコート、ドクターコート、エクストルージョンコート、スライドコート、ワイヤーバーコート、カーテンコート、押出コート、スピナーコート等の公知の方法を用いることができる。
【0033】
硬化性樹脂組成物は、プラスチックフィルムに塗工し流延させた後、光硬化を実施するが、この光硬化としては、紫外線照射法が一般的である。通常、紫外線ランプを使用して紫外線を発生させて照射することができる。紫外線ランプには、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、パルス型キセノンランプ、キセノン/水銀混合ランプ、低圧殺菌ランプ、無電極ランプ等があり、いずれも使用することができる。これらの紫外線ランプの中でも、メタルハライドランプもしくは高圧水銀ランプが好ましい。照射条件はそれぞれのランプ条件によって異なるが、照射露光量が20〜10000mJ/cm2程度であればよく、好ましくは100〜10000mJ/cm2である。また、光エネルギーの有効利用の観点から、紫外線ランプには楕円型、放物線型、拡散型等の反射板を取り付けるのが好ましく、さらには、冷却対策として熱カットフィルター等を装着するようにしてもよい。
【0034】
紫外線硬化反応はラジカル反応であるため酸素による反応阻害を受ける。そのため、硬化性樹脂組成物は、ガラスへ塗工、流延後、光硬化を実施するが、塗工、流延後、酸素阻害を防止するため、硬化性樹脂組成物上へ透明カバーフィルムを施し、流延された原料の液状光硬化性樹脂の表面では酸素濃度を1%以下にすることが好ましく、0.1%以下にすることがより好ましい。また、酸素透過率の小さい透明カバーフィルムを採用することも可能である。透明カバーフィルムとしては、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PC(ポリカーボネート)、ポリプロピレン、ポリエチレン、アセテート、アクリル、フッ化ビニル、ポリアミド、ポリアリレート、セロファン、ポリエーテルスルホン、ノルボルネン樹脂系等のフィルムを単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用できる。ただし、硬化性樹脂組成物との剥離が可能でなければならない。この為、これらの透明カバーフィルムの表面にシリコン塗布、フッ素塗布等の易剥離処理が施されているものが好ましい。
【0035】
本発明の積層体の製造方法として、樹脂層とガラスを接着層または粘着層を介して張り合わせる方法をとることが出来る。
【0036】
本発明において、接着層を形成する材料は、光硬化樹脂タイプ、熱硬化樹脂タイプ、2液混合反応液タイプ。このうち、光硬化樹脂タイプには、ラジカル系硬化系とカチオン系硬化系がある。ラジカル系硬化系では、アクリル系、エン/チオール系、ビニルエーテル系などがあり、カチオン系硬化系では、エポキシ系、オキセタン系、ビニルエーテル系などがある。また、熱硬化樹脂タイプでは、エポキシ系、フェノール系、ポリエステル系などがある。以上の様々な接着層材料があり、特に限定するものではないが、熱硬化樹脂タイプ及び2液混合反応液タイプでは、硬化接着時間がかかる。このことより光硬化性樹脂を使用した層は積層体との密着性及び生産性が良好で好ましいものである。接着層の厚さについては特に制限はないが、例えば光硬化性樹脂からなる接着層の場合、通常1〜100μmであればガラス表面に対して十分に樹脂層を接着させることができる。
【0037】
本発明において、粘着層を形成する材料は、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、ポリエーテル系粘着剤、シリコーン系粘着剤を使用することができる。樹脂層かガラスに溶剤で希釈された粘着剤を塗布し、乾燥させて粘着層を形成させても良く、両面粘着シートを張り合わせて用いても良い。粘着層の厚みは通常1〜100μmであればガラス表面に対して十分に樹脂層を接着させることができる。なお、接着層及び粘着層は、波長400nmにおける光線透過率が90%以上のものを用いるのが好適である。
【0038】
本発明の樹脂層とガラスとの貼り合せ方法については特に制限はないが、例えばガラス表面に、光硬化樹脂、熱硬化樹脂、2液混合反応液等を塗布して接着層を形成したのち、その上から樹脂層を圧着ロールにより重ね合わせ密着させ、その後に光照射、熱処理等の好適な方法により接着させる方法、あるいは、ガラス表面に両面粘着シートを貼り付けるなどして粘着層を形成したのち、圧着ロールにより重ね合わせ、所定の圧力を加えることで接着させる方法等が採用できる。
【0039】
また、本発明においては、積層体の最表面に表面機能層を有するようにしてもよい。表面機能層としては、特に限定するものではないが、例えばハードコート層、帯電防止層、反射防止層、防汚層、反射防止層、抗菌層、ガスバリア層または耐光性層を単独、あるいは2種類以上の性能を組み合わせたものは有用な機能層であり、飛散防止性能付きガラスに機能を付加する上で好ましい。表面機能層の形成方法については、積層体の作成後にウェット塗工により表面機能層を形成してもよく、機能膜転写フィルムを使用して、樹脂層の作成時に形成するようにしてもよい。
【0040】
ガラス層と接着層或いは粘着層との密着性を向上させるために、例えばガラスの表面にコロナ放電処理、紫外線照射処理、プラズマ処理等の表面活性処理や、シランカップリング剤処理をガラスに行なってもよい。
【0041】
シランカップリング剤としては、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシラン、3−メタクリロキシプロピルトリクロロシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリクロロシランが挙げられる。中でも、原料の入手が容易である3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを用いることが好ましい。
【0042】
本発明において用いられるガラスについては特に制限はなく、用途等に応じて適宜選択するのがよく視認性が要求される場合には透明であることが必要であるが、機能に応じて色や模様等が付されたものであってもよい。また、平板状のガラスのみならず、所定の曲面を有したようなものであってもよい。
【0043】
本発明の積層体は、CRTディスプレイ、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等に代表されるフラットディスプレイの分野をはじめとするディスプレイ用基板に使用でき、なかでも、薄型ディスプレイやフレキシブルディスプレイ用基板として好適に使用することができる。また、これら以外であっても、例えばタッチパネルやディスプレイ用保護板のような部材を形成するのにも適用可能である。
【実施例】
【0044】
以下、本発明の積層体の作製方法について、実施例及び比較例により詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0045】
[合成例1:籠型シルセスキオキサン樹脂の製造]
籠型シルセスキオキサン樹脂は、特開2004‐143449号公報に記載された方法により以下のようにして合成した。
撹拌機、滴下ロート、及び温度計を備えた反応容器に、溶媒として2-プロパノール(IPA)40mlと、塩基性触媒として5%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(TMAH水溶液)3.1gを装入した。滴下ロートにIPA 15mlと3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン12.7gを入れ、反応容器を撹拌しながら、室温で3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランのIPA溶液を30分かけて滴下した。3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン滴下終了後、徐々に室温に戻し加熱することなく2時間撹拌した。撹拌後、減圧下でIPAを除去し、籠型シルセスキオキサン樹脂を得た。得られた籠型シルセスキオキサン樹脂は一般式(1)で表される樹脂であり、液体クロマトクラフィー分離後の質量分析の結果n=8、10、12の分子量が確認された。
【0046】
[合成例2:籠型シルセスキオキサン含有硬化性シリコーン共重合体の製造]
籠型シルセスキオキサン含有硬化性シリコーン共重合体樹脂は、特開2009-227863号公報に記載された方法により以下のようにして合成した。
反応容器にトルエン250mlとフェニルトリクロロシラン52.5gを装入し、0℃に冷却した。水を適量滴下し、加水分解が完了するまで撹拌した。加水分解生成物を水洗後市販の30%ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキサイド溶液8.3mlを加え、この混合物を4時間還流温度に加熱した。次いで全体を冷却し、約96時間放置した。この時間経過後得られたスラリーを再び24時間還流温度に加熱し次いで冷却し濾過を行い、白色の粉末としてオクタフェニルシルセスキオキサン37.5gを得た。
【0047】
次いで、ディンスターク、及び冷却管を備えた反応容器にトルエン100ml、水酸化テトラメチルアンモニウム0.123g(1.35mmol、25%のメタノール溶液として0.49g)、上記オクタフェニルシルセスキオキサン20.3g(19.7mmol)、及び3−メタクリロキシプロピルジエトキシメチルシラン5.12g(19.7mmol)を入れ、80℃で1時間加熱しメタノールを留去し、さらに100℃に加熱し2時間後、室温に戻し反応を終了とした。反応溶液はオクタフェニルシルセスキオキサンの白色粉末が消え、完全に反応が進行したと判断できた。
【0048】
反応溶液を10%クエン酸水溶液で中和した後、水で洗浄し無水硫酸マグネシウムで脱水した。無水硫酸マグネシウムをろ別し、濃縮することで籠型シルセスキオキサンを無色透明の粘性液体を19.7g、収率78%で得た。得られた籠型シルセスキオキサンはGPC、及びNMR測定により構造が確認された。さらに、窒素雰囲気下、滴下ロート及び冷却管を備えた反応容器に、トルエン15ml、上記で得られた籠型シルセスキオキサン9.0g(7mmol)、及び水酸化テトラメチルアンモニウム4mg(0.044mmol、2.5%のメタノール溶液として153mg)を装入した。反応溶液を70℃で撹拌しながら、滴下ロートよりシラノール末端ポリジメチルシロキサン(DMS-S12:Mn(数平均分子量)=400−700:アズマックス株式会社)4.6gを3時間かけて滴下した。更に3時間撹拌後、室温まで冷却した。
【0049】
反応溶液を10%クエン酸水溶液で中和した後、水で洗浄し無水硫酸マグネシウムで脱水した。無水硫酸マグネシウムをろ別し、濃縮することで籠型シルセスキオキサン含有硬化性シリコーン共重合体を無色透明の粘性液体として12.5g得た。得られた籠型シルセスキオキサン含有硬化性シリコーン共重合体のGPCを測定した結果、重量平均分子量(Mw)=14000であった。また1H−NMRを測定した結果、一般式(5)で表される構造単位を有した籠型シルセスキオキサン含有硬化性シリコーン共重合体を主とした樹脂であることを確認した。
【0050】
[実施例1]
合成例1で得た籠型シルセスキオキサン樹脂:20重量部、トリメチロールプロパントリアクリレート:25重量部、ジシクロペンタニルジアクリレート:55重量部、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製IRGACURE 184)2.5部を均一に攪拌混合した後、脱泡して液状の光硬化性樹脂組成物を得たのち、本液状の光硬化性樹脂組成物を塗工装置へ投入し、これを毎分1mで巻き出した透明プラスチックフィルム(PET:ポリエチレンテレフタレートフィルム、幅300mm、厚さ0.1mm、光透過率90%以上)上へスロットダイコーター法にて厚み100μmとなるよう塗布した。そして、透明カバーフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム、幅300mm、厚さ0.1mm、光透過率90%以上)を塗工した光硬化性樹脂へ圧着したのち、メタルハライドランプにて紫外線を500mJ/cm2の割合で両面から照射した。その後、透明カバーフィルムを剥離除去し、樹脂層厚み100μmの透明プラスチックフィルム付き樹脂層1を得た。
【0051】
厚み100μmのガラスにカチオン系光硬化性接着剤(協立化学産業社製)を5μmの厚みになるように塗布流延した後、上記で得られた透明プラスチックフィルム付き樹脂層1を、樹脂層とガラスが対向するようにガラスの片面側全面に貼り合せ、圧着したのち、メタルハライドランプにて紫外線を500mJ/cm2の割合で樹脂層面から照射した。次いで、同様の操作を反対のガラス面にも行い、透明プラスチックフィルムを剥離することにより樹脂層/接着層/ガラス/接着層/樹脂層の層構成を有した積層体を得た。樹脂層の厚みは両面合わせた合計で200μmであり、樹脂層とガラスの厚み比率(樹脂層の厚み/ガラスの厚み)は2.00であった。
【0052】
[実施例2]
実施例1と同様にして得られた透明プラスチックフィルム付き樹脂層1を、厚み100μmのガラスの両面に両面粘着シートとして厚み25μmの高透明両面テープ(積水化学工業社製)を介して、樹脂層とガラスが対向するように張り合わせ、透明プラスチックフィルムを剥離することで積層体を作成した。樹脂層の厚みは両面合わせた合計で200μmであり、樹脂層とガラスの厚み比率(樹脂層の厚み/ガラスの厚み)は2.00であった。
【0053】
[実施例3]
実施例1と同様にして得られる透明プラスチックフィルム付き樹脂層1の厚みを50μmとした以外は実施例1と同じ方法で積層体を作成した。樹脂層の厚みは両面合わせた合計で100μmであり、樹脂層とガラスの厚み比率(樹脂層の厚み/ガラスの厚み)は1.00であった。
【0054】
[実施例4]
合成例2で得た籠型シルセスキオキサン含有硬化性シリコーン共重合体:30重量部、ジシクロペンタニルジアクリレート:70重量部、及び光重合開始剤として2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン:1.5重量部を混合し、液状の籠型シルセスキオキサン構造を含有する硬化性樹脂組成物を調製し、実施例1と同様の方法で樹脂層厚み50μmの透明プラスチックフィルム付き樹脂層2を作成した。
【0055】
厚み200μmのガラスにカチオン系光硬化性接着剤(協立化学産業社製)を5μmの厚みになるように塗布流延した後、上記で得られた透明プラスチックフィルム付き樹脂層2を、樹脂層とガラスが対向するようにガラスの片面側全面に貼り合せ、圧着したのち、メタルハライドランプにて紫外線を500mJ/cm2の割合で樹脂層面から照射した。次いで、同様の操作を反対のガラス面にも行い、透明プラスチックフィルムを剥離することで樹脂層/接着層/ガラス/接着層/樹脂層の層構成を有した積層体を得た。樹脂層の厚みは両面合わせた合計で100μmであり、樹脂層とガラスの厚み比率(樹脂層の厚み/ガラスの厚み)は0.50であった。
【0056】
[実施例5]
合成例2で得た籠型シルセスキオキサン含有硬化性シリコーン共重合体:100重量部、及び光重合開始剤として2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン:0.5重量部を混合し、液状の籠型シルセスキオキサン構造を含有する硬化性樹脂組成物を調製し、実施例1と同様の方法で樹脂層厚み30μmの透明プラスチックフィルム付き樹脂層3を作成した。
【0057】
得られた透明プラスチックフィルム付き樹脂層3を、厚み200μmのガラスの片面に両面粘着シートとして厚み25μmの高透明両面テープ(積水化学工業社製)を介して、樹脂層とガラスが対向するように張り合わせ、透明プラスチックフィルムを剥離することで樹脂層/粘着層/ガラスの層構成を有した積層体を作成した。樹脂層の厚みは30μmであり、樹脂層とガラスの厚み比率(樹脂層の厚み/ガラスの厚み)は0.15であった。
【0058】
[比較例1]
ジシクロペンタニルジアクリレート:100重量部、及び光重合開始剤として2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン:1.5重量部を混合し、液状の硬化性樹脂組成物を調整し、実施例1と同様の方法で樹脂層厚み100μmの透明プラスチックフィルム付き樹脂層4を得た。
【0059】
厚み100μmのガラスにカチオン系光硬化性接着剤(協立化学産業社製)を5μmの厚みになるように塗布流延した後、上記で得られた透明プラスチックフィルム付き樹脂層4を、樹脂層とガラスが対向するようにガラスの片面側全面に貼り合せ、圧着したのち、メタルハライドランプにて紫外線を500mJ/cm2の割合で樹脂層面から照射した。次いで、同様の操作を反対のガラス面にも行い、透明プラスチックフィルムを剥離することで樹脂層/接着層/ガラス/接着層/樹脂層の層構成を有した積層体を得た。樹脂層の厚みは両面合わせた合計で200μmであり、樹脂層とガラスの厚み比率(樹脂層の厚み/ガラスの厚み)は2.00であった。
【0060】
[比較例2]
トリメチロールプロパントリアクリレート:100重量部、及び光重合開始剤として2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン:1.5重量部を混合し、液状の硬化性樹脂組成物を調整し、実施例1と同様の方法で樹脂層厚み100μmの透明プラスチックフィルム付き樹脂層5を得た。
【0061】
得られた透明プラスチックフィルム付き樹脂層5を、厚み200μmのガラスの両面に両面粘着シートとして厚み25μmの高透明両面テープ(積水化学工業社製)を介して張り合わせ、透明プラスチックフィルムを剥離することで樹脂層/粘着層/ガラス/粘着層/樹脂層の層構成を有した積層体を作成した。樹脂層の厚みは両面合わせた合計で200μmであり、樹脂層とガラスの厚み比率(樹脂層の厚み/ガラスの厚み)は1.00であった。
【0062】
[比較例3]
比較例として、厚さ100μmの硼珪酸ガラス基板をそのまま用いた。
【0063】
上記実施例1〜4、比較例1〜2で得られた積層体、及び比較例3のガラス基板について、以下の方法に従ってそれぞれの評価を行った。結果を表1にまとめて示す。
【0064】
[柔軟性評価方法:屈曲試験]
JIS K5400を参考に2mmの心棒を用い樹脂層を内側に屈曲させ破壊したときの角度を測定した。角度が小さいほど柔軟性が高い。
【0065】
[耐衝撃性評価方法:落錘衝撃試験]
JIS K6734を参考に40gの錘(R=2.5mm)を25mmの高さから開始し、25mmずつ加算した高さ毎に300mmまで積層体の樹脂層面に垂直に自由落下させ、積層体が破壊する高さを求める試験を20回行い、積層体が破壊する高さ分布を求め、50%破壊高さで評価した。
【0066】
[ガスバリア性評価方法:水蒸気透過度]
MOCON社製水蒸気透過試験機を用い、試験雰囲気:温度40℃、湿度90%RH、試験環境:温度25℃、及び湿度60%RH透過面積50cm2でJISK7129に準拠して行い水蒸気透過度を測定した。
【0067】
[耐熱性評価方法:外観]
大気下250℃で1時間のオーブンで加熱後の表面を観察し以下の基準で評価した。
○:変化無し
△:変色または変形(クラックなど)のどちらかが認められたもの
×:変色と変形(クラックなど)の両方が発生したものの
【0068】
[透明性評価方法:光線透過率]
紫外可視分光光度計(日立製作所社製U4000)を用いて、250℃で1時間加熱した後のそれぞれの積層体について、400〜800nmの光での光透過率スペクトルを測定し、代表値として波長400nmの光の透過率を示した。
【0069】
【表1】

【0070】
実施例及び比較例で得られ積層体の物性は表1に示したとおりであり、樹脂層を設けた積層体である実施例1〜4及び比較例1,2では、比較例3のガラスに比べ耐衝撃性が大幅に向上している。しかしながら籠型シロキサン構造を含有していない樹脂層では、耐熱性と透明性が籠型シロキサン構造を含有している実施例に比べ劣る。上記の結果より、籠型シルセスキオキサン構造を主成分として含む樹脂層を用いることにより、熱処理を必要とせず柔軟性、耐衝撃性及びガスバリア性が得られるのに加えて耐熱性も得られることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
籠型シルセスキオキサン構造を含有する硬化性樹脂と硬化触媒とを含む硬化性樹脂組成物を硬化させてなる樹脂層が接着層または粘着層を介してガラスの片面または両面に設けられている積層体であって、ガラスの厚みが0.7mm以下であり、樹脂層の合計厚みとガラスの厚み比率(樹脂層の合計厚み/ガラスの厚み)が0.01以上4.0未満であることを特徴とする積層体。
【請求項2】
籠型シルセスキオキサン構造を含有する硬化性樹脂が、
下記一般式(1)
[RSiO3/2]n (1)
〔但し、Rは下記一般式(2)、(3)又は(4)
【化1】

(但し、mは1〜3の整数であり、R1は水素原子又はメチル基を示す)のいずれか一つから選ばれる有機官能基であり、n=8、10、12又は14である〕で表される籠型シルセスキオキサン樹脂である請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
籠型シルセスキオキサン構造を含有する硬化性樹脂が、
下記一般式(5)
Y−[Z−(O1/2−R22SiO1/2)a−(R3SiO3/2)k−(O1/2)b]l−Z−Y (5)
〔但し、R2及びR3はビニル基、アルキル基、フェニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基又はオキシラン環を有する基であって、R2又はR3において、各置換基は互いに同じか異なるものであってもよいが、1分子中に含まれるR3のうち少なくとも1つはビニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基又はオキシラン環を有する基のいずれかである。また、a及びbは0〜3の数であって、1≦a+b≦4の関係を満たし、kは8〜14の数を示し、lは1〜2000の数を示す。更に、Zは下記一般式(6)
【化2】

(但し、R4は水素原子、ビニル基、アルキル基、フェニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基又はオキシラン環を有する基であって、R4は互いに同じか異なるものであってもよく、また、pは0〜30の数を示す。)で表される2価の基であり、Yは下記一般式(7)〜(10)から選ばれるいずれかの1価の基である。
[(R5O)R62SiO1/2]c−[R7SiO3/2]d−[O1/2]− (7)
[R51/2]e−[R7SiO3/2]d−[O1/2−R62SiO1/2]− (8)
(R51/2)− (9)
(R53SiO1/2)− (10)
(但し、R6及びR7はビニル基、アルキル基、フェニル基、(メタ)アクリロイル基、アリル基、又はオキシラン環を有する基であって、R6又はR7において、各置換基は互いに同じか異なるものであってもよく、R5は水素原子、メチル基又はエチル基から選ばれたいずれかである。また、c及びeは0〜3の数であり、dは8〜14の数を示す。)〕で表される構成単位を有する籠型シルセスキオキサン含有硬化性シリコーン共重合体である請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
接着層は波長400nmにおける光線透過率が90%以上であり、かつ、1μm〜100μmの厚みの範囲である請求項1に記載の積層体。
【請求項5】
粘着層は波長400nmにおける光線透過率が90%以上であり、かつ、1μm〜100μmの厚みの範囲である請求項1に記載の積層体。

【公開番号】特開2013−107354(P2013−107354A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255923(P2011−255923)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000006644)新日鉄住金化学株式会社 (747)
【Fターム(参考)】