説明

筋タンパク質合成を刺激するための低カロリー高タンパク質栄養組成物

本発明は、哺乳動物における筋退縮を伴う疾患または状態の予防または処置に使用するための低カロリー高タンパク質栄養組成物の使用、ならびに、哺乳動物における筋肉タンパク質合成を刺激するための特別な低カロリー高タンパク質栄養組成物に関する。特に、本発明は、100kcalあたり、(i)少なくとも約12gの、タンパク様物質の総量に対して少なくとも約80重量%のホエータンパク質を含み、タンパク様物質の総量に対して少なくとも約11重量%のロイシンを含み、総ロイシンに対して少なくとも約20重量%のロイシンが遊離型であるタンパク様物質と、(ii)脂肪源および可消化炭水化物源とを含む、哺乳動物、特に高齢哺乳動物における筋退縮を伴う疾患または状態の予防または処置のための栄養組成物の使用であって、栄養組成物は、1日に1回または2回投与され、各1回分は80〜200kcalを含む、使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳動物における筋退縮(muscle decline)を伴う疾患または状態の予防または処置に適した低カロリー高タンパク質栄養組成物の使用、ならびに、哺乳動物における筋肉タンパク質合成を刺激するための特別な低カロリー高タンパク質栄養組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
年齢に関連した筋肉量と筋肉の強さの不本意な喪失は加齢の過程で生じ、サルコペニアと呼ばれている[1]。骨格筋量の退行性喪失に関しては、30歳以降、10年あたりに3〜8%の割合で進行し、60歳を過ぎるとこの割合が加速する。筋肉量と筋肉の強さの両方の障害が、筋肉機能の加齢性喪失に関係している。
【0003】
骨格筋量を維持するための主な推進因子は、筋タンパク質合成の刺激と、筋タンパク質分解の阻害である。筋タンパク質の合成は、アミノ酸(特にロイシン)の生物学的利用可能性と身体活動性とにより刺激される。故に、その両方が、正味の筋タンパク質バランス(すなわち、筋タンパク質合成と筋タンパク質分解との差:純筋タンパク質合成)に寄与する。筋肉量を維持することと、筋退縮および筋消耗(muscle wasting)を阻止することが、重要となる。加齢および疾患に伴って生じることが多いタンパク質欠乏と筋肉の非活動性は、筋消耗を伴って、筋肉量の維持不全をきたす。加齢とともに、筋タンパク質の合成と分解との間に不均衡が現れる。さらに、加齢に伴って、供給に対する同化応答性が低下し、このことが不十分な純筋タンパク質合成とその後の筋退縮にさらに寄与する[1〜6]。若年成人と比較して、高齢者では、筋タンパク質合成を刺激するために、より高いレベルの血中アミノ酸、特にロイシンが必要となる。高齢者に生じる筋肉応答性低下の現象は同化抵抗性と呼ばれ、筋退縮を引き起こす。したがって、この抵抗性を克服し、(純)筋タンパク質合成を刺激するために、栄養組成物を摂ることが特に高齢者にとって有益となる。実際、高ロイシンのいわゆる「速い(fast)」タンパク質源が、タンパク量は同量だが低ロイシンであるタンパク質源、すなわち「遅い(slow)」タンパク質よりも、高齢者において、より有効であることが証明されている[7,8]。したがって、筋肉に対して十分な同化刺激を行うことは、依然として哺乳動物、特に高齢の哺乳動物において、筋タンパク質シグナル伝達経路を活性化させ、これにより筋タンパク質合成を誘発させ得る可能性を有する。
【0004】
特定のアミノ酸が、筋タンパク質合成の刺激作用を有することが知られている。これらのアミノ酸は「同化性」と考えられる。これらのアミノ酸のうち、特に必須アミノ酸(EAA)は、高齢者における筋タンパク質合成を刺激し得るが、非必須アミノ酸は筋肉同化に対する効果が少ないことがある[9、10]。高齢者は、筋肉同化を刺激するために、ボーラス(全量一度投与)としての、より高用量のEAA(>6.7gのEAA)を必要とする[11、12]。故に、加齢性の応答性低下も、ロイシン摂取量を増加する(6.7gのEAAの混合物の場合は1.7gのロイシンから2.8gのロイシンとする)ことによって克服し得る[8]。またロイシンは、シグナル伝達分子としても作用する[13]。ロイシンの筋タンパク質合成に対する重要性は、種々のロイシン濃度を有する未処理タンパク質源(ホエー源およびカゼイン)についても動物試験において確認された。この試験では、ホエータンパク質をタンパク質源に用いた場合に、高齢ラットにおいて、タンパク質源中のロイシンレベルの増加と一致して筋タンパク質合成の緩やかな上昇が示された[14]。また健康な高齢者では、ホエータンパク質によって、カゼインタンパク質を用いた場合よりも高い、体全体でのタンパク質の合成速度がもたらされた[15]。
【0005】
筋タンパク質合成は、細胞外アミノ酸濃度[16]および筋肉中の細胞内アミノ酸の出現[17]と正に相関する。血清アミノ酸濃度の増加は、筋タンパク質合成を刺激し得るが、高齢者では、高いレベルの必須アミノ酸、特にロイシンが必要となる[8、11]。したがって、高齢者においては、血中ロイシン濃度を顕著に増加させ得る戦略が、摂食に対する迅速な同化応答性の回復を支援するために有用と思われる。摂食後の血中アミノ酸濃度は、食事の型によって影響を受ける場合がある。食物性アミノ酸の一部は、腸および肝臓で、局所的タンパク質合成のために取り込まれる(すなわち、内臓取込または内臓隔離)。残りのアミノ酸は、全身性血液循環に現れて他の器官に到達し、ここで筋肉は最大のタンパク質貯蔵所である[18]。食物性タンパク質は、様々なアミノ酸組成、消化速度、および内臓取込のレベルを有するが、これらは全て、その後の循環血液中におけるアミノ酸の出現に影響する。ホエータンパク質は、カゼインタンパク質よりも、高レベルのロイシンを含有しているので、血清ロイシンレベルは、ホエータンパク質の摂取後の方が高い[15]。カゼインタンパク質とホエータンパク質とを比較した先行の研究では、循環血液中のアミノ酸の出現速度に関して、カゼインを「遅い」タンパク質、ホエーを「速い」タンパク質と特定した[7、19]。消化速度は、この遅い/速いという概念の重要な因子であり[20]、部分的には胃内容物排出速度によって決定される。高齢者では、血中のアミノ酸の出現が減少しているが[15]、その理由は、若年者よりも、内臓取込が高く[21、22]、消化/胃内容物排出速度が遅い[23]ためである。
【0006】
哺乳動物、特に高齢のヒトにおける筋タンパク質合成を刺激するために、同化性アミノ酸の生物学的利用可能性を増加させるために、高レベルのアミノ酸を供給することについての要求を受けて、高ホエータンパク質含有低カロリー栄養処方物を摂取した後の高齢者における血清アミノ酸レベルを調べた。臨床試験では、かかる栄養処方物を摂取した後の高齢者におけるアミノ酸の生物学的利用可能性を評価した。
【発明の概要】
【0007】
驚くべきことに、本発明者らは、新規低カロリー高タンパク質栄養処方物を用いることによって、必須アミノ酸、特にロイシンがアミノ酸の生物学的利用可能性を向上させて、筋タンパク質合成とその後の筋肉量を刺激することを見出した。理論に拘束されないが、好ましくはホエータンパク質(カゼインでは同じ効果が得られるが、効果は低い)を使用して、食物性タンパク質を、低カロリー組成物中で与えると、高カロリー組成物中と比べ、アミノ酸がより速く循環血液に達し、より高い血中レベルに達するとの仮説がたてられる。本出願を通して、この効果を、低エネルギー効果と称する。この低エネルギー効果は、加齢に伴う、その予防および治療が筋タンパク質の合成に関連する任意の疾患または状態、特にサルコペニア、加齢に関係する不十分な(純)筋タンパク質合成および筋退縮を伴う疾患に罹患したヒトの処置に有益に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
一態様によれば、本発明は、100kcalあたり、
(i)タンパク様物質の総量に対して少なくとも約80重量%のホエータンパク質を含み、タンパク様物質の総量に対して少なくとも約11重量%のロイシンを含み、総ロイシンに対して少なくとも約20重量%のロイシンが遊離型である、少なくとも約12gのタンパク様物質と、
(ii)脂肪源および可消化炭水化物源と
を含み、哺乳動物における筋退縮を伴う疾患または状態の予防または処置に使用するための栄養組成物であって、1日に1回または2回投与され、各1回分は80〜200kcalを含む、栄養組成物に関する。
【0009】
本出願の文脈において、用語「少なくとも」は、一端のみが特定された範囲(オープンレンジ)の開始点も含む。例えば、「少なくとも95重量%」という量は、95重量%と等しいか、95重量%を超える任意の量を意味する。
【0010】
本出願の文脈において、用語「約」は、所与の値から5%以内(例えば、4%、3%、2%、1%または1%未満)の偏差を意味する。例えば、「約12g」という量は、12g±0.6gと等しい任意の量、すなわち11.4〜12.6gの範囲にある任意の量を意味する。用語「約」を使用する理由は、検出方法に伴う不確定性、または栄養組成物の製造に関するときは製造方法の変動性を考慮するためである。
【0011】
本出願の文脈において、用語「または」は、他に特定のない場合、「および/または」として定義される。したがって、語句「AまたはB」は、個々の要素AおよびBと、組み合わせた要素AおよびBとを含む。
【0012】
本出願の文脈において、語句「a」、「an」および「the」は、その語句が指す名詞の単数形および複数形の両方を意味する。したがって、語句「タンパク質(a protein)」は、1つまたは複数のタンパク質を意味する。
【0013】
タンパク様物質
本発明による栄養組成物は、100kcalあたり、少なくとも約12gのタンパク様物質を含む。用語「タンパク様物質」は、タンパク質またはタンパク質の任意の部分を意味し、例えば、限定するものではないが、非加水分解タンパク質、天然タンパク質、加水分解タンパク質、ペプチド(オリゴペプチドおよびジペプチドなど)、およびアミノ酸を意味する。好ましくは、タンパク様物質は、乳タンパク、例えばホエーまたはカゼインに由来する。アミノ酸は、L−アミノ酸のみが代謝的に利用可能であることから、本質的にL−アミノ酸である。
【0014】
好ましくは、組成物は、100kcalあたり、少なくとも約12.5g、少なくとも約13g、少なくとも約13.5g、および最も好ましくは約14gのタンパク様物質を含む。
【0015】
別の実施形態によれば、本発明による栄養組成物は、100kcalあたり、少なくとも約48en%のタンパク様物質を含む。好ましくは、組成物は、100kcalあたり、少なくとも約50en%、少なくとも約52en%、少なくとも約54en%、および最も好ましくは約56en%のタンパク様物質を含む。
【0016】
本発明によるタンパク様物質は、少なくとも約80重量%のホエータンパク質、好ましくは少なくとも約85重量%のホエータンパク質、好ましくは少なくとも約90重量%、最も好ましくは約95重量%のホエータンパク質を含む。
【0017】
上述のように、ホエータンパク質は、アミノ酸の循環血液中の出現速度に関して「速い」タンパク質と考えられる。ホエータンパク質は、未処理ホエータンパク質、加水分解ホエータンパク質、マイクロ粒子状ホエータンパク質、ナノ粒子状ホエータンパク質、ミセル状ホエータンパク質などである。好ましくは、ホエータンパク質は、未処理ホエータンパク質、すなわち、原乳などに存在するそのままの形態のホエータンパク質である。加水分解ホエータンパク質には、不快な風味がするという短所がある。
【0018】
本発明で使用し得るホエータンパク質源としては、任意の市販のホエータンパク質源を使用し得る。すなわち、当該分野で公知の任意のホエー調製方法によって得られるホエー、ならびにそれらによって調製されるホエータンパク質断片、またはβ−ラクトグロブリン、α−ラクトアルブミンおよび血清アルブミンであるホエータンパク質の原体を構成するタンパク質、例えば液体ホエー、または粉末形態のホエー、例えば、ホエータンパク質単離物(WPI)もしくはホエータンパク質濃縮物(WPC)を使用することができる。ホエータンパク質濃縮物は、ホエータンパク質が濃厚であるが、他の成分、例えば、脂肪、ラクトース、グリコマクロタンパク質(GMP)、カゼイン関連非球状タンパク質も含んでいる。典型的には、ホエータンパク質濃縮物は、膜ろ過によって製造される。他方、ホエータンパク質単離物は、脂肪およびラクトースが最小量のホエータンパク質で主に構成される。ホエータンパク質単離物は、通常、より厳密な分離方法、例えば、精密濾過と限外濾過もしくはイオン交換クロマトグラフィーとの組み合わせなどを必要とする。一般には、ホエータンパク質単離物は、固形分の少なくとも90重量%がホエータンパク質である混合物を指すと理解されている。ホエータンパク質濃縮物は、ホエータンパク質の割合が、副生成物における初期量(約12重量%)からホエータンパク質単離物の間であるものと理解されている。特に、チーズの製造における副生成物として得られる甘味ホエー、酸カゼインの製造における副生成物として得られる酸ホエー、ミルクの精密濾過によって得られる未変性(ネイティブ)ホエー、またはレンネットカゼインの製造における副生成物として得られるレンネットホエーが、ホエータンパク質源として使用し得る。
【0019】
さらに、ホエータンパク質は、あらゆる種類の哺乳動物種に由来するものであってよく、例えば、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、バッファロー、およびラクダなどに由来するものであってよい。好ましくは、ホエータンパク質は、ウシ属由来である。
【0020】
好ましくは、ホエータンパク質源は、粉末として利用し得るものであり、好ましくはホエータンパク質源は、WPCまたはWPIである。
【0021】
別の実施形態によれば、本発明によるタンパク様物質は、少なくとも約45重量%の必須アミノ酸(EAA)、好ましくは少なくとも約47重量%、より好ましくは少なくとも約50重量%のEAAを含む。必須アミノ酸は、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)、リシン(Lys)、メチオニン(Met)、フェニルアラニン(Phe)、スレオニン(Thr)、トリプトファン(Trp)、およびバリン(Val)の群から選択されるアミノ酸である。
【0022】
未変性(ネイティブ)のホエータンパク質では、(供給源に応じて)最大約45重量%のEAAを含有するため、EAAを、例えばアミノ酸またはペプチドの形態で、本発明の栄養組成物に添加することが必要な場合がある。約45重量%の総EAAが、本栄養組成物に存在させる総EAAの最小量であることが見出された。
【0023】
本発明によるタンパク様物質は、少なくとも約11重量%のロイシンを含む。天然ホエータンパク質は、(供給源に応じて)最大約11重量%のロイシンを含有するので、ロイシンを、例えばアミノ酸またはペプチドの形態で、本発明の栄養組成物に添加することが必要な場合がある。約11重量%の総ロイシンが、本栄養組成物に存在させる総ロイシンの最小量であることが見出された。
【0024】
好ましくは、本発明によるタンパク様物質は、少なくとも約12重量%、好ましくは約12.5重量%、より好ましくは約13重量%のロイシン、最も好ましくは少なくとも約14重量%のロイシンを含む。
【0025】
総ロイシンは、ロイシン総量に対して、少なくとも約20重量%、好ましくは少なくとも約22.5重量%、好ましくは少なくとも約26重量%の遊離型ロイシンを含む。総ロイシンは、ロイシン総量に対して、最大で約70重量%、好ましくは最大で約60重量%、好ましくは最大で約50重量%の遊離型ロイシンを含む。「遊離型」とは、1〜5個のアミノ酸、好ましくは1〜3個のアミノ酸、より好ましくは1個のアミノ酸を含むペプチドを意味する。好ましくは、ロイシンは、塩基、塩、もしくはキレート化合物としての遊離アミノ酸である。
【0026】
別の実施形態によれば、本発明によるタンパク様物質は、ロイシン、バリンおよびイソロイシンの総量を、ロイシン:バリン:イソロイシンの比率約1.7〜3:1:1で含む。或いは、ロイシン:(バリン+イソロイシン)の重量比は、約0.9以上、好ましくは1.0以上である。適切なバリンレベルおよびイソロイシンレベルは、ホエータンパク質によって、または、塩基もしくは塩としての遊離型で、またはペプチドとしての、追加のアミノ酸によって提供され得る。
【0027】
脂肪および炭水化物
本発明による低カロリー栄養組成物は、脂肪源および炭水化物源を含む。これらの成分の存在は、タンパク質が、筋タンパク質合成の刺激でなくエネルギー源として過度に利用されることを防止する。
【0028】
脂肪および炭水化物(可消化性および不消化性)によって供給されるエネルギーの総量は、タンパク様物質によって提供される総エネルギーと均衡すべきである。したがって、100kcalあたりの脂肪および炭水化物の総量は、最大で約52en%、特に最大で約50en%、好ましくは最大で約48en%、より好ましくは最大で約46en%、または約44en%であるべきである。
【0029】
脂肪および炭水化物それぞれによって供給されるエネルギーの量は、両方の成分が存在する限り、広い範囲内で変動し得る。一実施形態によれば、脂肪の量は、10〜35en%、好ましくは15〜30en%で変化し得る。一実施形態によれば、炭水化物の量は、10〜35en%、好ましくは15〜30en%で変化し得る。一実施形態によれば、脂肪および炭水化物の量の合計は、10〜60en%の範囲であり得る。好ましい一実施形態において、本発明による栄養組成物は、100kcalあたり、約2gの脂肪と、約6.2〜約6.4gの可消化炭水化物を含む。さらに好ましい一実施形態において、本発明による栄養組成物は、100kcalあたり、約2gの脂肪と、約6.4gの可消化炭水化物を含む。
【0030】
脂肪の種類については、脂肪が食品としての質を有するものである限り、広い範囲での選択が可能である。
【0031】
脂肪は、動物性脂肪、植物性脂肪、またはその両方であり得る。ラードまたはバターなどの動物性脂肪は、植物性油脂と本質的に同等のカロリーおよび栄養的価値を有し、互換的に使用可能であるが、植物性油脂は、入手が容易であり、処方が容易であり、コレステロールを含まず、飽和脂肪酸濃度が低いため、本発明の実施には植物性油脂の方が好ましい。一実施形態において、本発明の組成物は、菜種油、コーン油、またはヒマワリ油を含む。脂肪は、例えば中鎖トリグリセリド(MCT)のような中鎖脂肪酸源(主に8〜10の炭素原子の長さ)、例えばEPA、DHAを含むオメガ−3およびオメガ−6脂肪酸のようなポリ不飽和脂肪酸(PUFA)、および長鎖トリグリセリド(LCT)のような長鎖脂肪酸源(主に少なくとも18の炭素原子の長さ)、例えばリン脂質結合EPAもしくはDHAのようなリン脂質結合脂肪酸、または任意の2種の供給源の組み合わせを含む。MCTは、代謝的負荷のある患者でも容易に吸収および代謝されるために有利である。さらに、MCTの使用により、栄養素吸収不良のリスクが減少する。LCT源、例えば、キャノーラ油、菜種油、ヒマワリ油、ダイズ油、オリーブ油、ココナッツ油、パーム油、亜麻仁油、魚油、またはコーン油は、LCTが人体内の免疫応答を調節し得ることが知られていることから有利である。オメガ−3脂肪酸の抗炎症特性とは別に、EPAおよびDHAなどのオメガ−3脂肪酸は、筋肉同化シグナル伝達活性を増加させることによって筋タンパク質合成を刺激し得る。したがって、好ましい実施形態によれば、脂肪源には、オメガ−3脂肪酸、特にEPAおよびDHAが含まれる。
【0032】
炭水化物の種類については、炭水化物が食品としての質を有するものである限り、広い範囲での選択が可能である。可消化炭水化物は、対象のエネルギーレベルに肯定的に影響し、本発明による栄養組成物の有利な効果を高める。可消化炭水化物は、単一炭水化物、複合炭水化物、もしくはそれらの任意の混合物を含み得る。本発明での使用に適する炭水化物は、グルコース、フルクトース、スクロース、ラクトース、トレハロース、パラチノース、コーンシロップ、モルト、マルトース、イソマルトース、部分加水分解コーンスターチ、マルトデキストリン、グルコースオリゴ糖および多糖である。
【0033】
本発明による液体経腸組成物は、任意選択で、例えば不消化炭水化物(ガラクトオリゴ糖、フルクトオリゴ糖、イヌリン、およびペクチン(加水分解ペクチン、低粘度ペクチン(DPが2〜250のペクチン分解生成物)もしくは他のペクチン分解生成物など)のような食物繊維(もしくはプレバイオティック繊維)を添加して強化しうる。本発明の一実施形態においては、本発明による組成物は、0.5g/100kcal〜6g/100kcalの不消化炭水化物を含む。食物繊維は、DPが2〜20、好ましくは2〜10である不消化オリゴ糖を含む。より好ましくは、これらのオリゴ糖は、前記DPの範囲以外の糖を実質的な量で含まず(5重量%未満)、可溶性である。これらのオリゴ糖は、フルクトオリゴ糖(FOS)、トランスガラクトオリゴ糖(TOS)、キシロオリゴ糖(XOS)、ダイズオリゴ糖などを含み得る。任意選択で、より高分子量の化合物(例えば、イヌリン、ダイズ多糖類、アカシア多糖類(アカシア繊維もしくはアラビアゴム)、セルロース、難消化性澱粉など)も、本発明による組成物に組み込んでもよい。セルロースなどの不溶性繊維の量は、好ましくは、本発明による組成物の食物繊維分の20重量%未満、または0.6g/100kcal未満である。増粘多糖類(例えば、カラギーナン、キサンタン、ペクチン、ガラクトマンナンおよび他の高分子量(DP>50)不消化多糖類の量については、低いこと、すなわち、繊維分の20重量%未満、または1g/100kcal未満であることが好ましい。代わりに、加水分解多糖類、例えば加水分解ペクチンおよびガラクトマンナンを有利に含めることもできる。
【0034】
好ましい繊維成分は、鎖長(DP)が2〜10の不消化オリゴ糖、例えばFibersol(登録商標)(難消化性オリゴグルコース)、特に水素化Fibersol(登録商標)、またはDPが2〜10のオリゴ糖(例えば、フルクトオリゴ糖またはガラクトオリゴ糖(GOS))の混合物であり、これには少量の高重合度の糖(例えば、DPが11〜20のもの)が含まれてもよい。かかるオリゴ糖は、好ましくは、繊維分の50重量%〜90重量%、または、本発明による組成物の0.5g/100kcal〜3g/100kcalを含む。他の適当な繊維成分としては、部分的にのみ消化性を有する糖類が挙げられる。
【0035】
具体的な実施形態において、本発明による組成物は、フルクトオリゴ糖、イヌリン、アカシア多糖類、ダイズ多糖類、セルロースおよび難消化性澱粉のうちの1種または複数を含む。
【0036】
本発明の別の実施形態において、本発明による組成物は、本明細書に参考として組み込まれる国際公開第2005/039597号(N.V.Nutricia)に開示されるような中性および酸性のオリゴ糖の混合物を含んでもよい。より具体的に、酸性オリゴ糖は、1〜5000、好ましくは1〜1000、より好ましくは2〜250、さらにより好ましくは2〜50、最も好ましくは2〜10の重合度(DP)を有する。異なる重合度を有する酸性オリゴ糖の混合物が使用される場合、酸性オリゴ糖混合物の平均DPは、好ましくは2〜1000、より好ましくは3〜250、さらにより好ましくは3〜50である。酸性オリゴ糖は、均一または不均一な炭水化物であり得る。酸性オリゴ糖は、ペクチン、ペクチン酸、アルギン酸、コンドロイチン、ヒアルロン酸、ヘパリン、ヘパラン、細菌性多糖類、シアログリカン、フコイダン、フコオリゴ糖、またはカラギーナンから調製することができ、好ましくはペクチンまたはアルギン酸から調製される。酸性オリゴ糖は、参照によって本明細書に組み込まれる国際公開第01/60378号に記載される方法によって調製することができる。酸性オリゴ糖は、好ましくは、50%を超えるメトキシル化度(degree of methoxylation)によって特徴づけられる高メトキシル化ペクチンから調製される。本明細書で使用するとき、「メトキシル化度」(「DE」または「エステル化度」とも呼ばれる)は、ポリガラクツロン酸鎖中に含まれる遊離のカルボン酸基が(例えばメチル化によって)エステル化される程度を意図している。好ましくは、酸性オリゴ糖は、20%超、好ましくは50%超、より好ましくは70%超のメトキシル化度によって特徴づけられる。好ましくは、酸性オリゴ糖は、20%超、好ましくは50%超、さらにより好ましくは70%超のメチル化度を有する。酸性オリゴ糖は、好ましくは、1日あたり10mg〜100g、好ましくは1日あたり100mg〜50gの量で投与される。
【0037】
本発明で使用されるとき、中性オリゴ糖という用語は、2個超、より好ましくは3個超、さらにより好ましくは4個超、最も好ましくは10個超の単糖単位の重合度を有する糖を意味する。中性オリゴ糖は、腸において、ヒト上部消化管(小腸および胃)に存在する酸または消化性酵素の作用により消化されないかまたは部分的にしか消化されないが、ヒト腸フローラ(細菌叢)による発酵を受け、好ましくは酸性基を有しない。中性オリゴ糖は、構造的に(化学的に)酸性オリゴ糖と異なっている。本発明で使用されるとき、中性オリゴ糖という用語は、60単糖単位未満、好ましくは40単糖単位未満、さらにより好ましくは20単糖単位未満、最も好ましくは10単糖単位未満のオリゴ糖重合度を有する糖類を指すことが好ましい。単糖単位という用語は、閉じた環構造、好ましくはヘキソース、例えば、ピラノースもしくはフラノース形態を有する単位を指す。中性オリゴ糖は、好ましくは、マンノース、アラビノース、フルクトース、フコース、ラムノース、ガラクトース、D−ガラクトピラノース、リボース、グルコース、キシロースおよびその誘導体からなる群から選択される単糖単位を、中性オリゴ糖に含有される単糖単位の総数に対して計算して、少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%含む。適切な中性オリゴ糖は、好ましくは腸フローラによって発酵される。好ましくは、オリゴ糖は、セロビオース(4−O−β−D−グルコピラノシル−D−グルコース)、セロデキストリン((4−O−β−D−グルコピラノシル)−D−グルコース)、B−シクロデキストリン(α−1−4−結合D−グルコース、α−シクロデキストリン−ヘキサマー、β−シクロデキストリン−ヘプタマーおよびγ−シクロデキストリン−オクタマーの環状分子)、不消化デキストリン、ゲンチオオリゴ糖(β−1−6結合グルコース残基、一部は1−4結合、の混合物)、グルコオリゴ糖(α−D−グルコースの混合物)、イソマルトオリゴ糖(線状α−1−6結合グルコース残基、一部は1−4結合)、イソマルトース(6−O−α−D−グルコピラノシル−D−グルコース);イソマルトリオース(6−O−α−D−グルコピラノシル−(1−6)−α−D−グルコピラノシル−D−グルコース)、パノース(6−O−α−D−グルコピラノシル−(1−6)−α−D−グルコピラノシル−(1−4)−D−グルコース)、ロイクロース(5−O−α−D−グルコピラノシル−D−フルクトピラノシド)、パラチノースもしくはイソマルトース(6−O−α−D−グルコピラノシル−D−フルクトース)、テアンデロース(O−α−D−グルコピラノシル−(1−6)−O−α−D−グルコピラノシル−(1−2)−B−D−フルクトフラノシド)、D−アガトース、D−リキソ−ヘクスロース、ラクトスクロース(O−β−D−ガラクトピラノシル−(1−4)−O−α−D−グルコピラノシル−(1−2)−β−D−フルクトフラノシド)、ラフィノース、スタキオースおよび他のダイズオリゴ糖を含むα−ガラクトオリゴ糖(O−α−D−ガラクトピラノシル−(1−6)−α−D−グルコピラノシル−β−D−フルクトフラノシド)、β−ガラクトオリゴ糖またはトランスガラクトオリゴ糖(β−D−ガラクトピラノシル−(1−6)−[β−D−グルコピラノシル]−(1−4)α−Dグルコース)、ラクチュロース(4−O−β−D−ガラクトピラノシル−D−フルクトース)、4’−ガラクトシルラクトース(O−D−ガラクトピラノシル−(1−4)−O−β−D−グルコピラノシル−(1−4)−D−グルコピラノース)、合成ガラクトオリゴ糖(ネオガラクトビオース、イソガラクトビオース、ガルスクロース、イソラクトースI、IIおよびIII)、フルクタン−レバン型(β−D−(2→6)−フルクトフラノシル) α−D−グルコピラノシド)、フルクタン−イヌリン型(β−D−((2→1)−フルクトフラノシル) α−D−グルコピラノシド)、1f−β−フルクトフラノシルニストース(β−D−((2→1)−フルクトフラノシル) B−D−フルクトフラノシド)、キシロオリゴ糖(B−D−((1→4)−キシロース)、ラフィノース、ラクトスクロース、およびアラビノオリゴ糖からなる群から選択される。
【0038】
さらに好ましい実施形態によれば、中性オリゴ糖は、フルクタン、フルクトオリゴ糖、不消化デキストリン ガラクトオリゴ糖(トランスガラクトオリゴ糖を含む)、キシロオリゴ糖、アラビノオリゴ糖、グルコオリゴ糖、マンノオリゴ糖、フコオリゴ糖、およびそれらの混合物からなる群から選択される。最も好ましくは、中性オリゴ糖は、フルクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、およびトランスガラクトオリゴ糖からなる群から選択される。
【0039】
適切なオリゴ糖およびその製造方法は、Laere K.J.M.、(Laere,K.J.M.、「構造的に異なる非消化性オリゴ糖の腸内細菌による分解:Bi.adolescentisのグリコシルヒドロラーゼ」、PhD−thesis(2000)、Wageningen Agricultural University、Wageningen、The Netherlands)に、さらに記載されており、この文献の内容全体が参考として本明細書に組み込まれる。トランスガラクトオリゴ糖(TOS)は、例えば、商品名Vivinal(商標)(Borculo Domo Ingredients、Netherlands)で販売されている。トウモロコシ澱粉の熱分解によって製造され得る不消化デキストリンは、天然澱粉に存在するようなα(1→4)およびα(1→6)グルコシド結合を含み、1→2および1→3結合およびレボグルコサンを含有する。これらの構造的特徴に基づき、不消化デキストリンは、十分に発達した分岐状粒子を含有しており、ヒト消化酵素によって部分的に加水分解される。多数の他の市販の不消化オリゴ糖が容易に入手可能であり、当業者に知られている。例えば、トランスガラクトオリゴ糖は、株式会社ヤクルト本社(Yakult Honsha Co.、Tokyo、Japan)から入手可能である。ダイズオリゴ糖は、カルピス株式会社(Calpis Corporation)(配布元:Ajinomoto U.S.A.Inc.、Teaneck、N.J.)から入手可能である。
【0040】
さらに好ましい実施形態において、本発明による組成物は、DPが2〜250であり、ペクチン(加水分解ペクチン(酸性オリゴ糖(AOS)および低粘度ペクチンなど)、アルギン酸およびそれらの混合物から調製される酸性オリゴ糖、ならびに、フルクタン、フルクトオリゴ糖、不消化デキストリン、ガラクトオリゴ糖(トランスガラクトオリゴ糖を含む)、キシロオリゴ糖、アラビノオリゴ糖、グルコオリゴ糖、マンノオリゴ糖、フコオリゴ糖およびそれらの混合物の群から選択される中性オリゴ糖を含む。
【0041】
さらに好ましい実施形態において、本発明による組成物は、2種の化学的に異なる中性オリゴ糖を含む。酸性オリゴ糖を2種の化学的に異なる中性オリゴ糖と組み合わせて投与することにより、最適な免疫刺激相乗効果が得られることが見出された。好ましくは、本発明による組成物は、
− 上記で定義された酸性オリゴ糖(好ましくは低粘度ペクチン)と、
− ガラクトース系中性オリゴ糖(単糖単位の50%超がガラクトース単位である中性オリゴ糖)、好ましくは、ガラクトオリゴ糖およびトランスガラクトオリゴ糖からなる群から選択されるものと、
− フルクトースもしくはグルコース系中性オリゴ糖(単糖単位の50%超がフルクトースもしくはグルコース単位、好ましくはフルクトース単位である中性オリゴ糖)、好ましくはイヌリン、フルクタンまたはフルクトオリゴ糖、最も好ましくは長鎖フルクトオリゴ糖(平均で10〜60のDPを有するもの)と
を含む。
【0042】
好ましくは、栄養組成物は、さらに、短鎖GOS、長鎖FOS、イヌリンおよび低粘度ペクチンの群から選択される1種または複数の食物繊維を含む。
【0043】
特に好ましい実施形態において、栄養組成物は、哺乳動物における筋退縮を伴う疾患または状態の予防または処置に使用するために、100kcalあたり、
(ii)タンパク様物質の総量に対して約95重量%のホエータンパク質を含み、タンパク様物質の総量に対して少なくとも約14重量%のロイシンを含み、総ロイシンに対して少なくとも約26重量%のロイシンが遊離型である、約14gのタンパク様物質と、
(iii)約2gの脂肪と約6.2〜約6.4gの可消化炭水化物と
を含み、1日に1回または2回投与され、各1回分が約150kcalを含む。
【0044】
別の特に好ましい実施形態において、栄養組成物は、哺乳動物における筋退縮を伴う疾患または状態の予防または処置に使用するために、100kcalあたり、
(ii)タンパク様物質の総量に対して約95重量%のホエータンパク質を含み、タンパク様物質の総量に対して少なくとも約14重量%のロイシンを含み、総ロイシンに対して少なくとも約26重量%のロイシンが遊離型である、約14gのタンパク様物質と、
(iii)約2gの脂肪と約6.2gの可消化炭水化物と
を含み、1日に1回または2回投与され、各1回分が約150kcalを含む。
【0045】
微量栄養素
高齢者では微量栄養素が不足する危険性がある。これは一部には、高齢者のエネルギー摂取がしばしば低下する一方で、多くの微量栄養素についての推奨は増加しているという事実に基づく[24]。結果として、25〜60%の高齢者が、推奨される微量栄養素の摂取を満たしておらず、ビタミンA、C、D、E、B6、葉酸、B12、カルシウム、マグネシウムおよび亜鉛が不足していることが一般に報告されている[25〜27]。さらに、微量栄養素の不足は、フレイルティ(frailty,虚弱)と関係している。ビタミンD、E、Cおよび葉酸塩の摂取低下は、フレイルティと関係づけられ[28]、カロテノイド、ビタミンE、ビタミンD、セレンおよび亜鉛の血清レベルの低下が、もろい(フレイルな)高齢者において、もろくない高齢者と比較して観察されている[29]。
【0046】
微量栄養素のうち、セレン、亜鉛、カロテノイド、ビタミンA、ビタミンCおよびビタミンEは、全て抗酸化特性を有する。出版された観察において、抗酸化物の添加によって高齢ラットにおける低下したロイシンの筋タンパク質合成刺激能力が回復したこと[30]に関連して、抗酸化物の混合物は、本栄養組成物に含められる。
【0047】
ビタミンD3は、筋肉の強さと関連性が実証されており、ビタミンDの補充によって高齢者の転倒と骨折の発生を減少させるために、本組成物に存在させる。転倒の危険性を減少させるために勧告されるビタミンDの最小用量は、700−1000IU/日である(17.5〜25μg/日と同等)[31〜33]。このビタミンDの用量は、提案する栄養組成物で達成される。
【0048】
ビタミンB類、葉酸、ビタミンB6およびビタミンB12は、高齢者に共通する疾患の危険因子として公知のホモシステインの代謝経路に関与しており[34]、高齢者では一般に不足している[27]。葉酸、ビタミンB6およびビタミンB12は、血中ホモシステインレベルを低下させる有益な効果を有することから、これらのビタミン類を本栄養組成物中に存在させる。
【0049】
したがって、本発明による栄養組成物は、ナトリウム、カリウム、塩化物、カルシウム、リン、マグネシウム、カロテノイド、ビタミンA、ビタミンD3、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5、ビタミンB6、葉酸、ビタミンB12、ビオチン、ビタミンC、亜鉛、鉄、銅、マンガン、モリブデン、セレン、クロム、フッ素およびヨウ素の群から選択され、好ましくは、カロテノイド、ビタミンA、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD3、ビタミンE、葉酸、カルシウム、リン、マグネシウム、セレンおよび亜鉛の群から選択される、ミネラル、微量元素およびビタミンとして定義される1種または複数の微量栄養素を任意選択的に含むことができる。好ましくは、本発明による栄養組成物は、カロテノイド、ビタミンA、ビタミンD3、ビタミンE、ビタミンB6、ビタミンC、葉酸、ビタミンB12、セレン、および亜鉛を含む。好ましくは、本発明による栄養組成物は、100kcalあたり、10〜500μgのカロテノイド、80〜140μgのビタミンA、8〜750μgのビタミンB6、2〜25mgのビタミンC、0.5〜25μgのビタミンD3、0.5〜10mgのビタミンE、10〜150μgの葉酸、0.05〜5μg、特に0.07〜5μgのビタミンB12、2.5〜20μgのセレン、および0.5〜2.0mgの亜鉛を含む。
【0050】
医学的用途
本発明による栄養組成物は、哺乳動物、好ましくは年齢が30歳以上、より好ましくは年齢が50歳以上のヒト、最も好ましくは高齢のヒトにおける、筋退縮を伴う疾患または状態の予防または処置に有利に使用し得る。筋退縮には、サルコペニア;加齢に関係する、体重維持中もしくは体重維持後、エネルギー制限中もしくはエネルギー制限後、床上安静中もしくは床上安静後、身体的外傷(例えば骨折)の処置中もしくは処置後、または無重力状態中または無重力状態後の筋肉量の喪失、不十分な筋タンパク質合成、筋劣化(muscle degradation)、筋回復(muscle recovery)障害、筋損傷(muscle damage)、筋タンパク質分解(muscle proteolysis)、筋萎縮(muscle atrophy)、筋ジストロフィー、筋肉異化(muscle catabolism)、筋消耗、筋肉の強さの喪失、筋肉機能の喪失、身体能力の喪失、身体性能の喪失、可動性障害、フレイルティ、身体障害、および転倒の危険性の群から選択されるいずれかの疾患または状態が含まれる。
【0051】
筋回復とは、筋肉組織(細胞、線維、筋節(sarcomers))の構造的または機能的修復を指す。筋損傷とは、筋肉線維、その膜または周辺結合組織、もしくは腱の機械的破壊である。筋劣化は、筋肉組織の質の破壊または喪失を指す。筋萎縮は、疾患または使用不足から生じる筋肉組織の消耗または喪失を意味する。筋ジストロフィーは、進行性の筋力低下と筋肉組織の喪失によって特徴づけられる。筋消耗は、疾患または使用不足から生じる筋肉組織の喪失である。身体能力は、身体活動を行使する能力である。身体性能は、身体的仕事(例えば、バランス、歩行速度、力強さ、持久力)を望まれるレベルで行使する能力である。フレイルティは、主に骨格筋の加齢性喪失または機能不全に基づく症候または徴候(身体活動の減少、筋衰弱、性能減少、身体衰弱、持久力の欠乏、疲労困憊、遅い歩行速度、低い筋肉の強さなど)の集合を指す状態である。高齢者では、フレイルティが、有害事象(死、身体障害、施設収容など)の危険性を増加させる。身体障害は、身体活動を実施できないことを指す。
【0052】
さらなる実施形態によれば、本発明による栄養組成物は、サルコペニア、ならびに筋肉量、強度および機能の加齢性喪失の食事的制御に有利に使用することができる。
【0053】
さらなる実施形態によれば、本発明による栄養組成物は、哺乳動物における以下のいずれか1つまたはその組み合わせのために、有利に使用することができる。
− 筋肉量または筋肉の強さの再構築を支援する、
− サルコペニアを制御する、
− 筋タンパク質合成、筋肉の強さまたは筋肉機能を刺激する、
− 改善された筋タンパク質合成、筋肉の強さ、または筋肉機能を支援する、
− 可動性を改善または維持する、
− サルコペニアに罹患している哺乳動物の必要性を満たす、
− 筋タンパク質合成を刺激する、
− 筋肉量または筋肉の強さを増加する、
− 筋肉の強さまたは筋肉機能を改善する、
− 身体性能を改善する。
【0054】
一実施形態によれば、前記哺乳動物は、年齢が30歳以上のヒト、より好ましくは50歳以上のヒトである。さらに好ましくは、前記哺乳動物は、高齢のヒトである。この点に関して、本出願の文脈においては、高齢のヒトは50歳以上のヒトであり、特に55歳以上であり、より特定すると60歳以上であり、より特定すると65歳以上のヒトであることを提示する。このむしろ広い定義は、異なる集団、異なる国などによって平均年齢が変動することを考慮したものである。ほとんどの先進諸国では、暦年65歳を「高齢」またはそれより年長の者とする定義(年金受給が開始され得る年齢と関連)を承諾しているが、多くの西洋的概念と同様に、この定義は、例えばアフリカの状況には十分に適合しない。現時点で、国連(UN)による標準的な数値の基準はないが、UNは、西洋社会における年長者の集団に関するカットオフが60歳以上であることに同意している。より伝統的なアフリカの定義によれば、高齢または「高齢」なヒトは、設定地域、領域、国に応じて、暦年50〜65歳と関連づけられる。
【0055】
用量
栄養組成物は、1日に1回から2回投与され、各1回分は、80〜200kcal、好ましくは約150kcalを含んでいる。好ましくは、栄養組成物は1日に1回投与される。液体形態の栄養組成物を使用する場合、1回分は、50〜250ml、最も好ましくは200mlの本発明による栄養組成物を含み得る。固体形態、例えば粉末の栄養組成物を使用する場合、1回分は20〜100g、最も好ましくは30〜70g、最も好ましくは約40gの本発明による栄養組成物を含み得る。
【0056】
栄養組成物は、投与計画に従って投与することができる。投与計画は、時間および患者の必要性に応じて変化し得る。典型的な投与計画では、処置期間、例えば、約3カ月の間は1日2回投与し、その後は予防のためまたは維持用量として1日1回投与することを含む。好ましくは、栄養組成物は、予防のためまたは維持用量として1日1回投与される。
【0057】
栄養組成物
本発明は、液体または固体のいずれかの形態の、筋タンパク質合成を刺激するための特別な低カロリー高タンパク質栄養組成物にも関する。
【0058】
一実施形態によれば、本発明は、100mlあたり、
(i)約100kcal未満のエネルギーと、
(ii)タンパク様物質の総量に対して少なくとも約80重量%のホエータンパク質を含み、タンパク様物質の総量に対して少なくとも約11重量%のロイシンを含み、総ロイシンに対して少なくとも約20重量%のロイシンが遊離型である、少なくとも約10gのタンパク様物質と、
(iii)脂肪源および可消化炭水化物源と、
(iv)カロテノイド、ビタミンA、カルシウム、マグネシウム、ビタミンB6、ビタミンC、ビタミンD3、ビタミンE、葉酸、ビタミンB12、セレンおよび亜鉛の群から選択される1種または複数の微量栄養素と
を含む、筋タンパク質合成の刺激に適した液体栄養組成物に関する。
【0059】
好ましくは、本発明による液体栄養組成物は、100mlあたり、90kcal未満、好ましくは80kcal未満のエネルギーを含む。
【0060】
さらなる実施形態によれば、本発明は、100mlあたり、
(i)約75kcalのエネルギーと、
(ii)約10gのホエータンパク質を含み、約1.4〜約1.5gのロイシンを含み、そのうち約0.4gのロイシンが遊離型である、約10.5gのタンパク様物質と、
(iii)約1.5gの脂肪および約4.4〜約4.8gの可消化炭水化物と、
(iv)約0.15mgのカロテノイド、約75μgのビタミンA、約375μgのビタミンB6、約1.5μgのビタミンB12、約16mgのビタミンC、約10μgのビタミンD3、約3.8mgのビタミンE、約100μgの葉酸、約7.5μgのセレン、約1.1mgの亜鉛と、
(v)任意選択で、食物繊維源と
を含む液体栄養組成物に関する。
【0061】
さらなる実施形態によれば、本発明は、100mlあたり、
(i)約75kcalのエネルギーと、
(ii)約10gのホエータンパク質を含み、約1.5gのロイシンを含み、そのうち約0.4gのロイシンが遊離型である、約10.5gのタンパク様物質と、
(iii)約1.5gの脂肪および約4.4gの可消化炭水化物と、
(iv)約0.15mgのカロテノイド、約75μgのビタミンA、約375μgのビタミンB6、約1.5μgのビタミンB12、約16mgのビタミンC、約10μgのビタミンD3、約3.8mgのビタミンE、約100μgの葉酸、約7.5μgのセレン、約1.1mgの亜鉛と、
(v)任意選択で、食物繊維源と
を含む液体栄養組成物に関する。
【0062】
さらなる実施形態によれば、本発明は、100mlあたり、
(i)約75kcalのエネルギーと、
(ii)約10gのホエータンパク質を含み、約1.4gのロイシンを含み、そのうち約0.4gのロイシンが遊離型である、約10.5gのタンパク様物質と、
(iii)約1.5gの脂肪および約4.4gの可消化炭水化物と、
(iv)約0.15mgのカロテノイド、約75μgのビタミンA、約375μgのビタミンB6、約1.5μgのビタミンB12、約16mgのビタミンC、約10μgのビタミンD3、約3.8mgのビタミンE、約100μgの葉酸、約7.5μgのセレン、約1.1mgの亜鉛と、
(v)任意選択で、食物繊維源と
を含む液体栄養組成物に関する。
【0063】
上記組成物に食物繊維源が添加されるとき、約0.63gのGOS、0.07gのFOS/イヌリン、および0.14gの低粘度ペクチンを含む、100mlあたり総量で約0.83gの食物繊維を添加することが好ましい。
【0064】
前記の高含有量のホエータンパク質は、参照によりその内容が本明細書に組み込まれる国際公開第2009/113858号などに開示される創意ある方法を使用して達成し得る。
【0065】
一実施形態によれば、栄養組成物は、1回分あたり100〜300ml、より好ましくは1回分あたり200mlとしてパッケージ化される。
【0066】
一実施形態によれば、本発明は、乾燥重量100gあたり、
(i)500kcal未満のエネルギーと、
(ii)タンパク様物質の総量に対して少なくとも約80重量%のホエータンパク質を含み、タンパク様物質の総量に対して少なくとも約11重量%のロイシンを含み、総ロイシンに対して少なくとも約20重量%のロイシンが遊離型である、少なくとも49gのタンパク様物質と、
(iii)脂肪源および可消化炭水化物源と、
(iv)カロテノイド、ビタミンA、カルシウム、マグネシウム、ビタミンB6、ビタミンC、ビタミンD3、ビタミンE、葉酸、ビタミンB12、セレンおよび亜鉛の群から選択される1種または複数の微量栄養素と
を含む、筋タンパク質合成の刺激に適した固体栄養組成物に関する。
【0067】
本発明による固体栄養組成物は、100gあたり、445kcal未満、好ましくは395kcal未満のエネルギーを含む。
【0068】
一実施形態によれば、本発明は、乾燥重量100gあたり、
(i)約375kcalのエネルギーと、
(ii)約50gのホエータンパク質を含み、約7.2〜約7.5gのロイシンを含み、そのうち約1.8〜約2gのロイシンが遊離型である、約52〜53gのタンパク様物質と、
(iii)約7.5gの脂肪と約23〜約24gの可消化炭水化物と、
(iv)約0.75mgのカロテノイド、約376μgのビタミンA、約1.88mgのビタミンB6、約80mgのビタミンC、約50μgのビタミンD3、約18.8mgのビタミンE、約500μgの葉酸、約7.5μgのビタミンB12、約38μgのセレン、約5.5mgの亜鉛と、
(v)任意選択で、食物繊維源と
を含む、筋タンパク質合成の刺激に適した固体栄養組成物に関する。
【0069】
一実施形態によれば、本発明は、乾燥重量100gあたり、
(i)約375kcalのエネルギーと、
(ii)約50gのホエータンパク質を含み、約7.5gのロイシンを含み、そのうち約1.9gのロイシンが遊離型である、約52gのタンパク様物質と、
(iii)約7.5gの脂肪および約23gの可消化炭水化物と、
(iv)約0.75mgのカロテノイド、約376μgのビタミンA、約1.88mgのビタミンB6、約80mgのビタミンC、約50μgのビタミンD3、約18.8mgのビタミンE、約500μgの葉酸、約7.5μgのビタミンB12、約38μgのセレン、約5.5mgの亜鉛と、
(v)任意選択で、食物繊維源と
を含む、筋タンパク質合成の刺激に適した固体栄養組成物に関する。
【0070】
一実施形態によれば、本発明は、乾燥重量100gあたり、
(i)約375kcalのエネルギーと、
(ii)約50gのホエータンパク質を含み、約7.2gのロイシンを含み、そのうち約2gのロイシンが遊離型である、約52gのタンパク様物質と、
(iii)約7.5gの脂肪および約23gの可消化炭水化物と、
(iv)約0.75mgのカロテノイド、約376μgのビタミンA、約1.88mgのビタミンB6、約80mgのビタミンC、約50μgのビタミンD3、約18.8mgのビタミンE、約500μgの葉酸、約7.5μgのビタミンB12、約38μgのセレン、約5.5mgの亜鉛と、
(v)任意選択で、食物繊維源と
を含む、筋タンパク質合成の刺激に適した固体栄養組成物に関する。
【0071】
上記組成物に食物繊維源が添加されるとき、約3.1gのGOS、0.34gのFOS/イヌリン、および0.69gの低粘度ペクチンを含む食物繊維を、乾燥重量100gあたり総量で4.13g添加することが好ましい。
【0072】
好ましくは、本発明による固体栄養組成物は、水溶液に溶解することが可能な粉末として形成される。
【0073】
好ましくは、本発明による固体栄養組成物は、1回分が約20〜70g、より好ましくは約40gとして提供される。
【0074】
粉末は、約1回分の大きさを有する包み(sachet)、カップなどとして提供されてもよく、または、複数回分、例えば、7〜25回分(例えば10〜25回分)を含む容器で、任意選択的に匙などの計量器具とともに、提供されてもよい。
【0075】
本発明による液体栄養組成物および固体栄養組成物の両方に関して、以下の仕様の1つまたは複数が適用される:
− 脂肪の量は、10〜35en%、好ましくは15〜30en%で変化し得る、
− 炭水化物の量は、10〜35en%、好ましくは15〜30en%で変化し得る、
− 脂肪と炭水化物の合計の相対量は、10〜60en%、好ましくは30〜60en%の範囲である、
− タンパク様物質は、少なくとも約85重量%のホエータンパク質、好ましくは少なくとも約90重量%、より好ましくは約95重量%のホエータンパク質を含む、
− タンパク様物質は、少なくとも45重量%、好ましくは少なくとも47重量%、より好ましくは約50重量%の必須アミノ酸(EAA)を含む、
− タンパク様物質は、少なくとも約12重量%、好ましくは少なくとも約12.5重量%、より好ましくは約13重量%のロイシンを含む、
− タンパク様物質は、ロイシン総量に対して、少なくとも約22.5重量%、好ましくは少なくとも約26重量%の遊離型のロイシンを含む、
− タンパク様物質は、総ロイシン、総バリン、総ロイシンを、総イソロイシン:バリン:イソロイシンの比率が約1.7〜3:1:1となるように含む、
− 栄養組成物は、さらに、短鎖GOS、長鎖FOS、イヌリンおよび低粘度ペクチンの群から選択される1種または複数の食物繊維を含む。
【0076】
本発明による組成物は、参照によりその内容が本明細書に組み込まれるWO2009/113858に特に開示されるような当業者に公知の方法によって調製することができる。粉末は、当該分野で当業者によく知られた方法によって作製することができ、例えば、液体組成物の噴霧乾燥法、粉末成分の乾式混合法、またはその両方の組み合わせなどによって作製し得る。
【0077】
ここで、本発明を、いくつかの実施例によってさらに具体化するが、本発明はそれらによって限定または拘束されない。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】平均血清ロイシン濃度の時間曲線を示す図である。
【図2】平均総血清必須アミノ酸濃度の時間曲線を示す図である。
【図3】平均総血清アミノ酸濃度の時間曲線を示す図である。
【図4】臨床試験の概念図である。
【実施例】
【0079】
実験
1.臨床試験
臨床試験は、高タンパク質経口栄養組成物のタンパク質源とカロリー密度とが、高齢者の血清アミノ酸レベルに与える急性効果を評価することを目的に行った。このために、高ホエータンパク質(21g)・高ロイシン(ロイシンリッチ,3g)・低カロリー組成物(本発明による組成物−活性組成物(active))を、カゼインタンパク質を含む(対照1、低カロリー)または高カロリー密度を有する(対照2、カゼインタンパク質;対照3、ホエータンパク質)等窒素経口栄養組成物と比較した。無作為、対照比較、単盲検の交差試験計画を、オランダの臨床研究ユニットのボランティアデータベースから採用した12人の健康な高齢被験者(男性5人、女性7人)に対して用いた。被験者は、年齢が65〜70歳で、標準体重またはわずかに体重過多((ボディマス指数(BMI)の範囲21.7〜29.7kg/m2)であった。統計は、被験者に対するランダム効果、タンパク質源(2レベル:ホエー、カゼイン)およびカロリー密度(2レベル:低、高)に対する固定効果、ならびにタンパク質源カロリー密度の固定交互作用に関して、分散の混合モデル解析を使用して実施した。統計学的モデルには、共変数として、血清アルブミン、血清C−反応性タンパク質(CRP)、およびベースラインの血清中結果パラメータ濃度を含めた。最大血清ロイシン濃度(Leumax)に対するさらなる解析を、追加の変数として、年齢、身体活動レベル、性別、またはBMI(≦25と>25kg/m2のカテゴリー)を使用して行った。両側検定をα=0.05で使用した。
【0080】
Leumaxは、活性組成物の方が、対照1と比較して、有意に高かった(521対260μmol/L、p<0.001)。
【0081】
タンパク質源の効果は、高カロリー製品について同様であった。Leumaxは、対照3の方が、対照2と比較して有意に高かった(406対228μmol/L、p<0.001)。低カロリー製品の摂取は、高カロリー製品と比較して、有意に高いLeumaxをもたらした(プール分析についてp<0.001)。タンパク質源の効果は、低カロリー製品の方が強かった(交互作用効果についてp<0.001)。これらの効果(タンパク質源、カロリー密度および交互作用の効果)は、最大の総血清必須アミノ酸濃度(EAAmax)および最大の総血清アミノ酸濃度(AAmax)についても示された。タンパク質源およびカロリー密度も、ロイシンについての、製品摂食後4時間における上昇曲線下面積((incremental area under the curve(iAUC))に影響した(44,588μmol/L分[活性組成物]対22,207μmol/L分[対照1]、p<0.001;35,952μmol/L分[対照3]対15,793μmol/L分[対照2]、p<0.001;および低カロリー製品対高カロリー製品のプール分析についてp<0.001)。同様の効果が、iAUC EAAおよびiAUC AAについても見られた。ロイシンについてiAUCの半分に到達するまでに必要な時間(t1/2)は、活性組成物の方が、対照1よりも有意に短く(87対119分、p<0.001)、対照3の方が、対照2よりも有意に短かった(101対118分、p=0.003)。t1/2に対するタンパク質源の効果は、EAAおよびAAでも見られた。最大血清インスリン濃度は、活性組成物と対照1との間でも(p=0.915)、対照3と対照2との間でも(p=0.989)、異ならなかった。最大血清インスリン濃度について、タンパク質源の効果及びカロリー密度との交互作用効果はなかった(p=0.933)。タンパク質源の効果と交互作用効果の欠如は、血清インスリンiAUCについても見られた。最大血清グルコース濃度は、活性組成物の方が、対照1より有意に低かった:5.54対6.05mmol/L(p=0.013)。タンパク質源の効果は、高カロリー製品では欠如していた(対照3[6.42mmol/L]対対照2[6.66mmol/L]、p=0.195)。最大血清グルコース濃度について、タンパク質源とカロリー密度との交互作用効果はなかった(p=0.314)。タンパク質源の効果及び交互作用効果は、血清グルコースiAUCについては欠如していた。カロリー密度の効果では、インスリンとグルコースの両方で、最大濃度およびiAUCについて、低カロリー製品について低い値が示された(プール分析について、全てがp−値<0.001)。観察された有害事象およびGI症候において、臨床的に意義のある差異はなかった。バイタルサインならびに血清バリンプロファイルおよびイソロイシンプロファイルは、安全上の懸念を引き起こさない。活性組成物は、対照1より満腹度が低く、特に、摂取後4時間を超えると、空腹感が大きかった。
【0082】
この試験により、ホエータンパク質が、カゼインタンパク質よりも速いアミノ酸源であり、より高レベルの血清アミノ酸をもたらすことが確認された。驚くべきことに、低カロリー密度は、アミノ酸レベルに対するタンパク質源の効果をさらに支援する。ホエータンパク質と低カロリー密度との組み合わせにより、最大ロイシン濃度に対する最も顕著な効果が得られた。したがって、活性製品は、筋タンパク質合成の誘発において、少なくともカゼイン製品よりも、そしておそらく高カロリーの同等物よりも、好適である。インスリンおよびグルコースレベルにおいて、ホエー含有製品とカゼイン含有製品との間に、何ら臨床的に意義のある差異は観察されなかった。いずれの試験製剤についても、その1用量の消費に関して、安全上の懸念はなかった。臨床試験では、組成物(臨床試験で150kcalの組成物)では、320kcalの同様のタンパク様組成物(約26en%タンパク質)よりも、ロイシン、必須アミノ酸および総アミノ酸の血中レベル(最大/ピークレベルおよびiAUC)が高くなることを示した。本組成物では、150kcalまたは320kcalのいずれの場合においても、遅いタンパク質であるカゼインタンパク質を100%含むタンパク様組成物よりも、ロイシン、必須アミノ酸および総アミノ酸の血中レベルが、より高く、より速くもたらされる。
【0083】
これらのデータは、同化性アミノ酸(ロイシンおよび必須アミノ酸)の(末梢)生物学的利用可能性が、低カロリー(一部が脂肪および炭水化物(CHO)由来)を含む処方物中において、タンパク質源としてホエー−ロイシンを含む組成物を用いることにより、最適となることを示唆している。文献から、血中のロイシンおよび必須アミノ酸のレベルは筋肉中の筋タンパク質合成の刺激と正に相関することが知られているので、筋タンパク質合成の刺激は、提案される栄養組成物により最適化されることが予測される。
【0084】
詳細
対象および方法
対象
12人の健康で高齢の被験者(男性5人、女性7人、年齢65〜70歳、BMIの範囲21.7〜29.7kg/m2)が、この無作為、対照比較、単盲検、交差試験に参加した。真性糖尿病であることが判明しているまたは疑われる被験者(グルコース濃度≧7.0mmol/L)は、試験から除外した。さらに、消化管機能に関わる消化管系疾患(もしくはその病歴)、乳および乳製品への既知のアレルギーもしくはガラクトース血症、現在もしくは最近(過去3カ月以内)の喫煙、医師の判断の下での最近7日間の感染症もしくは熱、試験開始から3週間以内の抗生物質の使用、現在のコルチコステロイド、ホルモン、制酸剤もしくは胃酸産生に影響を与える任意の医薬の使用、または任意の栄養的補足物の必要性もしくは任意の特別食への固執(例えば、減量、菜食主義者)を有する場合、その被験者は試験から除外した。
【0085】
全ての被験者は、インフォームドコンセントに署名した後、4種の試験製品を固有の順序で受けるよう、無作為に割り付けられた。試験製品は、以下のとおりである;1)本発明による製品(活性組成物、高ホエー−ロイシン、150kcal)、2)対照1(高カゼイン、150kcal)、3)対照2(高カゼイン、320kcal)、4)対照3(高ホエー−ロイシン、320kcal)(表1)。各試験製品は、ボーラス(5分以内に消費)として液体製剤で与えた。
【0086】
【表1】

【0087】
実験手順
被験者は、絶食状態で、4回の別々の朝に、研究場所を訪問した。試験製品の摂取後、被験者は、研究場所に4時間滞在し、試験の評価を受けた。各訪問は、少なくとも1週間の間隔をおいた(前回の訪問から7〜10日後)。図4に、試験の概念図を示す。
【0088】
各訪問時に、被験者は、中間における疾患、中間における医薬または栄養サプリメントの使用、ならびに24時間以内の食事および身体活動について質問を受けた。被験者が、a)7日以内に感染症または熱を患っていた場合、b)抗生物質、コルチコステロイド、ホルモン、制酸剤、もしくは胃酸産生に影響を与える任意の医薬を使用していた場合、またはc)絶食状態でない場合、訪問を再設定した。
【0089】
各訪問における手順は同一で、以下を含んでいた:GI耐性をベースライン(30分前)で、血圧(BP)および心拍数(HR)をt=−20分に、評価した。血液採取用の屈曲性カニューラを、前腕の静脈に配置し、血液をサンプリングした。試験製品を消費させ(T0)、血液試料(5ml)を4時間の試験期間にわたって採取した。2つの試料は、t=−15分に、他の13種の試料は、t=0分(製品摂取の前)、15分、30分、45分、1時間、1時間15分、1時間30分、1時間45分、2時間、2時間30分、3時間、3時間30分、および4時間に採取した。血液試料は、座位の被験者から採取した。血圧、心拍数およびGI耐性を、t=4時間に、再度測定した。
【0090】
試料解析
血液を遠心分離して、血清を得た。次いで、得られた血清を、分析するまで−20℃で保存した。21種のアミノ酸(ロイシン、イソロイシン、バリン、ヒスチジン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファン、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、シトルリン、システイン、グルタミン酸、グリシン、セリン、タウリンおよびチロシン)の血清濃度を、全ての時間点で、当業者によく知られるようにHPLCを使用して分析した。9種の必須アミノ酸(ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファンおよびバリン)の濃度を合計した(EAA)。また、21種全てのアミノ酸の濃度を合計した(AA)。
【0091】
統計解析
全ての従属変数は、混合モデルを使用し、被験者に対するランダム効果、タンパク質(2レベル:ホエー、カゼイン)およびカロリー密度(2レベル:低、高)の因子に対する固定効果、ならびにタンパク質カロリー密度の固定交互作用に関して分析された。別個の分析において、処置間の差異を分析するために、活性組成物と対照1の差異、ならびに活性組成物と対照3、および対照1と対照2の差異を分析した。
【0092】
結果
血清ロイシン
平均血清ロイシン濃度の時間曲線を図1に示す。
【0093】
最大血清ロイシン濃度は、活性組成物においての方が、対照1におけるより有意に高かった(521対260μmol/L(p<0.001))。
【0094】
この低カロリー製品についてのホエー+ロイシン対カゼインの差異は、より少ない程度で高カロリー製品についても見られた(対照3[406μmol/L]対対照2[228μmol/L]、p<0.001)。
【0095】
低カロリー製品対高カロリー製品のプール分析(活性組成物および対照1対対照2および対照3)では、低カロリー密度について有意に高いLeumaxが示された(p<0.001)。この効果は、高ホエータンパク質・高ロイシン製品(活性組成物対対照3、p<0.001)の方が、高カゼインタンパク質製品(対照1および対照2、p=0.042)よりも強かった。このことは、タンパク質源とカロリー密度との間の有意な交互作用効果(p<0.001)を反映している。
【0096】
iAUC Leuは、活性組成物においての方が、対照1におけるよりも有意に高かった(44588対22207μmol/L分(p<0.001))。この低カロリー製品についてのホエー+ロイシン対カゼインの差異は、高カロリー製品についても示された(対照3[35952μmol/L分]対対照2[15793μmol/L分]、p<0.001)。低カロリー製品対高カロリー製品のプール分析は、低カロリー密度について有意に高いiAUC Leuを示した(p<0.001)。iAUC Leuについてタンパク質源とカロリー密度との間に有意な交互作用効果はなかった(p=0.286)。
【0097】
1/2Leuは、活性組成物においての方が、対照1におけるより有意に低かった(87対119分(p<0.001))。ホエー+ロイシン対カゼインの差異が、高カロリー製品についても見られた(対照3[101分]対対照2[118分]、p=0.003)。低カロリー密度と高カロリー密度との間の有意な差異はなかった(p=0.100)。タンパク質源とカロリー密度との間に交互作用効果の傾向があった(p=0.074)。
【0098】
血清必須アミノ酸(EAA)
平均総血清必須アミノ酸濃度の時間曲線を、図2に示す。ベースラインでの総血清必須アミノ酸濃度(EAAベースライン)は、全ての製品において同様のレベルであった(860〜890μmol/L)。EAAbaselineは、統計学的モデルにおいて共変数として含まれていた。
【0099】
最大血清必須アミノ酸濃度(EAAmax)は、活性組成物においての方が、対照1におけるより有意に高かった(2187対1540μmol/L(p<0.001))。この低カロリー製品についてのホエー+ロイシン対カゼインの差異は、より少ない程度で高カロリー製品についても見られた(対照3[1792μmol/L]対対照2[1420μmol/L]、p<0.001)。
【0100】
低カロリー製品と高カロリー製品とのプール分析では、低カロリー密度について有意に高いEAAmaxが示された(p<0.001)。この効果は、高ホエータンパク質・高ロイシン製品(活性組成物対対照3、p<0.001)の方が、高カゼインタンパク質製品(対照1および対照2、p=0.023)より強かった。このことは、タンパク質源とカロリー密度との間の有意な交互作用効果を反映している(p<0.001)。
【0101】
iAUC EAAは、活性組成物においての方が、対照1におけるより有意に高かった(129793対100516μmol/L分(p<0.001))。この低カロリー製品についてのホエー+ロイシン対カゼインの差異は、高カロリー製品についても見られた(対照3[101181μmol/L分]対対照2[75181μmol/L分]、p<0.001)。低カロリー製品対高カロリー製品のプール分析は、低カロリー密度について有意に高いiAUC EAAを示した(p<0.001)。iAUC EAAについて、タンパク質源とカロリー密度との間にiAUC EAAについての有意な交互作用効果はなかった(p=0.673)。
【0102】
1/2EAAは、活性組成物においての方が、対照1におけるより有意に低かった(83対115分(p<0.001))。ホエー+ロイシン対カゼインの差異は、高カロリー製品についても見られた(対照3[94分]対対照2[117分]、p<0.001)。カロリー密度のt1/2EAAに対する効果に関する傾向があった(p=0.093)。タンパク質源とカロリー密度との間の交互作用効果はなかった(p=0.223)。
【0103】
総アミノ酸(AA)
平均総血清アミノ酸濃度の時間曲線を図3に示す。
【0104】
ベースラインでの総血清アミノ酸濃度(AAbaseline)は全ての製品について同様であった(2780〜2880μmol/L)。AAbaselineは、統計学的モデルにおける共変数として含まれていた。
【0105】
最大血清アミノ酸濃度(AAmax)は、活性組成物においての方が、対照1におけるより有意に高かった(4687対3946μmol/L(p<0.001))。この低カロリー製品についてのホエー+ロイシン対カゼインの差異は、高カロリー製品についても見られた(対照3[4141μmol/L]対対照2[3699μmol/L]、p<0.001)。
【0106】
低カロリー製品対高カロリー製品のプール分析では、低カロリー密度について有意に高いAAmaxが示された(p<0.001)。この効果は、高ホエータンパク質・高ロイシン製品(活性組成物対対照3、p<0.001)の方が、高カゼインタンパク質製品(対照1および対照2、p=0.003)より強かった。このことは、タンパク質源とカロリー密度との間の有意な交互作用効果を反映している(p=0.015)。
【0107】
iAUC AAは、活性組成物においての方が、対照1におけるより有意に高かった:162702対143018μmol/L分(p=0.032)。この低カロリー製品についてのホエー+ロイシン対カゼインの差異は、高カロリー製品についても見られた(対照3[128047μmol/L分]対対照2[105525μmol/L分]、p=0.008)。低カロリー製品対高カロリー製品のプール分析では、低カロリー密度について有意に高いiAUC AAが示された(p<0.001)。タンパク質源とカロリー密度との間にiAUC AAについての有意な交互作用効果はなかった(p=0.819)。
【0108】
1/2AAは、活性組成物においての方が、対照1におけるよりも有意に低かった(78対101分(p<0.001)。ホエー+ロイシン対カゼインの差異は、高カロリー製品についても見られた(対照3[87分]対対照2[103分]、p=0.007)。低カロリー密度と高カロリー密度との間で有意な差異はなかった(p=0.199)。t1/2AAについて、タンパク質源とカロリー密度との間の交互作用効果はなかった(p=0.413)。
【0109】
結論
血清ロイシン濃度は、高ホエータンパク質・高ロイシン・低カロリー製品を摂取した後に、500μmol/L超に上昇した。高カゼインタンパク質・低カロリー製品とのLeumaxの差異(520対260μmol/L)は、予想より高かった。Dangin et al.の文献[15]から推定した介入の効果についての従前の予測は、活性組成物と対照1との間のLeumaxの差異において100μmol/Lであった。血清EAA濃度も、高ホエータンパク質・高ロイシン・低カロリー製品を摂取した後は、高カゼインタンパク質・低カロリー製品を摂取した場合と比較して高かった。
【0110】
この試験から、ホエータンパク質が、遅いタンパク質と考えられるカゼインタンパク質[7]よりも、速いアミノ酸源であることが確認された。循環血液中のアミノ酸の出現速度が非常に高かったが、このことはiAUCの半分に達する時間t1/2が、高ホエータンパク質・高ロイシン製品の方が短いことによって反映されている。この効果は、ロイシンおよび総必須アミノ酸だけでなく、総アミノ酸についても同様である。ロイシン以外の個々のアミノ酸についての時間曲線も、このことを確認するものであった。高ホエータンパク質・高ロイシン製品について見られる高ロイシンのピークは、低カロリー製品において、より顕著であった。高カロリー製品についてのLeumax値は、406μmol/L(高ホエータンパク質・高ロイシン製品)および228μmol/L(高カゼインタンパク質製品)であった。300μmol/Lを超えるロイシン濃度は、高齢者における筋タンパク質合成の刺激に有効であるようである[35][アミノ酸注入]、[36][ロイシン補足栄養])。血清ロイシンと筋タンパク質合成との用量応答関係についての明確なデータは存在しないが、本発明者らは、低カロリー・高ホエータンパク質・高ロイシン製品が、筋タンパク質合成の刺激に好適な製品であるとの仮説をたてる。
【0111】
2.栄養組成物
本発明による以下の栄養組成物は、哺乳動物、例えば高齢哺乳動物における、筋タンパク質合成を伴う疾患または状態の予防または処置に適している。
【0112】
【表2】

【0113】
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物における筋退縮を伴う疾患または状態の、予防または処置に使用するための栄養組成物であって、
前記栄養組成物は、100kcalあたり、(i)少なくとも約12gのタンパク様物質と、(ii)脂肪源および可消化炭水化物源と、を含み、
前記タンパク様物質は、該タンパク様物質の総量に対して少なくとも約80重量%のホエータンパク質を含み、
前記タンパク様物質は、該タンパク様物質の総量に対して少なくとも約11重量%のロイシンを含み、総ロイシンに対して少なくとも約20重量%のロイシンが遊離型であり、
前記栄養組成物は1日に1回から2回投与され、各1回分は80〜200kcalを含むことを特徴とする栄養組成物。
【請求項2】
前記タンパク様物質が、100kcalあたり、少なくとも約12.5gのタンパク様物質、少なくとも約13gのタンパク様物質、少なくとも約13.5gのタンパク様物質、および最も好ましくは約14gのタンパク様物質を含むことを特徴とする、請求項1に記載の栄養組成物。
【請求項3】
前記タンパク様物質が、少なくとも約80重量%のホエータンパク質、少なくとも約85重量%のホエータンパク質、好ましくは少なくとも約90重量%のホエータンパク質、およびより好ましくは約95重量%のホエータンパク質を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の栄養組成物。
【請求項4】
前記タンパク様物質が、少なくとも約45重量%の必須アミノ酸(EAA)、好ましくは少なくとも約47重量%の必須アミノ酸(EAA)、より好ましくは少なくとも約50重量%の必須アミノ酸(EAA)を含むことを特徴とする、請求項1乃至3の何れか1項に記載の栄養組成物。
【請求項5】
前記タンパク様物質が、少なくとも約12重量%のロイシン、好ましくは少なくとも約12.5重量%のロイシン、より好ましくは少なくとも約13重量%のロイシン、最も好ましくは少なくとも約14重量%のロイシンを含むことを特徴とする、請求項1乃至4の何れか1項に記載の栄養組成物。
【請求項6】
総ロイシンが、ロイシン総量に対して少なくとも約22.5重量%の遊離型ロイシン、好ましくは少なくとも約26重量%の遊離型ロイシンを含むことを特徴とする、請求項1乃至5の何れか1項に記載の栄養組成物。
【請求項7】
前記タンパク様物質が、ロイシン:バリン:イソロイシンの比率が約1.7〜3:1:1となるような総量で、ロイシン、バリンおよびイソロイシンを含むことを特徴とする、請求項1乃至6の何れか1項に記載の栄養組成物。
【請求項8】
前記栄養組成物が、短鎖GOS、長鎖FOS、イヌリンおよび低粘度ペクチンの群から選択される1以上の食物繊維をさらに含むことを特徴とする、請求項1乃至7の何れか1項に記載の栄養組成物。
【請求項9】
前記栄養組成物が、カロテノイド、ビタミンA、ビタミンB6、ビタミンC、ビタミンD3、ビタミンE、葉酸、ビタミンB12、セレンおよび亜鉛をさらに含むことを特徴とする、請求項1乃至8の何れか1項に記載の栄養組成物。
【請求項10】
哺乳動物における筋退縮を伴う疾患または状態の、予防または処置に使用するための栄養組成物であって、
前記栄養組成物は、100kcalあたり、(ii)約14gのタンパク様物質と、(iii)約2gの脂肪および約6.2gの可消化炭水化物と、を含み、
前記タンパク様物質は、該タンパク様物質の総量に対して約95重量%のホエータンパク質を含み、
前記タンパク様物質は、該タンパク様物質の総量に対して少なくとも約14重量%のロイシンを含み、総ロイシンに対して少なくとも約26重量%のロイシンが遊離型であり、
前記栄養組成物は1日に1回から2回投与され、各1回分が約150kcalを含むことを特徴とする栄養組成物。
【請求項11】
前記哺乳動物が、30歳以上のヒト、より好ましくは50歳以上のヒト、最も好ましくは高齢のヒトであることを特徴とする、請求項1乃至10の何れか1項に記載の栄養組成物。
【請求項12】
前記栄養組成物が、予防のためまたは維持用量として1日1回投与されることを特徴とする、請求項1乃至11の何れか1項に記載の栄養組成物。
【請求項13】
前記疾患または状態が、
サルコペニア、
加齢に関係する、体重維持中もしくは体重維持後、エネルギー制限中もしくはエネルギー制限後、床上安静中もしくは床上安静後、身体的外傷(例えば骨折)の処置中もしくは処置後、または無重力状態中もしくは無重力状態後の、筋肉量の喪失、
不十分な筋タンパク質合成、
筋劣化、
筋回復障害、
筋損傷、
筋タンパク質分解、
筋萎縮、
筋ジストロフィー、
筋肉異化、
筋消耗、
筋肉の強さの喪失、
筋肉機能の喪失、
身体能力の喪失、
身体性能の喪失、
可動性障害、
虚弱、
身体障害、および
転倒の危険性、の群から選択されることを特徴とする、請求項1乃至12の何れか1項に記載の栄養組成物。
【請求項14】
液体栄養組成物であって、
100mlあたり、(i)約100kcal未満のエネルギーと、(ii)少なくとも約10gのタンパク様物質と、(iii)脂肪源および可消化炭水化物源と、(iv)カロテノイド、ビタミンA、カルシウム、マグネシウム、ビタミンB6、ビタミンC、ビタミンD3、ビタミンE、葉酸、ビタミンB12、セレンおよび亜鉛の群から選択される1以上の微量栄養素と、を含み、
前記タンパク様物質は、該タンパク様物質の総量に対して少なくとも約80重量%のホエータンパク質を含み、
前記タンパク様物質は、該タンパク様物質の総量に対して少なくとも約11重量%のロイシンを含み、総ロイシンに対して少なくとも約20重量%のロイシンが遊離型であることを特徴とする液体栄養組成物。
【請求項15】
100mlあたり、90kcal未満のエネルギー、好ましくは80kcal未満のエネルギーを含むことを特徴とする、請求項14に記載の液体栄養組成物。
【請求項16】
100mlあたり、(i)約75kcalのエネルギーと、(ii)約10.5gのタンパク様物質と、(iii)約1.5gの脂肪および約4.4gの可消化炭水化物と、(iv)約0.15mgのカロテノイド、約75μgのビタミンA、約375μgのビタミンB6、約1.5μgのビタミンB12、約16mgのビタミンC、約10μgのビタミンD3、約3.8mgのビタミンE、約100μgの葉酸、約7.5μgのセレン、約1.1mgの亜鉛と、(v)任意選択で、食物繊維源と、を含み、
前記タンパク様物質は、約10gのホエータンパク質を含み、
前記タンパク様物質は、約1.5gのロイシンを含み、そのうち約0.4gのロイシンが遊離型であることを特徴とする、請求項14又は15に記載の液体栄養組成物。
【請求項17】
1回分あたり200mlとしてパッケージ化されていることを特徴とする、請求項14乃至16の何れか1項に記載の液体栄養組成物。
【請求項18】
固体栄養組成物であって、
乾燥重量100gあたり、(i)500kcal未満のエネルギーと、(ii)少なくとも49gのタンパク様物質と、(iii)脂肪源および可消化炭水化物源と、(iv)カロテノイド、ビタミンA、カルシウム、マグネシウム、ビタミンB6、ビタミンC、ビタミンD3、ビタミンE、葉酸、ビタミンB12、セレンおよび亜鉛の群から選択される1以上の微量栄養素と、を含み、
前記タンパク様物質は、該タンパク様物質の総量に対して少なくとも約80重量%のホエータンパク質を含み、
前記タンパク様物質は、該タンパク様物質の総量に対して少なくとも約11重量%のロイシンを含み、総ロイシンに対して少なくとも約20重量%のロイシンが遊離型であることを特徴とする固体栄養組成物。
【請求項19】
100gあたり、445kcal未満のエネルギー、好ましくは395kcal未満のエネルギーを含むことを特徴とする、請求項18に記載の固体栄養組成物。
【請求項20】
乾燥重量100gあたり、(i)約375kcalのエネルギーと、(ii)約52gのタンパク様物質と、(iii)約7.5gの脂肪および約23gの可消化炭水化物と、(iv)約0.75mgのカロテノイド、約376μgのビタミンA、約1.88mgのビタミンB6、約80mgのビタミンC、約50μgのビタミンD3、約18.8mgのビタミンE、約500μgの葉酸、約7.5μgのビタミンB12、約38μgのセレン、約5.5mgの亜鉛と、(v)任意選択で、食物繊維源と、を含み、
前記タンパク様物質は、約50gのホエータンパク質を含み、
前記タンパク様物質は、約7.5gのロイシンを含み、そのうち約1.9gのロイシンが遊離型であることを特徴とする、請求項18又は19に記載の固体栄養組成物。
【請求項21】
水溶液に溶解することが可能な粉末として形成されていることを特徴とする、請求項18乃至20の何れか1項に記載の固体栄養組成物。
【請求項22】
1回分が約40gとして提供されることを特徴とする、請求項18乃至21の何れか1項に記載の固体栄養組成物。
【請求項23】
前記脂肪源が、オメガ−3脂肪酸、特にEPAおよびDHAを含むことを特徴とする、請求項1乃至22の何れか1項に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−515718(P2013−515718A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−545884(P2012−545884)
【出願日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【国際出願番号】PCT/NL2010/050887
【国際公開番号】WO2011/078677
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(508186727)エヌ.ヴィ.ニュートリシア (5)
【Fターム(参考)】