説明

穿孔装置の製造方法,穿孔装置および用紙折り装置ならびに画像形成装置

【課題】パンチのダイスへのカジリ(干渉)を防止して、パンチとダイスのクリアランスを均一に保ち、穿孔不良,穿孔された孔の品質低下を抑制し、しかも安価に製造することができる穿孔装置を提供する。
【解決手段】パンチの上下動を案内するパンチ孔の下穴41a’,42a’を有するパンチガイド部材41,42と、パンチとによってシート材への穿孔を行うダイス孔の下穴38a’,39a’を有するダイス部材38,39とを、スポット溶接して固定した状態で、ワイヤーカットワイヤー43によりパンチガイド部材41,42のパンチ孔とダイス部材38,39のダイス孔とを同時にワイヤーカット加工した後、リーマ加工によりパンチ孔よりもダイス孔の孔径を若干大きくする加工を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙などのシート材に対して穿孔を行う穿孔装置におけるパンチのガイド部材およびパンチと協働するダイス部材の製造方法に係り、また当該製造方法により製作された部材が設けられる穿孔装置、および当該穿孔装置が設置される用紙折り装置,画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、画像形成装置にて画像処理が行われた用紙などのシート材に対する後処理装置の一種として、シート材に穿孔を行う穿孔装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来の穿孔装置において、パンチガイド孔で摺動案内されて往復運動するパンチと、該パンチと協働してシート材に穿孔するダイス孔を備え、パンチガイド孔とダイス孔との内径が略同寸法である構成のものがある。
【0004】
従来の穿孔装置の製造工程において、パンチガイド孔とダイス孔は、仕上げ代を持つ下穴を有する部材同士を組立状態において共通の加工工程(リーマ)で同心・同寸法にする加工が行われる。しかしながら、リーマは下穴に習う特性があるため、パンチガイド孔とダイス孔の下穴の同心がずれている場合、あるいは完全に同心にならない場合が生じる。また、孔加工精度も落ちる。例えば、真円とはならず楕円になりやすい。このような場合、パンチガイド孔とダイス孔との内径が同寸法であると、パンチのダイスへのカジリ(有害な干渉)が発生し、パンチとダイス間のクリアランスが均一にならず、シート材への穿孔不良、および穿孔された孔の品質や耐久上の不利が発生する。
【0005】
特許文献2には、単純簡潔で低コストな穿孔装置とするため、パンチガイド孔とダイス孔との軸心が一致していれば、パンチガイド孔とダイス孔とを同寸法にしてよいこと、および共通の加工工程または一方の孔を基準として、他方の孔を加工する工程を採用することにより、孔位置調整のみのための工程や機構を不要となし得ることが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の技術において、特許文献2では、パンチ孔とダイス孔とを、パンチとダイスとを組立した後に加工することにより、装置の製造を単純簡潔にして低コスト化を図ることを可能にしている。しかし、上述したパンチとダイス間のクリアランスが均一にならないという問題は解消できていない。
【0007】
本発明は、前記従来技術の課題を解消し、パンチのダイスへのカジリ(干渉)を防止して、パンチとダイスのクリアランスを均一に保ち、穿孔不良,穿孔された孔の品質低下を抑制することができ、しかも安価にて製造可能な穿孔装置の製造方法,穿孔装置および用紙折り装置ならびに画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、パンチの上下動を案内するパンチ孔を有するパンチガイド部材と、前記パンチとによってシート材への穿孔を行うダイス孔を有するダイス部材とからなる穿孔装置の製造方法であって、前記パンチガイド部材と前記ダイス部材とが構造的に固定された状態で、所定の孔径と各孔の同軸度を出すように前記パンチガイド部材のパンチ孔と前記ダイス部材のダイス孔とを同時加工した後、前記パンチ孔よりも前記ダイス孔の孔径を若干大きくする加工を行うことを特徴とし、この方法によって、パンチ孔よりダイス孔を若干孔径を大きく加工することにより、パンチのダイスへのカジリを防止することができ、パンチとダイス間のクリアランスを均一に保つことができる。しかも、パンチのパンチガイド部材とダイス孔を有するダイス部材とが構造的に固定された状態で、各部材にパンチ孔およびダイス孔を同時加工して、所定の孔径と同軸度を出した後、パンチ孔よりダイス孔を若干孔径を大きく加工することにより、孔加工を高精度で安価に行うことができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の穿孔装置の製造方法において、パンチ孔とダイス孔とを同時にワイヤーカットにより孔加工することを特徴とし、この方法によって、高精度で安価に装置を製造することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2記載の穿孔装置の製造方法において、ダイス孔に対して2次加工を行うことを特徴とし、この方法によって、パンチとダイスのクリアランスが均一になり耐久性を向上させることができる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3記載の穿孔装置の製造方法において、ダイス孔に対してリーマ加工により2次加工を行うことを特徴とし、この方法によって、ダイス孔をリーマ加工により2次加工行うことにより、クリアランス精度を向上させることができる。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1または2記載の穿孔装置の製造方法において、パンチガイド部材とダイス部材とのガイド・ダイスユニットを複数積載した状態で、全てのパンチ孔とダイス孔とを同時加工することを特徴とし、この方法によって、同時に複数のガイド・ダイスユニットの孔加工を行うことにより、1個当たりの加工時間を短縮することができる。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5いずれか1項記載の穿孔装置の製造方法において、パンチガイド部材とダイス部材は同じ材質の材料からなることを特徴とし、この方法によって、接合状態,固定状態が安定し、例えば、スポット溶接での溶接性が向上して強度を上げることができる。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項6記載の穿孔装置の製造方法において、パンチガイド部材とダイス部材はステンレス材またはステンレス材と同じ材質の材料からなることを特徴とし、この方法によって、防錆がなされて良好にワイヤーカットを行うことができる。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7いずれか1項記載の穿孔装置の製造方法において、パンチガイド部材は複数枚の板金からなるものであることを特徴とし、この方法によって、摺動案内されて往復運動するパンチとダイスとのクリアランスをより安定かつ均一にすることができる。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜8いずれか1項記載の穿孔装置の製造方法により、パンチの上下動を案内するパンチ孔を有するパンチガイド部材と、前記パンチとによりシート材への穿孔を行うダイス孔を有するダイス部材とが製作されたことを特徴とする穿孔装置であって、この構成によって、安定かつ確実に穿孔が行われる安価な穿孔装置を提供することができる。
【0017】
請求項10に記載の発明は、シート材に対して折り処理を施す用紙折り装置において、請求項9記載の穿孔装置を設置したことを特徴とし、この構成によって、安定かつ確実に穿孔が行われる穿孔装置を具備した用紙折り装置を安価に提供することができる。
【0018】
請求項11に記載の発明は、入力された画像情報に基づいてシート材に対して画像形成を行う画像形成装置において、画像形成後の後処理装置として請求項9記載の穿孔装置を設置したことを特徴とし、この構成によって、安定かつ確実に穿孔が行われる穿孔装置を具備した画像形成装置を安価に提供することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る穿孔装置の製造方法によれば、パンチガイド部材とダイス部材とが構造的に固定された状態で、所定の孔径と各孔の同軸度を出すようにパンチガイド部材のパンチ孔とダイス部材のダイス孔とを同時加工した後、パンチ孔よりもダイス孔の孔径を若干大きくする加工を行うことによって、パンチとダイスに対する当接・干渉(カジリ)を防止して、パンチとダイス間のクリアランスを均一に保つことができ、しかも孔加工が高精度で安価で行われるため、シート材への穿孔不良,穿孔された孔の品質低下を抑制することができる信頼性の高い穿孔装置を安価に製造することができる。
【0020】
また、本発明に係る穿孔装置の製造方法により製造された穿孔装置を設置することにより、安定かつ確実に穿孔が行われる後処理装置を搭載する用紙折り装置および画像形成装置を安価に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態を説明するための用紙後処理装置が連結された画像形成装置の概略構成を示す正面構成図、図2は図1の用紙後処理装置の側面構成図
【図2】図1に示された用紙後処理装置の側面構成図
【図3】本発明に係る穿孔装置の実施形態の全体斜視図
【図4】図3に示す穿孔装置の実施形態の分解斜視図
【図5】本実施形態におけるパンチガイドブラケットとガイド板との組立(固定)方法についての説明図
【図6】本実施形態においてパンチ孔とダイス孔を共通加工する工程についての説明図であり、(a)はパンチ孔とダイス孔部分を示す正面断面図、(b)はパンチ孔とダイス孔部分を示す右側面断面図
【図7】本実施形態における上パンチガイドブラケットと下パンチガイドブラケットと下ガイド板と上ガイド板との孔部分のみを上方から見た平面図
【図8】本実施形態におけるダイス孔の二次加工の説明図であり、(a)はパンチ孔とダイス孔部分を示す正面断面図、(b)はパンチ孔とダイス孔部分を示す右側面断面図
【図9】本実施形態における各孔の関係を示す正面断面状態の説明図
【図10】(a)〜(c)は孔加工のフローを示した正面断面状態の説明図
【図11】本実施形態において複数のパンチユニットを積載した状態でワイヤーカット加工を行う場合の正面断面状態の説明図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
図1は本発明の実施形態を説明するための用紙後処理装置が連結された画像形成装置の概略構成を示す正面構成図、図2は図1の用紙後処理装置の側面構成図であって、1は画像形成装置である複写機装置本体、2は複写機装置本体1に連結する用紙後処理装置である用紙折り装置である。
【0024】
図1において、複写機装置本体1には、原稿画像を読み取る画像読取部10と、電子写真方式の作像ユニット部11と、記録媒体である用紙などのシート材が収納される収納部12と、シート手差部13とが設けられており、作像ユニット部11は、感光体14と、トナー現像部15と、転写部16と、定着部17と、複写機装置本体1上にシート材を排紙する第1排紙部18と、用紙後処理装置2へシート材を排紙する第2排紙部19が設置されている。
【0025】
図1,図2において、用紙折り装置2には、複写機装置本体1の第2排紙部19との連結部20と、シート材先端の端面を折る端面折り部21と、シート材を搬送方向にジャバラ状に折るジャバラ折り部22と、ジャバラ状に折られた用紙を搬送方向に切り換える搬送切換部23と、搬送方向を切り換えたシート材を折るクロス折り部24と、搬送切換部23に配された縦孔パンチユニットや横孔パンチユニットなどの穿孔装置部25と、クロス折り部24で所定サイズ(例えば、A4サイズ)の大きさに折られたシート材を表裏反転させる反転部26と、シート材を回転させる回転部27と、シート材が排紙されるトレイ28が設置されている。
【0026】
複写機装置本体1では、画像読取部10のスキャナにより原稿に対する画像情報の読み取りが行われ、読み取られた画像情報に基づいて作像ユニット部11の感光体14を露光して潜像を形成する。この潜像はトナー現像部15によってトナー顕像化される。さらに、このトナー像は、シート材が収納されている収納部12あるいはシート手差部13から搬送され、かつレジストローラ30によりタイミングを取って給紙されるシート材に対して転写部16で転写される。
【0027】
転写処理後のシート材は、定着部17にてトナー像の定着処理が行われ、第1排紙部18、あるいは第2排紙部19から本体外へ排出される。
【0028】
第2排紙部19によって用紙折り装置2に搬送されたシート材は、端面折り部21により先端の端面が折られ、端面折り部21により先端の端面が折られた後、ジャバラ折り部22により搬送方向にジャバラ状に折られて、搬送切換部23に送られる。
【0029】
搬送切換部23に送られたジャバラ状に折られたシート材は、図1で示す矢印A方向にスキュー補正が行われる。後処理としてパンチ処理が設定されている場合には、穿孔装置部25において、ジャバラ状に折られたシート材が穿孔されて、クロス折り部24に送られる。
【0030】
クロス折り部24に送られたジャバラ状のシート材は、ジャバラ折り方向とは直交する方向に、再度ジャバラ状に折られ、所定サイズの大きさに折り込まれる。所定サイズに折られたシート材は、トレイ28に排出されたときに転写面が下になるように、折り種類によってシート面が反転部26により反転され、さらに、トレイ28に排出したときに画像の向きが揃うように、回転部27にて左右90°回転される。
【0031】
次に、本発明に係る穿孔装置の実施形態について説明する。
【0032】
図3は穿孔装置の実施形態の全体斜視図、図4は図3に示す実施形態の分解斜視図である。
【0033】
図3,図4において、31はカム軸アセンブリ、32はカム軸、33はカム軸32に一対設けられた偏心カム、34は偏心カム33により上下駆動されるパンチ35を保持するパンチホルダ、36はカム軸32の軸受、37はカム軸32を回転駆動する電磁クラッチ、38はダイス孔38aが形成されている複数(図では一対)のダイス部材の一方である下ガイド板、39は、下ガイド板38に対向設置され、かつダイス孔39aが形成されている他方のダイス部材である上ガイド板、40はスペーサ、41はパンチ35の上下動を案内するパンチ孔41aが形成されている複数(図では一対)のパンチガイド部材の一方である上パンチガイドブラケット、42は、上パンチガイドブラケット41に対向設置され、かつパンチ孔42aが形成されている他方のパンチガイド部材である下パンチガイドブラケットである。
【0034】
フレームを兼ねる下ガイド板38と上ガイド板39には、上ガイド板39上にハット曲げ形状の上パンチガイドブラケット41と下パンチガイドブラケット42とがスポット溶接にて固定され、下ガイド板38と上ガイド板39とが、シート材の通紙用小間隔をもって対向するように、スペーサ40を介してスポット溶接で固定され、組み立てられている。そして、上パンチガイドブラケット41と下パンチガイドブラケット42のパンチ孔41a,42aに対向する位置における上ガイド板39と下ガイド板38に、それぞれダイス孔38a,39aが設置されている。
【0035】
前記構成の本実施形態では、カム軸アセンブリ31は、カム軸32と、該カム軸32に固定された一対の偏心カム33と、カム軸32の両端部に嵌着された一対の軸受36と、カム軸32の一端部設けられ、図示しないモータに連結している電磁クラッチ37と、一対のパンチホルダ34と、パンチ35とから構成されている。
【0036】
そして、電磁クラッチ37のオンによってカム軸32は1回転だけ回転駆動され、この回転により偏心カム33が回転して、パンチ35を上下1往復させる。このパンチ35と、パンチ35が上下摺動するダイス孔38a,39aとの協働にて、上ガイド板39と下ガイド板38間に搬送され挿入されるシート材に穿孔が行われる。
【0037】
次に、本実施形態の穿孔装置におけるカム軸アセンブリの要部、すなわち、上パンチガイドブラケットと下パンチガイドブラケットのパンチ孔、および上ガイド板と下ガイド板のダイス孔などの製造(組立)方法について、図5〜図11に基づいて説明する。
【0038】
図5は本実施形態におけるパンチガイドブラケットとガイド板との組立(固定)方法についての説明図である。図中の×印はスポット溶接部を示す。
【0039】
図5において、(a)に示すように、上パンチガイドブラケット41と下パンチガイドブラケット42とをスポット溶接してブラケットユニットを作製し、(b)に示すように、ブラケットユニットの下パンチガイドブラケット42と上ガイド板39の上面とをスポット溶接してガイド・ダイスユニットUを作製する。
【0040】
一方、(c)に示すように、スペーサ40と下ガイド板38をスポット溶接して、スペーサ・ガイド板ユニットを作製しておき、(d)に示すように、ガイド・ダイスユニットUの上ガイド板39と、スペーサ・ガイド板ユニットのスペーサ40をスポット溶接する。この状態でスペーサ40が介在して、下ガイド板38と上ガイド板39間にシート材が搬送/挿入されるスペースが形成される。
【0041】
図5に示す状態では、上パンチガイドブラケット41と下パンチガイドブラケット42、および下ガイド板38と上ガイド板39には、孔加工用の下穴41a’,42a’,38a’,39a’が穿設されている。
【0042】
図6は図5(d)に示す組立状態においてパンチ孔とダイス孔を共通加工する工程についての説明図であり、(a)はパンチ孔とダイス孔部分を示す正面断面図、(b)はパンチ孔とダイス孔部分を示す右側面断面図である。
【0043】
本実施形態ではワイヤーカット(ワイヤー放電加工)により、仕上げ代を残したダイス孔とパンチ孔を同時に加工するようにしている。当該ワイヤー放電加工については公知の技術であるので、ここでは説明は省略する。
【0044】
図6において、43はワイヤーカットワイヤーであって、該ワイヤー43を各下穴41a’,42a’,38a’,39a’に通して矢印方向に下方移動させながら、かつ、図7に示すように、孔径方向へ移動させながら各下穴41a’,42a’,38a’,39a’を同時に、所定の径になるようにワイヤーカット加工する。
【0045】
図7は上パンチガイドブラケット41と下パンチガイドブラケット42と下ガイド板38と上ガイド板39における孔部分のみを上方から見た平面図であって、2点鎖線がワイヤーカット軌跡であって、最外周の実線がワイヤーカット加工完成孔径である。
【0046】
なお、上パンチガイドブラケット41と下パンチガイドブラケット42と下ガイド板38と上ガイド板39における各下穴41a’,42a’,38a’,39a’のセンターは若干ずれていても、ワイヤーカット仕上げ代の範囲内であれば、加工精度に支障を与えない。
【0047】
このように、上パンチガイドブラケット41と下パンチガイドブラケット42と下ガイド板38と上ガイド板39との4部品を同時にワイヤーカット加工することにより、各孔に対して高精度に同軸度加工と孔径加工とを行うことができる。
【0048】
本実施形態では、前記加工により、パンチ35の上下動を案内する上パンチガイドブラケット41と下パンチガイドブラケット42のパンチ孔41a,42aの加工は終了する。しかし、下ガイド板38と上ガイド板39のダイス孔38a,39aに対しては後述する二次加工を行う。
【0049】
図8は本実施形態におけるダイス孔の二次加工の説明図であり、(a)はパンチ孔とダイス孔部分を示す正面断面図、(b)はパンチ孔とダイス孔部分を示す右側面断面図である。本実施形態ではリーマ加工により、ダイス孔のみに二次加工を施すようにしている。
【0050】
図8において、44はリーマであって、既述したワイヤーカット加工によりパンチ孔41a,42aと同軸となったダイス孔38a,39aに対して、リーマ44を回転させながら下降させることで、ダイス孔38a,39aに対してリーマ加工を行う。
【0051】
この場合、リーマ加工は、下穴に習う特性があるため、本実施形態では、加工対象であるダイス孔38a,39aが上方に位置するように、下ガイド板38を上側にしてリーマ加工を行うようにしている。
【0052】
このリーマ加工により、パンチ孔41a,42aとの同軸度を維持したままで、ダイス孔38a,39aの径をパンチ孔41a,42aよりも若干大きくする。
【0053】
図9は本実施形態における前記各孔の関係を示す正面断面状態の説明図、図10(a)〜(c)は上述した加工のフローを示す正面断面状態の説明図である。
【0054】
本実施形態では、上述した孔加工を行うことにより、パンチ35の上ガイド板39と下ガイド板38に対するカジリ(当接,干渉)が防止され、よって、パンチ35とダイスである上ガイド板39と下ガイド板38との間のクリアランスが一定になるため、シート材への穿孔不良,穿孔された孔の品質低下を抑制することができる。
【0055】
しかも、本実施形態では、普通の板金加工が可能な形状や精度の部品(下ガイド板38,上ガイド板39,上パンチガイドブラケット41,下パンチガイドブラケット42)をスポット溶接した状態で、ワイヤーカット加工を活用して高精度を維持できる加工が行われると共に、一般的に対応可能なリーマ加工で孔加工が完成するため、金型投資ができないような少量生産機種において、型治工具のコストを必要とせずに、トータルコストで安価に高精度の穿孔装置を提供することができる。
【0056】
また、本実施形態では、図11に示すように、下ガイド板38と上ガイド板39と上パンチガイドブラケット41と下パンチガイドブラケット42とを、1ガイド・ダイスニットとして、複数(図では3ユニット)のガイド・ダイスユニットU1〜U3を積載した状態で、ワイヤーカットワイヤー43により上述したダイス孔38a,39aとパンチ孔41a,42aとの孔加工を行うことによって、さらに製造コストを低下させることができる。
【0057】
なお、本実施形態において、ダイス部材である下ガイド板38および上ガイド板39と、パンチガイド部材である上パンチガイドブラケット41および下パンチガイドブラケット42とを、同じ材質の材料とすることによって、接合状態,固定状態が安定し、例えば、スポット溶接での溶接性が向上して強度を上げることができる。
【0058】
また、下ガイド板38および上ガイド板39と、上パンチガイドブラケット41および下パンチガイドブラケット42とを、ステンレス材またはステンレス材と同じ材質の材料とすることによって、防錆がなされて良好にワイヤーカットを行うことができる。
【0059】
また、下ガイド板38および上ガイド板39と、上パンチガイドブラケット41および下パンチガイドブラケット42との少なくとも一方を、複数枚の板金から形成することによって、摺動案内されて往復運動するパンチとダイスとのクリアランスをより安定かつ均一にすることができる。
【0060】
また、下ガイド板38および上ガイド板39を、上パンチガイドブラケット41および下パンチガイドブラケット42よりも熱膨張係数が大きい材料から形成することによって、ダイスのリーマ加工が不要となりコスト低減が図れる。
【0061】
また、下ガイド板38および上ガイド板39を、上パンチガイドブラケット41および下パンチガイドブラケット42とを、シート材搬送方向に対して直交する面により連結することにより、強度を上げることができて、孔径精度と同軸度が出し易くなる。
【0062】
このように、本実施形態の方法により製造された穿孔装置は、安価で、安定かつ確実にシート材に対して穿孔が行われる構成となるため、図1,図2に示す複写機,プリンタなどの画像形成装置に連結される用紙(シート材)後処理装置などにおける穿孔装置として有効である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、複写機,プリンタなどの画像形成装置に連結あるいは内部に搭載される用紙後処理装置としての穿孔装置、または用紙折り装置などに適用される。
【符号の説明】
【0064】
1 複写機装置本体
2 用紙折り装置
25 穿孔装置部
35 パンチ
38 下ガイド板(ダイス部材)
39 上ガイド板(ダイス部材)
38a,39a ダイス孔
41 上パンチガイドブラケット(パンチガイド部材)
42 下パンチガイドブラケット(パンチガイド部材)
41a,42a パンチ孔
38a’,39a’,41a’,42a’ 下穴
43 ワイヤーカットワイヤー
44 リーマ
U,U1〜U3 ガイド・ダイスユニット
【先行技術文献】
【特許文献】
【0065】
【特許文献1】特開2007−31095号公報
【特許文献2】特開2000−176895号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンチの上下動を案内するパンチ孔を有するパンチガイド部材と、前記パンチとによってシート材への穿孔を行うダイス孔を有するダイス部材とからなる穿孔装置の製造方法であって、
前記パンチガイド部材と前記ダイス部材とが構造的に固定された状態で、所定の孔径と各孔の同軸度を出すように前記パンチガイド部材のパンチ孔と前記ダイス部材のダイス孔とを同時加工した後、前記パンチ孔よりも前記ダイス孔の孔径を若干大きくする加工を行うことを特徴とする穿孔装置の製造方法。
【請求項2】
前記パンチ孔と前記ダイス孔とを同時にワイヤーカットにより孔加工することを特徴とする請求項1記載の穿孔装置の製造方法。
【請求項3】
前記ダイス孔に対して2次加工を行うことを特徴とする請求項1または2記載の穿孔装置の製造方法。
【請求項4】
前記ダイス孔に対してリーマ加工により前記2次加工を行うことを特徴とする請求項3記載の穿孔装置の製造方法。
【請求項5】
前記パンチガイド部材と前記ダイス部材とのガイド・ダイスユニットを複数積載した状態で、全ての前記パンチ孔と前記ダイス孔とを同時加工することを特徴とする請求項1または2記載の穿孔装置の製造方法。
【請求項6】
前記パンチガイド部材と前記ダイス部材は同じ材質の材料からなることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の穿孔装置の製造方法。
【請求項7】
前記パンチガイド部材と前記ダイス部材はステンレス材またはステンレス材と同じ材質の材料からなることを特徴とする請求項6記載の穿孔装置の製造方法。
【請求項8】
前記パンチガイド部材は複数枚の板金からなるものであることを特徴とする請求項1〜7いずれか1項記載の穿孔装置の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8いずれか1項記載の穿孔装置の製造方法により、パンチの上下動を案内するパンチ孔を有するパンチガイド部材と、前記パンチとによりシート材への穿孔を行うダイス孔を有するダイス部材とが製作されたことを特徴とする穿孔装置。
【請求項10】
シート材に対して折り処理を施す用紙折り装置において、請求項9記載の穿孔装置を設置したことを特徴とする用紙折り装置。
【請求項11】
入力された画像情報に基づいてシート材に対して画像形成を行う画像形成装置において、画像形成後の後処理装置として請求項9記載の穿孔装置を設置したことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−88252(P2011−88252A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−244335(P2009−244335)
【出願日】平成21年10月23日(2009.10.23)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】