説明

第13族金属窒化物結晶の製造方法および半導体デバイスの製造方法

【課題】GaN結晶などの第13族金属窒化物結晶を安定で継続的に成長させることができる方法を提供する。
【解決手段】第13族金属窒化物結晶を成長させる液中の窒素元素と第13族金属元素のモル比(N/第13族金属)を3.5〜50の範囲内に保持する。窒化物の添加は、第13族金属窒化物結晶を成長させる液中に断続的に行ってもよいし、連続的に行ってもよいが、より安定で継続的な結晶成長を実現するためには、連続的に窒化物の添加を行うことが好ましい。窒化物の添加方法は特に制限されず、気相の窒化物、液相の窒化物、固相の窒化物のいずれを液中に添加してもよい。GaNなどの第13族金属窒化物を添加すれば、液中の窒素元素と第13族金属元素のモル比も調整することができる。また、液中には、窒化物自体を添加せずに、窒化物を徐々に液中に供給することができる固体状の窒化物供給化合物を添加してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GaN結晶等の第13族金属の窒化物結晶の製造方法および該製造方法を用いた半導体デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化ガリウム(GaN)に代表される第13族金属と窒素との化合物結晶は、発光ダイオード、レーザダイオード、高周波対応の電子デバイス等で使用される物質として有用である。GaNの場合、実用的な結晶の製造方法としては、サファイア基板または炭化珪素等のような基板上にMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法により気相エピタキシャル成長を行う方法が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
しかし、上記方法では、格子定数および熱膨張係数の異なる異種基板上にGaN結晶をエピタキシャル成長させるため、得られたGaN結晶には多くの格子欠陥が存在する。そのような格子欠陥が多く存在するGaN結晶を用いた場合、電子素子の動作に悪影響を与え、青色レーザ等の応用分野で用いるためには満足すべき性能を発現することはできない。このため、近年、基板上に成長したGaNの結晶の品質の改善、GaNの塊状単結晶の製造技術の確立が強く望まれている。
【0004】
現在、気相法によるヘテロエピタキシャルGaN結晶成長法では、GaN結晶の欠陥濃度を減らすために、複雑かつ長い工程が必要とされている。このため、最近では、液相法によりGaNの単結晶化について精力的な研究がなされており、窒素とGaを高温高圧下で反応させる高圧法(非特許文献2参照)が提案されているが、過酷な反応条件のため工業的に実施することは困難である。そこで、反応条件をより低圧化させたGaN結晶成長方法の報告が多くなされている。例えば、GaとNaN3とを昇圧下で反応させる方法(非特許文献3)や、フラックス成長法(特許文献3、非特許文献4、5、8、9参照)等が提案されている。フラックスにはアルカリ金属が使われる場合が多いが、Ga融液にアルカリ金属を添加した合金融液を用いても、この合金融液に溶解するN量またはGaN量が非常に小さいため、GaN結晶を大型化することが困難とされている。さらに、アモノサーマル法によるGaNの合成法(非特許文献6参照)も報告されているが、結晶サイズと格子欠陥数に問題があり、また製造装置が高価なことから工業化されるに至っていない。
【0005】
また、GaN粉末とアルカリ金属ハロゲン化物の混合物を加熱し、GaN結晶を作成する方法も提案されているが(特許文献1参照)、アルカリ金属ハロゲン化物へのGaNの溶解度は小さく、かつ窒素を安定に溶解させるために高圧で結晶成長を行う必要があるため、この方法は工業的に結晶成長を行う上で不利である。また、非特許文献7にもGaN粉末とアルカリ金属ハロゲン化物の混合物を用いた結晶成長が報告されているが、特許文献1と同様の技術と考えられる。また特許文献2にはリチウムの化合物を補助溶融剤として用いると記載されているが、この文献では溶融塩を用いた溶液を用いておらず、合金融液からの結晶成長であるため非特許文献4、5等と同様の問題を抱えている。
【0006】
このような問題に対処する技術として、Li3GaN2などの複合金属窒化物をイオン性溶媒に溶解した溶液または融液を作成し、その溶液や融液中でGaNの結晶を成長させる方法が提案されている(特許文献4参照)。この方法では、以下の式(1)で表される平衡を溶液や融液からLi3Nを蒸発させることにより右に偏らせてGaN結晶の成長を連続的に進行させている。Li3Nの蒸発を積極的に進めるために、反応は低圧下の開放系で行うことが推奨されている。
【数1】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−112718号公報
【特許文献2】中国特許公開第1288079A号公報
【特許文献3】特開2005−306709A号公報
【特許文献4】特開2007−84422号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】J. Appl. Phys. 37 (1998) 309頁
【非特許文献2】J. Crystal Growth 178 (1977) 174頁
【非特許文献3】J. Crystal Growth 218 (2000) 712頁
【非特許文献4】J. Crystal Growth 260 (2004) 327頁
【非特許文献5】金属 Vol.73 No.11(2003)1060頁
【非特許文献6】Acta Physica Polonica A Vol.88 (1995) 137頁
【非特許文献7】J. Crystal Growth Vol.281 (2005) 5頁
【非特許文献8】J. Mater. Sci. Ele. 16 (2005) 29項
【非特許文献9】J. Crystal Growth 284 (2005) 91頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、本発明者らが特許文献4に記載される方法を種々検討したところ、得られるGaN結晶の形状にばらつきが生じやすいという課題があることが明らかになった。特に、比較的厚いGaN結晶を成長させようとすると徐々に成長速度が低下し、安定で継続的な結晶成長が困難であるという課題があることも明らかになった。また、得られる結晶中に窒素欠陥が生じて、結晶の品質が低下しやすいという課題があることも明らかになった。このため、工業的に利用するには解決すべき課題が残されている。
【0010】
そこで本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために、GaN結晶などの第13族金属窒化物結晶を安定で継続的に成長させることができる方法を提供することを本発明の目的として検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
従来の方法では安定で継続的な結晶成長が困難である理由は、なかなか明らかにすることができなかったが、本発明者らは種々の検討を重ねた結果、結晶が成長する液中における窒素元素と第13族金属元素のモル比が重要であることを初めて解明することができた。すなわち、従来の方法では、窒素元素と第13族金属元素のモル比を高い値に保持することができないために、安定で継続的な結晶成長が妨げられ、結晶成長しても品質が低下してしまうことを突き止めた。このような解析に基づいて、本発明者らは、結晶を成長させる液中に十分な量の窒素成分を溶解させて、窒素元素と第13族金属元素のモル比を高い値に保持することにより結晶を安定で継続的に成長させ得ることを見出し、以下の本発明を提供するに至った。
【0012】
[1] 窒素元素と第13族金属元素を含む液中において第13族金属窒化物結晶を成長させる際に、前記液中の窒素元素と第13族金属元素のモル比(N/第13族金属)を3.5〜50の範囲内に保持することを特徴とする第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[2] 前記液中の窒素元素と第13族金属元素のモル比(N/第13族金属)を5〜20の範囲内に保持することを特徴とする[1]に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[3] 前記液から窒化物またはN2の少なくとも一方が蒸発するのを抑制することにより、前記液中の窒素元素と第13族金属元素のモル比を制御することを特徴とする[1]または[2]に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[4] 前記液を入れた容器に貫通孔を有する蓋を取り付けた状態で結晶成長させることにより、前記液から窒化物またはN2の少なくとも一方が蒸発するのを抑制することを特徴とする[3]に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[5] 前記液中に窒化物を溶解することにより、前記液中の窒素元素と第13族金属元素のモル比を制御することを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[6] 固体状の窒化物供給化合物を前記液と接触させて、前記結晶成長中に前記固体状の窒化物供給化合物から窒化物を前記液中に溶出することを特徴とする[5]に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[7] 前記液と接触するように固体状の窒化物供給化合物を設置し、前記結晶成長中に前記固体状の窒化物供給化合物から窒化物を前記液中に溶出することを特徴とする[6]に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[8] 前記固体状の窒化物供給化合物が第13族金属元素および第13族以外の金属元素素を含有する固体状の複合金属窒化物であることを特徴とする[7]に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[9] 前記複合金属窒化物がLi3GaN2であることを特徴とする[8]に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[10] 前記固体状の窒化物の粒径が10μm以上であることを特徴とする[7]〜[9]のいずれか一項に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[11] 前記液中に溶解する窒化物がLi3Nであることを特徴とする[5]〜[10]のいずれか一項に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[12] 前記結晶成長中に前記液中に添加する窒化物の量(MN)に対する、前記液内における第13族金属窒化物結晶の析出量(M13N)のモル比(MN/M13N)が0.1〜100となるように、前記窒化物の添加量を制御することを特徴とする[5]〜[11]のいずれか一項に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[13] 前記結晶成長中に前記液中に添加する窒化物の添加速度(RN)に対する、前記液内における第13族金属窒化物結晶の析出速度(R13N)のモルベースの速度比(RN/R13N)が0.1〜100となるように、前記窒化物の添加量を制御することを特徴とする[5]〜[12]のいずれか一項に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[14] 前記液中のナトリウム濃度、前記液中のカリウム濃度、または前記液中のセシウム濃度の少なくとも1つの濃度を制御することを特徴とする[1]〜[13]のいずれか一項に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[15] 前記液に塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化セシウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化セシウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化セシウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、およびフッ化セシウムからなる群より選択される少なくとも一種を添加することにより、前記液中の窒素元素と第13族金属元素のモル比を制御することを特徴とする[1]〜[14]のいずれか一項に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[16] 前記結晶成長中に、前記液を攪拌することを特徴とする[1]〜[15]のいずれか一項に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[17] 前記攪拌を前記液中に浸漬したシードを回転させることにより行うことを特徴とする[16]に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[18] 前記液が溶融塩を含むことを特徴とする[1]〜[17]のいずれか一項に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[19] シード表面上に厚み10μm以上の第13族金属窒化物結晶を成長させることを特徴とする[1]〜[18]のいずれか一項に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
[20] [1]〜[19]のいずれか一項に記載の製造方法により第13族金属窒化物結晶を製造する工程を有することを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の製造方法によれば、第13族金属窒化物結晶を安定で継続的に成長させることができる。特に従来の方法に比べて厚い結晶を効率よく容易に製造することができる。また、本発明の半導体デバイスの製造方法によれば、パワーICや高周波対応可能な半導体デバイスを製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1で用いた反応装置を説明するための概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の第13族金属窒化物結晶の製造方法、および半導体デバイスの製造方法について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の代表例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。また第13族金属は、周期表第13族金属を意味する。
【0016】
[窒素元素と第13族金属元素のモル比]
(モル比の範囲)
本発明の製造方法は、窒素と第13族金属を含む液中において第13族金属窒化物結晶を成長させる際に、前記液中の窒素元素と第13族金属元素のモル比を3.5〜50の範囲内に保持することを特徴とする。液中の窒素元素と第13族金属元素のモル比とは、液中に存在している窒素原子のモル数を液中に存在している第13族金属原子のモル数で割った値を意味する(N原子のモル数/第13族金属原子のモル数)。また、ここでいう窒素原子と第13族金属原子のモル数には、液中に原子状窒素や原子状第13族金属として存在している原子のモル数だけでなく、窒素原子や第13族金属原子を含む分子、イオン、錯体、錯イオンを構成する窒素原子や第13族金属原子のモル数も含まれる。
【0017】
窒素元素と第13族金属元素のモル比は、4〜30であることが好ましく、5〜20であることがより好ましく、7〜18であることがさらに好ましい。窒素元素と第13族金属元素のモル比が50超である場合は、第13族金属窒化物結晶が溶液に再溶解(メルトバック)し、結晶成長速度が遅くなり、また結晶表面が荒れてしまうという問題が生じやすい。また、窒素元素と第13族金属元素のモル比が3.5未満である場合は、第13族金属窒化物結晶の成長速度が遅いうえ、得られる結晶の大きさが小さくなってしまうという問題が生じやすい。
【0018】
なお、モル比を計算する際に対象となる第13族金属は、結晶成長させようとしている第13族金属窒化物結晶の第13族金属である。したがって、GaN結晶を成長させようとしている場合は、モル比はN/Gaのモル比となり、それ以外の第13族金属元素は考慮しない。
窒素元素と第13族金属元素のモル比を3.5〜50の範囲内に保持するためには、種々の方法を採用することができる。代表的な方法について、以下において説明する。これらの方法は適宜組み合わせて採用することが好ましい。
【0019】
(蓋によるモル比の制御)
例えば、第13族金属窒化物結晶を成長させる液から窒化物またはN2の少なくとも一方が蒸発するのを抑制することにより、窒素元素と第13族金属元素のモル比を制御することができる。液から窒化物やN2が自由に蒸発するような開放系で結晶を成長させる場合は、液から窒化物やN2が次々と蒸発するため、液中の窒素元素と第13族金属元素のモル比は徐々に低下して行く。このため、時間の経過とともに結晶成長速度が低下し、やがて結晶成長が停止してしまう。このような窒素元素と第13族金属元素のモル比の減少に伴う弊害を回避するために、液から窒化物またはN2の少なくとも一方が蒸発するのを種々の手段により抑制する方法を好ましく採用することができる。
【0020】
具体的には、液を入れた反応容器に蓋をする方法を挙げることができる。ここでいう蓋は、反応容器内において気相が占める体積を制限することにより、液からの窒化物やN2の蒸発を抑制する作用を有する。蓋には貫通孔が設けられていてもよく、貫通孔は常時開いていても、開閉できるものであってもよい。貫通孔を常時開いておく場合は、貫通孔を通して反応容器外に放出される窒化物やN2の量が液から反応容器内の気相に蒸発する窒化物やN2の量と適度にバランスするように孔のサイズを調整しておくことが好ましい。
貫通孔の通気可能な断面積は、例えば0.1〜200mm2とすることができ、1〜50mm2とすることが好ましく、2〜20mm2とすることがより好ましい。貫通孔を開閉する場合は、液中の窒素元素と第13族金属元素のモル比が低下したときに貫通孔を閉じ、液中の窒素元素と第13族金属元素のモル比が上昇したときに貫通孔を開けるように制御することが好ましい。このような制御は、溶液中の窒素元素と第13族金属元素のモル比のモニタリング結果や経験則に基づいて自動で行うことができる。また、別の態様として、貫通孔の孔径を変えることにより制御することも可能である。すなわち、液中の窒素元素と第13族金属元素のモル比が低下したときに貫通孔の孔径を小さくし、液中の窒素元素と第13族金属元素のモル比が上昇したときに貫通孔を広げるように制御することができる。さらに別の態様として、蓋に設けられた複数の貫通孔の開閉個数を制御する方法もある。すなわち、液中の窒素元素と第13族金属元素のモル比が低下したときに閉状態にする貫通孔の数を増やし、液中の窒素元素と第13族金属元素のモル比が上昇したときに開状態にする貫通孔の数を増やすように制御することができる。
【0021】
(窒化物添加によるモル比の制御)
窒素元素と第13族金属元素のモル比を3.5〜50の範囲内に保持するための別の方法として、第13族金属窒化物結晶を成長させる液中に窒化物を添加する方法も好ましく採用することができる。この方法は、上記の蓋によるモル比の制御と組み合わせて採用することが好ましい。ここでいう窒化物としては、Li3N、Ca32、Mg32、Ba32、Li3GaN2、GaNなどを挙げることができ、Li3Nが好ましい。
【0022】
窒化物の添加は、第13族金属窒化物結晶を成長させる液中に断続的に行ってもよいし、連続的に行ってもよい。より安定で継続的な結晶成長を実現するためには、連続的に窒化物の添加を行うことが好ましい。窒化物の添加方法は特に制限されず、気相の窒化物、液相の窒化物、固相の窒化物のいずれを液中に添加してもよい。固相の窒化物を添加する場合は、Li3Nのように速やかに液中に溶解する窒化物を用いてもよいし、GaNのように徐々に溶解する窒化物を用いてもよく、これらを組み合わせて用いて液中への窒素供給速度を調整してもよい。GaNなどの第13族金属窒化物を添加すれば、液中の窒素元素と第13族金属元素のモル比も調整することができる。また、液中には、窒化物自体を添加せずに、窒化物を徐々に液中に供給することができる固体状の窒化物供給化合物を添加してもよい。また、窒化物を含む液体または固体を添加してもよい。
【0023】
窒化物を徐々に液中に供給することができる固体状の窒化物供給化合物を用いる場合は、結晶成長開始前にあらかじめ液と固体状の窒化物供給化合物が接触する状態にしておくことが好ましい。接触の態様は特に制限されないが、例えば固体状の窒化物供給化合物の一部ないし全部が液中に浸漬している態様を例示することができる。具体的には、固体状の窒化物供給化合物が液下方に存在している態様や、窒化物供給化合物の粒子が液中に分散している態様を挙げることができる。液と接触させるときに、ある程度の粒径を有する固体状の窒化物供給化合物を用いれば、徐々に窒化物を液中に放出することができるため好ましい。粒径は、10μm〜10cmであることが好ましく、20μm〜5cmであることがより好ましく、100μm〜1cmであることがさらに好ましい。粒径が10μm以上であれば、固体状の窒化物供給化合物から窒化物が短時間ですべて溶出してしまったり、液中の対流により固体状の窒化物供給化合物が舞い上がってシード表面に付着し結晶成長を阻害したり結晶中に不純物を混入させたりする問題が生じにくい傾向がある。また、粒径に分布を持たせたり、形状に工夫を持たせることにより、時間の経過に伴う窒化物の放出量を制御することも可能である。さらに、固体状の窒化物供給化合物と窒化物をともに添加することも可能であり、特に固体状の窒化物供給化合物の添加量が少量である場合は窒化物を組み合わせて添加することにより液中の窒素元素と第13族金属元素のモル比の調整がより容易になる。このような固体状の窒化物供給化合物としては、第13族金属元素および第13族以外の金属元素を含有する固体状の複合金属窒化物が特に好ましく、例えばLi3GaN2、Ca3Ga24、Ba3Ga24、Mg3GaN3、CaGaN等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属と第13族金属との複合窒化物や、上記複合窒化物とLi3N、Ca32、Ba32、Mg32、GaNなどの窒化物との焼結体を挙げることができ、特にLi3GaN2とLi3Nの焼結体が好ましい。粒径10μm以上の焼結体を用いることにより、焼結体からのLi3Nの溶液中への放出速度が抑制され、結晶成長中に徐々にLi3Nを溶液に溶解させることができる。
【0024】
本発明の製造方法で用いられる第13族金属と第13族以外の金属元素を含有する複合金属窒化物は、第13族金属の窒化物粉体と第13族金属以外の金属の窒化物粉体(例えばLi3N、Ca32)とを混合した後、温度を上げて固相反応させるなどの方法により得ることができる。第13属の金属としては、Ga、Al、In、GaAl、GaIn等を好ましい例として挙げることができる。また、第13族以外の金属元素としては、Li、Na、Ca、Sr、Ba、Mg等を挙げることができ、中でもLi、Ca、Ba、Mgを好ましい元素として挙げることができる。好ましい複合金属窒化物としては、Li3GaN2、Ca3Ga24、Ba3Ga24、Mg3GaN3、CaGaN等のアルカリ金属ま
たはアルカリ土類金属と第13族金属との複合金属窒化物を挙げることができ、Li3GaN2がより好ましい。Li3GaN2を用いる場合には、Li3GaN2に含まれている不純物Li3Nを除去したり逆にLi3Nを添加したりしてあらかじめLi3Nの含有量を調節しておくことが好ましい。本発明では、2種類以上の複合金属窒化物を用いてもよい。
【0025】
本発明の製造方法で用いられる複合金属窒化物は、通常第13族金属と13族以外の金属元素との合金をつくっておき、窒素雰囲気中で加熱することによっても容易に合成できる。例えばLi3GaN2は、Ga−Li合金を窒素雰囲気中で600〜800℃で加熱処理することによって作製することができる。通常、アモノサーマル法等では、目的の第13族金属窒化物結晶の微粉または微結晶を合成し、これを溶媒に溶解するが、こうしたプロセスから較べると、非常に容易に原料を作ることができ、工業的な価値は大きい。また、複合金属窒化物は化学的に合成された結晶性のものでなくともよく、例えば、それらの合金からなるターゲットを反応性スパッターにより、窒素プラズマとの反応で作製したサファイア基板や石英等の基板上に生成した化学量論組成からずれた混合窒化物膜であってもよい。こうしたドライプロセスで作られた複合金属窒化物薄膜は、溶融塩と接触させておくと、窒化物薄膜から溶融塩へ窒化物が少しずつ溶解し、界面付近に拡散支配の窒化物溶解相を形成でき、シードをこの界面付近に置くことによって容易に結晶成長が達成できる。また、ドライプロセスを用いる特徴としては、化学的に合成が難しいような窒化物でも容易に作製ができることが挙げられる。なお、ここでは固体状の複合金属窒化物の合成法を説明したが、本発明では溶液中で2種の窒化物を反応させて溶液中に溶解した複合金属窒化物を合成し、これを液状の複合金属窒化物としてそのまま結晶成長に用いても構わない。
【0026】
第13族金属窒化物結晶を成長させる液中には、上記のように、窒化物を含む液体または固体を添加することもできる。例えば窒化物としてLi3Nを固体として液中に添加す
るかわりに、以下の方法にしたがってLi3Nを含む固体を添加することができる。まず、Li3NをLiClに加え、得られた混合物を融点以上に加熱してLi3NがLiClに溶融した混合溶液を作成する。この混合溶液を冷却し混合固体とし、その混合固体を液に添加する。添加するLi3Nの量が少ない場合(例えば1mg以下の場合)にLi3Nを単独で添加する手法では1mg以下の重量を測定添加することは難しいため正確な添加が困難となる。しかし上記Li3NとLiClを含む混合固体を添加する手法では、例えば1mgのLi3Nと1gのLiClを混合して溶解し、冷却して作成した混合固体中のLi3N濃度は0.1%となるため、0.1mgのLi3Nを溶液に添加する際には100mgの混合固体を添加すれば良く、添加量の精密な制御が容易となる利点がある。
【0027】
窒化物や窒化物供給化合物を添加する際には、反応系内に酸素または水分が入らないように、添加する物質および添加時に反応系内に同伴される気相に酸素または水分が入らないように操作することが好ましい。
また、窒化物や窒化物供給化合物の添加量を決定するために、液中の窒素濃度を測定したり、液中の窒素元素と第13属金属元素のモル比を分析したりして、その結果を添加量にフィードバックすることが特に好ましい。液中のモル比を分析するためには結晶成長中に液をサンプリングし組成分析する手法や、電気化学、光学的な手法で液中のモル比を算出することもできる。これらのモル比の分析の際にも反応系内に酸素や水分の混入を防ぐことが好ましい。
【0028】
(Na濃度等によるモル比の制御)
窒素元素と第13族金属元素のモル比を3.5〜50の範囲内に保持するための別の方法として、第13族金属窒化物結晶を成長させる液中におけるNa濃度を制御する方法も好ましい。この方法も、上記の蓋によるモル比の制御や窒化物添加による制御と組み合わせて採用することが好ましい。液中のモル比を組成分析するためには、任意の元素分析手法を用いることができるが、例えばGa濃度の分析にはICP−AES法が好ましく、NおよびNa濃度の分析にはイオンクロマトグラフィー法が好ましい。
【0029】
本発明者らの検討により、時間の経過に伴って第13族金属窒化物結晶を成長させる液中におけるNa濃度は低下し、それに連動して液中の窒素元素と第13族金属元素のモル比も低下する傾向があることが明らかになっている。そこで、結晶成長開始前の液中のNa濃度をあらかじめ高くしておいたり、結晶成長中に断続的または連続的にNaまたはNa化合物を添加することによりNa濃度を維持しておくことが好ましい。このとき、NaまたはNa化合物は気相、液相、固相のいずれの状態でも溶液に添加することができる。Na化合物としては、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、フッ化ナトリウムなどを挙げることができる。液中におけるNaの濃度は、0.1〜35重量%に維持することが好ましく、0.5〜10重量%に維持することがより好ましく、1.5〜8重量%に維持することがさらに好ましい。
【0030】
なお、Na濃度の代わりにK濃度やCs濃度によりモル比を制御することも可能である。例えば、K化合物として塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、フッ化カリウムを使用することができ、Cs化合物として塩化セシウム、臭化セシウム、ヨウ化セシウム、フッ化セシウムを使用することができる。本発明では、Na濃度やK濃度で調整することが好ましく、Na濃度で調整することがより好ましい。
【0031】
(液中の窒化物量の制御)
本発明では、上記のような方法を適宜組み合わせることにより、結晶成長させる液中の窒素元素と第13族金属元素のモル比を3.5〜50の範囲内に保持するが、一段と安定かつ継続的な結晶成長を実現するためには、特に液中の窒化物量の変動を最小限にとどめることが好ましい。
【0032】
そのためには、前記結晶成長中に前記液中に添加する窒化物の量(MN)に対する、前記液内における第13族金属窒化物結晶の析出量(M13N)のモル比(MN/M13N)が0.1〜100となるように前記窒化物の添加量を制御することが好ましい。モル比(MN/M13N)は1.1〜10となるように制御することがより好ましく、1.5〜3.0なるように制御することがさらに好ましい。また、前記結晶成長中に前記液中に添加する窒化物の添加速度(RN)に対する、前記液内における第13族金属窒化物結晶の析出速度(R13N)のモルベースの速度比(RN/R13N)が0.1〜100となるように、前記窒化物の添加量を制御することが好ましい。速度比(RN/R13N)は1.1〜10となるように制御することがより好ましく、1.5〜3.0となるように制御することがさらに好ましい。
【0033】
(攪拌)
さらに一段と安定かつ継続的な結晶成長を実現するために、結晶成長させる液は攪拌することが好ましい。攪拌することにより、液中の濃度むらをなくすことができるとともに、反応効率を上げることができる。攪拌は、反応容器内に設けられた攪拌子を回転させることにより行ったり、シードを回転させることにより行ったりすることができる。シードを回転させる場合には、回転速度を通常0.1〜100rpmとし、0.5〜80rpmとすることが好ましく、5〜50rpmとすることがより好ましい。従来の方法では、攪拌することにより液中の窒素元素と第13族金属元素のモル比がさらに低下してしまい、反応効率を下げていたが、本発明の方法では攪拌することにより一段と安定で継続的な結晶成長を実現することができる。
【0034】
[窒素と第13族金属を含む液]
本発明の製造方法は、窒素と第13族金属を含む液中で第13族金属窒化物結晶を成長させる。ここで用いる液に含まれる第13族金属は、結晶成長させようとしている結晶を構成する第13族金属である。本発明で用いる液は溶液または融液であり、イオン性溶媒を含むことが好ましい。
【0035】
(イオン性溶媒)
イオン性溶媒としては、以下の(A)〜(D)の機能を有するものを選択することが好ましい。なお、複合金属窒化物を使用しない場合は、(B)および(C)の機能を有するものを選択することが好ましい。
(A)複合金属窒化物を溶解し、溶液を作成する機能。
(B)生成する第13族金属窒化物結晶を溶解する機能。
(C)液からの第13族金属窒化物結晶の析出を促進させる機能。
(D)複合金属窒化物に含まれる第13族以外の金属元素の窒化物を溶解させる機能。
【0036】
(A)の機能を発揮させるために、例えば、複合金属窒化物に含まれる第13族以外の金属元素を含むイオン性溶媒を用いることができる。これはイオン性溶媒に複合金属窒化物に含まれるイオンと同種のイオンが溶媒に含まれていると、イオンの親和性が高く複合金属窒化物が溶解しやすいからである。この点で、例えば、複合金属窒化物としてLi3GaN2を用いる場合には、イオン性溶媒としてLiClを用いることが好ましい。
【0037】
(B)と(C)の機能は一見相反する機能であるが、この2点はいずれも液相からの結晶成長に重要な機能である。大型で高品質な結晶を析出させるには、生成する第13族金属窒化物結晶の溶解と析出の両者を適切に制御することが好ましい。
(B)の機能がないと、本願発明の製造方法で第13族金属窒化物が生成した際に直ちに固体として析出してしまい、大型で高品質な結晶を得ることが困難となる。よって、イオン性溶媒は第13族金属窒化物結晶を溶解する機能を有することが好ましい。
(B)の機能を発揮させるために、例えば、複合金属窒化物としてLi3GaN2を用いる場合にはLiClとLi3Nの混合イオン性溶媒を用いることができる。これはLi3Nの存在により、GaNが溶媒に溶解するためである。Li3NはLiClと共存することで、低温で液相になりイオン性溶媒となる。複合金属窒化物を溶解させるイオン溶媒としてLiClのみを用いた場合であっても本発明の反応によりLi3Nが副生成物として生成し、系内でLiClとLi3Nの混合イオン性溶媒となる(後記式(3)参照)が、(B)の機能をより効果的に用いるために、あらかじめLiClとLi3Nを含む混合イオン溶媒を用い、これに複合金属窒化物を溶解させることも好適に行われる。
【0038】
(C)の機能の内容は以下の通りである。複合金属窒化物をイオン性溶媒に溶解させた溶液または融液から第13族金属窒化物結晶を析出させるためには、液温を下げたり、溶液または融液に温度差をつけたりする方法などが挙げられるが、これらの方法はいずれもイオン性溶媒に溶解する第13族金属窒化物の飽和溶解量が、温度を低下させることにより小さくなることを利用している。このため溶液または融液の温度を低下させたときに、第13族金属窒化物の飽和溶解量の減少量が大きいイオン性溶媒を用いると、得られる第13族金属窒化物の量が多くなり、大きな結晶を得ることができるので好ましい。
(C)の機能を発揮させるために、例えば、複合金属窒化物に含まれる第13族の金属元素を含まないイオン性溶媒を(A)(B)の機能を持つイオン性溶媒に添加して用いることができる。複合金属窒化物としてLi3GaN2を用いる場合にはNaClが好ましい。(B)と(C)の機能をあわせもつイオン性溶媒としては、例えば、LiClとNaClの混合イオン性溶媒や、LiCl,Li3N,NaClの混合イオン性溶媒を好適に用いることができる。
【0039】
(D)の機能の内容は以下の通りである。複合金属窒化物から第13族金属窒化物を生成する際には、副生成物として複合金属窒化物に含まれる第13族金属以外の元素の窒化物が生成する。この場合、副生成物が固体として析出すると、不純物として第13族金属窒化物結晶に取り込まれたり第13族金属結晶が成長する際の結晶核になったりするなどの問題が生じやすい。よって、イオン性溶媒は、副生成物、例えば複合金属窒化物に含まれる第13族金属以外の元素の窒化物を溶解する機能を持つことが好ましい。
(D)の機能を発揮させるために、例えば、複合金属窒化物としてLi3GaN2を用いる場合には、副生成物のLi3Nを溶解するLiClを溶媒に用いることが好ましい。
【0040】
(溶融塩)
本発明で用いるイオン性溶媒は溶融塩を主成分とすることが好ましい。具体的には、使用するイオン性溶媒の50重量%以上が溶融塩であることが好ましく、70重量%以上が溶融塩であることがより好ましく、90重量%以上が溶融塩であることがさらに好ましい。
【0041】
溶融塩の種類は、シードへのエピタキシャル成長を阻害しないものであれば良いが、原料である複合金属窒化物中の第13族金属元素以外の金属窒化物と化学的に親和力の強いものが好ましく、それらが化学平衡的に化合物をつくるものがより好ましい。例えば、ハロゲン化物、炭酸塩、硝酸塩、イオウ化物等を挙げることができる。また、例えば前記窒化物がLi3Nであるような場合は、この溶解量が多いLiClを含む溶融塩であることが好ましい。一般には、安定で窒素化合物の溶解性が高いハロゲン化物を用いることが好ましく、また溶融塩は、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を含む塩で窒素イオン源の生成反応に供されるような化合物であることがさらに好ましい。
【0042】
具体的には、溶融塩は、Li、Na、K等のアルカリ金属塩および/またはMg、Ca、Sr等のアルカリ土類金属塩からなる溶融塩であることが好ましい。さらに溶融塩は、LiCl、KCl、NaCl、CaCl2、BaCl2、CsCl、LiBr、KBr、CsBr、LiF、KF、NaF、LiI、NaI、CaI2、BaI2等の金属ハロゲン化物であることも好ましく、LiCl、KCl、NaCl、CsCl、CaCl2、BaCl2およびそれらの混合塩のいずれかであることも融点が下がるため好ましい。
【0043】
また溶融塩中の複合金属窒化物の溶解度および第13族金属窒化物の溶融度を制御するために、上記のように複数の塩の混合物を用いることもできる。複数の塩の混合物の溶融塩は2種類以上の塩を別々の固体として反応系内に導入し、加熱溶融させて作成することも可能であるが、混合塩たとえばLiClとNaClの混合塩を加熱溶融させて作成することが、系内の均一性の観点から望ましい。
【0044】
上記溶融塩に水等の不純物が含まれている場合は、反応性気体を吹き込んで予め溶融塩を精製しておくことが望ましい。反応性気体としては、例えば、塩化水素、ヨウ化水素、臭化水素、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム、ヨウ化アンモニウム、塩素、臭素、ヨウ素等を挙げることができ、塩化物の溶融塩に対しては、特に塩化水素を用いることが好ましい。
【0045】
また複合金属窒化物の溶解度を増加させるために溶融塩中に第13族金属元素以外の金属元素の窒化物を添加させることもできる。この第13族金属元素以外の金属窒化物としてはLi3N、Ca32などを用いることが好ましい。
【0046】
[シード]
本発明の製造方法では、シード上に第13族金属窒化物結晶を成長させることが好ましい。使用するシードは、第13族金属窒化物結晶であってもよいし、サファイア、SiC、ZnO等の異種基板であってもよい。好ましいのは、シードとして、第13族金属窒化物結晶または基板を用いる場合である。シードの形状は特に制限されず、平板状であっても、棒状であってもよい。また、ホモエピタキシャル成長用のシードであってもよいし、ヘテロエピタキシャル成長用のシードであってもよい。具体的には、気相成長させたGaN、InGaN、AlGaN等の13族金属窒化物のシードを挙げることができる。また、サファイア、シリカ、ZnO、BeO等の金属酸化物や、SiC、Si等の珪素含有物や、GaAs等の気相成長法等で基板として用いられる材料を挙げることもできる。これらのシードの材料は、本発明で成長させる第13族金属窒化物結晶の格子定数にできるだけ近いものを選択することが好ましい。棒状のシードを用いる場合には、最初にシード部分で成長させ、次いで水平方向にも結晶成長を行いながら、垂直方向に結晶成長を行うことによってバルク状の結晶を作製することもできる。
本発明の製造方法によれば、例えばシード上に厚みが10μm以上の第13族金属窒化物結晶を成長させることができる。また、30μm以上、70μm以上、140μm以上など任意の厚みの第13族金属窒化物結晶を成長させることができる。
【0047】
[反応容器]
本発明に用いられる反応容器は、熱的および化学的に安定な酸化物を主成分とする反応容器であることが好ましい。ここでいう主成分とは、反応容器内の溶液または融液に触れる壁面を構成する材質に含まれる酸化物成分において90重量%以上を占める成分を意味し、好ましくは反応容器内の溶液または融液に触れる壁面を構成する材質に含まれる酸化物成分において95重量%以上を占める成分である。反応容器が均一な材質からなる場合は、反応容器全体を構成する材質に含まれる酸化物成分において90重量%以上、好ましくは95重量%以上を占める成分に等しい。また、ここでいう酸化物は、Mg、Ca、Al、Ti、Y、Ce、La等の周期表第2〜3族金属元素を含む酸化物であることが好ましい。より好ましくは標準生成エネルギーが1000Kにおいて−930kJ/mol以下であり化学的に安定な酸化物、具体的にはY23、CaO、La23、MgOなどが好ましく、特に好ましくは標準生成エネルギーが1000Kにおいて−1000kJ/mol以下である酸化物、具体的にはY23、CaO、La23などが好ましい。
【0048】
反応容器内において第13族金属窒化物結晶を成長させる際の温度は、通常200〜1000℃であり、好ましくは400〜850℃、さらに好ましくは、600〜800℃である。また、第13族金属窒化物結晶を成長させる際の反応容器内の圧力は、通常10MPa以下であり、好ましくは3MPa以下、さらに好ましくは0.3MPa以下、より好ましくは0.11MPa以下である。
【0049】
[半導体デバイスの製造方法]
本発明の製造方法は、半導体デバイスの製造方法における第13族金属窒化物結晶を製造する工程に用いることができる。その他の工程における原料、製造条件および装置は一般的な半導体デバイスの製造方法で用いられる原料、条件および装置をそのまま適用できる。本発明の製造方法によれば、パワーIC、高周波対応可能な半導体デバイス等を製造することができる。
【実施例】
【0050】
以下に調整例、製造例、実施例、比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。まず、N/Ga比の制御法を具体的に説明した調整例を挙げ、次いで複合窒化物および焼結体の合成法を具体的に説明した製造例を挙げ、そのうえで窒化ガリウム結晶の製造方法を具体的に説明した実施例と比較例を挙げる。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。なお、本願においてN/Ga比とは、液中に含まれるN原子のモル数を液中に含まれるGa原子のモル数で割った値を意味する。
【0051】
[N/Ga比の制御法]
(調整例1)
石英製反応管内に、LiClを5g、Li3GaN2を0.5g入れたY23製第1るつぼと、NaClを1.75g、LiClを3.25g入れたY23製第2るつぼを横に並べて設置した。各るつぼには蓋をせず、石英製反応管に反応管用の蓋をした。その後、石英製反応管を電気炉に設置し、反応管内を真空に引き、窒素で置換した。100ml/minの窒素気流中において、電気炉による昇温を開始し、745℃に達した後にその温度で138時間保持した。第2るつぼから第1るつぼに気相経由でNaClが移動し、第1るつぼ内のNa濃度は0.80重量%となり、N/Ga比は4.4となった。
【0052】
(調整例2)
745℃における保持時間を235時間に変更した点を除いて参考例1と同じ方法を実施した。その結果、第1るつぼ内のNa濃度は1.26重量%となり、N/Ga比は5.1となった。
以上の調製例1および調製例2の方法に準じて、N/Ga比を所望の値に制御することができる。
【0053】
[複合窒化物および焼結体の合成法]
(製造例1)
酸素濃度が10ppmかつ露点が−70℃であるアルゴンボックス内において、金属ガリウム6.5gおよび金属リチウム2.1gをY23製ボートに入れ、ボートをバルブ付き石英製反応管に入れた。ボート内容物が酸素、水分に触れないようにバルブを閉じてから石英製反応管をアルゴンボックスから取出し電気炉に設置した。バルブを介して石英製反応管をガスラインに接続し、100Nml/minのアルゴンを石英製反応管内に流通させながら、ボート部の温度が700℃になるまで室温から1時間で昇温し、700℃で1時間保持した。その後、流通ガスを窒素100ml/minに切り替えて700℃で10時間窒化を行い、窒素流通のまま電気炉電源を切り室温まで自然放冷した。バルブを閉じた後石英製反応管をアルゴンボックス内に戻し、ボートから固体生成物を取り出し、乳鉢で所定の大きさに粉砕した。XRD測定により得られた固体生成物が複合窒化物Li3GaN2であることが確認された。
【0054】
(製造例2)
金属ガリウムを5.4g用いた以外は製造例1と同じ手法で複合窒化物の合成を行った。XRD測定により得られた固体生成物は複合窒化物Li3GaN2とLi3Nの焼結体であることが確認された。また焼結体中のGa濃度およびN濃度をそれぞれICP−AES法およびイオンクロマトグラフィー法で分析した結果、この焼結体1gにはLi3Nが70mg含まれていることが分かった。
【0055】
[窒化ガリウム結晶の製造方法]
(実施例1)
図1に示す反応容器を用いてGaN結晶を成長させた。
酸素濃度が10ppmで露点が−70℃であるアルゴンボックス内において、外径31mm、内径25mm、高さ200mmのY23製るつぼ(5)に、LiClを9.7g、NaClを0.3g、製造例1で合成した粒径2mm以上のLi3GaN2(7)(2mmのふるいを通過しなかったLi3GaN2:以下同じ)を1.0g入れてY23製蓋(11)を装着し、さらにるつぼ(5)を石英製反応管(4)に入れて反応管用の蓋をした。また、縦3mm、横15mm、厚み300μmのGaNシード(6)(面指数(10−1−1))をTaワイヤーで保持し、ワイヤーの他端を直径3mmの攪拌用のタングステン製シード保持棒(8)に取り付けた。シード保持棒(8)の先に取り付けたGaNシード(6)を、反応管用の蓋に設けられた挿入機構を通して石英製反応管(4)内に挿入し、さらにるつぼの蓋(11)に設けられた直径8mmの貫通孔(10)を通して挿入した。このとき、GaNシードはるつぼ内の混合物に接触しないように、反応管用の蓋の直下に保持した。実施例1で用いた反応装置では、るつぼの蓋に設けられた貫通孔(10)とシード保持棒(8)の間の空隙を通して、るつぼ内外が通気しているが、その通気量は蓋がない場合に比べると大幅に制限されている。また、シード保持棒(8)を石英製反応管(4)に挿通した挿入機構には通気性はない。石英製反応管の蓋に設けられているガス導入口(1)およびガス排気口(2)の各バルブを閉状態にすることにより石英製反応管(4)を密閉した。
【0056】
石英製反応管(4)を電気炉(3)に設置し、石英製反応管(4)内を真空に引き、その後ガス導入口(1)およびガス排気口(2)の各バルブを開状態とし窒素で置換する作業を2回繰り返した。その後、100ml/minの窒素気流中において、電気炉(3)による昇温を開始した。昇温開始から1時間後にるつぼ内の温度は745℃に達し、LiCl−NaClは溶融塩となった。745℃にさらに90時間保持し、過剰なLi3Nを除去してるつぼ内のN/Ga比の調整を行った。その後、温度を720℃に下げ、シード保持棒(8)を下げることによりGaNシードを溶融塩(9)中に浸漬し、シード保持棒(8)を回すことによりGaNシード(6)を20rpmで回転させながら720℃で210時間結晶成長させた。210時間経過後にシード保持棒(8)を引き上げることによりGaNシード(6)を溶融塩(9)から取り出し、石英製反応管(4)を室温まで冷却した。冷却後にアルゴンボックス内でるつぼ(5)を取り出し、固化した溶融塩の一部を分析用にサンプリングしてN/Ga比が11であることを確認した。なお、GaNシードを溶融塩中に浸漬して結晶成長を開始した時点における溶融塩をサンプリングし、塩中のモル比を組成分析したところN/Ga比は9.2であった。残りのるつぼ内容物やシートを水にて塩を溶解させて除去した後に、シードと塩中に析出したGaN単結晶(自発核発生GaN結晶)を取り出した。
【0057】
シードの厚みを膜厚計で測定した結果、シード上にGaNが成長したため、シードの厚みが140μm増加していることが確認された。シード上に成長したGaNは無色透明であった。また、自発核発生GaN結晶の重量とシード重量の増加分の比は3:1であった。
【0058】
(実施例2)
GaNシードを回転させなかった点を除いて実施例1と同じ方法を実施した。実施例1と同様にサンプリングした結果、結晶成長開始時の溶融塩中のN/Ga比は10であり、720℃で60時間結晶成長させた後の溶融塩中のN/Ga比は12であり、720℃で200時間結晶成長させた後の溶融塩中のN/Ga比は9.0であった。また、720℃で200時間結晶成長させた後のシード厚みを膜厚計で測定したところ、膜厚は70μm増加していた。シード上に成長したGaNは無色透明であった。
【0059】
(実施例3)
るつぼ内に入れたLi3GaN2の量を0.25gに変更し、さらにLi3N21mgも添加した点を除いて実施例1と同じ方法を実施した。実施例1と同様にサンプリングした結果、結晶成長開始時の溶融塩中のN/Ga比は10であり、720℃で210時間結晶成長させた後の溶融塩中のN/Ga比は9.3であった。また、シードの厚みを膜厚計で測定した結果、シード厚みは16μm増加していた。シード上に成長したGaNは無色透明であった。
【0060】
(実施例4)
るつぼ内に入れたLi3GaN2の量を0.5gに変更した点を除いて実施例1と同じ方法を実施した。実施例1と同様にサンプリングした結果、結晶成長開始時の溶融塩中のN/Ga比は9.1であり、720℃で200時間結晶成長させた後の塩中のN/Ga比は13であった。また、720℃で200時間結晶成長させた後のシード厚みを膜厚計で測定したところ、膜厚は30μm増加していた。シード上に成長したGaNは無色透明であった。
【0061】
(実施例5)
製造例2で示した方法で合成したLi3GaN2−Li3N焼結体1gを用い、GaNシードの面指数を(10−10)とし、過剰なLi3Nを除去してるつぼ内のN/Ga比を調整するための保持時間を70時間とし、温度を745℃で保持したままGaNシードを溶融塩に浸漬し、745℃で130時間成長した点を除いて実施例2と同じ方法で実施した。実施例1と同様にサンプリングした結果、結晶成長開始時の溶融塩中のN/Ga比は46であり、焼結体から溶液に徐々にLi3Nが放出されたため、50時間結晶成長させた後の溶液中のN/Ga比は17と高かった。また130時間結晶成長させた後のシード厚みを膜厚計で測定したところ、膜厚は70μm増加していた。
【0062】
(実施例6)
GaNシードの面指数を(10−10)とし、過剰なLi3Nを除去してるつぼ内のN/Ga比を調整するための保持時間を50時間とし、GaNシードを溶融塩中に浸漬させてから100時間結晶成長した点を除いて実施例4と同じ方法で実施した。720℃で100時間結晶成長させた後の塩中のN/Ga比は6.0であり、また720℃で100時間結晶成長させた後のシード厚みを膜厚計で測定したところ、膜厚は33μm増加していた。
【0063】
(実施例7)
GaNシードの面指数を(10−10)とし、GaNシードを溶融塩中に浸漬させてから8時間毎にLi3N1mgを添加し195時間結晶成長した点を除いて実施例1と同じ方法で実施した。745℃で195時間結晶成長させた後の塩中のN/Ga比は14.0であり、また745℃で195時間結晶成長させた後のシード厚みを膜厚計で測定したところ、膜厚は35μm増加していた。溶液中には膜厚が増加したGaNシードの他にも自発核発生結晶が生成しており、両者を合わせて本実施例で生成したGaN重量の総和は45mgであった。添加したLi3N量の総和は24mgであり、GaNの生成に伴ってLi3GaN2から溶液に溶解したLi3N量は19mgであるため、MN/M13NおよびRN/R13Nは2.3であった。
【0064】
(比較例1)
るつぼ用のY23製蓋を使用しなかった点を除いて実施例1と同じ方法を実施した。実施例1と同様にサンプリングした結果、結晶成長開始時の溶融塩中のN/Ga比は7.0であり、720℃で210時間結晶成長させた後の溶融塩中のN/Ga比は2.7であった。また、シードの厚みを膜厚計で測定した結果、シードの厚み増加は認められなかった。
【0065】
(比較例2)
Li3Nを添加しなかった点を除いて実施例3と同じ方法を実施した。720℃で210時間GaNシードを保持した後の溶融塩中のN濃度とGa濃度は測定限界以下であり、N/Ga比を得ることはできなかった。また、シードの厚みを膜厚計で測定した結果、シードの厚み増加は認められなかった。
【0066】
(比較例3)
製造例1で合成したLi3GaN2を粉砕して、10μmのふるいを通過した粒子を得た。この粒径10μm未満のLi3GaN2を用いた点を除いて実施例1と同じ方法を実施した。実施例1と同様にサンプリングした結果、結晶成長開始時の溶融塩中のN/Ga比は7.1であり、720℃で210時間GaNシードを保持した後の溶融塩中のN/Ga比は2.5であった。また、シードの厚みを膜厚計で測定した結果、シードの厚み増加は認められなかった。
【0067】
(比較例4)
粒径10μm未満のLi3GaN2を用いた点と、るつぼ用のY23製蓋を使用しなかった点と、GaNシードを回転させなかった点を除いて実施例1と同じ方法を実施した。実施例1と同様にサンプリングした結果、結晶成長開始時の溶融塩中のN/Ga比は7.8であり、720℃で20時間結晶成長させた後の溶融塩中のN/Ga比は3.4であった。また、720℃で20時間結晶成長させた後のシード厚みを膜厚計で測定したところ、膜厚は2μmしか増加していなかった。さらに720℃に長時間保持しても結晶成長はほとんど見られなかった。
【0068】
(比較例5)
るつぼ内にLiCl 10g、Li3N30mgを投入し、GaNシードも昇温前に投入(これはLi3Nを除去してるつぼ内のN/Ga比を調整する時間をゼロとしたことに相当する)し、結晶成長時間を変更させた以外は実施例2と同じ方法で実施した。745℃に到達した直後(30分後)に溶融塩の一部を分析用にサンプリングし分析すると溶融塩中のN/Ga比は52.2であった。2時間経過後にGaNシードを溶液から取り出し変化を観察したところ、GaNシードはN/Ga比が52.2と高い値の溶融塩中に浸漬されていたため表面がメルトバックし成長は見られず、重量も5%減少していた。
【0069】
以上の比較例の他に、反応混合液からLi3Nを蒸発させないために完全に蓋をした場合も、特開2007−84422号公報の比較例2に記載されているようにGaNの結晶成長はまったく認められない。
【0070】
上記の結果から明らかなように、溶融塩中のN/Ga比を3.5〜50の間に保持した状態でGaN結晶を成長させた実施例1〜7では、GaNシードの膜厚が大幅に厚くなり、効率よくGaNが結晶成長したことが確認された。これに対して、N/Ga比が3.5〜50の範囲外である溶融塩中にGaNシードを保持したり、N/Ga比が結晶成長中に低下して3.5〜50の範囲外になってしまう環境下で溶融塩中にGaNシードを保持したりした場合は、GaNの結晶成長が認められないか、結晶成長が認められてもわずかであった(比較例1〜5)。以上より、本発明にしたがって溶融塩中のN/Ga比を3.5〜50の間に保持した状態でGaN結晶を成長させることにより、GaN結晶を効率よく成長させ得ることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の製造方法によれば、安定で継続的に第13族金属窒化物結晶を製造することができる。また、得られる結晶は形がそろっていて条件によるむらが生じにくい。また、本発明によれば比較的安価な容器を用いて、半導体デバイスに応用するのに十分なサイズを有する化合物結晶を製造することができるため、産業上の利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0072】
1 ガス導入口
2 ガス排気口
3 電気炉
4 石英製反応管
5 るつぼ
6 シード
7 窒化物供給化合物
8 シード保持棒
9 溶媒(溶融塩)
10 貫通孔
11 るつぼの蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素元素と第13族金属元素を含む液中において第13族金属窒化物結晶を成長させる際に、前記液中の窒素元素と第13族金属元素のモル比(N/第13族金属)を3.5〜50の範囲内に保持することを特徴とする第13族金属窒化物結晶の製造方法。
【請求項2】
前記液中の窒素元素と第13族金属元素のモル比(N/第13族金属)を5〜20の範囲内に保持することを特徴とする請求項1に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
【請求項3】
前記液から窒化物またはN2の少なくとも一方が蒸発するのを抑制することにより、前記液中の窒素元素と第13族金属元素のモル比を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
【請求項4】
前記液を入れた容器に貫通孔を有する蓋を取り付けた状態で結晶成長させることにより、前記液から窒化物またはN2の少なくとも一方が蒸発するのを抑制することを特徴とする請求項3に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
【請求項5】
前記液中に窒化物を溶解することにより、前記液中の窒素元素と第13族金属元素のモル比を制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
【請求項6】
前記第13族金属窒化物結晶の成長中に、前記液中に窒化物を連続的に溶解することを特徴とする請求項5に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
【請求項7】
固体状の窒化物供給化合物を前記液と接触させて、前記結晶成長中に前記固体状の窒化物供給化合物から窒化物を前記液中に溶出することを特徴とする請求項6に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
【請求項8】
前記固体状の窒化物供給化合物が第13族金属元素および第13族以外の金属元素を含有する固体状の複合金属窒化物であることを特徴とする請求項7に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
【請求項9】
前記複合金属窒化物がLi3GaN2であることを特徴とする請求項8に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
【請求項10】
前記固体状の窒化物供給化合物の粒径が10μm以上であることを特徴とする請求項7〜9のいずれか一項に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
【請求項11】
前記液中に溶解する窒化物がLi3Nであることを特徴とする請求項5〜10のいずれか一項に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
【請求項12】
前記結晶成長中に前記液中に添加する窒化物の量(MN)に対する、前記液内における第13族金属窒化物結晶の析出量(M13N)のモル比(MN/M13N)が0.1〜100となるように、前記窒化物の添加量を制御することを特徴とする請求項5〜11のいずれか一項に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
【請求項13】
前記結晶成長中に前記液中に添加する窒化物の添加速度(RN)に対する、前記液内における第13族金属窒化物結晶の析出速度(R13N)のモルベースの速度比(RN/R13N)が0.1〜100となるように、前記窒化物の添加量を制御することを特徴とする請求項5〜12のいずれか一項に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
【請求項14】
前記液中のナトリウム濃度、前記液中のカリウム濃度、または前記液中のセシウム濃度の少なくとも1つの濃度を制御することを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
【請求項15】
前記液に塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化セシウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化セシウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化セシウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、およびフッ化セシウムからなる群より選択される少なくとも一種を添加することにより、前記液中の窒素元素と第13族金属元素のモル比を制御することを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
【請求項16】
前記結晶成長中に、前記液を攪拌することを特徴とする請求項1〜15のいずれか一項に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
【請求項17】
前記攪拌を前記液中に浸漬したシードを回転させることにより行うことを特徴とする請求項16に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
【請求項18】
前記液が溶融塩を含むことを特徴とする請求項1〜17のいずれか一項に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
【請求項19】
シード表面上に厚み10μm以上の第13族金属窒化物結晶を成長させることを特徴とする請求項1〜18のいずれか一項に記載の第13族金属窒化物結晶の製造方法。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれか一項に記載の製造方法により第13族金属窒化物結晶を製造する工程を有することを特徴とする半導体デバイスの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−105903(P2010−105903A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188982(P2009−188982)
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】