説明

積層板

【課題】 機械特性、電気特性、耐トラッキング性、耐熱性を兼ね備えた積層板を提供することである。
【解決手段】 フェノール樹脂塗布液を紙基材に含浸乾燥した紙基材プリプレグを所定枚数重ねた上、下面に、エポキシ樹脂塗布液をガラス繊維基材に含浸乾燥したガラス繊維基材プリプレグを所定枚数重ね、さらに、少なくとも片面に接着剤付き金属箔を、前記接着剤面と前記ガラス繊維基材プリプレグ面とを対向させるように配置したことを特徴とする積層体を加熱加圧して形成して得られる積層板である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器などに搭載される印刷回路用基板として紙基材フェノール樹脂積層板が多用されている。しかしながら、この紙基材フェノール樹脂積層板は、吸水率、機械強度において問題があった。これらの代替材として、紙基材エポキシ樹脂積層板、あるいは、紙基材エポキシ樹脂プリプレグをコア材料としてエポキシ樹脂含浸ガラス繊維基材で挟み込み複合構造とした積層板があるが、電気特性、特に印刷回路基板として必要な長期の耐湿性や電気絶縁性が不十分であった。また、印刷回路基板は高電圧下で使用されるケースもあり、トラッキングの発生による火災を防止する必要がある。しかし、紙基材エポキシ樹脂積層板、あるいは、紙基材エポキシ樹脂プリプレグをコア材料としてエポキシ樹脂含浸ガラス繊維基材で挟み込み複合構造とした積層板は実際の印刷回路基板での耐トラッキング性が低く、回路設計上の制約を受けるという問題があった。
更に、RoHS規制に伴い、従来の鉛入りはんだから無鉛はんだを用いて印刷回路基板に部品が実装されるようになった。無鉛半田は、有鉛半田に比べ融点が高く、またはんだの濡れ広がり性が悪いことから、部品を実装する際には高温で長時間の加熱が必要であり、印刷回路基板にかかる熱負荷が大きくなる。特にリフロー実装では熱負荷が大きく、実装時の印刷回路基板の膨れが大きな問題となっており、電気特性、機械強度、耐トラッキング性と耐熱性の要求を兼ね備えた積層板が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−255850号公報
【特許文献2】特開昭62−56137号公報
【特許文献3】特開昭63−39332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、電気特性、機械強度、耐トラッキング性と耐熱性を兼ね備えた積層板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、下記(1)〜(3)により達成される。
(1)フェノール樹脂塗布液を紙基材に含浸乾燥した紙基材プリプレグを所定枚数重ねた上、下面に、エポキシ樹脂塗布液をガラス繊維基材に含浸乾燥したガラス繊維基材プリプレグを所定枚数重ね、さらに、少なくとも片面に接着剤付き金属箔を、前記接着剤面と前記ガラス繊維基材プリプレグ面とを対向させるように配置した積層体を加熱加圧して形成して得られることを特徴とする積層板。
(2)前記ガラス繊維基材は、ガラス織布である上記(1)に記載の積層板。
(3)長期吸湿性が、2重量%以下である上記(1)または(2)に記載の積層板。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、機械特性、電気特性、耐トラッキング性と耐熱性を兼ね備えた積層板を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の積層板について詳細に説明する。
【0008】
本発明の積層板は、フェノール樹脂塗布液を紙基材に含浸乾燥した紙基材プリプレグを所定枚数重ねた上、下面に、エポキシ樹脂塗布液をガラス繊維基材に含浸乾燥したガラス繊維基材プリプレグを所定枚数重ね、さらに、少なくとも片面に接着剤付き金属箔を積層した積層体を加熱加圧して形成して得られる。
【0009】
フェノール樹脂塗布液を紙基材に含浸乾燥した紙基材プリプレグを所定枚数重ねた上、下面に、エポキシ樹脂塗布液をガラス繊維基材に含浸乾燥したガラス繊維基材プリプレグを所定枚数重ねることにより、紙基材フェノール樹脂積層板では不十分であった強度、吸水性と耐熱性、また紙基材エポキシ樹脂積層板、あるいは、紙基材エポキシ樹脂プリプレグをコア材料としてエポキシ樹脂含浸ガラス繊維基材で挟み込んだ積層板では不十分であった長期耐湿性、電気絶縁性を改善することができる。更に接着剤付き金属箔を使用することで耐トラッキング性を改善することができる。
【0010】
紙基材プリプレグを所定枚数重ねた上、下面に、ガラス繊維基材を用いることで紙基材フェノール樹脂積層板では不十分であった強度及び吸水率において改善効果が得られる。
さらに、紙基材には、フェノール樹脂液を用いることで、長期耐湿性及び電気絶縁性において改善効果が得られる。紙基材はガラス繊維基材に比べ吸水性の高い素材であるが、紙繊維の中へ樹脂を含浸させることによりその吸水特性を抑え積層板として使用可能なものにすることができる。紙基材は吸水性に優れることからも親水性であり、その紙繊維内に含浸させる樹脂液は、より親水性をもった樹脂液が望ましい。樹脂そのものの吸水特性を比較すると、フェノール樹脂よりもエポキシ樹脂の方が優れている。しかし、エポキシ樹脂液は疎水性が強く、紙基材に含浸させても、紙繊維内には殆ど樹脂は含浸しないが、フェノール樹脂液を用いた場合、紙繊維にまで樹脂を含浸させることができる。
【0011】
その耐湿効果は、JIS−C6481に示される積層板に用いられる短期間の浸水試験では水の浸透速度が遅く明確にはならないが、最終の製品形態であるプリント配線板として必要な長期の耐湿性や、加圧による飽和吸湿量を見ると紙基材にはフェノール樹脂液を用いた方が優れており、プリント板としての電気絶縁性も優れる。
【0012】
フェノール樹脂塗布液を紙基材に含浸乾燥した紙基材プリプレグを所定枚数重ねた上、下面に、エポキシ樹脂塗布液をガラス繊維基材に含浸乾燥したガラス繊維基材プリプレグを所定枚数用いることで、耐熱性の改善効果が得られる。
RoHS規制により、従来の鉛入りはんだから無鉛はんだを用いて印刷回路基板に部品が実装されるようになってきている。無鉛はんだは鉛入りはんだに比べ融点が高く、且つはんだの濡れ広がり性が悪く、はんだが溶融する時間を長くとる必要がある。そのため回路基板への熱負荷も大きくなり、はんだ実装時に回路基板の膨れや銅箔剥がれが発生するケースがある。
【0013】
フェノール樹脂は、縮合水を発生させながら硬化する性質がある。その為はんだによる部品実装時に縮合水がガス化し、回路基板の膨れや銅箔剥がれを発生させる可能性が高くなる。一方、エポキシ樹脂は、縮合水等の副生成物は発することなく硬化する為、フェノール樹脂に比べると高いはんだ実装耐熱性を有する。
その為、最も多く受熱する最外層にエポキシ樹脂を配することで、積層板としてのはんだ実装耐熱性が確保できる。
【0014】
また、トラッキング現象は、炭化物により短絡及び発熱によって発火する現象であり、炭化しないガラス繊維基材を紙基材プリプレグを所定枚数重ねた上、下面に用いることと、炭化しにくい接着剤付き金属箔を用いることで耐トラッキング性の向上が得られる。
【0015】
積層板の耐トラッキング性試験方法はUL−1410に示される方法が一般的である。本方法で試験した場合、接着剤付き金属箔と金属箔では明確な差は出ないが、実際のプリント板を作成し、UL−1410に準拠する方法で銅回路間の耐トラッキング性試験を行うと接着剤付き金属箔を用いた方が優れている。
金属箔に用いる接着剤は、ハンドリング時の割れや接着剤層の均一厚みの確保から、脂肪族系高分子樹脂を主成分として構成されている。これは、トラッキング試験程度の温度では分解せずに炭化するベンゼン環濃度がエポキシ樹脂に比べて低いためにトラッキングが発生しにくいと考えられる。
【0016】
以下各構成について、詳細に説明する。
【0017】
本発明の積層板は、紙基材にフェノール樹脂塗布液を含浸乾燥させたものをコア材として用いる。ここでいう、コア材とは、エポキシ樹脂を含浸させたガラス繊維基材プリプレグに挟まれた中間層を形成している。
【0018】
フェノール樹脂塗布液は、レゾール型フェノール樹脂と、ノボラック型フェノール樹脂とを含んでいてもよい。レゾール型フェノール樹脂を含むことにより、紙基材に対する含浸性を向上することができる。また、積層板を低コスト化することができる。レゾール型フェノール樹脂は、特に限定されるものではなく、通常使用されているものを使用することができる。
【0019】
レゾール型フェノール樹脂の含有量は、特に限定されないが、フェノール樹脂組成物全体の20〜80重量%が好ましく、特に30〜60重量%が好ましい。レゾール型フェノール樹脂の含有量が上記範囲内であれば、後述するノボラック型フェノール樹脂の硬化が充分となり耐熱性、耐薬品性等が向上する。また、臭気等を低減できる効果がある。
【0020】
本発明のレゾール型フェノール樹脂は、特に限定されないが、油変性レゾール型フェノール樹脂を含むことが好ましい。これにより、積層板からのプリント板の打ち抜き性を向上することができる。油変性レゾール型フェノール樹脂としては、例えば桐油、アマニ油、クルミ油等の乾性油変性レゾール型フェノール樹脂、大豆油、綿実油、サフラワー油等の半乾性油変性レゾール型フェノール樹脂等が挙げられる。これらの中でも桐油変性レゾール型フェノール樹脂が好ましい。これにより、打ち抜き性をより向上することができる。また、前記油変性レゾール型フェノール樹脂の含有量は、特に限定されないが、フェノール樹脂組成物全体の5〜50重量%が好ましく、特に10〜40重量%が好ましい。これにより、更に積層板の打ち抜き性を向上することができる。
【0021】
ノボラック型フェノール樹脂を含むことにより、未反応のフェノールおよびホルムアルデヒドを低減することができる。ノボラック型フェノール樹脂は、レゾール型フェノール樹脂に比べ、合成する際に未反応のフェノール及びホルムアルデヒドの残存が少ないため、紙基材にレゾール型フェノール樹脂とノボラック型フェノール樹脂を混合したフェノール樹脂組成物を含浸・乾燥することにより未反応のフェノール及びホルムアルデヒドの少ないプリプレグを得ることができる。レゾール型フェノール樹脂の未反応フェノールを除去する方法としては、フェノール樹脂を水蒸気蒸留する方法が知られているが、加工工程が増えてしまうため好ましくない。一方、本発明では、未反応物の削減を通常実施しているフェノール樹脂組成物の配合により行う為、工程を増やすことなく未反応フェノールおよびホルムアルデヒドを低減出来る。
【0022】
また、前述したレゾール型フェノール樹脂との併用によって、フェノール樹脂以外の架橋剤を用いることなく硬化することができる。更に、前述したレゾール型フェノール樹脂とノボラック型フェノール樹脂との組合せにより、プリント板を打ち抜きするときに発生する粉を低減することができる。従来の樹脂組成物からなる紙基材フェノール樹脂積層板から、プリント板を打ち抜く場合には打ち抜き断面から樹脂組成物等の粉が発生していた。かかる粉は、半田の塗れ性や接続信頼性に影響を与えていた。
【0023】
前記ノボラック型フェノール樹脂は、例えばフェノールノボラック型樹脂、ビスフェノールAノボラック型フェノール樹脂、ビスフェノールFノボラック型フェノール樹脂、クレゾールノボラック型フェノール樹脂、アルキルフェノールノボラック型フェノール樹脂等が挙げられる。これらの中でも、フェノールノボラック型樹脂、ビスフェノールFノボラック型フェノール樹脂、クレゾールノボラック型フェノール樹脂が好ましい。これにより、プリント板を打ち抜く際に発生する粉をより低減することができる。
【0024】
前記ノボラック型フェノール樹脂の含有量は、特に限定されないが、フェノール樹脂組成物全体の3〜30重量%が好ましく、特に5〜20重量%が好ましい。ノボラック型フェノール樹脂の含有量が前記範囲内であると、臭気等を低減とプリント板を打ち抜く際に発生する粉をより低減することができる。
【0025】
また、本発明の目的に反しない範囲において、ハロゲン化合物、リン化合物、アミノ樹脂等の難燃性化合物を配合することができる。前記難燃性化合物の含有量は、特に限定されないが、フェノール樹脂組成物全体の5〜30重量%が好ましく、特に10〜20重量%が好ましい。これにより、紙基材フェノール樹脂積層板の特性を損なうことなく難燃性を向上することができる。ハロゲン化合物は、例えばテトラブロモビスフェノールA(TBBA)、TBBA−エポキシオリゴマー等が挙げられる。
【0026】
リン化合物としては、例えばリン酸エステル、縮合リン酸エステル、ホスフィンオキサイド等を挙げることができる。例えばリン酸エステルとしては、例えばトリエチルホスフェイト、トリブチルホスフェイト、トリフェニルホスフェイト、トリクレジルホスフェイト、クレジルジフェニルホスフェイト、レゾルシルジフェニルホスフェイト、トリイソプロピルフェニルホスフェイト等が挙げられ、これらは1種または2種以上の混合系として使用される。この中で、トリフェニルホスフェイト、トリクレジルホスフェイト、クレジルジフェニルホスフェイトの中から選ばれる一種以上のリン化合物が入手の容易性の点で好ましい。
【0027】
アミノ樹脂は、例えばメラミン樹脂、グアナミン樹脂などであるが、難燃化の効果を高めるためにはメラミン樹脂が好ましい。アミノ樹脂は、メラミンやグアナミンなどのアミノ化合物とホルムアルデヒド等のアルデヒド類との初期反応物であり、それらのメチロール基の一部または全部をメタノール、ブタノール等の低級アルコールでエーテル化したものも含まれる。
【0028】
本発明の積層板では、塗布液としてエポキシ樹脂塗布液を用いる。塗布液は、エポキシ樹脂と、硬化剤とを含むことが好ましい。
【0029】
エポキシ樹脂としては、特に限定はされないが、例えば、積層板用として一般に使用されている、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂等の臭素化型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアネートなどの複素環式エポキシ樹脂のほか、脂環式型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらを単独または2種類以上組み合わせて使用することができる。
【0030】
硬化剤としては、特に限定はされないが、例えば、積層板用として一般に使用されている、アミノ基を有する硬化剤として、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、パレキシレンジアミン、4,4’−ジアミノフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジシクロヘキサン、ビス(4−アミノフェニル)フェニルメタン、1,5−ジアミノナフタレン、メタキシリレンジアミン、パラキシレンナフタレン、1,1−ビス(4−アミノフェニル)シクロヘキサン、ジシアンジアミドなどが用いられる。耐熱性、硬化性等の点で、好ましい硬化剤は、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ジシアンアミド、ジアミノジエチルジメチルフェニルメタンである。これらのうち何種類かを併用しても良い。
【0031】
本発明の積層板に用いる、樹脂組成物は、上述した以外、本発明の目的に反しない範囲において、その他の樹脂として、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂など、また、硬化促進剤、難燃剤、カップリング剤、その他の成分を添加することは差し支えない。
【0032】
次に、プリプレグについて説明する。本発明の積層板に用いる紙基材およびガラス繊維基材プリプレグは、上述のフェノール樹脂組成物を紙基材に、エポキシ樹脂組成物をガラス繊維基材に含浸してなるものである。これにより、未反応のフェノールおよびホルムアルデヒドが少ない積層板を得ることができる。紙基材としては、例えばクラフト紙、リンター紙などがあげられる。また、紙基材として水溶性フェノール樹脂、メチロールメラミン樹脂等で前もって処理したものも本発明に含まれる。
【0033】
ガラス繊維基材としては、特に限定はされないが、ガラス繊布、ガラス不繊布等を用いることができる。
【0034】
フェノール及びエポキシ樹脂組成物を基材に含浸させる方法は、通常使用されている方法を使用することができる。例えば、基材を樹脂ワニスに含浸させる方法、各種コーターにより塗布する方法、スプレーによる吹き付け法等が挙げられる。
【0035】
本発明の積層板の積層条件としては、加熱する温度は、特に限定されないが、130〜240℃が好ましく、特に140〜200℃が好ましい。
また、前記加圧する圧力は、特に限定されないが、4〜15MPaが好ましく、特に6〜12MPaが好ましい。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。説明中、「%」は「重量%」を示す。
【0037】
(実施例1)
[未変性レゾール型フェノール樹脂の製造]
フェノール1000g、37%ホルムアルデヒド水溶液980g、トリエチルアミン20gからなる混合物を60℃で2時間反応させ、次に減圧下で濃縮し、これをメタノールで希釈して樹脂分50%の未変性のレゾール型フェノール樹脂ワニスを得た。
【0038】
[ノボラック型フェノール樹脂の製造]
フェノール1000gとシュウ酸10gとを仕込み、100℃に昇温して、37%ホルムアルデヒド水溶液450gを60分間かけて逐次添加し、100℃で還流しながら1時間反応させた。その後、常圧蒸留を行い130℃まで昇温して、500Paの減圧下で減圧蒸留を行って190℃まで昇温し、これをメタノールで希釈して樹脂分50%ノボラック型フェノール樹脂を得た。
【0039】
[油変性レゾール型フェノール樹脂の製造]
フェノール1600gと桐油1000gをパラトルエンスルホン酸の存在下、95℃で2時間反応させ、更にパラホルムアルデヒド650g、ヘキサメチレンテトラミン30g、トルエン2000gを加えて90℃で2時間反応後、減圧下で濃縮し、これをトルエンとメタノールの混合溶媒で希釈して樹脂分50%の油変性フェノール樹脂ワニス(油変性量30%)を得た。
【0040】
(紙基材含浸用のフェノール樹脂塗布液の調製)
上述の未変性レゾール型フェノール樹脂ワニス100重量部(25.6%)と、油変性レゾール型フェノール樹脂ワニス100重量部(25.6%)と、ノボラック型フェノール樹脂ワニス50重量部(12.8%)と、臭素化エポキシ(GX−153 大日本インキ化学工業社製)30重量部(15.4%)と、トリフェニルホスフェイト(TPP、大八化学社製)20重量部(10.3%)と、メチロール化メラミン樹脂(フェノライトTD−2538、大日本インキ化学工業社製)20重量部(10.3%)を配合し、紙基材含浸用の樹脂塗布液を得た。
【0041】
(ガラス繊維基材含浸用のエポキシ樹脂塗布液の調製)
臭素化エポキシ樹脂(エピクロン1123P DIC社製)85重量部(82.8%)と、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エピクロンN−690 DIC社製)15重量部(14.6%)、ジシアンジアミド(日本カーバイド社製)2.5重量部(0.02%)と、イミダゾール(2E4MZ、四国化成社製)0.1重量部(0.001%)を配合し、更に水酸化アルミニウム(ハイジライト 昭和電工社製)を50重量部配合し、ガラス繊維基材含浸用樹脂塗布液を得た。
【0042】
(積層板の製造)
次に上述の含浸用の樹脂塗布液を樹脂含浸率55%(プリプレグ全体に対する割合)となるように紙基材及びガラス繊維基材に含浸させてプリプレグを得た。紙基材プリプレグを6枚重ね、この上、下面にガラス繊維基材プリプレグを各1枚ずつ重ね、更にその両外面に接着剤つき銅箔(FGM 日本電解社製)を重ね合わせ、150℃、10MPa、120分加熱加圧成形して厚さ1.6mmの積層板を得た。
【0043】
(実施例2)
ガラス繊維基材に含浸させるエポキシ樹脂塗布液の配合量を以下の通りにした以外は、実施例1と同様にした。
実施例1で用いたノボラック型フェノール樹脂ワニス20重量部(15.9%)と、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エピクロン153 DIC社製)100重量部(79.4%)と、トリフェニルホスフェイト(TPP、大八化学社製)5重量部(4.0%)と、イミダゾール(2P4MZ、四国化成社製)1重量部(0.8%)を配合し、水酸化アルミニウム(ハイジライト 昭和電工社製)を50重量部配合し、ガラス繊維基材含浸用樹脂塗布液を得た。
【0044】
(実施例3)
ガラス繊維基材にガラス不織布を用いた以外は実施例1と同様にした。
【0045】
(比較例1)
エポキシ樹脂塗布液を紙基材に含浸させ、接着剤を含まない銅箔を用いた以外は、実施例1と同様にした。
【0046】
(比較例2)
エポキシ樹脂塗布液を紙基材に含浸させ、紙基材プリプレグを4枚重ね、この上、下面にガラス繊維基材プリプレグを各2枚ずつ重ね、接着剤を含まない銅箔を用いた以外は、実施例1と同様にした。
【0047】
(比較例3)
エポキシ樹脂塗布液を紙基材に含浸させた以外は、実施例1と同様にした。
【0048】
(比較例4)
接着剤を含まない銅箔を用いた以外は、実施例1と同様にした。
【0049】
(比較例5)
エポキシ樹脂塗布液を紙基材に含浸させ、フェノール樹脂液をガラス繊維基材に含浸させ、接着剤を含まない銅箔を用いた以外は、実施例1と同様にした。
【0050】
(比較例6)
フェノール樹脂液をガラス繊維基材に含浸させた以外は、実施例1と同様にした。
【0051】
(比較例7)
全て紙基材にフェノール樹脂液を含浸させたプリプレグを使用すること以外は、実施例1と同様にした。
【0052】
(比較例8)
全て紙基材にエポキシ樹脂液を含浸させたプリプレグを使用すること以外は、実施例1と同様にした。
【0053】
上述の実施例および比較例により得られた積層板の各特性を評価した。各特性は、以下の方法で評価した。得られた結果を表1に示す。
【0054】
(1)曲げ強度
曲げ強度はJIS C 6481に準じて評価した。
【0055】
(2)吸水率
吸水率はJIS C 6481に準じて評価した。
【0056】
(3)長期吸湿性
サンプルはJIS C 6481の吸水率測定に準じて形状で調整した。50x50mm角のサンプルを切り出し、銅箔を全て除去した。前処理として50℃で24時間処理したものを初期重量とした。60℃/90%の恒温恒湿槽に1000時間放置し、サンプル取り出し後20℃/65%の環境下で30分放置し、その後30分以内に重量を測定し、重量変化から吸湿率を算出した。
【0057】
(4)銀ペーストスルーホール間絶縁性
銅箔ランド径φ0.75mmとし、φ0.5mmのドリルを使用して、スルーホールピッチが1.5mmになる様にドリル加工を行う。スルーホールには銀ペーストを印刷、硬化させ上下面の導通をとり、銀ペーストスルーホール間の絶縁性試験プリント板を作成する。
この基板に50Vの電圧を加え、40℃/90%の恒温恒湿槽に1000時間放置後、取り出して100Vの電圧をかけ、スルーホール間の絶縁抵抗値を測定する。
【0058】
(5)耐トラッキング性
耐トラッキング性は、UL−1410に準じて評価した。
【0059】
(6)銅箔回路間の耐トラッキング性
回路幅1mm、回路長30mm、回路間隙1mmの銅箔回路を作成し、UL−1410に準じて評価した。
【0060】
(7)気中耐熱性
サンプルは、100x100mmに切り出した銅張積層板上に、幅10mmの格子状回路を残銅率:50%になるように加工したものを使用する。230℃に設定した箱型乾燥機中に10分間放置し、基板の膨れ、銅箔剥がれの有無を確認する。
【0061】
【表1】

【0062】
表から明らかなように、実施例1、2、3は、曲げ強度、吸水率、長期吸湿率、電気絶縁性、銅箔回路間の耐トラッキング性及び気中耐熱性に優れていた。
曲げ強度、吸水率は、比較例7,8との対比よりガラス繊維基材を用いることにより発現された。長期耐湿性、電気絶縁性は、比較例1〜3、5,8との対比より、コア部分に紙基材にフェノール樹脂液を含浸させることにより発現された。また、銅箔回路間の耐トラッキング性は、比較例1、2,4、5、8との対比より接着剤付き銅箔を用いることにより発現された。気中耐熱性は、比較例5〜8との対比より積層板の上下面にエポキシ樹脂塗布液をガラス繊維基材に含浸させたプリプレグを用いることにより発現された。
上記より曲げ強度、吸水率、長期吸湿率、電気絶縁性、銅箔回路間の耐トラッキング性及び気中耐熱性を兼ね備える印刷回路用積層板はフェノール樹脂塗布液を紙基材に含浸乾燥した紙基材プリプレグを所定枚数重ねた上、下面に、エポキシ樹脂塗布液をガラス繊維基材に含浸乾燥したガラス繊維基材プリプレグを所定枚数重ね、さらに、少なくとも片面に接着剤付き金属箔を、前記接着剤面と前記ガラス繊維基材プリプレグ面とを対向させるように配置したことを特徴とする積層体を加熱加圧して形成して得られる積層板である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール樹脂塗布液を紙基材に含浸乾燥した紙基材プリプレグを所定枚数重ねた上、下面に、エポキシ樹脂塗布液をガラス繊維基材に含浸乾燥したガラス繊維基材プリプレグを所定枚数重ね、さらに、少なくとも片面に接着剤付き金属箔を、前記接着剤面と前記ガラス繊維基材プリプレグ面とを対向させるように配置した積層体を加熱加圧して形成して得られることを特徴とする積層板。
【請求項2】
前記ガラス繊維基材は、ガラス織布である請求項1に記載の積層板。
【請求項3】
長期吸湿性が、2重量%以下である請求項1または2に記載の積層板。

【公開番号】特開2010−162737(P2010−162737A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−5824(P2009−5824)
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】