説明

突合せ接合された閉断面中空構造体

車両の構造部材は、従来の二枚貝様構成を用いるが先行技術である重畳接合部が除去された閉断面中空体から提供される。これは、自動車産業からの要請による高容量への適用に実績がある。板金プレス成形は、構造部品を製造する最も費用対効果の高い方法である。本開示は、二枚貝様閉断面中空体における重畳又はフランジ型接続部に関する不必要な材料を廃止することで重量とコストを低下させる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
車両における構造的な部材(例えばモーター区画レール、サスペンションコントロールアーム又はサスペンションサブフレームビーム)を閉断面中空体から作製することは有利であり、かかる中空体は、従来型の二枚貝様構成を用いるが先行技術である重畳接合部は除去される。これについては、高容量への適用(例えば自動車産業からの要請によるもの)に対して実績がある。板金プレス成形は、構造部品を製造する最も費用対効果の高い方法である。現在生産されているあらゆる車両のほとんどは、プレス成形技術を用いて製造されたアルミニウム又はスチール打抜部材のいずれかから構築されているボディ構造物及び選択サブフレームを利用している。閉断面中空体を必要とする場合は、2つのプレス成形された開断面板金部品から一般的には構築される。そして、適切なフィレット型溶接接合を円滑にする重畳部分か、二重材料スポット溶接接合を提供する突出フランジのいずれかを用いる二枚貝様構成が作製される。本開示の第一の目的は、二枚貝様閉断面中空体における重畳又はフランジ型接合部に関する不必要な材料を廃止することである。
【0002】
溶接接合で最も効率的なタイプは、突合せ配置である。これは、構造的に接合される2つの部品がそれらの開放端における接線面に沿って接触し、材料の重なりがないようにする。そして、この突合せ接合部がMIG、TIG、Arc、レーザー又は類似の手段を用いて溶接されることで2つの部品が連続して構造的に連結する。この溶接突合せ接合部の品質は、2つの部品間の隙間と、2つの部品の材料についての厚みの差に極めて影響を受ける。厚みの差は、設計工程を通じて適切な仕様によって制御可能である。2つの部品間の隙間は、製造工程の能力に依存する。2つの部品がプレス成形技術を使用して打抜板金から構築されると、工程限界のために隙間なく接続する開放端を作り出すことができない。これは、プレス成形された二枚貝様構成が適切なフィレット型溶接接合を支援する重畳部分か、二重材料スポット溶接接合を提供する突出フランジのいずれかを使用するためである。
【0003】
要約
2つの金属部品を連続して構造的に連結する最も有効な工程は、レーザービーム溶接である。これは、レーザービーム溶接が他の溶接技術よりも著しく熱が少ないためである。レーザービーム溶接は、一般的には溶加材も必要せず、施工速度も非常に速い。しかしながら、レーザービーム溶接は、他の溶接技術よりも更に厳密な許容度を突合せ接合部の隙間に対して要求するため、一般的には材料が重畳する構成に対してだけ施される。閉断面中空体は、プレス成形された2つの開断面板金部品が突合せ接合でのレーザービーム溶接によって部品間の接続面で構造的に連結している二枚貝様のものとして構成されるものであり、先行技術の構成に対して重量とコストの面で著しい優位性を提供する。
【0004】
本開示の一実施形態において、閉断面中空体は、プレス成形技術を用いて製造され且つ2つの実質的に平行な下向接続フランジを有するように構成される、一般的には開断面を備える上側板金打抜部品と、プレス成形技術を用いて製造され且つ2つの実質的に平行な上向接続フランジを有するように構成される、一般的には開断面を備える下側板金打抜部品から構成されている。プレス成形後、上側板金打抜部品及び下側板金打抜部品は、寸法を順守しながら専用固定具によりしっかりと保持される。そして、上向及び下向接続フランジは、5-軸レーザーカットを用いて相補的に切り整えられる。固定具は、上側板金打抜部品と下側板金打抜部品の移動を円滑にしてそれらの接続面全体に沿って互いが隙間なく接触するようにしつつ、寸法を順守しながら部品をしっかりと保持し続ける。上側板金打抜部品及び下側板金打抜部品は、固定具にしっかりと保持されつつ、連続レーザー突合せ溶接によって隙間のない接続面に沿って構造的に連結される。寸法を順守しながらしっかりと部品を保持して同じ固定具内で5軸切り取り操作を実施するので、隙間のない接続面が完全に維持される。そして、不必要な材料が出ず、熱作用はわずかであり、そして処理速度が速い高品質レーザー溶接接合が達成される。これにより、寸法保全性が高水準である、断面形状に変化がついた連続中空構造体となる。これは、2つの板金押打抜部品が構造的に連結すると、固定具から取り除かれる際に寸法を順守しながら互いを保持しているため、個々の部品における材料のスプリングバック(springbuck)効果と誤差形成が解消されるためである。
【0005】
このようにして、高効率閉断面中空体が作製されると、構造的に対応して重なっているかフランジが付いている二枚貝様構成よりも利用する材料が少ないため、重量を少なくし且つ低コストとする課題が解消される。加えて、本開示の閉断面中空体が費用効率の高いプレス成形ツールで構築できるのは、固定具が切り取り及び溶接を通じて必要な寸法公差を提供するため精度の高い板金打抜部品が要求されないためである。本開示の閉断面中空体の更なる利点は、ロール成形、ブロー成形又は液圧成形によって製造される、従来型の閉断面をもつ非重畳接合配置よりもはるかに高い割合で、横断面領域をその全長沿って大きく変化させることができる点である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】図1は、本発明の閉断面中空体の斜視図である。
【0007】
【図2】図2は、本発明の閉断面中空体の展開斜視図である。
【0008】
【図3】図3は、専用固定具に部分的に取り付けられた本発明の閉断面中空体の部品の斜視図である。
【0009】
【図4】図4は、本発明の閉断面中空体の部品が完全に取り付けられ且つ切り整えられた状態の専用固定具の斜視図である。
【0010】
【図5】図5は、レーザービーム溶接を通じて完全に取り付けられた本発明の閉断面中空体の部品を有する専用固定具の斜視図である。
【0011】
【図6】図6は、本発明の閉断面中空体の応用の斜視図である。
【0012】
【図7】図7は、本発明の閉断面中空体の更なる応用の斜視図である。
【0013】
【図8】図8は、本発明の閉断面中空体の他の応用の斜視図である。
【0014】
詳細な説明
図1及び2を参照する。閉断面中空体(1)は、上側板金打抜部品(10)及び下側板金打抜部品(20)から実質的に構築されている。両板金打抜部品は、スチール、アルミニウム又は他の適切な金属若しくは合金平板をプレス成形して、最終的な施工の構造要件及び包装要件により要請される要求開断面形状にすることにより製造した。上側板金打抜部品(10)は、2つの実質的に平行な下向接続フランジ(12)(14)を有するように構成されている。図1及び2の非制限的な実例に示すように、下側板金打抜部品(20)は、2つの実質的に平行な上向接続フランジ(22)(24)を有するように構成されている。上側板金部品(10)の下向接続フランジ(12)(14)は、高精度な接続端(16)(18)を作製するためにプレス成形後に5-軸レーザーで切り整えられる。下側板金部品(20)の上向接続フランジ(22)(24)は、高精度な接続端(26)(28)を作製するためにプレス成形後に5-軸レーザーで切り整えられる。接続端(16)(18)(26)(28)が5-軸レーザー装置を介した単一操作を通じて相補的に切り整えられている間、上側板金打抜部品(10)及び下側板金打抜部品(20)は、寸法を順守しながら専用固定具によりしっかりと保持される。このように、上向接続フランジ(22)(24)の接続端(26)(28)と下向接続フランジ(12)(14)の接続端(16)(18)は、隙間なくしっかりと合うように構成される。この隙間のない接続面(また、「接続面」と呼ばれる)が高品質なレーザー溶接突合せ接合部(30)を容易にさせ、上側板金打抜部品(10)と下側板金打抜部品(20)が構造的に連結して、断面形状に変化がついた連続中空構造体(1)が作製される。
【0015】
図3は、上側板金打抜部品(10)と下側板金打抜部品(20)とをしっかりと保持するように構成された専用固定具(40)の非制限的な実例を、板金打抜部品がスペーサーブロック(42)により所定の間隔を保持する専用固定具(40)に設置される前の見える状態にして図示している。図4には、固定具(40)に完全取り付けられた上側板金打抜部品(10)及び下側板金打抜部品(20)を有する専用固定具(40)と、5-軸レーザー装置を介して相補的に切り整えた接続端(16)(18)(26)(28)が図示されている。精度の低いエッジ(54)(56)を含むスクラップ材料(50)(52)は、接続フランジ(12)(14)(22)(24)から分離して示されている。
【0016】
図5には、スペーサーブロック(42)が引き出され、上側板金打抜部品(10)及び下側板金打抜部品(20)がレーザーで事前に切り整えた接続端(16)(18)(26)(28)に沿って互いが接触して隙間のない状態にある、専用固定具(40)が図示されている。レーザー光線(60)が、断面形状に変化がついた連続中空構造体(1)を作製するように隙間が完全にない接続面に沿って溶接突合せ接合部(30)を仕上げているところを図示している。
【0017】
図6には、上記製造技術を用いて製造された、断面形状に変化がついた閉断面中空体としての構成である車両用サスペンションアーム(70)の非制限的な実例が図示されている。
【0018】
図7は、上記製造技術を用いて製造された、断面形状に変化がついた閉断面中空体としての構成である車両用モーター区画レール(72)の非制限的な実例が図示されている。
【0019】
図8は、上記製造技術を用いて製造された、断面形状に変化がついた4つの閉断面中空体としての構成である車両用サスペンションサブフレーム(74)の非制限的な実例が図示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス成形技術を用いて製造され且つ2つの実質的に平行な下向接続フランジを有するように構成される、実質的な開断面を備えた上側板金打抜部品と、
プレス成形技術を用いて製造され且つ2つの実質的に平行な上向接続フランジを有するように構成される、実質的な開断面を備える下側板金打抜部品と、を備え、
前記上向及び下向接続フランジは、前記上側板金打抜部品と前記下側板金打抜部品との間で互いが接続面に沿って接触するようにプレス成形後に相補的に切り整えられ、
前記接続面が、前記上側板金打抜部品と前記下側板金打抜部品との間における突合せ溶接による構造的に連結した接合部として有効に構成されることで、断面形状に変化がついた連続中空構造体が作製される、板金から成形した閉断面中空体。
【請求項2】
前記上側板金打抜部品及び前記下側板金打抜部品の前記上向及び下向接続フランジは、5-軸レーザーカットを用いて相補的に切り整えられる、請求項1に記載の閉断面中空体。
【請求項3】
前記上側板金打抜部品及び前記下側板金打抜部品は、連続レーザー突合せ溶接によって前記接続面に沿って構造的に連結される、請求項1に記載の閉断面中空体。
【請求項4】
前記上側板金打抜部品及び前記下側板金打抜部品は、寸法を順守しながらしっかりと保持されつつ、前記上向及び下向接続フランジは、5-軸レーザーカットを用いて相補的に切り整えられる、請求項2に記載の閉断面中空体。
【請求項5】
前記上側板金打抜部品及び前記下側板金打抜部品は、寸法を順守しながらしっかりと保持されつつ、連続レーザー突合せ溶接によって前記接続面に沿って構造的に連結される、請求項3に記載の閉断面中空体。
【請求項6】
プレス成形技術を用いた製造に適し、2つの実質的に平行な下向接続フランジを有するように構成される、実質的な開断面を備える上側板金打抜部品と、
プレス成形技術を用いて製造され且つ2つの実質的に平行な上向接続フランジを有するように構成される、実質的な開断面を備える下側板金打抜部品と、を備え、
前記上側板金打抜部品及び前記下側板金打抜部品が寸法を順守しながらしっかりと保持されるように有効に構成しつつ、前記上向及び下向接続フランジをプレス成形後に5-軸レーザーカットを用いて相補的に切り整えられ互いがそれらの接続面全体に沿って接触するようにし、
前記上側板金打抜部品及び前記下側板金打抜部品が寸法を順守しながらしっかりと保持されるように有効に構成しつつ、連続レーザー突合せ溶接によって前記接続面に沿って構造的に連結することで、断面形状に変化がついた連続中空構造体が作製される、板金から成形した閉断面中空体。
【請求項7】
前記上側板金打抜部品及び前記下側板金打抜部品は、車両用サスペンションアームとして機能するように有効に構成される、請求項6に記載の閉断面中空体。
【請求項8】
前記上側板金打抜部品及び前記上側板金打抜部品は、車両用モーター区画レールとして機能するように有効に構成される、請求項6に記載の閉断面中空体。
【請求項9】
前記上側板金打抜部品及び前記下側板金打抜部品は、車両用サスペンションサブフレームビームとして機能するように有効に構成される、請求項6に記載の閉断面中空体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−514187(P2013−514187A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543985(P2012−543985)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際出願番号】PCT/IB2010/055898
【国際公開番号】WO2011/073949
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(512088730)マルチマティック パテントコ エルエルシー (2)
【Fターム(参考)】