説明

積層配線パターンの形成方法および積層電子部品の製造方法

【課題】絶縁層を介して積層された複数の配線パターンからなる積層配線パターンを形成するあたり、厚い配線パターンを形成する場合にも、絶縁層の層間剥離を引き起こすことなく、積層配線パターンを形成することを可能にする。
【解決手段】絶縁層を形成するための感光性絶縁ペーストとして、光吸収剤の含有量が、感光性絶縁ペースト膜12の厚み方向の全領域を光硬化させるために必要な量以上の露光量が得られるように調整された感光性絶縁ペーストを用いる。
光インプリント法,あるいはフォトリソグラフィー法により配線パターンを形成する。
感光性絶縁ペースト膜を硬化させる前の段階でフォトリソグラフィー法により、ビアホール用貫通孔を形成するとともに、フォトリソグラフィー法による加工時の露光量を、形成されるビアホール用貫通孔の直径が、フォトマスクの、ビアホール用貫通孔形成用の遮光領域の直径の50%以上となるような露光量とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線パターンの形成方法およびそれを利用した電子部品の製造方法に関し、詳しくは、積層電子部品を構成する積層体の内部に、絶縁層を介して積層された複数の配線パターンからなる積層配線パターンの形成方法およびそれを利用した積層電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、小型、高性能のコイル部品として、絶縁体層を介して積層された内部電極を層間接続することにより形成された積層型コイルを有する積層型チップコイルが広く用いられている。
このような積層型チップコイルの製造方法の一つとして、以下に説明するような方法がある(特許文献1参照)。
【0003】
この方法によれば、まず、図5(a)に示すように、キャリアフィルム51上に1層目の感光性絶縁ペースト膜52aを形成する。
それから、感光性絶縁ペースト膜52a上に感光性配線ペーストを塗布し、乾燥させた後、フォトリソグラフィー法により、図5(b)に示すような1層目の感光性配線ペーストパターン53aを形成する。
【0004】
次に、図5(c)に示すように、2層目の感光性絶縁ペースト膜52bを形成した後、フォトリソグラフィー法により、所定の位置にビアホール用貫通孔54を形成する。
【0005】
それから、図5(d)に示すように、2層目の感光性配線ペーストパターン53bの形成、ビアホール用貫通孔54への導電性ペースト(ビアホール導体)56の充填、3層目の感光性絶縁ペースト膜52cの形成、ビアホール用貫通孔54の形成、および3層目の感光性配線ペーストパターン53cの形成を行う。
そして、3層目の感光性配線ペーストパターン53cを覆うように、最上層の感光性絶縁ペースト膜52dを形成する。これにより、多層ペーストパターンを備えた積層体55が形成される。
【0006】
なお、感光性配線ペーストパターン、感光性絶縁ペースト膜内のビアホール用貫通孔は、いずれも、感光性配線ペーストおよび感光性絶縁ペーストを塗布・乾燥した後、フォトリソグラフィー法により形成される。
また、フォトリソグラフィー法により所望の直径のビアホール用貫通孔を形成することができるように、感光性絶縁ペーストとして、通常、光吸収剤を添加した感光性絶縁ペーストが用いられる。
【0007】
そして、上記の積層体をチップのサイズにカットし、キャリアフィルムを剥離した後、焼成、外部電極の形成を行うことにより、図5(e)に示すような積層コイル型部品57が得られる。なお、この積層型コイル部品57は、感光性配線ペーストパターンが焼結してなる内部導体がビアホール導体により層間接続されてなるコイル(図示せず)を備え、両端部に、該コイルの両端部と導通する一対の外部電極58a,58bを備えた構造を有している。
【0008】
ところで、上記従来の方法によれば、フォトリソグラフィー法により配線パターンを形成する場合において、特性の高い積層型コイル部品を得るために、厚くて断面積の大きい配線パターンを形成しようとすると、配線パターンを覆うように形成される感光性絶縁ペースト膜として、配線パターンの段差を埋めるとともに、絶縁特性を確保するために、厚みの厚い感光性絶縁ペースト膜を形成することが必要となる。しかしながら、感光性絶縁ペーストは、上述のように、所望のビアホール用貫通孔を形成することができるように光吸収剤を含有しているため、仮に光照射量を多くしても深部まで硬化に必要な量の光を到達させることが困難で、厚み方向において全領域が十分に硬化した絶縁層を形成することは容易ではない。すなわち、感光性絶縁ペーストの厚みが厚くなると、感光性絶縁ペーストを光硬化させる際に、照射光が感光性絶縁ペーストの深部まで到達しにくくなるため、感光性絶縁ペーストの表面側と深部(裏面側)において硬化状態に差異が生じることになる。
【0009】
そして、硬化状態に差異が生じたまま絶縁層を積層して多層化すると、各絶縁層の界面では、十分に硬化した感光性絶縁ペーストの上面側に、下面側が十分に硬化していない感光性絶縁ペーストが繰り返し積層されることになる。感光性絶縁ペーストの熱収縮率は、その硬化状態により異なるため、乾燥や焼成などの熱負荷工程で、層界面に剥がれが生じる。このように、焼成後に絶縁層間で剥がれが発生すると、積層電子部品の特性異常や、配線の露出による信頼性の低下などを引き起こすという問題点がある。
したがって、絶縁層を介して積層された複数の配線パターンからなる積層配線パターンを形成するにあたって、フォトリソグラフィー法などの光学的な方法で膜厚の大きい配線パターンを形成することは容易でないのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−109097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するものであり、絶縁層を介して積層された複数の配線パターンからなる積層配線パターンを形成するにあたって、膜厚が厚い配線パターンを形成する場合にも、絶縁層の層間剥離を引き起こすことなく、良好な配線パターン(積層配線パターン)を形成することが可能な積層配線パターンの形成方法およびそれを利用した積層電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の積層配線形成方法は、
絶縁層を介して積層された複数の配線パターンからなる積層配線パターンの形成方法であって、
(a)感光性導電ペースト膜を形成する工程と、
(b)前記感光性導電ペースト膜を露光、現像して配線パターンを形成する工程と、
(c)前記配線パターンおよびその周囲を覆うように、光吸収剤を含有する感光性絶縁ペースト膜を形成する工程と、
(d)前記感光性絶縁ペースト膜を露光して硬化させることにより絶縁層を形成する工程と、
(e)前記絶縁層上に感光性導電ペースト膜を形成する工程と、
(f)前記感光性導電ペースト膜を露光、現像して配線パターンを形成する工程と、
(g)前記配線パターンおよびその周囲を覆うように、光吸収剤を含有する感光性絶縁ペースト膜を形成する工程と、
(h)前記感光性絶縁ペースト膜を露光して硬化させることにより絶縁層を形成する工程と
を具備するとともに、
前記感光性絶縁ペーストとして、前記感光性絶縁ペースト膜の厚み方向の全領域を光硬化させるために必要な量以上の露光量が得られるように、前記光吸収剤の含有量が調整された感光性絶縁ペーストを用いることを特徴としている。
【0013】
また、前記(b)および(f)の配線パターンを形成する工程において、光インプリント法により前記配線パターンを形成することを特徴としている。
【0014】
また、前記(b)および(f)の配線パターンを形成する工程において、フォトリソグラフィー法により前記配線パターンを形成することを特徴としている。
【0015】
また、前記(d)の前記感光性絶縁ペースト膜を露光して硬化させる前の段階および前記(h)の前記感光性絶縁ペースト膜を露光して硬化させる前の段階で、フォトリソグラフィー法により、前記感光性絶縁ペースト膜にビアホール用貫通孔を形成する工程を備えているとともに、
前記感光性絶縁ペースト膜の前記光吸収剤の含有量に応じ、前記ビアホール用貫通孔を形成する工程における前記フォトリソグラフィー法による加工時の露光量を、形成されるビアホール用貫通孔の直径が、前記フォトリソグラフィー法に用いるフォトマスクの、前記ビアホール用貫通孔形成用の遮光領域の直径の50%以上となるような露光量に設定すること
を特徴としている。
【0016】
請求項1または2において形成される、前記絶縁層と前記配線パターンを備えた前記積層体を焼成する工程を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明の配線形成方法は、複数の配線パターンを層間絶縁する絶縁層を形成するための感光性絶縁ペーストとして、光吸収剤の含有量が、感光性絶縁ペースト膜の厚み方向の全領域を光硬化させるために必要な量以上の露光量が得られるように調整された感光性絶縁ペーストを用いるようにしているので、配線パターンの厚みを厚くし、それに伴って各絶縁層(感光性絶縁ペースト膜)の厚みを厚くした場合にも、各絶縁層(感光性絶縁ペースト膜)を、その厚み方向の全領域で十分に硬化した状態とすることが可能になる。したがって、表面側から裏面側まで十分に硬化した均一な状態の各絶縁層(感光性絶縁ペースト膜)が積層された積層体は、乾燥や焼成などの熱負荷工程においても絶縁層の界面で剥がれを生じることがない。
その結果、絶縁層を介して積層された複数の配線パターンからなる積層配線パターンを形成する場合において、膜厚の大きい配線パターンを形成する場合にも、絶縁層の層間剥離を招くことなく、効率よく信頼性の高い積層配線パターンを形成することが可能になる。
【0018】
また、請求項1の(b)および(f)の配線パターンを形成する工程において、光インプリント法により配線パターンを形成することにより、各絶縁層(感光性絶縁ペースト膜)を、その厚み方向の全領域で十分に硬化した均一な状態とすることが可能になる。
その結果、絶縁層を介して積層された複数の配線パターンからなる積層配線パターンの形成にあたって、膜厚の大きい配線パターンを形成する場合にも、絶縁層の層間剥離を招くことなく、効率よく積層配線パターンを形成することが可能になる。
【0019】
また、請求項1の(b)および(f)の配線パターンを形成する工程において、フォトリソグラフィー法により配線パターンを形成するようにした場合にも、各絶縁層(感光性絶縁ペースト膜)を、その厚み方向の全領域で十分に硬化した均一な状態とすることが可能になる。
その結果、絶縁層を介して積層された複数の配線パターンからなる積層配線パターンの形成にあたって、膜厚の大きい配線パターンを形成する場合にも、絶縁層の層間剥離を招くことなく、効率よく積層配線パターンを形成することが可能になる。
【0020】
また、請求項1の(d)の感光性絶縁ペースト膜を露光して硬化させる前の段階および(h)の感光性絶縁ペースト膜を露光して硬化させる前の段階で、フォトリソグラフィー法により、感光性絶縁ペースト膜にビアホール用貫通孔を形成する工程を設けるとともに、感光性絶縁ペースト膜の光吸収剤の含有量に応じ、ビアホール用貫通孔を形成する工程におけるフォトリソグラフィー法による加工時の露光量を、形成されるビアホール用貫通孔の直径が、フォトリソグラフィー法に用いるフォトマスクのビアホール用貫通孔形成用の遮光領域の直径の50%以上となるような量に設定することにより、所望の直径を有するビアホール用貫通孔を備えた絶縁層を形成することが可能になる。なお、感光性絶縁ペースト膜の他の領域については、ビアホール用貫通孔の形成後に、必要な露光を行うことにより、その厚み方向の全領域で十分に硬化した状態とすることができる。
その結果、膜厚の大きい配線パターンを形成する場合にも、絶縁層の層間剥離を招くことなく、絶縁層を介して配設された複数の配線パターンを有する積層体を確実に、しかも効率よく形成することが可能になる。
【0021】
本発明の積層電子部品の製造方法は、請求項1または2において形成される、絶縁層と配線パターンを備えた積層体を焼成するようにしているので、絶縁層を介して積層された複数の配線(導体)が積層体の内部に配設された構造を有し、かつ、絶縁層の層間剥離のない、信頼性の高い積層電子部品を効率よく製造することが可能になる。
したがって、本発明によれば、厚くて断面積の大きい配線(導体)を備えた、高信頼性,高特性の積層型コイル部品などを効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(a)〜(c)は、本発明の実施例(実施例1)にかかる積層配線パターンの形成方法を示す図である。
【図2】(a)〜(c)は、本発明の実施例1にかかる積層配線パターンの形成方法の,図1(a)〜(c)の工程に続く工程を示す図である。
【図3】本発明の実施例1にかかる方法により製造された積層電子部品(積層型コイル部品)の構成を模式的に示す図である。
【図4】(a),(b)は、本発明の他の実施例にかかる積層配線パターンの形成方法の一部工程を示す図である。
【図5】(a)〜(e)は、従来の積層型チップコイルの製造方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の実施の形態を示して、本発明の特徴とするところをさらに詳しく説明する。
【実施例1】
【0024】
絶縁層を介して積層された複数の配線(コイル導体)を、ビアホール導体を介して接続することにより形成されたコイルを積層体内に備えた積層型コイル部品を製造する場合を例にとって説明する。
【0025】
(1)感光性絶縁ペーストとして、感光材料とガラス粉末を主たる成分とする感光性ガラスペーストを用意する。
また、感光性電極ペーストとして、感光性材料とAg粉末を主たる成分とする感光性Agペーストを用意する。
【0026】
(2)それから、図1(a)に示すように、キャリアフィルム(基材)1上に、1層目の感光性ガラスペースト膜2を印刷により全面形成し、乾燥した後、UV光を照射して,感光性ガラスペースト膜2を光硬化させる。
【0027】
(3)この感光性ガラスペースト膜2上に、配線材料となる1層目の感光性Agペースト膜3を印刷により全面形成し、乾燥した後、図1(b)に示すように、離型剤4で処理した光インプリント用モールド5でプレスする。
なお、ここでは、光インプリント用モールド5として、石英などの透光性の材料に、凹部5aと凸部5bからなる所望のパターンの凹凸部15(例えば段差40μm以上)を有し、凸部5bの先端にNi膜などの遮光性を有する膜(遮光膜)膜16が形成された構造のものを用いた。また、光インプリント用モールド5は、フッ素系のシランカップリング剤からなる離型剤に5分間浸漬処理することにより、遮光膜16を含む凹凸部15に離型剤4を付着させた状態で使用した。
【0028】
(4)そして、光インプリント用モールド5のプレス後に、光インプリント用モールド5が感光性Agペースト膜3に密着した状態のまま、光インプリント用モールド5側から紫外光(UV光)を照射する。これにより、感光性Agペースト膜3の、光インプリント用モールド5の凹部5aに入り込んだ部分3aのみが感光して光硬化する。すなわち、光インプリント用モールド5の凸部5bの表面には遮光膜16が形成されており、遮光されるため、感光性Agペースト膜3の、凸部5bの下側の部分3bは露光しないため光硬化せずに残ることになる。
【0029】
(5)UV光の照射が終了した後、感光性Agペースト膜3から光インプリント用モールド5を剥離(離型)する。これにより、図1(c)に示すように、キャリアフィルム(基材)1上に形成された感光性ガラスペースト膜(絶縁層)2には、光インプリント用モールド5の凹部5aの形状に対応する形状に成型加工され、光硬化したAgペースト配線3aと、光インプリント用モールド5の凸部5bで押圧されることにより薄くなった未硬化の感光性Agペースト膜の残膜(未硬化膜)3bが残る。
【0030】
(6)それから、全体を現像液にさらして、未硬化の感光性Agペーストの残膜3bを除去し、図2(a)に示すように、感光性ガラスペースト膜(絶縁層)2上に光硬化したAgペースト配線3aを形成する。このAgペースト配線3aの膜厚は、概ね光インプリント用モールド5の凹凸部15の段差に相当する厚み以上となる。
【0031】
(7)さらに、図2(b)に示すように、感光性ガラスペーストを印刷により全面形成し、乾燥することにより、絶縁層となる2層目の感光性ガラスペースト膜12を形成する。
そして、フォトリソグラフィー法により、露光、現像を行って、ビアホール用貫通孔7(図2(b))を形成する。このときの感光性ガラスペースト膜12の厚みはAgペースト配線3aの厚み(例えば50μm)とAgペースト配線3a上の感光性ガラスペースト膜12の厚み(例えば20μm)の和(50μm+20μm=70μm)となる。
【0032】
上述のようにして露光、現像を行ってビアホール用貫通孔7を形成した後、感光性ガラスペースト膜12にさらに光を照射して,感光性ガラスペースト膜12を、その厚み方向の全領域にわたって十分に硬化させる。
【0033】
なお、この実施例1では、絶縁層を形成するための感光性ガラスペーストとして、感光剤にアクリル系感光樹脂を、光吸収剤に黄色染料を、ガラス成分にSi−B−Bi−K−Al系ガラスをそれぞれ用いるとともに、光吸収剤の添加量を0.10重量%以下に調整した感光性ガラスペーストを用いた。
【0034】
この光吸収剤の添加量は、Agペースト配線3a上の2層目の感光性ガラスペースト膜12の厚みを20μm程度、総膜厚を70μm程度とした場合において、露光量:約2.5mJ/cm2の条件で露光させた場合に、フォトマスク設計径(フォトマスクのビアホール用貫通孔形成用の遮光領域の直径)の50%以上の直径を有するビアホール用貫通孔7が形成されるような量である。
【0035】
なお、ビアホール用貫通孔7の直径がフォトマスク設計径の50%以上となるようにしたのは、この要件を満たすようにした場合、形成されるビアホール用貫通孔7の直径を制御することが可能で、目標とする直径に近い直径を有するビアホール用貫通孔を形成しやすいことによる。
【0036】
目標とするビアホール用貫通孔7の直径によって露光量は異なる。また、光吸収剤の添加量や露光量は、感光性ガラスペースト膜12のAgペースト配線3a上の厚み、および総膜厚によっても異なる。
【0037】
なお、絶縁層形成用のペーストとして、この実施例1では感光性ガラスペーストを用いているが、その構成は上述のものに限られるものではなく、成分や組成の異なる感光性ガラスペーストを用いることも可能であり、さらには、ガラス以外の絶縁材料を主たる成分とするペーストを用いることが可能である。
また、光吸収剤の種類についても上記の例に限らず、他の光吸収剤を用いることも可能である。なお、光吸収剤の種類によって、その添加量が異なる場合があるのはいうまでもない。
【0038】
(8)上述のようにして形成した感光性ガラスペースト膜12上に、感光性Agペーストを印刷により全面形成した後、乾燥することにより、上層の配線材料となる感光性Agペースト膜を形成する。このとき、上記ビアホール用貫通孔7に感光性Agペーストが充填される。このビアホール用貫通孔7に充填された感光性Agペーストは、焼成の工程を経てビアホール導体となるものである。
そして、1層目のAgペースト配線3aを形成する場合と同じ工程を経て、図2(c)に示すように、上層のAgペースト配線13aを形成する。
【0039】
さらに、多層の配線パターンを形成する場合は、上述の絶縁層(感光性ガラスペースト膜)の形成工程とさらにその上への配線(Agペースト配線)の形成工程を繰り返す。
そして、所望の層数のAgペースト配線の形成を終えた後、最上層となる感光性ガラスペースト膜を印刷により全面形成し、乾燥した後、UV光を照射して感光性ガラスペースト膜を硬化させる。
【0040】
それから、ダイシング、キャリアフィルムの剥離を行った後、焼成することによりチップ素子を得る。そして、必要に応じてチップ素子をバレル研磨した後、外部電極の形成を行う。
【0041】
これにより、図3に模式的に示すように、Agペースト配線(3a,13a(図2(c))など)が焼成されてなる配線(コイル導体)33が、絶縁層22に配設されたビアホール導体(図示せず)を介して接続されてなるコイル20を内部に備えるとともに、コイル20と導通する外部電極40a,40bを備えた積層型コイル部品10が得られる。
【0042】
この実施例1の方法によれば、光吸収剤の含有量が、感光性ガラスペースト膜の厚み方向の全領域を光硬化させるために必要な量以上の露光量が得られるように調整された感光性ガラスペースト(感光性絶縁ペースト)を用いるようにしているので、感光性ガラスペースト膜(絶縁層)の表面側と深部(裏面側)の硬化状態の差が緩和される(実質的に均一になる)。そのため、絶縁層を介して積層された複数の配線パターンからなる積層配線パターンを形成するにあたって、膜厚の大きい配線パターンを形成する場合にも、絶縁層の層間剥離を招くことなく、効率よく信頼性の高い積層配線パターンを形成することが可能になる。すなわち、上記実施例1の方法によれば、乾燥や焼成などの熱負荷工程での感光性ガラスペースト膜(絶縁層)間の剥がれを抑制,防止することが可能になり、結果として、信頼性が高く,良好な特性を備えた積層電子部品を効率よく製造することが可能になる。
【0043】
また、感光性ガラスペースト膜にビアホール用貫通孔を形成するためのフォトリソグラフィー加工時の露光量を、フォトマスク設計径(フォトマスクのビアホール用貫通孔形成用の遮光領域の直径)の50%以上の直径を有するビアホール用貫通孔が得られる量に設定することで、光吸収剤の添加量変更による解像度の変化が緩和され、所望の直径を有するビアホール用貫通孔を得ることができる。
したがって、特性異常の発生や信頼性の低下を抑制して、特性の高い積層型コイル部品などの積層電子部品を歩留りよく製造することが可能になる。
【0044】
なお、この実施例1では、感光性ガラスペースト膜および感光性Agペースト膜の形成方法に印刷の方法を用いたが、スピンコートやスプレーコートなど一般的な膜形成技術を用いることも可能である。
【実施例2】
【0045】
上記実施例1では、光インプリント法によりAgペースト配線3a(図1,2)を形成したが、この実施例2では、フォトリソグラフィー法によりAgペースト配線3a(図4)を形成した。
【0046】
そして、Agペースト配線3aを形成する工程以外の工程、すなわち、感光性ガラスペースト膜の形成工程、感光性ガラスペースト膜へのビアホール用貫通孔の形成工程などにおいては、すべて上記実施例1の場合と同様の方法で、実施例1で製造した積層型コイル型部品と同じ積層型コイル部品を製造した。
なお、この実施例2でフォトリソグラフィー法によりAgペースト配線を形成するにあたっては,以下に説明する手順でAgペースト配線を形成した。
【0047】
まず、図4(a)に示すように、上記実施例1の方法と同じ方法でキャリアフィルムの感光性ガラスペースト膜2上に、配線材料となる感光性Agペースト膜3を印刷により全面形成し、乾燥した。
【0048】
それから、フォトマスク44を介して感光性Agペースト膜3にUV光を照射した後、現像して感光性Agペースト膜3の未露光部を除去することにより、図4(b)に示すように、Agペースト配線3aを形成した。
【0049】
その後、上記実施例1の場合と同様の方法で、Agペースト配線上への感光性ガラスペースト膜の形成,感光性ガラスペースト膜へのビアホール用貫通孔形成などを行って、実施例1の場合と同様の構成(図3に示すような構成)を有する積層型コイル部品を作製した。なお、この実施例2は、Agペースト配線の形成に関しては、2層目以降のAgペースト配線についても、フォトリソグラフィー法を用いた。
【0050】
そして、この実施例2のように、Agペースト配線の形成にフォトリソグラフィーを用いる場合にも、本発明を適用することにより上記実施例1の場合と同様の効果が得られることが確認された。
【0051】
なお、上記実施例1,2では、積層電子部品として、積層型コイル部品を製造する場合を例にとって説明したが、本発明は、例えば、積層型LCフィルタなどの他の積層電子部品を製造する場合にも適用することが可能である。
【0052】
上記実施例1では、Agペースト配線の形成に光インプリント法を適用し、上記実施例2では、フォトリソグラフィーを適用したが、場合によっては、Agペースト配線の形成に、さらに他の光学的方法を用いることも可能である。
【0053】
また、上記実施例1および2では、層間絶縁膜へのビアホール用貫通孔の形成にフォトリソグラフィー法を用いたが、ビアホール用貫通孔の形状に加工したモールドを用いて光インプリント工法により形成することも可能である。
【0054】
本発明は、さらにその他の点においても、上記実施例に限定されるものではなく、発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 キャリアフィルム(基材)
2 1層目の感光性ガラスペースト膜
3 1層目の感光性Agペースト膜
3a 1層目のAgペースト配線
3b 残膜(未硬化膜)
4 離型剤
5 光インプリント用モールド
5a 凹部
5b 凸部
7 ビアホール用貫通孔
10 積層型コイル部品
12 2層目の感光性ガラスペースト
13a 2層目のAgペースト配線
15 凹凸部
16 膜(遮光膜)
20 コイル
22 絶縁層
33 配線(コイル導体)
40a,40b 外部電極
44 フォトマスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層と配線パターンを備えた積層体の内部に、前記絶縁層を介して積層される複数の配線パターンからなる積層配線パターンの形成方法であって、
(a)感光性導電ペースト膜を形成する工程と、
(b)前記感光性導電ペースト膜を露光、現像して配線パターンを形成する工程と、
(c)前記配線パターンおよびその周囲を覆うように、光吸収剤を含有する感光性絶縁ペースト膜を形成する工程と、
(d)前記感光性絶縁ペースト膜を露光して硬化させることにより絶縁層を形成する工程と、
(e)前記絶縁層上に感光性導電ペースト膜を形成する工程と、
(f)前記感光性導電ペースト膜を露光、現像して配線パターンを形成する工程と、
(g)前記配線パターンおよびその周囲を覆うように、光吸収剤を含有する感光性絶縁ペースト膜を形成する工程と、
(h)前記感光性絶縁ペースト膜を露光して硬化させることにより絶縁層を形成する工程と
を具備するとともに、
前記感光性絶縁ペーストとして、前記感光性絶縁ペースト膜の厚み方向の全領域を光硬化させるために必要な量以上の露光量が得られるように、前記光吸収剤の含有量が調整された感光性絶縁ペーストを用いること
を特徴とする積層配線パターンの形成方法。
【請求項2】
前記(b)および(f)の配線パターンを形成する工程において、光インプリント法により前記配線パターンを形成することを特徴とする請求項1記載の積層配線パターンの形成方法。
【請求項3】
前記(b)および(f)の配線パターンを形成する工程において、フォトリソグラフィー法により前記配線パターンを形成することを特徴とする請求項1記載の積層配線パターンの形成方法。
【請求項4】
前記(d)の前記感光性絶縁ペースト膜を露光して硬化させる前の段階および前記(h)の前記感光性絶縁ペースト膜を露光して硬化させる前の段階で、フォトリソグラフィー法により、前記感光性絶縁ペースト膜にビアホール用貫通孔を形成する工程を備えているとともに、
前記感光性絶縁ペースト膜の前記光吸収剤の含有量に応じ、前記ビアホール用貫通孔を形成する工程における前記フォトリソグラフィー法による加工時の露光量を、形成されるビアホール用貫通孔の直径が、前記フォトリソグラフィー法に用いるフォトマスクの、前記ビアホール用貫通孔形成用の遮光領域の直径の50%以上となるような露光量に設定すること
を特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の積層配線パターンの形成方法。
【請求項5】
請求項1または2において形成される、前記絶縁層と前記配線パターンを備えた前記積層体を焼成する工程を備えていることを特徴とする積層電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−251358(P2010−251358A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−95884(P2009−95884)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】