説明

空調グリル部品取付構造

【課題】主に、被覆材の有無に拘らず、同じインストルメントパネルと空調グリル部品とがそのまま使用できるようにする。
【解決手段】インストルメントパネル1に対し、被覆材21が選択的に貼着可能とされると共に、被覆材21の有無に拘らず、同じインストルメントパネル1と空調グリル部品3とがそのまま使用可能に構成され、当面部15と係止固定部17とが、合せ面部13,13’の、被覆材21の厚み分の側方変位を許容可能な側方変位対応型当面部28および側方変位対応型係止固定部29とされると共に、グリル部品取付部10と空調グリル部品3との間に、空調グリル部品3の側方変位に伴うガタ付きを防止可能なグリル部品ガタ付防止手段25が介装されるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、空調グリル部品取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両には、車室内の前部にインストルメントパネルが設けられている。このインストルメントパネルには、通常、空調用エアの吹出口となる空調グリル部品が取付けられている(例えば、特許文献1参照)。このような空調グリル部品には、角型のものが存在している。
【0003】
図5は、インストルメントパネル1の例を示すものであり、このインストルメントパネル1では、フロントウインドガラスWの窓枠(横窓枠)などを構成するいわゆるAピラー2の基部の直下部で、且つ、インストルメントパネル1の車幅方向の端部の位置に、上記した角型の空調グリル部品3(サイドベンチレータグリル)が設置されている。この角型の空調グリル部品3は、この場合、上下方向に短く、車幅方向に長い、ほぼ横長の長方形状を呈している。
【0004】
なお、インストルメントパネル1における空調グリル部品3の下縁部よりも下側の部分には、木目調の加飾フィニッシャ4が取付けられている。また、この木目調の加飾フィニッシャ4の下部には、グローブボックス5が設置されている。
【0005】
上記したインストルメントパネル1には、図6に示すように、芯材6と表皮材7と発泡層8とを有する三層構造のものが存在している。このような三層構造のインストルメントパネル1は、芯材6と表皮材7とがセットされた図示しない発泡成形装置の発泡型内に発泡剤(薬液)を注入して、芯材6と表皮材7との間に発泡層8を発泡形成することによって一体物となるように製造されている。
【0006】
このようなインストルメントパネル1に対し、空調グリル部品3を取付可能なグリル部品取付部10が設けられる。
【0007】
ここで、空調グリル部品3は、図7に示すように、入側風路部3Aと、この入側風路部3Aに対して少なくとも両側方へ張出すフランジ状の出側枠部14とを有している。
【0008】
これに対し、図6に示すように、グリル部品取付部10は、入側風路部3Aを挿通配置可能な貫通穴部11と、出側枠部14を収容配置可能な枠部用凹部12とを備えている。貫通穴部11と枠部用凹部12とは、それぞれ、入側風路部3Aおよび出側枠部14とほぼ対応する大きさや形状や位置関係などを備えている。
【0009】
この場合、枠部用凹部12は、インストルメントパネル1の上記部分に対し、表皮材7と発泡層8とを設けずに、芯材6を露出させることによって構成されている。そして、枠部用凹部12の少なくとも一側部の端面(段差面)は、表皮材7の対応する端末部によって発泡層8の端面を覆うようにして構成されている。また、貫通穴部11は、枠部用凹部12の奥面における芯材6が露出された部分に形成されている。これに対応させて、出側枠部14は、枠部用凹部12に設置した時に、その表面がインストルメントパネル1の表面とほぼ面一になるように、表皮材7と発泡層8との厚みの和とほぼ等しい厚さ寸法などを備えている。なお、入側風路部3Aの奥端部には、図示しない空調ダクトが接続されるようになっている。
【0010】
そして、グリル部品取付部10は、空調グリル部品3に対する当面部15を有している。この当面部15は、グリル部品取付部10に対する空調グリル部品3の挿入量を規制するなどのためのものである。この場合、当面部15は、枠部用凹部12の奥面における露出された芯材6の両側部の表面に設定されている。この芯材6の表面に対し、出側枠部14の裏面が当接される。
【0011】
また、グリル部品取付部10と空調グリル部品3との間には、空調グリル部品3をグリル部品取付部10に対して係止保持可能な係止固定部17が設けられている。この場合、係止固定部17として、上記露出された芯材6の裏面に係止可能な爪部が備えられている。この爪部は、空調グリル部品3の入側風路部3Aの両側面における、出側枠部14の裏面から芯材6の厚み分だけ奥側に隔てた位置に設けられている。
【0012】
且つ、枠部用凹部12に、出側枠部14の一側部に対する合せ面部13が形成されている。この合せ面部13は、枠部用凹部12の内側端面に設けられている。この合せ面部13は、枠部用凹部12の端面(段差面)にて、発泡層8の端面を覆うようにして設けられた表皮材7の対応する端末部にて構成されている。
【0013】
また、枠部用凹部12には、出側枠部14の他側部に対する合せ面欠落部9が形成されている。この合せ面欠落部9は、この場合、空調グリル部品3が、インストルメントパネル1の車幅方向の端部に位置することなどによって、枠部用凹部12の外側端面に設けられる。
【特許文献1】特開2005−239095
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
車種によっては、三層構造のインストルメントパネル1における表皮材7の表面に対して、図6に仮想線で示すように、本革18などの被覆材21を貼着して高級感を演出する仕様が設定される場合がある。被覆材21には、1mm〜1.5mm程度の厚みがあるため、単純に被覆材21を貼着した場合には、枠部用凹部12における内側端面の合せ面部13の位置が、被覆材21の厚み分だけ他側部の側へ変位して(合せ面部13’)、空調グリル部品3の合せが狂ってしまうことになる。すると、上記露出された芯材6の裏面に対する、係止固定部17の爪部のかかりが、一側部では浅くなり、他側部では深く成り過ぎるなどによって、空調グリル部品3をうまく取付けることができなくなってしまう。
【0015】
そこで、従来は本革18などの被覆材21を貼着する仕様と、貼着しない仕様とで、発泡型を変えて調整したり、厚さ寸法の異なる表皮材7を使用して調整したり、表皮材7を後から削って厚みを変えるなどしたり、大きさの異なる空調グリル部品3を使用したりするなどして、造り分けを行うようにしていた。
【0016】
しかし、このように、仕様によって造り分けを行うようにすると、コストや手間がかかるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、請求項1に記載された発明では、インストルメントパネルに、角型の空調グリル部品を取付可能なグリル部品取付部が設けられ、空調グリル部品が、入側風路部と、該入側風路部に対して少なくとも両側方へ張出す出側枠部とを有し、グリル部品取付部が、入側風路部を挿通配置可能な貫通穴部と、出側枠部を収容配置可能な枠部用凹部とを備え、グリル部品取付部が、空調グリル部品に対する当面部を有すると共に、グリル部品取付部と空調グリル部品との間に、空調グリル部品をグリル部品取付部に対して係止保持可能な係止固定部が設けられ、且つ、枠部用凹部に、出側枠部の一側部に対する合せ面部が形成されると共に、枠部用凹部に、出側枠部の他側部に対する合せ面欠落部が形成された空調グリル部品取付構造において、インストルメントパネルに対し、被覆材が選択的に貼着可能とされると共に、被覆材の有無に拘らず、同じインストルメントパネルと空調グリル部品とがそのまま使用可能に構成され、前記当面部と係止固定部とが、前記合せ面部の、被覆材の厚み分の側方変位を許容可能な側方変位対応型当面部および側方変位対応型係止固定部とされると共に、グリル部品取付部と空調グリル部品との間に、空調グリル部品の側方変位に伴うガタ付きを防止可能なグリル部品ガタ付防止手段が介装されたことを特徴としている。
【0018】
請求項2に記載された発明では、前記側方変位対応型当面部を、入側風路部の奥部が当る奥当部とすると共に、該奥当部を、被覆材の厚み分の側方変位を許容可能なスライド当面とし、前記側方変位対応型係止固定部が、入側風路部の奥部から奥側へ向けて突設された係止爪部と、前記奥当部またはその近傍に設けられて前記係止爪部を係止可能な係止孔とを備えると共に、該係止孔が、係止爪部の、被覆材の厚み分の側方変位を許容可能な長孔とされた請求項1記載の空調グリル部品取付構造を特徴としている。
【0019】
請求項3に記載された発明では、前記グリル部品ガタ付防止手段が、入側風路部の他側面と貫通穴部の対応する周辺部位との間隙に配設されて、空調グリル部品を一側方へ向けて付勢可能な付勢用部材である請求項1または2記載の空調グリル部品取付構造を特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明によれば、インストルメントパネルに、角型の空調グリル部品を取付可能なグリル部品取付部が設けられ、空調グリル部品が、入側風路部と、該入側風路部に対して少なくとも両側方へ張出す出側枠部とを有し、グリル部品取付部が、入側風路部を挿通配置可能な貫通穴部と、出側枠部を収容配置可能な枠部用凹部とを備え、グリル部品取付部が、空調グリル部品に対する当面部を有すると共に、グリル部品取付部と空調グリル部品との間に、空調グリル部品をグリル部品取付部に対して係止保持可能な係止固定部が設けられ、且つ、枠部用凹部に、出側枠部の一側部に対する合せ面部が形成されると共に、枠部用凹部に、出側枠部の他側部に対する合せ面欠落部が形成された空調グリル部品取付構造において、インストルメントパネルに対し、被覆材が選択的に貼着可能とされると共に、被覆材の有無に拘らず、同じインストルメントパネルと空調グリル部品とがそのまま使用可能に構成され、前記当面部と係止固定部とが、前記合せ面部の、被覆材の厚み分の側方変位を許容可能な側方変位対応型当面部および側方変位対応型係止固定部とされると共に、グリル部品取付部と空調グリル部品との間に、空調グリル部品の側方変位に伴うガタ付きを防止可能なグリル部品ガタ付防止手段が介装されたことにより、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、側方変位対応型当面部および側方変位対応型係止固定部を設けると共にグリル部品ガタ付防止手段を設けることによって、被覆材の有無に拘らず、同じインストルメントパネルと空調グリル部品とがそのまま使用可能となるので、被覆材の有無による仕様上の造り分けが必要なくなり、コストや手間を抑えることができる。これによって、発泡型を変えたり、厚さ寸法の異なる表皮材を使用したり、表皮材を削って厚みを変えたり、大きさの異なる空調グリル部品を使用したりするなどの必要をなくすことができる。
【0021】
請求項2の発明によれば、前記側方変位対応型当面部を、入側風路部の奥部が当る奥当部とすると共に、該奥当部を、被覆材の厚み分の側方変位を許容可能なスライド当面とし、前記側方変位対応型係止固定部が、入側風路部の奥部から奥側へ向けて突設された係止爪部と、前記奥当部またはその近傍に設けられて前記係止爪部を係止可能な係止孔とを備えると共に、該係止孔が、係止爪部の、被覆材の厚み分の側方変位を許容可能な長孔とされたことにより、側方変位の影響の少ない奥部の位置に無理なく側方変位対応型当面部と側方変位対応型係止固定部とを設けることができる。
【0022】
請求項3の発明によれば、前記グリル部品ガタ付防止手段が、入側風路部の他側面と貫通穴部の対応する周辺部位との間隙に配設されて、空調グリル部品を一側方へ向けて付勢可能な付勢用部材であることにより、簡単な構成で、確実に空調グリル部品のガタを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を具体化した実施例について、図示例と共に説明する。
【実施例】
【0024】
図1〜図4は、この発明の実施例を示すものである。
【0025】
なお、インストルメントパネルや空調グリル部品などの構成については、図5などを用いて説明したものと基本的にほぼ同様なので、必要に応じてこの図面などを参照すると共に、これらに対する記載などを以てこの実施例の説明とすることができる。この際、同一ないし均等な部分については、同一の符号を付すようにしている。但し、構成の異なる部分については、図1〜図4に拠るものとする。
【0026】
まず、構成について説明する。
【0027】
自動車などの車両には、車室内の前部にインストルメントパネルが設けられている。このインストルメントパネルには、通常、空調用エアの吹出口となる空調グリル部品が取付けられている。このような空調グリル部品には、角型のものが存在している。
【0028】
図5は、インストルメントパネル1の例を示すものであり、このインストルメントパネル1では、フロントウインドガラスWの窓枠(横窓枠)などを構成するいわゆるAピラー2の基部の直下部で、且つ、インストルメントパネル1の車幅方向の端部の位置に、上記した角型の空調グリル部品3(サイドベンチレータグリル)が設置されている。この角型の空調グリル部品3は、この場合、上下方向に短く、車幅方向に長い、ほぼ横長の長方形状を呈している。
【0029】
なお、インストルメントパネル1における空調グリル部品3の下縁部よりも下側の部分には、木目調の加飾フィニッシャ4が取付けられている。また、この木目調の加飾フィニッシャ4の下部には、グローブボックス5が設置されている。
【0030】
上記したインストルメントパネル1には、図1、図2に示すように、芯材6と表皮材7と発泡層8とを有する三層構造のものが存在している。このような三層構造のインストルメントパネル1は、芯材6と表皮材7とがセットされた図示しない発泡成形装置の発泡型内に発泡剤(薬液)を注入して、芯材6と表皮材7との間に発泡層8を発泡形成することによって一体物となるように製造されている。
【0031】
このようなインストルメントパネル1に対し、空調グリル部品3を取付可能なグリル部品取付部10が設けられる。なお、グリル部品取付部10に対し、空調グリル部品3は、ほぼ車両前後方向の前方へ向けて挿入することによって取付けられる(取付方向20)。
【0032】
ここで、空調グリル部品3は、入側風路部3Aと、この入側風路部3Aに対して少なくとも両側方(この場合には、車幅方向となっているが上下方向であっても良い)へ張出すフランジ状の出側枠部14とを有している。なお、入側風路部3Aは、奥側に位置し、出側枠部14は手前側に位置するものである。
【0033】
これに対し、グリル部品取付部10は、入側風路部3Aを挿通配置可能な貫通穴部11と、出側枠部14を収容配置可能な枠部用凹部12とを備えている。貫通穴部11と枠部用凹部12とは、それぞれ、入側風路部3Aおよび出側枠部14とほぼ対応する大きさや形状や位置関係などを備えている。
【0034】
この場合、枠部用凹部12は、インストルメントパネル1の上記部分に対し、表皮材7と発泡層8とを設けずに、芯材6を露出させることによって構成されている(芯材露出部)。そして、枠部用凹部12の少なくとも一側部の端面(段差面)は、表皮材7の対応する端末部によって発泡層8の端面を覆うようにして構成されている。また、貫通穴部11は、枠部用凹部12の奥面における芯材6が露出された部分に形成されている。これに対応させて、出側枠部14は、枠部用凹部12に設置した時に、その表面がインストルメントパネル1の表面とほぼ面一になるように、表皮材7および発泡層8の厚みの和とほぼ等しい厚さに構成されている。なお、出側枠部14の内部などには、風向調整用のルーバー(縦ルーバーや横ルーバー)などが適宜設置される。また、入側風路部3Aの奥端部には、図示しない空調ダクトが接続されるようになっている。入側風路部3Aと空調ダクトとの接続部分には、比較的厚めのシール部材が介装される。
【0035】
そして、グリル部品取付部10は、空調グリル部品3に対する当面部15を有している。この当面部15は、グリル部品取付部10に対する空調グリル部品3の挿入量を規制するなどのためのものである。
【0036】
また、グリル部品取付部10と空調グリル部品3との間には、空調グリル部品3をグリル部品取付部10に対して係止保持可能な係止固定部17が設けられている。
【0037】
且つ、枠部用凹部12には、出側枠部14の一側部に対する合せ面部13が形成されている。この合せ面部13は、枠部用凹部12の内側端面に設けられている。この合せ面部13は、枠部用凹部12の端面(段差面)における、発泡層8の端面を覆うようにして設けられた表皮材7の対応する端末部にて構成されている(但し、被覆材21の貼着後は、合せ面部13’となる。図3参照。以下同様)。
【0038】
また、枠部用凹部12には、出側枠部14の他側部に対する合せ面欠落部9が形成されている。この合せ面欠落部9は、この場合、空調グリル部品3が、インストルメントパネル1の車幅方向の端部に位置することなどによって、枠部用凹部12の外側端面に設けられる。なお、合せ面欠落部9は、上記したように位置的に形成されるものに限らず、意図的に形成させるようにすることも可能ではある。
【0039】
ここで、符号1aは、インストルメントパネル1の手前面(一般面)、符号1bは、インストルメントパネル1の外側面である。インストルメントパネル1の外側面1bは、芯材6に表皮材7が直接貼付けられた二層構造などとされている。この外側面1bは、乗員からは見えにくい位置に設置されている。また、符号11aは、インストルメントパネル1の外側面1bにおける、合せ面欠落部9側の貫通穴部11周辺の内壁部分である。
【0040】
なお、以上の構成は、上記した従来例のものとほぼ同様である。
【0041】
この実施例のものでは、インストルメントパネル1に対し、図3、図4に示すように、本革18などの被覆材21が選択的に貼着可能とされる。
【0042】
そして、被覆材21の有無に拘らず、同じインストルメントパネル1と空調グリル部品3とが、特別な加工などを施すことなく、そのまま使用可能に構成される。
【0043】
そのために、当面部15と係止固定部17とが、それぞれ、合せ面部13の、被覆材21の厚み分の側方変位を許容可能な、側方変位対応型当面部28および側方変位対応型係止固定部29とされる。なお、符号22は、被覆材21の厚みによる側方変位の方向である。この場合には、側方変位の方向22は、ほぼ車幅方向となっている。なお、図1と図3では、空調グリル部品3の位置を示すために、方向22を示す矢印の向きが反対に描かれている。
【0044】
また、グリル部品取付部10と空調グリル部品3との間に、空調グリル部品3の側方変位に伴うガタ付きを防止可能なグリル部品ガタ付防止手段25が介装される。
【0045】
より具体的には、側方変位対応型当面部28を、入側風路部3Aの奥部が当る奥当部35とすると共に、この奥当部35を、被覆材21の厚み分の側方変位を許容可能なスライド当面36とする。
【0046】
この際、側方変位対応型当面部28に対し、入側風路部3Aの奥部に設けられた当形状部30が当るようにする。この当形状部30は、例えば、入側風路部3Aの両側部に位置する側面3a,3bと直交する側面3cに設けられた面外張出部32の奥端部などに設けられる。この場合、面外張出部32および当形状部30は、入側風路部3Aのコーナー部近傍の位置などに4箇所設けられている(図2など参照)。
【0047】
そして、上記した側方変位対応型当面部28(奥当部35、スライド当面36)は、グリル部品取付部10に対し、当部材19を設けて、この当部材19に設定する。この当部材19は、グリル部品取付部10に対する空調グリル部品3の取付方向20へ延びる梁部19aと、この梁部19aの奥端部から側方(ほぼ車幅方向)へ延びる梁部19bとを有する、ほぼL字状のものなどとされている。なお、スライド当面36は、梁部19bにおける、当形状部30と対応する部分(手前面)に、それぞれ二箇所ずつ設けられる。また、スライド当面36および当形状部30は、その面が側方変位の方向22へ延びるように設定される。当部材19は、グリル部品取付部10の一側部の裏面と他側部の内壁部分11aとの間に、架設されるように一体形成される。この当部材19は、入側風路部3Aの上記した側面3cが二面あるので、各側面3cのそれぞれに対応させて一対設けられる。
【0048】
また、側方変位対応型係止固定部29が、入側風路部3Aの奥部から奥側へ向けて突設された係止爪部37と、奥当部35またはその近傍に設けられて係止爪部37を係止可能な係止孔16とを備えるようにする。この際、係止孔16が、係止爪部37の、被覆材21の厚み分の側方変位を許容可能な長孔23とされるようにする。なお、係止爪部37は、被覆材21の厚み分の側方変位に対して、係止状態を継続・保持可能なものとする。また、この長孔23の両側部は、係止爪部37が、被覆材21の厚み分だけ側方変位される際のストッパ面となるように、遊びを小さく設定するのが好ましい。
【0049】
更に、グリル部品ガタ付防止手段25として、付勢用部材26を用いる。この付勢用部材26は、入側風路部3Aの他側面と貫通穴部11の対応する周辺部位(内壁部分11a)との間隙27に配設されて、空調グリル部品3を一側方(合せ面部13,13’の側)へ向けて付勢可能なものとする。
【0050】
この場合、この付勢用部材26は、その一端部を、入側風路部3Aの他側面に固定され、その他端部をインストルメントパネル1の外側面1bを構成する芯材6に弾接された板バネなどとされている。
【0051】
加えて、枠部用凹部12の他側部における合せ面欠落部9の周辺構造は、以下のように構成されている。
【0052】
即ち、出側枠部14の他側部に、内側傾斜面34を有する奥方延長部33を設ける。この内側傾斜面34は、内向き傾斜を有するものとされる。また、枠部用凹部12の合せ面欠落部9に、内側傾斜面34と対応する傾斜部31を形成する。そして、この内側傾斜面34と傾斜部31との間に、被覆材21の対応する端末部を挟み得るように構成する。この内側傾斜面34および傾斜部31は、出側枠部14の奥に位置するため、手前側からは見えないように構成される。なお、内側傾斜面34の傾斜角度38は、インストルメントパネル1の外側面1bと傾斜部31とが成す角度(の補角)と等しくすることによって、被覆材21の端末部を均等に挟着し得るようにしても、傾斜角度38が若干狭くなるようにすることによって、被覆材21の端末部の奥側を強めに挟着し得るようにしても、傾斜角度38が若干広くなるようにすることによって、被覆材21の端末部の手前側を強めに挟着し得るようにしても良い。
【0053】
次に、この実施例の作用について説明する。
【0054】
インストルメントパネル1のグリル部品取付部10に対する空調グリル部品3の取付けは、グリル部品取付部10に対し、空調グリル部品3を、手前側から奥側へ向け、当面部15に当たるまで挿入し、空調グリル部品3とグリル部品取付部10との間に設けられた係止固定部17を係止・固定させることによって行われる。
【0055】
そして、図1、図2に示すように、被覆材21が貼着されていないインストルメントパネル1の場合には、枠部用凹部12の内側端面(段差面)における表皮材7の端末部が出側枠部14の一側部に対する合せ面部13となる。
【0056】
これに対し、図3、図4に示すように、被覆材21が貼着されたインストルメントパネル1の場合には、枠部用凹部12の内側端面(段差面)における表皮材7の端末部の上に貼着された被覆材21の端末部が出側枠部14の一側部に対する合せ面部13’となる。
【0057】
そして、このように被覆材21の有無によって合せ面部13、13’の位置が、被覆材21の厚み分だけ側方変位することとなり、当面部15や係止固定部17の構成によっては、空調グリル部品3をうまく取付けられなくなる事態が生じるおそれがあるが、この実施例の場合には、当面部15と係止固定部17とを、合せ面部13,13’の、被覆材21の厚み分の側方変位を許容可能な側方変位対応型当面部28および側方変位対応型係止固定部29としているので、支障無く空調グリル部品3を取付けることが可能となる。
【0058】
また、グリル部品取付部10と空調グリル部品3との間に介装したグリル部品ガタ付防止手段25により、空調グリル部品3の側方変位に伴うガタ付きを防止することが可能となる。
【0059】
なお、被覆材21を貼着することにより、空調グリル部品3は、他側部へ向けて側方変位することとなるが、枠部用凹部12の他側部には合せ面欠落部9が形成されているので、空調グリル部品3は、支障なく側方変位することができる。
【0060】
この際、枠部用凹部12と出側枠部14との他側部間には、側方変位に伴って、ほぼ被覆材21の厚み分の隙間が形成されることとなるが、出側枠部14の内側傾斜面34と枠部用凹部12の傾斜部31との間に、被覆材21の対応する端末部が挟み込まれることにより、上記隙間が埋められると共に、被覆材21の端末処理が行われる。
【0061】
また、入側風路部3Aと空調ダクトとの接続部分には、比較的厚めのシール部材が介装されているので、この厚めのシール部材の変形代によって、上記接続部分では、空調グリル部品3の側方変位の影響を吸収することが可能である。
【0062】
このように、この実施例によれば、インストルメントパネル1に、角型の空調グリル部品3を取付可能なグリル部品取付部10が設けられ、空調グリル部品3が、入側風路部3Aと、入側風路部3Aに対して少なくとも両側方へ張出す出側枠部14とを有し、グリル部品取付部10が、入側風路部3Aを挿通配置可能な貫通穴部11と、出側枠部14を収容配置可能な枠部用凹部12とを備え、グリル部品取付部10が、空調グリル部品3に対する当面部15を有すると共に、グリル部品取付部10と空調グリル部品3との間に、空調グリル部品3をグリル部品取付部10に対して係止保持可能な係止固定部17が設けられ、且つ、枠部用凹部12に、出側枠部14の一側部に対する合せ面部13,13’が形成されると共に、枠部用凹部12に、出側枠部14の他側部に対する合せ面欠落部9が形成された空調グリル部品取付構造において、インストルメントパネル1に対し、被覆材21が選択的に貼着可能とされると共に、被覆材21の有無に拘らず、同じインストルメントパネル1と空調グリル部品3とがそのまま使用可能に構成され、当面部15と係止固定部17とが、合せ面部13,13’の、被覆材21の厚み分の側方変位を許容可能な側方変位対応型当面部28および側方変位対応型係止固定部29とされると共に、グリル部品取付部10と空調グリル部品3との間に、空調グリル部品3の側方変位に伴うガタ付きを防止可能なグリル部品ガタ付防止手段25が介装されたことにより、以下のような作用効果を得ることができる。
【0063】
即ち、側方変位対応型当面部28および側方変位対応型係止固定部29を設けると共にグリル部品ガタ付防止手段25を設けることによって、被覆材21の有無に拘らず、同じインストルメントパネル1と空調グリル部品3とがそのまま使用可能となるので、被覆材21の有無による仕様上の造り分けが必要なくなり、コストや手間を抑えることができる。これによって、発泡型を変えたり、厚さ寸法の異なる表皮材7を使用したり、表皮材7を削って厚みを変えたり、大きさの異なる空調グリル部品3を使用したりするなどの必要をなくすことができる。
【0064】
また、側方変位対応型当面部28を、入側風路部3Aの奥部が当る奥当部35とすると共に、この奥当部35を、被覆材21の厚み分の側方変位を許容可能なスライド当面36とし、側方変位対応型係止固定部29が、入側風路部3Aの奥部から奥側へ向けて突設された係止爪部37と、奥当部35またはその近傍に設けられて係止爪部37を係止可能な係止孔16とを備えると共に、係止孔16が、係止爪部37の、被覆材21の厚み分の側方変位を許容可能な長孔23とされたことにより、側方変位の影響の少ない奥部の位置に無理なく側方変位対応型当面部28と側方変位対応型係止固定部29とを設けることができる。
【0065】
そして、グリル部品ガタ付防止手段25が、入側風路部3Aの他側面と貫通穴部11の対応する周辺部位との間隙27に配設されて、空調グリル部品3を一側方へ向けて付勢可能な付勢用部材26であることにより、簡単な構成で、確実に空調グリル部品3のガタを抑制することができる。
【0066】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものであるため、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施例に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、複数の実施例や変形例が示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の実施例にかかる空調グリル部品取付構造の側方断面図である。
【図2】図1を手前側から見た図である。
【図3】被覆材を貼着した図1と同様の側方断面図である。
【図4】図3を手前側から見た図である。
【図5】従来例などの説明に用いたインストルメントパネルの部分的な斜視図である。
【図6】従来例にかかる空調グリル部品取付構造の側方断面図である。
【図7】図6の空調グリル部品の斜視図である。
【符号の説明】
【0068】
1 インストルメントパネル
3 空調グリル部品
3A 入側風路部
9 合せ面欠落部
10 グリル部品取付部
11 貫通穴部
12 枠部用凹部
13 合せ面部
13’ 合せ面部
14 出側枠部
15 当面部
16 係止孔
17 係止固定部
21 被覆材
23 長孔
25 グリル部品ガタ付防止手段
26 付勢用部材
27 間隙
28 側方変位対応型当面部
29 側方変位対応型係止固定部
35 奥当部
36 スライド当面
37 係止爪部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インストルメントパネルに、角型の空調グリル部品を取付可能なグリル部品取付部が設けられ、
空調グリル部品が、入側風路部と、該入側風路部に対して少なくとも両側方へ張出す出側枠部とを有し、
グリル部品取付部が、入側風路部を挿通配置可能な貫通穴部と、出側枠部を収容配置可能な枠部用凹部とを備え、
グリル部品取付部が、空調グリル部品に対する当面部を有すると共に、グリル部品取付部と空調グリル部品との間に、空調グリル部品をグリル部品取付部に対して係止保持可能な係止固定部が設けられ、
且つ、枠部用凹部に、出側枠部の一側部に対する合せ面部が形成されると共に、枠部用凹部に、出側枠部の他側部に対する合せ面欠落部が形成された空調グリル部品取付構造において、
インストルメントパネルに対し、被覆材が選択的に貼着可能とされると共に、被覆材の有無に拘らず、同じインストルメントパネルと空調グリル部品とがそのまま使用可能に構成され、
前記当面部と係止固定部とが、前記合せ面部の、被覆材の厚み分の側方変位を許容可能な側方変位対応型当面部および側方変位対応型係止固定部とされると共に、
グリル部品取付部と空調グリル部品との間に、空調グリル部品の側方変位に伴うガタ付きを防止可能なグリル部品ガタ付防止手段が介装されたことを特徴とする空調グリル部品取付構造。
【請求項2】
前記側方変位対応型当面部を、入側風路部の奥部が当る奥当部とすると共に、該奥当部を、被覆材の厚み分の側方変位を許容可能なスライド当面とし、
前記側方変位対応型係止固定部が、入側風路部の奥部から奥側へ向けて突設された係止爪部と、前記奥当部またはその近傍に設けられて前記係止爪部を係止可能な係止孔とを備えると共に、該係止孔が、係止爪部の、被覆材の厚み分の側方変位を許容可能な長孔とされたことを特徴とする請求項1記載の空調グリル部品取付構造。
【請求項3】
前記グリル部品ガタ付防止手段が、入側風路部の他側面と貫通穴部の対応する周辺部位との間隙に配設されて、空調グリル部品を一側方へ向けて付勢可能な付勢用部材であることを特徴とする請求項1または2記載の空調グリル部品取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−95182(P2010−95182A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−268684(P2008−268684)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】