説明

立体表示システム

【課題】少なくとも、外部照明の点滅周波数とシャッタメガネの開閉周波数との干渉によって発生するフリッカを軽減することにより、立体表示の快適な視聴環境を実現できる立体表示システムを提供する。
【解決手段】シャッタ制御部17が、左目用シャッタ20Lと右目用シャッタ20Rとの開閉状態が同じとなる期間を含むように開閉状態を制御する。バックライト制御部18が、少なくとも左目用シャッタ20Lと右目用シャッタ20Rとが共に開状態となる期間ではバックライト12を消灯させ、少なくとも左目用シャッタ20Lと右目用シャッタ20Rとが共に閉状態となる期間ではバックライト12を点灯させる制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャッタメガネを用いて立体表示を行う立体表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液晶シャッタを利用した立体視用の特殊なシャッタメガネを装着させて観察者の両目に視差のある別々の画像を見せることで、立体視を実現するメガネ式の立体表示装置が知られている(特許文献1ないし3参照)。立体視を実現するためには、左目と右目とに異なる視差画像を見せる必要があるため、左目用画像と右目用画像との2つの視差画像が必要となる。メガネ式の立体表示装置では、例えば液晶表示パネルなどの2次元表示パネルに時分割で左目用画像と右目用画像とを交互に表示し、その表示タイミングに同期させてシャッタメガネの液晶シャッタを左目と右目とで交互にオン/オフ(開/閉)制御することで、立体視を実現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−138384号公報
【特許文献2】特開2000−36969号公報
【特許文献3】特開2003−45343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、液晶表示パネルの場合、画像をライン毎に上書きする線順次方式の表示デバイスであり、また、液晶の応答速度が比較的遅いため、駆動信号を印加してから画面全域で画像が完全に切り換わるまでに遅延が生ずる場合がある。このため、左右の各視差画像を時分割で表示する場合において、左右の各視差画像が完全に切り換わらずに、左右の各視差画像が混じって表示されるクロストークが発生する場合がある。このような表示状態では、シャッタメガネで左右の切り換えを行った場合に、右目用画像の一部が左目に、左目用画像の一部が右目に漏れ込む状態となってしまう。これを改善する方法として、液晶表示パネルの駆動周波数を高め、左右の各視差画像を時分割で2度書きする方法が考えられる。例えば左目用画像をL、右目用画像をRとすると、LLRRの順に画像表示を行う方法が考えられる。この場合、同じ画像を連続的に2度書き(2回表示)することで、左右の各視差画像を1枚ずつ交互に表示する場合に比べて左右の各視差画像の切り換えが改善される。そして左右の各視差画像が画面全域で切り換わったタイミングでシャッタメガネの液晶シャッタをオン/オフ制御することで、クロストークを改善できる。
【0005】
図8(A)〜(C)は、そのような2度書き方式を用いた立体表示システムにおける各部の応答タイミングの第1の例を模式的に示している。特に図8(A)は液晶表示パネルでの画像表示の応答タイミングを模式的に示し、図8(B)はバックライトの点灯タイミングを模式的に示している。図8(C)はシャッタメガネにおける左目用シャッタおよび右目用シャッタの開閉タイミングを模式的に示している。
【0006】
この第1の表示例では、図8(A)に示したように、右目用画像Rと左目用画像Lのそれぞれを240[Hz]の駆動周波数で液晶表示パネルに表示している。図8(A)において、1回の書き込みにより右目用画像Rまたは左目用画像Lが表示される時間は、1/240[Hz]=4.2[ms]である。また、1/60[Hz]=16.7[ms]の期間内にLLRRの順に左右の画像データの書き込みを行っている。
【0007】
図8(A)では、液晶表示パネルの画面下辺(Y=0)から画面上辺(Y=Y0)に至る縦方向の各位置において、時間とともに輝度が変化している様子を示している。この第1の表示例では、図8(B)に示すように、液晶表示パネルでの画像の表示状態に関わらず、バックライトは常時点灯(発光)している。
【0008】
図8(A)に示すように、画面上辺(Y=Y0)では、例えば時刻t20から時刻t21までの4.2[ms]間に左目用画像Lが書き込まれ、続けて時刻t21から時刻t22までの4.2[ms]間に再び左目用画像Lが書き込まれる。そして、左目用画像Lを2回書き込んだ後に右目用画像Rが書き込まれる。右目用画像Rについても、画面上辺(Y=Y0)では、例えば時刻t22から時刻t23までの4.2[ms]間に右目用画像Rが書き込まれ、続けて時刻t23から時刻t24までの4.2[ms]間に再び右目用画像Rが書き込まれる。
【0009】
一般に液晶表示パネルは、その応答時間が比較的遅いため、書き込み時間が短時間であると、各画素が所望の輝度に達しない。このため、駆動周波数を高くして右目用画像Rと左目用画像Lとを交互に書き込むと、1回の書き込み時間が短くなり、1回目の書き込み後にしか所望の輝度に到達しないため、画面上辺と下辺の両方が所望の輝度に達しているタイミングが存在しない。
【0010】
これに対し、図8(A)の表示例では、右目用画像Rと左目用画像Lとをそれぞれ2度に渡って書き込みしているため、2回目の書き込み時には、1回目に既に同じ画像を書き込んでいることから、所望の輝度を保持することができる。従って、所定期間の間、画面の上辺と下辺の両方で所望の輝度に達した状態を実現できる。例えば図8(A)において、時刻t22の時点では、画面上辺から画面下辺に至る画面全域において、左目用画像Lの輝度が所望のレベルに到達している。このため、図8(C)に示すように、時刻t22を中心とする所定の期間(例えば2.1ms)だけ左目用シャッタを開口させることで、ユーザの左目には左目用画像Lのみが視認される。同様に、例えば図8(A)において、時刻t24の時点では、画面上辺から画面下辺に至る画面全域において、右目用画像Rの輝度は所望のレベルに到達している。このため、図8(C)に示すように、時刻t24を中心とする所定の期間(例えば2.1ms)だけ右目用シャッタを開口させることで、ユーザの右目には右目用画像Rのみが視認される。
【0011】
このように、図8(A)〜(C)に示した第1の表示例では、右目用画像Rと左目用画像Lとをそれぞれ2度に渡って書き込みすることにより、画面全域において左目用画像Lあるいは右目用画像Rが所望の輝度レベルに到達している所定の期間(例えば2.1ms)を得ている。そして、その所望の輝度レベルに到達している所定の期間のみシャッタを開くことにより、クロストークを抑えている。
【0012】
図9(A)〜(C)は、2度書き方式を用いた立体表示システムにおける各部の応答タイミングの第2の例を模式的に示している。特に図9(A)は図8(A)と同様に、液晶表示パネルでの画像表示の応答タイミングを模式的に示し、図9(B)は図8(B)と同様に、バックライトの点灯タイミングを模式的に示している。図9(C)は図8(C)と同様に、シャッタメガネにおける左目用シャッタおよび右目用シャッタの開閉タイミングを模式的に示している。
【0013】
上記第1の表示例では、図8(B)から分かるようにバックライトを常時点灯するようにしていたが、この第2の表示例では、図9(B),(C)から分かるように、液晶シャッタの開閉に同期してバックライトの点灯状態をオン/オフ制御している。なお、液晶表示パネル側の表示状態は、図9(A)と図8(A)とで同じである。
【0014】
この第2の表示例では、図9(C)に示したように左目用シャッタは、例えば時刻t40〜t41間で開かれる。一方で、左目用シャッタの開閉と同期して、図9(B)に示したように時刻t30〜t31間で、バックライトを点灯させる。時刻t30〜t31は、時刻t22を中心とする所定の期間(例えば2.1ms)である。この時刻t22を中心とする所定の期間は、図8(A)の場合と同様に、画面上辺から画面下辺に至る画面全域において、左目用画像Lの輝度が所望のレベルに到達している期間である。図9(B),(C)から分かるように、左目用シャッタが開状態となる時刻t40〜t41の区間は、左目用にバックライトが点灯する時刻t30〜t31の区間よりも十分に長く設定されている。
【0015】
右目側についても同様に、右目用シャッタは例えば時刻t42〜t43間で開かれる。この右目用シャッタの開閉と同期して、時刻t32〜t33間でバックライトを点灯させる。時刻t32〜t33は、時刻t24を中心とする所定の期間(例えば2.1ms)である。この時刻t24を中心とする所定の期間は、図8(A)の場合と同様に、画面上辺から画面下辺に至る画面全域において、右目用画像Rの輝度が所望のレベルに到達している期間である。図9(B),(C)から分かるように、右目用シャッタが開状態となる時刻t42〜t43の区間は、右目用にバックライトが点灯する時刻t32〜t33の区間よりも十分に長く設定されている。
【0016】
このように、図9(A)〜(C)に示した第2の表示例では、上記第1の表示例に比べてシャッタの開口時間を長くする一方で、画面全域において左目用画像Lあるいは右目用画像Rが所望の輝度レベルに到達している所定の期間(例えば2.1ms)のみバックライトを点灯させる。その他の期間ではバックライトを消灯させる。これにより、クロストークを抑えている。
【0017】
ところで、以上で説明した立体表示システムにおいて、シャッタメガネには、ディスプレイからの映像の光だけでなく、視聴環境によっては外部照明の光も入射される。外部照明に利用される非インバータの蛍光灯や一部のLED照明などは、商用電源の2倍の周波数で点滅している。このため、この外部照明の点滅周波数と液晶シャッタの開閉周波数とが特定の関係にあるときにフリッカが発生する。これは、観察者にとっては非常に不快であり、視覚疲労の原因となる。フリッカの強度はシャッタの開口時間にも依存しており、開口時間が短い場合には、特にフリッカが強く感じられる。従って、図8(A)〜(C)に示した第1の表示例では、シャッタの開口時間が短いため、外部照明との干渉によるフリッカが強くなるという問題がある。一方、図9(A)〜(C)に示した第2の表示例では、シャッタの開口時間が長いため、フリッカは軽減される。しかしながら、バックライトを一部の期間しか点灯させないため、第1の表示例のようにバックライトを常時点灯させる場合に比べて液晶表示パネルの温度が低下する。これにより液晶表示パネルにおいて液晶の応答性が低下し、クロストークが発生する問題がある。
【0018】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、少なくとも、外部照明の点滅周波数とシャッタメガネの開閉周波数との干渉によって発生するフリッカを軽減することにより、立体表示の快適な視聴環境を実現できる立体表示システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の第1の観点に係る立体表示システムは、画像表示を行う表示パネルと、表示パネルに向けて画像表示用の光を照射するバックライトと、互いに独立して開閉制御される左目用シャッタと右目用シャッタとを有するシャッタメガネと、表示パネルに左目用画像と右目用画像とを時分割で交互に表示させる表示制御部と、バックライトの点灯状態の制御を行うバックライト制御部と、表示パネルに表示される画像の表示状態に応じて、左目用シャッタと右目用シャッタとの開閉状態を制御するシャッタ制御部とを備えている。
そして、シャッタ制御部が、左目用シャッタと右目用シャッタとの開閉状態が同じとなる期間を含むように開閉状態を制御し、バックライト制御部が、少なくとも左目用シャッタと右目用シャッタとが共に開状態となる期間ではバックライトを消灯させる制御を行うようにしたものである。
さらに、少なくとも左目用シャッタと右目用シャッタとが共に閉状態となる期間ではバックライトを点灯させる制御を行うようにしても良い。
【0020】
本発明の第2の観点に係る立体表示システムは、画像表示を行う表示パネルと、表示パネルに向けて画像表示用の光を照射するバックライトと、開閉制御される左目用シャッタと右目用シャッタとを有するシャッタメガネとを備えている。
そして、左目用シャッタと右目用シャッタとが共に開状態となる期間を含み、左目用シャッタと右目用シャッタとが共に開状態となる期間ではバックライトを消灯させるようにしたものである。
【0021】
本発明の第1または第2の観点に係る立体表示システムでは、左目用シャッタと右目用シャッタとの開閉状態が同じとなる期間を含むようにシャッタの開閉状態が制御されると共に、少なくとも左目用シャッタと右目用シャッタとが共に開状態となる期間ではバックライトを消灯させる制御が行われる。さらに好ましくは、少なくとも左目用シャッタと右目用シャッタとが共に閉状態となる期間ではバックライトを点灯させる制御が行われる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の第1または第2の観点に係る立体表示システムによれば、左目用シャッタと右目用シャッタとの開閉状態が同じとなる期間を含むようにシャッタの開閉状態を制御すると共に、少なくとも左目用シャッタと右目用シャッタとが共に開状態となる期間ではバックライトを消灯させる制御を行うようにしたので、左右の各シャッタを開状態にする期間を長くでき、外部照明の点滅周波数とシャッタメガネの開閉周波数との干渉によって発生するフリッカを軽減することができる。さらに、少なくとも左目用シャッタと右目用シャッタとが共に閉状態となる期間においてバックライトを点灯させる制御を行うようにすることで、バックライトが点灯している期間を長くでき、表示パネルの温度低下によるクロストークの発生を抑制することができる。このようにバックライトの点灯状態の制御と、シャッタメガネにおける左右の各シャッタの開閉制御とを従来とは異なる方法で最適化するようにしたので、立体表示の快適な視聴環境を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る立体表示システムの一構成例を示すブロック図である。
【図2】第1の実施の形態に係る立体表示システムにおける各部の応答タイミングを模式的に示すタイミングチャートである。特に(A)は液晶表示パネルでの画像表示の応答タイミングを模式的に示し、(B)はバックライトの点灯タイミングを模式的に示す。(C)は左目用シャッタの開閉タイミングを模式的に示し、(D)は右目用シャッタの開閉タイミングを模式的に示す。
【図3】第1の実施の形態の第1の変形例に係る立体表示システムにおける各部の応答タイミングを模式的に示すタイミングチャートである。特に(A)は液晶表示パネルでの画像表示の応答タイミングを模式的に示し、(B)はバックライトの点灯タイミングを模式的に示す。(C)は左目用シャッタの開閉タイミングを模式的に示し、(D)は右目用シャッタの開閉タイミングを模式的に示す。
【図4】第1の実施の形態の第2の変形例に係る立体表示システムにおける各部の応答タイミングを模式的に示すタイミングチャートである。特に(A)は液晶表示パネルでの画像表示の応答タイミングを模式的に示し、(B)はバックライトの点灯タイミングを模式的に示す。(C)は左目用シャッタの開閉タイミングを模式的に示し、(D)は右目用シャッタの開閉タイミングを模式的に示す。
【図5】第2の実施の形態に係る立体表示システムにおける各部の応答タイミングを模式的に示すタイミングチャートである。特に(A)は液晶表示パネルでの画像表示の応答タイミングを模式的に示し、(B)はバックライトの点灯タイミングを模式的に示す。(C)は左目用シャッタの開閉タイミングを模式的に示し、(D)は右目用シャッタの開閉タイミングを模式的に示す。
【図6】第2の実施の形態の第1の変形例に係る立体表示システムにおける各部の応答タイミングを模式的に示すタイミングチャートである。特に(A)は液晶表示パネルでの画像表示の応答タイミングを模式的に示し、(B)はバックライトの点灯タイミングを模式的に示す。(C)は左目用シャッタの開閉タイミングを模式的に示し、(D)は右目用シャッタの開閉タイミングを模式的に示す。
【図7】第2の実施の形態の第2の変形例に係る立体表示システムにおける各部の応答タイミングを模式的に示すタイミングチャートである。特に(A)は液晶表示パネルでの画像表示の応答タイミングを模式的に示し、(B)はバックライトの点灯タイミングを模式的に示す。(C)は左目用シャッタの開閉タイミングを模式的に示し、(D)は右目用シャッタの開閉タイミングを模式的に示す。
【図8】本発明に対する第1の比較例に係る立体表示システムにおける各部の応答タイミングを模式的に示すタイミングチャートである。特に(A)は液晶表示パネルでの画像表示のタイミングを模式的に示し、(B)はバックライトの点灯タイミングを模式的に示す。(C)は左目用シャッタおよび右目用シャッタの開閉タイミングを模式的に示す。
【図9】本発明に対する第2の比較例に係る立体表示システムにおける各部の応答タイミングを模式的に示すタイミングチャートである。特に(A)は液晶表示パネルでの画像表示の応答タイミングを模式的に示し、(B)はバックライトの点灯タイミングを模式的に示す。(C)は左目用シャッタおよび右目用シャッタの開閉タイミングを模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0025】
<第1の実施の形態>
[システム構成]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る立体表示システムの一構成例を示している。この立体表示システムは、画像表示を行う液晶表示パネル11と、液晶表示パネル11に向けて画像表示用の光を照射するバックライト12と、互いに独立して開閉制御される左目用シャッタ20Lと右目用シャッタ20Rとを有するシャッタメガネ20とを備えている。この立体表示システムはまた、ゲートドライバ13と、データドライバ14と、左右映像信号制御部15と、タイミング制御部16と、シャッタ制御部17と、バックライト制御部18と、赤外線エミッタ19とを備えている。
【0026】
液晶表示パネル11は、バックライト12から照射された光の通過状態を液晶分子によってコントロールすることによって画像表示を行う透過型の表示パネルである。液晶表示パネル11は、図示しないが、画素電極基板と、画素電極基板に対向するように配置された透明な対向基板と、画素電極基板と対向基板との間に封入された液晶層とを備えている。対向基板の液晶層側には、例えば共通電極が一様に形成されている。画素電極基板の液晶層側には、例えばR(赤色)用画素、G(緑色)用画素、およびB(青色)用画素からなる複数の画素電極がマトリクス状に形成されている。共通電極と画素電極は、例えばITO(Indium-Tin Oxide)による透明電極によって形成されている。画素電極は、ゲートドライバ13およびデータドライバ14からの駆動信号に基づいて、例えばTFT(薄膜トランジスタ)によって電圧の印加状態が制御されるようになっている。
【0027】
左右映像信号制御部15およびタイミング制御部16は、液晶表示パネル11に左目用画像Lと右目用画像Rとを時分割で交互に表示させる「表示制御部」としての機能を実現するためのものである。表示制御部は、液晶表示パネル11において、同一の左目用画像Lと同一の右目用画像Rとをそれぞれ2回以上ずつ連続的に表示させ、連続する複数の左目用画像Lと連続する複数の右目用画像Rとを交互に表示させる制御を行うようになっている。本実施の形態では特に、後述する図2(A)に示すように、同じ画像を連続的に2度書き(2回表示)する方式、すなわち、LLRRの順に画像表示を行っていく場合を例に説明する。
【0028】
左右映像信号制御部15には、右目用画像Rおよび左目用画像Lを表示するための左右映像信号が入力されるようになっている。左右映像信号制御部15は、液晶表示パネル11に右目用画像Rと左目用画像Lとを交互に表示させるため、左右映像信号を交互に出力するようになっている。また、左右映像信号制御部15は、入力された左右映像信号に基づいて、後述する図2(A)に示すような画像の2度書き込みを行うため、右目用映像信号と左目用映像信号のそれぞれについて、同じ信号が2つ連続するように変換を行う。
【0029】
また、左右映像信号制御部15は、2つ連続するように変換された右目用映像信号および左目用映像信号の切り換わりのタイミングを示すタイミング信号をバックライト制御部18とシャッタ制御部17とに送るようになっている。
【0030】
タイミング制御部16には、左右映像信号制御部15で変換された右目用映像信号および左目用映像信号が入力されるようになっている。タイミング制御部16は、入力された右目用映像信号および左目用映像信号を液晶表示パネル11へ入力するための信号に変換し、ゲートドライバ13およびデータドライバ14の動作に用いられるパルス信号を生成するようになっている。タイミング制御部16で変換された信号は、ゲートドライバ13とデータドライバ14のそれぞれに入力される。
【0031】
ゲートドライバ13およびデータドライバ14は、タイミング制御部16で生成されたパルス信号を受け、入力された信号に基づいて液晶表示パネル11の各画素を発光させる(バックライト12からの光が通過可能となるように各画素電極に駆動電圧を印加する)ようになっている。これにより、液晶表示パネル11に映像が表示される。
【0032】
バックライト制御部18は、バックライト12の点灯状態の制御を行うものである。バックライト制御部18は、左右映像信号制御部15から入力されたタイミング信号に基づいて、バックライト12を点滅させるための点滅タイミング信号を出力するようになっている。バックライト制御部18は、後述の図2(B),(C),(D)に示すように、少なくともシャッタメガネ20の左目用シャッタ20Lと右目用シャッタ20Rとが共に開状態となる期間(例えば図2(C),(D)における時刻t11〜t12の期間)では、バックライト12を消灯させる制御を行うようになっている。バックライト制御部18はまた、少なくとも左目用シャッタ20Lと右目用シャッタ20Rとが共に閉状態となる期間(例えば図2(C),(D)における時刻t13〜t14の期間)では、バックライト12を点灯させる制御を行うようになっている。バックライト制御部18はまた、左目用シャッタ20Lのみが開状態となる期間(例えば図2(C)における時刻t10〜t11の期間)と、右目用シャッタ20Rのみが開状態となる期間(例えば図2(D)における時刻t12〜t13の期間)においても、バックライト12を点灯させる制御を行うようになっている。
【0033】
バックライト12は、点灯/消灯の制御を高速に行うことが可能で、かつ残光特性の良好な光源、例えばLED(Light Emitting Diode)を用いて構成されている。バックライト12で用いられている蛍光体の残光特性は、RGBの3色で等しいものとされている。バックライト12は、バックライト制御部18から送られた点滅タイミング信号に基づいて点灯/消灯が行われるようになっている。
【0034】
シャッタ制御部17は、液晶表示パネル11に表示される画像の表示状態に応じて、左目用シャッタ20Lと右目用シャッタ20Rとの開閉状態を制御するものである。シャッタ制御部17は、後述の図2(C),(D)に示すように、左目用シャッタ20Lと右目用シャッタ20Rとの開閉状態が同じとなる期間を含むように開閉状態を制御するようになっている。具体的には、液晶表示パネル11に表示される画像の表示状態に応じて、左目用シャッタ20Lのみが開状態となる期間と、右目用シャッタ20Rのみが開状態となる期間と、左目用シャッタ20Lと右目用シャッタ20Rとが共に開状態となる期間と、左目用シャッタ20Lと右目用シャッタ20Rとが共に閉状態となる期間とが含まれるように開閉状態を制御するようになっている。
【0035】
シャッタ制御部17は、左右映像信号制御部15から送られたタイミング信号に基づいて、シャッタメガネ20の左目用シャッタ20Lと右目用シャッタ20Rとを開閉させるための開閉タイミング信号を赤外線エミッタ19へ送るようになっている。赤外線エミッタ19は、赤外線通信により開閉タイミング信号をシャッタメガネ20に対して送信するようになっている。
【0036】
シャッタメガネ20は、液晶シャッタによる左目用シャッタ20Lと右目用シャッタ20Rとを有している。シャッタメガネ20はまた、赤外線通信の受信装置を有している。シャッタメガネ20は、赤外線エミッタ19を介して受信したシャッタ制御部17からの開閉タイミング信号に基づいて、左目用シャッタ20Lと右目用シャッタ20Rとの開閉動作を行うようになっている。
【0037】
[表示動作]
次に、図2(A)〜(D)を参照して、この立体表示システムの表示に係る動作、特に、液晶表示パネル11の応答タイミング(図2(A))と、バックライト12の点滅(点灯)タイミング(図2(B))と、シャッタメガネ20の開閉タイミング(図2(C),(D))との各タイミングの制御動作について説明する。
【0038】
図2(A)は、図8(A)の表示例と同様に、液晶表示パネル11の画面上辺から画面下辺に向けて線順次で表示が行われ、画面上辺から画面下辺に至る縦方向の各位置において、時間とともに輝度が変化している様子を示している。また、図2(B)はバックライト12の点灯タイミングを模式的に示している。図2(C)はシャッタメガネ20における左目用シャッタ20Lの開閉タイミングを模式的に示し、図2(D)は右目用シャッタ20Rの開閉タイミングを模式的に示している。
【0039】
なお、観察者からすると、バックライト12が点灯状態にあり、かつ、液晶表示パネル11が表示状態(有効な表示データの書き込みがなされている状態)にあるときに、液晶表示パネル11に画像表示がなされていると認識できる。逆に言うと、液晶表示パネル11が表示状態であっても、バックライト12が消灯状態であるときには、観察者からすると、液晶表示パネル11に画像表示がなされていない期間と認識できる。さらに言うと、観察者にとっての画像表示の状態はシャッタメガネ20の開閉状態によっても変わる。従って、本実施の形態において、例えば「液晶表示パネル11に画像を表示する」とは、観察者から見て画像が表示されているか否かは関係なく、あくまで、液晶表示パネル11の単体の動作状態として、画像表示を行っている状態(有効な表示データの書き込みがなされている状態)にあることを意味する。本実施の形態では、表示制御部としての左右映像信号制御部15およびタイミング制御部16が、シャッタメガネ20の開閉状態に関わらず、左目用シャッタ20Lと右目用シャッタ20Rとが共に開状態となる期間も含めて常時、液晶表示パネル11に画像を表示させる制御を行う。
【0040】
まず、図2(A)に示した液晶表示パネル11における表示動作について説明する。本実施の形態では、液晶表示パネル11における液晶の応答速度の不足に起因するクロストークの発生、および輝度不足等を解消するため、液晶表示パネル11の駆動周波数を高め、左右の画像の1フレームを液晶表示パネル11に2度表示させる(2度書き込む)という手法を採用している。液晶表示パネル11では、図2(A)に示したように右目用画像Rと左目用画像Lとのそれぞれを240[Hz]の駆動周波数で表示しており、1回の表示データの書き込みにより右目用画像Rまたは左目用画像Lが表示される時間は、1/240[Hz]=4.2[ms]である。また、1/60[Hz]=16.7[ms]の期間内にLLRRの順に左右の画像データの書き込みを行っている。
【0041】
図2(A)に示すように、画面上辺では、例えば時刻t1から時刻t2までの4.2[ms]間に左目用画像Lが書き込まれ、続けて時刻t2から時刻t3までの4.2[ms]間に再び左目用画像Lが書き込まれる。ここで、時刻t1から時刻t2の間に書き込まれる左目用画像Lと時刻t2から時刻t3の間に書き込まれる左目用画像Lは、基本的には同一の画像であるが、オーバードライブ処理などの調整に起因して相違するものであってもよい。また、1回目に書き込まれる左目用画像Lと2回目に書き込まれる左目用画像Lとの間に所定のブランク期間を設けても良い。
【0042】
そして、左目用画像Lを2回書き込んだ後に右目用画像Rが書き込まれる。右目用画像Rについても、画面上辺では、例えば時刻t3から時刻t4までの4.2[ms]間に右目用画像Rが書き込まれ、続けて時刻t4からt5までの4.2[ms]間に再び右目用画像Rが書き込まれる。時刻t3からt4の間に書き込まれる右目用画像Rと時刻t4から時刻t5の間に書き込まれる右目用画像Rは、基本的には同一の画像であるが、オーバードライブ処理などの調整に起因して相違するものであってもよい。また、1回目に書き込まれる右目用画像Rと2回目に書き込まれる右目用画像Rとの間、または左目用画像Lと右目用画像Rの間に所定のブランク期間を設けても良い。
【0043】
一般に液晶表示パネル11においては、液晶の応答時間が比較的遅いため、書き込み時間が短時間であると、各画素が所望の輝度に達しない。このため、駆動周波数を高くして右目用画像Rと左目用画像Lとを交互に書き込むと、1回の書き込み時間(=4.2ms)が短くなり、1回目の書き込み後にしか所望の輝度に到達しないため、画面上辺と下辺の両方が所望の輝度に達しているタイミングが存在しない。これに対して図2(A)の表示例では、右目用画像Rと左目用画像Lとをそれぞれ2度に渡って書き込みしているため、2回目の書き込み時には、所望の輝度を保持することができる。従って、画面の上辺と下辺の両方で所望の輝度に達した状態を実現できる。
【0044】
例えば図2(A)において、時刻t3の時点では、画面上辺から画面下辺に至る画面全域において、左目用画像Lの輝度が所望のレベルに到達している。同様に、例えば時刻t5の時点では、画面上辺から画面下辺に至る画面全域において、右目用画像Rの輝度が所望のレベルに到達している。よって、時刻t3を含む所定の期間tw=t10〜t11(例えば2.1ms)のみを観察者の左目に視認させ、時刻t5を含む所定の期間tw=t12〜t13(例えば2.1ms)のみを観察者の右目に視認させることで、クロストークの発生を抑えることができる。なお、クロストークと輝度はトレードオフの関係にあるので、どちらを優先するかによって観察者に視認させる期間は適宜設定できる。
【0045】
次に、図2(B)〜(D)に示したバックライト12とシャッタメガネ20の動作について説明する。本実施の形態では、シャッタメガネ20における液晶シャッタの開閉時の過渡特性は無視できるものとする。なお、上述したようにバックライト12の点灯/消灯の制御はバックライト制御部18によって行われる。シャッタメガネ20の開閉状態の制御は、シャッタ制御部17によって行われる。
【0046】
バックライト12は、左目用画像Lから右目用画像Rに順次書き替えられている期間、すなわち例えば図2(B)に示した期間においては、時刻t11〜t12および時刻t15〜t16の期間のみ消灯し、それ以外の期間(例えば時刻t12〜t15)では点灯するように制御される。
【0047】
また左目用シャッタ20Lは、液晶表示パネル11全域に右目用画像が表示されている期間、および右目用画像Rから左目用画像Lに順次書き替えられている期間、すなわち例えば図2(C)に示した期間においては、時刻t12〜t14の期間では閉状態にし、それ以外の期間(時刻t10〜t12および時刻t14〜t16)では開状態となるように制御される。
【0048】
一方、右目用シャッタ20Rは、液晶表示パネル11全域に左目用画像Lが表示されている期間、および1回目の左目用画像Lが書き込まれている期間、すなわち例えば図2(D)に示した期間においては、時刻t13〜t15の期間では閉状態にし、それ以外の期間(時刻t11〜t13および時刻t15〜t17)では開状態となるように制御される。
【0049】
ここで、左目用シャッタ20Lと右目用シャッタ20Rとの開閉タイミングの位相差に着目すると、例えば図8(C)および図9(C)に示した比較例では、片目あたりの画像を表示する周期をT(=60Hzの周期)とすると、位相差がT/2の周期である。これに対して、図2(C),(D)の例では、位相差が、液晶表示パネル11全域に左目用画像L(または右目用画像R)が表示されている期間tw(例えば2.1msすなわちT/8の周期)に設定されている。また、左右のシャッタ20L,20Rが共に開いている期間(例えば時刻t11〜t12の期間)ではバックライト12を消灯させ、左右のシャッタ20L,20Rが共に閉じている期間(例えば時刻t13〜t14の期間)ではバックライト12を点灯させている。したがって、画像の書き替え期間全てにおいてバックライト12を消灯していた図9の比較例の方法と比較して、バックライト12が点灯している時間の割合が大きくなる。このため、バックライト12の発熱により液晶表示パネル11の温度を上昇させることができ、液晶の応答性を向上させることができる。
【0050】
以上説明したように、本実施の形態に係る立体表示システムによれば、左目用シャッタ20Lと右目用シャッタ20Rとの開閉状態が同じとなる期間を含むようにシャッタの開閉状態を制御すると共に、少なくとも左目用シャッタ20Lと右目用シャッタ20Rとが共に閉状態となる期間ではバックライト12を点灯させる制御を行うようにしたので、バックライト12が点灯している期間を長くでき、液晶表示パネル11の温度低下による液晶の応答性の低下を抑え、クロストークの発生を抑制することができる。かつ、左目用シャッタ20Lと右目用シャッタ20Rとが共に開状態となる期間ではバックライト12を消灯させる制御を行うようにしたので、左右の各シャッタを開状態にする期間を長くでき、外部照明の点滅周波数とシャッタメガネの開閉周波数との干渉によって発生するフリッカを軽減することができる。このように、液晶表示パネル11において、同じ画像を連続的に2度書きする表示方式を採用しつつ、バックライト12の点灯状態の制御と、シャッタメガネ20における左右の各シャッタの開閉制御とを従来とは異なる方法で最適化するようにしたので、立体表示の快適な視聴環境を実現できる。
【0051】
[第1の実施の形態の第1の変形例]
図3(A)〜(D)は、図2(A)〜(D)に示した表示例に対する第1の変形例を示している。特に図3(A)は図2(A)と同様に、液晶表示パネル11での画像表示の応答タイミングを模式的に示し、図3(B)は図2(B)と同様に、バックライト12の点灯タイミングを模式的に示している。図3(C)は図2(C)と同様に、シャッタメガネ20における左目用シャッタ20Lの開閉タイミングを模式的に示し、図3(D)は図2(D)と同様に、右目用シャッタ20Rの開閉タイミングを模式的に示している。
【0052】
図3(A)に示した液晶表示パネル11の応答タイミングは、図2(A)と全く同じである。この第1の変形例では、左右のシャッタ20L,20Rの開閉タイミングが図2(C),(D)に示した状態とは左右逆の状態となっている。バックライト12の点灯タイミングもシャッタの開閉タイミングに対応して、図2(B)に示した状態とは左右逆の状態となっている。
【0053】
例えば左目用シャッタ20Lについては、図2(C)の例では、観察者に左目用画像Lを視認させる期間twにシャッタを開状態にすると共に、その期間twの後において連続する所定期間にもシャッタを開状態にしている。図2(C)の例では、左目用シャッタ20Lについての期間twはシャッタを閉状態にした直後に設けられている。これに対して、図3(C)の例では、観察者に左目用画像Lを視認させる期間twにシャッタを開状態にすると共に、その期間twの前において連続する所定期間にもシャッタを開状態にしている。図3(C)の例では、左目用シャッタ20Lについての期間twはシャッタを閉状態にする直前に設けられている。
【0054】
また、右目用シャッタ20Rについては、図2(D)の例では、観察者に右目用画像Rを視認させる期間twにシャッタを開状態にすると共に、その期間twの前において連続する所定期間にもシャッタを開状態にしている。図2(D)の例では、右目用シャッタ20Rについての期間twはシャッタを閉状態にする直前に設けられている。これに対して、図3(D)の例では、観察者に右目用画像Rを視認させる期間twにシャッタを開状態にすると共に、その期間twの後において連続する所定期間にもシャッタを開状態にしている。図3(D)の例では、右目用シャッタ20Rについての期間twはシャッタを閉状態にした直後に設けられている。
【0055】
この第1の変形例のような制御を行う場合にも、図2(A)〜(D)に示した表示例と同様の効果を得ることができる。
【0056】
[第1の実施の形態の第2の変形例]
図4(A)〜(D)は、図2(A)〜(D)に示した表示例に対する第2の変形例を示している。特に図4(A)は図2(A)と同様に、液晶表示パネル11での画像表示の応答タイミングを模式的に示し、図4(B)は図2(B)と同様に、バックライト12の点灯タイミングを模式的に示している。図4(C)は図2(C)と同様に、シャッタメガネ20における左目用シャッタ20Lの開閉タイミングを模式的に示し、図4(D)は図2(D)と同様に、右目用シャッタ20Rの開閉タイミングを模式的に示している。
【0057】
図4(A)に示した液晶表示パネル11の応答タイミングは、図2(A)と全く同じである。この第2の変形例では、左目用シャッタ20Lと右目用シャッタ20Rとの開閉タイミングの位相差が図2(A)〜(D)に示した表示例とは異なっている。図2(A)〜(D)に示した表示例では、左目用シャッタ20Lと右目用シャッタ20Rとの開閉タイミングの位相差が、液晶表示パネル11全域に左目用画像L(または右目用画像R)が表示されている期間tw(例えば2.1msすなわちT/8の周期)に設定されていたが、その位相差はtw(T/8)以外であっても良い。本実施の形態に係る立体表示システムにおいて、その位相差は、tw以上T/2未満であれば、左右のシャッタ20L,20Rが共に閉じている期間を設けることができ、その期間にバックライト12を点灯させることにより液晶表示パネル11の温度を上昇させることができる。
【0058】
図4(A)〜(D)の表示例では、その位相差をT/4にした例を示している。この表示例では、図2(A)〜(D)の表示例と比較して、左右のシャッタ20L,20Rが共に閉じている期間(例えば時刻t13’〜t14)にバックライト12を点灯させることにより、図9(A)〜(C)に示した第2の比較例の表示例よりも液晶表示パネル11の温度を上昇させることができる。
【0059】
<第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態に係る立体表示装置について説明する。
本実施の形態における立体表示システムの基本構成は、図1と同様である。ただし、本実施の形態における立体表示システムでは、バックライト12の点滅(点灯)タイミングと、シャッタメガネ20の開閉タイミングとの各タイミングの制御動作が部分的に上記第1の実施の形態とは異なっている。
【0060】
図5(A)〜(D)は、本実施の形態に係る立体表示システムの表示動作のタイミングを示している。特に図5(A)は図2(A)と同様に、液晶表示パネル11での画像表示の応答タイミングを模式的に示し、図5(B)は図2(B)と同様に、バックライト12の点灯タイミングを模式的に示している。図5(C)は図2(C)と同様に、シャッタメガネ20における左目用シャッタ20Lの開閉タイミングを模式的に示し、図5(D)は図2(D)と同様に、右目用シャッタ20Rの開閉タイミングを模式的に示している。
【0061】
上記第1の実施の形態では、シャッタメガネ20における液晶シャッタの開閉時の過渡特性は無視できるものとして説明したが、本実施の形態では過渡特性が無視できない場合について説明する。時分割方式による立体表示においては、観察者が視認する左目用画像Lと右目用画像Rの明るさが異なると、視覚疲労の原因となる。したがって、左右のシャッタ20L,20Rの透過率がほぼ等しい状態で観察者に左右の画像を視認させる必要がある。
【0062】
図5(A)に示した液晶表示パネル11の応答タイミングは、図2(A)と全く同じであるので、特に図5(B)〜(D)に示したバックライト12とシャッタメガネ20の動作について説明する。なお、本実施の形態においても、バックライト12の点灯/消灯の制御はバックライト制御部18によって行われる。シャッタメガネ20の開閉状態の制御は、シャッタ制御部17によって行われる。
【0063】
図5(B)〜(D)において、シャッタメガネ20における液晶シャッタの開閉時の過渡特性が問題となる期間以外の制御については、図2(B)〜(D)と同様である。過渡特性が問題となる期間とは、液晶シャッタを開状態から閉状態へと遷移させる期間と、液晶シャッタを閉状態から開状態へと遷移させる期間である。
【0064】
図5(C)において、例えば時刻t20〜t10の期間は、左目用シャッタ20Lが閉状態から開状態へ遷移する立ち上がり時間tr(例えば1.4ms)を示しており、例えば時刻t22〜t23の期間は、左目用シャッタ20Lが開状態から閉状態へ遷移する立ち下がり時間tf(例えば0.1ms)を示している。
【0065】
同様に、図5(D)において、例えば時刻t11〜t21の期間は、右目用シャッタ20Rが閉状態から開状態へ遷移する立ち上がり時間tr(例えば1.4ms)を示しており、例えば時刻t13〜t24の期間は、右目用シャッタ20Rが開状態から閉状態へ遷移する立ち下がり時間tf(例えば0.1ms)を示している。通常左右で同じシャッタデバイスを用いるため、立ち上がり時間trおよび立ち下がり時間tfは左右で等しい。
【0066】
本実施の形態において、図2(C),(D)に示した液晶シャッタの開閉タイミングとの違いは、左目用シャッタ20Lが開き始める時刻および閉じ始める時刻が、シャッタの立ち上がり時間tr分早まっている点である。なお、右目用シャッタ20Rが開き始める時刻および閉じ始める時刻については、図2(C),(D)に示した開閉タイミングとの違いはない。すなわち、左目用シャッタ20Lと右目用シャッタ20Rとの開閉タイミングの位相差は、「tr+tw」である。
【0067】
本実施の形態において、バックライト12の制御方法は、基本的には図2(B)に示した場合と同じように、左右のシャッタ20L,20Rが共に開いている期間はバックライト12を消灯させ、左右のシャッタ20L,20Rが共に閉じている期間はバックライト12を点灯させる。図2(B)に示した動作タイミングとの違いは、左目用シャッタ20Lの立ち上がり期間trおよび右目用シャッタ20Rの立ち下がり期間tfにおいても、バックライト12を消灯させている点である。
【0068】
以上のようなバックライト12とシャッタメガネ20のタイミング制御により、左右のシャッタ20L,20Rの透過率がほぼ等しい状態で観察者に左右の画像を視認させることができる。また、画像の書き替え期間全てにおいて消灯するような表示方法(図9)と比較して、バックライト12が点灯している時間の割合が大きくなるため、液晶表示パネル11の温度を上昇させることができ、液晶の応答性を向上させることができる。
【0069】
[第2の実施の形態の第1の変形例]
図6(A)〜(D)は、図5(A)〜(D)に示した表示例に対する第1の変形例を示している。特に図6(A)は図6(A)と同様に、液晶表示パネル11での画像表示の応答タイミングを模式的に示し、図6(B)は図5(B)と同様に、バックライト12の点灯タイミングを模式的に示している。図6(C)は図5(C)と同様に、シャッタメガネ20における左目用シャッタ20Lの開閉タイミングを模式的に示し、図6(D)は図5(D)と同様に、右目用シャッタ20Rの開閉タイミングを模式的に示している。
【0070】
図6(A)に示した液晶表示パネル11の応答タイミングは、図5(A)と全く同じである。この第1の変形例では、左右のシャッタ20L,20Rの開閉タイミングが図5(C),(D)に示した状態とは左右逆の状態となっている。バックライト12の点灯タイミングもシャッタの開閉タイミングに対応して、図5(B)に示した状態とは左右逆の状態となっている。
【0071】
例えば左目用シャッタ20Lについては、図5(C)の例では、観察者に左目用画像Lを視認させる期間twにシャッタを開状態にすると共に、その期間twの後において連続する所定期間にもシャッタを開状態にしている。図5(C)の例では、左目用シャッタ20Lについての期間twはシャッタが閉状態から開状態に遷移した直後に設けられている。これに対して、図6(C)の例では、観察者に左目用画像Lを視認させる期間twにシャッタを開状態にすると共に、その期間twの前において連続する所定期間にもシャッタを開状態にしている。図6(C)の例では、左目用シャッタ20Lについての期間twはシャッタが開状態から閉状態に遷移する直前に設けられている。
【0072】
また、右目用シャッタ20Rについては、図5(D)の例では、観察者に右目用画像Rを視認させる期間twにシャッタを開状態にすると共に、その期間twの前において連続する所定期間にもシャッタを開状態にしている。図5(D)の例では、右目用シャッタ20Rについての期間twはシャッタが開状態から閉状態に遷移する直前に設けられている。これに対して、図6(D)の例では、観察者に右目用画像Rを視認させる期間twにシャッタを開状態にすると共に、その期間twの後において連続する所定期間にもシャッタを開状態にしている。図6(D)の例では、右目用シャッタ20Rについての期間twはシャッタが閉状態から開状態に遷移した直後に設けられている。
【0073】
この第1の変形例のような制御を行う場合にも、図5(A)〜(D)に示した表示例と同様の効果を得ることができる。
【0074】
[第2の実施の形態の第2の変形例]
図7(A)〜(D)は、図5(A)〜(D)に示した表示例に対する第2の変形例を示している。特に図7(A)は図5(A)と同様に、液晶表示パネル11での画像表示の応答タイミングを模式的に示し、図7(B)は図5(B)と同様に、バックライト12の点灯タイミングを模式的に示している。図7(C)は図5(C)と同様に、シャッタメガネ20における左目用シャッタ20Lの開閉タイミングを模式的に示し、図7(D)は図5(D)と同様に、右目用シャッタ20Rの開閉タイミングを模式的に示している。
【0075】
図7(A)に示した液晶表示パネル11の応答タイミングは、図5(A)と全く同じである。この第2の変形例では、左目用シャッタ20Lと右目用シャッタ20Rとの開閉タイミングの位相差が図5(A)〜(D)に示した表示例とは異なっている。図2(A)〜(D)に示した表示例では、左目用シャッタ20Lと右目用シャッタ20Rとの開閉タイミングの位相差が、「tr+tw」に設定されていたが、その位相差は「tr+tw」以外であっても良い。本実施の形態に係る立体表示システムにおいて、その位相差は、「tr+tw」以上、「T/2−tf」未満であれば、左右のシャッタ20L,20Rが共に閉じている期間を設けることができ、その期間にバックライト12を点灯させることにより液晶表示パネル11の温度を上昇させることができる。
【0076】
図7(A)〜(D)の表示例では、その位相差をT/4にした例を示している。この表示例では、図5(A)〜(D)の表示例と比較して、左右のシャッタ20L,20Rが共に閉じている期間(例えば時刻t24’〜t25)にバックライト12を点灯させることにより、図9(A)〜(C)に示した第2の比較例の表示例よりも液晶表示パネル11の温度を上昇させることができる。
【0077】
<その他の実施の形態>
本発明は、上記各実施の形態に限定されず種々の変形実施が可能である。
例えば、上記各実施の形態では、左目用画像と右目用画像とを2回ずつ交互に表示する場合を例に説明したが、左目用画像または右目用画像を連続表示する回数は2回に限らず、3回以上であっても良い。例えば、液晶表示パネル11において、同一の左目用画像を連続的に3回表示した後、同一の右目用画像を連続的に3回表示する、といった表示動作を行っても良い。
【符号の説明】
【0078】
11…液晶表示パネル、12…バックライト、13…ゲートドライバ、14…データドライバ、15…左右映像信号制御部、16…タイミング制御部、17…シャッタ制御部、18…バックライト制御部、19…赤外線エミッタ、20…シャッタメガネ、20L…左目用シャッタ、20R…右目用シャッタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示を行う表示パネルと、
前記表示パネルに向けて画像表示用の光を照射するバックライトと、
互いに独立して開閉制御される左目用シャッタと右目用シャッタとを有するシャッタメガネと、
前記表示パネルに左目用画像と右目用画像とを時分割で交互に表示させる表示制御部と、
前記バックライトの点灯状態の制御を行うバックライト制御部と、
前記表示パネルに表示される画像の表示状態に応じて、前記左目用シャッタと前記右目用シャッタとの開閉状態を制御するシャッタ制御部と
を備え、
前記シャッタ制御部は、前記左目用シャッタと前記右目用シャッタとの開閉状態が同じとなる期間を含むように開閉状態を制御し、
前記バックライト制御部は、少なくとも前記左目用シャッタと前記右目用シャッタとが共に開状態となる期間では前記バックライトを消灯させる制御を行う
立体表示システム。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記シャッタメガネの開閉状態に関わらず、前記左目用シャッタと前記右目用シャッタとが共に開状態となる期間も含めて常時、前記表示パネルに画像を表示させる
請求項1に記載の立体表示システム。
【請求項3】
前記バックライト制御部は、少なくとも前記左目用シャッタと前記右目用シャッタとが共に閉状態となる期間では前記バックライトを点灯させる制御を行う
請求項1に記載の立体表示システム。
【請求項4】
前記表示制御部は、前記表示パネルにおいて、同一の前記左目用画像と同一の前記右目用画像とをそれぞれ2回以上ずつ連続的に表示させ、連続する複数の前記左目用画像と連続する複数の前記右目用画像とを交互に表示させる制御を行う
請求項1に記載の立体表示システム。
【請求項5】
前記シャッタ制御部は、前記表示パネルに表示される画像の表示状態に応じて、前記左目用シャッタのみが開状態となる期間と、前記右目用シャッタのみが開状態となる期間と、前記左目用シャッタと前記右目用シャッタとが共に開状態となる期間と、前記左目用シャッタと前記右目用シャッタとが共に閉状態となる期間とが含まれるように開閉状態を制御し、
前記バックライト制御部は、前記左目用シャッタのみが開状態となる期間と、前記右目用シャッタのみが開状態となる期間においても、前記バックライトを点灯させる制御を行う
請求項3に記載の立体表示システム。
【請求項6】
前記シャッタ制御部は、
前記左目用シャッタについては、観察者に前記左目用画像を視認させる期間にシャッタを開状態にすると共に、前記左目用画像を視認させる期間の前または後において連続する所定期間にもシャッタを開状態とし、
前記右目用シャッタについては、観察者に前記右目用画像を視認させる期間にシャッタを開状態にすると共に、前記右目用画像を視認させる期間の前または後において連続する所定期間にもシャッタを開状態とするように開閉状態を制御する
請求項1に記載の立体表示システム。
【請求項7】
前記シャッタ制御部は、
前記表示パネルにおいて片目あたりの画像を表示する周期をTとし、観察者に前記左目用画像または前記右目用画像を視認させる期間をtwとしたとき、前記左目用シャッタと前記右目用シャッタとの開閉タイミングの位相差が、
tw以上、T/2未満
となるように開閉状態を制御する
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の立体表示システム。
【請求項8】
前記シャッタ制御部は、
前記左目用シャッタまたは前記右目用シャッタが閉状態から開状態へと遷移する立ち上がり時間をtr、
前記左目用シャッタまたは前記右目用シャッタが開状態から閉状態へと遷移する立ち下がり時間をtfとしたとき、
前記左目用シャッタと前記右目用シャッタとの開閉タイミングの位相差が、
tr+tw以上、T/2−tf未満
となるように開閉状態を制御する
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の立体表示システム。
【請求項9】
前記バックライト制御部は、
前記左目用シャッタおよび前記右目用シャッタのうち開閉タイミングの位相が進んでいる方のシャッタの立ち上がり期間trにおいても、前記バックライトを消灯させる制御を行う
請求項8に記載の立体表示システム。
【請求項10】
前記バックライト制御部は、
前記左目用シャッタおよび前記右目用シャッタのうち開閉タイミングの位相が遅れている方のシャッタの立ち下がり期間tfにおいても、前記バックライトを消灯させる制御を行う
請求項8に記載の立体表示システム。
【請求項11】
画像表示を行う表示パネルと、
前記表示パネルに向けて画像表示用の光を照射するバックライトと、
開閉制御される左目用シャッタと右目用シャッタとを有するシャッタメガネと
を備え、
前記左目用シャッタと前記右目用シャッタとが共に開状態となる期間を含み、
前記左目用シャッタと前記右目用シャッタとが共に開状態となる期間では前記バックライトを消灯させる
立体表示システム。
【請求項12】
前記表示パネルは、前記シャッタメガネの開閉状態に関わらず、前記左目用シャッタと前記右目用シャッタとが共に開状態となる期間も含めて常時、画像の表示を行う
請求項11に記載の立体表示システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−252943(P2011−252943A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124615(P2010−124615)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】