説明

積載枚数検知装置、シート供給装置及び画像形成装置

【課題】 シートの残量を精度良く検知可能とし、故障が少なく、抵コストの手段を提供する。
【解決手段】 残量検知装置は、1組の発光手段250、受光手段251ペアの検出部を持つ。受光手段は、発光手段で発光し、給紙トレイ21に積載された記録紙20の束を透過してくる光を受光し、受光量に対応する電圧Vaに変換、出力する。検出電圧Vaは、予め定めておいた記録紙の0,1,2,3・・の各残量に応じて区分された検出電圧(透過光量)範囲のどの範囲に入るか、即ち各残量に対応する範囲を一意に判定し、枚数を検知する。又検知枚数は、所定枚数以下になった時に、警告表示や表示画像形成動作の停止制御に用い、ジョブの途中で用紙切れが起きると、画像形成動作に不具合(転写ベルト5上に形成される画像枚数よりも給紙路で保持される記録紙20-1〜3の枚数が少ないので、用紙切れを予測しないと、形成画像が無駄になる)が生じることを回避する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレイに積載されたシート(例えば、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置の給紙トレイに積載された記録用紙)の積載枚数検知装置に関し、より特定すると、積載されたシートの透過光量の変化を検出することにより積載枚数を検知する積載枚数(残量)検知装置及び該積載枚数検知装置を備えたシート供給装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シートを用いる装置では、トレイにシートを積載し、そこから次段の処理部にシートを搬出するといった方法でシートを扱うものが、様々な分野で良く見られる。
このような装置では、シート切れを知らせること、さらに、できれば使用中のシート切れを避けたいので、トレイ内のシートの残量を管理することが求められる。特に、装置によっては、所定枚数のシートを連続して供給することが必要になり、所定枚数を供給しないうちに、トレイ内のシートが切れると、シートの供給を受ける処理部側に不具合が生じるケースもあって、トレイ内のシート残数を把握するために、積載状態のシート枚数を検知することが求められる。
このような装置の1例として、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置を挙げることができる。これらの画像形成装置では、記録用紙を設定されたページ数や部数のプリント出力を行う際に、連続して必要な枚数を画像形成部に搬送するために、給紙トレイで積載状態にあるシート枚数を検知することで、残数を管理している。
下記特許文献1は、複写・プリンタ・FAX等の複合機能を備えた画像形成装置における給紙トレイの記録紙残量検知に係わる例を示すものである。例示した特許文献1には、透過光量検出方式による残量検知装置が示されている。この透過光量による残量検知装置は、積載された記録紙の厚さ方向で挟む位置に配置される発光手段と受光手段よりなる透過光量検出部と、給紙トレイからの記録紙が通過する搬送路上に媒体の厚さ方向で挟む位置に配置される発光手段と受光手段よりなる記録紙1枚の透過光量検出部とを備え、両方の透過光量検出部によって検出された透過光量を演算することで、積載された少数枚の記録紙(5枚とか6枚)の残量を検知することを可能にするものである。
【特許文献1】特開2004−269233号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記特許文献1に示される残量検知装置には、次の (1) 〜 (3) に示す問題がある。即ち、(1) 2組の発光手段と受光手段よりなる透過光量検出部が必要であり、搬送路上に配置された記録紙1枚の透過光量検出部が故障等の何らかの異常な状態になった場合、1組のみでは、積載された記録紙の残量検知を行うことができない。(2) また、透過光量検出部が必要なため、コストが割高になり経済的でない。(3) さらに、少数枚の記録紙(5枚とか6枚)の残量を正確に検知するという目的が記されているが、それ以上、例えば、各枚数の精度で残量を検知することについて、明示されていない。
本発明は、積載されたシートの透過光量の変化を検出することにより積載枚数を検知する積載枚数検知における上記した従来技術の問題に鑑みてなされたもので、その解決すべき課題は、1組の発光手段と受光手段よりなる透過光量検出部のみで精度良く積載枚数の検知を可能とし、故障が少なく、抵コストの検知手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1の発明は、積載されたシートを照射可能な位置に設けた発光手段と、前記積載されたシートを透過してくる前記発光手段からの照射光を受光可能な位置に設けた受光手段と、前記受光手段で検出された透過光量を、予め定めておいた前記シートの各積載枚数に応じて区分された透過光量範囲と比較する光量比較手段と、前記光量比較手段による比較結果に基づいて、検出された透過光量が該当する前記透過光量範囲の区分を判定し、前記シートの積載枚数の検知結果を得る手段を有した積載枚数検知装置によって、上記課題を解決するものである。
請求項2の発明は、請求項1に記載された積載枚数検知装置において、前記光量比較手段で用いる前記透過光量範囲として、前記シートの種類に応じて区分された透過光量範囲を用意するとともに、用意した中から検知対象となる前記シートの種類に対応して適用する透過光量範囲を選択する手段を備えたことを特徴とし、このようにすることによって上記課題を解決するものである。
【0005】
請求項3の発明は、積載されたシートを照射可能な位置に設けた発光手段と、前記積載されたシートを透過してくる前記発光手段からの照射光を受光可能な位置に設けた受光手段と、前記受光手段によって、積載されたシートの供給前と供給後にそれぞれ検出した透過光量の差分を、透過光量が変数となるシートの各積載枚数に対応する区分を定義した境界線関数から導かれる境界値と比較する光量比較手段と、前記光量比較手段による比較結果に基づいて、検出された透過光量の差分が該当する前記積載枚数に対応する区分を判定し、前記シートの積載枚数の検知結果を得る手段を有した積載枚数検知装置よって、上記課題を解決するものである。
【0006】
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載された積載枚数検知装置において、前記受光手段の後段にダイナミックレンジ保証用の増幅手段を備えたことを特徴とし、このようにすることによって上記課題を解決するものである。
請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載された積載枚数検知装置において、前記受光手段の後段に検出光量信号補正用のデジタル演算処理手段を備えたことを特徴とし、このようにすることによって上記課題を解決するものである。
請求項6の発明は、請求項5に記載された積載枚数検知装置において、前記デジタル演算処理手段は、前記増幅手段の機差による検出光量信号の変動を補正する機能を持つ手段であることを特徴とし、このようにすることによって上記課題を解決するものである。
【0007】
請求項7の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載された積載枚数検知装置において、外乱光を受光する外乱光検出手段と、前記受光手段の検出光量に含まれる外乱光成分を前記外乱光検出手段の検出光量をもとに除去する外乱光除去手段を備えたことを特徴とし、このようにすることによって上記課題を解決するものである。
請求項8の発明は、請求項1乃至7のいずれかに記載された積載枚数検知装置において、シートの温度条件を検出する温度センサと、前記受光手段の検出光量に含まれる温度誤差を前記温度センサの検出値をもとに補正する温度補償手段を備えたことを特徴とし、このようにすることによって上記課題を解決するものである。
請求項9の発明は、請求項1乃至8のいずれかに記載された積載枚数検知装置において、シートの湿度条件を検出する湿度センサと、前記受光手段の検出光量に含まれる湿度誤差を前記湿度センサの検出値をもとに補正する湿度補償手段を備えたことを特徴とし、このようにすることによって上記課題を解決するものである。
【0008】
請求項10の発明は、請求項1乃至14のいずれかに記載された積載枚数検知装置において、シートの積載枚数の検知結果を通知する通知手段を備えたことを特徴とし、このようにすることによって上記課題を解決するものである。
請求項11の発明は、請求項10に記載された積載枚数検知装置において、前記通知手段は、シート切れの警告通知を行う手段を備えたことを特徴とし、このようにすることによって上記課題を解決するものである。
請求項12の発明は、積載枚数検知に関係する動作条件の設定を変更可能にした請求項1乃至11のいずれかに記載された積載枚数検知装置において、積載枚数検知に関係する動作の状態及び設定を監視・設定する手段を備えたことを特徴とし、このようにすることによって上記課題を解決するものである。
【0009】
請求項13の発明は、シートを搬送する搬送手段と、前記搬送手段により搬出されるシートを積載するトレイを有するシート供給装置において、前記トレイに積載された前記シートの積載枚数を検知する請求項1乃至12のいずれかに記載された積載枚数検知装置を備えたことによって上記課題を解決するものである。
【0010】
請求項14の発明は、記録用紙に画像を形成する画像形成手段を有する画像形成装置において、前記画像形成手段へ前記シートとしての記録用紙を給紙する請求項13に記載されたシート供給装置を備えたことによって上記課題を解決するものである。
請求項15の発明は、原稿を読取る原稿読取手段と、前記原稿読取手段へ前記シートとしての原稿を搬送する請求項13に記載されたシート供給装置と、原稿読取信号をもとに記録用紙に画像を形成する画像形成手段を備えたことによって上記課題を解決するものである。
請求項16の発明は、原稿を読取る原稿読取手段と、前記原稿読取手段へ前記シートとしての原稿を搬送する請求項13に記載されたシート供給装置と、原稿読取信号をもとに記録用紙に画像を形成する画像形成手段と、前記画像形成手段へ前記シートとしての記録用紙を給紙する請求項13に記載されたシート供給装置を有した画像形成装置を備えたことによって上記課題を解決するものである。
【0011】
請求項17の発明は、請求項14、16、のいずれかに記載された画像形成装置において、前記積載枚数検知装置によって検知された記録用紙の積載枚数が所定の積載枚数を切った場合に、前記画像形成手段の動作を中止させる制御手段を備えたことを特徴とし、このようにすることによって上記課題を解決するものである。
請求項18の発明は、請求項17に記載された画像形成装置において、前記所定の積載枚数が、前記原稿読取手段に積載された原稿の枚数であることを特徴とし、このようにすることによって上記課題を解決するものである。
請求項19の発明は、請求項17又は18に記載された画像形成装置において、前記通知手段は、記録用紙の積載枚数が所定の積載枚数を切ったことを警告する通知を行う手段を備えたことを特徴とし、このようにすることによって上記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、1組の発光手段と受光手段のみを用い、透過光量の検出値から直接枚数を導く方式(請求項1)、或い給紙前の枚数における検出と、その後の給紙により1枚減った枚数における検出の2検出値の差値(増加量)を求め、求めた比較値と枚数との量的関係をもとに、残量枚数を導く検知方式(請求項3)で、積載されたシートの積載枚数の検知を精度良く行うこと、特に広いダイナミックレンジを確保すること(請求項4)、機差等の誤差要因を補正すること(請求項5,6)シートの種類に応じて検知条件を最適化すること(請求項2)、外乱光を除去すること(請求項7)、温度補償をすること(請求項8)及び湿度補償をすること(請求項9)によって、さらに精度の向上を図ることが可能であり、故障が少なくかつ抵コストな積載枚数検知装置が提供できる。
記録用紙の積載枚数、或いは用紙切れをユーザに通知することにより、1つのジョブの途中で用紙切れとなること、特に、用紙切れによる動作の不具合が生じることが回避できる(請求項10,11)。
また、積載枚数検知に関係する動作の状態及び設定を監視・設定することにより、検知動作を最適化することを可能にする(請求項12)。
また、上記の効果を持つ積載枚数検知装置を、シート供給装置及び画像形成装置に備え、積載されたシート(記録用紙、原稿)の枚数検知を行うようにしたので、シート供給装置、画像形成装置における高パフォーマンス化を図ることができる(請求項13〜16)。
また、積載枚数が上記の不具合を起こす所定の積載枚数を切った場合に画像形成動作を中止させることで、装置側の判断で不具合を回避できる(請求項17)。しかも、この回避動作をコピー出力要求時に行うことを可能にする(請求項18)。
また、不具合を起こす所定の積載枚数を切ったことを警告することで、ユーザが記録紙の補給等の対処を可能にする(請求項19)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明の積載枚数検知装置、シート供給装置及び画像形成装置に係わる実施形態を説明する。
以下に示す実施形態は、積載枚数検知装置とシート供給装置を装備した画像形成装置として、本願の各発明を画像形成装置に集約した実施形態で例示する。また、本実施形態の画像形成装置は、デジタルカラー複写機をベースにFAX(ファクシミリ)機能・プリンタ機能・スキャナ機能等を複合したMFP(複合機)とする。ただ、画像形成装置は、単能機であっても良いし、モノクロ機であっても、本例と同様に実施可能である。
図1は、本発明の実施形態に係わるデジタルカラー複写機をベースにしたMFPの概略構成を示す。
図1に示すMFPにおいて、装置の略中央に画像形成部1が配置され、画像形成部1の下方に給紙部2が配置されている。給紙部2は、各段に給紙トレイ21を備えており、必要に応じて別の給紙装置22を増設することができる。画像形成部1の上方には、原稿を読取る読取部3が配設されている。画像形成部1の左側には排紙収納部4が形成され、画像形成された記録紙が排紙収納される。
【0014】
画像形成部1は、所謂タンデムタイプを構成し、ベルト状をした中間転写ベルト5の上に、各色成分(通常、イエロー:Y、マゼンタ:M、シアン:C、ブラック:BK)の作像部6が並列配置され、各々、感光体ドラム61と、その周囲に、帯電装置62、レーザ光による走査露光装置7、トナーによる現像装置63及びトナーのクリーニング装置64とを備える。作像プロセスとしては、感光体ドラム61に形成された各色成分のトナー画像を同期回転する中間転写ベルト5に転写する過程で、カラー画像を合成する。
また、中間転写ベルト5上に転写されたカラー画像を記録紙に転写する転写装置51と、転写された記録紙上のトナーを定着処理する定着装置8が排紙収納部4への処理経路に配置され、ここで転写、定着の各処理が行われる。
給紙部2においては、給紙トレイ21に未使用の記録紙が収容されており、回動可能に支持された底板24が最上位の記録紙をピックアップローラ25に当接可能な位置まで上昇させる。給紙ローラ26,27の回転により、最上紙は給紙トレイ21から送り出され、レジストローラ23へと搬送される。
レジストローラ23は記録紙の搬送を一時止め、感光体61表面のトナー像と記録紙の先端との位置関係が所定の位置になるよう、タイミングをとって回転が開始するよう、制御される。
【0015】
読取部3では、ブック読取りとシートスルー読取りの両方の読取り動作を可能とする。ブック読取りは、原稿台(コンタクトガラス)上に載置される原稿(不図示)を読み取り光学系で走査し、結像面に置かれたCCD(ラインイメージセンサ)で原稿画像を光電変換する。シートスルー読取りは、読取部3の上部に搭載されたADF(自動原稿搬送装置)36によってシート原稿を搬送しながら、読取り位置にクランプされたCCD(ブック読取りと共用)で原稿画像を光電変換する。なお、ADFは、原稿トレイに束ねてセットされた原稿を1枚づつ自動搬送する。
CCDにより光電変換された画像信号は、デジタル化され、プリント出力用データを得るため、補正・変換等の画像処理が施される。画像処理され、得られたプリント出力用データに基づいて、走査露光装置7内のLD:レーザダイオード(不図示)の発光を制御することにより、感光体ドラム61に光書込みを行い、感光体表面に静電潜像が形成される。なお、光書込みは、主・副2次元走査方式で行われ、LDからの光信号は、主走査に係わる回転ポリゴンミラーやレンズを介して、副走査方向に回転する感光体ドラム61の感光体表面に至る。
【0016】
また、本例の画像形成装置は、MFPとして上述した複写機能の他に、FAX機能及びプリンタ機能を持つ。FAX機能は、FAX送信において、読取部3で原稿を読取った後、FAX信号に変換し、通信回線への送信を行い、又FAX受信において、通信回線から送られて来るFAX信号を受取った後、プリント出力用データへの処理を経て、画像形成部1で画像形成を行う。また、プリンタ機能は、PC等のホスト機からプリント出力を要求して送られて来る印刷データを受け取った後、プリント出力用データへの処理を経て、画像形成部1で画像形成を行う。なお、これらの機能自体は、既存の技術であるから、ここでは、詳細な説明を省略する。
ただ、通信手段を経由して外部機から送られてくる処理要求や機器の状態監視等の各種コマンドに対応する動作として、本実施形態では、MFPの動作状態の通知や警告を外部機に対して行うようにしており、本案に係わる積載シート積載枚数の検知結果が対象になっているので、この点については、後記で説明を加える。
【0017】
ところで、上記した本実施形態と同種の画像形成装置において、近年、カラー化及び高速化に伴い、給紙トレイ21に積載されている記録紙の残り枚数を正確に検知する必要が生じている。これは、中間転写ベルト5の大型化に伴い、中間転写ベルト5上に形成できる画像数が増えたのに対して、給紙トレイ21から転写装置51(中間転写ベルト5上の画像を記録紙に転写する装置)までの間にストックできるシートの枚数が少なくなったためである(図2(A)、参照)。
例えば、本実施形態の画像形成装置でも、中間転写ベルト5上には5枚分の記録紙に転写できる画像を形成できるのに、給紙トレイ21から転写装置51までの間には3枚の記録紙しか保持することができない(図2の(A)において、記録紙20−1、20−2、20−1として示す)。このような画像形成装置では、中間転写ベルト5上に5枚分の記録紙に転写できる画像が形成された後、給紙トレイ21からシートが給紙されない場合、5−3=2枚分の記録紙に転写可能な画像が未転写のまま残されてしまう。その後、残った画像は、記録紙の補給をしなければ、中間転写クリーニング装置52により消去されることになり、トナーが無駄に消費されてしまう、という不具合を起こすことになる。
【0018】
上記の不具合は、給紙トレイ21に積載されている記録紙が残り少なくなってきたときに、その枚数を検知して、残った枚数以上の画像形成を行わないようにすれば、解消できる。
こうした動作を可能とするための記録紙残量の検知方法として、従来、上記[背景技術]の項に示したように、積載された少数枚の記録紙(5枚とか6枚)を検知する方法が提案された。ただ、このアプローチは、積載されている記録紙の透過光量を検出する発光手段、受光手段のペア以外に、1枚の記録紙の透過光量を検出するための発光手段、受光手段のペアをもう1つ搬送路に設ける必要があり、検知精度上も十分とは言えない(上記[発明が解決しようとする課題]の項、参照)。
そこで、本発明の積載枚数検知装置では、積載されたシート(記録紙)の少なくとも0〜3枚といった枚数を、1組の発光手段、受光手段ペアによる透過光量検出方式によって、かつ各積載枚数が検知できる程の高い精度で得ることを可能とするものである。
1組の発光手段、受光手段ペアで検出する方式によれば、例えば、トレイ21に記録紙をセットした場合、給紙動作を行わなくても枚数を検知することができ(上記従来技術では、給紙動作を始めて搬送路で1枚の記録紙の透過光量を検出しないと検知ができない)、即ち、画像形成動作を始める前に積載枚数が検知できるので、操作パネルから出力要求を行う際に、給紙トレイ21に今ある積載枚数を超える枚数の要求を指定した場合、予期される不具合をユーザに知らせる等、シートの枚数に応じた制御処理を給紙動作等の画像形成動作を始める前に行うことができ、未然に不具合を回避することが可能になる。
【0019】
図2は、本発明に係わる積載枚数検知装置を備えた給紙装置(シート供給装置)の実施形態を示す。なお、この実施形態では、シートとして記録紙が積載され、記録紙の残量(枚数)を検知しているので、以下、積載枚数検知装置を「残量検知装置」と記す。図2において、(A)は図1の画像形成装置における、給紙トレイ21、搬送手段等よりなる給紙装置と、中間転写ベルト5、転写装置51等よりなる転写部との関連構成の概要を示し、(B)は残量検知装置を設けた給紙装置の要部をより詳細に示す。
1組の発光手段、受光手段ペアで構成する本発明の残量検知装置は、図2(B)に示す実施例では、発光手段250より発した光が、積載された記録紙20の束を透過した後、受光手段251に達するように、給紙トレイ21の底板24上に積載された記録紙20の束を厚さ方向で挟む位置に、この発光手段、受光手段ペアを設ける。
発光手段250としてはLED素子、半導体レーザなどが考えられるが、白熱燈や蛍光灯等の他の発光手段でもかまわない。発光する光の波長は、可視光でも良いが、このほかに、赤外光や紫外光等が考えられ、雑音の影響を受け難い波長を選択することが望ましい。
また、受光手段251としては、フォトトランジスタ、フォトダイオード等が考えられるが、受光した光量と受光信号との間に一定の量的関係が得られる手段であれば、どのような受光手段であってもかまわない。
また、受光手段251で受光する透過光量は、記録紙の枚数に依存するので、受光手段251で受光した信号と記録紙の枚数との量的関係を予め定めておき、この量的関係に基づいて受光手段251の受光信号を演算することにより、給紙トレイ21に積載された記録紙の枚数を残量検知結果として得ることができる。なお、残量検知に用いる、受光信号と記録紙の枚数との量的関係については、後記の「第1残量検知方式」と「第2残量検知方式」に異なる方式の例を挙げ、詳述する。
このように、1組の発光手段250と受光手段251のみで、0枚を含めて、給紙トレイ21に載せたシート(記録紙)の枚数検知ができるので、給紙トレイ21に載せられているシート(記録紙20)が0枚であることを判定するために従来から設けられているペーパエンドセンサも必要がなくなり、又2組の発光手段、受光手段ペアを必要とした従来技術と比べると、コスト面で記録紙残量検知用の手段に加えてペーパエンドセンサを不要にする分のコストも削減できるので、大幅なコスト削減につながる。
【0020】
1組の発光手段、受光手段ペアで構成する残量検知装置について詳細に説明する。
ここでは、受光信号と記録紙の枚数との量的関係を異にする2検知方式を示す。
1つは、検知対象の記録紙の透過光量と記録紙枚数との量的関係をもとに、透過光量の検出値から直接枚数を導く検知方式(以下、「第1残量検知方式」と記す)である。
もう1つは、n(n:0を含む整数)枚の記録紙を検知する場合、n+1枚のときの透過光量と、その後1枚減ったn枚のときの透過光量を検出し、得た2検出値と枚数nとの量的関係をもとに、残量枚数を導く検知方式(以下、「第2残量検知方式」と記す)である。
下記で「第1残量検知方式」と「第2残量検知方式」の残量検知装置について、分説する。
【0021】
「第1残量検知方式」
まず、透過光量の検出値から直接枚数を導くこの残量検知方式における受光信号と記録紙の枚数の量的関係について、図3に示すモデルを参照して説明する。
図3に示すモデルは、給紙トレイ21に備えられた発光手段250及び受光手段251の距離とシート(記録紙20)に対する位置関係の概念図である。ここに、距離C1は、発光手段250と受光手段251の距離、角度E1は、発光手段250と受光手段251の光軸とシート(記録紙20)の角度、距離D1は、シート(記録紙20)と受光手段251の距離である。図3において,検知対象であるシート(記録紙20)の束は、給紙によって残枚数が減って行き、枚数が減ると透過光量が増すので、受光手段251の出力も増加する。
例えば、発光手段250と受光手段251の距離C1が30mmであり、発光手段250と受光手段251を結ぶ光軸と記録紙20の角度E1が55゜、記録紙20と受光手段251の距離D1が8.5mm等とする仕様が考えられる。また、受光手段251の検出出力を電圧で得るとする。
このような仕様で、記録紙20が4枚ある場合に、透過光量を検出する受光手段251の出力電圧が2.3428Vであるとする。次に、記録紙20が1枚減り、3枚になると、受光手段251の出力電圧は2.6733Vとなる。このように、記録紙20が1枚減ることで、受光手段251の出力電圧が増加し、この変化を1枚減ったことによる変化として検知可能にすることで、積載された記録紙20の枚数を検知することができる。
【0022】
次に、上記の原理によるこの検知方式の残量検知装置に係わる実施例を以下に示す。
残量検知装置の受光手段251は、発光手段250で発光し、給紙トレイ21に積載されたシート(記録紙20)を透過してくる光を受光し、受光量に対応する電圧Vaに変換して出力する。ここで、この検出電圧Vaは、予め定めておいた記録紙20の各残量に応じて区分された検出電圧範囲(即ち、透過光量範囲)のどの範囲に入るかが判定される。
各残量に応じて区分された検出電圧値Vaの範囲を規定する値は、例えば、以下に示すような値をとる。
記録紙0枚の場合 : 3.80V ≦ Va
記録紙1枚の場合 : 3.19V ≦ Va < 3.80V
記録紙2枚の場合 : 2.78V ≦ Va < 3.19V
記録紙3枚の場合 : 2.43V ≦ Va < 2.78V
上記の例に示すように、記録紙3枚以下の各残量に対応する検出電圧Vaを、2.43V以上の2.78V、3.19V、3.80Vの各規定電圧値で区分し、検出電圧Vaが2.43V以上のいかなる電圧値であっても、上記の電圧値Vaの範囲を規定する電圧値と比較することで、該当する各残量に対応する範囲を一意に判定し、枚数の検知を行うことが可能になる。
例えば、検出電圧Vaが2.6733Vであった場合、3枚に対応する範囲と判定できる。また、2.3428Vであれば、4枚以上に対応する範囲と判定できる。
【0023】
上記した検出電圧の区分範囲を規定する値は、類似した光学特性(光透過性)を持つ記録紙であれば、種類が違っても検出電圧値を正規化し、各残量でとり得る検出電圧値を統計処理することにより、類似した光学特性を持つ群ごとに求めることができ、テストサンプル数を多くすればするほど、適正な検出電圧区分範囲を定め、検知精度を高めることができる。また、類似群の分類を粗くすること(エラーの生じる確率は高くなるが)により、一つの検出電圧区分範囲で多くの種類の記録紙をカバーすることが可能になる。
また、上記した検出電圧区分範囲に従って、検出電圧Vaから記録紙枚数を一意に判定する際に、下記に示す判定式を用いた演算処理法によって、0枚、1枚、2枚、3枚、4枚以上の枚数が判定できる。
0枚判定式 : 検出電圧Va−3.80
1枚判定式 : 検出電圧Va−3.19
2枚判定式 : 検出電圧Va−2.78
3枚判定式 : 検出電圧Va−2.43
上記の判定式において、検出電圧Vaは、実際に受光手段251によって検出された電圧値Vaであり、各検出電圧区分の境界値である2.43V、2.78V、3.19V、3.80Vとの差をこの判定式で演算する。各枚数判定式で演算した結果を+,−で得,これを判定条件として枚数を判定する。なお、判定の手順については、後記の処理フロー(図4)で述べる。上記の枚数判定式の例では、0から4枚までの枚数データを得ることができる。
また、上記枚数判定式によれば、複雑な演算を行わなくても、差を求めるだけで枚数が判定できるため、枚数を判定するための演算処理に高機能な演算装置を必要としないので、コスト面でもメリットがある。
【0024】
図4は、残量検知の処理フローを示す。この検知処理において、上記の判定式を用いた演算処理法により記録紙枚数を判定する処理が行われる。
図4の検知処理は、画像形成装置への電源ON時や省エネモードからの復帰時等において、メインコントローラによって各種の変数が初期化され、装置が立ち上げられた後、操作パネルから印刷(画像形成)出力を求める指示が行われた時等の適当なタイミングで開始され、画像形成動作が終了するまで、処理が継続される。
先ず、残量検知装置は、給紙トレイ21の記録紙の透過光量を受光手段251で検出し、この検出電圧Vaを記憶部に保存する(ステップS101)。
次に、保存した検出電圧Vaをもとに、記録紙枚数を判定する。この判定は、判定式(上記した0〜4枚の各判定式)を以下に示す所定の手順で適用することにより行う。
先ず、0枚判定式(検出電圧Va−3.80)を用いて、その演算結果が0又は+であるか(即ち、0枚判定式 ≧ 0)、否かを判定する(ステップS102)。ここで、0又は+であれば、記録紙0枚の条件(3.80V ≦ Va)を満たすので、残量を0枚と判定する(ステップS103)。
0枚判定式の演算結果が0又は+でなければ(ステップS102-NO)、記録紙が積載されている場合であるから、次に、残量が4枚以上であることを一意に判定できる3枚判定式(検出電圧Va−2.43)を用いて、その演算結果が−であるか(即ち、3枚判定式 < 0)、否かを判定する(ステップS104)。ここで、−であれば、記録紙4枚以上の条件(Va < 2.43V)を満たすので、残量を4枚以上と判定する(ステップS105)。
【0025】
3枚判定式の演算結果が−でなければ(ステップS104-NO)、積載記録紙が1〜3枚の場合であるから、順に1意に判定できる判定式を適用していく。本例では、次に、残量が3枚であることを判定できる2枚判定式(検出電圧Va−2.78)を用いて、その演算結果が−であるか(即ち、2枚判定式 < 0)、否かを判定する(ステップS106)。ここで、−であれば、記録紙3枚の条件(2.43V ≦ Va < 2.78V)を満たすので、残量を3枚と判定する(ステップS107)。
2枚判定式の演算結果が−でなければ(ステップS106-NO)、積載記録紙が1又は2枚の場合であるから、1意に判定できる判定式として、次に、残量が2枚であることを判定できる1枚判定式(検出電圧Va−3.19)を用いて、その演算結果が−であるか(即ち、1枚判定式 < 0)、否かを判定する(ステップS108)。ここで、−であれば、記録紙2枚の条件(2.78V ≦ Va < 3.19V)を満たすので、残量を2枚と判定する(ステップS109)。
1枚判定式の演算結果が−でなければ(ステップS108-NO)、残りの積載記録紙が1枚の条件(3.19V ≦ Va < 3.80V)を満たすことになるので、残量を1枚と判定する(ステップS110)。
また、上記の判定ステップ(ステップS103,S105,S107,S109,S110)で残量が判定された後、得られた残量のデータによって、これまでに保存されていた枚数データを更新し(ステップS111)、再び透過光量の検出から始まる記録紙枚数の判定処理を行う。
なお、上記した残量検知装置の実施形態では、3枚までの各残量を判定する例を示したが、判定する枚数は何枚であってもかまわない。
【0026】
次に、上記残量検知装置における透過光量の検出及び残量(枚数)検知に係わる実施形態を課題ごとに、より詳細に説明する。
“検出信号のダイナミックレンジの確保”
残量検知装置の検出部では、上記で説明したように、シート(記録紙20)の透過光量を受光手段251で受け、検出電圧Vaを得る。このとき、検出電圧Vaは、後段の処理回路(記録紙枚数判定に必要なデータへの変換回路等)の動作に必要なレベルで出力する必要があり、レベルが低いと広いダイナミックレンジが得られない。本例では、このために増幅回路を設け、増幅回路に広いダイナミックレンジを確保するための機能を持たせる。
図5は、受光手段251に増幅回路を接続した本実施形態に係わる検出回路の構成を示す。図5に示す検出回路は、受光手段251の検出電圧を増幅する増幅回路A1と増幅率制御部A2とを備えており、増幅率制御部A2で増幅回路A1の増幅率を可変することができる。なお、必要な増幅率が分かっている場合には、増幅率制御部A2を接続せずに、一定倍率で増幅する場合も考えられる。
図5の検出回路によると、増幅率制御部A2によって、最適な出力レベルで出力するように増幅回路A1の増幅率を可変調整し、受光手段251の出力を増幅することで、ダイナミックレンジを広くとることができ、精度良く残量検知を行うことができる。
本例の場合、受光手段251は、受光した透過光量を電圧として出力しており、増幅回路A1としてオペアンプを利用した非反転増幅回路等を用いて、実施することが可能である。ただ、この増幅回路A1は、必ずしもオペアンプを使ったものでなければならないわけではなく、電圧を増幅できるものであれば、どのような増幅回路であってもかまわない。
【0027】
“増幅回路の機差補正”
上記のように、図5の検出回路によって、検出電圧Vaを増幅することでダイナミックレンジを広くすることができるが、例えば、記録紙20の種類や図5の検出回路(図5)における回路特性の違い等によって、例えば、検出電圧Vaが小さい等の機差が、誤差要因として依然存在する。
そこで、本実施形態では、図5の検出回路の後段に設けられるA/Dコンバータ等のデジタル値への変換回路に上記した誤差要因を補正する機能を持たせる。
即ち、A/Dコンバータによる変換の際に、検出電圧Vaのデジタル値にある一定倍率を乗じることやデジタル値に応じた値を加算することで、電圧値の補正を行い、この補正によって、精度良く残量検知を行うことができるようにする。
上記した検出電圧Vaのデジタル補正処理の実施例を以下に示す。この実施例は、図5に示した検出回路の機差補正への適用例である。
先ず、積載されたシート(記録紙20)の透過光量を電圧に変換する受光手段251に増幅回路A1を接続せずに、0.8Vに調整する。その後、受光手段251に得られた出力を5倍にする増幅回路A1を接続し、得られた電圧をVdとする。ここで、増幅回路A1に使われる抵抗等の素子等にばらつきや、増幅回路A1にオペアンプを使用した際のオフセット入力電圧等の影響がなければ、正確に5倍された電圧4.0Vを得ることができる。
しかし、例えば、入力オフセット電圧のみが出力に影響し、入力オフセット電圧が0.1Vであった場合、増幅後の出力電圧は(0.8−0.1)×5=3.5Vとなる。また、抵抗のみが出力に影響した場合、非反転増幅回路で−端子とアース間の抵抗を1kΩとし、負帰還抵抗を4kΩとすることで、倍率を5倍に設定し、1kΩの抵抗の誤差が+10%、4kΩの抵抗の誤差が−10%であれば、それぞれ実際の抵抗の大きさが1.1kΩ、3.6kΩとなるので、非反転増幅回路の倍率が(3.6/1.1)+1≒5.27倍となり増幅回路A1の出力が約4.2Vとなる。
上記の例に示すように、増幅回路A1の抵抗等の素子やオペアンプの入力オフセット電圧等の影響等により倍率にばらつきがあった場合、4.0Vを得ることができない。
そこで、0.8−Vd/5=Veより補正すべき電圧を計算する。そして、増幅回路A1より電圧を得るごとに増幅回路A1より得られた電圧に5×Veを加算することで、増幅回路A1の素子のばらつき等により5倍に増幅できない場合でも、5倍になるよう補正した値を得ることができる。この機差補正により、残量検知をより高精度に行うことを可能にする。
【0028】
“枚数判定処理の変更”
枚数判定に用いる検出電圧Vaの区分範囲は、上記したように、類似した光学特性を持つシート(記録紙)群で共通の検出電圧区分範囲を用いることが可能であるが、光学特性が大きく異なる場合には、各々に適した判定条件を与える検出電圧区分範囲を用意し、適用する方がエラーを少なくすることができる。
こうしたことから、本実施形態では、異なる記録紙の種類に対応する検出電圧区分範囲を示すデータを用意し、その中から判定対象となる記録紙の種類に応じたデータを用いることにより、より適正な判定を行えるようにするものである。
例えば、OHPシートのみを給紙するのであれば、OHPシートのみの枚数判定のための検出電圧区分範囲を示すデータがあればよい。しかし、OHPシートに加えて第2原図も給紙する場合には、OHPシートの枚数判定に用いる検出電圧区分範囲を示すデータに加えて、第2原図用のデータも用意する必要がある。
そこで、本実施形態の残量検知装置は、例えば、給紙トレイ21に積載された記録紙の種類を指示する情報を操作パネル等から入力できるようにし、入力された記録紙情報を管理しておき、印刷出力時に、この管理情報を参照する等をして、検知対象の記録紙の種類がOHPシート或いは第2原図用記録紙であることを認識し、認識した種類に応じた検出電圧区分範囲を示すデータを、用意したデータの中から選択し、適用することで、適正な検知を行うことを可能にする。
【0029】
“外乱光による雑音除去”
第1残量検知方式は、記録紙の透過光量と記録紙枚数との間における予め求められた量的関係に基づくので、この関係が成立する条件があるが、この条件を乱す1要素として、図6(A)に示すような、外部から受光手段251に入る外乱光がある。外乱光は、予知できないランダムなタイミングと大きさで受光手段251に入射し、受光手段251の検出信号に雑音として重畳され、検知結果を誤らせる。
そこで、受光手段251に混入した外乱光による雑音成分を除去するための手段を備えることにより、検知結果に生じるエラーを抑える。
図6(B)に雑音成分を除去するための手段の構成概念が示されている。同図に示すように、受光手段251に入ると同様の条件で外乱光のみを受光するフォトトランジスタ等の外部光受光手段257と、受光手段251の検出信号の処理系に外部光成分を除去する外部光除去手段258を備える。
外部光受光手段257は、外部光受光手段257から入力される外部光の検出値をもとに、例えば、検出回路の後段に設けられるA/Dコンバータの変換過程でデジタル値に一定倍率を乗じたり、残量検知の演算方法(上記枚数判定式、参照)を変える等の演算処理によって外部光成分を除去することで、外乱光の影響を取り除くことができる。
このように、外乱光の影響を除去することができれば、例えば、手差しトレイに積載された記録紙を検知する場合のように、外部光が入射する状況であっても、その影響を受けずに、精度良く残量検知を行うことが可能になる。
【0030】
“温度補償”
記録紙の透過光量と記録紙枚数との間における予め求められた量的関係が成立する条件を乱す他の要素として、温度の変動がある。
温度が変化すると、記録紙が伸び縮みし、例えば、温度が上昇すると、透過光量が増加する。その影響により、予め求められた量的関係に基づく検知結果を誤らせ、精度良く残量検知を行うことができない。
そこで、温度変化により受光手段251の検出値に含まれる誤差成分を除去するための手段を備えることにより、検出条件の違いに対応し、検知結果に生じるエラーを抑える。
温度変化による誤差成分を除去するための手段の構成概念は、上記“外乱光による雑音除去”におけると同様の構成を採用することができる。即ち、検出手段と誤差の除去手段であり、前者は、記録紙の温度条件を推定可能な位置に設けた温度センサであり、後者は受光手段251の検出信号の処理系に設けた温度誤差除去手段である。
温度誤差除去手段は、温度センサから入力される検出温度をもとに、得られた値がある温度以上或いは以下であれば、例えば、検出回路の後段に設けられるA/Dコンバータの変換過程でデジタル値に一定倍率を乗じたり、残量検知の演算方法(上記枚数判定式、参照)を変える等の演算処理によって温度誤差を除去することで、温度変化の影響を取り除くことができる。
このように、高温環境で記録紙が伸び、低温環境で記録紙が縮む等の変化あっても、その影響を受けること無しに、精度良く残量検知を行うことが可能になる。
また、温度誤差の補償動作を行うための設定温度は、設置環境等の違いに応じて調整をする必要があるので、必ずしも固定の温度である必要は無く、設定温度の調整を可能とし、設定温度を調整することで、より精度良く残量検知を行うことができる。また、設定温度範囲の変更に対しても同様に調整可能とする。
【0031】
“湿度補償”
記録紙の透過光量と記録紙枚数との間における予め求められた量的関係が成立する条件を乱す他の要素として、湿度の変動がある。
湿度が変化すると、記録紙が伸び縮みし、例えば、湿度が上昇すると、記録紙が水分を吸い込み、伸びて透過光量が増加、又湿度が低下すると、記録紙が水分を放出し、縮んで透過光量が減少する。その影響により、予め求められた量的関係に基づく検知結果を誤らせ、精度良く残量検知を行うことができない。
そこで、湿度変化により受光手段251の検出値に含まれる誤差成分を除去するための手段を備えることにより、検出条件の違いに対応し、検知結果に生じるエラーを抑える。
湿度変化による誤差成分を除去するための手段の構成概念は、上記“外乱光による雑音除去”におけると同様の構成を採用することができる。即ち、検出手段と誤差の除去手段であり、前者は、記録紙の湿度条件を推定可能な位置に設けた湿度センサであり、後者は受光手段251の検出信号の処理系に設けた湿度誤差除去手段である。
湿度誤差除去手段は、湿度センサから入力される検出湿度をもとに、得られた値がある湿度以上或いは以下であれば、例えば、検出回路の後段に設けられるA/Dコンバータの変換過程でデジタル値に一定倍率を乗じたり、残量検知の演算方法(上記枚数判定式、参照)を変える等の演算処理によって湿度誤差を除去することで、湿度変化の影響を取り除くことができる。
このように、高湿環境で記録紙が伸び、低湿環境で記録紙が縮む等の変化があっても、その影響を受けること無しに、精度良く残量検知を行うことが可能になる。
ところで、例えば、天然素材の記録紙は湿気を吸収する速度は速いが、湿気を出す速度は遅いという性質を持っている。従って、一度、吸湿や脱湿を行うと、元の水分量に戻るためには時間がかかる。そのため、湿度センサの測定は、紙サイズ変化への追従性を考慮しないと、誤った測定値に基づく補償動作が継続され、誤差を生じる可能性がある。
そこで、湿度センサによる湿度の変化の測定は、追従性を考慮して紙の性質に応じた適当なサンプリング期間で行い、測定値の変化に合った演算処理を施し、湿度の変化の影響を除去することで、より精度良く枚数判定を行うことが可能になる。
【0032】
“残量検知のMFPへの利用形態”
残量検知を画像形成部1における記録紙の給紙装置に適用することにより、上記のように、検知結果として、給紙トレイ21の残枚数を知ることができ、例えば、検知した枚数が用紙切れに近づいた時に、ユーザへ注意を促す旨の警告メッセージ等を通知すること(後記で詳述)が可能になる。
ただ、ユーザへの通知だけでは、用紙切れにより起きる不具合を回避するための行動をユーザが起こさないと、実際には回避できない。そこで、残量の検知結果を受けて、自動的にMFP側の動作で対処し得るように、制御機能の1つとしてこの不具合を回避するための機能を組み込む。
この制御機能は、1つは、検知枚数が、例えば、3枚等の予め設定した少数枚になった場合に、無駄な画像形成動作を行わせる可能性があるので、画像形成動作を開始させないように制御することである。
また、もう1つは、上記給紙トレイ21に積載されている記録紙束が少数枚になり、残り枚数を枚数の精度で検知できる状態になったときに、操作パネル等からユーザが出力要求として設定した枚数との関係で画像形成動作の開始を制御することである。即ち、ユーザの要求により設定された枚数を参照することによって得られる印刷出力に必要な枚数と検知結果として得た残枚数から、記録紙の残枚数以上の印刷出力を要求しているか、否かを判断し、途中で用紙切れが生じると判断される場合には、画像形成動作を開始させないように制御する。
こうした制御動作を行うようにすれば、余分な画像形成を行ってしまうことを未然に防ぎ、トナーを無駄に消費し、記録紙20に転写できなかった余分な画像を中間転写クリーニング装置52で消去するという非生産的な動作も防止することが可能になる。
【0033】
本案の残量検知装置は、MFPでは、上記給紙装置のように、画像形成部1へ記録紙を供給する給紙トレイ21で利用する以外に、次に示す形態でも利用できる。
即ち、MFPは、複合機能として有する複写・FAX・スキャナ等の各機能を用いるときに原稿(シート)を読取部3に供給するADF36を装備しており、ADF36において積載された原稿の残枚数の管理に残量検知装置が利用される。
ADF36への残量検知装置の適用は、基本的には、上記給紙装置において給紙トレイ21に積載された記録紙を対象として構成した上記給紙装置におけると同様に、ADF36において1枚ずつ給紙動作される原稿トレイに積載された原稿束を対象に構成することが可能である。
ただ、ADF36を使用する際に行う残量検知においては、コピー機能を利用する際に、記録紙を供給する給紙装置における残量検知と関係付けることにより、次に示す利用形態で、上記した用紙切れにおけると同様の不具合を回避する動作を行うことができる。
ADF36のトレイに原稿が積載され、コピー要求の入力が操作パネルから行われたときに、記録紙の給紙装置における給紙トレイ21に積載されている記録紙20の枚数とADF36のトレイに積載された原稿の枚数とをそれぞれの残量検知装置で検知する。各々得た検知枚数を比較し、その結果として、給紙トレイ21に積載されている記録紙20の枚数がADF36に積載された原稿の枚数よりも少ない場合には、途中で用紙切れが生じると判断される。
従って、この比較結果を受け、途中で用紙切れが生じると判断される場合には、画像形成動作を開始させないように制御し、ユーザにその旨を通知し、注意を促すことができる。
このようにして、余分な画像形成を行ってしまうことを未然に防ぎ、トナーを無駄に消費し、シート状媒体20に転写できなかった余分な画像を中間転写クリーニング装置52で消去するという非生産的な動作を防止することができる。
【0034】
“残量検知結果の通知”
給紙装置における記録紙の残量検知を行う目的が、画像形成の途中で用紙切れが起きることにより生じる不具合を回避することにあることを、上記“残量検知のMFPへの利用形態”で述べた。
この用紙切れによる不具合を回避する方法の1つは、残量検知装置によって検知された記録紙の残り枚数が少なくなり、用紙切れに近づいたことを判断し、その判断結果をユーザ等に通知し、未然に用紙切れに対処できるようにすることである。
こうした対処を可能にするためには、残量検知装置によって検知された記録紙枚数を通知したり、検知枚数が、例えば、3枚等の予め設定した少数枚になっているか、否かを判断し、少数枚である場合に、無駄な画像形成動作を行わせないように動作を停止させる間、ユーザに残枚数とともに用紙切れへの注意を促す旨の警告等を通知する手段を備える必要がある。
MFPにおいては、ユーザ・管理者が処理要求や機器を管理するための設定、状態監視に必要な各種コマンドを入力したり、コマンドに対する応答を得る、という情報のやり取りを行うために、MFP本体の操作パネル若しくは通信手段で接続されたPC等の外部リモート機のUI(User Interface)を利用する。
図7は、このようなMFPのUIの構成を示す概念図である。MFP(画像形成装置)100操作パネルに設けた表示部55及び入力部56が機器本体側のUI機能を、又MFP100に通信手段より接続したPC等の外部機81におけるディスプレイ及びマウス、キー等の入力部がリモートUI機能を提供する。
【0035】
MFP100は、残量検知装置29が、例えば3枚等の予め設定した少数枚の残量に達したことを検知した場合に、本体表示部55の画面、或いはリモートPC81からの出力要求等のユーザ操作を行うUIを通じ、用紙切れへの注意を促す旨の警告等の通知を行い、記録紙を補充する等のユーザによる用紙切れへの対処を可能とする。
また、MFP100は、給紙トレイ21に積載されている記録紙20の枚数が印刷出力要求に指示された枚数よりも少ない場合に、画像形成動作を開始せずに、本体表示部55の画面、或いはリモートPC81からの出力要求等のユーザ操作を行うUIを通じ、用紙切れへの注意を促す旨の警告等の通知を行い、記録紙を補充する等のユーザによる用紙切れへの対処を可能とする。
さらに、記録紙の給紙装置における給紙トレイ21に積載されている記録紙20の枚数とADF36のトレイに積載された原稿の枚数とをそれぞれの残量検知装置で検知し、各々得られる検知枚数を比較し、その結果として、記録紙20の枚数が原稿の枚数よりも少ない場合に、画像形成動作を開始せずに、本体表示部55の画面、或いはリモートPC81からの出力要求等のユーザ操作を行うUIを通じ、用紙切れへの注意を促す旨の警告等の通知を行い、記録紙を補充する等のユーザによる用紙切れへの対処を可能とする。
また、MFP100は、ユーザ・管理者が、残量検知装置29が検知した残量を知りたい時、或いは検知動作に関係する設定を確認したい時に、UIを通じて行われる要求を受け、要求した残量、或いは設定情報をUIの画面に表示することにより、ユーザに示すようにする。例えば、残量枚数の判定に用いる演算式を画面で表示し、現在設定されている演算式について確認でき、設定が変更されているか、否か(後記の“残量検知条件の設定”参照)、或いは、現在設定されている演算式を表示するのみではなく、設定が変更をしていない残量検知装置に元々内蔵されている演算式をの表示等で、あってもかまわない。
【0036】
“残量検知条件の設定”
MFP100は、UIを通じて検知動作に関係する設定を変更可能とする。
残量検知装置29の設定は、使用環境、検知対象の記録紙(原稿)特性等の違いに応じて最適条件が異なるので、最適化するためには、設定変更が必要になる場合がある。そこで、ユーザ・管理者が、設定の変更により最適化したいという要求に応えることができるように、UIに設定変更を受付けるための画面を表示し、この画面への入力操作により、要求に従って、設定を変更する。
本実施形態では、設定を可変とした下記 (1)〜(4) に示すような条件について、UIを通じて設定を変更することにより、最適な動作を得るための調整を可能とする。
(1) 残量枚数を判定する上記判定式における各枚数を区分する境界値を、記録紙(原稿)の種類に応じて任意に変更できるようにし、最適化を図る。
(2) 上記“温度補償”において、温度の変動により生じる誤差の補償動作を行うための設定温度を任意に変更できるようにし、最適化を図る。
(3) 上記“湿度補償”において、湿度の変動により生じる誤差の補償動作を行うための設定温度を任意に変更できるようにし、最適化を図る。
(4) 上記“残量検知結果の通知”において、残量検知をもとに用紙切れに近づいたことをユーザに通知するために設定する検知枚数を任意に変更できるようにし、警告通知を早めにするか、遅くても良いかをユーザの都合で決めることで、効率的に作業を進めることを可能にする。
【0037】
「第2残量検知方式」
本残量検知方式は、上記した第1残量検知方式で図3に示すモデルを参照して説明した記録紙の残枚数と透過光量の検出値との量的関係に基づくという点では、共通する。
ただ、第1残量検知方式では、透過光量の検出値から直接枚数を導く方法によっているので、例えば、同一種類の記録紙でも経年変化によって黄色く変色した紙を対象にした場合、透過光量が違ってくるので、残量検知を誤ってしまう。
そこで、第2残量検知方式は、給紙前の枚数における検出と、その後の給紙により1枚減った枚数における検出の2検出値の差値(増加量)を求め、求めた差値と枚数との量的関係をもとに、残量枚数を導く検知方式により、より高い精度で残枚数を検知することを可能にするものである。
本残量検知方式の原理を図8の記録紙特性、即ち、記録紙枚数と透過光量の検出値である受光手段の出力の量的関係を示すグラフを参照して説明する。なお、図8は、普通紙の特性を例にしている。
図8(A)に示すグラフは、横軸に枚数nの記録紙を検出したときの受光手段の出力電圧、縦軸に給紙により枚数が1枚減り、(n+1)→(n)と変化させた場合における受光手段の出力電圧の増加量をとり、紙の枚数nとして1〜4の各枚数をパラメータとしてプロットしたものを示している。
具体的には、先ずn+1枚(例えば2枚)が積載された記録紙の透過光量を受光手段251で検出し出力電圧Vaを得る。次いで、給紙により積載された記録紙が1枚減った後、n枚(上記例に合わせると、1枚)の透過光量を受光手段251で検出し出力電圧Vbを得る。このとき、記録紙の透過枚数が減ったことにより、受光手段251の出力電圧が大きくなることから、Vb>Vaとなるので、この間における電圧の増加量として、Vb−Va=Vcを求める。
【0038】
求めた増加量Vcと枚数nの出力電圧Vbの関係を、出力電圧Vbを変化させ、プロットすると、図8(A)に示す結果が得られ、同図には、5枚から4枚、4枚から3枚、3枚から2枚、2枚から1枚になったときの関係を、出力電圧Vbを変化させグラフ化したものである。
同図に示すように、枚数nを1〜4枚として、出力電圧Vbを変化させた場合における、1〜4枚の各プロットは、それぞれ峻別できる線上に並び、一定の関数関係を持つことが分かる。
従って、それぞれの枚数の特性を表すこの一定の関数関係に基づいて、図8(B)に示す、各枚数間の境界線を導く。図8(B)は、図8(A)に示したグラフに、境界線L1,L2,L3を付加したものである。
図8(B)に示す境界線L1,L2,L3は、枚数を区分する境界を示すもので、基本的には、1〜4の各枚数に属するプロットが枚数ごとに割当てられた区分を超えて、他の区分に属することがないように、境界線を定める。同図に示すように、境界線L1,L2,L3は、本例では、直線に近い2次の曲線状(後述の境界線関数、参照)になり、これらの境界線により区分された範囲のどの範囲に入るかを判定することにより、枚数の検知結果を得ることができる。
【0039】
次に、上記の原理によるこの検知方式の残量検知装置に係わる実施例を以下に示す。
残量検知装置は、給紙動作が行われる前に、発光手段250で発光し、給紙トレイ21に積載された記録紙20を透過してくる光を受光手段251によって受光し、受光量に対応する電圧Vaに変換し、得られた検出値を一旦記億部に保存する。
その後、給紙動作が行われ、1枚減った記録紙20の透過光量を再び、電圧Vbとして検出する。このようにして給紙前後にそれぞれ検出した2検出値をもとに、この間における電圧の増加量として、Vb−Va=Vcを求める。
求めた検出電圧値の増加量Vcを予め定めておいた記録紙20の枚数(残量)に応じて区分する境界線関数に照らして、どの区分範囲に入るかが判定される。
記録紙枚数の区分範囲を規定する境界線は、図8(B)を参照して、上記で説明したような方法で、実験結果により得られたVc−Vb特性をもとに求め、例えば、以下に示すような関数で定義する。
記録紙1枚と2枚の境界線(L1) : −0.0287×Vb+0.4592×Vb+0.06088
記録紙2枚と3枚の境界線(L2) : −0.0433×Vb+0.3529×Vb+0.0396
記録紙3枚と4枚の境界線(L3) : −0.0677×Vb+0.3075×Vb+0.0271
【0040】
上記した境界線L1,L2,L3を規定する境界線関数は、類似した光学特性(光透過性)を持つ記録紙であれば、変色や種類が違っても検出電圧値を正規化し、各残量でとり得る検出電圧値を統計処理することにより、類似した光学特性を持つ群ごとに求めることができ、テストサンプル数を多くすればするほど、適正な境界線関数を定め、検知精度を高めることができる。
また、上記した境界線関数に従って、給紙前後にそれぞれ検出した検出電圧Vaと検出電圧Vbから記録紙枚数を一意に判定する際に、下記に示す判定式を用いた演算処理法によって、1枚、2枚、3枚、4枚以上の枚数が判定できる。
1枚判定式 : Vc−(−0.0287×Vb+0.4592×Vb+0.06088)
2枚判定式 : Vc−(−0.0433×Vb+0.3529×Vb+0.0396)
3枚判定式 : Vc−(−0.0677×Vb+0.3075×Vb+0.0271)
上記の判定式において、Vcは、検出電圧値の増加量(Vb−Va=Vc)であり、「検出電圧値の増加量Vc−境界線関数」により、Vbによって求まる境界線関数値と増加量Vcとを比較し、比較結果により枚数を判定する。
即ち、各枚数判定式で演算した結果が+であれば、その枚数以上、また、−であればその枚数以下である。例えば、3枚判定式、2枚判定式の演算結果が正であり、1枚判定式の演算結果が負であれば、その枚数は2枚となる。
なお、この判定式は普通紙を例にしたが、検出電圧値の増加量Vcと境界線関数より枚数判定を行っているので、上厚に関係なく適用できる。
また、判定の手順については、後記の処理フロー(図9)で述べる。上記の枚数判定式の例では、1から4枚までの枚数データを得ることができる。
【0041】
図9は、残量検知の処理フローを示す。この検知処理において、上記の判定式を用いた演算処理法により記録紙枚数を判定する処理が行われる。
図9の検知処理は、画像形成装置への電源ON時や省エネモードからの復帰時等において、メインコントローラによって各種の変数が初期化され、装置が立ち上げられた後、操作パネルから印刷(画像形成)出力を求める指示が行われた時等の適当なタイミングで開始され、画像形成動作が終了するまで、処理が継続される。
先ず、残量検知装置は、給紙トレイ21の記録紙の透過光量を受光手段251で検出し、この検出電圧Vaを記憶部に保存する(ステップS201)。なお、保存した検出電圧Vaは、後で行う残量枚数の判定処理プロセスにおいて、給紙前の検出電圧Vaとして用いられる。
この後、印刷指示に従い、給紙動作が行われる(ステップS202)。このとき、給紙により残量が1枚減るので、透過光量も変化する。そこで、再び、給紙トレイ21の記録紙の透過光量を受光手段251で検出し、この検出電圧Vbを記憶部に保存する(ステップS203)。なお、保存した検出電圧Vbは、後で行う残量枚数の判定処理プロセスにおいて、給紙直後の検出電圧Vbとして用いられる。
次に、残量枚数を判定する処理を行うが、このプロセスの始めに、本案の第2残量検知方式による残量枚数の検知限界をチェックし、限界を超える場合には、処理を切り上げるようにので、このためのチェックを行う。このチェックは、予め実験により、0.02Vを限界値として得ているので、検出電圧Vbがこの限界電圧以上であるか、否かを調べる(ステップS204)。
ここで、0.02V未満では、枚数検知ができないので(ステップS204-NO)、3枚までの検知が限界である本例では、残りの枚数を“4枚以上”と判定して、残数検知結果を格納する記憶部に保持されているデータをこの値で更新し(ステップS221)、現在値とする。
【0042】
他方、検出電圧Vbが限界電圧の0.02V以上で、枚数検知が可能な場合(ステップS204-YES)、本案の第2残量検知方式による枚数検知に必要な検出電圧値の増加量Vcを求め、記憶部に保存する(ステップS206)。ここに、増加量Vcは、先に検出電圧値として保存された給紙直後の検出電圧Vbと給紙前の検出電圧Vaの差分(Vb−Va)として求められる。
この後、次の給紙が行われたときに、ここまでに行ったと同様の枚数検知動作を行うので、給紙直後の検出電圧Vbとして得た電圧を次の給紙時に給紙前の検出電圧Vaとして扱うことができるように、現在得た検出電圧Vbで給紙前の検出電圧Vaを更新し、次の給紙に備える(ステップS207)。なお、検出電圧Vbは、後段の枚数判定において、判定の境界値を求めるためにも用いられる。
次に、本案の第2残量検知方式による枚数検知を行う前に、判定に用いる増加量Vc(=Vb−Va)が−の値をとらないことが前提であるから、このチェックを行い(ステップS208)、−であれば、正しい検知結果が得られないので、異常終了をする(ステップS209)。
増加量Vcが+の値をとる場合には(ステップS208-NO)、正常な判定が可能であるから、枚数を判定する処理を進める。
本案の第2残量検知方式による枚数検知における判定は、保存した検出電圧増加量Vcと現在得た検出電圧Vbをもとに、記録紙枚数を判定する。この判定は、上記した「検出電圧値の増加量Vc−境界線関数」の判定式に、以下に示す所定の手順で適用することにより行う。
先ず、0枚判定式を用いて、その演算結果が0又は+であるか(即ち、0枚判定式 ≧ 0)、否かを判定する(ステップS210)。ここで、0又は+であれば、記録紙0枚の区分に属するので、残量を0枚と判定する(ステップS211)。
0枚判定式の演算結果が0又は+でなければ(ステップS210-NO)、記録紙が積載されている場合であるから、次に、残量が4枚以上であることを判定できる3枚判定式を用いて、その演算結果が−であるか(即ち、3枚判定式 < 0)、否かを判定する(ステップS212)。ここで、−であれば、記録紙4枚以上の区分に属するので、残量を4枚以上と判定する(ステップS213)。
【0043】
3枚判定式の演算結果が−でなければ(ステップS212-NO)、積載記録紙が1〜3枚の場合であるから、順に判定できる判定式を適用していく。本例では、次に、残量が3枚であることを判定できる2枚判定式を用いて、その演算結果が−であるか(即ち、2枚判定式 < 0)、否かを判定する(ステップS214)。ここで、−であれば、記録紙3枚の条件を満たすので、残量を3枚と判定する(ステップS215)。
2枚判定式の演算結果が−でなければ(ステップS214-NO)、積載記録紙が1又は2枚の場合であるから、判定式として、次に、残量が2枚であることを判定できる1枚判定式を用いて、その演算結果が−であるか(即ち、1枚判定式 < 0)、否かを判定する(ステップS216)。ここで、−であれば、記録紙2枚の条件を満たすので、残量を2枚と判定する(ステップS217)。
1枚判定式の演算結果が−でなければ(ステップS216-NO)、残りの積載記録紙が1枚の条件を満たすことになるので、残量を1枚と判定する(ステップS218)。
また、上記の判定ステップ(ステップS211,S213,S215,S217,S218)で残量が判定された後、得られた残量のデータによって、これまでに保存されていた枚数データを更新し(ステップS221)、再び給紙動作から始まる記録紙枚数の判定処理を行う。
【0044】
第2残量検知方式における透過光量の検出及び残量(枚数)検知に係わる課題は、基本的に第1残量検知方式におけると変わりがない。
従って、上記「第1残量検知方式」において記述した、“検出信号のダイナミックレンジの確保”、“増幅回路の機差補正”、“枚数判定処理の変更”、“外乱光による雑音除去”、“温度補償”、“湿度補償”、“残量検知のMFPへの利用形態”、“残量検知結果の通知”及び “残量検知条件の設定”という項目で示した課題の解決手段については、同様の形態で、この第2残量検知方式に適用することができるので、上記を参照することとし、ここでは、記載を省略する。
ただ、“枚数判定処理の変更”においては、次に示すような方法で対処することが望ましい。即ち、記録紙の種類等により光透過特性が大きく異なると、第2残量検知方式でも、1通りの「検出電圧値の増加量Vc−境界線関数」の判定式で対応すると、検知精度が落ちるので、このような場合には、光透過特性に応じた境界線関数を別に用意し、各々の記録紙特性に適した境界線関数を選択する。
境界線関数の選択方法は、記録紙の種類をユーザの操作により入力するか、或いはセンサ入力により種類の判別を可能とする手段を備えている場合には、この手段の判別結果を利用し、得られる記録紙の種類に対応する境界線関数を選ぶようにする。
また、“残量検知条件の設定”においては、境界線関数の関数値の設定を可変とした場合には、境界線を変更する調整を行うこと、或いは、上記した境界線関数を選択するために行う紙種の判別に用いる基準値の設定を可変とした場合には、この設定値を変更する調整を行うことによって、最適化を図るようにする。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施形態に係わるデジタルカラー複写機をベースにしたMFPの概略構成を示す。
【図2】本発明に係わる残量検知装置を備えた給紙装置(シート供給装置)の実施形態を示す。
【図3】透過光量による残量検知方式における発光・受光手段ペアと記録紙の関係モデルを示す。
【図4】本発明に係わる残量検知の処理フロー(第1残量検知方式)を示す。
【図5】本発明の残量検知装置の実施形態に係わる受光手段に増幅回路を接続した検出回路の構成を示す。
【図6】残量検知に影響する外乱光の説明図(A)と、外乱光による雑音成分を除去するための手段の構成概念(B)を示す。
【図7】本発明の実施形態に係わる残量検知装置を有するMFPのUIの構成を示す概念図である。
【図8】記録紙枚数と透過光量の検出値である受光手段の出力の量的関係のグラフを示す。
【図9】本発明に係わる残量検知の処理フロー(第2残量検知方式)を示す。
【符号の説明】
【0046】
1・・画像形成部、2・・給紙部、3・・読取部、4・・排紙収納部、5・・中間転写ベルト、6・・作像部、7・・走査露光装置、8・・定着装置、20・・記録紙(シート)、21・・給紙トレイ、23・・レジストローラ、24・・底板、25・・ピックアップローラ、26・・給紙ローラ、29・・残量検知装置、36・・ADF(自動原稿搬送装置)、51・・転写装置、52・・中間転写クリーニング装置、55・・表示部、51・・入力部、61・・感光体ドラム、62・・帯電装置、63・・現像装置、64・・クリーニング装置、81・・外部機(PC)、100・・画像形成装置(MFP)、250・・発光手段、257・・外部光検出手段、258・・外部光除去手段、251・・受光手段、A1・・増幅回路、A2・・増幅率制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積載されたシートを照射可能な位置に設けた発光手段と、
前記積載されたシートを透過してくる前記発光手段からの照射光を受光可能な位置に設けた受光手段と、
前記受光手段で検出された透過光量を、予め定めておいた前記シートの各積載枚数に応じて区分された透過光量範囲と比較する光量比較手段と、
前記光量比較手段による比較結果に基づいて、検出された透過光量が該当する前記透過光量範囲の区分を判定し、前記シートの積載枚数の検知結果を得る手段を有した積載枚数検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載された積載枚数検知装置において、前記光量比較手段で用いる前記透過光量範囲として、前記シートの種類に応じて区分された透過光量範囲を用意するとともに、用意した中から検知対象となる前記シートの種類に対応して適用する透過光量範囲を選択する手段を備えたことを特徴とする積載枚数検知装置。
【請求項3】
積載されたシートを照射可能な位置に設けた発光手段と、
前記積載されたシートを透過してくる前記発光手段からの照射光を受光可能な位置に設けた受光手段と、
前記受光手段によって、積載されたシートの供給前と供給後にそれぞれ検出した透過光量の差分を、透過光量が変数となるシートの各積載枚数に対応する区分を定義した境界線関数から導かれる境界値と比較する光量比較手段と、
前記光量比較手段による比較結果に基づいて、検出された透過光量の差分が該当する前記積載枚数に対応する区分を判定し、前記シートの積載枚数の検知結果を得る手段を有した積載枚数検知装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載された積載枚数検知装置において、前記受光手段の後段にダイナミックレンジ保証用の増幅手段を備えたことを特徴とする積載枚数検知装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載された積載枚数検知装置において、前記受光手段の後段に検出光量信号補正用のデジタル演算処理手段を備えたことを特徴とする積載枚数検知装置。
【請求項6】
請求項5に記載された積載枚数検知装置において、前記デジタル演算処理手段は、前記増幅手段の機差による検出光量信号の変動を補正する機能を持つ手段であることを特徴とする積載枚数検知装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載された積載枚数検知装置において、外乱光を受光する外乱光検出手段と、前記受光手段の検出光量に含まれる外乱光成分を前記外乱光検出手段の検出光量をもとに除去する外乱光除去手段を備えたことを特徴とする積載枚数検知装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載された積載枚数検知装置において、シートの温度条件を検出する温度センサと、前記受光手段の検出光量に含まれる温度誤差を前記温度センサの検出値をもとに補正する温度補償手段を備えたことを特徴とする積載枚数検知装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載された積載枚数検知装置において、シートの湿度条件を検出する湿度センサと、前記受光手段の検出光量に含まれる湿度誤差を前記湿度センサの検出値をもとに補正する湿度補償手段を備えたことを特徴とする積載枚数検知装置。
【請求項10】
請求項1乃至14のいずれかに記載された積載枚数検知装置において、シートの積載枚数の検知結果を通知する通知手段を備えたことを特徴とする積載枚数検知装置。
【請求項11】
請求項10に記載された積載枚数検知装置において、前記通知手段は、シート切れの警告通知を行う手段を備えたことを特徴とする積載枚数検知装置。
【請求項12】
積載枚数検知に関係する動作条件の設定を変更可能にした請求項1乃至11のいずれかに記載された積載枚数検知装置において、積載枚数検知に関係する動作の状態及び設定を監視・設定する手段を備えたことを特徴とする積載枚数検知装置。
【請求項13】
シートを搬送する搬送手段と、前記搬送手段により搬出されるシートを積載するトレイと、前記トレイに積載された前記シートの積載枚数を検知する請求項1乃至12のいずれかに記載された積載枚数検知装置を有したシート供給装置。
【請求項14】
記録用紙に画像を形成する画像形成手段と、前記画像形成手段へ前記シートとしての記録用紙を給紙する請求項13に記載されたシート供給装置を有した画像形成装置。
【請求項15】
原稿を読取る原稿読取手段と、前記原稿読取手段へ前記シートとしての原稿を搬送する請求項13に記載されたシート供給装置と、原稿読取信号をもとに記録用紙に画像を形成する画像形成手段を有した画像形成装置。
【請求項16】
原稿を読取る原稿読取手段と、前記原稿読取手段へ前記シートとしての原稿を搬送する請求項13に記載されたシート供給装置と、原稿読取信号をもとに記録用紙に画像を形成する画像形成手段と、前記画像形成手段へ前記シートとしての記録用紙を給紙する請求項13に記載されたシート供給装置を有した画像形成装置。
【請求項17】
請求項14、16、のいずれかに記載された画像形成装置において、前記積載枚数検知装置によって検知された記録用紙の積載枚数が所定の積載枚数を切った場合に、前記画像形成手段の動作を中止させる制御手段を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項18】
請求項17に記載された画像形成装置において、前記所定の積載枚数が、前記原稿読取手段に積載された原稿の枚数であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項19】
請求項17又は18に記載された画像形成装置において、前記通知手段は、記録用紙の積載枚数が所定の積載枚数を切ったことを警告する通知を行う手段を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−99510(P2007−99510A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−142816(P2006−142816)
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】