説明

窒化物半導体発光ダイオード

【課題】実装が容易で、演色性に優れた低コストの窒化物半導体発光ダイオードであって、放射角による色合変化の少ない窒化物半導体発光ダイオードを提供する。
【解決手段】窒化物半導体発光ダイオードにおいて、Al及びNがドーピングされた6H型SiC単結晶蛍光体からなるSiC層と、発光波長が408nm以下である窒化物半導体層と、を備え、前記SiC層は、前記窒化物半導体層からの1次光により励起され、可視領域の2次光を発するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子線、X線、紫外線または青色−紫色の可視光線などの電磁波により励起して、発光するSiC製蛍光体およびその製造方法、ならびにかかる蛍光体からなる半導体用の基板および粉末に関する。また、本発明は、新しい固体照明デバイスとして今後の普及が期待されているIII族窒化物半導体を備える発光ダイオードに関する。
【背景技術】
【0002】
希ガス放電によって放射される真空紫外線を用いて、蛍光体を励起して、発光させるPDPパネルの開発が盛んに行なわれている。PDPパネルは、マトリックス状に配置した多数の表示セルにより形成され、各表示セルには放電電極が設けられている。また、その内部には、蛍光体が塗布され、He−XeまたはNe−Xeなどの希ガスを封入している。放電電極に電圧を印加すると、真空紫外線が放射され、これにより蛍光体が励起し、可視光線を発光する仕組みである。
【0003】
蛍光ランプの場合は、水銀とアルゴンガスの混合ガスを封入した放電管において放電を開始すると、放電空間にある電子が電界により加速され、陽極に向かって漂行する。この間に蛍光ランプ管内の水銀原子を電子が励起し、励起された水銀原子から放出される波長253.7nmの紫外線により可視光を発光する。
【0004】
紫外線により励起して発光する蛍光体(以下、「紫外線励起蛍光体」という。)は、PDPのほか、蛍光ランプ、高圧水銀灯、屋内外で使用される蛍光性壁材および蛍光性タイルなどによる装飾などに幅広く実用化されている。蛍光性の壁材またはタイルなどは、紫外線の中でも、特に365nm程度の長波長の紫外線で励起され、様々な色に明るく発光する。
【0005】
また、半導体から発光した光により励起するデバイスが知られている。このデバイスでは、半導体からの光はできるだけ長波長である方が、半導体への負荷が軽減される。したがって、励起光の波長は、360nm以上が好ましく、380nm以上がより好ましく、400nm以上が特に好ましい。
【0006】
従来、長波長の紫外線により励起される蛍光体としては、青色発光のEu賦活アルカリ土類ハロ燐酸塩蛍光体、Eu賦活アルカリ土類アルミン酸塩蛍光体、Eu賦活LnO蛍光体などがある。また、緑色発光のZnGeO:Mn蛍光体などがあり、黄色発光のYAG:Ce(セリウム添加イットリウム・アルミニウム・ガーネット)蛍光体、さらに赤色発光のYS:Eu蛍光体、YVO:Eu蛍光体などが実用化されている。
【0007】
しかし、表示の多様化および高機能化に伴い、発光色の多色化および高輝度化ならびに耐久性の向上および耐候性の向上が求められている。さらに、ZnSe、ZnOなどのII−VI族半導体を用いた蛍光体の研究が盛んに行なわれている(特許文献1参照)。
【0008】
一方、SiCを母材として、Yb、Erなどの希土類元素を添加し、希土類元素自身の励起により、900nm以上の赤外光を発光する蛍光体が知られている(特許文献2参照)。この蛍光体は、母材はSiCであるが、原理的には、希土類元素の発光を中心とするものであり、酸化物を母材とする希土類元素の添加による発光と同じ機構を用いるものである。SiC結晶は、SiC単結晶を種結晶として昇華再結晶を行なう改良型レーリ法により作製することができる(非特許文献1参照)。
【0009】
近年、窒化物半導体の結晶成長方法が急速に進展し、窒化物半導体を用いた高輝度の青色および緑色の発光ダイオードが実用化されている。従来から存在した赤色発光ダイオードと、これらの青色および緑色発光ダイオードを組み合わせることにより、光の3原色が全て揃い、フルカラーのディスプレイ装置も実現可能である。すなわち、光の3原色全てを混合させると、白色の光を得ることもできるようになり、白色照明用デバイスへの応用も可能である。
【0010】
発光ダイオードを用いた白色光源として、いくつかの構成が提案され、一部は実用化されている。図9に、発光ダイオードを用いた白色光源の例を示す。この白色光源は、図9に示すように、赤色発光ダイオード911と、緑色発光ダイオード912と、青色発光ダイオード913の3原色の発光ダイオードを、導電性ヒートシンク902の金属層903上に形成し、エポキシ樹脂908により、ステム905上に固定してある。
【0011】
この白色光源では、各々の発光ダイオードに接続するリード線を個別の端子に接続し、各々に流す電流を独立に制御することで、白色のみならず、フルカラーを表示することが可能であり、エネルギ変換効率も高い。その反面、デバイスや駆動回路が複雑で、コストも高くなってしまうので、単なる照明用デバイスとしては不向きである。
【0012】
発光ダイオードを用いた白色光源の他の例を、図10に示す。この白色光源は、図10に示すように、青色発光ダイオード101を、導電性ヒートシンク102の金属層103上に形成し、青色発光ダイオード101の上に、YAG系材料からなる黄色蛍光体層104を形成し、エポキシ樹脂108により、ステム105上に固定してある。
【0013】
この白色光源では、青色発光ダイオード101から放出されるピーク波長約450nmの光の一部が、YAG系黄色蛍光体層104で吸収され、波長570nm付近の黄色の蛍光に変換される。このため、素子外部には、YAG系黄色蛍光体層104を透過した青色光と、YAG系黄色蛍光体層104の発光する黄色光の両方が放出される。黄色は青色に対して補色の関係にあるため、黄色と青色の2種類の光が混合されて、白色光が得られる。
【0014】
図10に示す白色光源は、単一の発光ダイオード101により構成されているため、比較的低コストで作製できる。また、現在最も高い発光効率が実現され、研究レベルでは、輝度効率701m/W程度のものが実現されており、既存の蛍光灯とほぼ同等である。
【特許文献1】特開2001−228809号公報
【特許文献2】特開平10−270807号公報
【非特許文献1】Y. M. Tairov and V. F. Tsvctkov, Journal of Crystal Growth, (1981) vol. 52 pp. 146−150
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
長波長の光源により励起し、酸化物を母材とする従来の蛍光体は、励起する光が長波長になるほど、蛍光の発光効率が悪くなり、特に、赤色の発光効率が悪い。酸化物は、一般にバンドギャップが非常に広いため、長波長の光源により励起させる場合に、酸化物自体の励起を利用することはできない。そこで、希土類元素自体の励起を利用することになるが、希土類元素を添加した素材を長波長で励起した場合の蛍光の発光効率は非常に低く、発光効率が向上しない。
【0016】
II−VI族半導体を用いた蛍光体は、混晶または固溶体を作りやすいので、バンドエンジニアリングなどの手法を用いることもでき、発光効率も非常に高い。しかし、II族もVI族も電気陰性度が高いため、II−VI族半導体結晶のイオン結合性が高くなり、経時変化を起こしやすい。
【0017】
SiCに希土類元素を添加して、希土類元素の励起により赤外光の発光を利用する方法は、SiCの格子定数が非常に小さいのに対して、希土類元素は原子半径が大きいため、希土類元素の添加により、SiCの結晶性が著しく悪化する。したがって、希土類元素の添加量が制限されて、発光強度を大きくすることができない。
【0018】
また、SiCに、NとBを同時に添加し、Nをドナーとし、Bをアクセプタとして機能させるドナー・アクセプタ(donor acceptor)(以下、「DA]という。)ペアによる発光は、波長650nm付近にピークを持つが、発光強度が極めて小さいため、蛍光体として利用することはできない。
【0019】
一方、発光ダイオードを用いた白色光源については、たとえば図9に示す例では、駆動回路およびデバイスが複雑であるため、実装が難しく、歩留まりが低い点、および光の放射角度により、色むらが生じるという様々な解決すべき課題がある。
【0020】
また、図10に示す例では、青色発光ダイオード101から放出される青色光の一部が、黄色蛍光体層104を励起することによって黄色光に変換され、青色と黄色がともに外部に放出されることによって白色光を得ている。この場合、青色光と黄色光の強度比を適切に設定しないと、色合いが変化する。したがって、青色発光ダイオード101上に形成される黄色蛍光体層104の膜厚および蛍光体濃度を適切かつ均一に調整する必要がある。このため、黄色蛍光体粉沫を樹脂製のバインダ中に均一に混入し、均一な膜厚で塗布する技術が必要となる。
【0021】
また、蛍光体層104が均一であっても、青色発光ダイオード101から放出された光は、放出角度により蛍光体層を通過する行路長が異なる。このため、放出角度により白色の色合いの変化が避けられない。さらに、図10に示すような青色発光ダイオード101と黄色蛍光体層104との組み合わせでは、赤色成分が極めて少ないため、照明光源として重要である演色性が劣り、赤色の再現性が低いという課題もある。
【0022】
本発明の課題は、紫外領域または青色−紫色の可視領域の長波長光源によって励起し、主として、紫色−青色−黄色−赤色の可視領域で発光する蛍光体を提供することにある。また、水銀放電管、高圧水銀灯、LED(laser emitting diode)などの光源からの一次光、PDPパネルの放電による真空紫外線または電子線などにより、特性のよい蛍光を効率よく発する蛍光体を提供することにある。
【0023】
また、本発明のさらなる課題は、実装が容易で、演色性に優れた低コストの発光ダイオードを提供することにある。さらに、放射角による色合変化の少ない発光ダイオードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明のSiC製蛍光体は、外部光源により励起して発光し、BまたはAlのうちいずれか1種類以上の元素と、Nとによりドーピングされたことを特徴とする。かかる蛍光体においては、BまたはAlのうちいずれか1種類以上の元素によるドーピング濃度と、Nによるドーピング濃度がいずれも、1015/cm〜1020/cmである態様が好ましく、1016/cm〜1020/cmである態様がより好ましい。
【0025】
本発明のSiC製蛍光体には、波長500nm〜750nmの蛍光を発し、500nm〜650nmにピーク波長を有するものが含まれる。かかるSiCは、NおよびBによりドーピングされ、NまたはBのうちいずれか一方の濃度が1015/cm〜1018/cmであり、他方の濃度が1016/cm〜1019/cmであるものが好ましい。
【0026】
また、本発明のSiC製蛍光体には、波長400nm〜750nmの蛍光を発し、400nm〜550nmにピーク波長を有するものが含まれる。かかるSiCは、NおよびAlによりドーピングされ、NまたはAlのうちいずれか一方の濃度が1015/cm〜1018/cmであり、他方の濃度が1016/cm〜1019/cmであるものが好ましい。
【0027】
本発明のSiC製蛍光体の製造方法は、外部光源により励起して、波長500nm〜750nmの蛍光を発し、500nm〜650nmにピーク波長を有し、NおよびBによりドーピングされ、NまたはBのうちいずれか一方の濃度が1015/cm〜1018/cmであり、他方の濃度が1016/cm〜1019/cmであるSiC製蛍光体の製造方法であって、
第1の局面によれば、LaB、BC、TaB、NbB、ZrB、HfB、BN、または、Bを含有した炭素をB源とし、昇華再結晶法によりSiC結晶を形成することを特徴とする。
【0028】
また、第2の局面によれば、B単体、LaB、BC、TaB、NbB、ZrB、HfBまたはBNをB源とし、真空下または不活性ガス雰囲気下において、1500℃以上で、SiCに熱拡散することを特徴とする。
【0029】
本発明の半導体用基板は、外部光源により励起して発光する蛍光体であって、BまたはAlのうちいずれか1種類以上の元素と、Nとによりドーピングされた6H型SiC単結晶蛍光体からなることを特徴とする。かかる半導体基板には、NおよびBによりドーピングされ、波長500nm〜750nmの蛍光を発し、500nm〜650nmにピーク波長を有する6H型SiC単結晶蛍光体からなるものが含まれる。さらに、NおよびAlによりドーピングされ、波長400nm〜750nmの蛍光を発し、400nm〜550nmにピーク波長を有する6H型SiC単結晶蛍光体からなる半導体基板が含まれる。
【0030】
本発明の半導体用基板の製造方法は、外部光源により励起して、波長500nm〜750nmの蛍光を発し、500nm〜650nmにピーク波長を有し、NおよびBによりドーピングされ、NまたはBのうちいずれか一方の濃度が1015/cm〜1018/cmであり、他方の濃度が1016/cm〜1019/cmである6H型SiC単結晶蛍光体からなる基板の製造方法であって、
第1の局面によれば、B単体、LaB、BC、TaB、NbB、ZrB、HfBまたはBNをB源とし、真空下または不活性ガス雰囲気下において、1500℃以上で、SiCに熱拡散する工程と、表面層を除去する工程とを備えることを特徴とする。
【0031】
また、第2の局面によれば、結晶成長時の雰囲気ガスが、ガス分圧で1%〜30%のNガスを含み、原料SiCが、0.05mol%〜15mol%のB源を含むことを特徴とする昇華再結晶法によりSiC結晶を形成する。
【0032】
本発明の半導体用粉末は、外部光源により励起して、波長500nm〜750nmの蛍光を発し、500nm〜650nmにピーク波長を有する6H型SiC単結晶蛍光体からなり、粒径が2μm〜10μmであり、中心粒径が3μm〜6μmであることを特徴とする。
【0033】
本発明の発光ダイオードは、第1の局面によれば、BまたはAlのうちいずれか1種類以上の元素と、Nとによりドーピングされた6H型SiC単結晶蛍光体からなる半導体用基板と、基板上に窒化物半導体からなる発光素子を備えることを特徴とする。
【0034】
また、第2の局面によれば、BまたはAlのうちいずれか1種類以上の元素と、Nとによりドーピングされた6H型SiC単結晶蛍光体からなる1または2以上の層を、SiC製の半導体用基板上に有し、6H型SiC単結晶蛍光体層上に、窒化物半導体からなる発光素子を備えることを特徴とする。かかる発光ダイオードにおいては、窒化物半導体からなる発光素子の発光波長が、408nm以下であるものが好適である。
【0035】
かかる発光ダイオードでは、6H型SiC単結晶蛍光体における、BまたはAlのうちいずれか1種類以上の元素によるドーピング濃度と、Nによるドーピング濃度がいずれも、1016/cm〜1019/cmであるものが好ましく、1017/cm〜1019/cmであるものがより好ましい。
【0036】
また、本発明の窒化物半導体発光ダイオードは、Al及びNがドーピングされた6H型SiC単結晶からなるSiC層と、発光波長が408nm以下である窒化物半導体層と、を備え、前記SiC層は、前記窒化物半導体層からの1次光により励起され、可視領域の2次光を発する。
【0037】
上記窒化物半導体発光ダイオードにおいて、SiC層は、B、Al及びNがドーピングされた6H型SiC単結晶からなっていてもよい。
【0038】
また、本発明の窒化物半導体発光ダイオードは、Al及びNがドーピングされた6H型SiC単結晶からなる半導体用基板と、前記半導体用基板上に形成され、発光波長が408nm以下である窒化物半導体層と、を備え、前記半導体用基板は、前記窒化物半導体層からの1次光により励起され、可視領域の2次光を発する。
【0039】
上記窒化物半導体発光ダイオードにおいて、前記半導体用基板は、B、Al及びNがドーピングされた6H型SiC単結晶からなっていてもよい。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、SiC内の不純物濃度を制御することができ、紫外領域または青色−紫色の可視領域の長波長光または電子線などによって励起して、紫色−青色−黄色−赤色の可視領域で効率よく発光する蛍光体を提供することができる。
【0041】
また、本発明によれば、演色性の調整が容易であり、また1つの発光ダイオードからなるため、実装が簡単な白色光源を低コストで提供することができる。この白色光源は、内部で白色光を作っているため、放射角による色合いの変化が無視できるほど小さく、発光効率に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
(SiC製蛍光体)
本発明のSiC製蛍光体は、BまたはAlのうちいずれか1種類以上の元素と、Nとによりドーピングされていることを特徴とする。かかる。SiC製蛍光体は、紫外領域または青色−紫色の可視領域の長波長光源または電子線などの外部光源によって励起し、主として、紫色−青色−黄色−赤色の可視領域で発光する。
【0043】
たとえば、BおよびNによりドーピングされたSiC製蛍光体は、外部光源により励起して、波長500nm〜750nmの蛍光を発し、500nm〜650nmにピーク波長を有する。また、AlおよびNによりドーピングされたSiC製蛍光体は、波長400nm〜750nmの蛍光を発し、400nm〜550nmにピーク波長を有する。さらに、Al、BおよびNによりドーピングされたSiC製蛍光体は、400nm〜750nmの蛍光を発し、400nm〜650nmにピーク波長を有する。
【0044】
蛍光の発光効率を高めるためには、SiCのバンド端から緩和される電子−正孔対を受け入れるのに十分な不純物準位の状態密度が必要である。この点で、BまたはAlのうちいずれか1種類以上の元素による不純物濃度と、Nによる不純物濃度がいずれも、1015/cm以上である態様が好ましく、1016/cm以上である態様がより好ましく、1018/cm以上であると特に好ましい。一方、不純物濃度が高すぎる場合には蛍光の発光効率が落ちる傾向にあるため、1020/cm以下が好ましい。
【0045】
また、NおよびBによりドーピングする場合は、NまたはBのうちいずれか一方の濃度が1015/cm〜1018/cmであり、他方の濃度が1016/cm〜1019/cmである態様が好ましい。一方、NおよびAlによりドーピングする場合も、NまたはAlのうちいずれか一方の濃度が1015/cm〜1018/cmであり、他方の濃度が1016/cm〜1019/cmである態様が好ましい。本明細書において、発光は、波長404.7nmの光線(紫色)を入射したときの発光を、堀場製作所製PHOTOLUMINOR−Sにより測定した数値で表す。また、N、AlまたはBの濃度は、SIMS(二次イオン質量分析装置)により測定した数値で表す。
【0046】
本発明において利用することのできる外部光源は、青色−紫色などの可視光線、紫外線、X線または電子線を放射する光源であるが、特に、波長100nm〜500nmである青色−紫色などの可視光線および紫外線が、発光強度の大きい蛍光を発する傾向があるので好ましい。SiC半導体は、3eV程度の広い禁制帯幅を持ち、不純物の添加により、バンド中に様々な順位を作ることができる。特に、6H型のSiCではバンド端の波長が408nmであり、SiCのバンドギャップを利用すれば、このバンド端の波長より短い波長により励起することが可能であり、比較的長波長の光を励起源として利用することができる。
【0047】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、6H型のポリタイプSiC結晶に、アクセプタとなるBを十分に活性化した条件で、Nをドナーとしてドーピングし、DAペアの濃度が1015/cm〜1018/cmであるときに、発光強度が十分に高くなることを見出した。DAペアの濃度は、発光強度が向上する点で、下限は、5×1015/cm以上がより好ましく、1016/cm以上が特に好ましく、2×1016/cm以上がさらに好ましい。一方、上限は、同様に発光強度を高める点で、8×1017/cm以下がより好ましい。
【0048】
DAペアの濃度が、このような範囲にあれば、BまたはNのうちいずれか一方の濃度は、良好な発光が得られる点で、下限は、1016/cm以上がより好ましく、5×1016/cm以上が特に好ましい。一方、上限は、同様に良好な発光が得られる点で、1019/cm以下がより好ましく、5×1018/cm以下が特に好ましい。
【0049】
BおよびNの濃度がかかる範囲内にあるSiC製蛍光体の発光は、図3に例示するように、ブロードなスペクトルを示し、赤色−黄色の良好な蛍光を発する。すなわち、本発明のSiC製蛍光体は、波長500nm〜750nmの蛍光を発し、波長550nm〜680nmにおいて発光強度が大きい。また、500nm〜650nmにピーク波長を有し、570nm〜630nmにピーク波長を有するものが好ましい。発光波長とその相対強度は、SiC内のBとNのドーピング濃度により異なる。
【0050】
また、本発明者らは、同様に、AlとNのDAペアについても、発光強度が強くなる濃度条件を見出した。すなわち、6H型のポリタイプSiC結晶に、アクセプタとなるAlを十分に活性化した条件で、Nをドナーとしてドーピングし、DAペアの濃度が1015/cm〜1018/cmであるときに、発光強度が十分に高くなることを見出した。DAペアの濃度は、発光強度が向上する点で、下限は、5×1015/cm以上がより好ましく、1016/cm以上が特に好ましく、2×1016/cm以上がさらに好ましい。一方、上限は、同様に発光強度を高める点で、8×1017/cm以下がより好ましい。
【0051】
DAペアの濃度が、このような範囲にあれば、AlまたはNのうちいずれか一方の濃度は、良好な発光が得られる点で、下限は、1016/cm以上がより好ましく、5×1016/cm以上が特に好ましい。一方、上限は、同様に良好な発光が得られる点で、1019/cm以下がより好ましく、5×1018/cm以下が特に好ましい。
【0052】
AlおよびNの濃度がかかる範囲内にあるSiC製蛍光体の発光は、図6に例示するように、ブロードなスペクトルを示し、青色のブロードな蛍光を発する。すなわち、本発明のSiC製蛍光体は、波長400nm〜750nmの蛍光を発し、波長400nm〜550nmにおいて発光強度が大きい。また、400nm〜550nmにピーク波長を有し、410nm〜470nmにピーク波長を有するものが好ましい。発光波長とその相対強度は、SiC内のAlとNのドーピング濃度により異なる。
【0053】
(SiC製蛍光体の製造方法)
本発明のSiC製蛍光体の製造方法は、LaB、BC、TaB、NbB、ZrB、HfB、BN、または、Bを含有した炭素をB源とし、昇華再結晶法によりSiC結晶を形成することを特徴とする。かかる方法により、SiCをNおよびBによりドーピングし、NまたはBのうちいずれか一方の濃度が1015/cm〜1018/cmであり、他方の濃度が1016/cm〜1019/cmとなるようにドーピング濃度を調整することでき、外部光源により励起して、波長500nm〜750nmの蛍光を発し、500nm〜650nmにピーク波長を有するSiC製蛍光体を製造することができる。
【0054】
かかる濃度調整は、SiCの結晶成長中にNおよびBを積極的に添加することにより達成することができる。SiC結晶は、改良型のレーリ法により作製することができるが、この方法は、種結晶を用いるため、結晶の核形成過程を制御することができ、また不活性ガスにより雰囲気を100Pa〜15kPa程度に制御して、結晶の成長速度などを再現性よくコントロールすることができる。
【0055】
改良型レーリ法は、図2に示すように、まず、種結晶21となるSiC単結晶を坩堝23の蓋24に取り付け、昇華再結晶の原料22であるSiC結晶粉末を、黒鉛製坩堝23に加え、Arなどの不活性ガスの雰囲気中、133Pa〜13.3kPa、2000℃〜2400℃に加熱する。加熱に際しては、図2の矢印に示すように、原料22であるSiC結晶性粉末を少し高温(H)とし、種結晶21が少し低温(L)になるように温度勾配が設定される。原料22は、昇華後、温度勾配に基づき形成される濃度勾配により、種結晶21の方向に拡散し、輸送される。SiC単結晶20の成長は、種結晶21に到着した原料ガスが種結晶上に再結晶することにより実現される。
【0056】
SiC結晶のドーピング濃度は、結晶成長時の雰囲気ガス中への不純物ガスの添加および原料粉末への不純物元素またはその化合物の添加により制御することができる。特に、Nガスを添加して昇華再結晶すると、5×1018/cm以上のN濃度の制御が容易である点で好ましい。また、1×1018/cm以下のDAペアの濃度制御を安定化し、再現性を高め、発光強度を向上させる点で、Nを積極的に添加するように設定するとともに、Bを安定して結晶中に添加するように条件を設定するのが好ましい。
【0057】
たとえば、結晶成長時の雰囲気ガスにおけるNガスの分圧を1%〜30%とすることにより、N濃度が1015/cm〜1018/cmであるSiC製蛍光体を製造することができる。この場合、蛍光の発光強度を高める点では、Nガスの分圧は5%〜10%が好ましい。
【0058】
Bの添加は、B単体(金属ホウ素)を原料に混合する方法があるが、この方法は、結晶化の初期にB濃度が高く、結晶化の後半ではB濃度が低下し、B濃度が安定しないという欠点がある。このため、Mを、Ta、Nb、ZrまたはHfのいずれか少なくとも1つを含む金属として、MBにより表記されるB化合物として添加すると、B濃度が結晶成長中に変化することが少なくすることができるので好ましい。また、LaBまたはBCとして添加しても同様にB濃度の変化を抑えることができるので好ましい。かかる方法により、容易に、1017/cm〜1018/cm台の濃度のBを安定して添加することができる。
【0059】
炭素は、B単体(金属ホウ素)を容易に含浸し、2000℃以上の昇華再結晶温度においても、Bを徐々に放出する特徴を有するため、B単体を含有した炭素をB源として用い、昇華再結晶する方法は、Bを添加したSiC結晶を形成する方法として優れている。前もって、1500℃以上の高温でB単体を含浸させた炭素を、原料に添加しておくことにより、結晶中のB濃度の変化をほとんどなくすことができ有利である。
【0060】
SiCの原料中に、粉末状または固形状のBNを添加し、2000℃程度の比較的低温に保って昇華再結晶することにより、Nガスを添加することなく、NとBの双方を同時にSiC内に添加することができる。この場合、Bの添加量が相対的に低下する傾向があるため、上述のいずれかの方法を併用し、Bを積極的に添加するのが好ましい。BNを用いる昇華再結晶法により、DAのペア濃度が1×1018/cm〜8×1018/cmであるSiC製蛍光体を安定して得ることができる。
【0061】
昇華再結晶後、1300℃以上で1時間以上の熱アニール処理を施すと、蛍光の発光強度を強めることができる点で好ましい。熱処理により、エネルギ的に不活性な態様で混入していたBおよびNが、SiまたはCの位置に定着して、活性化する結果、DAペアの濃度が高められることによるものであると考察する。
【0062】
B源の配合量は、B源の種類など他の条件によっても異なるが、SiC粉末に対して0.05mol%〜15mol%となるように混合したものを原料とすることにより、1016/cm〜1019/cmの濃度のBを容易に安定してSiC結晶中に添加することができる。この場合、B源として、MB、BNまたはLaBなど、B単体(金属ホウ素)以外を配合するときは、B源中に含まれるBについての換算量を配合量とする。B源の配合量は、蛍光の発光強度を高める点で、SiC粉末に対して2.5mol%〜5mol%が好ましい。
【0063】
本発明のSiC製蛍光体の他の製造方法は、B単体、LaB、BC、TaB、NbB、ZrB、HfBまたはBNをB源とし、真空下または不活性ガス雰囲気下において、1500℃以上で、SiCに熱拡散することを特徴とする。かかる方法により、SiCをNおよびBによりドーピングし、NまたはBのうちいずれか一方の濃度が1015/cm〜1018/cmであり、他方の濃度が1016/cm〜1019/cmとなるようにドーピング濃度を調整することでき、外部光源により励起して発光し、波長500nm〜750nmの蛍光を発し、500nm〜650nmにピーク波長を有するSiC製蛍光体を製造することができる。
【0064】
BとNの濃度調整は、熱拡散の条件を制御することによっても達成することができる。熱拡散を施すSiCは、たとえば、昇華再結晶法により、Nを1017/cm程度ドーピングしたものを用いることができる。また、熱拡散に際して、B源をSiC結晶に直接接触させると、B源とSiC結晶とが反応し、SiC結晶が侵食される場合があるため、B源はSiC結晶から0.1mm程度離隔して熱拡散する態様が好ましい。
【0065】
熱拡散においては、Arガスなどの不活性ガスを使用することができ、1500℃以上、好ましくは1700℃〜2000℃に加熱し、3時間〜5時間保持することにより、SiC結晶の表面に厚さ3μm程度のBによる拡散層が形成される。これに、たとえば、出力30W、波長250nmの紫外線を照射すると、肉眼で確認できる蛍光を発する。
【0066】
熱拡散の条件によっては、SiC結晶の表面に、Bが1019/cm以上の高濃度に存在する拡散層が形成される場合がある。強い蛍光を発する領域は、SiC結晶の表面から2μm〜4μmであるから、表面の高濃度B層を厚さ2μm程度除去し、発光強度を高めるのが好ましい。たとえば、熱拡散後、酸性雰囲気下において、1000℃以上、好ましくは1200℃〜1400℃で、2時間〜4時間加熱し、酸化膜を形成し、つぎに、たとえば、フッ酸などにより化学処理して、酸化膜の表面を除去するのが好ましい。表面層の除去は、そのほか、研磨により、または反応性イオンエッチング(RIE)によっても、好ましく実施することができる。さらに、昇華再結晶の場合と同様に、熱拡散後、1300℃以上で1時間以上の熱アニール処理を施すと、蛍光の発光強度を強めることができる点で好ましい。
【0067】
以上の実施形態は、Nの濃度が1015/cm〜1018/cmであり、Bの濃度が1016/cm〜1019/cmであるSiC製蛍光体の製造方法を例示するものである。しかし、本発明は、BとNのペア濃度が1015/cm〜1018/cmであり、BまたはNのうちいずれか一方の濃度が1016/cm〜1019/cmであるSiC製蛍光体において顕著な効果を奏するから、Nの濃度が1016/cm〜1019/cmであり、Bの濃度が1015/cm〜1018/cmであるSiC製蛍光体およびその製造方法も本発明に含まれる。
【0068】
(半導体用基板および粉末)
本発明の半導体用基板および粉末は、外部光源により励起して発光する蛍光体であって、BまたはAlのうちいずれか1種類以上の元素と、Nとによりドーピングされた6H型SiC単結晶蛍光体からなることを特徴とする。
【0069】
たとえば、BおよびNによりドーピングされた6H型SiC単結晶蛍光体からなる半導体基板および粉末は、外部光源により励起して、波長500nm〜750nmの蛍光を発し、500nm〜650nmにピーク波長を有する。また、AlおよびNによりドーピングされた6H型SiC単結晶蛍光体からなる半導体基板および粉末は、波長400nm〜750nmの蛍光を発し、400nm〜550nmにピーク波長を有する。さらに、Al、BおよびNによりドーピングされた6H型SiC単結晶蛍光体からなる半導体基板および粉末は、400nm〜750nmの蛍光を発し、400nm〜650nmにピーク波長を有する。
【0070】
青色−紫外光の領域で発光するGaN系化合物半導体などの半導体に使用する基板または粉末などに、本発明のSiC製蛍光体を用いると、得られる発光デバイスは、半導体からの青色−紫外光の1次光により、6H型SiC単結晶蛍光体が励起して、紫色−青色−黄色−赤色の可視領域の2次光を発するため、半導体からの直接光とSiC製蛍光体からの2次光との混合光、または2次光の混合光により、優れた白色光を得ることができる。
【0071】
BおよびNによりドーピングされた6H型SiC単結晶蛍光体からなる半導体基板および粉末は、B単体、LaB、BC、TaB、NbB、ZrB、HfBまたはBNをB源とし、真空下または不活性ガス雰囲気下において、1500℃以上で、SiCに熱拡散する工程と、表面層を除去する工程とを備える方法により製造することができる。表面層の除去は、前述したように、1000℃以上の酸化性雰囲気下で酸化膜を形成し、形成した酸化膜の表面をフッ酸などにより除去する方法、または研磨により除去する方法、または反応性イオンエッチングにより除去する方法が好ましい。
【0072】
BおよびNによりドーピングされた6H型SiC単結晶蛍光体からなる半導体基板および粉末は、結晶成長時の雰囲気ガスが、ガス分圧で1%〜30%のNガスを含み、原料SiCが0.05mol%〜15mol%のB源を含むことを特徴とする昇華再結晶法によっても製造することができる。かかる態様においては、昇華再結晶後または熱拡散後、1300℃以上で熱アニール処理を施すことが好ましい。
【0073】
Nが1016/cm〜1017/cmの濃度で含有するSiC粉末に、MB、BN、BCまたはLaBなどをB源として炭素製のカプセルに封入して混入し、炭素製坩堝内で、真空下、1300℃〜2000℃に加熱し、3時間〜5時間保持する。得られるSiC粉末は、表面にBが高濃度で存在するため、SiC粉末を酸化性雰囲気下で、1000℃〜1400℃に、2時間〜4時間保持し、その後、たとえばフッ酸などにより化学処理し、表面の酸化膜を除去すると、強い蛍光を観察することができる。
【0074】
B源としてBNを使用するときは、炭素製坩堝の代わりに、BN製坩堝を使用し、BN製坩堝の中に原料SiC粉末を入れ、加熱焼成することによっても、所定のドーピングが可能である。原料のSiC粉末は、純度98%以上であれば、製造方法は限定されず、必ずしも単結晶SiCを使用する必要はない。
【0075】
また、かかる拡散条件では、良好な蛍光を発する層は、表面から1μm〜4μmであるため、SiC粉末の粒径の下限は2μmであり、2.5μm以上が好ましい。また、良好な蛍光を発する層は、表面から1μm〜4μmであり、表面から4μmより深部は、発光強度を弱めるため、SiC粉末の粒径の上限は10μmであり、8μm以下が好ましい。同様の理由により、中心粒径は、3μm〜6μmが好ましく、4μm〜5μmがより好ましい。
【0076】
(発光ダイオード)
本発明の発光ダイオードは、BまたはAlのうちいずれか1種類以上の元素と、Nとによりドーピングされた6H型SiC単結晶蛍光体からなる半導体用基板と、基板上に窒化物半導体からなる発光素子を備えることを特徴とする。
【0077】
SiC製基板上の窒化物半導体が発する青色光−紫外光を励起光として利用してSiC製基板が蛍光を発し、窒化物半導体からの光と混合して、固体白色光源を実現することができる。また、困難な実装技術を必要とせず、白色光の色温度再現性も高く、演色性に優れる光源を提供することが可能となる。
【0078】
たとえば、BおよびNによりドーピングされた6H型SiC単結晶蛍光体からなる基板上に、波長400nm程度の紫色光を発光するGaN系半導体を有する発光ダイオードは、GaN系半導体からの紫色光を励起光源としてSiC基板が黄色の蛍光を発するから、SiCからの黄色の蛍光と、GaN系半導体からの紫色光を利用することにより、再現性が高く、演色性の良好な白色光を得ることができる。
【0079】
また、BまたはAlのうちいずれか1種類以上の元素と、Nとによりドーピングされた6H型SiC単結晶蛍光体からなる1または2以上の層を、SiCからなる半導体用基板上に有し、6H型SiC単結晶蛍光体層上に、窒化物半導体からなる発光素子を備える態様の発光ダイオードは、窒化物半導体による青色光または紫色光を励起光として、SiC基板上の1または2以上の蛍光体層が、添加された不純物に応じて蛍光を発するから、これらの蛍光を混合することにより、または窒化物半導体からの光と蛍光を混合することにより、優れた固体白色光源を提供することができる。
【0080】
たとえば、Nによりドーピングしたn−SiC基板上に、AlおよびNをドーピングした第1のSiC層を形成し、第1のSiC層上に、BおよびNをドーピングした第2のSiC層を形成し、第2のSiC上に、波長400nm程度の紫色光を発光するGaN系半導体を有する発光ダイオードは、GaN系半導体からの紫色光を励起光源として、第2のSiC層が黄色の蛍光を発し、第1のSiC層が青色の蛍光を発するから、SiC層からの黄色と青色の蛍光を利用することにより、再現性が高く、演色性の良好な白色光を得ることができる。
【0081】
SiC半導体基板として、6H型単結晶を用い、B、AlおよびNでドーピングすることにより、SiC基板を本発明の蛍光体として利用し、白色光を得ることができる。一方、SiC基板を、蛍光体として利用せず、基板上に形成するSiC蛍光体層および窒化物半導体層を利用して、良好な白色光を得ることができる。本発明の発光ダイオードにおける6H型SiC単結晶蛍光体の、BまたはAlのうちいずれか1種類以上の元素によるドーピング濃度と、Nによるドーピング濃度は、発光効率を高める点で、いずれの濃度も、1016/cm〜1019/cmが好ましく、1017/cm〜1019/cmがより好ましい。
【0082】
本発明の発光ダイオードの典型的な構造の1つを図4に例示する。この例では、SiC基板401上に、AlおよびNを添加した第1の不純物添加SiC層402、BおよびNを添加した第2の不純物添加SiC層403を、たとえばCVD法によってエピタキシャル成長させる。さらに、SiC層403上に、たとえば、有機金属化合物気相成長法によってエピタキシャル成長させ、AlGaNバッファ層404、n−GaN第1コンタクト層405、n−AlGaN第1クラッド層406、GaInN/GaN多重量子井戸活性層407、p−AlGaN電子ブロック層408、p−AlGaN第2クラッド層409、p−GaN第2コンタクト層410を形成する。つぎに、p−GaN第2コンタクト層410上に、Ni/Auからなるp電極411を形成した後、図4に示すように、n−GaN第1コンタクト層405が露出するまでエッチングし、n−GaN第1コンタクト層405上にn電極412を形成することにより、本発明の発光ダイオードが得られる。この例では、窒化物半導体からなる発光素子は、第2の不純物添加SiC層403上にある各層を指す。
【0083】
窒化物半導体からの励起光は、一旦SiCの吸収端において吸収され、電子−正孔対は不純物準位に緩和する。したがって、不純物をドーピングしたSiC層は、SiC基板401とAlGaNバッファ層404の間に配置する態様が好ましい。窒化物半導体は、GaNなどのIII族窒化物半導体などより適宜選択することができるが、励起波長となる発光素子における発光波長が、6H型SiCの吸収端波長である408nm以下の波長となるように半導体を選択するのが好ましい。
【0084】
Al、BおよびNを添加したSiC層は、エピタキシャル成長により形成することができるが、拡散によって形成することも可能である。たとえば、窒化物半導体をエピタキシャル成長させる前に、Nを添加したSiC基板にスパッタした炭素をマスクとして、局所的にBもしくはAlを拡散し、部分的に黄色部、青色部を分け、単一プロセスで演色性を制御できる複合ダイオードを得ることも可能である。また、2層以上の不純物添加層を形成する態様のほか、1層に同時にB、AlおよびNを添加しても同様の効果が得られる。
【0085】
実施例1
SiC製蛍光体を、図1に示すように、改良型レーリ法により作成した。まず、種結晶であるSiC単結晶からなる基板1を、黒鉛製るつぼ3の蓋4の内面に取り付けた。また、黒鉛製るつぼ3の内部には、原料2となる高純度のSiC粉末(JIS粒度#250)とB源を混合した後、充填した。
【0086】
つぎに、原料2を充填した黒鉛製るつぼ3を蓋4で閉じ、黒鉛製の支持棒6により、石英管5の内部に設置し、黒鉛製るつぼ3の周囲を黒鈴製の熱シールド7で被覆した。雰囲気ガスとして、ArガスとNガスを、流量計10を介して、導入管9により石英管5の内部へ流した(Arガスの流量1リットル/分)。つづいて、ワークコイル8に高周波電流を流し、原料2の温度が2300℃で、基板1の温度が2200℃になるように調節した。
【0087】
つづいて、ArガスとNガスの流量を調節するとともに、真空ポンプ11を用いて、石英管5の内部を減圧した。減圧は、大気圧から133Paまで20分かけて徐々に行ない、133Paで5時間保持することにより、直径55mm、厚さ10mmのSiC結晶を得た。
【0088】
結晶成長時の雰囲気ガスにおけるNガスの分圧は1%とした。また、B源として、5mol%のB単体(金属ホウ素)を含浸した炭素を用い、SiC粉末に対して、B単体が0.05mol%となるようにSiC粉末に混合し、原料粉末とした。
【0089】
得られたSiC結晶のBとNの濃度を、SIMSにより測定すると、Nは5×1017/cmであり、Bは3×1016/cmであった。また、得られたSiC単結晶から、直径55mm、厚さ0.3mmの結晶を切り出した後、片面を研磨加工を行ない、平坦面について蛍光を測定した。測定の結果、ピーク波長は620nmであり、波長500nm〜750nmの蛍光を発し、図3に示すようなブロードなスペクトルを呈した。
【0090】
つぎに、測定後の結晶を、1850℃で4時間保持し、熱アニール処理を施した結果、スペクトルの形状はほぼ同じであったが、発光の相対強度が、熱アニール処理前のものに比べて2倍以上に向上した。
【0091】
実施例2
結晶成長時の雰囲気ガスにおけるNガスの分圧を5%とし、B単体のSiC粉末に対する濃度を0.5mol%とした以外は、実施例1と同様にしてSiC結晶を製造した。得られたSiC結晶のNとBの濃度は、Nが3×1018/cmであり、Bが1×1017/cmであった。また、蛍光スペクトルの形状は実施例1と同様であったが、発光の相対強度は実施例1における熱アニール処理前の結晶に比べてほぼ3倍に向上した。
【0092】
実施例3
結晶成長時の雰囲気ガスにおけるNガスの分圧を10%とし、B単体のSiC粉末に対する濃度を5mol%とした以外は、実施例1と同様にしてSiC結晶を製造した。得られたSiC結晶のNとBの濃度は、Nが8×1018/cmであり、Bが5×1017/cmであった。また、蛍光スペクトルの形状は実施例1と同様であったが、発光の相対強度は実施例1における熱アニール処理前の結晶に比べてほぼ5倍に向上した。
【0093】
実施例4
結晶成長時の雰囲気ガスにおけるNガスの分圧を30%とし、B単体のSiC粉末に対する濃度を15mol%とした以外は、実施例1と同様にしてSiC結晶を製造した。得られたSiC結晶のNとBの濃度は、Nが1×1019/cmであり、Bが1×1018/cmであった。また、蛍光スペクトルの形状は実施例1と同様であったが、発光の相対強度は実施例1における熱アニール処理前の結晶に比べてほぼ1/10に低下した。
【0094】
実施例1〜4の結果より、結晶成長時の雰囲気ガスにおけるNガスの分圧を1%〜30%とし、B単体のSiC粉末に対する濃度を0.05mol%〜15mol%とすることにより、Nが5×1017/cm〜1×1019/cmであり、Bが3×1016/cm〜1×1018/cmであるSiC製蛍光体が得られ、かかる蛍光体は波長500nm〜750nmの蛍光を発し、500nm〜650nmにピーク波長を有することがわかった。
【0095】
実施例5
原料粉末にB源を配合しなかった以外は、実施例1と同様にして、改良型レーリ法により、直径55mm、厚さ10mmのSiC単結晶を得た。得られたSiC単結晶から、実施例1と同様に、直径55mm、厚さ0.3mmの結晶を切り出した後、片面を研磨加工した。つぎに、TaBをB源とし、SiC粉末に対して3mol%のTaBをSiC粉末に混合した後、治具に固定した。この治具に、研磨加工した前述のSiC結晶を取り付け、SiC結晶の平坦面とTaBとの間隔が0.1mmとなるように調製した。
【0096】
つづいて、この治具を、炭素製坩堝内に入れ、Arガスの雰囲気下で、1800℃に加熱し、4時間保持した。得られた結晶について蛍光を測定したところ、実施例1と同様に、ピーク波長が620nmであり、波長500nm〜750nmの蛍光を発し、図3に示すようなブロードなスペクトルを呈した。また、得られたSiC結晶のBとNの濃度を、SIMSにより測定すると、Nは5×1017/cmであり、Bは5×1016/cm〜8×1018/cmであった。
【0097】
さらに、1800℃で4時間熱アニール処理をしたところ、蛍光スペクトルの形状には変化がなかったが、発光の相対強度が2倍に向上した。つぎに、結晶の表面をRIEにより2μm削り落とすと、蛍光スペクトルの形状は同様で、削り落とす前に比べて発光の相対強度が1.5倍に向上した。
【0098】
実施例6
実施例5において得られたSiC単結晶を乳鉢で粉砕し、分級して、粒径2μm〜3μmの粉末を得、この粉末を白色のBN焼結体からなる坩堝に入れて、加熱焼成した。焼成は、Nガスの雰囲気下、300Paに減圧して行ない、1800℃で4時間保持した。焼成後、SiC粉末を乳鉢で粉砕し、大気雰囲気(酸化性雰囲気)下、1200℃で3時間加熱して表面に酸化膜を形成した。得られた焼結体を70%のフッ酸で処理し、表面を厚さ1μm程度除去し、乾燥して、粉末を得た。
【0099】
得られた粉末について蛍光を測定したところ、ピーク波長が640nmであり、波長500nm〜750nmの蛍光を発し、実施例5と同様のブロードなスペクトルを呈した。また、得られた粉末のBとNの濃度を、SIMSにより測定すると、Nは7×1017/cmであり、Bは9×1017/cmであった。
【0100】
実施例7
図4に、本実施例の発光ダイオードの構造を示す。SiC基板401上に、AlおよびNを添加した第1の不純物添加SiC層402、BおよびNを添加した第2の不純物添加SiC層403を、たとえばCVD法によってエピタキシャル成長させ、形成した。さらに、SiC層403上に、たとえば有機金属化合物気相成長法によって、AlGaNバッファ層404、n−GaN第1コンタクト層405、n−AlGaN第1クラッド層406、GaInN/GaN多重量子井戸活性層407、p−AlGaN電子ブロック層408、p−AlGaN第2クラッド層409、p−GaN第2コンタクト層410を形成した。つぎに、p−GaN第2コンタクト層410上に、Ni/Auからなるp電極411を形成した後、図4に示すように、n−GaN第1コンタクト層405が露出するまでエッチングし、n−GaN第1コンタクト層405上にn電極412を形成し、発光ダイオードを得た。
【0101】
つづいて、図5に示すように、この発光ダイオード501をステム505上に実装した。実装は、ステム505上に形成した絶縁性ヒートシンク502の金属層503a、503b上に、金バンプ504を介しエピサイドダウン方式で行なった。その後、金属層503aと配線用リード506とを金線507aで接続し、金属層503bに金線507bを接続し、エポキシ樹脂508で固定した。
【0102】
発光ダイオード501に、金線507a、507bを介して電圧を印加すると、発光ダイオードに電流が注入された。この結果、図4のGaInN/GaN多重量子井戸活性層407において、波長400nmの紫色光が放出された。この紫色光のうち、SiC基板401の方向へ放出された光は、第2の不純物添加SiC層403と第1の不純物添加SiC層402へ進入し、ほぼ全てがこれらの層に吸収されるとともに各々の層の不純物準位による蛍光を生じた。
【0103】
第2の不純物添加SiC層403においては、BとNが1018/cm程度の濃度で添加されており、400nmの紫色光で励起されると、図3に示すようなスペクトルを持つ蛍光を放出した。この蛍光は、図3から明らかなとおり、波長が500nm〜750nmで、ピーク波長が約600nmであり、黄色の蛍光であるが、600nmを超える赤色成分も比較的多く含んでいた。また、第2の不純物添加SiC層403の厚さは、20μmであった。
【0104】
一方、第1の不純物添加SiC層402では、AlとNが1018/cm程度の濃度で添加されており、400nmの光で励起されると、図6に示すようなスペクトルを持つ蛍光を放出した。この蛍光は、図6から明らかなとおり、波長が400nm〜750nmで、ピーク波長が460nm付近の青色光であった。また、第1の不純物添加SiC層402の厚さは、20μmであった。
【0105】
この2層の不純物添加SiC層402、403による蛍光を混合することによって、演色性にすぐれた白色光が得られた。混合比の調節は、前述のドーピング濃度とSiC層402、403の膜厚を変化させることによって可能であった。このことから、白色光の色温度の調節が容易であることがわかった。また、発光ダイオードの内部で白色光を生成しているので、放出される白色光の色合いの角度依存性も無視できるほど小さかった。
【0106】
実施例8
図7に、本実施例の発光ダイオードの構造を示す。この発光ダイオードは、図7に示すように、Nドープのn−SiC基板701上に、AlおよびNを添加した第1の不純物添加SiC層702と、BおよびNを添加した第2の不純物添加SiC層703をCVD法によってエピタキシャル成長させた。さらに、SiC層703上に、有機金属化合物気相成長法によって、n−AlGaNバッファ層704、n−GaN第1コンタクト層705、n−AlGaN第1クラッド層706、GaInN/GaN多重量子井戸活性層707、p−AlGaN電子ブロック層708、p−AlGaN第2クラッド層709、p−GaN第2コンタクト層710を積層した。つぎに、p−GaN第2コンタクト層710の表面に、Ni/Auからなるp電極711を形成し、SiC基板701の表面には、n電極712を部分的に形成し、発光ダイオードを得た。
【0107】
つづいて、図8に示すように、この発光ダイオード801をステム805上に実装した。実装は、ステム805上に形成した絶縁性ヒートシンク802の金属層803上に、エピサイドダウン方式で行なった。その後、金属層803と配線用リード806とを金線807で接続し、エポキシ樹脂808で固定した。
【0108】
発光ダイオード801に電圧を印加すると、発光ダイオードに電流が注入された。この結果、図7のGaInN/GaN多重量子井戸活性層707において、波長400nmの紫色光が放出された。この紫色光のうち、SiC基板701の方向へ放出された光は、第2の不純物添加SiC層703と、第1の不純物添加SiC層702へ進入し、ほぼ全てが、これらの2層に吸収されるとともに、各SiC層の不純物準位による蛍光を発した。
【0109】
第2の不純物添加SiC層703においては、BとNが1018/cm程度の濃度で添加されており、400nmの光で励起されると、図3に示すようなスペクトルを持つ蛍光を放出した。この蛍光は、図3から明らかなとおり、波長が500nm〜750nmで、ピーク波長が約600nmであり、黄色の蛍光であるが、600nmを超える赤色成分も比較的多く含んでいた。また、第2の不純物添加SiC層703の厚さは、30μmであった。
【0110】
一方、第1の不純物添加SiC層702では、AlとNが1018/cm程度の濃度で添加されており、400nmの光で励起されると、図6に示すようなスペクトルを持つ蛍光を放出した。この蛍光は、図6から明らかなとおり、波長が400nm〜750nmで、ピーク波長が460nm付近の青色光であった。また、第1の不純物添加SiC層702の厚さは、30μmであった。
【0111】
この2層の不純物添加SiC層702、703による蛍光を混合することによって、演色性にすぐれた白色光が得られた。混合比の調節は、ドーピングする不純物濃度とSiC層702、703の膜厚を変化させることによって可能であった。このことから、白色光の色合いの調節が容易であることがわかった。また、発光ダイオードの内部で白色光を生成しているので、放出される白色光の色合いの角度依存性も無視できるほど小さかった。
【0112】
実施例9
本実施例では、発光波長が440nm〜480nmである従来の窒化物半導体発光ダイオードと、本発明の発光ダイオードとを組み合わせて、白色光を合成した。本発明の発光ダイオードは、窒化物半導体による紫色光を励起光として黄色の蛍光を発する発光ダイオードとした。
【0113】
AlとNでドーピングした第1の不純物添加SiC層を形成せず、不純物添加SiC層として、BとNでドーピングした第2の不純物添加SiC層のみ形成した以外は、実施例8と同様にして発光ダイオードを製作し、図8に示すように、実施例8と同様に実装した。
【0114】
発光ダイオードに電流を注入すると、GaInN/GaN多重量子井戸活性層において波長400nmの紫色光が放出され、SiC基板の方向へ放出された紫色光は、不純物添加SiC層へと進入し、不純物添加SiC層によりほぼ全てが吸収され、蛍光を発した。
【0115】
不純物添加SiC層は、BとNのいずれもが1018/cm程度の濃度で添加されており、400nmの光で励起されると、図3に示すようなスペクトルを持つ黄色の蛍光を放出した。この黄色の蛍光は、図3から明らかなとおり、波長が500nm〜750nmで、ピーク波長が約600nmであり、600nmを超える赤色成分も比較的多く含んでいた。また、不純物添加SiC層の厚さは、30μmであった。
【0116】
この黄色に発光するダイオードは、発光波長が440nm〜480nmの窒化物半導体による従来の発光ダイオード(図示していない。)と組み合わせて配置し、黄色に発光するダイオードからの放射光と、従来のダイオードからの放射光とを、3:1で混合することにより、演色性に優れた白色光を合成することができた。
【0117】
黄色に発光するダイオードとしては、AlGaInPによる4元系の高輝度ダイオードが実用化されているが、本実施例で製作した発光ダイオードは、図3に示すようにブロードなスペクトルを示すため、青色発光ダイオードと組み合わせることによって、より容易に演色性の高い白色を得ることができることがわかった。
【0118】
実施例10
結晶成長時のB源の代わりに、Al単体をSiC粉末に対して、0.1mol%となるようにSiC粉末に混合し、原料粉末とした以外は実施例1と同様にしてSiC結晶を成長した。得られたSiC結晶のAlとNの濃度は、Nが5×1017/cmであり、Alは2×1016/cmであった。また、蛍光スペクトルは、ピーク波長が430nmであり、波長400nm〜750nmの蛍光を発し、図6に示すようなブロードなスペクトルを呈した。
【0119】
つぎに、測定後の結晶を、1850℃で4時間保持し、熱アニール処理を施した結果、スペクトルの形状はほぼ同じであったが、発光の相対強度が、熱アニール処理前のものに比べて2倍以上に向上した。
【0120】
実施例11
結晶成長時の雰囲気ガスにおけるNガスの分圧を5%とし、Al単体のSiC粉末に対する濃度を1mol%とした以外は、実施例10と同様にしてSiC結晶を製造した。得られたSiC結晶のNとAlの濃度は、Nが5×1018/cmであり、Alが1×1017/cmであった。また、蛍光スペクトルの形状は実施例10と同様であったが、発光の相対強度は、実施例10における熱アニール処理前の結晶に比べてほぼ2倍に向上した。
【0121】
実施例12
結晶成長時の雰囲気ガスにおけるNガスの分圧を10%とし、Al単体のSiC粉末に対する濃度を10mol%とした以外は、実施例10と同様にしてSiC結晶を製造した。得られたSiC結晶のNとAlの濃度は、Nが8×1018/cmであり、Alが4×1017/cmであった。また、蛍光スペクトルの形状は実施例10と同様であったが、発光の相対強度は、実施例10における熱アニール処理前の結晶に比べてほぼ3倍に向上した。
【0122】
実施例13
結晶成長時の雰囲気ガスにおけるNガスの分圧を30%とし、Al単体のSiC粉末に対する濃度を20mol%とした以外は、実施例10と同様にしてSiC結晶を製造した。得られたSiC結晶のNとAlの濃度は、Nが1×1019/cmであり、Alが1×1018/cmであった。また、蛍光スペクトルの形状は実施例10と同様であったが、発光の相対強度は実施例10における熱アニール処理前の結晶に比べて、ほぼ1/3以下に低下した。
【0123】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明のSiC製蛍光体は、比較的長波長である青色−紫色の光を1次光とする場合であっても、効率のよい蛍光を発するため、励起光と蛍光の混合色を得ることができ、半導体素子などが発光する比較的長波長の励起光を使った発光ダイオードを製造することが可能である。この発光ダイオードは、演色性に優れ、低コストであり、発光効率の高い白色光源として有用である。また、SiCは共有結合性が高い材料であり、変質しにくく、導電性もあるため、強い電子線にも耐え、放電管やPDPにも使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】本発明のSiC製蛍光体の製造方法に用いられる単結晶成長装置の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の製造方法において使用する改良型レーリ法の原理を説明する模式図である。
【図3】本発明のSiC製蛍光体の発光特性を示す図である。
【図4】本発明の発光ダイオードの構造を示す模式図である。
【図5】本発明の発光ダイオードを実装した状態を示す模式図である。
【図6】本発明のSiC製蛍光体の発光特性を示す図である。
【図7】本発明の発光ダイオードの構造を示す模式図である。
【図8】本発明の発光ダイオードを実装した状態を示す模式図である。
【図9】従来の発光ダイオードを実装した状態を示す模式図である。
【図10】従来の発光ダイオードを実装した状態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0126】
1 基板、2 原料、3 坩堝、4 蓋、5 石英管、6 支持棒、7 熱シールド、8 ワークコイル、9 導入管、401 SiC基板、402 第1の不純物添加SiC層、403 第2の不純物添加SiC層、404 AlGaNバッファ層、405 n−GaN第1コンタクト層、406 n−AlGaN第1クラッド層、407 GaInN/GaN多重量子井戸活性層、408 p−AlGaN電子ブロック層、409 p−AlGaN第2クラッド層、410 p−GaN第2コンタクト層、411 p電極、412 n電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Al及びNがドーピングされた6H型SiC単結晶からなるSiC層と、
発光波長が408nm以下である窒化物半導体層と、を備え、
前記SiC層は、前記窒化物半導体層からの1次光により励起され、可視領域の2次光を発する窒化物半導体発光ダイオード。
【請求項2】
前記SiC層は、B、Al及びNがドーピングされた6H型SiC単結晶からなる請求項1に記載の窒化物半導体発光ダイオード。
【請求項3】
Al及びNがドーピングされた6H型SiC単結晶からなる半導体用基板と、
前記半導体用基板上に形成され、発光波長が408nm以下である窒化物半導体層と、を備え、
前記半導体用基板は、前記窒化物半導体層からの1次光により励起され、可視領域の2次光を発する窒化物半導体発光ダイオード。
【請求項4】
前記半導体用基板は、B、Al及びNがドーピングされた6H型SiC単結晶からなる請求項3に記載の窒化物半導体発光ダイオード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−33203(P2009−33203A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−277235(P2008−277235)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【分割の表示】特願2007−165729(P2007−165729)の分割
【原出願日】平成16年3月24日(2004.3.24)
【出願人】(599002043)学校法人 名城大学 (142)
【Fターム(参考)】